説明

新規ジケトピロロピロール顔料

本発明は、式(I)[式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜Cアルキル基または置換もしくは非置換フェニル基であり、このフェニル基は、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、CN、F、CL、Br、NO、CF、S−C〜Cアルキル、フェニルまたは(C〜C)アルキレンフェニルの群からの1、2、3または4個の置換基で置換されていることが可能であり、ただし、基R、R、RまたはRの少なくとも1つは、前記置換または非置換フェニル基の1つである]のジケトピロロピロールに関する。
【化18】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、価値のある顔料を構成する新規な1,4−ジケトピロロ[3,4−C]ピロール(以下ジケトピロロピロールと呼ぶ)に関し、さらにまた、その調製および高分子量材料を顔料着色するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
EP−A−0061426は、ジケトピロロピロールを使用することを特徴とする高分子量有機材料を大量に着色する方法を開示している。
【0003】
EP−A−0094911は、ジケトピロロピロールを調製する方法を開示している。
【0004】
高分子量有機材料を着色するための顔料の使用においては、高色強度、効果的光堅牢度および耐候堅牢度、塗装システムで使用する場合の優れた上塗堅牢度、低粘度の高顔料化ペイント濃縮物(ミルベース)、および特にメタリック仕上げ塗装の場合の高透明性および高輝度色などの顔料の性能特性についての厳しい必要条件が課される。プラスチックの着色の場合には、効果的分散性に対する要求があり、効果的分散性は、例えば高色強度に、はっきりと示される。また、印刷システムでは、高色強度が必要条件である。顔料は、できるだけ普遍的に有用であるべきである。
【0005】
しかし、上述した刊行物に開示されているジケトピロロピロールの多くは、もはや、今日の必要条件を満たしていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、目的は、存在するジケトピロロピロール顔料と比較して、優れた特性を有する新規なジケトピロロピロール顔料を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことには、この目的は、以下に規定されるジケトピロロピロール顔料により達成されることが見出された。
【0008】
本発明は、式(I)のジケトピロロピロールを提供する。
【0009】
【化6】

【0010】
式中、
、R、R、およびRは、それぞれ独立に、C〜Cアルキルラジカルまたは置換もしくは非置換フェニル基であり、このフェニル基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、CN、F、Cl、Br、NO、CF、S−C〜Cアルキル、フェニルまたは(C〜C)アルキレンフェニルの群からの1、2、3または4個の置換基で置換されることが可能であり、ただし、基R、R、RまたはRの少なくとも1つは、前記置換または非置換フェニル基の1つである。
【0011】
また、本発明は、2以上の(即ち2や3の)式(I)のジケトピロロピロールの混合物を提供する。
【0012】
好ましくは、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、メチル、エチル、フェニル、あるいはメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、CN、F、Cl、S−メチル、フェニルまたはベンジルの群の1または2個の置換基で置換されたフェニルである。
【0013】
特に興味深いのは、式(I)の対称型ジケトピロロピロールであり、式中、R、およびRは同一であり、RおよびRは同一であって、特に式(I)のジケトピロロピロールであり、式(I)中、RおよびRはそれぞれメチルまたはエチル基であり、RおよびRは同一であって、それぞれ非置換あるいはメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、F、Cl、NO、CF、フェニルまたはベンジルの群の1または2個の置換基で置換されたフェニル基である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のジケトピロロピロール顔料および本発明による混合物は、コハク酸ジエステルを、式(II)または(III)のニトリルと、
【0015】
【化7】

【0016】
あるいは、式(II)または式(III)の2、3または4種の異なるニトリルの混合物と、有機溶媒中、強塩基の存在下で反応させ、次いで加水分解することによって調製することができ、式中RからRは上記に定義した通りである。
【0017】
使用するコハク酸ジエステルは、ジアルキル、ジアリールまたはモノアルキルモノアリールエステルであることができ、またコハク酸ジアルキルエステルおよびジアリールエステルは、非対称型であってもよい。好ましいのは、対称コハク酸ジエステル、特に対称型コハク酸ジアルキルエステルを使用することである。エステルが、コハク酸ジアリールエステルまたはコハク酸モノアリールモノアルキルエステルである場合には、アリールが、非置換あるいはクロロなどのハロゲン、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチルもしくはtert−アミルなどのC〜CアルキルまたはメトキシもしくはエトキシなどのC〜Cアルコキシの群からの1、2もしくは3個の置換基で置換されたフェニルである。好ましくはアリールは、非置換のフェニルである。ここで、エステルは、コハク酸ジアルキルエステルまたはコハク酸モノアルキルモノアリールエステルであり、アルキルは、非分岐、分岐または環状であることができ、好ましくは分岐したものであり、好ましくは1〜18個、具体的には1〜12個、特に1〜8個、さらに特に好ましくは1〜5個の炭素原子を含む。例えば、アルキルは、好ましくはイソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−アミル、シクロヘキシル、ヘプチル、2,2−ジメチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシルまたはオクタデシルなどのsec−もしくはtert−アルキルである。
【0018】
コハク酸ジエステルの例は、ジメチル、ジエチル、ジプロピル、ジブチル、ジペンチル、ジヘキシル、ジヘプチル、ジオクチル、ジイソプロピル、ジ−sec−ブチル、ジ−tert−ブチル、ジ−tert−アミル、ジ[1,1−ジメチルブチル]、ジ[1,1,3,3−テトラメチルブチル]、ジ[1,1−ジメチルペンチル]、ジ[1−メチル−1−エチルブチル]、ジ[1,1−ジエチルプロピル]、ジフェニル、ジ[4−メチルフェニル]、ジ[2−メチルフェニル]、ジ[4−クロロフェニル]、ジ[2,4−ジクロロフェニル]、モノエチルモノフェニルまたはコハク酸ジシクロヘキシルである。
【0019】
具体的には、アルキルが分岐していて3〜5個の炭素原子を含む対称型コハク酸ジアルキルエステルを使用する。
【0020】
コハク酸ジエステルおよびニトリルは、知られている化合物であり、知られている方法によって調製することができる。
【0021】
使用するニトリルの量または使用するニトリルの総量は、コハク酸ジエステルの量に関して化学量論的であるべきである。すなわち、コハク酸ジエステル1モル当り、2モルのニトリルである。それにもかかわらず、より高収率を得るためには、過剰のニトリルまたはコハク酸ジエステルを使用することが有利であることが証明された。有利には、化学量論的量を基準にして、10倍までの過剰のニトリルまたはコハク酸ジエステルが使用し、好ましくは5倍まで、具体的には3倍までである。過剰のニトリルは回収する。
【0022】
コハク酸ジエステルのニトリルとの反応は、有機溶媒中で実施する。適切な溶媒の例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどの1〜10個の炭素原子を有する第1級、第2級もしくは第3級アルコール、n−ペンタノールまたは2−メチル−2−ブタノールなどのペンタノール、2−メチル−2−ペンタノールまたは3−メチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3−エチル−3−ペンタノールなどのヘキサノール、2,4,4−トリメチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノールなどのオクタノール、またはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールまたはグリセロールなどのグリコール、またはポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどのポリグリコール、メチルイソブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンまたはジオキサンなどのエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのモノメチルもしくはモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルまたはジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルグリコールまたはメトキシブタノールなどのグリコールエーテル、2極性非プロトン性溶媒、例としてジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミドまたはN−メチルピロリドンなどの酸アミド、テトラメチル尿素などの尿素誘導体、シクロヘキサンまたはベンゼンまたはアルキル−、アルコキシ−、ニトロ−またはハロゲン置換ベンゼンなどまた、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、0−ジクロロベンゼンまたは1,2,4−トリクロロベンゼンなどの脂肪族または芳香族炭化水素、ピリジン、ピコリンまたはキノリンなどの芳香族N−複素環式化合物、さらにまたヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドまたはスルホラン、が含まれる。
【0023】
反応物の1重量部当り、2〜25重量部の溶媒を使用することが有利である。攪拌可能な懸濁液を確実に得るために十分な溶媒量であるべきである。さらにまた、反応が生じる温度範囲で、その反応物が液体である場合には、式(II)および/または式(III)の反応物ニトリルを、同時に溶媒として使用することも可能である。
【0024】
本発明の方法においては、溶媒としてアルコール、特に第2級もしくは第3級アルコールを使用することが好ましい。好ましい第3級アルコールはtert−ブタノールおよびtert−アミルアルコールである。
【0025】
溶媒の混合物、特に好ましい第2級および第3級アルコールと、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素との、またはクロロベンゼンなどのハロゲン置換ベンゼンとの混合物を使用することも可能である。
【0026】
本発明の方法は、強塩基の存在下で実施する。適切な強塩基は、具体的にはリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属それ自体、またはリチウム、ナトリウムもしくはカリウムアミドなどのアルカリ金属アミド、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムハライドなどのアルカリ金属ハライド、またはアルカリ土類金属またはアルカリ金属アルコキシドであり、これらは、例えば具体的にはリチウム、ナトリウム、もしくはカリウムメトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、イソプロポキシド、n−ブトキシド、sec−ブトキシド、tert−ブトキシド、2−メチル−2−ブトキシド、2−メチル−2−ペントキシド、3−メチル−3−ペントキシドおよび3−エチル−3−ペントキシドなど1〜10個の炭素原子を有する第1級、第2級もしくは第3級脂肪族アルコールから得られる。上述の塩基の混合も使用することができる。
【0027】
本発明の方法においては、使用する強塩基は、好ましくはアルカリ金属アルコキシドを含み、ただし、アルカリ金属は、具体的にはナトリウムまたはカリウムであり、アルコキシドは好ましくは第2級もしくは第3級アルコールから得る。したがって、特に好ましい強塩基は、例えばナトリウムもしくはカリウムイソプロポキシド、sec−ブトキシド、tert−ブトキシドおよびtert−アミルオキシドである。また、アルカリ金属アルコキシドは、対応するアルカリ金属、アルコールをアルカリ金属ハライドまたはアルカリ金属アミドと反応させることによって、現場で調製することができる。
【0028】
本発明の方法においては、強塩基は、使用する反応物1モル当り、0.1〜10モル、好ましくは1.9〜5.0モルの量で過剰に使用することができる。
【0029】
原理的には、化学量論的量の塩基で十分であるが、塩基が過剰であると多くの場合に、収率に有利な効果がある。
【0030】
コハク酸ジエステルと式(II)または式(III)のニトリルとの本発明の反応は、具体的には60〜200℃、好ましくは80〜140℃の温度で、望ましい場合には過圧下で実施する。
【0031】
反応に対しては、個々の成分は、好ましくは室温で、どのような順序でも添加することができる。全ての成分を、比較的低温で導入し、次いで、混合物を反応温度の範囲に加熱することも可能である。一般に、収率に特に有利な効果を有する1つの好ましい実施態様は、反応物ニトリルを塩基と一緒に導入し、反応温度の領域でコハク酸ジエステルを計量して供給することである。他の可能性は、反応温度で、塩基の初期仕込に対して、コハク酸ジエステルおよび反応物ニトリルを同時に計量して供給することである。本発明の方法は、バッチ式または連続的に実施することができる。
【0032】
一般に、低級アルキル基を有するコハク酸ジエステルの場合および例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールまたはtert−ブタノールなどの低級アルコールから得られるアルコキシドの場合、より高収率を得るためには、反応過程で形成された低級アルコールを、反応媒体から連続的に除去することが必要であることが判るであろう。使用する溶媒がアルコールであり、使用する塩基がアルコキシドである場合には、同じアルキル部分を有するアルコールおよびアルコキシドを選ぶのが有利であろう。また、コハク酸ジエステルが同じ種類のアルキル基を含むことも同様に有利であろう。
【0033】
反応生成物を加水分解するために使用する加水分解剤は、水、1つまたは複数の有機プロトン性溶媒または1つまたは複数の酸を含む。適切なプロトン性溶媒の例には、好ましくはメタノール、エタノールなどの1〜4個の炭素原子を有するアルコールが含まれる。適切な酸には、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸またはスルホン酸などの有機酸、その例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、フェニル酢酸、ベンゼンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸であり、さらに無機酸、その例は、塩酸、硫酸またはリン酸であって、これらのものが含まれる。加水分解に対しては、有機酸、特に酢酸およびギ酸などの脂肪族カルボン酸を使用することが好ましい。また、水、有機プロトン性溶媒および/または酸をどのような組み合わせでも使用することが可能である。また、加水分解は、有機非プロトン溶媒の存在下で実施してもよい。
【0034】
加水分解は、反応懸濁液に加水分解剤を添加することによって直接に、また加水分解剤に反応懸濁液を添加することによって間接的に生じうる。水、有機溶媒、プロトン性溶媒および酸加水分解剤を、いかなる順序および混合物としてでも、初期仕込として添加および/または導入することができる。さらなる可能性は、初期仕込に対して、個々の成分を同時に添加することである。例えば、酸および反応懸濁液を、水および/またはアルコールの初期仕込に対して同時に添加することができる。
【0035】
例えば、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸またはトリエタノールアミン緩衝液などの緩衝液を加水分解の間に使用することが有利であろう。
【0036】
加水分解の間の温度は、−20℃〜200℃、好ましくは−5〜180℃、具体的には、0〜160℃がよく、加水分解は、望ましい場合には過圧下で生じる。また、反応懸濁液および加水分解剤は、温度に差異がありうる。また、加水分解は、例えば水蒸気により生じうる。
【0037】
加水分解剤の総量は、有利には塩基に対し、少なくとも化学量論的な量である。例えば、水および/または有機溶媒、プロトン溶媒は、形成された顔料1部当り、0.5重量部および50重量部の間で使用する。酸は、有利には塩基に対して、0.1〜10倍モル過剰で使用する。加水分解後、水含有懸濁液が存在する場合には、pHは、アルカリ性、中性または酸性の範囲で置くのがよい。
【0038】
式(I)のジケトピロロピロールは、本方法により、加水分解中に顔料、微細に分割された前顔料または粗い結晶性粗製顔料として得られる。加水分解後存在する顔料は、通常の方法で濾過によって単離することができる。顔料の単離の前に適当な場合には減圧下での蒸留によって、あるいは水蒸気蒸留によって溶媒を除去することができる。これは、加水分解の間に行うこともできる。
【0039】
前顔料および粗製顔料は、後処理にかける必要がある。この目的のために、加水分解懸濁液を直接使用することができ、あるいは別法として、顔料をまず単離し、次に後処理することができる。
【0040】
後処理は、水および/または有機溶媒中、任意のpHで、50〜250℃、好ましくは80〜190℃の温度で、望ましい場合には過圧下で、10分〜48時間、好ましくは30分〜8時間の熱後処理もしくは粉砕操作またはこれら2つの操作の組み合わせを含む。
【0041】
粉砕は、乾式粉砕または湿式粉砕によって行うことができる。
【0042】
乾式粉砕に適するミルは、全ての、バッチ式および連続式振動ミルまたはロールミルを含み、一方、湿式粉砕用の適切なミルは、全てのバッチ式および連続式攪拌ボールミル、ロールミルおよび振動ミル、さらにまた混練装置を含む。湿式粉砕は、水および/または有機溶媒中で、任意のpHで行う。
【0043】
湿式粉砕は、高エネルギー入力で、例についていえば、粉砕空間1リットル当り1.0KWを超える出力密度および12m/sを超える攪拌周速度で、攪拌ボールミル中で実施することが好ましい。また、加水分解剤または反応懸濁液は、部分的に順次添加することができ、したがって、その部分の間で、例えば、望ましい場合には高温で、長時間攪拌するなどの中間処理があってもよい。
【0044】
後処理のために、ジケトピロロピロールをあらかじめ単離することなしに、加水分解懸濁液を使用することが好ましい。 彩色特性を向上させ、ある一定の性能効果を達成するために、界面活性剤、顔料性および非顔料性分散剤、充填剤、標準化剤、樹脂、ワックス、脱泡剤、抗ダスト剤、増量剤、調色着色剤、防腐剤、乾燥遅延剤、レオロジー制御添加剤、湿潤剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤またはその組み合わせなどの助剤を使用することが可能である。
【0045】
助剤は、反応、加水分解および/または後処理の前、その間、または後に、一度にまたは2回または複数に分割して、適時に所望の時点で添加することができる。添加された助剤の総量は、ジケトピロロピロール顔料に基づいて、0重量%〜40重量%、好ましくは1重量%〜30重量%さらに好ましくは2.5重量%〜25重量%に達してよい。
【0046】
適切な界面活性剤には、アニオン性またはアニオン−活性の、カチオン性またはカチオン−活性の、および非イオン性の物質またはそれら薬品の混合物が含まれる。好ましい界面活性剤または界面活性剤混合物は、泡立ちのないものである。
【0047】
適切なアニオン性物質の例には、脂肪酸タウロイド、脂肪酸N−メチルタウロイド、脂肪酸イセチオン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレン−スルホン酸塩、アルキルフェノールポリグリコールエーテル硫酸塩、脂肪アルコールポリグリコールエーテル硫酸塩、脂肪酸アミドポリグリコールエーテル硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルケニルコハク酸モノエステル、脂肪アルコールポリグリコールエーテルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸グルタミン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸サルコサイド;脂肪酸、例として、パルミチン、ステアリンおよびオレイン酸;石鹸、例として脂肪酸、ナフテン酸およびアビエチン酸、アルカリ可溶性樹脂などの樹脂酸のアルカリ金属塩が含まれ、このアルカリ可溶性樹脂の例は、ロジン改変マレイン酸エステル樹脂およびシアヌール酸クロリド、タウリン、N,N’−ジエチルアミノプロピルアミンおよびp−フェニレンジアミンをベースとする縮合生成物である。樹脂石鹸、すなわち、樹脂酸のアルカリ金属塩が特に好ましい。
【0048】
適切なカチオン性物質の例には、第4級アンモニウム塩、脂肪アミンアルコキシレート、アルコキシルポリアミン、脂肪アミンポリグリコールエーテル、脂肪アミン、ジアミン、および脂肪アミンまたは脂肪アルコールから誘導されたポリアミン、および前記アミンのアルコキシレート、脂肪酸から誘導されたイミダゾリン、および例えば、酢酸塩などのこれらカチオン性物質の塩が含まれる。
【0049】
適切な非イオン性物質の例には、アミンオキシド、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエーテル、脂肪酸アミドN−プロピルベタインなどのベタイン、脂肪族および芳香族アルコールのリン酸エステル、脂肪アルコールまたは脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪酸アミドエトキシレート、脂肪アルコール−アルキレンオキシド付加物およびアルキルフェノールポリグリコールエーテルが含まれる。
【0050】
非顔料性分散剤とは、構造的に言って、化学的改変によって有機顔料から誘導されない物質を意味する。非顔料性分散剤は、顔料を実際に調製する間、あるいは多くの場合に、着色される適用媒体に顔料を組込む間に、分散剤として添加する。例えば、対応するバインダーに、顔料を分散させることによってペイントまたは印刷インクを調製する間に添加する。対応するバインダーは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミン、ポリアクリレート、ポリイソシアナート、そのブロックコポリマー、対応するモノマーのコポリマーまたは異なるクラスのいくつかのモノマーにより改変されたあるクラスのポリマーなどの高分子物質であってよい。これらの高分子物質は、ヒドロキシル、アミノ、イミノおよびアンモニウム基、カルボン酸およびカルボキシレート基、スルホン酸およびスルホネート基またはホスホン酸およびホスホネート基などの極性アンカー基を持っており、例えば芳香族非顔料性物質により改変することもできる。さらに、非顔料性分散剤は、有機顔料から誘導されたものではないが、官能基により化学的に改変された芳香族物質であってよい。
【0051】
この種の非顔料性分散剤は、当業者に知られており、いくつかの場合には、市販されている。(例えば、Solsperse(登録商標)、Avecia;Disperbyk(登録商標)、Byk、Efka(登録商標)、Efka)。多くのタイプを代表として以下に述べる;しかし、記載されているどのような所望の他の物質も、原則として使用することが可能であり、例として、イソシアナートとアルコール、ジオールまたはポリオール、アミノアルコールまたはジアミンまたはポリアミンとの縮合物、ヒドロキシカルボン酸のポリマー、オレフィンモノマーまたはビニルモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸およびそのエステルとのコポリマー、エチレン性不飽和モノマーのウレタン含有ポリマー、ウレタン改変ポリエステル、シアヌール酸ハライドをベースとする縮合生成物、ニトロキシ化合物含有ポリマー、ポリエステルアミド、改変ポリアミド、改変アクリルポリマー、ポリエステルおよびアクリルポリマーから形成されたくし状分散剤、リン酸エステル、トリアジンから誘導されたポリマー、改変ポリエーテル、または芳香族、非顔料性物質から誘導された分散剤がある。これらの基本構造は、多くの場合、官能基を持つさらなる物質と、例えば化学反応させることによって、あるいは塩を形成させることによってさらに改変する。
【0052】
顔料性分散剤とは、基本構造として有機顔料から由来する顔料分散剤を意味し、前記基本構造の化学的改変によって調製する;例としては、サッカリン含有顔料分散剤、ピペリジル含有顔料分散剤、ナフタレン−またはペリレン−由来の顔料分散剤、メチレン基を介して顔料基本構造に結合している官能基を含む顔料分散剤、ポリマーにより化学的に改変された顔料基本構造、スルホ酸基、スルホンアミド基もしくはスルホ酸酸エステル基を含む顔料分散剤、エーテルもしくはチオエーテルを含む顔料分散剤、またはカルボン酸、カルボキシルエステルもしくはカルボキサミド基を含む顔料分散剤が含まれる。
【0053】
また、式(I)の化合物の混合物は、互いに独立に調製された異なる反応溶液を、あらかじめ混合するかまたは混合せずに、共加水分解することによって調製するか、あるいは2つまたは複数の式(I)の化合物を共再沈殿することによって調製することができる。
【0054】
また、対称形に置換された式(I)のジケトピロロピロールは、コハク酸ジエステルとニトリルとを反応させることによってではなく、換わりに式(IV)または式(V)のエステル、
【0055】
【化8】

と式(III)のニトリルとを、有機溶媒中、強塩基の存在下で反応させ、続いて加水分解することによって調製することができる。RおよびRは、上記の定義を有し、RおよびRは、非置換または置換アルキルまたはアリール基、好ましくはコハク酸ジエステルに関連して特定されたエステル基である。
【0056】
この反応は、コハク酸ジエステルとニトリルとの反応での記載と同様の条件下で実施することができる。
【0057】
式(IV)または式(V)のエステルは、米国特許第B1−6,207,697号またはWO00/34248に開示されている方法と類似して調製することができる。
【0058】
本発明のジケトピロロピロール顔料は、好ましくは水性のプレスケーキとして使用することができるが、一般には易流動性の粉体状性質をもつ固体システム、または顆粒を含む。
【0059】
本発明のジケトピロロピロール顔料は、卓越した彩色およびレオロジー的特性に対し、具体的には、卓越したレオロジー、高透明性、効果的光沢、高色強度、傷の付かない上塗堅牢度、および非常に効果的光堅牢度および耐候堅牢度に対して、特に塗料材料において注目に値する。ジケトピロロピロール顔料は、溶剤タイプおよび水性システムで使用することができる。また、プラスチックおよび印刷システムでも、ジケトピロロピロール顔料は、良好な特性を示し、したがって、汎用的に使用することができる。
【0060】
本発明によって調製されたジケトピロロピロール顔料は、例えばプラスチック、樹脂、ワニス、ペイント、または静電写真トナーおよび顕色剤、さらにまた製図用インク、筆記用インク、および印刷インクなどの、天然または合成由来の高分子量有機材料を顔料着色するために使用することができる。
【0061】
上記の顔料で顔料着色することができる高分子有機材料の例には、エチルセルロース、ニトロセルセルロース、セルロースアセテート、またはセルロースブチレートなどのセルロースエーテルおよびセルロースエステル、天然樹脂、または付加重合樹脂または縮合樹脂などの合成樹脂、アミノ樹脂の例、特に尿素−ホルムアルデヒド樹脂およびメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、ポリウレタンまたはポリエステル、ゴム、カゼイン、シリコーンおよびシリコーン樹脂が、個々にまたは混合物の形で含まれる。
【0062】
前述の高分子量有機化合物は、プラスチック塊、溶融物の形態、または紡糸溶液、ワニス、ペイント、または印刷インクの形態であっても構わない。本発明によって得られた顔料を、所期の用途に応じてブレンドの形態あるいは調剤または分散液の形態で利用することが有利であることが分っている。顔料着色される高分子量有機材料に基づいて、本発明の顔料は0.05重量%〜30重量%好ましくは0.1重量%〜15重量%の量で使用する。
【0063】
また、本発明の顔料は、例えば、1成分または2成分粉体トナー(また、1成分または2成分顕色剤と呼ばれる)、磁気トナー、液体トナー、重合トナー、特殊トナーなどの電子写真トナー、および顕色剤の着色剤として使用に適する。
【0064】
一般的なトナーバインダーは、スチレン、スチレン−アクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン、アクリル酸エステル、ポリエステルおよびフェノ−ル−エポキシ樹脂、ポリスルホン、ポリウレタン、個々にまたは組み合わせて、さらにまたポリエチレンおよびポリプロピレンなどの付加重合樹脂、ポリ付加樹脂およびポリ縮合樹脂であり、これらは樹脂は、電荷制御剤、ワックスまたは流動性助剤などのさらなる成分添加を既に含んでいてよいし、またこれらにより、引き続いて改変することもできる。
【0065】
本発明の顔料は、さらに粉体および粉体塗料材料、特に、摩擦静電的または界面動電気的に噴霧可能な粉体塗料材料の着色剤として使用に適し、粉体塗料材料は、例えば、金属、木材、プラスチック、ガラス、セラミック、コンクリート、織物材料、紙またはゴムで作製された物品の表面を塗装するために使用する。
【0066】
一般に粉体塗料樹脂として使用する樹脂は、通常の硬化剤と一緒になって、エポキシ樹脂、カルボキシル−およびヒドロキシル−含有ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびアクリル樹脂である。また、樹脂の組み合わせも使用する。すなわち、例えばエポキシ樹脂は、しばしばカルボキシル−およびヒドロキシル−含有ポリエステル樹脂と組み合わせて使用する。一般的硬化成分(樹脂系に応じて)は、例えば酸無水物、イミダゾール、さらにまたジシアンジアミド、およびその誘導体、ブロックドイソシアナート、ビスアシルウレタン、フェノールおよびメラミン樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、オキサゾリン、およびカルボン酸である。
【0067】
また、本発明の顔料は、水性と非水性ベース共にインクジェット中で、さらにまたホットメルトプロセスによって操作するインク中で、着色剤として使用に適している。
一般にインクジェットインクは、本発明によって調製された1つまたは複数の化合物を、合計0.5重量%〜15重量%、好ましくは1.5重量%〜8重量%(乾燥基準で計算して)含む。
【0068】
ミクロエマルションインクは、有機溶媒、水、望ましい場合には、その他のハイドロトロピック(Hydrotropic)物質(界面媒介物質)をベースにしている。
一般にミクロエマルションインクは、本発明によって調製された1つまたは複数の化合物を、0.5重量%〜15重量%、好ましくは1.5重量%〜8重量%、水5重量%〜99重量%、および有機溶媒および/またはハイドロトロピック化合物0.5重量%〜94.5重量%含む。
【0069】
溶媒ベースインク−ジェットインクは、好ましくは本発明によって調製された1つまたは複数の化合物を、0.5重量%〜15重量%、有機溶媒および/またはハイドロトロピック化合物85重量%〜99.5重量%を含む。
【0070】
一般にホット−メルトインクは、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコールまたはスルホンアミドをベースとしており、これらは、室温で固体であって、加熱すると液体になり、好ましい融解温度範囲は、約60℃から約140℃が適する。ホットメルトインクジェットインクは、本質的に例えば、ワックス20重量%〜90重量%、および本発明によって調製された1つまたは複数の化合物1重量%〜10重量%からなる。さらに、ホットメルトインクジェットインクは、その他のポリマー(“染料ディゾルバー”として)0重量%〜20重量%、分散助剤0重量%〜5重量%、粘度改質剤0重量%〜20重量%、可塑剤0重量%〜20重量%、粘着性付与剤0重量%〜10重量%、透明性安定剤(これは、例えばワックスの結晶化を防止する)0重量%〜10重量%、および抗酸化剤0重量%〜2重量%を含むことが可能である。例えば、一般的添加剤および助剤は、米国特許第PS5,560,760号に記載されている。
【0071】
さらにまた、本発明の顔料は、カラーフィルタ、加法発色および減法発色共に、さらにまた電子的インクに対する着色剤として使用に適している。
【0072】
プラスチック分野において、顔料の特性を評価するために、多様な知られたプラスチックの中から可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)を選んだ。
【0073】
印刷部門において、顔料の特性を評価するために、多様な知られた印刷システムの中からニトロセルロース(NC)をベースとするグラビア印刷システムを選んだ。
【0074】
塗料部門において、顔料の特性を評価するために、多様な知られたワニスの中から非水分散液をベースとする高固形分アクリル樹脂焼付けワニス(HS)、ポリウレタンをベースとする水性ワニス(PU)、および中油アルキド樹脂およびブタノール−エーテル化メラミン樹脂をベースとするアルキド−メラミン樹脂(AM)を選んだ。
【0075】
色強度および色相は、DIN55986にしたがって決定した。分散後のミルベースレオロジーは、以下の5点法に基づいて、目視で評価した。
5 高流動性流体
4 液体
3 粘性
2 僅かにゲル化
1 ゲル化
上塗堅牢度は、DIN53221にしたがって決定した。
【0076】
粘度は、ミルベースを最終顔料濃度に希釈後、エリクセン(Erichsen)製Rossmannビスコスパチュラ型301を使用して決定した。
【0077】
以下の実施例において、部およびパーセンテージは、各々の場合に重量によるものとする。
【0078】
(実施例1a)
4つ口フラスコに無水のtert−アミルアルコール252.8部を仕込む。ナトリウム23部を導入した後、ナトリウムが反応してしまうまで、混合物を還流下で、攪拌する。100℃で、式(XX)のニトリル58.6部
【0079】
【化9】

を導入する。2時間にわたって、コハク酸ジイソプロピル30.4部を100℃で、滴下しながら添加する。次いで、混合物を還流下で、4時間攪拌する。反応懸濁液を80℃に冷却させた後に、25℃で、水300部およびメタノール400部の混合物中に、注ぐ。加水分解懸濁液を還流下で、6.5時間攪拌する。これを室温に冷却させた後に、メタノール320部を添加し、攪拌し、次いで懸濁液を濾過して、顔料をメタノールで洗浄する。プレスケーキをメタノール1280部中に懸濁し、攪拌し、懸濁液を濾過して、顔料をメタノールおよび水で洗浄し、80℃で、乾燥する。
【0080】
これにより、式(XXI)のジケトピロロピロール顔料36.6部が得られる。
【0081】
【化10】

この顔料は、HSワニスでは、強い、きれいな、オレンジ色相および傷付かない上塗堅牢度を有する透明塗料を提供する。メタリック仕上げは、強い、金色がかった黄色相をもって明るい。PUワニスでは、強い、金色がかった黄色相をもつ明るいメタリック仕上げ塗料が得られる。レオロジーは、非常に良好で5に評価する。
【0082】
(実施例1b)(比較例)
【0083】
【化11】

式(XXII)のジケトピロロピロールを、EP94911、実施例12によって調製し、実施例1aによって調製された式(XXI)のジケトピロロピロールに対して比較した。HSワニスではこの塗料は、色が著しく、より隠蔽性があり、より弱く、本質的により濁った褐色がかった赤色相を有している。また、耐候堅牢度が劣っている。PUワニスでは、レオロジーは、2〜3にのみ評価される。
【0084】
(実施例1c)(比較例)
【0085】
【化12】

式(XXIII)のジケトピロロピロールは、EP94911、実施例14によって調製し、実施例1aによって調製された式(XXI)のジケトピロロピロールに対して比較した。HSワニスではこの塗料は、本質的により隠蔽性であり、本質的により濁った褐色がかった紫色相を有している。メタリック塗料は、グレー−褐色相で、色が弱い。PUワニスでは、また同様な、著しく劣った彩色品質のものが得られる。
【0086】
(実施例2)
4つ口フラスコに無水のtert−アミルアルコール189.6部を仕込む。ナトリウム17.3部を導入した後、ナトリウムが反応してしまうまで、混合物を還流下で、攪拌する。100℃で、式(XXIV)のニトリル
【0087】
【化13】

41.9部を導入する。2時間にわたって、コハク酸ジイソプロピル22.8部を100℃で、滴下しながら添加する。次いで、混合物を還流下で、4時間攪拌する。反応懸濁液を80℃に冷却させた後に、25℃で、水225部およびメタノール300部の混合物中に、注ぐ。加水分解懸濁液を還流下で、6.5時間攪拌する。これを室温に冷却させた後に、メタノール240部を添加し、攪拌し、次いで懸濁液を濾過して、顔料をメタノールで洗浄する。プレスケーキをメタノール960部中に懸濁させ、攪拌し、懸濁液を濾過して、顔料をメタノールおよび水で洗浄し、80℃で乾燥する。
【0088】
これにより、式(XXV)のジケトピロロピロール顔料26.8部が得られる。
【0089】
【化14】

HSワニスでは、この顔料は、きれいなオレンジ色相および傷付かない上塗堅牢度を有する透明塗料を提供する。
【0090】
(実施例3)
4つ口フラスコに無水のtert−アミルアルコール189.6部を仕込む。ナトリウム17.3部を導入した後、ナトリウムが反応してしまうまで、混合物を還流下で、攪拌する。100℃で、式(XXIV)のニトリル5部および式(XX)のニトリル38.6部を導入する。2時間の中に、コハク酸ジイソプロピル22.8部を100℃で、滴下しながら添加する。次いで、混合物を還流下で、4時間攪拌する。反応懸濁液を80℃に冷却させた後に、25℃で、水225部およびメタノール300部の混合物中に、注ぐ。加水分解懸濁液を還流下で、2時間攪拌する。これを室温に冷却させた後に、メタノール240部を添加し、攪拌し、次いで懸濁液を濾過して、顔料をメタノールで洗浄する。プレスケーキをメタノール960部中に懸濁させ、攪拌し、懸濁液を濾過して、顔料をメタノールおよび水で洗浄し、80℃で乾燥する。
【0091】
これにより、式(XXI)、式(XXV)および式(XXVI)の顔料の混合物からなるジケトピロロピロール顔料25.9部が得られる。
【0092】
【化15】

PUワニスでは、この顔料は、クラレット色の色相および傷付かない上塗堅牢度を有する透明塗料を生成する。これと比較して、EP94911に開示されている方法によって調製された市販の通例の顔料P.R.255は、PUワニスでは、不適当な上塗堅牢度を示す。
【0093】
(実施例4)
4つ口フラスコに無水のtert−アミルアルコール176部を仕込む。ナトリウム13.8部を導入した後、ナトリウムが反応してしまうまで、混合物を還流下で、攪拌する。100℃で、式(XXVII)のニトリル39.5部を導入する。
【0094】
【化16】

5時間にわたって、コハク酸ジイソプロピル22.7部を100℃で、滴下しながら添加する。次いで、混合物を還流下で、1時間攪拌する。反応懸濁液を80℃に冷却させた後に、40℃で、水430部中に注ぐ。加水分解懸濁液を還流下で、4.5時間攪拌する。これを室温に冷却させた後に、メタノール670部を添加し、攪拌し、次いで懸濁液を濾過して、顔料をメタノールおよび水で洗浄し、80℃で乾燥する。
【0095】
これにより、式(XXVIII)のジケトピロロピロール顔料32.8部が得られる。
【0096】
【化17】

AMワニスでは、この顔料は、強い黄色がかった赤色相および傷付かない上塗堅牢度を有する不透明塗料を生成する。粘度は、3秒になる。PVCでは、オレンジ色相を有する強い着色が得られ、さらにNCプリントでは、黄色がかった赤色相を有する強い着色が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
、R、R、およびRは、それぞれ独立に、C〜Cアルキル基または置換もしくは非置換フェニル基であり、このフェニル基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、CN、F、Cl、Br、NO、CF、S−C〜Cアルキル、フェニルまたは(C〜C)アルキレンフェニルの群からの1、2、3または4個の置換基で置換されることが可能であり、ただし、基R、R、RまたはRの少なくとも1つは、前記置換または非置換フェニル基の1つである]
のジケトピロロピロール。
【請求項2】
基RおよびRが、同一であり、さらに基RおよびRが同一である請求項1に記載のジケトピロロピロール。
【請求項3】
基R、R、RおよびRが、それぞれ独立に、メチル、エチル、フェニル、あるいはメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、CN、F、Cl、S−メチル、フェニルまたはベンジルの群の1または2個の置換基で置換されたフェニルである請求項1または2に記載のジケトピロロピロール。
【請求項4】
およびRが、それぞれメチルまたはエチル基であり、RおよびRがそれぞれ非置換あるいはメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、F、Cl、NO、CF、フェニルまたはベンジルの群の1または2個の置換基で置換された同一のフェニル基である請求項1から3の一項または複数項に記載のジケトピロロピロール。
【請求項5】
請求項1から4の一項または複数項に記載の2種以上のジケトピロロピロールの混合物。
【請求項6】
コハク酸ジエステルを、式(II)もしくは式(III)のニトリル、または式(II)もしくは式(III)の2、3もしくは4種の異なるニトリルの混合物と、有機溶媒中、強塩基の存在下で反応させ、次いで加水分解することを含む請求項1から5の一項または複数項に記載のジケトピロロピロールを調製する方法。
【化2】

【請求項7】
式(IV)または(V)のエステル
【化3】

[式中、RおよびRは、非置換または置換アルキルまたはアリール基である]を、式(III)のニトリル
【化4】

と、有機溶媒中、強塩基の存在下で反応させ、次いで加水分解することを含む請求項1から5の一項または複数項に記載の式(I)のジケトピロロピロールを調製する方法。
【請求項8】
天然または合成由来の高分子量有機材料、好ましくはプラスチック、樹脂、ワニス、ペイント、または電子写真トナーおよび顕色剤、カラーフィルタ、さらにまた製図用インク、筆記用インクおよび印刷インクを顔料着色するための請求項1から5の一項または複数項に記載のジケトピロロピロールの使用。
【請求項9】
インクがインクジェットインクである請求項8に記載の使用。
【請求項10】
式(IV)または(V)の化合物
【化5】

[式中、RおよびRは、非置換または置換アルキルまたはアリール基であり、RおよびRは請求項1から4に定義した通りである]。

【公表番号】特表2006−506331(P2006−506331A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−520383(P2004−520383)
【出願日】平成15年6月6日(2003.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2003/005968
【国際公開番号】WO2004/007500
【国際公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(598109501)クラリアント・ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】