説明

新規化合物

本発明は、アニリノピラゾール誘導体、かかるアニリノピラゾール類を製造する方法、およびかかるアニリノピラゾール類のある特定の疾患または症状の治療における使用に関する。特に、本発明はCDK2インヒビターとして有用なアニリノピラゾール誘導体、および該アニリノピラゾール類の、不適当なCDK2活性により媒介される疾患の治療における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はアニリノピラゾール誘導体、かかるアニリノピラゾール類を製造する方法、およびある特定の疾患または症状の治療におけるかかるアニリノピラゾール類の使用に関する。特に、本発明はCDK2インヒビターとして有用なアニリノピラゾール誘導体、および不適当なCDK2活性により媒介される疾患の治療における該アニリノピラゾール類の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
正常細胞に対して許容しうる毒性を有する、癌治療用の有効な化学療法ならびに放射療法は、腫瘍学分野における果てしのない目標である。多数の細胞傷害薬が癌治療に用いられ、そのなかには細胞分裂の過程にある正常細胞を含む急速に分裂する細胞に有害な影響を与える細胞傷害薬が含まれる。典型的には、このような薬剤はG1期(有糸分裂とDNA合成の間の期間);S期(DNA合成の期間);G2期(有糸分裂の前の期間);および/またはM期(有糸分裂の期間)の細胞周期に影響を与えうるので、期に特異的な薬剤と呼ばれる。このような薬剤はG0期(静止または休止細胞期)には無効である。従って、このような抗腫瘍薬は細胞分裂の過程にある細胞に対して活性があり、そして大きい増殖率を有する癌、すなわち、高い百分率の分裂細胞を有する腫瘍に対して最も有効である。
【0003】
プロテインキナーゼは、細胞増殖および分化の調節に関わるタンパク質を含むタンパク質中の様々な残基のリン酸化を触媒する。プロテインキナーゼは細胞増殖および分化の制御に決定的な役割を果たしかつ増殖因子およびサイトカインの産生を引き起こす細胞シグナルの重要なメディエーターである。例えば、SchlessingerおよびUllrich, Neuron 1992, 9, 383を参照されたい。プロテインキナーゼにより媒介されるシグナルはまた、細胞周期のプロセスを調節することにより細胞の増殖、死および分化を制御することがわかっている。
【0004】
真核細胞周期全体の進行はサイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれるプロテインキナーゼのファミリーにより、およびそれとそれらのサイクリンと呼ばれるタンパク質のファミリーとの相互作用により、制御される(Myersonら, EMBO Journal 1992, 11, 2909-17)。色々なサイクリン/CDK複合体の強調的な活性化および不活性化が細胞周期の正常な進行に必要である(Pines, Trends in Biochemical Sciences 1993, 18, 195-7;Sherr, Cell 1993, 73, 1059-1065)。決定的なG1-SおよびG2-M両方の移行は色々なサイクリン/CDK活性の活性化により制御される。G1において、サイクリンD/CDK4およびサイクリンE/CDK2の両方がS期の開始を媒介すると考えられる。S期の進行にはサイクリンA/CDK2の活性を必要とするが、中期の開始にはサイクリンA/cdc2(CDK1)およびサイクリンB/cdc2の活性化が必要である。従って、CDK調節の制御不能が過増殖性疾患および癌でしばしば見られる事象であることは驚くにあたらない。(Pines, Current Opinion in Cell Biology 1992, 4, 144-8;Lees, Current Opinion in Cell Biology 1995, 7, 773-80;HunterおよびPines, Cell 1994, 79, 573-82)。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、CDK2を阻害するのに有効である新規化合物に関する。CDK2の阻害はG1期の細胞を停止しかつそれらの細胞が細胞周期に入ることを阻止するに違いない。従って、本発明の化合物は癌および他の過増殖性疾患例えば乾癬の治療または予防に有用である。
【0006】
発明の概要
第1の態様において、本発明は式I:
【化1】

【0007】
[式中、R1は水素、ハロゲン、-OMe、-OH、-NH2、もしくは-NHSO2CH3であるか、または
R1は式:
【化2】

【0008】
で表される基であり;そして
R2は水素、塩素、-OMe、-OH、-NO2、または-NH2である]
で表される化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体(physiologically functional derivative)に関する。
【0009】
第2の態様において、本発明は哺乳動物におけるCDK2タンパク質を阻害する方法であって;哺乳動物に治療上有効な量の式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体を投与することを含んでなる上記方法に関する。
【0010】
本発明の第3の態様においては、治療上有効な量の式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体ならびに1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0011】
本発明の第4の態様においては、式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体の、CDK2タンパク質の不均衡もしくは不適当な活性がもたらす不適当な細胞周期により引き起こされる疾患、例えば、限定されるものでないが、癌および乾癬などの過増殖性疾患の治療または予防に用いる医薬品の製造における使用が提供される。
【0012】
第5の態様において、本発明はCDK2タンパク質の不均衡もしくは不適当な活性がもたらす不適当な細胞周期により引き起こされる疾患、例えば、限定されるものでないが、癌および乾癬などの他の過増殖性疾患を治療または予防する方法であって;哺乳動物に治療上有効な量の式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体ならびに1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を投与することを含んでなる上記方法に関する。
【0013】
第6の態様において、本発明は、限定されるものでないが、癌および乾癬などの他の過増殖性疾患を治療または予防する方法であって;哺乳動物に治療上有効な量の式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体ならびに1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を投与することを含んでなる上記方法に関する。
【0014】
第7の態様において、本発明は式Iの化合物を作るための化学中間体に関する。
【0015】
第8の態様において、本発明は式Iの化合物を作る方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
詳細な説明
以下の用語を本明細書で使用することがある。これらの用語を使用する場合、以下の定義が適用される。
【0017】
本明細書に使用される、用語「有効量」は、組織、系、動物もしくはヒトの、例えば、研究者もしくは臨床医が求めている生物学的もしくは医学的応答を誘発しうる薬物または医薬剤の量を意味する。さらに、用語「治療上有効な量」は、このような量を摂取していない対応する被験者と比較して、疾患、障害もしくは副作用の治療、治癒、予防もしくは回復の改善、または疾患もしくは障害の進行速度の減少をもたらすいずれかの量を意味する。この用語はまた、正常な生理機能を増進するのに有効な量もその範囲内に包含する。
【0018】
本明細書に使用される用語「ハロゲン」はフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)を意味する。
【0019】
本明細書に使用される用語「場合によっては」は次に記載された事象が起こってもよいしまたは起こらなくてもよいことを意味し、起こる事象および起こらない事象の両方を含む。
【0020】
本明細書に使用される用語「生理学的に機能的な誘導体」は、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される誘導体、例えば、哺乳動物に投与すると本発明の化合物またはその活性代謝物を(直接的または間接的に)提供することができるエステルまたはアミドを意味する。このような誘導体は当業者には、無駄な実験をすることなく、「バーガーの医薬品化学と薬物発見(Burger’s Medicinal Chemistry And Drug Discovery)」, 5th Edition, Vol 1: 「原理と実施(Principles and Practice)」(参照により、その生理学的に機能的な誘導体を教示する範囲が本明細書に組み入れられる)の教示を参照すれば明らかである。
【0021】
本明細書に使用される用語「溶媒和物」は、溶質(本発明においては式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体)と溶媒により形成される可変性の化学量論をもつ複合体を意味する。このような本発明の目的のための溶媒は、溶質の生物学的活性を妨害しないものである。好適な溶媒の例としては、限定されるものでないが、水、メタノール、エタノールおよび酢酸が挙げられる。好ましくは、使用される溶媒は薬学的に許容される溶媒である。薬学的に許容される好適な溶媒の例としては、限定されるものでないが、水、エタノールおよび酢酸が挙げられる。最も好ましい溶媒は水である。
【0022】
本明細書に使用される用語「置換された」は名前を挙げた1以上の置換基による置換を意味し、特に断らない限り多重度の置換も許容される。
【0023】
本明細書に記載した化合物のうちのいくつかは1個以上のキラル原子を含有してもよいし、または、2種のエナンチオマーとして存在することもできる。従って、本発明の化合物には、エナンチオマーの混合物ならびに精製されたエナンチオマーまたはエナンチオマー的に濃縮された(enriched)混合物が含まれる。また本発明の範囲には、式Iで表される化合物の個々の異性体ならびにその完全にまたは部分的に平衡化した混合物も含まれる。本発明はまた、1個以上のキラル中心が反転されたその異性体との混合物である、上記式Iで表される化合物の個々の異性体も包含する。また、当然であるが、全ての互変異性体および互変異性体の混合物も式Iの化合物の範囲内に含まれる。
【0024】
典型的には、本発明の塩は薬学的に許容される塩である。用語「薬学的に許容される塩」に包含される塩は、本発明の化合物の無毒の塩を意味する。本発明の化合物の塩は、式Iで表される化合物中の置換基上の窒素から誘導される酸付加塩を含んでもよい。代表的な塩としては次の塩:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、マレイン酸モノカリウム、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミン、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクトウロン酸塩、カリウム塩、サリチル酸塩、ナトリウム塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド塩、トリメチルアンモニウム塩、および吉草酸塩が挙げられる。製薬上許容されない他の塩が本発明の化合物の製造において有用であることがあり、これらは本発明のさらなる態様を形成する。
【0025】
治療に使用するために、治療上有効な量の式Iで表される化合物、ならびにその塩、溶媒和物、および生理学的に機能的な誘導体をそのままの化学物質として投与することができる一方、該活性成分を医薬組成物として提示することも可能である。従って、本発明は、治療上有効な量の式Iで表される化合物ならびにその塩、溶媒和物、および生理学的に機能的な誘導体と、1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む医薬組成物をさらに提供する。式Iで表される化合物ならびにその塩、溶媒和物、および生理学的に機能的な誘導体は、先に記載したとおりである。担体、希釈剤、または賦形剤は、製剤の他の成分と共存しうるものでありかつその受給者に有害でないという意味で、許容しうるものでなければならない。本発明の他の態様によればまた、式Iで表される化合物またはその塩、溶媒和物、および生理学的に機能的な誘導体と、1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを混合することを含む、医薬製剤の製造方法も提供される。
【0026】
医薬製剤は単位用量あたり所定量の活性成分を含有する単位用量剤形として提供することができる。そのような単位は、例えば、0.5mg〜1g、好ましくは1mg〜700mg、より好ましくは5〜100mgの式Iで表される化合物を、治療条件、投与経路、ならびに患者の年齢、体重、および症状に応じて含有してもよいし、または医薬製剤を単位用量あたり予め決めた量を含有する単位用量剤形として提供することもできる。好ましい単位用量製剤は、活性成分の、本明細書中で上述したような、一日用量もしくはサブ用量またはその適当な部分用量を含有する製剤である。さらに、そのような医薬製剤は、製薬技術分野で周知の任意の方法により製造することができる。
【0027】
医薬製剤は、任意の適当な経路、例えば、経口(バッカルもしくは舌下を含む)経路、直腸、経鼻、局所(バッカル、舌下、もしくは経皮を含む)経路、経膣、または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、もしくは皮内を含む)経路による投与に適合させることができる。そのような製剤は、製薬技術分野で公知の任意の方法により、例えば、活性成分を担体または賦形剤と会合させることにより製造することができる。
【0028】
経口投与に適合させた医薬製剤は、カプセル剤もしくは錠剤、散剤もしくは顆粒剤、水性もしくは非水性液体中の溶液剤もしくは懸濁剤、食用フォーム剤もしくはホイップ剤、または水中油型液状乳剤もしくは油中水型液状乳剤などの個別単位として提供することができる。
【0029】
例えば、錠剤またはカプセル剤の形態の経口投与用に、活性薬物成分を経口用の無毒の薬学的に許容される不活性担体、例えばエタノール、グリセロール、水と組み合わせることができる。散剤を製造するには、化合物を好適な微細サイズに粉砕して、同様に粉砕した医薬用担体、例えば、デンプンまたはマンニトールなどの食用炭水化物と混合する。また、香料剤、保存剤、分散剤、および着色剤が存在してもよい。
【0030】
カプセル剤を作製するには、先に述べたように粉末混合物を製造し、成形したゼラチンシース(sheaths)に充填する。充填操作の前に、滑剤および滑沢剤、例えば、コロイドシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、または固体ポリエチレングリコールを粉末混合物に添加することができる。崩壊剤または可溶化剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、または炭酸ナトリウムを、カプセルを摂取したときの医薬品の利用可能性を改良するために添加することもできる。
【0031】
さらに、所望または所要の場合、好適な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、および着色剤を、混合物中に組み込むこともできる。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然の糖類(例えば、グルコースもしくはベータ-ラクトース)、コーン甘味剤、天然および合成のガム(例えば、アラビアガム、トラガカントガム)、またはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形で使用される滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、限定されるものではない、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。錠剤を製剤化するには、例えば、粉末混合物を製造し、滑沢剤および崩壊剤を添加して顆粒化またはスラッギングし、そしてプレスして錠剤にする。粉末混合物を製造するには、適当に粉砕した化合物を、先に記載した希釈剤または基剤、ならびに場合によっては、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、もしくはポリビニルピロリドン)、溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、吸収促進剤(例えば、第四級塩)、および/または吸収剤(例えば、ベントナイト、カオリン、もしくはリン酸二カルシウム)と混合する。粉末混合物は、糖蜜、デンプン糊、アラビアガム(acadia)粘液、またはセルロース系もしくは高分子系材料の溶液のような結合剤を用いて湿潤させ、加圧によりスクリーンを通して顆粒化することができる。顆粒化の代替手段として、粉末混合物を錠剤機に通して処理することが可能であり、その結果、顆粒状に破壊された不完全な形状のスラッグが得られる。顆粒を、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、または鉱油を添加することによって滑沢化し、錠剤成形ダイへの付着を予防することができる。次に、滑沢化した混合物を圧縮して錠剤にする。本発明の化合物はまた、自由流動性不活性担体と組み合わせて、顆粒化またはスラッギングのステップを経ることなく直接圧縮して錠剤にすることも可能である。シェラックのシールコートからなる透明または不透明な保護コーティング、糖または高分子材料のコーティング、およびワックスの光沢コーティングを提供することができる。異なる単位用量を識別するために、これらのコーティングに色素を添加することができる。
【0032】
溶液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤などの経口液剤を、所与の量が化合物の予め決めた量を含有するように、投薬単位剤形で製造することができる。シロップ剤は、好適に香料づけした水溶液に化合物を溶解させることにより製造することができ、一方、エリキシル剤は、無毒のアルコール性ビヒクルを用いて製造する。懸濁剤は、無毒のビヒクル中に化合物を分散させることにより製剤化することができる。エトキシル化イソステアリルアルコールやポリオキシエチレンソルビトールエーテルなどの可溶化剤および乳化剤、保存剤、ペパーミント油のような香料添加剤、または天然甘味剤もしくはサッカリンもしくは他の人工甘味剤などを添加することもできる。
【0033】
適当な場合には、経口投与用の投薬単位製剤をマイクロカプセル化することができる。製剤を、放出が延長または持続されるように、例えば、粒状物質をポリマー、ワックスなどでコーティングするかまたは包埋することにより製造することもできる。
【0034】
式Iで表される化合物ならびにその塩、溶媒和物、および生理学的に機能的な誘導体はまた、小さな単ラメラ小胞、大きな単ラメラ小胞、および多重ラメラ小胞などのリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどのさまざまなリン脂質から形成することができる。
【0035】
式Iで表される化合物ならびにその塩、溶媒和物、および生理学的に機能的な誘導体はまた、モノクロナール抗体を個々の担体として利用し、抗体に化合物分子をカップリングさせることにより送達することもできる。化合物を、ターゲッティング可能な薬物担体として、可溶性ポリマーとカップリングさせることもできる。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換したポリエチレンオキシドポリリシンを挙げることができる。さらに、薬物の制御放出を達成するのに有用な生分解性ポリマーのクラス、例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋型または両親媒性ブロックコポリマーに、化合物をカップリングさせることもできる。
【0036】
経皮投与に適合させた医薬製剤は、長期間にわたり受給者の表皮と十分に接触した状態で残留することを意図した個別のパッチとして提供することができる。例えば、活性成分を、Pharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に概説されたように、イオントホレシスによりパッチから送達してもよい。
【0037】
局所投与に適合させた医薬製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エーロゾル剤、または油剤として製剤化することができる。
【0038】
眼または他の外部組織例えば口や皮膚を治療するためには、製剤を、好ましくは、局所軟膏剤またはクリーム剤として適用する。軟膏剤に製剤化する場合、活性成分をパラフィン系または水混和性軟膏基剤のいずれかと併用することができる。あるいは活性成分を、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤を用いてクリーム剤に製剤化することもできる。
【0039】
眼への局所投与に適合させた医薬製剤としては、好適な担体とりわけ水溶媒に活性成分を溶解または懸濁した点眼剤が挙げられる。
【0040】
口内への局所投与に適合させた医薬製剤としては、ロゼンジ剤、パスティール剤、および洗口剤が挙げられる。
【0041】
直腸内投与に適合させた医薬製剤は、坐剤または浣腸剤として提供することができる。
【0042】
担体が固体である経鼻投与に適合させた医薬製剤としては、例えば20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末剤が挙げられ、この場合、嗅ぐことにより、すなわち、鼻の近くに保持した粉末入りの容器から鼻道を介して急速に吸入することにより、投与される。担体が液体である経鼻スプレー剤または点鼻剤として投与するのに好適な製剤としては、活性成分の水性または油性溶液剤が挙げられる。
【0043】
吸入による投与に適合させた医薬製剤としては、様々なタイプの計量した用量加圧式エアゾール剤、噴霧器、または吹送器を用いて生成することができる微粒子ダスト剤またはミスト剤が挙げられる。
【0044】
経膣投与に適合させた医薬製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤、またはスプレー製剤として提供することができる。
【0045】
非経口投与に適合させた医薬製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を対象受給者の血液と等張にする溶質を含有してもよい水性および非水性無菌注射溶液剤;ならびに懸濁化剤および粘稠化剤を含んでもよい水性および非水性無菌懸濁剤が挙げられる。製剤は、単位用量または複数回用量の容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルに入れて提供することができ、使用直前に無菌液体担体例えば注射用水の添加だけを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。用事調製注射溶液剤および懸濁剤は、無菌の散剤、顆粒剤、および錠剤から製造することができる。
【0046】
当然のことながら、製剤には、特に先に記載した成分だけでなく、対象の製剤のタイプを考慮して、当技術分野で慣用される他の薬剤が含まれてもよく、例えば、経口投与に好適な製剤には、香料剤が含まれてもよい。
【0047】
本発明の化合物の治療上有効な量はいくつかの因子、例えば、動物の年齢および体重、治療を必要とする正確な症状およびその重症度、製剤の性質、ならびに投与経路に依存し、そして最終的には担当の医師または獣医師の裁量にゆだねられるであろう。しかし、CDK2タンパク質の不均衡もしくは不適当な活性がもたらす不適当な細胞周期により引き起こされる、限定されるものでないが、癌および乾癬などの過増殖性疾患を含む症状を治療または予防するために有効な式Iで表される化合物の有効量は、一般的に、1日あたり受給者(哺乳動物)の体重1kgにつき0.1〜100mgの範囲、より通常には、1日あたり体重1kgにつき1〜10mgの範囲であろう。従って、70kgの成体哺乳動物の場合、1日あたりの実際量は、通常、70〜700mgであり、この量を、1日1回の用量で投与するか、またはより一般的には、合計一日用量が同じになるように1日何回かの(例えば、2、3、4、5、または6回の)サブ用量で投与することができる。当該化合物の塩または溶媒和物または生理学的に機能的な誘導体の有効量は、式Iで表される化合物自体の有効量に比例して決定することができる。同様な用量が、先に参照した他の症状の治療についても適当であろうと予想される。
【0048】
製造方法
一般式Iで表される化合物は、次の合成スキームにより部分的に記載した有機合成の技術分野で公知の方法、またはその変法によって製造することができる。以下に記載のスキームのいずれにおいても、当然のことながら、化学の一般的原理によって必要な場合には、官能基または反応基に対する保護基を用いる。保護基は、有機合成の標準的方法に従って操作される(T. W. GreenおよびP. G. M. Wuts (1991) 「有機合成の保護基(Protecting Groups in Organic Synthesis)」, John Wiley & Sons)。これらの基は、当業者には自明の方法を用いて、好都合な化合物合成の段階に除去される。方法ならびにその反応条件およびそれらの実行順序の選択は、式Iで表される化合物の製造と整合したものでなければならない。当業者であれば、式Iで表される化合物に立体中心が存在するかがわかるであろう。従って、本発明には、可能性のある両方の立体異性体が包含され、ラセミ化合物だけでなく個々のエナンチオマーも包含される。単一のエナンチオマーとしての化合物が所望であれば、立体特異的合成により、または最終生成物もしくは任意の好都合な中間体の分割により、取得することができる。最終生成物、中間体、または出発物質の分割は、当技術分野で公知の任意の好適な方法により実施することができる。例えば、E. L. Eliel, S. H. WilenおよびL. N. Mander, 「有機化合物の立体化学(Stereochemistry of Organic Compounds)」, Wiley-Interscience, 1994を参照されたい。
【化3】

【化4】

【化5】

【0049】
簡単に説明するとスキームAにおいて、式IIの化合物を炭酸ジメチルと、好適な塩基、例えば水素化ナトリウムを用いて反応させ、式IIIの化合物を得る。式IIIの化合物を次いでスルファニルアミドと反応させて、式IVの化合物を得る。式IVの化合物をLawesson試薬と反応させて式Vのチオアミドを得て、これを次いでヒドラジンと反応させて式I'の化合物を得る。
【0050】
スキームBにおいて、式VIの化合物をスルファニルアミドと反応させて式VIIの化合物を得る。式VIIの化合物をヒドラジンと反応させて式I''の化合物を得る。
【0051】
スキームCにおいて、式VIIIの化合物をスルファモイルフェニルイソシアナートと、塩基、例えばLiN(TMS)2を用いて反応させ、式IXの化合物を得る。式IXの化合物をヒドラジンと反応させて式I'''の化合物を得る。
【0052】
スキームA〜Bにおいて、R3およびR4はそれぞれ先に定義したR1およびR2であるか、またはそれぞれR1およびR2に変換しうる基である。R3およびR4のそれぞれのR1およびR2への変換は以下の実施例において例示される。
【実施例】
【0053】
特定の実施形態:実施例
本明細書において使用するこれらの方法、スキーム、および実施例で用いられる記号および規約は、現代の科学文献、例えば、the Journal of the American Chemical Societyまたはthe Journal of Biological Chemistryで用いられるものと一致する。一般的に、標準一文字または三文字略号を用いてアミノ酸残基を記述し、別段の記載がないかぎり、これらのアミノ酸残基はL-配置をとるものとする。別段の記載がないかぎり、出発物質はすべて、市販品供給業者から入手し、さらなる精製を行うことなく使用した。具体的には、実施例中でおよび明細書全体にわたり、次の略号を使用する。
【0054】
g(グラム);mg(ミリグラム);
L(リットル);mL(ミリリットル);
μL(マイクロリットル);psi(ポンド毎平方インチ);
M(モル濃度);mM(ミリモル濃度);
i.v.(静脈内);Hz(ヘルツ);
MHz(メガヘルツ);mol(モル);
mmol(ミリモル);RT(室温);
min(分);h(時間);
mp(融点);TLC(薄層クロマトグラフィー);
Tr(保持時間);RP(逆相);
MeOH(メタノール);i-PrOH(イソプロパノール);
TEA(トリエチルアミン);TFA(トリフルオロ酢酸);
TFAA(トリフルオロ酢酸無水物);THF(テトラヒドロフラン);
DMSO(ジメチルスルホキシド);EtOAc(酢酸エチル);
DME(1,2-ジメトキシエタン);DCM(ジクロロメタン);
DCE(ジクロロエタン);DMF(N,N-ジメチルホルムアミド);
DMPU(N,N'-ジメチルプロピレンウレア);CDI(1,1-カルボニルジイミダゾール);
IBCF(クロロギ酸イソブチル);HOAc(酢酸);
HOSu(N-ヒドロキシスクシンイミド);HOBT(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール);
mCPBA(メタ-クロロ過安息香酸);EDC(エチルカルボジイミド塩酸塩);
BOC(tert-ブチルオキシカルボニル);FMOC(9-フルオレニルメトキシカルボニル);
DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド);CBZ(ベンジルオキシカルボニル);
Ac(アセチル);atm(気圧);
TMSE(2-(トリメチルシリル)エチル);TMS(トリメチルシリル);
TIPS(トリイソプロピルシリル);TBS(t-ブチルジメチルシリル);
DMAP(4-ジメチルアミノピリジン);BSA(ウシ血清アルブミン);
ATP(アデノシン三リン酸);HRP(西洋わさびペルオキシダーゼ);
DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地);
HPLC(高速液体クロマトグラフィー);
BOP(ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド);
TBAF(テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド);
HBTU(O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロリン酸);
HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸);
DPPA(ジフェニルホスホリルアジド);
fHNO3(発煙HNO3);および
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)。
【0055】
エーテルと呼ぶ場合はいずれもジエチルエーテルであり、ブラインはNaClの飽和水溶液を意味する。別段の記載がないかぎり、温度はすべて、℃(摂氏)で表される。反応はすべて、別段の記載がないかぎり、不活性雰囲気下で室温において行った。
【0056】
1H NMRスペクトルは、Brucker AVANCE-400を用いて記録した。化学シフトは1/1,000,000部(ppm、δ単位)で表されている。結合定数は、ヘルツ(Hz)単位である。分裂パターンは、見掛けの多重度を示し、s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線)、br(広幅)として記されている。
【0057】
LC-MSはmicromass ZMDおよびWaters 2690を用いて記録した。質量スペクトルはすべて、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法によって得た。ほとんどの反応は薄層クロマトグラフィーにより、0.25mm E.Merckシリカゲルプレート(60F-254)を用いてモニターし、UV光、5%エタノール性リンモリブデン酸、またはp-アニスアルデヒド溶液を用いて可視化した。フラッシュカラムクロマトグラフィーはシリカゲル(230〜400メッシュ、Merck)を用いて行った。
【0058】
実施例1
【化6】

【0059】
4-[5-(3-ブロモ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド(Ia)
【化7】

【0060】
炭酸ジメチル(72g)および60%油性水素化ナトリウム6.4gの懸濁液に、75℃にて3-ブロモアセトフェノンIIa(80mmol、15.9g)を滴下した。反応を、添加速度を調節することにより穏やかな状態に維持した(発熱)。添加が完全に終わった後、反応物を75℃にて20分間加熱し、次いで室温に冷却した。小量の水を加えて過剰の塩基をクエンチし、次いで炭酸ジメチルを蒸発させた。残留液を10%HCl水溶液を用いて酸性化した後、エーテル(2X)を用いて抽出し、そして組合わせたエーテル層を水を用いて洗浄し、そして乾燥した。シリカゲルクロマトグラフィ(AcOEt/ヘキサン=1/10)により精製して17.48g(85%)の化合物IIIaを得た。
IIIa(10mmol、2.57g)およびスルファニルアミド(11mmol、1.89g)のトルエン(30ml)およびDMF(10ml)混合液を130℃にて12時間加熱した。室温に冷却した後、得られる沈降物を濾過し、そして真空で乾燥して2.18g(55%)のIVaを得た。
IVa(0.49mmol、194mg)およびLawesson試薬(0.51mmol、208mg)のトルエン(12ml)懸濁液を140℃にて1時間加熱し、次いで真空で濃縮した。残留物を精製せずに直接エタノール(5mL)に溶解した。ヒドラジン水和物(0.25mL)およびHOAc(数滴)を加え、反応液を85℃にて12時間攪拌し、その後真空で濃縮した。残留物をAcOEtを用いて抽出し、AcOEt層をブラインを用いて洗浄し、Na2SO4上で乾燥した。HPLC(Gilson)により精製して14mg(7.3%)の化合物Iaを得た。1HNMR: (400MHz, DMSO-d6) ppm 6.44 (s, 1H), 7.06 (s, 2H), 7.42 (m, 3H), 7.55 (d, 1H, J=7.6 Hz), 7.64 (d, 2H, J=8.8 Hz), 7.76 (d, 1H, J=7.6 Hz), 8.00 (t, 1H, J=1.8 Hz), 9.10 (s, 1H), 12.76 (s, 1H). LC/MS: m/z 393(M-1)-, 395 (M+1)+
【0061】
実施例2
【化8】

【0062】
4-[5-(4-フルオロ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド(Ib)
【化9】

【0063】
VIa(3mmol、642.8mg)およびスルファニルアミド(3mmol、516.6mg)のトルエン(20ml)およびDMF(2ml)中の混合液を140℃にて3時間加熱し、次いで真空で濃縮した。残留物を精製せずに直接エタノール(20mL)に溶解した。ヒドラジン水和物(1mL)およびHOAc(数滴)を加え、反応混合物を85℃にて12時間攪拌し、その後真空で濃縮した。残留物をAcOEtを用いて抽出し、AcOEt層をブラインを用いて洗浄し、Na2SO4上で乾燥した。部分的に溶媒を蒸発させて沈降物を得た。固体を濾過により回収し、次いでMeOH/AcOEtから再結晶し、そして真空で乾燥して、111mg(0.33mmol、11.1%)の化合物Ibを得た。1HNMR: (400MHz, DMSO-d6) ppm 6.33 (s, 1H), 7.04 (brs, 2H), 7.31 (m, 2H), 7.43 (m, 2H), 7.63 (d, 2H, J=8.8 Hz), 7.79 (dd, 2H, J=3.3, 8.6 Hz), 9.04 (s, 1H), 12.64 (s, 1H). LC/MS: m/z 331(M-1)-, 333 (M+1)+
【0064】
実施例3
【化10】

【0065】
4-[5-(4-ブロモ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド(Ic)
【化11】

【0066】
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(2.2mL、THF中の1.0M溶液、2.2mmol)を、対応するアセトフェノン(1.0mmol)および4-スルファモイルフェニルイソシアナート(1.0mmol、214mg)の乾燥THF(7.5mL)中の混合液に-78℃にてアルゴン雰囲気下で徐々に加えた。反応液を30分間攪拌し、次いで室温に加温してさらに12時間攪拌した。その反応液をMeOHを用いてクエンチし、そして真空で濃縮した。得られる粗チオアミドを、精製せずにエタノール(10mL)に直接溶解した。ヒドラジン水和物(0.5mL)およびHOAc(数滴)を加え、そして反応混合液を85℃にて12時間攪拌した後、それを真空で濃縮した。残留液をAcOEtを用いて抽出し、AcOEt層をブラインを用いて洗浄し、そしてNa2SO4上で乾燥した。部分的に溶媒を蒸発させて沈降物を得た。固体を濾過により回収し、真空で乾燥して121mg(0.307mmol、30.7%)の化合物Icを黄色の固体として得た。1HNMR: (400MHz, DMSO-d6) ppm 6.38 (s, 1H), 7.06 (brs, 2H), 7.43 (brs, 2H), 7.62〜7.73 (m, 6H), 9.08 (s, 1H), 12.73 (s, 1H). LC/MS: m/z 391(M-1)-, 393(M-1)-, 393 (M+1)+, 395 (M+1)+
【0067】
実施例4〜6の化合物を実施例3に記載の方法(スキームC)により製造した。
【0068】
実施例4
【化12】

【0069】
4-[5-(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド(Id)
化合物Idを、実施例3に記載の操作を用いて10%の収率で得た。1HNMR: (400MHz, DMSO-d6) ppm 3.88 (s, 3H), 6.32 (s, 1H), 7.05 (brs, 2H), 7.25 (t, 1H, J=8.8 Hz), 7.43 (m, 2H), 7.55 (d, 2H, J=8.3 Hz), 7.61〜7.66 (m, 3H), 9.05 (s, 1H), 12.58 (s, 1H). LC/MS: m/z 361(M-1)-, 363 (M+1)+
【0070】
実施例5
【化13】

【0071】
4-[5-(4-ニトロフェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド(Ie)
化合物Ieを実施例3に記載の操作を用いて19%の収率で得た。1HNMR: (400MHz, DMSO-d6) ppm 6.61 (s, 1H), 7.08 (brs, 2H), 7.40 (m, 2H), 7.66 (d, 2H, J=8.8 Hz), 8.05 (d, 2H, J=8.8 Hz), 8.32 (d, 2H, J=8.8 Hz), 9.16 (s, 1H), 13.06 (s, 1H). LC/MS: m/z 358 (M-1)-, 360 (M+1)+
【0072】
実施例6
【化14】

【0073】
4-[5-(3-メトキシ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド(If)
化合物Ifを、実施例3に記載の操作を用いて37.7%の収率で得た。1HNMR: (400MHz, DMSO-d6) ppm 3.82 (s, 3H), 6.36 (s, 1H), 6.92 (d, 1H, J=8.1 Hz), 7.05 (brs, 2H), 7.32〜7.43 (m, 5H), 7.63 (d, 2H, J=8.8 Hz), 9.05 (s, 1H), 12.67 (s, 1H). LC/MS: m/z 343 (M-1)-, 345 (M+1)+
【0074】
実施例7
【化15】

【0075】
4-[5-(3-フルオロ-4-ヒドロキシ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド(Ig)
【化16】

【0076】
化合物Id(0.334mmol、121mg)を乾燥CH2Cl2(9mL)中で-78℃にて攪拌した。三臭化ホウ素(1.67mL、1.0MのCH2Cl2溶液、1.67mmol)を徐々に加え、そして反応液を12時間攪拌して室温に加温した。反応液をMeOHを用いてクエンチし、真空で濃縮した。残留物を1N NaOH水溶液に溶解し、そして濾過して不溶解の沈降物を除去した。濾液を0.1N HCl水溶液を用いて中和し、そしてAcOEtを用いて抽出した。有機層をブラインを用いて洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、そして真空で濃縮して58mg(50%)の化合物Igを白色の固体として得た。1HNMR: (400MHz, DMSO-d6) ppm 6.25 (s, 1H), 6.98〜7.05 (m, 3H), 7.37〜7.42 (m, 3H), 7.56 (dd, 1H, J=2.0, 12.3 Hz), 7.62 (d, 2H, J=8.8 Hz), 9.03 (s, 1H), 10.14 (s, 1H), 12.33 (s, 1H). LC/MS: m/z 347 (M-1)-, 349 (M+1)+
【0077】
実施例8
【化17】

【0078】
4-[5-(4-アミノ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド(Ih)
【化18】

【0079】
化合物Ie(0.57mmol、205mg)および硫化ナトリウム九水和物(2.85mmol、684.5mg)のEtOH(20ml)およびTHF(10ml)中の混合物を還流で5時間加熱し、次いで真空で濃縮した。残留液をAcOEtを用いて抽出し、ブラインを用いて洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、そしてBondElut SCXにより処理して173mg(92%)の化合物Ihを得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 5.34 (s, 2H), 6.05 (s, 1H), 6.59 (d, 2H, J=8.6 Hz), 7.03 (s, 2H), 7.38 (d, 2H, J=8.6 Hz), 7.43 (d, 2H, J=8.8 Hz), 7.61 (d, 2H, J=8.8 Hz), 8.96 (s, 1H), 12.23 (s, 1H). LC/MS: m/z 328 (M-1) -, 330 (M+1)+
【0080】
実施例9
【化19】

【0081】
4-[5-(3-ヒドロキシ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド(Ii)
化合物Iiを、実施例7に記載の操作と類似した操作を用いて、化合物Ifから42%の収率で得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 6.24 (s, 1H), 6.76 (dd, 1H, J=1.8, 8.1 Hz), 7.05 (brs, 2H), 7.10〜7.26 (m, 3H), 7.42 (d, 2H, J=8.6 Hz), 7.63 (d, 2H, J=8.8 Hz), 9.04 (s, 1H). LC/MS: m/z 329 (M-1) -, 331 (M+1)+
【0082】
実施例10
【化20】

【0083】
4-[5-(3-アミノ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド (Ij)
化合物Ijを、実施例8に記載の操作と類似した操作を用いて、実施例3に記載の操作と類似した操作を用いて調製した4-[5-(3-ニトロフェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドから85%の収率で得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 5.19 (s, 2H), 6.12 (s, 1H), 6.55 (d, 1H, J=7.6 Hz), 6.86 (m, 2H), 7.05 (s, 2H), 7.08 (t, 1H, J=7.6 Hz), 7.44 (d, 2H, J=8.8 Hz), 7.63 (d, 2H, J=8.8 Hz), 9.02 (s, 1H), 12.48 (s, 1H). LC/MS: m/z 328 (M-1) -, 330 (M+1)+
【0084】
実施例11
【化21】

【0085】
4-[5-(3-メタンスルホニルアミノ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド(Ik)
【化22】

【0086】
メチルスルホニルクロリド(9.2uL、1.05当量)を、化合物Ij(0.1mmol、33mg)のピリジン中の溶液(1mL)に0℃にて加えた。反応液を室温に加温してさらに4時間攪拌した後、それを真空で濃縮した。小量のAcOEt、MeOHおよびCH2Cl2を残留液に加え、得られる液を音波処理して沈降物を得た。その固体を濾過により回収し、真空で乾燥して21mg(0.052mmol、51.5%)の化合物Ikを得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 3.06 (s, 3H), 6.23 (s, 1H), 7.06 (s, 2H), 7.18 (d, 1H, J=7.1 Hz), 7.40〜7.50 (m, 5H), 7.64 (d, 2H, J=8.8 Hz), 9.07 (s, 1H), 9.88 (s, 1H), 12.72 (s, 1H). LC/MS: m/z 406 (M-1) -, 408 (M+1)+
【0087】
実施例12〜13の化合物を、実施例11に記載のと類似した方法により製造した。
【0088】
実施例12
【化23】

【0089】
4-(5-{3-[3-(2-フルオロ-5-トリフルオロメチル-フェニル)-ウレイド]-フェニル}-2H-ピラゾール-3-イルアミノ)-ベンゼンスルホンアミド(Il)
化合物Ilを、化合物Ijおよび1-フルオロ-2-イソシアナト-4-トリフルオロメチル-ベンゼンから24.3%の収率で得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 6.27 (s, 1H), 7.06 (s, 2H), 7.39〜7.54 (m, 7H), 7.64 (d, 2H, J=8.8 Hz), 7.79 (s, 1H), 8.64 (d, 1H, J=7.3 Hz), 9.00 (s, 1H), 9.07 (s, 1H), 9.29 (s, 1H), 12.69 (s, 1H). LC/MS: m/z 533 (M-1) -, 535 (M+1)+
【0090】
実施例13
【化24】

【0091】
4-[5-(3-ベンゼンスルホニルアミノ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド(Im)
化合物Imを、化合物Ijおよびベンゼンスルホニルクロリドから44.7%の収率で得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 6.15 (s, 1H), 7.03 (d, 1H, J=7.8 Hz), 7.04 (brs, 2H), 7.30 (t, 1H, J=7.8 Hz), 7.39〜7.43 (m, 4H), 7.54〜7.65 (m, 5H), 7.80 (d, 2H, J=8.6 Hz), 9.06 (s, 1H), 10.45 (s, 1H). LC/MS: m/z 468 (M-1) -, 470 (M+1)+
【0092】
実施例14
【化25】

【0093】
4-[5-(3-モルホリン-4-イル-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミド (In)
【化26】

【0094】
化合物Ia(0.13mmol、51mg)、t-BuONa(1.69mmol、162mg)、Pd2(dba)3(0.026mmol、23.8mg)、および[(t-Bu)3PH]BF4(0.01mmol、30mg)を乾燥ジオキサン(1mL)にアルゴン雰囲気下で加え、次いでモルホリン(1.3mmol、113uL)を加え、そして反応液を80℃にて24時間攪拌した。室温に冷却した後、反応液をAcOEtを用いて抽出し、そしてBondElut SCXカラムを用いて処理した。溶媒を蒸発させて残留物を得て、その生成物をBondElut NH2(9%MeOH、AcOEt中)により精製して、化合物In(17mg、42.5%)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 3.18 (m, 4H), 3.76 (m, 4H), 6.35 (s, 1H), 6.93 (dd, 1H, J=1.8, 8.4 Hz), 7.05 (brs, 2H), 7.17 (d, 1H, J=7.6 Hz), 7.27〜7.31 (m, 2H), 7.41 (d, 2H, J=7.3 Hz), 7.63 (d, 2H, J=8.8 Hz), 9.03 (s, 1H), 12.61 (s, 1H). LC/MS: m/z 398 (M-1) -, 400 (M+1)+
【0095】
本発明の化合物は貴重な薬理学的特性を有する。このクラスの色々な化合物は、特にCDK2を阻害するのに有効である。代表的データを次の表1に示す。基質リン酸化アッセイは次のとおり実施した:
サイクリン依存性プロテインキナーゼ2アッセイは、ビオチン-アミノヘキシル-ARRPMSPKKKA-NH2(配列番号1)をホスホリル基アクセプターとして利用した。CDK2はバキュロウイルス発現系を利用して発現させ、そして20-80%の全タンパク質を含有し検出しうる競合反応のないように部分的に精製した。典型的なアッセイは、酵素(0.2〜10nM)、インヒビター有りおよびインヒビター無し、ペプチド基質(1〜10nM)、[g-32P]ATP(1〜20nM)、ならびに10〜20mM Mg2+を、一般的に10〜120分の範囲内でインキュベートすることにより実施した。反応は0.2〜2容積の20%酢酸またはpH 7に緩衝化した50-100 mM EDTAのいずれか(基質消費<20%)を用いて停止した。酵素アッセイに用いたバッファーは、0.1mg/mL BSAおよび5% DMSOを含有する100mM HEPES pH 7.5であった。インヒビターは100%DMSOに希釈した後、アッセイに加えた。ペプチドリン酸化の検出は、ホスホセルロース濾紙上のペプチドの回収(反応は酢酸を用いて停止した)、ストレプトアビジン(Pierce)を用いてコートした96ウエルプレートのウエル中のペプチドの回収(反応はEDTAを用いて停止した)、またはアビジンをコートしたシンチラント含浸ビーズの添加(Amersham社のシンチレーション近接アッセイ、反応はEDTAを用いて停止した)のいずれかの後に、シンチレーションカウントを測定することにより実施した。これらの技法のいずれかにより検出したカウントから適当なバックグラウンド(さらなる40mM EDTAによるまたはペプチド基質を欠くアッセイ)を差引いた値が反応初期速度に比例すると仮定し、そしてIC50を式CPM=Vmax*(1-([I]/(K+[I])))+nsbに対する最小自乗フィットにより決定するか、または-pIC50sを式CPM=nsb+(Vmax-nsb)/(1+(x/10x-pIC50))に対するフィットにより決定した(式中、nsbはバックグラウンドカウントである)。フィルターは75mMリン酸を用いて4回洗浄した。放射能は液体シンチレーションカウントにより決定した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[R1は水素、ハロゲン、-OMe、-OH、-NH2、もしくは-NHSO2CH3であるか、または
R1は式:
【化2】

で表される基であり;そして
R2は水素、塩素、-OMe、-OH、-NO2、または-NH2である]
で表される化合物またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体。
【請求項2】
哺乳動物におけるCDK2タンパク質を阻害する方法であって:哺乳動物に治療上有効な量の請求項1に記載の式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体を投与することを含んでなる上記方法。
【請求項3】
治療上有効な量の請求項1に記載の式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体ならびに1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項4】
CDK2タンパク質の不均衡もしくは不適当な活性がもたらす不適当な細胞周期により引き起こされる疾患を治療または予防する方法であって;哺乳動物に治療上有効な量の請求項1に記載の式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体ならびに1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を投与することを含んでなる上記方法。
【請求項5】
過増殖性疾患を治療または予防する方法であって;哺乳動物に治療上有効な量の請求項1に記載の式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体ならびに1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を投与することを含んでなる上記方法
【請求項6】
過増殖性疾患が癌または乾癬である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ハロゲンがブロモまたはフルオロである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項8】
4-[5-(3-ブロモ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項9】
4-[5-(4-フルオロ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項10】
4-[5-(4-ブロモ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項11】
4-[5-(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項12】
4-[5-(4-ニトロフェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項13】
4-[5-(3-メトキシ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項14】
4-[5-(3-フルオロ-4-ヒドロキシ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項15】
4-[5-(4-アミノ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項16】
4-[5-(3-ヒドロキシ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項17】
4-[5-(3-アミノ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項18】
4-[5-(3-メタンスルホニルアミノ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項19】
4-(5-{3-[3-(2-フルオロ-5-トリフルオロメチル-フェニル)-ウレイド]-フェニル}-2H-ピラゾール-3-イルアミノ)-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項20】
4-[5-(3-ベンゼンスルホニルアミノ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項21】
4-[5-(3-モルホリン-4-イル-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イルアミノ]-ベンゼンスルホンアミドである、請求項1に記載の式Iの化合物。

【公表番号】特表2006−519234(P2006−519234A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503871(P2006−503871)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/005615
【国際公開番号】WO2004/076414
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】