説明

新規化合物、その製造方法、中間体、医薬組成物、並びにアルツハイマー病、認知障害、統合失調症に伴う認識機能障害、肥満及びパーキンソン病のような5−HT6介在疾患の治療におけるそれらの使用

本発明は、式Iの新規化合物、又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩、これらの製造方法、及びその製造において使用される新規中間体、該化合物を含有する医薬組成物、並びに5−HT6介在疾患、例えばアルツハイマー病、認知障害、統合失調症に伴う認識機能障害、肥満及びパーキンソン病の治療における該化合物の使用に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、該化合物を含有する医薬組成物及び治療における該化合物の使用に関する。本発明はさらに、該化合物の製造方法、並びに新規中間体及び該新規化合物の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セロトニン (5−ヒドロキシ−トリプタミン) (5−HT)受容体は、多くの生理的及び病理学的機能、例えば不安症、睡眠調節、攻撃性、摂食及び鬱病において重要な役割を果たす。5−HT受容体は全身に分布しており、そして異なる特性を有する7種の5−HT受容体サブタイプ、すなわち5−HT1〜5−HT7に分けることができる。
【0003】
5−HT6受容体は、中枢神経系(CNS)において最も見られる。インシトゥ・ハイブリダイゼーション研究により、ラット脳における5−HT6受容体が、線条体、側坐核、嗅結節及び海馬体のような領域に局在していることが知られている(Ward ら, Neuroscience, 64, p 1105−1111, 1995)。
【0004】
科学研究により、特に種々のCNS障害に関して、5−HT6受容体のモジュレーターの治療的使用の可能性が明らかになった。5−HT6受容体機能の遮断は、コリン作動性伝達を高めることが示されている(Bentley ら, Br J Pharmacol 126:1537−1542, 1999;Riemer ら J Med Chem 46, 1273−1276)。5−HT6アンタゴニストはまた、ムスカリン性アンタゴニストスコポラミンにより誘導されるインビボ認知モデルにおいて、認知障害を回復に向かわせることが示されている (Woolley ら Phychopharmacolgy, 170, 358−367, 2003;Foley ら Neuropsychopharmacology, 29 93−100, 2004)。
【0005】
5−HT6アンタゴニストは、前頭葉及び背側海馬におけるグルタメート及びアスパルテート、及び前頭葉におけるアセチルコリンのレベルを増加させることが研究により分かっている。神経系統に影響を与えるこれらの物質は、記憶及び認知に関与していることが知られている (Dawson ら, Neuropsychopharmacology., 25(5), p 662−668, 2001) (Gerard ら, Brain Res., 746, p 207−219, 1997) (Riemer ら J Med Chem 46(7), p 1273−1276, 2003)。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、CNSにおいてアセチルコリンのレベルを増加させ、そして認知障害、例えばアルツハイマー病の治療において使用される。したがって、5−HT6アンタゴニストは、認知障害の治療に使用することができる。
【0006】
また、5−HT6アンタゴニストは、内側前頭葉前部皮質におけるドーパミン及びノルアドレナリンのレベルを増加させることが研究により示されている(Lacroix ら Synapse 51, 158−164, 2004)。さらに、5−HT6受容体アンタゴニストは、注意の心的状態の転換タスク(attentional set shifting task)における行動を改善することが示されている (Hatcher ら Psychopharmacology 181(2):253−9, 2005)。したがって、5−HT6リガンドは、認知障害が特徴である障害、例えば統合失調症の治療において有用であると考えられる。いくつかの抗うつ薬及び非定型抗精神病薬は5−HT6受容体に結合し、これはこれらの薬剤の活性のプロフィールにおける一因子であり得る (Roth ら, J. Pharm. Exp. Therapeut., 268, 1402−1420, 1994;Sleight ら, Exp. Opin. Ther. Patents, 8, 1217−1224, 1998;Kohen ら, J. Neurochem., 66(1), p 47−56, 1996;Sleight ら Brit. J. Pharmacol., 124, p 556−562, 1998;Bourson ら, Brit. J. Pharmacol., 125, p 1562−1566, 1998)。
【0007】
Stean ら (Brit. J. Pharmacol. 127 Proc. Supplement 131P, 1999)は、転換の治療における5−HT6モジュレーターの使用の可能性を記載している。5−HT6受容体はまた、全般性ストレス及び不安状態にも関連している(Yoshioka ら, Life Sciences, 62, 17/18, p 1473−1477, 1998)。5−HT6アゴニストは、不安症と関係がある脳領域においてGABAのレベルを上昇させることが示されており、そして強迫性障害のモデル予想において有用である可能性が示されている (Schechter ら NeuroRx. 2005 October;2(4):590-611)。したがって、この受容体のモジュレーターは、幅広いCNS障害において使用することができると考えられる。
【0008】
Pullagurla ら (Pharmacol Biochem Behav. 78(2):263−8, 2004)は、ドーパミン伝達が影響を受ける障害における5−HT6アンタゴニストの使用の可能性を記載しており、例えば5−HT6アンタゴニストとドーパミンエンハンサー、例えばレボドパ/カルビドパ又はアマンチジン(amantidine)との組み合わせは、ドーパミンエンハンサーのみの投与と比べて利点を有すると考えられる。
【0009】
さらに、5−HT6受容体モジュレーターを用いたラットにおける食物摂取の減少が報告されている (Bentley ら, Br. J. Pharmacol. Suppl. 126, P66, 1999;Bentley ら J. Psychopharmacol. Supl. A64, 255, 1997;Pendharkar ら Society for Neuroscience, 2005)。したがって、5−HT6受容体モジュレーターはまた、摂食障害、例えば拒食症、肥満、過食症及び類似の障害、並びにまた2型糖尿病の治療において有用である可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、5−ヒドロキシ−トリプタミン6受容体における調節活性を示す化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、式I
【化1】

の化合物、又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩を提供し、式中、
QはC6-10アリールC0-6アルキル、C5-11ヘテロアリールC0-6アルキル、C3-7シクロアルキルC0-6アルキル、C3-7ヘテロシクロアルキル又はC1-3アルキルであり;
R1は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、N(R8)2、C6-10アリールC0-3アルキル、C5-6ヘテロアリールC0-3アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ハロアルキルO、R6OC0-6アルキル、CN、SR6、R 6SO2C0-3アルキル、SOR6、R6CON(R7)C0-3アルキル、NR7SO2R6、COR6、COOR6、OSO2R6、(R7)2NCOC0-3アルキル、SO2N(R7)2、N(R7)CON(R7)2、NO2又はオキソであり;
nは0、1、2、3又は4であり;
BはO、N(R5)であるか、又はBはC5-11ヘテロアリール中のNであり;
XはO、CH2又はNR10であり;
R2は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルキル、C1-6ハロアルキルO、R9OC0-6アルキル、CN、SR8、SO2R9、SOR9、N(R8)COR9、N(R8)SO2R9、COR9、COOR9、OSO2R9、CON(R8)2又はSO2N(R9)2であり;
R3は水素、C1-10アルキル、C1-6ハロアルキル又はR9OC1-6アルキルであり;
R4は水素、C1-5アルキル、C1-5ハロアルキル、C1-5アルコキシ又はC1-5ハロアルコキシであり、そしてハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシから独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく、又は
R3及びR4は一緒になってC3-7ヘテロシクロアルキルを形成し、これは水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、COR9、SO2R9、OR9、シアノ、オキソ及びSO2N(R8)2から独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく;
R5は水素、C1-6アルキル、R9OC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル又はC1-6シアノアルキルであり;
R6はC1-6アルキル、C6-10アリールC0-3アルキル、C5-6ヘテロアリールC0-3アルキル、C3-7シクロアルキルC0-3アルキル又はC1-3ハロアルキルであり;
R7は水素、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキルC0-3アルキル、C6-10アリールC0-3アルキル又はC5-6ヘテロアリールC0-3アルキルであり、又は
R6及びR7は一緒になってC5-6ヘテロアリール又はC3-7ヘテロシクロアルキルを形成し、
ここで、R1、R6及びR7における任意のアリール及びヘテロアリールは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-6ハロアルキル、CN、OR8、C1-6アルキル、オキソ、SR8、CON(R8)2、N(R8)COR9、SO2R9、SOR9、N(R8)2及びCOR9から独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく;
R8は水素、C1-6アルキル、C1-6シアノアルキル又はC1-6ハロアルキルであり;そして
R9はC1-6アルキル、C1-6シアノアルキル又はC1-6ハロアルキルであり;
R8及びR9は一緒になってC3-7ヘテロシクロアルキルを形成し、これは水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ及びシアノから独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく;そして
R10はH、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、COR11又はSO2R11である。
【0012】
本発明の別の態様において、式中:
QはC6-10アリールC0-6アルキル又はC5-11ヘテロアリールC0-6アルキルであり;
R1は水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C6-10アリールC0-3アルキル、C5-6ヘテロアリールC0-3アルキル、C1-6ハロアルキル、CN又はR6OC0-6アルキルであり;
nは1又は2であり;
BはO又はN(R5)であり;
XはO、CH2又はNR10であり;
R2は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルキル、C1-6ハロアルキルOであり;
R3は水素、C1-10アルキル、C1-6ハロアルキル又はR9OC1-6アルキルであり;
R4は水素、C1-5アルキル、C1-5ハロアルキル、C1-5アルコキシ又はC1-5ハロアルコキシであり、そしてハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシから独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく、又は
R3及びR4は一緒になってC3-7ヘテロシクロアルキルを形成し、これは水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、COR9、SO2R9、OR9、シアノ、オキソ及びSO2N(R8)2から独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく;そして
R5は水素、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル又はC1-6シアノアルキルである;
式Iの化合物、又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の態様において、式中:
QはC6-10アリールC0-6アルキルであり;
R1はハロゲンであり;
nは1又は2であり;
BはO又はN(R5)であり;
XはO、CH2又はNR10であり;
R2は水素又はハロゲンであり;
R3は水素又はC1-10アルキルであり;
R4は水素又はC1-5アルキルであるか、又は
R3及びR4は一緒になってC3-7ヘテロシクロアルキルを形成し;そして
R5は水素である;
式Iの化合物、又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の態様において、式中:
QはR1により置換されたフェニル又はナフチルであり、ここでR1は水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C6-10アリールC0-3アルキル、C5-6ヘテロアリールC0-3アルキル、C1-6ハロアルキル、CN又はR6OC0-6アルキルである、式Iの化合物が提供される。
【0015】
別の実施態様において、R1はハロゲン、例えばクロロ、ブロモ、ヨード及びフルオロである。
【0016】
さらなる実施態様において、R1はメチル、エチル、プロピル、ブチル又はペンチルである。
【0017】
本発明のさらなる実施態様は、以下からなる群より選択される化合物又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩に関する:
N−(3−ブロモフェニル)−9−クロロ−4−イソプロピル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド;
9−クロロ−N−(3−クロロフェニル)−2,3,11,11a−テトラヒドロ−1H,5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド;
N−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド;
N−(2,3−ジクロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド;
N−(4−クロロ−1−ナフチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド;及び
2−ブロモフェニル 2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−2−ベンゾアゼピン−8−スルホネート。
【0018】
本発明を説明するために、本明細書及び特許請求の範囲において使用される種々の用語の定義を以下に挙げる。
【0019】
疑念を回避するために、本明細書において、基が「上記で定義された」、「上述のように」又は「上記」により修飾されている場合、該基は、最初に記載され、そして最も広い定義、及びその基についての他の定義の全てを包含するものと理解される。
【0020】
疑念を回避するために、本明細書において、「C1-6」は1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する炭素基を意味するものと理解される。
【0021】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「アルキル」は、直鎖状及び分枝鎖状のアルキル基を共に包含し、そしてメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、neo−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル等であってよいが、これらに限定されない。用語C1-10アルキルは、1〜10個の炭素原子を有し、そしてメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、neo−ペンチル等であってよいが、これらに限定されない。
【0022】
用語「C0」は、単結合を意味するか、又は存在しない。例えば、「アリールC0アルキル」は「アリール」と同じであり、「C2アルキルOC0アルキル」は「C2アルキルO」と同じである。
【0023】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「アルケニル」は、直鎖状及び分枝鎖状のアルケニル基を共に包含する。2〜6個の炭素原子及び1つ又は2つの二重結合を有する用語「C2-6アルケニル」は、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、クロチル、ペンテニル、ヘキセニルであってよく、そしてブテニル基は例えばブテン−2−イル、ブテン−3−イル又はブテン−4−イルであってよいが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「アルキニル」は、直鎖状及び分枝鎖状のアルキニル基を共に包含する。2〜6個の炭素原子及び1つ又は2つの三重結合を有する用語「C2-6アルキニル」は、エチニル、プロパルギル、ペンチニル又はヘキシニルであってよく、そしてブチニル基は例えばブチン−3−イル又はブチン−4−イルであってよいが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「シクロアルキル」は、場合により置換されている、部分的に又は完全に飽和型の環式炭化水素環系を意味する。用語「C3-7シクロアルキル」はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロペンテニルであってよいが、これらに限定されない。
【0026】
用語「アルコキシ」は、特に記載のない限り、一般式−O−Rの基を意味し、ここでRは炭化水素基から選択される。用語「C1-6アルコキシ」はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、イソブトキシ、シクロプロピルメトキシ、アリルオキシ、プロパルギルオキシ、ペントキシ、イソペントキシ等を包含するが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「アミン」又は「アミノ」は一般式−NRR'の基を意味し、ここでR及びR'は水素又は炭化水素基から独立して選択される。用語「N(R5)」は、R5が同じであっても異なっていてもよい基を意味する。
【0028】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、非芳香族の、部分的に又は完全に飽和型の炭化水素基を意味し、これは1個の環及び少なくとも1個のヘテロ原子を含有する。この複素環の例としては、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、オキサゾリル、2−オキサゾリドニル又はテトラヒドロフラニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「アリール」は、少なくとも1つの不飽和型芳香環を有する、場合により置換された単環式又は二環式炭化水素環系を意味する。「アリール」の例は、フェニル、ナフチル又はテトラリニルであってよいが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの不飽和環を有し、且つN、O又はSから独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する、場合により置換された単環式又は二環式炭化水素環系を意味する。「ヘテロアリール」の例は、ピリジル、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ベンゾフリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾイミダゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラゾリル、トリアゾリル、キナゾリニル又はイソチアゾリルであってよいが、これらに限定されない。疑念を回避するために、C5ヘテロアリールは、少なくとも1つのヘテロ原子を含有する5員芳香環系を意味する。
【0031】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「アリールアルキル」及び「ヘテロアリールアルキル」は、アルキル基を介してアリール又はヘテロアリール基に結合する置換基を意味する。
【0032】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、フルオロ、ヨード、クロロ又はブロモであってよい。
【0033】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「ハロアルキル」は、上記で定義されたハロで置換された上記で定義されたアルキル基を意味する。用語「C1-6ハロアルキル」はフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル又はブロモプロピルを包含するが、これらに限定されない。用語「C1-6ハロアルキルO」はフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フルオロエトキシ又はジフルオロエトキシを包含するが、これらに限定されない。
【0034】
本発明は、上記で定義した式Iの化合物、及びその塩、溶媒和物又は溶媒和された塩に関する。医薬組成物において使用するための塩は、医薬として許容し得る塩であるが、他の塩は、式Iの化合物の製造において有用であり得る。
【0035】
本発明の化合物の医薬として許容し得る好適な塩は、例えば酸付加塩、例えば無機酸又は有機酸との塩である。さらに、本発明の化合物の医薬として許容し得る好適な塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又は有機塩基との塩である。
【0036】
他の医薬として許容し得る塩及びこれらの塩を製造する方法は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences (第18版、Mack Publishing Co.)において見出すことができる。
【0037】
式Iの或る種の化合物は、キラル中心及び/又は幾何異性中心(E−及びZ−異性体)を有し得、そして本発明はこのような全ての光学異性体、ジアステレオ異性体及び幾何異性体を包含するものと理解される。
【0038】
本発明はまた、あらゆる式Iの化合物の互変異性型に関する。
【0039】
製造方法
一般的手順
このような方法に関する以下の記載をとおして、有機合成分野の当業者に容易に理解されるようなやり方で、適切ならば、適切な保護基が種々の反応体及び中間体に加えられ、その後で除去されることは理解されよう。このような保護基を使用するための慣用の方法及び適切な保護基の例は、例えば「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W. Green, P.G.M. Wuts Wiley−Interscience、ニューヨーク(1999年)に記載されている。また、化学的操作による基又は置換基の、別の基又は置換基への変換は、最終生成物に向けての合成経路における任意の中間体又は最終生成物について行うことができ、ここで、可能な変換の種類は、その工程において分子により運ばれる他の官能基の、該変換において用いられる条件又は試薬に対する特有の不適合性によってのみ限定されることは理解されよう。このような特有の不適合性、並びに適切な変換及び適切な順番での合成工程を実施することによって該不適合性を回避する方法は、有機合成分野の当業者に容易に理解されよう。変換の例は以下に記載され、そして記載された変換は、例示した一般的な基又は置換基にのみ限定されるものではないことは理解されよう。他の適切な変換についての参照及び説明は、「Comprehensive Organic Transformations − A Guide to Functional Gro
up Preparations」 R. C. Larock, VHC Publishers, Inc. (1989年)において記載されている。他の適切な反応についての参照及び説明は、有機化学の教科書、例えば「Advanced Organic Chemistry」、第4版、McGraw Hill (1992年3月)、又は「Organic Synthesis」、Smith, McGraw Hill, (1994年)に記載されている。中間体及び最終生成物の精製技術としては、例えば順相及び逆相のカラムクロマトグラフィー、又は回転板、再結晶化、蒸留、及び液体−液体又は固体−液体抽出が挙げられ、これらは当業者に容易に理解されよう。置換基及び基は、異なる定義付けをされる場合を除き、式Iにおいて定義されるものである。「一般的方法」において示される特定の反応順序は、決定的なものではない。記載された化合物の多くについて、反応工程の順番は変化し得る。反応は、LC−UV、LC−MS、TLC又はNMRにより完了したことが確定するまで実施した。
【0040】
【化2】

【0041】
工程1
化合物Bは、還元的アミノ化を用いて化合物Aから製造することができる。典型的には、Aは、還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム又は水素の存在下で、例えば「Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms and Structure", J. March, John Wiley & Sons, New York, 1992に記載されるような好適な触媒の存在下で、カルボニル化合物、例えばアルデヒド又はケトンと混合することができる。酸、例えばギ酸又は酢酸を添加して、反応混合物のpHを制御することができる。反応は、水、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、THF、ギ酸、酢酸又はこれらの混合物のような溶媒中、0℃〜溶媒の還流温度で、好ましくは室温で行うことができる。反応混合物は、抽出し、次いでカラムクロマトグラフィーで精製することにより後処理するか、又は反応混合物を濃縮し、そしてカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。
【0042】
工程2
化合物Bは、分子内芳香族求核置換を介して、化合物Cに変換することができ、ここでY=F又はClである。典型的には、化合物BをTHF、ジオキサン又はDMFのような溶媒中に溶解し、そして塩基、例えば水素化ナトリウム又はナトリウムメトキシドを加える。反応は、室温〜溶媒の還流温度で、1〜24時間の反応時間で行うことができる。生成物は、抽出、沈殿又はカラムクロマトグラフィーにより単離することができる。
あるいは、Y=OHの場合、ミツノブ(Mitsunobu)型の分子内閉環を用いることができる。典型的には、化合物BをDMF、THF又はジクロロメタン又はこれらの混合物のような溶媒中に溶解する。ホスフィン化合物、例えばトリフェニルホスフィン又はトリブチルホスフィン及び活性化剤、例えばジエチルアゾジカルボキシレート又はジイソプロピルアゾジカルボキシレートを、好ましくは−10℃〜室温で加える。反応は−15℃〜溶媒の還流温度、好ましくは室温で、1〜24時間の反応時間で行うことができる。生成物は抽出、沈殿又はカラムクロマトグラフィーにより単離することができる。
【0043】
工程3
化合物Cは、クロロスルホニル化により化合物Dに変換することができる。典型的には、化合物Cをジクロロメタン、クロロホルム又は酢酸エチルのような溶媒中に溶解し、そして−72℃〜0℃に冷却する。反応はまた、クロロスルホン酸中でニートで行ってもよい。場合によりクロロホルムのような溶媒中に希釈したクロロスルホン酸を、冷却しながら、滴下して加える。反応混合物を冷却しながら10分〜1時間撹拌し、次いで室温に戻すか又は1〜100時間、典型的には1〜5時間、溶媒の還流温度に加熱する。場合により、塩化チオニルのような塩素化剤を反応混合物に加える。反応混合物を、場合により塩基、例えば重炭酸ナトリウムを含む氷水に加えてクエンチし、そして生の生成物を抽出により単離し、そして更に精製することなく、又は十分に安定であるならばカラムクロマトグラフィーにより精製して、使用することができる。
スルホン酸を介しての化合物Cの化合物Dへの変換を確実に完了させるために、粗製物をクロロホルム又はトルエンのような溶媒中に溶解し、そして塩化チオニル又は塩化オキサリルのような塩素化剤を加える。場合により、触媒量のDMFを加え、そして混合物を25℃〜溶媒の還流温度に加熱してもよい。後処理及び精製は、前述の項におけるように行うことができる。
同じ反応条件を、化合物Gから化合物Hの変換、又は化合物Lから化合物Mの変換に用いることができる。
【0044】
工程4
化合物Iaは、化合物Dの式Eの化合物との反応により製造することができる。典型的には、化合物Dは、有機塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン又は無機塩基、例えば水酸化ナトリウム又は炭酸カリウムの存在下で、溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、DMF、THF又はこれらの混合物中、0℃〜溶媒の還流温度、好ましくは室温で、化合物Eと反応させる。生成物はカラムクロマトグラフィーにより、又は抽出後のカラムクロマトグラフィーにより単離することができる。
同じ方法を、化合物Hの化合物Jへの変換、又は化合物Mの化合物Icへの変換に用いることができる。
【0045】
工程5
化合物Fは、Schmidt転位を介して化合物Gに変換することができる。化合物F及びアジ化ナトリウムを、ベンゼン、TFA又は酢酸のような溶媒中に溶解する。硫酸を、5℃以下、典型的には−10℃〜5℃で添加する。反応は室温〜溶媒の還流温度で行う。次いで、混合物を氷又は水上に注ぎ、そして塩基、例えばアンモニア、炭酸カリウム又は水酸化ナトリウムを用いて混合物を塩基性にすることができる。混合物を室温で1〜20時間撹拌し、そして生成物を抽出、沈殿又はカラムクロマトグラフィーにより単離することができる。
【0046】
工程6
還元剤、例えばボラン又は水素化アルミニウムリチウムを用いて、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルのような溶媒中、0℃〜溶媒の還流温度、好ましくは25℃〜還流温度で、化合物Jの化合物Ibへの還元を行うことができる。生成物はカラムクロマトグラフィー又は抽出により単離することができる。
同じ方法を、化合物Gの化合物Kへの変換に用いることができる。
【0047】
工程7
標準的な保護基を用いて、化合物Kを化合物Lに変換することができる。このような保護基を用いるための慣用の手順、及び好適な保護基の例は、例えば「Protective Groups in Organic Synthesis」 T.W. Green, P.G.M. Wuts, Wiley−Interscience, New York, 1999に記載されている。
【0048】
工程8
化合物Ic2(ここでR3はHではない)は、例えば「Comprehensive Organic Transformations, a Guide to Functional Group Preparation」, R. C. Larock, John Wiley & sons, New York, 1999に記載されるように、化合物R3Y2(ここでY2は好適な脱離基、例えばハロゲン、メシレート又はトリフレートであってよい)を用いてアルキル化することにより、化合物Ic1(ここでR3はHである)から製造することができる。典型的には、塩基、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンの存在下、及び場合により、Y=Cl、Brである場合、触媒量のヨウ化カリウムの存在下で、DMF、エタノール、ジクロロメタン又はトルエンのような溶媒中、Ic1及びR3Y2を混合する。反応は25℃〜溶媒の還流温度で行うことができ、そして反応時間は1〜100時間であってよい。反応混合物を、抽出、及び次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することにより後処理するか、又は反応混合物を濃縮し、そしてカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。反応温度は、溶媒の還流温度以上に上げることができ、そして反応時間は、マイクロ波加熱の使用により短縮することができる。または、化合物Ic2を、還元的アミノ化により化合物Ic1から製造することができる。典型的には化合物Ic1は、還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム又は水素の存在下で、例えば「Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms及びStructure」, J. March, John Wiley & Sons, New York, 1992に記載されるような好適な触媒の存在下で、カルボニル化合物、例えばアルデヒド又はケトンと混合することができる。酸、例えばギ酸又は酢酸を加えて、反応混合物のpHを制御することができる。反応は溶媒、例えば水、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、THF、ギ酸、酢酸又はこれらの混合物中で、0℃〜溶媒の還流温度、好ましくは室温で行うことができる。反応混合物は、抽出、及び次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することにより後処理するか、又は反応混合物を濃縮し、そしてカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。
【0049】
化合物Ic2はまた、アミド又はカルバメートを最初に製造し、次いで適切な還元剤を用いて還元することにより、化合物Ic1から製造することができる。例えば「Comprehensive Organic Transformations, a Guide to Functional Group Preparation」, R. C. Larock, John Wiley & Sons, New York, 1999に記載されるように、アミドは、例えば酸塩化物又はカルボン酸を用いて、カップリング試薬の存在下で、Ic1の反応により製造される。カルバメートは、ジクロロメタンのような溶媒中、塩基、例えばトリエチルアミン又はピリジンの存在下で、0℃〜溶媒の還流温度で、アルキルクロロホルメートの化合物Ic1との反応により製造することができる。カルバメート又はアミドの還元は、還元剤、例えば水素化アルミニウムリチウムを用いて、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルのような溶媒中、0℃〜溶媒の還流温度、好ましくは25℃〜還流温度で行うことができる。アミドの還元はまた、還元剤としてボランを用いて行うことができる。
【0050】
中間体
1つの実施態様は、式M1
【化3】

の中間体に関し、ここでX、R2、R3及びR4は上記で定義されたとおりである。
【0051】
別の実施態様は、式Iの化合物の製造における式M1の化合物の使用に関する。
【0052】
医薬組成物
本発明の1つの実施態様によれば、活性成分として治療有効量の式Iの化合物、又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩を、1又はそれ以上の医薬として許容し得る希釈剤、賦形剤及び/又は不活性担体と共に含有する医薬組成物を提供する。
【0053】
該組成物は、例えば錠剤、丸薬、シロップ剤、粉剤、顆粒剤若しくはカプセル剤としての経口投与に好適な形態、滅菌溶液、懸濁液若しくは乳濁液としての非経口注射(例えば静脈内、皮下、筋内、血管内若しくは輸液)に好適な形態、例えば軟膏剤、パッチ剤若しくはクリーム剤としての局所投与に好適な形態、又は例えば坐剤としての直腸投与に好適な形態、又は吸入に好適な形態であってもよい。
【0054】
一般に、上記組成物は、慣用の方法で、1又はそれ以上の慣用の賦形剤、医薬として許容し得る希釈剤及び/又は不活性担体を用いて製造することができる。ヒトを含む哺乳動物の治療において好適な式Iの化合物の日用量は、経口投与で約0.01〜250mg/kg体重であり、そして非経口投与で約0.001〜250mg/kg体重である。
【0055】
活性成分の典型的な日用量は広範囲で変化し、そして種々の因子、例えば関連する適応症(indication)、治療する疾患の重篤度、投与経路、患者の年齢、体重及び性別、並びに使用する特定の化合物に依存し、そして医師が決定することができる。
【0056】
医療用途
興味深いことに、本発明の化合物は、治療において有用であることが分かった。式Iの化合物又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩、及びその対応する活性代謝産物又はプロドラッグは、5−ヒドロキシ−トリプタミン6 (5−HT6)受容体について高度の効力及び選択性を示す。したがって、本発明の化合物は、5−HT6受容体の過剰活性化を伴う身体状態の治療において有用であると考えられる。
【0057】
式Iの化合物は、5−HT6受容体が関与するか又は該受容体の影響を受ける障害、例えば認知障害、人格障害、行動障害、精神疾患及び神経変性障害の治療に好適であると考えられる。
【0058】
このような障害の例は、アルツハイマー病 不安症、鬱病、痙攣性疾患、例えばてんかん、人格障害、強迫性障害、偏頭痛、認知障害、例えば記憶障害、睡眠障害、摂食障害、例えば拒食症、肥満、過食症、パニック発作、薬物乱用からの禁断症状、統合失調症、統合失調症に伴う認識機能障害、注意欠陥過活動性障害 (ADHD)、注意力欠如障害 (ADD)、認知症、記憶喪失、脊髄外傷及び/又は頭部外傷に伴う障害、発作(stroke)、2型糖尿病、無茶食い障害(binge disorder)、双極性障害、精神病、パーキンソン病、ハンチントン病、神経細胞成長障害を特徴とする神経変性障害、及び疼痛からなる群より選択することができる。
【0059】
さらに関連する障害は、胃腸障害、例えば胃食道逆流性疾患(GERD)及び過敏性腸症候群(IBS)からなる群より選択することができる。
【0060】
該化合物はまた、5−HT6 活性化因子に対する耐性の治療に用いることもできる。
【0061】
本発明の一つの実施態様は、治療において使用するための、上述の式Iの化合物に関する。
【0062】
本発明の別の実施態様は、5−HT6介在疾患の治療において使用するための、上述の式Iの化合物に関する。
【0063】
本発明のさらなる実施態様は、アルツハイマー病の治療において使用するための、上述の式Iの化合物に関する。
【0064】
本発明の別の実施態様は、認知障害、例えば統合失調症に伴う認識機能障害の治療において使用するための、上述の式Iの化合物に関する。
【0065】
本発明のさらに別の実施態様は、肥満の治療において使用するための、上述の式Iの化合物に関する。
【0066】
本発明の一つの実施態様は、パーキンソン病の治療において使用するための、上述の式Iの化合物に関する。
【0067】
本発明の別の実施態様は、上述の5−HT6介在疾患、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症に伴う認識機能障害、肥満及び/又はパーキンソン病、及び任意の他の障害の治療のための医薬の製造における、上述の式Iの化合物の使用に関する。
【0068】
本発明のさらなる実施態様は、治療を必要とするヒトを含む哺乳動物に、治療有効量の上述の式Iの化合物を投与することからなる、上述の5−HT6介在疾患、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症に伴う認識機能障害、肥満及び/又はパーキンソン病、及び任意の他の障害の治療方法に関する。
【0069】
本発明の別の実施態様は、上述の5−HT6介在疾患、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症に伴う認識機能障害、肥満及び/又はパーキンソン病、及び任意の他の障害の治療において使用するための、上述の式Iの化合物を含有する医薬組成物に関する。
【0070】
本発明の一つの実施態様は、活性成分として上述の式Iの化合物を含有する、上述の5−HT6介在疾患、アルツハイマー病、認知障害、統合失調症に伴う認識機能障害、肥満及び/又はパーキンソン病、及び任意の他の障害の治療のための薬剤に関する。
【0071】
本明細書において、用語「療法」及び「治療」は、特にそれに反する記載のない限り、予防及び/又は防止を含む。用語「治療する」、「治療の」及び「治療上」はそれに応じて解釈されるべきである。
【0072】
本明細書において、特に記載のない限り、用語「阻害剤」及び「アンタゴニスト」は、あらゆる意味で、アゴニストによる応答の生成をもたらす変換経路を部分的又は完全に遮断する化合物を意味する。
【0073】
本発明の化合物は5−HT6受容体のモジュレーターであり、そしてこれは阻害剤、及びアゴニスト、逆アゴニスト又は部分アゴニストである可能性がある。
【0074】
用語「障害」は、特に記載のない限り、5−HT6受容体活性を伴う任意の身体状態及び疾患を意味する。
【0075】
非医療用途
治療用医薬における使用に加えて、式Iの化合物又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩は、新規治療剤の探索の一部として、実験動物、例えばネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラット及びマウスにおける5−HT6関連活性のモジュレーターの影響の評価のためのインビトロ及びインビボ試験系の開発及び標準化における薬理学的ツールとしても有用である。
【実施例】
【0076】
一般的方法
本発明は、以下の実施例により詳細に説明され、ここで一般的には:
操作は、特に記載の無い限り、周囲温度又は室温、すなわち17〜25℃で、そしてアルゴンのような不活性ガスの雰囲気下で行った。使用した全ての溶媒は分析グレードであり、そして商業的に入手可能な無水溶媒を反応に使用した;
蒸発は、真空下でロータリーエバポレータにより行い、そして濾過により残った固体の除去後に後処理を行った;
HPLC分析は、G1379A Micro Vacuum Degasser、G1312A Binary Pump、G1367A Wellplate 自動サンプラー、G1316A Thermostatted Column Compartment及びG1315Bダイオード・アレイ検出器からなるAgilent HP1000システムにより行った。カラム:X−Terra MS、Waters、4.6 x 50 mm、3.5μm。カラム温度は40℃に設定し、そして流速は1.5 ml/分に設定した。ダイオード・アレイ検出器は、210〜300 nmをスキャンし、ステップ及びピーク幅はそれぞれ2 nm及び0.05分に設定した。直線グラジエントを用い、0%〜100% アセトニトリルで4分間行った。移動相:アセトニトリル/MilliQ水中5% アセトニトリルにおける10mM 酢酸アンモニウム;
薄層クロマトグラフィー (TLC)は、Merck TLC−プレート (シリカゲル 60 F254)で行い、UVでスポットを可視化した。フラッシュクロマトグラフィーは、Combi Flash(R) CompanionTMでRediSepTM標準相フラッシュカラムを用いて、又はMerck シリカゲル 60 (0.040−0.063 mm)で行った。フラッシュクロマトグラフィーで典型的に用いた溶媒は、クロロホルム/メタノール、トルエン/酢酸エチル及び酢酸エチル/ヘキサンの混合物であった;
【0077】
1H及び13C NMRスペクトルは、プロトンでは400 MHzで記録し、そしてカーボン−13では100 MHzで記録し、いずれもZ−グラジエントの5mm BBOプローブを備えたVarian Unity+ 400 NMRスペクトロメータで、又はZ−グラジエントの60μlデュアル逆流プローブを備えたBruker Avance 400 NMRスペクトロメータで、又はZ−グラジエントの4−核プローブを備えたBruker DPX400 NMRスペクトロメータで行った。以下の基準シグナルを用いた:DMSO−d6 δ 2.50 (1H)の中心線; CD3OD δ 3.31 (1H) の中心線;アセトン−d6 2.04 (1H);及びCDCl3 δ 7.26 (1H) (他に記載のない限り);
マススペクトルは、Alliance 2795 (LC)、Waters PDA 2996及びZQシングル四重極マススペクトロメータからなるWaters LCMSで記録した。マススペクトロメータは、エレクトロスプレーイオン源(ESI)を備えており、正イオン又は負イオンモードで操作した。キャピラリー電圧は3 kVであり、そしてコーン電圧は30 Vであった。マススペクトロメータは、m/z 100〜700でスキャン時間0.3秒でスキャンした。分離は、Waters X−Terra MS C8 (3.5μm、50又は100mM x 2.1mM i.d.)又はScantecLab製のACE 3 AQ (100mM x 2.1mM i.d.)で行った。流速は、それぞれ1.0又は0.3 mL/分に調整した。カラム温度は40℃に設定した。直線グラジエントは、100% A (A:95:5 10mM NH4OAc:MeCN、又は95:5 8mM HCOOH:MeCN)で出発し、100% B (MeCN)で終わる中性又は酸性移動相系を用いた。別法として、マススペクトルは、Waters LCMSシステム(Sample Manager 2777C、1525μバイナリーポンプ、1500 Column Oven、ZQ、PDA2996及びELS検出器、Sedex 85)で記録した。分離は、Agilent Tehcnologiesにより供給されるZorbax カラム(C8、3.0 x 50 mm、3μm)を用いて行った。4分間直線グラジエントは、100% A (A:95:5 10mM NH4OAc:MeOH)で出発し、そして100% B (MeOH)で終了した。ZQは、混合APPI/APCIイオン源を備えており、そして正イオンモードでm/z 120〜800を、スキャン時間0.3秒でスキャンした。APPIリペラー及びAPCIコロナは、それぞれ0.86 kV及び0.80μAに設定した。さらに、脱溶媒和温度 (300℃)、脱溶媒和ガス (400 L/Hr)及びコーンガス (5 L/Hr)は、APCI及びAPPIモードの両方について一定であった;
【0078】
分取クロマトグラフィーは、ダイオード・アレイ検出器を有するGilson自動分取HPLCで行った。カラム:XTerra MS C8、19x300mm、7μm。MeCN及び(95:5 0.1M NH4OAc:MeCN)によるグラジエントを用いた。流速:20 ml/分。別法として、精製は、Waters Symmetry(R) カラム(C18、5μm、100mM x 19 mm)を備えたShimadzu SPD−10A UV−可視化検出器を有するセミ分取Shimadzu LC−8A HPLCで行った。MeCN及び(95:5 0.1M NH4OAc:MeCN)のグラジエントを用いた。流速:10ml/分;
GC−MS分析は、Agilent Technologiesにより供給されるGC−MS (GC 6890、5973N MSD)で行った。使用したカラムは、DB−5 MS、ID 0.25mM x 30m、0.25μmであった。直線温度グラジエントを、40℃(1分間維持)から出発し、そして300℃ (1分間維持)で終了し、25℃/分で適用した。MSは、CIイオン源を備えており、反応ガスはメタンであった。MSは、m/z 50〜500をスキャンし、そしてスキャン速度は3.25 スキャン/秒に設定した。別法として、マススペクトル(EI−DI)は、Finigan MAT SSQ 710スペクトロメータで記録した;
マイクロ波加熱は、2450 MHzでの連続照射を生じるCreator、Initiator又はSmith Synthesizer シングルモードマイクロ波空洞で行った;
収量が記載されている場合、これは必ずしも達成可能な最大量であるわけではない;
中間体は、必ずしも完全に精製されているわけではないが、その構造及び純度は、薄層クロマトグラフィー、HPLC、赤外線 (IR)、MS及び/又はNMR分析により評価した;
【0079】
以下の略語を用いた:
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC 液体クロマトグラフィー
MS 質量分析
TFA トリフルオロ酢酸
DMF ジメチルホルムアミド
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMSO ジメチルスルホキシド
NMP 1−メチル−2−ピロリジノン
THF テトラヒドロフラン
MeOH メタノール
RT 室温
PS−DIEA ポリスチレン結合ジエチルアミン
PG 保護基
PS−トリスアミン トリス−(2−アミノエチル)−アミンポリスチレン
EtOAc 酢酸エチル
【0080】
このような方法についての以下の記載をとおして、適切な場合には、有機合成の当業者により容易に理解される方法で、種々の反応物及び中間体に好適な保護基を加え、次いでそれから除去するものと理解される。示される特定の反応順序は、決定的なものではない。記載された化合物の多くについて、反応工程の順番は変化し得る。
【0081】
ここで、本発明は、以下の非限定的実施例により詳細に説明される。
【0082】
使用した出発物質は、商業的供給元から入手するか、又は文献の手順にしたがって製造した。
【0083】
実施例1
(i):N−(3−ブロモフェニル)−9−クロロ−4−イソプロピル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド
9−クロロ−4−イソプロピル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホニルクロリド(16 mg、0.049mmol)を、ジクロロメタン (0.5ml)及びアセトニトリル(0.5ml)中に溶解した。3−ブロモアニリン (11μl、0.10mmol)及びピリジン (8μl、0.10mmol)を加え、そして混合物を周囲温度で30分間撹拌した。溶媒を蒸発させ、そして残留物を分取HPLCにより精製し、固体として表題化合物のアセテートを得た (21mg, 92%)。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム−d) δ ppm 7.72 (1 H, d) 7.48−7.52 (1 H, m) 7.25−7.28 (2 H, m) 7.11−7.17 (1 H, m) 7.04−7.08 (1 H, m) 4.18−4.23 (2 H, m) 3.77 (2 H, s) 3.08−3.13 (2 H, m) 2.90−2.99 (1 H, m) 1.08 (6 H, d);MS ESI m/z M+H+
459, 461;M−H+ 457, 459.
(ii) 2−[(3−クロロ−2−フルオロベンジル)(イソプロピル)アミノ]エタノール
2−(i−プロピルアミン)エタノール(1.83ml、15.8mmol)及び酢酸(0.90ml、15.8mmol)を無水THF (40ml)中に溶解し、そして混合物を0℃に冷却した。3−クロロ−2−フルオロベンズアルデヒド(1.85ml、15.8mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(5.0g、23.7mmol)を加えた。混合物を周囲温度で20時間撹拌した。炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(8ml)を加え、そして混合物をEtOAcで抽出した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、そして溶媒を蒸発させ、表題化合物(3.9 g)を得、これをさらに精製することなく使用した。MS ESI m/z M+H+ 246、248.
(iii) 9−クロロ−4−イソプロピル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン
2−[(3−クロロ−2−フルオロベンジル)(イソプロピル)アミノ]エタノール(3.9g、15.8mmol)をTHF:DMF (2:1、100ml)中に溶解し、そして溶液を、THF:DMF (2:1、75ml)中の水素化ナトリウム(0.80g、31.5mmol)のスラリーに滴下して加えた。反応混合物を周囲温度で30分間及び50℃で2.5時間撹拌した。メタノールを滴下して加えて反応系をクエンチした。混合物をDowex(R) (H+) 樹脂で中和し、そしてこの樹脂を濾過により除去した。混合物を蒸発により濃縮した。水(50ml)を加え、次いで水性水酸化ナトリウム(1M)を加えてpH 10とした。混合物をジエチルエーテルで抽出した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、蒸発させ、そして残留物を分取HPLCにより精製し、表題化合物を得た(0.64g、18%)。MS ESI m/z M+H+ 226、228.
(iv) 9−クロロ−4−イソプロピル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホニルクロリド
9−クロロ−4−イソプロピル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン (100 mg、0.443mmol)をクロロホルム(2ml)中に溶解し、そして−15℃に冷却した。クロロホルム(2ml)中のクロロスルホン酸(0.13ml、1.9mmol)を滴下して加えた。混合物を−15℃で20分間、及び次いでRTで20分間撹拌した。混合物を氷、ジクロロメタン及び炭酸水素ナトリウムの混合物(0.7 g)上に注ぎ、そしてクロロホルムで抽出した((3)。合一した有機相を乾燥させ(MgSO4)、そして溶媒を蒸発させ、表題化合物(16 mg、11%)を得、これを直接、次の工程において使用した。
【0084】
実施例2
(i):9−クロロ−N−(3−クロロフェニル)−2,3,11,11a−テトラヒドロ−1H,5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド
9−クロロ−2,3,11,11a−テトラヒドロ−1H,5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾオキサゼピン−7−スルホニルクロリド(58 mg、0.18mmol)、3−クロロアニリン (0.10ml、0.98mmol)及びピリジン (79μl、0.98mmol)をクロロホルム:アセトニトリル(2:1、2.5ml)中に溶解した。混合物をアルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、そして残留物を分取HPLCにより精製し、表題化合物(46mg, 64%)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム−d) δ ppm 7.73 (1 H, d) 7.54 (1 H, d) 7.17−7.22 (1 H, m) 7.08−7.14 (2 H, m) 6.93−6.98 (1 H, m) 4.50 (1 H, dd) 3.72−3.85 (2 H, m) 3.58 (1 H, dd) 3.07−3.14 (1 H, m) 2.85−2.94 (1 H, m) 2.52−2.60 (1 H, m) 1.79−2.01 (3 H, m) 1.39−1.51 (1 H, m);MS ESI m/z M+H+ 404, 406.
(ii) [1−(3−クロロ−2−フルオロベンジル)ピロリジン−2−イル]メタノール
3−クロロ−2−フルオロベンズアルデヒド(1.80ml、15.8mmol)、D,L−プロリノール (1.55ml、15.8mmol)及び酢酸(0.90ml、15.8mmol)をTHF (40ml)中に溶解し、そして混合物を0℃に冷却した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(5.0g、23.7mmol)を滴下して加えた。混合物を室温で4時間撹拌した。ガスの発生が止まるまで、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を加えた。EtOAc (90ml)を加え、そして混合物を水で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、そして溶媒を蒸発させて粗製物を得、これを直接、次の工程において使用した。MS ESI m/z M+H+ 244、246.
(iii) 9−クロロ−2,3,11,11a−テトラヒドロ−1H,5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾオキサゼピン
[1−(3−クロロ−2−フルオロベンジル)ピロリジン−2−イル]メタノール(実施例2(ii)の粗製物、>16mmol)をTHF (60ml) 中に溶解し、そしてTHF (15ml)中の水素化ナトリウム(0.76g、32mmol)に滴下して加えた。混合物を周囲温度で1時間撹拌した。水素化ナトリウム(0.76g、31.5mmol)を数回に分けて加え、そして混合物を50℃で2.5時間加熱した。混合物を0℃に冷却し、そしてメタノール(70ml)を慎重に加えた。Dowex(R) (H+)樹脂を添加することにより、混合物を中和した。樹脂を濾過により除去し、そして溶媒を蒸発させた。残留物をEtOAc中に溶解し、そして混合物をブライン及び水で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、そして溶媒を蒸発させた。残留物を分取HPLCにより精製し、表題化合物を得た。MS ESI m/z M+H+ 224、226.
(iv):9−クロロ−2,3,11,11a−テトラヒドロ−1H,5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾオキサゼピン−7−スルホニルクロリド
9−クロロ−2,3,11,11a−テトラヒドロ−1H,5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾオキサゼピン (186 mg、0.83mmol)をクロロホルム(1.5ml)中に溶解し、そしてアルゴン雰囲気下で混合物を−15℃に冷却した。クロロホルム(1.5ml)中のクロロスルホン酸(0.24ml、3.57mmol)を加え、そして混合物を−15〜0℃で30分間、及び次いでRTで30分間撹拌した。混合物を氷上に注ぎ、そしてクロロホルムで抽出した。有機相を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、そして溶媒を蒸発させて固体(117 mg、44%)を得、これを直接、次の工程において使用した。
【0085】
実施例3
(i):N−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド
5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホニルクロリド(71 mg、0.27mmol)をクロロホルム:アセトニトリル(2:1、4ml)中に懸濁し、そしてピリジン (131μl、1.62mmol)及び3−クロロアニリン (144μl、1.36mmol)を加えた。混合物を周囲温度で1時間撹拌し、そして水 (5ml) を加えた。混合物をクロロホルムで抽出し、有機層を乾燥させ(MgSO4)、そして溶媒を除去した。残留物をTHF (0.5ml)中に懸濁し、そしてボラン (THF中の1M溶液、1.68ml、1.68mmol)を加えた。混合物を4時間加熱還流した。混合物を0℃に冷却し、そして塩酸(4M、0.5ml) を加えた。混合物を1時間加熱還流し、そして混合物を真空下で濃縮した。残留物を水で希釈し、そしてpHが塩基性になるまで炭酸水素ナトリウムを加えた。混合物をクロロホルムで抽出し((2)、有機層を乾燥させ(MgSO4)、そして溶媒を蒸発させた。残留物を分取HPLCにより精製して表題化合物(5mg, 5%)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム−d) δ ppm 7.96 (1 H, br. s.) 7.62 (1 H, dd) 6.96−7.16 (5 H, m) 4.36 (2 H, br. s.) 4.26−4.31 (2 H, m) 3.52−3.58 (2 H, m);MS ESI m/z M+H+ 339, 341.
(ii) 3,4−ジヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−5(2H)−オン
4−クロマノン (25g、169mmol)及びアジ化ナトリウム(33.2g、510mmol)を酢酸(335ml)中に溶解した。溶液を0℃に冷却し、そして濃硫酸(50ml)を滴下して加えた。混合物を4時間加熱還流し、次いでRTに冷却した。混合物を氷(500ml) 上に注ぎ、そしてpHが塩基性になるまで濃水酸化アンモニウムを加えた。混合物を周囲温度で20時間撹拌し、そして生成した固体を濾過により回収し、表題化合物(15g、54%)を得た。 MS ESI m/z M+H+ 164.
(iii) 5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホニルクロリド
3,4−ジヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−5(2H)−オン (150 mg、0.92mmol)をクロロホルム(2ml)中に溶解し、そして混合物を−15℃に冷却した。アルゴン雰囲気下でクロロホルム(2ml)中のクロロスルホン酸(0.26ml、4.0mmol)を加えた。混合物を−15〜0℃で30分間及びRTで30分間撹拌した。混合物を氷上に注ぎ、そしてクロロホルムで抽出した。有機層を水性炭酸水素ナトリウムで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、そして溶媒を蒸発させて固体(71 mg、29%)を得、これを直接、次の工程において使用した。
【0086】
実施例4
N−(2,3−ジクロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド
実施例3(i)に記載された方法を用いて、表題化合物(30 mg、31%)を製造した。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム−d) δ ppm 7.13−7.19 (2 H, m) 7.04 (1 H, dd) 6.84 (1 H, dd) 6.73−6.79 (1 H, m) 6.63 (1 H, d) 3.64−3.69 (2 H, m) 3.48 (2 H, s) 2.71−2.76 (2 H, m);MS ESI m/z M+H+ 373, 375.
【0087】
実施例5
N−(4−クロロ−1−ナフチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド
実施例3(i)に記載された方法を用いて、表題化合物(0.3 mg、0.3 %)を製造した。
1H NMR (400 MHz, MeOH) δ ppm 7.83 (1 H, d) 7.59 (1 H, d) 7.06−7.22 (5 H, m) 6.82 (1 H, d) 6.61 (1 H, d) 3.64−3.69 (2 H, m) 3.43 (2 H, s) 2.73−2.79 (2 H, m);MS ESI m/z M+H+ 389, 391.
【0088】
実施例6
(i) 2−ブロモフェニル 2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−2−ベンゾアゼピン−8−スルホネート
2−ブロモフェニル 1−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−2−ベンゾアゼピン−8−スルホネート (85 mg、0.214mmol)をBH3・THF (1N、6ml)中に溶解し、そして得られた反応混合物を4時間還流した。反応混合物を0℃に冷却し、そして塩酸(4 N、6ml)を慎重に加えた。溶液を1時間加熱還流した。混合物を減圧下で濃縮した。水 (20ml)を加え、そして固体炭酸水素ナトリウムを加えることにより反応混合物を塩基性にした。水層を酢酸エチル/塩化メチレン (1:1) で2回抽出した。有機層を減圧下で濃縮し、そして残留物を分取HPLCにより精製して生成物(27mg, 34 %)を得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 7.65−7.72 (2 H, m) 7.54 (1 H, dd) 7.27−7.38 (3 H, m) 7.09−7.19 (1 H, m) 4.00 (2 H, s) 3.20−3.30 (2 H, m) 3.04 (2 H, m) 1.73−1.82 (2 H, m);MS (ESI) m/z M+H+ 382及び384.
(ii) 2−ブロモフェニル 1−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−2−ベンゾアゼピン−8−スルホネート
o−ブロモフェノール(93μl、0.8mmol)を、室温のアセトニトリル/塩化メチレン (2:1、2ml)中の1−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−2−ベンゾアゼピン−8−スルホニルクロリド(95 mg、0.37mmol)及びピリジン (70μl、0.93mmol)の溶液に加えた。混合物を16時間撹拌し、塩化メチレン(10ml)で希釈し、そして水で洗浄した。有機層を乾燥させ(硫酸ナトリウム)、そして減圧下で濃縮した。分取HPLCを用いて残留物を精製して生成物(85 mg、58 %)を得た。MS ESI m/z M+H+ 396、398.
(iii) 1−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−2−ベンゾアゼピン−8−スルホニルクロリド
2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−2−ベンゾアゼピン−1−オン (240mg, 1.49mmol)を、0℃のクロロスルホン酸(13ml)に加えた。混合物を室温に至るまで放置し、そしてさらに8時間撹拌した。褐色溶液を氷上に注ぎ、そして混合物を酢酸エチルで2回抽出した。合一した有機層を炭酸水素ナトリウム溶液(5%)、ブラインで洗浄し、そして硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、そして粗製生成物(378mg, 97 %)を、さらに精製することなく次の反応工程で使用した。MS ESI m/z M+H+ 260, 262.
【0089】
薬理学
ラットの線条体5−HT6受容体に結合する[125I]SB258585に関する方法
材料
比放射活性2000 Ci/mmolの[125I]SB258585 (1)を、Amersham Biosciences Europe GmbH、Freiburg、ドイツから購入した。他の薬品は、商業的供給元から購入し、そして分析グレードのものを用いた。
膜の製造
成体のラット(Sprague−Dawley, 320−370 g, B & K Sweden)の線条体組織を解剖し、計量し、そして50mM トリス−HCl、4mM MgCl2、1mM EDTA、10μM パーギリン及びプロテアーゼ阻害剤 (Complete, Roche Diagnostics) pH 7.4を含有するバッファ中でUltra−Turrax T8 (IKA Labortechnik, ドイツ)を用いてホモジナイズした。組織ホモジネートを48 000xgで10分間遠心分離し、そしてペレットを再懸濁し、上述のように再び遠心分離した。最後の膜をバッファ中に希釈して、1mlあたり原湿重量(w.w.)60mgの濃度とし、−70℃でアリコートで保存した。
放射性リガンド結合アッセイ
チューブあたり、0.5mlバッファ(50mM トリス、4mM MgCl2、100mM NaCl、1mM EDTA、5mM アスコルビン酸塩及び10μM パーギリン(pH 7.4))、0.2 nM [125I]SB258585及び非標識SB258585において、1〜3mg w.w.で、最終濃度範囲0.23〜20nM (12 conc.)として、二連で飽和結合研究を行った。10μM メチオテピンの存在下で、非特異的結合を測定した。競合実験において、競合薬剤をDMSO中に予め溶解し、そしてバッファ中に希釈して7種類の濃度で、チューブあたり0.8〜2mg w.w.及び放射性リガンド濃度0.5〜1 nMを用いた。アッセイは、Brandelセル・ハーベスターを用いて、室温で1〜3時間インキュベートし、そして0.3% ポリエチレンイミンで予め処理したWhatman GF/Bフィルタに通して急速濾過することにより終了させた。Packard Tri−Carb 2900TR液体シンチレーションカウンターにおいて、放射活性を測定した。PRISM 4.00 (GraphPad Software Inc., San Diego, CA)を用いて、非線形回帰分析によりデータを分析した。
アッセイについての更なる情報は、Hirst, W.D., Minton, J.A.L., Bromidge, S.M., Moss, S.F., Latter, A., Riley, G., Routledge, C., Middlemiss, D.N. & Price, G.W. (2000)において見出すことができる。ラット、ブタ及びヒトの脳組織におけるヒト組み換え5−HT6受容体及び天然5−HT6受容体への[125I]−SB−258585の結合特性は、Br. J. Pharmacol., 130, 1597−1605に記載されている。
【0090】
結果
上記のアッセイで測定した典型的なIC50値は、5μM以下である。本発明の1つの態様において、IC50は500 nMより低い。本発明の別の態様において、IC50は50 nMより低い。本発明のさらなる態様において、IC50は10 nMより低い。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

で表わされる化合物、又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩。
式中、
QはC6-10アリールC0-6アルキル、C5-11ヘテロアリールC0-6アルキル、C3-7シクロアルキルC0-6アルキル、C3-7ヘテロシクロアルキル又はC1-3アルキルであり;
R1は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、N(R8)2、C6-10アリールC0-3アルキル、C5-6ヘテロアリールC0-3アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ハロアルキルO、R6OC0-6アルキル、CN、SR6、R 6SO2C0-3アルキル、SOR6、R6CON(R7)C0-3アルキル、NR7SO2R6、COR6、COOR6、OSO2R6、(R7)2NCOC0-3アルキル、SO2N(R7)2、N(R7)CON(R7)2、NO2又はオキソであり;
nは0、1、2、3又は4であり;
BはO、N(R5)であるか、又はBはC5-11ヘテロアリール中のNであり;
XはO、CH2又はNR10であり;
R2は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルキル、C1-6ハロアルキルO、R9OC0-6アルキル、CN、SR8、SO2R9、SOR9、N(R8)COR9、N(R8)SO2R9、COR9、COOR9、OSO2R9、CON(R8)2又はSO2N(R9)2であり;
R3は水素、C1-10アルキル、C1-6ハロアルキル又はR9OC1-6アルキルであり;
R4は水素、C1-5アルキル、C1-5ハロアルキル、C1-5アルコキシ又はC1-5ハロアルコキシであり、そしてハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシから独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく、又は
R3及びR4は一緒になってC3-7ヘテロシクロアルキルを形成し、これは水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、COR9、SO2R9、OR9、シアノ、オキソ及びSO2N(R8)2から独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく;
R5は水素、C1-6アルキル、R9OC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル又はC1-6シアノアルキルであり;
R6はC1-6アルキル、C6-10アリールC0-3アルキル、C5-6ヘテロアリールC0-3アルキル、C3-7シクロアルキルC0-3アルキル又はC1-3ハロアルキルであり;
R7は水素、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C3-7シクロアルキルC0-3アルキル、C6-10アリールC0-3アルキル又はC5-6ヘテロアリールC0-3アルキルであり、又は
R6及びR7は一緒になってC5-6ヘテロアリール又はC3-7ヘテロシクロアルキルを形成し、
ここで、R1、R6及びR7における任意のアリール及びヘテロアリールは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-6ハロアルキル、CN、OR8、C1-6アルキル、オキソ、SR8、CON(R8)2、N(R8)COR9、SO2R9、SOR9、N(R8)2及びCOR9から独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく;
R8は水素、C1-6アルキル、C1-6シアノアルキル又はC1-6ハロアルキルであり;そして
R9はC1-6アルキル、C1-6シアノアルキル又はC1-6ハロアルキルであり;
R8及びR9は一緒になってC3-7ヘテロシクロアルキルを形成し、これは水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ及びシアノから独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく;そして
R10はH、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、COR11又はSO2R11である。
【請求項2】
式Iにおいて、
QはC6-10アリールC0-6アルキル又はC5-11ヘテロアリールC0-6アルキルであり;
R1は水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C6-10アリールC0-3アルキル、C5-6ヘテロアリールC0-3アルキル、C1-6ハロアルキル、CN又はR6OC0-6アルキルであり;
nは1又は2であり;
BはO又はN(R5)であり;
XはO、CH2又はNR10であり;
R2は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルキル、C1-6ハロアルキルOであり;
R3は水素、C1-10アルキル、C1-6ハロアルキル又はR9OC1-6アルキルであり;
R4は水素、C1-5アルキル、C1-5ハロアルキル、C1-5アルコキシ又はC1-5ハロアルコキシであり、そしてハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシから独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく、又は
R3及びR4は一緒になってC3-7ヘテロシクロアルキルを形成し、これは水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、COR9、SO2R9、OR9、シアノ、オキソ及びSO2N(R8)2から独立して選択される1又はそれ以上の基により置換されてもよく;そして
R5は水素、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル又はC1-6シアノアルキルである;
請求項1に記載の化合物、又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩。
【請求項3】
式Iにおいて、
QはC6-10アリールC0-6アルキルであり;
R1はハロゲンであり;
nは1又は2であり;
BはO又はN(R5)であり;
XはO、CH2又はNR10であり;
R2は水素又はハロゲンであり;
R3は水素又はC1-10アルキルであり;
R4は水素又はC1-5アルキルであるか、又は
R3及びR4は一緒になってC3-7ヘテロシクロアルキルを形成し;そして
R5は水素である;
請求項1に記載の化合物、又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩。
【請求項4】
以下:
N−(3−ブロモフェニル)−9−クロロ−4−イソプロピル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド;
9−クロロ−N−(3−クロロフェニル)−2,3,11,11a−テトラヒドロ−1H,5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド;
N−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド;
N−(2,3−ジクロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド;
N−(4−クロロ−1−ナフチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾオキサゼピン−7−スルホンアミド;及び
2−ブロモフェニル 2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−2−ベンゾアゼピン−8−スルホネート
からなる群より選択される請求項1に記載の化合物、又はその塩、溶媒和物若しくは溶媒和された塩。
【請求項5】
治療で使用するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
5−HT6介在疾患の治療用医薬の製造における、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項7】
アルツハイマー病、認知障害、統合失調症に伴う認識機能障害、肥満及び/又はパーキンソン病の治療用医薬の製造における、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項8】
活性成分として治療有効量の請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を、1又はそれ以上の医薬として許容し得る希釈剤、賦形剤及び/又は不活性担体と共に含有する医薬組成物。
【請求項9】
5−HT6介在疾患の治療において使用するための、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
5−HT6介在疾患の治療の必要なヒトを含む哺乳動物に、治療有効量の請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物を投与することからなる、該疾患の治療方法。
【請求項11】
活性成分として請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物を含む、5−HT6介在疾患の治療用薬剤。
【請求項12】
式:
【化2】

(式中、X、R2、R3及びR4は請求項1において定義されるとおりである)で表わされる化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の式Iの化合物の製造における、請求項12に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−500406(P2009−500406A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520213(P2008−520213)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000828
【国際公開番号】WO2007/004960
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】