説明

新規のNK1およびNK2拮抗薬

本発明は、タキキニン受容体に拮抗する式Iの新規の3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸ペルヒドロキシアルキルメチル−ピペラジン化合物に関する。本発明は、さらに、このような化合物を含む医薬組成物、このような化合物の製造方法およびこれらの方法の中間生成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
本発明は、タキキニン受容体に拮抗する式Iの新規の3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸ペルヒドロキシアルキルメチル−ピペラジン化合物に関する。本発明は、さらに、このような化合物を含む医薬組成物、このような化合物の製造方法およびこれらの方法の中間生成物に関する。
【0002】
背景
タキキニンは、天然の神経ペプチド物質P、ニューロキニンAおよびニューロキニンBを含む。タキキニンは、大型哺乳類動物およびヒトに発生する受容体の作用薬、例えば、ニューロキニン(=NK)1受容体、NK2受容体およびNK3受容体として作用する。タキキニン受容体に拮抗する人工的に製造された化合物は、通常、上記の3つの受容体サブタイプの1つまたは複数に対する相対的な結合能に従い分類される。生理学的プロセスにおいて、タキキニンは、例えば、痛み、嘔吐、神経原性炎症、膀胱炎、炎症性関節症または喘息性愁訴の伝達において重要な役割を果たす。
【0003】
特に、NK1受容体の拮抗薬として作用するピペラジン誘導体は、すでに国際公開第2004/033428A1号により公知である。
【0004】
特に、NK2受容体の拮抗薬として作用するピペラジン誘導体は、すでに欧州特許第1293506A1号により公知である。
【0005】
さらに、タキキニン受容体の拮抗薬として作用することができるピペラジン誘導体は、国際公開第96/10568号により公知である。
【0006】
本発明の目的は、タキキニン受容体であるNK1およびNK2に拮抗する特性および改善された作用プロフィールを有する新規の活性物質を提供することであり、これは、呼吸器疾患、特に、喘息、気管支炎、咳および鼻炎;皮膚疾患、特に、炎症性皮膚反応、アレルギー性皮膚反応および乾癬;関節症の疾患、特に関節炎、血管炎および全身性紅斑性狼瘡;消化管の機能的または炎症性障害、特に、偽膜性大腸炎および下痢;膀胱炎および間質性膀胱炎等のブレブ疾患および片頭痛の治療および/または予防に特に適切である。本発明の化合物は、IBS等の消化管の機能的および炎症性障害等の末梢性障害の治療に特に適切である。
【0007】
現在、驚くことに、新規の3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸ペルヒドロキシアルキルメチル−ピペラジン化合物の基が、タキキニン受容体、特にNK1受容体およびNK2受容体に拮抗する特性により区別され、末梢領域に指向される特徴的な作用構成物質を有すことを見つけている。それに応じて、本発明における化合物の基は、末梢障害の治療に特に適切であると思われ、この場合、タキキニン、特にニューロキニンAは、例えば、呼吸器疾患、特に、喘息、気管支炎、咳および鼻炎;皮膚疾患、特に、炎症性皮膚反応、アレルギー性皮膚反応および乾癬;関節症の疾患、特に関節炎、血管炎および全身性紅斑性狼瘡;消化管の機能的または炎症性障害、特に、偽膜性大腸炎および下痢;膀胱炎および間質性膀胱炎等のブレブ疾患および片頭痛の治療および/または予防において移動剤として関与する。
【0008】
本発明の化合物の別の利点は、非常に均衡のとれた結合NK1およびNK2プロフィールである。
【0009】
本発明の化合物の別の利点は、NK1およびNK2プロフィール間の相乗効果である。
【0010】
本発明の開示
本発明の主題は、一般式I
【化1】

[式中、
R1は、水素およびC1〜C4アルキルからなる群から選択され、
R2は、ハロゲンであり、
R3は、ハロゲンであり、
R4は、2−フラニル、3−フラニル、2−チオフェン、3−チオフェン、フェニル、ベンジル、2−ベンゾフラニル、3−ベンゾフラニル、5−クロロ−2−チオフェン、4−メチルフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−ピリジニル、3−ピリジニル、1−ベンゾ[c]チオフェン、4−ベンゾ[c]チオフェン、5−ベンゾ[c]チオフェン、2−ベンゾ[b]チオフェン、3−ベンゾ[b]チオフェン、4−ベンゾ[b]チオフェン、5−ベンゾ[b]チオフェン、6−ベンゾ[b]チオフェン、7−ベンゾ[b]チオフェン、1−ベンゾ[1,3]ジオキソール、4−ベンゾ[1,3]ジオキソールおよび5−ベンゾ[1,3]ジオキソールからなる群から選択され、
R5は、水素およびR6からなる群から選択され、
R6は、一般式
【化2】

(式中、
R7は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR8、R9、R10およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R8は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R9、R10およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R9は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R8、R10およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R10は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R8、R9およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R11は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R8、R9およびR10からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
kは、0または1であり、
lは、0または1であり、
mは、0または1であり、
nは、0または1である)
の部分基を表す]
の新規の3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸ペルヒドロキシアルキルメチル−ピペラジン化合物またはその生理学的に適合可能な酸付加塩である。
【0011】
さらに、本発明の主題は、式Iの化合物を含む医薬組成物である。さらに、本発明の主題は、式Iの化合物の製造方法およびこれらの方法のための中間体生成物である。
【0012】
詳細な説明
本発明において使用される医薬組成物という語句は、本発明の化合物および医薬組成物に慣用の医薬補助剤および/または担体の薬理学的有効量を含む医薬組成物を意味する。
【0013】
本発明の主題は、上記の一般式Iの新規の3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸ペルヒドロキシアルキルメチル−ピペラジン化合物である。この場合、ハロゲン、フッ素、塩素または臭素を表す式Iの化合物の置換基が適切である。塩素が好ましい。(ヘテロ)アリールの表記は、本発明の範囲内で、おそらくアリールおよびヘテロアリール基をともに含むこととして理解される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、R1は、メチルを表す。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態において、R2およびR3は、それぞれ塩素を表す。
【0016】
本発明の別の好ましい実施形態において、R4は、2−フラニル、3−フラニル、2−チオフェン、3−チオフェン、フェニル、ベンジル、2−ベンゾフラニル、5−クロロ−2−チオフェン、4−メチルフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2−メトキシフェニルおよび4−メトキシフェニルからなる群から選択される。
【0017】
本発明の別の好ましい実施形態において、R4は、2−フラニル、3−フラニル、2−チオフェンおよび3−チオフェンからなる群から選択される。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態において、R5は、水素を表す。
【0019】
本発明の別の好ましい実施形態において、R7およびR11は、それぞれ水素を表し、kは、1を表し、l、m、nは、それぞれ0である。
【0020】
本発明の別の好ましい実施形態において、R7、R8およびR11は、それぞれ水素を表し、kおよびlは、それぞれ1であり、mおよびnは、それぞれ0である。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態において、R7、R8、R9およびR11は、それぞれ水素を表し、k、lおよびmは、それぞれ1であり、nは、0である。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態において、R7〜R11は、それぞれ水素を表し、k、lおよびmは、それぞれ1であり、nは、0である。
【0023】
本発明の別の好ましい実施形態において、キラル中心*Cは、S配置である。
【0024】
この場合、R7、R8、R9、R10およびR11からなる群由来の部分基R6により包含される置換基と、場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環、特に、メチレン、1,1−ジメチルメチレン、1,1−スピロ−テトラメチレン−メチレンまたは1,1−スピロ−ペンタメチレン−メチレンより架橋された5または6環を表すこの群から選択される別の置換基が、適切である。それに対応して、カルボニルにより架橋された5または6環は、環状炭酸塩と見なされる。kは、好ましくは、1を表す。nは、好ましくは0を表す。従って、R6は、場合により置換された1,2−ジオール基、1,2,3−トリオール基または1,2,3,4−テトロール基を表す。置換基R8、R9、R10およびR11を担持する炭素原子は、不斉であり、それぞれ2つの異なる配置において発生することができる。このため、R7は、いくつかの立体異性体形態として発生することができる。本発明はまた、部分基R7の立体異性体形態の混合物を含有する式Iの化合物に加えて、異性体的に純粋な部分基R7を含有する式Iの化合物を包含する。好ましい部分基R7は、リキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル、キシロ−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル、アラビノ−1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル、トレオ−1,2,3−トリヒドロキシプロピル、エリトロ−1,2,3−トリヒドロキシプロピルおよびグリセロ−1,2−ジヒドロキシエチルである。部分基R7を基礎とするD型の炭水化物から選択された炭水化物は、おもに最も役立つ結果を生じる。ジアステレオマー的に純粋部分基R7が好ましい。
【0025】
式Iの特に好ましい化合物は、以下からなる群から選択される:
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
(2S,3R)−2−(アセチルオキシ)−3−{4−[(3S)−4−[3−シアノ−1−ナフトイル](メチル)アミノ]−3−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]ピペラジン−1−イル}−3−(2−フリル)プロピル酢酸;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[1−(2−フリル)−2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S,3R,4R)−1−(2−フリル)−2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S,3S,4R)−1−(2−フリル)−2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S,3S,4R)−2,3,4,5−テトラヒドロキシ−1−(3−チエニル)ペンチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S,3R,4R)−2,3,4,5−テトラヒドロキシ−1−(3−チエニル)ペンチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[1−(2−フリル)−2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[1−(2−フリル)−2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S)−2,3−ジヒドロキシ−1−(3−チエニル)プロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−2,3−ジヒドロキシ−1−(2−チエニル)プロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(S)−[(4S)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル](3−チエニル)メチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−(4−{[(R)−2−フリル[(4S)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S)−1−(3−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S)−2,3−ジヒドロキシ−1−フェニルプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S)−2,3−ジヒドロキシ−1−(4−メトキシフェニル)プロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
N−[(2S)−4−{4−[(1R,2S)−1−(1−ベンゾフラン−2−イル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−3−シアノ−N−メチル−1−ナフタミド;
N−[(2S)−4−{4−[(1R,2S)−1−(5−クロロ−2−チエニル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−3−シアノ−N−メチル−1−ナフタミド;
N−[(2S)−4−{4−[(1S,2S)−1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−3−シアノ−N−メチル−1−ナフタミド;および
N−[(2S)−4−{4−[(1R,2S)−1−(1−ベンゾチエン−2−イル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]3−シアノ−N−メチル−1−ナフタミド。
【0026】
プロセス1:本発明の化合物は、式II
【化3】

の化合物を塩素源、好ましくはシュウ酸ジクロライドと反応させることにより製造し、式III
【化4】

の化合物を得ることができる。
【0027】
式IIIの化合物を一般式IV
【化5】

の化合物と反応させ、一般式V
【化6】

[式中、R1、R2およびR3は、上記に定義された意味を有する。]の化合物を得る。一般式Vの化合物を塩化メタンスルホニルと反応させ、一般式VI
【化7】

[式中、R1、R2およびR3は、上記に定義された意味を有する。]の化合物を得る。一般式VIの化合物を最初にアルカリ金属ハロゲン化物MX[式中、Mは、アルカリ金属、好ましくはナトリウムを表し、Xは、ハロゲン、好ましくはヨウ化物を表す]と反応させ、続いて一般式XIX
【化8】

[式中、SGは、切断可能な保護基、好ましくはtertブトキシカルボニルを表す]
の化合物と反応させ、一般式VIa
【化9】

[式中、R1、R2およびR3は、上記に定義された意味を有する。]の化合物を得る。一般式VIaの化合物を、酸性媒体において加水分解し、一般式VII
【化10】

[式中、R1、R2およびR3は、上記に定義された意味を有する。]の化合物を得る。一般式VIIの化合物は、一般式VIII
【化11】

の化合物および一般式IX
【化12】

の化合物と反応させ、場合によりその生理学的に適合可能な酸付加塩に変換される一般式Iの化合物を得る[式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、上記に定義された意味を有する]。
【0028】
プロセス2:本発明の化合物はまた、一般式X
【化13】

の化合物と一般式VIII
【化14】

の化合物および一般式IX
【化15】

の化合物を反応させることにより製造され、一般式XI
【化16】

[式中、R4、R5およびR6は、上記に定義された意味を有する。]の化合物を得ることができる。次いで、一般式XIの化合物を酸性媒体において加水分解し、一般式XII
【化17】

[式中、R4、R5およびR6は、上記に定義された意味を有する。]の化合物を得る。一般式XIIの化合物を一般式XIII
【化18】

の化合物と反応させ、一般式XIV
【化19】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、上記に定義された意味を有する。]の化合物を得る。次いで、一般式XIVの化合物を酸性媒体において加水分解し、一般式XV
【化20】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、上記に定義された意味を有する。]の化合物を得る。次いで、一般式XVの化合物を式IIIの化合物と反応させ、場合によりその生理学的に適合可能な酸付加塩に変換される一般式Iの化合物を得る[式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、上記に定義された意味を有する]。
【0029】
プロセス2を、以下のような方法で修飾することができ、一般式XII
【化21】

の化合物を一般式XVI
【化22】

の化合物と反応し、一般式XIVの化合物を得る[式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、上記に定義された意味を有する]。次いで、一般式XVI
【化23】

の化合物を上記のように反応させる。
【0030】
プロセス3:本発明の化合物はまた、一般式II
【化24】

の化合物を塩素源と反応させることにより製造し、式III
【化25】

の化合物を得ることができる。
【0031】
次いで、式IIIの化合物を、一般式IV
【化26】

の化合物と反応させ、一般式V
【化27】

の化合物を得る。
【0032】
一般式Vの化合物の化合物を酸化させて一般式VI
【化28】

の化合物を得る。
【0033】
一般式XVIIの化合物を一般式XII
【化29】

の化合物と反応させ、場合によりその生理学的に適合可能な酸付加塩に変換される一般式Iの化合物を得る。
【0034】
一般式VIIまたはXの化合物それぞれが、一般式VIIIおよびIXの化合物と反応し、一般式Iの化合物の形成を生じる、プロセスIおよびIIIの反応は、それぞれボロン酸のマンニッヒ反応(例えば、N.A.Petasis et al.,Journal of the American Chemical Society 120(1998)11798−11799,国際公開第98/00398号または国際公開第00/24510号を参照)の状態下において公知の方法において実施することができる。これに従い、式VIIまたはXの化合物を、式VIIIのボロン酸および式IXの炭水化物とワンポット反応の様式において反応させることができ、この炭水化物は、場合により、反応条件下において不活性である溶剤の適切な保護基により保護される。炭水化物の適切な保護基は、例えば、J.A.W.McOmie,"Protective Groups in Organic Chemistry",Plenum Press,1973,またはT.W.Green,P.G.Wuts,"Protective Groups in Organic Synthesis",Wiley and Sons,1999によりそれ自体公知である。双極性プロトン性有機溶剤であり、例えば、低級アルカノール、例えば、直鎖または分岐鎖C1-4アルカノール、好ましくはエタノール、あるいはこれら上記の溶剤と水または双極性非プロトン性溶剤、例えば低級ハロアルカン、好ましくは、ジクロロメタンの混合物である適切な溶剤が適切である。適切な反応温度は、室温〜溶剤または溶剤混合物の沸点である。式VII、X、VIIIおよびIXの化合物をこの所与の順で連続して結合することができる。同様に、それはまた、最初に式VIIの化合物と式IXの化合物を結合し、次いで式VIIまたはXの化合物と結合することが可能である。式Iの化合物のこの結合反応により新たに生成される部分基R4、R5およびR6を担持するキラル中心は、通常、「抗」生成物として非常に高度のジアステレオ対照を用いて形成される。
【0035】
部分基R6の少なくとも1つの遊離ヒドロキシル基を担持する式Iの化合物は、所望の場合、次いで式XVIIのカルボン酸R12COOHと反応させることもでき、式中、R12は、炭素原子1〜3個を有する直鎖または分岐鎖アルキルを意味し、それにより、部分基R6の遊離ヒドロキシル基をアシル化する。通常、部分基R6の遊離ヒドロキシル基のこれらのペルアシル化の環境下において、行われる。式XVIIの酸またはそれらの反応性誘導体を、アシル化剤として使用することができる。特に、酸無水物および酸ハロゲン化物は、適切な反応性誘導体である。アシル化を、反応条件下、特に、−20℃〜室温にて不活性である有機溶剤において実施することができる。適切な溶剤は、特に、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼンまたはトルエン、環状または開鎖のジ低級アルキルエーテル、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドフラン(=THF)またはジオキサン、部分的にハロゲン化された低級炭化水素、例えば、ジクロロメタンまたはこれらの溶剤の混合物である。式XVIIの酸の酸無水物または酸ハロゲン化物をアシル化剤として使用する場合、アシル化は、酸結合試薬の存在下において、便宜上、行うことができる。適切な酸結合試薬は、反応混合物に溶解性の非求核性有機塩基、例えば、ピリジン、トリエチルアミンまたは4−ジメチルアミノピリジンである。過剰に使用された有機塩基は、同時に溶剤としても使用することができる。
【0036】
部分基R6の少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を担持する式Iの化合物は、所望の場合、上記の製造後に、式XVIIの化合物との反応の代わりに反応性カルボニル合成当量と反応させることができ、それにより部分基R6を、カルボニル化することができる。反応を、公知の方法において行うことができる。例えば、式Iの化合物を、反応条件下において不活性である有機溶剤において反応させることができる。適切な反応性カルボニル合成当量は、例えば、ホスゲンまたはホスゲンに類似の反応をする物質、例えば、ビス−(トリクロロメチル)炭酸塩(=トリホスゲン)、クロロギ酸トリクロロメチル(=ジホスゲン)または特にカルボニルジイミダゾールである。便宜上、酸結合試薬を反応混合物に添加することができる。適切な酸結合試薬は、式Iの化合物と式XVIIの化合物の反応において上記に得られた酸結合試薬である。適切な反応温度は、約−20℃〜室温である。
【0037】
部分基R6の少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を担持する式Iの化合物は、所望の場合、上記の製造後に、式XVIIの化合物との反応の代わりに、または反応性カルボニル合成当量との反応の代わりに、部分基R6のジ低級アルキルケトンまたはC5-6シクロアルキルケトンと反応させ、場合により低級アルキルまたはC4-5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環誘導体を生成することができる。好ましくは、アセトンは、ジ低級アルキルケトンとして適切である。好ましくは、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンがC5-6シクロアルキルケトンとして適切である。
【0038】
式Iの化合物が、水素以外の意味を有する部分基R6、R7、R8、R9、R10および/またはR11に含有される置換基において製造される場合、出発点は、好ましくはアルデヒド官能基に対して少なくともα位にて遊離ヒドロキシル基を含有する式IXの炭水化物化合物である。それは、式IXの化合物を用いて出発することが有利であり、式中、R7、R8、R9、R10およびR11が水素である。次いで、遊離ヒドロキシル基は、所望の場合、上記の方法においてアシル化、カルボニル化または適切なケトンと反応することができる。
【0039】
式VIIの化合物は、新規の活性物質の製造において、例えば、式Iの化合物の製造において中間体生成物として非常に適切である新規の化合物であり、これは、タキキニン受容体に拮抗する。
【0040】
式VIIの化合物を一般式VI
【化30】

[式中、R2およびR3は、上記の意味を有する]の化合物とアルカリ金属ハロゲン化物MX[式中、Mは、アルカリ金属、好ましくは、ナトリウムおよびXは、ハロゲン、好ましくはヨウ化物を表す]および一般式XIX
【化31】

[式中、SGは、切断可能な保護基、特に、tert.ブトキシカルボニルを表す]の保護されたピペラジン誘導体と反応させることにより製造し、一般式VIaの化合物を得、続いて、公知の方法において再度、保護基SGを切断し、一般式VIIの化合物を得ることができる。反応を、反応条件下において不活性な有機溶剤、例えば、芳香族炭化水素、特に、トルエンまたは環状もしくは開鎖のジ低級アルキルエーテル、特にTHFあるいは、好ましくは上記の溶剤の混合物において、および塩基の存在下において実施することができる。適切な塩基は、非求核性有機窒素塩基、例えば、tert低級アルキルアミン、例えば、トリエチルアミンである。適切な反応温度は、50℃〜100℃であり、好ましくは、およそ70℃〜90℃である。
【0041】
式VIの化合物を、一般式V
【化32】

[式中、R1、R2およびR3は、上記の意味を有する]の化合物を公知の方法において、塩化メタンスルホニルと反応させることにより製造することができる。式VIの化合物およびそれらの立体異性体形態は、例えば、欧州特許第0 474 561 A1号によりそれ自体公知であり、本明細書において記載されているプロセスに従い、または類似のプロセスに従い製造することができる。
【0042】
式XIIIの化合物を、一般式IV
【化33】

の化合物とtertブチルオキシカルボニル無水物を反応させることにより製造し、一般式XX
【化34】

[式中、R1、R2およびR3は、上記の意味を有する]の化合物を得ることができる。一般式XXの化合物は、塩化メタンスルホニルとさらに反応させ、一般式XXI
【化35】

[式中、R1、R2およびR3は、上記の意味を有する]の化合物を得る。一般式XXIの化合物は、続いて、アルカリ金属ハロゲン化物MX[式中、Mは、アルカリ金属、好ましくは、ナトリウムおよびXは、ハロゲン、好ましくはヨウ化物を表す]と反応させ、一般式XIII
【化36】

[式中、R1、R2およびR3は、上記の意味を有する]の化合物を得る。
【0043】
一般式XVIの化合物を当業者に公知のいくつかの方法において、化合物XXの酸化により、例えば、塩化オキサリルで活性化したジメチルスルホキシド(スワーン酸化)により、製造することができる。
【0044】
式VIII、IXおよびXIXの化合物は、それ自体公知であり、または当業者により、公知の方法の公知の化合物から製造することができる。使用に好ましい式IXの化合物は、D−キシロース、D−リキソース、D−アラビノース、D−トレオース、D−エリトロースならびにDおよびL−グリセルアルデヒドを含む。
【0045】
式Iの化合物は、反応混合物から単離し、公知の方法において精製することができる。酸付加塩は、従来の方法において、遊離塩基に変換することができ、これらは、所望の場合、公知の方法において、生理学的に適合可能な酸付加塩に変換することができる。式Iの化合物の生理学的に適合可能な塩は、無機酸、例えば、硫酸、リン酸もしくはハロゲン化水素酸、好ましくは塩酸、または有機酸、例えば、低級脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、例えば、マレイン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、あるいはスルホン酸、例えば、低級アルカンスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸もしくはトリフルオロメタンスルホン酸または場合によりハロゲンもしくは低級アルキルによりベンゼン環において置換されたベンゼンスルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸を有する従来の塩である。
【0046】
式Iの化合物は、ピペラジン環の4位の環窒素原子に対するアルファ位において、不斉炭素原子、すなわち、R2およびR3により置換されたフェニル環を担持する炭素原子*Cを含有する。この不斉炭素原子および部分基R4、R5およびR6を担持する不斉炭素原子ならびに場合により部分基R6に含有される不斉炭素原子により、式Iの化合物は、いくつかの立体異性体形態として存在することができる。本発明は、光学異性体の混合物および式Iの異性体的に純粋化合物をともに包含する。好ましくは、R2およびR3により置換されたフェニル環を担持する炭素原子*CがS配置である式Iの化合物である。出発化合物の光学異性体の混合物、例えば、式VIIの化合物または式IXの化合物を式Iの化合物の合成に使用する場合、式Iの化合物もまた、光学異性体の混合物の形態で得られる。出発化合物の立体化学的に均一な形態から出発すると、式Iの立体化学的に均一な化合物も得ることができる。式Iの立体化学的に均一な化合物は、光学異性体の混合物から、公知の方法において、例えば、キラル分割材料のクロマトグラフィーによる分割により、または適切な光学活性な酸、例えば、酒石酸または10−カンファースルホン酸との反応に続いて、得られたジアステレオマー塩の分別結晶によりそれらの光学活性な対掌体への分割により得ることができる。
【0047】
式Iの化合物およびそれらの酸付加塩は、タキキニン受容体に拮抗する特性を有し、それゆえ、大型哺乳類動物、特にヒトの病理学的状態の治療に適切であり、この時、タキキニンは、移動剤として関与する。本発明における化合物の基は、NK1およびNK2受容体に非常に選択的な親和性を特徴とする特定の有益な作用プロフィールにより区別される。さらに、本発明における化合物の基は、長期間の投与においても良好な適合性により、および比較的良好な経口利用性により区別される。これらの作用プロフィールにより、式Iの化合物は、タキキニン、例えば、NK1およびNK2受容体に結合するニューロキニンAを含むプロセスを阻害することに特に適切である。末梢領域にて有利に指向される作用により、式Iの化合物は、両性の大型哺乳類動物、特に、ヒトの呼吸器疾患、特に、喘息、気管支炎、咳および鼻炎;皮膚疾患、特に、炎症性皮膚反応、アレルギー性皮膚反応および乾癬;関節症の疾患、特に関節炎、血管炎および全身性紅斑性狼瘡;消化管の機能的または炎症性障害、特に、偽膜性大腸炎および下痢;膀胱炎および間質性膀胱炎等のブレブ疾患および片頭痛の治療および/または予防に特に適切であり、さらに、結腸領域の痛みに対する感受性の増加および/または便経路の障害を含む疾患を含む。本発明における化合物により治療することができる消化管の機能的障害は、特に、「過敏性腸症候群」(=IBS)という名で知られている腸管下部の障害を含む。IBSの診断における典型的な症状は、例えば、W.G.Thompson et al.,Gastroenterology International 2 (1989)92−95またはW.G.Thompson et al.,GUT45/11(1999)1143−1147に記載され、一般に、専門家の間では、「ローマ基準」として知られている。それに応じて、IBSの本質的な症状は、下腹部の痛みを含み、これは、内蔵の求心性中枢神経系の過敏性および例えば、便秘、下痢または便秘および下痢の交互の排便異常によると思われる。本発明における化合物の基により有利に影響されうる消化管のさらなる炎症性障害は、例えば、通常、「炎症性腸疾患」(=IBD)という語句により包含される小腸および大腸領域の炎症性障害、例えば、潰瘍性大腸炎またはクローン病である。これらの作用機序により、本発明における化合物は、さらに、他の障害の治療に適切であると思われ、この時、タキキニンおよび特にニューロキニンAを移動剤として含む。これらの障害は、例えば、神経原性炎症、炎症性関節症、例えばリウマチ様関節炎、喘息性愁訴、アレルギー性障害、免疫制御の障害、膀胱炎またはさらに機能的消化不良を含む。
【0048】
薬理学的試験方法の説明
以下に記載された薬理学的試験の試験物質として使用された式Iの化合物の所与の実施例番号は、以下に記載の製造実施例に関連する。
【0049】
1. in vitroのNK1受容体に対する試験物質の結合力の決定
オランダにおいて、ヒトNK1受容体に対する試験物質の親和性をin vitroで測定した。オランダにおいて、生理学的ニューロキニン(物質P)とニューロキニン1受容体結合の阻害を決定した。
【0050】
受容体結合試験は、リガンドとして[3H]−物質Pを用いて行われた。結合試験において、ヒトNK1受容体(関連核酸配列の「アクセス番号」=M74290;関連タンパク質配列の「アクセス番号」=P25103;Takeda,Y.,;Chou,K.B.,Takeda,J.;Sachais,B.S.and Krause,J.E;Biochemical and Biophysical Research Communications,179(3)(1991)1232−1240を参照)を発現するCHO細胞(=チャイニーズハムスターの卵細胞であるチャイニーズハムスター卵母細胞)の膜調製の様々な試料を、標識したリガンド溶液でインキュベートし、インキュベーション混合物は、試験物質を含まない、または様々な濃度の試験物質を含む。次いで、結合リガンドおよび遊離リガンドの分離を、ガラス線維製の濾過により各試料において行った。フィルターに残った分画を緩衝溶液で数回洗浄し、次いで、フィルターに残る分画の放射活性を、βシンチレーションカウンターを使用して測定した。
【0051】
実施例1〜14の化合物において、結合リガンドの最大置換半値をなす濃度を各試験物質のIC50として決定した。これにより、試験物質の当該阻害係数(Ki値)を算出し、Ki値の負の常用対数として明記した(=pKi値)。pKi値は、ヒトNK1受容体に対する試験物質の親和性の測定値である。この試験モデルにおいて、以下の表1に記載された試験物質は、所与のpKi値を呈した。
【0052】
第1表:ヒトNK1受容体に対する試験物質の親和性
【表1】

【0053】
上記の試験物質全ては、この試験モデルにおいて、少なくとも7.0のpKi値を呈した。実施例1〜14の化合物は、少なくとも7.9のpKi値を呈した。
【0054】
2. in vitroのNK2受容体に対する試験物質の結合力の決定
ヒトNK2受容体の試験物質の親和性をin vitroで測定した。その当該結合から基準リガンドとして使用される選択的NK2受容体拮抗薬SR48968(=サレデュタント(saredutant))を置換する試験物質の能力を決定した。
【0055】
受容体結合試験をリガンドとして放射活性物質で標識した[3H]−SR48968(Amersham)を用いて実施した。結合試験において、ヒトNK2受容体(調製において、N.P.Gerard et al.,Journal of Biological Chemistry 265/33(1990)20455−20462を参照)を発現するCHO細胞(=チャイニーズハムスターの卵細胞であるチャイニーズハムスターの卵母細胞)の膜調製の様々な試料を、標識したリガンド溶液で、試験物質を含有しないまたは様々な濃度の試験物質を添加したインキュベーション混合物と90分間(=分)インキュベートした。次いで、各場合、試料の膜結合リガンドを濾過により遊離リガンドから分離した。フィルターに残った分画を緩衝溶液で数回洗浄し、その後、その放射活性を、液体シンチレーションカウンターを使用して測定した。結合基準リガンドの最大置換半値をなす濃度を各試験物質のIC50として決定した。試験物質の阻害係数(Ki値)を各IC50値から算出し、その負の対数値として明記した(=pKi値)。
【0056】
実施例1〜14の化合物において、ヒトNK2受容体の親和性を各場合、濃度シリーズ10-6〜10-10mol/lの試験物質を少なくとも3回測定することにより決定した。測定が数回行われた場合、その平均を毎回記載した。pKi値は、ヒトNK2受容体に対する試験物質の親和性の測定値である。この試験モデルにおいて、以下の表2に記載された試験物質は、所与のpKi値を呈した:
第2表:ヒトNK2受容体に対する試験物質の親和性
【表2】

【0057】
上記の試験物質全ては、この試験モデルにおいて、少なくとも7.0のpKi値を呈した。実施例1〜14の化合物は、少なくとも6.9のpKi値を呈した。
【0058】
3. in vitroの単離されたモルモット組織における試験物質の機能性NK1拮抗作用の決定
オランダにおいて、試験物質のNK1受容体に拮抗する作用を、酸化栄養溶液に保持されたPirbright−Whiteモルモット大動脈の単離された環調製物においてin vitroで測定した。試験物質による、NK1作用薬物質Pで刺激後に引き起こされる大動脈調製物の緊張の弛緩の阻害を決定した。
【0059】
血管の筋収縮を測定するため、標本をフックに固定し、筋力測定装置に糸で接続し、各場合、収縮をプロッタ上に記録した。大動脈標本をフェニレフリンで緊張させた。次いで、試験物質の投与前後において、標本のNK1受容体を物質P0.01μmolで刺激し、これは、緊張の弛緩を引き起こした。試験物質の投与前後の弛緩を百分率で定量化した。緊張の弛緩の最大阻害半値の効果的な濃度(=EC50)を算出した。EC50値の負の常用対数(=pEC50)を特徴的な変数として得た。pEC50値は、NK1受容体の試験物質の機能的効果の測定値である。この試験モデルにおいて、以下の表3に記載の試験物質は、所与のpEC50値を呈した:
第3表:単離されたモルモット組織における試験物質の機能的NK1拮抗作用
【表3】

【0060】
4. in vitroの単離されたモルモット組織における試験物質の機能的拮抗作用の決定
試験物質のNK2受容体拮抗作用をPirbright−Whiteモルモットから単離された胆嚢標本において決定し、酸素飽和栄養溶液に保持した。これにおいて、標本を、一方を栄養溶液の器官固定器に、および他方を糸で筋力測定器にしっかり固定した。
【0061】
この試験において、胆嚢標本に存在するNK2受容体を天然のNK2受容体作用薬ニューロキニンA(=NKA;0.1μmol/l)で刺激し、それにより引き起こされた標本の収縮を測定された収縮mN(=予備値)として測定した。次いで、NKAをNKA非含有溶液で標本から洗浄して除去し、試験物質を10-7mol/lの濃度において添加した。試験物質で標本を2時間インキュベーション後、新しくしたNKAを添加することによりなお引き起こされた標本の収縮を再度測定し、結果をNKA添加のみにより引き起こされた、最初に測定された収縮に対して百分率として得た。収縮の50%阻害前後の少なくとも1つの濃度が決定されるまで(最大10-5mol/l)、対数ステップの全体または半分の結果の関数として次の実験において、試験物質の濃度を繰り返し増加した。各濃度において、収縮の阻害の平均値は、2〜4つの標本から算出した。各場合において、試験物質当たりの最大阻害濃度半値(IC50)を特徴的な変数として算出した。各場合において、試験物質当たりのIC50の対数値をpIC50[mol/l]として得た。この試験モデルにおいて、以下の表4に記載の試験物質は、以下に得たpIC50値を呈した。
【0062】
第4表:単離されたモルモット組織における試験物質の機能的NK2拮抗作用
【表4】

【0063】
5. NK1およびNK2拮抗作用の機能性細胞試験
ヒトタキキニン受容体における本発明の化合物の拮抗作用の効果の機能性細胞試験を組換え体ヒトNK1またはNK2受容体を発現するCHO細胞において行った。これらの試験において、細胞内カルシウムの移動の増加を誘導するリガンドの阻害およびMAPKのリン酸化を誘導するリガンドの阻害を決定し、これをタキキニン拮抗薬の機能活性の測定として使用した。さらに、様々なタキキニン受容体の基準化合物の拮抗作用特性を比較して特徴付けた。
【0064】
試験化合物の効果をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)線維芽細胞である、安定して発現するクローン化ヒトNK1またはNK2受容体を使用して評価した。NK受容体は、Gqに結合する。受容体に結合するリガンドによるGqタンパク質の活性化は、細胞内カルシウムの移動およびMAPKのリン酸化につながる。両系を使用して試験化合物の機能的効果を決定した。
【0065】
FLIPRを使用して、NK1およびNK2活性におけるCa2+測定
試験において、細胞を実験24時間前に黒色96ウェルマイクロプレートに播種した。細胞密度は、細胞2.2×104個/ウェルであった。全てのステップは、無菌状態下において行われた。細胞内カルシウム濃度の変化を観察するため、細胞をカルシウム感受性染料で負荷した。この染料(FLUO−4、Molecular Probes)を488nmにて励起し、カルシウムを有する複合体を形成する場合のみ、500nm〜560nmにおいて放射する。染料負荷において、コンフルエントな細胞層を阻害することなく、成長培地をウェルから吸引し、負荷培地(HBSS、4μM FLUO−4、0.005%(w/v)プルロン酸、2.5mMプロベネシド、20mM HEPES、pH7.4)100μlを自動ピペット装置(Multidrop、Labsystems)を使用して各ウェルに分注した。プルロン酸を添加して染料溶解性および細胞への染料取り込みを増加させ、この場合、陰イオン交換阻害剤である、プロベネシドを負荷培地に添加し、細胞内の染料の滞留を延長させた。細胞を5%CO2インキュベーターにおいて37℃で40分間インキュベートした。染料負荷後、細胞を洗浄緩衝液(HBSS、2.5mM プロベネシド、20mM HEPES、pH7.4)で3回洗浄し、基本蛍光強度(basal fluorescence)を低下させた。最後の洗浄ステップにおいて、緩衝液を吸引し、100μl洗浄緩衝液に置き換えた。拮抗作用スクリーニング様式において、化合物50μl(最終濃度10μM〜1.4nM)を物質P(最終濃度:10-8M;NK1作用薬)またはNKA(最終濃度:10-7M;NK2作用薬)の添加7分前に加えた。FLIPRセットアップパラメーターは、0.4秒照射長、フィルター1枚、液体添加50μl、ピペット高125μl、ミキシングなしの分注速度40μl/秒に設定した。最大蛍光変化をFLIPRソフトウェアの統計的関数を使用して得、データは、GraphPad Prism4を使用してプロットした。全ての測定点を対照作用薬の%阻害として表した。IC50値を、S字状用量反応曲線を使用して決定した。拮抗薬効力(pA2)値を、次式を使用して算出した:
pA2=−log(IC50/(1+[L]/EC50))
試験化合物のIC50を濃度効果関係から得た場合、[L]は作用薬(NK1試験において物質P、NK2試験においてNKA)の濃度であり、EC50は、各ヒトクローン化NK受容体(EC50物質P:10-9.6M;EC50 NKA:10-8.8M)時の作用薬の効力である。結果は表5に要約する:
第5表:NK1およびNK2におけるpA2データ
【表5】

【0066】
6. in vivoの試験物質のNK−1およびNK−2受容体拮抗作用の効果の決定
麻酔モルモットにおいて、試験物質のNK−1およびNK−2拮抗作用活性をin vivoで静脈内(=i.v.)および経口(=p.o.)投与後の各場合において調べた。本試験モデルを用いて、3つの異なる器官系(気道、結腸および循環)のNK−2拮抗作用効果および同時に動物のNK−1拮抗作用効果(血圧の急激な低下)をともに検出することが可能である。
【0067】
体重500〜700gのPirbright−Whiteモルモットをケタミン/キシラジン(初回量67/13mg/kg 皮下、必要な場合、追加投与)で麻酔した。動物に物質を投与するために静脈内カテーテルおよび血圧を測定するために動脈内カテーテルを入れた。動物は、気管支カニューレを介して人工的に換気させ、呼吸圧を圧力変換器により記録した。圧力変換器を使用して結腸運動をマノメーターに記録するために動物の結腸末端にバルーンを入れた。血圧、心拍数、呼吸圧および結腸圧を各動物において連続的に測定し、記録計にプロットし、デジタルデータ処理装置を使用した。ニューロキニンA(=NKA;200pmol/動物)をNK−1およびNK−2受容体を刺激するために試験刺激としてi.v.ボーラス投与した。この型のNKAの添加は、呼吸圧(気管支収縮)および結腸圧ならびに二相性の血圧低下を大きく増加させた。低血圧の第1相(=NKAの投与1分以内の最大低血圧相)は、NK−1受容体を介して媒介され、そのため、これらは特定のNK−1受容体拮抗薬により完全に遮断することができる。一方、遅延した低血圧の第2相(=2〜5分後の最大低血圧相)は、NK−2受容体を介して媒介され、そのため、これらは特定のNK−2受容体拮抗薬により遮断することができる。試験物質の投与は、ED50として得られ、これは、個々の測定パラメーターの気管支収縮、結腸圧および血圧の変化を特徴とする変数がNK−1またはNK−2により媒介された場合、それぞれ初期値の50%まで減少したNKA試験刺激に対して生じる。
【0068】
第6表:in vivoのモルモットにおける静脈投与後の式Iの試験物質のNK−1およびNK−2受容体拮抗作用の効果
【表6】

【0069】
試験物質の拮抗作用効果は、最初に累積形態で検討し、NKA試験刺激時間は、試験物質の各用量の投与1分後に終了した。累積用量効果曲線から得られたこれらのED50値を表6にプロットした。
【0070】
上記の表6にプロットした測定値は、特に、累積的i.v.投与後の構造式1、2および6〜11の物質(拮抗作用の検出は、試験物質の投与1分後に終了した)は、初期低血圧における顕著なNK−1受容体拮抗作用活性および結腸運動、血圧の後期低下および呼吸抵抗のNK−2受容体拮抗薬活性を引き起こした。
【0071】
さらに、試験物質の拮抗作用の効果の経時変化を検出するために、NKA試験刺激の作用を試験物質の経口投与後の様々な時間(1、30、60、90、120、150および180分)にて決定した。次いで、試験物質の拮抗作用の効果を試験物質投与後(投与後1〜180分)の試験期間にわたり「曲線下面積」(「AUC」)として決定し、そこから得られた経口投与後のED50を表7にプロットした。
【0072】
第7表:in vivoのモルモットにおける経口投与後の式Iの試験物質のNK−1およびNK−2受容体拮抗作用の効果
【表7】

【0073】
本発明における化合物、特に表7に示されたように構造式1および2の物質は、さらにNK2およびNK1受容体拮抗薬において経口により活性する。
【0074】
式Iの化合物を従来の医薬製剤として投与することができる。使用された用量を個々に変更することができ、処置される状態の型および使用される物質において、必然的に変更するだろう。しかし、一般に、個々の投与当たり0.2から200mg、特に1〜50mgの活性物質量を有する医薬形態は、ヒトおよび大型哺乳類動物の投与に適している。本発明において、化合物を、固体または液体医薬製剤として従来の医薬補助剤および/または担体と合わせて含有することができる。固体製剤の例は、経口投与されることができる製剤、例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル、粉末または顆粒あるいは別に座剤がある。これらの製剤は、従来の医薬無機および/または有機担体、例えば、タルカム、ラクトースまたはデンプン、さらに従来の医薬補助剤、例えば、潤滑剤または錠剤崩壊剤を含有することができる。活性物質の懸濁液または乳液などの液体製剤は、通常の希釈剤、例えば水、油および/または懸濁剤、例えば、ポリエチレングリコールおよび同等物を含有することができる。他の補助剤は、さらに、防腐剤、味覚矯正剤等を添加することができる。
【0075】
活性物質は、公知の方法において、医薬補助剤および/または担体と混合し、配合することができる。固体医薬品形態の生成において、活性物質を、例えば、従来の方法において補助剤および/または担体と混合することができ、湿式および乾燥造粒することができる。顆粒または粉末を、従来の方法において、直接カプセルに注入し、または錠剤コアに圧縮することができる。これらは、所望の場合、公知の方法において被覆することができる。
【0076】
以下の実施例は、本発明をさらに説明することを意図し、その範囲を制限しない。
【0077】
実施例1:
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]−ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド(プロセス1)
A)3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸(式II)58.0gをジクロロメタン600mlに懸濁した。DMF2mlを撹拌しながら連続して添加した。この最初の懸濁液に、ジクロロメタン65ml中シュウ酸ジクロライド35mlをゆっくり添加した。混合物を30℃〜40℃にて4時間撹拌した。得られた溶液を乾燥するまで濃縮し、3−シアノ−ナフタレン−1−塩化カルボニル(式III)67gを単離し、冷蔵庫で保存し、さらに精製することなく使用した。
【0078】
B)3S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−メチルアミノ−ブタン−1−オール(式IV)20gを室温にて撹拌しながらTHF200mlに懸濁した。水100mlに溶解したKOH12gを添加して溶液とした。3−シアノ−ナフタレン−1−塩化カルボニル(反応ステップA由来の式III)17.2gを添加し、3時間撹拌した。有機溶剤を除去し、残りの混合物を酢酸エチルおよびメチル−tert−ブチルエーテルを補充した。水相を除去する一方、有機相を水50mlで4回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。有機相を乾燥するまで濃縮し、帯黄色の固体(3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸[2S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−ヒドロキシ−ブチル]−メチル−アミド;式V)31.8gを得、これをさらに精製することなく使用した。
【0079】
C)3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸[2S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−ヒドロキシ−ブチル]−メチル−アミド(反応ステップB由来の式V))5.8gをジクロロメタン100mlに溶解した。トリエチルアミン2.2mlおよび塩化メタンスルホニル1.16mlを室温にて添加した。反応混合物を5時間撹拌し、2.5日間放置した。水を添加し、有機部分を硫酸ナトリウム上で乾燥し、乾燥するまで濃縮した。フォーム状の生成物(3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸[(2S)−2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−メチルスルホニル−ブチル]−メチル−アミド、式VI)6.65gを単離し、さらに精製することなく使用した。
【0080】
D)3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸[2S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−メチルスルホニル−ブチル]−メチル−アミド(反応ステップC由来の式VI)6.65gをアセトニトリル150mlに溶解した。ヨウ化カリウム1.84g、N−tert.ブトキシカルボニル−ピペラジン(式XIX)2.44gおよびトリエチルアミン2.2mlを添加し、混合物を加熱し、3時間還流した。室温に冷却後、反応混合物を一晩放置し、その後、水および酢酸エチルを添加した。有機相を水および重炭酸ナトリウム飽和溶液で洗浄した。硫酸ナトリウム上で有機相を乾燥し、真空下において溶剤を蒸発させ、3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸{2S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−[4−(2,2−ジメチル−プロピオニル)−ピペラジン−1−イル]−ブチル}−メチル−アミド(式VIa)7.8gを生成し、これをさらに精製することなく、さらなる反応に直接使用した。
【0081】
E)3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸{2S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−[4−(2,2−ジメチル−プロピオニル)−ピペラジン−1−イル]−ブチル}−メチル−アミド(反応ステップD由来の式VIa)6.6gをエタノール150mlに溶解し、5N HCl20mlを添加した。混合物を2日間撹拌し、炭酸ナトリウムで中和した。エタノールを蒸留にて除去し、生成物を酢酸エチルおよび水で抽出した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、乾燥するまで濃縮し、非晶性3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸[2S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−ピペラジン−1−イル−ブチル]−アミド(式VII)5.2gを得た。
【0082】
F)3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸[2S−(3,4−ジクロロ−フェニル)4−ピペラジン−1−イル−ブチル]−アミド(反応ステップE由来の式VII)3.0g、2−フランボロン酸(式VIII)806mgおよび80%純粋(D)−グリセルアルデヒド(式IX)945mgをエタノールにおいて加熱し、5時間還流した。混合物を室温にて一晩保持し、その後、有機溶剤を蒸留にて除去した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(酢酸エチル〜エタノール)、純粋結晶性3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド(式I)1.3gを得た。
【0083】
[α]D20=−27.6°(c=1、メタノール)
MS−データ(ES+):M+bei m/Z=635
融点=140〜142℃
実施例2:
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]−ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド(プロセス2)
A)tert.ブトキシカルボニル−ピペラジン(式X)23.0gを30℃の窒素下においてエタノール600mlに溶解した。2−フランボロン酸(式VIII)25gおよび80%純粋(D)−グリセルアルデヒド(式IX)22.0gをエタノール400mlにおいて加熱し、7時間還流した。混合物を室温に冷却し、乾燥するまで濃縮した。残留物を酢酸エチル200mlおよびメチル−tert.−ブチルエーテル50mlに溶解し、連続してKOH20gの水溶液200mlで洗浄した。残留物を、水150mlを6回に分けてさらに洗浄し、その後、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶剤の蒸発後、4−((2S)−1−フラン−2−イル−2−ヒドロキシ−プロピル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(式XI)54.7gを得た。
【0084】
[α]D20=+34.6°(c=1、メタノール)
融点=92〜93℃
B)4−((2S)1−フラン−2−イル−2−ヒドロキシ−プロピル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(反応ステップA由来の式XI)16.3gを撹拌しながらメチルtert.−ブチルエーテル50mlに溶解した。5N HCl160mlを添加し、溶液および濃い気体の発生を得た。24時間の撹拌後、溶液をメチル−tert.−ブチルエーテル200mlに注入し、さらに撹拌した。固体析出物を濾過し、メチル−tert.−ブチルエーテル20mlで洗浄した。60℃にて真空下において乾燥後、(2S)−1−フラン−2−イル−1−ピペラジン−1−イル−ブタン−2−オール二塩酸塩(式XII)13.5gを単離した。
【0085】
比旋光度:+14.0°(c=1、メタノール)
C)水150ml中炭酸水素ナトリウム28.4gを撹拌しながらTHF500ml中2S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−メチルアミノ−ブタン−1−オール(式IV)塩酸塩25gの懸濁液に添加した。THF200ml中tertブチルオキシカルボニル無水物21.1g溶液を添加し、結合された反応混合物を4時間撹拌した。THFを真空下において蒸留にて除去し、酢酸エチル500mlを残留物に添加した。炭酸ヒドロキシルナトリウムの飽和溶液100mlを添加後、水300mlを添加した。有機相を取り出し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。有機溶剤を取り出し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにおいて精製された油性材料を得て、ゆっくり結晶化する無色油性純粋材料として[(2S)−2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−ヒドロキシ−ブチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(式XX)29.5gを得た。[(2S)−2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−ヒドロキシ−ブチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(式XX)20gを窒素下の室温にてジクロロメタン150mlに撹拌しながら溶解し、これに、トリエチルアミン6mlおよび塩化メタンスルホニル3mlを滴下にて添加した。溶液を室温にて3日間撹拌し、最後に濃縮した。酢酸エチルおよびトルエン200mlを添加し、有機層を水100mlで、pH8〜9に達するまで炭酸水素ナトリウム飽和溶液で洗浄し、最後に水100mlで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、乾燥まで蒸発させ、当該メシル酸(式XXI)13.3gを得た。メシル酸13.3gを窒素下において室温にてアセトン200mlに撹拌しながら溶解し、ヨウ化ナトリウム22gを添加した。混合物を反応が完了する(3日間)まで撹拌した。アセトンを蒸留にて除去し、酢酸エチル200mlを添加し、チオ硫酸ナトリウム五水和物33gを水200mlに溶解した。次いで、水性相を分離し、有機相を連続して炭酸水素ナトリウムの飽和溶液100mlで洗浄後、水100mlで3回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、乾燥するまで濃縮し、[(2S)−2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−ヨウ素−ブチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(式XIII)15.1gを得た。
【0086】
D)THF10ml中[(2S)−2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−ヨウ素−ブチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(反応ステップC由来の式XIII)200mg溶液10mlを室温にて撹拌しながらTHF50ml中(2S)−1−フラン−2−イル−1−ピペラジン−1−イル−ブタン−2−オール二塩酸塩(反応ステップB由来の式XII)450mgおよびトリエチルアミン1mlの懸濁液に添加した。Na2CO3約100mgを添加し、混合物を沸騰させ、15時間還流した。室温に冷却後、懸濁液を真空下において濃縮し、残留物を酢酸エチル50mlおよびKOH200mg水溶液10mlに溶解した。有機相を水20mlで4回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、乾燥まで蒸発させ、期待されるアミンXIVとしてLC−MSにおいて同定された帯黄色の化合物203mgを得た。
【0087】
E)イソプロパノール中HCl(5N)3mlを室温にて撹拌しながら、塩化メチレン2mlにおいて30℃で溶解された反応ステップD)由来のアミンXIV460mgに添加した。1時間後、析出物が出現し、メチル−tert−ブチルエーテル50mlを添加し、混合物を15時間撹拌した。白色固体を濾過により単離し、メチル−tert.−ブチルエーテル10mlで3回洗浄し、80℃にて真空下において乾燥した。メチル−tert.−ブチルエーテルの残留量をメタノールに化合物を溶解することにより除去し、溶剤を蒸留にて除去し、さらに精製することなく使用されるフォーム状物407mg(収率:85%)を得た。
【0088】
F)塩化メチレン20ml中プロセス1)の3−シアノ−ナフタレン−1−塩化カルボニル(反応ステップA由来の式III)168mgの懸濁液をTHF10ml、水10mlおよびKOH200mgに溶解された反応ステップE)由来のアミン367mgに滴下にて添加した。室温にて15時間撹拌後、反応混合物を真空下において濃縮し、酢酸エチル30mlおよびメチル−tert.−ブチルエーテル30mlの混合物に再溶解した。有機相を水20mlで4回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下において乾燥するまで濃縮し、LC−MSおよびNMRにおいて同定された3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]−ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド(式I)420mgを得た。
【0089】
[α]D20=−27.6°(c=1、メタノール)
MS−データ(ES+):M+bei m/Z=635
融点=140〜142℃
実施例3:
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]−ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド(修飾プロセス2)
A)ジクロロメタン100ml中DMSO12.2gを撹拌しながら−70℃にて窒素下においてジクロロメタン100ml中塩化オキサリル7.3gに滴下にて添加した。得られた混合物をさらに15分間撹拌し、その後ジクロロメタン200ml中[2S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−ヒドロキシ−ブチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル20gを添加した。混合物を1時間−70℃にて撹拌し、その後、ジクロロメタン50ml中トリエチルアミン40.3mlを滴下にて添加した。溶液を−70℃にて15分間撹拌後、室温に加温させた。溶剤を除去し、残留物をトルエン300mlおよび酢酸エチル200mlに溶解した。得られた溶液をNaClの飽和水溶液200mlで6回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、乾燥するまで濃縮し、[(2S)−2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−オキソ−ブチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルアルデヒド(式XVI)19.7gを得た。
【0090】
B)プロセス2)の(2S)−1−フラン−2−イル−1−ピペラジン−1−イル−ブタン−2−オール二塩酸塩(反応ステップB由来の式XII)300mg、THF50ml中酢酸ナトリウム200mgおよび酢酸100μlの混合物をTHF20ml中[(2S)−2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−オキソ−ブチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルアルデヒド(反応ステップA由来の式XVI))280mgの懸濁液に添加した。得られた混合物を室温にて5時間撹拌した。続いて、トリアセトオキシボロハイドライドナトリウム240mgを添加し、懸濁液を室温にて15時間撹拌した。次いで、懸濁液を真空下において濃縮し、残留物を酢酸エチル30ml、メチル−tert.−ブチルエーテル30mlおよびKOH600mg水溶液に溶解した。有機相を水20mlで4回洗浄した。有機溶剤を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸留にて除去し、プロセス2のプロセスステップE)およびF)に従い、さらに精製することなく使用されるガラス状の化合物463gを得た。
【0091】
実施例4:
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]−ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド(プロセス3)
A)3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸(式II)58.0gをジクロロメタン600mlに懸濁した。DMF2mlを撹拌しながら連続して添加した。この最初の懸濁液に、ジクロロメタン65ml中シュウ酸ジクロライド35mlをゆっくり添加した。混合物を30℃〜40℃にて4時間撹拌した。得られた溶液を乾燥するまで濃縮し、3−シアノ−ナフタレン−1−塩化カルボニル(式III)67gを単離し、冷蔵庫で保存し、さらに精製することなく使用した。
【0092】
B)3S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−メチルアミノ−ブタン−1−オール(式IV)20gを室温にて撹拌しながらTHF200mlに懸濁した。水100mlに溶解したKOH12gを添加し、溶液とした。3−シアノ−ナフタレン−1−塩化カルボニル(反応ステップA由来の式III)17.2gを添加し、3時間撹拌した。有機溶剤を除去し、残りの混合物を酢酸エチルおよびメチル−tert.−ブチルエーテルで補充した。水相を除去する一方、有機相を水50mlで4回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。有機相を乾燥するまで濃縮し、さらに精製することなく使用される帯黄色の固体(3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸[2S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−ヒドロキシ−ブチル]−メチル−アミド;式V)31.8gを得た。
【0093】
C)ジクロロメタン100ml中DMSO25mlを撹拌しながら−70℃にて窒素下においてジクロロメタン100ml中塩化オキサリル9.7gに滴下にて添加した。得られたものをさらに15分間撹拌し、その後、ジクロロメタン200mlおよびDMSO6ml中(3−シアノ−ナフタレン−1−カルボン酸[2S−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−ヒドロキシ−ブチル]−メチル−アミド(反応ステップB由来の式V)31.7gを添加した。混合物を−70℃にてさらに1時間撹拌した。ジクロロメタン50ml中トリエチルアミン52mlを滴下にて添加した。溶液を−70℃にて15分間撹拌後、室温に加温させた。溶剤を除去し、残留物をトルエン300mlおよび酢酸エチル200mlに溶解した。得られた溶液をNaCl飽和水溶液200mlで6回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、乾燥するまで濃縮し、[7−シアノ−ナフタレン−2−カルボン酸[(2S)−2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−オキソ−ブチル]−メチル−アミド(式XVII)31.0gを得た。
【0094】
D)プロセス2)の(2S)−1−フラン−2−イル−1−ピペラジン−1−イル−ブタン−2−オール二塩酸塩(反応ステップB由来の式XII)860mg、[7−シアノ−ナフタレン−2−カルボン酸[(2S)−2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−4−オキソ−ブチル]−メチル−アミド(反応ステップC由来の式XVII)860mg、酢酸200μlおよび水0.1mlをTHF150mlの懸濁液に入れ、4時間撹拌した。トリアセトキシボロハイドライドナトリウム1.49gを添加し、反応混合物を室温にて15時間撹拌した。溶液を濃縮し、KOH0.4g水溶液1mlおよびメチル−tert.−ブチルエーテル10mlならびに酢酸エチル50mlを添加した。水を除去し、有機相を水20mlで4回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、乾燥するまで濃縮し、フォーム状物1.32gを得た。このフォーム状物をイソプロピルアルコール9mlに溶解し、60℃に加熱した。結晶化する生成物を75℃にてイソプロピルアルコール28mlを添加(3回に分けて添加)することにより再溶解した。室温に冷却後、得られた結晶をメチル−tert.−ブチルエーテル20mlで3回洗浄し、3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミドモノイソプロピレート(式I)1.15gを得た。
融点:165〜166℃
実施例5:
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2−オキソ[1,3]ジオキソラン−4−イル}ピペラジン−1−イル]メチル]−N−メチル−1−ナフタミド
【化37】

【0095】
上記プロセスのいくつか由来の3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシ−プロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド650mgを室温にてジクロロメタン50mlにおいて懸濁した。ジクロロメタン60ml中N,N´−カルボニルジイミダゾール216mgを70分にわたり添加した。溶液を室温にて5時間撹拌し、その後、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液50mlで洗浄した。次いで、混合物をpH6に達するまで水で洗浄した。真空下において溶剤を除去し、3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2−オキソ[1,3]ジオキソラン−4−イル]ピペラジン−1−イル}メチル]−N−メチル−1−ナフタミド634mgとした。
【0096】
実施例6:
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2−オキソ[1,3]ジオキソラン−4−イル]ピペラジン−1−イル}メチル]−N−メチル−1−ナフタミドモノ酢酸
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2−オキソ[1,3]ジオキソラン−4−イル]ピペラジン−1−イル}メチル]−N−メチル−1−ナフタミドモノエタノール付加物350mgを撹拌しながら室温にて酢酸エチル50mlで撹拌しながら溶解した。塩化アセチル120μlおよびトリエチルアミン250μlを連続して添加した。反応混合物を室温にて3時間さらに撹拌し、炭酸ナトリウム飽和水溶液50mlで洗浄し、水30mlで5回洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶液を乾燥するまで濃縮し、LC−MSおよびNMRで示されたように第一級アルコールのおもなモノ酢酸エステルを含有する混合物342mgを得た。混合物をSiO210gのカラムクロマトグラフィーにより溶離剤の混合物として酢酸エチル/エタノールで精製し、LC/MSおよびNMRにおいて特徴付けられたモノ酢酸136mgを得た。
【0097】
実施例7:
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2−オキソ[1,3]ジオキソラン−4−イル]ピペラジン−1−イル}メチル]−N−メチル−1−ナフタミドモノ酢酸
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2−オキソ[1,3]ジオキソラン−4−イル]ピペラジン−1−イル}メチル]−N−メチル−1−ナフタミドモノエタノール付加物230mgを室温にてピリジン10mlに溶解した。塩化メチレン10ml中に塩化アセチル150μlを滴下にて添加した。反応混合物を室温にて4時間撹拌し、水10mlを添加後、真空下において濃縮した。残留物を酢酸エチル50mlに溶解し、水20mlで6回洗浄した。LC−MSおよびNMRは、原料混合物の主要な化合物としてジアセテートの存在を示す。混合物150mgをSiO210gのカラムクロマトグラフィーにより分画し、NMRおよびMSにより確認されたように期待されるジエステル84mgを得た。
【0098】
以下の表8に記載の式Iの化合物を上記実施例に記載のプロセスまたはそれに類似のプロセスに従い製造することができる。
【0099】
第8表:式Iの化合物の実施例
【表8】

【0100】
【表9】

【0101】
上記の表8に記載の実施例15〜22の化合物はまた、自動化された製造方法を使用して製造することができる。これにおいて、各場合、バッチ当たり式IXの当該炭水化物化合物の0.25Nストック水溶液200μlをマイクロリアクション容器で測定し、真空下において蒸発させ、大部分の水を除去した。残留物をエタノール200μlに溶解した。各場合、ラセミ体または式VIIの鏡像異性体的に純粋(各場合、表7の当該詳細を参照)N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−(1−ピペラジニル)ブチル]−N−メチルベンザミドの0.25mol/lエタノールストック溶液200μlおよび式VIIIの当該ボロン酸(=ジヒドロキシボラン化合物)の0.25Nエタノールストック溶液200μlをこの最初の溶液に添加した。反応混合物を最初に80℃にて2時間加熱後、室温に冷却し、エタノール1mlをそこへ添加した。次いで、塩基性Amberjet(登録商標)イオン交換樹脂100mgを添加し、反応容器を2時間撹拌した。濾過して除去されたイオン交換器を、続いてエタノール500μlで毎回2回洗浄し、溶剤を真空下において乾燥まで蒸発させた。高性能液体クロマトグラフィー(=HPLC)用に、各場合さらに精製することなく残留物から試料を採取し、自動質量分析器において純度を決定し、構造式を確認した。
【0102】
実施例8:
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド含有カプセル
カプセル当たり以下の組成物を含むカプセルを生成した:
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド 20mg
トウモロコシデンプン 60mg
ラクトース 300mg
酢酸エチル 適量
活性物質であるトウモロコシデンプンおよびラクトースを、EEを使用して均質なペースト状の混合物に処理した。ペーストを粉砕し、得られた顆粒を適切なトレイにのせ、溶剤を除去するために45℃にて乾燥させた。乾燥させた顆粒を粉砕機に通し、さらに以下の補助剤とミキサーで混合した:
タルカム 5mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
トウモロコシデンプン 9mg
および次いで、400mgカプセルに注入した(=カプセル0サイズ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、
R1は、水素およびC1〜C4アルキルからなる群から選択され、
R2は、ハロゲンであり、
R3は、ハロゲンであり、
R4は、2−フラニル、3−フラニル、2−チオフェン、3−チオフェン、フェニル、ベンジル、2−ベンゾフラニル、3−ベンゾフラニル、5−クロロ−2−チオフェン、4−メチルフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−ピリジニル、3−ピリジニル、1−ベンゾ[c]チオフェン、4−ベンゾ[c]チオフェン、5−ベンゾ[c]チオフェン、2−ベンゾ[b]チオフェン、3−ベンゾ[b]チオフェン、4−ベンゾ[b]チオフェン、5−ベンゾ[b]チオフェン、6−ベンゾ[b]チオフェン、7−ベンゾ[b]チオフェン、1−ベンゾ[1,3]ジオキソール、4−ベンゾ[1,3]ジオキソールおよび5−ベンゾ[1,3]ジオキソールからなる群から選択され、
R5は、水素およびR6からなる群から選択され、
R6は、一般式
【化2】

(式中、
R7は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR8、R9、R10およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R8は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R9、R10およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R9は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R8、R10およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R10は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R8、R9およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R11は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R8、R9およびR10からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
kは、0または1であり、
lは、0または1であり、
mは、0または1であり、
nは、0または1である)の部分基を表す]
の化合物またはその生理学的に適合可能な酸付加塩。
【請求項2】
R1がメチルを表す請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2およびR3がそれぞれ塩素を表す請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R4が2−フラニル、3−フラニル、2−チオフェン、3−チオフェン、フェニル、ベンジル、2−ベンゾフラニル、5−クロロ−2−チオフェン、4−メチルフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2−メトキシフェニルおよび4−メトキシフェニルからなる群から選択される請求項1から3までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R4が2−フラニル、3−フラニル、2−チオフェンおよび3−チオフェンからなる群から選択される請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R5が水素を表す請求項1から5までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R7およびR11がそれぞれ水素を表し、kが1を表し、l、m、nがそれぞれ0である請求項1から6までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R7、R8およびR11がそれぞれ水素を表し、kおよびlがそれぞれ1であり、mおよびnがそれぞれ0である請求項1から7までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R7、R8、R9およびR11がそれぞれ水素を表し、k、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0である請求項1から8までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R7〜R11がそれぞれ水素を表し、k、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0である請求項1から9までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
キラル中心*CがS配置である請求項1から10までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
以下の化合物:
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
(2S,3R)−2−(アセチルオキシ)−3−{4−[(3S)−4−[3−シアノ−1−ナフトイル](メチル)アミノ]−3−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]ピペラジン−1−イル}−3−(2−フリル)プロピル酢酸;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[1−(2−フリル)−2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S,3R,4R)−1−(2−フリル)−2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S,3S,4R)−1−(2−フリル)−2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S,3S,4R)−2,3,4,5−テトラヒドロキシ−1−(3−チエニル)ペンチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S,3R,4R)−2,3,4,5−テトラヒドロキシ−1−(3−チエニル)ペンチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[1−(2−フリル)−2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[1−(2−フリル)−2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S)−2,3−ジヒドロキシ−1−(3−チエニル)プロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1R,2S)−2,3−ジヒドロキシ−1−(2−チエニル)プロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(S)−[(4S)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル](3−チエニル)メチル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−(4−{(R)−2−フリル[(4S)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}ピペラジン−1−イル)ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S)−1−(3−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[1−(2−フリル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S)−2,3−ジヒドロキシ−1−フェニルプロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
3−シアノ−N−[(2)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−{4−[(1S,2S)−2,3−ジヒドロキシ−1−(4−メトキシフェニル)プロピル]ピペラジン−1−イル}ブチル]−N−メチル−1−ナフタミド;
N−[(2S)−4−{4−[(1R,2S)−1−(1−ベンゾフラン−2−イル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−3−シアノ−N−メチル−1−ナフタミド;
N−[(2S)−4−{4−[(1R,2S)−1−(5−クロロ−2−チエニル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−3−シアノ−N−メチル−1−ナフタミド;
N−[(2S)−4−{4−[(1S,2S)−1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−3−シアノ−N−メチル−1−ナフタミド;および
N−[(2S)−4−{4−[(1R,2S)−1−(1−ベンゾチエン−2−イル)−2,3−ジヒドロキシプロピル]ピペラジン−1−イル}−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−3−シアノ−N−メチル−1−ナフタミド
からなる群から選択される請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の化合物および従来の医薬補助剤および/または担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
呼吸器疾患、特に、喘息、気管支炎、咳および鼻炎;皮膚疾患、特に、炎症性皮膚反応、アレルギー性皮膚反応および乾癬;関節症の疾患、特に関節炎、血管炎および全身性紅斑性狼瘡;消化管の機能的または炎症性障害、特に、偽膜性大腸炎および下痢;膀胱炎および間質性膀胱炎等のブレブ疾患および片頭痛の治療および/または予防のために用いる、請求項1から12までのいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
前記障害が結腸領域の痛みに対する感受性の増加および/または便経路の障害を含む哺乳類動物およびヒトの腸管下部の機能的または炎症性障害である請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記障害がIBSである請求項14に記載の使用。
【請求項17】
一般式I
【化3】

[式中、
R1は、水素およびC1〜C4アルキルからなる群から選択され、
R2は、ハロゲンであり、
R3は、ハロゲンであり、
R4は、2−フラニル、3−フラニル、2−チオフェン、3−チオフェン、フェニル、ベンジル、2−ベンゾフラニル、3−ベンゾフラニル、5−クロロ−2−チオフェン、4−メチルフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−ピリジニル、3−ピリジニル、1−ベンゾ[c]チオフェン、4−ベンゾ[c]チオフェン、5−ベンゾ[c]チオフェン、2−ベンゾ[b]チオフェン、3−ベンゾ[b]チオフェン、4−ベンゾ[b]チオフェン、5−ベンゾ[b]チオフェン、6−ベンゾ[b]チオフェン、7−ベンゾ[b]チオフェン、1−ベンゾ[1,3]ジオキソール、4−ベンゾ[1,3]ジオキソールおよび5−ベンゾ[1,3]ジオキソールからなる群から選択され、
R5は、水素およびR6からなる群から選択され、
R6は、一般式
【化4】

(式中、
R7は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR8、R9、R10およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R8は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R9、R10およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R9は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R8、R10およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R10は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R8、R9およびR11からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
R11は、水素またはC1〜C4アルカノイルからなる群から選択され、あるいはR7、R8、R9およびR10からなる群から選択される別の置換基と合わせて、カルボニルにより、あるいは場合によりC1〜C4アルキルまたはC4〜C5アルキレンにより置換されたメチレンにより架橋された5または6環を形成してよく、
kは、0または1であり、
lは、0または1であり、
mは、0または1であり、
nは、0または1である)の部分基を表す]
の化合物またはその生理学的に適合可能な酸付加塩を製造する方法において、
(a)一般式VII
【化5】

の化合物と一般式VIII
【化6】

の化合物および一般式IX
【化7】

の化合物を反応させ、一般式Iの化合物を得るか、または
(b)一般式XV
【化8】

の化合物と式III
【化9】

の化合物を反応させ、一般式Iの化合物を得るか、あるいは
(c)一般式XVII
【化10】

の化合物と一般式XII
【化11】

の化合物を反応させ、一般式Iの化合物を得て、場合によりその生理学的に適合可能な酸付加塩に変換することを特徴とする方法。
【請求項18】
式VII
【化12】

[式中、
R1は、水素およびC〜Cアルキルからなる群から選択され、
R2は、ハロゲンであり、
R3は、ハロゲンである]の化合物。
【請求項19】
R1がメチルであり、R2およびR3がそれぞれ塩素を表す請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
哺乳類動物のタキキニン介在性効果を阻害する方法において、請求項1から12までのいずれか1項に記載の化合物のタキキニン受容体拮抗有効量を前記哺乳類動物に投与することを含む方法。
【請求項21】
タキキニンがニューロキニンであり、タキキニン受容体がNK1またはNK2受容体である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
タキキニン介在性効果が低血圧、気管支収縮および結腸運動からなる群から選択される請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2009−517443(P2009−517443A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542756(P2008−542756)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069087
【国際公開番号】WO2007/063086
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(391027619)ゾルファイ ファーマスーティカルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (46)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Pharmaceuticals GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20, D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】