説明

新規なチロシン誘導体

本発明は、式(I)で示される新規なチロシン誘導体、その薬学的に許容される塩およびそれらを含有する、薬学的に許容される組成物に関する。本発明はさらに詳しくは、一般式(I)の新規なチロシン誘導体を提供する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)で示される新規なチロシン誘導体、その薬学的に許容される塩、およびそれらを含有する薬学的に許容される組成物に関する。本発明はさらに詳しくは、一般式(I)の新規なチロシン誘導体を提供する。
【化1】

【0002】
本発明は、前記の新規な化合物、その薬学的に許容される塩、およびそれらを含有する薬学的に許容される組成物を製造するプロセスにも関する。
【0003】
本発明の化合物は、血中グルコース、血清インスリン、遊離脂肪酸、コレステロールおよびトリグリセリドレベルを下げるのに有効であり、かつII型糖尿病の治療および/または予防に有用である。本発明の化合物は、肥満症、炎症、多発性硬化症および慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療に有効である。驚くべきことに、これらの化合物は、レプチンレベルを高め、肝毒性を持たない。
【0004】
さらに、本発明の化合物は、高脂質血症、冠動脈疾患および末梢血管疾患ならびに多嚢胞性卵巣症候群などのインスリン抵抗性と関連する障害の治療に有用であり、また、炎症および免疫疾患、特にTNF−α、IL−1、IL−6、IL−1βなどのサイトカインおよびCOX−2などのシクロオキシゲナーゼによって仲介される炎症および免疫疾患の治療に有用である。
【背景技術】
【0005】
I型およびII型糖尿病の原因は、まだ明らかではないが、遺伝および環境のいずれも因子であると考えられている。I型は、自己免疫疾患であり、患者は、延命のためにインスリンを投与しなければならない。II型糖尿病は、より一般的な型であり、十分な量のインスリンを体内で生産することができないこと、または生産されるインスリンを正しく使用することができないことから起こる代謝異常である。インスリン分泌およびインスリン抵抗性は、主要な欠陥であるとみなされているが、そのメカニズムに関与する正確な遺伝因子は、未知のままである。
【0006】
糖尿病の患者は通常、以下の欠陥のうちの1つまたは複数を有する:
−膵臓によるインスリン産生の低下;
−肝臓によるグルコースの過剰分泌;
−骨格筋によるグルコース取り込みの非依存性;
−グルコース輸送体における欠陥、インスリン受容体の脱感作;
−多糖類の代謝分解における欠陥。
【0007】
インスリンの非経口投与または皮下投与以外に、約4種類の経口血糖降下薬、つまり、スルホニル尿素、ビグアニド、αグルコシダーゼ阻害剤およびチアゾリジンジオンが使用されている。糖尿病治療に使用される入手可能な現在の作用薬(agent)は、特定の欠点を有する。したがって、糖尿病治療に使用される経口投与可能な新規な薬剤の同定および開発に引き続き関心が寄せられている。
【0008】
上記のチアゾリジンジオン類は、近年II型糖尿病の治療にさらに広く使用されるようになり、患者がインスリンの作用に対する応答性が低くなる症状、「インスリン抵抗性」を抑制するインスリン増感剤としての特別な有用性を示す。非毒性の、より広く有効なインスリン増感剤が引き続き必要とされている。抗糖尿病活性を有する新規な化合物を探究する継続的な努力において、本発明者らは、オキシインドールおよびベンゾチアゾロン系を含有する新規な化合物を合成することを提案する。
【0009】
急性および慢性炎症性疾患および癌に関与するメディエーターの科学的な理解の近年の進歩により、有効な治療法を探索する新たな方策が導かれた。従来のアプローチは、特異的な抗体、受容体アンタゴニストまたは酵素阻害剤の使用などの直接的な標的介入(direct target intervention)を含む。様々なメディエーターの転写および翻訳に関与する調節メカニズムの解明の最近の飛躍的な進歩により、遺伝子転写レベルを対象とする治療的アプローチへの関心が高まっている。
【0010】
上述のように、本発明は、免疫疾患または炎症の治療にも関わり、注目すべきことには、これらの疾患は、サイトカインまたはシクロオキシゲナーゼによって仲介される。免疫系の主要な要素は、マクロファージまたは抗原提示細胞、T細胞およびB細胞である。NK細胞、好塩基球、マスト細胞および樹状細胞などの他の免疫細胞の役割は知られているが、原発性免疫性障害におけるその役割は不明である。マクロファージは、炎症の重要なメディエーターであり、T細胞の刺激および増殖に必要な「ヘルプ(help)」を提供する。最も重要なことには、マクロファージは、そのすべてが強力な炎症誘導性分子であるIL1、IL12およびTNF−αを産生し、T細胞に「ヘルプ」も提供する。さらに、マクロファージが活性化した結果、シクロオキシゲナーゼII(COX−2)、誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)などの酵素が誘導され、正常細胞に損傷を与えうるフリーラジカルが産生される。細菌産物、スーパー抗原およびインターフェロン−γ(IFNγ)を含む多くの因子が、マクロファージを活性化する。ホスホチロシンキナーゼ(PTK)および他の未定義の細胞キナーゼが、活性化プロセスに関与していると考えられている。
【0011】
サイトカインは、免疫応答の仲介に重要な免疫細胞によって分泌される分子である。サイトカインの産生は、他のサイトカインの分泌、細胞機能の変化、細胞分裂または分化を引き起こす。炎症は、損傷または感染に対する体内の正常な反応である。しかしながら、慢性関節リウマチなどの炎症性疾患では、病的な炎症プロセスが病的状態および死を招く。サイトカイン腫瘍壊死因子α(TNF−α)は、炎症反応において中心的な役割を果たし、炎症性疾患における介入のポイントとして標的にされている。TNF−αは、活性化マクロファージおよび他の細胞により放出されるポリペプチドホルモンである。低濃度では、TNF−αは、白血球を活性化し、炎症の血管外部位へのその遊走を促進することによって、防御炎症反応に関与する(Moser et al.、 J Clin Invest, 83:444-55, 1989)。より高い濃度では、TNF−αは強力な発熱物質として作用し、他の炎症誘発性サイトカインの産生を誘発する(Haworth et al., Eur J Immunol, 21:2575-79, 1991; Brennan et al., Lancet, 2:244-7, 1989)。TNF−αはまた、急性期タンパク質の合成を刺激する。米国の人口の約1%が罹患している、慢性かつ進行性の炎症性疾患である慢性関節リウマチにおいて、TNF−αは、関節の損傷および破壊を引き起こすサイトカインカスケードを仲介する(Arend et al., Arthritis Rheum, 38:151-60, 1995)。可溶性TNF受容体(エタネルセプト)(Goldenberg, Clin Ther, 21:75-87, 1999)および抗TNF−α抗体(インフリキシマブ)(Luong et al., Ann Pharmacother, 34:743-60, 2000)などのTNF−αの阻害剤は、最近、米国食品医薬品局(FDA)によって慢性関節リウマチ治療の作用薬として認可された。
【0012】
高レベルのTNF−αもまた、悪液質、敗血症性ショック症候群、変形性関節症、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患などを含む、多くの他の障害および疾患症状に関係している。TNF−αの阻害剤は、多種多様な疾患の治療において有用である可能性があることが分かる。TNF−αを阻害する化合物は、数件の特許に記述されている。
【0013】
IL−6の過剰産生は、いくつかの疾患状態に関わり、IL−6の分泌を阻害する化合物を開発することが非常に望まれる。IL−6を阻害する化合物は、米国特許第6004813号;米国特許第5527546号および米国特許第5166137号に記載されている。
【0014】
サイトカインIL−1βもまた、炎症反応に関与している。サイトカインIL−1βは、胸腺細胞の増殖、線維芽細胞増殖因子の活性および滑膜細胞からのプロスタグランジンの放出を刺激する。
【0015】
高レベルまたは未制御レベルのサイトカインIL−1βは、成人型呼吸窮迫症候群、アレルギー、アルツハイマー病など(これらに限定されない)を含む多くの炎症性疾患および他の疾患状態と関連している。IL−1βの過剰産生が多くの疾患症状と関連していることから、IL−1βの産生または活性を阻害する化合物を開発することが望まれる。上述の事実からわかるように、例えばTNF−α、IL−1、IL−6、COX−2あるいは免疫応答、炎症または炎症性疾患、例えば関節炎の原因であるとみなされる他の作用因子(agent)を阻害する化合物を提供するための大きな努力が以前からなされていたが、このような疾患を有効に治療または抑制するための新規かつ改善された化合物がいまだに必要とされている。このような治療ならびに例えば、インスリン抵抗性、高脂質血症、肥満症、炎症、多発性硬化症、関節炎、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患および癌の治療に有効な化合物を提供することを目的とする。
【0016】
最も類似していると考えられる化合物を開示している、先行技術の参考文献を以下に挙げる:
i)米国特許出願公開第2004/0142991号には、式(I)の化合物が開示されている。
【化2】

式中、−−−−は、任意の二重結合を表し;Yは、酸素、硫黄またはNRを表し、ここで、Rは、水素またはアルキルを表し;Zは、酸素または硫黄を表し;R、R、RおよびRは、同一または異なっていてもよく、かつ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、ホルミル、アミノ、アルキル、アルコキシ基を表し;Aは、結合、あるいは置換または非置換のアリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリール環を表し;Xは、アミノ酸またはその誘導体を表す。
【0017】
この式の化合物は、実施例(1)で示されている。
【化3】

【0018】
ii)国際公開第93/00337号パンフレットには、糖尿病の治療に関与する(I)の化学構造が開示されており、中間代謝に対する作用を生じ、特に血糖レベルを下げるという有用な薬理学的特性を有することが開示されている;
【化4】

【0019】
iii)米国特許第4572912号には、同様に血中脂質および血糖レベルを下げる能力を有する式(I)の化合物および一連の新規なチアゾリジン誘導体が開示されている。
【化5】

式中、R1およびR2は、同一または異なっていてもよく、それぞれが水素またはC1−C5アルキルを表し;Rは、水素、アシル基、(C1−C6アルコキシ)カルボニル基またはアラルキルオキシカルボニル基を表し;R4およびR5は、同一または異なっていてもよく、それぞれが水素、C1−C5アルキルまたはC1−C5アルコキシを表し、または、R4およびR5は、共にC1−C4アルキレンジオキシ基を表し;nは、1、2または3であり;
Wは、−CH−、>COまたは>CH−OR6基(R6は、R3に関して定義される原子または基のうちのいずれか1つを表し、かつR3と同じまたは異なる)を表し;YおよびZは、同一または異なっていてもよく、それぞれが酸素またはイミノを表す。
【0020】
IV)米国特許第第4687777号には、新規な化合物であり、哺乳動物における血糖および脂質低下活性を示し、かつ糖尿病および高脂血症の治療のための治療薬として価値がある、式(I)の化合物および式Iのチアゾリジンジオン誘導体およびその薬理学的に許容可能な塩が開示されている。
【化6】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
II型糖尿病における血中グルコース、遊離脂肪酸、コレステロールおよびトリグリセリドを下げる新規な化合物を開発し、かつ多発性硬化症および慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患を治療することを目的として、本発明者らは、上記の疾患の治療に有効な新規な化合物を開発する研究に集中した。この方向での努力によって、一般式(I)を有する化合物が導かれた。
【0022】
したがって、本発明の主な目的は、新規なチロシン誘導体、その薬学的に許容される塩、およびそれらを含有する医薬組成物を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、高脂質血症、冠動脈疾患および末梢血管疾患ならびに多嚢胞性卵巣症候群などのインスリン抵抗性と関連する障害の治療に有用であり、また、炎症および免疫疾患、特にTNF−α、IL−1、IL−6、IL−1βなどのサイトカインおよびCOX−2などのシクロオキシゲナーゼによって仲介される炎症および免疫疾患の治療に有用である、新規なチロシン誘導体、その薬学的に許容される塩、およびそれらまたはその混合物を含有する医薬組成物を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、毒性作用を持たず、または毒性作用が低く、向上した活性を有する、新規なチロシン誘導体、その薬学的に許容される塩、およびそれらまたはその混合物を含有する医薬組成物を提供することである。
【0025】
本発明のさらに他の目的は、式(I)の新規なチロシン誘導体、その薬学的に許容される塩およびそれらまたはその混合物を含有する医薬組成物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、式(I)の新規なチロシン誘導体、その薬学的に許容される塩およびそれらを含有する医薬組成物に関する。
【化7】

[式中、
−−−−は、任意(optional)の結合を表し;
Wは、OまたはSを表し;
Xは、C、CHまたはNを表し;Yは、NR、SまたはOを表し(Rは、水素;置換または非置換のアルキル、−CHCOOR、またはアリール;または対イオンを表し;Rは、Hまたはアルキル基を表す);
、Rは、同一または異なっていてもよく、かつ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、ホルミル、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ基を表し;
およびRは、同一または異なっていてもよく、かつ独立して、H、アルキル、CORを表し(Rは、H;アルキル、ハロアルキル、アリール、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシまたはアリールアルコキシからなる群から選択される置換または非置換基を表す);
は、−OR(Rは、水素;アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールから選択される置換または非置換の基;または対イオンを表す)、NR10(RおよびR10は、同一または異なっていてもよく、かつ独立して、H;アルキル、アルケニル、アリールから選択される置換または非置換の基を表す)を表す]
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施形態において、R、Rによって表される基は、水素;フッ素、塩素、臭素またはヨウ素などのハロゲン;ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、ホルミル、アミノ;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチルなどの直鎖状または分岐状、置換または非置換の(C−C)アルキル基;クロロメチル、クロロエチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、ジクロロメチル、ジクロロエチルなどのハロゲン原子1、2、3または4個によって置換されたアルキル基から選択されるハロアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどの置換または非置換の(C1−C4)アルコキシ基;から選択される。
【0028】
およびRによって表される適切な基は、同一または異なり、独立して、H、CORを表す。ここで、Rは、H;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチルなどの置換または非置換の、直鎖状または分岐状のC−Cアルキル基;クロロメチル、クロロエチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、ジクロロメチル、ジクロロエチルなどのハロアルキル;フェニル、ナフチルなどのアリール(アリール基は置換されてもよい);メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシなどのアルコキシ;アルアルコキシ(aralkoxy);アルケニルオキシ;アリールオキシから選択される置換または非置換の基を表す。
【0029】
によって表される適切な基は、OR、NR10を表す。
【0030】
によって表される適切な基は、水素;置換または非置換のアルキル、アルケニル、CHCOORもしくはアリール;または対イオンから選択される。ここで、Rは、Hまたはアルキル基を表す。
【0031】
によって表される適切な基は、水素;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチルなどの置換または非置換の、直鎖状または分岐状のC−Cアルキル基;フェニルなどのアリール;ベンジルなどのアラルキル基;Li、Na、およびKなどのアルカリ金属、CaおよびMgなどのアルカリ土類金属から選択される対イオン;アンモニウムなどの異なる塩基の塩または置換アンモニウム塩;から選択される。
【0032】
およびR10によって表される適切な基は、水素;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチルなどの置換または非置換の、直鎖状または分岐状のC−Cアルキル基;フェニルなどのアリール;から選択される。
【0033】
本発明の一部を形成する薬学的に許容される塩は、Li塩、Na塩およびK塩などのアルカリ金属塩、Ca塩およびMg塩などのアルカリ土類金属塩、リジン、アルギニン、グアニジン、ジエタノールアミン、コリンなどの有機塩基の塩、アンモニウムまたは置換アンモニウム塩などの塩基付加塩を含む。塩は、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、ヒドロハロゲン化物塩、酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、パルモエート(palmoate)、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、グリセロリン酸塩、ケトグルタル酸塩などの酸付加塩を含み得る。薬学的に許容される溶媒和化合物は、水和物であるか、またはアルコールなどの他の結晶溶媒を含む。
【0034】
本発明による代表的な化合物には、以下のものが含まれる。
メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{3−クロロ−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{2−クロロ−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{2−フルオロ−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{2−トリフルオロメチル−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{3−トリフルオロメチル−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{2−メトキシ−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{2−トリフルオロメチル−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−lH−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{3−トリフルオロメチル−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−lH−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{3−フルオロ−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{2−フルオロ−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{3−クロロ−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{2−メトキシ−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
メチル−2−アミノ−3−(4−{2−クロロ−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸ヒドロクロリド;
2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソベンゾチアゾール−3−イルメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸メチルエステルヒドロクロリド;
2−アミノ−N,N−ジメチル−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオンアミドヒドロクロリド;
2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオンアミドヒドロクロリド。
【0035】
上記の化合物のリストに関して好ましい塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩またはマグネシウム塩である。
【0036】
本発明の他の特徴によれば、スキームIに示されるように、式(I)の化合物の調製方法が提供される。式中、−−−は、任意の結合を表し、他のすべての記号は、上記で定義されたとおりである。
【化8】

ここで、
AはCHOまたはCH−Mであり、
XはCHまたはNHであり、
−−−−は、単結合を表し、または表さず、
Mは、クロロ、ブロモ、ヨード、O−SOCH、O−SOPh、O−SO−CHおよび同機能の脱離基から選択される適切な脱離基を表す。
【0037】
スキームI
THF、DMF、DMSO、DMEなどの溶媒または溶媒の混合物(も使用することができる)の存在下にて、式(IIIa)の化合物を式(IIIb)の化合物と反応させることによって、式(IIIc)の化合物が生成される。反応は、不活性雰囲気中において行われる。KCO、NaCO、NaHまたはそれらの混合物などの塩基の存在下にて反応が起こる。反応温度は、20〜150℃の範囲であり、好ましくは30〜100℃の範囲内の温度である。反応時間は、1〜24時間、好ましくは2〜12時間の範囲である。一般式(IIIc)の化合物と式(IIId)の化合物との反応は、塩基の存在下およびトルエン、メトキシエタノールまたはそれらの混合物などの溶媒の存在下にて100〜180℃で行われ、式(IIIe)の化合物が得られる。反応が、ピペリジン、安息香酸ピペリジニウムアセテートまたはベンゾエート、酢酸ナトリウムなどの適切な触媒または触媒の混合物(も使用することができる)の存在下で反応が適切に行われる場合には、反応温度は100〜180℃の範囲である。ピペリジンは、溶媒の存在下で使用することができる。反応で生成される水は、ディーンスターク水分離器を使用して、またはモレキュラーシーブスなどの水吸収剤を使用して、除去されうる。
【0038】
式(I)の化合物を得るための式(IIIe)からの脱保護反応は、HCl、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの酸を使用して、DCM、酢酸エチル、水などまたはそれらの混合物などの溶媒の存在下にて−10〜50℃の範囲の温度で行われる。
【0039】
本発明の他の実施形態において、式(I)の最後から2番目のステップで還元することによって、式(I)(−−−は結合を表す)の化合物を製造する方法が提供される。−−−−が結合を表さず、他のすべての記号が上記で定義されるとおりである場合には、還元ステップは必要ない。還元は、気体水素およびPd/C、Rh/C、Pt/C、ラネーニッケルなどの触媒の存在下で行われる。触媒の混合物を使用することもできる。反応は、メタノール、ジクロロメタン、ジオキサン、酢酸、酢酸エチルなどの溶媒の存在下で行われる。溶媒の混合物を使用することもできる。大気圧〜15Kg/cmの圧力が用いられる。触媒は、5〜10%Pd/Cであってもよく、使用される触媒の量は、50〜300重量%の範囲であってもよい。
【0040】
本発明で使用される保護基Pは、t−ブトキシカルボニル(t−Boc)、トリチル、トリフルオロアセチル、ベンジルオキシ、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)などの公知の保護基である。脱保護反応は公知の方法によって行うことができる。本発明は、以下に示す実施例で詳細に説明される。この実施例は、単なる実例として提供されるものであり、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0041】
実施例1
メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド
【化9】

【0042】
ステップI
メチル2−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパノエートの調製
【化10】

水素化ナトリウム(0.81g,33.8mmol)の無水DMF(20ml)懸濁液に、BOC−tyr−OMe溶液(10g,33.8mmol,DMF20mlに溶解)を窒素雰囲気中30℃で30分かけて加えた(charged)。緑色の反応混合物が得られ、15分間攪拌した。p−フルオロベンズアルデヒド溶液(4.2g,33.8mmol,DMF5ml)を反応混合物に30℃で5分かけて添加した。反応混合物を45分かけて80℃に昇温させた。反応混合物の色は2時間後に茶色に変化した。TLCによって、BOC−Tyr−OMeが残存していないことが示された。溶媒を高真空下で蒸留した。得られた厚い反応物を飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。最後に、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を得た。収量:6.23g、H NMR(CDCl,400MHz):1.42(s,9H),3.05(m,2H),3.74(s,3H),4.61(q,1H),5.05(d,1H),7.05(m,4H),7.26(d,2H),7.85(d,2H),9.92(s,1H),m/zM+1400.2.
【0043】
ステップII
メチル−2[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートの製造
【化11】

メチル2−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパノエート(2.0g,5.0mmol)、2−オキソ−インドール(0.8g,6.0mmol)、安息香酸(0.091g,0.75mmol)およびピペリジン(0.055g,0.65mmol)のトルエン(50ml)溶液を145〜155℃で攪拌しながら還流し、ディーンスターク装置を使用して水を連続的に3時間除去した。反応混合物を室温にし、濃縮した。このようにして得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製した。収量1.8g;m/zM+1515.4.
【0044】
ステップIII
メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリドの製造
【化12】

ステップIIで得た化合物(0.8g,1.56mmol)をCHCl(20ml)に溶解し、0〜5℃に冷却した。この溶液に乾燥塩化水素ガスを20分間通気した。反応が完了した後、通気を止め、反応混合物を室温で1時間攪拌した。過剰な塩化水素酸を脱気し、溶媒を除去した。残渣固体を酢酸エチルでトリチュレートし、濾過し、乾燥させて、標題化合物(0.6g)を得た。H NMR(DMSO−d 400MHz)δppm:3.0(d,2H),3.6(s,3H),4.1(t,1H),6.8(d,2H),7.0(s,1H),7.1(t,4H),7.3(t,2H),7.5(d,2H),7.7(d,2H),8.5(bs,2H),10.6(s,lH);m/zM+1415.
【0045】
実施例2
メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリドの合成
【化13】

メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド(1.0g,2.4mmol)のメタノール(300ml)溶液に10%Pd/C(0.5g)を添加した。反応混合物を水素化装置(hydrogenator)のフラスコに入れ、圧力140psiで3時間水素化した。反応の進行をHPLCによってモニターした。反応が完了した後、反応混合物を濾過し、減圧下で溶媒を蒸発させ、淡黄色の固体を得た。収量:0.85g;H NMR(DMSO−d400MHz):δ2.9(m,1H),3.0(m,2H),3.2(m,1H),3.6(s,3H),3.7(m,1H),4.2(m,1H),6.7(d,1H),6.8(m,2H),6.9(m,3H),7.1(m,4H),7.2(d,2H),),7.9(bs,2H),10.3(s,lH);m/zM+1:417.3.
【0046】
実施例3
メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリドの合成
【化14】

【0047】
ステップI
(2S)−2−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン酸の調製
【化15】

炭酸カリウム(122.9g,890mmol)の無水DMF(150ml)懸濁液に、Boc−tyr−OH(50g,177mmol)を窒素雰囲気中30℃で加えた。反応混合物を15分間攪拌し、次いで、p−フルオロベンズアルデヒド溶液(110.3g,889mmol)を添加した。反応混合物を80℃で24時間攪拌した。TLCによって、BOC−Tyr−OHが残存していないことが示された。溶媒を高真空下で蒸留した。得られた厚い反応物を0.5M NaOH溶液でクエンチした。反応混合物を酢酸エチルで抽出処理した。2N HClを使用して水層をpH2に酸性化し、酢酸エチル(2×400ml)で抽出処理した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、粘着性の物質を得た。最後に、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を得た。収量60.9g;H NMR(CDCl,400MHz):1.42(s,9H),2.90(m,1H),2.97(m,1H),4.61(m,1H),5.00(m,1H),7.03(m,4H),7.23(m,2H),7.83(m,2H),9.92(s,1H);m/zM+1386.1.
【0048】
ステップII
メチル(2S)−2−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパノエートの調製
【化16】

重炭酸ナトリウム(3.36g,3.98mmol)の無水DMF(10ml)懸濁液に、2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸(1.0g,2.59mmol)およびヨウ化メチル(0.62ml,9.98mmol)を添加し、室温で一晩攪拌した。水酸化カリウム(0.5M,10ml)の溶液を反応混合物に添加し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させて、標題化合物を得た。収量:0.9g;H NMR(DMSO−d,400MHz):1.42(S,9H),3.2(m,2H),3.73(s,3H),4.65(m,1H),5.05(m,1H),7.03(m,4H),7.17(d,2H),7.83(d,2H),9.9(S,1H);m/zM+1400.2.
【0049】
ステップIII
メチル−2−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートの調製
【化17】

メチル(2S)−2−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパノエート(2.0g,5.0mmol)、2−オキソ−インドール(0.8g,6.0mmol)、安息香酸(0.091g,0.75mmol)およびピペリジン(0.055g,0.65mmol)のトルエン(50ml)溶液を145〜155℃で攪拌しながら還流し、ディーンスターク装置を使用して水を連続的に3時間除去した。反応混合物を室温にし、濃縮した。このようにして得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製した。収量:1.8g;m/zM+1400.2.
【0050】
ステップIV
メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリドの調製
【化18】

メチル−2−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエート(0.8g,1.5mmol)のジクロロメタン(100ml)溶液に、乾燥HClガスをゆっくりと0〜5℃で2時間通した。反応が完了した後、過剰な塩酸ガスを窒素ガスを通気することによって除去した。このようにして分離された固体を濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、乾燥させて、標題生成物を得た。収量:0.62g;H NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:3.15(m,2H),3.72(s,3H),4.33(m,1H),6.87(m,2H),7.11(m,4H),7.23(m,1H),7.32(m,2H),7.6(m,2H),7.77(m,2H),8.55(bs,2H),10.6(s,1H);m/zM+1415.
【0051】
実施例3に示す手順に従って、以下の化合物を調製した。
【表1】

【表2】

【0052】
実施例10
メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリドの合成
【化19】

メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド(0.6g,1.4mmol)のメタノール(0.3ml)溶液に、10%Pd/C(0.4g)を添加した。反応混合物を水素化装置のフラスコに入れ、圧力140psiで3時間水素化した。反応の進行をHPLCによってモニターした。反応が完了した後、反応混合物を濾過し、減圧下で溶媒を蒸発させ、淡黄色の固体を得た。収量:0.50g(H NMR DMSO−d400MHz):δ2.9(m,1H),3.0(m,2H),3.2(m,1H),3.6(s,3H),3.7(m,1H),4.2(m,1H),6.7(d,1H),6.8(m,2H),6.9(m,3H),7.1(m,4H),7.2(d,2H)).m/zM+1:417.0.
【0053】
実施例10に示す手順に従って、以下の化合物を調製した。
【表3】

【表4】

【表5】

【0054】
実施例18
2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸ヒドロクロリドの合成
【化20】

【0055】
ステップI
2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸の調製
【化21】

トルエン(30.0ml)中に(2S)−2−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン酸(3.6g,9.35mmol)を懸濁し、これに安息香酸(0.17g,1.4mmol)、ピペリジン(1.06ml,10.75mmol)、オキシインドール(1.49g,11.2mmol)を添加し、水を連続的に除去しながら130℃で加熱した。減圧下でトルエンを蒸発させた。得られた残渣を酢酸エチル(100ml)に溶解し、2M HClで酸性化した。有機層を水、飽和食塩水(1×50ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。1%酢酸を含有するヘキサン−酢酸エチル(3:7)を使用したシリカゲルクロマトグラフィーによって、得られた粗生成物を精製し、2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸を黄色の固体(3.6g)として得た。H NMR(DMSO−d):7.75(d,J=8.8Hz,2H),7.59(s,1H),7.32(オーバーラップd,4H),7.06(m,4H),6.83(m,2H),4.12(m,1H),3.05(dd,J=14.0および4.4Hz,1H),2.83(dd,J=14.0および10.8Hz,1H),1.34(s,9H).
【0056】
ステップII
2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸ヒドロクロリドの調製
【化22】

2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸(1.5g)をジクロロメタン(20ml)に溶解し、氷浴中で冷却し、HClガスを30分間通した。氷浴を除去し、懸濁液を室温でさらに20分間攪拌した。懸濁液を減圧し、アルゴンでパージして、過剰なHClを除去した。ジクロロメタンを減圧下で蒸発させ、得られた固体を酢酸エチルでトリチュレートすることにより洗浄して、黄色の固体として2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸ヒドロクロリド(0.9g)を得た。H NMR(DMSO−d):10.61(br,1H),7.76(d,J=8.4Hz,2H),7.60(s,1H),7.35(d,J=8.8Hz,2H),7.24(m,1H),7.12(m,4H),7.04(m,1H),6.88(d,J=8.0Hz,2H),4.17(t,J=6.4Hz,1H),3.17(dd,J=14.0および6.0Hz,1H),3.08(dd,J=14.0および7.2Hz,1H).
【0057】
実施例19
2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソベンゾチアゾール−3−イルメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸メチルエステルヒドロクロリドの合成
【化23】

【0058】
ステップI
2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−{4−[4−(2−オキソベンゾチアゾール−3−イルメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸メチルエステルの調製
【化24】

水素化ナトリウム(9.5g,0.23mmol)のDMF(5ml)懸濁液に、メチル−2−N−Boc−アミノ−3−[4−(4−{[(メチルスルホニル)オキシ]メチル}フェノキシ)フェニル]プロパノエート(0.11g,0.23mmol)および2−オキソ−ベンゾチアゾール(0.035g,0.23mmol)を添加し、60℃で5時間加熱した。混合物を飽和塩化アンモニウム溶液に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−{4−[4−(2−オキソベンゾチアゾール−3−イルメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸メチルエステル(0.065g)を得た。
【0059】
ステップII
2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソベンゾチアゾール−3−イルメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸メチルエステルヒドロクロリドの調製
【化25】

2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−{4−[4−(2−オキソベンゾチアゾール−3−イルメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸メチルエステル(0.059g)をCHCl(10ml)に溶解し、0〜5℃に冷却した。塩化水素をこの溶液に20分間通気した。通気を止め、反応混合物を室温で1時間攪拌した。過剰なHClを脱気し、CHClを除去した。残渣固体を無水ジエチルエーテルでトリチュレートし、デカントし、乾燥させて、目的の化合物2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソベンゾチアゾール−3−イルメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸メチルエステルヒドロクロリドを固体(0.02g)として得た。H NMR(400MHz,DMSO−d):8.37(br,2H),7.69(d,J=8.0Hz,1H),7.33−7.37(オーバーラップd,4H),7.18−7.23(m,3H),6.94−6.98(オーバーラップd,4H),5.17(s,2H),4.28(t,J=6.4Hz,1H),3.60(s,3H),3.07(d,J=6.4Hz,2H).
【0060】
実施例20
2−アミノ−N,N−ジメチル−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオンアミドヒドロクロリドの合成
【化26】

【0061】
ステップI
(1−ジメチルカルバモイル−2−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−エチル)−カルバミン酸t−ブチルエステルの調製
【化27】

化合物2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸(1.0g,1.99mmol)をCHCl(25ml)に溶解し、アルゴン雰囲気中室温で攪拌した。トリエチルアミン(0.67ml,4.8mmol)およびベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP試薬,1.96g,4.4mmol)を添加し、反応混合物を15分間攪拌した。ジメチルアミン(THF中の2.0M溶液,10.0ml,20.0mmol)を添加し、得られた溶液を室温で一晩攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣をEtOAc(50ml)に溶解した。有機層を1.0N NaOH(1×10ml)、水(2×30ml)および飽和食塩水(1×30ml)で抽出した。有機層を乾燥させ、濃縮することによって、目的の(1−ジメチルカルバモイル−2−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−エチル)−カルバミン酸t−ブチルエステルを得た(1.0g,95.2%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):7.59−7.76(m,3H),7.30−7.35(m,2H),6.66−7.17(m,8H),4.60(m,1H),2.94(s,3H),2.75−2.90(m,5H),1.32(s,9H).
【0062】
ステップII
2−アミノ−N,N−ジメチル−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオンアミドヒドロクロリドの調製
【化28】

(1−ジメチルカルバモイル−2−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−エチル)−カルバミン酸t−ブチルエステル(1.0g)をCHCl(20ml)に溶解し、0〜5℃に冷却した。塩化水素をこの溶液に20分間通気した。通気を止め、反応混合物を室温で1時間攪拌した。過剰なHClを脱気し、CHClを除去した。残渣固体をEtOAc(2×20ml)でトリチュレートし、デカントし、乾燥させて、目的の化合物2−アミノ−N,N−ジメチル−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオンアミドヒドロクロリドを黄色の非晶質固体(0.8g,90.9%)として得た。H NMR(DMSO−d):7.60−7.83(m,3H),7.30−7.33(m,2H),6.87−7.24(m,8H),4.62(m,1H),3.01(m,2H),2.85(s,3H),2.79(s,3H).
【0063】
実施例21
2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオンアミドヒドロクロリドの合成
【化29】

【0064】
ステップI
(1−カルバモイル−2−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−エチル)−カルバミン酸t−ブチルエステルの調製
【化30】

化合物2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸(1.0g,1.99mmol)をCHCl(25ml)に溶解し、アルゴン雰囲気中室温で攪拌した。トリエチルアミン(0.67ml,4.8mmol)およびBOP試薬(1.6g,4.4mmol)を添加し、反応混合物を15分間攪拌した。アンモニアをこの溶液に30分間通気し、室温で一晩攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣をEtOAc(100ml)に溶解した。有機層を0.5N NaOH(1×25ml)、水(2×30ml)および飽和食塩水(1×30ml)で抽出処理した。有機層を乾燥させ、濃縮することによって、目的の化合物(1−カルバモイル−2−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−エチル)−カルバミン酸t−ブチルエステル(1.0g,定量的)を得た。H NMR(400MHz,DMSO−d):7.74(d,J=9.2Hz,2H),7.59(s,1H),7.40(br,1H),7.34(m,2H),7.07(m,4H),6.88(m,2H),4.10(m,1H),2.98(m,1H),2.75(m,1H),1.31(s,9H).
【0065】
ステップII
2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオンアミドヒドロクロリドの調製
【化31】

化合物(1−カルバモイル−2−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−エチル)−カルバミン酸t−ブチルエステル(1.0g)をCHCl(20ml)に溶解し、0〜5℃に冷却した。この溶液に塩化水素ガスを20分間通気した。通気を止め、反応混合物を室温で1時間攪拌した。過剰なHClを脱気し、CHClを除去した。残渣固体をEtOAc(2×20ml)でトリチュレートし、デカントし、乾燥させて、目的の化合物2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオンアミドヒドロクロリドを黄色の非晶質固体(0.8g,92.0%)として得た。H NMR(DMSO−d):7.77(m,2H),7.61(m,3H),7.36(m,2H),7.11(m,4H),6.87(m,1H),6.54(s,1H),3.95(m,1H),3.12(m,1H).2.97(m,1H).
【0066】
薬学的に許容される塩は、エーテル、THF、メタノール、t−ブタノール、ジオキサン、イソプロパノール、エタノールなどの溶媒中で、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、水素化ナトリウム、カリウムt−ブトキシド、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの塩基1〜4当量と式(I)の化合物を反応させることによって調製される。混合溶媒も使用することができる。リジン、アルギニン、ジエタノールアミン、コリン、グアニジンなどの有機塩基およびその誘導体なども使用することができる。代替方法としては、酸付加塩は、酢酸エチル、エーテル、アルコール、アセトン、THF、ジオキサンなどの溶媒中で塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、サリチル酸、ヒドロキシナフトエ酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、コハク酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、酒石酸などの酸で処理することによって調製される。混合溶媒も使用することができる。
【0067】
本発明は、通常の薬学的に使用される担体、希釈剤などと併せて、上記で定義される一般式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩を1または2以上含有する医薬組成物も提供する。医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤などの通常使用される剤形をとることができ、適切な固体もしくは液体担体または希釈剤中に、または注入可能な溶液または懸濁液を形成するための適切な無菌媒体中に、着香料、甘味料などを含有してもよい。このような組成物は一般に、活性化合物を1〜25重量%、好ましくは1〜15重量%含有し、組成物の残りの成分は、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤または溶媒である。
【0068】
適切な薬学的に許容される担体としては、固体充填剤または希釈剤および滅菌水溶液または有機溶液が挙げられる。活性化合物は、上述の範囲で所望の投与量を得るのに十分な量でこのような医薬組成物中に存在する。したがって、経口投与用には、化合物を固体もしくは液体担体または希釈剤と合わせて、カプセル剤、錠剤、散剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤などとすることができる。所望の場合には、医薬組成物は、着香料、甘味料、賦形剤などの更なる成分を含有することができる。非経口投与用には、化合物を滅菌水性媒体または有機媒体と合わせて、注入可能な液剤または懸濁剤をとすることができる。例えば、薬学的に許容される化合物の水溶性酸付加塩またはアルカリもしくはアルカリ土類金属塩の溶液と同様に、ゴマ油またはピーナッツ油、プロピレングリコール水溶液中などの溶液も使用することができる。次いで、このように調製された注入可能な溶液は、静脈内に、腹腔内に、皮下に、または筋肉内に投与することができ、ヒトにおいては筋肉内投与が好ましい。
【0069】
本発明の医薬組成物は、II型糖尿病の動物モデルにおいて血中グルコース、血清インスリンおよびトリグリセリドレベルを下げるのに有効である。本発明の医薬組成物は、肥満症、炎症、および自己免疫疾患の治療においても有効である。さらに、本発明の医薬組成物は、高脂質血症、冠動脈疾患および末梢血管疾患に加えて多嚢胞性卵巣症候群などのインスリン抵抗性に関連する障害の治療に有用であり、特にTNF−α、IL−I、IL−6、IL−1βなどのサイトカインおよびCOX−2などのシクロオキシゲナーゼによって仲介される炎症および免疫疾患の治療に有用である。
【0070】
生物学的試験のプロトコール
図1.ヒト末梢血単球細胞(hPBMC)におけるTNF−α、IL−6およびIL−1βの阻害。
実施例1の化合物1は、ボランティアから単離されたヒト末梢血単核細胞において主要な炎症誘導性サイトカインを阻害する。ヒトPBMC細胞を培養し、様々な濃度で実施例1の化合物1と共にインキュベートした。細胞(1×10mL)を(100ng/mL)の濃度のリポ多糖(LPS)で20時間誘導した。TNF−α、IL−1βおよびIL−6サイトカインの存在について、細胞上清を酵素免疫抗体法により分析した。図1に示すように、実施例の化合物は、用量依存的に3つの主要な炎症誘導性サイトカインの産生を阻害することができる。最大濃度の化合物の存在下での細胞のインキュベーションでも、細胞生存度の有意な変化は認められなかった。このことから、実施例1の化合物1は、炎症誘導性サイトカインの産生を低減させるのに極めて有効であることが強く示されている。
【0071】
図2.実施例1の化合物1は、COX−1酵素に比較してCOX−2酵素を選択的に阻害する。
実施例1の化合物1は、図1に示されるようにヒト単球細胞における主要な炎症誘導性サイトカインを阻害する。炎症性刺激、LPSは、この系においてシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)酵素も誘導し、その結果、プロスタグランジンE2(PGE−2)が産生される。ヒトPBMC細胞を培養し、様々な濃度で実施例1の化合物1と共にインキュベートした。細胞(1×10mL)を(100ng/mL)の濃度のリポ多糖(LPS)で20時間誘導した。上清中のPGE−2レベルをELISA(Cayman Chemicals社)により測定することによって、COX−2の阻害を確認した。PGE−2レベルを測定するため、上清をELISAプレートにおいてインキュベートし、比色反応によって検出した。実施例1の化合物1は、この種類の細胞においてLPS誘導性のCOX−2活性を用量依存的に阻害した。内因性のCOX−1は、生理学的刺激がある場合に活性化され、PGE−2の産生レベルについて同じ経路をたどる。ヒト単球U−937(2.5×l0/mL)細胞をアラキドン酸(arachidonic acid)で誘導し、COX−1経路を活性化した。これらの種類の生理学的誘導に続いて、PGE−2が産生された。COX−1活性をアッセイするため、細胞を化合物と共に15分間プレインキュベートし(インドメタシンをポジティブコントロールとした)、次いで、それらをアラキドン酸10μMで20分間誘導した。上清を回収し、COX−1活性の標識としてPGE−2について測定した。実施例1の化合物1 10μMによって、LPS誘導性のPGE−2産生は完全に阻害されたが、アラキドン酸誘導性のPGE−2レベルに対する効果はなく、COX−1活性と比較してCOX−2に対するその選択性が示された。
【0072】
図3.化合物1は、生体内(in vivo)でLPS誘導性のTNF−α産生を阻害する。
LPS(10μg/マウス,腹腔内)を注射する1時間前に、賦形剤、デキサメタゾン(5mg/体重kg)および実施例1の化合物1(50mg/体重kg)でSwiss Webster(SW)マウスを経口的に処置し、90分後に血液を採取し、図1に示すようにELISAによってTNF−αレベルを測定した。実施例1の化合物1は、動物の対照群と比較して、TNFレベルの25%を低減したが、デキサメタゾンは投与量5mg/体重kgで強い阻害(95%)を示した。
【0073】
図4.実施例1の化合物1は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の重症度を下げた。
多発性硬化症(MS)は自己免疫疾患であり、サイトカインレベルによって調節される。MSモデルにおける実施例1の化合物の効果を試験するために、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)をSJL/Jマウスで誘発した。EAEは、中枢神経系(CNS)の自己免疫炎症性疾患である。この疾患は、ヒトMSと多くの類似点を示し、したがって、MSにおける適用性を有しうる新規な薬物の潜在的有効性を試験するためのモデルとして使用される。脊髄ホモジネートを注入することによってEAEを誘発し、実施例の化合物で動物を処置した。EAEの重症度は、麻痺の臨床スコアによって確立された。図4に示すように、実施例1の化合物1の処置群は、EAEの完全な防止を示した。これらの結果から、MSおよび他の神経疾患に対する実施例の化合物の有用性が示されている。
【0074】
図5.実施例20の化合物20は、db/db肥満糖尿病動物モデルにおける血中グルコースおよび体重増加を低減する。
7週齢の雄db/db(自然発症モデル)糖尿病マウスを水に溶解した投与量50mg/体重kgの実施例20の化合物20で経口的に処置し、アキュチェック(accuchek)グルコメーターで血中グルコースをモニターした。この化合物は、賦形剤と比較して体重の低下も示した。その結果を図5に示す。
【0075】
図6.実施例20の化合物20によるob/obマウスにおける血中グルコースの低下
7週齢のC57BL/6J雄ob/ob(肥満の、II型糖尿病のインスリン抵抗性自然発症モデル)糖尿病マウスを水に溶解した投与量50mg/体重kgの実施例20の化合物20で経口的に処置し、アキュチェックグルコメーターによって、血中グルコースをモニターした(図6)。実施例20の化合物20は、処置して6日以内にII型糖尿病の動物モデルにおいて強いグルコース低下活性を示す。
【0076】
図7.食餌誘導性肥満症マウスモデルに対する実施例20の化合物20の効果
処置を開始する15日前に、C57BL/6J雄マウスに60%Kcal高脂肪食(D12492,Research Diet社)を自由に摂取させた。食餌誘導性肥満マウスを投与量50mg/体重kgの実施例20の化合物20で処置し、その体重を3日ごとにモニターした。処置動物は、賦形剤処置動物と比較して体重の増加が少ないことが示された。
【0077】
図8.実施例20の化合物20に関する食餌誘導性肥満症モデルにおける経口グルコース負荷試験(OGTT)。
高脂肪餌を摂取して60日後、これらの動物は、高インシュリン状態となり、耐糖能障害を示す。実施例20の化合物20の効果を調べるために60日目にOGTT研究を行ったところ、実施例20の化合物20で処置した場合に耐糖能の向上が認められた。インスリンレベルを測定したところ、対照動物は処置群よりも高いレベルを示した。図8bに示すように実施例20の化合物20で処置した後、血清インスリンレベルの70%の低下が認められた。
【0078】
図9.実施例20の化合物20は脂肪分化性(adipogenic)ではない。
既知のすべてのPPARγアゴニストは、線維芽細胞の分化を誘発する。これらの化合物の脂肪分化能(adipogenicpotential)は、この受容体に対する親和性と相関する。この受容体に対する実施例20の化合物20の親和性を速やかに調べるために、DMSOコントロールまたはポジティブコントロールとしてのロシグリタゾンのいずれかまたはこれら2種類の化合物で3T3−L1線維芽細胞を様々な濃度で数日間処理した。13日目に、分化脂肪細胞をオイルレッドO(シグマ社)で染色し、十分に洗浄して未結合の染色液を除去し、オリンパス顕微鏡で視覚化した。PPARγアゴニストのロシグリタゾンは、この細胞系において脂肪細胞分化を強く誘導した。一方、実施例20の化合物20では変化しなかった。これは、実施例20の化合物20がPPARγ受容体に対する親和性を持たないという間接的な証明である。この結果を図9に示す。
【0079】
図10.実施例21の化合物21は、結腸癌細胞の増殖を阻害する。
HCT−116は、ヒト結腸癌細胞株であり、それらを細胞10%/mLの濃度で播種して96穴プレートで増殖させた。30μMの実施例1の化合物21およびタキソール(ポジティブコントロールとして100nM)をこれらの細胞と共に48時間インキュベートし、最後にMTS染色(プロメガ社)によって生存度を調べた。生細胞は、540nMにて強い発色を示し、死細胞はこのような活性を全く示さない。化合物21は、結腸癌細胞の増殖を完全に阻害した。
【0080】
図11.実施例11の化合物11および実施例8の化合物8は、乳癌細胞の増殖を阻害する。
MCF−7は乳癌細胞であり、それらを96穴プレートで1000細胞/ウェルで増殖させた。6日間連続して、実施例11の化合物11および実施例8の化合物8のいずれかまたはDMSOで細胞を前処理した。48時間ごとに、細胞をMTS色素で染色し、それに従って生存度を調べた。図11に示すように、実施例8の化合物8は、実施例11の化合物11と比較して乳癌細胞の増殖を非常に強く阻害する。実施例8の化合物8の場合には、投与量を1〜50μMとしても同様によく作用した。
【0081】
図12.実施例11の化合物11および実施例8の化合物8は、前立腺癌細胞の増殖を阻害する。
DU−145は、前立腺癌細胞であり、それらを96穴プレートで1000細胞/ウェルで増殖させた。6日間連続して、実施例11の化合物11および実施例8の化合物8のいずれかまたはDMSOで細胞を前処理した。48時間ごとに、細胞をMTS色素で染色し、それに従って生存度を調べた。実施例8の化合物8は、実施例1の化合物11とは異なり、乳癌細胞を選択的に死滅させる。実施例11の化合物11の効力は、乳癌および前立腺癌細胞の両方で非常に類似している。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】ヒト末梢血単球細胞(hPBMC)におけるTNF−α、IL−6およびIL−1βの阻害を示す図
【図2】実施例1の化合物1は、COX−1酵素に比べてCOX−2酵素を選択的に阻害することを示す図
【図3】化合物1は、生体内(in vivo)でLPS誘導性のTNF−α産生を阻害することを示す図
【図4】実施例1の化合物1は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の重症度を下げたことを示す図
【図5】実施例20の化合物20は、db/db肥満糖尿病動物モデルにおける血中グルコースおよび体重増加を低減することを示す図
【図6】実施例20の化合物20によるob/obマウスにおける血中グルコースの低下を示す図
【図7】食餌誘発性肥満症マウスモデルに対する実施例20の化合物20の効果を示す図
【図8】実施例20の化合物20に関する食餌誘導性肥満症モデルにおける経口グルコース負荷試験(OGTT)の結果を示す図
【図9】実施例20の化合物20は脂肪分化性ではないことを示す図
【図10】実施例21の化合物21は、結腸癌細胞の増殖を阻害することを示す図
【図11】実施例11の化合物11および実施例8の化合物8は、乳癌細胞の増殖を阻害することを示す図
【図12】実施例11の化合物11および実施例8の化合物8は、前立腺癌細胞の増殖を阻害することを示す図
【図13】オキシインドール系の化合物によるグルコースの取り込みを示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の新規なチロシン誘導体、その薬学的に許容される塩およびそれらを含有する薬学的に許容される組成物。
【化1】

式中、
−−−−は、任意の結合を表し;
Wは、OまたはSを表し;
Xは、C、CHまたはNを表し;
Yは、NR、SまたはOを表し;
およびRは、同一または異なっていてもよく、かつ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキルを表し;
およびRは、同一または異なり、かつ独立して、H、アルキル、CORを表し;
は、OR、NR10を表し;
は、水素;置換または非置換のアルキル、アルケニル、−CHCOOR、またはアリール;または対イオンを表し、ただしRは、Hまたはアルキル基を表し;
は、H;アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アリール、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシまたはアリールアルコキシから選択される置換または非置換の基を表し;
は、水素;アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールから選択される置換または非置換の基;または対イオンを表し;
およびR10は、同一または異なっていてもよく、かつ独立して、H;アルキル、アルケニル、アリールから選択される置換または非置換基を表す。
【請求項2】
a)メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
b)メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
c)メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
d)メチル−2−アミノ−3−(4−{3−クロロ−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
e)メチル−2−アミノ−3−(4−{2−クロロ−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
f)メチル−2−アミノ−3−(4−{2−フルオロ−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
g)メチル−2−アミノ−3−(4−{2−トリフルオロメチル−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
h)メチル−2−アミノ−3−(4−{3−トリフルオロメチル−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
i)メチル−2−アミノ−3−(4−{2−メトキシ−4−[(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
j)メチル−2−アミノ−3−(4−{4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
k)メチル−2−アミノ−3−(4−{2−トリフルオロメチル−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
l)メチル−2−アミノ−3−(4−{3−トリフルオロメチル−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
m)メチル−2−アミノ−3−(4−{3−フルオロ−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
n)メチル−2−アミノ−3−(4−{2−フルオロ−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
o)メチル−2−アミノ−3−(4−{3−クロロ−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
p)メチル−2−アミノ−3−(4−{2−メトキシ−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
q)メチル−2−アミノ−3−(4−{2−クロロ−4−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−3−イル)メチル]フェノキシ}フェニル)プロパノエートヒドロクロリド;
r)2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸ヒドロクロリド;
s)2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソベンゾチアゾール−3−イルメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオン酸メチルエステルヒドロクロリド;
t)2−アミノ−N,N−ジメチル−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオンアミドヒドロクロリド;
u)2−アミノ−3−{4−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−3−イリデンメチル)−フェノキシ]−フェニル}−プロピオンアミドヒドロクロリド;
からなる群から選択される、請求項1に記載の新規なチロシン誘導体。
【請求項3】
薬学的に有効な量の請求項1に記載の式(I)の新規なチロシン誘導体、および薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤または溶媒を含む、医薬組成物。
【化2】

【請求項4】
錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、液剤、エアゾール剤または懸濁剤の剤形をとる、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
血中グルコース、遊離脂肪酸、コレステロール、血漿トリグリセリドレベルを低減する方法であって、その必要がある患者に請求項1に記載の式(I)の有効量の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項6】
肥満症、自己免疫疾患、炎症、免疫疾患、癌疾患を治療する方法であって、その必要がある患者に請求項1に記載の式(I)の有効量の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項7】
インスリン抵抗性と関連する障害を治療する方法であって、その必要がある患者に請求項1に記載の式(I)の有効量の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項8】
前記の薬学的に許容される塩が、塩酸塩、臭化水素酸塩、カリウムまたはマグネシウム塩から選択される、請求項1に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−533122(P2008−533122A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501431(P2008−501431)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000525
【国際公開番号】WO2006/097809
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(504380943)オーキッド ケミカルズ アンド ファーマシューティカルズ リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】ORCHID CHEMICALS & PHARMACEUTICALS LIMITED
【Fターム(参考)】