説明

断熱箱体の製造方法及び装置

【課題】断熱箱体の内部に形成される収容空間の配置状態が異なっている各種仕様の断熱箱体を生産性良く製造できる断熱箱体の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】外郭2内に内型5を配置し、外郭2と内型5の間の空間に断熱壁を発泡成形することで、外郭2内に断熱壁で囲まれた1又は複数に分割された収容空間を形成する断熱箱体の製造方法であって、内型5を、最多数に分割された収容空間のそれぞれに対応する形状と大きさの複数の中子治具6と、中子治具6、6間に必要に応じて挿入配置される仕切治具8とを組み合わせて構成し、この内型5と外郭2との間の空間に断熱壁を発泡成形し、所望の形状と大きさの収容空間を有する断熱箱体を製造するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用冷蔵・冷凍庫などに適用される断熱箱体の製造方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
業務用冷蔵・冷凍庫は、レストランや飲食店、あるいは冷凍車等で使用されるものであるため、多品種小ロットである。また、これら業務用冷蔵・冷凍庫に適用されている断熱箱体は、主にステンレス鋼板(例えばSUS304)などの金属製の外郭の内部に発泡断熱壁を成形することにより、内部に発泡断熱壁で囲まれた1又は複数の収容空間を構成した構造となっている。
【0003】
このような断熱箱体の製造においては、多品種小ロットが原因となり、材料、ライン、部品、内型等の切替に多くの時間がかかるため、生産性が低いという問題があった。これらの要因の中で、材料はステンレス鋼板を予め前作業でプレカット等をすることで作業効率を上げることができ、またライン動線もコンピュータの導入により作業のタクト差を改善することができ、また部品については標準化によって作業工数を削減できるとともに、作業の慣れによる作業効率の向上を図ることができるようになっている。しかし、内型に関しては、品種毎にその形状の異なるものに切替える必要があるため、その切替作業の効率向上に限界があった。
【0004】
断熱箱体の具体例を、図11を参照して説明すると、断熱箱体1は、ステンレス鋼板製の外郭2の内面の全面が所要厚さに発泡断熱壁3(3a)で覆われるとともに、その内部空間が発泡断熱壁3(3b)にて複数の収容空間4に分割されている。
【0005】
このような断熱箱体を製造する際には、特許文献1〜特許文献3などに記載されているように、各収容空間に対応する形状の内型を外郭内に挿入配置し、外郭と内型の間に空間に発泡断熱材を注入発泡させて発泡断熱壁を成形している。なお、特許文献1には、外箱と内箱の間に、所定の2原液を混合した直後の混合原液を注入することで、キャビテーションの発生を抑えて発泡ウレタンの断熱材を形成することが記載されている。また、特許文献2には、箱体に中子を装着した状態で、プレヒート室及び発泡室で予熱した後、内部に発泡原液を注入して発泡断熱材を形成することが記載されている。また、特許文献3には、外箱と内箱の間に発泡ウレタンを注入する際に、外箱と外箱背面の開口を覆う背面板との間からの発泡ウレタンの漏れを、簡単に防止する構成が記載されている。
【特許文献1】特開平11−199696号公報
【特許文献2】特開2005−319584号公報
【特許文献3】特開2001−263927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記図11に示したような断熱箱体1において、その外郭2の寸法は同一であっても、図12(a)〜(d)に示すように、内部の収容空間4の仕様、すなわち収容空間4の数と形状・大きさが互いに異なっている断熱箱体1がある。図12(a)は、2つの小さな収容空間4(4a)と縦長の大きな収容空間4(4b)を並列配置した仕様で、図12(b)は、1つの小さな収容空間4(4a)とその2方を囲むL字状の大きな収容空間4(4c)を組み合わせた仕様で、図12(c)は、縦長の2つの大きな収容空間4(4b)を並列配置した仕様で、図12(d)は、単一の大きな収容空間4(4d)を有する仕様である。このような各仕様の断熱箱体1を製造するには、それぞれの仕様毎に
対応する内型を作製して保管しておき、製造時にその内型を取り出してきて発泡成形装置に設置する必要がある。さらに、外郭の寸法も種々のものがあって、それぞれに上記と同様に収容空間の仕様の異なるものがあるため、多量の内型が必要となる。したがって、上記のように品種毎に多量の内型を用意しておいて各品種の製造時に内型を切替える必要があるため、生産性の向上の阻害要因となっていた。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、断熱箱体の内部に形成される収容空間の配置状態が異なっている各種仕様の断熱箱体を生産性良く製造することができる断熱箱体の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の断熱箱体の製造方法は、外郭内に内型を配置し、外郭と内型の間の空間に断熱壁を発泡成形することで、外郭内に断熱壁で囲まれた1又は複数に分割された収容空間を形成する断熱箱体の製造方法であって、内型を、最多数に分割された収容空間のそれぞれに対応する形状と大きさの複数の中子治具と、中子治具間に必要に応じて挿入配置される仕切治具とを組み合わせて構成し、この内型と外郭との間の空間に断熱壁を発泡成形し、所望の形状と大きさの収容空間を有する断熱箱体を製造するものである。
【0009】
この構成によると、最多数に分割された収容空間のそれぞれに対応する形状と大きさの複数の中子治具を備えた内型を基本とし、製造すべき断熱箱体の収容空間の配置状態に応じて所要の仕切治具を中子治具間に挿入配置することで、製造すべき断熱箱体に対応した内型を構成することができ、この内型を用いて外郭と内型の間の空間に断熱壁を発泡成形することで断熱箱体を製造できる。かくして、各種仕様の断熱箱体に対応する内型を、基本構成の内型に必要に応じて仕切治具を挿入配置するという簡単な作業によって構成できるため、各種仕様の断熱箱体を生産性良く製造することができる。
【0010】
具体的には、中子治具は、下面形成部材と四周面形成部材を有するとともに、その四周面形成部材が成形時の規正位置から退入可能であり、仕切治具は、昇降可能に支持された下面形成部材と下面形成部材の昇降動作と連動して出退動作する両側面形成部材を有するとともに、下面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるとともにそれに連動して両側面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるものであり、外郭内に内型を挿入した後、中子治具の四周面形成部材を成形時の規正位置に突出させ、仕切治具の下面形成部材を成形時の規正位置に位置規正し、外郭と内型の間の空間に断熱壁を発泡成形すると、外郭内への内型の挿入配置及び形成後の型抜きを容易に作業性良く行うことができ、製造効率を向上できる。
【0011】
さらに、中子治具は、下面形成部材と四周面形成部材を有するとともに、その四周面形成部材が成形時の規正位置から退入可能であり、仕切治具は、昇降自在に支持された下面形成部材と下面形成部材の昇降動作と連動して出退動作する両側面形成部材を有するとともに、被押圧部が中子治具の四周面形成部材にて押圧されると下面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるとともにそれに連動して両側面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるものであり、外郭内に内型を挿入し、さらに外郭底面にて仕切治具の下面形成部材を成形時の規正位置の近傍まで押し上げた後、中子治具の四周面形成部材を成形時の規正位置に突出させ、その後外郭底面と内型下面との間に断熱壁の厚さに対応する空間が形成されるように内型に対して外郭を相対的に下降させ、外郭と内型の間の空間に断熱壁を発泡成形すると、上記と同様に外郭内への内型の挿入配置及び形成後の型抜きを容易に作業性良く行うことができ、かつ仕切治具はその下面形成部材を単に昇降自在に支持しただけで昇降駆動手段を備えていない簡単な構成で良いため、品種切替に伴って各種内型を構成する際に、単純に所要の仕切治具を内型に着脱するだけで、駆動源を接続したりする必要がないので、短時間に作業性良く着脱することができ、内型のコスト低下と作業性
の向上を図れるので、より好適である。
【0012】
また、本発明の断熱箱体の製造装置は、外郭内に内型を配置し、外郭と内型の間の空間に断熱壁を発泡成形することで、外郭内に断熱壁で囲まれた1又は複数に分割された収容空間を形成する断熱箱体の製造装置であって、内型を構成する治具として、最多数に分割された収容空間のそれぞれに対応する形状と大きさの複数の中子治具と、中子治具間に必要に応じて挿入配置される仕切治具とを備え、製造する断熱箱体の収容空間の形状と大きさに応じて所要の仕切治具を挿入配置するようにしたものである。
【0013】
この構成によると、上記断熱箱体の製造方法を実施して、各種仕様の断熱箱体を生産性良く製造することができる。
【0014】
また、中子治具が、下面形成部材と四周面形成部材を備えるとともに、その四周面形成部材が成形時の規正位置から退入可能に構成されていると、中子治具を備えた内型の外郭内への挿入配置及び断熱壁の成形後の型抜きを円滑にかつ容易に行うことができる。
【0015】
また、仕切治具が、昇降可能に支持された下面形成部材と、下面形成部材の昇降動作と連動して出退動作する両側面形成部材とを備え、下面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるとそれに連動して両側面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されると、下面形成部材を昇降させることで、仕切治具を設置した内型の外郭内への挿入配置及び断熱壁の成形後の型抜きを円滑にかつ容易に行うことができる。
【0016】
また、仕切治具が、昇降自在に支持された下面形成部材と、下面形成部材の昇降動作と連動して出退動作する両側面形成部材と、中子治具の四周面形成部材にて押圧される被押圧部とを備え、成形時の規正位置に位置規正された中子治具の四周面形成部材にて被押圧部が押圧されると下面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるとともにそれに連動して両側面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるものとすると、下面形成部材を単に昇降自在に支持しただけで昇降駆動手段を設けない簡単な構成であり、かつ品種切替に伴って各種内型を構成する際に、単純に所要の仕切治具を内型に着脱するだけで、駆動源を接続したりする必要がないので、短時間に作業性良く着脱することができ、内型のコスト低下と作業性の向上を図れてより好適である。
【0017】
また、仕切治具が、下面形成部材の押し上げ動作時に作用する荷重をほぼ一定に軽減する定荷重ばねを備えていると、外郭底面にて仕切治具の下面形成部材を成形時の規正位置の近傍まで押し上げる際に、外郭底面に対して仕切治具の下面形成部材とそれに連動して出退動作する両側面形成部材の荷重がそのまま作用するのではなく、ほぼ一定に軽減されて作用するため、外郭底面に押圧痕が発生するのを防止することができる。
【0018】
また、仕切治具を、下方に向けて幅寸法が小さくなる倒立台形状の支持枠の下部に、下面形成部材に連結されたガイド部材が昇降自在に支持されるとともに、ガイド部材の上端と支持枠の上部との間に定荷重ばねが介装され、支持枠の両側に設けれた傾斜ガイドに沿って昇降自在に側面形成部材が支持されるとともに側面形成部材の下端が下面形成部材上に摺動自在に支持された構造とすると、下面形成部材を軽く押し上げ又は押し上げ解除することで下面形成部材が円滑に昇降動作しかつそれに連動して円滑に側面形成部材を出退動作させることができて好適である。
【0019】
また、被押圧部は、支持枠の両面から突出するように付勢された被押圧板を備え、支持枠に、被押圧板に固定されたカム板とこのカム板に係合可能にガイド部材の上端部に設けられたカム部材とから成る押し上げ機構が設けられていると、カム機構からなる簡単な構成の押し上げ機構にて被押圧板の押圧に連動して下面形成部材を確実に成形時の規正位置
に位置規正することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の断熱箱体の製造方法及び装置によれば、最多数に分割された収容空間のそれぞれに対応する形状と大きさの複数の中子治具を備えた内型を基本とし、製造すべき断熱箱体の収容空間の配置状態に応じて所要の仕切治具を中子治具間に挿入配置することで、製造すべき断熱箱体に対応した内型を構成することができ、この内型を用いて外郭と内型の間の空間に断熱壁を発泡成形することで断熱箱体を製造できる。かくして、各種仕様の断熱箱体に対応する内型を、基本構成の内型に仕切治具を挿入配置するという簡単な作業によって構成できるため、各種仕様の断熱箱体を生産性良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の断熱箱体の製造方法及び装置の一実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。
【0022】
まず、本実施形態の断熱箱体1の製造方法における基本構想を、図12(a)〜(d)に示した各品種の断熱箱体を製造する例について、図1(a)〜(d)と図2を参照して説明する。図12(a)に示す断熱箱体1を製造する際には、図1(a)に示すように、小さい2つの収容空間4(4a)に対応する2つの中子治具6(C1)と縦長の大きな収容空間4(4b)に対応する中子治具6(C2)とを内型固定部(図示せず)に取り付けて構成した基本構成の内型5を用い、外型7にて周面を支持された外郭2内に挿入配置し、外郭2と内型5の間の空間に発泡断熱材を注入発泡させて発泡断熱壁3を成形する。
【0023】
図12(b)に示す断熱箱体1を製造する際には、図1(b)に示すように、上記基本構成の内型5における一方の中子治具6(C1)と中子治具6(C2)との間に、それらの間の成形空間を埋める仕切治具8(P1)を挿入配置し、内型固定部(図示せず)に取り付けて構成した内型5を用い、上記と同様に発泡断熱壁3を成形する。また、図12(c)に示す断熱箱体1を製造する際には、図1(c)に示すように、上記基本構成の内型5における2つの中子治具6(C1)の間にそれらの間の成形空間を埋める仕切治具8(P1)を挿入配置し、内型固定部(図示せず)に取り付けて構成した内型5を用い、上記と同様に発泡断熱壁3を成形する。また、図12(d)に示す断熱箱体1を製造する際には、図1(d)に示すように、図1(c)の状態からさらに、2つの中子治具6(C1)及び仕切治具8(P1)と中子治具6(C2)との間に、それらの間の成形空間を埋める仕切治具8(P2)を挿入配置し、内型固定部(図示せず)に取り付けて構成した内型5を用い、上記と同様に発泡断熱壁3を成形する。なお、仕切治具8(P2)は幅寸法が大きくなるので、両側から容易に挿入配置できるように2分割構成とされている。
【0024】
かくして、この例においては、図2に示すように、2つの中子治具6(C1)と中子治具6(C2)と仕切治具8(P1)と仕切治具8(P2)を適宜に組み合わせて内型固定部(図示せず)に取り付けることで、図12(a)〜(d)の断熱箱体1を製造する内型5を構成することができ、この内型5を用いて外郭2と内型5の間の空間に発泡断熱壁3を発泡成形することで断熱箱体1を製造できる。このように各種仕様の断熱箱体1に対応する内型5を、基本構成の内型5に仕切治具8を挿入配置するという簡単な作業によって構成できるため、各種仕様の断熱箱体を生産性良く製造することができる。
【0025】
以下、上記中子治具6(C1)、6(C2)に適用される中子治具6と仕切治具8(P1)、8(P2)に適用される仕切治具8の具体的な構成例と、それらを用いた場合の断熱箱体1の製造工程について、図3〜図10を参照して説明する。
【0026】
中子治具6は、図3に示すように、内型固定部(図示せず)に取付けられる取付ブロッ
ク9と、取付ブロック9の両側部から下方に延出された一対のガイドロッド10と、ガイドロッド10の下端に取付固定され、中子治具6の下面を形成する下面形成部材11と、ガイドロッド10に沿って昇降自在に支持された昇降ブロック12と、取付ブロック9と昇降ブロック12との間に介装されて昇降ブロック12を昇降駆動するシリンダ装置13と、中子治具6の四周面を形成する4枚の四周面形成部材と、取付ブロック9と各四周面形成部材14の上端との間に介装されて四周面形成部材14を成形時の規正位置と退入位置との間で出退するように揺動自在に支持する支持リンク機構15と、各四周面形成部材14と昇降ブロック12との間に四棒平行リンク機構を構成して各四周面形成部材14を平行移動させる上下一対の連結リンク16とを備えている。
【0027】
この構成の中子治具6において、シリンダ装置13が収縮して昇降ブロック12が上昇し、支持リンク機構15のリンクが内向きに傾斜し、連結リンク16が斜めに傾斜して各四周面形成部材14が退入位置に後退している図3(a)に示す状態から、シリンダ装置13を伸長動作させると、図3(b)に示すように、昇降ブロック12が下降し、それに伴って支持リンク機構15のリンクが垂直に垂下し、連結リンク16が水平となって、各四周面形成部材14が成形時の所定の規正位置に突出された状態となる。
【0028】
仕切治具8は、図4に示すように、内型固定部20における中子治具6の取付ブロック9の取付部間に取付可能な取付部材21と、取付部材21の下端に一体的に固定された、下方に向けて幅寸法が小さくなる倒立台形状の支持枠22と、支持枠22の下部に垂直に配設された一対の軸受23と、一対の軸受にて昇降自在に支持されたガイド部材としての一対のガイド軸24と、一対のガイド軸24の下端に結合された、仕切治具8の下面を形成する下面形成部材25と、支持枠22の両側に昇降自在に配設されるとともに下端が下面形成部材25上に摺動自在に支持された略直角三角形状の側面形成部材26と、一対のガイド軸24の上端と支持枠22の上部との間に介装された定荷重ばね27とを備え、昇降自在に支持された下面形成部材25及び側面形成部材26をそれらの自重に抗して略一定の比較的小さな荷重で上昇させることができるように構成されている。側面形成部材26は、外側面が仕切治具8の側面を形成し、内側傾斜面26aに、支持枠22の両側の傾斜側面の上部と下部に設けられた傾斜ガイドとしてのスライドガイド28にて摺動自在に支持されるガイドレール29が取付けられ、下面形成部材25上に接する下面に摺動抵抗を小さくするローラ30が配設されている。
【0029】
この構成の仕切治具8において、図4に仮想線で示すように、下面形成部材25及び側面形成部材26がその自重によって下方に移動している状態から、下面形成部材25を押し上げると、下面形成部材25が定荷重ばね27にて支持されているので小さな荷重にて容易に上昇するとともに、それに連動して側面形成部材26は上昇しながら側方に移動し、図4に実線で示すように、下面形成部材25が成形時の規正位置に位置すると、側面形成部材26も成形時の規正位置に位置することになる。
【0030】
また、支持枠22の下部の中央部には被押圧部31が配設されている。被押圧部31は、中子治具6の四周面形成部材14にて押圧されると、下面形成部材25を成形時の規正位置に位置規正するものであり、その詳細構成を、図5を参照して説明する。被押圧部31は、支持枠22に取付けられたブラケット32に、スライドピン32aを介して支持枠22の両面から突出した位置と退入した位置との間で出退可能に装着されるとともに、ばね24にて突出付勢された一対の被押圧板23を備えている。これらの被押圧板33の内面の中央部にカム板35が固定されている。カム板35は、その上部に上方に向けて外側に傾斜するカム面35aが設けられている。一方、一対のガイド軸24の上部の適所に両ガイド軸24、24間にわたって受け部材36が固定され、この受け部材36の下面の中央部に、カム板35に対応するカム部材37が固定されている。カム部材37の両カム板35に対向する両端部には上方に向けて外側に傾斜するカム面37aが設けられ、これら
両カム板25とカム部材37にて押し上げ機構38が構成されている。
【0031】
この被押圧部31の構成において、一対のガイド軸24、すなわち下面形成部材25が成形時の規正位置の近傍まで押し上げられ、カム部材37のカム面37aがカム板35のカム面35aより上方に位置している状態で、中子治具6の四周面形成部材14にて被押圧板33が図5(b)、(c)に白抜矢印の如く押圧されると、カム板35のカム面35aがカム部材37のカム面37aに係合して、カム部材37が矢印の如く押し上げられ、受け部材36、ガイド軸24を介して下面形成部材25が引き上げられ、成形時の規正位置に位置規正されるとともにそれに連動して両側面形成部材26が成形時の規正位置に位置規正される。
【0032】
次に、以上の中子治具6と仕切治具8を設置した内型5を用いて所望の形状と大きさの収容空間4を有する断熱箱体1を製造する工程を、図6〜図10を参照して説明する。
【0033】
発泡成形装置には、図6に示すように、製造すべき断熱箱体1の収容空間4に対応して、所要の中子治具6と中子治具6、6の間に挿入配置された仕切治具8とを内型固定部20に吊り下げ状態で取付けて構成した内型5が設置されている。この状態の発泡成形装置に、搬送パレット40上に設置された外郭2が搬送されて来る。そして、白抜矢印の如く、外郭2を内型5の直下に位置決めした後、上昇させる。
【0034】
外郭2が上昇する間に、図7に示すように、仕切治具8における自重にて下方に移動している下面形成部材25が外郭2の底面に当接し、その後も白抜矢印の如く下面形成部材25を押し上げつつ上昇する。その際に、下面形成部材25が定荷重ばね27にて支持されているので、例えば30N程度の小さな荷重が作用するだけでも容易に上昇し、そのため外郭2の底面に下面形成部材25が当接したときにも打痕を生じる恐れがない。
【0035】
外郭2は、図8に示すように、仕切治具8の下面形成部材25が成形時の規正位置の近傍位置まで上昇されると、その位置で一旦停止する。その後、中子治具6のシリンダ装置13を伸長動作させて、四周面形成部材14を白抜矢印の如く退入位置から成形時の規正位置に突出移動させる。これにより、図9に示すように、中子治具6の四周面形成部材14が成形時の規正位置に位置規正されるとともに、四周面形成部材14のこの動作によって仕切治具8の被押圧部31の被押圧板33が押圧され、上記のようにその下面形成部材25が成形時の規正位置まで引き上げられて位置規正され、またそれに伴って仕切治具8の側面形成部材26も成形時の規正位置に位置規正される。
【0036】
その後、図9に白抜矢印で示すように、外郭2を所定距離だけ下降させて、中子治具6の下面形成部材11及び仕切治具8の下面形成部材25と外郭2の底面との間に、形成すべき発泡断熱壁3の厚さ寸法に対応する間隔をあけた位置に位置決めして停止し、その状態で図10に示すように、内型5と外郭2との間の空間に発泡断熱材を注入発泡させることで、所要の収容空間4を形成するように発泡断熱壁3が成形される。
【0037】
発泡断熱壁3が成形されると、中子治具6のシリンダ装置13を収縮動作させて、四周面形成部材14を成形時の規正位置から退入位置に移動させた後、外郭2を下降させることによって、型抜きが無理なく円滑に行われ、製造された断熱箱体1が搬送パレット40上に載置されて発泡成形装置から取り出される。
【0038】
以上のように本実施形態によれば、最多数に分割された収容空間4のそれぞれに対応する形状と大きさの複数の中子治具6を備えた内型5を基本とし、製造すべき断熱箱体1の収容空間4の配置状態に応じて所要の仕切治具8を中子治具6、6間に挿入配置することで、製造すべき断熱箱体1に対応した内型5を構成することができ、この内型5を用いて
外郭2と内型5の間の空間に発泡断熱壁3を発泡成形することで断熱箱体1を製造できる。かくして、各種仕様の断熱箱体1に対応する内型5を、基本構成の内型5に仕切治具8を挿入配置するという簡単な作業によって構成できるため、各種仕様の断熱箱体1を生産性良く製造することができる。
【0039】
また、外郭2内に内型5を挿入し、さらに外郭2の底面にて仕切治具8の下面形成部材25を成形時の規正位置の近傍まで押し上げた後、中子治具6の四周面形成部材14を成形時の規正位置に突出させることで、仕切治具8の下面形成部材25及び側面形成部材26を成形時の規正位置に位置規正し、その後外郭2の底面と内型5の下面との間に発泡断熱壁3の厚さに対応する空間が形成されるように内型5に対して外郭2を相対的に下降させ、外郭2と内型5の間の空間に発泡断熱壁3を発泡成形するようにしているので、外郭2内への内型5の挿入配置及び形成後の型抜きを容易に作業性良く行うことができ、かつ仕切治具8はその下面形成部材25を単に昇降自在に支持しただけで昇降駆動手段を備えていない簡単な構成で良いため、品種切替に伴って各種内型5を構成する際に、単純に所要の仕切治具8を内型5に着脱するだけで、駆動源を接続したりする必要がないので、短時間に作業性良く着脱することができ、内型5のコスト低下と作業性の向上を図れるという顕著な効果が発揮される。
【0040】
なお、上記実施形態においては、下面形成部材25を昇降自在に支持した仕切治具8の構成例を示したが、場合によっては仕切治具8にシリンダ装置や駆動モータと送りねじ機構等の駆動手段を内蔵させ、この下面形成部材25の昇降動作と連動して両側面形成部材26を出退動作するように構成し、外郭2内に内型5を挿入した後、中子治具6の四周面形成部材14を成形時の規正位置に突出させるとともに、仕切治具8の下面形成部材25を駆動手段にて成形時の規正位置に位置規正し、その状態で外郭2と内型5の間の空間に発泡断熱壁3を発泡成形するようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の断熱箱体の製造方法及び装置は、最多数に分割された収容空間のそれぞれに対応する形状と大きさの複数の中子治具を備えた内型を基本とし、製造すべき断熱箱体の収容空間の配置状態に応じて所要の仕切治具を中子治具間に挿入配置して製造すべき断熱箱体に対応した内型を構成することで、各種仕様の断熱箱体に対応する内型を簡単な作業によって構成できるため、各種仕様の断熱箱体を生産性良く製造することができ、多品種小ロットの断熱箱体の製造に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の断熱箱体の製造装置の一実施形態において製造する、同一の外郭でかつ収容空間の配置状態が異なっている各種仕様の断熱箱体の横断面図。
【図2】同実施形態に用いられる中子治具と仕切治具を示す横断面図。
【図3】同実施形態における中子治具の概略構成を示し、(a)は四周面形成部材が退入した状態の説明図、(b)は四周面形成部材が成形時の所定位置に位置規正された状態の説明図。
【図4】同実施形態における仕切治具の概略構成を示す部分断面正面図。
【図5】同仕切治具における被押圧部の詳細構成を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図。
【図6】同実施形態における断熱箱体の製造工程の説明図。
【図7】同実施形態における断熱箱体の製造工程の説明図。
【図8】同実施形態における断熱箱体の製造工程の説明図。
【図9】同実施形態における断熱箱体の製造工程の説明図。
【図10】同実施形態における断熱箱体の製造工程の説明図。
【図11】断熱箱体の一例の斜視図。
【図12】(a)〜(d)は、同一の外郭でかつ収容空間の配置状態が異なっている各種仕様の断熱箱体の横断面図。
【符号の説明】
【0043】
1 断熱箱体
2 外郭
3 発泡断熱壁
4 収容空間
5 内型
6 中子治具
8 仕切治具
11 下面形成部材
14 四周面形成部材
22 支持枠
24 ガイド軸(ガイド部材)
25 下面形成部材
26 側面形成部材
27 定荷重ばね
28 スライドガイド(傾斜ガイド)
31 被押圧部
33 被押圧板
35 カム板
37 カム部材
38 押し上げ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭内に内型を配置し、外郭と内型の間の空間に断熱壁を発泡成形することで、外郭内に断熱壁で囲まれた1又は複数に分割された収容空間を形成する断熱箱体の製造方法であって、内型を、最多数に分割された収容空間のそれぞれに対応する形状と大きさの複数の中子治具と、中子治具間に必要に応じて挿入配置される仕切治具とを組み合わせて構成し、この内型と外郭との間の空間に断熱壁を発泡成形し、所望の形状と大きさの収容空間を有する断熱箱体を製造することを特徴とする断熱箱体の製造方法。
【請求項2】
中子治具は、下面形成部材と四周面形成部材を有するとともに、その四周面形成部材が成形時の規正位置から退入可能であり、仕切治具は、昇降可能に支持された下面形成部材と下面形成部材の昇降動作と連動して出退動作する両側面形成部材を有するとともに、下面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるとともにそれに連動して両側面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるものであり、外郭内に内型を挿入した後、中子治具の四周面形成部材を成形時の規正位置に突出させ、仕切治具の下面形成部材を成形時の規正位置に位置規正し、外郭と内型の間の空間に断熱壁を発泡成形することを特徴とする請求項1記載の断熱箱体の製造方法。
【請求項3】
中子治具は、下面形成部材と四周面形成部材を有するとともに、その四周面形成部材が成形時の規正位置から退入可能であり、仕切治具は、昇降自在に支持された下面形成部材と下面形成部材の昇降動作と連動して出退動作する両側面形成部材を有するとともに、被押圧部が中子治具の四周面形成部材にて押圧されると下面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるとともにそれに連動して両側面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるものであり、外郭内に内型を挿入し、さらに外郭底面にて仕切治具の下面形成部材を成形時の規正位置の近傍まで押し上げた後、中子治具の四周面形成部材を成形時の規正位置に突出させ、その後外郭底面と内型下面との間に断熱壁の厚さに対応する空間が形成されるように内型に対して外郭を相対的に下降させ、外郭と内型の間の空間に断熱壁を発泡成形することを特徴とする請求項1記載の断熱箱体の製造方法。
【請求項4】
外郭内に内型を配置し、外郭と内型の間の空間に断熱壁を発泡成形することで、外郭内に断熱壁で囲まれた1又は複数に分割された収容空間を形成する断熱箱体の製造装置であって、内型を構成する治具として、最多数に分割された収容空間のそれぞれに対応する形状と大きさの複数の中子治具と、中子治具間に必要に応じて挿入配置される仕切治具とを備え、製造する断熱箱体の収容空間の形状と大きさに応じて所要の仕切治具を挿入配置するようにしたことを特徴とする断熱箱体の製造装置。
【請求項5】
中子治具は、下面形成部材と四周面形成部材を備えるとともに、その四周面形成部材を成形時の規正位置から退入可能に構成したことを特徴とする請求項4記載の断熱箱体の製造装置。
【請求項6】
仕切治具は、昇降可能に支持された下面形成部材と、下面形成部材の昇降動作と連動して出退動作する両側面形成部材とを備え、下面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるとそれに連動して両側面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されることを特徴とする請求項5記載の断熱箱体の製造装置。
【請求項7】
仕切治具は、昇降自在に支持された下面形成部材と、下面形成部材の昇降動作と連動して出退動作する両側面形成部材と、中子治具の四周面形成部材にて押圧される被押圧部とを備え、成形時の規正位置に位置規正された中子治具の四周面形成部材にて被押圧部が押圧されると下面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されるとともにそれに連動して両側面形成部材が成形時の規正位置に位置規正されることを特徴とする請求項5記載の断熱
箱体の製造装置。
【請求項8】
仕切治具は、下面形成部材の押し上げ動作時に作用する荷重をほぼ一定に軽減する定荷重ばねを備えていることを特徴とする請求項7記載の断熱箱体の製造装置。
【請求項9】
仕切治具は、下方に向けて幅寸法が小さくなる倒立台形状の支持枠の下部に、下面形成部材に連結されたガイド部材が昇降自在に支持されるとともに、ガイド部材の上端と支持枠の上部との間に定荷重ばねが介装され、支持枠の両側に設けれた傾斜ガイドに沿って昇降自在に側面形成部材が支持されるとともに側面形成部材の下端が下面形成部材上に摺動自在に支持された構造であることを特徴とする請求項8記載の断熱箱体の製造装置。
【請求項10】
被押圧部は、支持枠の両面から突出するように付勢された被押圧板を備え、支持枠に、被押圧板に固定されたカム板とこのカム板に係合可能にガイド部材の上端部に設けられたカム部材とから成る押し上げ機構が設けられていることを特徴とする請求項9記載の断熱箱体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−90488(P2009−90488A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261003(P2007−261003)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000208503)大和冷機工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】