説明

新規化合物

本発明は、新規なフェニルアラニン誘導体、それらの製造方法、それらを含有する組成物、および細胞接着の阻害により調節することができる疾患の治療におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規化合物、それらの製造方法、それらを含有する組成物および細胞接着の阻害により調節することができる疾患の治療または予防におけるそれらの使用に関する。さらに詳しくは、本発明はα4インテグリン介在細胞接着を阻害し、炎症性疾患の治療または予防に有用な、新規フェニルアラニン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
白血球と内皮細胞または細胞外マトリックスプロティンとの多重接着相互反応は、免疫および炎症の調節における重要な因子である。炎症部位の血管からの白血球遊走における最初の事象は、白血球のローリングであり、それに続いてインテグリン親和性が変化した後、堅固な接着が起こる(非特許文献1〜7参照)。化学走化性因子に応答して、白血球は隣接する2つの内皮細胞を通過し、一部は細胞外マトリックス蛋白であるフィブロネクチン(FN)(非特許文献8参照)とコラーゲン(CN)(非特許文献9および非特許文献10参照)で構成される組織に移行する。これらの接着反応に関与する重要な認識分子はインテグリン遺伝子スーパーファミリーに属する(非特許文献3、非特許文献11、非特許文献5、非特許文献6参照)。
【0003】
インテグリンは、アルファ(α)およびベータ(β)サブユニットと称される非共有結合で集合したサブユニットから構成されるヘテロ二量体である。今日までに、8個のインテグリンβサブユニットが同定されており、これらは16個の異なるαサブユニットと結合して少なくとも23個の異なるインテグリンを形成することができる。
【0004】
VLA―4(Very Late Antigen-4)としても知られているα4β1インテグリンは、リンパ球、単球、好酸球および好塩基球等の白血球の表面に構成的に発現している(非特許文献12および非特許文献13)。VLA−4は敗血症患者の好中球に存在している、と報告されている(非特許文献14参照)。VLA−4が活性化内皮細胞上の血管細胞接着分子−1(VCAM−1)に結合し、次いで白血球が管外遊出する(非特許文献15参照)。細胞が血管外の空間に到達すると、VLA−4はFN A鎖の選択的スプライシング領域であるコネクチィングセグメント1(CS−1)に結合する(非特許文献16参照)。また、VLA−4は動脈硬化症プラーク中でアップレギュレートされるタンパク質、オステオポンチンに結合することも知られている(非特許文献17参照)。
【0005】
LPAM−1(Lymphocyte-Peyer's patch Adhesion Molecule-1)としても知られているα4β7インテグリンは、3個の既知のリガンド(VCAM−1、CS−1、MAdCAM−1)と相互作用する。α4β7に対して特有の特異性を示すリガンドは粘膜接着細胞接着分子−1(Mucosal Addressin Cell Adhesion Molecule-1:MAdCAM−1)である(非特許文献18、非特許文献19および非特許文献20参照)。MAdCAM−1は、パイエル板高血管内皮細静脈、腸間膜リンパ節内および腸管粘膜固有層および乳腺静脈に高レベルで発現している(非特許文献21)。インテグリンα4β7およびMAdCAM−1はリンパ球の正常小腸への輸送の調節に重要であることが示された(非特許文献22)。
【0006】
また、α4インテグリン類であるα4β1およびα4β7の、経口的に生体利用可能な非ペプチド性低分子アンタゴニストは喘息、炎症性大腸炎、関節リウマチ、多発性硬化症および他の疾患のような病態の治療または予防に有用であり得る(特許文献1および特許文献2参照)。
【0007】
今回見出した新規化合物は、特許文献1の包括的な範囲に入るが、該出願に具体的には記載されていない。
【0008】
【特許文献1】国際公開WO99/36393号
【特許文献2】国際公開WO02/18320号
【非特許文献1】バッチャー(Butcher)、Cell, 67:1033-1036(1991)
【非特許文献2】ハーラン(Harlan,)、Blood, 3:513-525(1985)
【非特許文献3】ヘムラー(Hemler)、Annu.Rev.Immunol., 8:365-400(1990)
【非特許文献4】オズボーン(Osborn)、Cell, 62:3-6(1990)
【非特許文献5】シミズら(Shimizu)、Immunol. Rev., 114:109-143(1990)
【非特許文献6】スプリンガー(Springer)、Nature, 346:425-434(1990)
【非特許文献7】スプリンガー(Springer)、Cell, 76:301-314(1994)
【非特許文献8】ワイナーら(Wayner)、J. Cell Biol., 105:1873-1884(1987)
【非特許文献9】ボーンステタインら(Bornstein)、Ann. Rev. Biochem., 49:957-1003(1980)
【非特許文献10】ミラー(Miller)、細胞外マトリックス生化学(Extracellular Matrix Biochemistry)、“コラーゲンの化学およびその分布”、K.A.ピアズおよびA.H.レジ編、エルゼビア出版、アムステルダム、41-78(1983)
【非特許文献11】ハインズ(Hynes)、Cell, 48:549-554(1987)
【非特許文献12】ヘムラーら(Hemler)、J. Bio. Chem. 262:11478-11485 (1987)
【非特許文献13】ボクナーら(Bochner)、J. Exp. Med. 173:1553-1556 (1991)
【非特許文献14】イボットソンら(Ibbotson)、Nature Med. 7:465-470 (2001)
【非特許文献15】エリセスら(Elices)、Cell 60:577-584 (1990)
【非特許文献16】ワインら(Wayne)、J. Cell Biol., 109:1321-1330(1989)
【非特許文献17】ベイレスら(Bayless)、J. Cell Science 111:1165-1174 (1998)
【非特許文献18】アンドリューら(Andrew)、J. Immunol. 153:3847-3861 (1994)
【非特許文献19】ブリスキンら(Briskin)、Nature 363:461-464 (1993)
【非特許文献20】シヤンら(Shyjan)、J. Immunol. 156:2851-2857 (1996)
【非特許文献21】ベルグら(Berg)、Immunol. Rev. 105:5-18 (1989)
【非特許文献22】ホルツマンら(Holzmann)、Cell 56:37-46 (1989)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、1つの局面において、本発明は式(I):
【化1】


(I)
(式中、R1はブロモ、Rはハロゲン、C1-6アルキルまたはC1-6アルコキシを表す)
で示される化合物、またはその薬理学的に許容しうる誘導体を提供する。
【0010】
好ましくは、R2はハロゲンまたはC1-6アルコキシである。
【0011】
より好ましくは、R2はフルオロ、メトキシまたはエトキシである。
【0012】
さらなる局面において、本発明はE1〜E7(後述)またはその薬理学的に許容しうる誘導体、すなわち、
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-エトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸、
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-フルオロフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸、
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-メトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸、
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-メチルフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸)、
(S)-2-{[(2-ブロモ-5-クロロフェニル)メタノイル]アミノ}-3-[4'-シアノ-2',6'-ジメトキシ)ビフェニル-4-イル]プロピオン酸、
(S)-2-{[(2,5-ジブロモフェニル)メタノイル]アミノ}-3-[4'-シアノ-2',6'-ジメトキシ)ビフェニル-4-イル]プロピオン酸、および
(S)-2-{[(5-(iso-プロポキシ)-2-ブロモフェニル)メタノイル]アミノ}-3-[4'-シアノ-2',6'-ジメトキシ)ビフェニル-4-イル]プロピオン酸、またはその薬理学的に許容しうる誘導体を提供する。
【0013】
本明細書中、特記しない限り以下に記載する用語は下記の意味を有する。
「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される基を意味する。
【0014】
「C1-6アルキル」は炭素数1〜6個の直鎖または分枝鎖状のアルキル基、またはそれらを含む基の一部を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチルおよびヘキシルが挙げられる。
【0015】
「C1-6アルコキシ」は酸素原子が上記のC1-6アルキル基に結合している基またはそれらを含む基の一部を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシまたはヘキソキシが挙げられる。
【0016】
本発明の化合物は、2,5-2置換ベンゾイル基を有すると共に、ビフェニル核の4'-位にシアノ基が導入されていることを特徴とする。
【0017】
式(I)の化合物またはその薬理学的に許容しうる誘導体は、αインテグリン介在細胞接着に強力な阻害活性を有する。さらに、特定の実施例化合物は、経口投与後の優れたバイオアベイラビリティおよび/または良好な全身暴露性を示すことが分った。
【0018】
化合物E1、E2およびE3(以下に記載)は上記特徴の好都合な組合せを示す。
【0019】
式(I)の化合物またはその薬理学的に許容しうる誘導体は1つより多くの不斉炭素原子を有することもあるが、その場合ジアステレオマーとして存在し得ることが理解される。本発明は、そのような異性体型の全て、および混合物を含む。
【0020】
ジアステレオマーの分離は、分別晶出、クロマトグラフィーまたはHPLC等により、通常の方法で達成し得る。また、単独の立体異性形の本発明化合物は、必要に応じて、光学的に純粋な対応する中間体から製造するか、または適当なキラル支持体を用い、対応するラセミ体を分割する(例えば、HPLCにより)か、あるいは対応するラセミ体と適当な光学的に活性な酸または塩基との反応によって形成されるジアステレオマー性の塩を分別晶出することによって、製造できる。あるいは、エナンチオマーの混合物は、適当なキラル化合物と化学反応させて新規な共有結合種を形成することによって分離することができる。例えば、ラセミカルボン酸とキラルアミンまたはキラルアルコールとのカップリングによりジアステレオマー混合物(それぞれ、アミドまたはエステル)を得、これをカラムクロマトグラフィー、HPLCまたは分別晶出等の通常の技術により分離することができる。次いで、新規な共有結合を加水分解等の適当な化学反応で切断して1つのジアステレオマー形を1つのエナンチオマー形の所望の化合物に変換することができる。
【0021】
本明細書中、「薬理学的に許容しうる誘導体」とは、本発明に係る化合物の薬理学的に許容しうる塩またはプロドラッグ等(例えばエステル)を意味し、これらは患者に投与されたとき、本発明に係る化合物またはその活性代謝物もしくは残基を(直接または間接的に)与えることができる。そのような誘導体は当業者であれば過度の実験を行なうことなく得ることができる。例えば、バーガー、医薬品化学および薬物発見(Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery)第5版、第1巻「理論と実践(Principles and Practice)」参照。好ましい薬理学的に許容しうる誘導体は塩およびエステルである。
【0022】
有機化学分野の当業者であれば、多数の有機化合物が反応系の溶媒と複合体を形成するか、または析出もしくは晶出し得ることを知っている。これらの複合体は「溶媒和物」として広く知られている。例えば、水との複合体は「水和物」として知られている。本発明に係る化合物の溶媒和物も本発明の範囲内である。
【0023】
本明細書中、「プロドラッグ」とは、体内で、例えば血中での加水分解によって薬理作用を有する活性形に変換される化合物を意味する。薬理学的に許容しうるプロドラッグの例は文献[T. ヒグチおよびV. ステラ、新規デリバリーシステムとしてのプロドラッグ(Prodrugs as Novel Delivery Systems)、“薬物設計における生体可逆的担体(Bioreversible Carriers in Drug Design)”、エドワード B. ロッシュ編、米国薬学会およびペルガモンプレス(American Pharmaceutical Association and Pergamon Press), A.C.S. Symposium Series、第14巻、(1987);およびD. フレイシャー、S. ラモンおよび H.バーバラ、“経口ドラッグデリバリーの改善:プロドラッグの使用による可溶性の限界の克服(Improved oral drug delivery: solubility limitations overcome by the use of prodrugs), Advanced Drug Delivery Reviews (1996) 19(2):115-130)]に記載されている。
【0024】
プロドラッグは、患者に投与した際にインビボで式(I)の化合物または薬理学的に許容しうる誘導体を放出する、該化合物または誘導体に共有結合したキャリアである。通常、プロドラッグは、常套手段またはインビボで修飾部分が切断されて親化合物が生じるよう、官能基を修飾することにより製造される。カルボン酸(−COOH)の場合、メチルエステル、エチルエステル、二重エステルなどのエステルも利用できる。エステルは、ヒトにおいてそれ自体が活性であるか、および/またはインビボ条件下で加水分解されるものであり、適当な薬理学的に許容しうるインビボ加水分解可能エステル基としては、ヒトの体内で簡単に分解されて親化合物の酸またはその塩を遊離するものが挙げられる。
【0025】
本発明に係る化合物は薬理学的に許容しうる塩の形であってよく、かつ/または薬理学的に許容しうる塩として投与してもよい。適当な塩は文献(ベルゲら、J. Pharm. Sci., 66:1-19(1977))に概説されている。
【0026】
通常、薬理学的に許容しうる塩は、必要に応じて所望の酸または塩基を用いることにより簡単に製造することができる。塩は溶液から析出させて濾取するか、溶媒を留去することにより回収することができる。
【0027】
式(I)の化合物の場合、適当な薬理学的に許容しうる塩は薬理学的に許容しうる塩基から形成される。そのような塩基の塩として、アンモニウム塩、ナトリウムおよびカリウムの塩等のアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属の塩ならびに第1、第2および第3アミン(例えば、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロへキシルアミン、N-メチル-D-グルカミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)の塩を含む有機塩基との塩が例示される。
【0028】
別の側面として、本発明は式(I)の化合物の製造方法であって、式(II):
【化2】


(II)
(式中、RおよびRは式(I)における定義と同意義であり、Rはカルボン酸エステルを形成しうる基を表す)
で示されるカルボン酸エステル誘導体を加水分解し、適宜、次いで薬理学的に許容しうる誘導体を形成することからなる方法を提供する。
【0029】
Rは、メチルまたはt−ブチル等のC1-6アルキルであることが好ましく、メチルであることがより好ましい。加水分解は、酸性またはアルカリ性の溶媒を用いて行う。アルカリ性溶媒中での加水分解の例として、適当な溶媒中での式(II)の化合物のアルカリ金属水酸化物による処理、例えば、テトラヒドロフラン水溶液中での水酸化リチウムによる処理が挙げられる。酸性媒体中での加水分解の例として、適当な共溶媒中、高められた温度での式(II)の化合物の無機酸による処理、例えば、ジオキサン中60℃での5N塩酸による一晩の処理が挙げられる。当業者はそのような方法に精通している。
【0030】
式(II)の化合物は、式(III):
【化3】

(III)
(式中、Rは式(II)における定義と同意義である)
で示される化合物またはその酸付加塩を式(IV):
【化4】

(IV)
(式中、RおよびRは式(I)における定義と同意義であり、Xは水酸基または脱離基である)
で示される化合物と反応させることにより製造することができる。
【0031】
式(III)の化合物の酸付加塩は、塩酸塩であることが好ましい。Xが脱離基である場合、脱離基Xはハロゲン、特にクロロであることが好ましい。通常、式(III)の化合物と式(IV)の化合物の反応は、テトラヒドロフランまたはジクロロメタンのような不活性有機溶媒中または有機溶媒/水性溶媒の混合系で、有機塩基(例えば、トリエチルアミン)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸カリウム)または炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素ナトリウム)のような適切な塩基の存在下、室温または高められた温度で行う。Xが水酸基である場合、式(III)の化合物と式(IV)の化合物との反応は、標準的なカップリング方法(例えば、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリエチルアミンを乾燥ジメチルホルムアミド中、室温で一晩攪拌する)を用いて行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
式(III)の化合物は、式(V):
【化5】

(V)
(式中、Zは脱離基であり、Rは保護基である)
で示される化合物を式(VI):
【化6】

(VI)
で示される化合物とカップリングさせ、次いで保護基Rを除去することにより製造することができる。
【0033】
脱離基Zの例としては、ハロゲン、アルカンスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニル基)、ハロアルカンスルホニルオキシ基(例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基)またはアリールスルホニルオキシ基(例えば、p-トルエンスルホニルオキシ基)が挙げられる。保護基Rの例としては、以下に記載のもの(特にt-ブチルオキシカルボニル(Boc))が挙げられる。
【0034】
また、式(III)の化合物は式(V)の化合物を式(VII):
【化7】


(VII)
(式中、Rはヒドロキシメチル基である)
で示される化合物とカップリングさせ、次いで保護基Rを除去し、Rをシアノ基に変換することにより製造することができる。式(V)の化合物と式(VII)の化合物との反応は、式(V)の化合物と式(VI)の化合物との反応に類似の方法により行うことができる。得られた生成物の保護基は、上記の方法により除去することができる。当業者が精通している方法及び本明細書記載の方法を用いてRをシアノ基に変換することができる。
【0035】
式(V)の化合物と、式(VI)の化合物または式(VII)の化合物との反応は、例えば当業者が精通している鈴木カップリング条件下で行うことができる。例えば、パラジウム触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))を用いて適切な溶媒(例えば、1-メチル-2-ピロリドン)中高められた温度下、適当な塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下で反応を行うことができる。得られた生成物の保護基は、当業者が精通している方法により除去することができる。保護基がt-ブチルオキシカルボニルである場合、脱保護は適当な溶媒(例えば、エタノールまたはイソプロパノールのようなアルコール)中での酸処理(例えば、塩酸を用いる処理)により行うことができる。
【0036】
式(VI)の中間体化合物は、市販の4-ブロモ-3,5-ジメトキシ安息香酸から本明細書中に記載の方法を用いて製造することができる。式(II)、式(III)および式(VI)の中間体化合物は新規であり、本発明のさらに別の側面である。
【0037】
本発明は式(II)で表される化合物を提供する。本発明は特に、R2がC1-6アルコキシまたはフルオロである、式(II)の化合物を提供する。
【0038】
本発明は式(III)の化合物またはその酸付加塩を提供する。
【0039】
本発明はさらに、式(VI)の化合物を提供する。
【0040】
中間体化合物(IV)および(V)は、市販されているか、または本明細書中に記載の方法を用いて、当業者に公知の方法により、またはそれらに類似する方法により製造することができる。
【0041】
当業者であれば、式(I)の化合物またはその薬理学的に許容しうる誘導体の製造に際して、望ましくない副反応を防ぐために、分子中の1つ以上の反応に敏感な基を保護する必要があり、および/または望ましいことを理解するであろう。本発明で用いる適当な保護基は当業者に周知であり、それを常法に従い使用することができる。例えば、T.W.グリーンおよびP.G.M.ウッツ、“有機合成における保護基(Protective groups in organic synthesis)”、John Wiley&Sons(1991)およびP.J.コヒエンスキー、“保護基(Protecting groups)” Georg Thieme Verlag(1994)参照。適当なアミノ保護基としては、例えば、アシル型保護基(ホルミル、トリフルオロアセチル、アセチル等)、芳香族ウレタン型保護基(ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および置換Cbz等)、脂肪族ウレタン保護基(9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、イソプロピルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル等)およびアルキル型保護基(ベンジル、トリチル、クロロトリチル等)が挙げられる。適当な酸素保護基としては、例えば、トリメチルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリル等のアルキルシリル基、テトラヒドロピラニルまたはtert−ブチル等のアルキルエーテル、あるいは酢酸エステル等のエステルを挙げることができる。
【0042】
本発明化合物のインビトロでの生物学的活性は、以下のアッセイにより試験することができる。
【0043】
ジャルカットJ6シンチレーション近接アッセイ(SPA)
ジャルカットJ6シンチレーション近接アッセイ(SPA)により、ジャルカットJ6細胞膜上に発現させたVLA-4と試験化合物との相互作用を検討した。50mM HEPES、100mM NaClおよび1mM MnCl2 (4M NaOHでpHを7.5に調節)を含むアッセイ緩衝液中、J6細胞(100万細胞/ウェル)で小麦胚芽凝集素コート被覆SPAビーズ(アマシャム、1mg/ウェル)をコーティングした。トリチウム化H標準化合物A(アッセイにおける最終濃度1〜3nM)および試験化合物を適当な溶媒に溶解し、アッセイ緩衝液で希釈する(アッセイ最高濃度は2.5μm。10点での用量応答曲線)。化合物を2回アッセイし、4パラメーターカーブフィッティング(four parameter curve fit)に当てはめる。各化合物の平衡解離定数は、Cheng & Prusoffの方法(Biochem Pharmacol., 22(23):3096-3108(1973))に従って算出した。結果を平均pKiで示した。
【0044】
標準化合物Aは(2S)-3-[4-({[4-(アミノカルボニル)-1-ピペリジニル]カルボニル}オキシ)フェニル]-2-[((2S)-4-メチル-2-{[2-(2-メチルフェノキシ)アセチル]アミノ}ペンタノイル)アミノ]プロパン酸カリウム塩であり、これは特許出願WO 00/37444 (Glaxo Group Ltd.ら)に記載されている。トリチウム化H誘導体は、常法により製造することができる。
【0045】
後述の実施例で得た化合物を上記の方法で試験したところ、全ての場合、pKiは8.6以上であった。
【0046】
式(I)で示される化合物およびその薬理学的に許容しうる誘導体はαインテグリン介在細胞接着を阻害する。αインテグリン介在細胞接着は以下に示されるような病態に関与すると考えられている。例えば、リウマチ関節炎(RA);喘息;鼻炎等のアレルギー性疾患;成人呼吸窮迫症候群;AIDS痴呆;アルツハイマー病;心・血管疾患;血栓症または有害な血小板凝集;血栓溶解後の再閉塞;再潅流傷害;乾癬、湿疹、接触皮膚炎およびアトピー性皮膚炎等の皮膚炎症性疾患;糖尿病(例えば、インスリン依存型糖尿病、自己免疫型糖尿病);多発性硬化症;全身性ループスエリテマトーデス(SLE);潰瘍性大腸炎、クローン病(局所性腸炎)および嚢炎(例えば、直腸結腸切除および回腸肛門吻合後に生じる腸疾患)等の炎症性腸疾患;小児脂肪便症、非熱帯性スプルー、血清反応陰性関節症に関連した腸疾患、リンパ球性または膠原性大腸炎、および好酸球性胃腸炎等の胃腸管への白血球浸潤が関与する疾患;皮膚、尿路、気道および関節滑膜等の他の上皮皮膜組織への白血球浸潤に関連した疾患;膵炎;乳腺炎(乳腺);肝炎;胆嚢炎;胆管炎または胆管周囲炎(胆管および肝臓の周囲組織);気管支炎;副鼻腔炎;過敏性肺炎等の間質性線維症を生じる肺の炎症性疾患;膠原病(SLEおよびRA);サルコイドーシス;骨粗鬆症;骨関節症;アテローム性動脈硬化症;新生物の転移または癌性増殖を含む新生物疾患;外傷(外傷治癒強化);網膜剥離、アレルギー性結膜炎および自己免疫性ブドウ膜炎等のある種の眼病;シェーグレン症候群;臓器移植後の拒絶反応(慢性および急性);宿主対移植片または移植片対宿主疾患;内膜肥厚;動脈硬化症(移植後の移植片動脈硬化症を含む);経皮的経管冠動脈血管形成術(PTCA)および経皮的経管動脈再疎通術等の手術後の再梗塞または再狭窄;腎炎;腫瘍血管新生;悪性腫瘍;多発性骨髄腫および骨髄腫誘発骨吸収;敗血症;脳卒中、外傷性脳損傷および脊髄損傷等の中枢神経傷害;およびメニエール病。
【0047】
本発明の化合物は喘息、鼻炎等のアレルギー性病態、潰瘍性大腸炎およびクローン病等の炎症性腸疾患、リウマチ関節炎、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症および臓器移植後の拒絶反応の治療または予防のために好適に使用できる。特に、本発明の化合物は炎症性腸疾患または多発性硬化症の治療または予防のために使用できる。
【0048】
本発明はまたαインテグリン介在細胞接着の阻害が有益な病態を治療または予防する方法であって、安全かつ有効な量の式(I)の化合物またはその薬理学的に許容しうる誘導体を、必要としている患者に投与することを含む方法を提供する。特に、本発明は上記の病態を治療または予防する方法を提供する。
【0049】
本発明はまた、治療、特に上記疾患の治療または予防に用いるための、式(I)の化合物またはその薬理学的に許容しうる誘導体を提供する。
【0050】
別の局面では、本発明はαインテグリン介在細胞接着の阻害が有益な病態、特に上記の障害の治療または予防に用いる医薬の製造における、式(I)の化合物または薬理学的に許容しうる誘導体の使用を提供する。
【0051】
本発明化合物は単独投与が可能であるが、標準的な製剤実務に従い、医薬組成物として製剤化することが好ましい。従って、本発明は、薬理学的に有効な量の式(I)で示される化合物またはその薬理学的に許容しうる誘導体を、製薬学的に許容しうる担体もしくは希釈剤と共に含有する医薬組成物を提供する。
【0052】
さらに、本発明は、式(I)の化合物またはその薬理学的に許容しうる誘導体を、他の治療上活性な薬剤と共に含有する医薬組成物を提供する。
【0053】
さらに、本発明は、少なくとも1種の本発明の化合物またはその薬理学的に許容しうる誘導体を製薬学的に許容される担体または希釈剤と共に混合することを含む、医薬組成物の製造方法を提供する。
【0054】
本発明の医薬組成物はヒトまたは動物に使用するための、ヒトおよび動物用の医薬製剤の形であり、通常、1種以上の製薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含有する。治療用途に適した担体または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えば文献(レミントンの薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences), Mack Publishing Co、 A. R. ジェナーロ編、(1985)等)に記載されている。製薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図する投与経路および通常の製薬業務に照らして選択されるべきである。担体または希釈剤は、患者に対して有害ではないという意味で許容できるものでなければならない。製薬学的に許容される担体または希釈剤としては、例えば、結合剤(シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビット、トラガント、ポリビニルピロリドン等)、賦形剤(ラクトース、砂糖、コーンスターチ、リン酸カリウム、ソルビット、グリシン等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ等)、崩壊剤(バレイショデンプン等)および湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)等を挙げることができる。
【0055】
本発明の医薬組成物の投与(送達)経路として、以下に例示する1つ以上を挙げることができるが、これらに限定されない。経口(錠剤、カプセルまたは経口摂取用溶液等)、局所、経粘膜(鼻内スプレーまたは吸入用エアロゾル等)、経鼻、非経口(注射等による)、胃腸管経由、脊髄内、腹腔内、筋肉内、静脈内、子宮内、眼内、皮内、頭蓋内、気管内、膣内、脳室内、大脳内、皮下、眼内(硝子体内または眼房内を含む)、経皮、経直腸、口腔内粘膜、硬膜外、舌下。
【0056】
例えば、化合物を即時、遅延、改変、持続、パルスまたは制御型で放出させるのに適した錠剤、カプセル剤、オブ剤(ovules)、エリキシル剤、液剤または懸濁剤の形で経口投与することができる。これらの製剤は香料または着色料を含有していてもよい。錠剤は微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウムおよびグリシン等の賦形剤、デンプン(トウモロコシ、バレイショまたはタピオカデンプンが好ましい)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよび特定のケイ酸複合体等の崩壊剤、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアカシア等の造粒結合剤を含有し得る。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、グリセリルベヘナートおよびタルク等の滑沢剤を含有し得る。また、同様のタイプの固体成分はゼラチンカプセル中の充填剤としても利用し得る。この点で好ましい賦形剤として、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁剤および/またはエリキシル剤については、薬物を種々の甘味料または香料、着色物質または顔料、乳化剤および/または懸濁剤、および水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリン等の希釈剤のいずれか、またはそれらの混合物と組み合わせて調製することができる。
【0057】
製剤化に際しては、本発明化合物を、湿式粉砕等の公知の粉砕方法を用いて、錠剤成形および他の製剤型に適した粒子サイズに粉砕することできる。本発明化合物の、微細に分割した(ナノ粒子)調製物は、当該技術分野で公知の方法により製造することができる(例えば、WO02/00196参照)。
【0058】
本発明の化合物を非経口投与する場合、例えば、静脈内、動脈内、腹膜内、鞘内、脳室内、尿路内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内または皮下等の投与経路を介して、および/または注入法により投与することができる。非経口投与の場合、薬物は滅菌水溶液の形態で使用するのが最もよく、該水溶液は他の物質、例えば、血液と等張の溶液を作製するために十分な塩またはグルコースを含有していてもよい。水溶液は、要すれば適宜緩衝化する(pH3〜9が好ましい)。滅菌条件下での非経口製剤の製造は、当業者に周知の通常の製薬技術により容易に行うことができる。
【0059】
上記の通り、本発明の化合物は鼻内または吸入により投与することができ、それには、加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーから、ジクロロジフルオロメタン、トルクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン((HFA 134AT""))もしくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA)(例えば、Ineos Fluor)等のヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素もしくは他の適当な気体等の適当なプロペラントを用いる乾燥散剤吸入またはエゾルスプレーの形での送達が簡便である。加圧エアロゾルの場合、測定量を送達するためのバルブを設けることにより、用量単位を決定することができる。加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーは、例えば、エタノールとプロペラントとの混合物を溶媒とする薬物の溶液または懸濁液を含有しており、これはさらに、三オレイン酸ソルビタン等の滑沢剤を含有していてもよい。カプセル剤および吸入器で使用するカートリッジ(例えば、ゼラチン性)は、薬物と適当な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有させて製剤化しうる。
【0060】
あるいは、本発明の化合物は、坐剤または膣坐剤の投与剤形でもよく、ゲル、ヒドロゲル、ローション、液剤、クリーム、軟膏または散布剤の局所適用のための剤形であってもよい。また、本発明の化合物は、皮膚パッチ等の経皮投与剤形とすることもできる。さらには、経肺または経直腸経路で投与する剤形であってよい。また、眼内投与用の剤形とすることができる。眼内適用のためには、化合物を、等張性にpHを調節した滅菌生理食塩水中の微粉末懸濁液として製剤化するか、または好ましくは、場合により塩化ベンジルアルコニウム等の保存剤と共に、等張性にpHを調製した滅菌生理食塩水中の溶液として製剤化することができる。あるいは、ペトロラタム等の軟膏中に処方することもできる。
【0061】
皮膚への局所適用のための本発明の薬剤は、例えば、以下の成分の1つまたは2つ以上の混合物中に懸濁または溶解した化合物を含有する適当な軟膏として製剤化される。ミネラルオイル、液体ペトロラタム、白色ペトロラタム、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水。あるいは、以下の成分の1つまたは2つ以上の混合物等に懸濁または溶解した適当なローションまたはクリームとして製剤化することができる。ミネラルオイル、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、液体パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水。
【0062】
本発明の医薬組成物は直接注入により投与することができる。
本発明の医薬組成物は全身投与(経口的、バッカル、舌下等)が好ましく、経口投与がより好ましい。
従って、本発明の薬剤は経口投与に適した剤形であることが好ましい。
【0063】
通常、個々の患者に対して最適な用量は医師が決定する。特定の個体に対する具体的な用量レベルおよび投薬頻度は、使用する薬物の活性、代謝安定性および作用時間、個体の年齢、体重、全体的な健康状態、性別および食事、投与様式および投与時間、排出速度、併用薬物、特定の病態の重篤度、さらには個体が受けている治療を含むさまざまな因子に依存して変動しうる。
ヒトに対して経口および非経口投与する場合、薬物の日用量は単回用量でも分割用量でもよい。
【0064】
本発明化合物のヒト(体重約70kg)への投与量は、単位用量あたりの有効成分が、0.1mg〜2g、好ましくは0.1mg〜1gである(遊離酸の重量として)となる量である。単位用量を、例えば、1日あたり1〜4回で投与してもよい。用量は投与経路に依存する。患者の年齢および体重、ならびに処置される病態の重篤度に応じて用量を日常的に変更する必要があるだろう。また、用量は投与経路に依存する。実際の用量および投与経路は、最終的には担当の医師または獣医師の判断による。
【0065】
また、本発明に係る化合物を他の治療薬剤と組み合わせて使用してもよい。従って、本発明は、本発明に係る化合物またはその薬理学的に許容しうる誘導体と、他の治療薬との組合せ製剤を提供する。
【0066】
式(I)の化合物またはその薬理学的に許容しうる誘導体を、同一の疾患病態に対して活性である第2の薬物と組み合わせて用いる場合、各薬物の用量は、それらを単独で用いる場合の用量と異なっていてもよい。当業者ならば適当な用量を容易に評価することができる。治療または予防に際する使用に必要とされる本発明に係る薬物の量は処置される病態の性質および患者の年齢および症状に応じて変動し、最終的には担当の医師または獣医師の判断に委ねられる。式(I)の化合物またはこれらの薬理学的に許容しうる誘導体と組み合わせることができる他の活性薬物としては以下に例示するものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。(a)他のVLA-4アンタゴニスト、(b)H1ヒスタミンアンタゴニスト、(c)NSAID類、(d)グリタゾン等の抗糖尿病薬剤、(e)抗コリン作動薬、(f)2-(4-エトキシ-フェニル)-3-(4-メタンスルホニル-フェニル)ピラゾロ[1,5-b]ピリダジン(WO99/ 12930に開示)等のCOX-2阻害剤、(g)PDE-IV阻害剤、(h)コルチコステロイド等のステロイド類、(i)βアゴニスト、(j)CCR-2、CCR-3、CCR-5およびCCR-8等のケモカイン受容体のアンタゴニスト、(k)インターフェロン等の適当な多発性硬化症用治療剤または予防剤、(l)LFA-1アンタゴニスト、(m)TNF阻害剤、(n)スルファサラジン(Sulphasalazine)および5-アミノサリチレート(amino salicylate)、および(o)免疫抑制剤。
【0067】
上記の組合せを使用するための医薬製剤は常法通り提供することができ、従って、本発明は、上記の組合せを製薬学的に許容される担体または賦形剤と共に含有する医薬製剤をも包含する。そのような組合せにおける個々の成分は、任意の好都合な投与経路から、別々の医薬製剤または併用医薬製剤として、連続的にまたは同時に投与することができる。連続投与の場合、本発明に係る薬物または第2の治療用薬物のどちらかを先に投与する。同時投与の場合、併用する薬物は同一の医薬製剤中に含有させて、あるいは異なる医薬製剤中に含有させて投与することができる。
【0068】
同一の医薬製剤中で併用する場合、2種の薬物は安定であり、互いにおよび製剤中の他の製剤成分と両立(共存)しうるものでなければならない。別々に製剤化する場合、各薬物は任意の好都合な方法で製剤化しうるが、各薬物について公知の様式で製剤化すると簡便である。
【0069】
本明細書中に記載の全ての刊行物(特許および特許出願に限定されない)は、各刊行物ごとに本明細書中に引用して組み込む旨、具体的かつ個別に示唆したと同様、あたかもその全文が記載されているように、本明細書中に引用して組み込まれる。
【実施例】
【0070】
以下に製造例および実施例を挙げて本発明化合物の製造方法等を説明する。
【0071】
一般的な方法
実験の部に特に記載しない限り、用語MDAPはMass Directed Auto Preparationを意味する。これは、質量分析計を分取HPLCシステムと組み合わせて使用することによって、所望の質量で検出および回収を行う、分取HPLCによる化合物精製の自動化システムである。以下では、適切な逆相カラムを用いてWaters FractionLynx MDAPシステム(水/アセトニトリル勾配、いずれも0.1%ギ酸を含有)を採用する。
【0072】
製造例1:(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステル(P1)
ジ-tert-ブチルジカーボネート(200 g, 0.92 mol)をL-チロシンメチルエステル塩酸塩(200 g, 0.86 mol, Aldrich)と炭酸水素ナトリウム(100 g, 1.19 mol)とのジクロロメタン(1 L)および水(1 L)中の混合物に少しずつ加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。有機層を分離し、水相をジクロロメタン(500 mL)で再度抽出した。合した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮して粗表題化合物を無色のガラス状物質として得た。これを精製せずに次の工程で用いた。LC/MS(ES-ve): [M-H]- ; m/z 294 (C15H21NO5 ; [M-H]- ; m/z 294)。
【0073】
製造例2:(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸メチルエステル (P2)
ピリジン(58 mL, 0.72 mol)を、アルゴン下、粗(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチルエステル(P1, 70.5 g, 0.24 mol)のジクロロメタン(1 L)溶液に加えた。溶液を氷冷した後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(52 mL, 0.31 mol)を攪拌しながら滴下した。添加完了後、混合物を氷中で2時間攪拌し、2M塩酸(500 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(Biotage 75L、シリカ800g、溶出溶媒;酢酸エチル:ヘキサン(15:85))で精製して表題化合物を無色油状物として得た。この生成物はゆっくりと固化し、白色固体を得た; LC/MS (ES+ve):[M-BOC+H]+;m/z 328 (C16H20NO7S;[M+H]+;m/z 428)。
【0074】
製造例3:4-ヒドロキシメチル-2,6-ジメトキシフェニルボロン酸(P3)
(3,5-ジメトキシフェニル)メタノール(53 g, 0.31 mol, Aldrich)の無水テトラヒドロフラン(1 L)溶液をアルゴン下、-50℃〜-70℃まで冷却し、n-ブチルリチウム(450 mL, ヘキサン中1.6M, 0.72 mol)で30分間処理した。添加後、反応混合物を45分かけて0℃まで昇温させた後、室温で2時間静置した。次いで、反応系を-60℃まで再度冷却し、トリメチルボレート(135 mL, 1.15 mol)を少しずつ滴下して処理した。添加後、混合物を室温まで昇温させ、さらに18時間攪拌した。クエン酸水溶液(水300mL中クエン酸75g)を少しずつ加えることにより反応系を0℃でクエンチした。塩化ナトリウムを加えて水層を飽和させ、生成物を酢酸エチルで抽出した(2×1L)。合した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。酢酸エチル(100 mL)を残渣に加え、得られた無色の析出物をろ過して回収し、減圧下40℃で乾燥して表題化合物を無色固体として得た。これを精製せずに以下の反応に用いた。
【0075】
製造例4:(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4'-ヒドロキシメチル-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル(P4)
トリエチルアミン(28 mL, 0.20 mol)を、(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸メチルエステル(P2, 42.73 g, 0.10 mol)および4-ヒドロキシメチル-2,6-ジメトキシフェニルボロン酸(P3, 29.7 g, 0.14 mol)の乾燥ジメチルホルムアミド(250 mL)溶液に加えた。アルゴンで脱気した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5.8 g, 5 mmol)を加え、混合物をアルゴン下、90℃で1時間加熱した [注意:わずかに発熱した。]。室温まで冷却した後、混合物を酢酸エチル(1 L)および水(700 mL)で希釈し、分離した。有機層を水(2×300 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(Biotage 75L、シリカ800g、溶出溶媒;酢酸エチル:ヘキサン(50:50))で精製して表題化合物を無色固体として得た;LC/MS (ES+ve): [M-BOC+H]+;m/z 346 (C24H31NO7;[M+H]+;m/z 446)。
【0076】
製造例5:(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4'-ホルミル-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル (P5)
二酸化マンガン(230 g, 2.64 mol)を(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4'-ヒドロキシメチル-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル(P4, 28.98 g, 65.1 mmol)のジクロロメタン(1 L)溶液に少しずつ加えた。得られた懸濁液を室温で1時間攪拌した後、セライトでろ過し、セライトパッドをジクロロメタン(1 L)で洗浄した。ろ液を減圧濃縮して生成物を無色泡状体として得た。これを精製せずに使用した。LC/MS (ES+ve):[M-BOC+H]+;m/z 344 (C24H29NO7:[M+H]+:m/z 444)。
【0077】
製造例6:(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-[4'-(ヒドロキシイミノメチル)-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル]プロピオン酸メチルエステル (P6)
ヒドロキシルアミン塩酸塩(7.4 g, 106 mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(18 mL, 106 mmol)を(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4'-ホルミル-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル(P5, 23.6 g, 53 mmol)のテトラヒドロフラン(300 mL)溶液に加えた。反応混合物を2時間加熱還流した後、室温まで冷却した。溶液を減圧濃縮した後、酢酸エチル(500 mL)に再度溶解し、10%クエン酸水溶液、水およびブライン(各々500mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮して無色泡状物を得た。これを精製せずに次の工程に用いた。LC/MS (ES+ve):[M-BOC+H]+;m/z 359 (C24H30N2O7;[M+H]+;m/z 459)。
【0078】
製造例7:(S)-2-アミノ-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル塩酸塩 (P7)
塩化チオニル(30 mL, 411 mmol)を(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-[4'-(ヒドロキシイミノメチル)-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル]プロピオン酸メチルエステル(P6, 46.5 g, 101 mmol)のジクロロメタン(500 mL)溶液にアルゴン下、0℃で滴下した。反応系を室温まで昇温させ、3日間攪拌した。析出した固体をろ過により回収し、ジクロロメタン(200 mL)で洗浄し、減圧下45℃で乾燥した。表題化合物を白色固体として単離した。LC/MS (ES+ve):[M+H]+;m/z 341 (C19H20N2O4;[M+H]+ ;m/z 341)。
【0079】
製造例8:2-ブロモ-5-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル (P8)
アルゴン下、15分かけて三臭化ホウ素(ジクロロメタン中1M, 280 mL, 280 mmol)を加えながら、ドライアイス/アセトンで冷却した無水ジクロロメタン(600 mL)中2-ブロモ-5-メトキシ安息香酸(30.0 g, 130 mmol, Aldrich)を撹拌した。次いで、混合物を室温で2.5時間攪拌し、析出物を得た。次いで、30分かけてメタノール(300 mL)を注意深く滴下し(注意:最初に強く発熱して沸騰した)、最終的に均一な暗色の溶液を得た。これに濃硫酸を加えた(15 mL)。溶液を還流しながら1時間攪拌し、冷却し、減圧濃縮する。残渣をジクロロメタン(500 mL)に溶解し、ブライン(500 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮して表題化合物を固体として得た。LC/MS (ES+ve): [M+H]+;m/z 231, 233 (C8H7BrO3;[M+H]+;m/z 231, 233)。
【0080】
製造例9:2-ブロモ-5-エトキシ安息香酸メチルエステル (P9)
アルゴン下、15分かけて2-ブロモ-5-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル(P8, 20.41 g, 88 mmol)を加えながら、氷中で冷却した無水ジメチルホルムアミド(150 mL)中水素化ナトリウム(ミネラルオイル中60%, 4.24 g, 106 mmol)を攪拌した。混合物を周囲温度で45分間攪拌し、氷中で再度冷却し、ヨードエタン(8.5 mL, 106 mmol)で処理した。この混合物を室温で3時間攪拌し、減圧濃縮し、酢酸エチル(400 mL)で希釈し、水(3×400 mL)およびブライン(400 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮して表題化合物を得た。これには少量の対応するエチルエステルおよび残留ミネラルオイルが混入していた。この物質を精製せずに次の工程に用いた;LC/MS (ES+ve):[M+H]+;m/z 259, 261 (C10H11BrO3;[M+H]+;m/z 259, 261)。
【0081】
製造例10:2-ブロモ-5-エトキシ安息香酸 (P10)
2-ブロモ-5-エトキシ安息香酸メチルエステル(P9, 20.53 g, 79 mmol)をテトラヒドロフラン(600 mL)中で攪拌し、水(200 mL)中の水酸化リチウム(18.2 g, 791 mmol)で処理した。混合物を4日間攪拌し、減圧濃縮し、水(500 mL)で希釈し、5N 塩酸で酸性にし、酢酸エチル(2×300 mL)で抽出した。合した抽出物をブライン(250 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮してオフホワイトの固体を得た。ヘキサン中でトリチュレートし、ろ過し、乾燥して表題化合物を白色粉末として得た。LC/MS (ES+ve):[M+H]+;m/z 245, 247 (C9H9BrO3;[M+H]+;m/z 245, 247)。
【0082】
製造例11:(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-エトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル (P11)
アルゴン下、(S)-2-アミノ-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル塩酸塩(P7, 37.1 g, 98.5 mmol)をジクロロメタン(500 mL)および水(400 mL)に溶解し、0℃まで冷却した。炭酸水素ナトリウム(20.1 g, 239.3 mmol)を反応混合物に加え、次いで塩化2-ブロモ-5-エトキシベンゾイル(27.2 g, 103.7 mmol)( ジクロロメタン中塩化オキサリル(4当量)およびジメチルホルムアミド1滴を用い、2-ブロモ-5-エトキシ安息香酸(P10)から標準的な手段により製造)を滴下した。反応系を0℃で1時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウム(200 mL)の飽和水溶液で希釈した。有機層を分離した後、水層をジクロロメタン(2×400 mL)で再度抽出した。合した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(Biotage 75L、シリカ800g、溶出溶媒;酢酸エチル:ジクロロメタン(3:97))で精製して表題化合物を無色固体として得た:MS (ES+ve): [M+H]+;m/z 567, 569 (C28H27BrN2O6; [M+H]+;m/z 567, 569)。
【0083】
製造例12:(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-メトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸エチルエステル (P12)
アルゴン下、2-ブロモ-5-メトキシ安息香酸(0.355 g, 1.54 mmol, Aldrich)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(1.168 g, 2 当量)およびトリエチルアミン(1.069 mL, 5 当量)をジメチルホルムアミド(25 mL)に、室温で攪拌しながら加えた。0.5時間後、P7に対応するエチルエステル(P13)、(S)-2-アミノ-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸エチルエステル塩酸塩(0.6 g, 1 当量)を加え、一晩攪拌し続けた。次いで、溶媒を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチルと水との間で分配した。有機層を水(×2)および飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した後、濃縮乾固した。粗生成物をシリカ−カラムクロマトグラフィーにより精製(溶出溶媒:ジクロロメタン中0-10%メタノール勾配)した後、分取HPLCにより表題化合物を得た。
MS (AP+ve): [M+H]+;m/z 567, 569 (C28H27BrN2O6;[M+H]+;m/z 567, 569)。
【0084】
製造例13:(S)-2-アミノ-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸エチルエステル塩酸塩 (P7に対応するエチルエステル) (P13)
アルゴン下、(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-[4'-(ヒドロキシイミノメチル)-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル]プロピオン酸エチルエステル(12.5 g, 26.5 mmol)[製造例1を、L-チロシンメチルエステルの代わりにL-チロシンエチルエステル塩酸塩(Bachemから)で開始する以外は、P1-P6の手順と同様にして製造した]のジクロロメタン(250 mL)溶液に塩化チオニル(7.71 mL, 105.7 mmol)を15分かけて0℃で滴下した。反応系をバッチ温度でさらに15分間攪拌した後、室温まで昇温させ、一晩攪拌し続けた。析出した表題化合物をろ過により回収し、ジクロロメタン(2×15 mL)で洗浄し、減圧下で乾燥した。LC/MS (ES+ve): [M+H]+;m/z 355 (C20H22N2O4; [M+H]+;m/z 355)。
【0085】
実施例1:(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-エトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸 (E1)
【化8】


(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-エトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル(P11, 51.5 g, 90.8 mmol)のテトラヒドロフラン(950 mL)溶液を0℃まで冷却し、0.5M 水酸化リチウム水溶液(700 mL)で処理した。反応混合物を0℃で1時間攪拌した後、5M塩酸で酸性にした。テトラヒドロフランを減圧下留去し残渣を酢酸エチルで希釈した。有機層を分離した後、水相を酢酸エチルで再抽出した。合した有機層を水で洗浄し(×2)、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去して表題化合物を無色固体として得た;
1H NMR δ (DMSO-d6): 1.29 (3H, t, J 7.0Hz), 2.96 (1H, dd, J 13.9, 10.9Hz), 3.22 (1H, dd, J 14.1, 4.2Hz), 3.71 (6H, s), 3.99 (2H, q, J 7.0Hz), 4.65 (1H, ddd, J 10.9, 8.4, 4.3Hz), 6.69 (1H, d, J 3.0Hz), 6.91 (1H, dd, J 8.8, 3.1Hz), 7.14 (2H, d, J 8.1Hz), 7.24 (2H, s), 7.32 (2H, d, J 8.1Hz,), 7.47 (1H, d, J 8.8Hz), 8.77 (1H, br. d, J 8.4Hz), 12.83 (1H, br. s); MS (ES+ve) [M+H]+;m/z 553, 555 (C27H25BrN2O6;[M+H]+;m/z 553, 555)。
【0086】
実施例1−別の合成法
また、表題化合物は以下の方法を用いて製造した。
4-ブロモ-3,5-ジメトキシベンズアミド
【0087】
塩化チオニル(60 mL, 0.82 mol)を、4-ブロモ-3,5-ジメトキシ安息香酸(Jintan Baocheng、100 g、0.38 mol)のトルエン(700 mL)およびジメチルホルムアミド(1 mL)中の攪拌懸濁液に加えた。反応系を窒素下で還流しながら攪拌した。2時間後、HPLCで確認すると酸は完全に消費され、メチルエステルが生成していた(酸塩化物のメタノールクエンチから)。揮発物を留去し、得られた固体を0.88アンモニア(350 mL)に加えた。混合物を室温で45分間攪拌した。生成物をろ過し、水で洗浄し(2×200 mL)、減圧下で一晩乾燥して表題化合物をオフホワイトの固体として得た。
1H NMRδ(DMSO-d6): 3.89 (6H, s), 7.23 (2H, s), 7.52 (1H, s), 8.2 (1H, s)
MS (ES+ve) [M+H]+;m/z 260, 262 (C9H10BrNO3;[M+H]+;m/z 260, 262)。
【0088】
4-ブロモ-3,5-ジメトキシベンゾニトリル
トリフルオロ酢酸無水物(129 mL, 0.91 mol)を、ピリジン(127 mL, 1.57 mol)およびテトラヒドロフラン(950 mL)中の4-ブロモ-3,5-ジメトキシベンズアミド(104 g, 0.38 mol)の懸濁液に加えた。氷浴を用いて温度を20〜25℃に維持した。窒素下、橙/茶色の溶液を20〜25℃で1時間攪拌した。HPLCで確認すると、4-ブロモ-3,5-ジメトキシベンズアミドは完全に消費され、生成物が生じていた。反応混合物を最初の体積の約50%まで濃縮した。水(900 mL)を加え、生成物をろ取し、水洗し(2×250 mL)、減圧下40℃で乾燥して表題化合物を綿毛状のオフホワイトの固体として得た。
1H NMR δ (CDCl3): 3.96 (6H, s), 6.8 (2H, s)。
【0089】
4-シアノ-2,6-ジメトキシフェニルボロン酸
窒素下、塩化イソプロピルマグネシウム(テトラヒドロフラン中2M溶液, 206 mL, 0.412 mol)をテトラヒドロフラン(400 mL)中の4-ブロモ-3,5-ジメトキシベンゾニトリル(50 g, 0.207 mol)のスラリーに5〜10℃で加えた。得られた溶液を室温まで昇温させた。HPLC分析は、出発物質が完全に消費されていることを示していた。反応混合物を5〜10℃まで冷却し、添加の間、温度を10℃未満に維持しながら、テトラヒドロフラン(100 mL)中のトリメチルボレート(103 mL, 0.92 mol)溶液に加えた。反応系を室温まで昇温させた。HPLCは、反応の完了と生成物の生成を示していた。反応混合物を5〜10℃まで冷却し、添加の間、温度を10℃未満に維持しながら1M塩酸(500 mL)を加えた。混合物を室温で30分間攪拌した後、揮発物を留去した。生成物をろ過し、水洗し、減圧下40℃で乾燥して表題化合物をオフホワイトの固体として得た。
1H NMR δ (DMSO-d6): 3.78 (6H, s), 7.0 (2H, s), 9.25 (2H, s)
【0090】
(S)-2-アミノ-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル塩酸塩
ジ-tert-ブチル ジカーボネート(17.9 g, 81.8 mmol)のトルエン(60 mL)溶液を90℃で(S)-メチル チロシン(Flamma, 15.2 g, 77.9 mmol)のトルエン(120 mL)溶液に滴下した。反応混合物を90℃で少なくとも30分間攪拌した。HPLCにより反応の完了を確認した後、反応混合物を0℃まで冷却し、温度を0℃に維持しながらピリジン(19 mL, 0.23 mol)を加えた。温度を0℃に維持しながら、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(16.7 mL)を滴下した。橙色のスラリーを0℃で少なくとも2時間攪拌した。HPLCにより反応の完了を確認した後、温度を0℃に維持しながら2M塩酸(133 mL)を加えた。層を分離し、橙色の上層を10%w/w炭酸ナトリウム水溶液(138 mL)および 36%w/wブライン(138 mL)で洗浄した。有機層を約60 mLに濃縮し、固体の塩化ナトリウム(30 g)を加え、次いでn-ヘプタン(300 mL)を加えた。混合物をろ過し、ろ液を1-メチル-2-ピロリドン(2×150 mL)で抽出した。残留揮発性有機溶媒を減圧下留去した。4-シアノ-2,6-ジメトキシフェニルボロン酸(17.5 g, 84.5 mmol)を加え、溶液を脱気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3g, 2.7 mmol)およびトリエチルアミン(19.8 mL)を加え、反応混合物を70℃まで加熱した。反応系を70℃で少なくとも2時間攪拌した。HPLCにより完了を確認した後、反応混合物を別の容器に移し、トルエン(300 mL)で希釈した。2M塩酸(300 mL)を加え、混合物をろ過した。有機層を分離し、水(300 mL)で洗浄した。有機層をろ過し、トルエン(90 mL)で洗浄した。トルエン溶液をSilicycleシリカに担持した、N機能化チオウレア(11.7 g)と共に少なくとも15時間攪拌した。シリカをろ過し、トルエン(30 mL)で洗浄した。溶液を共沸乾燥した後、50℃でゆっくりと塩化水素イソプロパノール溶液(濃度5M、155 mL)に加えた。反応完了を確認するまで(HPLCによる)、反応混合物を50℃で30分間攪拌した。混合物を20℃まで冷却し、生成物を減圧下でろ取し、トルエン(60 mL)で洗浄した。固体を減圧下、40℃で乾燥して表題化合物をオフホワイトの固体として得た。
【0091】
2-ブロモ-5-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル
三臭化ホウ素(18 mL, 190.5 mmol)のジクロロメタン(18 mL)溶液を、-15〜-10℃で2-ブロモ-5-メトキシ安息香酸(Wychem、 20 g, 86.6 mmol)のジクロロメタン(200 mL)中の攪拌懸濁液に加えた。黄色懸濁液を0℃まで昇温させた。HPLC分析は酸が完全に消費されていることを示していた。メタノール(100 mL)を加えて反応系をクエンチした。暗色の清澄な溶液を12時間、還流下(約45℃)で攪拌し、ほぼ乾固するまで濃縮し、水(400 mL)と酢酸エチル(500 mL)で分配し、分離した。有機溶液をブライン(250 mL)で洗浄し、濃縮して表題化合物をクリーム色の固体として得た。
【0092】
2-ブロモ-5-エトキシ安息香酸メチルエステル
窒素下、2-ブロモ-5-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル(18.9 g, 81.8 mmol)、炭酸カリウム(34.4 g, 249.5 mmol)およびヨウ化エチル(13 mL, 163.7 mmol)のメチルイソブチルケトン(190 mL)中の混合物を70〜75℃で15時間攪拌した。HPLC分析は反応が終了し生成物が生じていることを示していた。水(100 mL)を加えた。水相を除去し、メチルイソブチルケトン溶液をブライン(100 mL)で洗浄した後、減圧濃縮して表題化合物を橙色の油状物として得た。
【0093】
2-ブロモ-5-エトキシ安息香酸
2-ブロモ-5-エトキシ安息香酸メチルエステル(20.7 g, 79.9 mmol)および10M水酸化ナトリウム(40 mL, 0.4 mol)のテトラヒドロフラン(100 mL)中混合物を室温で18時間攪拌した。HPLC分析は、出発物質が完全に消費されていることを示していた。反応系を0〜5℃に冷却し、5M 塩酸を用いてpH1まで酸性にした。有機相を除去し、水相を第三ブチルメチルエーテル(40 mL)で抽出した。有機相を合し、ブライン(50 mL)で洗浄し、減圧濃縮して表題化合物をクリーム色の固体として得た。
【0094】
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-エトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル
(S)-2-アミノ-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル塩酸塩(5 g, 13.3 mmol)のテトラヒドロフラン(100 mL)中懸濁液にトリエチルアミン(5.5 mL, 39.8 mmol)を加えた。懸濁液を20℃で60分間攪拌した。2-ブロモ-5-エトキシベンゾイルクロリド1)(3.4 g, 13 mmol)のトルエン(10 mL)溶液を、温度を0〜5℃に維持しながら10分間かけて滴下した。混合物を0〜5℃で少なくとも60分攪拌した。HPLCにより反応の完了を確認した後、反応混合物を2M塩酸(25 mL)、10%w/w炭酸ナトリウム水溶液(25 mL)および36%w/wブライン(25 mL)で連続的に洗浄した。溶媒を留去してクリーム色の固体を得た。これをテトラヒドロフラン(75 mL)に溶解し、Silicycleシリカに担持した、N機能化チオウレア(0.75 g)と共に一晩攪拌した。シリカをろ過し、テトラヒドロフラン溶液を約30 mLまで濃縮した。水(75 mL)を45分かけて加えた。スラリーを室温で1時間攪拌した。生成物をろ過し、水(30 mL)で洗浄し、減圧下40℃で乾燥して表題化合物をオフホワイトの固体として得た。
1)2-ブロモ-5-エトキシ安息香酸(3.2 g, 13 mmol)から、塩化チオニル(3.3当量)のトルエン(16mL)溶液を用いて標準的な方法により製造。
【0095】
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-エトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸 テトラヒドロフラン溶媒和物
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-エトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸メチルエステル(5 g, 8.8 mmol)のテトラヒドロフラン(25 mL)溶液を0〜5℃に冷却した。2M水酸化ナトリウム(4.5 mL, 9 mmol)を、温度を5℃未満に維持しながら滴下した。反応混合物を0〜5℃で少なくとも18時間攪拌した。HPLCにより反応の完了を確認した後、混合物を水(50 mL)で希釈し、次いで2M塩酸(約10mL)を用いてpHを1に調節した。得られた懸濁液を0〜5℃で少なくとも30分間放置した後、固体を減圧ろ過し、水(20 mL)で洗浄した。次いで、生成物を40℃で減圧乾燥して表題化合物をオフホワイトの固体として得た。
【0096】
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-エトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸 (E1)
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-エトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸 テトラヒドロフラン溶媒和物(5 g)のメタノール(50 mL)中の懸濁液を加熱還流し、攪拌して溶液にした。溶液を60℃まで冷却し、ろ過した。次いで、溶液を1.5時間で0℃まで冷却した。得られた懸濁液を0℃で2時間放置した。固体を減圧ろ過し、冷メタノール(5 mL)で洗浄した。生成物を40℃で減圧乾燥して表題化合物を白色結晶固体として得た。
【0097】
実施例2:(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-フルオロフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸 (E2)
P13および2-ブロモ-5-フルオロベンゾイルクロリド(Apollo)を用いて、製造例11および実施例1に記載の方法と同様の方法で表題化合物を製造した。[M+H]+;m/z 527, 529。
【0098】
実施例3:(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-メトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸 (E3)
【0099】
実施例3a
P7および2-ブロモ-5-メトキシベンゾイルクロリド(Avocado)を用いて、製造例11および実施例1に記載の方法と同様の方法で表題化合物を製造することができる。
【0100】
実施例3b
水酸化リチウム水溶液(0.5 M, 25 mL)を、(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-メトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸エチルエステル(P12, 0.539 g, 0.95 mmol)のテトラヒドロフラン(30 mL)溶液に室温で攪拌しながら加えた。攪拌を2時間続け、次いで反応系を過剰量の10%クエン酸でクエンチした。次いで、混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を新たなクエン酸水溶液で洗浄した後、水で洗浄した(2回)。有機層を濃縮乾固し、得られた粗生成物をMDAPにより精製して表題化合物を白色固体として得た。[M+H]+;m/z 539, 541。
【0101】
実施例4:(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-メチルフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸 (E4)
P13および2-ブロモ-5-メチル安息香酸(Apin)を用いて、製造例12に記載の方法と同様の方法で得られたエチルエステルを実施例3bに記載の方法により加水分解し、表題化合物を製造した。[M+H]+;m/z 523, 525。
【0102】
実施例5:(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-クロロフェニル)メタノイル]アミノ}-3-[4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル]プロピオン酸 (E5)
対応するエチルエステルから、実施例3bに記載の方法と同様の方法で表題化合物を製造した。エチルエステルは、P13および2-ブロモ-5-クロロ安息香酸(Lancaster)から、製造例12に記載の方法により製造した。[M-H]-;m/z 541, 543, 545。
【0103】
実施例6:(S)-2-{[1-(2,5-ジブロモフェニル)メタノイル]アミノ}-3-[4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル]プロピオン酸 (E6)
対応するエチルエステルから、実施例3bに記載の方法と同様の方法で表題化合物を製造した。エチルエステルは、P13および2,5-ジブロモ安息香酸(Lancaster)から、製造例12に記載の方法により製造した。[M-H]-;m/z 585, 587, 589。
【0104】
実施例7:(S)-2-{[1-(5-(iso-プロポキシ)-2-ブロモフェニル)メタノイル]アミノ}-3-[4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル]プロピオン酸 (E7)
対応するエチルエステルから、実施例3bに記載の方法と同様の方法で表題化合物を製造した。エチルエステルは、P13の化合物および5-iso-プロポキシ-2-ブロモ安息香酸(製造例9と類似のアルキル化工程でiso-プロピルブロミドを用いることを除き、製造例8〜製造例10の手順と同様にして製造)から、製造例12に記載の方法により製造した。[M-H]-, m/z 565, 567。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


(I)
(式中、R1はブロモ、Rはハロゲン、C1-6アルキルまたはC1-6アルコキシを表す)
で示される化合物、またはその薬理学的に許容しうる誘導体。
【請求項2】
2がハロゲンまたはC1-6アルコキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
2がフルオロ、メトキシまたはエトキシである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-メチルフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸)、
(S)-2-{[(2-ブロモ-5-クロロフェニル)メタノイル]アミノ}-3-[4'-シアノ-2',6'-ジメトキシ)ビフェニル-4-イル]プロピオン酸、
(S)-2-{[(2,5-ジブロモフェニル)メタノイル]アミノ}-3-[4'-シアノ-2',6'-ジメトキシ)ビフェニル-4-イル]プロピオン酸、
(S)-2-{[(5-(iso-プロポキシ)-2-ブロモフェニル)メタノイル]アミノ}-3-[4'-シアノ-2',6'-ジメトキシ)ビフェニル-4-イル]プロピオン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、またはその薬理学的に許容しうる誘導体。
【請求項5】
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-エトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸、またはその薬理学的に許容しうる誘導体。
【請求項6】
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-フルオロフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸、またはその薬理学的に許容しうる誘導体。
【請求項7】
(S)-2-{[1-(2-ブロモ-5-メトキシフェニル)メタノイル]アミノ}-3-(4'-シアノ-2',6'-ジメトキシビフェニル-4-イル)プロピオン酸、またはその薬理学的に許容しうる誘導体。
【請求項8】
式(I)で示される化合物の製造方法であって、式(II):
【化2】

(II)
(式中、RおよびRは式(I)における定義と同意義であり、Rはカルボン酸エステルを形成しうる基を表す)
で示されるカルボン酸エステル誘導体を加水分解し、適宜、次いで薬理学的に許容しうる誘導体を形成することからなる方法。
【請求項9】
治療に用いるための、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
治療有効量の請求項1〜7のいずれかに記載の化合物を製薬学的に許容される担体または希釈剤とともに含有する医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の化合物を治療上活性な他の薬剤と共に含有する医薬組成物。
【請求項12】
α4インテグリン介在細胞接着の阻害が有益な病態の治療または予防のための医薬の製造における、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項13】
α4インテグリン介在細胞接着の阻害が有益な病態を治療または予防する方法であって、安全かつ有効な量の請求項1〜7のいずれかに記載の化合物を該治療または予防を必要とする患者に投与することからなる方法。
【請求項14】
病態が、リウマチ関節炎(RA);喘息;鼻炎等のアレルギー性疾患;成人呼吸窮迫症候群;AIDS痴呆;アルツハイマー病;心・血管疾患;血栓症または有害な血小板凝集;血栓溶解後の再閉塞;再潅流傷害;乾癬、湿疹、接触皮膚炎およびアトピー性皮膚炎等の皮膚炎症性疾患;糖尿病(例えば、インスリン依存型糖尿病、自己免疫型糖尿病);多発性硬化症;全身性ループスエリテマトーデス(SLE);潰瘍性大腸炎、クローン病(局所性腸炎)および嚢炎(例えば、直腸結腸切除および回腸肛門吻合後に生じる腸疾患)等の炎症性腸疾患;小児脂肪便症、非熱帯性スプルー、血清反応陰性関節症に関連した腸疾患、リンパ球性または膠原性大腸炎、および好酸球性胃腸炎等の胃腸管への白血球浸潤が関与する疾患;皮膚、尿路、気道および関節滑膜等の他の上皮皮膜組織への白血球浸潤に関連した疾患;膵炎;乳腺炎(乳腺);肝炎;胆嚢炎;胆管炎または胆管周囲炎(胆管および肝臓の周囲組織);気管支炎;副鼻腔炎;過敏性肺炎等の間質性線維症を生じる肺の炎症性疾患;膠原病(SLEおよびRA);サルコイドーシス;骨粗鬆症;骨関節症;アテローム性動脈硬化症;新生物の転移または癌性増殖を含む新生物疾患;外傷(外傷治癒強化);網膜剥離、アレルギー性結膜炎および自己免疫性ブドウ膜炎等のある種の眼病;シェーグレン症候群;臓器移植後の拒絶反応(慢性および急性);宿主対移植片または移植片対宿主疾患;内膜肥厚;動脈硬化症(移植後の移植片動脈硬化症を含む);経皮的経管冠動脈血管形成術(PTCA)および経皮的経管動脈再疎通術等の手術後の再梗塞または再狭窄;腎炎;腫瘍血管新生;悪性腫瘍;多発性骨髄腫および骨髄腫誘発骨吸収;敗血症;脳卒中、外傷性脳損傷および脊髄損傷等の中枢神経傷害;およびメニエール病から選ばれる病態である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該病態が炎症性腸疾患または多発性硬化症である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式(II):
【化3】

(II)
(式中、R1およびR2は式(I)の定義に従い、Rはカルボン酸エステルを形成しうる基を表す)
で示される化合物。
【請求項17】
2がC1-6アルコキシまたはフルオロである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
式(III):
【化4】

(III)
(式中、Rはカルボン酸エステルを形成しうる基を表す)
で示される化合物またはその酸付加塩。
【請求項19】
式(VI):
【化5】

(VI)
で示される化合物。

【公表番号】特表2007−513863(P2007−513863A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520437(P2006−520437)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019455
【国際公開番号】WO2005/061440
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000002956)田辺製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】