説明

新規なポリ(エチレンオキサイド)−ブロックーポリ(エステル)ブロック共重合体

【解決手段】
本発明は、ポリエステルブロック上に反応基を持つ、ミセルを生成するポリ(エチレンオキサイド)−ブロック−ポリ(エステル)ブロック共重合体に関連する。これらの共重合体は、その生分解性および多数の生物活性剤との生体適合性のために、種々の生物活性剤の適切なキャリヤーになる。DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、薬物などのような生物活性剤は、共重合体のポリエステル・ブロック上の反応基と結合できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年3月21日付で出願された米国特許仮出願番号第60/783,837号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、新規のポリ(エチレンオキサイド)−ブロック−ポリ(エステル)ブロック共重合体、特にポリエステルブロック上に反応性グループおよび/または生物活性化合物を持つポリ(エチレンオキサイド)−ブロック−ポリ(エステル)ブロック共重合体に関連する。本発明は、さらに、生物活性剤送達(デリバリー)用の前記組成物およびその使用法に関連する。
【背景技術】
【0003】
両親媒性のブロック共重合体は、ナノ規模のコア(内核)/シェル(外殻)構造に自己会合ができ、その疎水性コアが医薬、タンパク質、またはDNAのカプセル化用のミクロ貯蔵庫の役割を果たし、該親水性シェルは媒体と相互作用する。薬物送達用に設計された種々のブロック共重合体の中で、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide:PEO)をシェル生成ブロックとし、ポリエステルまたはポリアミノ酸(poly amino acids:PLAA)をコア生成ブロックとするものが注目を浴びている。これは、PEOが生体適合性であり、更にポリエステルおよびPLAAの生分解性であるため、それによってヒト投与用に安全となる。
【0004】
ポリアミノ酸(PLAA)は、薬物、薬物適合成分、遺伝子、または知的ベクトルとアミノ酸鎖上のアミンまたはカルボン酸のような遊離官能基を通して共有または静電気的結合生成の可能性があるので、ポリアミノ酸(PLAA)構造は、ポリエステル類より有利であることが知られている。したがって、疎水性/親水性ブロックの長さ、側鎖の化学構造および置換の程度を変えることを利用して、所望の安定性、生物分解、薬物担持、放出、または活性化特性を達成できる。
【0005】
PEO−b−PLAAに基づくミセルのコア構造の化学操作によって、ドキソルビシン(DOX)、アンフォテリシンB、メトトレキサート、シスプラチンおよびパクリタクセルの所望送達特性が達成された。例えば、PEO−b−ポリ(L−アスパラギン酸)とDOXとの結合物(コンジュゲート)から生成するミセルの安定性を向上させるのに、DOX置換40〜50%で、PEOに対するP(Asp)DOXの割合を減少させることを利用した。後にDOXを物理的にカプセル化するのに、PEO−b−PAsp−DOXミセルを用いた。化学的に結合した薬物と物理的にカプセル化された薬物との強い相互作用を利用して、ドキソルビシンに対して効率的な可溶化と放出特性とを備えた新規の製剤が開発され、現在日本で臨床試験中である(Matsumura Y,Hamaguchi T,Ura Tら、「ミセルにカプセル化(内包)されたドキソルビシンであるNK911のフェーズI臨床試験および薬物動態学の評価」を参照)。(Phase I clinical trial and pharmacokinetic evaluation of NK911,a micelle−encapsulated doxorubicin.)Br J CaNCer(2004)91(10):1775−1781)。
【0006】
本発明者もまた、以前に、脂肪族系薬物、アンフォテリシンB(AmB)をカプセル化するのにコア中に飽和脂肪酸エステル類を持つPEO−b−PLAAに基づくミセルのシステムを調製した。これがAmB放出速度を有効に保持できるように、ミセルのコアを化学的に微調整した(参照、Lavasanifar A,Samuel J,Kwon GS:ポリ(エチレンオキサイド)−ブロック−ポリ(N−アルキルステアレートL−アスパルトアミド(aspartamide))のミセル: 薬物送達用リポタンパク質の合成類似体(Lavasanifar A,Samuel J,Kwon GS:Micelles of poly(ethylene oxide)−block−poly(N−alkyl stearate L−aspartamide):synthetic analogues of lipoproteins for drug delivery. J Biomed Mater Res (2000))。理論によって限定されることを望まないが、例えば、エステル結合のようなより加水分解性結合の生成によって、薬物放出特性が十分なミセルを生成するのに、ミセル生成ブロック共重合体−薬物複合体が使用可能であると思われる。この手法を利用してPEO−b−PLAAにメトトレキサート(MTX)を付加させた。MTXの付加量で重合体ミセルの安定性および薬物放出速度を規制するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
新規の重合体であるポリアミノ酸の設計、合成および発見で進歩があった一方、これらの種々の構造物の生分解性は完全には追求されていない。ポリエステル類は、一般に、ヒトに安全に応用した歴史があったとはいえ、該重合体の主鎖上に官能基を欠くために化学操作にはそれほど適していない。したがって、依然として生分解性があり、多数の生物活性剤と生体適合性であるPEO−b−ポリエステルブロック共重合体を継続して設計し、開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリエステルブロック上に反応性または機能的な側鎖グループを内に持つポリ(エチレンオキサイド)−ブロック−ポリ(エステル)ブロック共重合体であって、生分解性があり、多数の生物活性剤と生体適合性である、かかる共重合体を提供する。本発明は、さらに本発明の機能化されたポリ(エチレンオキサイド)−ブロック−ポリ(エステル)ブロック共重合体が、生物活性剤の周囲にミセルを生成する組成を提供する。さらに、本発明は、機能化された本発明のポリ(エチレンオキサイド)−ブロック−ポリ(エステル)ブロック共重合体を生物活性剤を送達用に使用する方法を提供する。
【0009】
従って、本発明は化学式Iの化合物に関連し、
【0010】
【化3】

【0011】
ここで、Lは、単結合−C(O)−O、−C(O)−、および−C(O)NRから成る群から選択された結合基であり、
はH、OH,C1−20アルキル基、C3−20シクロアルキルおよびアリ−ル基から成る群から選択され、前記最後の3個の基が選択的に置換されていてもよく、その際、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基の炭素のうち1若しくはそれ以上が、O、S、N、NRまたはN(Rで置換されていてもよく、またはRが、生物活性剤であり、
はHまたはC1−6アルキルであり、
vとwは、互いに独立し、1〜4から独立に選択される整数であり、
xは10〜300の整数であり、
yは5〜200の整数であり、
zは0〜100の整数であり、
ここでアリール基は、単環または多縮合環を持つ炭素原子を6〜14個含む単環式または複環式芳香族であり、また、選択的な置換基は、ハロ、OH、OC1−6アルキル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルケニルオキシ(alkenyloxy)、NH、NH(C1−6アルキル)、N(C1−6アルキル)(C1−6アルキル)、CN、NO、C(O)C1−6アルキル、C(O)OC1−6アルキル、SO1−6アルキル、SONH、SONHC1−6アルキル、フェニル、およびC1−6アルキレンフェニル基からなる群から選択される。
【0012】
本発明の機能化ポリ(エチレンオキサイド)−ブロック−ポリ(エステル)ブロック共重合体のカプロラクトン残渣は、ランダムまたはブロック状に組み立てることができる。例えば、ランダムに組み立てたコアでは、置換および非置換カプロラクトン残渣は共にコア・ブロックの長さ方向にランダムに配置される。ブロックに組み立てた場合、置換カプロラクトンのブロックは、非置換カプロラクトンのブロックに続いていても(または逆でも)よい。別の場合では、カプロラクトン残渣はすべて置換されている。
【0013】
発明の別の態様では、本発明の機能化ポリ(エチレンオキサイド)−ブロック−ポリ(エステル)ブロック共重合体生成に有用な機能化カプロラクトン単量体を提供する。従って、本発明は式IIの化合物に関連する。
【0014】
【化4】

【0015】
ここで、Lは、単結合−C(O)−(O)−、−C(O)−、および−C(O)NRから成る群から選択された結合基であり、
はH、OH,C1−20アルキル基、C3−20シクロアルキルおよびアリ−ル基から成る群から選択され、前記最後の基3個が選択的に置換されていてもよく、その際、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基の炭素のうち1若しくはそれ以上が、O、S、N、NRまたはN(Rで置換されていてもよく、またはRが、生物活性剤であり、
はHまたはC1−6アルキルであり、
vは1〜4の整数であり、
ここでアリール基は、単環または多縮合環を持つ炭素原子を6〜14個含む単環式または二環式芳香族であり、また、選択的な置換基は、ハロ、OH、OC1−6アルキル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルケニルオキシ(alkenyloxy)、NH、NH(C1−6アルキル)、N(C1−6アルキル)(C1−6アルキル)、CN、NO、C(O)C1−6アルキル、C(O)OC1−6アルキル、SO1−6アルキル、SONH、SONHC1−6アルキル、フェニル、およびC1−6アルキレンフェニル基からなる群から選択される。
【0016】
本発明は、さらに式Iと生物活性剤であって、化学式Iの化合物が生物活性剤の周囲にミセルを生成する組成に関連する。該発明のより特別な態様では、式Iの化合物が、化学的結合、静電気的結合、および物理的カプセル化のうち1若しくはそれ以上によって生物活性剤の周囲にミセルを生成する。該発明の別の態様では、生物活性剤は、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチドおよび薬物から成る群から選択される。
【0017】
有効量の生物活性剤の周囲にミセル生成可能な化学式Iの化合物を被検者に投与することを含む、生物活性剤を被検者に送達する方法も、本発明の範囲内にある。より具体的には、生物活性剤は、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチドおよび薬物から成る群から選択される。
【0018】
本発明、及び先行技術に勝って達成された利点を要約するために、本発明の特定の目的および利点を上述した。当然ながら、当該発明のいかなる具体的なの態様によってでも、そのような目的または利点が必ずしもすべて達成されなくても良いことは理解される。したがって、例えば、本願明細書に教示されるような1つの利点または幾つかの利点のグループを達成または最適化するように、当業者であれば、本願明細書に教示または提案されているような他の目的または利点を必ずしも達成せずに、当該発明を具体化または実行できることが判るであろう。
【0019】
本発明の他の特徴および利点は以下の詳細な説明から明白になるであろう。しかし、発明の要旨の範囲内の種々の変更および修飾が、この詳細なる説明から当業者に明白になるため、当該詳細な説明および特定の実施形態は、発明の好ましい態様を示す一方、説明の為だけに記載されていることが理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
定義
次の定義は、別記のない限り、本発明のすべての実施形態および態様に該当する。
【0021】
本願明細書で使用される用語「C1−20アルキル」は、炭素原子を1〜20個含む直鎖および/または分岐アルキル基を意味し、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等を含む。
【0022】
本願明細書で使用される用語「C3−20シクロアルキル」は、炭素原子を3〜20個含む飽和環式アルキル基を意味し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等を含む。
【0023】
本願明細書にて使用される用語「アリール」は、1個または2個の芳香環および炭素原子を6〜14個含む、単環式または二環式炭素環式システムを意味し、フェニル、ナフチル、アンスラセニル、1,2−ジヒドロナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、フルオレニイル、インダニル、インデニルなどを含む。
【0024】
本願明細書にて使用される用語「C2−6アルケニル」は、炭素原子2〜6個および二重結合を1〜3個含む直鎖および/または分岐鎖アルケニル基を意味し、ビニール、アリル、1−ブテニル、2−ヘキセニルなどを含む。
【0025】
本願明細書にて使用される用語「C2−6アルケニルオキシ」は、炭素原子2〜6個および二重結合を1〜3個含む直鎖および/または分岐鎖アルケニルオキシ基を意味し、ビニールオキシ、アリルオキシ、1−ブテニルオキシ、2−ヘキセニルオキシなどを含む。
【0026】
本願明細書にて使用される用語「アルキニレン」は、特定の数の炭素を含む二官能直鎖および/または分岐アルキル基を意味する。
【0027】
本願明細書にて使用する用語「ハロ」はハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモ、アイオド等を含む。
【0028】
本願明細書にて使用される用語、「有効量の」薬剤は、有益または所望の、臨床結果を含む結果を得るのに十分な量を意味するが、このようなものとして、「有効量」は、用語が適用されている情況に依存する。例えば、薬物の役割をする薬剤を投与する情況では、有効量の薬剤は、例えば、当該薬剤の投与なしで得られた応答と比較して、治療上の応答を達成するのに十分な量である。
【0029】
本願明細書にて使用される用語「対象」は、ヒトを含む動物界の全員を含む。被験者は、好ましくはヒトである。
【0030】
本願明細書にて使用される用語「生分解性」は、物質を、可溶化、加水分解、または、酵素および他の有機体の生成物でもよい生物形成体の作用によってより簡単な中間体または最終生産物へ転化することを意味する。
【0031】
本願明細書にて使用される用語「生体適合性」は、物質、または物質の可溶化、加水分解、または、酵素および他の有機体の生成物でもよい生物形成体の作用によって生成し、体に悪影響をもたらさない中間体または最終生産物を意味する。
【0032】
記載
生物活性剤を組み入れるために、PCLブロック上に官能基を備えた生分解性ミセルを生成するPEO−b−PCLブロック共重合体を調製した。PEO−b−ポリ(ε−カプロラクトン)(PEO−b−PCL)のようなPEO−b−ポリエステルブロック共重合体のポリエステルセグメントへ官能基を導入すると、種々の反応性化合物をコアを形成する構造体に付着させ得る能力があり、生分解性の自己集合性生物材料の生成に繋がることが判明した。したがって、本発明は、さらに疎水性の特性のある生物活性剤をカプセル化するためのPEO−b−PCLミセルに関連する。ポリカプロラクトンは、ガラス転移温度が低い疎水性、半結晶の重合体である。PCLの化学構造を変化させて、PEO−b−PCLミセルの熱力学的および速度論的安定性、生分解、薬物可溶化および放出特性を修正するのに使用してもよい。本発明は、化学式Iの化合物を含み、
【0033】
【化5】

【0034】
ここで、Lは、単結合−C(O)−O、−C(O)−、および−C(O)NRから成る群から選択される結合基であり、
はH、OH、C1−20アルキル基、C3−20シクロアルキルおよびアリ−ル基から成る群から選択され、前記最後の3個の基が選択的に置換されていてもよく、その際、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基の炭素のうち1若しくはそれ以上が、O、S、N、NRまたはN(Rで置換されていてもよく、またはRが、生物活性剤であり、
はHまたはC1−6アルキルであり、
vとwは、互いに独立し、1〜4から独立に選択される整数であり、
xは10〜300の整数であり、
yは5〜200の整数であり、
zは0〜100の整数であり、
ここでアリール基は、単環または多縮合環を持つ炭素原子を6〜14個含む単環式または二環式芳香族であり、また、選択的な置換基は、ハロ、OH、OC1−6アルキル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルケニルオキシ(alkenyloxy)、NH、NH(C1−6アルキル)、N(C1−6アルキル)(C1−6アルキル)、CN、NO、C(O)C1−6アルキル、C(O)OC1−6アルキル、SO1−6アルキル、SONH、SONHC1−6アルキル、フェニル、およびC1−6アルキレンフェニル基からなる群から選択される。
【0035】
本発明の実施形態では、Lは、−C(O)−O−または−C(O)−である。本発明のさらなる実施形態では、Rは、アルキル、シクロアルキル、またはアリール基の1またはそれ以上の炭素をO、S、またはNで選択的に置換してもよい、選択的に置換されたC1−6アルキル、C3−8シクロアルキルまたはアリール基および生物活性剤とから成る群から選択される。本発明のさらなる実施形態では、生物活性剤は、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチドおよび薬物から成る群から選択される。本発明のある実施形態では、生物活性剤は、DNA、タンパク質および薬物から成る群から選択される。
【0036】
本発明のある実施形態では、薬物は、ドキソルビシン(DOX)、アンフォテリシンB(amphotericin B)、メトトレキサート(methotrexate)、シスプラチン(cisplatin)、パクリタクセル(paclitaxel)、エトポシド(etoposide)、シクロスポリンA(cyclosporine A)、PSC833、アミオダロン(amiodarone)、ラパマイシン(rapamycine)、カンプトセシン(camptothecin)コレステロール(cholesterol)およびエルゴステロール、デクサメタゾーン(dexamethasone)、プレドニゾン(prednisone)、コルチゾール(cortisol)、テストステロン(testosterone)、エストロゲンズ(estrogens)、プロゲスチンズ(progestins)、デュロモスタロン(dromostanolone)、テストラクトン(testolactone)、ヂエチルシルベストロ−ル(diethelstilbestrol)、エチニルエストラジオール(ethinyl estradiol)、ブデソニド(budesonide)、ベクロメタソン(beclometasone)およびビタミンDから成る群から選択される。より具体的には、本発明の実施形態では、薬物は、ドキソルビシン(DOX)、アンフォテリシンB(amphotericin)、メトトレキサート(methotrexate)、シスプラチン(cisplatin)、パクリタクセル(paclitaxel)、エトポシド(etoposide)、シクロスポリン(cyclosporine)、PSC833、アミオダロン(amiodarone)、ラパマイシン(rapamycine)、カンプトセシン(camptothecin)、コレステロール(cholesterol)およびエルゴステロールから成る群から選択される。さらにより具体的には、本発明の実施形態では、薬物は、ドキソルビシン(DOX)、コレステロール、シクロスポリンA、およびエルゴステロールから成る群から選択される。なおさらに特定すれば、本発明の実施形態では、薬物は、ドキソルビシン(DOX)である。本発明の別の実施形態では、該タンパク質はワクチンである。
【0037】
本発明のある実施形態では、任意に選択される置換基は、ハロ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルケニルオキシ、NH、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)(C1−4アルキル)、CN、NO、C(O)C1−4アルキル、C(O)OC1−4ルキル、SO1−4アルキル、SONH、SONHC1−4アルキル、フェニル、およびC1−4アルキレンフェニル基からなる群から選択される。
【0038】
更に本発明の別の実施形態では、vおよびwは互いに独立的に、2または3である。
【0039】
更に本発明の別の実施形態では、vおよびwは同じものである。
【0040】
本発明のある実施形態では、xが50〜200の整数である。本発明のより具体的な実施形態では、xは100〜150の整数である。
【0041】
本発明の別の実施形態では、yは5〜100の整数である。本発明のより特別な実施形態では、yは5〜50の整数である。さらにより特別な実施形態では、yは10〜20の整数である。
【0042】
本発明のある実施形態では、zは、0〜80、より適切には、0〜40の整数である。
【0043】
本発明の別の実施形態では、化学式IIの化合物が提供される。
【0044】
【化6】

【0045】
ここで、Lは、単結合−C(O)−(O)−、−C(O)−、および−C(O)NRから成る群から選択された結合基であり、
はH、OH,C1−20アルキル基、C3−20シクロアルキルおよびアリ−ル基から成る群から選択され、前記最後の基3個が選択的に置換されていてもよく、その際、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基の炭素のうち1若しくはそれ以上が、O、S、N、NRまたはN(Rで置換されていてもよく、またはRが、生物活性剤であり、
はHまたはC1−6アルキルであり、
vは1〜4の整数であり、
ここでアリール基は、単環または多縮合環を持つ炭素原子を6〜14個含む単環式または複環式芳香族であり、また、選択的な置換基は、ハロ、OH、OC1−6アルキル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルケニルオキシ(alkenyloxy)、NH、NH(C1−6アルキル)、N(C1−6アルキル)(C1−6アルキル)、CN、NO、C(O)C1−6アルキル、C(O)OC1−6アルキル、SO1−6アルキル、SONH、SONHC1−6アルキル、フェニル、およびC1−6アルキレンフェニル基からなる群から選択される。
【0046】
本発明の別の態様に従って、本発明の化合物は、例えばスキーム1で示される反応経路によって調製できる。
【0047】
【化7】

【0048】
化学式IIのラクトン、およびzが0〜100である場合に、L、R、vおよびwが化学式Iにおいて定義される化学式IIIのラクトンは、加熱および無水の条件下、触媒の存在下、xが化学式Iにおいて定義される開始剤メトキシポリエチレンオキサイドIVと開環重合によって化学式Iの化合物を提供するよう反応させることができる。化学式IVの化合物は当該技術で周知の方法を使用して調製できる。化学式IIの化合物は、例えば、スキーム2で示されるように取得できる。
【0049】
【化8】

【0050】
化学式VIのエノラート化合物は、無水の条件下、約−60℃〜約−90℃の範囲の温度、好ましくは−78℃で、非求核性の強塩基、例えばリチウム・ジイソプロピルアミン(LDA)のようなリチウムアルキルとの反応で調製可能である。次いで、このエノラートは、LGがハロゲンのような任意の適切な脱離基である化学式VII試薬と求電子置換を行ない、対応する化学式IIまたはIIIの化合物を生成する。
【0051】
が生物活性化合物である場合、該生物活性化合物は重合工程の後に化学式Iの化合物に組み入れることができる。この場合、Rが保護基であって、重合工程後、除去され、官能基、例えばC(O)OH基を顕在化し、前記生物活性化合物の相補的官能基、例えばOH、NH、またはSHと反応する化学式Iの化合物が使用される。一旦官能基が顕在化されれば、そこで、前記官能基は、当該技術で周知の条件下で生物活性化合物と結合させられる。このように出来た化学式Iの化合物のRは、そこで生物活性剤となる。ある場合では、生物活性化合物の添加に先立って官能基を保護する必要がないこともあることが判明している。
【0052】
さらに本発明の範囲内にあるのは、上に定義のような化学式Iの化合物と生物活性剤を含んでおり、化学式Iの化合物が、生物活性剤の周囲にミセルを生成する組成物である。本発明の実施形態で、化学式Iの化合物は、化学的結合、静電気的結合、および物理的カプセル化のうち1若しくはそれ以上によって生物活性剤の周囲にミセルを生成する。本発明のより特定の実施形態によると、化学式Iの化合物は、化学的結合によって生物活性剤の周囲にミセルを生成する。より特別には、本発明の実施形態では、生物活性剤は、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチドおよび薬物から成る群から選択される。本発明のある実施形態では、生物活性剤は、DNA、タンパク質および薬物から成る群から選択される。特定すれば、本発明の実施形態では、薬物は、ドキソルビシン(DOX)、アンフォテリシンB、メトトレキサート、シスプラチン、パクリタクセル、エトポシド、シクロスポリン、PSC833、アミオダロン、ラパマイシン、コレステロールおよびエルゴステロールから成る群から選択される。より特定すれば、本発明の実施形態では、薬物はドキソルビシン(DOX)、コレステロールおよびエルゴステロールから選択される。さらに特定すれば,本発明の実施形態では、薬物はドキソルビシン(DOX)である。発明の別の実施形態では、タンパク質はワクチンである。
【0053】
本発明の薬物担持ミセル組成は、経口または非経口的に投与できる。投与される薬物の濃度は、担持した特定の薬物および治療すべき条件または疾病状態に依存するであろう。本発明の化合物は、当業者の技術内で容易に決定できる、適切な治療上有効で且つ安全な投与量で被験者に投与してよい。これらの化合物は、最も好ましくは、一回か分割された投与量として投与されるが、治療中の被験者の体重および状態条件、および選択した特定の投与法によって必然的に変わる。
【0054】
本発明は、さらに、被験者に上述にて定義した有効量の生物活性剤の周囲にミセルを生成できる化学式Iの化合物を投与することを含む、生物活性剤を被験者に送達する方法を包含する。より具体的には、生物活性剤は、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチドおよび薬物から成る群から選択される。
【0055】
次の非限定的な実施例により、本発明を例証する。
【0056】
実施例
材料
メトキシポリエチレンオキサイド(平均分子量、5000gmol−1)、ジイソプロピルアミン(diisopropyl amine(99%))、ベンジルクロロフォーメート(工業用、95%)(benzyl chloroformate(tech.95%))、ナトリウム(灯油中)、ブチル・リチウム(Bu−Li)のヘキサン溶液(2.5M溶液)、パラジウム被覆炭(palladium coated charcoal)、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(N,N'−dicylcohexyl carbodiimide(DCC))、N−ヒドロキシサクシニミド(NHS)、トリエチルアミン、ドキソルビシンを使用した。塩酸とピレンは、シグマ化学薬品会社(Sigma Chemicals(米国ミズリー州セントルイス)から購入した。ε−カプロラクトンは、ランカスター合成社、英国(Lancaster Synthesis、UK)から購入した。第一スズ・オクタノエート(stannous octanoate)は,MPバイオメディカル社、ドイツ(MP Biomedicals Inc.Germany)から購入した。蛍光性のプローブDiIおよび1,3−(1,1'−ジピレニル)プロパン(1,3−(1,1'−dipyrenyl)propane)は、モレキュラー・プローブ社、米国)(Molecular Probe,USA)から購入した。セファデックス(Sephadex)LH20は、アメルシャム・バイオサイエンスズ、スエーデン)(Amersham BiosciencesSweden)から購入した。他の化学薬品はすべて試薬級であった。
【実施例1】
【0057】
α−ベンジルカルボキシレート−ε−カプロラクトンの合成
【0058】
【化9】

【0059】
三口丸底フラスコ中の無水ジイソプロピルアミン60.0mmol(8.4mL)の無水THF60mL溶液にBuLi60.0mmol(24mL)ヘキサン溶液を−30℃で、アルゴンを絶えず供給しつつ、激しい攪拌下、加えた。該溶液を−78℃に冷却し、さらに20分間攪拌し続けた。新たに蒸留したε−カプロラクトン(30mmol、すなわち3.42g)を無水テトラヒドロフラン(THF)8mLに溶解し、前述の混合物にゆっくり加え、次いで45分後に、ベンジルクロロフォーメート(30mmol、5.1g)を添加した。温度は、1.5時間後0℃まで上昇させ、反応は、飽和塩安溶液5mlで停止させた。反応混合物は水で希釈し、酢酸エチル(3×40ml)で抽出した。合併した抽出液をNaSO上で乾燥し、蒸発させた。帯黄色の油性の粗製混合物は、ヘキサン:酢酸エチルを3:1、2:1、および1:1の比率で溶離剤として使用して、シリカゲルカラム上で精製した。カラムクロマトグラフィー後、α−ベンジルカルボキシレート−ε−カプロラクトン(α−benzylcarboxylatecaprolactone)が透明な粘性のある油性液体として遊離された。反応収率は53.8%であった。このものの構造は、H NMR、13C NMR、IRおよび質量分光法を合わせた分析によって確認した。300MHzでのH NMR(CDCl):δ=1.6−2.2(m,6H);3.75(dd、1H);4.13−4.35(m、2H);5.226(s、2H);7.4(s、5H)(図1)。13C NMR(CDCl):δ=25.824、26.94、28.663、50.886、67.33、69.342、128.235、128.336、128.497、135.238、168.695および171.665ppm(図2)。IRデータ(薄膜法):C=C芳香族変角[振動]:1620cm−1、ラクトンC=O、1725cm−1、および脂肪族C=O1760cm−1、C−H伸縮芳香族:3025cm−1およびC−H伸縮脂肪族の2975cm−1(C=O倍音3400cm−1(図3))。質量分析:分子イオン・ピーク:m/z:248.99、M+Na:m/z:271、M+K:m/z:287(図4)。
【実施例2】
【0060】
ポリ(エチレンオキサイド)−ブロック−ポリ(α−ベンジルカルボキシレート−ε−カプロラクトン)(PEO−b−PBCL)ブロック共重合体の合成および特性決定
【0061】
【化10】

【0062】
メトキシポリエチレン(MW:5000gm/mole)(3.5g),α−ベンジルカルボキシレート−ε−カプロラクトン(3.5g)および第一スズ・オクタノエート(単量体当たり0.002等量)を、予め火焔処理した10mLアンプルに添加し、窒素でパージし、真空下で封入した。重合反応は、140℃で4時間オーブン中で行なった。反応は生成物を室温へ冷却して停止させた。PEO−PBCLブロック共重合体の調製収率は、91%であった。α−ベンジルカルボキシレート−ε−カプロラクトン単量体のPBCLへの転化を評価するために、300MHzでCDCl中のPEO−PBCLのH NMRスペクトルを用い、α−ベンジルカルボキシレート−ε−カプロラクトンの−O−CH−(δ=4.25ppm)のピーク強度とPBCL(δ=4.05ppm)の同ピークの強度とを比較した。該ブロック共重合体の数平均分子量も、HNMRスペクトルから、PEO(−CHCHO−、δ=3.65ppm)のピーク強度をPBCL(−O−CH−、δ=4.05ppm)(図5)のそれと比較して決定した。H NMRスペクトルのPEOのピーク強度をPBCLのそれと比較することにより測定した、調製PEO−PBCLブロック共重合体の分子量は、9600g.mol−1(重合度18)であると計算された。300MHzのH NMR(CDCl):δ=1.25−1.9(m、6H);3.3−3.45(s、3H;tri、1H);3.65;(s、4H);4.05;(tri、2H);5.15;(s、2H);7.35(s、5H)。PEO−PBCLブロックのIRスペクトル(薄膜法で調製)は、図6に示す。PEO−PBCLブロックの特性は表1の中にまとめてある。
【0063】
【表1】

【実施例3】
【0064】
PEO−b−PCCLブロック共重合体の合成および特性決定
【0065】
【化11】

【0066】
PEO−PBCL1gのTHF溶液25mlを100mL丸底フラスコへ入れた。パラジウム被覆炭(300mg)をこの溶液に分散した。その後、フラスコは10分間真空に引いて排気し、水素ガスを満たした風船を該反応フラスコに接続した。該混合物を磁気撹拌機で激しく攪拌して24時間水素と反応させた。反応混合物は、触媒を除去するために3000rpmで遠心分離した。上澄液を集め、減圧下濃縮し、大過剰のジエチルエーテル中で沈殿させ、繰り返し洗浄して副生物のこん跡をすべて除去した。最終生産物を集め、室温で48時間真空乾燥した。PEO−PBCLブロック共重合体の還元によるPEO−b−PCCLブロック共重合体生成の収率は、68〜75%であった。PEO−b−PCCLブロック共重合体の300MHzでのH NMR(N,Nジメチルスルホキシド−d6):δ=1.20−1.9(m、6H);3.22−3.38(s3H;tri、1H);3.5(s、4H);4.03(tri、2H)(図7)。PEO−b−PBCL(図5)上のベンジルオキシ基に関連する芳香族のピーク(δ=7.4)およびメチレン基ピーク(δ=5.15)は、PEO−b−PCCLのH NMRスペクトルにはなかった。(図7)。H NMRスペクトルのPEOのピーク強度を、PCCLのそれと比較して測定した、調製PEO−b−PCCLブロック共重合体の分子量は、7530g・mol−1(重合度、16)であると計算された。
【0067】
PEO−b−PCCLブロック共重合体(図8)のIRスペクトル(薄膜法で調製)は、3500cm−1から2500cm−1までの大きな、幅広いピークを示すが、これは、PEO−PBCLブロック共重合体のIRスペクトル中には幅広いピークがないのに比してカルボキシルOHの存在を示す(図6および8の比較)。PEO−b−PCCLブロック共重合体の特性は表1に要約されている。
【実施例4】
【0068】
ドキソルビシンが結合したPEO−b−PCL(PEO−b−P(CL−DOX))ブロック共重合体の合成および特性決定
【0069】
【化12】

【0070】
N−ヒドロキシサクシニミド(17.3mg、0.15mM)およびDCC(31mg、0.15mM)を、窒素下で、攪拌中のPEO−b−PCCL(200mg、0.03mM)ブロック共重合体の無水THF(15mL)溶液に加えた。反応混合物は室温で2時間攪拌した。その後、DOX.HCl(17.4mg、0.03mM)およびトリエチルアミン(21μL(0.15mM))の無水メタノール(2mL)溶液を添加、さらに96時間、反応を継続した。ブタン−1−オール:酢酸:水(4:1:4)を移動相として存在させ、薄層クロマトグラフィーを使用して反応の進行を追跡した。反応混合物を蒸発させて得た残渣は、HPLC級のメタノール(10mL)に溶解し、未反応ドキソルビシンおよび他のすべての副生物も除去するため、ドキソルビシンを結合したPEO−b−PCCLブロック共重合体を、メタノールを溶離剤として、seph adex LH 20カラムを使用して二度精製した。当該ドキソルビシンを結合したPEO−b−PCCLブロック共重合体を凍結乾燥し、濃厚なオレンジ色の粉末を得た。DOX分子とブロック共重合体との結合は、薄層クロマトグラフィー(TLC)で確認したが、その際、遊離ドキソルビシンは溶媒で溶出し、Rf値0.68のスポットを示した(図9で矢印1を参照)が、重合体と結合したドキソルビシンは、溶出せず、ベースライン(基線)(図9で矢印2を参照)に留まった。HPLCクロマトグラムは、さらにPEO−b−P(CL−DOX)ブロック共重合体に遊離DOXが存在しないことを示している(図17)。
【0071】
PEO−b−P(CL−DOX)の300MHzにおけるH NMR(N,Nジメチルスルホキシド−d6)は、DOX特有のピーク(図10)を示す:δ:7.9ppm、δ:3.6ppm、δ:3.3ppm、δ:1.2ppm。前記重合体中の結合したDOXの量は、紫外−可視分光法で測定され、5.4%(w/w)であった。調製したブロック共重合体の特性は表2に要約されている。前記重合体中の結合したDOXの量は、485nmで紫外分析で測定すると5.4%(w/w)であった。H NMRに基づいて計算された当該数平均分子量は、8800g/molであることが判明し、GPCクロマトグラムは、幅広い分子量分布(Mw/Mn=1.7)を示した。表2中の結果は、3工程のプロセスの間に、PCLに基づくブロックの分子量に大きな減少がなかったことを示す。
【0072】
【表2】

【実施例5】
【0073】
PEO−PBCLおよびPEO−b−PCCLブロック共重合体の集合
(i)一般的手法
ミセル化は、調製したブロック共重合体(30mg)をアセトン(0.5mL)に溶解し、25℃で緩やかな攪拌下、重合体溶液を2回蒸留した水(3mL)に滴下(〜1滴/15秒)し、アセトンを真空下蒸発させて行なった。
【0074】
(ii)PEO−PBCLおよびPEO−b−PCCLブロック共重合体ミセル粒径の測定
調製したミセルの平均直径および粒度分布は、10mg/mLの重合体濃度でマルバーン・ゼータサイザー3000(Malvern Zetasizer 3000)を使用して、動的光散乱(DLS)で測定した。PEO−PBCLおよびPEO−b−PCCLブロック共重合体ミセルについては、平均直径が28.4の±4.76と19.9±2.26nmであると測定された。ミセルの母集団の多分散度は、2種のブロック共重合体ミセルについてそれぞれ0.39と0.9であった(図11:(A)PEO−PBCLおよび(B)PEO−b−PCCL、および表1を参照)。
【0075】
(iii)透過電子顕微鏡法
1〜1.5mg/mlの重合体濃度のミセル溶液(20μL)の水滴を、一滴銅被覆グリッドの上に置いた。グリッドは、コロイド性凝集物が沈降できるように20秒間水平に保持した。次いで、燐タングステン酸(PTA)の2%PBS(pH=7.0)溶液を一滴添加して、ネガティブ染色(ステイン)を得た。1分後余分の液体を濾紙で除いた。次いで、該試料は、自然乾燥させ、日立H700型透過型電子顕微鏡に装着した。イメージは、75kV、18000倍の倍率で得た。図12はPEO−PBCLミセル(A)およびPEO−b−PCCLミセル(B)を示す。図12に示す縮尺目盛りは200nmに相当する。PEO−PBCLミセルは、62nmの平均粒径を有し、PEO−b−PCCLミセルは、20nmの平均粒径を有する。
【0076】
(iv)PEO−PBCLおよびPEO−b−PCCLブロック共重合体の臨界ミセル濃度およびコア粘性の測定:
種々の濃度のブロック共重合体の存在下、ピレンの蛍光励起スペクトルの変化を用いて、CMCを測定した。ピレンはアセトンに溶解し、最終溶液が6×10−7Mの濃度になるよう5mLメスフラスコに加えた。次いで、アセトンを蒸発し、0.05〜5000μg/mLの濃度範囲の重合体のミセル水溶液で置換した。試料は1時間65℃で加熱し、一夜室温に冷却し、蛍光測定に先立って酸素を窒素ガスで除去した。各試料のピレンの励起スペクトルは室温で、バリアン・キャリー・エクリプス蛍光分光光度計(オーストラリア、ビクトリア)(Varian Cary Eclipse fluorescence spectrophotometer(Victoria,Australia))を用いて得た。走査は、中速度(600nm/分)、およびPMT検知器電圧575Vで行なった。発光波長および励起/発光スリトは,それぞれ390nmおよび5nmに設定した。334nm対339(PEO−b−PCCLでは337)nmのピークの強度比を共重合体濃度の対数に対してプロットした。CMCは、ミセル化開始時の強度比(I339/I334)の鋭い立ち上がりから測定した(表3)。
【0077】
【表3】

【0078】
ミセルのコアの粘性は、それぞれ373および480nmでの1,3−(1,1'ジピレニル)プロパンの発光スペクトルから、エキシマー対単量体の強度比(I/I)を測定することにより求めた。1,3−(1,1'ジピレニル)プロパンは、2×10−7Mの最終濃度を与えるように既知容量のクロロホルムに溶解した。次いで、クロロホルムを蒸発させ、1000μg/mLの濃度のPEO−PBCLまたはPEO−b−PCCLのミセルの溶液5mLで置換した。試料は1時間65℃に加熱し、一夜室温に冷却した。蛍光測定に先立って、試料から酸素を除去するのに窒素ガス気流を使用した。1,3−(1,1'ジピレニル)プロパンの発光スペクトルは、室温で333nmの励起波長を使用し、励起/発光スリットを5nmにセットして得た。走査は、中速度(600nm/分)、およびPMT検知器電圧675Vで行なった。発光波長および励起/発光スリトは,それぞれ390nmおよび5nmに設定した。ピレンの励起スペクトルから、334nmピークに対する339nmのピークの強度比の鋭い立ち上がりは、ブロック共重合体に対するミセル化(CMC)の開始を示す。この方法を用いてPEO−b−PBCLおよびPEO−b−PCCLブロック共重合体の平均CMCは、それぞれ0.94および91.67μg/mLと計算された。調製したミセルに対する1,3−(1,1'ジピレニル)プロパンの発光スペクトルから得たI/I比率(0.025〜0.028)が非常に低いのは、疎水性コアの高い粘性を反映している。1,3−(1,1'ジピレニル)プロパンは、390nmで励起時480nmで発光する分子内ピレン・エキシマーを生成する。重合体のミセルのコア内のように非常に粘性の高い環境では、エキシマー生成は制限されるのである。
【0079】
(v)DiI(蛍光性プローブ)を担持したPEO−PBCLミセルの調製
蛍光性ラベルを付した重合体のミセルを調製するのに、疎水性の蛍光性プローブ(DiI)をPEO−PBCLミセル中に物理的に取り込ませる方法を使用した。DiI(10μg/mL)および共重合体(10mg/mL)を、アセトン(0.5mL)に溶解した。PEO−PBCLブロック共重合体ミセルの存在下、DiIをPEO−PBCLミセルによって、前記疎水性色素の沈殿する兆候なく可溶化させるのに成功した。この溶液を水3mlに滴下し、有機溶媒の残りを真空蒸発で除去した。ミセル溶液を5分間11,600×gで遠心分離にかけDiI沈殿を除去した。
【実施例6】
【0080】
α−コレステリルカルボキシレート−ε−カプロラクトンの合成
【0081】
【化13】

【0082】
60.0mmol(24mL)のBuLiヘキサン溶液を、アルゴンの供給を継続下、激しく攪拌しながら−30℃で、三口丸底フラスコ中の60.0mmol(8.4mL)の無水ジイソプロピルアミンの無水THF溶液45mLにゆっくり加えた。該溶液を−78℃に冷却し、さらに20分間攪拌を続けた。新たに蒸留したε−カプロラクトン(30mmol、3.42g)を無水THF8mLに溶解し、上記の混合物にゆっくり添加し、次いで45分後に、コレステリルクロロフォーメート(30mmol、13.47g)を添加した。1.5時間後、温度を0℃に上げ、反応を飽和塩安溶液5mlで停止させた。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチル(3×40ml)で抽出した。合併した抽出液は、NaSO上で乾燥し、蒸発した。この帯黄色の固形粗製混合物はヘキサン:酢酸エチルを3:1の比率で溶離剤として使用して、シリカゲルカラム上で精製し、固体の白色粉末を得た。集めた画分は、クロロホルム;ヘキサンとクロロホルム;メタノール溶剤システムを使用して、溶媒−溶媒抽出で再び精製し、純粋な固体の白色粉末を得た。
【0083】
カラムクロマトグラフィー後、α−コレステリルカルボキシレート−ε−カプロラクトンを白色固体の粉末として遊離した。反応収率は約50%であった。その構造は、H NMR、IRおよび質量分光法を併用した分析で確認した。
300MHzにおけるH NMR(CDCl):δ=681(s、3H)δ:0.86−1.7;(m、36H)δ:1.8−2.1;(m、12時間)δ:2.35;(m、2H)δ:3.66(dd、1H)(δ:4.13)−4.35(m、2H);δ:4.7(m、1H)δ:5.38(s、2H)(図13)。
【0084】
コレステリルクロロフォーメートのIRスペクトルが、1775cm−1にわずか1本の鋭いバンドしか示さない(図示せず)ものであるのに比して、IRスペクトル(図14)は、2本の隣接したバンドを1725cm−1および1750cm−1に示すが、これは、2つのカルボニル基の存在を示す。
質量分析:ピークス:Mm/z:526.76;M+Na:m/z:549.15;M+K=m/z:565.09(図15)。
【実施例7】
【0085】
ポリ(エチレンオキサイド)−ブロック−ポリ(α−コレステリルカルボキシレート−ε−カプロラクトン)(PEO−b−PChCL)ブロック共重合体の合成および特性決定
【0086】
【化14】

【0087】
PEO−b−PChCLは、メトキシポリエチレンオキサイドを開始剤とし、第一スズ・オクタノエートを触媒として使用し、α−コレステリルカルボキシレート−ε−カプロラクトンの開環重合によって合成した。前記ブロック共重合体の調製図式は、上記の図式に示されている。メトキシポリエチレン(MW:5000gm/mole)(3.5g),α−コレステリルカルボキシレート−ε−カプロラクトン(3.5g)および第一スズ・オクタノエート(単量体当たり0.002等量)を、予め火焔処理した10 mLアンプルに添加し、窒素でパージし、真空下封入した。重合反応は、160℃で3時間オーブン中で行なった。反応は生成物を室温へ冷却して停止させた。
【0088】
α−コレステリルカルボキシレート−ε−カプロラクトン単量体のPChCLへの転化を評価する為、300MHzでCDCl中のPEO−b−PChCLのH NMRスペクトルを用い、α−コレステリルカルボキシレート−ε−カプロラクトンの−O−CH−(δ=4.28ppm)のピーク強度とPChCL(δ=4.10ppm)の同ピークの強度とを比較した。該ブロック共重合体の数平均分子量も、HNMRスペクトルから、PEO(−CHCHO−、δ=3.65ppm)のピーク強度をPChCL(−O−CH、δ=4.10ppm)(図16)のそれと比較して決定した。
【0089】
PEO−b−PChCLブロック共重合体の調製収率は、50%であった。300MHzにおけるH NMR(CDCl):δ=0.681(s、3H)δ:0.86−1.7;(m、36H)δ:1.8−2.1;(m、12時間)δ:2.3;(m、2H)δ:3.28、δ:4.10(m、2H)(tri、1H);δ:4.65(m、1H)δ:5.38(s、2H)(図16)。PEOのピーク強度をH NMRスペクトル中のPBCLのそれと比較することにより測定した、調製PEO−b−PChCLブロック共重合体の分子量は、7633g.mol−1であると計算された。PEO−b−PChCLブロック共重合体(図16)のH NMRスペクトルは、α‐カプロラクトン環に属するプロトンが単量体のH NMR(図13)に比してより高磁場にシフトを示す、つまり、O−CHのδ:4.28(m、2H)ピークはδ:4.10にシフトし、O=C−CHのδ:3.66(dd、1H)は、3.28ppmにシフトする。これらのシフトは、α−コレステリル・カルボキシレート−ε−カプロラクトンの開環重合によるPEO−b−PChCLブロック共重合体の生成を示す。
【実施例8】
【0090】
HPLC測定
HPLCは、ウォーターズ625LC(Waters625 LC)システムを使用して40℃、1.0mL/分の流量で、実施した。検出は可変Waters486吸光度検知器を用い485nmの吸収で行なった。逆相クロマトグラフィーは、20μlの試料で、0.05%トリフルオロ酢酸水溶液およびアセトニトリルを使用する勾配溶離剤(gradient eluent)で、ウォーターズ10μm C18−125Åカラム(3.9×300mm)を用いて実行した。
【実施例9】
【0091】
DOX担持ミセルの調製および自己集合構造物の特性決定
DOXを担持したPEO−b−PCL、PEO−PBCL、PEO−b−PCCLおよびPEO−b−P(CL−DOX)ブロック共重合体ミセルを溶媒蒸発法で調製した。簡潔に言えば、ブロック共重合体(10mgづつ)をDOX1mgおよびトリエチルアミン20μl含有のTHF(2ml)に溶解した。その後、緩やかな攪拌下、当該溶液を2回蒸留した水(10mL)に滴下し、次いでTHFをゆっくりと蒸発させて、ミセルを生成した。室温で4時間攪拌後、真空を引き,確実に有機溶媒を完全に除去した。DOXが天然において、両親媒性なので、生じたミセル溶液は、大量の取り込まれていないDOXを含んでいるので、これを、さらに使用する前に蒸留水(スペクトラポール(SpectraPor)、カットオーフ分子量、3,500ダルトン)に対して徹底的に透析で除去した。
【0092】
PEO−b−PCL、PEO−PBCL、PEO−b−PCCLおよびPEO−b−P(CL−DOX)ブロック共重合体から調製したミセルの特性は、表4にまとめてある。すべての重合体のDOX担持量およびカプセル化効率は、表5にまとめてある。コア機能化ミセル中のDOX担持量は、非機能化ミセルPEO−b−PCLより、PEO−PBCL(2.5倍)およびPEO−b−P(CL−DOX)(2倍)ミセルにおいて著しく高かった(表5)。
【0093】
PEO−b−PCLミセルの計算ドキソルビシン担持量およびカプセル化効率は、それぞれ2.0%[M(DOX)/M(CL)比率]および48.3%であることが判った。芳香族基含有PEO−b−PBCLブロック共重合体は、ベンジル・カルボキシレート基の存在によりPEO−b−PCLブロック共重合体より著しく高いDOX担持量(2.5倍)を示した。カルボキシル基含有ブロック共重合体PEO−b−PCCLでは、担持量が僅かに増加を示した(1.3倍)が、その一方でPEO−b−PCCLブロック共重合体へのDOXの結合により、PEO−b−P(CL−DOX)ブロック共重合体の担持量を2倍増加させることができた。
【0094】
【表4】

【0095】
【表5】

【実施例10】
【0096】
粒度分布およびDOXの担持量および担持効率
調製したミセルの平均直径および粒度分布は、10mg/mLの重合体濃度でマルバーン・ゼータサイザー3000(Malvern Zetasizer3000)を使用して、動的光散乱(DLS)で測定した。DOXの担持量および担持効率は、ミセル水溶液のアリコート(一定分量)(200μL)を採り、DMSOで5倍に希釈して自己集合した構造物を崩壊し、紫外−可視分光光度計を使用し、485nmの吸収を測定して決定した。検量線は、異なる濃度の遊離DOXを使用して構築した。DOX担持およびカプセル化効率は次の方程式から計算した。
【0097】
【数1】

【実施例11】
【0098】
機能化および非機能化ミセルからのDOXの放出
DOX担持ミセル溶液(15mL、1mg/mL)は、上記の方法により、PEO−b−PCL、PEO−b−PBCL、PEO−b−PCCL、およびPEO−b−P(CL−DOX)ブロック共重合体から調製した。ミセル試料を透析バッグ(MWカットオーフ:3,500Da,米国スペクトラム・ラボラトリーズ社(Spectrum Laboratories,USA)製)へ移した。該透析バッグは、500mLのPBS(pH7.4)または500mLのアセテート緩衝溶液(pH5.0)中に入れた。放出試験は37℃で,JulaboSW22振盪水浴(ドイツ製)中で行なった。紫外−可視分析用に、選択した時間間隔で該透析バッグ内から200μLのミセル溶液を抜き取った。DOX濃度は485nmdeの吸光度強度に基づいて計算した。
【0099】
種々異なる処方からのDOX放出状況は、72時間以内に37℃でリン酸塩(pH:7.4、0.1M)および酢酸塩(pH:5.0、0.1M)緩衝液中で透析膜を使用して調べた。図18に示すように、pH7.4(A)におけるミセルからのDOX放出は、pH5.0(B)での放出に比して、はるかに遅かった。これらの結果は、両pHで、重合体のミセルからのDOX放出挙動が共重合体の組成によって強く影響されることを示唆する。芳香族基含有ブロック共重合体PEO−b−PBCLは、pH5.0で、担持DOXの放出がPEO−b−PCLよりはるかに遅いことを示す(それぞれPEO−b−PBCLおよびPEO−b−PCLミセルのDOXで、12時間後のDOX放出は、15対27%で、48時間後のDOX放出は、32対50%)。
【0100】
さらに、PEO−b−PBCLミセルは、PEO−b−PCLミセルに比べて、生理学的pHで放出を効率よく減少させることができた(それぞれPEO−b−PBCLミセルとPEO−b−PCLミセルで、12時間後のDOX放出は、10%対18%;48時間後のDOX放出は、22%対30%)。カルボキシル基含有ブロック共重合体PEO−b−PCCLミセルは、非機能性PEO−b−PCLミセルより放出が速いことを示した。pH5.0でのPEO−b−PCCLブロック共重合体ミセルからのDOX放出は、12および48時間後にそれぞれ35および56%であった。pH7.4で、同一時点でDOX放出はそれぞれ19および32%であった。重合体主鎖ののDOXの結合(コンジュゲーション)で、それぞれpH5.0および7.4で48時間培養後にそれぞれ、僅か7および8%放出する結果となったが、一方、物理的に担持されたDOXは、PEO−b−P(CL−DOX)ミセルからより速く放出した。このシステムからのDOXの放出挙動は、両pHでのPEO−b−PCLミセルからのDOX放出に類似していた。
【実施例12】
【0101】
ラット赤血球に対するインビトロ(in vitro)溶血
スプラーグドーリー・ラット(Sprague−Dawley rat)由来の心臓を穿刺して新たに血液を取得し、無菌、等張PBS(リン酸緩衝生理食塩水)と混合し、5分間3,000rpmで遠心分離した。上澄液をピペットで取り出し、赤血球を等張無菌のPBS(pH:7.4)で希釈した。適切な希釈比は、赤血球を0.1%のトリトンX100で溶解後上澄液中のヘモグロビンの576nmにおける紫外−可視吸光度から求めた。赤血球を適切に希釈した試料は、吸光度が0.4〜0.5であった。種々の重合体濃度の、3種の異なったブロック共重合体、PEO−b−PBCL、PEO−b−PCCL、並びにPEO−b−P(CL−DOX)のミセルの溶液およびPEO−b−P(CL−DOX)と結合したDOXの同様の濃度の遊離DOX溶液を、希釈した赤血球懸濁液(2.5ml)と共に37℃で30分間培養した。培養後、試料はさらに溶血するのを停止するために氷浴に保持した。完全な赤血球細胞を沈殿させるために、試料は、30秒間、14,000rpmで遠心分離した。上澄液を分離し、紫外−可視分光光度計によって576nmでヘモグロビンを分析した。溶血した赤血球の百分率は次式で計算した:溶血%=100(Abs−Abs)/(Abs100−Abs)、ここで、Abs、AbsおよびAbs100は、それぞれ、試料、重合体もDOXも不含の対照、および0.1%のトリトンX100を含む対照の吸光度である。
【0102】
インビトロ溶血試験は、前記合成重合体の生体適合性を測定する方法として使用した。図19に示すように、PEO−b−PCL、PEO−b−PBCL、PEO−b−PCCL、PEO−b−PCL25−co−PCClおよびPEO−b−PCL25−co−PCCLブロック共重合体ミセルをラット赤血球(RBC)と行なった培養では、問題となる程度の溶血を示さなかったが、一方、0.1%のトリトン−X100では、100%の溶血が起こった。重合体の最高濃度(500μg/ml)では、PEO−b−PCL、PEO−b−PBCL、PEO−b−PCCL、PEO−b−PCL25−co−PCClおよびPEO−b−PCL25−co−PCCLブロック共重合体の溶血%は、それぞれ2.7、2.5、2.4、0.08および0.5%であった。しかし、PEO−b−P(CL−DOX)は、最高重合体濃度(500μg/ml)である程度の溶血(13%)を示した。特に、遊離DOXは、同等なDOX濃度(27.5μg/ml)で同程度の溶血(11%)を示した。
【実施例13】
【0103】
マウス黒色腫B16−BL細胞に対するインビトロ細胞毒性
16−BLマウス黒色腫細胞に対するPEO−b−P(CL−DOX)およびDOX担持PEO−b−P(CL−DOX)ブロック共重合体ミセルのインビトロ細胞毒性をMTTアッセイを使用して調べた。細胞は、ウシ胎児血清10%、L−グルタミン1%w/v、ペニシリン100ユニット/mL、およびストレプトマイシン100μg/mlを添加したRPMI1640完全成長培地中で成長させ、5%CO組織培養器中で37℃に保持した。対数増殖期に細胞を採取し、96ウエル・プレートに5×10細胞/ウエルの密度で、RPMI1640培地100μlとして播種した。24時間後、細胞が付着した時、種々の異なる濃度のPEO−b−P(CL−DOX)、DOX担持EO−b−P(CL−DOX)ミセルおよび遊離DOXを前記細胞と共に24および48時間培養した。次いで、各々のウエルにMTT溶液(20μl;滅菌−濾過PBS)を添加し、該プレートをさらに3時間再培養した。該フォルマザン結晶をDMSOに溶解し、その濃度を、パワーウエイブ340ミクロプレートリーダー(Power Wave340microplate reader)(バイオ−テック機器社、米国、Bio−Tek Instruments,Inc.USA)により550nmで読み取った。
【0104】
図20に示すように、遊離DOX、PEO−b−P(CL−DOX)およびDOX担持PEO−b−P(CL−DOX)ミセルのB16−BLマウス黒色腫細胞に対する細胞毒性を24時間(A)および48時間(B)の両培養時間測定した。細胞の50%を死滅させるDOX濃度(50%阻害濃度(IC50))は、PEO−b−P(CL−DOX)ミセルの場合、それぞれ24および48時間培養で、4.15および0.45μg/mlであった。24時間で、DOXを結合した重合体(IC50:1.54μg/mL)と比べて、PEO−b−P(CL−DOX)ミセルに物理的に担持させたDOXは、3倍高い細胞毒性を示した。物理的にカプセル化したDOXと化学的に結合したDOXは、48時間の培養後に、B16―BL細胞に対して同等の細胞毒性(IC50:0.44μg/mL)を示した。遊離DOXのIC50計算値は、それぞれ24および48時間培養で、PEO−b−P(CL−DOX)ミセルより50倍および15倍低かった。重合体ミセルがインビトロで親化合物より高いIC50値を示したのは、細胞内取り込みおよび継続放出が、遊離薬物の迅速な拡散および即時の作用と比べて、より遅いので驚くべきことではない。
【実施例14】
【0105】
繊維芽細胞に対するインビトロ細胞毒性
上記の方法により、MTTアッセイを使用して、ヒトの繊維芽細胞に対するPEO−b−PCL、PEO−b−BCL、PEO−b−PCCL、PEO−b−PCL16−co−PCCL10およびPEO−b−PCL25−co−PCCLブロック共重合体のインビトロ細胞毒性活性を24時間調査した。
【0106】
調製した前記重合体の生体適合性を評価するために、ヒトの繊維芽細胞に対するPEO−b−PCL、PEO−b−BCL、PEO−b−PCCL、PEO−b−PCL16−co−PCCL10およびPEO−b−PCL25−co−PCCLブロック共重合体のインビトロ細胞毒性を、正常な細胞のモデルとして調べた。図21に示すように、共重合体の存在下での繊維芽細胞の培養では、すべての共重合体濃度(5〜500μg/mLの範囲)において、90%を超過する相対的な細胞生存率という非常に低い細胞毒性の結果を得た。すべてのブロック共重合体の最高共重合体濃度でさえ、対象に比して24時間の培養期間後の細胞生存率は、著しく減少することはなかった。
【実施例15】
【0107】
PEO−b−PCLおよびPEO−b−PCCLブロック共重合体による、シクロスポリンA(CsA)のカプセル化
CsAの重合体ミセル中のカプセル化は、PEO−b−PCLおよびPEO−b−PCCL(10mg)およびCsA(3mg)を、アセトン(0.167 mL)に溶解する共溶媒蒸発法で達成した。当該有機溶媒溶液を攪拌中の蒸留水(1 mL)へ滴下(1滴/15秒)した。残留アセトンは、室温で真空下蒸発して除去した。カプセル化工程の終了後、該コロイド溶液を12,000rpmで5分間遠心分離して、CsAの沈殿物を除去した。
【0108】
調製した重合体ミセルの水媒質中の平均直径および多分散度は、10mg/mLの重合体濃度で動的光散乱(3000HSゼータサイザー・マルバーン、マルバーン・インストルメント株式会社、英国)(3000HS Zetasizer Malvern,Malven Instrument Ltd.,UK)によって測定した。
【0109】
ブロック共重合体ミセル中のCsAのカプセル化レベルは、下記のように測定した。ミセルの水中の一定量を3倍量のアセトニトリルで希釈して自己集合型構造を分解した。CyAのカプセル封入量は、逆相HPLCを使用して測定した。該HPLC機器は、ケムメイト(Chem Mate)ポンプおよび自動試料採取器から成り立っていた。HPLCシステムは、KHPO(0.01M)、メタノールおよびアセトニトリル(25:50:25)の移動相を備えたLC1カラム(サプレコ(Supleco))を装備していた。流量およびカラム温度は、それぞれ1mL/分および65℃(エッペンドルフ(Eppendorf)CH30カラム・ヒーター)に設定した。CyA濃度は100μL注入後に205nm(ウォーターズ481(Waters481))で、アミオダロン(amiodarone)を内部標準料として用いて測定した。検量用試料は0.1−10μg/mLの濃度範囲で調製した。各実験は三回繰り返し行なった。CyA担持率およびカプセル化効率は次の方程式から計算した。
【0110】
【数2】

【0111】
CsA担持PEO−b−PCLおよびPEO−b−PCCLの特性を表6に示す。5000−5000MePEO−b−PCLコロイド分散物は、平均直径43.9nmと中程度の多分散指数(0.38)示した。5000−2530 PEO―b−PCCLの集合で形成したナノ構造の直径は、66nmで,その多分散指数は0.25であった。CsAは、PEO−b−PCLミセルによって水媒体中1.307mg/mLのレベル(CsA対重合体重量の比率、0.1307mg/mg)に達した。PEO−b−PCCLミセルは,PEO−b−PCLミセルに比して(対応のないスチューデントt−検定で、p<0.05)、より著しく高い量のCsAを担持した。PEO−b−PCCLミセル中のCsAの担持レベルは、2.131mg/mL(CsA:重合体重量比率、0.2131mg/mL)に達した(表6)。
【0112】
【表6】

【0113】
本発明は、現在好ましい例と考えられる実施例に就いて記載したが、当該発明は開示した実施例に限定されないことを理解されるものとする。それに反して、本発明は、別記の特許請求の精神および範囲内に含まれる種々の変更および等価な構成を包含することを意図するものである。
【0114】
本明細書においては、あたかも各個々の刊行物、特許、または特許出願がそれぞれ参照によってその全体を特定して個別に組み入れるよう示されている場合と同程度に、刊行物、特許および特許出願はすべて参照によってそれらの全体を組み入れるものである。本出願中の用語が、参照によってここに組み入れた文書では異なって定義されていると判明した場合は、本明細書に提供した定義をその用語の定義とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
以下に、本発明を図面を参照して記載する。
【図1】図1は、本発明の機能化単量体、α‐ベンジルカルボキシレート−ε−カプロラクトンのH NMRスペクトルである。
【図2】図2は、本発明の機能化単量体、α‐ベンジルカルボキシレート−ε−カプロラクトンの13C NMRスペクトルである。
【図3】図3は本発明の機能化単量体、α‐ベンジルカルボキシレート−ε−カプロラクトンのIRスペクトルである。矢印は、特性基の存在を示す。
【図4】図4は、本発明の機能化単量体、α‐ベンジルカルボキシレート−ε−カプロラクトンの質量スペクトルである。
【図5】図5は、ポリ(エチレンオキサイド)ーブロック−ポリ(α−ベンジルカルボキシレート−ε−カプロラクトン)(PEO−PBCL)ブロック共重合体のH NMR(CDCl)スペクトルである。
【図6】図6は、PEO−PBCLブロック共重合体のIRスペクトルである。
【図7】図7は、PEO−b−PCCLブロック共重合体のH NMR(dmso−d)スペクトルである。矢印は、芳香族のピークの欠如を示す。
【図8】図8は、ポリ(エチレンオキサイド)ーブロック−ポリ(α−カルボン酸塩−ε−カプロラクトン)(PEO−b−PCCL)ブロック共重合体のIRスペクトルである。矢印は、広幅のピークの存在を示す。
【図9】図9は、ドキソルビシン(DOX)分子とPEO−b−PCCLブロック共重合体との結合体の薄層クロマトグラフィー(TLC)である。スポット1は対照としての遊離ドキソルビシンであり、スポットは2は、ドキソルビシンを結合したPEO−b−PCCLブロック共重合体である。
【図10】図10は、メチルスルホキシドd中のDOXが結合したPEO−b−PCCLブロック共重合体のH NMRスペクトル。矢印は、PEO−b−PCCLブロック共重合体担持のDOX特有ピークを示したものである。
【図11】図11は、PEO−b−PCCL(A)およびPEO−b−PCCL(B)ブロック共重合体ミセルの粒度分布を示したものである。
【図12】図12は、PEO−PBCL(A)およびPEO−b−PCCL(B)ブロック共重合体から調製されたミセルのTEMイメージを示したものである。イメージは75kVの電圧設定で18000倍で撮影した。図示スケールの線は200nmに相当する。PEO−PBCLミセルの平均粒度は、62nm、PEO−b−PCCLミセルの平均粒度は、20nmである。
【図13】図13は、本発明の機能化単量体、α−コレスチリルカルボキシレート−ε−カプロラクトン のH NMRスペクトルである。
【図14】図14は、本発明の機能化単量体、α−コレスチリルカルボキシレート−ε−カプロラクトンのIRスペクトルである。矢印は、特性基の存在を示す。
【図15】図15は、本発明の機能化単量体、α−コレスチリルカルボキシレート−ε−カプロラクトンの質量スペクトルである。
【図16】図16は、PEO−b−PChCLブロック共重合体のH NMRスペクトルである。
【図17】図17は、メタノールに溶解した遊離DOX(A)およびPEO−b−P(CL−DOX)(B)の典型的なHPLCクロマトグラムである。PEO−b−P(CL−DOX)ブロック共重合体中遊離DOXの欠如を示す。
【図18A】図18Aは、異なるpHでの遊離DOXおよびPEO−b−PCLに基づくミセル中にカプセル化したDOXのインビトロ放出プロフィールを示したものである。(A)pH5.0。
【図18B】図18Bは、異なるpHでの遊離DOXおよびPEO−b−PCLに基づくミセル中にカプセル化したDOXのインビトロ放出プロフィールを示したものである。(B)pH7.4。
【図19】図19は、ラット赤血球に対して、PEO−b−PCL、PEO−PBCL、PEO−b−PCCL、PEO−b−PCL25−co−PCCLおよびPEO−b−PCL16−co−PCCL10によって引き起こされた溶血を示したものである。各実験は三回繰り返され、結果は平均値±SDとしてプロットされている。
【図20A】図20は、24時間(A)および48時間(B)培養後のB16−BLマウス黒色腫細胞に対する、遊離DOX、PEO−b−P(CL−DOX)およびDOX担持PEO−b−P(CL−DOX)ブロック共重合体ミセルのインビトロ細胞毒性を示したものである。細胞生存率は、DOX濃度の対数の関数して表現されている。各実験は三回繰り返して行なわれ、結果は平均値±SDとしてプロットされている。
【図20B】図20は、24時間(A)および48時間(B)培養後のB16−BLマウス黒色腫細胞に対する、遊離DOX、PEO−b−P(CL−DOX)およびDOX担持PEO−b−P(CL−DOX)ブロック共重合体ミセルのインビトロ細胞毒性を示したものである。細胞生存率は、DOX濃度の対数の関数して表現されている。各実験は三回繰り返して行なわれ、結果は平均値±SDとしてプロットされている。
【図21】図21は、ヒト線維芽細胞に対するPEO−b−PCLに基づくブロック共重合体PEO−b−PCL、PEO−PBCL、PEO−b−PCCL、PEO−b−PCL25−CO−PCCLおよびPEO−b−PCL16−CO−PCCL10のインビトロ細胞毒性を示したものである。細胞生存率は、DOX濃度の対数の関数して表現されている。各実験は三回繰り返して行なわれ、結果は平均値±SDとしてプロットされている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Iの化合物であって、
【化1】

は、単結合−C(O)−O、−C(O)−、および−C(O)NRから成る群から選択される結合基であり、
はH、OH、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、およびアリ−ルから成る群から選択され、前記最後の3個の基が選択的に置換されていてもよく、その際、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基の炭素のうち1若しくはそれ以上が、O、S、N、NRまたはN(Rで置換されていてもよく、またはRが、生物活性剤であり、
はHまたはC1−6アルキルであり、
v及びwは、互いに独立し、1〜4から独立的に選択される整数であり、
xは10〜300の整数であり、
yは5〜200の整数であり、
zは0〜100の整数であり、
アリール基は、単環または多縮合環を持つ炭素原子を6〜14個含む単環式または二環式芳香族であり、更に、前記選択的な置換基は、ハロ、OH、OC1−6アルキル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルケニルオキシ(alkenyloxy)、NH、NH(C1−6アルキル)、N(C1−6アルキル)(C1−6アルキル)、CN、NO、C(O)C1−6アルキル、C(O)OC1−6アルキル、SO1−6アルキル、SONH、SONHC1−6アルキル、フェニル、およびC1−6アルキレンフェニルからなる群から選択されるものである、化合物。
【請求項2】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、Lは、−C(O)−O−または−C(O)-である。
【請求項3】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、Rは、C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、アリール基、および生物活性剤から成る群から選択され、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基の炭素のうち1若しくはそれ以上が、選択的にO、S、またはNで置換されていてもよいものである。
【請求項4】
請求項1に記載の化学式Iの化合物において、前記選択的な置換基は、ハロ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルケニルオキシ、NH、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)(C1−4アルキル)、CN、NO、C(O)C1−4アルキル、C(O)OC1−4ルキル、SO1−4アルキル、SONH、SONHC1−4アルキル、フェニル、およびC1−4アルキレンフェニルからなる群から選択されるものである。
【請求項5】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、v及びwは、互いに独立して2または3である。
【請求項6】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、v及びwは、同じものである。
【請求項7】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、xは、50〜200の整数である。
【請求項8】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、xは、100〜150の整数である。
【請求項9】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、yは、5〜100の整数である。
【請求項10】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、yは、5〜50の整数である。
【請求項11】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、yは、10〜20の整数である。
【請求項12】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、zは、0〜80の整数である。
【請求項13】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、zは、0〜40の整数である。
【請求項14】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、Rは、生物活性剤である。
【請求項15】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、Rは、ドキソルビシン(doxorubicin:DOX)、アンフォテリシンB(amphotericin B)、メトトレキサート(methotrexate)、シスプラチン(cisplatin)、パクリタクセル(paclitaxel)、エトポシド(etoposide)、シクロスポリンA(cyclosporine A)、PSC833、アミオダロン(amiodarone)、ラパマイシン(rapamycine)、カンプトセシン(camptothecin)コレステロール(cholesterol)およびエルゴステロール、デクサメタゾーン(dexamethasone)、プレドニゾン(prednisone)、コルチゾール(cortisol)、テストステロン(testosterone)、エストロゲンズ(estrogens)、プロゲスチンズ(progestins)、デュロモスタロン(dromostanolone)、テストラクトン(testolactone)、ヂエチルシルベストロ−ル(diethelstilbestrol)、エチニルエストラジオール(ethinyl estradiol)、ブデソニド(budesonide)、ベクロメタソン(beclometasone)およびビタミンDから成る群から選択される生物活性剤である。
【請求項16】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、Rは、ドキソルビシンである。
【請求項17】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、Rは、シクロスポリンである。
【請求項18】
請求項1記載の化学式Iの化合物において、Rは、コレステロールである。
【請求項19】
請求項1〜13の何れかに記載の化学式Iの化合物と生物活性剤とを含む組成物であって、前記化学式Iの化合物は、前記生物活性剤の周囲にミセルを形成するものである、組成物。
【請求項20】
請求項19記載の組成物であって、前記化学式Iの化合物は、化学結合、静電気的結合、物理的なカプセル化、またはこれ等の任意の組み合わせによって、前記生物活性剤の周囲にミセルを形成するものである。
【請求項21】
請求項19記載の組成物において、前記生物活性剤は、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチドおよび薬物から成る群から選択されるものである。
【請求項22】
請求項19記載の組成物において、前記生物活性剤は、DNA、タンパク質、および薬物から成る群から選択されるものである。
【請求項23】
請求項19記載の組成物において、前記生物活性剤は、ドキソルビシン(DOX)、アンフォテリシンB(amphotericin B)、メトトレキサート(methotrexate)、シスプラチン(cisplatin)、パクリタクセル(paclitaxel)、エトポシド(etoposide)、シクロスポリンA(cyclosporine A)、PSC833、アミオダロン(amiodarone)、ラパマイシン(rapamycine)、カンプトセシン(camptothecin)コレステロール(cholesterol)およびエルゴステロール、デクサメタゾーン(dexamethasone)、プレドニゾン(prednisone)、コルチゾール(cortisol)、テストステロン(testosterone)、エストロゲンズ(estrogens)、プロゲスチンズ(progestins)、デュロモスタロン(dromostanolone)、テストラクトン(testolactone)、ヂエチルシルベストロ−ル(diethelstilbestrol)、エチニルエストラジオール(ethinyl estradiol)、ブデソニド(budesonide)、ベクロメタソン(beclometasone)およびビタミンDから成る群から選択される薬物である。
【請求項24】
請求項23記載の組成物において、前記薬物は、ドキソルビシン(DOX)、コレステロール、およびシクロスポリンから選択されるものである。
【請求項25】
請求項23記載の組成物において、前記薬物は、ドキソルビシン(DOX)である。
【請求項26】
化学式IIの化合物であって、
【化2】

は、単結合−C(O)−(O)−、−C(O)−、および−C(O)NRから成る群から選択される結合基であり、
はH、OH,C1−20アルキル基、C3−20シクロアルキルおよびアリ−ル基から成る群から選択され、前記最後の3個の基は選択的に置換されていてもよく、その際、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基の炭素のうち1若しくはそれ以上が、O、S、N、NRまたはN(Rで置換されていてもよいものであり、
はHまたはC1−6アルキルであり、
vは1〜4の整数であり、
ここでアリール基は、単環または多縮合環を持つ炭素原子を6〜14個含む単環式または二環式芳香族であり、また、前記選択的な置換基は、ハロ、OH、OC1−6アルキル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルケニルオキシ(alkenyloxy)、NH、NH(C1−6アルキル)、N(C1−6アルキル)(C1−6アルキル)、CN、NO、C(O)C1−6アルキル、C(O)OC1−6アルキル、SO1−6アルキル、SONH、SONHC1−6アルキル、フェニル、およびC1−6アルキレンフェニルからなる群から選択される、化合物。
【請求項27】
請求項26記載の化学式IIの化合物において、Vは1であり、Lは−C(O)−O−であり、Rはベンジルである。
【請求項28】
請求項26記載の化学式IIの化合物において、Vは1であり、Lは−C(O)−O−であり、Rはα−コレストリルである。
【請求項29】
請求項26記載の化学式IIの化合物において、Vは1であり、Lは−C(O)−O−であり、Rは水素である。
【請求項30】
対象に生物活性剤を送達する方法であって、この方法は、
前記対象に、有効量の前記生物活性剤の周囲にミセル生成可能な請求項1記載の化学式Iの化合物を投与する工程
を有するものである、方法。
【請求項31】
請求項30記載の方法において、前記生物活性剤は、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、および薬物から成る群から選択されるものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【公表番号】特表2009−530447(P2009−530447A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500678(P2009−500678)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000451
【国際公開番号】WO2007/106997
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(507388960)ザ・ガバナーズ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・アルバータ (9)
【Fターム(参考)】