説明

新規な5,7−二置換された[1,3]チアゾロ[4,5−D]ピリミジン−2(3H)−アミン誘導体及び治療におけるその使用

式(I)
【化1】


(式中、R1、R2、R3、R4及びnは、明細書において定義されたとおりである)の新規な5−置換された7−アミノ[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン誘導体、及びその医薬上許容しうる塩が、それらの製造方法、それらを含む医薬組成物並びに治療におけるそれらの使用と共に記載されている。式(I)の化合物は、CX3CR1受容体アンタゴニストであり、そのため神経変性障害、脱髄性疾患、心血管性及び脳血管性アテローム性動脈硬化症障害、末梢血管疾患、関節リウマチ、肺疾患、例えばCOPD、喘息又は疼痛の治療又は予防に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な5−置換された7−アミノ[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン誘導体を、その製造方法、それを含む医薬組成物及び治療におけるその使用と共に開示する。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは、喘息、アテローム性動脈硬化症及びアレルギー疾患並びに自己免疫性病理、例えば関節リウマチ及び多発性硬化症を含む種々の疾患及び障害の免疫及び炎症反応において重要な役割を果たしている。これらの分泌された小さな分子は、保存システインモチーフを特徴とする8〜14kDaのタンパク質の成長スーパーファミリーである。今のところ、ケモカインスーパーファミリーは、特徴的な構造モチーフC−X−C、C−C及びC−X3−C及びXCファミリーを示す4つのグループを含む。C−X−C及びC−Cファミリーは、配列類似性を有し、そしてシステイン残基のNH近位のペア間で一つのアミノ酸が挿入されていることに基づいて互いに区別される。C−X3−Cファミリーは、システイン残基のNH近位のペア間で3つのアミノ酸が挿入されていることに基づいて他の2つのファミリーと区別される。対照的に、XCファミリーのメンバーは、最初の2つのシステイン残基の1つが欠如している。
【0003】
C−X−Cケモカインには、好中球のいくつかの強力な化学誘引物質及び活性化剤、例えばインターロイキン−8(IL−8)及び好中球活性化ペプチド2(NAP−2)が含まれる。
【0004】
C−Cケモカインには、単球、リンパ球及び好中球の強力な化学誘引物質が含まれる。例としてヒト単球化学走性タンパク質1−3(MCP−1、MCP−2及びMCP−3)、RANTES (Regulated on Activation, Normal T−cell−Expressed and Secreted)、エオタキシン及びマクロファージ炎症タンパク1α及び1β(MIP−1α及びMIP−1β)が含まれる。
【0005】
C−X3−Cケモカイン(別名フラクタルカイン)は、強力な化学誘引物質、そして中枢神経系(CNS)中の小膠細胞だけでなく単球、T細胞、NK細胞及びマスト細胞の活性化剤である。
【0006】
研究によれば、ケモカインの作用は、Gタンパク質共役受容体のサブファミリーが介在することがわかっており、これらの中には、明記された受容体CCR1、CCR2、CCR2A、CCR2B、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10及びCCR11(C−Cファミリーについて);CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4及びCXCR5(C−X−Cファミリーについて)及びC−X3−CファミリーについてCX3CR1がある。これらの受容体を調節する薬剤は、障害及び疾患、例えば上記のものの治療に有用であるため、これらの受容体は、薬物開発のための良好なターゲットを表している。
【0007】
特許文献1は、特にCXCR2受容体のアンタゴニストとしてC−X−C及びC−Cケモカインファミリーに結合した受容体のアンタゴニストとして有用である、ある種の2−置換された4−アミノ−チアゾロピリミジン誘導体を記載している。
【0008】
本発明は、特許文献1に記載された化合物に関連するが、具体的にはその中に例示されてない構造タイプの化合物の一群に関する。特許文献1に記載された実施例と比較したとき、本発明の化合物は、CX3CR1受容体のアンタゴニストとして驚くほど有用な性質を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 01/58907
【発明の概要】
【0010】
本発明は、遊離塩基として式(I)
【化1】

(式中:
1は、CH3又はCF3を表し;
2は、ハロ、CN又はC1-6アルキルを表し;
3は、H又はCH3を表し;
4は、H又はCH3を表し;
nは、0、1又は2を表す)
の化合物又はその医薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは塩の溶媒和物を提供する。
【0011】
本発明の一実施態様において、nが1を表す、式(I)の化合物が提供される。
【0012】
本発明の別の実施態様において、R1がCH3を表す、式(I)の化合物が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の実施態様において、R2がハロ又はCNを表す、式(I)の化合物が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の実施態様において、R2がF又はClを表す、式(I)の化合物が提供される。
【0015】
本発明のさらに別の実施態様において、R2がCNを表す、式(I)の化合物が提供される。
【0016】
本発明のさらに別の実施態様において、nが1を表し;R1がCH3を表し;そしてR2がF、Cl又はCNを表す、式(I)の化合物が提供される。
【0017】
本発明のさらに別の実施態様において、ピリジンがその5−位に結合しており、そして2−位にClを有する式(I)の化合物が提供される。
【0018】
本発明のさらに別の実施態様において、ピリジンがその2−位に結合しており、そして4−位にCNを有する、式(I)の化合物が提供される。
【0019】
本発明のさらに別の実施態様において、ピリジンがその2−位に結合しており、そして5−位にFを有する、式(I)の化合物が提供される。
【0020】
本発明のさらに別の実施態様において、ピリジンがその2−位に結合しており、そして5−位にClを有する、式(I)の化合物が提供される。
【0021】
本発明のさらに別の実施態様において、ピリジンがその2−位に結合しており、そして3−位にFを有する、式(I)の化合物が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の実施態様において、ピリジンがその4−位に結合しており、そして3−位にClを有する、式(I)の化合物が提供される。
【0023】
本発明のさらに別の実施態様において、R3がHを表す、式(I)の化合物が提供される。
【0024】
本発明のさらに別の実施態様において、R4がCH3を表す、式(I)の化合物が提供される。
【0025】
本発明のさらに別の実施態様において、遊離塩基として
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(5−クロロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[1−(3−クロロピリジン−4−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(3−クロロピリジン−4−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1R)−1−(3−クロロピリジン−4−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(3−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(6−クロロピリジン−3−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)(メチル)アミノ]ペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(6−クロロピリジン−3−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]ペンタン−1−オール;及び
2−{(1S)−1−[(2−アミノ−7−{[(1R)−1−(ヒドロキシメチル)−3−メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−イル)チオ]エチル}イソニコチノニトリル;
から選ばれる式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは塩の溶媒和物が提供される。
【0026】
式(I)の化合物は、立体異性及び/又は互変異性体の形態で存在してもよい。全ての鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、互変異性体及びそれらの混合物が本発明の範囲内に含まれることは理解すべきである。
【0027】
WO 01/58907に記載された化合物と比較するとき、本発明の化合物は、チアゾロピリミジン環系の5−位に分枝チオアルキルピリジルが存在することを特徴とする。すなわち、本発明の化合物は、水素ではないR1基を組み込んでいる。
【0028】
さらに、本発明によれば、本発明者らは、
a)式(II):
【化2】

(式中、R3及びR4は、式(I)に定義された通りである)の化合物を、
式(III):
【化3】

(式中、R1、R2及びnは、式(I)に定義された通りであり、そしてL1は脱離基を表す)の化合物と反応させるか、又は
【0029】
b)式(IV)
【化4】

(式中、R1、R2及びnは、式(I)に定義された通りであり、そしてL2は脱離基を表す)の化合物を式(V)
【化5】

(式中、R3及びR4は、式(I)に定義された通りである)の化合物と反応させ; そして必要に応じて、生成した式(I)の化合物、又はその別の塩を、その医薬上許容しうる塩に転換するか;又は生成した式(I)の化合物をさらなる式(I)の化合物に転換し;そして所望により、生成した式(I)の化合物をその光学異性体に転換することを含む、式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩の製造方法を提供する。
【0030】
方法(a)では、反応体(II)及び(III)を適切な有機溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル又は1−メチル2−ピロリドン(NMP)中で一緒にカップリングさせる。反応は、添加された有機又は無機塩基、例えばトリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)又は水素化ナトリウムの存在下で場合により実施する。反応は、水素化ホウ素ナトリウムのような温和な還元剤の存在下で場合により実施する。反応は、通常、室温と溶媒の沸点との間の適切な温度で実施する。反応は、一般に1時間から1週間の期間、又は分析により必要な生成物の形成が完了したことがわかるまで継続する。
【0031】
方法(b)では、反応体(IV)及び(V)を適切な有機溶媒、例えばテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド又は1−メチル−2−ピロリドン中で一緒にカップリングさせる。反応は、添加された塩基の存在下で場合により実施する。この塩基は、有機塩基、例えばトリエチルアミン又はN,N−ジイソプロピルエチルアミン、又は無機塩基、例えば炭酸カリウムであることができる。反応は、通常、室温と溶媒の沸点との間の適切な温度で実施するが、場合により密封反応容器を用いる場合、さらに高い温度で実施する。反応は、一般に1時間から1週間の期間、又は分析により必要な生成物の形成が完了したことがわかるまで継続する。
【0032】
適切な脱離基L1及びL2は、ハロゲン、特にクロロ又はブロモである。一実施態様において、L1及びL2は、それぞれクロロを表す。
【0033】
上記の方法においてアミン、ヒドロキシル又は他の潜在的に反応性の基を保護することが望ましいか又は必要でありうることは当業者に明らかである。適切な保護基及びこのような基を加える及び除去する方法の詳細は、一般に当分野でよく知られている。例えばGreene及びWutsによる“Protective Groups in Organic Synthesis”,3rd Edition (1999)参照。
【0034】
本発明は、塩形態の式(I)の化合物を含む。適切な塩は、有機若しくは無機の酸又は有機若しくは無機の塩基により形成されたものが含まれる。このような塩は、通常、医薬上許容されるが、医薬上許容されない酸又は塩基の塩は、当該化合物の製造及び精製に有用でありうる。
【0035】
式(I)の化合物の塩は、遊離化合物又はその塩、鏡像異性体若しくはラセミ体を1当量又はそれ以上の適当な酸又は塩基と反応させることによって形成することができる。反応は、塩が不溶性である溶媒若しくは媒体中、又は塩が可溶性である溶媒、例えば、水、ジオキサン、エタノール、テトラヒドロフラン若しくはジエチルエーテル、若しくは溶媒の混合物中で実施することができ、それらは真空で又は凍結乾燥によって除去することができる。反応は複分解法であってもよいし、又はイオン交換樹脂で実施してもよい。
【0036】
式(II)の化合物は、例えばWO 01/58907、WO 01/25242若しくはWO 02/76990から知られているか、又は当業者に容易に明らかな周知の方法を用いて製造することができる。
【0037】
式(IV)の化合物は、例えばWO 00/09511に記載されたものと類似の方法を用いて、又は当業者に容易に明らかな他の知られている方法を用いて製造することができる。
【0038】
式(III)及び(V)の化合物は、商業的に入手可能であるか、又は文献において知られているか、又は当業者に容易に明らかな周知の方法を用いて製造することができる。
【0039】
式(II)、(III)、(IV)及び(V)の化合物の製造についての適切な特定の方法は、本明細書の実施例のセクションに詳述されており、そしてこのような方法は、本発明の方法の特定の実施態様を表す。
【0040】
例えば、式(II)の化合物及びそれから式(I)のものは、スキーム1に示したように製造することができる:
【化6】

【0041】
中間体化合物は、このような又は保護された形態で用いることができる。適切な保護基並びにこのような基を加える及び除去する方法の詳細は、一般に当分野でよく知られている。Greene及びWutsによる“Protective Groups in Organic Synthesis”,3rd Edition
(1999)参照。
【0042】
本発明の化合物及びその中間体は、それらの反応混合物から単離し、そして、必要に応じて標準技術を用いてさらに精製することができる。
【0043】
式(I)の化合物は、立体異性形態で存在してもよい。従って、全ての鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体及びそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。種々の光学異性体は、慣用の技術、例えば分別結晶化又はHPLCを用いて化合物の立体異性体の混合物を分離することによって単離することができる。別法として、種々の光学異性体は、光学活性な出発物質を用いて直接製造することができる。
【0044】
式(I)の化合物は、2つの立体中心を含み、そのため式(Ia)〜(Id)に示すように4つの別々の立体異性形態で存在することができる。
【化7】

【0045】
全てのこのような4つの立体異性体及びそれらのなんらかの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。一実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ia)に示した立体化学を有する。別の実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ib)に示した立体化学を有する。
【0046】
中間体化合物は、立体異性体形態で存在してもよく、そして精製された鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体又は混合物として用いることができる。
【0047】
本明細書において用語「C1−6アルキル」は、直鎖及び分枝鎖の両方並びに環式アルキル基を含む。1〜6個の炭素原子を有するC1−6アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル又はシクロヘキシルであることができるが、これらに制限されるわけではない。
【0048】
本明細書において、用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードのことである。
【0049】
式(I)の化合物及びその医薬上許容しうる塩は、CX3CR1受容体のアンタゴニストとして薬理活性を有するため有用である。特に、WO 01/58907に具体的に例示された化合物と比較したとき、本発明の式(I)の化合物は、CX3CR1受容体を阻害するための有意に改善された効力及び/又はCXCR2受容体を阻害するための低下した効力を有する。本発明の好ましい化合物は、CX3CR1を阻害するための高められた効力及びCXCR2を阻害するための低下した効力の両方を示す。
【0050】
一態様において、本発明は、薬剤として使用するための式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を提供する。
【0051】
別の態様において、本発明は、CX3CR1受容体の拮抗作用が有益である疾患又は状態を治療又は予防する薬剤の製造における式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩の使用を提供する。
【0052】
別の態様において、本発明は、神経変性障害、脱髄性疾患、心血管性及び脳血管性アテローム性動脈硬化障害、末梢血管疾患、関節リウマチ、肺疾患、例えばCOPD、喘息又は疼痛を治療又は予防する薬剤の製造における式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩の使用を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、多発性硬化症(MS)を治療又は予防する薬剤の製造における式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩の使用を提供する。
【0054】
別の態様において、本発明は、新しいアテローム硬化性病変又はプラークの形成を予防する及び/又は軽減することによって並びに/又は既存の病変及びプラークを予防する又は進行を遅らせることによってアテローム性動脈硬化症を治療又は予防する薬剤の製造における式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩の使用を提供する。
【0055】
別の態様において本発明は、プラークの組成を変えてプラーク破裂及びアテローム血栓症のイベントの危険性を軽減することによってアテローム性動脈硬化症を治療又は予防する薬剤の製造における式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩の使用を提供する。
【0056】
別の態様において、本発明は、脳卒中又は一過性脳損傷(transient brain injury)(TBI)を治療又は予防する薬剤の製造における式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩の使用を提供する。
【0057】
また、本発明によれば、CX3CR1受容体の拮抗作用が有益である疾患又は状態にかかっている又は危険性のある人に治療上有効量の式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を投与することを含む、CX3CR1受容体の拮抗作用が有益である疾患又は状態を治療する又は危険性を軽減する方法が提供される。
【0058】
また、治療上有効量の式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を人に投与することを含む、神経変性障害、脱髄性疾患、心血管性及び脳血管性アテローム性動脈硬化障害、末梢血管疾患、関節リウマチ、肺疾患、例えばCOPD、喘息又は疼痛の疾患又は状態にかかっている又は危険性のある人において前記疾患又は状態を治療する又は危険性を軽減する方法が提供される。
【0059】
また、治療上有効量の式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を人に投与することを含む、多発性硬化症(MS)の疾患又は状態にかかっている又は危険性のある人において多発性硬化症(MS)を治療する又は危険性を軽減する方法が提供される。
【0060】
また、治療上有効量の式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を人に投与することを含む、アテローム性動脈硬化症の疾患又は状態にかかっている又は危険性のある人において新しいアテローム硬化性病変又はプラークの形成を予防する及び/又は軽減することによって並びに/又は既存の病変及びプラークの進行を予防する又は遅らせることによってアテローム性動脈硬化症を治療する又は危険性を軽減する方法が提供される。
【0061】
また、治療上有効量の式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を人に投与することを含む、アテローム性動脈硬化症の疾患又は状態にかかっている又は危険性のある人においてプラーク破裂及びアテローム血栓性のイベントの危険性を軽減するためにプラークの組成を変えることによってアテローム性動脈硬化症を治療する又は危険性を軽減する方法が提供される。
【0062】
また、治療上有効量の式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を人に投与することを含む、脳卒中又は一過性の脳損傷(TBI)の疾患又は状態にかかっている又は危険性のある人において脳卒中又は一過性の脳損傷(TBI)を治療する又は危険性を軽減する方法が提供される。
【0063】
化合物は、単独療法として又は中枢神経系の炎症性状態及び疾患、例えば脳卒中及び一過性脳損傷(TBI)の予防上若しくは治療上いずれかの治療として組み合わせて用いることができる(Soriano et al. J. Neuroimmunology 2002, 125, 59−65.)。
【0064】
別の態様において、本発明は、CX3CR1受容体の拮抗作用が有益である疾患又は状態の治療又は予防に使用するための、医薬上許容しうる補助剤、希釈剤又は担体との混合物中に治療上有効量の式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を含む医薬製剤を提供する。
【0065】
別の態様において、本発明は、神経変性障害、脱髄性疾患、心血管性及び脳血管性アテローム性動脈硬化症障害、末梢血管疾患、関節リウマチ、COPD、喘息又は疼痛の治療又は予防に使用するための、医薬上許容しうる補助剤、希釈剤又は担体との混合物中に治療上有効量の式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を含む医薬製剤を提供する。
【0066】
別の態様において、本発明は、多発性硬化症の治療又は予防に使用するための、医薬上許容しうる補助剤、希釈剤又は担体との混合物中に治療上有効量の式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を含む医薬製剤を提供する。
【0067】
別の態様において、本発明は、新しいアテローム硬化性病変及び/又はプラークの形成を予防する及び軽減することによって並びに/又は既存の病変及びプラークの進行を予防する又は遅らせることによってアテローム性動脈硬化症の治療又は予防に使用するための、医薬上許容しうる補助剤、希釈剤又は担体との混合物中に治療上有効量の式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を含む医薬製剤を提供する。
【0068】
別の態様において、本発明は、プラーク破裂及びアテローム血栓症のイベントの危険性を軽減するためにプラークの組成を変えることによってアテローム性動脈硬化症の治療又は予防に使用するための、医薬上許容しうる補助剤、希釈剤又は担体との混合物中に治療上有効量の式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を含む医薬製剤を提供する。
【0069】
式(I)の化合物及びその医薬上許容しうる塩は、CX3CR1受容体の活性の調節が望ましい疾患又は状態の治療又は予防における使用が示される。特に、化合物は、ヒトを含む哺乳動物において神経変性障害又は脱髄性疾患の治療における使用が示される。より詳しくは、化合物は、多発性硬化症の治療おける使用が示される。また、化合物は、疼痛、関節リウマチ、骨関節炎、心血管性及び脳血管性アテローム性動脈硬化症障害、末梢血管性疾患並びに肺動脈性高血圧症の治療に有用であることが示される。
【0070】
具体的に記載することができる状態は、以下のとおりである:神経変性疾患及び認知症障害、例えば、アルツハイマー病、筋萎縮側索硬化症及び他の運動ニューロン疾患、クロイツフェルト−ヤコブ病及び他のプリオン病、HIV脳症、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症及び血管性認知症;多発神経障害、例えば、ギラン−バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発根神経障害、多病巣性運動ニユーロパチー及び神経叢障害;CNS脱髄、例えば、急性播種性/出血性脳脊髄炎及び亜急性硬化性全脳炎;神経筋障害、例えば、重症筋無力症及びランバート−イートン症候群;脊椎障害、例えば、熱帯性痙性不全対麻痺及び全身強直性症候群;新生物随伴症候群、例えば、小脳変性及び脳脊髄炎;外傷性脳損傷;片頭痛;癌;同種移植拒絶;全身性硬化症;ウィルス感染;寄生生物を媒介とする疾患、例えば、マラリア;歯周疾患;心筋梗塞;脳卒中;冠状動脈性心疾患;虚血性心疾患;再狭窄;関節リウマチ;肺疾患、例えばCOPD;喘息又は疼痛。
【0071】
また、本発明の化合物は、新しいアテローム硬化性病変又はプラークの形成を予防する及び/又は軽減することによって並びに/又は既存の病変及びプラークを予防する又は進行を遅らせることによって、アテローム性動脈硬化症の治療における使用が示される。
【0072】
本発明の化合物は、プラーク破裂及びアテローム血栓性のイベントの危険性を軽減するためプラークの組成を変えることによるアテローム性動脈硬化症の治療における使用が示される。
【0073】
本発明の化合物は、IBDの寛解を誘発する及び/又は寛解を維持することによる、炎症性腸疾患(IBD)、例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎の治療における使用が示される。
【0074】
予防は、当該の疾患又は状態のエピソードに以前にかかったことがあるか又はさもなければ危険性が高まっていると考えられる人の治療に特に適切であることが期待される。一般に、特定の疾患又は状態を発症する危険性のある人には、疾患若しくは状態の家族歴を有する人、又は遺伝学的試験若しくはスクリーニングによって疾患若しくは状態を特に発症しやすいと確認された人が含まれる。
【0075】
上記の治療の適応症について、投薬する投与量は、当然、使用する化合物、投与様式及び所望の治療により変化する。しかしながら、一般に、固体形態1mg〜2000mg/日の間の投与量で化合物を投与するときに満足な結果が得られる。
【0076】
式(I)の化合物及びその医薬上許容しうる誘導体は、それ自体で、又は化合物若しくは誘導体が医薬上許容しうる補助剤、希釈剤若しくは担体との混合物中にある適当な医薬組成物の形態で使用することができる。投与は、経腸的(経口、舌下又は直腸を含む)、鼻腔内、静脈内、局所又は他の非経口経路によることができるが、それらに制限されるわけではない。適切な医薬製剤を選択及び製造する慣用の手法は、例えば“Pharmaceuticals − The Science of Dosage Form Designs”, M. E. Aulton, Churchill Livingstone, 1988に記載されている。医薬組成物は、式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩を好ましくは80%未満、そしてより好ましくは50%未満含む。
【0077】
また、成分を混合することを含むこのような医薬組成物の製造方法が提供される。
【0078】
さらに、本発明は、式(I)の化合物若しくはその医薬上許容しうる塩、又は式(I)の化合物を含む医薬組成物若しくは製剤を、心血管性及び脳血管性アテローム性動脈硬化症障害、並びに末梢血管性疾患のいずれか1つを治療する治療及び/又は薬剤と並行して又は順次投与する複合治療に関する。
【0079】
特に、式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩は、以下の群の1つ又はそれ以上からの化合物と共に投与することができる:
1) 抗炎症剤、例えば、
a) NSAID(例えばアセチルサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシン);
b) ロイコトリエン合成阻害剤(5−LO阻害剤、例えばAZD4407、ジレウトン、リコフェロン、CJ13610、CJ13454);FLAP阻害剤、例えばBAY−Y−1015、DG−031、MK591、MK886、A81834;LTA4ヒドロラーゼ阻害剤、例えばSC56938、SC57461A);
c) ロイコトリエン受容体アンタゴニスト;(例えば、CP195543、アメルバント、LY293111、アコレート、MK571);
2)抗高血圧剤、例えば、
a) ベータ遮断剤(例えばメトプロロール、アテノロール、ソタロール);
b) アンギオテンシン変換酵素阻害剤(例えばカプトプリル、ラミプリル、キナプリル、エナラプリル);
c) カルシウムチャネル遮断剤(例えばベラパミル、ジルチアゼム、フェロジピン、アムロジピン);
d) アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト(例えばイルベサルタン、カンデサルタン、テレミサルタン(telemisartan)、ロサルタン);
3)抗血液凝固剤(anti−coagulantia)、例えば、
a) トロンビン阻害剤(例えばキシメラガトラン)、ヘパリン、第Xa因子阻害剤;
b) 血小板凝集阻害剤(例えば、クロピドロゲル、チクロピジン、プラスゲル、AZ4160);
4)脂質代謝のモジュレーター、例えば、
a) インスリン増感剤、例えばPPARアゴニスト(例えばピオグリタゾン、ロシグリタゾン、ガリダ、ムラグリタザール、ゲフェムロジル(gefemrozil)、フェノフィブレート);
b) HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、スタチン(例えば、シンバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン);
c) コレステロール吸収阻害剤(例えばエゼチミブ);
d) IBAT阻害剤(例えばAZD−7806);
e) LXRアゴニスト(例えばGW−683965A、T−0901317);
f) FXR受容体モジュレーター;
g) ホスホリパーゼ阻害剤;
5)抗狭心症剤(例えばニトラート及びニトリット);
6)酸化的ストレスのモジュレーター、例えば、抗酸化剤(プロブコール)、ミエロペルオキシダーゼ阻害剤。
【0080】
以下の実施例によって、本発明を説明するが、決して制限されるわけではない:
一般的な方法
使用した全ての溶媒は、分析グレードであり、そして商業的に入手可能な無水溶媒を、常法により反応に使用した。反応は、典型的に窒素又はアルゴンの不活性雰囲気下で実施した。1H及び13C NMRスペクトルは、Z−勾配を有する5mmのBBOプローブを備えたVarian Unity+ 400 NMR分光計、又はZ−勾配を有する60μlデュアルインバーズフロープローブを備えたBruker Avance 400 NMR分光計、又はZ−勾配を有する4−核プローブを備えたBruker DPX400 NMR分光計のいずれかにおいて、プロトンについては400MHzで、そして炭素−13については100MHzで記録した。600MHzの1H NMRスペクトルは、Z−勾配を有する5mmのBBIプローブヘッドを備えたBruker av600 NMR分光計で記録した。300MHzの1H NMRスペクトルは、5mmのBBI プローブヘッドを備えたVarian Gemini 300 NMRで記録した。実施例に特に明記しない限り、プロトンについては400MHz、そして炭素−13については100MHzでスペクトルを記録した。以下の基準シグナルを用いた:DMSO−d6の中間線 δ 2.50(1H), δ 39.51(13C);CD3ODの中間の線δ3.31(1H)又はδ49.15(13C);アセトン−d62.04(1H), 206.5(13C);及びCDCl3δ7.26(1H)、CDCl3の中間線δ 77.16(13C)(特に明記しない限り)。
【0081】
鏡像異性体過剰率(ee)は、Cyclodex Bカラム(等温溶出100℃)における又はCyclosil Bカラム(温度勾配110−130℃)におけるGCによって測定した。ジアステレオマー過剰率(de)はHPLCによって測定した。
【0082】
質量スペクトルは、Alliance 2795 (LC)及びZQ単一の四重極質量分析計からなるWaters LCMSで記録した。質量分析器は、陽又は陰イオンモードで運転するエレクトロスプレーイオン源(ESI)を備えていた。キャピラリー電位は、3kVであり、そして質量分析器は、走査時間0.3又は0.8秒で100〜700m/zで走査した。分離は、Waters Xterra MS,C8−カラム(3.5μm,50又は100mm×2.1mm i.d.)、又はScantecLab's ACE 3 AQカラム(100mm×2.1mm i.d.)のいずれかで実施した。カラム温度は、40℃に設定した。直線濃度勾配は、中性又は酸性の移動相系を用いて、流速0.3ml/分、4〜5分で0%〜100%有機相で運転して適用した。中性の移動相系:10mMアセトニトリル/[ NH4OAc(水性)/MeCN(95:5)]、又は[10mM NH4OAc(水性)/MeCN(1/9)]/[10mM NH4OAc(水性)/MeCN(9/1)]。酸性の移動相系:[133mM HCOOH(水性)/MeCN(5/95)]/[8mM HCOOH(水性)/MeCN(98/2)]。
【0083】
別法として、質量スペクトルは、VF−5 MSカラム(ID 0.25mm×30m,0.25μm (Varian Inc.))を用いてGC−MS(GC 6890,5973N MSD, Agilent Technologies)で記録した。直線温度勾配(40℃〜300℃),25℃/分を適用した。MSはCIイオン源を備えており、そして反応体ガスはメタンであった。MSは、m/z 50〜500の間で走査し、そして走査速度は3.25スキャン/秒に設定した。HPLC分析は、G1379A Micro Vacuum Degasser、G1312Aバイナリーポンプ、G1367A Wellplateオートサンプラ、G1316A Thermostatted Column Compartment及びG1315Bダイオードアレイ検出器から構成されるAgilent HP1000系で実施した。カラム:X−Terra MS,Waters,4.6×50mm,3.5μm。カラム温度を40℃、そして流速を1.5ml/分に設定した。Diode Array Detectorは、210〜300nmで走査し、ステップ及びピーク幅をそれぞれ2nm及び0.05分に設定した。4分のうちに0%〜100%アセトニトリルで運転して直線濃度勾配を適用した。移動相:MilliQ Water中5%アセトニトリル中アセトニトリル/10mM酢酸アンモニウム。
【0084】
反応後の典型的な処理手法は、溶媒、例えば酢酸エチルによる生成物の抽出、水による洗浄、続いてMgSO又はNaSOでの有機相の乾燥、及び真空での溶液の濃縮からなる。
【0085】
薄層クロマトグラフィ(TLC)は、Merck TLC−プレート(Silica gel 60 F254)で実施し、そしてスポットを視覚化するためにUVを用いた。フラッシュクロマトグラフィは、RediSepTM順相フラッシュカラムを用いてCombi Flash(R) CompanionTMで又はMerck Silica gel 60(0.040〜0.063mm)で実施した。フラッシュクロマトグラフィに用いる典型的な溶媒は、クロロホルム/メタノール、トルエン/酢酸エチル及び酢酸エチル/ヘキサンの混合物である。
【0086】
分取クロマトグラフィは、XTerra MSカラム(C8,19×300mm,7μm)を用いて、ダイオードアレイ検出器付きのGilson自動分取HPLCで実施し、そしてアセトニトリル/MilliQ Water中5%アセトニトリル中0.1M酢酸アンモニウムの勾配は、実施例中に特に明記しない限り、流速20ml/分で13分のうちに20%〜60%アセトニトリルで実施した。別法として、精製は、Waters Symmetry(R)カラム(C18,5mm,100mm×19mm)を備えたShimadzu SPD−10A UV−vis.−検出器付きの準分取Shimadzu LC−8A HPLCで実施した。MilliQ Water中のアセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸の勾配は、流速:10ml/分、20分のうちに35%〜60%アセトニトリルで実施した。
【0087】
再結晶は、溶媒又は溶媒混合物(例えばエーテル、酢酸エチル/ヘプタン及びメタノール/水)中で典型的に実施した。
【0088】
以下の略語を用いた:DCM=ジクロロメタン;de=ジアステレオマー過剰率;DIPCl=β−クロロジイソピノカンフェニルボラン(DIP−クロリドTM);DIPEA=N,N−ジイソプロピルエチルアミン;DMF=N,N−ジメチルホルムアミド;DMSO=ジメチルスルホキシド;ee=鏡像体過剰率;NCS=N−クロロスクシンイミド;NMP=1−メチル−2−ピロリドン;THF=テトラヒドロフラン;aq=水性;conc=濃厚。
【0089】
使用した出発物質は、商業的な供給源から入手可能であるか、又は文献の手法に従って製造し、そして報告されたものと一致した実験データを有した。以下は、製造した出発物質の例である:
(2R)−2−[(2−アミノ−5−メルカプト[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール:WO 02/076990(実施例1〜5及び8);
5−(ベンジルチオ)−7−クロロ[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−アミン:WO 00/09511(実施例8);
5−フルオロ−2−ホルミルピリジン:WO 2005/066155(実施例1);
5−フルオロピリジン−2−カルボニトリル:WO 2005/066155(実施例3);
1−(3−クロロピリジン−4−イル)エタノン:Marsais, F. et al. J. Organometal.
Chem. 1981, 216, 139−147(実施例4);
2−アセチル−イソニコチノニトリル:Citterio et al. J. Chem. Res. Synopses 1982,
10, 272−273(実施例8);及び
1−(6−クロロピリジン−3−イル)エタノン:Lee, C. et al. J. Med. Chem. 2001,
44, 2133(実施例6及び7)。
【0090】
以下の一般的な方法において、Pyは、場合により置換されたピリジルを表す。
一般的な方法A
水素化ホウ素ナトリウム(0.1当量)、DIPEA(1.5当量)及び一般式(III)の化合物(1.2当量)を窒素雰囲気下でDMSO中の一般式(II)の化合物(1.0当量)に加えた。反応が完了するまで(LC−MS、HPLC又はTLCによってモニターした)、生成した反応混合物を40℃で撹拌した。混合物を氷水へ注ぎ、そして生成物はDCM又はEtOAcで抽出した。合わせた有機相を乾燥させ、そして真空で濃縮した。粗生成物を、必要に応じて、分取HPLCを用いて又はフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製した。
【0091】
一般的な方法B1
【化8】

THF中の(VI)(1.0当量)をアルゴン雰囲気下でTHF中の(+)−DIPCl((VII)を得るため)又は(−)−DIPCl((VIII)を得るため)(1.5当量)に0℃で加えた。反応混合物を一夜かけてゆっくりと室温に到達させた。溶媒を蒸発させ、続いてEt2O及びジエタノールアミン(2.2当量)を添加した。反応が完了するまで(LC−MS、HPLC又はTLCによってモニターした)、混合物を撹拌した。形成された沈殿を、Et2Oで洗浄し、濾過し、そして濾液を真空で濃縮した。粗生成物を、必要に応じて、分取HPLCを用いて又はフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製した。
【0092】
一般的な方法B2
(R)−(+)−2−メチル−CBS−オキサアザボロリジン(トルエン中1M,0.1〜1当量)をTHF中に溶解し、そして0℃に冷却した。ボラン−メチルスルフィド錯体(THF中2M,1当量)を滴加し、そして反応混合物を1時間撹拌した。反応混合物を−10℃に冷却し、そしてTHF中に溶解した(VI)(1当量)を0.5時間かけて滴加した。生成した混合物を、1時間又は反応が完了するまで撹拌し、そして温度を10℃にゆっくりと高めた。1M 水性HClを加えて反応をクエンチした。pHが約8になるまで、水性飽和NaHCOを加えた。生成物をDCMで抽出した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、そして真空で濃縮して(VIII)を得た。生成物をカラムクロマトグラフィによって場合により精製した。
【0093】
一般的な方法C1
【化9】

THF中のトリフェニルホスフィン(1.3当量)をアルゴン雰囲気下でTHF中のNCS(1.3当量)に0℃で加えた。生成した混合物を周囲温度で30分間撹拌した。(VII)又は(VIII)(1当量)を0℃で加え、そして反応が完了するまで(LC−MS、HPLC又はTLCによってモニターした)、反応混合物を周囲温度で撹拌した。溶媒を蒸発させ、続いてヘキサンを添加し、そして濾過によって沈殿を除去した。濾液を真空下で濃縮して(IX)又は(X)を得た。粗生成物を、必要に応じて、分取HPLCを用いて又はフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製した。
【0094】
一般的な方法C2
塩化シアヌル(0.6当量)を酢酸エチルに溶解した。DMF(1.5当量)を加え、そして混合物を室温で10分間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却した。(VII)又は(VIII)(1当量)を酢酸エチルに溶解し、そして10分の間に滴加した。生成した混合物を室温で一夜撹拌した。イソプロパノール(約0.25mL/mmol(VII)又は(VIII))を加えた。沈殿を濾過し、そしてEtOAcで洗浄した。濾液を濃縮し、表題化合物(IX)又は(X)を得た。
【0095】
実施例1
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール
【化10】

【0096】
a) 1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エタノール
【化11】

THF(20mL)中の5−フルオロ−2−ホルミルピリジン(0.66g,5.3mmol)の−78℃溶液にメチルリチウム(ジエチルエーテル中1.6M,4.0mL)を滴加した。−78℃で1.5時間撹拌した後、塩化アンモニウムの飽和溶液(25mL)続いて水(25mL)を加えた。混合物をクロロホルムで抽出し、そして有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、そして真空で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:クロロホルム:メタノール98:2)によって精製して表題化合物(0.25g,収率33%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 8.38 (d, 1 H), 7.42 (dt, 1 H), 7.33 (dd, 1 H), 4.90 (q, 1 H), 3.90 (s, 1 H), 1.50 (d, 3 H); MS (ESI) m/z 142 [M+1]+.
【0097】
b) 2−(1−クロロエチル)−5−フルオロピリジン
【化12】

トリフェニルホスフィン(0.92g,3.5mmol)及びCCl(4mL)の混合物を10分間撹拌し、それから、DCM(2mL)中の1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エタノール(0.25g,1.7mmol)の溶液を加えた。18時間後、ペンタン(20mL)を加え、固形物質を濾過によって除去し、そして濾液を真空で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤ヘプタン:酢酸エチル3:1)によって精製して表題化合物(8mg,収率3%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 8.35 (d, 1 H), 7.44 (dd, 1 H), 7.36 (dt, 1 H), 5.09 (q, 1 H), 1.81 (d, 3 H).
【0098】
c)(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール
【化13】

(2R)−2−[(2−アミノ−5−メルカプト[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール(21mg,0.072mmol)及び2−(1−クロロエチル)−5−フルオロピリジン(8mg,0.048mmol)から出発して一般的な方法Aに従って表題化合物を製造した。分取HPLCにより精製してジアステレオマーの混合物として表題化合物4mg(収率21%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO−d6): δ ppm 8.44 (t, 1H), 7.91 (s, 2H), 7.55−7.64 (m, 1H), 7.47−7.55 (m, 1H), 6.83 (d, 1H), 4.99−5.11 (m, 1H), 4.59 (q, 1H), 3.41−3.28 (m, 2H), 1.60 (dd, 3H), 1.48−1.57 (m, 1H), 1.25−1.42 (m, 2H), 0.72−0.86 (m,
6H); MS (ESI) m/z 423 [M+1]+.
【0099】
実施例2
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(5−クロロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール
【化14】

【0100】
a)1−(5−クロロピリジン−2−イル)エタノン
【化15】

5−クロロピリジン−2−カルボニトリル(10.7g,77mmol)を窒素雰囲気下でジエチルエーテル(65mL)及びTHF(35mL)中に溶解した。内部温度が−63℃になるまで、混合物を冷却した。メチルマグネシウムブロミド(THF中3M,35mL,105mmol)を30分かけて加えた。次いで、反応混合物を−60℃で45分間撹拌したままにし、それから反応混合物を室温まで暖めた。THF(50mL)を加えてすべての沈殿した物質を溶解し、そして反応混合物を1時間撹拌した。2M 水性HCl(100mL)を加え、そして反応混合物を4時間撹拌した。次いで、炭酸水素ナトリウムを用いてpHを7に調節した。相を分離し、そしてDCMを用いて生成物を水相から抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして真空で濃縮した。生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤 ヘプタン:EtoAc勾配)によって精製して表題化合物7.9g(収率64%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ ppm 8.62 (m, 1H); 8.00 (m, 1H); 7.80 (m, 1H); 2.70 (s, 3H).
【0101】
b)(1S)−1−(5−クロロピリジン−2−イル)エタノール
【化16】

1−(5−クロロピリジン−2−イル)エタノン(780mg,5mmol)から出発して一般的な方法B2によって表題化合物を製造した。フラッシュカラムクロマトグラフィにより精製して92%eeで表題化合物695mg(収率88%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 8.47 (s, 1H); 7.65 (d, 1H); 7.26 (d, 1H); 4.87 (q, 1H);
3.87 (br s, 1H); 1.47 (d, 3H); MS (ESI) m/z 140 及び142 [M+1]+.
【0102】
c) 5−クロロ−2−[(1R)−1−クロロエチル]ピリジン
【化17】

(1S)−1−(5−クロロピリジン−2−イル)エタノール(695mg,4.41mmol)から出発して一般的な方法C2によって表題化合物を製造した。粗生成物を精製することなく次の工程に用いた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 8.46 (d, 1 H), 7.64 (dd, 1 H), 7.41 (d, 1 H), 5.08 (q, 1 H), 1.80 (d, 3 H); MS (ESI) m/z 176 及び 178 [M+1]+.
【0103】
d)(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(5−クロロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール
【化18】

(2R)−2−[(2−アミノ−5−メルカプト[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール(572mg,1.91mmol)及び5−クロロ−2−[(1R)−1−クロロエチル]ピリジン(376mg,2.1mmol)から出発して一般的な方法Aによって表題化合物を製造した。分取HPLCにより精製して表題化合物99mg(収率12%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ ppm 8.49 (d, 1H), 7.79 (dd, 1H), 7.66 (d, 1H), 5.22 (q, 1H), 4.46 (br s, 1H), 3.57−3.40 (m, 2H), 1.78−1.66 (m, 4H), 1.61−1.40 (m,
2H), 1.03−0.93 (m, 6H); MS (ESI) m/z 439 及び 441 [M+1]+.
【0104】
実施例3
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール
【化19】

【0105】
a) 1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エタノン
【化20】

5−フルオロ−ピリジン−2−カルボニトリル(29g,240mmol)を窒素雰囲気下でTHF(150mL)中に溶解した。反応混合物を、内部温度−64℃に冷却した。メチルマグネシウムブロミド(THF中3M,105mL,315mmol)を40分かけて加えた。反応混合物を−65℃で1.5時間撹拌し、次いで反応混合物を室温に暖めた。THF(50mL)を加え、そして混合物を3時間撹拌した。混合物が弱酸性になるまで2M塩酸(水性,100mL)を加え、そして反応混合物を室温で一夜撹拌した。次いで、炭酸水素ナトリウムを加えて反応混合物を中和した。相を分離し、そして水相をDCMで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして真空で濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製して表題化合物18g(収率55%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 8.50 (m, 1H); 8.10 (m, 1H); 7.52 (m, 1H); 2.70 (s, 3H).

【0106】
b) (1S)−1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エタノール
【化21】

1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エタノン(2.70g,19.4mmol)から出発して一般的な方法B2によって表題化合物を製造した。フラッシュカラムクロマトグラフィにより精製して94%eeで表題化合物0.85g(収率31%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 8.38 (m, 1H); 7.5−7.2 (m, 2H); 4.89 (q, 1H); 3.9 (br s, 1H); 1.49 (d, 3H).
【0107】
c) 2−[(1R)−1−クロロエチル]−5−フルオロピリジン
【化22】

(1S)−1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エタノール(407mg,2.9mmol)から出発して一般的な方法C2によって87%eeで表題化合物を製造した。粗生成物を精製することなく次の工程に用いた。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 8.44−8.40 (m, 1H); 7.6−7.4 (m, 2H); 5.16 (q, 1H), 1.86 (d, 3H).
【0108】
d)(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール
【化23】

(2R)−2−[(2−アミノ−5−メルカプト[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール(550mg,1.8mmol)及び2−[(1R)−1−クロロエチル]−5−フルオロピリジン(0.46g,2.9mmol)から出発して一般的な方法Aによって表題化合物を製造した。生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィ、続いて分取HPLC(カラム:Reprosil,溶離剤イソプロパノール:ヘプタン20:80,流速:16mL/分)によって精製し、最初に溶出した異性体を集めて標題化合物135mg(収率18%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 8.51 (d, 1H), 7.98 (s, 2H), 7.65 (dt, 1H); 7.58 (dd, 1H), 6.88 (d, 1H); 5.12 (q, 1H); 4.66 (t, 1H); 4.27 (br s, 1H); 3.41−3.27 (m, 2H), 1.66 (d, 3H), 1.65−1.55 (m, 1H); 1.48−1.35 (m, 2H), 0.88 (d, 3H), 0.85 (d, 3H); MS (ESI) m/z 423 [M+1]+.
【0109】
実施例4
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[1−(3−クロロピリジン−4−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール
【化24】

【0110】
a)(1S)−1−(3−クロロピリジン−4−イル)エタノール
【化25】

1−(3−クロロピリジン−4−イル)エタノン(0.90g,5.78mmol)から出発して一般的な方法B1を用いて90%eeで表題化合物を製造した。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) 8.47 (s, 1H); 7.65 (d, 1H); 7.26 (d, 1H); 4.87 (q, 1H); 3.87 (br s, 1H); 1.47 (d, 3H); MS (ESI) m/z 158 及び 160 [M+1]+.
【0111】
b) 3−クロロ−4−[(1R)−1−クロロエチル]ピリジン
【化26】

(1S)−1−(3−クロロピリジン−4−イル)エタノール(570mg,3.62mmol)から出発して一般的な方法C2を用いて表題化合物を製造した。粗生成物を精製することなく次の工程に用いた。
MS (ESI) m/z 176 及び178 [M+1]+.
【0112】
c)(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[1−(3−クロロピリジン−4−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール(異性体1及び異性体2)
【化27】

(2R)−2−[(2−アミノ−5−メルカプト[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール(860mg,2.87mmol)及び前の工程からの3−クロロ−4−[(1R)−1−クロロエチル]ピリジンから出発して一般的な方法Aを用いて表題化合物を製造した。フラッシュクロマトグラフィにより精製してジアステレオマー混合物として表題化合物(105mg,収率8%)を得た。
MS (ESI) m/z 439 及び441 [M+1]+.
【0113】
実施例5
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(3−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール
【化28】

【0114】
a) 1−(6−ブロモ−3−フルオロピリジン−2−イル)エタノン
【化29】

2−ブロモ−5−フルオロ−ピリジン(11g,62.5mmol)を窒素雰囲気下、室温でジエチルエーテル中に溶解した。内部温度が−66℃になるまで、反応混合物を冷却した。ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M,26mL,65mmol)を0.5時間かけて滴加した。生成した反応混合物を−65℃で1時間放置した。N,N−ジメチルアセトアミド(6.5mL,70mmol)を10分かけて加え、そして反応混合物を−65℃で2時間撹拌した。1M水性塩酸(50mL)を加え、そして混合物を室温に暖めた。さらなる塩酸を用いてpHを7に調整した。水相をジエチルエーテル3回で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして真空で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤 ヘプタン:ジエチルエーテル勾配)により精製して表題化合物4.6g(収率34%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO−d6): 8.0−7.8 (m, 2H); 2.57 (s, 3H); MS (ESI) m/z 218 及び 220 [M+1]+.
【0115】
b)(1S)−1−(6−ブロモ−3−フルオロピリジン−2−イル)エタノール
【化30】

1−(6−ブロモ−3−フルオロピリジン−2−イル)エタノン(1.76g,8.19mmol)から出発して一般的な方法B2を用いて表題化合物を製造した。生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘプタン:酢酸エチル勾配)によって精製して80%eeで表題化合物1.31g(収率73%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) 7.38 (m, 1H); 7.26 (m, 1H); 5.06 (q, 1H); 3.38 (br s, 1H); 1.47 (d, 3H); MS (ESI) m/z 220 及び222 [M+1]+, m/z 202 [M−H2O]+.
【0116】
c)(1S)−1−(3−フルオロ−ピリジン−2−イル)エタノール
【化31】

(1S)−1−(6−ブロモ−3−フルオロ−ピリジン−2−イル)エタノール(1.3g,5.9mmol)、トリエチルアミン(1.6mL,11.5mmol)及びパラジウム付き炭素(0.64g,0.34mmol)をDCM(25mL)中に混合した。フラスコの排気/水素ガス充填を4回行い、次いで、室温で、2.5気圧の水素ガス圧で24時間放置した。混合物を濾過し、そして固形物をDCMで洗浄した。濾液を水及びブラインで洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥し、そして真空で濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤DCM:メタノール勾配)によって精製して表題化合物0.54g(収率65%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 8.38 (m, 1H); 7.39 (m, 1H); 7.26 (m, 1H); 5.11 (q, 1H);
4.16 (br s, 1H); 1.49 (d, 3H).
【0117】
d) 2−((R)−1−クロロエチル)−3−フルオロ−ピリジン
【化32】

(1S)−1−(3−フルオロ−ピリジン−2−イル)エタノール(254mg,1.8mmol)から出発して一般的な方法C2を用いて表題化合物(0.24g)を製造した。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 8.46 (m, 1H); 7.47 (m, 1H); 7.34 (m, 1H); 5.48 (q, 1H),
1.94 (d, 3H); MS (ESI) m/z 160 及び 162 [M+1]+.
【0118】
e)(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(3−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール
【化33】

(2R)−2−[(2−アミノ−5−メルカプト[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール(348mg,1.16mmol)及び2−((R)−1−クロロエチル)−3−フルオロ−ピリジン(240mg,1.5mmol)から出発して一般的な方法Aを用いて表題化合物を製造した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤DCM:メタノール勾配)により精製してジアステレオマー過剰率60%で表題化合物190mg(収率47%)を得た。この物質の55mgを分取HPLCによってさらに精製した。最後に溶出する異性体を集めて表題化合物21mgを得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 8.40 (dt, 1H), 7.98 (s, 2H), 7.70 (m, 1H), 7.40 (m, 1H); 6.92 (d, 1H); 5.45 (q, 1H); 4.65 (t, 1H); 4.27 (br s, 1H); 3.45−3.30 (m, 2H), 1.69 (d, 3H), 1.66−1.58 (m, 1H), 1.50−1.35 (m, 2H), 0.88 (d, 3H), 0.85 (d, 3H); MS (ESI) m/z 423 [M+1]+.
【0119】
実施例6
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(6−クロロピリジン−3−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)(メチル)アミノ]ペンタン−1−オール
【化34】

【0120】
a)(1S)−1−(6−クロロピリジン−3−イル)エタノール
【化35】

(−)DIPCl及び1−(6−クロロピリジン−3−イル)エタノン(0.80g,5.14mmol)を用いて一般的な方法B1に従って表題化合物を製造して表題化合物0.71g(収率88%)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ ppm 8.40−8.28 (m, 1H), 7.75−7.63 (m, 1H), 7.35−7.24 (m, 1H), 5.04−4.79 (m, 1H), 1.63−1.45 (m, 3H); MS (ESI) m/z 158 及び 160 [M+1]+.
b) 2−クロロ−5−[(1R)−1−クロロエチル]ピリジン
【0121】
【化36】

(1S)−1−(6−クロロピリジン−3−イル)エタノール(0.20g,1.27mmol)を用いて一般的な方法C1に従って表題化合物を製造し、表題化合物0.16g(収率72%)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ ppm 8.45−8.35 (m, 1H), 7.79−7.70 (m, 1H), 7.39−7.29 (m, 1H), 5.07 (q, 1H), 1.85−1.78 (m, 3H); MS (ESI) m/z 176 及び 178 [M+1]+.
【0122】
c) N−(エトキシカルボニル)−D−ノルバリン
【化37】

D−ノルバリン(10.0g,85.3mmol)を水酸化ナトリウム水溶液(4M,25mL)中に溶解した。クロロギ酸エチル(10.6mL,111mmol)及び水酸化ナトリウム水溶液(4M,25mL)を0℃で15分かけて加えた。反応混合物を室温に暖め、そしてこの温度で4時間撹拌した。反応混合物をジエチルエーテルで3回洗浄し、次いで水性塩酸(2M)で酸性化した。生成物をジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、そして真空で濃縮して定量的収率で表題化合物を得た。
1H NMR (CDCl3) δ ppm 6.43 (br s, 1H), 5.22 (d, 1H), 4.37 (q, 1H), 4.13 (q, 2H),
1.84 (m, 1H), 1.68 (六重線, 1H), 1.42 (六重線, 1H), 1.25 (t, 3H), 0.95 (t, 3H);
MS (CI) 144 (100%), 190 [M+1]+.
【0123】
d)(2R)−2−(メチルアミノ)ペンタン−1−オール
【化38】

水素化アルミニウムリチウム(6.5g,171mmol)を窒素雰囲気下、0℃でTHF中に懸濁した。N−(エトキシカルボニル)−D−ノルバリンをTHF中に溶解し、そして0℃で滴加した。反応混合物を一夜還流させた。室温に冷却後、飽和水性硫酸ナトリウムを加えてスラリーを形成した。生成した混合物を、セライトを通して濾過した。全ての生成物が抽出されるまで、固形物をDCMで洗浄した。合わせた濾液を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして真空で濃縮した。0.1mbarのバルブ・ツゥ・バルブ蒸留(Bulb−to−bulb distillation)で75〜85℃の間で画分を集めて表題化合物7.1g(収率71%)を得た。
1H NMR (CDCl3) 3.63 (dd, 1H); 3.30 (dd, 1H); 2.51 (m, 1H); 2.41 (s, 3H); 2.09 (br s, 2H); 1.50−1.28 (m, 4H); 0.93 (t, 3H); MS (CI) 86 (100%), 118 [M+1]+.
【0124】
e)(2R)−2−{[2−アミノ−5−(ベンジルチオ)[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル](メチル)アミノ}ペンタン−1−オール
【化39】

5−(ベンジルチオ)−7−クロロ[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−アミン(6.0g,19.4mmol)をNMP(25mL)中に溶解した。DIPEA(6.8mL,38.8mmol)及び(2R)−2−(メチルアミノ)ペンタン−1−オール(3.4g,29.1mmol)を加え、そして混合物を120℃で3日間加熱した。さらなる(2R)−2−(メチルアミノ)ペンタン−1−オール(350mg,2.99mmol)及びDIPEA(1mL,5.74mmol)を加え、そして反応混合物を120℃で6時間加熱した。
室温に冷却した後、混合物を氷中へ注いだ。沈殿した生成物を濾過により集め、そしてフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤DCM:酢酸エチル勾配)によって精製して表題化合物(5.74g,収率76%)を得た。
1H NMR (DMSO−d6) 7.98 (br s, 2H), 7.41 (m, 2H), 7.29 (m, 2H), 7.22 (m, 1H), 4.73 (t, 1H), 4.54 (br s, 1H), 4.33 (m, 2H), 3.55−3.40 (m, 2H), 3.01 (s, 3H), 1.52−1.44 (m, 2H), 1.25−1.10 (m, 2H), 0.84 (t, 3H); MS (ESI) m/z 390 [M+1]+.
【0125】
f)(2R)−2−[(2−アミノ−5−メルカプト[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)(メチル)アミノ]ペンタン−1−オール
【化40】

丸底フラスコはドライアイス−エタノール冷却器を備えており、そしてドライアイス−エタノール冷浴中に浸漬した。アンモニア(200mL)をフラスコ中に凝縮し、続いて(2R)−2−{[2−アミノ−5−(ベンジルチオ)[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル](メチル)アミノ}ペンタン−1−オール(5.43g,13.9mmol)を添加した。生成した混合物を−33℃に暖め、そして青色が現れて30秒間持続するまでナトリウム金属を小片で加えた。次いで、一さじの固形塩化アンモニウムを添加することによって反応をクエンチした。アンモニアを蒸発させ、そして水(250mL)を残留物に加えた。生成した混合物を1M塩酸(水性)で中和した。沈殿した生成物を濾過により集め、水及びアセトニトリルで洗浄し、そして真空で乾燥させて表題化合物3.38g(収率81%)を得た。
1H NMR (DMSO−d6) 12.81 (br s, 1H); 8.45 (br s, 2H), 4.84 (br s, 1H), 3.55−3.40 (m, 2H), 3.02 (s, 3H), 1.48 (m, 2H), 1.21 (m, 2H), 0.87 (t, 3H); MS (ESI) m/z 300 [M+1]+.
【0126】
g)(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(6−クロロピリジン−3
−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)(メチル)アミノ]ペンタン−1−オール
【化41】

(2R)−2−[(2−アミノ−5メルカプト[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)(メチル)アミノ]ペンタン−1−オール(96mg,0.32mmol)及び2−クロロ−5−[(1R)−1−クロロエチル]ピリジン(85mg,0.48mmol)から出発して一般的な方法Aを用いて表題化合物を製造した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤DCM:酢酸エチル)により精製して表題化合物22mg(収率16%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 8.51 (d, 1H), 7.99 (br s, 2H), 7.96 (dd, 1H), 7.45 (d, 1H); 4.98 (q, 1H); 4.73 (t, 1H); 4.46 (br s, 1H); 3.53−3.38 (m, 2H), 2.97 (s, 3H), 1.66 (d, 3H), 1.48 (m, 2H), 1.17 (m, 2H), 0.84 (t, 3H); MS (ESI) m/z 439 及び 441 [M+1]+.
【0127】
実施例7
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(6−クロロピリジン−3−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]ペンタン−1−オール
a)(2R)−2−{[2−アミノ−5−(ベンジルチオ)[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル]アミノ}ペンタン−1−オール
【化42】

5−(ベンジルチオ)−7−クロロ[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−アミン(6.0g,19.4mmol)をNMP(30mL)中に溶解した。DIPEA(8.4mL,48.5mmol)及び2−アミノ−(2R)−1‐ペンタノール(3.5g,33.9mmol)を加え、そして混合物を110℃で4日間加熱した。室温に冷却した後、混合物を水(200mL)中へ注いだ。沈殿した生成物を濾過により集め、水で洗浄し、そしてさらに精製することなく次の工程に用いた(7.0g,収率97%)。MS (ESI) m/z 376 [M+1]+.
【0128】
b)(2R)−2−[(2−アミノ−5−メルカプト[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]ペンタン−1−オール
【化43】

丸底フラスコは、ドライアイス−エタノール冷却器を備えており、そしてドライアイス−エタノール冷浴中に浸漬した。アンモニア(250mL)をフラスコ中に凝縮し、続いて(2R)−2−{[2−アミノ−5−(ベンジルチオ)[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル]アミノ}ペンタン−1−オール(6.8g,18.1mmol)を添加した。生成した混合物を−33℃に暖め、そして青色が現れて30秒間持続するまでナトリウム金属を小片で加えた。次いで、一さじの固形塩化アンモニウムを添加することによって反応をクエンチした。アンモニアを蒸発させ、そして水(250mL)を残留物に加えた。生成した混合物を1M塩酸(水性)で中和した。沈殿した生成物を濾過によって集め、水で洗浄し、そして真空で乾燥させて表題化合物4.15g(収率80%)を得た。
MS (ESI) m/z 286 [M+1]+.
【0129】
c)(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(6−クロロピリジン−3−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]ペンタン−1−オール
【化44】

(2R)−2−[(2−アミノ−5−メルカプト[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]ペンタン−1−オール(70mg,0.245mmol)及び2−クロロ−5−[(1R)−1−クロロエチル]ピリジン(実施例6b,52mg,0.29mmol)から出発して一般的な方法Aを用いて表題化合物を製造した。分取HPLCにより精製して表題化合物23mg(収率22%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) 8.50 (d, 1H); 7.99 (br s, 2H); 7.95 (dd, 1H); 7.44 (d, 1H); 6.91 (d, 1H); 4.95 (q, 1H); 4.11 (m, 1H); 3.41 (dd, 1H); 3.31 (dd, 1H); 1.64 (d, 3H); 1.56 (m, 1H); 1.41 (m, 1H); 1.4−1.2 (m, 2H); 0.85 (t, 3H); MS (ESI) m/z 425 及び 427 [M+1]+.
【0130】
実施例8
2−{(1S)−1−[(2−アミノ−7−{[(1R)−1−(ヒドロキシメチル)−3−メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−イル)チオ]エチル}イソニコチノニトリル
【化45】

【0131】
a)2−((S)−1−ヒデロキシ−エチル)−イソニコチノニトリル
【化46】

2−アセチル−イソニコチノニトリル(2.00g,13.7mmol)及び(−)−DIPCl(6.58g,20.53mmol)から出発し、一般的な方法Bに従って表題化合物を製造して90%eeで表題化合物(625mg,4.22mmol)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ 8.72 (d, 1H), 7.62 (s, 1H), 7.44 (dd, 1H), 4.96 (q, 1H), 1.54 (d, 3H).
【0132】
b) 2−((R)−1−クロロエチル)−イソニコチノニトリル
【化47】

NCS 1.0当量及びPPh3 1.0当量を用いたことを除いて、一般的な方法Cに従って、2−((S)−1−ヒドロキシ−エチル)−イソニコチノニトリル(620mg,4.18mmol)から表題化合物を製造した。24時間の反応時間後、さらにそれぞれ0.2当量のNC及びPPh3を加え、そして温度を30℃に12時間高めた。フラッシュカラムクロマトグラフィによる処理及び精製により82%eeで表題化合物(46mg,収率7%)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ 8.74 (d, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.46 (dd, 1H), 5.16 (q, 1H), 1.88 (d, 3H).
【0133】
c) 2−{(1S)−1−[(2−アミノ−7−{[(1R)−1−(ヒドロキシメチル)−3−メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−イル)チオ]エチル}イソニコチノニトリル
【化48】

2−((R)−1−クロロエチル)−イソニコチノニトリル(46mg,0.28mmol)及び(2R)−2−[(2−アミノ−5−メルカプト[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール(69mg,0.23mmol)から出発して一般的な方法Aに従って表題化合物を製造した。キラルHPLCによる精製(カラム:Chiralpak AD 50x150mm,溶離剤:ヘプタン:イソプロパノール85:15),流速60ml/分)により表題化合物(20mg,収率20%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 8.78 (d, 1 H) 8.00 (s, 1 H) 7.95 (s, 1 H) 7.72 (m, 1 H) 6.90 (m, 1 H) 5.14 (q, 1 H) 4.64 (t, 1 H) 4.23 (br s, 1 H) 3.23−3.41 (m, 2 H) 1.67 (d, 3 H) 1.64−1.52 (m, 1 H) 1.32−1.48 (m, 2 H) 0.87 (dd, 6 H); MS (ESI) m/z 430 [M+1]+.
【0134】
実施例9
実施例9a
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1R)−1−(3−クロロピリジン−4−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール及び
実施例9b
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(3−クロロピリジン−4−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール
【化49】

実施例4からの(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[1−(3−クロロピリジン−4−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール(105mg)のジアステレオマー混合物を分取HPLCによって分離して最初に溶出する異性体(実施例9a)14mgを得た:
1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 8.59 (s, 1H), 8.48 (d, 1H), 8.00 (s, 2H), 7.68 (d, 1H); 6.93 (d, 1H); 5.27 (q, 1H); 4.63 (t, 1H); 4.16 (br s, 1H); 3.42−3.30 (m, 2H), 1.64 (d, 3H), 1.58−1.30 (m, 3H), 0.84 (d, 3H), 0.74 (d, 3H); MS (ESI) m/z 439 及び 441 [M+1]+.
及び最後に溶出する異性体(実施例9b)15mgを得た:
1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ ppm 8.60 (s, 1H), 8.48 (d, 1H), 8.00 (s, 2H), 7.67 (d, 1H); 6.92 (d, 1H); 5.28 (q, 1H); 4.56 (t, 1H); 4.22 (br s, 1H); 3.33−3.12 (m, 2H), 1.62 (d, 3H), 1.60−1.30 (m, 3H), 0.88 (d, 3H), 0.85 (d, 3H); MS (ESI) m/z 439 及び441 [M+1]+.
【0135】
薬理学的スクリーニング
物質
組換え型ヒトフラクタルカイン(hCX3CL1)及び組換え型ヒトインターロイキン−8(IL−8又はhCXCL8)を、PeproTech Inc., UK.から購入した。組換え型[125I]−フラクタルカイン(ヒト)及び2200Ci/mmolの比活性を有する[125I] hIL−8を、NEN(R) Life Science Products, Inc., UK.から購入した。Fluo4−AMを、Molecular Probes, US.から購入した。他の全ての化学物質は、分析グレードであった。
【0136】
細胞
完全ヒトCX3CR1 cDNA(GenBank受託番号U20350)をヒト脳mRNA (Superscript, Life Technologies)から抽出し、そしてpCR−Blunt II TOPOベクター(InVitrogen)に結合した。hCX3CR1に対応する挿入断片を単離し、そしてさらにpcDNA3.1zeo中にサブクローニングした。プラスミドDNAは、Plasmid Midi Kit (Qiagen)を用いて製造した。次いで、製造者のプロトコールに従ってSuperfect Transfection Reagent (Qiagen)を用いてhCX3CR1の発現プラスミドを、キメラG−タンパク質Gαqi5を安定に発現するベクターを含むヒト胎生腎懸濁液(HEKS)293細胞系に導入した。ゼオシン(500μg/mL)及びハイグロマイシン(100μg/mL)選択を利用して安定なクローンを生成した。さらなる適用のため、ピリドキシンを含み、そして10%(v/v)ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、100U/mlペニシリン及び100mg/mlストレプトマイシン、250μg/mLゼオシン及び100μg/mLハイグロマイシンを補足したダルベッコ変性イーグル培地/ハム(Ham's nutrient mix)F12培地(DMEM/F12)中に細胞を維持した。
【0137】
AstraZeneca Charnwoodから入手したヒトCXCR2を発現する細胞を、Glutamaxを含み、そして10%FBS(PAA, Austriaから)、1%非必須アミノ酸(NEAA)、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシン(PEST)及び500μg/mLジェネティシン/G418を補足したEMEM中で培養した。
【0138】
膜標品
細胞を37℃及び5%COで成長させ、そして10mMトリス−HCl pH7.4、5mM EDTA、0.1mg/mlバシトラシンを含む緩衝液中で、60〜80%集密で収穫した。細胞を300xgで10分間遠心分離し、そしてペレットを収穫緩衝液(harvesting buffer)(10mMトリス−HCl,pH7.4、5mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び0.1mg/mlバシトラシン)中に再懸濁し、プールし、そしてDounceホモジナイザーを用いて均質化した。ホモジネートを48000xgで10分間遠心分離し、そしてUltra−Turrax T8を用いて収穫緩衝液中に再懸濁した。膜アリコートを−80℃で保存した。Harringtonによって記載されたようにマイクロタイタープレート中でタンパク質濃度を測定した(1990, Anal. Biochem. 186, 285−287)。
【0139】
インビトロ受容体結合アッセイ
125I]フラクタルカインの競合結合研究を総容積1000μL/ウェルの2mL96ディープウェルプレート(Beckman, Germany)中で実施した。各ウェルには、アッセイ緩衝液(50mM Hepes−KOH,pH7.4,10mM MgCl,1mM EDTA,0.1%(w/v)ゼラチン)中に10pM[125I]−フラクタルカイン、及び1pMの受容体濃度と同等の膜が含まれる。10種の濃度(2点/ログ単位)の試験化合物をDMSO中に予め溶解し、そして加えて1%(v/v)DMSOの最終濃度に到達させた。膜を添加してアッセイを開始し、そして25℃で24時間インキュベートした。0.3%ポリエチルイミンで前処理したWhatman GF/Bガラス繊維フィルタを通して急速濾過することによって反応を停止し、その後、Brandel受容体結合収穫器を用いて氷冷緩衝液(10mM Hepes−KOH pH7.4,500mM NaCl)で洗浄した。シンチレーションカクテルを加え、そしてPackard 2500TR液体シンチレーションカウンター(Perkin Elmer, USA)で放射活性を測定した。
【0140】
125I]−hIL−8の競合結合研究は、最終体積200μLを有する白色透明ボトム96ウェルイソプレート中、一つ組で(in singlicates)実施し、そして各ウェルには、アッセイ緩衝液[50mM HEPES−KOH pH7.4,10mM MgCl,1mM EDTA,0.5%(w/v)ゼラチン]中に150pM[125I]−hIL−8(比活性2200Ci/mmol)、20pM受容体と同等の膜−SPA標品及びSPA−ビーズ1.5mgが含まれていた。試験化合物を上のように処理した。非特異的結合は、500nM非標識化hIL−8の存在下で測定した。アゴニストhIL−8(3pMから30nMまでの濃度−反応曲線)を各試験の場合に参照化合物として用いた。ペプチド曲線は、DMSOを含まない。結合反応は、140μL膜−SPA標品の添加によって開始し、そして試料を暗所にて室温で4時間インキュベートした。アッセイプレートを、液体シンチレーションカウンター中でカウントした(PerkinElmer, USAからのWallac MicroBeta(R) TriLux 1450)。
【0141】
35S]GTPγS結合
35S]GTPγS結合研究は、透明ボトムマイクロタイタープレート中、二つ組で(in duplicate)DMSO(最終濃度(conc)1%)中に希釈した10種の濃度の阻害剤(2濃度/ログ単位)を用いて室温で実施した。hCX3CR1受容体を発現する膜(最終濃度20μgタンパク質/ウェル)をSPAビーズ(最終濃度1mg/ウェル)と共に加え、すべてGTPγS結合緩衝液(50mMトリス−HCl,100mM NaCl,0.1%ゼラチン,15μgサポニン/mL及び3μM GDP,室温でpH7.4)中に懸濁した。最大刺激のため310pMフラクタルカインを添加する前に、膜、SPAビーズ及び薬物を30分プレインキュベートした。基礎活性は、フラクタルカイン刺激(GTPγS結合緩衝液)なしで見出される活性として定義した。さらに30分後、最終濃度0.1nM及び最終アッセイ体積0.2mLに[35S]GTPγSを添加して反応を開始した。30分後に2000rpmで2x5分間(異なる方向)遠心分離することによって実験を終了し、そして液体シンチレーションカウンター(Wallac MicroBeta(R) TriLux 1450)で放射活性を測定した。
【0142】
結果
本発明の化合物についての典型的なCX3CR1 Ki値は、約0.1〜約1000nMの範囲である。CX3CR1 Kiについての別の値は、約0.1nM〜約500nMの範囲である。CX3CR1 Kiについてのさらなる値は、約0.1nM〜約25nMの範囲である。最終的な化合物についてのインビトロhCX3CR1結合実験の結果を表1に示す。
【0143】
【表1】

【0144】
1がMeを表す本発明の化合物(5−位に分枝チオアルキルピリジル基を含む)は、R1がHを表す対応する関連化合物よりも、CX3CR1受容体でより強力なアンタゴニスト及び/又はCXCR2受容体であまり強力でないアンタゴニストの両方である。CX3CR1受容体の拮抗作用に関するこのような高められた選択性は、有意な治療上の利益を生じることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩基としての、式(I)
【化1】

(式中:
1は、CH3又はCF3を表し;
2は、ハロ、CN又はC1-6アルキルを表し;
3は、H又はCH3を表し;
4は、H又はCH3を表し;
nは、0、1又は2を表す)
の化合物又はその医薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは塩の溶媒和物。
【請求項2】
nが1を表す、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
1がCH3を表す、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
2がハロ又はCNを表す、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
2がF又はClを表す、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
2がCNを表す、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
nが1を表し;R1はCH3を表し;そしてR2は、F、Cl又はCNを表す、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
ピリジンがその5−位に結合しており、そして2−位にClを有する、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
ピリジンがその2−位に結合しており、そして4−位にCNを有する、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
ピリジンがその2−位に結合しており、そして5−位にFを有する、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
ピリジンがその2−位に結合しており、そして5−位にClを有する、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
ピリジンがその2−位に結合しており、そして3−位にFを有する、請求項1記載の化
合物。
【請求項13】
ピリジンがその4−位に結合しており、そして3−位にClを有する請求項1の化合物。
【請求項14】
3がHを表す、請求項1記載の化合物
【請求項15】
4がCH3を表す、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
遊離塩基として、
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(5−クロロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(5−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[1−(3−クロロピリジン−4−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(3−クロロピリジン−4−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1R)−1−(3−クロロピリジン−4−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(3−フルオロピリジン−2−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]−4−メチルペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(6−クロロピリジン−3−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)(メチル)アミノ]ペンタン−1−オール;
(2R)−2−[(2−アミノ−5−{[(1S)−1−(6−クロロピリジン−3−イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−7−イル)アミノ]ペンタン−1−オール;及び
2−{(1S)−1−[(2−アミノ−7−{[(1R)−1−(ヒドロキシメチル)−3−メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−5−イル)チオ]エチル}イソニコチノニトリル;
から選ばれる化合物又はその医薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは塩の溶媒和物。
【請求項17】
薬剤として使用するための請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
【請求項18】
医薬上許容しうる希釈剤又は担体と混合された請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩。
【請求項19】
神経変性障害、脱髄性疾患、心血管性及び脳血管性アテローム性動脈硬化障害、末梢血管疾患、関節リウマチ、肺疾患、例えばCOPD、喘息又は疼痛のような疾患又は状態にかかっているか又はかかりやすい人に請求項1〜16のいずれか1項に定義された、治療上有効量の式(I)の化合物、又はその医薬上許容しうる塩を投与することを含む、該疾患又は状態を治療するか又は危険性を軽減する方法。
【請求項20】
多発性硬化症のような疾患又は状態にかかっているか又はかかりやすい人に請求項1〜16のいずれか1項に定義された治療上有効量の式(I)の化合物、又はその医薬上許容しうる塩を投与することを含む、多発性硬化症を治療するか又は危険性を軽減する方法。
【請求項21】
アテローム性動脈硬化症のような疾患又は状態にかかっているか又はかかりやすい人に請求項1〜16のいずれか1項に定義された治療上有効量の式(I)の化合物、又はその医薬上許容しうる塩を投与することを含む、プラークの組成物を変えてプラーク破裂及びアテローム血栓症のイベントの危険性を軽減することによってアテローム性動脈硬化症を治療又は予防する方法。
【請求項22】
アテローム性動脈硬化症のような疾患又は状態にかかっているか又はかかりやすい人に請求項1〜16のいずれか1項に定義された治療上有効量の式(I)の化合物、又はその医薬上許容しうる塩を投与することを含む、新しいアテローム硬化性病変又はプラークの形成を予防する及び/又は軽減することによって並びに/又は既存の病変及びプラークを予防する又は進行を遅らせることによってアテローム性動脈硬化症を治療又は予防する方法。
【請求項23】
脳卒中又は一過性脳損傷(TBI)のような疾患又は状態にかかっているか又はかかりやすい人に、請求項1〜16のいずれか1項に定義された治療上有効量の式(I)の化合物、又はその医薬上許容しうる塩を投与することを含む、該疾患又は状態の治療又は予防方法。
【請求項24】
神経変性障害、脱髄性疾患、心血管性及び脳血管性アテローム性動脈硬化症障害、末梢血管疾患、関節リウマチ、肺疾患、例えばCOPD、喘息又は疼痛を治療又は予防する薬剤の製造における請求項1〜16のいずれか1項に定義された式(I)の化合物、又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項25】
多発性硬化症を治療又は予防する薬剤の製造における請求項1〜16のいずれか1項に定義された式(I)の化合物、又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項26】
プラークの組成を変えてプラーク破裂及びアテローム血栓症のイベントの危険性を軽減することによってアテローム性動脈硬化症を治療又は予防する薬剤の製造における請求項1〜16のいずれか1項に定義された式(I)の化合物又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項27】
新しいアテローム硬化性病変又はプラークの形成を予防する及び/又は軽減することによって並びに/又は既存の病変及びプラークを予防するか又は進行を遅らせることによってアテローム性動脈硬化症を治療又は予防する薬剤の製造における請求項1〜16のいずれか1項に定義された式(I)の化合物、又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項28】
脳卒中又は一過性の脳損傷(TBI)を治療又は予防する薬剤の製造における請求項1〜16のいずれか1項に定義された式(I)の化合物、又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項29】
a) 式(II):
【化2】

(式中、R3及びR4は、式(I)に定義されたとおりである)の化合物を、
式(III):
【化3】

(式中、R1、R2及びnは式(I)に定義されたとおりであり、そしてL1は脱離基を表す)の化合物と反応させるか;又は
b) 式(IV)
【化4】

(式中、R1、R2及びnは式(I)に定義されたとおりであり、そしてL2は脱離基を表す)の化合物を式(V)
【化5】

(式中、R3及びR4は、式(I)に定義されたとおりである)の化合物と反応させ;
そして必要に応じて、生成した式(I)の化合物又はその別の塩をその医薬上許容しうる塩に転換するか;又は生成した式(I)の化合物をさらなる式(I)の化合物に転換し;そして所望により、生成した式(I)の化合物をその光学異性体に転換すること:
を含む、請求項1〜16のいずれか1項に定義された式(I)の化合物、又はその医薬上許容しうる塩の製造方法。

【公表番号】特表2010−504963(P2010−504963A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530309(P2009−530309)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000858
【国際公開番号】WO2008/039139
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】