説明

新規可溶性CD83ポリペプチド、配合物および使用法

望ましくない免疫応答を治療するかまたは防止するための組成物および方法を提供する。組成物は、新規可溶性CD83(sCD83)ポリペプチドおよびこうしたポリペプチドをコードする核酸、改善された(sCD83)配合物、ならびにこうしたポリペプチドおよび配合物の、アレルギー、自己免疫疾患および移植片拒絶の治療または防止における使用に関する。配列番号7または配列番号7に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;配列番号7のアミノ酸残基12、20、85および92の1以上がシステイン以外のアミノ酸であり;そして場合によって、アミノ酸残基1、2、3、4および130の1以上が存在しない、sCD83ポリペプチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、新規可溶性CD83(sCD83)ポリペプチドおよびこうしたポリペプチドをコードする核酸、改善された(sCD83)配合物、ならびにこうしたタンパク質および配合物の、アレルギー、自己免疫疾患および移植片拒絶の治療または防止における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD83は、タンパク質の免疫グロブリン(「Ig」)スーパーファミリー由来の分子である(例えば、Zhouら(1999) J. Immunol. 149:735−742を参照されたい;また、米国特許第7,169,898号も参照されたい;概説に関しては、FujimotoおよびTedder((2006) J. Med. Dent. Sci. 53:86−91を参照されたい)。CD83は成熟樹状細胞の示差マーカーとして働く。CD83の正確な機能はまだ決定されていないが、CD83の可溶性型は、未成熟および成熟樹状細胞の両方に結合すると報告されてきている(Lechmannら(2001)(J. Exp. Med. 194:1813−1821を参照されたい)。著者らはまた、このタンパク質が、in vitroで成熟した樹状細胞によるCD80およびCD83の発現を減少させ、そして樹状細胞がin vitroでT細胞を刺激する能力を阻害するとも報告した(Lechmannら(2002) Trends in Immunology 23:273−275もまた参照されたい)。同様に、Kruseら(2000)(J. Exp. Med. 191:1581−1589)は、GC7(N(1)−グアニル−1,7−ジアミノヘプタン)が、CD83 mRNAの核−細胞質転位置に干渉し、CD83の表面発現を防止し、そしてこれらのDCによるTリンパ球の活性化を有意に阻害することを報告した。他の研究者らは、CD83の可溶性型がin vivoで存在することを報告している(例えば、Hockら(2002) Int. Immunol. 13:959−967を参照されたい)。HSV−1感染DCを用いた研究によって、ウイルス感染がCD83の分解およびCD83 mRNA輸送の阻害を導くことが立証され;HSV−1によるエスケープのこのありうる機構が、DC生物学に対するCD83の重要性をさらに支持する(例えば、Kruseら(2000) J. Virol. 74:7127−7136を参照されたい)。
【0003】
成熟CD83には3つの構造ドメイン:細胞外Ig様ドメイン;膜貫通ドメイン;および細胞質ドメインが含まれる。ヒトCD83細胞外ドメイン(hCD83ext、sCD83の1つの型)は、少なくとも2つのエクソンにコードされ(例えば、Zhouら(1999) J. Immunol. 149:735−742; GenBank ID #Z11697)、そして成熟樹状細胞(「mDC」)の細胞表面上で強く発現される単一のIg様(V型)ドメインを含む。
【0004】
米国特許第7,169,898号は、ヒトCD83(hCD83)cDNA(配列番号1)の核酸配列を開示する。全長hCD83の対応するアミノ酸配列を配列番号2に示す。配列番号2のアミノ酸残基1−19は、シグナル配列に対応し、成熟タンパク質(アミノ酸残基20−205)から切断される。hCD83細胞外ドメイン(hCD83ext)は、配列番号3にコードされる。対応するhCD83extアミノ酸配列は、配列番号4に示され、そしてまた配列番号2のアミノ酸残基20−144である。膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、それぞれ、配列番号2のアミノ酸残基145−166および配列番号2のアミノ酸残基167−205に対応する。野生型hCD83extは、3つのグリコシル化部位(すなわち、配列番号4のアミノ酸残基60、77および98)および5つのシステイン残基(すなわち、配列番号2のアミノ酸残基27、35、100、107、および129、これらは、配列番号4のアミノ酸残基8、16、81、88および110に対応する)を含有する。
【0005】
hCD83extは、DCが仲介するT細胞刺激を阻害し(Lechmannら J. Exp. Med. (2001) 194:1813−1821)、そして多発性硬化症のマウスモデル(実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE); Zinserら(2004) J. Exp. Med. 200:345−351)を治療する際に有効である。これらの研究は、タンパク質のアミノ末端にトロンビン切断部位の4アミノ酸部分(Gly−Ser−Pro−Gly;配列番号41)を、ならびに膜貫通ドメインの最初のアミノ酸(Ile)をさらに含むhCD83細胞外ドメインを用い、そしてこれを配列番号5に示す。
【0006】
PCT公報WO2004/046182は、配列番号5の五番目のシステイン残基が、システインからセリンに突然変異して、配列番号6を生じる可溶性CD83突然変異体(本明細書において、以後、hCD83ext−m5)を開示し、そして多発性硬化症などの自己免疫疾患、および移植の治療における、hCD83ext−m5および野生型hCD83extの使用を提唱する。Zinserら(Immunobiology(2006) 211:449−453)は、野生型hCD83extが、ホモ二量体を形成し、ここで、細胞外ドメインの最初の4つのシステイン(すなわち、配列番号2のアミノ酸残基27、35、100および107、これらは、配列番号5および6のアミノ酸残基12、20、85および92に対応する)が分子内ジスルフィド結合の形成に関与し、そして五番目のシステイン(すなわち、配列番号1のアミノ酸残基129または配列番号5および6のアミノ酸残基114)がホモ二量体の分子間架橋に関与することを開示する。Zinserらはさらに、2つのhCD83extアイソフォーム、すなわち野生型二量体およびhCD83ext−m5突然変異体単量体が、in vitroで試験した際、類似の阻害能を有し、そして2つのhCD83extアイソフォームの生物学的(in vivo)半減期が匹敵し、そして2〜3時間の間であったことを開示する。さらに、EAEモデルを用いて、Zinserらは、二量体野生型hCD83extアイソフォームと比較した際に、可溶性CD83の単量体突然変異体アイソフォーム(すなわち、hCD83ext−m5)がin vivoで類似の阻害活性を有することを開示する。
【0007】
sCD83の療法的適用が重要であることを考慮して、出願者らは、自己免疫疾患、アレルギーおよび移植片拒絶などの望ましくない免疫応答の治療または防止のための、改善されたsCD83ポリペプチドおよびその配合物に関する必要性を認識した。本発明は、この必要性に取り組み、そしてまたさらなる利点も提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,169,898号
【特許文献2】PCT公報WO2004/046182
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Zhouら(1999) J. Immunol. 149:735−742
【非特許文献2】FujimotoおよびTedder((2006) J. Med. Dent. Sci. 53:86−91)
【非特許文献3】Lechmannら(2001)(J. Exp. Med. 194:1813−1821
【非特許文献4】Lechmannら(2002) Trends in Immunology 23:273−275
【非特許文献5】Kruseら(2000)(J. Exp. Med. 191:1581−1589)
【非特許文献6】Hockら(2002) Int. Immunol. 13:959−967
【非特許文献7】Kruseら(2000) J. Virol. 74: 7127−7136
【非特許文献8】Zinserら(2004) J. Exp. Med. 200:345−351
【非特許文献9】Zinserら(Immunobiology(2006) 211:449−453)
【発明の概要】
【0010】
改善された安定性を有する新規可溶性CD83(sCD83)ポリペプチドを提供する。1つの側面において、配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離sCD83ポリペプチドであって;アミノ酸残基1、2、3、4および130の1以上が場合によって存在せず、そしてアミノ酸残基12、20、85、92および114が表1の任意の一列に特定されるアミノ酸である、前記ポリペプチドを提供する。好ましくは、アミノ酸残基85はシステイン以外のアミノ酸残基であり、そして最も好ましくは、アミノ酸残基85はセリンである。
【0011】
別の側面において、単離sCD83ポリペプチドは、配列番号7または配列番号7に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;配列番号7のアミノ酸残基12、20、85および92の1以上は存在しないか、またはシステイン以外のアミノ酸であり;そして場合によって、アミノ酸残基1、2、3、4および130の1以上は存在しない。
【0012】
好ましくは、単離sCD83ポリペプチドは、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29および配列番号31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;場合によってアミノ酸残基126が存在しない。
【0013】
さらに別の側面において、本発明のポリヌクレオチドをコードする核酸、ならびにこうしたポリヌクレオチドを含むベクターおよび細胞を提供する。ベクターおよび細胞は、本明細書に開示するsCD83組成物を産生するのに有用である。
【0014】
本明細書に提供するsCD83ポリペプチドは、自己免疫疾患、移植片拒絶およびアレルギーなどの、被験体における望ましくない免疫応答の治療または防止に有用である。したがって、新規sCD83ポリペプチドを含む薬学的組成物、ならびに自己免疫疾患、移植片拒絶およびアレルギーの治療のために新規sCD83ポリペプチド組成物を用いる方法を提供する。
【0015】
さらに別の側面において、哺乳動物移植レシピエントにおいて、移植転帰を改善する方法であって、前述のsCD83ポリペプチドおよび1以上の免疫抑制剤の療法的有効量を前記レシピエントに投与する工程を含み、免疫抑制剤が前記ポリペプチドと相乗的に働いて、移植転帰を改善する、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1は、オプション:−maxitiers2を用いて、MUSCLEバージョン3.6によって生成したタンパク質配列アライメントである(Edgar RC(2004) Nucleic Acids Res 32(5):1792−7を参照されたい)。NP 00424.1(配列番号2)は、ヒトCD83タンパク質である(配列番号2)。XP 518248.2は、チンパンジーCD83タンパク質である(配列番号35)。XP 852647.1は、イヌCD83タンパク質である(配列番号37)。NP 001040055.1は、ウシCD83である(配列番号37)。NP 033986.1は、マウスCD83である(配列番号38)。XP 341510.2は、ラットCD83である(配列番号39)。XP 41829.1は、赤色野鶏CD83である(配列番号40)。下線アミノ酸残基は任意のアミノ酸によって置換可能である。下線および太字のアミノ酸は、好ましくは保存的アミノ酸置換によって置換されてもよい。下線がないアミノ酸残基は、好ましくは置換されない。
【図1B】図1は、オプション:−maxitiers2を用いて、MUSCLEバージョン3.6によって生成したタンパク質配列アライメントである(Edgar RC(2004) Nucleic Acids Res 32(5):1792−7を参照されたい)。NP 00424.1(配列番号2)は、ヒトCD83タンパク質である(配列番号2)。XP 518248.2は、チンパンジーCD83タンパク質である(配列番号35)。XP 852647.1は、イヌCD83タンパク質である(配列番号37)。NP 001040055.1は、ウシCD83である(配列番号37)。NP 033986.1は、マウスCD83である(配列番号38)。XP 341510.2は、ラットCD83である(配列番号39)。XP 41829.1は、赤色野鶏CD83である(配列番号40)。下線アミノ酸残基は任意のアミノ酸によって置換可能である。下線および太字のアミノ酸は、好ましくは保存的アミノ酸置換によって置換されてもよい。下線がないアミノ酸残基は、好ましくは置換されない。
【図2】図2は、プラスミドpGEX2ThCD83extの模式図である。
【図3】図3は、80(レーン2)、40(レーン3)、20(レーン4)、10(レーン5〜8)または5(レーン9〜13)U/mLのトロンビンを用いたGST−hCD83extのカラム上トロンビン切断後に溶出された分画のSDS−PAGE解像を示す。レーン7および8は、10U/mLのトロンビン消化およびグルタチオン溶出後に得たGST分画を示す。レーン11〜13は、5U/mLのトロンビン消化およびグルタチオン溶出後に得たGST分画を示す。レーン1:分子量マーカー。トロンビン(Sigma)中に存在する混入タンパク質を破線の囲みで示す。
【図4A】図4Aは、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いたhCD83extの精製(polishing)工程に関する典型的な2ピーク・クロマトグラムが、2つの主要なピークを含有することを示す。
【図4B】図4Bは、各精製分画のSDS−PAGE分析を示す。レーン2〜5は第一のピークに相当し、そしてレーン6〜9は第二のピークに相当する。レーン1は、精製のため、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに装填されたGST後試料に相当する。hCD83extが第一のピーク中に位置し、一方、他の混入タンパク質は第二のピーク中に位置することに注目されたい。ゲルを硝酸銀で染色した。
【図5】図5は、還元SDS−PAGEおよびクーマシーブルー染色を用いた、多様なhCD83ext試料ロットの分析を示す。タンパク質試料を−20℃で保存し、そして20mM Tris、50mM NaCl、50%グリセロール中に配合し、レーン3の試料はグリセロールを含まなかった。ロットはいくつかの異なる日付で作製され、そしてしたがって、分析を実行する前に、異なる期間(すなわち、レーン2〜10に関して、それぞれ、4、3、3、2、10.5、9.5、6.5、6、6ヶ月)、保存されていた。矢印は、単量体の位置を示す。さらに、おそらく多量体型に対応する、より大きい分子量の種が見られうる。より小さい分子量の型は、分解産物、またはおそらく慣用的でない分子内ジスルフィド結合によって仲介される修飾単量体に対応する。
【図6】図6は、非還元SDS−PAGEおよびクーマシーブルー染色を用いた、多様なhCD83ext試料ロットの分析を示し、そして単量体および二量体の移動を強調する。タンパク質試料を−20℃で保存し、そして20mM Tris、50mM NaCl、50%グリセロール中に配合したが、グリセロールを含まないレーン3は例外であった。ロットはいくつかの異なる日付で作製され、したがって、分析を実行する際、異なる「保存時間(age)」(すなわち、レーン2〜10に関して、それぞれ、4、3、3、2、10.5、9.5、6.5、6、6ヶ月)を有した。レーン3、6、および7の矢印は、おそらく非慣用的な分子内ジスルフィド結合によって仲介される、いくつかの異常なhCD83ext種を強調する。
【図7】図7は、(A)還元SDS−PAGE、(B)非還元SDS−PAGE、および(C)ウェスタンブロッティングを用いた、hCD83ext試料の分析を示す。より高次の多量体種(三量体および四量体など)を可視にするため、SDSゲルを硝酸銀で染色した。ウェスタンブロッティングによって、これらの種はすべて、hCD83extと関連することが検証された。
【図8】図8は、hCD83m−2,5に関する精製工程からのピークを示すAECクロマトグラムである。
【図9】図9は、精製CD83m−2,5分画の還元SDS−PAGE分析を示す。
【図10】図10は、精製CD83m−2,5分画の非還元SDS−PAGE分析を示す。
【図11】図11は、円二色性(CD)を用いたCD83m−2,5の分光光度分析を示す。
【図12】図12は、CD83m−2,5の分光蛍光分析を示す。
【図13】図13は、円二色性を用いたCD83m−2の分光光度分析を示す。
【図14】図14は、hCD83m−3に関する精製工程由来のピークを示すAECクロマトグラムである。
【図15】図15は、SDS−PAGE(図15)、CD(図16および17)、および分光蛍光測定(図18)を用いた構造的性質決定に供した精製CD83m−3のSDS−PAGE分析を示し、結果は野生型hCD83extおよびCD83m−5に類似している。
【図16】図16は、pH7.5の20mM Tris、50mM NaCl中に配合されたCD83m−3および野生型CD83(バッチ004−04)の、CDを用いた分光光度分析を示す。
【図17】図17は、CD83m−3(pH7.0または7.5のいずれかで配合)の、CDを用いた分光光度分析を示す。
【図18】図18は、pH7.0または7.5のいずれかで配合されたCD83m−3の分光蛍光分析を示す。
【図19】図19は、hCD83ext−m3、hCD83ext−m5の単量体型、ならびに野生型hCD83extの単量体および二量体型の非還元SDS−PAGE分析を示す。
【図20】図20は、ジスルフィド結合スクランブル化を防止するNEMでの前処理を伴うまたは伴わない、単量体型hCD83ext−m3(m3)、hCD83ext−m5(m5)、ならびに異なる日に作製された野生型hCD83extの3つの調製物(004−4、007および023)の単量体および二量体型の非還元SDS−PAGE分析を示す。
【図21】図21は、hCD83ext−m3、hCD83ext−m5、および野生型hCD83extの3つの異なる調製物のサイズ排除クロマトグラフィーの結果を示す。すべての調製物をNEMで処理して、ジスルフィド結合スクランブル化を防止した。第一(左)のピークは二量体に相当する一方、第二(右)のピークは単量体に相当する。
【図22】図22は、hCD83ext−m3(m3)、hCD83ext−m5(m5)、および野生型hCD83extの3つの異なる調製物(wt 004−4、wt 007およびwt 023)の還元SDS−PAGE分析を示す。
【図23】図23は、突然変異体単量体hCD83ext−m5、およびhCD83ext野生型の2つの異なる調製物(004−4および023)のサイズ排除クロマトグラフィー結果を示す。
【図24】図24は、hCD83ext−m5の2つの異なる調製物(501および502)および野生型hCD83extの6つの異なる調製物(007、100、021、023、80および90)の非還元SDS−PAGE分析を示す。
【図25】図25は、hCD83ext−m5および野生型hCD83extの異なる調製物の非還元ウェスタンブロット分析を示す。
【図26】図26は、TNFαを産生する単球の割合または細胞あたりで産生されるTNFαの平均量のいずれかによって測定した際の、野生型hCD83ext、hCD83ext−m3およびhCD83ext−m5の多様な配合物が、LPS/IFNγで刺激した霊長類PBMCによるTNFα産生を阻害する能力を示す。
【図27】図27は、TNFαを産生する単球の割合または細胞あたりで産生されるTNFαの平均量(MFU)のいずれかによって測定した際の、すべてpH7.6で配合された野生型hCD83ext、hCD83ext−m3およびhCD83ext−m5が、LPS/IFNγで刺激した霊長類PBMCによるTNFα産生を阻害する能力を示す。
【図28】図28は、TNFαを産生する単球の割合または細胞あたりで産生されるTNFαの平均量(MFU)のいずれかによって測定した際の、野生型hCD83ext(pH4.5または5.5で配合)およびhCD83ext−m5(pH7.6で配合)が、LPS/IFNγで刺激した霊長類PBMCによるTNFα産生を阻害する能力を示す。
【図29】図29は、TNFαを産生する単球の割合または細胞あたりで産生されるTNFαの平均量(MFU)のいずれかによって測定した際の、野生型hCD83ext(pH4.5または5.5で配合)、または突然変異体型hCD83ext−m3(pH5.5で配合)およびhCD83ext−m5の2つの調製物(pH7.6で配合)が、LPS/IFNγで刺激した霊長類PBMCによるTNFα産生を阻害する能力を示す。
【図30】図30は、TNFαを産生する単球の割合によって測定した際の、野生型hCD83ext(バッチARG−021;pH7.6で配合)、および単量体突然変異体hCD83ext−m3の4つの調製物(pH4.5または5.5で配合)が、LPS/IFNγで刺激したヒトPBMCによるTNFα産生を阻害する能力の相違を示す。
【図31】図31は、非還元(左レーン)および還元(右レーン)SDS−PAGEによって分析した際の、野生型hCD83ext(ロット021)に対するpHおよび温度の影響を示す。
【図32】図32は、非還元(左レーン)および還元(右レーン)SDS−PAGEによって分析した際の、野生型hCD83ext(ロット021)に対するpHおよび温度の影響を示す。
【図33】図33は、非還元(左レーン)および還元(右レーン)SDS−PAGEによって分析した際の、野生型hCD83ext(ロット021)に対するpHおよび温度の影響を示す。
【図34】図34は、非還元(左レーン)および還元(右レーン)SDS−PAGEによって分析した際の、野生型hCD83ext(ロット021)に対するpHおよび温度の影響を示す。
【図35】図35は、非還元(左レーン)および還元(右レーン)SDS−PAGEによって分析した際の、野生型hCD83ext(ロット021)に対するpHおよび温度の影響を示す。
【図36】図36は、POD140でのラット腎同種移植片の病理学的等級付けを示すグラフである。中央値スコア: 0=正常; 1=最小変化; 2=軽度の変化; 3=中程度の変化; 4=顕著な変化。
【図37】図37は、POD140でのラット腎同種移植片の免疫組織化学等級付けを示すグラフである。中央値スコア: 0=正常; 1=最小変化; 2=軽度の変化; 3=中程度の変化; 4=顕著な変化。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、可溶性CD83(sCD83)、特に、配列番号5および6に対応するhCD83extポリペプチドが、保存中に安定性を失うことを見出してきている。驚くべきことに、hCD83extの第三のシステイン残基を突然変異させると、安定性および匹敵する生物活性の改善が生じることが見出された。上に論じるように、hCD83extの最初の4つのシステインが分子内ジスルフィド結合の形成に関与してhCD83extがホモ二量体を形成することをZinserら(Immunobiology(2006) 211:449−453)が開示するため、この結果は予期せぬものであった。したがって、Zinserの見方によれば、hCD83extの最初の4つのシステインの各々が細胞外ドメインの適切なコンホメーションを維持するのに非常に重要であると予期されるであろう。予期せぬことに、これらのシステイン残基に対する突然変異は、安定性を改善しうる。さらに、安定性は、低いpH、好ましくはpH4.0〜5.0、最も好ましくは約4.5のpHで緩衝された際に、さらに増進することが見出された。野生型sCD83タンパク質は、不安定であり、そして温度、pH、脱アミド化、および加水分解に影響を及ぼす条件に対して感受性であるようである。
【0018】
hCD83extにおける5つのシステイン残基の1以上に関するアミノ酸置換を有する本発明の新規sCD83ポリペプチドのいくつかを表1に示す。用語「Cys以外」は、システイン以外の任意の標準的または非標準的アミノ酸を指す。好ましくは、システイン残基に関する置換は、極性非荷電R基を有するアミノ酸(例えばセリン、スレオニン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、および非標準的アミノ酸セレノシステイン)がシステインを置換するように、保存的置換である。あるいは、システイン残基は、置換なしに欠失してもよい。表1は、システイン残基の置換または欠失に関する潜在的な部位である配列番号7中の5つのアミノ酸位を示す。配列番号7は配列番号5の変異体であり、ここで、配列番号5においてシステインである5つの残基(すなわち残基12、20、85、92および114)の1以上は、欠失するか、または別のアミノ酸で置換されてもよい。
【0019】
表1
配列番号7のCD83ext変異体の限定されない例
【0020】
【表1】

【0021】
Cys以外=システイン以外の任意のアミノ酸。
**アミノ酸残基12、20、85、92および114は、配列番号7に示すように、hCD83細胞外ドメインの第一、第二、第三、第四および第五のシステイン残基の位置に相当し、ここでこれらの残基の番号付けは、配列番号7のN末端にGly−Ser−Pro−Gly(配列番号41)残基が付加されているため、配列番号4に比較して、+4移動する。
【0022】
表2は、配列番号2および4〜8における5つのシステイン残基(または別のアミノ酸残基がシステイン残基に関して置換されてもよい部位)の番号付けの相関を示す。番号付けは、異なるN末端融合部分の存在または非存在のため、多様である。例えば、配列番号2は全長hCD83配列であり、そして配列番号4〜8には存在しない、N末端19アミノ酸シグナル配列、ならびに膜貫通および細胞質ドメインを含有する。hCD83細胞外ドメインの最初のアミノ酸残基(Thr)は、配列番号2のアミノ酸残基20である。配列番号4は、hCD83タンパク質の125アミノ酸の細胞外ドメインであり、そして配列番号2のアミノ酸残基20−144に相当する。配列番号5〜7は、hCD83extドメイン(アミノ酸残基5−129)に融合した4アミノ酸N末端配列(Gly−Ser−Pro−Gly;配列番号41)を含み、この後に、膜貫通ドメインの最初のアミノ酸残基(アミノ酸残基130のIle)が続く。配列番号8は、hCD83extドメイン(アミノ酸残基14−138で始まる)に融合したN末端GST−タグおよびトロンビン切断部位(アミノ酸残基1−13)を含有し、この後に、膜貫通ドメインの最初のアミノ酸残基(アミノ酸残基139のIle)が続く。
【0023】
表2
多様な全長または可溶性CD83配列のシステインまたはXaa残基のアライメント
【0024】
【表2】

【0025】
図1は、ヒト(NP 004224.1;配列番号2)、チンパンジー(XP 518248.2;配列番号35)、イヌ(XP 852647.1;配列番号36)、ウシ(NP 001040055.1;配列番号37)、マウス(NP 033986.1;配列番号38)、ラット(XP 341510.2;配列番号39)および赤色野鶏(XP 418929.1;配列番号40)由来のCD83ポリペプチドのアライメントを示す。図1に示すヒトCD83配列を参照すると、細胞外ドメインは、アミノ酸残基20−144に相当する。下線残基は、非保存的および保存的アミノ酸置換または欠失が細胞外ドメインで起こる位置、ならびにアライメントされた哺乳動物CD83ポリペプチドの膜貫通ドメインの最初のアミノ酸残基を同定する。下線太字の残基は、保存的アミノ酸置換または欠失が起こる位置を同定する。マウスおよびヒトCD83タンパク質は、63%配列同一性を有する。ヒトCD83extポリペプチド(例えば野生型(wt)またはm3)が、マウス、ラットおよび非ヒト霊長類(例を参照されたい)において、移植片拒絶を抑制する能力を有することは、哺乳動物種間のCD83構造および機能が保存されていることを示す。
【0026】
したがって、1つの側面において、配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離sCD83ポリペプチドであって、アミノ酸残基12、20、85、92および114が表1の任意の一列に特定されるアミノ酸であり;そして場合によって、アミノ酸残基1、2、3、4および130の1以上が存在しない、前記ポリペプチドを提供する。いくつかの態様において、単離sCD83ポリペプチドは、前述のアミノ酸配列から本質的になるか、または該配列からなる。好ましくは、アミノ酸85はセリンであり、そしてアミノ酸12、20、92および144はシステインである。
【0027】
別の側面において、配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、sCD83ポリペプチドであって、アミノ酸残基12、20、85および92の1以上が存在しないか、またはシステイン以外のアミノ酸であり;そして場合によって、アミノ酸残基1、2、3、4および130の1以上が存在しない、前記ポリペプチドを提供する。好ましくは、アミノ酸残基85はシステイン以外のアミノ酸であり、そしてアミノ酸残基12、20、92および114はシステインである。最も好ましくは、アミノ酸残基85はセリンである。いくつかの態様において、単離sCD83ポリペプチドは、前述のアミノ酸配列から本質的になるか、または該配列からなる。好ましい態様において、sCD83ポリペプチドは、配列番号7、配列番号7のアミノ酸残基1〜129、配列番号7のアミノ酸残基5〜129、または配列番号7のアミノ酸残基5〜130からなる。
【0028】
いくつかの態様において、単離sCD83ポリペプチドは、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29および配列番号31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;場合によってアミノ酸残基126は存在しない。
【0029】
配列番号7と本発明の新規sCD83ポリペプチドの配列同一性は、70%〜100%であってもよい。好ましくは、配列同一性は、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%である。配列番号7中のアミノ酸残基は、保存的にまたは非保存的に置換されていてもよい。好ましくは、置換は保存的である。配列番号7のアミノ酸残基12、20、85、92および114の1以上がシステインでない場合、これらは、好ましくは、小さいおよび/または極性のアミノ酸群、例えば、アラニン、グリシン、バリン、スレオニン、メチオニン、リジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸、アスパラギン酸から選択され、そして最も好ましくはセリンである。
【0030】
他の態様において、本発明は、異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合された、本明細書記載のポリペプチドいずれかを含む、キメラ分子を提供する。こうしたキメラ分子の限定されない例は、N末端またはC末端のいずれかで、さらなる官能性、安定性またはホーミング特性を与えるアミノ酸配列に融合した、本明細書記載のポリペプチドいずれかを含む。いくつかの態様において、本発明のsCD83ポリペプチドは、N末端またはC末端のいずれかで、シグナル配列および/またはタンパク質単離に有用な1以上のアミノ酸配列(例えばアフィニティタグ、例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ポリ−His、FLAG、セルロース結合ドメイン、Fcドメイン、Igなど)、またはタンパク質のプロセシング後に残ってもよいこうした配列の一部を含む。精製を容易にするために添加されるペプチド部分を、場合によって、ポリペプチドの最終調製前に除去してもよい。限定されない例として、sCD83ポリペプチドは、N末端の最初にGSTタグ、トロンビン切断部位およびhCD83ext配列を含んでもよい(例えば配列番号8を参照されたい)。このGSTタグ化融合ポリペプチドを、固定グルタチオンに結合させることによって単離してもよく、そして次いでトロンビンで切断してもよい。次いで、切断産物は、hCD83extのN末端に融合した、トロンビン切断部位(例えば、Gly−Ser−Pro−Gly;配列番号41)のカルボキシ部分を含有するであろう。多様なアフィニティタグおよびタンパク質精製におけるその使用法は、当業者に知られる。例えば、Terpe(2003) Appl. Microbiol. Biotechnol. 60:523−533を参照されたい。
【0031】
キメラsCD83ポリペプチドのいくつかの態様において、sCD83ポリペプチドをNまたはC末端で、免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgGA2)、好ましくはヒト免疫グロブリンのIgまたはFcドメインに融合させる。こうした融合タンパク質を作製するための方法は、当業者に知られる(例えば、米国特許5,428,130およびEPA 0 464 533を参照されたい)。キメラsCD83−FcまたはsCD83−Ig融合タンパク質は、改善された薬物動態学的特性を有しうる(EPA 0 232 262)。
【0032】
用語「可溶性CD83」、「sCD83」、および「CD83ext」は、本明細書において、タンパク質のCD83ファミリー・メンバーの細胞外ドメインの少なくとも一部を含むポリペプチドを指し、そして可溶性CD83ポリペプチドは、発現される細胞の膜に前記分子を係留することが可能なCD83膜貫通ドメインを持たない。しかし、可溶性CD83ポリペプチドには、細胞外ドメイン外部である全長天然CD83タンパク質のさらなる残基、例えば、発現される細胞の膜に、可溶性CD83タンパク質を係留するのに十分でない膜貫通ドメインの一部が含まれてもよい。さらに、本発明のsCD83ポリペプチドは、sCD83活性を有する。
【0033】
sCD83ポリペプチドは、任意の適切なアッセイによって測定した際に、配列番号5のsCD83ポリペプチドの少なくとも1つの活性を示すならば、「sCD83活性」を有すると言われる。sCD83ポリペプチドは、こうしたアッセイにおいて、同じアッセイで測定した際の、配列番号5のsCD83ポリペプチドの活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれより高い活性を有するならば、「sCD83活性」を有すると言われる。好ましくは、本発明のsCD83ポリペプチドは、成熟免疫刺激樹状細胞に結合し、そしてこれらの樹状細胞がT細胞増殖を刺激する能力を減少させることが可能である。sCD83活性は、直接または間接的に評価可能であり、そしてin vivoまたはin vitroで測定可能であり;適切なアッセイが当該技術分野に知られる(例えば、T細胞への樹状細胞の結合および樹状細胞−T細胞クラスターの形成を決定するための好ましいアッセイを開示する、Kruseら(2000) J. Virol. 74:7127−7136; Lechmannら(2001) J. Exp. Med. 194:1813−1821を参照されたい)。本明細書にその内容が援用される、米国特許公報20040110673は、sCD83活性のためのアッセイ、例えば1)成熟カクテルの存在下での未成熟DCの成熟DCへの成熟の阻害;2)sCD83を含む培養に際しての、成熟DCによるCD80およびCD83発現の喪失;3)MLRアッセイにおける、成熟DCがT細胞増殖を刺激する能力の阻害;4)DCによる典型的なクラスター形成およびT細胞の増殖の阻害、ならびに5)マウスにおける実験自己免疫脳炎(EAE)の阻害を開示する。この出願の実施例4は、LPS/IFNγで刺激したPBMCによるTNF−α産生を、sCD83が減少させる能力を測定する、sCD83活性に関するアッセイを開示する。
【0034】
したがって、本発明のsCD83ポリペプチドは、適切な対照、例えばsCD83の非存在下での成熟免疫刺激樹状細胞およびT細胞の間の相互作用に比較して、成熟免疫刺激樹状細胞がT細胞増殖を刺激する能力を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%あるいはそれより多く減少させることも可能である。
【0035】
いくつかの態様において、本発明のsCD83タンパク質は、適切な対照に比較して、成熟プロセスの少なくとも1つの工程中、可溶性CD83の存在下で、in vitroで成熟させた免疫刺激樹状細胞によるTNF−α、CD80および/またはCD83の発現を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%あるいはそれより多く減少させることも可能である(例えば、Lechmannら(2001) J. Exp. Med. 194:1813−1821; WO 2004/046182;実施例4を参照されたい)。例えば、sCD83を未成熟樹状細胞に添加すると、CD80およびCD83発現が減少するように、表面発現が改変される。成熟樹状細胞にsCD83を添加すると、CD83発現が減少し、そしてDCをsCD83で処理すると、T細胞増殖を刺激するその能力が失われる。この方式で、sCD83は、処理細胞の免疫表現型を改変したと言うことも可能である。当業者には、細胞表面マーカーの発現分析のために一般的に用いられる技術(例えばFACS分析)は、時に、細胞の混合集団に相当するデータを生じる可能性もあり、そして特定のデータセットにおいて、どの集団が相当しうるかを同定することに注意を払わなければならないことを、当業者は理解する。
【0036】
本発明にしたがって、sCD83ポリペプチドの誘導体は、改変された側鎖を持つ1以上のアミノ酸を有してもよい。こうした誘導体化ポリペプチドには、例えば、未結合(free)アミノ基が、アミン塩酸塩、p−トルエンスルホニル基、カロベンズオキシ(carobenzoxy)基を形成し;未結合カルボキシ基が、塩、メチルおよびエチルエステルを形成し;未結合ヒドロキシル基が、O−アシルまたはO−アルキル誘導体ならびに天然存在アミノ酸誘導体、例えば、プロリンに対する4−ヒドロキシプロリン、リジンに対する5−ヒドロキシリジン、セリンに対するホモセリン、リジンに対するオルニチンなどを形成するアミノ酸を含むものが含まれる。やはり含まれるのは、共有結合、例えば環状ポリペプチドを生じる2つのシステイン残基間に形成されるジスルフィド連結を改変しうるアミノ酸誘導体である。可溶性sCD83ポリペプチドまたはその誘導体は、CD83分子の天然グリコシル化パターンまたは改変されたグリコシル化パターンを有してもよいし、あるいはグリコシル化されていなくてもよい。
【0037】
本発明のsCD83ポリペプチドは、sCD83ポリペプチドの単量体、二量体または多量体であってもよい。sCD83タンパク質の単量体型内に存在するシステイン残基(例えば配列番号5の12、20、85、92および114位に存在するもの)間の1以上のジスルフィド結合の形成を通じて、あるいはsCD83ポリペプチドの単量体型内の同じまたは異なる官能部分(例えばカルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、チオ基等)を連結する二重官能性リンカー分子(例えばジアミン、ジカルボン酸化合物等)によって、二量体化または多量体化が達成されてもよい。後者にはまた、組換え技術によって直接産生可能な二量体構造を生じるための、例えば小さい極性アミノ酸残基、例えば−[(Gly)xSer]y−(式中、xは、例えば3または4であり、そしてyは例えば1〜5である)から作製されるポリペプチドリンカーの使用も含まれる。好ましい態様において、sCD83は単量体である。
【0038】
融合タンパク質が本明細書に定義するような1以上のsCD83活性を保持する限り、sCD83ポリペプチドは、CD83および誘導体の細胞外ドメインの少なくとも一部の融合タンパク質であってもよい(例えば、WO2004/046182を参照されたい)。いくつかの態様において、細胞外ドメイン外部のCD83のさらなる残基を含むタンパク質が、用語「可溶性CD83」に含まれる。したがって、適切な誘導体には、限定されるわけではないが、CまたはN末端に付着したさらなる配列を有するタンパク質、例えばそのC末端に膜貫通ドメインの一部を所持するもの、あるいはN末端に、例えば操作された融合タンパク質の産物として、トロンビンによるトロンビン部位切断から生じうる短いペプチド(例えばGly−Ser−Pro−Gly(配列番号41))を;または融合タンパク質の切断後のGST断片から生じる短いペプチドを所持するもの、ならびにIgおよびFc融合体が含まれる。
【0039】
別の態様において、本発明のsCD83ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。したがって、1つの態様は、配列番号7または配列番号7に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になってもよいポリペプチドをコードする核酸を含む単離ポリヌクレオチドであって;アミノ酸残基12、20、85および92の1以上が存在しないかまたはシステイン以外のアミノ酸であり;そして場合によって、アミノ酸残基1、2、3、4および130の1以上が存在しない、前記単離ポリヌクレオチドを提供する。好ましくは、アミノ酸残基85は、システイン以外のアミノ酸であり;アミノ酸残基12、20、92および114はシステインである。最も好ましくは、アミノ酸残基85はセリンである。好ましくは、配列同一性は、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%である。遺伝暗号を用いると、所定のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームに相当する核酸すべてが容易に想定されうる。
【0040】
さらに別の側面において、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、ならびにこうしたベクターを含む細胞を提供する。ベクターおよび細胞は、本明細書に開示するCD83ext組成物を産生するのに有用である。
【0041】
CD83タンパク質、核酸配列、および構造は当該技術分野に知られる。ヒトCD83 cDNAの核酸配列(GenBank寄託番号Z11697)を配列番号1に示す。この配列には、配列番号1の11〜628位のコード配列が含まれる(停止コドンを含む)。シグナル配列は、配列番号1の11〜67位にコードされる。成熟CD83ペプチドをコードする配列は、68〜625位に渡る。制限酵素認識部位は、配列番号1の始めおよび終わりに存在する(1〜6位および1755〜1760位)。ヒトCD83のアミノ酸配列(GenBank寄託番号Q01151に示すとおりであり、そして配列番号1に示す核酸配列にコードされる)を配列番号2に示す。他のヒトCD83配列は、Genbank寄託番号NP 001035370[CD83抗原アイソフォームb、ホモ・サピエンス(Homo sapiens):配列番号2]; NP 004224[CD83抗原アイソフォームa、ホモ・サピエンス]; EAW55353[CD83抗原アイソフォームCRA c ホモサピエンス]; EAW55352[CD83抗原アイソフォームCRA b ホモ・サピエンス]; EAW55351[CD83抗原アイソフォームCRA a、ホモ・サピエンス]で入手可能である。こうした配列をアライメントして、保存ドメインを決定してもよい。
【0042】
他の生物由来のCD83配列が以下のGenBank寄託番号で入手可能である: ABC68619[サルモ・サラー(Salmo salar)]; CAB63843およびNP 033986.1(配列番号38[ムス・ムスクルス]; ABM67085[スパルス・アウラタ(Sparus aurata)]; AAP93912[オンコルヒンクス・ミキス(Oncorhynchus mykiss)]; AAO62993[ギングリモストマ・シラツム(Ginglymostoma cirratum)]; NP 001040055[ボス・タウルス;配列番号37]; XP 518248[パン・トログロディテス;配列番号35]; XP 001093364[マカカ・ムラッタ(Macaca mulatta)]; XP 418929[ガルス・ガルス;配列番号40]; NP 001101880およびXP 341510.2[ラトゥス・ノルベギクス;配列番号39]; AAZ06133[メソクリセツス・アウラツス(Mesocricetus auratus)]; ACC60995[マルモタ・モナクス(Marmota monax)]およびXP 852647[カニス・ファミリアリス;配列番号36]。
【0043】
他の動物、例えば哺乳動物由来の、または同じ生物の他の組織由来の、核酸の多様な供給源(例えばゲノムDNA、cDNA、またはRNA)に、例えば細胞外部分をコードするヒトCD83コード領域のすべてまたは一部を含む核酸をハイブリダイズさせることによって、タンパク質のCD83ファミリーの他のメンバーを得てもよい。既知のおよび/または単離されたsCD83ポリヌクレオチドのin vitroまたはin vivo突然変異誘発によって、sCD83ポリペプチドをコードするさらなるポリヌクレオチドを作製してもよいし、あるいはこうしたポリヌクレオチド配列をin vitroで合成してもよい。
【0044】
天然存在CD83タンパク質をコードする核酸が配列決定されたならば、既知のCD83分子の細胞外ドメインを、クローニングされたCD83配列のものと比較することによって、細胞外ドメインを決定してもよい。次いで、本明細書記載の技術を用いて、所定の天然存在CD83タンパク質の可溶性型を組換え的に発現してもよい。例えば、本発明の可溶性CD83をコードする核酸を産生し、ベクター内に挿入し、そして本明細書に記載され、そして当該技術分野にさらに知られる周知の技術を用いて、原核または真核宿主細胞内に形質転換してもよい(Sambrookら Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y., 1989)。
【0045】
本発明にしたがって使用するためのタンパク質のCD83ファミリー・メンバーの可溶性型をコードする関心対象の核酸を、in vitroで発現するため、発現ベクター内に挿入してもよい(例えば、in vitro転写/翻訳アッセイまたは商業的に入手可能なキットを用いる)し、あるいは発現ベクターの適切な細胞内への導入によって、原核生物または真核生物のいずれかにおける転写および/または翻訳を容易にするプロモーター配列を含有する発現ベクター内に挿入してもよい。用語「ベクター」は、プラスミド、ウイルス、あるいはポリヌクレオチドの挿入または取り込みによって操作可能な当該技術分野に知られる他のビヒクルを指す。こうしたベクターは、遺伝子操作のために用いてもよい(すなわち「クローニングベクター」)し、あるいは挿入されたポリヌクレオチドを転写するかまたは翻訳するために用いてもよい(「発現ベクター」)。ベクターは、一般的に、少なくとも細胞における増殖のための複製起点およびプロモーターを含有する。適切な転写および翻訳を促進するために、発現ベクター内に存在する、本明細書に示すような発現調節要素を含む調節要素(例えばイントロン、mRNAのインフレーム翻訳を可能にする、遺伝子の正しいリーディングフレームの維持のためのスプライシングシグナル、ならびに停止コドンなど)が含まれる。用語「調節要素」は、最低でも、その存在が発現に影響を及ぼす可能性もある1以上の構成要素が含まれるよう意図され、そしてまたさらなる構成要素、例えばリーダー配列および融合パートナー配列も含んでもよい。
【0046】
ベクターが増殖し、そしてその核酸が転写されるかまたはコードされるポリペプチドが発現されうる細胞は、本明細書において、「宿主細胞」と呼ばれる。該用語にはまた、対象宿主細胞の任意の子孫も含まれる。さらに、本発明にしたがった関心対象の核酸を、体細胞遺伝子治療のため、in vivoで発現させるために、発現ベクター内に挿入してもよい。これらのベクター、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、プラスミド発現ベクターを用いると、本発明の核酸は、DCへのベクターの感染/導入に際して発現される。
【0047】
宿主細胞には、限定されるわけではないが、微生物、例えば細菌、酵母、昆虫、および哺乳動物生物が含まれる。好ましい態様において、宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)である。例えば、関心対象の核酸を含有する組換えバクテリオファージ核酸、プラスミド核酸またはコスミド核酸発現ベクターで形質転換された細菌;関心対象の核酸を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母;関心対象の核酸を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染したか、または組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;関心対象の核酸を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;あるいは、関心対象の核酸を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えばレトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)に感染した動物細胞系、あるいは安定発現のために操作された形質転換動物細胞系。
【0048】
宿主細胞におけるタンパク質のCD83ファミリー・メンバーの可溶性型の長期発現のためには、安定発現が好ましい。したがって、ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを用いて、例えば、細胞を、適切な調節要素(例えば、プロモーター/エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)によって調節される、関心対象の核酸で形質転換してもよい。場合によって、発現ベクターはまた、選択圧に対する抵抗性を与える選択可能または同定可能マーカーをコードする核酸を含有してもよく、それによってベクターを有する細胞が同定され、増殖され、そして拡大されることを可能にしてもよい。あるいは、選択可能マーカーは、本発明のポリヌクレオチドを含有する第一のベクターとともに、宿主細胞内に同時トランスフェクションされる第二のベクター上にあってもよい。
【0049】
限定されるわけではないが、それぞれ、tk、hgprtまたはaprt細胞において、単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ遺伝子、ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、およびアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を含む、多くの選択系を用いてもよい。さらに、メトトレキセートに対する耐性を与えるdhfr、ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt遺伝子;アミノ配当体G−418に対する耐性を与えるネオマイシン遺伝子;およびハイグロマイシンに対する耐性を与えるハイグロマイシン遺伝子に関する選択の基礎として、代謝拮抗剤耐性を用いてもよい。さらなる選択可能遺伝子が記載されてきており、すなわち、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisD;およびオルニチン・デカルボキシラーゼ阻害剤、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOに対する耐性を与えるODC(オルニチン・デカルボキシラーゼ)がある。
【0050】
本発明のsCD83ポリペプチドをコードする核酸で、原核および真核細胞を形質転換するための方法が、当業者に知られる。形質転換後、慣用法にしたがって、CD83の可溶性型を単離し、そして精製してもよい。多様なタンパク質およびその誘導体、ならびにこれらをコードする核酸を産生し、精製し、そして操作するための方法もまた、当該技術分野に周知である。例えば、Sambrookら(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y.)を参照されたい;また、米国特許第7,169,898号;米国特許出願第10/382,397号;および米国特許出願第10/535,522号もまた参照されたい。例えば、発現宿主(例えば細菌)から調製した溶解物を、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィー、または他の精製技術を用いて精製してもよい。実質的に純粋なタンパク質はまた、ペプチド合成装置(例えばApplied Biosystems, Inc.、カリフォルニア州フォスターシティー;モデル430A等)を用いた化学合成によっても得られうる。
【0051】
sCD83配合物
CD83ext組成物を、適切な薬学的に許容されうるアジュバントおよび/またはキャリアーと一緒にプロセシングして、多様な徴候および投与経路タイプに適した薬剤型を提供してもよい。適切な薬学的組成物には、キャリアー、任意の適切な生理学的溶液または分散剤等、溶解剤、アジュバント、安定化剤、保存剤、持続放出配合物等が含まれてもよい。生理学的溶液は、任意の許容されうる溶液または分散媒体、例えば生理食塩水または緩衝生理食塩水を含む。キャリアーはまた、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸着遅延剤等も含んでもよい。任意の慣用的な媒体、キャリアーまたは剤は、活性成分と不適合である場合を除いて、その使用が意図される。キャリアーは、限定されるわけではないが、例えばインターロイキン−10(IL−10)およびTGF−βなどのサイトカインを含む、1以上のさらなる化合物をさらに含んでもよい。こうした配合物およびその調製法の例が当該技術分野に知られる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版(1985) Mack Pub. Co., 米国ペンシルバニア州イーストンを参照されたい)。
【0052】
PCT公報WO2004/046182は、pH7.6のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に配合された精製hCD83ext野生型およびhCD83m−5ポリペプチド(それぞれ、配列番号5および6を有する)を記載する。しかし、本明細書に開示するように、CD83extおよびその変異体は、より低いpHで配合された際に、より高い安定性を有する。例えば、配列番号5のポリペプチドなどの精製hCD83extポリペプチドは、実施例1に記載する方法にしたがって最初に精製された際、主に単量体型である。pH7.3〜7.6のPBS中で保存した際、タンパク質は次第に二量体化し、そして生物活性を失う。対照的に、より低いpHで保存されたhCD83extは、活性の同じ喪失にはさらされなかった。驚くべきことに、CD83ext−m5(配列番号6)は、野生型同等物(配列番号5)よりも、高いpHに対してより感受性でなかった。
【0053】
したがって:CD83extポリペプチドおよび4.0〜5.0のpHを有する生理学的に許容されうる緩衝剤を含む、薬学的組成物を提供する。好ましくはpHは4.3〜4.7である。最も好ましくは、pHは約4.5である。好ましい態様において、CD83extポリペプチドは、配列番号4、5、6または7のポリペプチドである。好ましくは、緩衝剤は酢酸緩衝剤であり、最も好ましくは20mM酢酸緩衝剤、pH〜4.5である。
【0054】
本出願人らはまた、hCD83extの安定性および生物活性が、トレハロースを含む組成物中での配合によって改善されることも発見している。したがって、1〜15%(w/v)トレハロース中で配合されたsCD83ポリペプチドを含む組成物を提供する。好ましくは、トレハロースは約5〜12% w/v、最も好ましくは、約10% w/vで存在する。
【0055】
いくつかの態様において、本発明のsCD83組成物は、限定されるわけではないが、緩衝剤、塩、界面活性剤、多価アルコール、多価金属糖、粘性修飾剤、酸化防止剤および凍結保護剤ならびにその組み合わせなどの1以上の賦形剤をさらに含んでもよい。こうした賦形剤には、限定されるわけではないが、グリシン、ヒスチジン、Fe(3+)、Mg(2+)、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、EDTA、およびアルギニンにグルタミン酸を加えた組み合わせが含まれる。
【0056】
好ましい態様において、CD83extポリペプチドを、20mM酢酸緩衝剤pH4.5、10% w/vトレハロース、0.5% w/vアスコルビン酸、および場合によって50mMアルギニンに加えて50mMグルタミン酸中で、1.5〜2.5(好ましくは2.0)mg/mLで配合し、そして凍結(好ましくは約−20℃で)保存する。こうした配合物は、多数回の凍結融解周期後に安定であり、そして被験体への投与に適している。好ましい賦形剤すべては、不活性成分のFDAリスト中にあるか、または認可された静脈内薬剤製品中に存在する。
【0057】
限定されるわけではないが、CD83extおよびその誘導体の送達のために選択可能な、経皮、皮内(i.c.)、腹腔内(i.p.)、皮下(s.c.)、筋内(i.m.)、静脈内(i.v.)、節間(i.n.)等を含む、任意の投与経路を用いてもよい。好ましくは、CD83extは、i.v.投与される。当業者は、異なる化合物および/または徴候には、異なる投与型が適切であろうことを認識するであろうし、そして最も適切な投与法を選択可能であろう。例えば、乾癬は、皮膚への投与に適した配合物で局所的に治療されうるし、一方、全身性エリテマトーデスは、腹腔内注射に適した配合物の被験体への投与によって治療されうる。当該技術分野の技術を有する医師は、化合物の投薬および投与の調整のための基準および方法、例えば生化学的および免疫学的アッセイを含む慣用的な臨床および実験室試験からの結果の評価などに精通している。適切な場合、薬剤構成要素を別個に投与してもよい。
【0058】
療法的または予防的使用のため、本発明の化合物は、単独で、または他の免疫調節化合物(例えば寛容誘導抗原、シクロスポリンA、MMFを加えたFK506、CD45RBを加えたラパマイシン、コルチコステロイド等)と組み合わせて、被験体、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト患者に、医学的徴候に適した方式で、治療または防止のために投与される。
【0059】
いくつかの態様においてsCD83タンパク質をコードする核酸を被験体に提供することによって、sCD83を被験体に投与する。例えば、配列番号7のsCD83ポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAとして、sCD83を被験体に投与してもよい。同様に、いくつかの態様において、sCD83タンパク質をコードする核酸で、宿主細胞(すなわち細胞)を形質転換することによって、in vitroまたはin vivoで細胞にsCD83を提供する;次いで、形質転換された宿主細胞は、sCD83タンパク質を発現して、それによって、他の細胞に、ならびにそれ自体(すなわち形質転換宿主細胞)に、sCD83タンパク質を提供することも可能である。こうした態様において、適切な宿主細胞には、樹状細胞が含まれる。sCD83がCD83タンパク質をコードする核酸として提供される場合、用語「sCD83」はまた、sCD83タンパク質をコードする核酸も指してもよい。CD83タンパク質をコードする限り、DNA、RNA、または合成核酸を含む、任意の適切な核酸が使用可能である。コードされるタンパク質またはタンパク質断片の発現に適したベクター中で、核酸を提供してもよい。これらを産生するのに適したベクターおよび方法が当該技術分野に知られる。
【0060】
sCD83の療法的使用
本明細書に開示するsCD83組成物は、免疫応答の機能不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状の防止、治癒、減少、および/または軽減に有用である。例えば、配列番号5のhCD83extポリペプチドが、多くの動物モデルにおいて、評価されてきている。実験的自己免疫脳炎(EAE)マウスモデル(ヒト多発性硬化症のモデル)を用いると、前治療および積極的治療セッティングの両方で、sCD83によって麻痺が阻害可能であった。また最近のデータによって、sCD83がマウスにおいて、心臓および皮膚移植片生存を延長させることが可能であり、そして療法用量未満のよく性質決定された免疫抑制剤と組み合わせて用いた際、sCD83は、ネズミ心臓移植モデルにおいて、長期移植片生存を達成可能であることもまた立証されている。また、実験データによって、sCD83が1型マウスモデルにおいて、糖尿病発症を阻害しうることも示されている。さらに、sCD83での治療が、包括的な免疫抑制を生じないことを示唆する結果も得られている。本明細書の実施例によって、配列番号7(アミノ酸残基1,2、3、4および130が存在し、アミノ酸残基85がSerであり、そしてアミノ酸残基12、20、92および114がCysである)のCD83extポリペプチドが、心臓および腎臓移植の哺乳動物モデルにおける移植片拒絶を防止するのに有効であることが立証されている。
【0061】
したがって、いくつかの態様は、被験体における免疫応答の機能不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状を治療するかまたは防止するための方法であって、本発明のsCD83ポリペプチドを前記被験体に投与する工程を含む、前記方法を提供する。免疫応答の機能不全または望ましくない機能には、自己免疫疾患、移植片拒絶、移植片対宿主病およびアレルギーが含まれる。本発明の新規sCD83ポリペプチドを用いて治療可能である自己免疫疾患には、限定されるわけではないが、全身性エリテマトーデス、自己免疫(I型)糖尿病、天疱瘡、グレーブス病、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己心筋炎(automyocarditis)、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、自己免疫網膜ブドウ膜炎、血管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎などの慢性炎症性腸疾患、ビヒテレフ病(Morbus Bechterew)などのHLA B27関連自己免疫病、閉塞性肺疾患(COPD)、強直性脊椎炎およびAIDSが含まれる。
【0062】
したがって、本発明の可溶性CD83ポリペプチドおよび/またはこうしたsCD83ポリペプチドをコードする核酸を、免疫応答の機能不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または医学的状態の治療または防止のための薬剤の製造に用いてもよい。例えば、望ましくない免疫応答が抑制されるように、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、組織または臓器移植の拒絶、あるいは療法組成物に対する望ましくない免疫応答の防止または治療のために、こうした薬剤を用いてもよい。
【0063】
いくつかの態様において、望ましくない免疫応答は、療法組成物に対して向けられ、そして本発明の目的は、こうした療法組成物に対して、被験体を寛容化することである。被験体は、これらの目的の少なくとも1つが達成された場合、寛容化されそして/または免疫抑制されていると見なされる(すなわち免疫寛容が誘導されたかまたは獲得されたと見なされる)。
【0064】
本明細書において、「免疫抑制」を誘導すること、または被験体を「寛容化する」ことは、樹状細胞、B細胞、またはT細胞を伴う免疫応答の機能不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状が、(例えば、治療が免疫応答の発展を防止するか、またはその重症度を減少させることを意図する場合には、治療前の症状、あるいは治療を伴わない症状の予期される重症度に比較した際)防止されるか、治癒するか、減少するか、または軽減されることを意味する。当業者は、症状の測定法および評価法の選択および適用、ならびに適切な対照の選択に精通している。
【0065】
したがって、免疫応答の機能不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状が、適切な対照に比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%減少しているかまたは軽減されている場合、被験体が寛容化されていると見なされ、そして/または免疫抑制が生じていると見なされる。被験体が自己免疫障害を発展させるリスクを減少させることを、治療が意図する態様において、このリスクは、適切な対照に比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%減少するかまたは軽減される;この評価を、被験体集団に対して統計的に行ってもよい。治療が、療法組成物に対して被験体を寛容化することを意図する態様において、免疫応答の望ましくない機能は、適切な対照に比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%減少する。他の態様において、本発明の目的には、免疫寛容誘発性樹状細胞の産生が含まれる;これらの態様において、「症状」は、in vivoまたはin vitroいずれかでの細胞の振る舞いのパラメータを指す。
【0066】
本発明の方法は、療法目的に有用であり、そしてしたがって、免疫応答の機能不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状を防止し、治癒させ、または軽減することを意図する。適切な対照と比較して、例えば治療前の症状と比較して、または治療が防止的であることを意図される場合、症状の予期される重症度と比較して、適切なように、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、70%、90%、またはそれより多く症状が減少するか、増加するか、または改善される場合、疾患または障害の症状は、減少するかまたは軽減されると見なされる。当業者は、症状の変化を評価するための技術および基準に精通している。免疫応答の機能不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の症状は、当業者に知られ、そして以下:移植された組織の異常な組織学;移植された組織の異常な機能;例えば診断または移植などの事象後の生存時間が短いこと;血液中の指標タンパク質(単数または複数)または他の化合物(単数または複数)、例えば望ましくない抗体または望ましくない細胞(例えば抗原特異的樹状細胞またはT細胞)のレベルまたは数が異常にまたは望ましくなく高いかまたは低いこと;血液中または体の別の箇所の指標細胞のレベルまたは数が異常にまたは望ましくなく高いかまたは低いこと、例えば望ましくない免疫応答が開始されるかまたは維持されるように、制御T細胞のレベルまたは数が望ましくなく低いことを含む。
【0067】
適切な場合、in vitroアッセイを用いて、例えば被験体から単離された細胞を用いた混合リンパ球反応において、in vivo寛容化または寛容および/または免疫抑制を測定してもよい。同様に、また、例えば樹状細胞、T細胞、またはB細胞などの多様な細胞タイプを用いたex vivoアッセイにおいて、ex vivoで細胞において達成される寛容化または寛容および/または免疫抑制を測定してもよい。ex vivo法を用いて寛容化または寛容および/または免疫抑制を測定する場合、免疫刺激に対する細胞の応答が、適切な対照に比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、70%、90%、またはそれより多く減少している場合、寛容化または寛容が起こったと見なされる。適切なアッセイは、直接または間接的に、免疫応答を測定し、そして当該技術分野に知られる;これらには、限定されるわけではないが:混合リンパ球反応アッセイ;細胞傷害性アッセイ;抗体力価アッセイ;IL−10産生に関するアッセイ;TGF−β産生に関するアッセイ;細胞表面マーカーの評価;およびFoxp3発現に関するアッセイが含まれる。
【0068】
本発明のsCD83タンパク質を、他の免疫抑制化合物と同時投与してもよい。用語「免疫抑制化合物」は、リンパ球のTおよび/またはBクローン集団のサイズを枯渇させることが可能な化合物、あるいはその反応性、増殖、または分化を抑制することが可能な化合物を指す。本発明の方法で使用するための免疫抑制化合物には、限定されるわけではないが:シクロスポリン(「CsA」としても知られ、Neoral(登録商標)またはSandimmune(登録商標)として市販される)およびタクロリムス(「FK506」としても知られ、Prograf(登録商標)として市販される)を含むカルシニューリン阻害剤;ミコフェノール酸モフェチル(「MMF」としても知られ、Cellcept(登録商標)として市販される)およびアザチオプリン(Azasan(登録商標)またはImuran(登録商標)として市販される)などのプリン代謝阻害剤;エベロリムス(Certican(登録商標)として市販される)およびシロリムス(「ラパマイシン」または「ラパ」としても知られ、Rapamune(登録商標)として市販される)などの増殖阻害剤;モノクローナル抗体(「mAb」)、例えば抗CD45および抗CD45RB(例えば米国特許第7,160,987号を参照されたい);T細胞に対して向けられるモノクローナル抗体、例えばOKT3;ヒト化抗TaT抗体を含む、IL−2受容体に対して向けられるモノクローナル抗体、例えばバシリキサマブおよびダクリズマブ;T細胞共刺激経路を遮断する物質、例えばCTLA−4−Ig1融合タンパク質;キメラ化(すなわち、移植片組織が自己として認識される、ドナーおよびレシピエント免疫細胞の共存)を誘導可能な物質;ならびにシクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)として市販される)などの非骨髄破壊的(non−myeloblative)移植前治療が含まれる。免疫抑制剤およびそのターゲットの考察に関しては、例えば、Stepkowski(2000) Expert Rev. Mol. Med. June 21, 2000:1−23を参照されたい。
【0069】
物質の「有効量」によって、本発明の方法にしたがって被験体に投与された際、その量が、本発明の少なくとも1つの目的を達成するのに少なくとも十分であることが意図される。したがって、例えば、療法的sCD83組成物の「有効量」は、CD83とともに被験体に同時投与された場合に、療法組成物に対して被験体を寛容化するか、あるいは免疫応答の機能不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の少なくとも1つの症状に対して、測定可能な効果を生じるのに、少なくとも十分である。個々の被験体が示す症状に関して、免疫抑制sCD83化合物の有効量を決定してもよいし、あるいは臨床研究から有効量を決定してもよいし、またはモデル系における適切な研究から推定してもよい。したがって例えば、免疫抑制sCD83化合物の有効量には、本発明の方法を利用する臨床研究において決定される投薬範囲に基づいて、疾患または障害の少なくとも1つの症状に対する測定可能な効果を生じると期待されるであろう量が含まれる。
【0070】
1以上の投与、適用または投薬で、有効量を投与してもよい。適切な投与、適用、および投薬は、限定されるわけではないが:組成物の比活性;組成物の配合;治療しようとする被験体の体重、年齢、健康状態、疾患および状態;ならびに被験体内への組成物の投与経路を含む多くの要因に応じて多様であろう。いくつかの例において、有効量であるために必要なsCD83の最低量は、患者において、あらかじめ存在する可溶性CD83があるために、減少する可能性もあり(例えば、Hockら(2006)(Tissue Antigens 67:57−60)を参照されたい);当業者は、最適な結果を達成するため、投薬および投与等を容易に調整可能であろう。例えば:0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、5、7、10、20、50、70、100、200、500、または700mg/kg、あるいは1、2、5、7、10、20、50または100g/kgの最低端;および0.05、0.1、0.5、1、2、5、7、10、20、50、70、100、200、500、または700mg/kg、あるいは1、2、5、7、10、20、50、100、または200g/kgの最高端を有する範囲内で、sCD83を患者に投与してもよい。
【0071】
被験体は、CD83によって外因性化合物に寛容化可能であるため、療法目的のためには、被験体が、少なくとも治療中、または少なくともCD83の有効性ウィンドウ中、寛容化が望ましくない化合物に曝露されないことが重要である。したがって、例えば、被験体は、腫瘍特異的抗原、およびウイルス、細菌、カビ等を含む疾患を引き起こす微生物に曝露されてはならない。一般的に、本明細書において、「被験体」によって、治療が必要な任意の動物を意図する。したがって、例えば、「被験体」は、ヒト患者または非ヒト哺乳動物患者であってもよいし、あるいは動物である別の患者であってもよい。疾患または医学的状態の防止が望ましい場合、被験体を規則的間隔(例えばおよそ:2年ごと、毎年、6ヶ月ごと、2〜4ヶ月ごと、または毎月)、治療してもよい。しかし、本発明のすべての態様において、本発明の方法および組成物を、免疫応答の機能不全または望ましくない機能によって引き起こされる特定の疾患または障害を有すると同定されている被験体に、あるいは特定の疾患または障害を発展させる可能性が高いと同定されている被験体に、投与する。例えば、被験体は、被験体の家族歴の検査、遺伝子検査または被験体の酵素もしくは代謝産物レベルを決定する検査などの医学的検査の結果、あるいは別の疾患または障害と診断された結果、こうした特定の疾患または障害を発展させる可能性が高いと同定されていてもよい。この方式で、例えば、本発明の方法を用いて、自己免疫疾患を治療するか、自己免疫疾患の発展を防止するか、または被験体が自己免疫疾患を発展させるリスクを減少させてもよい。一般的に、被験体がもはや、免疫応答の機能不全または望ましくない機能によって引き起こされる特定の疾患または医学的状態を軽減させるかまたは防止するために治療されなくなると、治療経過が終了する。したがって、本発明は、免疫応答の機能不全、望ましくない免疫応答または免疫応答の望ましくない機能によって引き起こされる疾患または医学的状態の治療法または防止法であって、免疫抑制が達成されるように、sCD83の有効量が被験体に投与される、前記方法を提供する。1つの態様において、望ましくない免疫応答は、自己免疫疾患、移植片拒絶およびアレルギーからなる群より選択される。こうした方法は、さらに、シクロスポリンA(CsA);抗CD45RBモノクローナル抗体を加えたラパマイシン;およびミコフェノール酸モフェチル(MMF)を加えたタクロリムス(FK506)の1以上を投与する工程をさらに含んでもよい。
【0072】
好ましい態様において、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、天疱瘡、グレーブス病、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己心筋炎、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、自己免疫網膜ブドウ膜炎、血管炎、慢性炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎、ビヒテレフ病、強直性脊椎炎および慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群より選択される。
【0073】
いくつかの態様において、哺乳動物被験体において、望ましくない免疫応答を治療するかまたは防止するための薬剤の製造のため、本発明の新規sCD83ポリペプチドの使用を提供する。
【0074】
別の側面において、哺乳動物移植レシピエントにおける移植転帰を改善する方法であって、前記レシピエントに療法的有効量の請求項1〜10のいずれかのポリペプチドおよび1以上の免疫抑制剤を投与する工程を含み、ここで免疫抑制剤が、前記ポリペプチドと相乗的に働いて、移植転帰を改善する、前記方法を提供する。1つの態様において、前記免疫抑制剤はシクロスポリンAである。他の態様において、前記免疫抑制剤は、抗CD45RBモノクローナル抗体を加えたラパマイシン;またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)を加えたタクロリムス(FK506)である。
【0075】
免疫応答の機能不全または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害、例えば:アレルギー;喘息;組織移植片拒絶;長期間投与される物質に対する免疫応答;重症筋無力症、多発性硬化症、血管炎、クローン病または潰瘍性大腸炎などの慢性炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、乾癬などの皮膚疾患、関節リウマチ、およびインスリン依存性糖尿病などの自己免疫疾患;ならびにAIDSによって影響を受けるかまたは影響を受けるようになる可能性がある被験体を治療するため、本発明の方法を使用してもよい。本発明の方法を用いて、B細胞またはB細胞機能に関与する疾患または障害、例えば:白血病などのB細胞過形成(多発性骨髄腫および急性リンパ芽球性白血病を含む);AIDSに関連するB細胞機能亢進;毒性ショック症候群;血清病;および歯周病など(例えば、Mahanondaら(2002) J. Periodontal Res. 37:177−183)に罹患した被験体を治療してもよい。血清病は、特定の薬剤または抗血清に対する望ましくない免疫応答によって引き起こされる症状群である。すなわち、血清病は、受動免疫を誘導する目的で、別の動物またはヒト由来の抗血清が被験体に投与された際に生じうる。いくつかの態様において、本発明の方法は、B細胞またはB細胞機能に関与する疾患または障害のための治療を提供し、ここで治療はB細胞枯渇、すなわち被験体におけるB細胞の数および/またはサブタイプの減少を生じない。
【0076】
したがって、いくつかの態様において、本発明の方法を用いて、組織レシピエントにおいて、組織移植の拒絶の少なくとも1つの症状を防止するか、治癒させるかまたは軽減させる。こうした態様において、移植レシピエント(「レシピエント」または被験体)をsCD83、および場合によって、移植組織と関連する抗原、例えば移植組織の試料の溶解またはホモジナイズによって、移植組織から調製したかまたは抽出した抗原で治療してもよい。一般的に、本発明の方法にしたがった移植レシピエントの治療には、組織の移植前、移植と併用(すなわち同時)の、および/または移植後の治療が含まれてもよい。いくつかの態様において、本発明の方法は、拒絶を防止するための移植被験体の連続した治療が不要となるように、組織移植の拒絶のすべての不都合な症状を防止するか、治癒させるか、または軽減させ;こうした態様において、被験体において移植片寛容が誘導されていると言われる。
【0077】
いくつかの態様において、意図されるレシピエントにおける移植のために組織を除去する前に、移植しようとする組織のドナー(「移植ドナー」)をsCD83で治療してもよく、ここで治療の目的は、移植レシピエントにおいて、寛容および/または免疫抑制を誘導することである。いくつかの態様において、本発明の方法にしたがって、移植ドナーおよび移植レシピエントの両方を治療してもよい。
【0078】
本明細書において、「組織」は、個々の臓器および/または特殊化組織(例えば肝臓、腎臓、心臓、肺、皮膚、膵島等)ならびに「液体」組織(“liquid” tissue)(例えば血液、血漿などの血液構成要素、樹状細胞などの細胞等)を含み;用語「組織」はまた、個々の臓器および「液体」組織の一部および下位部分も含む。
【0079】
当業者は、レシピエントおよびドナーの両方にとってありうる最適な転帰を達成するための、移植レシピエントおよびドナーの評価法および治療法に精通している。したがって、当業者は、CD83、少なくとも1つの他の免疫抑制化合物、および場合によって特定の被験体に適切であるような療法組成物の投薬および投与を評価し、そして調整することが容易に可能であろう。上記考察から容易に認識されるように、本発明の方法は、いくつかの工程を含み;本発明の少なくとも1つの目的が達成される限り、これらの工程を、いかなる順序で行ってもよい。方法は、多数の化合物の多数の投与を伴ってもよいため、工程のある程度の重複もまた生じてもよい。
【0080】
本発明によって提供される治療法には、in vivoで被験体における寛容および/または免疫抑制を誘導するための、CD83および少なくとも1つの他の免疫抑制化合物の使用が含まれる。被験体に対してこれらの物質を投与する手段には、限定されるわけではないが、慣用的および生理学的に許容されうる経路、例えば経口、肺、非経口(例えば筋内、動脈内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)、吸入(細粉末配合物または細かい霧(エアロゾル)を通じて)、経皮、皮内、鼻、膣、直腸、または舌下投与経路が含まれる。
【0081】
薬学的組成物が、動物の特定の種への投与のための核酸を含む場合、本発明で使用するための核酸は、その種に由来してもよい。例えば、sCD83をコードする核酸(例えばDNAまたはRNA)を含む薬学的組成物をヒトに投与する際、核酸は、配列番号7のsCD83または配列番号7に少なくとも65%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしてもよい。本発明で使用するための核酸を、膜浸透性および/または核酸の細胞取り込みを増加させる剤と同時投与してもよい。これらの剤の例は、例えばAntonyら(1999) Biochemistry 38:10775−10784に記載されるようなポリアミン;例えばEscriouら(1998) Biochem. Biophys. Acta 1368:276−288に記載されるような分枝ポリアミン;例えばGuy−Caffeyら(1995) J. Biol. Chem. 270:31391−31396に記載されるようなポリアミノ脂質; Feignerら(1987) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 84:7413−7417に記載されるようなDOTMA、および例えばBenimetskayaら(1998) Nucl. Acids Res. 26(23):5310−5317に記載されるような陽イオン性ポルフィリンである。
【0082】
定義
明細書および請求項において用いた際、単数形「a」、「an」および「the」には、文脈が明確に別に指示しない限り、複数の言及が含まれる。例えば、用語「(1つの)細胞(a cell)」には、その混合物を含めて、複数の細胞が含まれる。
【0083】
本明細書において、用語「含む(comprising)」は、組成物および方法が、列挙する要素を含むが他のものを排除しないことを意味するよう意図される。「本質的にからなる(consisting essentially of)」は、組成物および方法を定義するように用いた際、組み合わせに対していかなる本質的な重要性を持つ他の要素も排除することを意味するものとする。したがって、本明細書に定義するような要素から本質的になる組成物は、単離法および精製法由来の微量混入物質、ならびに薬学的に許容されうるキャリアー、例えばリン酸緩衝生理食塩水、保存剤等を排除しないであろう。所定のアミノ酸配列「から本質的になる」ポリペプチドまたはタンパク質は、本明細書において、所定のアミノ酸配列のN末端またはC末端のいずれかに0〜10のさらなるアミノ酸を含有するように定義される。好ましくは、これらは、タンパク質またはポリペプチドのアミノおよび/またはカルボキシ末端に、5より多い、好ましくは2より多い、そして最も好ましくは、1より多いさらなるアミノ酸を含有しない。所定の核酸配列「から本質的になる」核酸またはポリヌクレオチドは、本明細書において、30より多い、好ましくは6より多い、より好ましくは3より多い、そして最も好ましくは、1より多いさらなるヌクレオチドを、核酸配列の5’または3’末端に含有しないと定義される。「からなる」は、他の成分および本発明の組成物を投与するための実質的な方法工程の微量要素を超えるものを排除することを意味するものとする。これらの移行句(transition terms)の各々によって定義される態様。
【0084】
用語「樹状細胞(DC)」は、多様なリンパ系および非リンパ系組織で見られる形態学的に類似の細胞タイプの多様な集団を指す、Steinman(1991) Ann. Rev. Immunol. 9:271−296。樹状細胞は、生物において、最も強力で、そして好ましいAPCを構成する。樹状細胞を単球から分化させることも可能であるが、これらは別個の表現型を所持する。例えば、特定の分化マーカー、CD14抗原は、樹状細胞では見られないが、単球によって所持される。また、成熟樹状細胞は貪食性ではないが、単球は非常に貪食性の細胞である。成熟DCは、T細胞活性化および増殖に必要なすべてのシグナルを提供しうることが示されてきている。
【0085】
「免疫応答」は、広く、外来(foreign)物質に対するリンパ球の抗原特異的応答を指す。免疫応答を誘発しうる任意の物質は、「免疫原性」と言われ、そして「免疫原」と称される。すべての免疫原は抗原である;が、すべての抗原が免疫原性なのではない。本発明の免疫応答は、体液性(抗体活性を介する)であってもまたは細胞仲介性(T細胞活性化を介する)であってもよい。
【0086】
本明細書において、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸の、アミノ酸の同じ群内の別のアミノ酸に対する置換を指す。アミノ酸は、R基にしたがって、以下のように分類可能である:1)非極性脂肪族R基;2)極性非荷電R基;3)芳香族R基;4)正荷電R基;および5)負荷電R基。非極性脂肪族R基を持つアミノ酸には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン(lucine)、イソロイシン、およびプロリンが含まれる。極性非荷電R基を持つアミノ酸には、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギンおよびグルタミンが含まれる。芳香族R基を持つアミノ酸には、フェニルアラニン、およびチロシンが含まれる。正荷電R基を持つアミノ酸には、リジン、アルギニンおよびヒスチジンが含まれる。負荷電R基を持つアミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。
【0087】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」は、交換可能に用いられ、任意の長さのヌクレオチドのポリマー型を指す。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはその類似体を含有してもよい。ヌクレオチドは、任意の三次元構造を有してもよく、そして既知のまたは未知の任意の機能を行ってもよい。用語「ポリヌクレオチド」には、例えば、一本鎖、二本鎖および三重らせん分子、遺伝子または遺伝子断片、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーが含まれる。天然核酸分子に加えて、本発明の核酸分子はまた、修飾核酸分子も含んでもよい。本明細書において、mRNAは、細胞において翻訳可能なRNAを指す。
【0088】
用語「ペプチド」は、最も広い意味で、2以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、またはペプチド模倣体の化合物を指すよう用いられる。サブユニットは、ペプチド結合によって連結されてもよい。別の態様において、サブユニットは、他の結合、例えばエステル、エーテル等によって連結されてもよい。本明細書において、用語「アミノ酸」は、天然および/または非天然または合成アミノ酸のいずれかを指し、グリシンならびにDおよびL光学異性体、アミノ酸類似体およびペプチド模倣体を含む。3以上のアミノ酸のペプチドは、一般的に、ペプチド鎖が短いならばオリゴペプチドと呼ばれる。ペプチド鎖が長い場合、ペプチドは、一般的に、ポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。
【0089】
「遺伝子送達ビヒクル」は、宿主細胞内に挿入ポリヌクレオチドを運搬可能な任意の分子と定義される。遺伝子送達ビヒクルの例は、リポソーム、生体適合性ポリマーであり、天然ポリマーおよび合成ポリマー;リポタンパク質;ポリペプチド;多糖;リポ多糖;人工的ウイルスエンベロープ;金属粒子;ならびに細菌、またはウイルス、例えばバキュロウイルス、アデノウイルスおよびレトロウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌ベクター、ならびに多様な真核および原核宿主において発現が記載されており、そして遺伝子治療および単純タンパク質発現に使用可能な他の組換えビヒクルが含まれる。
【0090】
本明細書において、「遺伝子送達」、「遺伝子導入」、「トランスフェクション」等は、導入に用いる方法に関わらず、宿主細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入を指す用語である。トランスフェクションは、細胞内部への任意の核酸の送達を指す。遺伝子送達は、宿主細胞ゲノム内に組み込まれうるか、または宿主細胞ゲノムと独立に複製可能である核酸の送達を指す。遺伝子送達または遺伝子導入は、細胞内へのmRNAの導入を指さない。トランスフェクション法には、エレクトロポレーション、タンパク質に基づく、脂質に基づく、および陽イオンに基づく核酸送達複合体、ウイルスベクター、「遺伝子銃」送達などの多様な技術、ならびに当業者に知られる多様な他の技術が含まれる。導入されたポリヌクレオチドは、宿主細胞において安定に維持されてもよいし、または一過性に発現されてもよい。いくつかの態様において、sCD83ポリペプチドをコードするmRNAを細胞内に導入し、そして一過性に発現させる。安定な維持は、典型的には、宿主細胞と適合する複製起点を含有するか、あるいは染色体外レプリコン(例えばプラスミド)または核もしくはミトコンドリア染色体などの宿主細胞レプリコン内に組み込まれることを必要とする。当該技術分野に知られ、そして本明細書に記載するように、多くのベクターが、哺乳動物細胞への遺伝子導入を仲介することが可能である。
【0091】
「ウイルスベクター」は、in vivo、ex vivoまたはin vitroで宿主細胞内に送達しようとするポリヌクレオチドを含む、組換え的に産生されるウイルスまたはウイルス粒子と定義される。ウイルスベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクター等が含まれる。セムリキ森林ウイルスに基づくベクターおよびシンドビスウイルスに基づくベクターなどのアルファウイルスベクターもまた、遺伝子治療および免疫療法で使用するために開発されてきている。SchlesingerおよびDubensky(1999) Curr. Opin. Biotechnol. 5:434−439、ならびにZaksら(1999) Nat. Med. 7:823−827を参照されたい。遺伝子導入がレトロウイルスベクターによって仲介される側面において、ベクター構築物は、レトロウイルスゲノムまたはその一部、および療法遺伝子を含むポリヌクレオチドを指す。本明細書において、「レトロウイルス仲介遺伝子導入」または「レトロウイルス形質導入」は同じ意味を持ち、そしてウイルスが細胞に進入し、そしてそのゲノムを宿主細胞ゲノム内に組み込むことによって、遺伝子または核酸配列が安定して宿主細胞内に導入されるプロセスを指す。ウイルスは、感染の正常機構を介して宿主細胞に進入してもよく、あるいは、異なる宿主細胞表面受容体またはリガンドに結合して細胞に進入するように修飾されてもよい。本明細書において、「レトロウイルスベクター」は、ウイルスまたはウイルス様進入機構を通じて、細胞内に外因性核酸を導入可能なウイルス粒子を指す。
【0092】
レトロウイルスは、RNAの形で遺伝子情報を所持する;が、ウイルスが細胞に感染すると、RNAはDNA型に逆転写されて、感染細胞のゲノムDNA内に組み込まれる。組み込まれたDNA型はプロウイルスと呼ばれる。遺伝子導入がDNAウイルスベクター、例えばアデノウイルス(Ad)、偽アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(MV)によって仲介される側面において、ベクター構築物は、ウイルスゲノムまたはその一部、および導入遺伝子を含むポリヌクレオチドを指す。アデノウイルス(Ad)は、比較的よく性質決定された均質なウイルス群であり、50を超える血清型が含まれる(例えばWO95/27071を参照されたい)。Adは、増殖が容易であり、そして宿主細胞ゲノム内への組込みを必要としない。組換えAd由来ベクター、特に野生型ウイルスの組換えおよび生成に関する潜在能力が減少したものもまた、構築されている(WO95/00655およびWO95/11984を参照されたい)。野生型MVは、高い感染性および特異性を有し、宿主細胞ゲノム内に組み込まれる(HermonatおよびMuzyczka(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466−6470、ならびにLebkowskiら(1988) Mol. Cell. Biol. 8:3988−3996を参照されたい)。
【0093】
プロモーター、およびポリヌクレオチドが機能可能であるように連結されうるクローニング部位の両方を含有するベクターが、当該技術分野に知られる。こうしたベクターは、in vitroおよびin vivoでRNAを転写可能であり、そしてStratagene(カリフォルニア州ラホヤ)およびPromega Biotech(ウィスコンシン州マディソン)などの供給源から商業的に入手可能である。発現および/またはin vitro転写を最適にするため、クローンの5’および/または3’非翻訳部分を除去するか、付加するか、または改変して、転写または翻訳レベルいずれかで、発現に干渉しうるかまたは発現を減少させうる、過剰な潜在的に不適切な代替翻訳開始コドンまたは他の配列を除去することが必要である可能性もある。あるいは、コンセンサスリボソーム結合部位を開始コドンのすぐ5’に挿入して発現を増進させてもよい。
【0094】
遺伝子送達ビヒクルにはまた、いくつかの非ウイルスベクターが含まれ、DNA/リポソーム複合体、およびターゲティング化ウイルスタンパク質−DNA複合体が含まれる。ターゲティング抗体またはその断片もまた含むリポソームを、本発明の方法で用いてもよい。細胞への送達を増進するため、本発明の核酸またはタンパク質を、細胞表面抗原、例えばTCR、CD3またはCD4に結合する抗体またはその結合断片にコンジュゲート化してもよい。
【0095】
「ハイブリダイゼーション」は、1以上のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化される複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソンクリック塩基対形成、フーグスティーン結合によって、または任意の他の配列特異的方式で生じてもよい。複合体は、二重鎖構造を形成する2つの鎖、多重鎖複合体を形成する3以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズする鎖、またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。ハイブリダイゼーション反応は、より広範なプロセス、例えばPCR反応の開始、またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断における一工程を構成してもよい。
【0096】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下の通りである:関心対象の核酸を含有するフィルターのプレハイブリダイゼーションは、6×SSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、1mM EDTA、0.02%Ficoll、0.02%BSA、および500μg/ml変性サケ精子DNAで構成される緩衝液中、65℃で8時間〜一晩行われる。フィルターを、100μg/ml変性サケ精子DNAおよび5〜20×106cpmの32P標識プローブを含有するプレハイブリダイゼーション混合物中、65℃の好ましいハイブリダイゼーション温度で48時間ハイブリダイズさせる。続いて、2×SSC、0.01%Ficoll、および0.01%BSAを含有する溶液中で、フィルター洗浄を37℃で1時間行い、その後、0.1×SSC中、50℃で45分間洗浄する。洗浄工程後、ハイブリダイズしたプローブはオートラジオグラフィーによって検出可能である。こうした方法は当該技術分野に周知であり、そしてSambrookら、1989;およびAusubelら、1989に引用される。
【0097】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドまたはポリペプチド領域)が、別の配列に対して、特定の割合(例えば、80%、85%、90%、または95%)の「配列同一性」を有することは、アライメントした際に、2つの配列を比較すると、その割合の塩基(またはアミノ酸)が同じであることを意味する。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するため、配列を最適比較目的のためにアライメントする(例えば、最適アライメントのため、第一および第二のアミノ酸または核酸配列の一方または両方に、ギャップを導入してもよく、そして非相同配列を、比較目的のため、無視してもよい)。好ましい態様において、比較目的のためアライメントする参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、そしてさらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位またはヌクレオチド位のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第一の配列中の位が、第二の配列中の対応する位と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められる場合、分子は、その位で同一である(本明細書において、アミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」と同等である)。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適アライメントのために導入される必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一位の数の関数である。
【0098】
配列比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定を、数学的アルゴリズムを用いて達成してもよい。好ましい態様において、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ加重および1、2、3、4、5、または6の長さ加重を用い、GCGソフトウェアパッケージ(gcg.comで入手可能)中のGAPプログラムに取り込まれている、NeedlemanおよびWunsch((1970)J. Mol. Biol. 48:444−453)アルゴリズムを用いて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントを決定する。さらに別の好ましい態様において、NWSgapdna.CMPマトリックスならびに40、50、60、70、または80のギャップ加重および1、2、3、4、5、または6の長さ加重を用い、GCGソフトウェアパッケージ(gcg.comで入手可能)中のGAPプログラムを用いて、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントを決定する。特に好ましいパラメータセット(そして別に明記しない限り、使用すべきであるもの)は、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティ、および5のフレームシフトギャップペナルティを伴うBlossum62スコアリングマトリックスである。
【0099】
PAM120加重残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを用い、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に取り込まれているE. MeyersおよびW. Miller((1989)CABIOS, 4:11−17)のアルゴリズムを用いて、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間の同一性パーセントを決定してもよい。
【0100】
本明細書記載の核酸およびタンパク質配列を「クエリー配列」として用いて、公的データベースに対して検索を行って、例えば他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定しもよい。Altschulら(1990) J. Mol. Biol. 215:403−10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて、こうした検索を行ってもよい。NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて、BLASTヌクレオチド検索を行って、本発明のmMafA核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得てもよい。XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて、BLASTタンパク質検索を行って、本発明のmMafAタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得てもよい。比較目的のためのギャップアライメントを得るために、Altschulら(1997) Nucleic Acids Res. 25:3389−3402に記載されるようなギャップ化BLASTを利用してもよい。BLASTおよびギャップ化BLASTプログラムを利用する際、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを用いてもよい。ncbi.nlm.nih.gov.を参照されたい。
【0101】
用語「単離」は、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片が、通常、天然に会合している、細胞性およびその他の構成要素から分離されていることを意味する。例えば、ポリヌクレオチドに関しては、単離ポリヌクレオチドは、染色体において通常会合している5’および3’配列から分離されているものである。当業者には明らかであるように、非天然存在ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片(単数または複数)は、天然存在対応物から区別するために「単離」の必要はない。さらに、「濃縮」、「分離」または「希釈」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片(単数または複数)は、体積あたりの分子の濃度または数が、天然存在対応物のものよりも「濃縮されている」より多いか、または「分離されている」より少ない点で、天然存在対応物とは区別可能である。一次配列において、または例えばグリコシル化パターンによって、天然存在対応物と異なるポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片(単数または複数)は、単離型で存在する必要はなく、これは、一次配列によって、あるいはグリコシル化パターンなどの別の特徴によって、天然存在対応物から区別可能であるためである。本明細書に開示する本発明の各々に関して明白に言及しないが、以下に開示する組成物各々に関する、および適切な条件下での上記態様すべてが本発明によって提供されることが理解されるものとする。したがって、非天然存在ポリヌクレオチドは、単離天然存在ポリヌクレオチドとは別個の態様として提供される。細菌細胞で産生したタンパク質は、天然に産生される真核細胞から単離した天然存在タンパク質とは別個の態様として提供される。樹状細胞などの哺乳動物細胞は、生物において見出される解剖学的部位から取り除かれている場合、単離されている。
【0102】
「宿主細胞」、「ターゲット細胞」または「レシピエント細胞」は、外因性核酸分子、ポリヌクレオチドおよび/またはタンパク質のベクターまたは取り込みのためのレシピエントでありうるか、またはレシピエントである、任意の個々の細胞または細胞培養を含むよう意図される。単一細胞の子孫が含まれることもまた意図され、そして子孫は、天然の、偶発的な、または故意の突然変異のため、元来の親細胞に、必ずしも完全に同一(形態学的にまたはゲノムもしくは総DNA相補体において)でなくてもよい。細胞は、原核または真核であってもよいし、そして限定されるわけではないが、細菌細胞、酵母細胞、動物細胞、および哺乳動物細胞、例えば、ネズミ、ラット、サルまたはヒトが含まれる。
【0103】
「被験体」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物には、限定されるわけではないが、ネズミ、サル、ヒト、農場動物、スポーツ動物、およびペットが含まれる。
【0104】
「組成物」は、活性剤と、不活性(例えば検出可能剤または標識)または活性である別の化合物または組成物、例えばアジュバントとの組み合わせを意味するよう意図される。
「薬学的組成物」は、組成物をin vitro、in vivoまたはex vivoでの診断または療法的使用に適したものにする、不活性または活性であるキャリアーと、活性剤との組み合わせが含まれるよう意図される。
【0105】
本明細書において、用語「薬学的に許容されうるキャリアー」は、任意の標準的薬学的キャリアー、例えばリン酸緩衝生理食塩水溶液、水、およびエマルジョン、例えば油/水または水/油エマルジョン、多様なタイプの湿潤剤ならびに本明細書に開示する他の配合物を含む。組成物にはまた、安定化剤および保存剤も含まれてもよい。キャリアー、安定化剤およびアジュバントの例に関しては、Martin REMINGTON’S PHARM. SCI., 第18版(Mack Publ. Co., Easton(1990))を参照されたい。
【0106】
「有効量」は、免疫応答抑制、医学的状態(疾患、感染等)の治療、防止または改善などの、有益なまたは望ましい結果を達成するのに十分な量である。有効な量を1以上の投与、適用または投薬で投与してもよい。適切な投薬は、体重、年齢、健康状態、治療しようとする疾患または状態、および投与経路に応じて多様であろう。
【0107】
上記説明にしたがって、以下の実施例は、本発明の多様な側面を例示することを意図されるが、限定することを意図されない。常に明白に言及されてはいないが、本明細書に記載する試薬は、単に例示であり、そしてこうしたものの同等物が当該技術分野に知られることを理解しなければならない。
【実施例】
【0108】
一般的方法
一般的な技術に関しては、Current Protocols in Immunology, Coicoら監修(Wiley、ニュージャージー州ホーボーケン)を参照されたい。sCD83精製法に関しては、Lechmannら(2002) Protein Expr. Purif. 24:445−452を参照されたい。
【0109】
実施例1
大腸菌における組換えhCD83ext産生のためのバイオプロセスおよび下流精製
プラスミドpGEX2ThCD83ext(米国特許公報2007/0167607に開示され、そして図2に図示する)をhCD83extの発現に用いた。このプラスミド中、GST−hCD83ext融合タンパク質の発現は、IPTG誘導性tacプロモーターの制御下にある。融合タンパク質の配列を配列番号8に示す。この配列中、アミノ酸残基1〜5は、GSTタグに相当し、アミノ酸残基6〜13は、トロンビン切断部位に相当し、アミノ酸残基14〜138は、ヒトCD83細胞外ドメインに相当し、そしてアミノ酸残基139(イソロイシン)は、ヒトCD83細胞外ドメインの最初の隣接アミノ酸に相当する。GSTタグは、GSTアフィニティクロマトグラフィーを用いた融合タンパク質の捕捉を可能にする。次いで、hCD83ext部分を放出させるため、GSTおよびhCD83ext融合体の接合部のトロンビン切断部位(配列番号8のアミノ酸残基9および10の間)で、トロンビンによって、捕捉されたタンパク質を切断してもよい(カラム上またはカラムからはずれてのいずれかで)。GSTおよびhCD83ext間の接合部にトロンビン切断部位を設計するため、最終hCD83ext産物は、4つの余分なアミノ酸(すなわち、Gly−Ser−Pro−Gly;配列番号41)をアミノ末端に有する。
【0110】
hCD83ext発現に最適な宿主を選択するため、pGEX2ThCD83extを、いくつかの一般的な大腸菌株、DH5α、JM109、HB101およびBL21に形質転換した。大腸菌BL21は、他の発現宿主より優れていた(データ未提示)。BL21(F− ompT− gal− dcm− lon− hsdS(rb− mb−); ATCC寄託番号BAA−1025)は、2つのプロテアーゼ遺伝子(lonおよびompT)が不活性化されており、その結果、外来遺伝子産物のタンパク質分解が減少しているため、組換えタンパク質産生に特に適している。タンパク質分解の軽減は、大腸菌を発現宿主として用いる場合、真核起源を持つ組換えタンパク質、例えばhCD83extには特に重要である。
【0111】
培地レシピ、誘導条件(すなわち誘導のタイミングおよびIPTG濃度)、攪拌速度、および温度を含む、いくつかの培養パラメータを最適化させて、組換えhCD83ext収量を増加させた。最適化された方法において、BL21/pGEX2ThCD83extの単離コロニーを、50μg/mLアンピシリン(Ap)を加えた100mLのLB培地に接種し、そして200rpmの回転攪拌装置上、37℃でおよそ12時間インキュベーションして、シード培養を産生した。シード培養(80mL)を用いて、1L作業体積の培地(5g/L NaCl、20g/L Bacto酵母エキス、20g/L Bacto tryptone、5g/Lグルコース、および10μL/L Antifoam 289(Sigma、米国ミズーリ州セントルイス))を含有するベンチトップバイオリアクター(Omni−Culture、VirTis、米国ニューヨーク州ガーディナー)に接種した。細胞密度がOD600 〜2に到達したら、0.5mMのイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を誘導のために添加した。次いで、通気のため、フィルター滅菌した空気を2L/分でバイオリアクターにパージした。pH電極(Mettler−Toledo、スイス)、pH調節装置(PC310、Suntex、台湾・台北)、および2つの蠕動ポンプ(101U/R、Watson Marlow、英国ファルマス)の組み合わせを用いて、3N NH4OHまたは3N HClを添加することによって、培養pHを7.0±0.1で制御した。誘導後およそ6時間、バイオリアクターを28℃および650rpmで操作した。
【0112】
培養後、6000×gおよび2℃で、10分間遠心分離することによって細胞を採取し、重量測定し、そして後でプロセシングするため、ペレットを−80℃で保存した。典型的には、およそ20g湿細胞重量(wcw)の細胞ペレットを1L培養から得ることが可能であった。細胞ペレットを、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)中、0.05g−wcw/mLで再懸濁した。標準的チップを含む超音波プロセッサ−(Misonix)を用いて、およそ20 OD600のバッチ(20mL)の細胞懸濁物を4分間、断続的に超音波処理した(すなわち0.5秒オン/0.5秒オフ)。次いで、超音波処理した細胞溶解物を15,000×gおよび2℃で15分間遠心分離して、細胞破片を除いた。総可溶性タンパク質を含有する上清を0.45μmフィルターでろ過した後、続いてタンパク質精製のため、クロマトグラフィープロセシングを行い、そしてまた、GSTアッセイ、SDS−PAGE、およびウェスタンブロッティングによっても分析した。
【0113】
上述のように細胞抽出物を調製した後、組換えGST−hCD83ext融合タンパク質をプロセシングし、そして3つの主な工程によって精製した:1)GST−アフィニティカラムを用いた捕捉、2)液相にhCD83部分を放出するための、トロンビンを用いたカラム上切断、ならびに3)トロンビンおよび他の混入タンパク質(例えば内毒素)を除去するための陰イオン交換クロマトグラフィーによる精製(例えば、Bhikhabhaiら(2005) J. Chromatogr. 1080:83−92;およびDianら(2002) J. Chromatogr. 769:133−144を参照されたい)。より具体的には、捕捉工程において、上記の調製溶解物(すなわち超音波細胞由来のろ過上清、PBS中にGST−hCD83ext融合物を含む総可溶性タンパク質を含有する)をGSTアフィニティクロマトグラフィーカラム(GE Healthcare、カナダ・ケベック州ベーダルフェ)上に装填した。GST−アフィニティカラムは、およそ200U GST/mL−カラム−媒体で装填されたGST−hCD83extで飽和すると概算された。典型的な培養試料に関する特異的GST−hCD83ext発現レベルは、2.5U GST/OD600単位であるため、80 OD600単位細胞/mL−カラム−媒体から得た溶解物をGSTrapカラム内に装填した。
【0114】
結合したGST−hCD83extのin−situ切断に最適なトロンビン濃度および切断時間を決定した。GST−hCD83extで飽和させた2つの20mL GST−アフィニティカラムにまず、製造者によって示唆される濃度である80Uトロンビン/mL−カラム−媒体のトロンビン(Sigma)を手動で注入し、室温で2または4時間インキュベーションし、そして次いで、1カラム体積の結合緩衝液を用いて、hCD83extおよびトロンビンを含有するGSTアフィニティクロマトグラフィーカラム中のバルク液体を押し出した。次いで、溶出緩衝液(50mM Tris、10mMグルタチオン、pH8.0)を用いて、未消化GST−hCD83extとともに、GST部分をカラムから溶出させた。2時間のインキュベーションは切断するのに十分に長いことが観察された。切断効率を試験するため、2時間のインキュベーション時間を用いて、多様な濃度(すなわち80、40、20、10、および5Uトロンビン/mL−カラム−媒体)のトロンビンを5つの飽和GST−アフィニティカラム内に注入し、そして結果を図3に要約する。トロンビン濃度が10Uトロンビン/mL−カラム−媒体を超えると、95%より多いGST−hCD83extが切断され、これがカラム上切断を実行するのに最適なトロンビン濃度であることが決定された。こうした比較的低いトロンビン濃度では、インキュベーション時間を2.5時間に延長して、完全な切断を確実にした。この分画中のhCD83extの純度は、SDS−PAGE分析によれば高い(図3中のレーン2〜5)が、このGST後分画中のタンパク質は不安定であり、そして分解する傾向があった(データ未提示)。
【0115】
hCD83extから内毒素、トロンビンおよび他の混入タンパク質を除去するための精製工程を設計した。精製には、強陰イオン交換カラム(Q、GE Healthcare)を装備した低圧クロマトグラフィー系(BioLogic LP、BioRad、米国カリフォルニア州ハーキュルス)を用いた。50mM NaClを含むTris緩衝液(20mM、pH7.5)および1M NaClを含むTris緩衝液を、それぞれ、装填および溶出緩衝液として用いた。純粋なhCD83extを含有する分画をプールし、そして高圧攪拌セル(Amicon、YM10ディスクを用いたモデル8010、Millipore Canada、カナダ・オンタリオ州ケンブリッジ)を用いた限外ろ過で濃縮した。hCD83ext最終産物を保存前にろ過滅菌した。この最終産物分画を用いると、hCD83extの消光係数はおよそ1.16 OD280−mL/mg/cmであると決定された。タンパク質をさらに濃縮し、そしてまたは接線流ろ過(または類似の技術)を用いて、低pH緩衝液に緩衝液交換してもよい。各分画の典型的なクロマトグラムおよびタンパク質含量SDS/PAGE分析を含有する結果を、それぞれ、図4Aおよび4Bに要約する。示すように、フロースルーのプールは、精製された低内毒素hCD83extを含有した。
【0116】
実施例2
野生型hCD83extの構造的性質決定
精製野生型hCD83extは、実施例1に記載するように調製され、そして50%グリセロールの存在下または非存在下のいずれかで配合されると、4℃で保存した際、おそらくこの生体分子に固有の不安定性のため、分解された。したがって、このタンパク質を−20℃で保存し、この温度では、分解は完全に防止された。にもかかわらず、長期保存中、この凍結条件下でも、二量体化はなお生じる可能性があった。異なるバッチ由来の、そしてしたがって保存時間が異なる、いくつかのhCD83ext試料の還元および非還元SDS−PAGEを用いた分析結果を図5および6に要約する。これらの試料は還元SDS−PAGEによって分析した際、同一パターンを示した(図5)が、非還元SDS−PAGEによって分析した際、二量体組成物に関してまったく異なっていた(図6)。一般的に、二量体組成物は、試料の保存時間とともに、単調に増加し、この保存条件下で単量体から二量体に進行性に変換されていることを示す。多様な試料調製物に由来する少なくとも2つの異なる単量体型(レーン6、図6)および3つの異なる二量体型(レーン3および7、図6)があることに注目されたい。
【0117】
Lechmannら(Biochem. Biophys. Res. Commun. (2005) 329:132−139)は、hCD83ext二量体を形成する、分子内ジスルフィド結合を仲介する重要なアミノ酸残基として、hCD83extの五番目のシステインを同定した。しかし、上述の比較的酸性の条件下で保存すると、非還元SDS−PAGE分析によって、精製hCD83ext調製物が、二量体、三量体、四量体、そしてさらにより大きい多量体さえ形成する傾向があることが明らかになった(図7B)。抗CD83抗体を用いたウェスタンブロッティングによって、これらのより高い分子量のバンドの同一性を調べた。簡潔には、SDS−PAGE後、標準的プロトコルにしたがい、Mini Trans−Blot(登録商標)セル(Bio−Rad)を用いて、非還元SDS−PAGEによって分離したタンパク質(図7B)を、PVDF膜に電気ブロッティングした(Towbinら(1979) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 76:4350−4354)。100Vの定圧で1時間、電気泳動トランスファーを行った。Sambrookら Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press: New York, USA, 1989に記載されるように、タンパク質−抗体ハイブリダイゼーションを行った。マウス・モノクローナル抗CD83抗体(CD83−1G11、Cederlane laboratories limited、カナダ・オンタリオ州ホーンビー)を一次抗体として用いた。二次抗体は、西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ(Sigma)をコンジュゲート化したヤギ抗マウスIgGであった。3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸(DAB)を基質として用いた比色法によって、hCD83関連ポリペプチド(例えばGST−hCD83extおよびhCD83ext)を検出した。図7Cに示すように、二量体、三量体、四量体、およびさらにより高次の多量体に対応するバンドは、実際にhCD83ext関連であった。このデータは、hCD83extの最初の4つのシステイン残基の1以上が、分子内および/または分子間ジスルフィド結合の形成に関与することを暗示する。図6および7の単量体および二量体の多数の型は、おそらく、分子内ジスルフィド結合と関連するこれらの5つのシステイン残基の間の異なる対形成から生じうる。したがって、Cys129は、二量体化のための分子間ジスルフィド結合の形成を駆動する重要な残基ではあるが、他のシステイン残基も、多量体化のための分子間ジスルフィド結合の広範な形成に関与しうる。
【0118】
実施例3
新規hCD83ext(システインからセリン)突然変異体の構築、精製および性質決定
配列番号A(配列番号2に示すhCD83のアミノ酸残基20〜144に相当する)に示す野生型hCD83extには、5つのシステイン残基(すなわち配列番号A(配列番号1)のアミノ酸残基27(8)、35(16)、100(81)、107(88)、および129(110)、本明細書において、それぞれ、Cys1、Cys2、Cys3、Cys4、およびCys5と明記する)がある。Cys5は、先に、hCD83ext二量体形成に重要であることが立証されている(Lechmannら(2005))が、図6に示すように、より高次の多量体が存在することから、Cys5に加えて、他のシステイン残基が、分子間および分子内ジスルフィド結合形成に関与しうることが示唆される。この可能性を調べるため、hCD83extの他のシステイン残基の機能を研究するために、2つのプラスミドpGEX2ThCD83ext(上述)およびpGEX2ThCD83extmutC129S(米国特許公報2007/0167607に開示され、そしてAlexander Steinkasserer博士の好意によって提供された)を部位特異的突然変異誘発に用いた。pGEX2ThCD83extおよびpGEX2ThCD83extmutC129Sは、アミノ酸残基129のコドンを除いて同一である。pGEX2ThCD83extでは、このコドンは野生型システイン残基を指定し、一方、pGEX2ThCD83extmutC129Sでは、このコドンはセリン残基をコードするように突然変異されている。
【0119】
部位特異的突然変異誘発を用いて、3つの他のシステインコドン(すなわちCys2、Cys3、おyびCys4)の1以上をセリンコドンに突然変異させて、pGEX2ThCD83extまたはpGEX2ThCD83extmutC129Sから、10の新規プラスミドを構築した(注:これらのシステインからセリンへの突然変異を「C2S」突然変異と称する)。CD83 C2S突然変異体は、CD83m−X,Y,Zと称され、式中、X、Y、およびZは、C2S突然変異を伴うシステインの番号(単数または複数)を特定する。用語「CD83m−X,Y,Z」(例えばCD83m−3)は、用語「CD83ext−mX,Y,Z」(例えば、CD83ext−m3)と交換可能に用いられる。例えば、CD83m−3,4は、Cys100(すなわちCys3)およびCys107(すなわちCys4)の両方に、C2S突然変異を持つCD83突然変異体であり、一方、hCD83extmutC129Sの元来の突然変異体は、CD83m−5と明記されうる。表3中のプラスミドは、対応するCD83突然変異体の前に「p」を付加することによって名付けられる。配列番号によって表3中で言及されるsCD83配列は、膜貫通ドメインの最初のアミノ酸(Ile)を加えたCD83細胞外領域配列に相当する。これらの配列が、細胞外ドメインのN末端に融合されたGST部分およびトロンビン切断部位を含まず、またベクター配列も含まないことに注目すべきである。
【0120】
表3
プラスミドおよびオリゴヌクレオチド
【0121】
【表3】

【0122】
Cys2、Cys3、およびCys4コドンをターゲティングすることによる部位特異的突然変異誘発のため、3つのプライマー(すなわち表1中のCYS2、CYS3、およびCYS4)を用いた。スクリーニング目的のため、サイレント突然変異もまた導入して、新規制限部位(すなわちCys2およびCys4に関してはScaI、そしてCys3に関してはSacI)を生成した。ScaIおよびSacIで多様な突然変異プラスミドを制限消化して、C2S突然変異の望ましい組み合わせの存在に関してスクリーニングした(データ未提示)。各変異体hCD83ext融合タンパク質をコードする領域をDNA配列決定によって確認し、そしてコード領域に相当する(しかし、GSTタグおよびトロンビン切断部位を含まない)配列番号を表2に列挙する。本発明者らが得たプラスミドのすべてにおいて(そしておそらくpGEX2ThCD83extおよびpGEX2ThCD83extmutC129Sにおいてもまた)、「AGG」のアルギニンコドン(hCD83extのアミノ酸残基番号50)は、GenBankに寄託されるCD83 cDNA配列中の「AGA」の対応するアルギニンコドンとは異なるが、この相違は、CD83タンパク質配列に影響を及ぼさないことに注目されたい。
【0123】
実施例1に記載する発酵および精製プロトコルを用いて、各CD83突然変異体の産生および精製を行った。典型的には、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEC)を用いた精製工程のクロマトグラムプロフィール中、2つの主なタンパク質溶出ピークが現れ、そして第一のピークに相当する分画をプールし、そして濃縮して、最終hCD83ext産物を形成する。しかし、CD83m−2,5の精製のための精製工程の第一のピークは、通常の実験条件下で有意に減少するようであり、そしてCD83m−2,5の大部分は、塩勾配を適用した際の第二のピーク中に溶出した(図8)。こうした低収量は、緩衝液pHを6.5に減少させても改善されなかった(データ未提示)。にもかかわらず、CD83m−2,5は、小さい第一のピークに相当する分画をプールすることによって、なお精製可能であった。構造的性質決定によって、CD83m−2,5のバンドパターンが、還元および非還元SDS−PAGE分析(それぞれ図9および10)下で、野生型hCD83extに類似であることが明らかになったが、タンパク質は、円二色性(CD)(図11)および分光蛍光測定(図12)を用いた分光分析に際して、極端に異なるプロフィールを示した。CD83m−2(図13)およびCD83m−2,3,5(データ未提示)の2つの他の突然変異体を精製する際、類似の結果が観察された。CD83m−2、CD83m−2,5およびCD83m−2,3,5は、Cys2上のC2S突然変異を共有するため、データは、この突然変異が、タンパク質構造または生化学特性に有意な変化を生じ、これがAEC樹脂への結合を増進し、そして続いて精製工程中の溶出プロフィールに影響を及ぼしたことを示唆する。タンパク質構造予測に基づくと、Cys2およびCys4間で分子内ジスルフィド結合が形成されることも可能であった。この分子内ジスルフィド結合の存在は、タンパク質構造を安定させるのに、または生物活性を改善するのにさえ重要でありうる。
【0124】
野生型hCD83extおよびCD83m−5に関するものと正確に同じ発酵および下流プロセシングプロトコルを用いて、CD83m−3を産生し、そして精製した。AECを用いた精製工程中、2つの主なタンパク質溶出ピークが現れ(図14)、そしてCD83m−2に関連する上記の産生上の問題はCD83m−3の産生の際には観察されず、このことから、Cys3およびCys5上のC2S突然変異は、主な構造変化を生じないと暗示された。精製CD83m−3を、SDS−PAGE(図15)、CD(図16および17)、および分光蛍光測定(図18)を用いた構造的性質決定に供し、野生型hCD83extおよびCD83m−5と類似の結果を得た。非還元SDS−PAGE上に、明確なそして再生可能なダブレットが観察されることに注目されたい(図15)。また、CD83m−3ダブレットに相当するこれらの2つのバンドはいずれも、CD83m−5の単量体種と同一の移動度を持たないようであるが、上部CD83m−3バンドは、野生型hCD83extの単量体種と同一の移動度を有するようであることに注目されたい(図19)。非還元SDS−PAGEのための試料調製中、潜在的なジスルフィド結合スクランブル化を回避するため、N−エチルマレイミド(NEM)で試料を前処理することによって、プロトコルを修飾した。NEMは、ジスルフィド結合を形成していないシステイン残基上の未結合(free)チオール基をアルキル化し、そしてそれによって、そのシステイン残基による続くジスルフィド結合を防止する。NEMを用いた修飾プロトコルは、いかなる潜在的なジスルフィド結合スクランブル化も防止することによって、より信頼性があり、そして一貫した、CD83二量体の定量化法を提供するようであり、そしてCD83単量体は、ダブレットではなく、単一のバンドとして観察される(図20)。
【0125】
先に、Zinserら(Immunobiology(2006) 211:449−453)は、Cys5が、CD83二量体化に関与する主なシステインであり、そしてhCD83ext−m5は二量体ではなく単量体を形成すると報告した。しかし、本発明者らは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC;図21)で分析した際、有意なhCD83ext−m5二量体化を観察し、そしてこの結果は、NEM前処理を伴う修飾プロトコルを用いた非還元SDS−PAGE結果と一致していた(図20)。驚くべきことに、SEC(図21)および修飾NEMプロトコルを伴う非還元SDS−PAGE(図20)の結果に基づくと、hCD83ext−m3の二量体化は存在しないかまたは最小限だった。これらの結果によって、Cys3またはさらに他のシステイン残基(すなわちCys1、Cys2、およびCys4)もまた、CD83二量体化に特定の役割を果たしうることが示唆される。hCD83ext−m3分子は、野生型hCD83extの単量体種と同一の移動度を有するが、CD83m−5よりわずかに高い移動度を有するようであることに注目されたい(図20)。したがって、hCD83ext−m3およびhCD83ext−m5の単量体型は異なる構造を有する可能性もあるが、hCD83ext−m3単量体は、野生型hCD83ext単量体と類似のまたはさらに同一のタンパク質構造を有する可能性もある。これらのCD83変異体はすべて、還元SDS−PAGE(図22)および還元SEC(図23)で分析した際、同一のバンドパターンを有するようであり、この中で、単量体種のみが観察された。
【0126】
要約すると、非還元SDS−PAGE(図24)を用いて、本発明者らは、hCD83ext−m5が単量体としてのみ存在する(自分自身に対する注:この刊行物を再検討する)という以前の主張とは対照的に、この突然変異体種中の他のシステイン残基が、二量体、三量体、およびさらに四量体を形成する多量体化に関与しうることを示した。ウェスタンブロッティングを用いて、これらの多量体種は、CD83と会合することが示されている(図25)。
【0127】
実施例4
hCD83ext野生型、hCD83m3およびhCD83m5生物活性の比較、ならびにタンパク質安定性に対するpHの影響
LPS/IFN−γで刺激した末梢血単核細胞(PBMC)によるTNFα産生を野生型および突然変異体hCD38extが阻害する能力を、カニクイザル(cynomolgus monkeys)由来のPBMCを用いたin vitroアッセイで評価した。具体的には、カニクイザルPBMCを単離し、そして異なる濃度(0.5、5、25および100μg/ml)のhCD83ext野生型(pH4.5または5.5で配合)、hCD83ext−m3またはhCD83ext−m5(501−1)で12時間、前処理した。hCD83ext−m3およびhCD83ext−m5を、それぞれ、pH5.5または7.6で配合した。次いで、細胞を、ブレフェルディンA(4μg/ml)の存在下、IFN−γ(100U/ml)を加えたLPS(1μg/ml)で6時間活性化し、そして次いで、商業的に入手可能なFix/Permキットを用いて、TNFαに関して細胞内染色した。骨髄性樹状細胞または単球のいずれかを用いて、TNFα産生量のフローサイトメトリー取得および分析を評価した。結果を、TNFαを産生するmDCまたは単球の%として、および細胞あたりに基づくTNFαのレベルを示す平均蛍光単位(MFU)で表す。図26に示すように、刺激されたPBMCによるTNFα産生を阻害する際に、hCD83m−3はm5突然変異体より活性であり、m5は野生型hCD93extよりも活性である。さらに、hCD83ext野生型は、pH5.5で配合された際よりも、pH4.5で配合された際、より高い活性を保持する。pH4.5またはpH5.5いずれかでのhCD83ext野生型の配合物は、pH7.6での配合物よりもより活性である(データ未提示)。
【0128】
hCD83ext−m5およびhCD83ext野生型の活性は、野生型およびm3突然変異体タンパク質の両方がpH7.6で配合されたことを除いて、上述のものと類似のTNFα阻害アッセイにおいて、匹敵した。図27に示すように、hCD83ext−m5は、LPS/IFN−γで刺激したカニクイザルPBMCによるTNFα産生を阻害する能力において、hCD83ext野生型の2つの調製物より優れていた。
【0129】
元来、pH7.6に配合されたhCD83ext野生型タンパク質(図26および27にデータを示す)を、pH4.5または5.5の緩衝液に緩衝液交換し、そしてin vitroで、LPS/IFN−γで刺激したカニクイザルPBMCによるTNFα産生を阻害する能力に関して、上述のように再試験した。図28に示すデータによって、野生型(WT)タンパク質の生物活性が、酸性緩衝液(pH4.5または5.5)中に物質を配合することによって増進されうることが立証される。したがって、約4.5〜5.5のpHは、環境ストレス(例えば酸化、脱アミン化、温度等)の影響を潜在的に最小限にすることによって、hCD83extを安定化しうる。しかし、hCD83ext−m3をpH5.5で配合すると、pH4.5または5.5のいずれかで配合された野生型よりもより活性が高かった(図29)。hCD83ext−m3はまた、hCD83ext−m5より活性が高かったが、pH5.5のhCD83m−5は、このアッセイでは試験されなかった。興味深いことに、hCD38ext野生型、hCD83ext−m3およびhCD83ext−m5が移植片拒絶を阻害する能力をin vivoマウス心臓移植モデル(1日あたりマウスあたり100μgを8日間)で試験した際、移植片生存を延長させる能力にはほとんど違いがないようであった。単一療法として使用すると、各型は、移植片生存の8日間の平均生存時間をおよそ14日間に延長させることが可能であった。市販の免疫抑制剤(シクロスポリンを含む)と組み合わせると、すべての型は、類似の相乗的長期生存プロフィールを示した。したがって、hCD83ext−m3およびpH調整(低いpHへの調整)の1つの価値は、改善された全体のタンパク質安定性であるように思われる。
【0130】
hCD83ext野生型に比較した際のhCD83ext−m3の安定性/活性の改善を、ヒトPBMCを用いた類似のアッセイで確認した。図30に示すように、hCD83ext−m3の4つの異なる調製物(PBS、pH5.5中で配合した−002−2−3; Tris、pH7.6中で配合した−002−1; PBS pH5.5中で配合した−003−2−2、およびPBS、pH4.5中で配合した−003−3−2)は、LPS/IFN−γで刺激したヒトPBMCによるTNFα産生を阻害する能力において、hCD83ext野生型(PBS pH7.6中で配合され、ARG−021と称される)より優れていた。
【0131】
実施例5
グリセロールはhCD83ext配合物を安定させる
hCD83extを保存のため最終濃度50%のグリセロール(より低いグリセロール濃度もまた使用可能である)で配合し、そして続いて、C57BL/6からBALB/cマウスへの心臓移植モデルにおいて、シクロスポリンと組み合わせて、最終グリセロール濃度8%でin vivoで試験すると、長期移植片生存(>100日間)が記録される一方、この併用研究からグリセロールを省いた実験では、平均生存は、およそ14日間に制限された。
【0132】
実施例6
野生型hCD83extの強制的分解(force−degradation)
野生型hCD83extストック溶液(PBS pH7.6中の凍結アリコット、〜6mg CD83/mL)のロット021を用いた強制的分解研究を以下のように行った。いくつかのアリコットを融解し、そして組み合わせた。以下の表に記載するように、溶液を調製した:
表4
強制的分解研究のためのストレス条件
【0133】
【表4】

【0134】
言及する曝露時間の終了時、酸性および塩基性試料を中和した。SE−HPLCおよび等電点電気泳動(IEF)ゲルを用いて分析するまで、すべての試料を−20℃で保存した。SEC−HPLC結果を表5に提供する。
【0135】
表5
SEC−HPLC:強制的分解研究の要約
【0136】
【表5】

【0137】
SE−HPLCおよび等電点電気泳動法を用いて生成されたデータ(未提示)によって、hCD83extの分解産物が、出発物質よりもより電気陰性であることが示される。これは主に、多重脱アミド化または加水分解に起因する可能性もあり、そして継続中の前配合(preformulation)研究において評価されるであろう。これらのデータはまた、酸性pHが、hCD83extの凝集状態および電荷状態の両方に関して安定化させることもまた示唆する。電荷状態に関しては、pIは6.9である。別の主なバンドが、室温(RT)対照中、pI 〜6.8に現れる。
【0138】
分子サイズの側面から、酸性条件(pH〜2)は、単量体を支持する(〜4%凝集、RT対照と同じ)。すべての他の条件(塩基、過酸化物、熱、光、RT)は、凝集増加を示した。hCD83extは、光安定性であるようである。この試料に関して観察される分解は、光よりも周囲条件に対する曝露のためである可能性が最も高い。熱(70℃)および塩基性条件(pH〜12)の両方が、迅速な分解を引き起こすことが明らかであり;4時間後、主要なバンドは存在せず、そして多くの電気陰性バンドが観察される。酸性条件(pH〜2)は、hCD83extの凝集状態および電荷状態の両方に関して、タンパク質を安定化させるようである。IEFプロフィールは、RT対照と比較した際であっても、損なわれていないようである。
【0139】
pHの役割およびタンパク質安定性に対する影響をさらに調べるため、野生型hCD83ext(pH7.6のPBS中のロット021)を新鮮に融解し、そして分析する(表6の第一列)か、または室温および2〜8℃、4、5、6、7、8および9のpHで保存した。1、2、4および10日の保存後に分析するまで、試料を−70℃で維持した。次いで、SEC HPLC(表6)によって、またはSDS−PAGE Bioanalyzer(還元および非還元条件下;図31〜35)を用いることによって、これらの試料を分析した。
【0140】
表6
pH分解速度研究に関するSE−HPLC結果要約
【0141】
【表6】

【0142】
これらのデータによって、sCD83が低pH(pH4〜5)で緩衝された際に、sCD83安定性を支持する条件がより好ましいことが示唆され、これらの条件下では、凝集および電荷状態の変化が最小限であるようである。さらに、塩基、過酸化物、熱、光、または室温条件への曝露は、凝集または断片化およびまたは分解を増加させるようである。
【0143】
以下の動物実験はすべて、動物ケアガイドラインに関するカナダ評議会にしたがって行った。以下に記載する実験は、野生型(hCD83ext−wt;配列番号5)またはm3突然変異型(hCD83ext−m3;配列番号7、ここで、アミノ酸12、20、92および114はシステイン(Cys)であり、そしてアミノ酸85はセリン(Ser)である))のいずれかの大腸菌から精製した、組換えヒトsCD83を用いた。
【0144】
実施例7
hCD83ext−m3は、ネズミ腎臓移植モデルにおいて、長期同種移植片寛容を誘導する
マウス同所性腎臓移植モデル(Zhangら(2005) Microsurgery 16(2):103−109を参照されたい)を用いて、hCD83ext−m3が同種移植片寛容を誘導する能力を評価した。BALB/cマウスに、C57BL/6マウスドナー由来の腎臓同種移植片を移植した。レシピエントマウスを処置しない(2匹のマウス)か、または移植1日前(第−1日)、移植日(第0日)および術後(POD)7日間、レシピエントマウスにhCD83ext−m3(3匹のマウス;100μg/マウス/日、i.v.)を投与するかいずれかを行った。2匹の未処置マウスは、28日および35日生存し、31±4.9日の平均生存時間(MST)を生じた。hCD83ext−m3で処置した3匹のマウスは、各々、100PODを超えて生存した。したがって、hCD83ext−m3での単一療法は、マウス同所性腎臓移植モデルにおいて、長期同種移植片許容を導く。別個の実験において、hCD83ext−wtでの処置によって類似の結果が得られた。
【0145】
実施例8
単独のまたはシクロスポリンAと組み合わせたCD83ext−wtまたはCD83−m3は、ネズミ異所性心臓同種移植片モデルにおいて、移植片拒絶を抑制する
動物モデル:C57BL/6からBALB/cマウスへの心臓移植モデル
ネズミ異所性心臓同種移植片モデルを用いて、単独のまたはシクロスポリンA(CsA)との組み合わせいずれかのhCD83ext−m3が、異所性心臓移植の拒絶を防止する効果を決定した。雄成体C57BL/6(H−2b)をドナーとして用いて、そしてBALB/c(H−2d)マウスをレシピエントとして用いた(Jackson Laboratories、メリーランド州バーハーバー)。先に記載されるように、腹腔内異所性心臓移植を行った(Corryら(1973) Transplantation 16(4):343−350、およびWangら(2007) J Immunol 179(7):4451−4463)。この研究において、移植手術は、C57BL/6ドナーからBALB/cレシピエントへの完全MHCミスマッチ心臓の移植を伴い、自己の心臓ならびに同種心臓がレシピエントに存在した。
【0146】
心臓移植レシピエントを以下のように処置した:第1群(5匹のレシピエント)には処置を行わなかった。第2群(3匹のレシピエント)には、−1〜+7 PODまで、100μg/マウス/日で、i.v.によってhCD38ext−m3単一療法を行った。第3群(4匹のレシピエント)には、実験終了まで毎日、s.c.でのCsA 15mg/kg/日を加えて、−1〜+7PODまで、100μg/マウス/日で、i.v.によってhCD83ext−m3単一療法を行った。移植片の心拍を監視し、そして二重盲検方式で、直接腹部触診によって、毎日評価して、心臓の健康状態/拒絶を検出した。同種心臓が拍動し続けた術後(POD)日数で、心臓移植片生存を測定した。結果を表7に示す。
【0147】
表7
【0148】
【表7】

【0149】
別個の実験において、hCD83ext−wt単独、CsA単独、またはCsAを加えたhCD83ext−wtが心臓移植片拒絶を抑制する能力を、上述のように評価した。心臓移植レシピエントを以下のように処置した:第4群(4匹のレシピエント)には、移植前日から移植片拒絶まで、100μg/マウス/日で、i.v.によってhCD83ext−wt(配列番号5)単一療法を行った。第5群(6匹のレシピエント)には、CsA単一療法(15mg/kg/日、毎日、s.c.)を行った。第6群(4匹のレシピエント)には、移植前日から移植7日後まで、s.c.でのCsA 15mg/kg/日を加えて、100μg/マウス/日で、i.v.によってhCD83ext−wtを投与した。結果を表8に示す。
【0150】
表8
【0151】
【表8】

【0152】
動物は、心臓移植片の強い拍動で死亡した(処置関連とは考えられない)
上記実験によって、hCD83ext−m3およびhCD83ext−wt単一療法は、未処置対照に比較して、およそ2倍、同種移植片生存を延長することが立証される。さらに、hCD83ext−m3およびCD83ext−wtはCsAと相乗作用して、CsA単一療法と比較して、長期同種移植片生存を可能にする。
【0153】
さらなる実験において、hCD83ext−m3(100μg、i.v.、第−1日〜+7日)を加えたPOD50までのCsAでのマウス心臓移植レシピエントの処置によって、第50日の毎日のCsA療法の休止後、拒絶の欠如によって立証されるように、完全同種移植片寛容が導かれる(データ未提示)。対照的に、CsA単一療法またはhCD83ext−m3単一療法は、約13〜17日後に拒絶を導き、hCD83ext−m3がCsAと相乗作用することを示す(表7および8を参照されたい)。驚くべきことに、併用療法は、CsAを第28日に退薬した際、永続的な同種移植片寛容を導かず、完全に薬剤から独立した寛容を達成するには、予想外に長期の、拒絶を伴わない生存期間が必要であることが示される(データ未提示)。hCD83ext−m3の用量がより少ない(すなわち第−1日〜+1日に3用量)と、CsAとの完全相乗作用は導かれるが、第50日にCsAを退薬した際に、迅速に拒絶されることによって立証されるように、免疫寛容(operational tolerance)は不完全である。したがって、同種移植片寛容の誘導に対する用量反応効果が立証される。
【0154】
実施例9
hCD83ext−m3は、ラット腎臓同種移植片の慢性拒絶を防止する
ヒトにおいて、慢性拒絶は、移植の数ヶ月から数年後に起こり、そして移植片喪失の最も一般的な原因である。慢性拒絶は、移植片機能の緩慢な悪化を生じ、尿細管萎縮、間質性線維症および動脈の線維性内膜肥厚によって、腎臓において病理学的に特徴付けられる。
【0155】
よく確立されたラット腎移植モデル(本質的に、その内容が本明細書に援用されるBedardら(2006) Transplantation 81(6):908−14および米国特許7,514,405に記載されるとおり)を用いて、CsAと組み合わせてhCD83ext−m3が慢性拒絶を抑制可能であるかどうかを評価した。このモデルにおいて、腎移植レシピエントを短期(11日)用量のシクロスポリン(CsA)で処置して、初期の急性拒絶を防止する。こうした移植レシピエントは、確実に、移植後(POD)140日までに慢性移植片拒絶に特徴的な病理学的変化を示す。
【0156】
F344ラットは、Lewisラットの腎ドナーとして働いた。3匹の対照移植レシピエントを療法用量未満のCsA単独(0.75mg/kg/日; POD 0〜10)で処置した。3匹の移植片レシピエントの第2群をCsA(0.75mg/kg/日; POD 0〜10)およびhCD83ext−m3(100μg/日、i.v.、POD 1〜7)で処置した。移植レシピエントをPOD 140に屠殺し、そして組織学および免疫組織化学によって、慢性拒絶の徴候に関して、移植腎臓を評価した。独立の病理学者によって、尿細管萎縮、糸球体萎縮、間質性線維症、内膜肥厚、細胞浸潤物および皮質瘢痕を0〜4のスケールで評価して腎組織学をスコア付けした、ここで0=正常、1=最小限の変化、2=軽度の変化、3=中程度の変化および4=顕著な変化である。図36に示すように、hCD83ext−m3を加えたCsA処置は、CsA単独での処置に比較した際、各カテゴリーにおいて、スコアを有意に(p<0.05)改善した。図37中のデータによって、hCD83ext−m3は、糸球体(G)および尿細管周囲毛細血管(PTC)におけるIgGおよびIgM抗体沈着に関して、腎同種移植片の免疫組織化学等級付けを有意に(p<0.05)改善し、そしてCD2、CD4およびED−1細胞による細胞浸潤物を減少させることを立証する。要約すると、CsAと組み合わせたhCD83ext−m3は、ラット腎臓移植モデルにおいて、慢性同種移植片拒絶を防止する。CsAを加えたhCD83ext−m3処置による慢性拒絶の防止は、移植片内抗体沈着の下方制御および尿細管萎縮/間質性線維症の防止と関連づけられ、これは腎臓移植レシピエントにおける慢性拒絶の組織学的特徴である。これらのデータは、hCD83ext−m3の多重機能性を強調する。上記のマウス心臓および腎臓移植研究において立証されるように、急性細胞性拒絶を遮断する能力に加えて、このモデルは、慢性炎症および体液性免疫応答を抑制する能力を例示する(すなわち慢性拒絶病理学は、急性細胞性拒絶からは独立である)。
【0157】
実施例10
シクロスポリンAを加えたhCD83ext−m3での処置は、非ヒト霊長類における腎移植片生存を延長する
各レシピエント・カニクイザルの1つの腎臓を、別のカニクイザルから取り除いた腎臓で置き換えた。さらに、移植された腎臓が生命を維持するように、レシピエントの移植されていない腎臓を外科的に取り除いた。3頭の移植レシピエントを、50日までの毎日の療法用量未満CsA(10mg/kg、i.m.)とともに、−1〜+7 POD(9用量)のhCD83ext−m3(3mg/kg)i.v.で処置した。対照群の3頭の移植レシピエントには、CsA(10mg/kg、i.m.)単一療法を行った。尿排出量、血清クレアチニンレベル、ならびに食物および水消費の評価を含む方法によって、同種移植片拒絶に関して、すべての動物を監視した。各群1頭の動物を早期に(急性拒絶に基づかずに)安楽死させる必要があり、研究終点分析のため、各群2頭の動物を残した。結果を表9に示す。
【0158】
表9
【0159】
【表9】

【0160】
対照動物(CsA単一療法を受けた)のどちらもCsA終結日(第50日)まで生存せず、一方、CsAに加えてhCD83ext−m3処置動物はどちらも第50日に拒絶臨床症状をまったく示さなかった(すなわち正常の食欲、クレアチニン、および尿排出量)。しかし、CsA終結に際して、どちらのhCD83ext−m3処置動物も迅速に拒絶し、急性拒絶を調節する寛容誘導が不十分であることが示された。
【0161】
次の実験において、腎臓移植レシピエントには、90日まで毎日CsA(10mg/kg、i.m.)を加えて、hCD83ext−m3(10gm/kg/2×日、i.v. 第−1日〜+13 POD)を投与し、その後、2週間ごとにCsAを50%減少させて、(1)CsAとの臨床的に適切な相乗作用を立証し、そして(2)誘導される免疫寛容レベルを評価するであろう。
【配列表フリーテキスト】
【0162】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、シグナル配列を含む、全長ヒトCD83タンパク質をコードするcDNAを示す。
【0163】
配列番号2は、シグナル配列を含む、全長ヒトCD83タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号3は、ヒトCD83細胞外ドメイン(hCD83ext)のアミノ酸配列をコードするcDNAを示す。
【0164】
配列番号4は、ヒトCD83細胞外ドメイン(hCD83ext)のアミノ酸配列を示す。
配列番号5は、アミノ末端に、アミノ酸残基(Gly−Ser−Pro−Gly;配列番号41)を、そしてカルボキシ末端に膜貫通ドメインの最初のアミノ酸(Ile)をさらに含む、ヒトCD83細胞外ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0165】
配列番号6は、114位の五番目のシステイン残基がセリン残基に突然変異している、配列番号5の変異体を示す。
配列番号7は、残基Xaaが任意のアミノ酸を示す、配列番号5の変異体を示す。
【0166】
配列番号8は、GST−hCD83ext融合タンパク質を示す。GSTおよびhCD83extドメインは、トロンビン切断部位によって分離される。
配列番号9は、膜貫通ドメインの最初のアミノ酸(Ile)をさらに含む、野生型hCD83細胞外ドメインを示す。
【0167】
配列番号10は、配列番号9のm5 C2S突然変異体をコードするDNAを示す。
配列番号11は、配列番号9のm5 C2S突然変異体を示す。
配列番号12は、配列番号9のm2 C2S突然変異体をコードするDNAを示す。
【0168】
配列番号13は、配列番号9のm2 C2S突然変異体を示す。
配列番号14は、配列番号9のm3 C2S突然変異体をコードするDNAを示す。
配列番号15は、配列番号9のm3 C2S突然変異体を示す。
【0169】
配列番号16は、配列番号9のm4 C2S突然変異体をコードするDNAを示す。
配列番号17は、配列番号9のm4 C2S突然変異体を示す。
配列番号18は、配列番号9のm2,3 C2S突然変異体をコードするDNAを示す。
【0170】
配列番号19は、配列番号9のm2,3 C2S突然変異体を示す。
配列番号20は、配列番号9のm3,4 C2S突然変異体をコードするDNAを示す。
【0171】
配列番号21は、配列番号9のm3,4 C2S突然変異体を示す。
配列番号22は、配列番号9のm2,5 C2S突然変異体をコードするDNAを示す。
【0172】
配列番号23は、配列番号9のm2,5 C2S突然変異体を示す。
配列番号24は、配列番号9のm3,5 C2S突然変異体をコードするDNAを示す。
【0173】
配列番号25は、配列番号9のm3,5 C2S突然変異体を示す。
配列番号26は、配列番号9のm4,5 C2S突然変異体をコードするDNAを示す。
【0174】
配列番号27は、配列番号9のm4,5 C2S突然変異体を示す。
配列番号28は、配列番号9のm2,3,5 C2S突然変異体をコードするDNAを示す。
【0175】
配列番号29は、配列番号9のm2,3,5 C2S突然変異体を示す。
配列番号30は、配列番号9のm3,4,5 C2S突然変異体をコードするDNAを示す。
【0176】
配列番号31は、配列番号9のm3,4,5 C2S突然変異体を示す。
配列番号32は、配列番号9の第二のシステインでのC2S突然変異誘発のためのプライマーを示す。
【0177】
配列番号33は、配列番号9の第三のシステインでのC2S突然変異誘発のためのプライマーを示す。
配列番号34は、配列番号9の第四のシステインでのC2S突然変異誘発のためのプライマーを示す。
【0178】
配列番号35は、パン・トログロイテス(Pan trogloytes)(チンパンジー)由来のCD83タンパク質を示し、そしてNCBI参照配列: XP 518248.2に相当する。
【0179】
配列番号36は、カニス・ルプス・ファミリアリス(Canis lupus familiaris)(イヌ)由来のCD83タンパク質を示し、そしてNCBI参照配列: XP 852647.1に相当する。
【0180】
配列番号37は、ボス・タウルス(Bos taurus)(ウシ)由来のCD83タンパク質を示し、そしてNCBI参照配列: NP 001040055.1に相当する。
【0181】
配列番号38は、ムス・ムスクルス(Mus musculus)(マウス)由来のCD83タンパク質を示し、そしてNCBI参照配列: NP 033986.1に相当する。
【0182】
配列番号39は、ラトゥス・ノルベギクス(Ratus norvegicus)(ノルウェイラット)由来のCD83タンパク質を示し、そしてNCBI参照配列: XP 341510.2に相当する。
【0183】
配列番号40は、ガルス・ガルス(Gallus gallus)(赤色野鶏(red jungle fowl))由来のCD83タンパク質を示し、そしてNCBI参照配列: XP 41829.1に相当する。
【0184】
配列番号41は、Gly−Pro−Ser−Glyに相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離sCD83ポリペプチドであって;配列番号7のアミノ酸残基12、20、85および92の1以上が存在しないか、またはシステイン以外のアミノ酸であり;そして場合によって、アミノ酸残基1、2、3、4および130の1以上が存在しない、前記ポリペプチド。
【請求項2】
アミノ酸残基85がシステイン以外のアミノ酸残基である、請求項1のポリペプチド。
【請求項3】
アミノ酸残基12、20、92および114がシステインである、請求項2のポリペプチド。
【請求項4】
アミノ酸残基85がセリンである、請求項3のポリペプチド。
【請求項5】
配列同一性が少なくとも95%である、請求項1〜4のいずれか一項のポリペプチド。
【請求項6】
配列同一性が100%である、請求項5のポリペプチド。
【請求項7】
配列番号7、配列番号7のアミノ酸残基1〜129、配列番号7のアミノ酸残基5〜129、および配列番号7のアミノ酸残基5〜130からなる群より選択される配列からなる、請求項1のポリペプチド。
【請求項8】
アミノ酸残基12、20、92および114がシステインである、請求項7のポリペプチド。
【請求項9】
アミノ酸残基85がセリンである、請求項8のポリペプチド。
【請求項10】
配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29および配列番号31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単離sCD83ポリペプチドであって;場合によってアミノ酸残基126が存在しない、前記ポリペプチド。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項のポリペプチドを含む薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項13】
哺乳動物被験体において、望ましくない免疫応答を治療するかまたは防止する方法であって、請求項1〜10のいずれか一項のポリペプチドを前記被験体に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項14】
望ましくない免疫応答が、自己免疫疾患、移植片拒絶およびアレルギーからなる群より選択される、請求項13の方法。
【請求項15】
自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、天疱瘡、グレーブス病、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己心筋炎(automyocarditis)、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、自己免疫網膜ブドウ膜炎、血管炎、慢性炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎、ビヒテレフ病(Morbus Bechterew)、強直性脊椎炎および慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群より選択される、請求項14の方法。
【請求項16】
望ましくない免疫応答が移植片拒絶である、請求項15の方法。
【請求項17】
シクロスポリンA(CsA);抗CD45RBモノクローナル抗体を加えたラパマイシン;およびミコフェノール酸モフェチル(MMF)を加えたタクロリムス(FK506)の1以上を投与する工程をさらに含む、請求項13〜16のいずれか一項の方法。
【請求項18】
哺乳動物被験体において、望ましくない免疫応答を治療するかまたは防止するための薬剤の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項のポリペプチドの使用。
【請求項19】
望ましくない免疫応答が、自己免疫疾患、移植片拒絶およびアレルギーからなる群より選択される、請求項18の使用。
【請求項20】
自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、天疱瘡、グレーブス病、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己心筋炎、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、自己免疫網膜ブドウ膜炎、血管炎、慢性炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎、ビヒテレフ病、強直性脊椎炎および慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群より選択される、請求項19の使用。
【請求項21】
哺乳動物移植レシピエントにおいて、移植転帰を改善する方法であって、請求項1〜10のいずれか一項のポリペプチドの療法的有効量および1以上の免疫抑制剤を前記レシピエントに投与する工程を含み、免疫抑制剤が前記ポリペプチドと相乗的に働いて、移植転帰を改善する、前記方法。
【請求項22】
前記免疫抑制剤がシクロスポリンAである、請求項21の方法。
【請求項23】
前記免疫抑制剤が、抗CD45RBモノクローナル抗体を加えたラパマイシン;またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)を加えたタクロリムス(FK506)である、請求項21の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公表番号】特表2011−520959(P2011−520959A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510515(P2011−510515)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/003174
【国際公開番号】WO2009/142759
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(506175781)アルゴス・セラピューティクス・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】