説明

新規なエラストマー複合体、その製法及び装置

【課題】新規なエラストマー複合体を提供する。
【解決手段】凝固ゴム反応装置の混合ゾーンに高速流の微粒子充てん材と低速流のエラストマーラテックスを供給し、該混合ゾーン内に生ずる高い剪断流と乱流状態下に混合、凝固させることによって、酸又は塩の凝固剤を使うことなく強固に結合したエラストマー複合体が製造される。かかるエラストマー複合体では、微粒子充てん材のマクロ分散が格別に優れるという効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー複合体を製造するための新規な方法及び装置、ならびにかかる方法及び装置を用いて製造された新規なエラストマー複合体に関する。より詳細には、本発明は、エラストマー内に細かく分散された微粒子充てん材のエラストマーマスターバッチ、例えば硬化剤を含まないマスターバッチ組成物、硬化剤を帯びたベース組成物といった、天然ゴム中に細かく分散したカーボンブラック微粒子充てん材のエラストマー複合体を製造するための連続流方法及び装置及びかかるマスターバッチ組成物で形成されたゴム材料及び製品に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子充てん材がさまざまな合成エラストマー、天然ゴム又はエラストマー配合物のいずれかの中に分散されているエラストマー組成物から、商業的な価値のある数多くの製品が形成されている。例えば、カーボンブラックは、天然ゴム及びその他のエラストマーの中で補強剤として広く用いられている。マスターバッチ、すなわち充てん材、エラストマー及びエキステンダー油といったさまざまな任意の添加物の予備混合物を製造することが一般的になっている。カーボンブラックマスターバッチは、単位重量あたりの表面積と同時に「ストラクチャー」の面でも変動する市販のさまざまなグレードのカーボンブラックを用いて調製される。商業的に意義ある数多くの製品が、天然ゴム中に分散したカーボンブラックの微粒子充てん材のかかるエラストマー組成物で形成されている。かかる製品には、例えば、トレッド部分、サイドウォール、ワイヤスキム及びカーカスのために異なるエラストマー組成物が使用できる車両タイヤが含まれる。その他の製品としては、例えば、エンジンマウントプッシング、コンベヤベルト、ワイパーなどがある。現在利用可能な材料及び製造技術を利用して広範な性能特性を達成することが可能であるものの、業界では、改良された特性をもつエラストマー組成物を開発し現行の製造技術のコスト及び複雑性を低減させる必要性が長い間存在し続けている。特に、例えば、マクロ分散レベル、すなわちエラストマー内のカーボンブラック又はその他の充てん材の分散の均等性が性能特性に著しく影響を及ぼし得ることがわかっている。カーボンブラック又はその他の充てん材を天然ゴム又はその他のエラストマーと(例えばバンブリーミキサーなどの中で)強く混合することによって調製されるエラストマー組成物にとっては、マクロ分散を増大させるために、より長時間の又はより強い混合が必要となり、その結果、エネルギーコスト、製造時間及びそれに類する不都合がもたらされる。表面積及びストラクチャー上の或る種の特性をもつカーボンブラック充てん材については、一定の度合を超える分散は、既知の混合装置及び技術を用いた場合不可能又は商業的に実施不能であった。さらに、このような長時間の又はより強力な混合は、その分子量を減少させることによって天然ゴムを劣化させ、仕上ったエラストマー化合物を或る種の利用分野にとって望ましくないものにしてしまう。
【0003】
エラストマー組成物の性能特性を操作する目的で、より大きいか又はより小さいストラクチャー又は表面積をもつカーボンブラックを利用するというのは周知のことである。より大きい表面積及びより小さいストラクチャーをもつカーボンブラックが亀裂生長耐性及びカット&チップ強度ならびに、一般的に摩耗抵抗及びその他の性能特性を改善するものであることがわかっている。しかしながら商業的に利用可能な混合技術は、天然ゴムを受容できないほどに劣化させることなくエラストマー全体を通してのカーボンブラックのすぐれた分散均等性を達成することができなかった。実際、45phr 〜75phr といった天然ゴム中の標準的カーボンブラック投入レベル及び0phr 〜10phr といったオイル投入レベル、 110cc/ 100g未満のDBPAのカーボンブラック、特に約45m2 /g〜65m2 /g以上の表面積(CTAB)をもつカーボンブラックといった低ストラクチャーカーボンブラックについては、持続時間及び強度レベルとは無関係に、約1%未満の未分散カーボンブラック(以下に記述するとおりマクロ分散として測定されるもの)を有する化合物を達成することは不可能であった。その上、上述のとおり、現在広く商業的に用いられているエネルギー消費量がきわめて高い強力な乾式混合方法では、かかるカーボンブラックを分散させるのに必要なエラストマーの素練りの結果、天然ゴムエラストマーの重合体鎖の破断レベルが、受容できないほどになる。その結果得られる天然ゴムの分子量減少は、数多くの産業的利用分野にとって望ましくないものである。例えばタイヤトレッド内での使用にあたっては、分子量の低下によって、タイヤのいわゆる転がり抵抗の望ましくない増大がひき起こされることがわかっている。
【0004】
さらに、理論的な分析からは、より大きい表面及びより小さいストラクチャーをもつカーボンブラックを用いたエラストマー組成物の或る種の性能特性の望ましい改善が示されているものの、既知の物理的ミリング又はその他の素練りプロセスを用いて、天然ゴムの分子量が充分に保存されると同時にカーボンブラックの満足のいくマクロ分散レベルが達成されているようなエラストマー組成物を得ることは不可能であった。一般に、例えば、カーボンブラックのエラストマー補強特性がカーボンブラックの粒度の減少に伴って増大することが発見されてきた。しかしながら、極めて細かいカーボンブラックは、予想された物性の改善が達成されない異常な条件に遭遇することがわかっている。これは、少なくとも一部には、従来のエラストマー配合方法がエラストマー重合体を不適当に破断させることなく天然ゴム中にカーボンブラックを適切に分散させることができないことに原因があると考えられている。従って、このようなカーボンブラックの場合は、結果的にカーボンブラックと天然ゴム間の相互の自然の親和力を充分に活用することができなかった。
【0005】
天然ゴム化合物内のカーボンブラックの優れた分散は、一時期、良質で一貫性のある製品性能を達成するための最も重要な目的の1つと認識されていたため、ゴム中の分散の質を評価するための手順の開発に多大な努力が傾注されてきた。開発された方法としては、例えば、キャボット分散図及びさまざまな画像解析手順が含まれる。分散の質は、達成された混合状態として定義づけることができる。カーボンブラックの理想的な分散は、カーボンブラックの集塊(又はペレット)が(分散型混合により達成されるように)凝集体に分解され、(分配型混合によって達成されるように)互いから均等に分離され、このとき全てのカーボンブラック凝集体の表面はゴムマトリクスにより完全に浸潤化されている(通常取り込みと呼ばれる)ような状態である。
【0006】
貧弱なマクロ分散に往々に関係づけされるゴム業界の一般的な問題点は、次の4つの主要なカテゴリに分類できる:すなわち、製品性能、表面欠陥、外観及び分散効率である。引張り強さ、疲労寿命及び摩耗抵抗といったカーボンブラック含有ゴム製剤の機能的性能及び耐久性は、マクロ分散の質により実質的に影響される。未分散カーボンブラックは同様に、可視的欠陥を含めて、完成した製品上に表面欠陥をひき起こす可能性がある。表面欠陥の存在を除去することは、薄い成形部品では機能上の理由により、又押出し成形された形材においては美観上及び機能上の両方の理由から非常に重要である。
【0007】
Kontron Electronik GmbH(ドイツ、ミュンヘン)から入手可能なIBAS Compact型画像解析装置といった市販の画像解析装置を用いて、カーボンブラック又はその他の充てん材のマクロ分散を測定することができる。一般にゴム産業において用いられる定量的マクロ分散テストにおいて、臨界的カットオフサイズは10ミクロンである。サイズが約10ミクロンより大きい欠陥は、標準的に、未分散カーボンブラック又はその他の充てん材ならびに、視覚的及び機能的の両方の性能に影響を及ぼしうるあらゆる粗粒子又はその他の汚染物質で構成されている。かくして、マクロ分散の測定には、画像解析手順を用いて検査された単位面積あたりのかかる欠陥の合計面積によって、サイズが10ミクロンより大きい(ミクロトーム、押出し又はカッティングにより生成された)表面上の欠陥を測定することが関与している。マクロ分散D(%)は、以下の通りに計算される。
【数1】

なお式中、Am=検査された標本合計表面積
Ni=サイズDiの欠陥の数
Di=欠陥の面積と同じ面積をもつ円の直径(等価円半径)
m=画像の数
【0008】
未硬化天然ゴム又はその他の適切なエラストマーの中のカーボンブラック又はその他の充てん材のマクロ分散は、カットされた表面標本の画像解析を用いて評価できる。標準的には、画像解析のためカット表面の任意に選択された光学画像が5〜10個とられる。数値的ろ過技術を用いて、好ましくは、ナイフの傷などが除去される。かくしてカット表面解析は、天然ゴム化合物内部のカーボンブラック分散の質に関する情報を提供する。特定的には、未分散面積の百分率(%)が、カーボンブラックのマクロ分散の質を表わす。マクロ分散の質が劣化するにつれて、未分散面積の百分率は増大する。従って、未分散面積の百分率を減少させることによって、分散の質を改善することができる。上述の通り、混合作業は、混合効率及びマクロ分散に対し直接的な影響を有する。一般に、混合時間を長くし、混合をより強いものにすることによって、エラストマー、例えば天然ゴムマスターバッチ内により良いカーボンブラックマクロ分散が達成される。しかしながら残念なことに、より長くより強力な混合によりさらに優れたマクロ分散を達成すると、カーボンブラックが分散させられているエラストマーは劣化する。このことは、機械的/熱的劣化をきわめて受けやすい天然ゴムの場合は特に問題が大きい。バンブリーミキサーといった既知の混合技術及び装置を使用したより長時間でより強力な混合は、ゴムマスターバッチ組成物の分子量を減少させる。かくして、天然ゴム中のカーボンブラックのマクロ分散の改善は、それに対応してゴムの分子量が一般に望ましくないほどに減少していく状態で達成されることがわかっている。
【0009】
乾式混合技術に加えて、撹拌された凝固タンクに連続的にラテックス及びカーボンブラックスラリーを供給することが知られている。このような「湿式」技術は一般に、SBR といったような合成エラストマーと共に用いられる。凝固タンクは、標準的に約 2.5〜4のpHをもつ塩又は水性又は酸性溶液といった凝固剤を含んでいる。ラテックス及びカーボンブラックスラリーは、湿潤クラムと呼ばれる小さなビーズの形になるよう、凝固タンク内で混合、凝固される。クラムと酸排液は、標準的には、振動式揺動ふるいなどを用いて分離される。次にクラムは、撹拌された第2のタンク内に投下され、ここで洗浄されて中性又は近中性pHを達成する。その後クラムは、付加的な振動ふるい及び乾燥段階などを受ける。この方法に対する変形形態が、天然及び合成エラストマーの凝固について提案されてきた。本発明と同様にCabot Corporation に譲渡されるHagopian等, に対する米国特許第 4,029,633号においては、エラストマーマスターバッチの調製のための連続的プロセスが記述されている。カーボンブラックの水性スラリーが調製され、天然又は合成エラストマーラテックスと混合される。この混合物は、任意にさまざまな既知のクリーミング剤のいずれかを用いるいわゆるクリーミング作業を受ける。カーボンブラック/ラテックス混合物のクリーミングに続いて、これは凝固段階に付される。特定的に言うと、クリーミングされたカーボンブラック/ラテックス混合物は、単一の凝集性の流れとして凝固液の流れのコアの中へと導かれる。クリーミングされたカーボンブラック/ラテックス混合物の固体流は、凝固に先立ち凝固液の流れによりせん断及び微粒子化を受けると言われ、次に凝固の完成のため適切な反応ゾーンに移される。かかる凝固段階の後、プロセスの残りの部分は、実質的に従来通りであり、廃棄生成物「しょう液」からのクラムの分離及びクラムの洗浄と乾燥が関与する。幾分か類似の方法が、Heller等に対する米国特許第 3,048,559号に記述されている。カーボンブラックの水性スラリが、天然又は合成エラストマー又はラテックスの流れと連続的に配合される。2つの流れは、激しい水の乱流及び衝撃が関与すると説明されている条件下で、混合される。上述のHagopian等の特許の場合と同様に、カーボンブラックスラリー及びエラストマーラテックスの組合せ流は、酸又は塩の凝固剤溶液の添加によって、その後凝固させられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
さまざまな産業において長い間、改良されたマクロ分散をもつ適切なエラストマー中に分散した微粒子充てん材、特に例えば、天然ゴム中に分散したカーボンブラックのエラストマー化合物に対するニーズが存在していた。上述の通り、改良されたマクロ分散は、それ相応に改善された美的及び機能的特性を提供することができる。特に望ましいのは、天然ゴム分子量が高くなるにつれてマクロ分散の改善が達成される、天然ゴム中にカーボンブラックが分散した新しいエラストマー化合物である。本発明の目的は、これらの長い間求められてきたニーズの一部又は全てを満たすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の形態に従うと、エラストマーマスターバッチを調製するための方法には、凝固ゴム反応装置の混合ゾーンに、微粒子充てん材流体及びエラストマーラテックス流体を同時に供給することが関与している。凝固ゴムゾーンが混合ゾーンから延びており、好ましくは、流入端部から排出端部へと下流に向かう方向に断面積を漸進的に増大させていく。エラストマーラテックスは天然でも合成でもよく、微粒子充てん材流体は、ラテックスを凝固させるのに有効なカーボンブラック又はその他の微粒子充てん材を含む。微粒子充てん材流体は、好ましくは注入される流体の連続高速ジェットとして混合ゾーンに供給され、一方ラテックス流体は、低速で供給される。微粒子充てん材流体の速度、流量及び微粒子濃度は、排出端部に先立って微粒子充てん材でエラストマーラテックスを実質的に完全に凝固するべく凝固ゴムゾーンの少なくとも上流部分内でラテックス流体の高いせん断を伴う混合及び混合物の乱流をひき起こすのに充分なものである。かくして、酸又は塩の凝固剤を利用する必要なく、好ましい実施形態に従って、実質的に完全な凝固を達成することができる。
【0012】
もう1つの実施形態に従うと、エラストマーマスターバッチを製造する連続流方法には、凝固ゴムゾーン内でエラストマーラテックスと微粒子充てん材の混合物の半拘束連続流を樹立する凝固ゴム反応装置の混合ゾーンに対しラテックス流体及び微粒子充てん材流体を連続的かつ同時に供給することが含まれる。「虫」又は小球の形をしたエラストマーマスターバッチクラムが、凝固ゴム反応装置の混合ゾーン内へのラテックス及び微粒子充てん材流体流の進行中の供給と同時に、実質的な一定流として凝固ゴム反応装置の排出端部から排出される。特に、凝固ゴム反応装置の排出端部におけるプラグ型流及び大気圧又は近大気圧条件は、直ちに又はひきつづきさらなる処理段階を行なうためといったようにエラストマーマスターバッチ製品の制御及び収集を容易にする上できわめて有利である。
【0013】
装置態様に従うと、好ましくは低圧の実質的に積層タイプのフロー条件で前記凝固ゴム反応装置の混合ゾーンにエラストマーラテックス流体を供給するための手段が提供され、又上述のとおりのエラストマーラテックスを巻込み混合ゾーンから下流に向って流れる混合物が凝固ゴム反応装置の排出端部に達する前に凝固を達成するのに充分な速度又は運動エネルギーのジェットを作り出すのに充分な圧力下で混合ゾーンに微粒子充てん材流体を同時に供給するための手段が提供されている。以下で詳述するいくつかの好ましい実施形態に従うと、エラストマーラテックス流体を供給するための手段及び微粒子充てん材流体を供給するための手段は各々、凝固ゴムゾーンを構成する実質的に管状の部材と一体化した混合ヘッド内の供給流路を含んでいてよい。混合ゾーンを、該混合ヘッド内のかかる供給流路の接合部に具備することができる。いくつかの好ましい実施形態に従うと、混合ゾーンは単に凝固ゴムゾーンの同軸延長部分である。凝固ゴム反応装置の断面積の漸進的増加は、いくつかの好ましい実施形態において連続的であり、その他の好ましい実施形態においては段階的である。さらに、凝固ゴム反応装置には、以下でさらに詳述する通り、その排出端部にダイバータ(diverter) といった任意の特長を具備することもできる。エラストマーマスターバッチの連続流製造のための本書で開示される装置の付加的な任意の及び好ましい特長については、以下の詳細な説明の中で論述する。
【0014】
さらにもう1つの形態に従うと、以上で開示された方法又は装置の製品として、エラストマー複合体が提供されている。好ましい実施形態に従うと、これまで達成されたことのない、微粒子充てん材のマクロ分散レベル、エラストマーの分子量、微粒子投入レベル、微粒子充てん材の選択(例えば例外的に高い表面積及びストラクチャーのカーボンブラック充てん材)及び/又はその他の特徴をもつ新規のエラストマー複合体が提供されている。この点に関して、ここで開示されている方法及び装置は、エラストマーの分子量の劣化をほとんど又は全く伴なわずに、天然ゴムといったエラストマーの中で、 1.2未満さらに1未満というストラクチャー対表面積比 DBP:CTABをもつカーボンブラックといった或る種の充てん材についてさえ、すぐれたマクロ分散を達成することができる。本発明のさらにその他の形態に従うと、ここで開示されている方法又は装置によって製造されたエラストマー複合体から成る中間製品も、その最終製品と共に提供されている。
【0015】
ここで開示されている方法及び装置によると、従来の凝固剤を使用しなくても凝固を達成するのに充分であるフロー制御条件と乱流レベルでのエラストマーラテックス及び微粒子充てん材の混合が関与する連続流プロセスでエラストマーマスターバッチを製造することができる。実際、ここではエラストマーと充てん材を強力に乾式素練りする必要も又液体ラテックス/微粒子組成物を凝固剤流又はタンクに露呈させる必要もなく、エラストマーマスターバッチクラムが達成されること、すなわち凝固したラテックスが得られることが商業的にきわめて有利であることは、直ちに認識できるだろう。かくして、型通りの商業的実現においては、酸性凝固溶液を用いる場合のコストと複雑性を回避することができる。上述のHeller等の特許及びHagopian等の特許にあるようなラテックス及び微粒子の予備混合が関与する先行技術は、付随するコスト及び廃棄物処分上の不利点を伴う通常の凝固剤溶液に対するラテックス/微粒子混合物の露呈無く凝固を達成する可能性を認識さえしていない。
【0016】
凝固ゴム反応装置の混合ゾーンに対するラテックス流体及び微粒子充てん材流体の供給量は、凝固ゴム反応装置の排出端部において製品クラム内に遊離ラテックスも未分散充てん材もほとんどない形で高収量を達成するように、精確に調節することができる。理論に拘るわけではないが、凝固ゴム固体が混合ゾーン内及び/又はその下流の凝固ゴムゾーン内で形成されつつあるという点を除き、この混合ゾーン内では擬単相系が樹立されていることがここで理解できる。微粒子のラテックス流体内への徹底的な混合及び分散及び凝固のための微粒子充てん材流体ジェットの衝撃によるラテックスの充分な乱流すなわち充分に活発なせん断を達成する上で、凝固ゴム反応装置の混合ゾーン内への微粒子充てん材流体のきわめて高い供給速度及びラテックス流体の供給との間の速度差が有意であると考えられている。高い混合エネルギーは、制御された製品送り出しと合わせて、優れた分散をもつ製品マスターバッチクラムを生み出す。凝固ゴムは、製造後に望ましい押出し物の形に成形される。
【0017】
もう1つの形態に従うと、天然ゴムの中に分散した微粒子充てん材を含んで成り、該充てん材のエラストマー複合体中のマクロ分散レベルが、未分散面積約 0.2%未満、好ましくは未分散面積約 0.1%未満であるような新規なエラストマー複合体が提供されている。以上の論述と一貫性をもたせるため、ここでマクロ分散というのは、10ミクロンより大きい欠陥についての未分散面積の百分率として測定されたカーボンブラックのマクロ分散D(%)を意味する。ここで開示されている天然ゴムマスターバッチ及びその他のエラストマー複合物においては、天然ゴムの分子量すなわちゾル部分のMWsol (重量平均)は、好ましくは少なくとも約 300,000、より好ましくは少なくとも約 400,000であり、いくつかの好ましい実施形態においては、 400,000〜900,000 の間である。エラストマー複合体、任意には、約0〜20phr 、より好ましくは約0〜10phr のエキステンダー油及び/又はカーボンブラック充てん材と天然ゴムを混ぜ合わせる上で任意に使用するのに周知であるようなその他の成分を含んで成る。いくつかの好ましい実施例に関連して以下で説明するように、ここで開示されている新規のエラストマー複合体はきわめて望ましい物理特性及び性能特性を提供することができる。従って本発明は、多大な技術的進歩を提示している。
【0018】
もう1つの形態に従うと、カーボンブラック充てん材の一定のマクロ分散レベル、天然ゴムの分子量、カーボンブラック投入レベル、カーボンブラック特性(表面積及びストラクチャーを含む;例えば例外的に大きい表面積及び小さいストラクチャーをもつカーボンブラック充てん材)及び/又はその他の特性を含む、これまで得られなかった新規な物性の組合せが存在する新しいエラストマー複合体が提供されている。本発明のさまざまな形態に従って、マスターバッチ組成物及び中間製品が、それらから形成される最終製品と共に提供される。
【0019】
本発明のさまざまな実施形態の上述の及びその他の態様及び利点については、いくつかの好ましい実施形態についての以下の詳細な記述を読むことによりさらに良く理解できるであろう。
【0020】
添付図面は必ずしも一定の比例で精確に縮小されたものでないということを理解すべきである。いくつかの特長は、例示上の便宜又は明確さのため拡大又は縮小されていることがある。以下の論述において使用される方向性の指示は、相反する記述がないかぎり、又は前後関係から相反して明らかでないかぎり、図面に例示された構成要素の方向性に基づくものである。一般に、本発明の異なる実施形態に従った装置は、さまざまな配置で利用することができる。本発明の利点から見て、型通りの技術的技量を利用しかつ望ましい生産量、材料選択、使用サイクルなどといった意図された利用分野に特定の周知の要因を考慮に入れて、本発明の装置のための適切な寸法及び方向性を決定することは、当業者の能力の範囲内に入るものである。1つの図面で使用されている参照番号は、同じ特長又は要素についてその他の図面でも使用され得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ここで開示されている方法及び装置によると、従来の凝固剤を使用しなくても凝固を達成するのに充分であるフロー制御条件と乱流レベルでのエラストマーラテックス及び微粒子充てん材の混合が関与する連続流プロセスで、エラストマーマスターバッチを製造することができる。実際、ここではエラストマーと充てん材を強力な乾式素練りする必要も又は液体ラテックス/微粒子組成物を凝固剤流又はタンクに露呈させる必要もなく、エラストマーマスターバッチクラムが達成されること、すなわち凝固したラテックスが得られることが商業的にきわめて有利であることは、直ちに認識できるだろう。かくして、型どおりの商業的実現においては、酸性凝固溶液を用いる場合のコストと複雑性を回避することができる。上述のHeller等の特許及びHagopian等の特許にあるようなラテックス及び微粒子の予備混合が関与する先行技術は、付随するコスト及び廃棄物処分上の不利点を伴う通常の凝固剤溶液に対するラテックス/微粒子混合物の露呈無く凝固を達成する可能性を認識さえしていない。
【0022】
凝固ゴム反応装置の混合ゾーンに対するラテックス流体及び微粒子充てん材流体の供給量は、凝固ゴム反応装置の排出端部において製品クラム内に遊離ラテックスも未分散充てん材もほとんどない形で高収量を達成するように、精確に調節することができる。理論に拘るわけではないが、凝固ゴム固体が混合ゾーン内及び/又はその下流凝固ゴムゾーン内で形成されつつあるという点を除き、この混合ゾーン内では擬単相系が樹立されるということがここで理解できる。微粒子のラテックス流体内への徹底的な混合及び分散及び凝固のための微粒子充てん材流体ジェットの衝撃によるラテックスの充分な乱流すなわち充分に活発なせん断を達成する上で、凝固ゴム反応装置の混合ゾーン内への微粒子充てん材流体のきわめて高い供給速度及びラテックス流体の供給との速度差が有意であると考えられている。高い混合エネルギーは、制御された製品送り出しと合わせて、優れた分散をもつ製品マスターバッチクラムを生み出す。凝固ゴムは、製造後に望ましい押出し物の形に成形される。
【0023】
ここで開示されている新規のエラストマー複合体を製造するための方法及び装置のいくつかの好ましい実施形態について以下で論述する。本発明のさまざまな好ましい実施形態はさまざまな異なる充てん材及びエラストマーを利用できるものの、本発明の方法及び装置の態様についての以下の詳細な説明の一部は、場合によって便宜上、天然ゴム及びカーボンブラックを含むマスターバッチを製造する上でその使用をまず第1に記述している。本開示の利点から見て、数多くの代替的な又は付加的なエラストマー、充てん材及びその他の材料を含むマスターバッチを製造するための以下の論述される作業原理に従って、ここで開示する方法及び装置を利用することは、当業者の能力の範囲内に入るものである。要するに、エラストマーマスターバッチを調製するためのかかる方法は、凝固ゴム反応装置の混合ゾーンに対し同時にカーボンブラック又はその他の充てん材のスラリー、及び天然ゴムラテックス流体又はその他の適切なエラストマー流体を供給することが関与している。凝固ゴムゾーンが混合ゾーンから延び、好ましくは流入端部から排出端部まで下流に向かう方向で断面積を増加させている。該スラリーは、天然ゴムラテックス流体が比較的低い速度で供給されるのに対して、好ましくは注入される流体の連続高速ジェットとして混合ゾーンに供給される。充てん材スラリーの高い速度、流量及び微粒子濃度は、ラテックス流体の混合及び高いせん断、凝固ゴムゾーンの少なくとも上流部分内での混合物の乱流をひき起こし、排出端部に先立ってエラストマーラテックスを実質的に完全に凝固させるのに充分なものである。かくして、好ましい実施形態に従って、酸又は塩の凝固剤を利用する必要はなく、実質的に完全な凝固を達成することができる。エラストマー複合体を製造するための好ましい連続流方法には、凝固ゴムゾーン内でラテックスと充てん材スラリーの混合物の半拘束連続流を樹立する凝固ゴム反応装置の混合ゾーンに対しラテックス流体及び充てん材流体を連続的かつ同時に供給することが含まれる。「虫」又は小球の形をしたエラストマー複合体クラムが、凝固ゴム反応装置の混合ゾーン内へのラテックス及びカーボンブラックスラリーの流れの進行中の供給と同時に、実質的な一定流として凝固ゴム反応装置の排出端部から排出される。特に、凝固ゴム反応装置の排出端部におけるプラグ型流及び大気圧又は近大気圧条件は、直ちに又はひきつづきさらなる処理段階を行なうためといったようにエラストマー複合体製品の制御及び収集を容易にする上できわめて有利である。凝固ゴム反応装置の混合ゾーンに対する天然ゴムラテックス流体及びカーボンブラックスラリーの供給量は、凝固ゴム反応装置の排出端部において製品クラム内に遊離ラテックスも未分散カーボンブラックもほとんどない形で、高収量を達成するように、精確に調節することができる。理論に拘るわけではないが、凝固ゴム固体が混合ゾーン内及び/又はその下流の凝固ゴムゾーン内で形成されつつあるという点を除き、この混合ゾーン内では擬単相系が樹立されるということがここで理解できる。微粒子のラテックス流体内への徹底的な混合及び分散及び凝固のための微粒子充てん材流体ジェットの衝撃によるラテックスの充分な乱流すなわち充分に活発なせん断を達成する上で、凝固ゴム反応装置の混合ゾーン内へのカーボンブラックスラリーのきわめて高い供給速度及び天然ゴムラテックス流体の供給との速度差が有意であると考えられている。高い混合エネルギーは、制御された製品送り出しと合わせて、優れたマクロ分散をもつ新規の製品を生み出す。凝固ゴムは、製造後に望ましい押出し物の形に成形される。
【0024】
ここで開示されているエラストマー複合体を製造するための前述の好ましい装置及び技術は、添付図面と関連して論述されており、ここでエラストマーマスターバッチを製造する連続流方法は、好ましくは断面積が漸進的に増大しながら流入端部から排出端部まで延びる細長い凝固ゴムゾーンを形成する凝固ゴム反応装置内で、充てん材スラリー例えばカーボンブラックの水性スラリーと混合された例えば天然ゴムラテックス(フィールドラテックス又は濃縮物)といったエラストマーラテックスの半拘束定常流を利用している。「半拘束」流という語は、きわめて有利な特長を意味する。ここで使用されるこの語は、凝固ゴム反応装置内で混合されたラテックス流体と充てん材スラリーが進む流路が混合ゾーンの上流で閉じられているか又は実質的に閉じられ、凝固ゴム反応装置の反対側の下流端部すなわち凝固ゴム反応装置の排出端部において開放していることを意味するものとして意図されている。凝固ゴムゾーンの上流部分内の乱流条件は、凝固ゴム反応装置の開放排出端部における実質的にプラグ流タイプの条件と同時に、進行中の少なくとも準安定状態の形で維持される。排出端部は、少なくとも、一般に大気圧又はほぼ大気圧で、標準的に脱水押出し機の供給ホッパといった適切な収集手段内に(任意には囲い板付き又はふるい付き流路内で)単純に重力で滴下することによる凝固ゴムの排出を可能にするという意味で「開放」している。かくして半拘束流は、結果として、凝固ゴム反応装置の少なくとも一部分の内部で軸方向に又は長手方向に延びる乱流勾配をもたらす。理論に拘るわけではないが、ここで凝固ゴムゾーンは、凝固ゴム反応装置の上流部分における強い乱流の混合及び凝固と同時に排出端部における固体生成物の実質的にプラグタイプの排出流を可能にする上で有意であることがわかっている。混合ゾーン内への連続ジェットとしてのカーボンブラック又はその他の充てん材スラリーの注入は、実質的にプラグタイプのフロー条件下そして凝固ゴム反応装置の排出端部において一般的に大気圧の下で排出つれるエラストマーマスターバッチクラムの収集を同時に容易にしながら、同時進行の形で行なわれる。同様にして、スラリーノズルを通して混合ゾーン内への、そして標準的には凝固ゴムゾーンの下流端部でのスラリーの軸流速度は、排出端部よりも著しく高い。スラリーの軸流速度は、標準的には、好ましくは以下で論述する好ましい実施形態に従った小さな中ぐり軸方向に向いた供給管から混合ゾーン内に入るにつれて、秒速数百フィートとなる。標準的な利用分野において拡張する断面積をもつ凝固ゴム反応装置の流入端部における結果として得られる流れの軸流速度は、例えば秒速5〜20フィート、より一般的には秒速7〜15フィートである。排出端部では、ここでも対照的に、そこで排出されつつあるマスターバッチクラムの軸流速度は、秒速約1〜10フィート、より一般的には秒速2〜5フィートである。かくして前述の半拘束乱流は、その後の処理のため凝固ゴム反応装置からの制御された好ましい擬成形済み製品の送り出しを伴って、酸、塩又はその他の凝固剤溶液の流れ又はタンクの中でのその後の処置がない場合でさえカーボンブラック又はその他の充てん材との混合により天然ゴム又はその他のエラストマーラテックスが凝固されるというきわめて有意な利点を達成する。
【0025】
この点において、排出端部で「開放」しているものとしての凝固ゴム反応装置に対する言及は、排出端部が必然的に視野にさらされているか又は手で容易に触れることができるということを意味するよう意図されてはいない。これはむしろ、ダイバーダ(以下で詳述する)、乾燥機などといった収集装置又はその後の処理装置に永続的に又は着脱可能な形でとりつけられていてよい。凝固ゴム反応装置の排出端部は、高い圧力下にありかつ混合ゾーンにおける何らかの任意の後向き(すなわち上流に向かって)の走行に対し密封されている凝固ゴム反応装置の凝固ゴムゾーン内の乱流が、この排出端部に向かって走行しそこから退出するにつれて上述の圧力及び/又は速度勾配を樹立できるようにされているという重要な意味合いで、開放しているのである。
【0026】
この点において、流れの乱れは、排出端部に向かって凝固ゴム反応装置に沿って少なくなるということも認識すべきである。容量利用百分率、材料の選択などといった要因に応じて、排出端部に先立って、固体生成物の実質的なプラグ流が達成される。ここで流れが凝固ゴム反応装置の排出端部で又はその前で実質的にプラグ流であるという言及は、排出端部における流れが、まず第1にそして完全にマスターバッチクラムすなわち凝固したエラストマーマスターバッチの小球つまり「虫」で構成されているという事実に照らして理解されるべきである。クラムは、標準的に流れが実質的にプラグ流となる凝固ゴムゾーンに沿った箇所における凝固ゴムゾーンの内側形状に合わせて、擬成形される。「虫」又は小球のつねに前進する質量は、有利には、排出端部に向かって一般に又は主として軸方向に走行しており、しかも排出端部近くで凝固ゴムゾーンの一定の与えられた断面内で任意の時点でかなり均等な速度を有し、このためさらなる処理のため容易に収集され制御されるようになっているという意味で、プラグタイプの流れを有している。かくして、ここで開示されている流体相混合形態は、有利にも、定常状態又は準定常状態の条件にて行なわれ、その結果、高レベルの製品均質性がもたらされる。
【0027】
ここで開示されている方向及び装置の好ましい一実施形態は、図1に概略的に示されている。当業者であれば、システム構成、構成要素選択などのさまざまな面が、意図された利用分野の特定の特徴によって或る程度は左右されることになるということを認識するだろう。従って、例えば、システムの最大処理能力及び材料選択の柔軟性といった要因がシステム構成要素のサイズ及びレイアウトに影響を及ぼすことになる。一般に、このような考慮事項は、本開示の利点から見て、当業者の能力範囲内に充分入るものである。図1に例示されているシステムは、凝固ゴム反応装置の混合ゾーンまで低圧及び低速で連続的に天然ゴムラテックス又はその他のエラストマーラテックス流体を供給するための手段を内含していることがわかる。より特定的に言うと、ラテックスの供給物を加圧状態に保持するためのラテックス圧力タンク10が示されている。代替的には、凝固ゴム反応装置14の混合ゾーンに供給ライン12を介して供給されるべきエラストマーラテックス流体を保持するように適合されたぜん動ポンプ又はポンプシリーズ又はその他の適切な供給手段が具備された状態で、ラテックス貯蔵タンクを使用することができる。タンク10内のラテックス流体は、空気圧又は窒素圧などの下に保持されてよく、かくしてラテックス流体は、好ましくは10psig未満、より好ましくは約2〜8psig、そして標準的には約5psigのゲージ圧で混合ゾーンに供給されることになる。ラテックス供給手段のラテックス供給圧力及び流動ライン、接続などは、流れるラテックス流体内のせん断を、合理的にできるかぎり低くさせるように配置されるべきである。好ましくは全ての流動ラインは、たとえあったとしても大きい半径の曲りしか伴わない平滑でかつ形を揃えて連結されたライン同士の相互接続でなければならない。圧力は、混合ゾーン内への望ましい流速を出すように選択されており、有用な流速は秒速約12フィート以下である。
【0028】
適切なエラストマーラテックス流体には、天然及び合成のエラストマーラテックス及びラテックス配合物の両方が含まれる。ラテックスは当然のことながら、選択された微粒子充てん材による凝固に適したものでなくてはならず、最終ゴム製品の意図された用途又は利用分野に適したものでなくてはならない。本開示の利点から見て、ここで開示されている方法及び装置の中で使用するための適切なエラストマーラテックス又はエラストマーラテックスの適切な配合物を選択することは、当業者の能力範囲内に充分入るものである。エラストマーの例としては、ゴム、1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、及びプロピレンなどの重合体(例えば単独重合体、共重合体及び/又は三成分共重合体)があるが、これらに限られるわけではない。エラストマーは、約−120 ℃〜約0℃の範囲の示差走査熱量測定法(DSC) により測定されるガラス遷移温度(Tg)を有することができる。例としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR) 、天然ゴム及びその誘導体、例えば塩化ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)及びそれらのいずれかの油展された誘導体が含まれるが、これらに限られるわけではない。以上のもののいずれかの配合物も使用することができる。ラテックスは、水性キャリヤ液の中に入っていてよい。代替的には、液体キャリヤは、炭化水素溶剤であってもよい。いずれの場合でも、エラストマーラテックス流体は、適切な速度、温度及び濃度での混合ゾーン内への制御された連続的供給に適したものでなくてはならない。特定の適切な合成ゴムとしては、19部のスチレンと81部のブタジエンの共重合体、30部のスチレンと70部のブタジエンの共重合体、43部のスチレンと57部のブタジエンの共重合体及び50部のスチレンと50部のブタジエンの共重合体といったような、約10〜約70重量パーセントのスチレン及び約90〜約30重量パーセントのブタジエンの共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレンなどといった共役ジエンの重合体及び共重合体、そしてスチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、アクリロニトリル、2−ビニル−ピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、アルキル置換アクリレート、ビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、メチルビニルエーテル、アルファメチレンカルボン酸及びそのエステル及びアミド、例えばアクリル酸及びジアルキルアクリル酸アミドといった、共重合可能なエチレン基含有単量体とこのような共役ジエンの共重合体が含まれる。同様にここで使用するのに適しているのは、エチレン及びプロピレン、ブテン−1、及びペンテン−1といったその他の高アルファオレフィンの共重合体である。以下でさらに記述するように、本発明のゴム組成物は、エラストマー及び充てん材に加えて、硬化剤、カップリング剤そして任意にはさまざまな加工助剤、エキステンダー油及び劣化防止剤を含有することができる。
【0029】
この点において、ここで開示するエラストマー複合体が、加硫組成物(VR)、熱可塑性加硫ゴム(TPV) 、熱可塑性エラストマー(TPE) 及び熱可塑性ポリオレフィン(TPO) を内含することを理解すべきである。TPV, TPE及びTPO 材料は、性能特性を失なうことなく何度も押出し加工され成形され得るその能力によって、さらに分類される。かくして、エラストマー複合体を作るにあたっては、単数又は複数の硬化剤、例えば硫黄、硫黄供与体、活性剤、促進剤、過酸化物及び、エラストマー組成物の加硫を行なうのに用いられるその他の系を用いることが可能である。
【0030】
エラストマーラテックスが天然ゴムラテックスを含む場合、該天然ゴムラテックスは、フィールドラテックス又はラテックス濃縮物(例えば蒸発、遠心分離又はクリーミングにより製造されるもの)を含むことができる。天然ゴムラテックスは、当然のことながら、カーボンブラックによる凝固に適していなくてはならない。ラテックスは標準的には水性キャリヤ液の中に入って提供される。代替的には、液体キャリヤは炭化水素溶剤であってもよい。いずれの場合でも、天然ゴムラテックス流体は、適切な速度、温度及び濃度での混合ゾーン内への制御された連続的供給に適したものでなくてはならない。天然ゴムラテックスの周知の不安定さには、それが、混合ゾーン内のカーボンブラックスラリーの異常に高い速度及び運動エネルギーに遭遇した時点での前述の半拘束乱流の中に巻込まれるシステム全体を通して比較的低い圧力及び低いせん断を受けるという点で、対応がなされている。いくつかの好ましい実施形態においては、例えば、天然ゴムは約5psigの圧力、秒速約3〜12フィート、好ましくは秒速約4〜6フィートの範囲内の供給速度で、混合ゾーンに供給される。本開示の利点及び業界で一般に充分認められている選択基準の知識をもってすれば、適切なラテックス又はラテックス配合物の選択は、当業者の能力範囲内に充分入るものである。
【0031】
微粒子充てん材流体例えばカーボンブラックスラリーは、供給ライン16を介して凝固ゴム反応装置14の流入端部で混合ゾーンに供給される。スラリーは適切なキャリヤ流体の中に任意の充てん材を含むことができる。キャリヤ流体の選択は、微粒子充てん材の選択及びシステムパラメータに大幅に左右されることになる。水性及び非水性の両方の液体を使用することができるが、カーボンブラック及び或る種のその他の充てん材スラリーの製造におけるその使用適性、入手可能性及びコストから見て、数多くの実施形態において水が好まれる。
【0032】
カーボンブラック充てん材が使用される場合、カーボンブラックの選択は、エラストマーマスターバッチ製品の意図された用途に大幅に左右されることになる。任意には、カーボンブラック充てん材は同様に、本書で開示されている原則に従ってスラリー化され混合ゾーンに供給できるあらゆる材料を含むこともできる。適切な付加的微粒子充てん材としては、例えば、導電性充てん材、補強用充てん材、短繊維(標準的に40未満のL/Dアスペクト比を有するもの)、フレークなどが含まれる。かくして、ここで開示されている方法及び装置に従ったエラストマーマスターバッチを製造する上で利用できる微粒子充てん材例としては、カーボンブラック、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、コーティングされたカーボンブラック、化学的に機能化されたカーボンブラック、例えば付着した有機基をもつカーボンブラック、及びケイ素処理されたカーボンブラックが、単独又は互いに組合わせた形で含まれる。化学的に機能化された適切なカーボンブラックとしては、国際出願第PCT/US95/16194 (WO9618688)の中に開示されているものが含まれ、該出願の開示は、本書に参考として内含されている。ケイ素処理されたカーボンブラックの中では、カーボンブラックの固有の部分としてカーボンブラック凝集体の少なくとも一部分を通して、ケイ素の酸化物又は炭化物といった種を含有するケイ素が分布させられている。従来のカーボンブラックは、各々、炭素である単相から成る複数の集体の形で存在する。この相は、黒鉛化微結晶及び/又は無定形炭素の形で存在することができ、通常は2つの形で混合である。本書の他の箇所で論述している通り、カーボンブラック凝集体は、この凝集体の表面の少なくとも一部分の上にシリカといったケイ素含有種を被着させることによって変性させることができる。結果は、ケイ素コーティングされたカーボンブラックとして記述することができる。本書にケイ素処理されたカーボンブラックとして記述される材料は、コーティング又はその他の変性を受けたカーボンブラック凝集体ではなく、実際には異なる種類の凝集体を表わす。ケイ素処理されたカーボンブラックの中では、凝集体は2つの相を含有している。1相は炭素であり、これは黒鉛化微結晶及び/又は無定形炭素としてもなお存在することになるものであり、一方第2の相は、シリカである(又はその他のケイ素含有種でもありうる)。かくして、ケイ素処理されたカーボンブラックのケイ素含有種の相は、該凝集体の固有部分であり、これは該凝集体の少なくとも一部分全体にわたり分布させられている。多相凝集体は、その表面上に被着されたケイ素含有種をもつ予備形成された単相カーボンブラック凝集体から成る上述のケイ素コーティングされたカーボンブラックとはかなり異なるものであることがわかるだろう。このようなカーボンブラックは、カーボンブラック凝集体の表面に対しシリカ官能性を与えるべく表面処理され得る。このプロセスにおいては、凝集体の表面の少なくとも一部分の上にシリカ(ならびに場合によってはその他のケイ素含有種)を被着又はコーティングさせるべく、既存の凝集体を処理する。例えば、日本公開公報第63-63755号で論述されている通り、6以上といった高いpHで水性スラリー中でカーボンブラック凝集体の表面上に無定形シリカを被着させるのにケイ酸ナトリウム水溶液を使用することができる。より特定的には、例えば約5重量%のカーボンブラック及び95重量%の水から成る水性スラリーを得るべく、カーボンブラックを水中に分散させることもできる。スラリーは、85〜90℃いった約70℃以上の温度まで加熱され、pHはアルカリ溶液を用いて10〜11の範囲といった6以上のpHに調整される。カーボンブラック上に被着させることが望まれる量のシリカを含有するケイ酸ナトリウム溶液、及びケイ酸ナトリウム溶液を中性pHにもっていくための酸溶液が別々に調製される。該ケイ酸ナトリウム及び酸溶液はスラリーに対して滴下により添加され、このスラリーは適宜酸又はアルカリ溶液でその出発時のpH値に維持されている。溶液の温度も同様に維持される。ケイ酸ナトリウム溶液のための提案されている添加速度は、一時間につき、カーボンブラックの合計量に対して約3重量パーセントのケイ酸を添加するよう滴下添加を較正するためのものである。添加中スラリーは撹拌されていなくてはならず、その完了後の数分(例えば30分)から数時間(すなわち2〜3時間)、撹拌すべきである。これとは対照的に、ケイ素処理されたカーボンブラックは、揮発性ケイ素含有化合物の存在下でカーボンブラックを製造することによって得ることができる。かかるカーボンブラックは、好ましくは、燃焼ゾーンとそれに続く収束する直径をもつゾーン、制限された直径をもつ原料注入ゾーン及び反応ゾーンを有するモジュール式又は「段階」炉カーボンブラック反応装置の中で製造される。反応ゾーンの下流には急冷ゾーンがある。標準的には、一般に水である急冷用流体が、反応ゾーンから流れる新しく形成されカーボンブラック粒子の流れの中に噴霧される。ケイ素処理されたカーボンブラックを製造するにあたっては、前述の揮発性ケイ素含有化合物は、急冷ゾーンの上流の1ヵ所でカーボンブラック反応装置の中に導入される。有用な化合物は、カーボンブラック反応装置温度の揮発性化合物である。その例としては、テトラエトキシオルトシリケート(TEDS) 及びテトラメトキシオルトシリケートといったケイ酸塩、テトラクロロシラン及びトリクロロメチルシランといったシラン;及びオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMTS)といったコラチル(colatile) シリコーン重合体がある。揮発性化合物の流量は、処理されたカーボンブラック中のケイ素の重量百分率を決定することになる。処理されたカーボンブラックの中のケイ素の重量百分率は標準的には約 0.1〜25パーセント、好ましくは約 0.5〜約10パーセント、より好ましくは約2〜約6パーセントの範囲内にある。揮発性化合物は、カーボンブラック形成原料と予め混合させ、反応ゾーン内に原料と共に導入することができる。代替的には、揮発性化合物を、原料注入点から上流又は下流で、別途反応ゾーンに導入することもできる。
【0033】
上記の如く添加剤を利用することもでき、またその場合シリカ又はカーボンブラックのカップリングに有効であるカップリング剤は、シリコン処理されたカーボンブラックについても有効と考えられる。微粒子充填剤に適したカーボンブラックやその他多くの添加剤は市販されており、当業者に公知である。
【0034】
微粒子充填剤又は微粒子充填剤混合体は、使用するエラストマーのマスターバッチ生成物に合わせて選択する。本使用例の如く、本明細書開示の原理に基づきスラリー化でき、混合ゾーンを提供できる物質であれば、いずれも微粒子充填剤として使用できる。好適な微粒子充填剤の例としては、伝導性充填剤、強化充填剤、短繊維充填剤(典型的にはL/D比が 4.0以下)、フレークなどがある。上記カーボンブラックならびにシリカ型充填剤に加えて、粘土、ガラス、アラミド繊維の様なポリマー等からも充填剤を作製することができる。本発明に開示した利益をもたらす本明細書開示の方法と装置を用いるために好適な微粒子充填剤を選択することは当業者の通常の技術範囲であり、エラストマー組成への利用に好適である充填剤はいずれも本発明開示の技術を利用するエラストマー組成に応用できると考えられる。もちろん本明細書開示の各種微粒子充填剤を混合して使用することもできる。
【0035】
図1に示す本発明の好適な実施態様は、特にカーボンブラックの水性スラリーから成る微粒子充填剤液の調整に好適である。既知原理に従えば、単位重量当たりの表面積が小さいカーボンブラックを微粒子スラリー中で使用して単位重量当たり大きな表面積を持つ低濃度カーボンブラックと同様の凝結効率を得るためには、その濃度を高くしなければならないことが分かる。撹拌混合タンク18に水とカーボンブラック、例えば特別にペレット状にしたカーボンブラックを加えて、開始混合液を調整する。この混合液を出口20から、隔膜ポンプ等のポンプ24が装着された送液ライン22に流す。混合液はライン28を流れて入口30を通り、コロイドミル32又はその他のパイプライングラインダー等に導かれる。カーボンブラックは水性担体液内に分散して分散液を形成され、この分散液は出口31を通り、送液ライン33からホモジナイザー34に向かう。ポンプ装置36は連続空洞ポンプ又は同類のものが好ましく、また送液ライン33と連結している。ホモジナイザー34は、例えばMicrofluidics. International Corporation (Newton, Massachusetts, USA) より市販されているMicrofluidizerRシステムが好ましい。別の好適なホモジナイザーにはAPV Gaulin, Inc (Wilmington, Massachusetts, USA)のAPV ホモジナイザー部門より入手できるモデルMS18, MS45とMC120 がある。その他の好適なホモジナイザーも市販されており、それは本発明開示の利益を提供される当業者に公知であると考えられる。典型的には、上記システムを利用して水中にて調整されたカーボンブラックはおよそ90%以上がおよそ30ミクロン未満の大きさの集塊体であり、より好ましくはおよそ90%以上がおよそ20ミクロン未満の大きさの集塊体である。カーボンブラックを平均の大きさが5−15ミクロン、例えばおよそ9ミクロンまで粉砕することが好ましい。カーボンブラックは出口38を経てホモジナイザーから出て、供給ライン16を通り混合ゾーンに入る。スラリー圧はホモジナイザー工程にて10,000から15,000psi に達し、ホモジナイザーから出るときはおよそ600psi以上である。過剰な水あるいはその他の担体を取り除く作業を軽減するためには、カーボンブラック含有量は高いことが好ましい。典型例ではおよそ10から30重量%カーボンブラックが好ましい。本発明開示により利益を受ける当業者は、このスラリーのカーボンブラック含有量(重量%)と混合ゾーンへのスラリーの流速が、マスターバッチに所望されるカーボンブラック含有量(phr) を得るための混合ゾーンへの天然ゴムラテックス流速と同等でなければならないことを気づくだろう。カーボンブラックの含有量は、生成物に想定される応用方法に適した材料の特徴と性能を得る場合に既知である原則に従って選択される。典型例では、およそ30phr 以上のマスターバッチのカーボンブラック含有量を得るためには、CTAB値が10以上のカーボンブラックが十分量用いられる。
【0036】
スラリーは調整後すぐにマスターバッチ生産に使用されることが好ましい。スラリーを運ぶ送液管と、場合によって存在する貯留タンク等は、スラリー中のカーボンブラックが分散状態を実質的に保つ状態を確立し、又は維持するものでなければならない。スラリー中の微粒子充填剤が明らかに再凝結したり、沈殿することを防止し、あるいは実用的範囲まで軽減しなければならない。例えば、全ての送液ラインは平滑で、ライン間の接続も滑らかであることが好ましい。場合によっては、ホモジナイザーと混合ゾーンの間にアキュムレイターを用いて、混合ゾーン内のスラリーノズルチップに於けるスラリー圧と速度の変動を抑制する。
【0037】
上記の適当な工程パラメータの下に、供給ライン12を通り混合ゾーンに入った天然ゴムラテックス液又はその他のエラストマーラテックス液と供給ライン16を通り混合ゾーンに入ったカーボンブラックスラリーから、新規なエラストマー組成、特にエラストマーマスターバッチが生産できる。エラストマーマスターバッチに各種の添加剤を加える方法も提供される。1種類以上の添加剤からなる添加液を独立した供給流として混合ゾーンに供給することができる。好ましければ1種類以上の添加剤を前もってカーボンブラックスラリー又はより典型的にはエラストマーラテックス液と混合することもできる。添加剤は、例えば乾燥混合法により後でマスターバッチ内に混ぜ入れることもできる。各種の添加剤が当業者に高値であり、例えば酸化防止剤、オゾン亀裂防止剤、可塑剤、加工助剤(例えば液性ポリマー、油等)、樹脂、難燃剤、増量剤オイル、光沢剤やこれらの混合物がある。これら添加剤の一般的な利用と選択は当業者に公知である。本明細書開示のシステムでの応用は、本開示の利益と共に容易に理解できるだろう。特定の他の実施態様では、同様にして加硫剤を取り込ませ、加硫ベース化合物と見なすことができる加硫エラストマー複合体を製造することができる。
【0038】
混合ゾーン/凝結ゾーンアッセンブリーについて以下詳細に論じる。エラストマーマスターバッチクラムは凝固ゴム反応器14の排出端を通り、適当な乾燥装置内に送られる。図1の好適な実施態様では、マスターバッチクラムは多段階で乾燥される。まず脱水押出し機40に通し、ついでコンベアーに乗せて、又は重力により滴下、もしくは他の適当な手段41により乾燥押出し機42に通す。図1に示すカーボンブラック充填剤と一緒に天然ゴムマスターバッチを製造する通常の好適な実施態様では、脱水/乾燥工程により典型例では水分含有量をおよそ0から1重量%まで、好ましくは、0から 0.5重量%まで低下させる。好適な乾燥機は良く知られており、また市販もされているもので、例えば押出し乾燥機、流動層乾燥機、熱風あるいはその他のオーブン乾燥機等であり、French OilMachinery Co., (Piqua, Ohio, USA) により発売されているFrench Millsの様な装置である。
【0039】
乾燥押出し機42から押し出された乾燥されたマスターバッチクラムは冷却コンベアー44によりバーラー(baler) 46に送られる。バーラーは図1の装置に任意に設けられた都合のよい特徴であり、この中でマスターバッチクラムはチャンバー内に圧縮され、成形された安定した圧縮ブロック等になる。典型的には、運搬やその後の加工用に25から75ポンドのエラストマーマスターバッチがブロックあるいはベールに圧縮される。あるいは、製造物はクラムを切ってペレットの様にして供給されることもある。
【0040】
図1の実施態様に好適な、混合ゾーン/凝固ゴムゾーンアッセンブリーを含む凝固ゴム反応器14の寸法ならびに特別な設計上の特徴は、所望の処理能力、加工する材料の選択等といった設計要因に一部依存している。好適な実施態様の一つを図2に示すが、本例では凝固ゴム反応器48は、凝固ゴムゾーン52に結合部54で液体−密着シールにより取り付けられた混合ヘッド50を有する。図2には、エラストマーラテックスを混合ゾーンに送り込む第一サブシステム56、カーボンブラックスラリー又は別の微粒子充填剤を混合ゾーンに送り込むサブシステム57と任意の添加剤液、加圧空気等を混合ゾーンに送り込むサブシステム58が図示されている。混合ヘッド50は3つの送液チャンネル60, 61, 62を有している。送液チャンネル60は天然ゴムラテックス液用であり、送液チャンネル62はガスならびに/又は添加剤を直接送り込むためのものである。添加剤を直接注入するのに好適な実施態様では、炭水化物添加剤または、より一般的な非水混和性添加物を利用することで大きな利点が得られる。乳剤中間体を利用してエラストマーラテックスと前混和するのに好適な添加乳剤を作ることができることは良く知られているが、添加剤を直接注入する本発明開示の好適な実施態様によれば乳剤中間体が必要無くなるだけでなく、タンク、分散装置等の従来乳剤作製に必要とされた装置を排除することができる。従って、製造コストを下げ、工程を単純化することができる。以下述べる如く、スラリーが混合ゾーンに送り込まれる供給チャンネル61は、混合ゾーンと凝固ゴム反応器の凝固ゴムゾーンの両方に同軸であることが好ましい。1本の供給チャンネルだけがエラストマーラテックス液を受け取る様に示されているが、スラリーが混合ゾーンに送り込まれる中央供給チャンネルの回りに好適な数の供給チャンネルを配置することもできる。即ち、例えば図2の実施態様において、空気あるいは高圧空気もしくはその他のガスを混合ゾーンに供給するための4番目の供給チャンネルを配置してもよい。加圧空気はスラリーと同様にして中央軸供給チャンネル61を通り注入できる。補助供給チャンネルは使用しない場合、一時的あるいは永久的に封印することができる。凝固ゴム反応器の凝固ゴムゾーン52は、予定される応用目的に向けた設計主旨に沿って選択される軸長を有する第一部分64を有している。場合によっては、凝固ゴムゾーンはこの軸長の全域あるいはほぼ全域にわたり一定の断面積を有することもできる。例えばこの様な凝固ゴム反応器では、混合ゾーンから排出端までは単純な直線的な管形態の送液チャンネルから構成される。しかし、上記に論じた理由ならびに好適な実施態様に示した図に見られる様に、凝固ゴムゾーン52の断面積は入り口端66から排出端68に向かって漸次的に増加することが好ましい。より詳細には、断面積は入り口端から排出端に長軸方向に従って増加する。図2の実施態様の如く、凝固ゴムゾーンの断面積は一定断面積部分64に続いて、先に向かって連続的に大きくなる。凝固ゴム反応器(あるいは、より適切には凝固ゴム反応器内に規定される凝固ゴムゾーン)とその他の構成体の直径と断面積については、特記しない限り開放型流路の断面積とその当該流路の内直径を意味することとする。
【0041】
エラストマー成分、特にマスターバッチクラム72である凝結したエラストマーラテックスは凝固ゴム反応器48から分流器70を通り放出される。分流器70は放出端68で凝固ゴム反応器に調整可能な状態に取り付けられている。この供給器は、エラストマーマスターバッチクラム72を選択的に各種受け取り部位に通す様に調整できる。この特性は、例えば試験のためや、工程の初期不安定から一次的に不良製品が生じた場合の製造作業開始時に、製造物の流れからマスターバッチクラムを効率的に除くのに有利である。さらに、分流器は凝固ゴム反応器から製造物を各種の後加工路に分流できる様柔軟に設計されている。図1の好適な実施態様では、凝固ゴム反応器48から放出されるマスターバッチクラム72は分流器70を通り乾燥機40に受領される。
【0042】
凝固ゴム反応器48の断面の寸法は入り口端66と放出端68の間の角度αに沿って増加する。角度αは0°より大きく、当該好適実施態様では45°以下であり、より好ましくは15°以下であり、最も好ましくは 0.5°から5°の間である。角度αは、凝固ゴムゾーンの中央長軸から凝固ゴム反応器の端にある凝固ゴムゾーンの外周上の点Aまでに測定された角度の半分になる。この点については、凝固ゴム反応器の上流部分の断面積、即ち入り口端66近傍部分は、上記の原則に則り少しずつ広げて凝固ゴム体が準型取りされることが好ましい。凝固ゴムゾーンでの角度の広がりが大きすぎると、エラストマーマスターバッチが所望される小球状あるいは螺旋状のクラムとして製造されず、凝固ゴム反応器内にただ噴霧されてしまう。凝固ゴム反応器の内径の広がりがゆっくり過ぎると、特定の実施態様では供給物が逆流したり詰まったりし、さらに反応産物が混合ヘッド内に入ってしまうことがある。ラテックスが実質的に凝結し、流れがプラグ流に変わっていく凝固ゴムゾーンの下降流部分では、凝固ゴムゾーンの断面積を大きくしながら、あるいは変えないまま伸ばすことができる。即ち、好適実施態様で参照している先に向かってその断面積が大きくなる凝固ゴムゾーンは、流れが実質的にプラグ流ではない凝固ゴムゾーンの部分と理解すべきである。
【0043】
凝固ゴムゾーンの断面積(即ち、上記に論じた如く少なくともその上昇流部分では)は図2の実施態様に描写した如く連続的に増加するのではなく、むしろ多段階的に増加するだろう。図3に示した実施態様では、本明細書開示の方法と装置を用いたエラストマーマスターバッチ製造のための連続フローシステムには、凝固ゴムゾーンの断面積が多段階的に増加する混合ヘッド/凝固ゴムゾーンアッセンブリーが含まれている。この様な多段階の実施態様に於ける凝固ゴムゾーンの個々の区分は隣り合う断面と滑らかに接続していることが好ましい。これにより、そうでない場合には隣り合う区分間で直径が不連続あるいは断続的に増加するのに対して、滑らかで連続的な凝固ゴムゾーン面が形成される。図3の凝固ゴムゾーンは3段階で広がっており、4つの異なる区分あるいはサブゾーン74−77がある。先述の設計原則に則り、凝固ゴムゾーン53の断面積は入り口端66から排出端68上の点Aにかけて、凝固ゴム反応器の上昇部分で必要とされる流れの調整が可能な全体角を成しながら増加している。第一区分74には(1)混合ゾーンの直下流にある混合ヘッド50の定直径部分、入り口端66の接続部54に接続している同一あるいは同様の直径部分を有する部分である。この第一区分は一定断面直径D1 と軸寸法あるいは軸長Lを有する。この第一区分74では、長さL1 は直径Dの3倍以上でなければならず、より好ましくはD1 の5倍以上、最も好ましくはD1 の12倍から18倍以上である。各連続する区分は一定の断面直径と、前(即ち上流)の区分の断面積のおよそ2倍の断面積を有することが望ましい。即ち、例えば、区分75は一定の断面寸法と、区分74の断面積の2倍の断面積を有している。同様に区分76の断面積は区分75の断面積の2倍であり、また区分77の断面積は区分76の断面積の2倍である。各区分75−77では、長さは直径の3倍以上であることが好ましく、より好ましくは3から7倍であり、通常はおよそ5倍である。即ち、例えば、区分76の長軸方向寸法L3 は直径D3 の5倍以上であることが好ましい。
【0044】
図3の実施態様に対応する混合ヘッドと凝固ゴムゾーンアッセンブリーを図4に一部断面の形に示す。混合ヘッド50は接続部54を介して凝固ゴムゾーンの突出部53に一体化している。これが複数の供給チャンネル60, 61, 62が、突出部53内の凝固ゴムゾーン部分と実施的に同軸であり、細長い実質的に円筒形であるチャンネル60と結合部を形成する混合ゾーンを規定している。これが本発明開示の方法と装置を操作する上で、そして/または混合ゾーンの境界線を正確に規定する上で、そして/又は凝固ゴムゾーンの境界線を正確に規定するうえで必須ではないことが認識されるだろう。本開示により利益を受ける当業者に明らかなように、供給チャンネル結合域の設計については様々な変形が可能である。この点については、通常の好適ガイドラインの如く、例えば図4に示す型の実施態様では、スラリーチップ67は円筒部分80の開始部上流に位置することから、供給チャンネルの結合部内では縦方向のほぼ中央部となる。この様な実施態様では、スラリーチップ67から円筒部80の開始部の円周部から仮想される円錐によって規定される最小横断面積が、ラテックス供給チャンネル60の横断面積よりも大きいか、少なくとも等しいことが好ましい。チャンネル80と少なくともエラストマーラテックスが実質的に凝結完了する前の乱流が発生する凝固ゴムゾーンの上流部分については、共に円形の断面を有していることが好ましい。
【0045】
カーボンブラックスラリー又はその他の微粒子充填剤液を供給する装置は、凝固ゴムゾーンに向かって開口している開口部分又はスラリーノズル67に向かって延びる、混合チャンバーと実質同軸である供給管82から成る。この装置は本書記載の好適実施例の極めて有益な特徴の一つである。上記の如くラテックスの供給速度に比べるとカーボンブラックスラリーは極めて早い速度で混合ゾーンに送り込まれることと、小内径の供給管82の軸配置により、効果的な乱流が発生する。チャンネル82の直径D(上記の如く、凝固ゴムゾーンの区分74に続く部分の直径D1 に実質等しいことが好ましい)はスラリー供給管82の内径の2倍以上あることが好ましく、より好ましくは供給管82の内径のおよそ4から8倍であり、典型的にはおよそ当該内径の7から8倍である。供給管82は混合ヘッド50の供給チャンネル61の上流端にある入り口と液体−密着シールを形成している。軸供給管82の直径は、大まかには必要とされる容積流速とスラリーノズルチップ67を通り混合チャンバー内に入る時のスラリーの軸方向速度から決定される。正確な、又は必要とされる容積と速度は本発明開示により利益を受ける当業者により容易に決定することができ、そして一部は材料濃度と種類の関数となるだろう。本書に示し、また開示した実施態様では、カーボンブラックスラリーを除去することができ、異なる時間に各種のマスターバッチ組成を製造する場合に望まれる柔軟性を提供する。あるいは製造作業に用いた供給管は取り外して、その後に行う別の製造に適した内径のより大きな、又は小さな管と交換することができる。スラリーが供給管を出る時の圧と速度の観点より、混合ゾーン内に噴霧あるいはジェットすることが好ましい。このことは、少なくとも特定の実施態様に於いては本質的に既に液体が充満している域内にスラリーを高速で注入することを意味すると解釈できる。即ち、このことはスラリーノズルチップを通過させる様に急速に分配するスプレーのことであり、必ずしも単純な散布軌道に物質滴を自由飛行させるということを意味しない。
【0046】
追加の供給チャンネル60と62はそれぞれ供給チャンネル60と下流チャンネル80と角度βで結合部84, 85を形成する。角度βは多くの実施態様では0°以上、 180°以下の値を有する。典型的にはβは例えば30°−90°である。スラリーノズルチップ67に存在する高速スラリーに伴う陰圧、即ちラテックス流のキャビテーションは、十分な混合を妨げ、その結果不良なマスターバッチを生じる不利益の原因となることから避けることが望ましい。空気もしくはその他の気体を注入もしくはその他の方法により混合ゾーン内に供給することで上記の様な真空状態の破綻を助けることができる。更に、供給チャンネル60の入り口86に導かれる天然ゴムラテックス用に拡張した供給ラインは、ラテックス液貯留槽として機能することが望まれる。図4の好適実施例では、ラテックス供給チャンネル60はスラリーノズルチップ67に接する混合ゾーンと交差している。しかし、ラテックス供給チャンネルは混合チャンネル上流もしくはスラリーノズルチップ67の下流を横切ることもできる。
【0047】
カーボンブラックスラリーあるいはその他の微粒子充填剤液はおよそ 300psig以上の圧、およそ 500から5000psigといった圧、例えば1000psigで供給ライン82に送られる。好ましくは液状スラリーはスラリーノズルチップ67を 100ft/秒の速度以上で、好ましくはおよそ 100からおよそ 800ft/秒、より好ましくはおよそ 200から 500ft/秒、例えばおよそ 350ft/秒の速度で通過して混合ゾーン内に供給される。図4の矢印51は、スラリーノズルチップ67下のチャンネル80に入る供給ライン60と62を通るエラストマーラテックスと補助供給物質の一般的な流れを示している。即ち、スラリー液とラテックス液は上記に記した様に大きく異なる流速で混合ゾーン内に供給される。理論化するものではないが、現在のところこの供給差により良好なマクロ分散と凝結をもたらすラテックスせん断条件が混合ゾーン内に整うと理解される。
【0048】
図5と6には別の好適な実施態様が示されているが、この例では図4の実施態様の単軸供給管82が複数の軸方向に伸びた管90−92に替わっている。供給管の数はもっと多く、例えば軸方向に伸びた供給管の数をおよそ6あるいは8本にすることもできる。異なる処方の製造を行うための直径が異なる多様な供給管を用いることは、製造に於ける柔軟性に利点がある。また、複数の供給管を用いることで、凝固ゴム反応器内の混合ゾーン内と凝固ゴムゾーンの両方で良好な乱流を同時に得ることができる。
【0049】
図7には混合ヘッドの別の実施態様を示す。混合ヘッド150 は混合ゾーン179を規定している。単軸供給チャンネル161 はカーボンブラックスラリー又はその他の微粒子充填剤液を高速で混合チャンバー179 内に供給するのに適した供給管182 に接続している。供給管182 中央部の中ぐり孔はスラリーノズルチップ167で終わっている。スラリーノズルチップ167 の直ぐ上流は定直径ノズル部分168であり、より大きな中ぐり孔域169 に継がっている。定直径ノズル部分168 の軸長は直径のおよそ2から6倍であり、例えばおよそ5倍であることが好ましい。第二供給チャンネル160 は混合ゾーン179 と90°の角度で接続部184 を形成し、混合ゾーン内にエラストマーラテックス液を送り込む。ラテックス液供給チャンネル160 の横断面直径はスラリーノズルチップ167 や定直径ノズル部分168 の横断面直径に比べて十分大きい。理論化する意図はないが、ノズル部分168 の上流の中ぐり孔部分の直径を広げながら軸方向にノズル部分を伸ばすことが、供給管182 を通り混合ゾーン179 内に入るスラリーの流れの安定化に有益であると思われる。供給管182 の中ぐり孔は20°で面取りされた時に良く機能すると思われ、即ち円錐部分169 は上流方向に向かっておよそ20°の角度で広がっている。混合ゾーン179 の下流は伸長した凝固ゴムゾーンである。上記の原則により、この凝固ゴムゾーンは僅かに伸長する必要がある。即ち、その軸長は直径に比べて僅かに長い必要がある。しかし、段階的に伸長していく凝固ゴムゾーンを用いることが好ましい。
【0050】
上記の如く、エラストマーマスターバッチの凝結は凝固ゴム反応器末端で、あるいはその前で実質終了する。即ち、凝結は凝固ゴム反応器の凝固ゴムゾーン内で起こり、凝結液等を追加して流し込む必要はない。このことは必ずしも初期凝結が混合ゾーン内で始まることがある可能性を除外するものではない。混合ゾーンは、凝結が起こる凝固ゴムゾーン外部分と見なすことができるだろう。また、エラストマーマスターバッチが凝固ゴム反応器を出る前に凝結を実質終了するということは、その後の工程ならびに追加処置段階の可能性を除外するものではない。この点について、本発明開示の新規方法による天然ゴムラテックスを対象とする好適な実施態様では、実質的な凝結終了ということはラテックスのゴム炭化水素のおよそ95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、最も好ましくは99重量%以上が凝結することを意味している。
【0051】
本明細書に開示、記載された方法と装置は優れた物理特性と性能を有するエラストマー複合体を作る。本発明の新規エラストマー複合体には、上記に開示した方法と装置により作られるマスターバッチ配合物に加えて、そのマスターバッチ配合物から得られる中間化合物や最終製品も含まれる。特に、エラストマーマスターバッチは天然ゴムラテックス(ラテックス濃縮液もしくはフィールドラテックス)を、優れた物理特性と性能を有する各種等級のカーボンブラック充填剤と共に利用して製造することができる。
【0052】
現在、タイヤ処理等広く市場応用されているカーボンブラックだけでなく既存の装置と方法では市場応用に不適とされるカーボンブラックについても十分に利用できる。表面積が大きく、ストラクチャーが小さいために通常のカーボンブラックに求められる市場条件では十分なマクロ分散レベルが得られず、また/あるいはエラストマーの分子量が一定に保てないために応用不適とされるカーボンブラックも、本発明開示の新規な弾性マスターバッチ配合物には非常に適している。この様なエラストマー複合体は天然ゴム中のカーボンブラックの分散に優れており、また天然ゴムの分子量の保存にも優れている。さらに、これらの利益を処理タンクあるいは酸性液あるいはその他の凝結剤の液流を含む凝結工程を必要とせずに得ることができる。即ち、凝結処理のコスト高と複雑化を回避できるだけでなく、作業から液流操作も除かれる。
【0053】
既知の乾燥素練り技術では、大きな分子量分解無しにこの様な充填剤の均一分散体を得ることはできず、従って本発明の好適な実施態様に示す新規な天然ゴムマスターバッチ配合物を製造することはできない。この点について、カーボンブラックがストラクチャー対表面積比DBPA:CTABが 1.2未満、そして 1.0未満で天然ゴムが高分子天然ゴムである場合でも、新規なエラストマー複合体は優れた天然ゴム中でのカーボンブラックのマクロ分散を有していることが示されている。既知混合技術では、天然ゴムの分子量分解無しにこの様な優れたカーボンブラックのマクロ分散を得ることはできず、従って新規なマスターバッチ配合物やその他の本発明のエラストマー複合体を製造できなかった。本発明開示による従来得られなかったカーボンブラックのマクロ分布を有する好適な新規エラストマーマスターバッチ配合物は、マクロ分散に劣る既知マスターバッチの替わりに利用することができる。即ち、本発明開示のマスターバッチは、公知技術を利用して加硫成分内に取り込ませることができる。この新規な加硫化合物は好適な実施態様において、マクロ分散に劣るマスターバッチから成る対応する加硫化合物と通常は同等、有る場合にはそれ以上の物理特性ならびに性能を有している。しかし、本発明では、混合時間、注入エネルギー、ならびに/又はその他のコストを軽減してマスターバッチを製造することができる。
【0054】
特に特定の好適な実施態様では、天然ゴムラテックスとカーボンブラック充填剤マスターバッチを優れた物理特性と性能を持った状態で製造することができる。非常に表面積が大きく、ストラクチャーが小さいカーボンブラックを利用した場合でも、同程度のカーボンブラック分散を乾燥素練りで得る時起こる、長時間、強い力が原因の天然ゴムの分解無しに優れたカーボンブラックのマクロ分散を得ることができる。この点に関して、ストラクチャーと表面積比、DBPA:CTABが 1.2未満のカーボンブラックを利用して、そして 1.0未満のカーボンブラックを利用した場合でも、高い分散度をえることができる新規な天然ゴムマスターバッチ組成は特に有益である。本例での如く、カーボンブラックストラクチャーは、ASTM D2414記載の方法により、カーボンブラック 100グラム当たりのDBPA立方センチメーターで表されるジブチルフタル酸塩吸着量(DBPA)として測定することができる。カーボンブラック表面積はASTM D3765−85記載の方法により、カーボンブラック1グラム当たりの平方メーターとして表されるCTABとして測定することができる。従って、新規な天然ゴムマスターバッチは、従来不可能であった分子量分布や充填剤分散レベルの様な物理特性の組み合わせや/又は従来不適であった非常に大きな表面積と小さなストラクチャーを持ったカーボンブラックの様な充填剤を取りいれることが可能となった。本発明開示の方法と装置により製造された天然ゴムマスターバッチの分散特性は公知のMWsol (平均重量)とマクロ分散により示すことができる。具体的には、好適な実施態様により製造されたマクロ分散レベルは乾燥素練りで製造されたほぼ同じMWsol を持つマスターバッチに比べて明らかに優れている。最も大きな特徴は、これらの好適な実施態様の分散の質がカーボンブラック充填剤の形状に大きく依存しないことである。本発明開示の方法と装置を用いて得ることができる分散のレベルに影響するその他のファクターとしては、スラリー中のカーボンブラックの濃度、スラリーに注入した総エネルギーと液体流の混合中に注入したエネルギー等がある。
【0055】
本発明開示の天然ゴムマスターバッチ中のカーボンブラックのマクロ分散の質は、およそ同じMWsol (重量平均)を有する既知のマスターバッチに比べて明らかに優れている。新規なエラストマー複合体の好適な実施態様では、従来達成できなかったフィールドラッテクス状態にある天然ゴムとほぼ同等のMWsol で(例えば、およそ1,000,000)優れたカーボンブラック分布を得ることができる。この優れた分散特性はストラクチャーが小さく、大きな表面積を有する、例えばDBPAが 110cc/ 100g未満で、CTABが45〜65m2 /gを超え、DBPA:CTABが 1.2未満であり、好ましくは 1.0未満であるカーボンブラックを用いた上記の好適な実施態様で特に顕著である。
【実施例】
【0056】
試験方法
以下の実施例ならびに比較では次の試験方法を用いた。
1.結合ゴム:重量 0.5g± 0.025gのサンプルを秤量し、 100mlのトルエンの入った密閉フラスコに入れて室温でおよそ24時間保管する。それからフラスコ中のトルエンを新しい 100mlのトルエンと取り替えてから4日間保管する。その後、サンプルを溶媒から取り出し、フードの下におき24時間、室温で風乾する。それからサンプルをさらに室温で24時間、真空下において乾燥させる。乾燥後、サンプルの重量を測定し、減量データから結合ゴム量を計算する。
2.MWsol :本発明開示ならびにクレームでの使用の如く、MWsol は天然ゴムのゾル部分の平均分子量を意味している。分子量測定の標準的なGPC 法は次の手順に従い行う:
2.1 Polymer Laboraotries, UK社製の10μm 106オングストロームカラム2本、10μm 500オングストロームカラム1本、10μm混合ベッドカラム1本を用意する。
2.2 紫外線検出は 215nmで行う。
2.3 溶媒はテトラヒドロフラン(THF)を用いる。
2.4 濃度は通常2mg/ml THF。
2.5 サンプルをTHF 内に3日間放置し溶解し、BHT で安定化する。
2.6 溶液を遠心分離してゲルと上澄に分け、上澄をカラムにかける。
2.7 サンプル調整 サンプルはゾル濃度が 0.5〜0.05重量%の範囲になり、分子量分布を正確に測定するため良好な検出器応答を得るように工夫されている。使用する充填剤別に、次の式を用いてサンプル重量を補正する:
サンプル重量=(100 +使用充填剤(phr) )*
20/100mg +/−2mg
サンプルをUV遮断バイアル内に入れて、4mLの安定化テトラヒドロフラン(THF) を含む0.02%ブチル化ヒドロキシトルエン(BTH) で3日間溶解する。溶解工程から大部分のゾル部分を含む上澄みをテフロン(登録商標)製遠心チューブに移し、Avanti30 (Beckman)遠心分離装置を用いて60分間、26,000回転/分(最大重力加速度57,500gに相当)で遠心分離する。この重力加速度では、ゲル相の大部分が沈殿するためにゲル−フリーの上澄を得ることができる。このゲル−フリー液を1:5に希釈して、再度THF で安定化する。この時点でサンプルをGPC バイアルに移し、Waters717 自動サンプル装置(Water Corporation, Milford, Massachusetts, USA) 内に入れてGPC 試験のための調整を行う。
分子量決定 続いて、ゾル部分の重量平均分子量MWsol を決定する。Millenium ソフトウエアーを利用して(Waters Corporation, Milford, Massachusetts, USA より入手できる)、15分と35分の時間増分範囲の谷−谷(valley-to-valley) モードによりベースラインを決定した。この時間増分は、移動相流速を0.75mL/分とした上記パラグラフ2.1記載のカラムに適している。納得いくベースラインが得られたら、次に分布を決定する。溶出時間を分子量に変換する。市販の標準物質(EasiCal Polymer Laboratories. U. K.)から作製したポリスチレン液を用いて、極めて狭い分子量分布を持った各種の分子量シリーズを含む形で調整した。ポリスチレン分子量からポリイソプレン分子量当量への変換は、Benoitと共同研究者らの一般計算法に基づき行う。流体力学半径は分子量と固有の粘度の積に比例する。ポリスチレン分子量をポリイソプレン当量に変換した後、キャリブレーション曲線から絶対分子量と溶出時間との関係を導く。標準物質をサンプルと同一条件下に流し、標準物質データとの最適合に基いて、特定の溶出時間について分子量を割り付ける標準物質を得る。一度分布に基づいて時間から分子量への変化があった後はWaters milleniumソフトウエアーにより適当な分子量平均が計算される。
3.Mooney粘度:標準的操作法はML(1−4)@ 100℃に従い行う。
4.試験サンプル加硫条件:試験片を下記時間 150℃において加硫した:
4.1 拡張シート:20分
4.2 レジリエンス:23分
4.3 硬度
4.4 発熱性:25分
5.分散:Cabot 分散チャート法を用いた50×顕微鏡写真による主観評価(ASTM D2663法)
6.応力−歪み:BS903 ; A2とISO37 で試験した。
7.硬度:ISO48 (1994)、温度23℃で試験した。
8.レジリエンス:BS903 : A8(1990)、方法A、温度23℃(8mm面取り円盤試験片)で試験した。
9.発熱性:ASTM D623 、方法Aで試験した。
9.1 開始温度:23℃
9.2 静荷重:241bs
9.3 ストローク: 0.225インチ
9.4 周期:30Hz
9.5 試験時間30分
10.tan δ: RheometricsRモデル RDSIIで測定。報告値は最大ひずみ湾曲値である。0°,30°,60°,1Hz, 0.1%から60%でのひずみ湾曲。
11.亀裂生長抵抗:ASTM D3629−94に従い測定
【0057】
実施例A
エラストマーマスターバッチは本発明に従い作製した。具体的には、エラストマーマスターバッチはCabot Corporation より入手可能な市販等級N234 のカーボンブラックから成る52.5phr 充填剤とマレーシア産の標準的な天然ゴムフィールドラテックスより作製した。天然ゴムフィールドラテックスの特性を下記表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
完全な化合物配合を下記表2に示す。また代表例としては加硫中の加硫もどりに優れた抵抗性を有することが知られている市販のトラック用トレッドタイヤがある。
表2 マスターバッチ組成
成 分 重量比
ゴム 100
カーボンブラック 52.5
ZnO 4.0
ステアリン酸 2.0
6PPD(酸化防止剤) 2.0
耐光性改善剤(ワックス) 2.0
EnneFlex74(芳香油) 3.0
合 計 165.5
エラストマーマスターバッチ製造装置は、本質的には前記図1と7記載の装置に同じである。スラリーノズルチップ(図7の参照番号167)は 0.2インチの軸長を有する直線部(図7、参照番号168)を持つ直径 0.039インチのものである。凝固ゴムゾーンは直径が 0.188インチで、混合ゾーンからその出口までは定直径でその軸長は 0.985インチである。マスターバッチの調整の詳細を以下に示す。
【0060】
1.カーボンブラックスラリーの調整 撹拌器を備えたカーボンブラックスラリータンクの中でカーボンブラックのバッグを脱イオン水と混合する。撹拌器によりペレットは断片化され、12.5重量%のカーボンブラックを有する粗いスラリーが形成される。作業中、このスラリーを連続的に空気隔膜ポンプを用いて汲み上げて最初の分散のためにコロイドミルに送り込む。続いてスラリーは先送りキャビティーポンプによりホモジナイザー、具体的にはAPV Gaulin, Inc のM3ホモジナイザーに送り込まれる。ホモジナイザーにより滑らかに挽かれたスラリーができる。ホモジナイザーから混合ゾーンへのスラリー液の流速はホモジナイザーの速度により設定され、ホモジナイザーは高陽圧交換ポンプとして機能する。スラリーの流速は MicromotionRマスフローメーターを用いてモニターする。カーボンブラックスラリーは50から 100psigの範囲の圧でホモジナイザーに供給され、そしてホモジナイゼーション圧は4000psigに設定されるため、結果としてスラリーは混合ゾーン内に 4.1〜4.41b/分の流量と、およそ 130ft/秒の速度で吹き込まれる。
【0061】
2.ラテックス供給 ラテックスは 100ガロンの加圧供給タンクに注入された。注入するまえにラテックスには酸化防止乳剤を加えた。酸化防止剤は0.3phrのトリスノニルフェニル亜リン酸塩(TNPP)と0.4phr SantoflexR 134(アルキル−アリールp−フェニレンジアミン混合液)から成るものを加えた。各酸化防止剤は、酸化防止剤 100に対して3の割合にオレイン酸カリウムを加え、水酸化カリウムでpHをおよそ10に整えた15重量%乳剤として調整した。また、3phr 増量油も加えた。空気圧(51psig)を利用して供給タンクからラテックスを凝固ゴム反応器の混合ゾーン内まで移動させた。ラテックスの流速は 3.2から3.41bs/分とおよそ 3.8フィート/秒であり、 MicromotionRマスフローメーターとゴム製チューブピンチバルブにより自動的に計測、調整された。カーボンブラックスラリー供給速度に対するラテックス供給速度比を適切に維持して、所望されるカーボンブラック配合量52.5phr を得た。
【0062】
3.カーボンブラックとラテックス混合 カーボンブラックスラリーとラテックスは、ラテックスをカーボンスラリー内に加えて混合した。作業中はカーボンブラックをラテックスと凝結した混合物に充分に混合した。柔らかい、湿ったスポンジ状の凝固ゴムの“ワーム(螺旋体)”が凝固ゴム反応器から出てくる。
【0063】
4.脱水 凝固ゴム反応器から放出された湿ったクラムのおよそ79%が水である。湿ったクラムは脱水押出し器(The French Oil Mill Machinery Company 、直径 3.5インチ)により湿潤度およそ5〜10%に脱水される。押出し器内で、湿ったクラムは圧縮されクラムより水が絞り出されて、押出し器のドラムのスロットから出てくる。
【0064】
5.乾燥と冷却 脱水されたクラムは第二押出し器内に落下し、再度圧縮、加熱を受ける。クラムが押出し器のダイプレートを通り炸裂する時に水も飛散する。生成物の押し出し温度はおよそ 300°Fで、水分含有量はおよそ 0.5〜1重量%であった。熱い、乾燥したクラムは、空気圧で振動するコンベヤーによりおよそ 100°Fまで急速に冷却した(およそ20秒)。得られた乾燥したクラムはおよそ66.0重量%の固形ゴムとおよそ33.0重量%のカーボンブラックを含んでいた。
【0065】
実施例B
対照のマスターバッチを乾燥素練り法を用いて調製した。対照は天然ゴムがラテックスではなくSMR10 であること以外は実施例A(前記表2参照)と同一成分から調製した。これは10phr のカーボンブラックを用いて50rpm でOOC Banbury ミキサー(およそ3kg)中でゴムを素練りして調整した。素練りはおよそ3分間行い、合計 800MJ/m3 であった。
【0066】
実施例Aと実施例Bの比較
実施例Aのマスターバッチならびに実施例Bの対照マスターバッチはOOC Banbury ミキサー中で2段階の混合操作を行いそれぞれ混合された(およそ3kg)。下記表3に、第一段階の混合手順を示す。実施例Aのマスターバッチでは混合手順に変更あることが分かる。
【0067】
【表2】

【0068】
第二段階では、下記表4に示す加硫剤を 500MJ/m3 の混合サイクルにて加えた。
表4 最終段階加硫剤添加
成 分 重量比
第1段階配合物 165.5
Goodyear Winstay 100(酸化防止剤) 1.0
TBBS(イオウ促進剤) 1.8
イオウ 1.0
合 計 169.3
即ち、実施例Aのマスターバッチの混合に必要なBanbury の混合エネルギーは実施例Bの対照材料を素練りし混合するのに必要なBanbury 混合エネルギーのおよそ53%であった。投入エネルギーが少なくなる一方で、実施例Aの材料は極めて良好なマクロ分散を示し、またそのゾル部分の分子量(重量平均)MWsol も対照のそれに比べ有意に高かった。これらのデータを下記表5にまとめた。
【0069】
【表3】

【0070】
加硫(エージング無し)した実施例Aと対照材料についての追加試験の結果を下記表6に示す。
【0071】
【表4】

【0072】
実施例C
エラストマーマスターバッチは本発明に従い作製した。具体的には、エラストマーマスターバッチはCabot Corporation より入手可能な市販等級 RegalR 660のカーボンブラックから成る55phr 充填剤とマレーシア産の標準的な天然ゴムフィールドラテックスより作製した。配合組成(少量通常使用するラテックス添加物は除く)を下記表7に示す。
表7 マスターバッチ配合
成 分 重量比
ゴム 100
カーボンブラック 55
Santoflex 134(酸化防止剤) 0.4
TNPP(酸化防止剤) 0.3
合 計 155.7
【0073】
エラストマーマスターバッチ製造装置は本質的には前記図1,3と7記載の装置に同じである。スラリーノズルチップ(図7、参照番号 167参照)は 0.2インチの軸長を有する直線部(図7、参照番号 168参照)を持つ直径 0.025インチのものである。凝固ゴムゾーン(図3、番号53参照)は直径 0.188インチ、軸長およそ 0.985インチの第一部(一部混合ヘッド内に、また一部がそれに密着した突出部内にある);直径 0.266インチ、軸長 1.6インチの第二部、直径 0.376インチ、軸長 2.256インチの第三部;および直径 0.532インチ、軸長 3.190インチの第四部から構成されている。さらに、それぞれの部分を接続している同軸の短い平滑な部分がある。マスターバッチの調整の詳細を以下に示す。
【0074】
1.カーボンブラックスラリーの調整 撹拌器を備えたカーボンブラックスラリータンクの中でカーボンブラックのバッグを脱イオン水と混合する。撹拌器によりペレットは断片化され、14.9重量%のカーボンブラックを有する粗いスラリーが形成される。この粗スラリーはパイプライングラインダーにより再循環される。作業中、このスラリーを連続的に空気隔膜ポンプを用いて汲み上げて最初の分散のためにコロイドミルに送り込む。続いてスラリーは先送りキャビティーポンプによりホモジナイザー、具体的にはMicrofluidics International CoporationのMicrofluidizerモデルM210 を用いて、加圧し、せん断して滑らかに挽かれたスラリーができる。このマイクロ送液装置から混合ゾーンへのスラリー液の流速はマイクロ送液装置の速度により設定され、マイクロ送液装置は高陽圧交換ポンプとして機能する。スラリーの流速は MicromotionRマスフローメーターを用いてモニターする。カーボンブラックスラリーはおよそ 130psigの圧でマイクロ送液装置に送られ、アキュムレイターでの排出圧が 450psigに設定されているのに対して、アキュムレイターへの排出圧が3000psigに設定されるため、結果としてスラリーは混合ゾーン内におよそ3.91b/分の流量と、およそ 300ft/秒の速度で吹き込まれる。
【0075】
2.ラテックス供給 ラテックスは55ガロンの加圧供給タンクに注入された。注入するまえにラテックスには酸化防止乳剤を加えた。酸化防止剤は0.3phrのトリスノニルフェニル亜リン酸塩(TNPP)と0.4phr SantoflexR 134(アルキル−アリール p−フェニレンジアミン混合液)から成るものを加えた。各酸化防止剤は、酸化防止剤 100に対して4の割合にオレイン酸カリウムを加え、水酸化カリウムでpHをおよそ10に整えた40重量%乳剤として調整した。ペリスタリックポンプを利用して供給タンクからラテックスを凝固ゴム反応器の混合ゾーン内に移した。ラテックスの流速は 3.2〜3.31bs/分とおよそ 3.9フィート/秒であり、Endress +Hauser (Greenwood, Indiana, USA)マスフローメーターを用いて計測した。カーボンブラックスラリー供給速度に対するラテックス供給速度比を適切に維持して、所望されるカーボンブラック配合量55phr を得た。
【0076】
3.カーボンブラックとラテックス混合 カーボンブラックスラリーとラテックスは、ラテックスをカーボンスラリー内に加えて混合した。作業中はカーボンブラックはラテックスと凝結した混合物に充分に混合した。柔らかい、湿ったスポンジ状の凝固ゴムの“ワーム(螺旋体)”が凝固ゴム反応器から出てくる。
【0077】
4.脱水 凝固ゴム反応器から放出された湿ったクラムのおよそ78%が水である。湿ったクラムは脱水押出し器(The French Oil Mill Machinery Company 、直径 3.5インチ)により湿潤度およそ12〜13%に脱水される。押出し器内で、湿ったクラムは圧縮されクラムより水が絞り出されて、押出し器のドラムのスロットから出てくる。
【0078】
5.乾燥と冷却 脱水されたクラムは第二押出し器内に落下し、再度圧縮、加熱を受ける。クラムが押出し器のダイプレートを通り炸裂する時に水も飛散する。生成物の押出し温度はおよそ 280°F〜 370°Fで、水分含有量はおよそ 0.3〜 0.4重量%であった。熱い、乾燥したクラムは、空気圧で振動するコンベヤーによりおよそ 100°Fまで急速に冷却した(およそ20秒)。得られた乾燥したクラムはおよそ66.0重量%の固形ゴムとおよそ33.0重量%のカーボンブラックを含んでいた。
【0079】
実施例DとE
2種類の対照のマスターバッチを乾燥素練り法を用いて調製した。用いた対照は、実施例DでのゴムがラテックスではなくRSS1 NR であること以外は実施例C(前記表7参照)と同一成分から調製した。実施例EのゴムはSMR10 NRである。それぞれ、ゴムをBR Banburyミキサーを用いて素練りして作製した。実施例Dのコムは118rpm、10分間で素練りした。実施例Eのゴムは 77rpm、4分間で素練りした。
【0080】
実施例C,D,Eの比較
実施例Cのマスターバッチならびに実施例DとEの2種類の対照マスターバッチはBR Banburyミキサーを用いて混合した。下記表8に混合手順を示す。
【0081】
【表5】

【0082】
配合組成を下記表9に示す。
表9 第II段階加硫剤添加
成 分 重量比
実施例Cマスターバッチ、又は
実施例D又はEの第I乾燥混合体 155
Azo 66(酸化亜鉛) 4.0
Hystrene 5016(ステアリン酸) 2.0
Santoflex 13(酸化防止剤) 2.0
耐光性改善剤(ワックス) 2.0
Wingstay 100(酸化防止剤) 1.0
SantocureNS(イオウ促進剤) 1.8
イオウ 1.0
合 計 168.8
【0083】
上記3種類の混合物は加硫戻りも少なく、良好に加硫された。投入エネルギーが少なくなる一方で、実施例Cの材料は乾燥混合対照に比べて極めて良好なマクロ分散を示し、またそのゾル部分の分子量(重量平均)MWsol も対照のそれに比べ有意に高かった。これらのデータを下記表10にまとめた。
【0084】
【表6】

【0085】
追加試験と比較
本発明の好適なエラストマー複合体は上記に開示した装置と方法により作製される。具体的には、新規マスターバッチ配合物は天然ゴムラテックスとカーボンブラック充填剤より形成され、同一あるいは同様の出発材料から形成された従来配合に比べ極め良好なマクロ分散及び/又は天然ゴム分子量を有する。図8には、これら好適なマスターバッチ配合物に用いられた各種カーボンブラック充填剤の表面積とストラクチャー、具体的にはASTM D3765085 当たりのカーボンブラック1g当たり平方メーターとして示されているCATB表面積、とASTM D2414のカーボンブラック 100g当たりのDBP の立方センチメーターとして表されたジブチルフタレイン酸塩吸収(DBPA)値が示されている。図8はカーボンブラックの異なる領域毎に3つに分けられると考えられる。領域1には低ストラクチャーで、表面積が大きいため天然ゴムやその他の従来の乾燥混合法で用いられていたエラストマー中への分散が最も困難であるカーボンブラックが含まれている。このため、領域1のカーボンブラックはその他のカーボンブラックの様に広く市場で用いられてはいない。従来の乾燥混合法を利用して領域Iのカーボンブラックから作製したマスターバッチならびに加硫処置エラストマーは、マクロ分散が不良であり、多くの場合MWsol も低い。領域IIのカーボンブラックは領域Iのものに比べて高ストラクチャーを有している。通常、この領域にあるカーボンブラックは自動車タイヤ等に用いられる天然ゴム内では良好な分散を示すが、長い間乾燥混合すると天然ゴムのMWsol は大きく低下する。図8の領域III のカーボンブラックはそのストラクチャーに比して小さな表面積を有している。従って、このカーボンブラックは乾燥混合によって十分な天然ゴム内への分散を得る時に使用されているが、この場合でも不要のMWsol の低下が起こる。図8のこれら3領域のカーボンブラックの分散、具体的にはマクロ分散は本発明開示のエラストマー複合体の中では大きく改善され、好適な実施態様では天然ゴムのMWsol も顕著に増加させることができる。
【0086】
対照サンプル1−443
本発明のエラストマー複合体と比較することを目的に次の操作により乾燥混合によるマスターバッチ対照サンプルの調整を行った。
1.天然ゴムの素練り
広範囲の分子量を持った乾燥マスターバッチを調整するために、市販天然ゴム(RSS1, SMR CV、とSMR10)ベールを次の条件に従いBRバンバリーミキサーで前素練りした(充填係数:0.75):
【0087】
【表7】

【0088】
2.カーボンブラックと前素練り天然ゴムの混合
様々のレベルのマクロ分散値を持つ天然ゴム乾燥マスターバッチを調整するために、BRバンバリーミキサーで以下の様な混合作業を行った。充填係数は0.70であった。マスターバッチ成分と混合手順を下記表12に示す。
【0089】
【表8】

M1〜M4の前素練り天然ゴムサンプルを下記図13表に示すように様々な時間混合して、様々なマクロ分散レベルを得た。例えば、サンプルコード表13のM2D1は、前素練り天然ゴムM2(上記、表11参照)を10分間、表12の成分と混合して得た対照コントロールである。
【0090】
【表9】

【0091】
3.天然ゴム素練り対照サンプルの最終混合
配合物の性能評価のために、表13の乾燥素練り天然ゴムマスターバッチ対照サンプルに、表14に示す方法に従って追加の成分を加えた。
【0092】
【表10】

【0093】
混合物は通常の加硫技術により、完全に加硫されるまで、通常は10〜30分間 150℃で加硫した。この点に関し、上記表14に示す方法も含めて同一あるいは実質同一である最終の混合方法により、全ての対照サンプルならびに下記の方法により調整された全ての本発明のエラストマー複合体サンプルを混合し、加硫し、そしてその特性と性能について試験した。
【0094】
以下に示す表15−23には、対照サンプル1〜443 のゾル分子量MWsol とマクロ分散D(%)を示している。サンプルは使用されたカーボンブラックの種類によりグループ分けされている。表中、サンプルは使用されている天然ゴムと加えられたカーボンブラックならびに油毎にグループ分けされている。表見出しは、標準的な命名規約に従って記載した。即ち、例えば表15の見出し“N330 /55phr/0”は55phr N330 カーボンブラック、油無しを意味している。表の副見出しには使用した天然ゴムが示されている。具体的には、対照サンプル1〜450 は、標準的等級の天然ゴムRSS1, SMRCV ならびにSMR10 より製造されていることが分かる。これらの天然ゴムの技術記載は広く入手可能であり、例えばLippincott and Peto, Inc (AKron, Ohio, USA) より出版されているRubber World Magazine のBlue Book より入手できる。前素練りする前の天然ゴムの分子量MWsol (M1)および様々な程度の前素練りを行った後の分子量(M2−M4)も表15−23に示した。
【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
【表13】

【0098】
【表14】

【0099】
【表15】

【0100】
【表16】

【0101】
【表17】

【0102】
【表18】

【0103】
【表19】

【0104】
【表20】

【0105】
【表21】

【0106】
【表22】

【0107】
好ましい実施態様の実施例
本発明のエラストマー複合体の追加の試料を製造した。具体的に述べると、本発明の一連の天然ゴムエラストマー複合体1〜32号を、前記実施例Aと概ね同じ装置と手順を用いて製造した。これらエラストマー複合体は、下記表24に示す特性を有するマレーシア産の天然ゴムフィールドラテックスを含有させた。これら各エラストマー複合体には、さらに、図8に示す領域I,IIまたはIII の形態学的特性(ストラクチャーと表面積)を有するカーボンブラックを含有させた。具体的に述べると、以下のカーボンブラック:Regal(登録商標)660,N234, N326, N110, Regal(登録商標)250, N330, Black Pearl(登録商標)800, Sterling(登録商標)6740およびN351 を用いた。カーボンブラックの添加量は30〜75phr の範囲内であり、そしてエキステンダー油の添加量は0〜20phr であった。エラストマー複合体試料1〜32号の製造の詳細は以下の表25に示す。
【0108】
上記のように、エラストマー複合体1〜32号を製造するのに用いた装置および手順は、実施例Aの装置および手順と概ね同じであり、かつこれら複合体は表2に示すマスターバッチ配合物の添加剤を含有している。エラストマー複合体1〜32号を製造するために使用される装置と手順を、以下にさらに詳細に述べる。
【0109】
1.装置
本発明の試料1〜32号は、図1,4および7を参照して先に説明した本発明の装置と実質的に同じマスターバッチ製造装置を用いて製造した。スラリーノズルの末口(図7の項目167 参照)の直径およびそのランド(図7の項目 168参照)の長さは、試料1〜32号の各々について表25に示してある。この装置の凝固ゴムゾーンは、混合ゾーンから吐出末端へ向かって徐々に直径が大きくなる四つの区分を備えている。これら4区分の各々の直径と軸方向の長さ(第一の区分は一部が混合ヘッド内にあり、一部はこれに対して密閉されたエキステンダー内にある)は表25に示してある。これら区分間に、軸方向に、短い整形された(faired)相互結合部があった。
【0110】
2.カーボンブラックスラリーの製造
撹拌機を備えたカーボンブラックスラリータンク内で、多量のカーボンブラックを脱イオン水と混合した。その撹拌機はカーボンブラックのペレットを粉砕して粗製のカーボンブラックスラリーを生成した。各試料に対するカーボンブラックスラリーのカーボンブラックの濃度(重量%)は表25に示してある。操作中、このスラリーは、初期分散を行うため、空気ダイヤフラムポンプによって連続的にグラインダーへポンプ輸送される。次に、このスラリーは、空気ダイヤフラムポンプを経由してコロイドミルに送られ、次にプログレッシングキャビティポンプ(progressing cavity pump)を通じてホモジナイザーへ、具体的に述べればMicrofluidizer Model M210 (Microfluidics International Corporationから入手可能)へ送られる。上記マイクロフリューダイザーは微細に粉砕されたスラリーを製造した。このマイクロフリューダイザーから混合ゾーンへ送られるスラリーの流量は、マイクロフリューダイザーの圧力によって設定したが、マイクロフリーダイザーは高圧の正吐出量ポンプ(high pressure positive displacement pump)として作動している。スラリーの流量は、Micromotion(登録商標)質量流量計で監視した。カーボンブラックのスラリーがホモジナイザーに送られる圧力およびホモジナイザーの出力圧力(圧力の数値はすべてpsigを表す)を各試料について表25に記載してある。カーボンブラックのスラリーは、ホモジナイザーからアキュムレーターへ送られ、混合ゾーンのスラリーノズルの末口でのスラリー圧の変動を減少させる。スラリーを混合ゾーンに送ったときのスラリーノズル末口の圧力と流量を各試料について表25に示してある。
【0111】
3.ラテックスの送出
ラテックスを55ガロンの供給ドラムに充填した。このラテックスには老化防止剤のエマルジョンを添してから上記充填を行った。亜リン酸トリスノニルフェニル(TNPP)およびSantoflex(登録商標)134(アルキルアリールp−フェニレンジアミン混合物)からなる老化防止剤を、表25に示す量で添加した。これら老化防止剤は、各々、4量部のオレイン酸カリウム/100 量部の老化防止剤を、エマルジョンのpHを約10に調節するための水酸化カリウムとともに使用し、40重量%のエマルジョンとして調節した。エキステンダー油は、使用する場合、表25に示す量で添加した。ラテックスを、供給ドラムから凝固ゴム反応器の混合ゾーンへ移動させるのに蠕動ポンプを使用した。ラテックスの流量と速度は表25に示してある。ラテックス流は、 Endress+Hauser質量流量計で自動的に測定した。カーボンブラックの所望の添加量は、ラテックスの送り量:カーボンブラックスラリーの送り量の比率を適正な比率に維持することによって得た。
【0112】
4.カーボンブラックとラテックスの混合
カーボンブラックスラリーとラテックスは、ラテックスをカーボンブラックスラリー中に混入させることによって混合した。混入時、カーボンブラックは、ラテックス中に十分に混合させて混合物を凝固させた。柔らかで湿潤したスポンジ状“ウオーム(worms)”の凝固ゴムが凝固ゴム反応器から放出された。
【0113】
5.脱水
凝固ゴム反応器から放出された湿潤クラムゴムの含水量は表25に示してある。湿潤クラムゴムは、脱水押出し機(The French Oil Mill Machinery Company ;直径 3.5インチ)で脱水した。この押出し機で、湿潤クラムゴムを圧縮し、水を、クラムゴムから、押出機の長穴付きバレルを通じて絞り出した。最終のクラムゴムの水分を、本発明の各試料について表25に示してある。
【0114】
6.乾燥と冷却
脱水されたクラムゴムを第二の押出し機中に落下させ、その押出し機で再び圧縮して加熱した。そのクラムゴムが第二押出し機のダイプレートを通じて押出されるときに水が気化した。製品の出口での温度と含水量は表25に示してある。乾燥した熱クラムゴムを、強制空気バイブレーティングコンベヤによって、約 100°Fまで迅速に冷却した(約20秒間)。
【0115】
【表23】

【0116】
【表24】

【0117】
【表25】

【0118】
【表26】

【0119】
【表27】

【0120】
試料2と3は、不利な工程条件下でのマクロ分散を測定するため、マイクロフリューダイザーの出口などの出口圧力がほぼゼロの状態で製造したことに留意すべきである。
【0121】
得られたマスターバッチのカーボンブラックの優れた分散度を、マスターバッチのマクロ分散特性およびゾル部分の分子量(MWsol )によって示す。以下の表26は、本発明の試料1〜32号のMWsol とマクロ分散値ならびに各試料に用いたカーボンブラックとエキステンダー油(使用した場合)を示す。カーボンブラックの添加量とエキステンダー油の添加量は、表26ではphr の値である。
【0122】
【表28】

【0123】
カーボンブラック添加量が55phr の本発明の全試料、の試験結果を、乾燥混合法で製造した対応する一連の上記天然ゴム対照試料に対して、マクロ分散値とMWsol 値を図9の片対数グラフに示す。各々55phr の添加量のカーボンブラックを含有する本発明の試料の少なくとも一つのデータ点を、カーボンブラックの添加量が55phr の全対照試料とともに図9に示す(33phr のN351 カーボンブラックと20量部のエキステンダー油を使用した対照試料 401〜412 も図9に示してある。)本発明の試料のマクロ分散が優れていることは、表26と図9から分かる。具体的に述べると、本発明の諸試料は、MWsol 値が0.85×106 より大きい場合でも、D(%)値が一般に 0.2%より低いが、一方、対照試料は、どんなMWsol 値の場合でも、このような優れたマクロ分散を全く達成していない。したがって、図9に示すデータは、新規のエラストマー複合体のマクロ分散特性が、広範囲のMWsol 値にわたって、従来知られている乾燥混合法で同等の成分を用いて達成できるマクロ分散特性より著しく優れていることを明確に示している。図9に示す各種データ点に用いた符号および続いて考察する図10〜25は以下の一覧表で説明する。
【0124】
図面の説明
図9 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
【表29】

【0125】
図10 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(領域I)
【表30】

【0126】
図11 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(領域II)
【表31】

【0127】
図12 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(領域III)
【表32】

【0128】
図13 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(N330 カーボンブラック、55phr)
【表33】

【0129】
図14 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(REGAL 250 カーボンブラック)
【表34】

【0130】
図15 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(BLACK PEARL 800 カーボンブラック、55phr)
【表35】

【0131】
図16 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(N326 カーボンブラック、55phr)
【表36】

【0132】
図17 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(REGAL 660 カーボンブラック)
【表37】

【0133】
図18 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(N234 カーボンブラック)
【表38】

【0134】
図19 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(N110 カーボンブラック、55phr)
【表39】

【0135】
図20 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(N351 カーボンブラック、33phr)
【表40】

【0136】
図21 NRマスターバッチの分散特性とMWsol
(STERLING 6740 カーボンブラック、55phr)
【表41】

【0137】
図22 亀裂生長速度に対するMWsol の効果
(55phr の添加量でN234 カーボンブラックを含有するNRコンパウンド)
【表42】

【0138】
図23 亀裂生長速度に対するMWsol の効果
(55phr の添加量でN328 カーボンブラックを含有するNRコンパウンド)
【表43】

【0139】
図24 亀裂生長速度に対するMWsol の効果
(55phr の添加量でREGAL 660 カーボンブラックを含有するNRカンパウド)
【表44】

【0140】
図25 各種の添加量でN234 カーボンブラックを含有するNRコンパウンドの最大 T
anδ〔60℃におけるストレインスウィープ(Strain Sweep)〕
【表45】

【0141】
図30 2相(カーボンブラック/シリカ)凝集体を含有するNRマスターバッチのマ
クロ分散特性と前記NRマスターバッチのゾル部分のMW
【表46】

【0142】
図31 カーボンブラックとシリカの混合物を含有するNRマスターバッチのマクロ分
散特性と前記NRマスターバッチのゾル部分のMW
【表47】

【0143】
図9に示す本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は、下記式で表される。
MWsol が0.45×106 未満の場合、
D(%)<0.2 % (1)
そして、0.45×106 <MWsol < 1.1×106 の場合、
log(D)<log(0.2)+2.0 ×〔MWsol −(0.45×106)〕×10-6 (2)
上記式(1)のマクロ分散D(%)が、10ミクロンより大きい欠陥が測定された未分散面積の百分率であることは上記考察から分かるであろう。 0.2%に等しいD(%)は、天然ゴム乾燥マスターバッチに対する、領域I,IIおよびIII のすべてのカーボンブラックの限界マクロ分散特性であることは図9から分かる。すなわち、上記式(1)で記載されているように、MWsol を0.45×106 未満まで低下させるのに十分混合した後でさえ、どんなMWsol の場合でも、乾燥素練りマスターバッチは、どれも 0.2%のマクロ分散特性を達成しなかった。図9に示す乾燥マスターバッチの対照試料のMWsol が0.45×106 〜 1.1×106 の場合、その分散特性は一層劣っているが、対照的に、MWsol がこの範囲内にある本発明の試料は優れた分散特性を保持している。MWsol が0.45×106 〜 1.1×106 である図9に示す好ましい実施態様は、どれも、好ましいマクロ分散の限界 0.2%を超えない。そのことについては、図9(および以下に考察する他の図)においてX軸上にある(すなわち、D%値が 0.1%)ことが示されている好ましい実施態様のデータ点は、 0.1またはこれより優れた(すなわちさらに低い)D(%)値のマクロ分散特性を有しているかもしれないと解すべきである。
【0144】
領域Iのカーボンブラックの試料
図8に示す領域Iの形態学的特性(すなわちストラクチャーと表面積)を有するカーボンブラックを含有してなる本発明の試料、およびこのような領域Iのカーボンブラックで製造した前記の対応する対照試料を、図10に示す片対数グラフで比較する。具体的に述べると、図10は、カーボンブラックのRegal(登録商標)660 ,N326, Regal(登録商標)250 ,N330 およびBlack Pearl(登録商標)800 を 30phr〜75phr の範囲内の添加量でかつエキステンダー油を0phr 〜20phrの範囲内の添加量で含んでなる本発明の試料と対応する対照試料のマクロ分散値とMWsol 値を示す。本発明の全試料のカーボンブラックの分散が優れていることは図10に示されており、これらの試料は、この開示内容によって、エラストマー複合体の好ましい実施態様を示している。本発明の試料はすべて図10の直線101の下方にあり有利であるが、一方、対照試料はすべて分散が劣っており直線101の上方にある。事実、図10に示す好ましい実施態様は、分散が最も困難な、領域Iのカーボンブラックを含有していても、すべて、D(%)値が 0.3%未満である。最も好ましい実施態様はすべて、Msol 値が 0.7×106 を超えて有利な場合でも、D(%)値は 0.2%を超えない。図10に示すデータは、領域Iのカーボンブラックを含有しかつMWsol 値が広範囲にわたっていて、ここに開示されている新規なエラストマー複合体のマクロ分散特性が、従来の乾燥素練り混合法によって同等の成分を用いて得られるものより有意に優れていることを明確に示している。図10に示す本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は下記式で表される。
MWsol が 0.7×106 未満の場合、
D(%)< 1.0% (3)
そして、 0.7×106 <MWsol < 1.1×106 の場合、
logD<log(1.0)+2.5 ×〔MWsol −(0.7×106)〕×10-6 (4)
D(%)は、10ミクロンより大きい欠陥が測定された未分散面積の百分率であり、1%が、本発明による天然ゴムマスターバッチに対する、領域Iのすべてのカーボンブラックの限界マクロ分散特性であることが分かるであろう。すなわち、乾燥素練りマスターバッチはどれも、上記式(3)で示されているように、MWsol が 0.7×106 未満に低下するよう十分に乾燥混合した後でさえ、どんなMWsol の場合でも、 1.0%およびこれより優れたマクロ分散特性を達成しなかった。図10に示す乾燥マスターバッチ対照試料のMWsol が 0.7×106 〜 1.1×106 の場合、その分散特性はさらに劣っている。対照的に、MWsol が上記範囲内にある本発明の試料は優れた分散特性を保持している。図10に示す、MWsol が 0.7×106 〜 1.1×10である好ましい実施態様は、マクロ分散が、好ましいマクロ分散の限界 0.2%より十分に小さい。領域Iのカーボンブラックを含有している本発明のエラストマー複合体が、これまで達成されたことがない、マクロ分散特性とMWsol のバランスを保っていることが分かるであろう。
【0145】
領域IIのカーボンブラックの試料
図8に示す領域IIの形態学的特性(ストラクチャーと表面積)を有するカーボンブラックを含有する本発明の試料、およびかような領域IIのカーボンブラックで製造された、上記の対応する対照試料を図11に示す片対数グラフで比較する。具体的に述べると、図11は、カーボンブラックのN234 とN110 を 40phr〜70phr の範囲の添加量でおよびエキステンダー油を0phr 〜10phr の範囲内の添加量で含有する本発明の試料と対応する対照試料のマクロ分散値とMWsol 値を示す。本発明の全試料のカーボンブラックの分散が優れていることは図11に示されており、これらの試料は、この開示内容によって、エラストマー複合体の好ましい実施態様を示している。本発明の試料は、図11において直線111 の下方にあり有利であるが、対照試料はすべて分散が劣り、直線111 の上方にある。事実、図11に示す、領域IIのカーボンブラックを含有する好ましい実施態様は、D(%)値が 0.3%より小さい。最も好ましい実施態様は、どんなMWsol 値の場合でも、D(%)値は 0.2%を超えない。図11に示すデータは、領域IIのカーボンブラックを含有しかつMWsol 値が広範囲にわたっているここで開示された新規なエラストマー複合体のマクロ分散特性が、従来の乾燥混合法で同等の成分を用いて達成可能であった分散特性より有意に優れていることを明確に示している。図11に示す本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は下記式で表される。
MWsol が0.35×106 未満の場合、
D(%)< 0.3% (5)
そして、0.35×106 <MWsol < 1.1×106 の場合、
logD<log(0.3)+2.8 ×〔MWsol − (0.35×106)〕×10-6 (6)
0.30%のD(%)が、本発明の天然ゴムマスターバッチに対する、領域IIのすべてのカーボンブラックの限界マクロ分散特性であり、そして0.35×106 が限界MWsol 値であることが分かるであろう。すなわち、乾燥マスターバッチはどれも、上記式(5)で示されているように、MWsol が0.35×106 未満に低下するよう十分に乾燥混合を行った後でさえ、どんなMWsol の場合でも、0.30%またはこれより優れたマクロ分散特性を達成しなかった。図11に示す乾燥マスターバッチの対照試料のMWsol が0.35×106 〜 1.1×106 の場合、その分散特性は一層劣っている。対照的に、上記範囲内のMWsol を有する本発明の試料は優れた分散特性を保持している。MWsol が0.35×106 〜 1.1×106 である図11に示す好ましい実施態様は、マクロ分散が、好ましいマクロ分散の限界の 0.2%より十分に低い。領域IIのカーボンブラックを含有する本発明のエラストマー複合体が、これまで達成されたことがない、マクロ分散特性とMWsol のバランスを保っていることが分かる。
【0146】
領域III のカーボンブラックの試料
図8に示す領域III の形態学的特性(すなわちストラクチャーと表面積)を有するカーボンブラックを含有する本発明の試料、およびかような領域III のカーボンブラックで製造された上記の対応する対照試料を、図12に示す片対数グラフで比較する。具体的に述べると、図12は、カーボンブラックのN351 およびSterling 6740 を 30phr〜70phr の範囲内の添加量でおよびエキステンダー油を0phr 〜20phr の範囲内の添加量で含有する本発明の試料と対応する対照試料のマクロ分散値とMWsol 値を示す。本発明の全試料のカーボンブラックの分散が優れていることは図12に示されており、これらの試料は、この開示内容によって、エラストマー複合体の好ましい実施態様を示している。本発明の試料はすべて、図12において直線121 の下方にあり有利であるが、一方、対照試料はすべて、分散が劣っており、直線121 の上方にある。事実、図12に示す、領域III のカーボンブラックを含有する好ましい実施態様は、MWsol 値が有利に 0.3×106 を超えても、そして 0.7×106 であってさえ、D(%)値が 0.1%以下である。図12に示すデータは、領域III のカーボンブラックを含有しかつMWsol 値が広範囲にわたっている、ここで開示された新規なエラストマー複合体のマクロ分散特性が、従来の乾燥混合法で同等の成分を用いて達成可能であった分散特性より有意に優れていることを明確に示している。図12に示す本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は下記式で表される。
MWsol が0.35×106 未満の場合、
D(%)< 0.1% (7)
そして、0.30×106 <MWsol < 1.1×106 の場合、
logD<log(0.1)+2.0 ×〔MWsol − (0.30×106)〕×10-6 (8)
0.1%のD(%)が、本発明の天然ゴムマスターバッチに対する、領域III のすべてのカーボンブラックの限界マクロ分散特性であり、そして 0.3×106 が限界MWsol 値であることが分かるであろう。すなわち、上記乾燥マスターバッチはどれも、上記式(7)で示されているように、MWsol が0.35×106 未満に低下するよう十分に乾燥混合を行った後でさえ、どんな MWsol の場合でも、0.1%のマクロ分散特性を達成しなかった。図12に示す乾燥マスターバッチの対照試料のMWsol が0.30×106 〜 1.1×106 の場合、その分散特性は一層劣っている。対照的に、MWsol が上記範囲内にある本発明の試料は優れた分散特性を保持している。図12に示す、MWsol が0.30×106 〜 1.1×106 である好ましい実施態様は、マクロ分散が好ましいマクロ分散の限界 0.2%より十分に低く、事実、D(%)値は 0.1%以下である。領域III のカーボンブラックを含有する本発明のエラストマー複合体が、これまで達成されたことがない、マクロ分散特性とMWsol のバランスを保っていることが分かる。
【0147】
追加試料の比較
本発明の諸試料のマクロ分散値を、先に考察した図8〜12のように、それら試料のMWsol 値の関数として、図13〜21の片対数グラフで示す。一層具体的に述べると、図13〜21において、特定のカーボンブラックを含有する上記本発明の全試料(特に指示されている場合には特定のカーボンブラックの添加量の試料に限定されている)を、対応する対照試料とともに一つの片対数グラフに示してある(各図に入っている本発明の試料および対照試料の参照番号を示す前記一覧表参照)。こうして、図13は、カーボンブラックN330 を55phr 含有する上記本発明の試料と対照の試料の分散特性とMWsol を示す。図13に示すデータは、カーボンブラックN330 を含有しかつMWsol 値が広範囲にわたっている本発明の新規なエラストマー複合体のマクロ分散特性が、その対照試料より有意に優れていることを明確に示している。図13に示す、カーボンブラックN330 を含有する本発明のエラストマー複合体のマクロ分散は、下記式で表される。
MWsol < 0.6×106 の場合、
D(%)<1% (9)
そして、 0.6×106 <MWsol < 1.1×106 の場合
log(D)<log(1)+2.5 ×〔MWsol −(0.6×106)〕×10-6 (10)
上記乾燥素練りマスターバッチはどれも、MWsol が 0.6×106 未満に低下するよう十分に乾燥混合した後でさえ、どんなMWsol の場合でも、 1.0%のマクロ分散特性を達成しなかった(上記式9参照)。カーボンブラックN330 を55phr 含有する対照試料であってMWsol が 0.6×106 〜 1.1×106 に維持された試料は、D(%)値が一層高く、例えば未分散面積が4%を超えていた。
【0148】
図14は、カーボンブラックREGAL 250 を含有する、上記の本発明の試料と対照試料の分散特性とMWsol を示す。図14に示す選択された本発明の試料と対照の試料は、上記のようにエキステンダー油を含有させた。図14に示すデータは、カーボンブラックREGAL 250 を含有しかつMWsol 値が広範囲にわたっている本発明の新規なエラストマー複合体のマクロ分散特性が、その対照試料より有意に優れていることを明確に示している。図14に示す、カーボンブラックREGAL 250 を含有する本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は下記式で表される。
MWsol < 0.6×106 の場合、
D(%)<1% (9)
そして、 0.6×106 <MWsol < 1.1×106 の場合、
log(D)<log(1)+2.5 ×〔MWsol −(0.6×106)〕×10-6 (10)
上記対照試料はどれも、MWsol が 0.6×106 未満に低下するよう十分に乾燥混合した後でさえ、どんなMWsol の場合でも、 1.0%またはこれより優れたマクロ分散特性を達成しなかった。対照的に、カーボンブラックRegal 250 を含有しかつMWsol が 0.6×106 を超える本発明のエラストマー複合体は、 0.2%未満のD(%)のような優れたマクロ分散値を保持している。図14に示す、カーボンブラックREGAL 250 を含有する本発明の試料と対照の試料のコンパウド特性と性能の特性を、下記の表27に示す。本発明の4号試料は、0.92cm/百万サイクルに過ぎないその非常に低い亀裂生長速度で示されているように、亀裂生長に対して特別に優れた抵抗性を有していることが分かる。事実、この本発明の試料は、対応する対照試料よりはるかに優れている。このことは、先に考察したように、この本発明の試料のMWsol およびカーボンブラックのマクロ分散が一層良好であることに大きく起因していると考えられる。
【0149】
【表48】

【0150】
図15は、カーボンブラックBLACK PEARL 800 を55phr の添加量で含有している前記の本発明の試料と対照の試料の分散特性とMWsol そ示す。図15に示すデータは、カーボンブラックBlack Pearl 800 を含有する本発明の新規なエラストマー複合体のマクロ分散特性が、その対照試料より有意に優れていることを明確に示している。図15に示す、カーボンブラックBlack Pearl 800 を含有する本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は下記式で表される。
MWsol <0.65×106 の場合、
D(%)< 1.5% (11)
そして、0.65×106 <MWsol < 1.1×106 の場合、
log(D)<log(1.5)+2.5 ×〔MWsol −(0.65×106)〕×10-6 (12)
上記対照試料はどれも、MWsol が0.65×106 未満に低下するよう十分に乾燥混合した後でさえ、どんなMWsol の場合でも、 1.0%またはこれより優れたマクロ分散特性を達成しなかった。対照的に、カーボンブラックBlack Pearl 800 を含有しかつMWsol が0.65×106 を超える本発明のエラストマー複合体は、 0.2%より小さいD(%)のような優れたマクロ分散を保持している。図15に示す、カーボンブラックBlack Pearl 800 を含有する本発明の試料と対照の試料のコンパウド特性と性能特性を下記表28に示す。本発明の試料8号は、0.27cm/百万サイクルに過ぎないその非常に低い亀裂生長速度で示されているように、亀裂生長に対する特別に優れた抵抗性を有していることが分かる。事実、本発明の試料は対応する対照試料よりはるかに優れている。このことは、先に考察したように、本発明の試料のMWsol およびカーボンブラックのマクロ分散が一層良好であることに大きく起因していると考えられる。
【0151】
【表49】

【0152】
図16は、カーボンブラックN326 を55phr の添加量で含有する上記の本発明の試料と対照の試料の分散特性とMWsol を示す。図16に示すデータは、カーボンブラックN326 を含有する本発明の新規なエラストマー複合体のマクロ分散特性がその対照試料より有意に優れていることを明確に示している。図16に示す、カーボンブラックN326 を含有する本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は下記式で表される。
MWsol < 0.7×106 の場合、
D(%)<1% (13)
そして、 0.7×106 <MWsol < 1.1×106 の場合、
log(D)<log(1)+2.5 ×〔MWsol −(0.7×106)〕×10-6 (14)
上記対照試料はどれも、MWsol が 0.7×106 未満に低下するよう十分に乾燥混合した後でさえ、どんなMWsol の場合でも、 1.0%またはこれより優れたマクロ分散特性を達成しなかった。対照的に、カーボンブラックN326 を含有しかつMWsol が 0.7×106 を超える本発明のエラストマー複合体は、 0.2%を超えないD(%)のような優れたマクロ分散を保持している。図16に示す、カーボンブラックN326 を含有する本発明の試料および対照の試料のコンパウンド特性と性能特性を、以下の表29に示す。本発明の試料9号は、0.77cm/百万サイクルに過ぎないその非常に低い亀裂生長速度によって示されているように、亀裂生長に対する特別に優れた抵抗性を有していることが分かる。事実、本発明の試料はその対応する対照試料よりはるかに優れている。このことは、さきに考察したように、本発明の試料の一層良好なMWsol とカーボンブラックのマクロ分散に大きく起因していると考えられる。
【0153】
【表50】

【0154】
図17は、カーボンブラックREGAL 660 を含有する上記本発明の試料および対照試料の分散特性とMWsol を示す。図17に示す、選択された本発明の試料と対照試料には上記のようなエキステンダー油を含有させた。図17に示すデータは、カーボンブラックREGAL 660 を含有しかつMWsol 値が広範囲にわたっている本発明の新規のエラストマー複合体のマクロ分散特性がその対照試料より有意に優れていることを明確に示している。図17に示す、カーボンブラックREGAL 660 を含有する本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は下記式で表される。
MWsol < 0.6×106 の場合、
D(%)<1% (15)
そして、 0.6×106 <MWsol < 1.1×106 の場合、
log(D)<log(1)+2.5 ×〔MWsol −(0.6×106)〕×10-6 (16)
上記対照試料はどれも、MWsol が 0.6×106 未満に低下するよう十分に乾燥混合した後でさえ、どんなMWsol の場合でも、 1.0%またはこれより優れたマクロ分散特性を達成しなかった。対照的に、カーボンブラックRegal 660 を含有しかつMWsol が 0.6×106 を超える本発明のエラストマー複合体は、 0.2%より小さいD(%)のような優れたマクロ分散を保持している。図17に示す、カーボンブラックRegal 660 を含有する本発明の試料10号および各種の対照試料のコンパウド特性および性能特性を以下の表30に示す。本発明の試料10号は、0.69cm/百万サイクルに過ぎないその非常に低い亀裂生長速度によって示されているように、亀裂生長に対する特別に優れた抵抗性を有していることが分かる。事実、この本発明の試料はその対応する対照試料よりはるかに優れている。このことは、先に考察したように本発明の試料の一層良好なMWsol およびカーボンブラックのマクロ分散に大きく起因していると考えられる。
【0155】
【表51】

【0156】
図18は、カーボンブラックN234 を含有する上記の本発明の試料および対照試料の分散特性とMWsol を示す。図18に示す選択された本発明の試料と対照の試料には、上記のようにエキステンダー油を含有させた。図18に示すデータは、カーボンブラックN234 を含有しかつMWsol 値が高範囲にわたっている本発明の新規のエラストマー複合体のマクロ分散特性がその対照試料より有意に優れていることを明確に示している。図18に示す、カーボンブラックN234 を含有する本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は下記式で表される。
MWsol <0.35×106 の場合、
D(%)< 0.3% (17)
そして、0.35×106 <MWsol < 1.1×106 の場合、
log(D)<log(0.3)+2.8 ×〔MWsol −(0.35×106)〕×10-6 (18)
上記対照試料はどれも、MWsol が0.35×106 未満に低下するよう十分に乾燥混合した後でさえ、どんなMWsol の場合でも、 0.3%またはこれより優れたマクロ分散特性を達成しなかった。対照的に、カーボンブラックN234 を含有しかつMWsol が0.35×106 を超える本発明のエラストマー複合体は、D(%)が 0.3%未満かまたは 0.2未満のような優れたマクロ分散を保持している。図18に示す、カーボンブラックN234 を含有する本発明の試料14号および各種の対照試料のコンパウンド特性と性能特性を以下の表31に示す。本発明の試料14号は、2.08cm/百万サイクルに過ぎないその亀裂生長速度値によって示されているように、亀裂生長に対する優れた抵抗性を有していることが分かる。
【0157】
【表52】

【0158】
図19は、添加量55phr の前述のN110 カーボンブラックを含有する、本発明及び対照試料の分散性及びMWsol を示している。図19に示されたデータは、N110カーボンブラックを含有する本発明の新規なエラストマー複合体のマクロ分散性が、MWsol 値の広範な範囲にわたって、対照試料のそれに比べて有意に優れていることを明確に示している。N110 カーボンブラックを含有する本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は、図19に示されたように、下記式で説明される:
D(%)< 0.5% (19)
(MWsol <0.35×106 の場合):及び
log(D)<log(0.5)+2.5 ×〔MWsol −(0.6×106)〕×10-6 (20)
(0.35×106 <MWsol < 1.1×106 の場合)である。対照試料は、いかなるMWsol でも、例え0.35×106 以下のMWsol に低下するのに充分なだけ乾燥混合した後であっても、 0.5%のマクロ分散性は達成されなかった。対照的に、N110 カーボンブラックを含有し、かつ0.35×106 以上のMWsol を有する、本発明のエラストマー複合体は、 0.2%未満のD(%)のような、優れたマクロ分散を有する。
【0159】
図20は、添加量33phr の前述のN351 カーボンブラックを含有する、本発明の試料22及び対照試料の分散性及びMWsol を示している。図20に示されたデータは、N351 カーボンブラックを含有する本発明の新規なエラストマー複合体のマクロ分散性が、MWsol 値の広範な範囲にわたって、対照試料のそれに比べて、有意に優れていることを明確に示している。N351 カーボンブラックを含有する本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は、図20に示されたように、下記式で説明される:
D(%)< 0.3% (21)
(MWsol <0.55×106 の場合):及び
log(D)<log(0.3)+2.0 ×〔MWsol −(0.55×106)〕×10-6 (22)
(0.55×106 <MWsol < 1.1×106 の場合)である。対照試料は、いかなるMWsol でも、例え0.35×106 以下のMWsol に低下するのに充分なだけ乾燥混合した後であっても、 1.0%のマクロ分散量が達成されなかった。対照的に、N351 カーボンブラックを含有し、かつ0.35×106 以上のMWsol を有する、本発明のエラストマー複合体は、D(%) 0.2%未満のような、優れたマクロ分散を有する。
【0160】
図21は、添加量55phr の前述のSTERLING(登録商標)6740カーボンブラックを含有する、本発明の試料 No.23及び対照試料の分散性及びMWsol を示している。図21に示されたデータは、STERLING(登録商標)6740カーボンブラックを含有する本発明の新規エラストマー複合体のマクロ分散性が、MWsol 値の広範な範囲にわたって、対照試料のそれに比べて、有意に優れていることを明確に示している。STERLING(登録商標)6740カーボンブラックを含有する本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は、図21に示されたように、下記式で説明される:
D(%)< 0.1% (23)
(MWsol < 0.3×106 の場合):及び
log(D)<log(0.1)+2.0 ×〔MWsol −(0.3×106)〕×10-6 (24)
(0.3×106 <MWsol < 1.1×106 の場合)である。対照試料は、いかなるMWsol でも、例え 0.3×106 以下のMWsol に低下するのに充分なだけ乾燥混合した後であっても、 0.1%のマクロ分散性は達成されなかった。対照的に、STERLING(登録商標)6740カーボンブラックを含有し、かつ 0.3×106 以上のMWsol を有する、本発明のエラストマー複合体は、D(%) 0.2%未満、更には 0.1%未満でさえあるような、優れたマクロ分散を有する。図21に示されたSTERLING(登録商標)6740カーボンブラックを含有する、本発明の試料 No.23及び対照試料の化合物の特性及び性能特性を、下記表32に示した。本発明の試料 No.23は、その亀裂生長速度値が、わずか0.91cm/ミリオンサイクルであることによって示されるように、亀裂生長に対する良好な抵抗性を有することが認められる。実際には、本発明の試料は、対応する対照試料よりも、非常に優れている。これは、前述のように、本発明の試料中のカーボンブラックのより良いMWsol 及びマクロ分散に大きく起因すると考えられる。
【0161】
【表53】

【0162】
追加実施例:加硫された試料
前述の選択された本発明の試料及び対応する対照試料の両方を含む、多くのマスターバッチ試料を、加硫しかつ試験した。特に、試料は、前記表8のステージIIに従って、表9の配合を用いて混合し、最終化合物を生成した。その後各々の最終化合物は、実質的に完全な加硫が達成されるまで、標準的手法を用い、約 150℃で、型の中で加硫した。この加硫された試料の性能特性は、前述の測定法に従って、すなわちASTM D3629−94による回転屈曲試験機を用いて、各々の亀裂生長速度を測定することによって、決定した。亀裂生長を測定するために使用した回転屈曲試験機は、市販のものであり、かつ周知である。例えば、1995年の国際ゴム会議議事録(the Proceedings of the International Rubber Conference)(神戸、日本)文書 No.27A−6(p.472−475)において議論されている。これらの化合物は、 100℃及び屈曲角45°で試験した。一般に当業者は、このような化合物における亀裂生長速度が、天然ゴムの分子量及びカーボンブラックの分散性によって、すなわち、該化合物のMWsol 及びD(%)値によって影響されることを認めている。より高いMWsol 及びより低いD(%)は、低下した亀裂生長速度に良く相関している。本発明の試料 No.9,10及び16に関する亀裂生長速度及び他の情報は、下記表33に示した。対応する対照試料に関する該当する試験の結果は、カーボンブラックの選択によってグループ分けし、下記表34に示した。更に、本発明の試料 No.24〜32及び対応する対照試料について、 Tanδ max@60℃を測定した。本発明の試料に関する Tanδ max@60℃値を、下記表35に示した。対照試料の該当する試験の結果は、下記表36に示した。
表36に示された対照試料 No.444 〜450 は、RSS1天然ゴムを用いる対照試料コードM2D1について、先に示した方法に従って製造した。全ては、5phr のエキステンダー油と共に、表36に示した添加量(phr) のカーボンブラックN234 を使用した。
【0163】
【表54】

【0164】
【表55】

【0165】
【表56】

【0166】
【表57】

【0167】
【表58】

【0168】
【表59】

【0169】
表33及び34の比較から、本発明の試料により、対照試料と比べて、有利に低い亀裂生長が達成されたことが認められた。低い亀裂生長速度は、良好な耐久性、及びタイヤ用途などを含む非常に多くの用途に関連した特性に相関している。更に、表35及び36を比較することで、本発明の試料により、より良い Tanδ,max 値、すなわち対照試料の値よりも低い値が達成されることを認めることができる。従って、低い転がり抵抗に応じて低いヒステリシスが要求される、例えばタイヤ用途などを含む、非常に多くの製品用途のために、本発明の試料により改善された性能が達成される。
【0170】
本発明のエラストマー複合体の有利な性能特性は、図22に図示された、N234カーボンブラックを含有する本発明の試料 No.16の亀裂生長速度、及び対応する対照試料、No.273〜288 の試験結果によって例証される。特に図22は、対照試料に関するMWsol 及び亀裂生長速度の間の相関、更には本発明のエラストマー複合体における優れたマクロ分散の有利な影響を明確に示している。図22−24及び表33−36に示されたMWsol 値が、加硫前のマスターバッチ材料に関するものであることは理解されなければならない。加硫された材料の分子量は、未加硫のマスターバッチのMWsol 値に良く相関すると理解される。MWsol が約0.25×106 〜 0.6×106 の範囲である対照試料の亀裂生長速度は、MWsol に対する直線の相関関係によく一致していることが認められる。対照的に、MWsol が 0.5×106 である本発明の試料 No.16は、対応するいずれの対照試料よりも、本発明の試料がより良いマクロ分散D(%)であるために、有意に良好な(すなわち、低下した)亀裂生長速度を有する。これは更に、図23に示された同様のことによって確認され、ここではN326 カーボンブラックを含有する本発明の試料 No.9の亀裂生長速度が、対応するあらゆる対照試料No.145〜160 よりも、有意に低く、かつその相関直線よりもかなり低いことが認められる。同様に図24においても、本発明の試料 No.10の優れたマクロ分散が、対応する対照試料No.177〜192 によって確立された亀裂生長速度及びMWsol の相関直線のはるかに下方に位置する、亀裂生長速度の結果について認められる。図25において、本発明の試料 No.24〜28及び本発明の試料 No.29〜32について、最大 Tanδは、対応する対照試料No.444〜450 よりも、より良く、すなわち低く、図示される。
【0171】
本発明のエラストマー複合体に関する前述の優れた亀裂生長の結果は、単に疲労特性の利点を示すのみではなく、優れた引裂及び切削り(cut and chip) の抵抗性のような、破壊特性における利点も指摘している。本発明のエラストマー複合体に関する前述の優れたヒステリシスの結果は、単に自動車タイヤの用途での低い転がり抵抗(及び対応する高い燃費)を示すのみではなく、発熱減少のような、性能特性に関する有利な改善点も指摘している。これらの優れた特性、疲労及び引裂抵抗性、低いヒステリシス、少ない発熱などのうちのひとつ以上が、本発明のエラストマー複合体を、タイヤ用途のような商業的用途、及び工業用ゴム製品における使用に良く適したものにしている。タイヤ用途に関して、本発明の様々な好ましい実施態様が、特に下記のような使用に良く適している:タイヤトレッド、特にラジアル及びバイアストラックタイヤ、オフロード(“ORT ”)タイヤ、飛行機用タイヤなどのためのトレッド;サブトレッド;ワイヤスキム;サイドウォール;更生タイヤ用のクッションゴム;並びに、類似のタイヤ用途である。本発明の様々な好ましい実施態様によって達成された優れた性能特性は、改善されたタイヤの耐久性、トレッド寿命及びケーシング寿命、自動車のより良い燃費及び他の利点を提供する。工業用ゴム製品に関しては、本発明の様々な好ましい実施態様が、特に下記のような使用に、特に良く適している:エンジンマウント、ハイドロマウント、橋梁支承及び地震免振装置、タンクトラック又はトレッド、採鉱ベルト及び類似の製品用途である。本発明の様々な実施態様によって達成された優れた性能特性は、このような製品用途に関して、改善された疲労寿命、耐久性及び他の利点を提供する。
【0172】
図26〜29は、一般に図8に対応している、カーボンブラックの形態、ストラクチャー(DBPA)及び表面積(CTAB)を図示している。図26のカーボンブラックの形態領域261 は、現在OTR タイヤトレッド用途のために商品化に使用されているカーボンブラックを含んでいる。矢印262 は、領域261 が、本発明に従って、有利に拡張され得る方向を示している。切削り抵抗、亀裂生長抵抗及び引裂抵抗のような性能特性は、一般に向きのついた矢印262 対照の方向に改善すると理解されるが、しかし従来は、天然ゴムの分子量の減少、及び/又はこのような大きい表面積、ローストラクチャーのカーボンブラックの使用から生じる貧弱なマクロ分散に起因した、これら及び他の特性の低下の代償であると理解されていた。本発明のエラストマー複合体は、それらの優れたマクロ分散及びMWsol の点で、著しく改善されたOTR トレッド材料を達成するために、向きのついた矢印262 で示されたような、このようなローストラクチャー、大きい表面積のカーボンブラックを使用することができる。
同様に、図27のカーボンブラックの形態領域271 は、トラック及びバス(T/B)のタイヤトレッド用途のために、現在商品化に使用されているカーボンブラックを含む。矢印272 は、領域271 が、本発明に従って、有利に拡張され得る方向を示している。耐磨耗性のような性能特性は、一般に向きのついた矢印272 対象の方向に改善すると理解されるが、しかし従来は、該ゴムの分子量の減少、及び/又はこのような大きい表面積のカーボンブラックの使用から生じる貧弱なマクロ分散に起因した、これら及び他の特性の低下の代償であると理解されていた。本発明のエラストマー複合体は、それらの優れたマクロ分散及びMWsol の点で、改善されたT/Bトレッド材料を達成するために、向きのついた矢印272 で示されたような、このような大きい表面積のカーボンブラックを使用することができる。
【0173】
同じく図28のカーボンブラックの形態領域281 及び283 は、各々、トレッドベース及び乗用車(PC)用タイヤトレッド用途のために、現在商品化に使用されているカーボンブラックを示している。向きのついた矢印282 及び284 は、各々、領域281 及び283 が、本発明に従って、有利に拡張され得る方向を示している。発熱性(HBU) 及び転がり抵抗のような性能特性は、一般に向きのついた矢印282対象の方向でトレッドベースを改善すると理解されるが、しかし従来は、該ゴムの分子量の減少、及び/又はこのような大きい表面積、低ストラクチャーのカーボンブラックの使用から生じる、貧弱なマクロ分散に起因したこれら及び他の特性の低下の代償であると理解されていた。同様に、転がり抵抗のような性能特性は、一般に向きのついた矢印284 対象の方向でPCトレッドを改善すると理解されるが、しかし従来は、該ゴムの分子量の減少、及び/又はこのような大きい表面積、低ストラクチャーのカーボンブラックの使用から生じる貧弱なマクロ分散に起因した、これら及び他の特性の低下の代償であると理解されていた。本発明のエラストマー複合体は、それらの優れたマクロ分散及びこのようなエラストマー複合体中の任意の高分子保存剤の点で、改善されたトレッドベース及びPCトレッドを達成するために、各々、矢印282 及び284 で示されたような、大きい表面積、低ストラクチャーのカーボンブラックを使用することができる。
【0174】
同様に、図29のカーボンブラックの形態領域291, 293及び294 は、各々、サイドウォール、エペックス及びスチールベルトタイヤの用途のために、現在商品化に使用されているカーボンブラックを示している。向きのついた矢印292 及び295 は、各々、領域291 及び294 が、本発明に従って、有利に拡張され得る方向を示している。発熱性(HBU) 及び疲労寿命のような性能特性は、向きのついた矢印292 対象の方向でサイドウォールを改善すると理解されるが、しかし従来は、該ゴムの分子量の減少、及び/又はこのような低ストラクチャーのカーボンブラックの使用から生じる、貧弱なマクロ分散に起因したこれら及び他の特性の低下の代償であると理解されていた。同様に、発熱性、加工及びワイヤ接着のような性能特性は、一般に向きのついた矢印295 対象の方向でスチールベルトエラストマー材料を改善すると理解されるが、しかし従来は、該ゴムの分子量の減少、及び/又はこのような大きい表面積、低ストラクチャーのカーボンブラックの使用から生じる貧弱なマクロ分散に起因した、これら及び他の特性の低下の代償であると理解されていた。本発明のエラストマー複合体は、優れたマクロ分散及びこのようなエラストマー複合体中の任意の高分子保存剤の点で、改善されたサイドウォール及びスチールベルトゴム材料を達成するために、各々、矢印292 及び295で示されたような、大きい表面積及び/又は低ストラクチャーのカーボンブラックを使用することができる。
【0175】
追加の実施例:他の充填剤を含有する好ましい実施態様及び対照試料
本発明のある好ましい実施態様に従うエラストマー複合体の別の試料、及びそれに対応する対照試料を製造した。これらの第一の群は、先にシリコーン処理したカーボンブラックと称された型の、多相凝集(multiphase aggregate) 充填剤を用いた。
特に、発明の試料 No.33〜34は、Cabot Corporation(ビレリカ、マサチューセッツ州)から市販されている、ECOBLACK(登録商標)シリコーン処理したカーボンブラックを使用した。このようなECOBLACK(登録商標)充填剤は、カーボンブラックN234 に類似した、形態学的特性、すなわちストラクチャー及び表面積を有する。試料 No.33は、45phr ECOBLACK(登録商標)充填剤を使用し、かつエキステンダー油は使用しなかった。試料 No.34は、68phr ECOBLACK(登録商標)充填剤を使用し、かつエキステンダー油は使用しなかった。天然ゴム並びにカーボンブラック及びシリカ充填剤の配合物を含有する、本発明のエラストマー複合体に関する、様々な製品用途のための典型的な充填剤及びエキステンダー油の使用については、表37に示した。表37において示された組成物中のシリカ充填剤の使用は、典型的にはカーボンブラック充填剤の同様の量で置き換えられるであろうことが理解されなければならない。
【0176】
【表60】

【0177】
試料の第二の群は、シリカ及びカーボンブラックの配合物又は混合物を使用した。カーボンブラック及びシリカ充填剤の配合物を使用する本発明の実施態様において、これらが、少なくとも約60:40の重量比で使用されることが一般に好ましい。すなわち、このマスターバッチ中での該エラストマーの良好な凝固を達成し、かつシリカの再凝集を減少又は阻止するためには、カーボンブラックは、該充填剤を少なくとも約60重量%含むことが好ましい。特に、 No.35〜38の実施例においては、表40に示されたように、カーボンブラックは、PPG Industries(ピッツバーグ、ペンシルバニア州、米国)から入手可能な、表面積BET が 150m2 /g、表面積DBPAが 190mils/ 100g,pH7及び主要な粒度が19nmである、特定のSiO2充填剤HiSil(登録商標)233 と共に使用される。
【0178】
本発明の試料の全て、すなわち、追加の本発明の試料 No.33〜38は、前述の本発明の試料 No.1〜32において使用された方法及び装置に従って、製造した。本発明の試料 No.33から38の各々において使用された方法及び装置の詳細は、下記表38に示した。試料 No.33〜38において使用されたフィールドラテックス(field latex)又は濃縮物は、場合によって、前記表24に示したものと類似している。表38のデータは、前述の本発明の試料 No.1〜32に関して表25において提供されたものと対応していると理解される。表38に列記されたカーボンブラック充填剤“CRX2000 ”とは、前述のECOBLACK(登録商標)シリコーン処理したカーボンブラックのことである。
【0179】
【表61】

【0180】
対照試料 451〜498 は、前述の対照試料 No.1〜450 に示された方法及び装置に従って製造した。 451〜466 のマスターバッチに関する、製造コード(先の表13を参照のこと)、充填剤添加量、ゴム、MWsol 及びマクロ分散は、下記表39に示す。本発明の試料 No.33〜38に関する、製造コード、充填剤添加量、ゴム、MWsol 及びマクロ分散値は、下記表40に示す。表39から、対照試料 451〜466 は、本発明の試料 No.33及び34の組成に一致していることがわかる。同様に、対照試料 467〜498 は、本発明の試料 No.35〜38の組成に一致している。
【0181】
【表62】

【0182】
【表63】

【0183】
【表64】

【0184】
【表65】

【0185】
本発明の試料 No.33〜38のマスターバッチにおける優れたカーボンブラック分散は、表39−41に示された、マクロ分散性及びMWsol 値の比較によって明らかになる。ECOBLACK(登録商標)シリコーン処理したカーボンブラックで製造された本発明の試料 No.33−34、及び対応する対照試料は、図30において、片対数プロットで比較した。優れたカーボンブラック分散が、本発明の試料に関して、図30において認められ、これは、本発明の内容に従ったエラストマー複合体の好ましい実施態様を表している。本発明の試料は、図30の線301 の下方に位置する一方で、対照試料は、線301 の上方に位置し、貧弱な分散を有している。実際には、図30に示された好ましい実施態様は、MWsol が 0.4×106 を有利に超えるような値であっても、 0.2%のD(%)値まで低下した。図30に示されたデータは、ここで明らかにされた、シリコーン処理されたカーボンブラックを含有する、新規なエラストマー複合体のマクロ分散性が、従来の乾燥混合法と同等の成分を使用することで達成されるものよりも、顕著に優れていることを明確に表している。図30に示された本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は、下記式で説明される:
D(%)< 1.0% (25)
(MWsol < 0.4×106 の場合):及び
log(D)<log(1.0)+2.0 ×〔MWsol −(0.4×106 )〕×10-6 (26)
(0.4×106 <MWsol < 1.1×106 の場合)である。
D(%)は、10ミクロン以上の欠陥について測定された未分散面積の割合であること、及び1%が、これらの本発明の好ましい実施態様に従うマスターバッチに関するマクロ分散性閾値であることが認められるであろう。すなわち、いかなる乾燥素練りされたマスターバッチも、あらゆるMWsol において、例え 0.4×106 以下のMWsol に低下するのに充分なだけ乾燥混合した後であっても、マクロ分散性 1.0%以上を達成しない。図30に示された好ましい実施態様は、前述の閾値以下にまでよく低下する。シリコーン処理されたカーボンブラックを含む、本発明のエラストマー複合体が、マクロ分散性及びMWsol の間で、これまでは達成されなかったバランスを提供することを認めることができる。
【0186】
シリカ充填剤と配合されたカーボンブラックを含有する本発明の試料 No.35〜38及び対応する対照試料は、図31の片対数プロットにおいて、同等であった。特に、図31は、本発明の試料 No.35〜38及び対応する対照試料No.467〜498 のマクロ分散値及びMWsol 値について示す。優れたカーボンブラック分散が、本発明の試料に関して、図31において認められ、これは、本発明の内容に従ったエラストマー複合体の好ましい実施態様を表している。本発明の試料は、都合が良いことに図31の線311 の下方に位置する一方で、全ての対照試料は、線311 の上方に位置し、貧弱な分散を有している。実際には、図31に示された全ての好ましい実施態様は、 0.4%のD(%)値まで低下した。図31に示されたデータは、ここで明らかにされたMWsol 値の範囲にわたってカーボンブラック/シリカ配合物を含有する、新規なエラストマー複合体のマクロ分散性が、従来の乾燥素練り混合法の同等の成分を使用することで達成されるものよりも、顕著に優れていることを明確に表している。図31に示された本発明のエラストマー複合体のマクロ分散値は、下記式で説明される:
D(%)< 0.8% (27)
(MWsol < 0.5×106 の場合):及び
log(D)<log(0.8)+2.2 ×〔MWsol −(0.5×106 )〕×10-6 (28)
(0.5×106 <MWsol < 1.1×106 の場合)である。
D(%)は、10ミクロン以上の欠損について測定された未分散面積の割合であること、及び 0.8%が、これらの本発明の好ましい実施態様に従うマスターバッチに関するマクロ分散性閾値であることが認められるであろう。すなわち、いかなる乾燥素練りされたマスターバッチも、あらゆるMWsol において、例え 0.4×106 以下のMWsol に低下するのに充分なだけ乾燥混合した後であっても、マクロ分散性 0.8%以上は達成されない。図31に示された好ましい実施態様は、閾値マクロ分散値を 0.8%以下にまで、更には 0.4%以下にまでよく低下する。カーボンブラック/シリカ配合充填剤を含む、本発明のエラストマー複合体が、マクロ分散性及びMWsol の間で、これまでに達成されなかったバランスを提供することを認めることができる。
前述の内容において、本発明の真の範囲及び精神を逸脱しないような、様々な追加、変更などを行うことができることが、当業者には明らかである。このような追加及び変更は全て、下記のクレームの及び範囲であることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】図1は、いくつかの好ましい実施形態に従ってエラストマーマスターバッチを調製するための装置及び方法の概略的流れ図による例示である。
【図2】図2は、図1の概略的流れ図と一貫性ある好ましい実施形態の一部概略図を含めた立面図である。
【図3】図3は、図1の概略的流れ図と一貫性ある好ましい一変形実施形態の一部概略図を含めた立面図である。
【図4】図4は、図3の実施形態の混合ヘッド/凝固ゴム反応装置アセンブリの、一部断面図を含めた、立面図である。
【図5】図5は、好ましい一変形実施形態を例示する、図4の図に対応する一部断面図となった立面図である。
【図6】図6は、図5のライン6−6に沿って切り取られた断面図である。
【図7】図7は、好ましい一変形実施形態で使用するのに適した混合ヘッドの断面図である。
【図8】図8は、本発明に従ったいくつかのきわめて好ましいマスターバッチ組成物の中で利用されるカーボンブラックの表面積及びストラクチャー特性(CTAB及びDBPA) を示すグラフである。
【図9】図9は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図10】図10は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図11】図11は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図12】図12は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図13】図13は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図14】図14は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図15】図15は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図16】図16は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図17】図17は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図18】図18は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図19】図19は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図20】図20は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図21】図21は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図22】図22は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図23】図23は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図24】図24は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図25】図25は、エラストマー複合体により場合によって達成される物理的特性及び性能特性における著しい改善を例示する比較用の対照標本に関するデータを伴う、図8に示されたカーボンブラックを含む本発明に従って新規なエラストマー複合体のマクロ分散、天然ゴム分子量及び/又はその他の特性を示すグラフである。
【図26】図26は、カーボンブラックの形態学的特性すなわち、ストラクチャー(DBPA)及び表面積(CTAB)を示し、特定の製品利用分野に適しているカーボンブラックの領域又はゾーンを(かかる形態学的特性によって)識別するグラフである。
【図27】図27は、カーボンブラックの形態学的特性すなわち、ストラクチャー(DBPA)及び表面積(CTAB)を示し、特定の製品利用分野に適しているカーボンブラックの領域又はゾーンを(かかる形態学的特性によって)識別するグラフである。
【図28】図28は、カーボンブラックの形態学的特性すなわち、ストラクチャー(DBPA)及び表面積(CTAB)を示し、特定の製品利用分野に適しているカーボンブラックの領域又はゾーンを(かかる形態学的特性によって)識別するグラフである。
【図29】図29は、カーボンブラックの形態学的特性すなわち、ストラクチャー(DBPA)及び表面積(CTAB)を示し、特定の製品利用分野に適しているカーボンブラックの領域又はゾーンを(かかる形態学的特性によって)識別するグラフである。
【図30】図30は、比較のための対照標本を伴う、本発明に従った新規なエラストマー複合体のマクロ分散及び天然ゴム分子量を示すグラフである。
【図31】図31は、比較のための対照標本を伴う、本発明に従った新規なエラストマー複合体のマクロ分散及び天然ゴム分子量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーラテックス、微粒子充てん材流体及び任意のその他の配合剤からなる、エラストマー複合体の製造方法において;
− 混合ゾーンから排出端部まで延びる細長い凝固ゴムゾーンを構成する凝固ゴム反応装置の該混合ゾーンに対し、エラストマーラテックスを含む第1の流体の連続流を供給する段階;
− エラストマーラテックスと混合物を形成するべく凝固ゴム反応装置の混合ゾーンに対し加圧下で、微粒子充てん材を含む第2の流体の連続流を供給する段階を含み、該混合物が排出端部まで連続流として移行し、微粒子充てん材がエラストマーラテックスを凝固させるのに有効であり、混合ゾーン内での該第1の流体に対する該第2の流体の供給が、排出端部に至る前に微粒子充てん材でエラストマーラテックスを実質的に完全に凝固させるのに充分なほど有効なものであり;さらに
− 凝固ゴム反応装置の排出端部からエラストマー複合体の実質的連続流を排出する段階;
を含んで成る方法。
【請求項2】
エラストマーラテックスが天然ゴムラテックスであり、微粒子充てん材流体がカーボンブラック、ケイ素コーティングされたカーボンブラック、ケイ素処理されたカーボンブラック、ヒュームドシリカ、沈降シリカ又はそれらのいずれかの混合物の水性分散液であることを更に特徴とする、請求項1に記載のエラストマー複合体製造方法。
【請求項3】
第2の流体が秒速 100〜800 フィートでノズルを通して混合ゾーンに供給され、かつ第1の流体が秒速12フィート未満で混合ゾーン内に連続的に供給されることを更に特徴とする、請求項1又は2に記載されるエラストマー複合体製造方法。
【請求項4】
混合ゾーンに更に補助流体を供給すること、該補助流体が混合物と実質的に反応性をもたないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエラストマー複合体製造方法。
【請求項5】
微粒子充てん材がカーボンブラック、ケイ素コーティングされたカーボンブラック、ケイ素処理されたカーボンブラック、ヒュームドシリカ、沈降シリカ及びそれらの混合物の中から選択され、エラストマーが天然ゴムを含み、
− ホモジナイザ内で水性液体中に微粒子充てん材を高エネルギー分散させることにより微粒子充てん材流体を調製する段階;及び
− (i)凝固ゴム反応装置の流入端部と密封された流動的連絡状態で混合ヘッドにより構成されかつ凝固ゴムゾーンと同軸的に延びている混合ゾーンに対し連続的に秒速10フィート未満で天然ゴムラテックスの液体流を供給すると同時に、
(ii)凝固ゴムゾーンと実質的に同軸の供給管を通して凝固ゴムゾーンの流入端部の方向に向けて混合ゾーン内に微粒子充てん材流体を噴出することによって微粒子充てん材流体中に連続的に天然ゴムラテックスを伴出する(ここで、微粒子充てん材流体は秒速 200〜500 フィートで供給管から流出する)こと、
によって、流入端部から排出端部まで漸進的に増大する断面積を伴って全体として管状の凝固ゴムゾーンを形成する凝固ゴム反応装置内で、混合された天然ゴムラテックスと微粒子充てん材の半拘束連続流を樹立する段階;
− 微粒子充てん材による天然ゴムラテックスの凝固物であるマスターバッチ小球を凝固ゴム反応装置の排出端部から連続的に排出する段階;及び
− 少なくとも1つの乾燥機内で凝固ゴム反応装置から排出されたマスターバッチ小球を連続的に乾燥しペレット化する段階;
を含むことを更に特徴とする請求項1に記載のエラストマー複合体製造方法。
【請求項6】
微粒子充てん材がエラストマー中に分散したエラストマー複合体の製造装置において、
− 混合ゾーン及び該ゾーンから排出端部まで延びる細長い凝固ゴムゾーンを構成する凝固ゴム反応装置;
− 混合ゾーンに連続的にエラストマーラテックス流体を供給するためのラテックス供給手段;及び
− エラストマーラテックス流体が混合ゾーンから凝固ゴムゾーンの排出端部まで進む間に混合物を形成するべく混合ゾーン内に連続ジェットとして微粒子充てん材流体を供給するための充てん材供給手段を含んで成る装置。
【請求項7】
エラストマー中に分散した微粒子充てん材を含むエラストマー複合体において、エラストマー複合体中の微粒子充てん材のマクロ分散D(%)が、 1.0%未満の未分散面積である、エラストマー複合体。
【請求項8】
微粒子充てん材がカーボンブラック、ケイ素コーティングされたカーボンブラック、ケイ素処理されたカーボンブラック、ヒュームドシリカ、沈降シリカ又はそれらのいずれかの混合物であり、エラストマーが天然ゴム、天然ゴムの塩素化誘導体又は、ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、アルキル基がC1〜C3アルキルである3,3−ジアルキル−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン又はプロピレンの単独重合体、共重合体又は三成分共重合体であることを特徴とする、請求項7に記載のエラストマー複合体。
【請求項9】
微粒子充てん材が少なくとも30phr の量で存在することを更に特徴とする、請求項7又は8に記載のエラストマー複合体。
【請求項10】
エラストマーが天然ゴムであり、微粒子充てん材が 1.2未満のストラクチャーと表面積の比DBPA:CTABを有し、110以上のDBPAを有する30〜75phr のカーボンブラックであり、そしてエラストマー複合体が 0.3%以下のマクロ分散D(%)を有することを特徴とする、請求項7に記載のエラストマー複合体。
【請求項11】
更にカーボンブラックの表面積CTABが45より大きい、請求項10に記載のエラストマー複合体。
【請求項12】
エラストマー複合体が未加硫であり、エラストマー複合体のMWsol (重量平均)が少なくとも0.45×106 であることを更に特徴とする、請求項10又は11に記載のエラストマー複合体。
【請求項13】
エラストマーが天然ゴムを含み、微粒子充てん材が45から 250未満までのCTAB表面積をもつ30〜75phr のカーボンブラックを含むこと、そしてエラストマー複合体が0〜20phr のエキステンダー油を更に含み、該エラストマー複合体が
(i)MWsol ≦0.45×106 のとき、D(%)≦ 0.2%
(ii)0.45×106 <MWsol < 1.1×106 のとき、
log(D)≦log(0.2)+2.0 ×(MWsol −0.45×106)×10-6
といったような、天然ゴム中のカーボンブラックのマクロ分散D(%)を有することを更に特徴とする、請求項7に記載のエラストマー複合体。
【請求項14】
エラストマーが天然ゴムを含み、微粒子充てん材が45〜250 のCTAB表面積及びCTABが65以上 250未満である場合に 110未満のDBPA(cc/ 100g)そしてCTABが45から65未満である場合に80+1.6(CTAB−45)未満のDBPAのストラクチャーをもつ30〜75phr のカーボンブラックを含むこと、そしてエラストマー複合体が0〜20phr のエキステンダー油を更に含み、該エラストマー複合体が
(i)MWsol が 0.7×106 未満であるとき、D(%)< 1.0%、
(ii) 0.7×106 <MWsol < 1.1×106 であるとき、
log(D)≦log 1.0 +2.5 ×(MWsol −0.7 ×106)×10-6
といったような、天然ゴム中のカーボンブラックのマクロ分散D(%)を有することを特徴とする、請求項7に記載のエラストマー複合体。
【請求項15】
エラストマーが天然ゴムを含み、微粒子充てん材が 110から80+1.6(CTAB−45)未満までのDBPAストラクチャー及び65以上 250未満のCTAB表面積を有する30〜70phr のカーボンブラックを含むこと、そしてエラストマー複合体が0〜20phr のエキステンダー油を更に含み、該エラストマー複合体が
(i)MWsol が0.35×106 未満であるとき、D< 0.3%、
(ii)0.35×106 <MWsol < 1.1×106 であるとき、
log(D)<log ×(0.3) +2.8(MWsol −0.35×106)×10-6
といったような天然ゴム中のカーボンブラックのマクロ分散D(%)を有することを特徴とする、請求項7に記載のエラストマー複合体。
【請求項16】
エラストマーが天然ゴムを含み、微粒子充てん材が80+1.6(CTAB−45)から 160までのDBPAストラクチャー(cc/ 100g)及び45以上90未満のCTAB表面積を有する40〜70phr のカーボンブラックを含むこと、そしてエラストマー複合体が0〜20phr のエキステンダー油を更に含み、該エラストマーが
(i)MWsol が0.3×106 未満であるとき、D(%)< 0.1%、
(ii) 0.3×106 <MWsol < 1.1×106 であるとき、
log(D)<log(0.1)+2.0 ×(MWsol −0.30×106)×10-6
といったような天然ゴム中のカーボンブラックのマクロ分散D(%)を有することを特徴とする、請求項7に記載のエラストマー複合体。
【請求項17】
エラストマーが天然ゴムを含み、微粒子充てん材がカーボンブラックとシリカの配合物を含む30〜70phr の微粒子充てん材を含むこと、そしてエラストマー複合体が0〜20phr のエキステンダー油を更に含み、該エラストマー複合体が
(i)MWsol が 0.5×106 未満であるとき、D(%)< 0.8%
(ii) 0.5×106 <MWsol < 1.1×106 であるとき、
log(D)<log(0.8)+2.2 ×(MWsol −0.5 ×106)×10-6
といったような天然ゴム中の微粒子充てん材のマクロ分散D(%)を有することを特徴とする、請求項7に記載のエラストマー複合体。
【請求項18】
微粒子充てん材が少なくとも約60%のカーボンブラックを更に含んで成ることを特徴とする、請求項17に記載のエラストマー複合体。
【請求項19】
エラストマーが天然ゴムを含み、微粒子充てん材が30〜70phr のケイ素処理されたカーボンブラックを含むこと、そしてエラストマー複合体が0〜20phr
のエキステンダー油を更に含み、該エラストマー複合体が
(i)MWsol が 0.4×106 未満であるとき、D(%)< 1.0%
(ii) 0.4×106 <MWsol < 1.1×106 であるとき、
log(D)<log(1.0)+2.0 ×(MWsol −0.4 ×106)×10-6
といったような天然ゴム中のケイ素処理されたカーボンブラックのマクロ分散D(%)を有することを特徴とする、請求項7に記載のエラストマー複合体。
【請求項20】
請求項13〜19のいずれか1項に記載のエラストマー複合体を含むことを特徴とする硬化エラストマー複合体。
【請求項21】
ASTM D3629−94に従って測定した亀裂生長速度が、約1.20cm/100 万サイクル以下である請求項13〜20のいずれか1項に記載のエラストマー複合体又は硬化エラストマー複合体を含むことを特徴とする、硬化エラストマー複合体。
【請求項22】
ASTM D3629−94に従って測定した亀裂生長速度が、約1.20cm/100 万サイクル以下であることを更に特徴とする請求項21に記載の加硫ゴム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2009−41026(P2009−41026A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233158(P2008−233158)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【分割の表示】特願平9−535526の分割
【原出願日】平成9年3月25日(1997.3.25)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】