説明

新規微生物、イヌリナーゼ、イヌリン分解剤、イヌロオリゴ糖の製造方法及びイヌリナーゼの製造方法

【課題】イヌリンを原料として、容易にイヌロオリゴ糖、特にイヌロテトラオースを製造する手段を提供する。
【解決手段】マイクロバクテリウム sp.(Microbacterium sp.)YK−01(FERM P−21593)株;マイクロバクテリウム sp.(Microbacterium sp.)YK−01(FERM P−21593)株由来であるイヌリナーゼ;以下に示す理化学的性質を有するイヌリナーゼ。(1)イヌリンに作用して直鎖状のイヌロオリゴ糖を生成し、この時の生成物の量を、イヌロテトラオース>イヌロトリオース>イヌロビオース、フルクトースとする。(2)至適pHが6〜8.5である。(3)至適温度が45〜55℃である。(4)50℃以下で安定である。(5)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定された分子量が約128000である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規微生物、イヌリナーゼ、これらを有効成分とするイヌリン分解剤、前記新規微生物又はイヌリナーゼを使用するイヌロオリゴ糖の製造方法、及び前記新規微生物を使用するイヌリナーゼの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物が合成する貯蔵多糖は多様であり、グルカン、フルクタン、マンナン等の存在が知られている。その中でも、グルカンの一種であるデンプンを貯蔵多糖とする植物が最も多く存在するが、これに次いで多いのが、フルクタンの一種であるイヌリンを貯蔵多糖とする植物である。イヌリンを貯蔵多糖とする植物としては、例えば、ヒガンバナ科、キキョウ科又はキク科の植物が挙げられる。イヌリンは、スクロースのフルクトース残基に30〜40分子のフルクトースがβ−2,1結合した直鎖状の多糖である。
一方、多糖はオリゴ糖の製造原料として有用であり、オリゴ糖は機能性食品をはじめとする様々な用途が期待されている。そこで、イヌリンを利用したオリゴ糖の製造方法についても、環状オリゴ糖と直鎖状オリゴ糖の両面から検討されている。
【0003】
環状オリゴ糖は、分子内糖転移酵素の作用で、イヌリンのフルクトシド結合が切断されると同時に、これがイヌリンの末端フルクトシド残基に転移することで生成することが知られている。具体的には、アースロバクター ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)に属する微生物によって産生されるイヌリンフルクトトランスフェラーゼを使用して、ジフルクトースジアンハイドライドIII(DFAIII)を製造する方法(非特許文献1及び2参照)、バチルス サーキュランス(Bacillus circulans) OKMZ31B株が産生するシクロイヌロオリゴ糖生成酵素(CFTase)を使用して、イヌリンから、6〜8分子のフルクトースがβ−2,1結合した環状イヌロオリゴ糖を製造する方法(非特許文献3及び特許文献1参照)、イヌリン及び0.01〜1.0%の有機窒素源を含む培地を使用して環状イヌロオリゴ糖を製造する方法(特許文献2参照)が開示されている。
【0004】
一方、直鎖状オリゴ糖は、イヌリナーゼでイヌリンを分解することで得られる。イヌリナーゼには、その反応様式からエンド型とエキソ型があり、直鎖状オリゴ糖を効率よく生成するためには、エンド型イヌリナーゼをできるだけ多く、かつエキソ型イヌリナーゼをできるだけ少なくした条件で反応させることが重要である。
このような課題に対して、ペニシリナム パープロジェナム ヴァル ルブリ−スクレロティウム(Penicillium purpurogenum var. rubri−sclerotium)(FERM P−8705)を培養して得られるイヌリナーゼを、陽イオン交換体でエンド型イヌリナーゼとエキソ型イヌリナーゼとに分離して、エンド型イヌリナーゼを得る方法(特許文献3参照)が開示されている。しかし、この方法は、精製方法が特殊なため設備投資が必要であり、さらにオリゴ糖の製造に長時間を要し、コスト上昇が不可避であるという問題点があった。
また、このような精製を必要としない方法として、ペニシリナム(Penicillium)属に属する微生物が産生するイヌリナーゼを利用する方法(特許文献4参照)が開示されている。しかし、この方法でも培地組成によっては、産生される主要なイヌリナーゼがエキソ型になったり、イヌリナーゼがエキソ型からエンド型に変化するまでに長時間を要するという問題点があった。
また、キクイモ塊茎やチコリ地下部などのイヌリン含有植物体を炭素源として、マルトースとリン酸アンモニウムを添加し、リン酸カリウムを添加しない培地を使用してイヌリナーゼ産生菌を培養し、エンド型イヌリナーゼを得る方法(特許文献5参照)や、同培地に、さらにミネラルとしてマグネシウム及び亜鉛を添加した培地を使用する方法(特許文献6参照)が開示されているが、いずれの方法でも、使用できる培地の組成が限られるという問題点があった。
そして何より、ここまでに挙げた従来技術では、所望の特定の重合度を有するオリゴ糖を効率的に得ることが困難であるという問題点あった。
これに対し、バチルス sp.(Bacillus sp.)KK−4645株が産生する酵素を使用して、イヌロテトラオースを製造する方法(特許文献7参照)が開示されている。
【特許文献1】特開平02−255085号公報
【特許文献2】特開平06−141856号公報
【特許文献3】特開平03−083581号公報
【特許文献4】特開昭62−228293号公報
【特許文献5】特開平03−198774号公報
【特許文献6】特開平04−190789号公報
【特許文献7】特開昭62−232380号公報
【非特許文献1】T.Uchiyama,Biochem.Biophys.Acta.,397,153(1975)
【非特許文献2】New Food Industry 2005,Vol.47,No.3
【非特許文献3】M.Kawamura,T.Uchiyama,T.Kuramoto,Y.Tamura and K.Mizutani,Carbohydr.Res.,192,83−90(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献7に記載の方法でも、イヌロテトラオースの産生効率が低いという問題点があった。また、菌体から酵素を抽出して利用する場合には、酵素が菌体の細胞壁に存在するので、細胞を破砕して細胞壁を集めた画分から酵素を抽出して精製する必要があり、精製酵素の入手に非常に手間がかかるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、イヌリンを原料として、容易にイヌロオリゴ糖、特にイヌロテトラオースを製造する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、マイクロバクテリウム sp.(Microbacterium sp.)YK−01(FERM P−21593)株である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の微生物をイヌリン共存下で培養する工程を有するイヌロオリゴ糖の製造方法である。
請求項3に記載の発明は、マイクロバクテリウム sp.(Microbacterium sp.)YK−01(FERM P−21593)株由来であるイヌリナーゼである。
請求項4に記載の発明は、以下に示す理化学的性質を有するイヌリナーゼである。(1)イヌリンに作用して直鎖状のイヌロオリゴ糖を生成し、この時の生成物の量を、イヌロテトラオース>イヌロトリオース>イヌロビオース、フルクトースとする。(2)至適pHが6〜8.5である。(3)至適温度が45〜55℃である。(4)50℃以下で安定である。(5)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定された分子量が約128000である。
請求項5に記載の発明は、イヌロテトラオースの生成量を、イヌロトリオースの生成量の4倍以上(質量比)とする請求項3又は4に記載のイヌリナーゼである。
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載のイヌリナーゼをイヌリンに作用させるイヌロオリゴ糖の製造方法である。
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の微生物を有効成分とするイヌリン分解剤である。
請求項8に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載のイヌリナーゼを有効成分とするイヌリン分解剤である。
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の微生物を培養し、得られた培養物から水溶性成分を抽出する工程を有するイヌリナーゼの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、イヌリンを原料として、容易にイヌロオリゴ糖を製造できる。特に、イヌロテトラオース及びイヌロトリオースを優先的に生成させることができ、イヌロテトラオースを最も効率的に製造できる。したがって、本発明は、機能性食品をはじめとする各種飲食品等への、イヌロオリゴ糖の新たな用途を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について、詳しく説明する。
なお、本発明において、「イヌロオリゴ糖」とは、フルクトースがβ−1,2結合で連結した構造を有するオリゴ糖のことを指し、そのうちの2糖オリゴ糖を「イヌロビオース」、3糖オリゴ糖を「イヌロトリオース」、4糖オリゴ糖を「イヌロテトラオース」と言う。
また、以下において、「マイクロバクテリウム sp.(Microbacterium sp.)YK−01(FERM P−21593)株」は、「マイクロバクテリウム sp.YK−01株」と略記する。
【0010】
<マイクロバクテリウム sp.YK−01株の取得>
マイクロバクテリウム sp.YK−01株は下記方法で取得した。
大阪府柏原市旭ケ丘山中の土壌1gを100mlの滅菌水に懸濁したものを静置した。その上澄み液1mlに滅菌水を加えて、1000倍希釈液を調製した。その希釈液をパスツールピペットで吸い取り、下記平板培地の中央に一滴滴下して、全面に広げ、30℃で2日間培養した。生じたコロニーを下記斜面培地に移植し、30℃で2日間培養した。
(平板培地及び斜面培地)
平板培地及び斜面培地は、酵母エキス(Becton Dickinson社製)0.1w/v%、硝酸ナトリウム0.2w/v%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05w/v%、塩化カリウム0.05w/v%、リン酸二水素カリウム0.05w/v%を含む培地を、2N水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、イヌリン(和光純薬工業株式会社製)2w/v%、寒天(和光純薬工業株式会社製)3w/v%を加えて、121℃で15分間滅菌処理することで調製した。
【0011】
分離した菌株を斜面培地から2mlの下記液体培地に移植し、30℃で2日間振とう培養した。培養液を遠心分離して得た上清を、下記方法で薄層クロマトグラフィーに供し、発色液を噴霧加熱して生じる糖のスポットから、培養液中のイヌリンの分解パターンを確認し、イヌロテトラオースの生成が確認された本菌株を取得した。
(液体培地)
液体培地は、酵母エキス(Becton Dickinson社製)0.1w/v%、硝酸ナトリウム0.2w/v%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05w/v%、塩化カリウム0.05w/v%、リン酸二水素カリウム0.05w/v%を含む培地を、2N水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、イヌリン(和光純薬工業株式会社製)2w/v%を加えて、121℃で15分間滅菌処理することで調製した。
(薄層クロマトグラフィー)
薄層クロマトグラフィー(TLC)は以下の方法で行った。
薄層クロマトグラフィープレート(HP−K high performance silica gel、ワットマン社製)を使用し、展開溶媒として、2−プロパノール:1−ブタノール:蒸留水=12:3:4(V/V/V)を使用した。
各培養液の上清1.0μlをスポットして上昇法による展開を行い、ドライヤーで乾燥後、naphthoresorcinol硫酸試薬(M.Chebregzabher, S.Rufimi,B.Monablbi and M.Lato,J.Chromatogr.,127,133−162(1976))を噴霧し、110℃で5分間加熱して糖を発色させた。
【0012】
<マイクロバクテリウム sp.YK−01(FERM P−21593)株の同定>
[形態的性質]
滅菌した下記寒天培地に、本菌株を一白金耳接種し、30℃で2日間培養し、コロニーを顕微鏡観察することにより形態的性質を確認した。結果を表1及び2に示す。
(寒天培地)
寒天培地は、酵母エキス(Becton Dickinson社製)0.1w/v%、硝酸ナトリウム0.2w/v%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05w/v%、塩化カリウム0.05w/v%、リン酸二水素カリウム0.05w/v%を含む培地を、2N水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、その後寒天(和光純薬工業株式会社製)1.5w/v%、イヌリン(和光純薬工業株式会社製)1.5w/v%を加えて、121℃で15分間滅菌処理することで調製した。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【0015】
[生理学的性質]
本菌株の生理学的性質を公知の方法により評価した。結果を表3に示す。
【0016】
【表3】

【0017】
[塩基配列]
本菌株の16SrDNAの塩基配列(部分配列)を公知の方法で決定した。決定した塩基配列のうち、5’末端(1番目)から1482番目までの塩基配列を配列番号1に示す。
この決定した塩基配列について、MicroSeq Bacterial Full Gene Libraryを用いて相同性検索を行った。
その結果、本菌株の配列番号1に示す塩基配列は、相同率99.72%でマイクロバクテリウム トリコテセノリティクム(Microbacterium trichothecenolyticum)の16SrDNAの塩基配列に対し、最も高い相同性を示した。また、国際塩基配列データベースを用いた相同性検索の結果、本菌株の配列番号1に示す塩基配列は、マイクロバクテリウム トリコテセノリティクムの基準株であるDSM8608株の16SrDNAの塩基配列に対し、相同率98.7%の相同性を示した。さらに、両データベースを用いた検索の結果で、本菌株の配列番号1に示す塩基配列と高い相同性を示した16SrDNAの塩基配列の大半は、マイクロバクテリウム属に属する菌 株由来の配列であった。
上記のように、本菌株は、運動性を持たないグラム陽性の短桿菌で、コロニー色は黄色を呈し、カタラーゼ反応は陽性、オキシダーゼ反応は陰性を示した。これら性状はマイクロバクテリウム トリコテセノリティクムの一般的な性状と一致している。一方で、両菌株の16SrDNAの塩基配列は一致しておらず、さらに本菌株はTween80を加水分解せず、硫化水素を産生しない等、生理学的性質が、一般的なマイクロバクテリウム トリコテセノリティクムとは異なっていた(Yokota A., Takeuchi M., Sakane T. and Weiss N.:Proposal of six new species in the genus Aureobacterium and transfer of Flavobacterium esteraromaticum Omelianski to the genus Aureobacterium as Aureobacterium esteraromaticum comb. Nov. Int. J. Syst. Bacteriol., 1993, 43, 555−564.参照)。
以上より、本菌株は、マイクロバクテリウム属に属し、マイクロバクテリウム トリコテセノリティクムに近縁ではあるが、異なる菌株であると判断された。
【0018】
本発明のマイクロバクテリウム sp.YK−01株は、平成20年6月9日付けで受託番号FERM P−21593として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託されている。
【0019】
マイクロバクテリウム sp.YK−01株は、イヌリナーゼを産生する。当該イヌリナーゼは、イヌリンに作用してこれを分解し、直鎖状のイヌロオリゴ糖を生成するが、主生成物はイヌロテトラオース及びイヌロトリオースであり、イヌロビオース及びフルクトースをほとんど生成しない。そして、特にイヌロテトラオースの生成比率が高い点に特徴があり、イヌロテトラオース/イヌロトリオース(w/w、質量比)の比率を4倍以上にすることが可能である。
すなわち、前記イヌリナーゼは、
(A)イヌリンに作用した時の生成物の量を、イヌロテトラオース>イヌロトリオース>イヌロビオース、フルクトースとする
理化学的性質を有する。
このように直鎖状のイヌロオリゴ糖を優先的に生成し、特に、「イヌロテトラオース」を高い比率で生成するイヌリナーゼを産生する微生物として、マイクロバクテリウム属に属するものは従来知られていない。
このように、本発明は、イヌリンに作用した時の生成物の量を、イヌロテトラオース>イヌロトリオース>イヌロビオース、フルクトースとするマイクロバクテリウム属に属する微生物を初めて提供するものである。かかる微生物を、以下、本発明の微生物と言う。
【0020】
さらに、マイクロバクテリウム sp.YK−01株由来のイヌリナーゼは、以下に示す理化学的性質を有する。
(B)至適pHは6〜8.5であり、pH7.5程度で最も高い活性を示す。
(C)至適温度は45〜55℃であり、50℃程度で最も高い活性を示す。
(D)50℃以下で安定であり、30℃程度で最も高い安定性を示す。
(E)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定された分子量が約128000である。
また、前記イヌリナーゼは、イヌリンに作用させて得られる生成物の分布から、エキソ型であると推測される。
【0021】
前記イヌリナーゼは、本発明の微生物を培養し、得られた培養物から水溶性成分を抽出することで得られる。
例えば、マイクロバクテリウム sp.YK−01株は、イヌリンを含有する培地で培養することが好ましい。そして、培地中のイヌリンの含有量は、0.5〜5w/v%であることが好ましく、1〜3w/v%であることがより好ましい。培地は、液体培地及び固形培地のいずれでも良い。
培養方法は、培地の種類に応じて、静置培養、振とう培養、撹拌培養等から適宜選択すれば良い。
培養温度は、20〜40℃であることが好ましく、25〜35℃であることがより好ましい。
培養時間は、培養温度に応じて適宜調整すれば良いが、通常好ましくは24〜72時間、より好ましく36〜60時間程度で十分である。
【0022】
得られた培養物からは、公知の手法で水溶性成分を抽出すれば良く、その方法は特に限定されない。マイクロバクテリウム sp.YK−01株は、産生したイヌリナーゼを菌体外へ分泌していると考えられ、菌体を破砕することなく、容易にイヌリナーゼを取り出すことができる。例えば、培養物を菌体ごと遠心分離して、上清を分離する手法でイヌリナーゼを含有する粗酵素液が得られる。
【0023】
イヌリナーゼを含有する粗酵素液は、目的に応じて適宜精製に供して、精製酵素液としても良い。精製方法は特に限定されず、公知の手法を単独で又は複数種類併用して精製すれば良い。例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィーや、精密ろ過膜、限外ろ過膜等の各種分離膜を使用した精製方法が例示できる。
イヌリナーゼは、精製酵素液をさらに凍結乾燥等に供して、粉体として取り出してから使用しても良いし、精製酵素液としてそのまま使用しても良い。
【0024】
本発明の微生物、その培養物、又は前記理化学的性質を有するイヌリナーゼ等、イヌリナーゼ活性を有するものは、これを有効成分とするイヌリン分解剤の調製に好適である。なお、前記培養物は、イヌリナーゼを含有している限り、本発明の微生物の生死は問わない。
前記イヌリン分解剤には、その効果を妨げない範囲内において、前記有効成分以外にその他の成分を含有させても良い。
【0025】
イヌリンを分解してイヌロオリゴ糖を製造する場合には、例えば、本発明の微生物をイヌリン共存下で培養するか、又は前記理化学的性質を有するイヌリナーゼをイヌリンに作用させれば良い。これにより、上記のように、イヌロビオース及びフルクトースをほとんど含有せず、イヌロテトラオース及びイヌロトリオースの混合物を主成分とするイヌロオリゴ糖が得られる。
【0026】
本発明の微生物をイヌリン共存下で培養して得られた培養物、又は前記理化学的性質を有するイヌリナーゼをイヌリンに作用させて得られた反応生成物は、いずれも、目的に応じてそのまま使用しても良いし、適宜後処理してから使用しても良い。さらに、液状のまま使用しても良いし、乾燥させて固形物又は粉体としてから使用しても良い。
後処理の方法は特に限定されず、中和、抽出、ろ過、遠心分離、濃縮、各種クロマトグラフィー、各種分離膜を使用した精製等、公知の手法を単独で又は複数種類併用して行えば良い。また乾燥法としては、送風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等、公知の手法から適宜選択すれば良い。
【実施例】
【0027】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における濃度の単位「mg%」とは、溶液100ml中に含まれる溶質のmg単位の量を表し、単位「mg/100ml」と同義である。
【0028】
[実施例1]
<マイクロバクテリウム sp.YK−01株を使用した発酵によるオリゴ糖の生成>
(培養液の調製)
酵母エキス(Becton Dickinson社製)0.1w/v%、硝酸ナトリウム0.2w/v%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05w/v%、塩化カリウム0.05w/v%、リン酸二水素カリウム0.05w/v%を含む培地を、2N水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、イヌリン(和光純薬工業株式会社製)2w/v%を加えて、121℃で15分間滅菌処理した。
次いで、この滅菌培地に、本菌株を一白金耳接種し、30℃で2日間振とう培養を行い、得られた培養液を前培養液とした。
さらに、前記滅菌培地10mLに、前記前培養液を10μl加え、30℃で24時間振とう培養を行い、培養液を調製した。
次いで、この培養液をDISMIC Cellulose acetateフィルター 0.45μm(Advantec社製)を使用して濾過し、分析試料を得た。
得られた分析試料を、下記条件で高速液体クロマトグラフィーにより分析した。
【0029】
分析条件;
カラム:OHpak SB−802.5 HQ(300×7.8mm)(Shodex製)を直列で2本連結
カラム温度:40℃
移動層:0.1M NaNO水溶液
検出器:示差屈折計(RID−10A、株式会社島津製作所製)
【0030】
(分析結果)
分析の結果、分析試料中には、フルクトースが13.89mg%、イヌロビオースが41.20mg%、イヌロトリオースが220.70mg%、イヌロテトラオースが993.33mg%の濃度で含まれていた。すなわち、イヌロテトラオース/イヌロトリオース(w/w、質量比)の比率は4.5であった。また、下記式(1)で算出される、イヌリンからの4糖以下の糖の生成率は、58.7%であった。
【0031】
〔4糖以下の糖の生成率(%)〕={〔フルクトース濃度(mg%)〕+〔イヌロビオース濃度(mg%)〕+〔イヌロトリオースオリゴ糖濃度(mg%)〕+〔イヌロテトラオースオリゴ糖濃度(mg%)〕}/2000(mg%)×100
・・・(1)
【0032】
[実施例2]
<マイクロバクテリウム sp.YK−01株からの酵素の抽出>
(培地の調製)
酵母エキス(Becton Dickinson社製)0.1w/v%、硝酸ナトリウム0.2w/v%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05w/v%、塩化カリウム0.05w/v%、リン酸二水素カリウム0.05w/v%を含む培地を、2N水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、イヌリン(和光純薬工業株式会社製)2w/v%を加えて、121℃で15分間滅菌処理した。
【0033】
(粗酵素液の調製)
前記滅菌培地に本菌株を一白金耳摂取し、30℃で2日間振とう培養を行った。
振とう培養終了後、培養液300mlを遠心分離装置(himac CF15D、日立工機株式会社製)を使用して8000rpm、4℃の条件で20分間遠心分離し、得られた上清を透析用セルロースチューブ(Viskase Companies,Inc.社製)を使用して、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)に対して一晩透析処理を行った。この透析処理で得られた試料を粗酵素液とした。そして、得られた粗酵素液について、後述の方法で酵素活性を測定した。
【0034】
(精製酵素液(I)の調製)
前記粗酵素液を、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したイオン交換クロマトグラフィーカラム(SuperQ−Toyopearl、φ16mm×240mm、東ソー株式会社製)の上端より流し込んで、成分を吸着させた。
次いで、塩化ナトリウムの濃度を0Mから0.5Mまで直線的に変化させる、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)を使用した濃度勾配法によって、酵素を溶出させた。この時、デジタルビーム分光光度計UV−1200型(株式会社島津製作所製)を使用して、溶出液の280nmにおける吸光度を測定することで、溶出タンパク質を検出した。各画分(フラクション)の吸光度の測定結果を、塩化ナトリウムの濃度と共に図1に示す。
さらに、後述の方法で、得られた各画分の酵素活性を測定し、活性画分である精製酵素液(I)を得た。この時の500nmにおける吸光度の測定結果を、図1にあわせて示す。図1の500nmにおける吸光度の測定結果から、十分な酵素活性を示した活性画分は、フラクションNo.28〜32のものであり、これらを精製酵素液(I)とした。
【0035】
(精製酵素液(II)の調製)
得られた精製酵素液(I)を、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したゲル濾過クロマトグラフィーカラム(HiTrapQ、5ml、Pharmacia社製)の上端より流し込んで、成分を吸着させた。
次いで、塩化ナトリウムの濃度を0.3Mから0.5Mに直線的に変化させる、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)を使用した濃度勾配法によって、酵素を溶出させた。この時の溶出タンパク質の検出は、前記精製酵素液(I)の調製時と同様の方法で行った。各画分(フラクション)の吸光度の測定結果を、塩化ナトリウムの濃度と共に図2に示す。
さらに、前記精製酵素液(I)の場合と同様の方法で、得られた各画分の酵素活性を測定し、活性画分である精製酵素液(II)を得た。この時の500nmにおける吸光度の測定結果を、図2にあわせて示す。図2の500nmにおける吸光度の測定結果から、十分な酵素活性を示した活性画分は、フラクションNo.14〜17のものであり、これらを精製酵素液(II)とした。
【0036】
(精製酵素液(III)の調製)
得られた精製酵素液(II)を、さらに限外ろ過ユニット(モルカットL、Millipore社製)を使用して5mlまで濃縮し、スクロース0.5gを添加した。
これを、0.2M塩化ナトリウムを含む0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したゲル濾過クロマトグラフィーカラム(Sephacryl S−200HR、φ26mm×550mm、Pharmacia社製)の上端より流し込んで、成分を吸着させた。
次いで、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)で酵素を溶出させた。この時の溶出タンパク質の検出は、前記精製酵素液(I)の調製時と同様の方法で行った。各画分(フラクション)の吸光度の測定結果を図3に示す。
さらに、前記精製酵素液(I)の場合と同様の方法で、得られた各画分の酵素活性を測定し、活性画分である精製酵素液(III)を得た。この時の500nmにおける吸光度の測定結果を、図3にあわせて示す。図3の500nmにおける吸光度の測定結果から、十分な酵素活性を示した活性画分は、フラクションNo.50〜57のものであり、これらを精製酵素液(III)とした。
【0037】
(総タンパク質量の定量)
標準タンパク質として牛血清γ−グロブリンを使用するブラッドフォード法により、前記粗酵素液、精製酵素液(I)、精製酵素液(II)及び精製酵素液(III)の595nmにおける吸光度を測定することで、これら各酵素液中の総タンパク質量(mg)を定量した。結果を表4に示す。
【0038】
(酵素活性、総活性、比活性及び収率の測定)
前記粗酵素液、並びに前記精製酵素液(I)、精製酵素液(II)及び精製酵素液(III)の調製工程における各画分(酵素液)について、酵素反応で生成する還元糖を3,5−Dinitrosalicylic acid法(DNS法)で測定することにより、酵素活性を測定した。具体的には、以下の通りである。
測定対象の各酵素液0.1mlに、0.025Mリン酸緩衝液0.4mlを加え、30℃で2分間インキュベーションした後、2.0w/v%イヌリン溶液0.5ml加えて、30℃で30分間反応させた。
次いで、DNS試薬1.0mlを加えて酵素反応を停止させ、5分間煮沸して反応液を発色させた。
そして、発色させた反応液を水冷した後、これに蒸留水8.0mlを加えて希釈することで測定サンプルを調製し、デジタルビーム分光光度計UV−1200型(株式会社島津製作所製)を使用して、前記測定サンプルの500nmにおける吸光度を測定した。
そして、標準サンプルとして、濃度が0〜2.7μmol/mlであるフルクトース溶液を使用して検量線を作成しておき、前記吸光度の測定値と下記式(2)とから、各酵素液1mLあたりの酵素活性を算出した。なお、以下に示す酵素活性の単位「unit」は、1分間に1μmolのフルクトースを還元する還元力に相当する酵素活性を示す。
そして、測定した酵素活性から、下記式(3)により総活性を、下記式(4)により比活性を、下記式(5)により収率をそれぞれ算出した。結果を表4に示す。
【0039】
〔酵素液1mlあたりの酵素活性(unit/ml)〕={〔測定サンプルの吸光度〕−〔反応時間0分の反応液の吸光度〕}/〔検量線の傾き〕×10/30
・・・(2)
〔総活性(unit)〕=〔酵素液1mlあたりの酵素活性(unit/ml)〕×〔酵素液量(ml)〕
・・・(3)
〔比活性(unit/mg)〕=〔総活性(unit)〕/〔タンパク質量(mg)〕
・・・(4)
〔収率(%)〕=〔精製酵素液の総活性〕/〔粗酵素液の総活性〕×100
・・・(5)
【0040】
【表4】

【0041】
(精製酵素の分子量の測定)
精製酵素液(III)に含まれる酵素(イヌリナーゼ)の分子量を、以下に示すポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した。
すなわち、精製酵素液(III)0.01mlに、SDS電気泳動サンプル緩衝液0.01mlを加え、100℃で2分間処理したものを測定試料とし、20mAの定電流で電気泳動を行った。電気泳動は、Laemmliらの方法(U.K.Laemmli,Nature,227,680−685(1970)参照)に従い、アクリルアミド濃度10%のゲル(ポリアクリルアミド・プレキャストゲルPAGEL、アトー株式会社製)を使用して行った。
その結果、精製酵素液(III)に含まれる酵素は、単一バンドを示し、その移動度を分子量マーカータンパク質の移動度と比較して分子量を求めたところ、推定分子量は128000であった。この時の電気泳動像を図4に示す。図4中、左側レーンのバンドが分子量マーカータンパク質であり、矢印で示した右側レーンのバンドが精製酵素液(III)に含まれる酵素である。
【0042】
[実施例3]
<マイクロバクテリウム sp.YK−01株由来のイヌリナーゼを使用したオリゴ糖の生成>
(精製酵素液(III)によるオリゴ糖の生成)
精製酵素液(III)0.4mlに5.0w/v%イヌリン溶液0.1mlを加え、30℃で0分、5分、10分、20分、30分、60分、90分及び120分、それぞれ反応させた後、反応液を2分間煮沸して、反応を停止させた。
【0043】
(オリゴ糖の分析)
反応停止後の上記各反応液0.2mlに、アセトニトリル0.3mlを加えて、未反応のイヌリンを析出させた。次いで、遠心分離装置(himac CF15D、日立工機株式会社製)を使用して、この反応液を10000rpmで10分間遠心処理し、得られた上澄み5μlを分析試料とした。そして得られた分析試料を、下記条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。分析結果を表5に示す。表5中、イヌロトリオース及びイヌロテトラオースの「濃度」は、標準サンプルで作成した検量線を使用して定量した。また、イヌロトリオース及びイヌロテトラオースの「生成率」は、下記式(6)により算出した。
【0044】
HPLC分析条件;
カラム:CAPCELL PAK NH2 SG80 S−5μm(φ4.6mm×250mm)(株式会社資生堂製)
カラム温度:常温
移動層:アセトニトリル/水=65/35(v/v)
検出器:示差屈折計(RID−6A、株式会社島津製作所製)
【0045】
〔生成率(%)〕={〔イヌロトリオース濃度(mg%)〕+〔イヌロテトラオース濃度(mg%)〕}/400(mg%)×100
・・・(6)
【0046】
また、上記各反応液を下記条件で薄層クロマトグラフィー(TLC)により分析した。TLC展開像を図5に示す。図5中、「F」はフルクトース、「F2」はイヌロビオース、「F3」はイヌロトリオース、「F4」はイヌロテトラオースにそれぞれ相当するスポットである。また、「St」は、フルクトース、イヌロビオース、イヌロトリオース及びイヌロテトラオースを含有する標準サンプルである。さらに、「0」〜「120」は、該当する反応時間(分)の分析試料を示す。
【0047】
TLC分析条件;
シリカゲルプレート(HP−K high performance silica gel、ワットマンジャパン株式会社製)上に、上記各反応液を1.0μlずつスポットし、展開溶媒として2−プロパノール/1−ブタノール/水=12/3/4(v/v/v)を使用して上昇法によって展開し、ドライヤーで乾燥後、ナフトレソルシノール硫酸試薬を噴霧して、110℃で5分間加熱することで糖を発色させた。
【0048】
【表5】

【0049】
(分析結果)
HPLC分析の結果、表5から明らかなように、分析試料中には主生成物としてイヌロトリオースとイヌロテトラオースが含まれており、フルクトース及びイヌロビオースは含まれていないことが確認された。また、イヌロテトラオースの量は、反応時間60分以降ではほぼ一定であった。また、例えば反応時間60分の段階で、イヌロテトラオースはイヌロトリオースの約6倍の量であるなど、酵素反応の生成物の中ではイヌロテトラオースの比率が極めて高いことが確認された。
【0050】
また、TLC分析の結果、図5から明らかなように、反応時間0分を除く上記各反応液では、フルクトース及びイヌロビオースに相当するスポットは検出されず、イヌロトリオース及びイヌロテトラオースに相当するスポットが検出された。さらに、イヌロテトラオースに相当するスポットの方が、イヌロトリオースに相当するスポットよりも濃度が顕著に高かった。すなわち、反応時間0分を除く上記各反応液中には、主生成物としてイヌロトリオース及びイヌロテトラオースが含まれ、フルクトース及びイヌロビオースは含まれず、イヌロトリオースよりもイヌロテトラオースの比率が極めて高いことが示され、HPLC分析結果を支持する結果が得られた。
【0051】
[実施例4]
<酵素活性のpH依存性の確認>
精製酵素液(III)0.1mlに、蒸留水0.3mlと、pHが4.0〜10.0の間で0.5間隔に調整されたグリシン−トリス−クエン酸緩衝液0.1mlを加えた試料を13種調製し、この試料を30℃で2分間インキュベーションした後、2.0w/v%イヌリン溶液0.5mlを加えて、30℃で30分間反応させた。次いで、前記DNS法により酵素活性を測定した。結果を図6に示す。
図6から明らかなように、精製酵素液(III)は、pH7.5程度で最も高活性であることが確認された。
【0052】
[実施例5]
<酵素活性の温度依存性の確認>
精製酵素液(III)0.1mlに、0.025Mリン酸緩衝液(pH7.0)0.4mlを加えた試料を9つ調製し、これら試料を20〜60℃間の5℃間隔で設定された9通りの温度でそれぞれ2分間インキュベーションした後、2.0w/v%イヌリン溶液0.5mlを加えて、同様の20〜60℃の温度で30分間反応させた。次いで、前記DNS法により酵素活性を測定した。結果を図7に示す。図7中、「○」が本実施例のデータである。
図7から明らかなように、精製酵素液(III)は、50℃程度で最も高活性であることが確認された。
【0053】
[実施例6]
<酵素活性の温度安定性の確認>
精製酵素液(III)0.1mlに、0.025Mリン酸緩衝液(pH7.0)0.4mlを加えた試料を9つ調製し、これら試料を20〜60℃間の5℃間隔で設定された9通りの温度でそれぞれ10分間インキュベーションした後、氷冷した。次いで、これに2.0w/v%イヌリン溶液0.5mlを加えて、30℃で30分間反応させた。次いで、前記DNS法により酵素活性を測定した。結果を図7に示す。図7中、「●」が本実施例のデータである。
図7から明らかなように、精製酵素液(III)は、50℃程度まで安定であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、機能性食品をはじめとする各種飲食品の製造に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例2の精製酵素液(I)調製工程におけるイオン交換カラムクロマトグラフィーによる各画分の吸光度測定結果を示すグラフである。
【図2】実施例2の精製酵素液(II)調製工程におけるゲル濾過カラムクロマトグラフィーによる各画分の吸光度測定結果を示すグラフである。
【図3】実施例2の精製酵素液(III)調製工程におけるゲル濾過カラムクロマトグラフィーによる各画分の吸光度測定結果を示すグラフである。
【図4】実施例2における精製酵素液(III)中のイヌリナーゼの電気泳動像である。
【図5】実施例3のイヌロオリゴ糖分析時におけるTLC展開像である。
【図6】実施例4における精製酵素液(III)の酵素活性のpH依存性のデータを示すグラフである。
【図7】実施例5における精製酵素液(III)の酵素活性の温度依存性のデータ、及び実施例6における精製酵素液(III)の酵素活性の温度安定性のデータをそれぞれ示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロバクテリウム sp.(Microbacterium sp.)YK−01(FERM P−21593)株。
【請求項2】
請求項1に記載の微生物をイヌリン共存下で培養する工程を有するイヌロオリゴ糖の製造方法。
【請求項3】
マイクロバクテリウム sp.(Microbacterium sp.)YK−01(FERM P−21593)株由来であるイヌリナーゼ。
【請求項4】
以下に示す理化学的性質を有するイヌリナーゼ。
(1)イヌリンに作用して直鎖状のイヌロオリゴ糖を生成し、この時の生成物の量を、イヌロテトラオース>イヌロトリオース>イヌロビオース、フルクトースとする。
(2)至適pHが6〜8.5である。
(3)至適温度が45〜55℃である。
(4)50℃以下で安定である。
(5)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定された分子量が約128000である。
【請求項5】
イヌロテトラオースの生成量を、イヌロトリオースの生成量の4倍以上(質量比)とする請求項3又は4に記載のイヌリナーゼ。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載のイヌリナーゼをイヌリンに作用させるイヌロオリゴ糖の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の微生物を有効成分とするイヌリン分解剤。
【請求項8】
請求項3〜5のいずれか一項に記載のイヌリナーゼを有効成分とするイヌリン分解剤。
【請求項9】
請求項1に記載の微生物を培養し、得られた培養物から水溶性成分を抽出する工程を有するイヌリナーゼの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22280(P2010−22280A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187766(P2008−187766)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000104113)カゴメ株式会社 (50)
【Fターム(参考)】