説明

新規な硫酸水素塩

本発明は、化合物1の硫酸水素塩及び溶媒和化合物、その結晶の形態及び非晶質の形態、並びにそれらを調製するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全文が、この参照により本明細書に組み入れられる、2005年12月21日出願の、米国仮出願第60/752781号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、新規な塩に関し、より詳しくは、哺乳動物における、癌などの増殖性の疾患状態の治療及び/又は予防に有用であるMEK阻害薬である、6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド(以下「化合物1」と呼ぶ)の新規な塩に関する。より詳しくは、本発明は、化合物1の硫酸水素塩に関し、前記塩を調製するための方法に関する。化合物1の硫酸水素塩を含む薬剤組成物、並びに、ヒト又は動物の身体における、癌などの増殖性の疾患状態を治療及び/又は予防するための薬物の製造におけるその塩の使用、並びに、化合物1の硫酸水素塩の治療有効量を投与することによって哺乳動物における癌などの増殖性の疾患状態を治療する方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
増殖因子受容体及びタンパク質キナーゼによる細胞のシグナル伝達は、細胞成長、増殖及び分化の重要な制御因子である。正常な細胞成長では、増殖因子は、受容体の活性化(即ち、PDGF又はEGF及びその他)により、MAPキナーゼ経路を活性化する。正常な及び制御されていない細胞成長に関与する、最も重要且つ最もよく理解されているMAPキナーゼ経路の1つは、Ras/Rafキナーゼ経路である。活性なGTP結合Rasは、Rafキナーゼの活性化及び間接的なリン酸化をもたらす。次いで、Rafは、2つのセリン残基上で(MEK1に対してS218とS222、並びにMEK2に対してS222とS226)、MEK1及び2をリン酸化する(Ahnら、Methods in Enzymology、2001年、332巻、417〜431頁)。次いで、活性化されたMEKは、唯一知られているその基質であるMAPキナーゼERK1及び2をリン酸化する。MEKによるERKのリン酸化は、ERK1に対してはY204及びT202上で、ERK2に対してはY185及びT183上で起こる(Ahnら、Methods in Enzymology、2001年、332巻、417〜431頁)。リン酸化したERKは二量体化し、次いで核に移動しそこで蓄積する(Khokhlatchevら、Cell、1998年、93巻、605〜615頁)。核では、ERKは、それだけには限定されないが、核の輸送、シグナル伝達、DNAの修復、ヌクレオソームの構築及び移動、並びにmRNAのプロセシング及び翻訳を含めた、いくつかの重要な細胞の機能に関与している(Ahnら、Molecular Cell、2000年、6巻、1343〜1354頁)。概して、増殖因子で細胞を処理すると、ERK1及び2の活性化をもたらし、それは増殖、及び場合により分化をもたらす(Lewisら、Adv.Cancer Res.、1998年、74巻、49〜139頁)。
【0004】
増殖性疾患では、ERKキナーゼ経路に関与する、増殖因子受容体、下流のシグナル伝達タンパク質、又はタンパク質キナーゼの遺伝子の突然変異及び/又は過剰発現が、非制御されていない細胞の増殖をもたらし、最終的には腫瘍の形成をもたらす。例えば、いくつかの癌は、増殖因子を持続的に生成することによりこの経路の持続的な活性化をもたらす突然変異を含んでいる。他の突然変異は、活性化したGTP結合Ras複合体の不活性化における欠陥をもたらすことがあり、MAPキナーゼ経路の活性化を再びもたらす。突然変異した発癌性の形態のRasは、結腸癌の50%及びすい臓癌の>90%、並びに多くの他のタイプの癌に見られる(Kohlら、Science、1993年、260巻、1834〜1837頁)。最近、bRafの突然変異が、60%を超える悪性メラノーマで同定された(Davies,H.ら、Nature、2002年、417巻、949〜954頁)。bRafにおけるこれらの突然変異は、構成的に活性なMAPキナーゼカスケードをもたらす。原発癌のサンプル及び細胞系の研究により、すい臓、結腸、肺、卵巣、及び腎臓の癌における、構成的な、又は過剰活性化したMAPキナーゼ経路も示されている(Hoshino,R.ら、Oncogene、1999年、18巻、813〜822頁)。したがって、癌と、遺伝的突然変異に起因する過剰活性なMAPキナーゼ経路との間に強力な相関が存在する。
【0005】
構成的な、又は過剰活性化したMAPキナーゼカスケードが細胞の増殖及び分化において中心的役割を果たしているので、これらの経路を阻害することは、過剰増殖性疾患において有益であると考えられている。MEKは、Ras及びRafの下流にあるので、この経路における中心的存在である。さらに、MEKのリン酸化に対して唯一知られている基質はMAPキナーゼであるERK1及び2であるので、MEKは魅力的な治療の標的である。いくつかの研究では、MEKの阻害は潜在的な治療上の利点を有することが示されている。例えば、小分子のMEK阻害薬は、ヌードマウスの異種移植片で、ヒトの腫瘍の成長を阻害し(Sebolt−Leopoldら、Nature−Medicine、1999年、5巻(7)、810〜816頁;Trachetら、AACR、2002年4月6〜10日、ポスター番号5426;Tecle,H.、IBC、第2回、International Conference of Protein Kinases、2002年9月9〜10日)、動物において静的な異痛を阻止し(WO01/05390)、急性骨髄性白血病細胞成長を阻害する(Milellaら、J.Clin.Invest.、2001年、108巻(6)、851〜859頁)ことが示されている。
【0006】
MEKの小分子阻害薬が開示されている。過去数年に、少なくとも13の特許出願:米国特許第5525625号、WO98/43960、WO99/01421、WO99/01426、WO00/41505、WO00/42002、WO00/42003、WO00/41994、WO00/42022、WO00/42029、WO00/68201、WO01/68619、及びWO02/06213が現れている。
【0007】
MEKの阻害薬は、WO03/077914にも記載されている。6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド、即ち「化合物1」が、WO03/077914に例示されており、以下の構造式を有している。
【化1】

【0008】
化合物1は、MEKに対する阻害作用を有し、したがって、癌などの過剰増殖性疾患の治療に有用であることが示されている。
【0009】
WO03/077914は、一般的には、本明細書に開示する化合物の、ある種の薬学的に許容できる塩を開示している。特に、これはWO03/077914では、十分に塩基性の部分を保有する、そこに開示される化合物の薬学的に許容できる塩は、薬学的に許容できる陰イオンを含む酸付加塩を形成することがあると述べられており、そのような陰イオンが列挙されている。同様に、酸性部分を保有する化合物の適切な塩は、化合物を、塩基性化合物、及び特に無機塩基で処理することによって形成される。
【0010】
薬物で用いられる薬学的に活性な化合物の形態は、適切には妥当な取扱いの性質をもたらすものであり、そのためにその加工及び製剤が可能になる。しかし、錠剤の溶解速度及び有効成分のバイオアベイラビリティーなど、最終の製剤の生物学的性質が確実に最適化されることも必要であり、これら様々な要求すべてを最もよく満たす特定の形態を選択する上で、しばしばなされるべき妥協が存在する。しかし、いくつかの場合では、おそらくpKa値が低いために、塩は容易に形成せず、且つ/又は安定ではない。pKa値は、酸及び塩基の強度、即ち酸がプロトンを失い、又は塩基がプロトンを加える傾向を表すものである(Bronsted J.N.、Rec.Trav.Chim.、(1923年)、47巻、718頁)。これは、化合物1に特に当てはまる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、化合物1の硫酸水素塩(薬物:HSO 1:1)、及びその様々な形態を提供し、そのすべてが本発明の範囲内に含まれる。塩は様々な形態であってよく、そのすべてが本発明の範囲内に含まれる。これらの形態には、無水形態、及び溶媒和化合物が含まれる。さらなる形態は、溶媒和化合物を溶解することによって生成され得る。特定の一実施形態では、塩は無水形態である。
【0012】
さらなる一態様では、本発明は、過剰増殖性の疾患又は状態を治療するための薬物として、化合物1の硫酸水素塩を使用する方法を提供する。
【0013】
本発明のさらなる一態様は、過剰増殖性の疾患又は状態を治療又は予防するための薬物の調製における、化合物1の硫酸水素塩の使用である。
【0014】
本発明のさらなる利点及び新規な特徴を、部分的に以下の記載に述べ、当業者であれば、以下の明細書を検討すれば部分的に明らかになり、本発明を実践することによって習得することができる。本発明の利点は、添付する特許請求の範囲で特に指摘する手段、組合せ、組成物、及び方法によって実現し、達成することができる。
【0015】
本明細書に組み入れられ、明細書の一部を形成する、添付の図面は、本発明の非限定的な実施形態を例示するものであり、記述とともに、本発明の原理の説明を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明のある種の実施形態を詳しく言及し、その例は添付の構造及び式に例示する。本発明を、列挙する実施形態と組み合わせて記載するが、これらは、本発明をこれらの実施形態に制限しようとするものではないことは理解されよう。それとは対照的に、本発明は、すべての代替形態、修正形態、及び等価物を網羅することが企図され、これらは特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に含まれ得る。当業者であれば、本明細書に記載するものと類似し又は等しい、本発明の実践に用いることができる、多くの方法及び材料を認めるであろう。本発明は、記載する方法及び材料に決して限定されるものではない。1つ又は複数の組み入れられる文献、特許、及び類似の材料が、それだけには限定されない、定義される用語、用語の用法、記載される技術などを含めて、本出願とは異なり又は矛盾する場合は、本出願が支配する。
【0017】
本発明は、化合物1の硫酸水素塩(薬物:HSO 1:1)、及びその様々な形態を提供し、そのすべてが本発明の範囲内に含まれる。塩は様々な形態であってよく、そのすべてが本発明の範囲内に含まれる。これらの形態には、無水形態、及び溶媒和化合物が含まれる。さらなる形態は、溶媒和化合物を溶解することによって生成され得る。特定の一実施形態では、塩は、化合物1の無水の硫酸水素塩である。さらに、本発明は、薬物における使用に特に適するようにする、独特の物理学的及び薬剤学的性質を示す硫酸水素塩の形態の化合物1を提供する。
【0018】
ある実施形態では、化合物1の塩は結晶である。結晶の塩は、製造の観点から、特にその静的及び流動の性質において、その取扱いの性質に関して遊離塩基よりも優れていることが見出されている。工程の不純物を分離することができ、塩を遊離塩基から単離するのは一般的に容易であるので、塩の形成により精製の手段がもたらされ得る。
【0019】
本発明の一実施形態では、化合物1の硫酸水素塩は結晶の塩であり、これは、驚くべきことに化合物1の遊離塩基、及び化合物1のある種の他の塩の形態と比べた場合に、改善された薬剤上の性質を有することが見出されている。特に、この結晶の塩の溶解速度及びそのバイオアベイラビリティーは、以下の実施例に例示するように、遊離塩基及び他の塩に比べて特に高いことが見出されている。遊離塩基を凌ぐ、増強された化合物1の硫酸水素塩のバイオアベイラビリティーは、投与のために用いられる製剤とは独立していることが示されている。遊離塩基及び硫酸水素塩の形態のバイオアベイラビリティーは、本明細書では、同じ分散製剤で投薬した場合に比較したが、バイオアベイラビリティーにおける同様の違いが、簡単な錠剤製剤に対しても観察された。
【0020】
本発明が、結晶の塩である化合物1の塩に関連することを述べる場合、結晶化度の度合は、好都合には約60%を超え、より好都合には約80%を超え、好ましくは約90%を超え、より好ましくは約95%を超える。最も好ましくは、結晶化度の度合は約98%を超える。
【0021】
硫酸水素塩によってもたらされるバイオアベイラビリティーの増強の度合は驚くほどであり、且つ特に有用である。これは、化合物1の遊離塩基は、BCSクラス4の化合物と分類されているからである。BCSクラス4の化合物は、溶解速度及び透過性の両方が低いため、通常低いバイオアベイラビリティーを有し、また、吸収時に透過性が制限されることは、このような塩は、吸収に実質的な影響を及ぼさないことが通常期待されることを意味している(例えば、Dressmanら、(2001年)、Pharm Tech.、7月、68巻を参照されたい)。
【0022】
化合物1の硫酸水素塩の適切な溶媒和化合物は、広範囲の溶媒、特に、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(ACN)、エタノール(EtOH)、及びメタノール(MeOH)などの有機溶媒から形成される。適切な有機溶媒には、C1〜6アルキルエステルなどのエステル、例えば酢酸エチル、及びC1〜6アルキルケトンなどのケトン、例えばメチルエチルケトン(2−ブタノン)が含まれる。
【0023】
塩の調製は、有機溶媒及び水における化合物1のスラリーを、硫酸と反応させることにより行うことができる。1:1の塩を調製するためには、約1当量の硫酸を用いる。したがって、さらなる一態様では、本発明は、化合物1の硫酸水素塩を調製するための方法を提供し、前記方法は、
(i)有機液体及び水における化合物1のスラリーを、約1当量の硫酸と反応させるステップと、
(ii)得られた溶液から塩を回収するステップと、
(iii)その後、要望又は必要があれば、その溶媒和化合物を形成するステップと
を含む。
【0024】
化合物1に対する硫酸の量のモル比は、適切には1.00:1から2:1までの範囲であり、例えば、1.05:1から1.15:1までの範囲である。用いられる硫酸は、適切には濃硫酸の形態である。特定の一実施形態では、化合物1に対する硫酸のモル比は、1.10:1.0である。
【0025】
適切には、ステップ(i)で加える水の量は、確実に塩を形成するのに必要な量に制限される。用いる正確な量は、溶媒の特定の性質、硫酸の濃度などに依存するが、典型的には、水は、存在する液体全体の20%v/vより少ない量で、例えば、13〜17%v/vの量で存在する。
【0026】
特定の一実施形態では、ステップ(i)で用いる有機溶媒は2−ブタノン(メチルエチルケトン)であり、水は液体の体積の約15%であり、化合物1に対して用いられる液体の合計量は、1グラムの化合物1あたり約8mLである。
【0027】
適切には、ステップ(i)における硫酸の添加は制御されたやり方で、例えば10℃未満の温度で行い、次いでステップ(i)の残りを、温度を上昇させて、例えば30〜39℃から、さらなる例としては55〜75℃の間の範囲で、且つさらなる例として約65℃で行う。
【0028】
適切な有機の液体には、化合物1及びその塩がやや溶けにくい有機溶媒が含まれる。本明細書で用いられる「やや溶けにくい」の表現は、溶質1グラムあたりの溶媒が100mL未満である、例えば、溶質1グラムあたりの溶媒が30mLと100mLとの間である溶解度を有することを意味する。これらの溶媒には、アルキルケトン、例えば2−ブタノンなどのC1〜6アルキルケトン;C1〜6アルコールなどのアルコール、例えばメタノール又はエタノール;及びC1〜6アルキルエステルなどのエステル、例えば酢酸エチルが含まれる。一実施形態では、有機溶媒はメチルエチルケトン(2−ブタノン)である。
【0029】
適切には、反応混合液を、ステップ(i)と(ii)との間にろ過して、あらゆる外来性の材料を除去する。残渣を、例えば有機液体と水との混合液で場合により洗浄し、望ましい塩をろ液から結晶化し、ろ液は洗浄溶液と場合により合わせてもよい。
【0030】
ある実施形態では、反応混合液を冷却することによって、場合により、硫酸水素塩が沈澱するようにさらなる有機液体を添加して、ステップ(ii)で硫酸水素塩を回収する。さらなる有機液体は、ステップ(i)で用いたのと同じ有機液体であってもよく、又は、それが化合物1の硫酸水素塩に対する逆溶剤として働くのであれば、異なる有機液体であってもよい。化合物1の硫酸水素塩の結晶で溶液にシード添加することは、沈澱のプロセスにおいて助けとなり得る。
【0031】
一実施形態では、冷却の前に、ろ液を最初に蒸留のステップにかけて水を除去し、確実に許容できる収量の塩を回収する。特定の一実施形態では、溶媒は2−ブタノンであり、ろ液を大気圧で蒸留する。
【0032】
冷却時に、例えばろ過によって、得られたスラリーから塩を回収することができる。次いで、回収した材料を、温度を上げて、例えば40〜60℃で、また別の一例として約50℃で、一定の重量を達成するまで乾燥させてもよい。生成物が、メタノールなどの有機液体との溶媒和化合物である場合は、所望によりこの時点で加熱により脱溶媒和してもよい。
【0033】
硫酸水素塩の物理的性質は研究されたものであり、実施例でさらに記載する。
【0034】
本発明には、同位体で標識した化合物も含まれ、これらは、通常天然に見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって、1個又は複数個の原子が置換されているという事実以外は、本発明で列挙するものと同一である。本発明の化合物中に組み入れることができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、イオウ、フッ素、及び塩素の同位体、例えば、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び35Clが含まれる。前述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含む化合物1の硫酸水素塩及びその多形は、本発明の範囲内である。本発明のある種の同位体標識した化合物、例えば、その中にH及び14Cなどの放射性同位元素が組み込まれた化合物は、薬物及び/又は基質の組織分布アッセイに有用である。トリチウム標識、即ちH、及び炭素−14、即ち14Cの同位体は、その調製及び検出性の容易さの結果として、特に広く用いられている。さらに、より重い同位体、例えば重水素、即ちHでの置換により、より代謝の安定性が大きいことに起因するある種の治療上の有利点、例えば、in vivoの半減期の増大、又は投与量の所要量の低減をもたらすことができ、したがって、いくつかの特定の状況で利用することができる。同位体で標識した本発明の塩は、一般的に、調製の間に容易に入手できる同位体標識した試薬を、非同位体標識した試薬の代わりに用いることによって、又は所望により塩の調製において同位体標識した硫酸を用いて、WO03/077914に開示されている手順を実施することによって調製することができる。
【0035】
組成物は、経口投与に適する形態(例えば、錠剤、トローチ剤、ハードカプセル若しくはソフトカプセル剤、乳剤、分散可能な粉末若しくは顆粒剤、シロップ剤、エリキシル剤、又は油性若しくは即時調製の水性懸濁液剤として)、吸入による投与に適する形態(例えば、微細粉末剤、又は液体のエアロゾル剤として)、インサフレーションによる投与に適する形態(例えば、微細粉末剤として)、非経口投与の注射に適する形態(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、血管内、又は注入の投与のための、滅菌の液剤、懸濁液剤、又は乳剤として)、局所投与に適する形態(例えば、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、油性の溶液剤若しくは懸濁液剤、又は即時調製の水性懸濁液剤として)、或いは直腸投与に適する形態(例えば、坐剤として)であってよい。一実施形態では、化合物1の硫酸水素塩を経口投与する。一般的には、上記の組成物を、従来の賦形剤を用いて、従来のやり方で調製してもよい。
【0036】
投与する有効化合物の量は、治療する対象、障害又は状態の重症度、投与速度、化合物の体内動態、及び処方する医師の判断に依存する。しかし、有効な投与量は、1回又は分割した投与量で、1日あたり体重1kgあたり約0.01mgから約100mgの範囲であり、好ましくは約1から約35mg/kg/日である。70kgのヒトに対しては、これは約0.7から7000mg/日、好ましくは約70から約2500mg/日の量になる。いくつかの場合では、前述の範囲の下限を下回る投与量レベルが非常に適切であることがあるが、他の場合では、1日を通して投与するためにいくつかの小投与量に最初に分割するのであれば、いかなる有害な副作用を引き起こすことなしに、より多い投与量を使用することができる。錠剤又はカプセル剤などの単位投与量形態は、通常、例えば有効成分1〜1000mg、好ましくは有効成分5〜420mgを含む。好ましくは、0.03〜6mg/kgの範囲の1日投与量を用いる。
【0037】
本発明のさらなる一態様によると、療法によってヒト又は動物の身体を治療又は予防する方法で用いるための、本明細書で規定する化合物1の硫酸水素塩を提供する。本発明のさらなる特徴は、薬物として使用するための、本明細書で規定する化合物1の硫酸水素塩である。さらなる一態様では、本発明は、MEKによって媒介される疾患状態、特に、ヒトなどの温血の哺乳動物における、癌などの増殖性障害又は異常な細胞成長を治療するための薬物として使用するための、本明細書で規定する化合物の硫酸水素塩を提供する。したがって、本発明のさらなる一態様は、MEKによって媒介される疾患状態、特に、ヒトなどの温血の哺乳動物における、癌などの増殖性障害又は異常な細胞成長の治療で使用するための薬物の製造における、本明細書で規定する化合物1の硫酸水素塩の使用を提供する。
【0038】
本発明のさらなる特徴によると、MEKによって媒介される疾患状態、特に、ヒトなど、そのような治療を必要とする温血の哺乳動物における、癌などの増殖性障害又は異常な細胞成長を治療するための方法を提供し、前記哺乳動物に、有効量の、本明細書の化合物1硫酸水素塩の硫酸水素塩、又は本明細書で規定する薬剤組成物を投与することを含む。
【0039】
本発明の塩又は組成物を用いて治療することができる増殖性障害の特定の例には、哺乳動物における過剰増殖性障害が含まれる。特定の癌は、脳、肺、扁平上皮細胞、膀胱、胃、すい臓、乳房、頭部、頚部、腎臓(renal)、腎臓(kidney)、卵巣、前立腺、結腸直腸、食道、精巣、婦人科、又は甲状腺の癌である。
【0040】
しかし、本発明の化合物及び組成物を、良性の皮膚の過形成(例えば乾癬)、再狭窄、又は前立腺(例えば、良性の前立腺肥大(BPH))などの、非癌性の過剰増殖性の障害の治療にも用いてもよい。
【0041】
本発明の化合物又は組成物を用いて治療することができるMEK媒介性疾患の他の例には、すい臓若しくは腎臓の疾患(増殖性の糸球体腎炎、及び糖尿病誘発性の腎疾患を含む)、又は哺乳動物における疼痛の治療が含まれる。
【0042】
化合物及び組成物を、哺乳動物における胚細胞の埋め込みの防止に、又は哺乳動物における脈管形成若しくは血管形成に関連する疾患の治療に用いてもよい。このような疾患には、腫瘍の血管形成、関節リウマチなどの慢性の炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、乾癬、湿疹及び強皮症などの皮膚疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性症、血管腫、神経膠腫、メラノーマ、カポジ肉腫、並びに卵巣、乳房、肺、すい臓、前立腺、結腸、及び類表皮の癌が含まれ得る。
【0043】
「異常な細胞成長」及び「過剰増殖性障害」の語は、本出願では交換可能に用いられ、正常の調節メカニズムとは無関係の細胞成長を意味する(例えば、接触阻害の喪失)。これには、例えば、(1)突然変異したチロシンキナーゼの発現、又は受容体チロシンキナーゼの過剰発現によって増殖する腫瘍細胞(腫瘍)、(2)異常なチロシンキナーゼの活性化が生じる、他の増殖性疾患の良性及び悪性の細胞、(3)受容体チロシンキナーゼによって増殖するあらゆる腫瘍、(4)異常なセリン/スレオニンキナーゼの活性化によって増殖するあらゆる腫瘍、並びに(5)異常なセリン/スレオニンキナーゼの活性化が生じる他の増殖性疾患の良性及び悪性の細胞が含まれる。
【0044】
本明細書で用いられる「治療する」の語は、別段の指摘がなければ、そのような語を適用する障害若しくは状態を、又はこのような障害若しくは状態の1つ若しくは複数の症状を、逆行させ、軽減し、進行を阻害し、又は防止することを意味する。本明細書で用いる「治療」の語は、別段の指摘がなければ、すぐ上で「治療する」を定義した治療の行為を意味する。
【0045】
したがって、本発明の化合物又は組成物で治療することができる患者には、例えば、乾癬、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、BPH、肺癌、非小細胞肺癌、骨癌、CMML、すい臓癌、結腸直腸癌、皮膚癌、頭頚部癌、メラノーマ(特に、皮膚又は眼内のメラノーマ)、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、精巣腫瘍、婦人科の腫瘍(例えば、子宮肉腫、ファロピウス管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頚部の癌腫、膣の癌腫、又は外陰部の癌腫)、卵巣癌、多発性骨髄腫、肝細胞腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌(例えば、甲状腺、副甲状腺若しくは副腎の癌)、軟組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性若しくは急性の白血病、特に急性骨髄性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓若しくは尿管の癌(例えば、腎細胞癌、腎盂の癌腫)、又は中枢神経系の新生物(例えば、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹のグリオーマ、又は下垂体腺腫)を有すると診断された患者が含まれる。
【0046】
化合物1の硫酸水素塩を、唯一の治療として適用してもよく、又は、化合物1の硫酸水素塩の他に、1つ又は複数の他の物質及び/若しくは治療を伴ってもよい。このような併用治療は、本発明の個々の化合物の、同時の、逐次の、又は別々の投与によって実現することができる。内科腫瘍学の分野では、各癌患者を治療するために様々な形態の治療の組合せを用いるのは、通常のやり方である。内科腫瘍学では、化合物1の硫酸水素塩の他の、このような結合した治療の他の構成成分は、外科手術でも、放射線治療でも、又は化学療法でもよい。このような化学療法は、以下のような治療物質のカテゴリーを網羅していてよい。
(i)抗血管新生薬、例えば血管内皮増殖因子の作用を阻害するもの(例えば、抗血管内皮細胞増殖因子の抗体であるベバシズマブ[Avastin(商標)]、及びVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬、例えば、4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474、WO01/32651中の実施例2)、4−(4−フルオロ−2−メチルインドル−5−イルオキシ)−6−メトキシ−7−(3−ピロリジン−1−イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171、WO00/47212中の実施例240)、バタラニブ(PTK787、WO98/35985)、及びSU11248(スニチニブ、WO01/60814);化合物、例えば、国際特許出願WO97/22596、WO97/30035、WO97/32856、及びWO98/13354に開示されているものなど、並びに本明細書で規定するものと異なるメカニズムによって作用するもの(例えば、リノミド、インテグリンαvβ3機能の阻害薬、アンジオスタチン、ラゾキシン、サリドマイド、MMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ2)阻害薬、MMP−9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)阻害薬、及びCOX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害薬)、及び
(ii)血管標的薬(例えば、リン酸コンブレタスタチン、及びWO00/40529、WO00/41669、WO01/92224、WO02/04434、及びWO02/08213に開示されている化合物、及び国際特許出願公開番号WO99/02166に記載されている血管損傷薬(例えば、N−アセチルコルヒノール(acetylcolchinol)−O−リン酸))、
(iii)細胞分裂阻害薬、例えば、抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、及びヨードキシフェン)、エストロゲン受容体下方制御薬(例えば、フルベストラント)、プロゲストーゲン(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害薬(例えば、アナストロゾール、レトラゾール、ボラゾール、及びエキセメスタン)、抗プロゲストーゲン、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、及び酢酸シプロテロン)、LHRH作用薬並びに拮抗薬(例えば、酢酸ゴセレリン、リュープロレリン、及びブセレリン)、5αレダクターゼの阻害薬(例えば、フィナステリド)、
(iv)抗侵入薬(例えば、マリマスタットなどのメタロプロテイナーゼ阻害薬、及びウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体機能の阻害薬、又はヘパラナーゼに対する抗体の阻害薬)、
(v)増殖因子機能の阻害薬(このような増殖因子には、例えば、血小板由来増殖因子、及び肝細胞増殖因子が含まれる)、このような阻害薬には、増殖因子の抗体、増殖因子の受容体の抗体(例えば、抗erbb2抗体であるトラスツズマブ[Herceptin(商標)]、抗EGFR抗体であるパニツムマブ、抗erbB1抗体であるセツキシマブ[C225]、及びSternら、Critical reviews in oncology/haematology、2005年、54巻、11〜29頁によって公開されているあらゆる増殖因子又は増殖因子の受容体の抗体)が含まれ;このような阻害薬には、上皮成長因子ファミリーの阻害薬(例えば、N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)−キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ、AZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI−774)、及び6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(CI1033)などのEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害薬)、並びにラパチニブなどのerbB2チロシンキナーゼ阻害薬、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害薬、イマチニブなどの血小板由来増殖因子ファミリーの阻害薬、セリン/スレオニンキナーゼの阻害薬(例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬などのRas/Rafシグナル伝達阻害薬、例えば、ソラフェニブ(BAY43−9006))、MEK及び/又はAKTキナーゼによる細胞シグナル伝達の阻害薬、c−kit阻害薬、ablキナーゼ阻害薬、IGF受容体(インスリン様増殖因子)キナーゼ阻害薬、オーロラキナーゼ阻害薬(例えば、AZD1152、PH739358、VX−680、MLN8054、R763、MP235、MP529、VX−528、及びAX39459)、並びに、CDK2及び/又はCDK4阻害薬などのサイクリン依存性キナーゼ阻害因子などのチロシンキナーゼ阻害薬も含まれ、
(vi)内科腫瘍学で用いられる、抗増殖性/抗悪性腫瘍薬、及びそれらの組合せ、例えば、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキセートなどの葉酸代謝拮抗薬、5−フルオロウラシルなどのフルオロピリミジン、テガフール、プリン及びアデノシン類似物質、並びにシトシンアラビノシド、ヒドロキシウレア、又は、例えば、特に、欧州特許出願第239362号に特に開示されている代謝拮抗物質の1つ、例えば、N−(5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ−2−テノイル)−L−グルタミン酸;抗腫瘍の抗生物質(例えば、アドリアマイシンなどのアントラサイクリン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、及びイダルビシン、マイトマイシン−C、ダクチノマイシン、及びミトラマイシン)、白金誘導体(例えば、シスプラチン、及びカルボプラチン)、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、シクロホスファミド、イフォスファミド、ニトロソウレア、及びチオテパ)、有糸分裂阻害薬(例えば、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、並びにタキソイド、例えば、タキソール及びタキソテール)、トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、エトポシド及びテニポシドなどのエピポドフィロトキシン、アムサクリン、トポテカン、カンプトテシン、並びにイリノテカン)、酵素(例えば、アスパラギナーゼ)、並びにチミジル酸合成酵素阻害薬(例えば、ラルチレキセド(raltitrexed));
並びに、
(vii)生物学的応答調節物質(例えば、インターフェロン)、
(viii)抗体(例えば、エドレコロマブ)、
(ix)アンチセンス療法、例えば、上記に列挙した標的に向けられているもの、例えば、ISIS2503、抗rasアンチセンス、
(x)遺伝子治療の取組み(例えば、異常なp53、又は異常なBRCA1若しくはBRCA2などの異常な遺伝子を置き換えるための取組み、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼ、又は細菌のニトロ還元酵素を用いたものなどのGDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)の取組み、多剤耐性遺伝子療法など、化学療法又は放射線療法に対する患者の耐性を増大するための取組みを含む)、及び
(xi)免疫療法の取組み(例えば、患者の腫瘍細胞の免疫原性を増大するためのex vivo及びin vivoの取組み、例えば、インターロイキン2、インターロイキン4、又は顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインでのトランスフェクションを含む;T細胞のアネルギーを低減するための取組み;サイトカインでトランスフェクトした樹状細胞などのトランスフェクトした免疫細胞を用いる取組み;サイトカインでトランスフェクトした腫瘍細胞系を用いた取組み;並びに抗イディオタイプの抗体を用いた取組み)が含まれる。
【0047】
例えば、化合物1の硫酸水素塩を、有効量の血管新生阻害薬、シグナル伝達阻害薬、及び抗増殖剤から選択される、1つ又は複数の物質と組み合わせて用いてもよい。
【0048】
特定の一実施形態では、MMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ2)阻害薬、MMP−9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)阻害薬、及びCOX−II(シクロオキシゲナーゼ)阻害薬などの血管新生阻害薬を、本発明の化合物1の硫酸水素塩、及び本明細書に記載する薬剤組成物と組み合わせて用いることができる。有用なCOX−II阻害薬の例には、CELEBREX(商標)(アレコキシブ)、バルデコキシブ、及びロフェコキシブが含まれる。有用なマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害薬の例は、WO96/33172、WO96/27583、WO98/07697、WO98/03516、WO98/34918、WO98/34915、WO98/33768、WO98/30566、WO90/05719、WO99/52910、WO99/52889、WO99/29667、米国特許第5863949号、及び米国特許第5861510号に記載されており、これらはすべてその全文が参照により本明細書に組み入れられる。適切なMMP−2及びMMP−9の阻害薬は、MMP−1を阻害する活性が殆ど、又はまったくないものである。特に、他のマトリックスメタロプロテイナーゼ(即ち、MMP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12、及びMMP−13)に比べて選択的にMMP−2及び/又はMMP−9を阻害するものが用いられる。本発明で有用なMMP阻害薬の特定の例は、AG−3340、RO32−3555、及びRS13−0830である。
【0049】
したがって、本発明のさらなる一態様は、化合物1の硫酸水素塩を、本明細書上述の(i)〜(xi)の下に列挙した任意の1つの抗腫瘍薬と組み合わせて提供する。本発明のさらなる一態様は、化合物1の硫酸水素塩を、本明細書上述の(i)〜(xi)の下に列挙した1つ又は複数の抗腫瘍薬と組み合わせて提供する。本発明のさらなる一態様は、化合物1の硫酸水素塩を、本明細書上述の(i)〜(xi)の下に列挙した抗腫瘍薬のクラスの任意の1つと組み合わせて提供する。
【0050】
本明細書では、「組合せ」の語を用いる場合、これは同時の、別々の、又は逐次の投与を意味するものと理解されたい。本発明の一態様では、「組合せ」は同時の投与を意味する。本発明の別の一態様では、「組合せ」は別々の投与を意味する。本発明のさらなる一態様では、「組合せ」は逐次の投与を意味する。投与が逐次又は別々である場合、第2の組成物を投与する上での遅延は、組合せの有益な効果を失わないようでなければならない。
【0051】
本発明のさらなる一態様によると、本明細書上述の(i)〜(xi)の下に列挙したものから選択された抗腫瘍薬と組み合わせた、化合物1の硫酸水素塩を含むキットが提供される。
【0052】
本発明のさらなる一態様によると、
a)第1の単位投与量形態における化合物1の硫酸水素塩、
b)第2の単位投与量形態における、本明細書で上記(i)〜(xi)の下に列挙した1つから選択される抗腫瘍薬、及び
c)前記第1及び第2の投与量形態を含むための容器手段
を含むキットが提供される。
【0053】
化合物1は、以下のアッセイにおいて活性を有することが見出されている。N末端を6−Hisタグ修飾した、恒常的に活性なMEK1(2−293)を大腸菌(E.coli)で発現させ、タンパク質を従来の方法によって精製する(Ahnら、Science、1994年、265巻、966〜970頁)。MEK1の活性を、γ−33P−ATPからのγ−33P−リン酸の、大腸菌で発現されMEK1の存在下で従来の方法により精製される、N末端をHisタグ付けしたERK2上への取り込みを測定することによって評価する。アッセイは、96ウェルのポリプロピレンプレートで行う。インキュベーション混合液(100μL)は、25mMのHepes、pH7.4、10mMのMgCl、5mMのβ−グリセロリン酸、100μMのオルトバナジン酸ナトリウム、5mMのDTT、5nMのMEK1、及び1μMのERK2を含む。阻害薬をDMSOに懸濁し、コントロールを含めて反応すべてを、最終濃度1%のDMSOで行う。10μMのATP(0.5μCiγ−33P−ATP/ウェルで)の添加により反応を開始し、周囲の温度で45分間インキュベートする。等体積の25%のTCAを加えて反応を停止し、タンパク質を沈澱させる。沈澱したタンパク質を、ガラス繊維Bフィルタープレート上に捕捉し、過剰の標識したATPをTomtec MACH IIIハーベスターを用いて洗い流す。プレートを空気乾燥させた後、30μL/ウェルのPackard Microscint20を加え、Packard TopCountを用いてプレートを計数する。このアッセイでは、化合物1は50マイクロモル未満のIC50を示した。
【実施例】
【0054】
本発明を説明するために、以下の実施例を含める。しかし、これらの実施例は本発明を制限するものではなく、本発明を実践する方法を示唆しようとするにすぎないことを理解されたい。収率は実践した実施例に対して与えられ、さらなる発展により向上する可能性があり得る。H NMRスペクトル(400MHz)はTMS(0.00ppm)を基準にしており、13C NMRスペクトル(100MHz)はNMR溶媒(39.5ppm)を基準にしており、19F NMRスペクトルはトリクロロフルオロメタン(0.00ppm)を基準にしている。FTIRスペクトルは、粉末KBr中2%w/wからのこの材料の分散を含む様々な方法で、DRIFTSサンプリング技術を用いて、4000〜400cm−1の中赤外のスペクトルの領域にわたって、Nicolet Magna860ESP FTIR分光計で得た。
【0055】
(実施例1)
化合物1の硫酸水素塩の調製
【化2】


0〜5℃の2−ブタノン(680mL)及び水(115mL)中の6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド(100g、0.206mol)(本明細書に参照により組み入れられ、以下に記載するWO03/077914の実施例に記載されている通りに入手可能)の懸濁液を攪拌したものに、10℃以下の温度を維持しながら、硫酸(12.3mL、0.226mol)を加え、次いで水(5mL)を加えた。攪拌した混合液を65℃に加熱し、30分間保持し、次いでろ過してあらゆる外来の材料を除去した。ろ紙を、2−ブタノン(85mL)及び水(15mL)の混合液で洗浄した。ろ液を合わせ、72℃に加熱し、その後、温度を60〜72℃の間に維持しながら2−ブタノン(500mL)を加えた。得られた混合液を、蒸留液500mLを回収するまで大気圧で蒸留した(蒸留温度は約73〜74℃)。
【0056】
70℃を上回る混合液の温度を維持しながら、2−ブタノンの第2のアリコート(500mL)を加えた。得られた混合液を、蒸留液250mLを回収するまで再び蒸留した。約1時間かけて、混合液を0〜5℃に冷却した。得られたスラリーをろ過し、2−ブタノン(240mL)で洗浄し、一定の重量を達成するまで50℃の減圧下で乾燥させて、オフホワイトの結晶固体の、6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩(103.5g、0.186mol、収率90%)を得た。
【化3】

【0057】
赤外線分析の結果を、図2に示す。スペクトルの割当てを表1に要約する。
【0058】
【表1】

【0059】
(実施例1A)
化合物1の硫酸水素塩の調製
6−(4−ブロモ−2−クロロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(10g、0.0214mol)(本明細書に参照により組み入れられ、以下に記載するWO03/077914の実施例10に記載されている通りに入手可能)の、テトラヒドロフラン(THF)(62ml)及び水(8ml)の懸濁液を攪拌したものに、温度を10℃又はそれより低く維持しながら、硫酸(1.52ml、27.86mmol)を加えた。攪拌した混合液を65℃に加熱し、30分間保持した後、ろ過してあらゆる外来性の材料を除去した。次いで、60℃を上回る温度を維持して、THF(150ml)を混合液に加えた。次いで、混合液を、約2時間かけて0〜5℃に冷却した。得られたスラリーをろ過し、THF(30ml)で洗浄し、一定の重量を達成するまで50℃の減圧下で乾燥させて、オフホワイトの結晶固体の6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド硫酸水素塩(9.81g、0.17mol、収率82%)を得た。物質は、上記実施例1で生成したものと同じであった。
【0060】
(実施例1B)
6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミドの調製
ステップA:2,3,4−トリフルオロ−5−ニトロ安息香酸
3リットルの三頚丸底フラスコに、HSO125mlを充填した。発煙硝酸を加え(8.4ml、199mmol)、混合液を穏やかに攪拌した。2,3,4−トリフルオロ安息香酸(25g、142mmol)を、90分かけて5g部分で加えた。暗褐色がかった黄色の溶液を60分間攪拌し、その時間に反応は完了した。反応混合液を、氷:水混合液1リットル中に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した(3×600ml)。抽出液を合わせて乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して黄色の固体を得た。固体をヘキサンに懸濁し、30分間攪拌し、その後それをろ過して、オフイエロー(off−yellow)固体の、混じりけのない所望の生成物29g(92%)を得た:MS APCI(−)m/z220(M−1)を検出した。
【0061】
ステップB:4−アミノ−2,3−ジフルオロ−5−ニトロ−安息香酸
水酸化アンモニウム溶液(水中約30%)(35ml、271mmol)を、0℃の2,3,4−トリフルオロ−5−ニトロ−安息香酸(15g、67.8mmol)水溶液30mlに、攪拌しながら加えた。水酸化アンモニウムの添加が完了したら、反応混合液を、攪拌しながら室温に温めた。2.5時間後、反応混合液を0℃に冷却し、反応混合液のpHが0になるまで濃HClを注意深く加えた。反応混合液を水(30ml)で希釈し、ジエチルエーテルで抽出した(3×50ml)。有機抽出物を合わせて乾燥し(MgSO)、減圧下で濃縮して純粋な所望の生成物14g(95%)を得た:MS APCI(−)m/z217(M−1)を検出した。
【0062】
ステップC:4−アミノ−2,3−ジフルオロ−5−ニトロ安息香酸メチルエステル
テトラメチルシラン(TMS)ジアゾメタンの2Mヘキサン溶液(6.88ml、13.75mmol)を、0℃の4−アミノ−2,3−ジフルオロ−5−ニトロ安息香酸(2.00g、9.17mmol)のテトラヒドロフラン(THF):MeOH 4:1懸濁液25mlに、窒素雰囲気下で加えた。添加が完了したら、反応混合液を室温に温めた。0.5時間後、酢酸を注意深く加えることによって、過剰なTMSジアゾメタンを破壊した。次いで、反応物を減圧下で濃縮し、真空中で乾燥させ、純粋な所望の生成物1.95g(92%)を得た:MS APCI(−)m/z231(M−1)を検出した。
【0063】
ステップD:4−アミノ−3−フルオロ−5−ニトロ−2−フェニルアミノ−安息香酸メチルエステル
4−アミノ−2,3−ジフルオロ−5−ニトロ安息香酸メチルエステル(23.48g、101.1mmol)をキシレン(125ml)に懸濁し、アニリン(92ml、1011mmol)を加えた。反応混合液をN下、125℃で16時間攪拌した。反応混合液を室温に冷却し、溶液から固体を沈澱させた。ろ過によって固体を回収し、キシレン、次いでジエチルエーテルで洗浄した。黄色固体の純粋な所望の生成物22.22g(72.78mmol)を回収した。ろ液を減圧下で濃縮し、塩化メチレンに再溶解し、シリカゲルのプラグを通して塩化メチレンで溶出することにより流した。所望の分画を減圧下で濃縮して褐色固体を得、これをジエチルエーテルとともに粉砕して、黄色固体の純粋な所望の生成物5.47g(17.91mmol)を得た。生成物を合わせた収量は27.69g(90%)であった。MS APCI(−)m/z304(M−1)を検出した。
【0064】
ステップE:7−フルオロ−6−フェニルアミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチルエステル
4−アミノ−3−フルオロ−5−ニトロ−2−フェニルアミノ−安息香酸メチルエステル(16.70g、54.71mmol)、ギ酸(250ml、6.63mol)、及び20%Pd(OH)/C(9.00g、16.91mmol)のエタノール溶液(250mL)を、N下、40℃で2時間攪拌し、次いで、95℃で16時間攪拌した。反応混合液を室温に冷却し、酢酸エチルですすぎながら、セライトを通してろ過した。ろ液を減圧下で濃縮して、黄色固体を得た。固体をジエチルエーテルとともに粉砕して黄褐色固体の所望の生成物13.47g(86%)を得た。MS APCI(+)m/z286(M+1)を検出した。MS APCI(−)M/Z284(M−1)を検出した。
【0065】
ステップF:6−(4−ブロモ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチルエステル
7−フルオロ−6−フェニルアミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチルエステル(4.99g、17.51mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(275ml)に溶解した。N−ブロモスクシンイミド(3.15g、17.70mmol)を固体として加え、反応混合液を、N下、室温で攪拌した。30分後、反応混合液を、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えることによりクエンチした。次いで、反応混合液を分液漏斗中に注ぎ、水及び酢酸エチルで希釈し、層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。有機抽出物を合わせて、水で3回、塩水で1回洗浄し、次いで乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮して、収量6.38g(100%)の黄褐色固体の純粋な所望の生成物を得た。MS ESI(+)m/z364、366(M+Brパターン)を検出した。
【0066】
ステップG:6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチルエステル
6−(4−ブロモ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチルエステル(6.38g、17.51mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(275mL)に溶解した。N−クロロスクシンイミド(2.36g、17.70mmol)を固体として加え、反応混合液を室温でN下、反応が完了するまで(5〜6日)攪拌した。反応混合液を、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えることによりクエンチして懸濁液を得た。得られた固体をろ過によって回収し、水及びジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させて収量6.07g(87%)のベージュ色固体の純粋な所望の生成物を得た。MS ESI(+)m/z398、400(M+Brパターン)を検出した。
【0067】
ステップH:6−(4−ブロモ−2−クロロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチルエステル、及び6−(4−ブロモ−2−クロロフェニルアミノ)−7−フルオロ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチルエステル
6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチルエステル(150mg、0.38mmol)、ヨードメタン(28μL、0.45mmol)及び炭酸カリウム(78mg、0.56mmol)のジメチルホルムアミド溶液(1.5mL)を、75℃で1時間攪拌した。反応混合液を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸カリウム水溶液(2×)、塩水で洗浄し、乾燥させた(NaSO)。フラッシュカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/酢酸エチル 20:1)により、より可動性の白色固体の6−(4−ブロモ−2−クロロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチルエステル56mg(36%)を得た。19F NMR(376MHz、CDOD)−133.5(s)。MS APCI(+)m/z412、414(M+、Brパターン)を検出した。白色固体の6−4(−ブロモ−2−クロロフェニルアミノ)−7−フルオロ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチルエステル54mg(35%)も単離した。19F NMR(376MHz、CDOD)−139.9(s)。MS APCI(+)m/z412、414(M+、Brパターン)を検出した。
【0068】
ステップI:6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸
6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチルエステル(56mg、0.14mmol)を、THF/水 2:1(3mL)中に溶解し、NaOH(0.55ml、1.0M水溶液、0.55mmol)を加えた。2時間攪拌後、ロータリーエバポレーションにより反応物を最初の体積の4分の1に減少させ、残渣を水で50mlに希釈した。1.0MのHCl水溶液を加えることによって、水溶液をpH2に酸性化し、テトラヒドロフラン/酢酸エチル 1:1で抽出し(3×)、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮して、オフホワイト固体の純粋なカルボン酸43mg(79%)を得た。MS ESI(+)m/z397、398(M+、Brパターン)を検出した。
【0069】
ステップJ:6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ビニルオキシ−エトキシ)−アミド
6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2.00g、5.0mmol)、O−(2−ビニルオキシ−エチル)−ヒドロキシルアミン(0.776g、7.5mmol)、HOBt(0.88g、6.5mmol)、トリエチルアミン(1.61mL、2.3mmol)及びEDCI(1.3g、6.5mmol)をジメチルホルムアミド(52mL)に溶解し、室温で48時間攪拌した。反応混合液を酢酸エチルで希釈し、水(3×)、飽和炭酸カリウム(2×)、飽和塩化アンモニウム(2×)、食塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下でオフホワイト固体に濃縮した。固体をジエチルエーテルとともに粉砕し、オフホワイト固体の所望の生成物2.18g(90%)を得た。MS ESI(=)m/z483、485(M+Brパターン)を検出した。
【0070】
ステップK:6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド
6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ビニルオキシエトキシ)−アミド(2.18g、4.50mmol)のエタノール懸濁液(50mL)に、塩酸(14mL、1.0M水溶液、14mmol)を加え、反応混合液を24時間攪拌した。反応混合液をロータリーエバポレーションにより濃縮して乾燥させ、固体を酢酸エチル/テトラヒドロフラン 3:1と飽和炭酸カリウムとの間で分配した。水相を酢酸エチル/テトラヒドロフラン 3:1で抽出し(3×)、有機層を合わせて乾燥させ(NaSO)、濃縮して、オフホワイト固体の6−(4−ブロモ−2−クロロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド2.11g(100%)を得た。MS ESI(+)m/z457、459(M+、Brパターン)を検出した。
【化4】

【0071】
(実施例2)
硫酸水素塩の物理的性質の検討
実施例1の生成物を以下の試験にかけて、その物理的性質を決定した。
【0072】
粉末X線回折(PXRD)
サンプルをすべて、Bruker D5000回折計で測定した。結晶塩のサンプルを、Siemensシリコン単結晶(SSC)ウェハマウント上に載置し、顕微鏡用スライドの助けでサンプルを薄層に伸ばすことによって、X線粉末回折のスペクトルを決定した。サンプルを、1分間あたり30回転で回転させ(計数安定性を向上するため)、波長1.5406オングストロームで、40kV及び40mAで操作される銅製ロングファインフォーカス管によって生成されるX線を照射した。平行X線源は、V20に設定された自動可変の発散スリットを通過し、反射した放射線は2mmの散乱線除去スリット及び0.2mmの検出スリットを通して向けられた。サンプルを、シータ−シータモードで2度から40度の2シータの範囲にわたって、0.02度の2シータの増大につき1秒間曝露した(連続スキャンモード)。操作時間は31分41秒であった。機器には、検出器としてシンチレーションカウンターが装備されていた。制御及びデータの取り込みは、Dell Optiplex686NT4.0WorkstationによりDiffract+ソフトウェアで操作した。
【0073】
データを、1増大につき4sで0.02°の2シータの増大で、2シータ2〜40°の範囲にわたって収集し、表2に分類し、相対強度は固定スリットで測定した回折図形に由来する。
【0074】
【表2】

【0075】
スキャンの結果を図1に示し、図中、上の灰色線は、化合物1の硫酸水素塩のXRPDを表し、下の黒色線は遊離の形態を表す。最も強力なピークは、最も強力に始まり、表3に示してある。24.59°のピークは特に強い。
【0076】
【表3】

【0077】
X線粉末回折の分野の技術者であれば、ピークの相対強度はサンプルの分析に影響を及ぼすことがある、例えば、サイズ30ミクロンを超える粒子、及び非ユニタリーアスペクト比の影響を受けることがあることを理解するであろう。当業者であれば、反射の位置は、回折計においてサンプルが位置する正確な高さ、及び回折計のゼロキャリブレーションの影響を受け得ることも、理解するであろう。サンプル表面の平面性にも、少々効果があることがある。したがって、提示される回折パターンのデータは、絶対値として理解してはならない(さらなる情報には、Jenkins,R.及びSnyder,R.L.、「X線粉末回折序論(Introduction to X−Ray Powder Diffractometry)」、John Wiley & Sons、1996年を参照されたい)。
【0078】
(実施例3)
in vivoの検討:分散製剤における塩対遊離塩基の試験
化合物1を遊離形態又は硫酸水素塩として含む薬学的に許容できる分散剤中の様々な分散製剤7.5mLで、150mgの遊離塩基当量の経口投与量を投与後の、絶食イヌにおける化合物1の血漿レベルを測定する試験をイヌで行った。
【0079】
投与日3日間各々に、体重12〜17kgの約2歳から6歳の絶食したビーグル犬に、150mgの単一投与量を経口投与した。各投与日は1週間離れていた。
【0080】
製剤はすべて、10mLのディスポーザブルシリンジにより、好適な分散溶液7.5mLを、150mgの遊離塩基当量の好適な薬物形態を含むバイアルに加え、キャップを閉め、30秒間ボルテックス混和して分散液を形成することにより、投与直前に即時調製した。
【0081】
ディスポーザブルシリンジを用いて分散液をバイアルから取り、胃内に配置した胃管栄養法チューブによって動物に投薬した。20mLディスポーザブルシリンジによって、別の15mLのアリコートの水を、2回のすすぎの各々に2回加える(すすぎの全体積=30mL)ことにより、バイアルを2回すすぎ、キャップを閉め、5秒間ボルテックス混和し、ディスポーザブルシリンジを用いてバイアルから洗浄溶液を取り、胃管栄養法チューブによって動物に投薬した。
【0082】
イヌに、約400gのSpecial Diet Services Laboratory Diet Aを毎日与え、水は自由摂取させた。投薬直前、及び0.5、1、2、3、4、5、6、8、12、18、24、36、及び48時間に、頚動脈から全血(2mL)をリチウムヘパリンチューブに採血した。血液を3000rpmで15分間遠心し、血漿を単純な血液用チューブ中に取り、血漿を分析まで−20℃で貯蔵した。
【0083】
血漿(50mcL)を、化合物1の濃度に対して分析した。2匹のイヌが投薬直後に嘔吐したので、これらは分析から除外した。経口投与後に見られた化合物1に対する平均血漿濃度プロファイルを図3に示し、図中▲によって表される線は化合物1の硫酸水素塩を含む製剤を示し、×によって表される線は同じ製剤における化合物1の遊離塩基の結果を示している。
【0084】
製剤の変更は、曝露に対して比較的少ない影響を有すると思われる(結果は示さず)。しかし、化合物1を硫酸水素塩として投薬した場合、実質的な約4から8倍の曝露の増大がもたらされた。
【0085】
以上の記載は、本発明の原理のみを例示するものと考えられる。さらに、当業者であれば多くの修正形態及び変更形態が容易に明らかであるので、本発明を、上記に記載したように示す正確な構成及びプロセスに限定するのは望ましくない。したがって、すべての適切な修正形態及び同等物が、以下の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内にあると訴えられ得る。
【0086】
「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」、及び「含む(includes)」の語を、本明細書及び以下の特許請求の範囲で用いる場合、指定される特徴、整数、構成成分、又はステップの存在を特定することが企図されるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、構成成分、ステップ、又はそれらのグループの存在又は添加を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】化合物1の硫酸水素塩のXRPDを示す図である。
【図2】DRIFTSサンプリング技術を用いて得た化合物1の硫酸水素塩の赤外線スペクトルを示す図である。
【図3】150mg遊離塩基当量の経口用の分散剤の投与量の化合物1(×)及び硫酸水素塩(▲)を絶食したイヌに投与した後の、化合物1の血漿濃度レベルの結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物1の硫酸水素塩。
【請求項2】
無水形態の、請求項1に記載の化合物1の硫酸水素塩。
【請求項3】
溶媒和化合物の形態の、請求項1に記載の化合物1の硫酸水素塩。
【請求項4】
結晶である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の、化合物1の硫酸水素塩。
【請求項5】
前記化合物1の硫酸水素塩が、約24.59°に少なくとも1つの特異的なピークがあるX線粉末回折のパターンを有する、請求項4に記載の化合物1の硫酸水素塩。
【請求項6】
前記化合物1の硫酸水素塩が、24.59°、20.97°、23.99°、27.65°、12.24°、23.49°、24.30°、17.02°、25.91°及び22.50°に等しい約2シータに特異的なピークのあるX線粉末回折のパターンを有する、請求項5に記載の化合物1の硫酸水素塩。
【請求項7】
図1に示すX線粉末回折パターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の化合物1の硫酸水素塩。
【請求項8】
非晶質の形態の、請求項1又は2に記載の化合物1の硫酸水素塩。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物1の硫酸水素塩を調製するための方法であって、
(i)有機液体中の化合物1のスラリーを、少なくとも化学量論的な量の硫酸及び水と反応させるステップと、
(ii)得られた溶液から塩を回収するステップと、
(iii)その後、要望又は必要があれば、その溶媒和化合物を形成するステップと
を含む上記方法。
【請求項10】
ステップ(i)で加える水の量が、確実に塩を形成するのに必要な量に制限される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(i)を40〜80℃の温度で行う、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有機液体がC1〜6アルキルケトンである、請求項9から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
硫酸水素塩が沈澱するように、場合によりさらなる有機液体を添加して反応混合物を冷却することによって、硫酸水素塩をステップ(ii)で回収する、請求項9から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
MEKによって媒介される疾患状態の治療のための薬物として用いるための、請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物1の硫酸水素塩。
【請求項15】
MEKによって媒介される疾患状態の治療において使用するための薬物の製造における、請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物1の硫酸水素塩の使用。
【請求項16】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物1の硫酸水素塩の有効量を哺乳動物に投与することを含む、そのような治療を必要とする温血哺乳動物における、MEKによって媒介される疾患状態を治療するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−521487(P2009−521487A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547679(P2008−547679)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/061895
【国際公開番号】WO2007/076245
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(504344509)アレイ バイオファーマ、インコーポレイテッド (87)
【出願人】(507207775)アストラゼネカ エービー (11)
【Fターム(参考)】