説明

新生物特異的抗体を同定する方法及びその使用

本発明は、健常ドナーから、新生物に特異的である、抗体のようなポリペプチドを同定する方法、こうした方法を使用して同定されたポリペプチド、そして新生物の治療及び診断におけるそれらの使用を特色とする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、癌診断及び治療の分野、そしてより具体的には、哺乳動物、例えば、ヒトにおける新生物の診断、検出、モニタリング及び治療において有用な、抗体のようなポリペプチドの、健常ドナーからの同定に関する。
【0002】
米国において、毎年百万をはるかに超える個体が癌と診断されている。医学分野における最近の進歩は、癌患者の生存の比率を著しく改良しているが、今もなお多数の癌関連死は、腫瘍の早期診断により防がれるかもしれない。従って、最初の診断時に、憂慮すべき数の患者が、すでに疾患の後期段階に到達している。
【0003】
結腸直腸癌に関しては、疾患が広がりそして末期段階に達するまで腫瘍はしばしば検出されないので、通常、全ての症例の50%で予後が不良である。明らかに、新生物(例えば、胃腺癌、結腸直腸腺癌、肺腺癌、膵臓の腺癌)の早期そして改良された検出及び治療が必要であり、このことは新生物を治療する機会を増加させ、それにより長期生存のための改良された予後を導くであろう。
【0004】
発明の要旨
健常ドナーに由来する細胞を使用し、我々は新生物細胞に特異的なエピトープと反応するポリペプチドのクラスを発見した。これらのポリペプチドは優秀な診断道具であるのみでなく、それらが結合する新生物細胞のアポトーシスも誘導することが可能である。この後者の特性は、多くの現存する療法の副作用を欠く、新生物疾患のための治療を結果として生じる。加えて、健常ドナーが、新生物特異的ポリペプチドを発現する細胞を宿すことが可能であるという我々の発見は、癌のような新生物の診断及び治療に使用することが可能であるポリペプチドを同定する方法において、健常ドナーに由来する細胞及び組織の新規使用を提供する。
【0005】
従って、第1の側面において、本発明は、新生物細胞へ特異的に結合し、そして非新生物細胞へは結合しない、単離されたポリペプチド、例えば、モノクローナル抗体のような抗体を同定するための方法を特色とする。この方法は、(1)健常ドナー、例えば、ヒトに由来する単離された細胞を提供し、(2)細胞により産生されたポリペプチドを単離し、そして(3)ポリペプチドが新生物細胞へ特異的に結合するか、そして非新生物細胞へは結合しないかどうかを決定する工程を包含する。
【0006】
第1の側面の望ましい態様において、新生物細胞は神経芽腫細胞ではない。他の望ましい態様において、工程(1)はまた、例えば、単離された細胞とミエローマ又はヘテロミエローマ細胞を融合することにより、単離された細胞を不死化することを含み、そして工程(3)は、新生物細胞及び非新生物細胞とポリペプチドを接触させることが、新生物細胞においてアポトーシスを誘導するか、そして非新生物細胞においては誘導しないかどうかを決定することを含んでいる。第1の側面のさらに望ましい態様において、工程(3)は、新生物及び非新生物細胞とポリペプチドを接触させることが、新生物細胞の増殖を減少させ、そして非新生物細胞の増殖を減少させないかどうかを決定することを含んでいる。例えば、新生物細胞は、結腸の腺癌、散在型胃癌腫、膵臓の腺癌又は肺の腺癌のような癌腫であってもよい。加えて、抗体はIgMでも又はモノクローナル抗体であってもよい。さらに、工程(1)の単離された細胞は、リンパ球、例えば、脾臓、リンパ節あるいは血液に由来するリンパ球であってもよい。
【0007】
第2の側面において、本発明は、本発明の第1の側面の方法を使用して同定されたポリペプチドを発現する、単離された細胞を特色とする。
本発明の第3の側面は、配列番号1又は3のアミノ酸配列を包含する、精製されたポリペプチドを特色とし;本発明の第4の側面は、配列番号1及び3のアミノ酸配列を包含する、精製されたポリペプチドを特色とし;本発明の第5の側面は、配列番号5又は7のアミノ酸配列を包含する、精製されたポリペプチドを特色とし;本発明の第6の側面は、配列番号5及び7のアミノ酸配列を包含する、精製されたポリペプチドを特色とし;本発明の第7の側面は、配列番号1のアミノ酸31〜35、50〜66及び99〜107又は配列番号3のアミノ酸23〜33、49〜55及び88〜99を包含する精製されたポリペプチドを特色とし;そして本発明の第8の側面は、配列番号5のアミノ酸31〜35、50〜66及び99〜108又は配列番号7のアミノ酸23〜36、52〜58及び91〜101を包含する精製されたポリペプチドを特色とする。第3から第8の側面の望ましい態様において、ポリペプチドは抗体、例えば、モノクローナル抗体、又はそれらの機能性断片である。例えば、機能性断片は、V、V、F、F、Fab、Fab’及びF(ab’)から成る群より選択することができる。加えて、機能性断片は、配列番号1のアミノ酸31〜35、50〜66及び99〜107、配列番号3のアミノ酸23〜33、49〜55及び88〜99、配列番号5のアミノ酸31〜35、50〜66及び99〜108、又は配列番号7のアミノ酸23〜36、52〜58及び91〜101を包含することができ、そして望ましくは抗体のV鎖である。さらに、機能性断片は、結腸の腺癌、散在型胃癌腫、膵臓の腺癌及び/又は肺の腺癌へ特異的に結合することができるが、同一組織型の非新生物細胞へは結合することはできない。
【0008】
第9の側面において、本発明は、結腸の腺癌、散在型胃癌腫、膵臓の腺癌及び肺の腺癌へ特異的に結合するが、同一組織型の非新生物細胞へは結合しない、精製されたポリペプチドを特色とする。加えて、第9の側面のポリペプチドは、配列番号1及び/又は配列番号3の完全長配列と実質的に同一である(例えば、少なくとも80%)アミノ酸配列を包含する。例えば、ポリペプチドは、配列番号2又は4の完全長核酸配列と実質的に同一である核酸配列によりコードされたものであってもよい。本発明の第9の側面の望ましい態様において、ポリペプチドは、EPLC−272H(DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; German Collection of Microorganisms and Cell Cultures )受入番号ACC383)、Colo−699(DSMZ受入番号ACC196)、CACO−2(DSMZ受入番号ACC169、ATCC(American Type Culture Collection )受入番号HTB−37)、Colo−206F(DSMZ受入番号ACC21)、23132/87(DSMZ受入番号ACC201)、ASPC−1 (ATCC受入番号CRL−1682)、DU−145(DSMZ受入番号ACC261、ATCC受入番号HTB−81)及びBM1604(DSMZ受入番号ACC298)細胞へ特異的に結合する。
【0009】
本発明の第9の側面の他の望ましい態様において、ポリペプチドは新生物細胞においてアポトーシスを誘導するが、非新生物細胞においてはアポトーシスを誘導せず、あるいは、ポリペプチドは新生物細胞の増殖を減少させるが、非新生物細胞の増殖は減少させない。
【0010】
本発明の第10の側面は、結腸の腺癌、散在型胃癌腫、膵臓の腺癌及び肺の腺癌へ特異的に結合するが、同一組織型の非新生物細胞へは結合しない、精製されたポリペプチドを特色とする。加えて、第10の側面のポリペプチドは、配列番号5及び/又は配列番号7の完全長配列と実質的に同一である(例えば、少なくとも80%)アミノ酸配列を包含する。例えば、ポリペプチドは、配列番号6又は8の完全長核酸配列と実質的に同一である核酸配列によりコードされたものであってもよい。本発明の第10の側面の望ましい態様において、ポリペプチドは、Colo−699(DSMZ受入番号ACC196)、CACO−2(DSMZ受入番号ACC169、ATCC受入番号HTB−37)、23132/87(DSMZ受入番号ACC201)、DU−145(DSMZ受入番号ACC261、ATCC受入番号HTB−81)及びBM1604(DSMZ受入番号ACC298)細胞へ特異的に結合する。
【0011】
本発明の第10の側面の他の望ましい態様において、ポリペプチドは新生物細胞においてアポトーシスを誘導するが、非新生物細胞においてはアポトーシスを誘導せず、あるいは、ポリペプチドは新生物細胞の増殖を減少させるが、非新生物細胞の増殖は減少させない。
【0012】
本発明の第3から第10の側面の追加の望ましい態様において、ポリペプチドはまた、DSMZ寄託受入番号DSM ACC2624を有するNORM−1細胞株、又はDSMZ寄託受入番号DSM ACC2626を有するNORM−2細胞株によっても産生される。
【0013】
本発明の第11の側面は、配列番号2の配列を包含する、単離された核酸分子を特色とし;本発明の第12の側面は、配列番号4の配列を包含する、単離された核酸分子を特色とし;本発明の第13の側面は、配列番号6の配列を包含する、単離された核酸分子を特色とし;本発明の第14の側面は、配列番号8の配列を包含する、単離された核酸分子を特色とし;本発明の第15の側面は、配列番号2の核酸91〜105、148〜198及び295〜321又は配列番号4の核酸67〜99、145〜165及び262〜297を包含する、単離された核酸分子を特色とし;そして、本発明の第16の側面は、配列番号6の核酸91〜105、148〜198及び295〜324又は配列番号8の核酸67〜108、154〜174及び271〜303を包含する、単離された核酸分子を特色とする。望ましい態様において、本発明は、高度にストリンジェントな条件下、配列番号2、4、6又は8の配列、又はそれらの機能性断片へハイブリダイズする核酸分子を特色とする。他の望ましい態様において、第15の側面の核酸分子は、配列番号2の核酸327−357又は配列番号4の核酸291〜300を包含することができる。第17の側面において、本発明は、本発明の第11から第16の側面のいずれか一つの核酸配列を含むベクターを特色とする。本発明の第18の側面は、第17の側面のベクターを含む、単離された細胞を特色とする。
【0014】
第19の側面において、本発明は、本発明の第3から第8の側面のいずれか一つのポリペプチドを発現する単離された細胞を特色とする。第19の側面の望ましい態様において、単離された細胞は、ヒト細胞のような哺乳動物細胞である。第19の側面の他の望ましい態様において、細胞により発現されたポリペプチドは抗体、例えば、IgM抗体又はモノクローナル抗体である。
【0015】
第20の側面において、本発明は、本発明の第3から第8の側面のいずれか一つの精製されたポリペプチドを産生する方法を特色とする。この方法は、細胞と本発明の第17の側面のベクターを接触させ、そして細胞により発現されたポリペプチドを単離することを含んでいる。
【0016】
第21の側面において、本発明は、哺乳動物の新生物を診断する方法における、本発明の第3から第8の側面のいずれか一つの精製されたポリペプチドの使用を特色とする。この方法は、(a)哺乳動物に由来する細胞又は組織試料と、本発明の第3から第8の側面のいずれか一つの精製されたポリペプチドを接触させ、そして(b)精製されたポリペプチドが細胞へ結合するかどうかを検出する工程を含んでおり、ここにおいて細胞への精製されたポリペプチドの結合は、新生物を有する哺乳動物の指標である。本発明の第21の側面の望ましい態様において、哺乳動物はヒトである。第21の側面の別の望ましい態様において、ポリペプチドは抗体、例えば、モノクローナル抗体である。本発明の第21の側面のさらに望ましい態様において、ポリペプチドは放射性核種、蛍光マーカー、酵素、細胞毒素、サイトカインそして増殖阻害剤から成る群より選択される、検出可能な作用剤へコンジュゲートされている。加えて、検出可能な作用剤は、細胞のアポトーシスを誘導することが可能であってもよい。さらに、本発明の第21の側面で使用されるポリペプチドは、切断可能タンパク質精製タグのようなタンパク質精製タグへコンジュゲートすることができる。
【0017】
第22の側面において、本発明は、哺乳動物の増殖性障害を治療することにおける、本発明の3から8のいずれか一つの側面の精製されたポリペプチドの使用を特色とする。この方法は、細胞と本発明の3から8のいずれか一つの側面の精製されたポリペプチドを接触させる工程を含んでおり、ここにおいて、細胞への精製されたポリペプチドの結合は、細胞の増殖における減少を生じる。本発明の第22の側面の望ましい態様において、哺乳動物はヒトである。第22の側面の別の望ましい態様において、ポリペプチドは抗体である。第22の側面のさらに望ましい態様において、ポリペプチドは放射性核種、蛍光マーカー、酵素、細胞毒素、サイトカイン及び増殖阻害剤から成る群より選択される、検出可能な作用剤へコンジュゲートされている。加えて、この検出可能な作用剤は、細胞の細胞増殖を抑制することが可能であってもよい。他の望ましい態様において、本発明の第22の側面のポリペプチドは、切断可能タンパク質精製タグのようなタンパク質精製タグへコンジュゲートされている。
【0018】
第23の側面において、本発明は、薬学的に許容できる坦体中に、本発明の3から8のいずれか一つの側面の精製されたポリペプチドを含む医薬品を特色とし、そして第24の側面において、本発明は、本発明の3から8のいずれか一つの側面の精製されたポリペプチドを包含する診断剤を特色とする。
【0019】
他の望ましい側面において、本発明は、DSMZ受入番号DSM ACC2624又はDSM ACC2626を有する抗体産生細胞株、ならびにこれらの細胞株により産生された抗体を特色とする。
【0020】
本発明の第1の側面の追加の望ましい態様において、単離されたポリペプチドは以下の神経芽腫細胞株の細胞へは特異的に結合しない:LA−N−1及びLA−N−5(Juhl et al., MoI. Immunol. 27:957-964, 1990 );SK−N−SH(ATCC受入番号HTB−11);NMB−7(Cheung et al., Cancer Res. 45:2642-2649, 1985 );IMR−32(ATCC受入番号CCL−127);SH−SY5Y(Melino and Finazzi-Agro, Human Neuroblastoma 中: Recent Advances in Clinical and Genetic Analysis, 監修. Schwab, Tonini, and Benard, Harwood, Chur, Switzerland, pp. 55-71, 1993);又はSK−N−MC(ATCC受入番号HTB−10)。
【0021】
定義
「検出可能な作用剤」とは、検出を容易にするため、診断剤へ連結されている化合物を意味する。こうした「検出可能な作用剤」は、診断剤へ共有結合で又は非共有結合で連結することができる。加えて、連結は直接でもあるいは間接であってもよい。「検出可能な作用剤」の例には、タンパク質精製タグ、細胞毒素、酵素、常磁性標識、酵素基質、補因子、酵素阻害剤、色素、放射性核種、化学発光標識、蛍光マーカー、増殖阻害剤、サイトカイン、抗体及びビオチンが含まれる。
【0022】
「診断剤」とは、上記のアッセイのいずれか一つ、ならびに当該技術分野で標準である任意の他の方法を用いることにより、新生物細胞を検出するために使用することができる化合物を意味する。診断剤は、例えば、以下の細胞:EPLC−272H(DSMZ受入番号ACC383)、Colo−699(DSMZ受入番号ACC196)、CACO−2(ATCC受入番号HBT−37;DSMZ受入番号ACC169)、Colo−206F(DSMZ受入番号ACC21)、23132/87(DSMZ受入番号ACC201)、ASPC−1(ATCC受入番号CRL−1682)、DU−145(DSMZ受入番号ACC261、ATCC受入番号HTB−81)及びBM10604(DSMZ受入番号ACC298)、の少なくとも一つに特異的に結合するが、非新生物細胞へは結合しない抗体を含むことができる。加えて、診断剤は、結腸の腺癌、散在型胃癌腫、膵臓の腺癌及び/又は肺の腺癌へ特異的に結合することができるが、同一組織型の非新生物細胞へは結合できない。さらに、「診断剤」は、新生物細胞へ結合された時にのみ、細胞増殖の抑制、アポトーシスの誘導、又はその両方を行うことができるが、非新生物細胞へは結合しない。
【0023】
こうした「診断剤」で検出することができる新生物細胞の例には、胃腺癌、結腸直腸腺癌、扁平上皮肺癌、肺腺癌、膵臓の腺癌そして前立腺の腺癌が含まれる。さらに、「診断剤」は、例えば、ペプチド、ポリペプチド、合成有機分子、天然に存在する有機分子、核酸分子そしてこれらの成分、ならびに診断剤に共有結合で又は非共有結合で連結された一つまたはそれより多くの検出可能な作用剤を含むことができる。
【0024】
ポリペプチドに関して本明細書において使用される「機能性断片」とは、完全長ポリペプチドの少なくとも一つの生物学的活性を保持する断片を意味する。こうした生物学的活性の例は、抗原を特異的に結合する、アポトーシスを誘導する、及び/又は細胞増殖を抑制する能力である。例えば、機能性断片は結腸の腺癌、散在型胃癌腫、膵臓の腺癌及び/又は肺の腺癌へ特異的に結合することができるが、同一組織型の非新生物細胞へは結合できない。機能性断片の生物学的活性は、例えば、本明細書に記載したアッセイのいずれか一つを使用して決定することができる。
【0025】
抗体の機能性断片の例は、当業者には周知である、V、V、F、F、Fab、Fab’又はF(ab’)断片である(例えば、Huston et al., Cell Biophys. 22:189-224, 1993 ;及びHarlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., 1999 を参照されたい)。望ましくは、「機能性断片」は配列番号1、3、5又は7のアミノ酸配列の断片と実質的に同一である(例えば、3、4、5、10、15、20、15、30、50、75又は100の連続したアミノ酸)、アミノ酸配列を有する。より望ましい態様において、「機能性断片」は配列番号1、3、5又は7のアミノ酸配列の断片と同一である。こうした「機能性断片」は、配列番号1、3、5又は7の3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、15、30、50、75又は100の連続したアミノ酸を含んでいてもよいし、又は配列番号1、3、5又は7の全アミノ酸配列であってもよい。望ましい態様において、こうした断片は、NORM−1又はNORM−2抗体のV又はV領域の一つまたはそれより多くの補体決定領域(CDR)を包含する。例えば、機能性断片は、配列番号1のアミノ酸31〜35、50〜66及び/又は99〜107;配列番号3のアミノ酸23〜33、49〜55及び/又は88〜99;配列番号5のアミノ酸31〜35、50〜66及び/又は99〜108;又は配列番号7のアミノ酸23〜36、52〜58及び/又は91〜101を包含することができる。
【0026】
本明細書において使用される「健常ドナー」とは、悪性新生物が検出されない個体、例えば、ヒトを意味する。望ましい態様において、「健常ドナー」は新生物が検出されなかった個体である。例えば、「健常ドナー」は、悪性新生物を有しているとは診断されたことがないヒトであってもよい。
【0027】
「高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件」とは、例えば、約50%ホルムアミド、0.1mg/ml剪断サケ精子DNA、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、2XSSC(クエン酸ナトリウム緩衝液)、10%硫酸デキストラン中、およそ42℃でのハイブリダイゼーション、約2XSSC、1%SDS中、およそ65℃での最初の洗浄、続いての約0.1XSSC中、およそ65℃での二回目の洗浄、を意味する。もしくは、「高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件」は、約50%ホルムアミド、0.1mg/ml剪断サケ精子DNA、0.5%SDS、5XSSPE,1Xデンハート中、およそ42℃でのハイブリダイゼーション、続いての2XSSC、0.1%SDS中、室温での2回の洗浄、そして0.2XSSC、0.1%SDS中、55〜60℃間での2回の洗浄を含むことができる。
【0028】
本明細書において使用される「ハイブリドーマ」とは、活性化リンパ球のような正常細胞と新生物細胞(例えば、ミエローマ)との融合により人工的に作製された、何れかの細胞である。少なくとも二つの細胞の融合から生じるハイブリッド細胞は、免疫学的に適格性の親により産生されるものと同一のモノクローナル抗体又はT細胞生成物を産生することができる。加えて、これらの細胞は、新生物の親のように、不死である。
【0029】
本明細書において使用される「不死化」とは、一次細胞を不死細胞へ融合し、それにより、一次細胞のいくつかの特性(例えば、抗体産生)を保持するが、しかし無限に培養することが可能な細胞を得ることを意味する。不死化することができる一次細胞の例には、健常ドナーの脾臓、リンパ節、血液又は骨髄に由来する細胞が含まれる。望ましくは、一次細胞は、健常ドナーの脾臓又はリンパ節に由来するリンパ球である。不死細胞の例はミエローマ及びヘテロミエローマである。例えば、一次細胞の不死化のために望ましいヘテロミエローマは、HAB−1(Faller, et al., Br. J. Cancer 62:595-598, 1990 )、CB−F7(Delvig et al., Hum. Antibodies Hybridomas 6:42-46, 1995 )、K6H6B5(Delvig et al., Hum. Antibodies Hybridomas 6:42-46, 1995 )、H7NS.934(Delvig et al., Hum. Antibodies Hybridomas 6:42-46, 1995 )、SHM−D33(Bron et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3214-3217, 1984 )又はB6B11(Borisova et al., Vopr. Virusol 44:172-174, 1999 )であることができる。
【0030】
本明細書において使用される「細胞増殖を抑制する」とは、同一条件下、その型の細胞の細胞分裂の正常速度と比較して、細胞の細胞分裂の速度における減少を指す。細胞増殖の抑制は、当該技術分野で標準的な多くの方法、例えば、本明細書に記載されているMTT細胞増殖アッセイ、BrdU取り込み、そしてHチミジン取り込み、を使用してアッセイすることができる。こうしたアッセイは、例えば、Ausubel et al, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001 ;及びSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, N. Y., 2001 、に記載されている。望ましくは、細胞増殖の抑制は20%、40%、50%又は75%である。望ましい態様において、細胞増殖の抑制は80%、90%、95%あるいは細胞増殖の完全抑制さえでもある。
【0031】
本明細書において使用される「アポトーシスを誘導する」とは、当該技術分野で詳細に明らかにされている細胞中の特性の出現を指す(例えば、Wyllie et al., Br. J. Cancer 80 Suppl. 1:34-37, 1999; Kerr et al., Br. J. Cancer 26:239-257, 1972 、を参照されたい)。これらの特性には、膜小疱形成、DNA凝縮のような形態学的特性、ならびにF−アクチン含有、ミトコンドリア塊そして膜電位における変化を包含する。アポトーシスの誘導は、当該技術分野では標準の多くの方法、例えば、細胞死ELISA、TUNEL染色、DNA染色(例えば、Hoechst 33258)そして、アクリジンオレンジ、Mito Tracker Red(登録商標)染色(Molecular Probes,ユージーン,OR)及びAnnexin V(登録商標)染色(Becton Dickinson,NJ)のような多様な生体色素による染色、を使用してアッセイすることができる。本明細書において使用される「アポトーシスを誘導する」とは、同一条件下、対照細胞集団と比較した場合の、アポトーシスを起こしている細胞数の増加を指す。例えば、アポトーシスの増加は10%、20%、40%、50%又は75%であることができる。望ましい態様において、アポトーシスの誘導は、対照細胞集団で見られるものの2倍、3倍、10倍あるいは100倍を超えることさえある、アポトーシスの増加を生じる。
【0032】
本明細書において使用される「新生物細胞」とは、不適切な条件下、細胞分割を起こしている、アポトーシスを起こしていない、又はその両方である細胞を指す。例えば、「新生物細胞」は、対応する非新生物細胞が細胞分割を起こさない時に細胞分割を起こすことができ、又は、もしくは、「新生物細胞」は正常細胞周期チェックポイント制御へ応答することができない。
【0033】
本明細書において使用される「増殖性疾患」とは、細胞の異常増殖を生じる何らかの障害を指す。増殖性疾患の具体的例は、胃腺癌、結腸直腸腺癌、肺腺癌及び膵臓の腺癌のような、新生物の多様な型である。しかしながら、増殖性疾患はまた、トランスフォーミングウイルスに感染される細胞の結果であってもよい。
【0034】
本明細書において使用される「タンパク質精製タグ」とは、タンパク質の精製を助けるためにタンパク質へ共有結合で、あるいは非共有結合で加えられているペプチド、例えば、エピトープタグである。望ましくは、こうしたペプチドは、抗体又はビオチン又はアビジンのような別のペプチドへ高い親和性で結合する。市販品として入手可能なエピトープタグの例には、His−タグ、HA−タグ、FLAG(登録商標)−タグそしてc−Myc−タグが含まれる。しかしながら、抗体により認識されるいずれのエピトープもまたタンパク質精製タグとして使用することができる。例えば、Ausubel et ah, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001 ;及びSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., 2001 、を参照されたい。タンパク質精製タグは、例えば、酵素(例えば、トロンビン)あるいは化学物質(例えば、ブロモシアン)を使用することにより、タンパク質から切断することができる。
【0035】
ポリペプチド、例えば、抗体に関して、本明細書において使用される「特異的に結合する」そして「特異的に認識する」とは、等量の任意の他のタンパク質と比較して、特定のタンパク質、例えば、抗原に対するポリペプチドの増加した親和性を意味する。例えば、抗体、例えば、EPLC−272H(DSMZ受入番号ACC383)、Colo−699(DSMZ受入番号ACC196)、CACO−2(ATCC受入番号HBT−37;DSMZ受入番号ACC169)、Colo−206F(DSMZ受入番号ACC21)、23132/87(DSMZ受入番号ACC201)、ASPC−1(ATCC受入番号CRL−1682)、DU−145(DSMZ受入番号ACC261、ATCC受入番号HTB−81)及びBM10604(DSMZ受入番号ACC298)細胞の少なくとも一つへ特異的に結合する、NORM−1又はNORM−2ヒトモノクローナル抗体は、望ましくは、等量の関連抗原を含む任意の他の抗原に対するよりも、少なくとも2倍、5倍、10倍、30倍あるいは100倍を超えるその抗原に対する親和性を有している。別のポリペプチドへのポリペプチドの結合は、本明細書に記載されているように、あるいは当該技術分野におけるかなり多数の標準法、例えば、ウェスタン分析、ELISA又は免疫共沈降により決定することができる。
【0036】
「実質的に同一」とは、参照アミノ酸(例えば、配列番号1、3、5又は7の配列)又は核酸配列(例えば、配列番号2、4、6又は8の配列)又はそれらの断片と、少なくとも80%、85%、90%又は95%同一性を示すポリペプチド又は核酸を意味する。望ましい態様において、ポリペプチド又は核酸配列は、参照アミノ酸又は核酸配列と少なくとも98%、99%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%までも同一である。ポリペプチドについては、比較配列の長さは一般に少なくとも3、4、5、6、8、10又は15アミノ酸であり、そして望ましくは少なくとも20又は25の連続アミノ酸であろう。より望ましい態様において、比較配列の長さは少なくとも30、50、75、90又は95の連続アミノ酸、又は完全長アミノ酸配列でさえある。核酸については、比較配列の長さは一般に少なくとも9、10、12、15、18、20、24又は25の連続ヌクレオチドであり、そして望ましくは少なくとも30の連続ヌクレオチドであろう。より望ましい態様において、比較配列の長さは少なくとも50、75、150、225、270、280、285又は290連続ヌクレオチド、又は完全長ヌクレオチド配列でさえある。
【0037】
配列同一性は、デフォルト設定された配列分析ソフトウェアーを使用して測定することができる(例えば、Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705 の配列分析ソフトウェアーパッケージ)。こうしたソフトウェアーは、多様な置換、欠失そして他の修飾への相同性の程度を割り当てることにより、類似配列を一致させることができる。保存的置換は典型的には、以下のグループ内の置換を含んでいる:グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;そしてフェニルアラニン、チロシン。
【0038】
複数の配列もまた、ペアワイズアライメントモードを「slow」に設定し、ペアワイズアライメントパラメーターを10.0のオープンギャップペナルティー(open gap penalty)及び0.1のエックステンドギャップペナルティー(extend gap penalty)を含むように、ならびに類似性マトリックスを「blosum」に設定することにより、Clustal W(1.4)プログラム(European Molecular Biology Laboratory, Germany のJulie D. Thompson 及び Toby Gibson 、及びEuropean Bioinformatics Institute, Cambridge, UK,のDesmond Higgins 、により作製された)を使用して整列させることができる。加えて、マルチプルアライメントパラメーターは、10.0のオープンギャップペナルティーそして0.1のエックステンドギャップペナルティーを含むことができ、ならびに類似性マトリックスを「blosum」に、ディレイダイバージェント(delay divergent)を40%に、そしてギャップディスタンス(gap distance)を8に設定する。
【0039】
「精製された」又は「単離された」とは、それに天然に付随する他の成分から分離されたことを意味する。典型的には、天然に付随しているタンパク質、抗体及び天然に存在する有機分子を含まずに、重量で少なくとも50%である場合、あるいは核酸分子に関しては、生物体のゲノムにおける核酸分子の配列に天然に隣接する核酸配列を含んでいない場合、因子は「精製され」又は「単離され」ている。望ましくは、因子は重量で、少なくとも75%、より望ましくは、少なくとも90%、最も望ましくは、少なくとも99%純粋である。実質的に純粋な因子は、化学合成、天然源からの因子の分離、あるいは天然には因子を産生しない組換え宿主細胞における因子の産生により得ることができる。タンパク質、小胞及び細胞小器官は、Ausubel et at.(Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001 )により記載されているような標準技術を使用して、当業者は精製することができる。因子は、望ましくは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィー、光学密度、HPLC分析又はウェスタン分析を使用して測定された場合(Ausubel et ah, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001 )、出発材料の少なくとも2、5又は10倍は純粋である。望ましい精製法には、免疫沈降、イムノアフィニティークロマトグラフィー及びニッケルアフィニティーカラムのようなカラムクロマトグラフィー、磁気ビーズイムノアフィニティー精製、そしてプレート結合抗体によるパニングが含まれる。
【0040】
「ベクター」又は「発現ベクター」とは、発現系、核酸に基づいたシャトルビヒクル、核酸搬送に適応した核酸分子、又は自律性自己複製環状DNA(例えば、プラスミド)を意味する。ベクターが宿主細胞中に維持されている場合、ベクターは自律性構造として、宿主細胞のゲノム内に組み込まれて、又は宿主細胞の核又は細胞質中に維持されて、有糸分裂の間に細胞により安定して複製されることが可能である。
【0041】
本発明の他の特色及び利点は、以下の詳細な説明、図そして特許請求の範囲から明らかになるであろう。
詳細な説明
本発明は、健常ドナーからの細胞を使用して同定された、抗体のようなポリペプチド、そして新生物の治療及び診断におけるそれらの使用を特色とする。加えて、本発明は、健常ドナーから得られた細胞を使用した、新生物特異的ポリペプチドを同定する方法を特色とする。我々は、本発明の方法を使用して得た、そして多数の癌腫を特異的に認識する、二つのヒトモノクローナル抗体(NORM−1及びNORM−2)を特徴付けた。これらのモノクローナル抗体はこれらの新生物を認識するのみならず、細胞への結合したうえで、これらは新生物細胞のアポトーシスを誘導でき、それらの増殖を抑制でき、又はその両方さえも可能である。それ故、NORM−1及びNORM−2モノクローナル抗体、そしてこれらの抗体により認識される抗原に対して特異的である他の抗体又はそれらの断片は、新生物を診断するそして治療するための多様な方法において使用することができる。
【0042】
ヒトNORM−1(受入番号DSM ACC2624)及びNORM−2(受入番号DSM ACC2626)モノクローナル抗体を産生する細胞株は、ブタペスト条約の約定により、2003年11月6日に、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (“DSMZ” - Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Mascheroder Weg Ib, 38124 Braunschweig, Germany) へ寄託した。
【0043】
抗体及びポリペプチド
抗体は個体の健康を維持することにおいて必須の役割を果たしている。特に、抗体は血清に提示され、そして細菌、ウイルス及び毒素のような多様な病原体へ結合しそして除去することを助けている。抗体は2つの重鎖及び2つの軽鎖から構築されたY形状タンパク質構造から成っている。各鎖はモジュラー構成を有している:各軽鎖は2つのドメインから成っており、そして各重鎖は少なくとも4つのドメインを有している。抗原結合部位は、重鎖からの1つのドメイン(Vドメイン)及び軽鎖からの1つのドメイン(Vドメイン)から作り上げられている。実際、これらの2つのドメインを非共有結合か又はジスルフィド結合又はペプチドリンカーを経た共有結合で結合させて連結することにより、小さな抗原結合断片を調製することが可能である。抗原結合ドメインは、抗体の他のドメインよりもアミノ酸配列が可変性であり、そしてそれ故、定常(C)ドメインと対照的に、可変(V)ドメインと称される。抗体の定常ドメインは、補体溶解及び細胞媒介死滅のような、抗体エフェクター機構の引き金を引くことに寄与する。
【0044】
抗体は、遺伝子再構成を含むプロセスにおいてBリンパ球により作製される。これらの細胞の発育の間、可変ドメインをコードする遺伝子が遺伝子要素から組み立てられる。Vドメインの場合においては、3つの要素、未再構成V遺伝子、Dセグメント及びJセグメントが存在する。Vドメインの場合においては、2つの要素、未再構成V(Vラムダ又はVカッパ)遺伝子及びJ(Jラムダ又はJカッパ)セグメントが存在する。これらの遺伝子セグメントの無作為な組み合わせ、そして再構成されたV及びVドメインの無作為な組み合わせは、同等に多様な抗原の広範な多様性へ結合することが可能な抗体の広範なレパートリーを発生する。さらに、V及びV領域は各々、3つの補体決定領域(CDR)及び4つのフレームワーク領域(FR)を有する。FRは抗体の中軸であり、そしてCDRは抗原へ結合する、抗体の一部である。当業者は、同一種で産生された、多数の抗体のアミノ酸配列を比較することにより、抗体のFR及びCDR領域を決定することが可能である(例えば、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997 ;及びKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th edition, NIH Publication No. 91-3242, U.S. Department of Health and Human Services, 1991 、を参照されたい)。
【0045】
一般に、本発明の方法により同定されたポリペプチドは、EPLC−272H、Colo−699、CACO−2、Colo−206F、23132/87、ASPC−1、DU−145及びBM10604細胞の何れか一つへ結合するが、非新生物細胞へは結合しない剤である。ポリペプチドは、ヒトモノクローナル抗体(例えば、NORM−1又はNORM−2)のような抗体、又はそれらの機能性断片であることができる。全般的には、本発明の方法は、新生物組織及び新生物細胞の両方へ排他的に結合するが、非新生物組織又は細胞へは結合しないポリペプチドを同定するために使用することが可能である。本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドはまた、それが結合した新生物細胞のアポトーシスを誘導できるが、非新生物細胞では誘導できず、又は、あるいは、ポリペプチドはそれが結合した新生物細胞の増殖を抑制できるが、非新生物細胞では抑制できない。望ましくは、本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドは、同時に新生物細胞のアポトーシスを誘導しそして増殖を抑制することが可能であるが、非新生物細胞では可能ではない。それ故、こうしたポリペプチドは、哺乳動物における癌の検出、モニタリング、予防及び治療に有用である。本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドを使用する治療又は診断を受け入れられる癌の例には、結腸直腸癌腫、卵巣癌腫、扁平上皮細胞肺癌腫、小細胞肺癌腫、小葉及び腺管の乳癌腫、黒色腫、乳癌、肺腺癌のような肺癌、胃(gastric)癌、膵臓腺癌のような膵臓癌、神経膠腫、肉腫、胃腸癌、脳腫瘍、食道扁平上皮細胞癌腫のような食道癌、胃(stomach)癌、骨肉腫、線維肉腫、膀胱癌、前立腺腺癌のような前立腺癌、腎臓癌、卵巣癌、精巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、子宮腺癌、ホジキン病、リンパ腫及び白血病が含まれる。本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドは、胃腺癌、結腸直腸腺癌、肺腺癌及び膵臓の腺癌の検出及び治療に特に有用である。
【0046】
新生物特異的ポリペプチドの同定
一般に、新生物細胞へ特異的に結合するが、非新生物細胞へは結合しないポリペプチド(例えば、NORM−1又はNORM−2モノクローナル抗体)を発現するハイブリドーマは、健常ドナーの脾臓、リンパ節、血液又は骨髄から得られたリンパ球とミエローマ又はヘテロミエローマ細胞株を融合することにより発生させることができる。典型的には、健常ドナーから外科的に除去されたリンパ節又は脾臓の一部からリンパ球を得る。例えば、脾臓の一部は、脾臓破裂を生じた事故により、健常ドナーから除去することができる。しかしながら、リンパ球はまた、健常ドナーの血液又は骨髄からも得ることができる。例えば、リンパ球は、密度勾配遠心分離によって、健常ドナーの血液から単離することができる。従って、本発明の方法は、癌患者から細胞又は組織を得ることなく、健常ドナーのリンパ球からの新生物特異的ヒトモノクローナル抗体の発生を許容する。
【0047】
特に、リンパ球を機械的手段により細胞懸濁液として調製することができ、続いて細胞融合が生じる条件下、ミエローマ又はヘテロミエローマ細胞株と例えば、1:2又は1:3の比で融合する。例えば、ヒトリンパ球とマウスミエローマNS−0の融合により発生させたヘテロミエローマ細胞株HAB−1(Faller, et al., Br. J. Cancer 62:595-598, 1990 )をこの目的に使用することができる。他のヘテロミエローマ細胞株の例には、例えば、CB−F7(Delvig et al., Hum. Antibodies Hybridomas 6:42-46, 1995 )、K6H6B5(Delvig et al., Hum. Antibodies Hybridomas 6:42-46, 1995 )、H7NS.934(Delvig et al., Hum. Antibodies Hybridomas 6:42-46, 1995 )、SHM−D33(Bron et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3214-3217, 1984 )及びB6B11(Borisova et al, Vopr. Virusol. 44: 172-174, 1999 )が含まれる。健常ドナーに由来するリンパ球とヘテロミエローマ細胞株の融合に引き続いて、抗体産生ハイブリドーマ又はトリオーマ(trioma)を発生させる。
【0048】
細胞融合は、例えば、40%ポリエチレングリコール(例えば、PEG1500)の使用のような、当該技術分野において周知の何れかの方法により達成することができる。ハイブリドーマは、HAT(ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン)含有培地中で培養することができ、そして4週後、ELISAアッセイを使用して、抗体産生について上清をスクリーニングすることができる。次ぎに陽性クローンを、商業的に入手可能な腫瘍細胞株を使用する、付着阻害及び結合アッセイで試験することができる。陽性クローンはさらに、新生物及び正常組織の免疫ペルオキシダーゼ染色を使用して試験することができる。従って、クローンは新生物細胞との反応性そして正常細胞とは反応しないことに基づいて選択することができる。抗体は、例えば、Vollmers et al. (Oncology Reports 5:35-40, 1998) により記載されているように、イオン交換、疎水性交互作用、サイズ排除又はアフィニティークロマトグラフィー、ならびにこれらの方法の組み合わせの使用で、大量培養から精製することができる。抗体産生に引き続いて、トリオーマにより産生された抗体の、追加の機能性及び免疫組織化学的試験を実施することができる。例えば、トリオーマにより産生された抗体は、非処理対照細胞と比較した、アポトーシスを誘導する、細胞増殖を抑制する、又はその両方の能力を試験することができる。抗体はまた、非新生物細胞と比較した、新生物細胞株EPLC−272H、Colo−699、CACO−2、Colo−206F、23132/87、ASPC−1、DU−145、BM1604へ特異的に結合する能力も試験することができる。
【0049】
新生物特異的ポリペプチドの産生
ひとたび構築すれば、ハイブリドーマは数ヶ月の間、標準及び大量培養(フラスコ、ミニパーム(miniPerm)、発酵槽その他)での増殖及び抗体産生において一般的に安定である。従って、本発明の方法に従って同定されたポリペプチドを発現するハイブリドーマは、ポリペプチドの小規模、大規模又は商業的製造のための、当該技術分野において周知の何れかの方法で使用することが可能である。抗体産生のレベルは、典型的には、フラスコでは0.01〜0.1mg/mLの間、そしてミニパームでは0.1〜0.5mg/mLの間の範囲である。
【0050】
加えて、ひとたびポリペプチドが本発明の方法を使用して同定されたら、ポリペプチド(例えば、抗体)又はその断片はまた、大腸菌又は酵母(例えば、S.セレビジエ)、又は哺乳動物細胞株のような宿主細胞での発現によっても産生することができる。ポリペプチドの機能性断片もまた、例えば、組換え法を使用する直接合成により発生させることができる。これらの方法は当該技術分野において標準である。例えば、核酸配列はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅することができる。PCR技術は当該技術分野において周知であり、例えば、米国特許第4,683,195号に記載されている。標準法そして本明細書において記載したように、ハイブリドーマ又はトリオーマにより発現されたモノクローナル抗体の配列を得ることができ、そして抗体の機能性断片を増幅することができる。例えば、全RNAを、腫瘍特異的モノクローナル抗体を発現しているハイブリドーマから単離することができる。次ぎにcDNAは逆転写酵素を使用してRNAから発生させることができ、そして重および軽鎖の可変領域の機能性断片を含有するcDNAは、PCRを使用して増幅することができる。PCR生成物は次ぎに、精製しそして発現ベクター、例えば、プラスミド又はウイルスベクター内へクローン化することができる。多くの標準ベクターが入手可能であり、適切なベクターの選択は、例えば、ベクター内へ挿入されるDNAのサイズ及びベクターでトランスフェクトされるべき宿主細胞に依存するであろう。
【0051】
本発明の方法を使用して同定された核酸分子は、多様な標準ベクター及び宿主細胞で発現させることができる。宿主細胞中で活性である任意のプロモーターを、核酸分子を発現させるために使用することができる。それにもかかわらず、哺乳動物細胞における抗体又は抗体の断片の発現は、免疫グロブリン遺伝子プロモーターの使用が望ましい。宿主細胞内へベクターを導入する方法は、当該技術分野において標準であり、電気穿孔、合成脂質ポリマー(例えば、リポフェクチン(Lipofectin)(商標))の使用、塩化カルシウムの使用、そしてDEAEデキストランの使用が含まれる。こうした方法はまた、例えば、Ausubel et ah, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001 ;及びSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., 2001 、にも記載されている。
【0052】
ポリペプチドのアミノ酸変異体(variant)の単離
抗体、例えば、NORM−1又はNORM−2抗体のような、本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするDNA内へ適切なヌクレオチド変化を導入するか、又は所望のポリペプチドのインビトロ合成により調製することが可能である。こうした変異体は、例えば、NORM−1又はNORM−2抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、挿入又は置換を包含する。もし、最終構築物が所望の特性、例えば、新生物細胞のアポトーシスを誘導するが、非新生物細胞では誘導しない能力、又は新生物細胞の増殖を抑制するが、非新生物細胞では抑制しない能力、を所有するとすれば、最終構築物へ到達するために、欠失、挿入又は置換の任意の組み合わせを作ることが可能である。アミノ酸変化はまた、糖鎖形成部位の数又は位置を変化させる、膜繋留特性を改変する、又はタンパク分解性切断に対する感受性を修飾するような、抗体の翻訳後プロセスを改変することもできる。
【0053】
抗体のような、ポリペプチドのアミノ酸配列変異体の設計においては、変異部位の位置及び変異の性質は、修飾されるべき特性(単数または複数種類)に依存するであろう。変異のための部位は、個々に又は連続して、例えば、最初に保存的アミノ酸選択物で置換し、そして次ぎに達成された結果に依存してより過激な選択をするが、又は標的残基を欠失させることにより、修飾することが可能である。
【0054】
ポリペプチド中の変異誘発のための、特定の残基又は領域の同定に有用な方法は「アラニンスキャニング変異誘発」と称され、例えば、Cunningham and Wells (Science 244:1081-1085, 1989) に記載されている。ここでは、標的残基の残基又はグループを同定し(例えば、arg、asp、his、lys及びgluのような荷電残基)、中性又は陰性に荷電したアミノ酸(最も望ましくはアラニン又はフェニルアラニン)で置き換えて、アミノ酸と細胞内又は外部の周囲水性環境との相互作用に影響を及ぼす。次ぎに、置換部位に、又は置換部位の代わりにさらなる又は他の変異を導入することにより、置換に対して機能的感受性を示しているドメインをさらに正確にする。従って、アミノ酸配列変異を導入するための部位が前もって決定されている限り、変異の性質は前もって決定される必要はない。例えば、既定の部位での変異の遂行を最適にするため、アラニンスキャニング又は無作為変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現された変異体を、例えば、新生物細胞のアポトーシスを誘導し、そして非新生物細胞では誘導しない、又は新生物細胞の増殖を抑制し、そして非新生物細胞では抑制しない能力でスクリーニングする。
【0055】
置換的変異誘発に最も重要な部位には、ポリペプチドの生物学的活性に影響を及ぼすと同定された部位が含まれる。これらの部位、特に、少なくとも3つの他の全く同じに保存された部位の配列内に位置する部位、を比較的保存的様式で置換することができる。例えば、alaはval、leu又はileで置換できる;argはlys、gln又はasnで置換できる;asnはgln、his、lys又はargで置換できる;aspはgluで置換できる;cysはserで置換できる;glnはasnで置換できる;gluはaspで置換できる;glyはproで置換できる;hisはasn,gln、lys又はargで置換できる;ileはleu、val、met、ala又はpheで置換できる;leuはile、val、met、ala又はpheで置換できる;lysはarg、gln又はasnで置換できる;metはleu、phe又はileで置換できる;pheはleu、val、ile又はalaで置換できる;proはglyで置換できる;serはthrで置換できる;thrはserで置換できる;trpはtyrで置換できる;tyrはtrp、phe、thr又はserで置換できる;そしてvalはile、leu、met又はpheで置換できる。
【0056】
抗体と検出可能な作用剤とのコンジュゲーション
もし望むなら、抗体(例えば、NORM−1又はNORM−2のようなモノクローナル抗体)又はそれらの断片のような、本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドは、ポリペプチドの精製、ならびにそれを必要とする哺乳動物における新生物の診断、モニタリング又は治療を容易にするため、検出可能な作用剤へ連結することができる。適した検出可能な作用剤の選択は、ポリペプチドの意図された使用に依存し、そして当業者には明らかであろう。本発明に従った検出可能な作用剤には、例えば、タンパク質精製タグ、細胞毒素、酵素、常磁性標識、酵素基質、補因子、酵素阻害剤、色素、放射性核種、化学発光標識、蛍光マーカー、増殖阻害剤及びビオチンが含まれる。
【0057】
タンパク質精製タグは、ポリペプチドの単離を容易にするため、本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドへコンジュゲートすることができる。使用することが可能なタグの例には、His−タグ、HA−タグ、FLAG(登録商標)−タグそしてc−Myc−タグが含まれる。タグを精製後に除去することが可能なように、酵素的又は化学的切断部位をポリペプチド及びタグ部分の間に工学処理することができる。適した毒素には、ジフテリア毒素、シュードモナス内毒素A、リシン及びコレラ毒素が含まれる。適した酵素標識の例には、リンゴ酸ヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが含まれる。適した放射性同位元素標識の例には、H、125I、131I、32P、35S及び14Cが含まれる。望ましくは、放射性同位元素は10〜5,000kev範囲、より望ましくは、100〜500kevで放射するであろう。常磁性同位元素もまたポリペプチドへコンジュゲートし、癌の診断及び治療のためにインビボで使用することができる。こうしたコンジュゲートされた抗体の使用は、インビボ核磁気共鳴イメージングのためである。こうした方法は当該技術分野で周知である(例えば、Schaefer et al., JACC 14:472-480, 1989; Shreve et al., Magn. Reson. Med. 3:336-340, 1986; Wolf, Physiol. Chem. Phys. Med. NMR 16:93-95, 1984; Wesbey et al., Physiol. Chem. Phys. Med. NMR 16:145-155, 1984; およびRunge et al., Invest. Radiol. 19:408-415, 1984 、を参照されたい)。もしくは、放射性標識抗体はまた、標識抗体が結合しているいずれかの組織の外科的除去を含む、放射性免疫ガイド手術(RIGS)にも使用することができる。従って、標識抗体は非新生物組織から新生物組織を区別することにより、新生物組織へ外科医を導く。腫瘍イメージングに有用な放射性標識は、好ましくは短寿命放射性同位元素である。スカンジウム−47(3.4日)、ガリウム−67(2.8日)、ガリウム−68(68分)、テクネチウム−99m(6時間)、インジウム−111(3.2日)及びラジウム−223(11.4日)のような1時間から11.4日の範囲の半減期を有する多様な放射活性金属が、抗体とのコンジュゲーションに利用可能であり、その中で、ガリウム−67、テクネチウム−99m及びインジウム−111はガンマカメライメージングに好ましく、ガリウム−68はポジトロン放出断層撮影に好ましく、そしてスカンジウム−47及びラジウム−223(及び他のアルファ放出放射性核種)は腫瘍治療に好ましい。
【0058】
適した蛍光マーカーの例には、フルオレセイン、イソチオシアレート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、オフタルデヒド及びフルオレスカミンが含まれる。化学発光マーカーの例には、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識及びエクオリン標識が含まれる。当業者は、本発明に従って用いることができる、他の適した標識を承知しているであろう。モノクローナル抗体又はそれらの断片のような、本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドへの、これらの検出可能な作用剤のコンジュゲーションは、当該技術分野において周知の標準技術を使用して達成することが可能である。典型的な抗体コンジュゲーション技術は、Kennedy et al. (Clin. Chim. Acta 70, 1-31, 1976) 及びSchurs et al. (Clin. Chim. Acta 81, 1-40 , 1977) に記載されており、例えば、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸法、ジマレイミド法、m−マレイミドベンジル−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル法が含まれる。抗体は、例えば、米国特許第4,444,744号に記載されている、当該技術分野において周知の、いくつかの技術のいずれかにより放射性標識することができる。全てのこれらの方法は、本明細書において援用される。
【0059】
本発明の治療の全ての方法において、同一又は異なった腫瘍又は腫瘍細胞型に付随する、異なった抗原又は同一の抗原の異なったエピトープに特異的な、異なった又は同一の標識ポリペプチドの混合物を使用することができることが理解できる。こうした組み合わせは、特定の場合に検出、位置限定及び/又は療法を増強することができ、そしてまた、一つ以上の新生物又は新生物の型のための、広範なスクリーニングの範囲も増加させることが可能である。
【0060】
抗腫瘍剤へコンジュゲートされたポリペプチド
本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドは、新生物細胞のアポトーシスを誘導し、新生物細胞の細胞増殖を抑制し、又はその両方を行うことができるが、ポリペプチドをさらに新生物細胞を殺す、又はそれらの増殖を抑制する剤へコンジュゲートすることができる。抗体又はそれらの断片のようなポリペプチドの標的化能力は、腫瘍への細胞毒性又は抗増殖剤の搬送を生じ、腫瘍の破壊を増強する。それ故、ポリペプチドはまた、ヒト患者のような哺乳動物において、新生物の治療及び予防のために使用することができる。ポリペプチドへ連結された細胞毒性剤は、ポリペプチドが結合した腫瘍細胞又は腫瘍を破壊する又は損傷する、いずれかの剤であることができる。こうした剤の例には、化学療法剤又は放射性同位元素、プロドラッグを活性化する酵素、又はサイトカインが含まれる。
【0061】
適した化学療法剤は当業者には周知であり、例えば、タキソール、ミトラマイシン、デオキシコ−ホルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、インターフェロン(特にIFN−アルファ)、エトプシド、テニポシド、アントラサイクリン(例えば、ダウノマイシン及びドキソルブシン)、メトトレキセート、ビンデシン、ネオカルジノスタチン、シス−プラチン、クロラムブシル、シトシンアラビノシド、5−フルオロウリジン、メルファラン、リシン及びカリチェアミシンが含まれる。化学療法剤は、当該技術分野において周知の慣用法を使用して抗体へコンジュゲートすることができる。
【0062】
細胞毒性剤としての使用に適した放射性同位元素もまた当業者には周知であり、例えば、131I又は211Atのようなアスタチンが含まれる。これらの同位元素は、当該技術分野において周知の慣用技術を使用して、共有結合か又は非共有結合で、ポリペプチドへ結合させることができる。
【0063】
もしくは、細胞毒性剤はまた、プロドラッグを活性化させる、酵素であってもよい。このことは、腫瘍部位で、不活性プロドラッグをその活性な細胞毒性形への変換を可能にし、「抗体指示酵素プロドラッグ療法」(ADEPT)と称されている。従って、ポリペプチド−酵素コンジュゲートを患者に投与し、そして治療されるべき腫瘍の領域での位置限定を可能にすることができる。次ぎに、細胞毒性薬剤への変換が、位置限定した酵素の影響下、治療されるべき腫瘍の領域に位置限定するように、患者へプロドラッグを投与する。酵素の例は細菌カルボキシペプチダーゼG2(CPG2)であり、その使用は例えば、WO88/07378に記載されている。もし望むなら、ポリペプチド−酵素コンジュゲートを、新生物の近傍ではない体の領域からのクリアランスを促進するように、WO89/00427の教示に従って修飾することができる。ポリペプチド−酵素コンジュゲートはまた、例えば、腫瘍の近傍ではない体の領域に、酵素を不活性化する追加の成分を提供することにより、WO89/00427に従って使用することもできる。
【0064】
別の代替物として、本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドへコンジュゲートされた細胞毒性剤はまた、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)のようなサイトカインであってもよい。サイトカインが、他の組織に影響することなく、腫瘍を損傷させることを又は腫瘍の破壊を仲介するように、ポリペプチドはサイトカインを腫瘍へ標的化する。サイトカインは、慣用組換えDNA技術を使用して、DNAレベルでポリペプチドへ融合させることができる。
【0065】
加えて、細胞増殖のいずれかの抑制剤、例えば、ゲニステイン、タモキシフェン又はシクロホスファミド、を本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドとコンジュゲートすることができる。
【0066】
用量
本発明の療法的方法に関し、本発明のポリペプチドの患者への投与が、特定の投与様式、用量又は投与の頻度に限定されることは意図されない;本発明は、筋肉内、静脈内、腹腔内、小胞内、関節内、病巣内、皮下、又は新生物細胞のアポトーシスを誘導することにより、腫瘍細胞の増殖を抑制することにより、又はその両方により、新生物細胞の数を減少させるのに適切な用量を提供するために十分な何れかの他の経路を含む、全ての投与様式を企図する。化合物(単数または複数種類)は、単回用量又は複数回用量で患者に投与することができる。複数回用量が投与される場合、用量を、例えば、1日、2日、1週、2週又は1ヶ月ずつ、互いに分割することができる。例えば、ポリペプチド(例えば、NORM−1又はNORM−2のようなモノクローナル抗体)は週に1回、例えば、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20又はそれより多くの週の間、投与することができる。いずれの特定の対象に対しても、個々の必要性及び組成物を投与している又は投与を監督している人の専門的判断に従って、特定の投与計画を、期間を通して調節しなければならないことを理解すべきである。正確な量は、使用されたポリペプチド、ポリペプチドが結合するリガンドの腫瘍表面上の密度、そしてポリペプチドのクリアランスの速度に依存して変化するであろう。例えば、もし、より低い用量が十分な抗新生物活性を提供しないならば、NORM−1又はNORM−2抗体の投薬量を増加させることが可能である。逆に、もし、新生物が患者から除去されたら、NORM−1又はNORM−2抗体の投薬量を減少させることが可能である。
【0067】
主治医が最終的に適切な量及び投与計画を決定するであろうが、モノクローナル抗体又はそれらの断片のようなポリペプチドの治療的に有効量は、例えば、約0.1mg〜50mg/kg体重/日又は0.70mg〜350mg/kg体重/週、の範囲であることができる。望ましくは、療法的有効量は、約0.50mg〜20.0mg/kgの範囲、より望ましくは、約0.50mg〜15.0mg/kgの範囲であり、例えば、約0.2、0.3、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、7.0、8.0、8.5、9.0、10.0、11.0、12.0、13.0、14.0又は15.0mg/kg体重を、毎日、1日おき、又は週に2回投与する。
【0068】
例えば、適した用量とは、上記のように投与された場合、ポリペプチドがアポトーシスを誘導することが可能であり、そしてそれが基礎(即ち、未治療)レベルより少なくとも20%は超えている量である。一般に、適切な投薬量及び治療計画は、療法的及び/又は予防的利点を提供するのに十分な量で活性化合物(単数または複数種類)を提供する。こうした応答は非治療患者と比較して、治療患者における改良された臨床的結果(例えば、より頻繁な寛解、完全に又は部分的に、又はより長い疾患のない生存)を確立することによりモニターすることが可能である。この発明に従うと、ポリペプチドの投与は、当該技術分野において周知のいずれかの標準アッセイにより測定されるように、未治療対照のアポトーシスと比較して、少なくとも20%、40%、50%あるいは75%以上も、新生物細胞アポトーシスを誘導することが可能である。より望ましくは、アポトーシスは、非治療対照のアポトーシスよりも少なくとも80%、90%、95%あるいは100%以上でさえも誘導される。もしくは、ポリペプチドの投与は、当該技術分野において周知のいずれかの標準アッセイにより測定されるように、未治療対照の増殖と比較して、少なくとも20%、40%、50%あるいは75%以下に新生物細胞増殖を抑制することが可能である。より望ましくは、増殖は、非治療対照の増殖よりも少なくとも80%、90%、95%あるいは100%以下でさえも抑制される。最も望ましくは、ポリペプチドは、非治療対照細胞と比較して、同時に新生物細胞の増殖を抑制しそしてアポトーシスを誘導することが可能である。こうした応答は、本明細書記載されている技術を含む、当該技術分野において周知のいずれかの標準技術によりモニターすることが可能である。一般に、医薬組成物のため、用量中に存在する抗体の量は、宿主のkg当たり約25μg〜5mgの範囲である。適した用量サイズは患者のサイズで変化するであろうが、典型的には約0.1mL〜約5mLの範囲であろう。
【0069】
医薬組成物の製剤
本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドは、標的領域へ到達した時に抗新生物特性を有する濃度を生じる、いずれかの適した手段により投与することができる。ポリペプチドは、適切な量で、いずれかの適した坦体物質に含ませることができ、一般的には、組成物の総重量の1〜95重量%の量で存在する。組成物は、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内又は腹腔内)投与経路に適している剤形で提供することができる。医薬組成物は、慣用薬務に従って製剤することができる(例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.), ed. A.R. Gennaro, Lippincott, Williams & Wilkins, 2000 及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New York 、を参照されたい)。
【0070】
医薬組成物は、慣用的な、無毒の薬学的に許容できる坦体及び補助剤を含有する、剤形、製剤中で、又は適した搬送装置又は移植物を経て、注射、注入又は移植(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内など)により非経口的に投与することができる。もし新生物細胞が血液と直接接触していれば(例えば、白血病)、又はもし腫瘍が血流からのみ到達可能であるとすれば、静脈内(I.V.)経路を使用することができる。腫瘍が、胸膜腔又は腹腔のような限定された空間で成長している場合、ポリペプチドは血流内よりむしろ腔内へ直接投与することができることがわかっている。こうした組成物の製剤及び調製は、医薬製剤の当業者にはよく知られている。製剤は、例えば、Remington (The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.), ed. A.R. Gennaro, Lippincott, Williams & Wilkins, 2000 及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New York) に見出すことが可能である。
【0071】
癌進行の診断及びモニタリング
上に議論したように、本発明の側面は、哺乳動物、好ましくはヒト患者において、新生物を検出する又は診断する方法に関する。典型的には、本発明のスクリーニング法を使用して同定されたポリペプチドの投与がアポトーシスの誘導又は増殖の減少を起こすいずれの新生物も、本明細書に記載した診断法に適用できる。
【0072】
本発明のスクリーニング法を使用して同定されたポリペプチドは、新生物又は新生物細胞へ特異的に結合するが、正常細胞又は組織へは結合しないので特に有用である。従って、こうしたポリペプチドは腫瘍内の新生物細胞へは結合できるが、正常な周囲組織へは結合せず、それ故、哺乳動物中の新生物の検出、治療又はその両方を可能にしている。例えば、患者中にポリペプチドにより結合される細胞が残存していないことを検証することにより、あるいは、患者から除去された腫瘍が、ポリペプチドにより結合されない細胞により完全に囲まれていることを検証することにより、バイオプシーが全腫瘍を除去したかどうかを決定するため、本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドを使用することができる。
【0073】
検出の感度を改良するため、複数の新生物マーカーを既定の試料又は個体内でアッセイすることができる。従って、異なった抗原に特異的な抗体又は機能性断片のようなポリペプチドを、単一アッセイ内に、又は複数アッセイに組み合わせることができる。さらに、新生物に特異的な複数のプライマー又はプローブを同時に使用することができる。マーカーの選択は、最適感度を生じる組み合わせを決定するための日常的な実験に基づくことができる。
【0074】
新生物のインビトロ検出
一般に、哺乳動物における新生物の診断は、哺乳動物(例えば、ヒト患者)から生物学的試料を得、こうした試料と本発明の方法を使用して同定されたポリペプチド(例えば、NORM−1又はNORM−2のようなモノクローナル抗体)を接触させ、試験試料中の、癌と診断されている哺乳動物からの又は新生物を有しないことが知られている別の患者からの健康な組織に由来する非新生物細胞に対応する対照試料と比較した、新生物細胞に対するポリペプチドの反応性又は結合のレベルを検出することを含んでいる。それ故、本発明の方法は、さもないと検出不能である、初期段階腫瘍又は転移の検出に特に有用である。従って、患者の新生物を診断することに加え、本発明の方法はまた、哺乳動物の新生物の進行をモニターするためにも使用することができる。それ故、本明細書に記載したポリペプチドは、新生物進行のためのマーカーとして使用することができる。この目的には、新生物の診断のために使用される下記のアッセイを、時間を通して実施することができ、反応性ポリペプチド(単数または複数種類)のレベルの変化を評価する。例えば、アッセイを24〜72時間毎に、6ヶ月〜1年の期間にわたって実施し、そしてその後必要に応じて実施することができる。一般に、検出された結合ポリペプチドのレベルが時間を通して増加している患者においては、新生物が進行している。対照的に、結合されたポリペプチドのレベルが一定に維持されるか又は時間とともに減少する場合、新生物は進行していない。もしくは、上で指摘したように、本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドはまた、腫瘍が哺乳動物から完全に除去されたかどうかを決定するため、外科的介入による腫瘍切除後に、哺乳動物における腫瘍細胞の存在を決定するためにも使用することができる。
【0075】
望ましくは、ポリペプチドを、ポリペプチド反応性の検出又は測定を容易にする検出可能な作用剤へ連結する。生物学的試料は、新生物細胞を含有することができる任意の生物学的材料であり、例えば、血液、唾液、組織、血清、粘液、痰、尿又は涙が含まれる。生物学的試料はまた組織切片(それは固定された組織であってもよい)、新鮮な組織、又は凍結組織であってもよい。対照試料よりも、生物学的試料で抗体の反応性のレベルにおける増加があるならば、試料が得られた哺乳動物において新生物が検出される又は診断される。こうした増加は、対照レベルを超えること少なくとも10%、20%、30%、40%、50%あるいは50%以上である。結合又は反応性のレベルは、当該技術分野において周知のいずれかの方法により決定することが可能であり、それは以下により詳細に記載されている。
【0076】
インビトロ診断アッセイ
本発明のポリペプチドを使用する新生物の診断は、試料中のポリペプチドマーカーを検出するための結合剤を使用する、当業者には周知の任意の方法により実施することができる。例えば、Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, N. Y., 1999 、を参照されたい。例えば、ポリペプチドは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロッティング、又は組織試料中の腫瘍細胞のインサイツ検出に使用することができる。例えば、ELISAアッセイは典型的には、生物学的試料中の腫瘍細胞へ結合するための、固体支持体上に固定された、抗体のようなポリペプチドの使用を含んでいる。結合された腫瘍細胞は次ぎに、レポーター基を含み、そして抗体/腫瘍細胞複合体へ特異的に結合する検出試薬を使用して検出することができる。こうした検出試薬には、例えば、抗免疫グロブリン、プロテインG、プロテインA又はレクチンのような、抗体へ特異的に結合する任意の結合剤を包含する。もしくは、競合アッセイを利用することができ、ここで、抗体はポリペプチドであり、そしてここで、抗体が特異的である抗原をレポーター基で標識し、そして、抗体と生物学的試料とのインキュベーション後に、固定化された抗体へ結合させる。試料の成分が、抗体への標識抗原の結合を阻害する程度は、試料と固定化抗体の反応性の指標である。患者の新生物の診断はまた、二抗体サンドイッチアッセイによっても決定することができる。このアッセイは、試料中のポリペプチドが固定化抗体へ結合されるように、最初に固体支持体(通常マイクロタイタープレートのウェル)上に固定化されている抗体と試料を接触させる。次ぎに未結合試料を固定化ポリペプチド−抗体複合体から除去し、レポーター基を含有する検出試薬(好ましくは、ポリペプチド上の異なった部位へ結合可能な第二抗体)を加える。次ぎに固体支持体上に結合されて残った検出試薬の量を、具体的レポーター基に適した方法を使用して決定する。例えば、胃腺癌のような新生物の存在又は不存在を決定するには、固体支持体に結合されて残った検出試薬から検出された信号を、前もって決定されたカットオフ値に対応する信号と一般に比較する。新生物の検出のためのカットオフ値とは、抗体と、新生物を有しない患者からの試料をインキュベートした場合に得られた信号の平均値である。
【0077】
レポーター基の検出のために用いる方法は、レポーター基の性質に依存する。放射活性基に対しては、シンチレーション計数又はオートラジオグラフィー法を使用することができる。分光学的方法は、色素、化学発光及び蛍光基を検出するために使用することができる。ビオチンは、異なったレポーター基(通常、放射活性又は蛍光基、又は酵素)と共役されたアビジンを使用して検出することができる。酵素レポーター基は一般に、基質の添加(一般に、規定された一定期間)、続いての、反応生成物の分光学的又は他の分析により検出することができる。
【0078】
本発明の本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドはまた、例えば、免疫蛍光又は免疫電子顕微鏡による、腫瘍細胞のインサイツ検出又は定量的決定のため、組織学的にも用いることができる。インサイツ検出又は決定は、患者から組織検体を取りだし、そして検体中の任意の腫瘍細胞へ標識抗体を結合させることにより達成する。こうした手法の使用は、試料中の新生物細胞の検出を可能にするのみでなく、またそれらの空間的分布の決定も可能にする。別の例として、生物学的試料は、スライド上に新生物細胞を含む生物学的材料の塗抹であることも可能であり、生物学的材料中の新生物細胞の検出は、顕微鏡で塗抹を試験することにより、又はフルオサイトメトリーにより達成する。
【0079】
新生物のインビボ検出
もしくは、本発明の抗体はまた、新生物を検出するそして位置限定するために、インビボで使用することもできる。こうした方法は、検出可能な作用剤で標識されているそしてそれは例えば、米国特許第4,444,744号に記載されている、NORM−1又はNORM−2のような本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドを、哺乳動物、望ましくはヒト患者へ非経口で注射することを含むことができる。例えば、ポリペプチドは、薬学的に不活性な放射性同位元素で放射性標識し、そして患者へ投与することが可能である。放射性同位元素の活性は、フォトスキャニング装置を使用して哺乳動物中で検出することが可能であり、対照と比較した活性の増加は、新生物の検出及び位置限定を反映する。
【0080】
治療
哺乳動物における新生物の診断及びモニタリングに加え、本発明はまた、哺乳動物、望ましくはヒト患者において新生物を治療するための方法も特色とする。本方法は一般に、本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドの生物学的有効量を患者へ投与することを含んでいる。ポリペプチドは典型的には、クモ膜下腔内、皮下、粘膜下又は腔内注射による、ならびに静脈内又は動脈内注射のためのような、いずれかの投与経路を使用する注射手段により、哺乳動物へ投与する。従って、ポリペプチドを、例えば、患者の血流内への、NORM−1又はNORM−2のようなポリペプチドの静脈内注射により、全身的に注射することができ、又はもしくは、ポリペプチドを、新生物の部位へ又は新生物細胞の近傍の位置へ直接注射することも可能である。
【0081】
一般に、そして上で議論したように、本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドの新生物細胞への結合は、対照細胞と比較して、アポトーシスの誘導、細胞増殖の減少、又はその両方を生じる。もしくは、抗体はまた、補体経路も活性化することができ、それは最終的に細胞膜内へ穿刺される孔の原因となり、細胞死を生じる。
【0082】
もし望むなら、ポリペプチドはまた、上記のように薬剤又は毒素へコンジュゲートすることもできる。一度細胞表面へ結合されたら、コンジュゲートは細胞原形質内へ貪食され、そこで細胞酵素が切断し、そして、それ故、コンジュゲートから薬剤又は毒素が活性化又は遊離される。一度放出されたら、薬剤又は毒素は細胞を損傷し、そして不可逆的に細胞死を誘導する。放射性標識抗体に関しては、新生物細胞への結合、そして結果として起こる、細胞DNAから短距離での放射線の放出は、DNAに損傷を生成し、それ故次の複製ラウンドで細胞死を誘導する。例えば、新生物が対象において検出されそして位置限定された後、より高い用量の標識抗体、70kgの患者体重に基づくと、一般に131Iについて25〜250mCi、好ましくは用量当たり50nCi〜150mCi、を注射する。注射は、静脈内、動脈内、リンパ管内、クモ膜下腔内又は腔内であることができ、そして一回より多く反復することができる。いくつかの療法のためには、放射性標識ポリペプチド又はポリペプチド混合物の分割用量を、例えば、20〜120mCi(70kg患者)の範囲で、複数回投与するのが有利であり、従って、通常、正常組織への照射の比例した増加をもたらすことなく、新生物へより高い細胞殺傷用量を提供している。
【0083】
標識ポリペプチドを使用する療法は、第一の療法処置として有利に使用されるが、また他の抗新生物療法と組み合わせて(例えば、放射線及び化学療法)、そして外科手術の補助として使用することもできる。こうしたコンジュゲートされたポリペプチドの投与は、小さな転移が外科的に除去不可能である場合に特に有用である。
【0084】
ポリペプチドと他の抗新生物療法の組み合わせ
化学療法剤及び/又は放射線及び/又は新生物の外科的除去は、随意に本発明のいずれかの方法と組み合わせることが可能である。化学療法剤として使用可能な化合物のクラスには:アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然物及びそれらの誘導体、ホルモン及びステロイド(合成類似体を含んで)、及び合成品が含まれる。アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、エチルエニミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素及びトリアゼン)の例には、ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(シトキサン(商標))、イフォスファミド、メルファレン、クロランブシル、ピポブロマン、トリエチレン−メラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン及びテモゾロミドが含まれる。代謝拮抗剤(葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体及びアデノシンデアミナーゼ阻害剤を含んで)は、例えば、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビンリン酸、ペントスタチン及びゲムシタビンを含むことができる。天然物及びそれらの誘導体(ビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンホカイン及びエピポドフィロトキシンを含んで)もまた使用することができ、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、パクリタクセル(パクリタクセルはタキソール(商標)として商業的に入手可能である)、ミトラマイシン、デオキシコ−フォルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、インターフェロン(特にIFN−アルファ)、エトポシド及びテニポシドが含まれる。ホルモン及びステロイド(合成類似体を含んで)には、例えば、17−アルファ−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベステロール、テストステロン、プレドニソン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、タモキシフェン、メチルプレドニソロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン又はゾラデックスが含まれる。合成品(白金配位化合物のような無機の複合体を含んで)の例には、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミソール及びヘキサメチルメラミンが含まれる。
【0085】
これら化学療法剤のほとんどの、安全で有効な投与のための方法及び用量は当業者には周知である。加えて、これらの投与は標準文献に記載されている。例えば、化学療法剤の多くの投与は、その開示が本明細書において援用される“Physicians' Desk Reference” (PDR), 例えば1996年版(Medical Economics Company, Montvale, NJ. 07645-1742, USA) 、に記載されている。
【0086】
以下の実施例は、本発明を例示することを目的として提供されており、制限と解釈すべきではない。
【実施例】
【0087】
実施例1
材料及び方法
ハイブリドーマの産生
以下のように、HAB−1ヘテロミエローマへ融合することにより、健常ドナーから得られた脾臓リンパ球を不死化した:
HAB−1ヘテロミエローマ細胞を、添加物を含まないRPMI1640(PAA,ウィーン,オーストリア)で2回洗浄し、1500rpmで5分、細胞を遠心分離した。次ぎに脾臓リンパ球を、添加物を含まないRPMI1640で2回洗浄し、そしてこれらの細胞を1500rpmで5分、遠心分離した。HAB−1及びリンパ球の両方の細胞ペレットを10mlの添加物を含まないRPMI1640に再懸濁し、Neubauer細胞計数チャンバーで計数した。細胞を再び洗浄し、HAB−1細胞及びリンパ球を1:2から1:3の比で一緒に加え、それらを混合し、1500rpmで8分、混合物を遠心分離した。ポリエチレングリコール1500(PEG)を37℃に前もって温め、50mlチューブをわずかに回転させながら、ペレット上へPEGを注意深く滴加した。次ぎに、ペレットを穏やかに再懸濁し、そして37℃水浴中で正確に90秒、チューブを回転させた。PEGを除去するため、10mlピペットに満たした、添加物を含まないRPMI1640で2回細胞を洗浄し、1500rpmで5分、細胞を遠心分離した。24ウェルプレートの各ウェルに、HATサプリメント(PAA,ウィーン,オーストリア)及び10%ウシ胎児血清(FCS)、1%グルタミン及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補給した1mlのRPMI−1640を加えた。細胞ペレットはHATサプリメントを含むRPMI−1640に溶解し、1x10細胞を24ウェルプレートの各ウェルに加えた。次ぎに24ウェルプレートを、加湿した37℃のインキュベーター内に置き、毎週HATサプリメントを含むRPMI−1640を交換した。4〜6週間後、細胞培養物上清は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で抗体産生をスクリーニングした。
【0088】
特に、NORM−1及びNORM−2ヒトモノクローナル抗体を、上記の融合実験において、2人の健常ドナーに由来する2.5x10の脾臓リンパ球を使用することにより同定した。この融合から、理論的な250クローンから181クローンを、72%の融合頻度で得た。これら181クローンの内、IgM産生クローンの数は40であり(頻度=22%)、そしてこれら40クローンの内、9が腫瘍特異的IgM抗体を発現した(頻度=22%)。
【0089】
cDNA合成及びRT−PCR
NORM−1及びNORM−2抗体の配列を得るため、QiagenからのRNASEキットを使用し、トリオーマから全RNAを単離した。全RNAはまた、当該技術分野において標準の方法、例えば、Krenn et al. (Clin. Exp. Immunol. 115:168-175, 1999) により記載されている方法を使用しても調製することができる。NORM−1及びNORM−2を発現しているハイブリドーマ細胞株から得られた全RNAからのcDNA合成は、Gibco BRL(エッゲンスタイン,ドイツ)M−MLV逆転写酵素を製造元の説明書に従って使用し、5μgの全RNAで実施した。V及びV遺伝子の増幅は、1.75mM MgCl、0.4pMプライマー、200μMの各dNTP及び1U Taqポリメラーゼ(MBI Fermentas,ザンクト レオン・ロート,ドイツ)を含む25μl容量で実施した。PCR生成物は、以下のサイクルプロフィールを使用して増幅した:95℃で2分、続いて35サイクルの、94℃で30秒;65℃で30秒(VH3及びVH4プライマーに対し)、各々、VH1、VH2、VH5、VH6に対しては60℃そしてVLプライマーに対しては52℃;72℃で4分の最終伸長。
【0090】
抗体の配列決定
PCR生成物は、2%アガロース(Roth,カールスルーエ,ドイツ)を通したゲル電気泳動、続いてのJETSORBゲル抽出キット(Genomed,バート・オインハウゼン,ドイツ)を使用したPCR生成物のゲル抽出により精製した。PCR生成物は次ぎに、pCR−Script Amp SKクローニングキット(Stratagene,ハイデルベルク,ドイツ)を使用してクローン化した。DyeDeoxy終結サイクル配列決定キット(Applied BioSystems Inc.,ワイターシュタット,ドイツ)を使用して10の陽性クローンを配列決定し、ABIPrism373自動化DNAシクエンサーで分析した。T3及びT7プライマーを使用して両方の鎖を配列決定した。配列は、DNASIS for Windows配列比較ソフトウェアー及びGenBank及びIMGT/V−QUESTデータベースを使用して分析した。International Immunogenetics(“IMGT”)データベースがUniversite Montpellier, Montpellier, France のMarie-Paule Lefranc により統合された。
【0091】
パラフィン切片の免疫組織化学的染色
パラフィン包埋ヒト組織を切片となし(2μm)、除パラフィンし、そしてクエン酸(pH5.5)中、圧力釜で5分間加熱した。切片を、リン酸緩衝液(PBS)で希釈したウシ血清アルブミン(BSA 5mg/ml)を用い、室温で30分ブロックした。処理切片は次ぎに、異なったIgM抗体(10μg/ml)又は陽性対照抗体(抗サイトケラチン8抗体又は抗サイトケラチン7抗体、Dako,ハンブルグ,ドイツ,BSA/PBSで1:20に希釈)と、加湿インキュベーター中、37℃で2.5時間インキュベートした。切片をトリス/NaCl(3グラム トリス、40.5グラム NaClを5リットルの蒸留水に希釈し、HClでpHを7.4に調節)で3回洗浄し、続いて、30%ウサギ血清を含有するPBSに1:50で希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ヒトIgM抗体(ヒトIgM抗体に対して)、又は30%ヒトAB血漿を含有するPBSに1:50で希釈したウサギ抗マウスコンジュゲート(Dako,ハンブルグ,ドイツ)(陽性対照抗体に対して)と室温で1時間インキュベートした。トリス/NaClで3回洗浄後、組織切片をPBS中で10分インキュベートし、その後ジアミノベンジジン(0.05%)−過酸化水素(0.02%)(Sigma,タウフキルヒェン(ミュンヘン),ドイツ)を用いて、室温で別に10分染色した。反応を流水道水で停止し、切片をヘマトキシリンで対比染色した。グリセロール−ゼラチンでマウントした後、切片は光学顕微鏡を使用して分析した。
【0092】
腫瘍からの凍結切片の免疫組織化学的染色
凍結ヒト組織を切片化し(4μm)、アセトンで固定し、風乾しそしてトリス/NaCl(3グラム トリス、40.5グラム NaClを5リットルの蒸留水に希釈し、HClでpHを7.4に調節)で洗浄した。凍結切片は次ぎに、3%粉乳を含有するPBSを用い、室温で30分ブロックした。トリス/NaClで3回洗浄後、切片を、同一濃度のNORM−1又はNORM−2ヒトIgM抗体又は無関係のヒトモノクローナルIgM(Chrompure IgM,Dianova)、又はBSA/PBSで1:50で希釈したマウス抗サイトケラチン8抗体(Dako,ハンブルグ,ドイツ)と、室温で30分インキュベートした。切片をトリス/NaClで3回洗浄し、続いて第二抗体(ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ヒト抗体又はウサギ抗マウスコンジュゲート1:50)と室温で30分インキュベートした。トリス/NaClでの3回の洗浄及びPBS中での10分のインキュベーション後、切片をジアミノベンジジン(0.05%)−過酸化水素(0.02%)(Sigma,タウフキルヒェン(ミュンヘン),ドイツ)を用いて、室温で10分染色した。反応を流水道水で停止し、切片をヘマトキシリンで対比染色した。グリセロール−ゼラチンでマウントした後、切片は光学顕微鏡を使用して分析した。
【0093】
サイトスピン調製
接着性増殖細胞をトリプシン/EDTA(PAA,ウィーン,オーストリア)を加えることにより剥離させ、続いて加湿インキュベーター(37℃、5%CO)中で5分インキュベートし、そして1,500rpmで5分、遠心分離した。細胞を次ぎに10mlのRPMI−1640細胞培養培地(PAA,ウィーン,オーストリア)で2回洗浄した。細胞数を1x10細胞/mlの密度に調節した。この溶液から100μlを、サイトスピン遠心機(CYTOSPIN 2,シャンドン,UK)を用いて、50rpmで2分、顕微鏡スライド上へ遠心分離した。生じたサイトスピンを少なくとも2時間乾燥し、以下のように染色した。
【0094】
サイトスピンの免疫ペルオキシダーゼ染色
サイトスピンを少なくとも2時間室温で乾燥した。サイトスピンは次ぎに、アセトン中で10分固定した。固定したサイトスピンは室温で30分乾燥し、トリス/NaCl(3グラム トリス、40.5グラム NaClを5リットルの蒸留水に希釈し、HClでpHを7.4に調節)で3回洗浄し、そしてトリス/NaCl中に5分間置いた。サイトスピンは、3%粉乳を含んだPBS(サイトスピン当たり100μl)で15〜30分ブロックし、トリス/NaClで3回洗浄した。サイトスピンは、サイトスピン当たり100μlの一次抗体(例えば、0.5%BSA/PBS中、20μg/mlで;BSA/PBS中、1:50の抗サイトケラチン8;又は陰性対照としてRPMI 1640培地(PAA,ウィーン,オーストリア))と、加湿チャンバー中、室温で30分インキュベートした。インキュベーション後、サイトスピンをトリス/NaClで3回洗浄した。
【0095】
サイトスピンは次ぎに、サイトスピン当たり100μlの二次抗体含有溶液(70%PBS+30%ウサギ又はヒト血清+例えば、1:50ペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウス抗体、又は1:50ペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヒトIgM抗体;Dako,ハンブルグ,ドイツ)と、加湿チャンバー中、室温で30分インキュベートし、トリス/NaClで3回洗浄し、そしてPBS中に10分間置いた。サイトスピンは次ぎに、100μlの0.05%ジアミノベンジジン及び0.02%過酸化水素含有溶液(Sigma,タウフキルヒェン(ミュンヘン),ドイツ)中で10分インキュベートした。インキュベーション後、サイトスピンを蒸留HOで洗浄し、ヘマトキシリン染色溶液(Roth,カールスルーエ,ドイツ)に5分浸した。サイトスピンは次ぎに流水道水で15分すすぎ、蒸留HOで洗浄し、そして前もって温めたグリセロール−ゼラチンで被覆した。
【0096】
以下の実験は、上記の材料及び方法を使用して実行した。
実施例2
NORM−1又はNORM−2モノクローナル抗体を発現する細胞株の発生
上記のように、我々は、健常ドナーの脾臓から得られたリンパ球とヘテロミエローマ細胞株を融合することにより、NORM−1及びNORM−2モノクローナル抗体発現ハイブリドーマを得た。生じた細胞は、三つの細胞の融合であるので、トリオーマとして知られているハイブリドーマの型である。正常Bリンパ球と同様、このトリオーマは抗体を産生する能力を有している。抗体の特異性は、トリオーマを発生させるために使用した、患者からの本来のリンパ球の特異性により決定される。
【0097】
特に、単一細胞懸濁液を脾臓の機械的破壊により調製し、続いて直後に融合するか又は冷凍保存した。不死化のためには、健常ドナーから誘導された2.5x10の脾臓リンパ球とヘテロミエローマHAB−1細胞(Faller, et al., Br. J. Cancer 62:595-598, 1990) をインキュベートし、リンパ球及びHAB−1細胞の融合を、ポリエチレングリコール1500(Roche,マンハイム,ドイツ)を使用することにより容易にした。ハイブリドーマを24ウェルプレートにまき、10%ウシ胎児血清(FCS)及び10%HAT(ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン)サプリメント(PAA,ウィーン,オーストリア)、1%グルタミン及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI−1640(PAA,ウィーン,オーストリア)中で培養した。約4週間後、ハイブリドーマの上清を、ELISAを用いて抗体含量をスクリーニングした。40のIgM産生クローンを得た。ELISA陽性クローンは次ぎに、腫瘍特異性を確認するため、異なった腫瘍組織及び正常組織のパネルについて免疫組織化学的に試験した。40のIgM産生クローンの内、9が腫瘍特異的IgM抗体を産生した。腫瘍特異的抗体はさらに、免疫組織化学的に、遺伝子的に、生化学的に、そして当該技術分野において標準の分子生物学的方法を使用して特徴付けた。
【0098】
ヒトモノクローナル抗体NORM−1の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)及び核酸配列(配列番号2)は図7に示されている。図7に示されているように、NORM−1可変領域重鎖の補体決定領域1(CDR1)は、アミノ酸31〜35をコードするヌクレオチド91〜105にまたがっており、CDR2はアミノ酸50〜66をコードするヌクレオチド148〜198にまたがっており、そしてCDR3はアミノ酸99〜107をコードするヌクレオチド295〜321にまたがっている。加えて、D領域はヌクレオチド297〜319にまたがっており、そしてJ領域はヌクレオチド327〜357にまたがっている。
【0099】
ヒトモノクローナル抗体NORM−1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3)及び核酸配列(配列番号4)は図8に示されている。図8に示されているように、NORM−1可変領域軽鎖のCDR1は、アミノ酸23〜33をコードするヌクレオチド67〜99にまたがっており、CDR2はアミノ酸49〜55をコードするヌクレオチド145〜165にまたがっており、そしてCDR3はアミノ酸88〜99をコードするヌクレオチド262〜297にまたがっている。加えて、J領域はヌクレオチド291〜300にまたがっている。
【0100】
ヒトモノクローナル抗体NORM−2の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号5)及び核酸配列(配列番号6)は図9に示されている。図9に示されているように、NORM−2可変領域重鎖のCDR1は、アミノ酸31〜35をコードするヌクレオチド91〜105にまたがっており、CDR2はアミノ酸50〜66をコードするヌクレオチド148〜198にまたがっており、そしてCDR3はアミノ酸99〜108をコードするヌクレオチド295〜324にまたがっている。加えて、D領域はヌクレオチド297〜300にまたがっており、そしてJ領域はヌクレオチド301〜324にまたがっている。
【0101】
ヒトモノクローナル抗体NORM−2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号7)及び核酸配列(配列番号8)は図10に示されている。図10に示されているように、NORM−2可変領域軽鎖のCDR1は、アミノ酸23〜36をコードするヌクレオチド67〜108にまたがっており、CDR2はアミノ酸52〜58をコードするヌクレオチド154〜174にまたがっており、そしてCDR3はアミノ酸91〜101をコードするヌクレオチド271〜303にまたがっている。加えて、J領域はヌクレオチド299〜306にまたがっている。
【0102】
実施例3
抗体の免疫組織化学的特徴付け
NORM−1及びNORM−2ヒトモノクローナル抗体IgM抗体の遺伝子起源を探索するため、V及びV遺伝子を増幅し、クローン化し、そして配列決定した。最も相同的な生殖細胞系列遺伝子を同定し、そして体細胞突然変異を検出するため、配列をIMGT/V−QUESTデータベース中の生殖細胞系列配列と比較した。結果は表1に表されている。Vセグメントのヌクレオチド配列の、最も近い、報告されている生殖細胞系列VH遺伝子のそのヌクレオチド配列との同一性の程度は100%であった。抗体はV3遺伝子ファミリーによりコードされているV領域を含有する。生殖細胞系列遺伝子に対するV領域の密接な相同性及び低いR/S比は、NORM−1及びNORM−2抗体が、抗原接触を原因とする体細胞突然変異による親和性成熟を起こさないことを示している。Vセグメントのヌクレオチド配列の、それらのほとんど相同的なV生殖細胞系列遺伝子に対する同一性の程度は、99.3から99.6%の範囲であった(両方の抗体ともλ軽鎖遺伝子を利用している)。R/S比も再び低く、そして突然変異はフレームワーク領域に限定されていた。
【0103】
【表1】

異なった腫瘍組織について最初に試験した後、抗体の反応パターンを、多様なパラフィンおよび凍結包埋された癌腫及び正常組織の免疫組織化学的染色を使用してより詳細に調べた。NORM−1及びNORM−2抗体は、正常組織との結合活性を何も示さなかった(表2)。
【0104】
【表2】

対照的に、NORM−1及びNORM−2抗体は多数の腫瘍組織を特異的に染色する(表3参照)。
【0105】
【表3】

図1及び2は、同一器官の正常組織の染色パターンと比較した、いくつかの腫瘍組織に対するNORM−1及びNORM−2抗体の反応性パターンの例を示している。これらの図に示されているように、健常ドナーから単離されたNORM−1及びNORM−2抗体は特異的に腫瘍細胞を染色するが、一方、周囲組織及び正常組織は染色されない。
【0106】
さらに、NORM−1及びNORM−2モノクローナル抗体はまた、多数の癌腫細胞株も特異的に染色する。特に、NORM−1抗体は、肺扁平上皮細胞癌腫細胞株EPLC−272H(DSMZ受入番号ACC383);肺腺癌細胞株Colo−699(DSMZ受入番号ACC196);結腸癌腫細胞株CACO−2(DSMZ受入番号ACC169、ATCC受入番号HTB−37);結腸癌腫細胞株Colo−206F(DSMZ受入番号ACC21);胃癌腫細胞株23132/87(DSMZ受入番号ACC201);膵臓癌腫細胞株ASPC−1(ATCC受入番号CRL−1682);前立腺癌腫細胞株DU−145(DSMZ受入番号ACC261、ATCC受入番号HTB−81);及び前立腺癌腫細胞株BM1604(DSMZ受入番号ACC298)を染色する。NORM−2抗体はColo−699;CACO−2;23132/87;DU−145;及びBM1604細胞を染色する。これらの細胞のスライドは、材料及び方法の節に記載したサイトスピンプロトコールに従って染色した。
【0107】
実施例4
抗体が細胞増殖を抑制するかどうかの決定
細胞増殖は、当該技術分野において標準である多数の方法、例えば、テトラゾリウム塩の還元によりアッセイすることができる。黄色テトラゾリウム塩、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(「MTT」)(Sigma,セントルイス,MO)は、代謝的に活性な細胞により、一部、NADH及びNADPHのような還元均等物を発生するミトコンドリアデヒドロゲナーゼ酵素の作用により、還元される。生じる細胞内紫色ホルマザンを可溶化しそして分光光度的手段により定量することが可能である。MTT細胞増殖アッセイは、細胞増殖の速度を、そして代謝現象がアポトーシスを導く場合、細胞生存度の減少を測定する。
【0108】
MTTアッセイのため、ヒト胃腺癌細胞株23132/87を使用した。この癌腫細胞株は、新しく調製した胃腫瘍患者の初代培養から誘導し、一般に、細胞培養の人為的結果を避けるため、この細胞株の初期継代(10未満)を使用した。23132/87細胞をトリプシン処理し、それらを完全増殖培地中で1x10細胞/mlに希釈した。この懸濁液の50μlを96ウェルプレートのウェル内へピペットで移すと、およそ5x10細胞/ウェルを生じる。ウェルの最初の列を空にして残した。次ぎに、各ウェルへ、完全培地に希釈した50μlの抗体を加えた。正常増殖を示すため、細胞へ完全増殖培地を補給した(対照1)。同一濃度の無関係ヒトIgM抗体(Chrompure IgM,Dianova)は陰性対照として働いた(対照2)。96ウェルプレートは次ぎに、加湿37℃インキュベーター中で、48時間インキュベートした。インキュベーション期間後、50μlのMTT溶液(5mg/ml PBS溶液)を各ウェルへ加えた。96ウェルプレートを37℃で30分インキュベートし、800xgで5分遠心分離した。上清を吸引し、150μlのジメチルスルホキシド(DMSO)を各ウェルに加え、細胞ペレットを再懸濁した。ELISAリーダー中、690nmの参照波長を用い、540nmの波長で吸光度を決定した。48時間後、NORM−1及びNORM−2抗体は、対照と比較して、23132/87胃癌腫細胞の細胞増殖を抑制した(図3)。
【0109】
実施例5
抗体がアポトーシスを誘導するかどうかの決定
当該技術分野において標準の多数のアッセイを、抗体が細胞のアポトーシスを誘導するかどうかを決定するために使用することができる。
【0110】
例えば、CELL DEATH DETECTION ELISAPLUS(Roche,マンハイム,ドイツ)を、NORM−1及びNORM−2抗体がアポトーシスを誘導する程度を分析するために使用した。細胞死検出ELISAは、各々、DNA及びヒストンへ方向付けられたマウスモノクローナル抗体使用する、定量的サンドイッチ−酵素−免疫アッセイ原理に基づいている。このアッセイは、アポトーシスで死んだ細胞の細胞質内へ放出されるモノ−及びオリゴ−ヌクレオソームの特異的決定を可能にする。
【0111】
特に、1x10 23132/87胃癌腫細胞を96ウェルプレートにまき、異なった濃度のNORM−1及びNORM−2抗体存在下、加湿COインキュベーター中、37℃及び7%COで48時間インキュベートした。正常増殖を示すため、細胞へ完全増殖培地を補給した(対照1;RPMI)。同一濃度の無関係ヒトIgM抗体(Chrompure IgM,Dianova)は陰性対照として働いた(対照2)。インキュベーション期間後、細胞を200gで10分遠心分離し、上清を除去した。生じた細胞ペレットは次ぎに、溶解緩衝液と室温で30分インキュベートした。遠心分離後、上清をストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート(MTP)内へ移し、免疫試薬(10%抗ヒストン−ビオチン、10%抗DNA−ペルオキシダーゼ(抗DNA POD)及び80%インキュベーション緩衝液の混合物)を加え、その後250rpmでのMTPしんとう機上、室温で2時間インキュベーションした。インキュベーション期間に続いて、非結合成分を、インキュベーション緩衝液での洗浄工程により除去した。ペルオキシダーゼ活性を、基質としてABTS(商標)(ABTS(商標)(2,2’−アジノ−ジ[3−エチル−ベンゾ−チアゾリン−スルホン酸])1錠を5mlの基質緩衝液に溶解)を用いて測光法で決定した。抗体誘導アポトーシスは、ブランクとしてABTS(商標)溶液と比較して、415nm又は405nmの波長で(およそ490nmの参照波長)ELISAリーダーを使用し、この反応の結果として形成された緑色の沈殿物の呈色強度を決定することにより測定した。この呈色強度に基づいて、抗体誘導アポトーシスのレベルを計算した。これらの実験は、培地対照及び対照抗体と比較した場合、各抗体、NORM−1及びNORM−2が24及び48時間のインキュベーション後に、癌腫細胞においてアポトーシスを誘導することを明瞭に示した(図4、図5A及び5B、図6A及び6B)。
【0112】
実施例6
新生物のインビボイメージング
結腸直腸癌腫のような新生物を有していると疑われた患者に、本明細書に記載した方法を使用して、放射性ヨウ素化NORM−1又はNORM−2抗体、又は別の腫瘍特異的ポリペプチド、及び放射性標識非特異的抗体の用量を与えることができる。イメージングのための腫瘍の位置限定はGoldenberg et al. (N. Engl. J. Med., 298:1384, 1978) の方法に従って達成することができる。I.V.により、131I−NORM−1又はNORM−2抗体、及びTc−99m−標識非特異的抗体の溶液の等量注入液を患者に投与することができる。試薬I.V.の投与に先立って、患者は典型的には、抗体調製液(非標識)に対する又は抗体調製液のような同一種の抗体に対する過敏性を前もって試験する。131Iの甲状腺取り込みを阻止するため、放射性ヨウ素化抗体の注射1日前又はそれ以前の日から開始し、1日2又は3回、5滴の用量でルゴール液を経口で投与する。多様な体の領域の画像及び投影図を、標識された調製液を注射して4、8及び24時間後に撮ることができる。もし存在するならば、新生物(例えば、胃腺癌)が、DeLand et al. (Cancer Res. 40:3046, 1980) により、131I標識抗CEA抗体及びTc−99m−標識ヒト血清アルブミンのために記載されているように、131IのカウントからTc−99mのカウントを差し引いた、ガンマカメライメージングにより検出される。注射8時間後、イメージングを通常クリアーし、24時間のスキャンに至るまで時間とともに向上させる。
【0113】
実施例7
標識抗体混合物を使用する新生物の治療
新生物を有すると診断された患者、例えば、胃腺癌を有すると診断された患者は、以下のように本発明の方法を使用して同定されたポリペプチドで治療することができる。ルゴール溶液を、例えば、1日3回7滴、患者に投与することができる。続いて、131I−NORM−1又はNORM−2抗体の治療量を患者に投与することができる。例えば、50mCiの131I用量を、3週間にわたって毎週与えることができ、血液学的毒性により治療を中断するまで、個体に基づいて調節された間隔(例えば、3ヶ月毎)で繰り返す。正確な治療計画は一般に主治医又は治療を監督する人が決定する。放射性ヨウ素化抗体は、50mlの無菌生理学的食塩水中、ゆっくりしたI.V.注入で投与することができる。3回目の注射投与量の後、原発性腫瘍のサイズの減少及び転移に注目する(特に、第二の治療サイクル後、又は治療開始から10週後)。
【0114】
実施例8
コンジュゲートした抗体を使用する治療
新生物を有すると診断された患者、例えば、転移した胃癌を有する患者は、131I−NORM−1又はNORM−2、10B−NORM−1又はNORM−2、及びTc−99m標識非特異的抗体の溶液で治療することができる。70kg患者体重に基づいた100mCiの131I活性を提供するのに十分な量の131I−NORM−1又はNORM−2抗体(50mlの無菌生理学的食塩水中)を患者に投与することができる。この投与量は、抗体分子当たり、40〜80ホウ素原子及び8〜16ホウ素−10原子を有する3.3mgの抗体に等しい。新生物は最初に、実施例6の手法を使用して正確に位置限定する。加えて、前の実施例におけるように、ルゴール溶液を患者へ連続的に投与せねばならない。熱中性子のよく平行化されたビームは、決められた腫瘍位置に焦点を当てることができる。8〜20分の時間に搬送される、400〜800ラドの熱中性子ビーム線量での照射が各腫瘍部位にもたらされ、同時外部照射療法が指示されていない限り、個体に基づいて調節された間隔で、腫瘍位置発見抗体の投与(放射性標識と又はなしで)とともに随意に繰り返すが、通常3200ラドの総線量は超えないようにする。もし望むなら、この治療に加えて、化学療法剤のような抗腫瘍剤もまた、患者へ投与することができる。
【0115】
他の態様
本発明を、その特定の態様に関連して記載してきたが、さらなる修飾が可能であり、そして本出願は本発明の原理に一般に従う本発明のいずれもの変形、使用又は適用に及ぶことが意図されており、そして本発明が関与する当該技術分野内の、周知の又は慣用的な実施の範囲内にある本開示からのこうした離脱を含み、そして先に示した必須の特色へ適用することができることが理解されるであろう。
【0116】
国際特許出願第PCT/IB03/01335及びPCT/IB03/03487号、米国特許第5,367,060及び5,641,869号、そして本明細書で引用した全ての他の参照文献は、本明細書において援用される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1A〜1Fは異なった癌腫及び正常組織に対するNORM−1及び対照抗体の免疫組織化学的染色を示している一連の画像である。パラフィン切片をヘマトキシリン−エオシン(「H&E」)、陽性対照抗体(膵臓の腺癌に対しては抗サイトケラチン7、そして胃及び結腸の腺癌に対しては抗サイトケラチン8(「Ck」)、陰性対照として無関係ヒトIgM抗体(「対照IgM」)、及びNORM−1で染色した。図1Aは結腸の腺癌の染色を示しており;図1Bは散在型胃癌腫の染色を示しており;図1Cは膵臓の腺癌の染色を示しており;図1Dは正常結腸組織の染色を示しており;図1Eは正常胃組織の染色を示しており;そして図1Fは正常膵臓組織の染色を示している。これらの画像の原倍率は100xであった。
【図2】図2A〜2Fは異なった癌腫及び正常組織に対するNORM−2及び対照抗体の免疫組織化学的染色を示している一連の画像である。パラフィン切片をヘマトキシリン−エオシン(「H&E」)、陽性対照抗体(抗サイトケラチン8(「Ck」)、陰性対照として無関係ヒトIgM抗体(「対照IgM」)、及びNORM−2で染色した。図2Aは散在型胃癌腫の染色を示しており;図2Bは肺の腺癌の染色を示しており;図2Cは結腸の腺癌の染色を示しており;図2Dは正常胃組織の染色を示しており;図2Eは正常肺組織の染色を示しており;そして図2Fは正常結腸組織の染色を示している。これらの画像の原倍率は100xであった。
【図3】図3は、インビトロでの抗体NORM−1及びNORM−2の機能的分析を示しているグラフである。胃癌腫細胞株23132/87(DSMZ受入番号ACC201)の増殖に対する抗体処理の結果は、MTT増殖アッセイを使用して測定した。対照1においては抗体を含まない完全増殖培地を細胞へ加え、そして対照2においては、同様の濃度で無関係IgM抗体を含んでいる完全増殖培地を細胞へ加えた。
【図4】図4はNORM−1及びNORM−2抗体がアポトーシスを誘導することを示しているグラフである。これらの実験において、23132/87細胞のアポトーシスはCell Death Detection ELISAPLUSアポトーシスアッセイ(Roche,マンハイム,ドイツ)を使用して検出した。対照1においては抗体を含まない完全増殖培地を細胞へ加え、そして対照2においては、同様の濃度で無関係IgM抗体を含んでいる完全増殖培地を細胞へ加えた。
【図5】図5A及び5Bは、NORM−1モノクローナル抗体が23132/87細胞のアポトーシスを、インキュベーション24時間(図5A)及び48時間(図5B)後に誘導することを示している、細胞死酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の結果の一連のグラフである。
【図6】図6A及び6Bは、NORM−2モノクローナル抗体が23132/87細胞のアポトーシスを、インキュベーション24時間(図6A)及び48時間(図6B)後に誘導することを示している、細胞死ELISAの結果の一連のグラフである。
【図7】図7は、ヒトモノクローナル抗体NORM−1の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)及び核酸配列(配列番号2)である。D領域及びJ領域が指示されており、そして補体決定領域(「CDR」)1〜3もまた示されている。
【図8】図8は、ヒトモノクローナル抗体NORM−1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3)及び核酸配列(配列番号4)である。J領域が指示されており、そしてCDR1〜3もまた示されている。
【図9】図9は、ヒトモノクローナル抗体NORM−2の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号5)及び核酸配列(配列番号6)である。D領域及びJ領域が指示されており、そしてCDR1〜3もまた示されている。
【図10】図10は、ヒトモノクローナル抗体NORM−2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号7)及び核酸配列(配列番号8)である。J領域が指示されており、そしてCDR1〜3もまた示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生物細胞へ特異的に結合し、そして非新生物細胞へは結合しない、単離されたポリペプチドを同定するための方法であって、(1)健常ドナーに由来する単離された細胞を提供し、(2)細胞により産生されたポリペプチドを単離し、そして(3)該ポリペプチドが新生物細胞へ特異的に結合するか、そして非新生物細胞へは結合しないかどうかを決定する工程を含む、該方法。
【請求項2】
該新生物細胞が神経芽腫細胞ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(1)がさらに、該単離された細胞を不死化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該不死化することが、該単離された細胞とミエローマ又はヘテロミエローマ細胞を融合することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(3)が、該新生物細胞及び該非新生物細胞と該ポリペプチドを接触させることが、該新生物細胞においてアポトーシスを誘導するか、そして該非新生物細胞においては誘導しないかどうかを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(3)が、該新生物細胞及び該非新生物細胞と該ポリペプチドを接触させることが、該新生物細胞の増殖を減少させるか、そして該非新生物細胞の増殖を減少させないかどうかを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該新生物細胞が癌腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該癌腫が、結腸の腺癌、散在型胃癌腫、膵臓の腺癌又は肺の腺癌である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該ポリペプチドが抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該抗体がIgM抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
該ドナーがヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
該単離された細胞が脾臓細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
該単離された細胞がリンパ節に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
該単離された細胞が血液に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
該単離された細胞がリンパ球である、請求項13、14又は15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1の方法を使用して同定されたポリペプチドを発現する、単離された細胞。
【請求項18】
配列番号1又は3のアミノ酸配列を含む、精製されたポリペプチド。
【請求項19】
該ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項20】
該ポリペプチドが配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項21】
配列番号5又は7のアミノ酸配列を含む、精製されたポリペプチド。
【請求項22】
該ポリペプチドが配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項23】
該ポリペプチドが配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項24】
配列番号1の31〜35、50〜66及び99〜107又は配列番号3の23〜33、49〜55及び88〜99のアミノ酸を含む、精製されたポリペプチド。
【請求項25】
該ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸31〜35、50〜66及び99〜107を含む、請求項24に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項26】
該ポリペプチドが配列番号3のアミノ酸23〜33、49〜55及び88〜99を含む、請求項24に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項27】
配列番号5の31〜35、50〜66及び99〜108又は配列番号7の23〜36、52〜58及び91〜101のアミノ酸を含む、精製されたポリペプチド。
【請求項28】
該ポリペプチドが配列番号5のアミノ酸31〜35、50〜66及び99〜108を含む、請求項27に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項29】
該ポリペプチドが配列番号7のアミノ酸23〜36、52〜58及び91〜101を含む、請求項27に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項30】
該ポリペプチドが抗体又はそれらの機能性断片である、請求項18〜29のいずれか一項に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項31】
該抗体がモノクローナル抗体又はそれらの機能性断片である、請求項30に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項32】
該機能性断片が、V、V、F、F、Fab、Fab’及びF(ab’)から成る群より選択される、請求項30に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項33】
該ポリペプチドが結腸の腺癌、散在型胃癌腫、膵臓の腺癌及び肺の腺癌へ特異的に結合し、そして同一組織型の非新生物細胞へは結合しない、請求項30に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項34】
該機能性断片が、配列番号1の31〜35、50〜66及び99〜107又は配列番号3の23〜33、49〜55及び88〜99のアミノ酸を含む、抗体の機能性断片。
【請求項35】
該機能性断片が、配列番号5の31〜35、50〜66及び99〜108又は配列番号7の23〜36、52〜58及び91〜101のアミノ酸を含む、抗体の機能性断片。
【請求項36】
該機能性断片が、モノクローナル抗体の機能性断片である、請求項34又は35に記載の機能性断片。
【請求項37】
該機能性断片が、抗体のV鎖である、請求項34又は35に記載の機能性断片。
【請求項38】
新生物細胞へ特異的に結合するが、非新生物細胞へは結合しない精製されたポリペプチドであって、結腸の腺癌、散在型胃癌腫、膵臓の腺癌及び肺の腺癌へ特異的に結合するが、同一組織型の非新生物細胞へは結合せず、そして配列番号1又は配列番号3の完全長配列と実質的に同一である、該精製されたポリペプチド。
【請求項39】
該ポリペプチドが、EPLC−272H(DSMZ受入番号ACC383)、Colo−699(DSMZ受入番号ACC196)、CACO−2(DSMZ受入番号ACC169、ATCC受入番号HBT−37)、Colo−206F(DSMZ受入番号ACC21)、23132/87(DSMZ受入番号ACC201)、ASPC−1(ATCC受入番号CRL−1682)、DU−145(DSMZ受入番号ACC261、ATCC受入番号HTB−81)及びBM1604(DSMZ受入番号ACC298)細胞の少なくとも一つへ特異的に結合する、請求項38に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項40】
該ポリペプチドが、該新生物細胞においてアポトーシスを誘導するが、該非新生物細胞においては誘導しない、請求項39に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項41】
該ポリペプチドが、新生物細胞の増殖を減少させるが、該非新生物細胞の増殖を減少させない、請求項39に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項42】
新生物細胞へ特異的に結合するが、非新生物細胞へは結合しない精製されたポリペプチドであって、結腸の腺癌、散在型胃癌腫、膵臓の腺癌及び肺の腺癌へ特異的に結合するが、同一組織型の非新生物細胞へは結合せず、そして配列番号5又は配列番号7の完全長配列と実質的に同一である、該精製されたポリペプチド。
【請求項43】
該ポリペプチドが、Colo−699(DSMZ受入番号ACC196)、CACO−2(DSMZ受入番号ACC169、ATCC受入番号HBT−37)、23132/87(DSMZ受入番号ACC201)、DU−145(DSMZ受入番号ACC261、ATCC受入番号HTB−81)及びBM1604(DSMZ受入番号ACC298)細胞の少なくとも一つへ特異的に結合する、請求項42に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項44】
該ポリペプチドが、該新生物細胞においてアポトーシスを誘導するが、該非新生物細胞においては誘導しない、請求項43に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項45】
該ポリペプチドが、新生物細胞の増殖を減少させるが、該非新生物細胞の増殖を減少させない、請求項43に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項46】
該ポリペプチドがまた、DSMZ寄託受入番号DSM ACC2624を有するNORM−1細胞株によっても産生される、請求項18〜20、24〜26、34及び36〜41のいずれか一項に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項47】
該ポリペプチドがまた、DSMZ寄託受入番号DSM ACC2626を有するNORM−2細胞株によっても産生される、請求項21〜23、27〜29、35〜37及び42〜45のいずれか一項に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項48】
配列番号2の配列を含む単離された核酸分子。
【請求項49】
配列番号4の配列を含む単離された核酸分子。
【請求項50】
配列番号6の配列を含む単離された核酸分子。
【請求項51】
配列番号8の配列を含む単離された核酸分子。
【請求項52】
配列番号2の91〜105、148〜198及び295〜321又は配列番号4の67〜99、145〜165及び262〜297の核酸を含む、単離された核酸分子。
【請求項53】
該核酸分子が、配列番号2の核酸91〜105、148〜198及び295〜321を含む、請求項52に記載の単離された核酸分子。
【請求項54】
該核酸分子が、配列番号4の核酸67〜99、145〜165及び262〜297を含む、請求項52に記載の単離された核酸分子。
【請求項55】
配列番号6の91〜105、148〜198及び295〜324又は配列番号8の67〜108、154〜174及び271〜303の核酸を含む、単離された核酸分子。
【請求項56】
該核酸分子が、配列番号6の核酸91〜105、148〜198及び295〜324を含む、請求項55に記載の単離された核酸分子。
【請求項57】
該核酸分子が、配列番号8の核酸67〜108、154〜174及び271〜303を含む、請求項55に記載の単離された核酸分子。
【請求項58】
請求項48〜57のいずれか一項の核酸配列を含むベクター。
【請求項59】
請求項58のベクターを含む単離された細胞。
【請求項60】
請求項18〜29のいずれか一項のポリペプチドを発現する、単離された細胞。
【請求項61】
該単離された細胞が哺乳動物細胞である、請求項60に記載の単離された細胞。
【請求項62】
該哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項61に記載の単離された細胞。
【請求項63】
該ポリペプチドが抗体である、請求項62に記載の単離された細胞。
【請求項64】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項63に記載の単離された細胞。
【請求項65】
該抗体がIgM抗体である、請求項63に記載の単離された細胞。
【請求項66】
請求項18〜29のいずれか一項の精製されたポリペプチドを産生する方法であって、細胞と請求項58のベクターを接触させ、そして該細胞により発現されたポリペプチドを単離することを含む、該方法。
【請求項67】
哺乳動物の新生物を診断する方法における、請求項18〜29のいずれか一項の精製されたポリペプチドの使用であって、該方法は(a)該哺乳動物に由来する細胞又は組織試料と請求項18〜29のいずれか一項の精製されたポリペプチドを接触させ、そして(b)該精製されたポリペプチドが該細胞又は組織試料へ結合するかどうかを検出する工程を含んでなり、ここにおいて、該細胞又は組織試料への該精製されたポリペプチドの結合は新生物を有する該哺乳動物の指標である、前記使用。
【請求項68】
該哺乳動物がヒトである、請求項67に記載の使用。
【請求項69】
該ポリペプチドが抗体である、請求項67に記載の使用。
【請求項70】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項69に記載の使用。
【請求項71】
該ポリペプチドが、放射性核種、蛍光マーカー、酵素、細胞毒素、サイトカイン及び増殖阻害剤から成る群より選択される検出可能な作用剤へコンジュゲートされている、請求項67に記載の使用。
【請求項72】
該検出可能な作用剤が、該細胞のアポトーシスを誘導することが可能である、請求項71に記載の使用。
【請求項73】
該ポリペプチドがタンパク質精製タグへコンジュゲートされている、請求項67に記載の使用。
【請求項74】
該タンパク質精製タグが切断可能である、請求項73に記載の使用。
【請求項75】
哺乳動物の増殖性障害を治療する方法における、請求項18〜29のいずれか一項の精製されたポリペプチドの使用であって、該方法は、細胞と請求項18〜29のいずれか一項の精製されたポリペプチドを接触させる工程を含んでなり、ここにおいて、該細胞への該精製されたポリペプチドの結合は、該細胞の増殖の減少を生じる、前記使用。
【請求項76】
該哺乳動物がヒトである、請求項75に記載の使用。
【請求項77】
該ポリペプチドが抗体である、請求項75に記載の使用。
【請求項78】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項77に記載の使用。
【請求項79】
該ポリペプチドが、放射性核種、蛍光マーカー、酵素、細胞毒素、サイトカイン及び増殖阻害剤から成る群より選択される検出可能な作用剤へコンジュゲートされている、請求項75に記載の使用。
【請求項80】
該検出可能な作用剤が、該細胞の細胞増殖を抑制することが可能である、請求項79に記載の使用。
【請求項81】
該ポリペプチドがタンパク質精製タグへコンジュゲートされている、請求項75に記載の使用。
【請求項82】
該タンパク質精製タグが切断可能である、請求項81に記載の使用。
【請求項83】
薬学的に許容できる坦体中に、請求項18〜29のいずれか一項の精製されたポリペプチドを含む医薬品。
【請求項84】
請求項18〜29のいずれか一項の精製されたポリペプチドを含む診断剤。
【請求項85】
DSMZ受入番号DSM ACC2624を有する、抗体産生細胞株。
【請求項86】
請求項85の細胞株により産生された抗体。
【請求項87】
DSMZ受入番号DSM ACC2626を有する、抗体産生細胞株。
【請求項88】
請求項87の細胞株により産生された抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−521020(P2007−521020A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539002(P2006−539002)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004453
【国際公開番号】WO2005/094159
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(504423871)オンコマブ・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】