説明

新規キノール酸化酵素の阻害による抗リーシュマニア症及びシャーガス病の予防・治療剤

【課題】 本発明は、リーシュマニア症及びシャーガス病の原因である原虫、L. majorやT. cruziにおいてはこれまで存在しないと考えられてきたキノール酸化酵素を提供することを課題とする。本発明はまた、リーシュマニア症及びシャーガス病の原因である原虫、L. majorやT. cruziにおける新規キノール酸化酵素を阻害することで、リーシュマニア症及びシャーガス病の安全でより効果のある予防・治療剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明においては、新たにリーシュマニア症及びシャーガス病の原因である各原虫のミトコンドリアから、既知のAOX酵素とは異なり鉄結合部位であるEXXHモチーフを持たない、新しいタイプのキノール酸化酵素を発見した。また、新規キノール酸化酵素の阻害剤を見出し、本発明を完成させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のキノール酸化酵素を見出し、本酵素阻害による抗リーシュマニア症及びシャーガス病の予防・治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リーシュマニア症は、WHOによって撲滅すべき10大感染症の一つに指定されている。現在でも世界88カ国で推定1,200万人が感染しているといわれている。
本症はLeishmania属原虫を病原体とし、媒介昆虫であるサシチョウバエの刺咬により伝播する。WHOはLeishmania属原虫のうち、20種以上が人に感染するとしている。本症は新大陸では22カ国に認められ、旧大陸では66カ国に認められる。ヨーロッパではフランス、イタリー、ギリシャ、マルタ、スペイン及びポルトガル等の16カ国でヒトの感染が報告されている。
【0003】
リーシュマニア症は皮膚型、皮膚粘膜型及び内臓型に分類され、さまざまな症状を起こすことが知られている。内臓型リーシュマニア症はカラアザールとも呼ばれ、90%以上がバングラデッシュ、ブラジル、インド及びスーダン等で認められるが、重症例では死に至る。一方、皮膚型リーシュマニア症の発生は90%以上がイラン、アフガニスタン、シリア、サウジアラビア、ブラジル及びペルー等で認められている。
【0004】
リーシュマニア症の治療薬は、古くは5価のアンチモンを含有した製剤及びDiamidine系の薬剤があるが、いずれも毒性が高く、投与形態も静注で長期に及ぶため、中毒症の危険性が高い。また、現在では、これらの薬剤に耐性をしめす原虫も出現しており、安全でより効果のある薬剤の開発が望まれている。
【0005】
一方、シャーガス病は、1909年に始めて発見された疾病で、原生動物門胞子虫綱プラスモジューム属であるクルーズトリパノソーマ原虫(Trypanosoma cruzi)によって起こる疾患である。世界保健機構(WHO)は、本症を克服すべき感染症として指定している。
【0006】
現在は、北米の南部、中米、南米等の18カ国で発症が見られ、毎年、13,000人が死亡している。感染動物は多くの野生動物と家畜(イヌ、ネコ)に見られ、ヒトの健康保虫者もいる。
【0007】
シャーガス病のヒトへの感染は、サシガメ(sub-familyTriatominae)によって媒介される。幼虫、蛹、成虫の全ての発育段階で雌雄ともに吸血する段階で感染し、感染したサシガメは大量の原虫を糞中に排泄する。サシガメの排便は、刺撃のタイミングと一致しており、感染した糞が刺咬創付近の皮膚の上に落とされる。そのため、その後、ヒトが皮膚を引っかいたり、粘膜特に結膜を擦ったりしたときに、刺咬創から病原体が体内に侵入する。また、極めて希に、媒介昆虫を介さずに胎盤感染、母乳、輸血、実験室での事故や感染動物の死肉からも感染する場合もある。
【0008】
シャーガス病の症状は、高熱、頭痛、関節痛を呈し、適切な治療を受けないと重症化し、昏睡に陥り結果的に死亡することがある。
シャーガス病対策として、これまでに1)殺虫剤によるサシガメ対策、2)薬剤による予防・治療等が試みられてきたが、殺虫剤耐性サシガメの出現、クルーズトリパノソーマ原虫の薬剤耐性のため、今のところ効果的な方法は見つかっていない。
【0009】
発明者らはこれまでに、アフリカ睡眠病等の原因となる原虫、Trypanosoma bruceiは、植物や酵母のミトコンドリアと同様にキノール酸化酵素であるAOX酵素を有し、重要なエネルギー代謝を司っていることを明らかにし、この酵素阻害剤としてアスコフラノンなどの種々の物質を発見してきた(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。その一方で、リーシュマニア症及びシャーガス病の原因である原虫、L. majorやT. cruziには、AOX酵素に代表されるキノール酸化酵素は存在しないと、報告されている(非特許文献1)。そのため、公知のAOX酵素阻害剤ではリーシュマニア症及びシャーガス病を治療することができないと考えられており、新たな治療薬を開発しなければならないという要求が存在していた。
【特許文献1】特開平9-165332号公報
【特許文献2】特公昭56-25310号公報
【特許文献3】特開平9-165332
【特許文献4】特願2003-24643
【非特許文献1】J.J. Hellemond et. al; Ent. Microbiol., 45(4), 426-430, 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、リーシュマニア症及びシャーガス病の原因である原虫、L. majorやT. cruziにおいてはこれまで存在しないと考えられてきたキノール酸化酵素を提供することを課題とする。本発明はまた、リーシュマニア症及びシャーガス病の原因である原虫、L. majorやT. cruziにおける新規キノール酸化酵素を阻害することで、リーシュマニア症及びシャーガス病の安全でより効果のある予防・治療剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、新たにリーシュマニア症及びシャーガス病の原因である各原虫のミトコンドリアから、特異的なインサーションはあるが、既知のAOX酵素とは異なって、鉄結合部位であるEXXHモチーフを持たない、新しいタイプのキノール酸化酵素を発見した。また、新規キノール酸化酵素の阻害剤を見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明者らは、上述した課題を解決するため、
(a)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に記載のアミノ酸配列;または(b)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に記載の配列において、1または複数個のアミノ酸の欠失、置換、または付加を有するアミノ酸配列;からなる、キノール酸化活性を有するタンパク質、あるいは
(c)SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列;または(d)SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNAと相補的なヌクレオチド配列からなるDNA、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAによりコードされるアミノ酸配列;からなる、キノール酸化活性を有するタンパク質
を提供する。
【0013】
本発明はさらに、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4で示されるアミノ酸配列との間で少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列相同性を有するアミノ酸配列からなる、キノール酸化活性を有するタンパク質もまた、提供する。
【0014】
本発明者らは、上述した課題を解決するため、さらに、上述したT. cruziの新規キノール酸化酵素に関して
(a)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA;または(b)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に記載の配列において、1または複数個のアミノ酸の欠失、置換、または付加を有し、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNA;のいずれかからなるDNA、あるいは
(c)SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNA;または(d)SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNAと相補的なヌクレオチド配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNA;のいずれかからなるDNA
もまた、提供する。
【0015】
本発明においてさらに、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 3で示される塩基配列との間で少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の塩基配列相同性を有する塩基配列からなるDNAであって、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAもまた、提供する。
【0016】
さらに、上述したキノール酸化活性を有するタンパク質の機能を阻害することにより、リーシュマニア症及びシャーガス病の原因である原虫、L. majorやT. cruziの生育を阻害することができ、結果としてリーシュマニア症またはシャーガス病を治療・予防することができる。すなわち、本発明は、キノール酸化酵素阻害剤を含む、リーシュマニア症またはシャーガス病を治療または予防するための医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明はさらに、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に示されるタンパク質に対して結合する抗体を提供する。この抗体は、T. brucei由来のキノール酸化酵素、AOXに対しては結合しないという特徴を有していてもよい。
【0018】
本発明はさらに、非シトクロム系呼吸鎖を阻害して、効率的に原虫の成育を抑制することを目的として、キノール酸化酵素阻害剤を含む、リーシュマニア症またはシャーガス病を治療または予防するための医薬組成物を提供する。本発明はさらに、非シトクロム系呼吸鎖だけでなく、通常のシトクロム系呼吸鎖を同時に阻害して、より効率的に原虫の成育を抑制することを目的として、キノール酸化酵素阻害剤に加えて、通常のシトクロム系呼吸鎖に対する阻害剤をさらに含む、リーシュマニア症またはシャーガス病を治療または予防するための医薬組成物を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、リーシュマニア症の原因原虫であるL. major及びシャーガス病の原因原虫であるT. cruziに由来する、新規キノール酸化酵素を提供することができる。本発明はまた、この新規キノール酸化酵素を阻害することにより、リーシュマニア症およびシャーガス病を治療・予防することができることを示し、その結果キノール酸化酵素を含む医薬組成物を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0020】
アフリカトリパノソーマ病の原因原虫であるT. bruceiには、通常のシトクロム系呼吸鎖の他に、シアン耐性末端酸化酵素(AOX)が機能する非シトクロム系呼吸鎖が存在し、双方の呼吸代謝系を巧みに使い分けて環境適応を果たしていることが知られている。本発明者らは、リーシュマニア症の原因原虫であるL. major及びシャーガス病の原因原虫であるT. cruziにおいて、AOX酵素に代表されるキノール酸化酵素が存在しないという知見に基づいて、シトクロム系呼吸鎖を阻害すればリーシュマニア症及びシャーガス病を治療することができるとの予測を立て、シトクロムb阻害剤であるアトバコンを投与することにより、リーシュマニア症及びシャーガス病の患者の治療を試みた。しかしながら、結果としては、シトクロム系呼吸鎖を阻害しただけでは、リーシュマニア症及びシャーガス病を十分に治療することはできなかった。
【0021】
この知見から、本発明者らは、リーシュマニア症の原因原虫であるL. major及びシャーガス病の原因原虫であるT. cruziにおいて、ユビキノールから電子を受け取る未知の「キノール酸化活性を有するタンパク質」が存在し、それが非シトクロム系呼吸鎖を作動させることにより、L. majorやT. cruziの生存を維持していると推測した。
【0022】
本発明者らは、このような推測に基づいて、まずT. cruziと同一の属に属するT. bruceiのキノール酸化酵素、AOXの配列(GenBank Accession no. AB070617)を使用して、T. cruziの部分配列を含有するデータベースThe institute for Genome Research (TIGR) eukaryotic project database(http://www.tigr.org/tdb/euk/)を検索した。しかしながら、これと類似する配列は、検索されなかった。
【0023】
そのため、続いて、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のキノール酸化酵素、AOXの配列(GenBank accession no, AB003176)を使用して、T. cruziの部分配列を含有するTIGRデータベース(上記)を再び検索した。その結果、 T. cruzi由来の配列の一部がシロイヌナズナのAOXと33%の相同性を有する配列として得られた。
【0024】
得られたT. cruzi由来の部分配列をもとにして、3'RACEおよび5'RACEを行うことにより、得られた部分配列の3'末端側および5'末端側をそれぞれ伸長した。その結果、開始コドンで始まる1101ヌクレオチドからなるSEQ ID NO: 1で示されるヌクレオチド配列からなるDNAが得られた。このヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質は、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列を有するものである。
【0025】
SEQ ID NO: 1で示されるヌクレオチド配列を有するDNAを詳細に解析したところ、データベース上の他の生物種で本塩基配列に対して強い相同生を示すものはなかった。また本塩基配列のGC含量は48%であり、通常の遺伝子発現系での発現が可能と考えられる値であった。
【0026】
次に、SEQ ID NO: 2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、アミノ酸レベルおよびヌクレオチドレベルでT. bruceiのキノール酸化酵素、AOXのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列と比較した。
【0027】
本発明においてアミノ酸あるいは塩基配列の配列相同性解析には、当業者に用いられる、配列比較のプログラムを用いることができる。例えばAltschulら(Nucl. Acids. Res. 25., p. 3389-3402, 1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。具体的には、ヌクレオチド配列解析の場合、Nucleotide BLAST(BLASTN)プログラムで、Query塩基配列を入力して、GenBank、EMBL、DDBJなどの塩基配列データベースと照合することができる。また、アミノ酸配列解析の場合、Protein BLAST(BLASTP)プログラムで、Queryアミノ酸配列を入力して、GenBank CDS、PDB、SwissProt、PIRなどのアミノ酸配列データベースと照合することができる。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる相同性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、用いることができる。
【0028】
本発明においてアミノ酸あるいは塩基配列の配列相同性は、視覚的検査及び数学的計算により決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の配列相同性は、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol Biol., 48: 443−453, 1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)HenikoffおよびHenikoff(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919, 1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;および(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
【0029】
本発明においては、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列からなるタンパク質およびそのタンパク質をコードするSEQ ID NO: 1のヌクレオチド配列からなるDNAに関して、BLASTによりアミノ酸レベルおよびヌクレオチドレベルでそれぞれ配列相同性を検索したところ、本発明のSEQ ID NO: 2のタンパク質およびSEQ ID NO: 1のDNAとの間で最も配列相同性が高いものは、従来から知られていたキノール酸化酵素であるAOXであったが、そもそもT. bruceiのAOXのタンパク質およびDNAとは、それぞれ28%および27%の相同性を有するのみであり、またシロイヌナズナ(A. thaliana)のAOXのタンパク質およびDNAと、それぞれ27%および17%の相同性を有するのみであることがわかった。これらの事実から、SEQ ID NO: 2のタンパク質およびSEQ ID NO: 1のDNAは、それぞれ既知のキノール酸化酵素、AOXとは有意な配列相同性を有しないことがわかった。
【0030】
また、これまでに存在が知られているシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium parvum)、アスペルギルス(Aspergillus niger)、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)、クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)、細胞性粘菌(Dictyostelium discoideum)、αプロテオバクテリウム(Novosphingobium aromaticivorans)、そして同属のブルーストリパノソーマ(T. brucei)まで、すべての種のAOXにおいて、鉄結合ドメインとしての2つのEXXHモチーフ(ここでXは任意のアミノ酸)からなる構造が保存されていたが、SEQ ID NO: 1に示されるヌクレオチド配列を有するDNA分子においては、EXXHモチーフとして、既知のAOXとアラインされる部位は存在しなかった。
【0031】
このようなヌクレオチド配列並びにアミノ酸配列の解析から、本発明において、シャーガス病の原因である原虫、T. cruziから得られたSEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、構造的に新規の酵素であることが予想された。そのため、次にSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列からなるタンパク質の機能を特定することを試みた。
【0032】
発現ベクターに組み込んだSEQ ID NO: 1のDNAを用いて、ヘム合成を欠損するために内在性の末端酸化酵素(シトクロムboおよびシトクロムbd)を発現することができない大腸菌を形質転換し、その大腸菌が産生したSEQ ID NO: 2のタンパク質がキノール酸化活性を有するかどうかを、キノンが呈する278 nmの吸光度の上昇として、分光光度計を用いたキノール酸化酵素活性測定法(Biochem. Biophys. Res. Commu., 313, 1044-1052, 2004)により調べたところ、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列からなるタンパク質は、キノールを酸化させる、キノール酸化酵素としての活性を有していることが明らかになった。
【0033】
これらの知見に基づいて、本発明の一態様において、キノール酸化活性を有する新規なタンパク質として、T.cruziに由来するSEQ ID NO: 2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはこれの改変体であってキノール酸化活性を有するタンパク質を提供することができる。
【0034】
本発明においてSEQ ID NO: 2のタンパク質の「改変体」という場合には、目的とするタンパク質のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列;目的とするタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と相補的な塩基配列との間で、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズ可能な塩基配列によりコードされるアミノ酸配列;または目的とするタンパク質のアミノ酸配列との間で少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列相同性を有するアミノ酸配列;からなるタンパク質であって、キノール酸化活性を有するものも含むことを意味する。
【0035】
すなわち、本発明は、より具体的には、
(a)SEQ ID NO: 2に記載のアミノ酸配列;または(b)SEQ ID NO: 2に記載の配列において、1または複数個のアミノ酸の欠失、置換、または付加を有するアミノ酸配列;からなる、キノール酸化活性を有するタンパク質;
(c)SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列;または(d)SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列からなるDNAと相補的なヌクレオチド配列からなるDNA、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAによりコードされるアミノ酸配列;からなる、キノール酸化活性を有するタンパク質;あるいは
SEQ ID NO: 2で示されるアミノ酸配列との間で少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列相同性を有するアミノ酸配列からなる、キノール酸化活性を有するタンパク質;
を提供することができる。
【0036】
本発明は別の一態様において、キノール酸化活性を有するT. cruziに由来する新規なタンパク質(SEQ ID NO: 2)をコードするDNA(例えばSEQ ID NO: 1)またはその改変体をコードする変異体DNAを提供することができる。すなわち、本発明は別の一態様において、上述したT. cruziの新規キノール酸化酵素に関して
(a)SEQ ID NO: 2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA;または(b)SEQ ID NO: 2に記載の配列において、1または複数個のアミノ酸の欠失、置換、または付加を有し、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNA;のいずれかからなるDNA;
(c)SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列からなるDNA;または(d)SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列からなるDNAと相補的なヌクレオチド配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNA;のいずれかからなるDNA;あるいは
SEQ ID NO: 1で示される塩基配列との間で少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の塩基配列相同性を有する塩基配列からなるDNAであって、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNA;
もまた、提供することができる。
【0037】
ここで、例えば「(a)SEQ ID NO: 2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA」という場合、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド配列からなるDNAとの間で縮重の関係にあるヌクレオチド配列を有するDNAが含まれることは、当業者が容易に理解することができる。
【0038】
ここにおいて、「1もしくは複数個」とは、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個のことをいう。また、本発明のSEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の場合、「欠失」、「置換」、「付加」されたとは、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列において生じる「欠失」、「置換」、「付加」であって、「欠失」、「置換」、「付加」されたタンパク質が、SEQ ID NO: 2に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質と同様に、キノール酸化活性を有するようなものをいう。またSEQ ID NO: 1に示されるヌクレオチド配列からなるDNAの場合、「欠失」、「置換」、「付加」されたとは、SEQ ID NO: 1に示されるヌクレオチド配列において生じる「欠失」、「置換」、「付加」であって、かつ「欠失」、「置換」、「付加」されたヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質がSEQ ID NO: 2に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質と同様に、キノール酸化活性を有するようなものをいう。
【0039】
例えば、アミノ酸の「置換」の場合には、同様の性質を有するアミノ酸同士の置換、例えばある疎水性アミノ酸から別の疎水性アミノ酸への置換、ある親水性アミノ酸から別の親水性アミノ酸への置換、ある酸性アミノ酸から別の酸性アミノ酸への置換、あるいはある塩基性アミノ酸から別の塩基性アミノ酸への置換、などの、タンパク質全体の機能を大きくは変化させないような置換が含まれる。
【0040】
このような「欠失」、「置換」、「付加」を有するタンパク質、または上述のような「欠失」、「置換」、「付加」を有する塩基配列を作成するためには、部位特異的変異生成(Site Directed Mutagenesis)、変異原処理やPCR増幅ミスを用いたランダム変異生成(Random Mutagenesis)、カセット導入変異生成(Cassette Mutagenesis)など、本発明の技術分野において既知の様々な方法を用いることができる。
【0041】
上述したように、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列からなるキノール酸化活性を有するタンパク質の改変体には、SEQ ID NO: 1に示されるヌクレオチド配列からなるDNAと相補的なDNAとの間で、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズ可能なDNAによりコードされるアミノ酸配列からなる、キノール酸化活性を有するタンパク質が含まれる。
【0042】
本発明において、ストリンジェントな条件とは、目的のDNAが、SEQ ID NO: 2に示されるタンパク質をコードするヌクレオチド配列からなるDNA(例えば、SEQ ID NO: 1)もしくはこれと縮重の関係にある塩基配列との間で、特異的にハイブリダイズ可能である条件をいう。ハイブリダイズ条件は、温度、イオン濃度などの条件を考慮して決定されるが、一般的には温度が高いほど、またイオン濃度が低いほどストリンジェントな程度が高くなることが知られている。このようなストリンジェントな条件の設定は、当業者であれば、例えば、SambrookおよびRussel(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition (2001))の記載に基づいて行うことができる。これらのストリンジェントな条件の具体的な例としては、例えば、6×SSC、5×Denhardt's、0.1%SDS、25℃ないし68℃などのハイブリダイゼーション条件を使用することが考えられる。この場合、ハイブリダイゼーションの温度としては、より好ましくは45℃ないし68℃(ホルムアミド無し)または25℃ないし50℃(50%ホルムアミド)を挙げることができる。
【0043】
上述したように、本発明のキノール酸化活性を有するタンパク質の改変体には、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列との間で少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列相同性を有するアミノ酸配列からなる、キノール酸化活性を有するタンパク質が含まれる。本発明のキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの変異体にはまた、SEQ ID NO: 1に示されるヌクレオチド配列との間で少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%のヌクレオチド配列相同性を有するヌクレオチド配列を含むDNAを有し、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAが含まれる。
【0044】
さらに、本発明においては、SEQ ID NO: 2に記載のタンパク質またはそれをコードするSEQ ID NO: 1に記載のDNAの配列に基づいて、リーシュマニア症の原因である原虫、Leishmania major由来のcDNAを調べたところ、SEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列を有するDNAが得られ、そのDNAによりSEQ ID NO: 4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質がコードされ、そしてこのタンパク質もまた、キノール酸化活性を有することが明らかになった。
【0045】
この知見に基づいて、本発明の別の一態様において、
(a)SEQ ID NO: 4に記載のアミノ酸配列;または(b)SEQ ID NO: 4に記載の配列において、1または複数個のアミノ酸の欠失、置換、または付加を有するアミノ酸配列;からなる、キノール酸化活性を有するタンパク質;
(c)SEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列;または(d)SEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNAと相補的なヌクレオチド配列からなるDNA、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAによりコードされるアミノ酸配列;からなる、キノール酸化活性を有するタンパク質;あるいは
SEQ ID NO: 4で示されるアミノ酸配列との間で少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列相同性を有するアミノ酸配列からなる、キノール酸化活性を有するタンパク質;
を提供することができる。
【0046】
本発明はさらに、このLeishmaniaの新規キノール酸化酵素に関して
(a)SEQ ID NO: 4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA;または(b)SEQ ID NO: 4に記載の配列において、1または複数個のアミノ酸の欠失、置換、または付加を有し、かつキノール酸化活性を有するタンパク質、をコードするDNA;のいずれかからなるDNA;
(c)SEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNA;または(d)SEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNAと相補的なヌクレオチド配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNA;のいずれかからなるDNA;あるいは
SEQ ID NO: 3で示される塩基配列との間で少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の塩基配列相同性を有する塩基配列からなるDNAであって、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNA;
もまた、提供することができる。
【0047】
本発明においては、これらの配列解析の結果に基づいて、キノール酸化活性を有するT. cruziのタンパク質(SEQ ID NO: 2)またはL. majorのタンパク質(SEQ ID NO: 4)に特徴的なペプチド領域に対して抗体を作製した。すなわち、本発明の一態様において、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に示されるタンパク質に対して結合する抗体を提供することができる。この態様において、得られる抗体は、T. brucei由来のキノール酸化酵素、AOXに対しては結合しないことを特徴とすることが好ましく、より好ましくは、T. cruzi由来またはL. major由来のキノール酸化活性を有するタンパク質を除く、すべて種(T. bruceiを含む)に由来するキノール酸化酵素、AOXに対して結合しないことを特徴とする。
【0048】
本発明による抗体は、上記のように調製したSEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4のタンパク質またはその断片を用いて、Delves(Antibody Production: Essential Techniques (1997))、HawardおよびBethell(Basic Methods in Antibody Production and Characterization (2000))、KontermannおよびDubel(Antibody Engineering: Springer Lab Manual (2001))などに詳細に記載されている公知の方法にしたがって取得することができる。
【0049】
SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4のタンパク質には反応するが、その他の種の既知のキノール酸化酵素、AOXとは反応しない抗体を調製するため、配列解析の結果、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に特徴的に存在するが、その他の種のAOXのアミノ酸配列中には存在しないアミノ酸配列からなるポリペプチドを免疫源として使用することが好ましい。本発明において使用するポリペプチド領域は、配列のアラインメントの結果類似しない部分であればどこでもかまわないが、例えばSEQ ID NO: 2の308番アミノ酸〜321番アミノ酸からなるポリペプチド(SEQ ID NO: 5)を免疫源として使用することができる。
【0050】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体として得ても、モノクローナル抗体として得てもよい。
ポリクローナル抗体は、適当な免疫動物にSEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4のタンパク質、あるいはその断片を免疫し、回収された血清から得ることができる。免疫動物としては、一般的にウサギ、ヒツジ、ヤギ、モルモット、あるいはマウス等が用いられるが、これらのものには限定されない。
【0051】
モノクローナル抗体は、上述したSEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4のタンパク質、あるいはその断片により免疫した動物の抗体産生細胞を回収し、これをミエローマ細胞等の適当な融合パートナーと細胞融合させてハイブリドーマ細胞を得、必要な活性を持った抗体を産生するクローンを生育に適した培地中で培養・クローニングし、そのクローニングされたハイブリドーマ細胞を適した条件下で培養することにより、その培養上清から取得することができる。さらに、このようにして得られたハイブリドーマ細胞を哺乳動物の腹腔内で増殖させることにより抗体を産生させることもできる。免疫動物としては、例えば、マウス、ヌードマウス、ラット、または、ニワトリなどが好ましい。このようにして得られた抗体は、遠心分離、透析、硫酸アンモニウム等による塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの一般的な単離、精製方法を用いて精製することができる。
【0052】
上述したように得ることができる本発明の抗体は、キノール酸化活性を有するタンパク質の精製、検出、活性阻害等に利用することができる。本発明の抗体は、公知の方法により、F(ab')2フラグメントあるいはFab'フラグメント化して用いることができる。また、本発明の抗体をDNA修復促進活性を有するタンパク質の検出に利用する場合には、放射性同位元素(例えば、35Sや3H)や酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、あるいは適当な親和性リガンド(例えば、アビジン-ビオチン)によって標識しておくことができる。
【0053】
本発明の発明者らは、これらの知見に基づいて、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に示されるアミノ酸配列を有する新規キノール酸化酵素を阻害することにより、リーシュマニア症及びシャーガス病の予防・治療を行うことができるのではないかと考え、試みにin vitroにおいてT. cruziに対して既知のAOX阻害剤であるアスコフラノンを適用した。その結果、アスコフラノンによりT. cruziの生育が有意に阻害されることが明らかになった。これは、SEQ ID NO: 2で示されるアミノ酸配列を有する新規キノール酸化酵素がアスコフラノンにより阻害され、その結果T. cruziの非シトクロム系呼吸鎖が阻害され、結果としてT. cruziの生育が阻害されたと考えられる。
【0054】
したがって、本発明の一態様において、非シトクロム系呼吸鎖を阻害して、効率的に原虫の成育を抑制することを目的として、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に示されるアミノ酸配列を有する新規キノール酸化酵素を阻害することで、リーシュマニア症及びシャーガス病の予防・治療を行うための、キノール酸化酵素阻害剤を含む医薬組成物を提供することができる。
【0055】
本発明においては、T. cruziのキノール酸化酵素を阻害することができる限り、既知のキノール酸化酵素阻害剤いずれであっても使用することができ、アスコフラノンには限定されない。本発明において、キノール酸化酵素阻害剤として使用することができる化合物としては、アスコフラノンあるいはアスコフラノン誘導体、アスコクロリン、サリチルヒドロキサム酸(SHAM)、n-プロピルギャレートなどが存在するが、これらには限定されない。本発明においては、キノール酸化酵素阻害剤として、アスコフラノンを使用することが好ましい。
【0056】
本発明において使用することができるアスコフラノンは、以下の化学式
【0057】
【化1】

【0058】
で示される構造を有する化合物である。
本発明において使用することができるアスコフラノン誘導体としては、例えばPCT/JP2004/15390に記載される化合物を例として挙げることができる。具体的には、
【0059】
【化2】

【0060】
(式中、
Xは水素原子またはハロゲン原子を表し、
R1は、水素原子または-(CnH2n)-R'(nは1〜5の整数、R'は水素原子またはn個の炭素原子のいずれか一つに置換されている基COOR''、ここではR''は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を意味するか、または-COR'''(R'''はピリジル基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたアミノ基、ベンゼン環の炭素原子上にハロゲン原子を有するフェノキシアルキル基またはベンゼン環の炭素原子上に炭素数1〜4のアルコキシ基あるいは炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基を有するフェニル基を意味する)を表し、
R2は、水素原子または炭素数1〜7のアルキル基を表し、
R3は-CHOまたは-COOHを表し、および、
R4は、-CH=CH-(CH2p-CH3(式中、pは1〜12の整数を表す)、または-CH(OH)-(CH2q-CH3(式中、qは1〜13の整数を表す)、-CH(OH)-CH2-CH(CH3)-(CH22-CH=C(CH32、-CH=CH-CH(CH3)-(CH23-CH(CH32、-(CH22-CH(CH3)-(CH23-CH(CH32、または-(CH28-CH3を表す)
で示される化合物、または、下記式、
【0061】
【化3−1】

【0062】
【化3−2】

【0063】
【化3−3】

【0064】
で表される化合物、
それらの光学異性体、およびそれらの医薬上許容される塩を、本発明においてアスコフラノン誘導体として使用することができる。
【0065】
本発明においては、例えば、本発明の化合物として、例えば次の化合物が挙げられる:
(i)化合物A.上記式(I)において、
Xは水素原子を表し、
R1は、水素原子を表し、
R2は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、
R3は-CHOを表し、および、
R4は、-CH(OH)-(CH2q-CH3(式中、qは1〜12の整数を表す)を表す、請求項1記載の化合物、その光学異性体、およびそれらの医薬上許容される塩;
(ii)化合物B.上記式(I)において、
Xはハロゲン原子を表し、
R1は、水素原子を表し、
R2は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、
R3は-CHOを表し、および、
R4は、-CH(OH)-(CH2q-CH3(式中、qは1〜12の整数を表す)を表す、請求項1記載の化合物、その光学異性体、およびそれらの医薬上許容される塩;
(iii)化合物C.上記式(I)において、
Xは水素原子またはハロゲン原子を表し、
R1は、水素原子を表し、
R2は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、
R3は-CHOを表し、および、
R4は、-CH=CH-(CH2p-CH3(式中、pは1〜12の整数を表す)を表す、請求項1記載の化合物、その光学異性体、およびそれらの医薬上許容される塩。
【0066】
上記以外に、次の化合物を例として挙げることもできる。
【0067】
【化4−1】

【0068】
【化4−2】

【0069】
【化4−3】

【0070】
で表される化合物。
本発明においてはさらに、上述したようなキノール酸化酵素阻害剤により非シトクロム系呼吸鎖を阻害するだけでなく、通常のシトクロム系呼吸鎖を同時に阻害して、より効率的に原虫の成育を抑制することを目的として、シトクロム系呼吸鎖に対する阻害剤をさらに含むことにより、より効率的にリーシュマニア症及びシャーガス病の予防・治療を行うための医薬組成物を提供する。本発明においては、シトクロム系呼吸鎖に対する阻害剤としては、例えば、アトバコン、アンチマイシンを使用することができる。より好ましくは、アトバコンを使用する。
【実施例】
【0071】
本明細書の以下において、発明をより詳細に説明する目的で、実施例を記載する。この実施例の記載は、本発明の範囲を限定することを目的としたものではなく、単に発明をより詳細に説明することを目的としたものである。
【0072】
実施例1:T. cruziからのDNAの単離と配列の解析
(1)シロイヌナズナ(A. thaliana)のAOXに基づくデータベースの検索
T. cruziと同一の属に属するT. bruceiのキノール酸化酵素、AOXの配列(GenBank Accession no. AB070617)を使用して、T. cruziの部分配列を含有するデータベースTIGR(http://www.tigr.org/tdb/euk/)を検索したが、T. bruceiのキノール酸化酵素、AOXと類似する配列は、T. cruziの部分配列中においては検索されなかった。
【0073】
そのため、次いで、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のキノール酸化酵素、AOXの配列(GenBank accession no, AB003176)を使用して、同様にTIGRを検索した。その結果、その結果、TIGR accession no, t_cruzi|chr_0|1047053504147|4932配列の一部が、シロイヌナズナのAOXと33%の相同性を有する配列として得られた。
(2)得られた断片配列の解析
上述したデータベースTIGRを使用した配列解析の結果から、断片伸長のための1対のPCRプライマー、フォワードプライマーとしてSEQ ID NO: 6の配列を有するオリゴヌクレオチドを、そしてリバースプライマーとしてSEQ ID NO: 7の配列を有するオリゴヌクレオチドをそれぞれ調製し、使用した。
【0074】
PCRは、T. cruzi(Tulahuen株)のcDNAを鋳型として、上述したSEQ ID NO: 6および7のオリゴヌクレオチドをプライマーとして、94℃にて1分間を1サイクル行った後、〔94℃における解離反応を15秒間;55℃におけるアニーリングを30秒間;そして74℃における伸長反応を1分間〕これを1サイクルとして35サイクル行い、最後に74℃にて1分間反応を行うという条件により、ポリメラーゼとしてTaq KOD dash(東洋紡)を使用して行った。ここで、T. cruzi(Tulahuen株)のcDNAは、オリゴdT(18)プライマーを用いて、アマシャム社のYou-prime 1st strand synthesis beadsを使用して、そのプロトコールに従って作製した。
【0075】
(3)3'RACEおよび5'RACEでの配列の伸長
上述の(2)において得られた配列は、コード領域の一部である可能性も示唆されたが、5'末端側および3'末端側の両方ともが存在しないため、すなわち、開始コドンおよび終始コドンが存在しないため、次いで、(2)で上述したようにPCRにより増幅された配列部分を使用して、当該技術分野において周知の5'RACE法および3'RACE法を行うことにより、(2)で上述した配列断片を含むコード領域全長を得ることを計画した。
【0076】
本発明においては、5'RACE法は、Invitrogen社の5'RACEシステムにしたがって行った。5'RACE用プライマー(SEQ ID NO: 8)を使用して、SuperScriptTM II RT酵素(Invitrogen社)を用いて、逆転写反応を行ってファーストストランドcDNAを合成し、その後ファーストストランドcDNAの3'末端にTerminal deoxinucleotidyl transferase(TdT)酵素(Invitrogen社)を用いて、poly C配列を付加した。このcDNAを鋳型として、5'RACE用プライマー(SEQ ID NO: 8)およびpoly Cに結合できる5'RACE用アダプタープライマー(ggccacgcgt cgactagtac gggiigggii gggiig(Iはイノシン);SEQ ID NO: 12)とを用いて、(2)に記載したPCRの条件と同一の条件で、PCRを行い、目的の5'末端を得た。
【0077】
次いで、3'RACE法は、Invitrogen社の3'RACEシステムにしたがって行った。すなわち、まず、5'末端にアダプター配列がついたオリゴ(dT)(3'RACE用アダプタープライマー;ggccacgcgt cgactagtac tttttttttt ttttttt;SEQ ID NO: 13)をプライマーとして、逆転写反応を行ってファーストストランドcDNAを合成し、その後ファーストストランドcDNAを鋳型として、3'RACE用プライマー(SEQ ID NO: 9)および3'RACE用アダプタープライマーとを用いて、(2)に記載したPCRの条件と同一の条件で、PCRを行い、目的の3'末端を得た。
【0078】
(4)全長配列の取得
上述した(3)に記載したとおり3'RACEおよび5'RACEを行うことにより、T. cruzi由来の目的とする遺伝子の全長配列を得た。この全長配列の5'末端および3'末端の配列を、上述したTIGRデータベースに登録された配列を解析して推定し、全長配列を増幅するための1対のプライマー、フォワードプライマーとしてのSEQ ID NO: 10、およびリバースプライマーとしてのSEQ ID NO: 11を調製した。
【0079】
SEQ ID NO: 1の全長DNAを取得するため、このようにして調製したフォワードプライマー(SEQ ID NO: 10)、そしてリバースプライマー(SEQ ID NO: 11)を使用し、(3)で得られた配列を鋳型として、(2)に記載したPCRの条件と同一の条件(94℃にて1分間を1サイクル行った後、〔94℃における解離反応を15秒間;55℃におけるアニーリングを30秒間;そして74℃における伸長反応を1分間〕これを1サイクルとして35サイクル行い、最後に74℃にて1分間反応を行うという条件)により全長配列を増幅した。
【0080】
このPCR産物をシークエンシングしたところ(ABI9700)、(3)で得られたDNAが、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド配列を有することがわかり、このDNAに基づいてSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列を有するタンパク質がコードされることが明らかになった。
【0081】
実施例2:Leishmania majorからの類似タンパク質の単離
次いで、L. majorから類似するタンパク質を得るため、L. major(MHOM/SU173/5ASKH株)cDNAを鋳型として、実施例1に示されたフォワードプライマー(SEQ ID NO: 10)、およびリバースプライマー(SEQ ID NO: 11)を使用し、実施例1(2)に記載したPCR条件と同一の条件のもと、PCRにより全長配列を増幅することを試みた。ここで、
このPCR産物をシークエンシングしたところ(ABI9700)、この実施例で増幅されたDNAが、SEQ ID NO: 3のヌクレオチド配列を有することがわかり、このDNAに基づいてSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を有するタンパク質がコードされることが明らかになった。L. major(MHOM/SU173/5ASKH株)cDNAは、オリゴdT(18)プライマーを用いて、アマシャム社のYou-prime 1st strand synthesis beadsを使用して、そのプロトコールに従って作製した。
【0082】
実施例3:全長配列の解析
実施例1において得られたSEQ ID NO: 1のDNAおよびSEQ ID NO: 2のタンパク質並びに実施例2で得られたL. major由来の類似するタンパク質を、従来から知られている種々の種のキノール酸化酵素、AOXの配列と比較した。DNAのヌクレオチド配列の比較並びにタンパク質のアミノ酸配列の比較は、ともにBLASTプログラムを使用して行った。
【0083】
本実施例において対比の対象として使用した分子は、T. brucei由来のAOXを初めとして、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium parvum)、アスペルギルス(Aspergillus niger)、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)、クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)、細胞性粘菌(Dictyostelium discoideum)、そしてαプロテオバクテリウム(Novosphingobium aromaticivorans)に由来する既知のAOXタンパク質およびそれをコードするDNAであった。
【0084】
その結果、本発明のSEQ ID NO: 2のタンパク質およびSEQ ID NO: 1のDNAとの間での配列相同性は、T. bruceiのAOXのタンパク質およびDNAとは、それぞれ28%および27%の相同性を有するのみであり、またシロイヌナズナ(A. thaliana)のAOXのタンパク質およびDNAと、それぞれ27%および17%の相同性を有するのみであることがわかった。
【0085】
次いで、これらの種々の種のAOXのアミノ酸配列と、T.cruzi由来のSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列ならびにL. major由来のSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列をアラインさせたが、保存された特徴的な配列は存在せず、例えばT.cruziおよびL. major以外の種において完全に保存されていた鉄結合部位、「EXXHモチーフ-EXXHモチーフ」という構造も、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列中には存在しなかった。
【0086】
ここでは、図1として、T.cruzi由来のSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列ならびにL. major由来のSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を、最も近縁種と考えられるT. bruceiのAOXのアミノ酸配列とアラインさせた結果を示す。このことからも明らかなように、配列相同性は見られなかった。このアラインメントの中で、2個の矢頭で示された部分が、T.cruziおよびL. major以外の種において完全に保存されていた「EXXHモチーフ-EXXHモチーフ」を示す。
【0087】
一方、本発明において初めて得られたT.cruzi由来のSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列とL. major由来のSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列とを比較したところ、96.7%の配列相同性が見られ、また、T.cruzi由来のSEQ ID NO: 1のヌクレオチド配列とL. major由来のSEQ ID NO: 3のヌクレオチド配列とを比較したところ、98%の配列相同性が見られた。
【0088】
実施例4:抗体の調製
実施例1において得られたSEQ ID NO: 2のうち、308番アミノ酸〜321番アミノ酸からなるペプチド(SEQ ID NO: 5)を免疫源として100μg/mlの濃度にて、ウサギに投与し、21日間経過した後100μg /mlの濃度の同一の免疫源を用いてブーストし、53日後に血液を採取し、その血液から抗血清を得た。
【0089】
次いで、この抗血清の中から、IgGのクラスをアフィニティカラム(ペプチドセファローズビーズカラム)を用いて精製した。
この抗体を使用して、in vitroにおいてT. cruziを蛍光染色した結果を、図2に示す。この図2において、抗体を用いて蛍光染色した像は、核(DAPIにより染色される部分)とは全く異なる部位が染色されていることを示しており、その一方で、T. cruziをミトコンドリア特異的試薬であるMitotracker(Molecular Probe社)で染色される部位とほぼ同一の部位が染色されていることがわかった。そこで、Mitotrackerでの染色像と抗体による染色像とを重ね合わせたところ、この抗体は全く同一の部位を認識していることが明らかになった(図2)。
【0090】
実施例5:T. cruzi由来の新規タンパク質の機能解析
本実施例においては、実施例1において得られたSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列を有するタンパク質がどのような効果を有するかを調べた。
【0091】
まず、内在性の末端酸化酵素(シトクロムboおよびシトクロムbd)を発現することができない大腸菌株(FN102株)に対して、pCR T7/NT-TOPOベクター(Invitrogen社)に組み込んだSEQ ID NO: 2を形質導入し、発現させることを試みた。
【0092】
この大腸菌を100μM IPTG存在下、非存在下で平板培養を行ったところ、前者でのみ、大腸菌コロニーの生育が見られた(図3)。すなわち、内在性の末端酸化酵素発現が不能な大腸菌は通常の培地では生育不能であるが、IPTGにより発現が誘導されたT. cruzi由来の新規タンパク質(SEQ ID NO: 2)は機能的に大腸菌の末端酸化酵素を相補する、すなわちキノール酸化酵素活性を有することが示された。
【0093】
さらに、より詳しい生化学的な解析を行うために、T. cruzi由来の新規タンパク質の部分精製を以下のように行った。IPTG 1 mM存在下で5時間、T. cruzi由来の新規タンパク質(SEQ ID NO: 2)の発現誘導を行い、ソニケーションにより大腸菌を破砕し、超遠心(200,000 g、1 hr)を行うことにより膜画分と細胞質画分に分離した。このようにして得れれた膜画分および細胞質画分をSDS-PAGEを使用して電気泳動し、実施例4において得られた抗体(ポリクローナル抗体)を使用して、大腸菌中で発現されたSEQ ID NO: 2のタンパク質の同定をウェスタンブロット法で行った。結果を図4に示す。図4において、レーン1では、組換え大腸菌の細胞質画分サンプルを、レーン2では、組換え大腸菌の膜画分サンプルを、そしてレーン3では陰性対照として空ベクターで組み換えた大腸菌の膜画分サンプルを示す。
【0094】
その結果、レーン2の組換え大腸菌由来の膜画分にのみ、抗体の反応するシグナルを見いだした。このタンパク質の分子量は45 kDaであり、計算上の値とも一致した。
さらに、キノンが増加すると、278 nmの吸光度が上昇するという特徴を利用して、キノールの酸化活性を、分光光度計を用いてモニターすることにより測定した。結果を図5に示す。
【0095】
図5に示されるように、膜画分を反応液中に加えたところ、吸光度の上昇が検出され、ここに5 nMのアスコフラノンを加えたところ、吸光度の上昇はバックグラウンドレベルまで低下した。すなわち、膜画分に局在するT. cruzi由来の新規タンパク質はキノール酸化酵素活性を有し、その活性はアスコフラノンにより阻害されることが明らかになった。また、この際のIC50値は5 nM以下と考えられた。
【0096】
実施例6:T. cruziの生育に対するキノール酸化酵素阻害剤の作用
本実施例においては、in vitroにおいて、T. cruziに対してキノール酸化酵素阻害剤であるアスコフラノンを投与し、その生育に対するアスコフラノンの作用を調べた。
【0097】
In vitroでヒトニューログリオーマ細胞GA-1にT. cruzi(Tulahuen株)原虫を24穴プラスチックプレート1ウェルあたり、104匹感染させ、感染成立後(2日後)に既知のキノール酸化酵素阻害剤であるアスコフラノンと、シトクロムb阻害剤であるアトバコンを培養液中に添加し、T. cruzi原虫の増殖阻害能を検討した。
【0098】
その結果、アスコフラノン50μMとアトバコン5μMの併用で、培養液中からの原虫の消失を確認することができた。投与7日後の段階でも培養液中に原虫の出現はなかったことから、治療されたと判断された。アスコフラノン、アトバコンいずれか一方のみではこの効果は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、リーシュマニア症の原因原虫であるL. major及びシャーガス病の原因原虫であるT. cruziに由来する、新規キノール酸化酵素を提供することができる。本発明はまた、この新規キノール酸化酵素を阻害することにより、リーシュマニア症およびシャーガス病を治療・予防することができることを示し、その結果キノール酸化酵素を含む医薬組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、T. cruzi由来のSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列およびL. major由来のSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を、T. brucei由来の既知のキノール酸化酵素、AOXのアミノ酸配列と対比した図である。
【図2】図2は、実施例4において調製された抗体が、ミトコンドリアに特異的に結合していることを示す図である。
【図3】図3は、内在性の末端酸化酵素(シトクロムboおよびシトクロムbd)を発現することができない大腸菌株(FN102株)に対してSEQ ID NO: 2を形質導入した場合、IPTGにより発現を誘導した場合にのみ大腸菌が生育することを示す図である。
【図4】図4は、ウェスタンブロットにより、SEQ ID NO: 2のタンパク質を大腸菌に発現させた場合、膜画分に特異的に分布することを示す図である。
【図5】図5は、キノンの増加に伴って上昇する278 nmの吸光度が、5 nMのアスコフラノンを加えたことにより、吸光度の上昇はバックグラウンドレベルまで低下したことから、膜画分に局在するT. cruzi由来の新規タンパク質(SEQ ID NO: 2)がキノール酸化酵素活性を有し、その活性はアスコフラノンにより阻害されることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に記載のアミノ酸配列;または(b)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に記載の配列において、1または複数個のアミノ酸の欠失、置換、または付加を有するアミノ酸配列;からなる、新規キノール酸化酵素。
【請求項2】
(c)SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列;または(d)SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNAと相補的なヌクレオチド配列からなるDNA、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAによりコードされるアミノ酸配列;からなる、新規キノール酸化酵素。
【請求項3】
アミノ酸配列が、リーシュマニア症及びシャーガス病の原因である原虫に由来する、請求項1または2に記載の新規キノール酸化酵素。
【請求項4】
(a)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA;または(b)SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に記載の配列において、1または複数個のアミノ酸の欠失、置換、または付加を有し、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNA;のいずれかからなるDNA。
【請求項5】
(c)SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNA;または(d)SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列からなるDNAと相補的なヌクレオチド配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつキノール酸化活性を有するタンパク質をコードするDNA;のいずれかからなるDNA。
【請求項6】
DNAがリーシュマニア症及びシャーガス病の原因である原虫に由来する、請求項4または5に記載のDNA。
【請求項7】
SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に示されるタンパク質に対して結合する抗体。
【請求項8】
T. brucei由来のキノール酸化酵素、AOXに対しては結合しない、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 4に示されるアミノ酸配列を有する新規キノール酸化酵素を阻害することで、リーシュマニア症及びシャーガス病の予防・治療を行うための、キノール酸化酵素阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項10】
キノール酸化酵素阻害剤が、アスコフラノン、アスコフラノン誘導体、アスコクロリン、サリチルヒドロキサム酸(SHAM)、n-プロピルギャレートからなる群から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
シトクロム系呼吸鎖に対する阻害剤をさらに含むことにより、より効率的にリーシュマニア症及びシャーガス病の予防・治療を行うための、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
シトクロム系呼吸鎖に対する阻害剤が、アトバコンまたはアンチマイシンである、請求項11に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−122010(P2006−122010A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317308(P2004−317308)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(501308753)アリジェン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】