説明

断熱耐火サンドイッチパネル及びその製造方法

【課題】軽量で、断熱性及び耐火性に優れ、製造コストが低減された断熱耐火サンドイッチパネルを提供する。また、軽量で、断熱性及び耐火性に優れ、製造コストが低減された断熱耐火サンドイッチパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】断熱耐火サンドイッチパネル100は、表面材102と、表面材102と対向して設けられる裏面材104と、表面材102と裏面材104との間に設けられる、無機層106と、少なくとも1層の有機層108と、を備え、有機層108は、無機層106に接して固化成形されたフェノールウレタン樹脂を含む。断熱耐火サンドイッチパネル100の製造方法は、裏面材104に無機層106を一体化させる工程と、無機層106に接してフェノールウレタン樹脂を注入発泡させ、有機層108を固化成形する工程と、有機層108に表面材102を一体化させる工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱耐火サンドイッチパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋、ビル等の建築物の外壁材等として、断熱性及び耐火性を有するパネルが用いられる。
【0003】
この種のパネルとして、金属製の表面材、裏面材間に、フェノールフォーム等を用いた有機層、及び石膏等を用いた無機層が設けられたサンドイッチパネルが知られている。
【0004】
サンドイッチパネルには、あらかじめ成形された有機ボードを有機層として用いるものと、フェノールフォーム等の原液を注入、充填させて有機層とするものとがある。
【0005】
例えば、あらかじめ成形された有機ボードを有機層として用いるサンドイッチパネルとして、特許文献1には、金属材からなる表面材、裏面材間に、難燃有機系プラスチックフォーム等のボード状成形体と、無機ボードと、を備えるサンドイッチパネルが開示されている。また、フェノールフォーム等の原液を注入、充填させて有機層とするサンドイッチパネルとして、特許文献2には、鉄板等の不燃性基材からなる表面材、裏面材間に、レゾール型フェノールフォームを注入、充填させた有機層と、無機ボードと、を一体成形したものを備えるサンドイッチパネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−132102号公報
【特許文献2】特開平7−048915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のサンドイッチパネルにおいては、あらかじめ成形された有機ボードを有機層として用いるため、製造工程において、有機ボード原板を所定寸法に切断し、表面材と裏面材との間に積層接着する必要があり、製造工程が複雑となっていた。また、切断加工する際に、有機ボードの端材が生じていた。
【0008】
また、特許文献2に記載のサンドイッチパネルにおいては、製造工程で有機層を一体形成するため、先述の問題は生じない。しかし、成形材として、保形性及び耐火性を補うために、レゾール型フェノールフォームからなる有機層に、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーの混入が必要となる場合があった。それにより、サンドイッチパネルが高重量化し、また、サンドイッチパネルの製造工程が複雑になるとともに、製造コストが増大していた。加えて、有機層に用いられるレゾール型フェノールフォームの発泡のむらを低減するために、レゾール型フェノールフォームの密度を50〜300Kg/mと高密度にする必要があり、サンドイッチパネルがさらに高重量化する場合があった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、軽量で、断熱性及び耐火性に優れ、製造コストが低減された断熱耐火サンドイッチパネルを提供することを目的とする。また本発明は、軽量で、断熱性及び耐火性に優れ、製造コストが低減された断熱耐火サンドイッチパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る断熱耐火サンドイッチパネルは、表面材と、前記表面材と対向して設けられる裏面材と、前記表面材と前記裏面材との間に設けられる、無機層と、少なくとも1層の有機層と、を備え、前記有機層は、前記無機層に接して固化成形されたフェノールウレタン樹脂を含む、ことを特徴とする。
【0011】
前記有機層は、前記表面材と前記無機層との間に1層設けられてもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る断熱耐火サンドイッチパネルの製造方法は、裏面材に無機層を一体化させる工程と、前記無機層に接してフェノールウレタン樹脂を注入発泡させ、有機層を固化成形する工程と、前記有機層に表面材を一体化させる工程と、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽量で、断熱性及び耐火性に優れ、製造コストが低減された断熱耐火サンドイッチパネルを提供することができる。また、軽量で、断熱性及び耐火性に優れ、製造コストが低減された断熱耐火サンドイッチパネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態である断熱耐火サンドイッチパネルの構造を示す模式斜視図である。
【図2】断熱耐火サンドイッチパネルを示す、図1のX−X断面線に沿って示した模式断面図である。
【図3】(a),(b),(c)ともに、本発明の一実施形態である断熱耐火サンドイッチパネルの製造工程の一工程を示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態である断熱耐火サンドイッチパネルの構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態に係る断熱耐火サンドイッチパネルを、図面を参照して説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る断熱耐火サンドイッチパネル100は、裏面材104と、無機層106と、有機層108と、表面材102と、を積層した構成からなる。
【0017】
表面材102は、薄板状体からなり、例えば、長尺方向の長さが250〜1200cm、短尺方向の長さが60〜100cmの薄板状体から構成される。表面材102の材料は、例えば、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属、又はこれらの組み合わせからなる合金等である。表面材102は、例えば、カラーガルバリウム鋼板、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板等の各種鋼板であってもよい。例えば、本実施形態においては、カラーガルバリウム鋼板が用いられる。表面材102は、プレス形成、押出形成、ロール形成等により成形される。表面材102の厚さは、例えば、0.5〜1.0mmである。
表面材102は、断熱耐火サンドイッチパネル100に所定の曲げ強度を与えるとともに、断熱耐火サンドイッチパネル100を外気、雨、風、雪等から保護し、耐候性と耐衝撃性を向上させる役割を果たす。
【0018】
裏面材104は、表面材102と断熱耐火サンドイッチパネル100の表裏面を構成し、その間に無機層106と、有機層108とが積層形成される。裏面材104は、薄板状体から構成され、例えば、長尺方向の長さが250〜1200cm、短尺方向の長さが60〜100cmの薄板状体から構成される。その材質、成形方法、及び厚さは、表面材102の大きさ、材質、成形方法、及び厚さと同等である。
裏面材104は、表面材102と同様に、断熱耐火サンドイッチパネル100に曲げ強度を与える。
【0019】
無機層106は、表面材102と裏面材104との間の、裏面材104側に形成されている。無機層106は、接着、又は接合金具(図示せず)等で固定して、裏面材104と一体化することが好ましい。無機層106の材料には、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ロックウールボート、パーライトセメント板、スレート板等が用いられる。無機層106の厚さは、適宜選択されるが、軽量化及び経済性の観点から、例えば、7〜21mmが好ましい。
無機層106は難燃性であるため、表面材102側又は裏面材104側からの燃焼の進行を遮断することができる。これにより、耐火性を有する断熱耐火サンドイッチパネル100が実現する。
【0020】
有機層108は、表面材102と裏面材104との間の、表面材102側に形成されている。有機層108の上面には、接着、又は接合金具(図示せず)等により、表面材102が取り付けられている。これにより、裏面材104,無機層106,有機層108,表面材102とを積層してなる断熱耐火サンドイッチパネル100としての一体化が図られる。
【0021】
以下、断熱耐火サンドイッチパネル100のうち、有機層108を構成する材料(原料、添加剤)、その形成方法、及び成形後の性状について詳述する。
【0022】
有機層108は、本実施形態では、フェノールウレタン樹脂で形成されている。フェノールウレタン樹脂は、原料として、フェノール樹脂系ポリオールとポリイソシアネート成分とが用いられる。フェノールウレタン樹脂は、フェノール樹脂系ポリオールとポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られる。
【0023】
有機層108に用いられるフェノールウレタン樹脂の原料であるフェノール樹脂系ポリオールは、ノボラック型フェノール樹脂であっても、レゾール型フェノール樹脂であってもよい。フェノール樹脂系ポリオールの原料には、フェノールの他、アルキルフェノール(クレゾール、エチルフェノール、キシレノール等)、ハロゲン化フェノール(m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール等)、多価フェノール(レゾルシノール、ピロカテコール等)、ビスフェノール(4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン等)等のフェノール類が用いられる。
【0024】
有機層108に用いられるフェノールウレタン樹脂の原料であるポリイソシアネート成分には、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が用いられる。例えば、本実施形態においては、ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−Diphenylmethane diisocyanate、2,4’−Diphenylmethane diisocyanate、又は4,4’−Diphenylmethane diisocyanateと2,4’−Diphenylmethane diisocyanateとの混合物)が用いられる。
【0025】
有機層108に用いられるフェノールウレタン樹脂の調製においては、適宜、発泡剤、樹脂化触媒、泡化触媒、整泡剤、難燃剤、起泡剤、増粘剤、減粘剤、硬化剤等が用いられる。フェノールウレタン樹脂の調製においては、フェノール樹脂系ポリオール、ポリイソシアネート成分、発泡剤、樹脂化触媒、泡化触媒、整泡剤、難燃剤、起泡剤、増粘剤、減粘剤、硬化剤等から任意に選択されるものを混合し、撹拌する等の工程が含まれてもよい。
【0026】
有機層108に用いられるフェノールウレタン樹脂は、後述するように、注入用金型114で周囲が囲まれた枠内の無機層106の上面に注入発泡されることにより成形される。フェノールウレタン樹脂を注入後、例えば30℃〜60℃で、例えば10〜20分程度、静置させることで、成形が完了する。
有機層108に用いられるフェノールウレタン樹脂は、注入後の保形性に優れるため、有機層108に、保形性を補うための無機フィラーを混入させる必要がない。無機フィラーの原料費がかからないことから、断熱耐火サンドイッチパネル100の製造コストを低減させることができる。また、無機フィラーを混入させる工程を省略することができることから、断熱耐火サンドイッチパネル100の製造工程を単純化させることができ、製造コストを低減させることができる。
【0027】
有機層108に用いられるフェノールウレタン樹脂の成形後の密度は、例えば、40〜60Kg/mである。本実施形態におけるフェノールウレタン樹脂を用いることで、成形前のフェノールウレタン樹脂の密度が低い場合でも、発泡のむらが低減され、成形後のフェノールウレタン樹脂の密度のむらが低減される。さらに、成形前のフェノールウレタン樹脂の密度を低くすることで、成形後の該フェノールウレタン樹脂の密度を低くすることができる。これにより、有機層108を軽量化することができ、断熱耐火サンドイッチパネル100全体の軽量化が図られる。
【0028】
有機層108に用いられるフェノールウレタン樹脂の成形後の熱伝導率初期値は、例えば、0.022〜0.025W/m・Kである。これにより、優れた断熱性を有する断熱耐火サンドイッチパネル100が実現する。
【0029】
有機層108に用いられる成形後のフェノールウレタン樹脂は、JISA1321に規定される難燃3級試験に合格している。これにより、耐火性に優れた断熱耐火サンドイッチパネル100が実現する。また、本実施形態におけるフェノールウレタン樹脂は、耐火性に優れるため、有機層108に、耐火性を補うための無機フィラーを混入させる必要がない。無機フィラーの原料費がかからないことから、断熱耐火サンドイッチパネル100の耐火性を維持しつつ、製造コストを低減させることができる。また、無機フィラーを混入させる工程を省略することができることから、断熱耐火サンドイッチパネル100の製造工程を単純化させることができ、製造コストを低減させることができる。
【0030】
以上述べたように、注入発泡による固化成形に適した有機層を備え、軽量であるとともに、断熱性及び耐火性に優れる断熱耐火サンドイッチパネルを、製造コストを低減させつつ実現することができる。
【0031】
以下、断熱耐火サンドイッチパネル100の製造工程の一実施形態について、図3各図に沿って説明する。
【0032】
まず、台150上に載置された裏面材104上に無機層106を接着等により一体形成させる(図3(a))。次に、裏面材104と無機層106とを一体化させた物(以下、半製品という)の長尺方向に沿った両側端に、注入用金型114a,114bを取り付ける。この注入用金型114は、114aと114bとからなり、半製品と、有機層108との間に、短尺方向のずらし幅を与える。注入用金型114で囲まれた枠内の無機層106の上面に、上方に設けられた注入用ノズル116を用いて、その層厚がほぼ均一になるように、フェノールウレタン樹脂を注入する(図3(b))。フェノールウレタン樹脂は、図3(b)に破線で示したように、注入用金型114で囲まれた枠内の容積に対して、例えば5%程度充填するよう注入される。その後、例えば30℃〜60℃で、例えば10〜20分間程度、静置することで、フェノールウレタン樹脂を発泡固化させて有機層108を成形させる。さらに、注入用金型114を取り外した後に固化した有機層108の上面に表面材102を接着する(図3(c))。この表面材102の短尺方向の幅は、有機層108の短尺方向の幅よりも長いため、上述したずらし幅とにより、断熱耐火サンドイッチパネル100の長尺方向に沿った両側端には、凹凸部109が形成される。この凹凸部109は、断熱耐火サンドイッチパネル100を連結する際のジョイント部として機能する。
【0033】
なお、半製品を他で製作し、台150上に搬入、載置することで、台150上での有機層108の成形作業の省工程化を図ることもできる。また、裏面材104と無機層106との一体化、有機層108と表面材102との一体化は、上述した接着の他、接合金具等を用いることによっても実現することができる。
【0034】
このようにして、断熱耐火サンドイッチパネル100を製造することができる。この製造工程においては、有機層108は注入発泡により固化成形される。このため、あらかじめ成形された有機ボードを切断加工する工程を含まず、断熱耐火サンドイッチパネル100の製造工程を単純化させることができる。また、あらかじめ成形された有機ボードを切断加工する工程を含まないため、有機層108に生じ得る端材の量を低減でき、有機層108の一部が廃棄される可能性を低減できる。その結果、断熱耐火サンドイッチパネル100の製造コストを低減させることができる。また、該製造工程においては、有機層108に用いられるフェノールウレタン樹脂の発泡のむらが低減されることから、成形後のフェノールウレタン樹脂の密度のむらが低減される。さらには、フェノールウレタン樹脂の注入量又は注入箇所を変更することで、有機層108の厚さを容易に制御することができる。
【0035】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。例えば、本実施形態においては、図2に示したように、表面材102と無機層106との間に、有機層108が1層設けられている形態について説明したが、図4に示すように、有機層が2層設けられていてもよい。この場合、無機層106は、同図に示したように、有機層110と有機層112との間に挟まれるように設ければよい。
【0036】
また、本実施形態においては、図2に示されるように、表面材102、裏面材104、無機層106、及び有機層108が、短尺方向にずらし幅を有するように積層されているが、このずらし幅は適宜選択される。また、表面材102、裏面材104、無機層106、及び有機層108が、長尺方向にずらし幅を有するように積層されていてもよい。さらには、表面材102、裏面材104、無機層106、及び有機層108が、長尺方向又は短尺方向にずらし幅を有することなく、積層されていてもよい。
【0037】
また、半製品に、枠材で支持された表面材102を被せて内部に注入空間を形成し、その注入空間にフェノールウレタン樹脂を注入し、発泡させることで、有機層108を成形してもよい。
【符号の説明】
【0038】
100 断熱耐火サンドイッチパネル
102 表面材
104 裏面材
106 無機層
108 有機層
109 凹凸部
110 有機層
112 有機層
114 注入用金型
116 注入用ノズル
120 断熱耐火サンドイッチパネル
150 台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面材と、
前記表面材と対向して設けられる裏面材と、
前記表面材と前記裏面材との間に設けられる、無機層と、少なくとも1層の有機層と、
を備え、
前記有機層は、前記無機層に接して固化成形されたフェノールウレタン樹脂を含む、
ことを特徴とする断熱耐火サンドイッチパネル。
【請求項2】
前記有機層は、前記表面材と前記無機層との間に1層設けられた、
ことを特徴とする請求項1に記載の断熱耐火サンドイッチパネル。
【請求項3】
裏面材に無機層を一体化させる工程と、
前記無機層に接してフェノールウレタン樹脂を注入発泡させ、有機層を固化成形する工程と、
前記有機層に表面材を一体化させる工程と、
を含む、
ことを特徴とする断熱耐火サンドイッチパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−132263(P2012−132263A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286665(P2010−286665)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(510338352)三楽ルーフシステム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】