説明

新規なポリプロピレン樹脂組成物、該組成物を用いたシート又はフィルム成形体及びその製造方法

【課題】 シート又はフィルムの成形加工性、透明性、耐熱性、臭気特性に優れた、厚みムラの小さく表面欠点が少ないシート又はフィルム成形体を与えることができるポリプロピ樹脂組成物を提供する。また、該樹脂組成物を用いたシート又はフィルム成形体及び延伸フィルム並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、一般式(1)
【化1】


[式中、Rは、1,2,3−プロパントリカルボン酸又は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。k個のRは、互いに同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。kは、3又は4の整数を表す。]
で表されるアミド系化合物0.005〜5重量部、必要に応じて脂肪酸金属塩を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物、該組成物を用いたシート又はフィルム成形体及びその製造方法に関する。詳しくは、シート又はフィルムの成形加工性、並びに透明性、耐熱性、臭気・移行特性、表面平滑性に優れたシート又はフィルム成形体を与えることができるポリプロピレン樹脂組成物、該組成物を用いたシート又はフィルム成形体及びその成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、各種熱可塑性汎用樹脂の中でも、物性、成形加工性、価格等の点で最も応用分野の広いプラスチック材料の一つとして使われている。例えば、用途としては包装材、産業用一般容器、化粧品容器、食品容器、文具、玩具、ボトル、医療分野(注射液等の容器、注射器等)、自動車内外装(コンパネ、バンパー等)などが挙げられる。
【0003】
シート・フィルム分野では、用途として主に包装材(食品、化粧品、医薬品等)、文具、保護シートなどが挙げられる。この分野では、主に透明性が要求され、さらに目的に応じて耐熱性、耐衝撃性、剛性、耐油性、ガスバリア性、耐白化性、耐ブロッキング性などの特性が要求される(例えば、特許文献1〜3参照。)。
特に、食品用途、医薬用途、化粧用途では、透明性に加えて、加熱殺菌工程などで変質が生じないような耐熱性、プロピレン樹脂中の添加剤等の成分が内容物(包装物)へ移行しないような低移行性、或いはシート・フィルム成形体自身の低臭気性が求められる。
【0004】
ポリプロピレン樹脂の改質方法としては、ポリマー自身を改良する方法や酸化防止剤・造核剤(結晶化促進剤)・安定剤等の添加剤による改質方法が知られている。
【0005】
ポリプロピレン樹脂自身を改質する方法としては、ランダム或いはブロック共重合化、メタロセン触媒による立体性制御、ポリマーアロイ等が挙げられる。特に透明性を改善する方法としてはランダム共重合化やメタロセン触媒による立体性制御があり、ポリプロピレン樹脂の透明性は向上する。しかしながら、同時に耐熱性が低下する傾向があった。
【0006】
添加剤によるポリプロピレン樹脂の改質方法としては、目的によって使用される添加剤は異なるが、例えば、フェノール系抗酸化剤やリン系抗酸化剤に代表される酸化防止剤、ジベンジリデンソルビトール類や芳香族リン酸エステル金属塩類に代表される造核剤、パラフィンや高級脂肪酸に代表される滑剤、帯電防止剤、界面活性剤などの種々の添加剤が使用されている。
上記の通り、シート・フィルム分野ではポリプロピレン樹脂の透明性を改善することは重要な改質項目の一つである。この改質方法としては、造核剤が多用されている。造核剤は、透明性の改良に加え、耐熱性の向上にも寄与する(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、前記に代表される造核剤は、成形加工条件によっては熱分解して分解成分が発生することがある。これにより、シート又はフィルム成形体の臭気特性や低移行性を損なうことがあり、用途によってはその使用が制限されることがあった。
【0007】
【特許文献1】特開平7−186349号公報
【特許文献2】特開平6−254946号公報
【特許文献3】特開平8−283486号公報
【特許文献4】特開平7−242776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、透明性及び臭気・移行特性を同時に改良し、優れた耐熱性、表面平滑性を有するシート又はフィルム成形体を与えることができる、成形加工性に優れたシート又はフィルム成形用ポリプロピ樹脂組成物を提供すること、該樹脂組成物を用いたシート又はフィルム成形体を提供すること、さらに該成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる現状に鑑み鋭意検討した結果、特定構造を有するアミド系化合物を特定量含有したポリプロピレン樹脂組成物が、シート又はフィルム成形加工性に優れ、それを成形して得られたシート又はフィルム成形体が、透明性及び臭気・移行特性に優れ、さらに耐熱性、表面平滑性にも優れていることを見出し、かかる知見に基づき更に検討を重ねて本発明の完成に至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の項目の発明を提供するものである。
【0011】
(項1)ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、
一般式(1)
【化1】

[式中、Rは、1,2,3−プロパントリカルボン酸又は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。k個のRは、互いに同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。kは、3又は4の整数を表す。]
で表される少なくとも一種のアミド系化合物(B)0.005〜5重量部を含有することを特徴とするシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【0012】
(項2)ポリプロピレン樹脂(A)の230℃におけるメルトフローレートが0.1〜30g/10分である上記項1に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【0013】
(項3)ポリプロピレン樹脂(A)が、ホモプロピレン重合体である上記項1又は項2に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【0014】
(項4)ポリプロピレン樹脂(A)が、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体である上記項1又は項2に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【0015】
(項5)プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体が、プロピレンとエチレンとの共重合体、又はプロピレン、エチレン及び1−ブテンの共重合体である上記項4に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【0016】
(項6)プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体を構成するプロピレンの含有量が、該共重合体に対して93.0重量%以上100重量%未満である上記項4又は項5に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【0017】
(項7)さらに、一般式(2)
【化2】

[式中、R3は分子内に1個以上の水酸基を有していてもよい炭素数8〜32の飽和若しくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。nは1又は2の整数を表し、n=2の場合、2個のR3は同一又は異なっていてもよい。Mは1価又は2価の金属を表す。]
で表される少なくとも一種の脂肪酸金属塩(C)を含有することを特徴とする上記項1〜6のいずれかに記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【0018】
(項8)一般式(2)におけるMが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マグネシウム及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である上記項7に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【0019】
(項9)一般式(2)における脂肪族モノカルボン酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸及び12−ヒドロキシステアリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である上記項7又は項8に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【0020】
(項10)脂肪酸金属塩(C)の含有量が、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して0.001〜10重量部である上記項7〜9のいずれかに記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【0021】
(項11)上記項1〜10のいずれかに記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物を成形して得られる未延伸のシート又はフィルム成形体。
【0022】
(項12)シート又はフィルム成形体の厚みの均一性が0.12以下である上記項11に記載の未延伸のシート又はフィルム成形体。
【0023】
(項13)上記項11又は項12に記載の未延伸のシート又はフィルム成形体を一軸延伸又は逐次若しくは同時二軸延伸して得られる延伸フィルム。
【0024】
(項14)延伸フィルムの厚みの均一性が0.12以下である上記項13に記載の延伸フィルム。
【0025】
(項15)上記項1〜10のいずれかに記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物を成形するに際し、アミド系化合物(B)が溶融ポリプロピレン樹脂に溶解した状態で、該ポリプロピレン樹脂組成物を成形することを特徴とする未延伸のシート又はフィルム成形体の製造方法。
【0026】
(項16)上記項11又は項12に記載の未延伸のシート又はフィルム成形体を、延伸温度125〜165℃、延伸倍率2〜10倍で一軸延伸することを特徴とする一軸延伸フィルムの製造方法。
【0027】
(項17)上記項11又は項12に記載の未延伸のシート又はフィルム成形体を、縦延伸温度125〜165℃、縦延伸倍率2〜10倍で縦延伸し、引き続き横延伸温度150〜175℃、横延伸倍率2〜10倍で横延伸することを特徴とする逐次二軸延伸フィルムの製造方法。
【0028】
(項18)上記項11又は項12に記載の未延伸のシート又はフィルム成形体を、延伸温度135〜165℃、縦延伸倍率2〜10倍、横延伸倍率2〜10倍で同時二軸延伸することを特徴とする同時二軸延伸フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、特定構造のアミド系化合物をポリプロピレン樹脂に特定量配合することにより、透明性及び臭気・移行特性並びに耐熱性、表面平滑性に優れたシート又はフィルム成形体を与えることができる、成形加工性が良好なシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物を提供することができる。また、該樹脂組成物を成形して得られるシート又はフィルム成形体は、透明性及び臭気・移行特性並びに耐熱性、表面平滑性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0031】
ポリプロピレン樹脂(A)
本発明に係るポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレンを主構成単位とする重合体である。該ポリプロピレン樹脂中のプロピレンの含有量は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは93%重量以上、特に95%重量以上が推奨される。又、ポリプロピレン部位の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックの何れでもよいが、好ましくはアイソタクチック又はシンジオタクチックが推奨される。
上記ポリプロピレン樹脂(A)としては、具体的にホモポリプロピレン重合体、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20(好ましくは4〜10)のα−オレフィンとの共重合体などが例示される。前記α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4−ジメチル−1−ペンテン等が挙げられる。前記共重合体におけるプロピレン以外の構成単位の中で、共重合性、入手の容易さ及び高分子物性の観点から、好ましくはエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンが推奨される。
プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体において、該共重合体を構成するプロピレンの含有量が、該共重合体に対して、好ましく93.0重量%以上100重量%未満、特に95.0〜99.5重量%が好ましい。又、当該共重合体はランダム共重合体やブロック共重合体等が挙げられ、シート及びフィルム成形体の透明性の観点からはランダム共重合体が推奨される。
【0032】
好ましいポリプロピレン樹脂(A)としては、ホモポリプロピレン重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−1−ブテンブロック共重合体、プロピレン−1−ブテン−エチレンブロック共重合体などが挙げられ、これらの中でも、ホモポリプロピレン重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテン−エチレンランダム共重合体が特に好ましい。これらは、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。
【0033】
かかるポリプロピレン樹脂を製造するために適用される触媒としては、一般に使用されているチーグラー・ナッタ型触媒はもちろん、遷移金属化合物(例えば、三塩化チタン、四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物など)を塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体に担持してなる触媒と、アルキルアルミニウム化合物(テトラエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等)とを組み合わせてなる触媒系やメタロセン触媒も使用できる。
【0034】
かかるポリプロピレン樹脂(A)の230℃におけるメルトフローレート(以下、「MFR」という。JIS K 7210(1999)に準拠。)は、0.1〜30g/10分が好ましく、より好ましくは0.5〜20g/10分である。MFRが0.1g/10分未満の場合、シート又はフィルム成形が困難となりやすく、又30g/10分を超える場合、フィルムの均一性が得られにくくなる傾向が認められる。
【0035】
アミド系化合物(B)
本発明に係るアミド系化合物(B)は、上記一般式(1)で表される少なくとも一種であり、ポリプロピレン樹脂に対して造核作用を有する化合物である。
該アミド系化合物は、所定の脂肪族ポリカルボン酸成分と所定の脂環式モノアミン成分とを、従来公知の方法(例えば、特開平7−242610号など)に従って、アミド化することにより調製することができる。
【0036】
上記脂肪族ポリカルボン酸成分としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸及びその酸塩化物、1,2,3−プロパントリカルボン酸と炭素数1〜4の低級アルコールとのエステル化物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸及びその酸塩化物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と炭素数1〜4の低級アルコールとのエステル化物などが挙げられ、好ましくは1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、特に1,2,3−プロパントリカルボン酸が推奨される。
尚、当該ポリカルボン酸並びにその酸塩化物及びエステル化物の製造方法は、特に限定がなく従来公知の製造方法を用いることができる。
【0037】
上記脂環式モノアミン成分としては、シクロヘキシルアミン、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基で置換されたシクロヘキシルアミンが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。
【0038】
具体的には、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、2−n−プロピルシクロヘキシルアミン、2−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、2−n−ブチルシクロヘキシルアミン、2−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、2−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、2−n−ペンチルシクロヘキシルアミン、2−n−ヘキシルシクロヘキシルアミン、2−n−ヘプチルシクロヘキシルアミン、2−n−オクチルアミン、2−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミン、2−n−ノニルシクロヘキシルアミン、2−n−デシルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、3−エチルシクロヘキシルアミン、3−n−プロピルシクロヘキシルアミン、3−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、3−n−ブチルシクロヘキシルアミン、3−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、3−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、3−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、3−n−ペンチルシクロヘキシルアミン、3−n−ヘキシルシクロヘキシルアミン、3−n−ヘプチルシクロヘキシルアミン、3−n−オクチルアミン、3−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミン、3−n−ノニルシクロヘキシルアミン、3−n−デシルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、4−エチルシクロヘキシルアミン、4−n−プロピルシクロヘキシルアミン、4−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、4−n−ブチルシクロヘキシルアミン、4−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、4−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、4−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−ペンチルシクロヘキシルアミン、4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミン、4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミン、4−n−オクチルアミン、4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミン、4−n−ノニルシクロヘキシルアミン、4−n−デシルシクロヘキシルアミン等が例示される。これらは、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。
【0039】
それらの中でも、シクロヘキシルアミン及び炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基で置換されたシクロヘキシルアミンが好ましく、特にメチルシクロヘキシルアミンが好ましい。また、該アルキル基で置換されたシクロヘキシルアミンにおけるアルキル基の置換位置は2位が好ましい。
好ましい脂環式モノアミン成分としては、具体的にはシクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、2−n−プロピルシクロヘキシルアミン、2−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、2−n−ブチルシクロヘキシルアミン、2−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、2−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミンが挙げられ、特にシクロヘキシルアミン及び2−メチルシクロヘキシルアミンが推奨される。これらは、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。
【0040】
上記アルキル基で置換されたシクロヘキシルアミンは、シス体、トランス体及びこれら立体異性体の混合物のいずれであってもよいが、好ましいシス体:トランス体の比率としては、50:50〜0:100、特に35:65〜0:100が推奨される。
【0041】
<好ましいアミド系化合物(B)>
上記アミド系化合物(B)の中で、造核作用が高い点から、好ましくは一般式(1)におけるRが水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であるアミド系化合物が推奨される。
【0042】
具体例には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、 1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、
【0043】
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。
【0044】
それらアミド系化合物の中でも、一般式(1)におけるRが水素原子又はメチル基であるアミド系化合物が、より好ましい。
具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。
【0045】
更にその中でも、一般式(1)におけるRが1,2,3−プロパントリカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いて得られる残基であるアミド系化合物が、溶融ポリプロピレン樹脂への溶解性の観点から、特に好ましい。
具体的には1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。
【0046】
本発明に係るアミド系化合物(B)の結晶系は、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、六方晶、単斜晶、立方晶等の任意の結晶系が使用できる。これらの結晶も公知であるか又は公知の方法に従い製造できる。
【0047】
本発明に係るアミド系化合物(B)は、若干不純物を含むものであってもよい。該アミド系化合物の純度は、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、特に97重量%以上が推奨される。不純物としては、反応中間体又は未反応体由来のモノアミドジカルボン酸若しくはそのエステル、ジアミドモノカルボン酸若しくはそのエステル、アミド−イミド構造やビスイミド構造等のイミド骨格を有する化合物などが例示される。
【0048】
本発明に係るアミド系化合物(B)の粒子径は、本発明の効果が得られる限り特に限定はされないが、溶融ポリプロピレン樹脂への溶解性(溶解時間或いは溶解速度)の観点から、できる限り粒径が小さいものが好ましい。具体的には、通常、レーザー回折光散乱法で測定して得られる最大粒子径が200μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm、特に好ましくは10μm以下が推奨される。
【0049】
該アミド系化合物の最大粒子径を推奨される範囲内に調製する方法としては、この分野で公知の慣用装置を用いて微粉砕する方法やその微粉砕物をさらに分級する方法等が挙げられる。具体的には、流動層式カウンタージェットミル100AFG(装置名、ホソカワミクロン社製)、超音速ジェットミルPJM−200(装置名、日本ニューマチック社製)等を用いて調製する方法が例示される。
【0050】
本発明のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物において、アミド系化合物(B)の含有量は、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜5重量部であり、好ましくは0.02〜2.5質量部である。0.005重量部より少ない場合、特に成形加工性、透明性の効果が得られにくい。又、5重量部を超えてもその含有量に見合った本発明の効果が得られにくい。
【0051】
脂肪酸金属塩(C)
本発明に係る脂肪酸金属塩(C)は、上記一般式(2)で表される少なくとも一種であり、分子内に1個以上の水酸基を有していてもよい炭素数8〜32(好ましくは、炭素数10〜22)の飽和若しくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸と1価又は2価の金属とからなる脂肪酸金属塩である。
該脂肪酸金属塩がアミド系化合物(B)と共にポリプロピレン樹脂中に共存していることで、シート又はフィルム成形体の透明性、表面平滑性がより向上する傾向がある。
【0052】
上記一般式(2)における脂肪族モノカルボン酸としては、具体的に、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、トウハク酸、リンデル酸、ツズ酸、パルミトレイン酸、ペトラセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、γ−リノレン酸、リノレン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ナフテン酸、アビエチン酸などが例示される。好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸及び12−ヒドロキシステアリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が推奨される。
【0053】
上記一般式(2)における1価又は2価金属としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど)、マグネシウム、亜鉛などが例示され、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種が推奨される。
【0054】
好ましい脂肪酸金属塩(C)としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸及び12−ヒドロキシステアリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸と、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなる脂肪酸金属塩が推奨される。
具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム等が例示される。これらは、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。
【0055】
本発明のポリプロピレン樹脂中に脂肪酸金属塩(C)が含有している場合、その含有量は、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜10重量部、特に0.01〜5重量部が好ましい。0.001重量部未満では併用効果が得られにくく、又10重量部を超えて含有させてもその含有量に見合った併用効果が得られにくい。
また、アミド系化合物(B)に対する脂肪酸金属塩(C)の比率は、該アミド系化合物1重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部、特に好ましくは0.1〜2重量部が推奨される。
【0056】
その他の添加剤(D)
さらに本発明のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物に、必要に応じてその他の添加剤(D)として、下記ポリオレフィン用改質剤等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0057】
上記ポリオレフィン用改質剤としては、例えば、ポリオレフィン等衛生協議会編「ポジティブリストの添加剤要覧」(2002年1月)に記載されている各種添加剤が挙げられる。
具体的には、安定剤(金属化合物、エポキシ化合物、窒素化合物、燐化合物、硫黄化合物等)、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾテトラアゾール系化合物等)、酸化防止剤(フェノール系抗酸化剤、リン系抗酸化剤、硫黄系抗酸化剤等)、界面活性剤、滑剤(パラフィン、ワックス等の脂肪族炭化水素、炭素数8〜22の高級脂肪酸、炭素数8〜22の高級脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数4〜22の高級脂肪酸と炭素数4〜18の脂肪族1価アルコールとのエステル、炭素数8〜22の高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体等)、充填剤(タルク、ハイドロタルサイト、マイカ、ゼオライト、パーライト、珪藻土、炭酸カルシウム、ガラス繊維等)、発泡剤、発泡助剤、ポリマー添加剤の他、可塑剤(ジアルキルフタレート、ジアルキルヘキサヒドロフタレート等)、架橋剤、架橋促進剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、有機無機の顔料、加工助剤、他の造核剤等の各種添加剤が例示される。
【0058】
上記の他の造核剤としては、例えば、リチウムベンゾエート、ナトリウムベンゾエート、アルミニウムベンゾエート、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム等のカルボン酸金属塩;ナトリウムビス(4−第三ブチルフェニル)ホスフェート、環状有機リン酸エステル金属塩;1,3:2,4-ジ-O-ベンジリデン-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール等のソルビトール系誘導体などが挙げられる。
これら造核剤は、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。それらの配合量は、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましい。
【0059】
上記のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)としては、具体例に2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン;
【0060】
1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン等の塩化シアヌル縮合型HALS;
【0061】
1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物等の高分子量型HALSなどが挙げられる。
【0062】
これらヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。それらの配合量は、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましい。
【0063】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩又は金属キレート、特にニッケル若しくはクロムの塩又はキレート類等が挙げられる。
これら紫外線吸収剤は、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。それらの配合量は、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましい。
【0064】
上記酸化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、 トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスフィト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−〔(2,4,7,9−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト等のリン系抗酸化剤、
【0065】
2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス (4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等のフェノール系抗酸化剤、
【0066】
チオジプロピオン酸の、ジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類等の硫黄系抗酸化剤などが挙げられる。
【0067】
これら酸化防止剤は、それぞれ単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。それらの配合量は、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましい。
【0068】
シート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法
本発明に係るシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定は無く、従来公知のポリプロピレン樹脂を主成分とする樹脂組成物の製造に適用される製造方法を用いることができる。
具体的には、
(i)ポリプロピレン樹脂(A)(粉末状、顆粒状、ペレット状等の形態)に、アミド系化合物(B)と必要に応じて脂肪酸金属塩(C)及び/又はその他の添加剤(D)を配合し、常温で混合(例えば、ドライブレンドなど)して、ドライブレンドタイプの樹脂組成物とする方法、
(ii)前記ドライブレンドタイプの樹脂組成物を溶融混練してペレットタイプの樹脂組成物とする方法、
などが挙げられ、好ましくはペレットタイプの樹脂組成物とする方法が推奨される。
混合(ドライブレンド)する際に使用される混合装置としては、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機付混合機、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等、シート及びフィルム成形分野で常用される混合装置が挙げられる。
また、溶融混練する際に用いられる装置としては、従来公知の一軸或いは二軸スクリュー押出機、タンデム型混練押出機など、シート又はフィルム成形分野で用いられる装置が挙げられる。溶融混練時の樹脂温度は、通常180〜300℃、好ましくは200〜280℃である。
溶融混練工程において、当該アミド系化合物(B)を溶融ポリプロピレン樹脂(A)に溶解させておくことが、本発明の効果を発揮しやすく好ましい。
【0069】
尚、ポリプロピレン樹脂(A)に、アミド系化合物(B)と必要に応じて脂肪酸金属塩(C)及び/又はその他の添加剤(D)を添加する方法としては、例えば
(i)ポリプロピレン樹脂(A)に、アミド系化合物(B)と必要に応じて脂肪酸金属塩(C)及び/又はその他の添加剤(D)をそれぞれ別々に添加する方法、
(ii)アミド系化合物(B)と必要に応じて脂肪酸金属塩(C)及び/又はその他の添加剤(D)を混合してドライブレンドタイプの混合物とした後、該混合物をポリプロピレン樹脂(A)に添加する方法、
(iii)アミド系化合物(B)と必要に応じて脂肪酸金属塩(C)及び/又はその他の添加剤(D)、さらに必要に応じてバインダーとしてワックス、溶剤、シリカ等の造粒助剤等を、所望の割合でドライブレンドした後に、加熱若しくは湿式造粒してワンパック複合添加剤(顆粒状、粒状、ペレット状などの形態)とし、該複合添加剤をポリプロピレン樹脂(A)に添加する方法、
などが挙げられる。
【0070】
未延伸のシート又はフィルムおよびその製造方法
本発明のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物を、シート又はフィルム成形することにより、本発明の未延伸のシート又はフィルム成形体が得ることができる。ここで「未延伸」とは、下記に示されるような延伸工程を経ていないシート又はフィルムであって、実質的に延伸されていないものを指す。
本発明のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物を成形する方法(即ち、本発明の未延伸のシート又はフィルム成形体の製造方法を提案することでもある。)としては、従来公知の成形方法を用いることができ、例えばカレンダー成形法、押出成形法(Tダイ法など)、インフレーション成形法、キャストフィルム成形法などが挙げられる。シート成形体を得たい場合には押出成形法(Tダイ法など)等、フィルム成形体を得たい場合にはインフレーション成形法等が推奨される。
【0071】
これら成形方法において、アミド系化合物(B)が溶融ポリプロピレン樹脂に溶解した状態で、該ポリプロピレン樹脂を成形することが好ましい。この成形方法(製造方法)は、本発明の効果を有効に発揮させる為の方法である。
その際の溶融温度(樹脂温度)は、該アミド系化合物の添加量にも依存する(添加量が多いほど、高温側にシフトする)が、通常180〜300℃、好ましくは190〜280℃、より好ましくは200〜260℃である。
【0072】
当該成形方法をより具体的に説明すると、例えばTダイ−押出成形法の場合、上記シート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物(ドライブレンドタイプ、ペレットタイプ等)をTダイが装着された押出成形機に入れ、前記溶融温度(好ましくは当該アミド系化合物が溶融ポリプロピレン樹脂に溶解する樹脂温度)で溶融混練し、Tダイから押し出された溶融シートを所定温度(通常10〜90℃、好ましくは露点よりも高く40℃以下)のチルロール上で冷却固化することにより成形(製造)することができる。
【0073】
本発明の未延伸のシート成形体の厚さは、通常0.05〜2mm程度である。又、本発明の未延伸のフィルム成形体の膜厚は、通常10〜100μm程度、好ましくは15〜80μm程度である。
【0074】
シート又はフィルム成形体の厚みの均一性は、成形体の品質上で重要な特性の一つである。当該成形体の厚みの均一性は、好ましくは0.12以下、より好ましくは0.03〜0.10、特に0.03〜0.07が好ましい。
本発明において、「厚みの均一性」とは、後述の試験方法で評価した値である。この値が小さいほど厚みの均一性が高い。
【0075】
延伸フィルムとその製造方法
本発明の延伸フィルムは、上記の未延伸のシート又はフィルム成形体を公知のロール法、テンター法、ギアストレッチ法、又はこれらの方法の組み合わせによって、一軸延伸又は逐次若しくは同時二軸延伸することにより製造することができる。
尚、延伸方向は、機械方向(以下、「縦方向」という。)又は機械方向と直角をなす方向(以下、「横方向」という。)に一軸延伸してもよいし、また、二軸延伸であってもよい。二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよく、逐次二軸延伸であってもよい。
又、本特許請求の範囲及び明細書において延伸フィルムを製造について記述している場合、未延伸のシート又はフィルム成形体を「原反シート」という。
【0076】
該原反シートの厚さは、延伸フィルム(最終製品)に応じて適宜選択すればよく、好ましくは50〜2000μmの範囲、より好ましくは100〜1000μmの範囲が推奨される。
【0077】
<一軸延伸>
一軸延伸条件としては、延伸温度が好ましくは125〜165℃、より好ましくは135〜150℃である。延伸倍率は、好ましくは2〜10倍、より好ましくは2〜7倍、特に3〜5.5倍が推奨される。
延伸速度は、好ましくは5〜300%/秒、より好ましくは30〜200%/秒、特に50〜180%/秒が推奨される。また、延伸した後、緊張熱処理若しくは弛緩熱処理を行ってもよい。この熱処理条件としては、処理温度130〜170℃、処理時間1〜300秒間の条件が例示される。
【0078】
<逐次若しくは同時二軸延伸>
逐次二軸延伸条件としては、縦延伸温度が好ましくは125〜165℃、より好ましくは135〜150℃である。縦延伸倍率は、好ましくは2〜10倍、好ましくは2〜7倍、特に3〜5.5倍が推奨される。横延伸温度は、好ましくは150〜175℃、より好ましくは155〜165℃である。横延伸倍率は、好ましくは2〜10倍、より好ましくは2〜7倍、特に3〜5.5倍が推奨される。
延伸速度は、好ましくは5〜300%/秒、より好ましくは30〜200%/秒、特に50〜180%/秒が推奨される。また、延伸した後、緊張熱処理若しくは弛緩熱処理を行ってもよい。この熱処理条件としては、処理温度130〜170℃、処理時間1〜300秒間の条件が例示される。
【0079】
同時二軸延伸条件としては、延伸温度が好ましくは135〜165℃、より好ましくは140〜155℃である。縦延伸倍率は、好ましくは2〜10倍、より好ましくは2〜7倍、特に3〜5.5倍が推奨されるる。横延伸倍率は、好ましくは2〜10倍、より好ましくは2〜7倍、特に3〜5.5倍が推奨される。
延伸速度は、好ましくは5〜300%/秒、より好ましくは30〜200%/秒、特に50〜180%/秒が推奨される。また、延伸した後、緊張熱処理若しくは弛緩熱処理を行ってもよい。この熱処理条件としては、処理温度130〜170℃、処理時間1〜300秒間の条件が例示される。
【0080】
本発明の一軸延伸フィルムの厚さは、特に制限はないが、通常10〜250μm程度、好ましくは15〜200μm程度である。また、本発明の逐次若しくは同時二軸延伸フィルムの厚さは、特に制限はないが、通常3〜200μm程度、好ましくは5〜120μm程度である。
【0081】
延伸フィルムの厚みの均一性は、フィルムの品質上で重要な特性の一つである。当該延伸フィルムの厚みの均一性は、好ましくは0.12以下、より好ましくは0.04〜0.10、特に0.04〜0.07が好ましい。
【0082】
本発明のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いてシート成形体、フィルム成形体又は延伸フィルムを製造する際に、適宜、当該樹脂組成物を複数種用いて、多層状に複合化してもよい。また、本発明のポリプロピレン樹脂組成物とその他の異種のシート又はフィルム成形用樹脂組成物とを組み合わせて多層状に複合化してもよい。
【0083】
かくして得られたシート成形体、フィルム成形体又は延伸フィルムは、(食品用)包装材、産業用一般容器、化粧品容器、食品容器、文具、玩具、医療分野(注射液等の容器、注射器等)、自動車内外装などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明のシート又はフィルム成形用樹脂組成物の成形加工性、並びに該樹脂組成物を成形して得られたシート又はフィルム成形体及び延伸フィルムの透明性、耐熱性、臭気・移行特性、表面平滑性及び耐ブロッキング性を以下の方法により測定し、評価した。
【0085】
(1)成形加工性
(i)Tダイから吐出する溶融ポリプロピレン樹脂組成物の吐出ムラがないかどうか目視で評価した。
◎;吐出ムラが認められない。
○;僅かに吐出ムラが認められる。
△;吐出ムラが認められる。
×;著しく吐出ムラが認められる。
(ii)プレートアウト性(ロール汚染性)を目視で評価した。
◎;ロールへのプレートアウトが認められない。
○;ロールへのプレートアウトが殆ど認められない。
△;僅かにロールへのプレートアウトが認められる。
×;ロールへのプレートアウトが認められる。
(iii)延伸した時の延伸フィルムの延伸状態を目視で評価した。
○;破断や延伸ムラは認められず、延伸はスムーズである。
△;僅かに延伸ムラは認められるが、延伸はスムーズである。
×;破断した箇所や延伸ムラが認められる。
【0086】
(2)透明性
シート成形体及び延伸フィルムの両面に流動パラフィンを塗布した後、所定の枚数を重ね合わせ、東洋精機製作所製のヘイズメーターを用いて、ASTM D−1003に準じてヘイズ値(%)を測定した。得られた数値が小さい程、透明性に優れていることを示す。
尚、実施例1〜6及び比較例1〜4においては、得られたシート成形体を5枚重ね合わせて評価した。実施例7〜10及び比較例5〜7においては、得られた一軸延伸フィルム成形体を10枚重ね合わせて評価した。実施例11〜14及び比較例8〜10においては、得られた逐次二軸延伸フィルムを17枚重ね合わせて評価した。
【0087】
(3)耐熱性
示差走査型熱量計DSC−7(装置名,パーキンエルマー社製)を用いて、シート成形体及び延伸フィルムの融解挙動を測定した。測定して得られた最大吸熱ピーク温度を該シート成形体の融解温度とした。この温度が高い程、耐熱性が高い。
【0088】
(4)臭気・移行特性
(i)移行性;225mlガラス瓶に200μmのシート成形体(3cm×3cm)を10枚と蒸留水100mlを入れて密閉し、60℃のファインオーブン中で3時間静置した。次に室温で2時間冷却後に該成形体を取り出した。パネラー6人に当該サンプルとブランクを比較して官能試験を行った。該ブランクには、比較例1及び比較例2において相当するシート成形体を用いた。
評価は、下記の判定基準を用いて6人の合計点で行った。点数が少ないほど、水溶性液体への移行性が小さい。
1点;ブランクとの差異は認められない。
2点;僅かにブランクと差異が認められる。
3点;僅かに臭気が認められる。
4点;弱い臭気を感じる。
5点;強い臭気が認められる。
(ii)臭気特性;225mlガラス瓶に、得られたシート成形体(3cm×3cm)10枚又は延伸フィルム(3cm×3cm)15枚を入れて密閉し、90℃のファインオーブン中で3時間静置した。次に室温で2時間冷却した。パネラー6人に当該サンプルとブランクを比較して臭気試験を行った。該ブランクには、比較例1及び比較例2において相当するシート成形体、又は比較例5及び比較例6において相当する延伸フィルムを用いた。
評価は、下記の判定基準を用いて6人の合計点で行った。点数が少ないほど、臭気特性に優れている。
1点;ブランクと差異が認められない。
2点;僅かにブランクと差異が認められる。
3点;僅かに臭気が認められる。
4点;弱い臭気を感じる。
5点;強い臭気が認められる。
【0089】
(5)表面平滑性
(i)厚み均一性;得られたシート成形体又は延伸フィルムの幅方向の中心線(即ち、フィルムの幅を二等分する点を縦方向につないだ中心線)に沿って、縦方向に1cm間隔で20点について、フィルムの厚みを膜厚計(サンコウ電子研究所製「SME−1」)で測定した。その測定結果を用いて、下記式(1)に従って「厚みの均一性」を求めた。この値が小さいほど厚みの均一性が高い。
厚みの均一性 =(Tmax−Tmin)/Tave (1)
[式中、Taveは厚み測定値20点の平均値を示す。Tmaxは厚み測定値20点の最大値を示す。Tminは厚み測定値20点の最小値を示す。]
(ii)表面欠点;表面欠点(表面状態(凹凸等)、フィッシュアイの発生状態、ピンホールの発生状態)を総合的に目視で観察し、下記の判定基準で評価した。
◎;表面欠点が殆ど認められない。
○;微少ではあるが表面欠点が認められる。
△;表面欠点が認められる。
×;多数の表面欠点が認められる。
【0090】
(6)耐ブロッキング性
2枚のシート成形体を重ね合わせ、80g/cmの荷重下、室温で1週間静置した。1週間後、2枚の成形体を剥がした時の状況及びフィルム状態を観察した。
◎;ブロッキングは認めらない。
○;ブロッキングは殆ど認めらない。
△;僅かにブロッキングが認められる。
×;ブロッキングが認められる。
【0091】
シート又はフィルム成形;実施例1〜6
[実施例1]
アイソタクチックホモポリプロピレン重合体(MFR=5.0g/10分、以下、「h−PP」と略記する。)100重量部に対して、アミド系化合物(B)として1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)(以下、「PTC−2MeCHA」と略記する。)0.15重量部、脂肪酸金属塩としてステアリン酸カルシウム0.05重量部を添加し、更にテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャルティーケミカルズ社製、商品名「IRGANOX1010」)0.05重量部及びテトラス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャルティーケミカルズ社製、商品名「IRGAFOS168」)0.05重量部を配合し、ヘンシェルミキサーで1000rpm、5分間ドライブレンドした。
次に、樹脂温度240℃で直径15mmの二軸押出機を用いて溶融混練して、押し出されたストランドを水冷し、次に得られたストランドを切断して、本発明のペレット状のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
尚、PTC−2MeCHAの2−メチルシクロヘキシル部位の立体異性体の比率は、トランス体:シス体=74.3:25.7であった。又、PTC−2MeCHAは、最大粒子径は106μmの粉末状のものであった。
【0092】
得られたシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイを装備した押出成形機に供給し、樹脂温度230℃で溶融混練してシート状に押出し、表面温度40℃のチルロールで冷却固化し、本発明の厚さ約200μmのシート成形体(原反シート)を得た。
該組成物の成形加工性並びに得られたシート成形体の透明性、耐熱性、臭気・移行特性、表面平滑性及び耐ブロッキング性を評価し、その結果を表1に示した。
尚、当該樹脂組成において、予め上記PTC−2MeCHAが樹脂温度230℃でh−PPに溶解していることを確認した。以下の実施例においても同様に、当該樹脂温度(成形温度)にてアミド系化合物(B)がポリプロピレン樹脂(A)に溶解していることを確認した。
【0093】
[実施例2]
脂肪酸金属塩(C)を用いない以外は、実施例1と同様に行って、本発明の厚さ約200μmのシート成形体(原反シート)を得た。
当該樹脂組成物の成形加工性及び得られたシート成形体の特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0094】
[実施例3]
ホモポリプロピレン重合体に代えて、アイソタクチックプロピレン−エチレンランダム共重合体(エチレン含量3.0重量%、MFR=12g/10分、以下、「r−PP」と略記する。)を用いた以外は、実施例1と同様に行って、本発明の厚さ約200μmのシート成形体(原反シート)を得た。
当該樹脂組成物の成形加工性及び得られたシート成形体の特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0095】
[実施例4]
脂肪酸金属塩(C)を用いない以外は、実施例3と同様に行って、本発明の厚さ約200μmのシート成形体(原反シート)を得た。
当該樹脂組成物の成形加工性及び得られたシート成形体の特性を実施例3と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0096】
[実施例5]
PTC−2MeCHAに代えて、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド(以下、「PTC−CHA」と略記する。)を用いた以外は、実施例3と同様に行って、本発明の厚さ約200μmのシート成形体(原反シート)を得た。
当該樹脂組成物の成形加工性及び得られたシート成形体の特性を実施例3と同様に評価し、その結果を表1に示した。
尚、PTC−CHAの最大粒子径は106μmの粉末状のものであった。
【0097】
[実施例6]
PTC−2MeCHAに代えて、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)(以下、「BTC−2MeCHA」と略記する。)を用い、樹脂温度(混練温度及び成形温度)を250℃に変えた以外は、実施例3と同様に行って、本発明の厚さ約200μmのシート成形体(原反シート)を得た。
当該樹脂組成物の成形加工性及び得られたシート成形体の特性を実施例3と同様に評価し、その結果を表1に示した。
尚、BTC−2MeCHAの2−メチルシクロヘキシル部位の立体異性体の比率は、トランス体:シス体=54.6:45.4であった。又、BTC−2MeCHAは、最大粒子径は106μmの粉末状のものであった。
【0098】
[比較例1]
アミド系化合物(B)及び脂肪酸金属塩(C)を用いない以外は、実施例1と同様に行って、本発明外の厚さ約200μmのシート成形体(原反シート)を得た。
当該樹脂組成物の成形加工性及び得られたシート成形体の特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0099】
[比較例2]
アミド系化合物(B)及び脂肪酸金属塩(C)を用いない以外は、実施例3と同様に行って、本発明外の厚さ約200μmのシート成形体(原反シート)を得た。
当該樹脂組成物の成形加工性及び得られたシート成形体の特性を実施例3と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0100】
[比較例3]
アミド系化合物(B)に代えて、メチレンビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩(以下、「造核剤A」と略記する。)を用いた以外は、実施例3と同様に行って、本発明外の厚さ約200μmのシート成形体(原反シート)を得た。
当該樹脂組成物の成形加工性及び得られたシート成形体の特性を実施例3と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0101】
[比較例4]
アミド系化合物(B)に代えて、1,3:2,4-ビス-O-(p-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール(以下、「造核剤B」と略記する。)を用いた以外は、実施例3と同様に行って、本発明外の厚さ約200μmのシート成形体(原反シート)を得た。
当該樹脂組成物の成形加工性及び得られたシート成形体の特性を実施例3と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0102】
【表1】

【0103】
一軸延伸;実施例7〜10
[実施例7]
実施例1で得られた原反シートを、二軸延伸機(東洋精機株式会社製)を用いて、縦方向に、延伸温度135℃、延伸速度100%/秒、延伸倍率4倍で一軸延伸を行い、本発明の厚さ約100μmの一軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性並びに得られたフィルムの成形加工性、透明性、耐熱性、臭気特性及び表面平滑性を評価し、その結果を表2に示した。
【0104】
[実施例8]
実施例2で得られた原反シートを用いた以外は、実施例7と同様に行って、本発明の厚さ約100μmの一軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例7と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0105】
[実施例9]
実施例3で得られた原反シートを用いた以外は、実施例7と同様に行って、本発明の厚さ約100μmの一軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例7と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0106】
[実施例10]
原反シートに実施例5で得られた原反シートを用いた以外は、実施例7と同様に行って、本発明の厚さ約100μmの一軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例7と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0107】
[比較例5]
原反シートに比較例1で得られた原反シートを用いた以外は、実施例7と同様に行って、本発明外の厚さ約100μmの一軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例7と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0108】
[比較例6]
原反シートに比較例2で得られた原反シートを用いた以外は、実施例7と同様に行って、本発明外の厚さ約100μmの一軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例7と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0109】
[比較例7]
原反シートに比較例3で得られた原反シートを用いた以外は、実施例7と同様に行って、本発明外の厚さ約100μmの一軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例7と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0110】
【表2】

【0111】
逐次二軸延伸;実施例11〜14
[実施例11]
実施例1で得られた原反シートを、二軸延伸機(東洋精機株式会社製)を用いて、縦方向に、延伸温度135℃、延伸速度100%/秒、延伸倍率4倍で延伸を行い、連続して横方向に、延伸温度155℃、延伸速度100%/秒、延伸倍率2倍で延伸を行い、本発明の厚さ約60μmの逐次二軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性並びに得られたフィルムの成形加工性、透明性、耐熱性、臭気特性及び表面平滑性を評価し、その結果を表3に示した。
【0112】
[実施例12]
原反シートに実施例2で得られた原反シートを用いた以外は、実施例11と同様に行って、本発明の厚さ約100μmの逐次二軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例11と同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0113】
[実施例13]
原反シートに実施例3で得られた原反シートを用いた以外は、実施例11と同様に行って、本発明の厚さ約60μmの逐次二軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例11と同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0114】
[実施例14]
原反シートに実施例5で得られた原反シートを用いた以外は、実施例11と同様に行って、本発明の厚さ約60μmの逐次二軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例11と同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0115】
[比較例8]
原反シートに比較例1で得られた原反シートを用いた以外は、実施例11と同様に行って、本発明外の厚さ約60μmの逐次二軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例11と同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0116】
[比較例9]
原反シートに比較例2で得られた原反シートを用いた以外は、実施例11と同様に行って、本発明外の厚さ約60μmの逐次二軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例11と同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0117】
[比較例10]
原反シートに比較例3で得られた原反シートを用いた以外は、実施例11と同様に行って、本発明外の厚さ約60μmの逐次二軸延伸フィルムを得た。
該原反シートの成形加工性及び得られた延伸フィルムの特性を実施例11と同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0118】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物から得られるシート又はフィルム成形体や延伸フィルムは、透明性、耐熱性、移行性・臭気特性、表面平滑性に優れている。その為、該成形体や延伸フィルムは、(食品用)包装材、産業用一般容器、化粧品容器、食品容器、文具、玩具、医療分野(注射液等の容器、注射器等)、自動車内外装などに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、
一般式(1)
【化1】

[式中、Rは、1,2,3−プロパントリカルボン酸又は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。k個のRは、互いに同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。kは、3又は4の整数を表す。]
で表される少なくとも一種のアミド系化合物(B)0.005〜5重量部を含有することを特徴とするシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
ポリプロピレン樹脂(A)の230℃におけるメルトフローレートが0.1〜30g/10分である請求項1に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
ポリプロピレン樹脂(A)が、ホモプロピレン重合体である請求項1又は請求項2に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
ポリプロピレン樹脂(A)が、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体である請求項1又は請求項2に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体が、プロピレンとエチレンとの共重合体、又はプロピレン、エチレン及び1−ブテンの共重合体である請求項4に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体を構成するプロピレンの含有量が、該共重合体に対して93.0重量%以上100重量%未満である請求項4又は請求項5に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、一般式(2)
【化2】

[式中、R3は分子内に1個以上の水酸基を有していてもよい炭素数8〜32の飽和若しくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。nは1又は2の整数を表し、n=2の場合、2個のR3は同一又は異なっていてもよい。Mは1価又は2価の金属を表す。]
で表される少なくとも一種の脂肪酸金属塩(C)を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項8】
一般式(2)におけるMが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マグネシウム及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項9】
一般式(2)における脂肪族モノカルボン酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸及び12−ヒドロキシステアリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項7又は請求項8に記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項10】
脂肪酸金属塩(C)の含有量が、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して0.001〜10重量部である請求項7〜9のいずれかに記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物を成形して得られる未延伸のシート又はフィルム成形体。
【請求項12】
シート又はフィルム成形体の厚みの均一性が0.12以下である請求項11に記載の
未延伸のシート又はフィルム成形体。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の未延伸のシート又はフィルム成形体を一軸延伸又は逐次若しくは同時二軸延伸して得られる延伸フィルム。
【請求項14】
延伸フィルムの厚みの均一性が0.12以下である請求項13に記載の延伸フィルム。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれかに記載のシート又はフィルム成形用ポリプロピレン樹脂組成物を成形するに際し、アミド系化合物(B)が溶融ポリプロピレン樹脂に溶解した状態で、該ポリプロピレン樹脂組成物を成形することを特徴とする未延伸のシート又はフィルム成形体の製造方法。
【請求項16】
請求項11又は請求項12に記載の未延伸のシート又はフィルム成形体を、延伸温度125〜165℃、延伸倍率2〜10倍で一軸延伸することを特徴とする一軸延伸フィルムの製造方法。
【請求項17】
請求項11又は請求項12に記載の未延伸のシート又はフィルム成形体を、縦延伸温度125〜165℃、縦延伸倍率2〜10倍で縦延伸し、引き続き横延伸温度150〜175℃、横延伸倍率2〜10倍で横延伸することを特徴とする逐次二軸延伸フィルムの製造方法。
【請求項18】
請求項11又は請求項12に記載の未延伸のシート又はフィルム成形体を、延伸温度135〜165℃、縦延伸倍率2〜10倍、横延伸倍率2〜10倍で同時二軸延伸することを特徴とする同時二軸延伸フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−63484(P2007−63484A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254164(P2005−254164)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】