説明

新規吸熱シート

【課題】携帯電子機器の軽薄短小化に対応した厚さでありながら、シートとして扱え、携帯電子機器内部の急激な発熱を生じる電子部品や、電子機器の筐体に貼り付けることで、急激な温度上昇を抑制し、携帯型電子機器が使用する人が熱い感じる温度に上昇するのを抑制できる吸熱シートを提供すること。
【解決手段】a)基材、b)マイクロカプセル型吸熱性物質、及びc)バインダーを構成材料とする厚さ400μm以下の吸熱シートであって、該吸熱シートの吸熱量が、20℃以上70℃以下の温度範囲で10,000J/m以上であり、かつ、吸熱ピーク温度の内の少なくとも一つが30℃以上60℃未満であることを特徴とする前記吸熱シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に使用される部品の熱対策のために使用される吸熱シートに関するものであり、特に、携帯型の電子機器の接触体感温度低減用の吸熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、デジタルビデオカメラ、デジタルスチールカメラ、ノート型パソコン等の携帯電子機器は軽薄短小化と、高性能、多機能化が進んでいる。これは、半導体集積回路(以下IC)の高集積化と高速化の推進、プリント配線基板(以下PWB)の実装密度の向上により実現されている。しかしながら、ICの高集積化、高速化は消費電力密度の増大をもたらし、ICの発生熱量が増加してしまう。この発熱量が大きいICがプリント配線基板上に高密度で実装されることで単位面積当たりの発熱量が増加し、更に電子機器の小型化、薄型化による空間の減少、熱容量の低下により、電子機器の温度が上昇する。この電子機器の温度上昇は様々な不具合をもたらす。
【0003】
上記不具合の一つは、ICの機能的障害である。ICは熱に極めて敏感であり、単純な抵抗器でさえ、温度が20℃上昇することで、抵抗値は1%程度の変化を起こすといわれている。ICは機能、種類により、使用可能な上限温度は様々であるが、ネットワーク型抵抗器の多くは70℃以上の温度で、電力負荷軽減を行う必要があり、70℃以下の温度で使用できるような熱対策が望まれている。
【0004】
また、携帯型電子機器では温度上昇による人に対する障害も重要である。携帯電子機器は使用する人が手に持って使用する等、使用する人の皮膚に直接接触した状態で使用する場合が多く、快適に使用するために使用する人が熱いと感じる温度に電子機器がなるのを抑制する必要がある。また、膝に置いての使用や、着衣のポケットに入れて携帯する場合もあり、接触で低温火傷を起こすような温度まで電子機器が温度上昇するのを避ける必要がある。人が熱いと感じる温度は個人差があるが、低温火傷は42℃〜45℃以上の温度で発生するといわれており、70℃の場合は1秒間の接触で組織の破壊が始まるといわれている。また、火傷に至らなくても、携帯型電子機器の温度上昇は使用する人に、不快感と違和感を与える。特に、携帯電子機器は常に高温に発熱しているわけではなく、使用中の高速演算時にICの温度上昇が急激に発生するため、急激な温度上昇に対応した、温度上昇対策が必要である。
【0005】
ICについては低消費電力化が積極的に進められているものの、高集積化、高速化がそれ以上に進行しているため、消費電力は増加傾向にある。また、ICが組み込まれた部品(以下電子部品)に放熱フィン一体型の薄型送風ファンを取り付けることで電子機器内の熱を対流熱伝達により逃がす方法(以下、特許文献1参照)があるが、携帯電子機器の軽薄短小化に伴い小型化するIC上に設置することが困難であり有効な手段とはいえない。また、電子部品と電子機器を覆う筐体間に熱伝導シートを介在させて熱伝導により電子部品の熱を筐体に逃がす方法(以下、特許文献2参照)もあるが、熱移動した部分の筐体が局所的に温度上昇するため、電子機器が熱いと感じる温度になるのを抑制するという観点から、有効な手段とはいえない。また、マイクロカプセル型吸熱剤をアクリル樹脂等のバインダーでシート状にして電子部品に貼り付ける方法(以下、特許文献3参照)があるが、樹脂と粒子状の吸熱剤から構成されているために強度が低く、シートとして取り扱うためにはシートに厚さが必要で、特許文献3でも2mm厚さのシートが検討されており、軽薄短小化が進む携帯機器向けのシート材料として有効な手段とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2000−083012号公報
【特許文献2】特願2004−004507号公報
【特許文献3】特開2001−308242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しょうとする課題は、上述の従来技術の問題点に照らして、携帯電子機器の軽薄短小化に対応した厚さでありながら、シートとして扱え、携帯電子機器内部の急激な発熱を生じる電子部品や、電子機器の筐体に貼り付けることで、急激な温度上昇を抑制し、携帯型電子機器が使用する人が熱い感じる温度に上昇するのを抑制できる吸熱シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、厚さが400μm以下のシートにおいて、シートとしての強度や取り扱い性を向上させるためのa)基材と、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、c)バインダーとを必須成分とする吸熱シートにおいて、該吸熱シートの吸熱形態をシート状としてその吸熱量が20℃以上70℃以下の温度範囲で10,000J/m以上とし、かつ、その吸熱ピーク温度の内の少なくとも一つの吸熱ピーク温度を30℃以上60℃未満にすることで、急激なICの発熱を抑制でき、電子機器の温度上昇抑制効果が得られることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]a)基材、b)マイクロカプセル型吸熱性物質、及びc)バインダーを構成材料とする厚さ400μm以下の吸熱シートであって、該吸熱シートの吸熱量が、20℃以上70℃以下の温度範囲で10,000J/m以上であり、かつ、吸熱ピーク温度の内の少なくとも一つが30℃以上60℃未満であることを特徴とする前記吸熱シート。
【0010】
[2]前記b)マイクロカプセル型吸熱性物質の平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である、前記[1]に記載の吸熱シート。
【0011】
[3]前記a)基材が、厚さ10μm以上100μm以下のガラスクロスである、前記[1]又は[2]に記載の吸熱シート。
【0012】
[4]前記吸熱シートの片面に粘着剤層を付与した、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の吸熱シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る吸熱シートを携帯電子機器の急激な発熱を有する電子部品、電子部品等の発熱部品の影響で加熱される筐体に貼り付けることで、電子部品、又は筐体の温度上昇を抑制し、携帯電子機器の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】熱試験評価用穴あきアルミ板1のサイズを表す図面である。
【図2】熱試験評価用アルミ板2を表す図面である。
【図3】熱試験評価用ケースを表す図面である。
【図4】熱試験評価用材料の配置を表す図面である。
【図5】シート強度測定用サンプルを表す図面である。
【図6】シートの貼り付け修正性測定用サンプルを表す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明について具体的に説明する。
本発明は、厚さが400μm以下のシートでありながらシートとしての強度や取り扱い性を向上させるため、a)基材と、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとを必須成分とする吸熱シートである。該吸熱シートの吸熱形態をシート状としてその吸熱量が20℃以上70℃以下の温度範囲で10,000J/m以上とし、かつ、その吸熱ピーク温度の内の少なくとも一つの吸熱ピーク温度を30℃以上60℃未満にすることにより、携帯電子機器の急激な発熱を有する電子部品に又は電子部品等の発熱部品の影響で加熱される筐体に貼り付けた際に、電子部品又は筐体の温度上昇を抑制し、携帯電子機器の温度上昇を抑制することができる。
【0016】
(吸熱形態)
本発明の実施形態の吸熱シートが呈する吸熱形態としては、シート状としてその吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、かつ、吸熱ピーク温度の内の少なくとも一つのピーク温度が30℃以上60℃未満に存在する必要がある。本実施形態の吸熱シートとしての吸熱量とは、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DSC210、以下DSC)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で、10mgに切り出したシートの吸熱挙動を測定し、20℃以上70℃以下の温度範囲内での単位重量あたりの吸熱量と、シートの重量から算出したシートの単位面積当たりの吸熱量(J/m)を示す。吸熱ピーク温度とは、一つ以上現れる吸熱ピークの頂点温度を示す。電子部品の発熱を抑制するためには、20℃以上70℃以下の温度範囲での吸熱量は10,000J/m以上であり、12,000J/m以上の吸熱量が好ましく、20,000J/m以上の吸熱量がより好ましい。携帯電子機器は室温近辺の温度から使用されることが多く、また、人は70℃以上の温度に1秒以上接触すると組織の破壊を起こすことから、本発明において、20,00J/m以上の吸熱量の温度範囲は、20℃以上70℃以下であり、30℃以上65℃以下の温度範囲であれば好ましく、35℃以上65℃以下の温度範囲であればより好ましい。
【0017】
また、携帯機器は着衣に携帯し、人の体温よりもやや低い温度に保たれる場合があるため、ICの温度上昇時に確実な吸熱作用を呈するためには、吸熱が強く生じる吸熱ピーク温度は、吸熱ピーク温度の少なくとも一つが30℃以上、携帯電子機器が70℃になるのを防止するために吸熱ピーク温度が65℃未満に存在する必要があり、35℃以上65℃未満であれば好ましい。
【0018】
(基材)
本実施の形態に使用できる基材は、繊維状物質から構成されるシート状物である。繊維状物質を使用することで、b)マイクロカプセル型吸熱性物質(粒子)をc)バインダーで固着させたときに、複合材料化することで、400μm以下の薄さでも高いシートの強度を維持し、その結果、電子機器、筐体への貼り付けが容易であり、外部応力により破損しにくくなる。加えて、貼り付け時の修正も可能となる。本実施の形態に使用できる基材は、素材、シート化方法が限定されるものではなく、例えば、ガラス繊維、有機合成繊維、金属繊維炭素繊維等の長繊維を製織したガラスクロス、有機合成繊維織物、金属繊維織物、炭素繊維織物や、ガラス繊維、有機合成繊維、セルロース繊維、金属繊維、炭素繊維等の短繊維を、バインダー等で結着する手法や、融着、絡み合わせ等の手法でシート化した、ガラス繊維不織布、有機合成繊維不織布、紙、金属繊維不織布、炭素繊維不織布等も使用できる。また、長繊維を引き揃えてバインダー等で結着したシート状一方向繊維シート状物も使用できる。特に基材として、電気絶縁性、不燃性、強度を有し、薄い基材化が可能なガラス長繊維によるガラスクロスを使用することは、シートに電気絶縁性、不燃性を付与し、薄くても強度を維持できるため好ましい。
【0019】
また、ガラスクロスの厚さは、シート化した際のガラスクロスの補強効果を得るために10μm以上が好ましく、シート重量軽減と吸熱性物質とバインダー固着量をなるべく多くするために100μm以下が好ましく、10μm以上60μm以下がより好ましい。また、ガラスクロスに使用するガラス素材は、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等のいずれのガラスクロスでもよい。また、ガラスクロスとしては、織り密度は5〜200本/25mm、好ましくは10〜150本/25mmであり、質量は5〜100g/m、好ましくは8〜300g/mであり、織り方は平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等が使用できる。また、双方又は一方がテクスチャード加工を施されたガラス糸で製織されたガラスクロスであってもよい。また、製織に必要な集束剤が付着している段階のガラスクロスや集束剤を除去した段階のガラスクロス、又は公知の表面処理法でシランカップリング剤などが既に処理されている段階のガラスクロスのいずれでもよい。また、柱状流、高周波振動法による水流で開繊、扁平化等の物理加工を施したガラスクロスであってもよい。
【0020】
(マイクロカプセル型吸熱性物質)
本実施形態に使用できるb)マイクロカプセル型吸熱性物質に必要な吸熱形態はシート厚さ、使用基材、バインダーとの配合比に従って変動するため、限定できるものではないが、本実施の形態のシート状態の吸熱範囲である20℃以上70℃以下の範囲で吸熱を起こすものが好ましく、吸熱量としては20℃以上70℃以下の範囲で100J/g以上の吸熱量を有する吸熱性物質を使用することが好ましく、150J/g以上の吸熱量を有するものがより好ましい。固着させるマイクロカプセル型吸熱性物質の量を変化させることにより、本実施形態のシートの吸熱量を制御することができる。例えば、100J/gの吸熱量をもつ物質を使用する場合、シートの吸熱量を10,000J/m以上にするためには、シート1mあたり、10,000/100=100g以上の吸熱性物質を固着させればよい。また、本実施の形態のシートの吸熱ピーク温度の内の少なくとも一つの吸熱ピーク温度が30℃以上65℃未満とするために、マイクロカプセル型吸熱性物質は、吸熱ピーク温度が30℃以上65℃未満に存在するマイクロカプセル型吸熱性物質であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る吸熱シートに使用できるマイクロカプセル型吸熱性物質とは、内包される吸熱性物質とそれを覆う外殻で構成されている粒子状の吸熱性物質である。吸熱性物質は融解、気化等の相変化により吸熱するため、マイクロカプセル型で外殻に覆われていないと相変化を生じた際にシート表面への滲み出しや、c)バインダーと混合することにより吸熱作用の低下を生じるため、本発明にはマイクロカプセル型の吸熱性物質である必要がある。内包される吸熱性物質としては、融解による吸熱作用を示す物質や、気化する物質や気化する物質をゲル状物質や多孔質の物質に封入した物質などが使用可能である。内包される吸熱物質において融解による吸熱作用を示す物質としては、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、n−イコサン、セチルアルコール等の有機物や、酢酸ナトリウム3水和物、亜硝酸リチウム3水和物、硫酸ナトリウム10水和物などの無機物が例示できる。カプセル化する外殻として熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が使用可能であり、熱硬化性樹脂としてメラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などが例示できる。また、マイクロカプセル型吸熱性物質は二種類以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0022】
マイクロカプセル型吸熱性物質の粒子径は、特に限定されるものではないが、粒子をバインダーに混合した際の粘度上昇を防止するため、平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上がより好ましく、シートに表面平滑性を付与する観点から、平均粒子径は10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0023】
(バインダー)
本実施形態に使用できるバインダーは、a)基材にb)マイクロカプセル型吸熱性物質を固着できるのであればいずれでもよい。十分な固着力を得るためには、バインダーに熱可塑性樹脂を使用する場合、その融点は40℃以上であることが好ましく、より好ましくは50℃以上であり、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を部分的に架橋する樹脂、光硬化樹脂でもよく、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂(共重合ナイロン樹脂)、シリコーン、塩化ビニル樹脂等が例示され、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂が例示され、熱可塑性樹脂を部分的に架橋する樹脂としては、メトキシメチル化ポリアミド樹脂、架橋性シリコーン樹脂、等が例示され、光硬化樹脂としては紫外線硬化型アクリル樹脂等が例示され、これら二種類以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0024】
また、本発明に係る吸熱シートに難燃性を付与するため、難燃性を付与する有機化合物を、バインダーに配合することも可能である。難燃性を付与する有機化合物としては、臭素含有機化合物、塩素含有有機化合物、燐含有有機化合物等が例示され、燐含有有機化合物としては、縮合燐酸エステル系化合物、フェノキシシクロホスファゼンとその誘導体等が例示される。
【0025】
(その他の構成材料)
本実施形態の吸熱シートでは、a)基材、b)マイクロカプセル型吸熱性物質、c)バインダー以外に、シートの熱伝導向上や、強度向上を目的として、厚さ400μm以下のシート形態の状態で吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度の内の少なくとも一つのピーク温度が30℃以上65℃未満のシートが維持できる範囲で、無機粒子を配合することも可能である。無機粒子としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物や、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム等の金属窒化物や、それらの組み合わせが例示できる。また、意匠を向上させるために、本実施の形態のシート表面を樹脂や樹脂と無機粒子の混合物で片面又は両面コーティングすることも可能であり、バインダー成分に着色顔料、染料を配合して着色することも可能である。
【0026】
電位部品や電子機器の筐体(以下、「被貼り付け物」ともいう。)に本発明に係る吸熱シートを貼り付けるために、該吸熱シートの片面に粘着剤層を形成させてもよい。粘着剤層の厚さは、吸熱シート、及び被貼り付け物の表面凹凸の観点から、1μm以上であり、一方、吸熱作用を有効に外装缶に伝えるため、100μm以下であることが好ましい。また、粘着剤層の厚さと、本実施形態の吸熱シートの厚さとの合計が400μm以下であることが好ましい。粘着剤の樹脂は特に限定されるものではなく、アクリル系、ポリエステル系、シリコーン系樹脂等の粘着剤が例示され、熱伝導を促進する目的で無機粒子などを配合した粘着剤であってもよい。また、粘着剤層を形成させた本発明に係る吸熱シートをロール製品化する際に、粘着剤層と粘着剤層が形成されていない表面との粘着を防ぐために、キャリアフィルムを粘着剤層に貼り付けることも可能である。キャリアフィルムは本実施の形態のシートを被貼り付け物に貼り付ける際に剥がして使用するために、厚さ、素材等は限定されるものではなく、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、紙、及びこれらに離型処理したフィルムなどが例示される。
【0027】
(シートの厚さ)
本実施形態の吸熱シートの厚さは、軽薄短小化される電子機器の温度上昇に用いられる観点から400μm以下の厚さである。また、本実施形態の吸熱シートは発熱するIC等に貼り付けて使用でき、ICの発熱時に発熱時に本吸熱シートも加熱されることにより吸熱作用を発現する機構であるために、吸熱シートが400μmよりも厚いと熱抵抗が大きくなり、ICの発熱による本シートの加熱が不十分で吸熱作用が効果的に発現しないことから、本実施形態の吸熱シートの厚さは電池に貼り付ける状態で400μm以下の厚さである必要があり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。本発明に係る吸熱シート厚さの下限は、シート形態の状態で吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度の内の少なくとも一つのピーク温度が30℃以上65℃未満のシートが維持できる範囲であれば限定されるものではないが、基材の厚さ、シート強度の観点から、事実上30μm以上である。
【0028】
(各成分の構成比)
本発明に係る吸熱シートにおけるa)基材、b)マイクロカプセル型吸熱性物質、c)バインダーの構成比は、特に限定されるものではないが、a)基材は、b)マイクロカプセル型吸熱性物質をc)バインダーで固着させたときに、複合材料化することで、シートの強度、及び取り扱い性が向上させるためのものであるため、吸熱シート中の基材の体積分率は5%以上であることが好ましく、吸熱シート中にb)マイクロカプセル型吸熱性物質を多く存在させるほうが吸熱量を大きくできる観点から、吸熱シート中の基材の重量分率は50%以下であることが好ましく、10%以上40%以下であることがより好ましい。b)マイクロカプセル型吸熱性物質とc)バインダーの構成比は、c)バインダーによる固着力の観点から、b)マイクロカプセル型吸熱性物質とc)バインダーの和に対しc)バインダーの重量分率が5%以上であることが好ましく、吸熱シート中にb)マイクロカプセル型吸熱性物質を多く存在させるほうが吸熱量を大きくできる観点から、b)マイクロカプセル型吸熱性物質とc)バインダーの和に対しc)バインダーの重量分率が90%以下であることが好ましく、10%以上80%以下がより好ましい。
【0029】
(シートの製造方法)
本実施形態の吸熱シートを生産する方法としては、特に限定されるものではないが、ア)a)基材に、溶媒にc)バインダーが溶解及び/又は分散され、b)マイクロカプセル型吸熱性物質を分散させた混合液を、含浸させた後、加熱乾燥で溶媒を乾燥除去して本実施形態の吸熱シートを得る液含浸法、イ)c)バインダーとb)マイクロカプセル型吸熱性物質を溶媒により溶解及び/又は分散させた混合液をキャリアフィルム上に塗布・乾燥して得たフィルムを形成した後、基材をフィルムで挟み込んで熱圧着により、基材と複合化するフィルム熱圧着法、ウ)熱溶融させたc)バインダーに、b)マイクロカプセル型吸熱性物質を分散させた熱溶融混合物を基材に塗布する熱溶融塗工法等が例示される。a)基材内部にb)マイクロカプセル型吸熱性物質とc)バインダーが含浸されやすい点で、上記ア)液含浸法が好ましい。
【0030】
ア)液含浸法は、有機溶剤、及び又は水(以下溶媒)にc)バインダーを溶解、及び/又は分散させたバインダー液に、b)マイクロカプセル型吸熱性物質を分散させて、バインダーと吸熱性物質の溶解、及び/又は分散液(以下混合液)を、a)基材に含浸、塗工した後、加熱により混合液中の溶媒を乾燥する方法などが可能である。バインダー液や混合液を作製する際に、b)マイクロカプセル型吸熱性物質やc)バインダーを分散させるために界面活性剤等を配合してもよい。有機溶剤は、特に限定されるものではなく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、2−メトキシエタノ−ル、プロピレングリコールモノメチルエ−テル等のエ−テル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等の含窒素系溶剤が例示され、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
混合液中の溶媒の含有量は特に限定されるものではないが、基材への混合液の含浸を考慮して、25質量%以上75質量%未満が好ましい。基材に混合液を含浸、塗工する方法としてはいかなる方法も適用可能であり、混合液をバスに溜め、基材を通過させた後、スリットで基材に混合液を所定量含浸、塗工されるようにスリット、又はマングルで余剰混合液を掻き落とす方法、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等で基材に直接所定量の混合液を含浸、塗工する方法、等が可能である。また、基材に混合液を含浸、塗工した後、溶媒を加熱乾燥させる方法としては、熱風、電磁波、等公知の方法が可能である。加熱乾燥時の温度、時間は、特に限定されるものではないが、使用した溶媒の沸点以上の温度でその加熱時間は20秒以上20分未満、より好ましくは30秒以上15分未満であることが好ましい。
【0032】
また、本実施形態の吸熱シートに粘着剤層を形成させる方法としては、粘着剤が1液性又は2液硬化性で溶媒に溶解された粘着剤溶液を使用する形態の場合、粘着剤溶液を、本発明に係る吸熱シートに直接塗布して溶媒を乾燥、又は乾燥硬化する直接溶液塗布法や、粘着剤溶液を易離型性キャリアフィルム上に塗布して溶媒を乾燥又は乾燥硬化させた粘着剤付きキャリアフィルムを、本実施形態の吸熱シートに張り合わせ粘着剤を本実施形態の吸熱シートに転写する転写方法などが例示される。また、粘着剤が2液硬化性で溶媒を含まない場合は、粘着剤を、本実施形態の吸熱シートに直接塗布して養生又は加熱硬化する直接溶液塗布法や、粘着剤を易離型性キャリアフィルム上に塗布して養生又は加熱硬化させた粘着剤付きキャリアフィルムを、本実施形態の吸熱シートに張り合わせ粘着剤を本実施形態の吸熱シートに転写する転写方法などが例示される。
【0033】
(電子部品、電子機器筐体への貼り付け)
本実施形態の吸熱シートを電子部品や電子機器筐体に貼り付ける方法としては、A)粘着剤層を形成した本実施形態の吸熱シートを粘着剤で貼り付ける方法、B)本実施形態の吸熱シートを接着剤や粘着剤で貼り付ける方法、C)被貼り付け物に本実施形態の吸熱シートを接触させ、加熱によりバインダー成分を溶融又は軟化させることで貼り付ける方法等が例示される。
【実施例】
【0034】
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1〜14、及び比較例1〜6]
〈基材〉
以下の表1に示す基材を使用した。
【表1】

【0035】
〈吸熱性物質〉
以下の表2に示すマイクロカプセル型吸熱性物質を使用した。
【表2】

【0036】
〈バインダー〉
以下の表3に示すバインダーを使用した。
【表3】

【0037】
〈混合溶液〉
水又はメタノールに、バインダーを加えて分散又は溶解し、マイクロカプセル型吸熱性物質を加えて分散する方法で、以下の表4に示す組成の混合溶液を作製した。
【表4】

【0038】
〈吸熱シート作製〉
以下の表5、表6、表7に記載の基材と混合溶液の組み合わせで基材に混合溶液を塗布し、同じく表5、表6、表7に示すシート重量になるようにスリットバーで余剰の混合溶液を掻き落とした後、前記表4に示した乾燥条件で乾燥し、本発明に係る吸熱シートを実施例1〜14として、そして比較例1〜6のシートを得た。その他の成分として記載の酸化アルミニウムは平均粒子径が3.5μmの球形酸化アルミニウム(株式会社マイクロン製、品番AX3−15)を使用し後、シートを23℃相対湿度65%の条件で48時間養生した。
【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
【表7】

【0042】
〈粘着剤層形成〉
片面離型処理PETフィルム(ルミラーS10#50、東レ株式会社製、厚さ50μm)の離型面に、粘着剤主剤(東洋インキ製造株式会社製オリバインBPS1109)100重量部に対し、粘着剤硬化剤(東洋インキ製造株式会社製BHS8515)3.6重量部を混合した粘着剤溶液を、乾燥後の粘着剤厚さが25μmになるように塗布し、100℃のオーブンで3分間乾燥する方法で粘着剤付きPETフィルムを作製し、このフィルムの粘着剤が付いた面と本発明に係る吸熱シートを張り合わせ、粘着剤層付き吸熱シートを得た。
【0043】
[比較例7]
〈基材なしシートの作製〉
片面離型処理PETフィルム(ルミラーS10#50、東レ株式会社製、厚さ50μm)の離型面に、表7に記載した混合溶液を同じく表7に記載したシート重量になるように塗布し、前記表4に記載した乾燥条件で乾燥し、PETフィルム上に基材のないシートを比較例7として作製した。
【0044】
〈粘着剤層形成〉
片面離型処理PETフィルム(ルミラーS10#50、東レ株式会社製、厚さ50μm)の離型面に、粘着剤主剤(東洋インキ製造株式会社製オリバインBPS1109)100重量部に対し、粘着剤硬化剤(東洋インキ製造株式会社製BHS8515)3.6重量部を混合した粘着剤溶液を、乾燥後の粘着剤厚さが25μmになるように塗布し、100℃のオーブンで3分間乾燥する方法で粘着剤付きPETフィルムを作製し、このフィルムの粘着剤が付いた面とPETフィルム上に作製した基材のないシートのシート側を張り合わせ、シートについていたPETフィルムを剥がして、PET上に粘着剤層付きの基材がないシートを作製した。
【0045】
[シート吸熱量、吸熱ピーク温度測定]
実施例1〜14、及び比較例3〜7の粘着剤層を形成する前のシート、及び比較例1、2のPETフィルムを剥がした状態のシートを、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DSC210、以下DSC)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で、10mgに切り出したシートの吸熱挙動を測定した。比較例6以外のシートに関しては20℃から200℃の温度範囲で測定し、比較例6に関しては200℃以上に大きな吸熱が予測されることから20℃から450℃の温度範囲で測定し、単位重量あたりの吸熱量と、シートの重量から算出したシートの単位面積当たりの吸熱量(J/m)をシート吸熱量とした。また、本発明の吸熱量の温度範囲である40℃以上160℃以下のシート吸熱量を算出した。また、この測定において現れた吸熱ピークの頂点温度を吸熱ピーク温度とした。
【0046】
[シートの重量]
実施例1〜14、及び比較例3〜7の粘着剤層を形成する前のシート、及び比較例1、2のPETフィルムを剥がした状態のシートを、10cm角に切断してその重量(g)を測定し、重量測定値に100を掛けた数値をシート重量とした。
[シートの厚さ]
粘着剤層付きのシートの厚さを、マイクロメーターを用いてPETフィルムごと測定し、PETフィルムの厚さ50μmを引いた数値をシートの厚さとした。
【0047】
[熱試験:発熱抑止効果の評価]
〈熱試験評価サンプル〉
図1に示す寸法の直径2mmの穴あきアルミニウム板の上面に実施例1〜14の本発明に係る吸熱のシート、及び比較例1〜7のシートを、粘着剤層側のPETフィルムを剥がして貼り付けた(アルミ板1)。
図4に示すように、アルミ板1、図2に示すアルミニウム板(アルミ板2)、外形寸法50mm角正方形のポリイミド面状ヒーター(厚さ:0.1mm)、外形寸法50mm角正方形の熱伝導シート(厚さ:0.5mm、熱伝導率:1W/mK)、外形寸法70mm角正方形のシリコンフォーム(厚さ:1.2mm、熱伝導率:0.03W/mK)と、外形寸法74mm角正方形の底板(アクリル樹脂製、厚さ:2mm)を重ね、図3に示すアクリル樹脂製のケース(ケース)を上から被せ、アルミ板1穴にT型熱電対を差し込んで内部温度が計測できるようにし、ケースの穴から熱電対端子線、及び面状ヒーター線を外部に出した。また、ケースの上面にも、T型熱電対をカプトンテープで貼り付けた。
【0048】
〈熱試験評価〉
面状ヒーターを3.2Wで10分間発熱させ、アルミ板1に差し込んだT型熱電対の温度計測値と、ケース上面のT型熱電対の温度計測値を記録した。
【0049】
[シート強度の測定]
〈シート強度測定用サンプル〉
実施例1〜14、及び比較例3〜7の粘着剤層を形成する前のシート、及び比較例1、2のPETフィルムを剥がした状態のシートを、図5に示すように長さ200mm、幅25mm幅にカッターナイフを用いて切断してシート強度測定用サンプルとした。
【0050】
〈シート強度測定〉
万能試験機(島津製作所株式会社製オートグラフAG−5000D)を使用し、5kNのロードセルにより、図5に示す部分を冶具で固定して、毎秒10mmの速度で引っ張った際の最大荷重値をシート強度とした。
【0051】
[シートの耐熱性]
5cm角に切断した粘着剤層付きの実施例1〜14の本発明に係る吸熱シート、及び比較例1〜7のシートを、粘着剤層側のPETフィルムを剥がして、10cmのアルミホイルの中央に貼り付け、シート面にも10cm角のアルミホイル配置した状態で、熱板温度が60℃のプレス機を用いて、圧力0.1MPaで5分加熱加圧後、アルミホイル挟まれたシートを取り出し、シート側のアルミホイルを除去した際に、シート側のアルミホイルを目視観察し、アルミホイルにシート成分が付着していなかったものを良好とし、アルミホイル側にシートの成分が付着したものを可とし、シートがシート側のアルミホイルに付着してシートが破断してしまったものを不良とした。
【0052】
[シートの貼り付け修正性]
図6に示すサイズに切断した粘着剤層付きの実施例1〜14の本発明に係る吸熱シート、及び比較例1〜7のシートを、粘着剤層側のPETフィルムを剥がして、アルミテープ(日東電工株式会社製AT−50)を貼り付けたガラス板に、図6に示す1cm長さ分だけ貼り付けた後、90度の角度で引き剥がし、剥がすことができたものを良好とし、シートが破断したものを不良とした。
【0053】
[比較例8]
熱試験評価サンプルにおいて、アルミ板1に何も貼り付けずに熱試験評価を行った。
【0054】
[比較例9]
熱試験評価サンプルにおいて、アルミ板にシートを貼り付けず、変わりに外形寸法50mm角正方形、厚さ3.1mmの熱伝導シート(熱伝導率:2W/mK)をアルミ板1とケースの間に挟みこんだ。
【0055】
以下、表5と表6に記載した実施例1〜14について説明する。
実施例1〜14は、厚さが400μm以下で、a)基材と、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとを必須成分とする吸熱シートであって、該吸熱シートの吸熱形態をシート状としてその吸熱量が20℃以上70℃以下の温度範囲で10,000J/m以上であり、その吸熱ピーク温度の内の少なくとも一つの吸熱ピーク温度が30℃以上60℃未満の前記吸熱シートである。
【0056】
実施例1、2、3は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ25μm、45μmのガラスクロスと、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が39℃のシートである。
【0057】
実施例4、5、6は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ25μm、45μmのガラスクロスを使用し、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が51℃のシートである。
【0058】
実施例7、8、9は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ25μm、45μmのガラスクロスと、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が58℃のシートである。
【0059】
実施例10は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ180μmのガラスクロスと、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が51℃のシートである。
【0060】
実施例11は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ38μmの不織布と、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が51℃のシートである。
【0061】
実施例12は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ45μmのガラスクロスと、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が31℃のシートである。
【0062】
実施例13は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ45μmのガラスクロスと、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が31℃と39℃のシートである。
【0063】
実施例14は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ45μmのガラスクロスと、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーと酸化アルミニウムとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が51℃のシートである。
【0064】
比較例1は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ45μmのガラスクロスをと、マイクロカプセル型でない吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が51℃のシートである。
【0065】
比較例2は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ45μmのガラスクロスをと、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が75℃のシートである。
【0066】
比較例3は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ45μmのガラスクロスと、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が25℃のシートである。
【0067】
比較例4は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ45μmのガラスクロスと、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m未満であり、吸熱ピーク温度が39℃のシートである。
【0068】
比較例5は、厚さが400μm以下で、a)基材として厚さ45μmのガラスクロスと、c)バインダーから構成され、吸熱性物質を含まないシートである。
【0069】
比較例6は、厚さが500μmで、a)基材として厚さ180μmのガラスクロスと、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が51℃のシートである。
【0070】
比較例7は、厚さが400μm以下で、a)基材がなく、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとから構成されているシートであって、吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m以上であり、吸熱ピーク温度が51℃のシートである。
【0071】
比較例8は、シート貼り付けがない状態である。
【0072】
比較例9は、シートの変わりに熱伝導シートにより、ケースに熱を逃がしている状態である。
【0073】
表5及び表6から分かるように、実施例1〜14に示す、厚さが400μm以下で、a)基材と、b)マイクロカプセル型吸熱性物質と、それを固着するためのc)バインダーとを必須成分とする吸熱シートにおいて、該吸熱シートの吸熱形態をシート状としてその吸熱量が20℃以上70℃以下の温度範囲で10,000J/m以上であり、その吸熱ピーク温度の内の少なくとも一つの吸熱ピーク温度が30℃以上60℃未満である吸熱シートを貼り付けることにより、発熱部を想定したアルミ板1の温度上昇が70℃を超えることはなく、また筐体を想定したケース上面温度が40℃を超えることがなかったことが確認された。
【0074】
これに反し、表7から分かるように、比較例1のb)マイクロカプセル型吸熱性物質でない吸熱物質により構成されたシートは、温度上昇を抑制できるが、シートの耐熱性が不十分であることが確認された。比較例2の吸熱ピーク温度が60℃以上シート、比較例3の吸熱ピーク温度が30℃未満のシート、比較例4の吸熱量が20℃以上70℃以下の範囲で10,000J/m未満のシート、比較例5の吸熱性物質を含まないシートは、温度上昇抑制が不十分であることが確認された。比較例6の厚さが400μmよりも厚いシートは、温度上昇抑制が不十分であることが確認された。比較例7の基材がないシートは、温度上昇を抑制できるが、シートの強度が不十分で、貼り付け修正ができないことが確認された。比較例8のシートを貼り付けていないシートは、温度上昇抑制が不十分であることが確認された。比較例9の熱伝導シートを使用した場合は、発熱部の温度上昇を大きく抑制できるが、ケース温度が上昇するため、携帯電子機器の熱対策として満足できないことが確認された。
【0075】
以上の結果から、吸熱シートを、実施例1〜14に示した構成、吸熱挙動、厚さにすることによって、本発明に係る吸熱シートの奏する効果を確実に発揮できたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る吸熱シートは、携帯電子機器内部の発熱する電子部品に貼り付けることにより、電子部品と筐体の温度上昇を抑制することにより、電子部品の温度上昇による誤作動の防止や、筐体の温度上昇による使用時の不快感や低温火傷の低減に効果があり、強度に優れるため電子部品への貼り付けが容易で、電子機器の温度変化によるシート変化も少ないことから、携帯電子機器の温度上昇抑制のためのシートとして好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)基材、b)マイクロカプセル型吸熱性物質、及びc)バインダーを構成材料とする厚さ400μm以下の吸熱シートであって、該吸熱シートの吸熱量が、20℃以上70℃以下の温度範囲で10,000J/m以上であり、かつ、吸熱ピーク温度の内の少なくとも一つが30℃以上60℃未満であることを特徴とする前記吸熱シート。
【請求項2】
前記b)マイクロカプセル型吸熱性物質の平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である、請求項1に記載の吸熱シート。
【請求項3】
前記a)基材が、厚さ10μm以上100μm以下のガラスクロスである、請求項1又は2に記載の吸熱シート。
【請求項4】
前記吸熱シートの片面に粘着剤層を付与した、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸熱シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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