説明

新規微細藻類種と、動物または人間の食用のため、およびカロテノイドを得るためのその使用

本発明は、新規微細藻類種と、動物および/または人間の食用のため、およびカロテノイド産生のための使用に関する。新規Scenedesmus株はカジャマールのラスパルメリラス(Las Palmerillas)試験場において単離され、ゴッティンゲン大学により従来登録されていない微生物として同定されて、Scenedesmus calmeriensisとしてCulture Collection of Algae and Protozoa(CCAP)に登録されている。動物および/または人間の食用として用いることができる当該新規株は、多量のカロテノイド、特にルテインとベータカロテンを産生する。Scenedesmus calmeriensisは、pHが7から9.5における、10℃から40℃の幅広い温度で十分に増殖することができ、最大1 mg/Lの高銅濃度に耐えることができる。当該微細藻類株は機械的に培地が入れられた4000Lの光バイオリアクター内で培養され、乾燥物1グラムあたり4mg以下のルテインが産生される。前記株は、眼の黄斑疾患の治療において使用し得るカロテノイドの産生に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来報告されていない新たな種として単離および分類され、水性培養と、人間の食用と、動物および/または人間への使用のためのカロテノイドあるいはカロテノイド抽出物を得るための重要な用途を有する、新規微細藻類種に関する。
【0002】
当該微細藻類はScenedesmus almeriensisとして登録されたScenedesmus属であり、法的に認められた公のコレクション(Culture Collection of Algae and Protozoa, CCAP)に寄託されている。当該微細藻類の電子顕微鏡画像を図1に示す。当該微細藻類は、0.08h-1の高い増殖率と、10℃から40℃という広い温度幅への高い耐性と、高カロテノイド含有、特にルテインと、を特徴とする。
【背景技術】
【0003】
数千種の登録された微細藻類種が存在するが、商業的に活用されているのは数種類しかない。微細藻類の工業的使用が可能となる主な要件は、適当な増殖と、それに最も可能性の高い付加価値を付与する、様々な生化学的組成である。この点、今日商業的に活用されている微細藻類種は、水性培養のためのクロレラ(Chlorella)やNannochlotopsis(Borowitzka, Journal of Biotechnology, 70(1-3), (1999) 313-321)、食用のためのスピルリナ(Morist et al., Process Biochemistry, 37(5), (2001), 535-547)、あるいはそれぞれにおいてベータカロテンやアスタキサンチンのようなカロテノイドを産生させるためのDunaliellaや Haematococcus (Guerin et al., Trends in Biotechnology, 21(5), (2003) 210-216)というように様々である。
【0004】
他の多くの種が、その価値ある生化学的性質により潜在的に興味深いものとして報告されているが、ストレス感受性や混入が起こりやすいことによるそれらの低増殖率や生産の困難性が商業的活用を妨げている。このようなものとしては、微細藻類、Isochrysis galbana (Molina et al., Process Biochemistry, 30(8), (1995) 711-719)やMonodus subterraneous(Belarbi et al., Process Biochemistry, 35(9), (2000) 951-969)の場合が挙げられる。ルテインの産生に関しては、微細藻類microalga Muriellopsis sp.は小さな、50Lの実験室規模のチューブ状光バイオリアクター内で最大180 mg lutein/m2/dayの産生能を有して十分に増殖したが、光合成効率は非常に低く、4%であった(Jose A. Del Campo et al., Journal of Biotechnology 85 (2001) 289-295)。新規に単離した株により得られた成果は、最適化の間に、前記産生能を2倍にする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、高い増殖率と、極端な培養条件に対する高い耐性と、さらに非常にまれなカロテノイド含有量とを特徴とする新規微細藻類種を提供する。このため、あらゆる形態で、これらは生物体(biomass)、およびそれらのカロテノイド、特にルテインの有用な取得源である。
【0006】
本発明に係る微細藻類Scenedesmus almeriensisは、最大0.08l/hという高い増殖率と、広いpH範囲(7.0から9.5)および温度範囲(10℃から40℃)に対する耐性と、生物体の乾燥重量の最大5%になる高いルテイン含有量とを特徴とする。微細藻類Scenedesmus almeriensisの増殖のための最も好ましい条件は、温度が30℃、pHが8.0であり、ビタミンを添加しない条件である。微細藻類Scenedesmus almeriensisは様々な種類の培養培地で増殖することができ、好ましい増殖はプラスチック下の集約農業で用いられる栄養溶液内で判別される。電子顕微鏡による観察によれば、前記微細藻類は物理的ストレス現象から守る、非常に高い抵抗性を有する細胞壁を有する。このため、出力が最大2.0HPになる渦巻ポンプによる推進力に耐えることができる。
【0007】
微細藻類Scenedesmus almeriensisはさらに、高い光合成効率を特徴とし、それは、温室内に導入される400Lのチューブ状リアクターにおける大規模の培養において12%に達する。これらの条件下において得られる最大生物体生産能は0.8 g/L/dayである。しかしながら、最も興味深いデータはその高いルテイン産生能であり、最大480 mg ルテイン/m2/dayに達する。前記値は連続培養により得られ、これが当該微細藻類を生産するのに最も好適な方法である。この方法で行うことにより、ポリ不飽和脂肪酸とカロテノイドが豊富であるオイル、特にルテインが最大30重量%になる、ルテインの豊富であるオイルを得ることができるので、栄養補助食品として稚魚や軟体動物の幼生に栄養物を与えるため、動物や家畜に栄養物を与えるため、および人間の栄養物摂取のための使用に非常に適した生化学的性質を有する、高い質の均一な生物体が得られる。
【0008】
微細藻類Scenedesmus almeriensisは、4000Lのチューブ状リアクター内でのpHと温度がそれぞれ8.0と30℃に制御された条件下において培養され、乾燥生物体(dry biomass)に対して最大0.5%の高ルテイン含有の、高い質の均一な生物体を得ることができる。当該生物体は、ルテインが豊富である抽出物やオイルを得るために使用することができる。このため、ルテインが最大50重量%であるルテインの豊富であるオイルが、化学的手法により得られる。当該抽出物は、様々な疾患、特に老人性黄斑変性症についての予防や治療のための食用において潜在的な有用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】微細藻類Scenedesmus almeriensisの電子顕微鏡画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテインを産生し、寄託番号CCAP276/24としてCulture Collection of Algae and Protozoa (CCAP)に寄託され、Scenedesmus almeriensisと称される微細藻類Scenedesmus株あるいはその変異株(mutantもしくはvariant)。
【請求項2】
10℃から40℃の温度範囲、好ましくは30℃において十分に増殖することを特徴とする請求項1に記載のScenedesmus almeriensis 株。
【請求項3】
7.0から9.5のpH範囲、好ましくは8.0において増殖することを特徴とする請求項1に記載のScenedesmus almeriensis 株。
株。
【請求項4】
ビタミンの添加を必要とせず、プラスチック下において集約農業で用いられる栄養溶液で十分に増殖する請求項1に記載のScenedesmus almeriensis株。
【請求項5】
出力が最大2.0HPになる渦巻ポンプの使用のような激しい機械的手段による衝撃に耐えることを特徴とする請求項1に記載のScenedesmus almeriensis株。
【請求項6】
温室内の4000Lのチューブ状光バイオリアクター内で30℃で培養され、最大0.8g/L/dayの量で微細藻類生物体を生産することを特徴とする請求項1に記載のScenedesmus almeriensis株。
【請求項7】
連続培養下において、全乾燥物に対し最大0.5%ルテインとなる生物体を生産することを特徴とする請求項5に記載のScenedesmus almeriensis株。
【請求項8】
連続培養下において、最大30重量%のルテイン含有量となる、濃縮されたカロテノイドの抽出に使用することができる生物体を生産することを特徴とする請求項5に記載のScenedesmus almeriensis株。
【請求項9】
請求項1から8のうちいずれか1つに記載のScenedesmus almeriensis株の稚魚および軟体生物の幼生に栄養物を与えるための使用。
【請求項10】
請求項1から8のうちいずれか1つに記載のScenedesmus almeriensis株の動物および家畜に栄養物を与えるための使用。
【請求項11】
請求項1から8のうちいずれか1つに記載のScenedesmus almeriensis株の栄養補助食品としての、および人間の栄養物摂取のための使用。
【請求項12】
請求項1から8のうちいずれか1つに記載のScenedesmus almeriensis株のポリ不飽和脂肪酸が豊富であるオイルを取得するための使用。
【請求項13】
請求項1から8のうちいずれか1つに記載のScenedesmus almeriensis株のカロテノイドが豊富であるオイルを取得するための使用。
【請求項14】
請求項1から8のうちいずれか1つに記載のScenedesmus almeriensis株のルテインが豊富であるオイルを取得するための使用。
【請求項15】
請求項1から8のうちいずれか1つに記載の微細藻類Scenedesmus almeriensisを制御された条件で培養することと、
ルテインが豊富であるオイルを単離することを含む、ルテインが豊富であるオイルを得るための方法。


【図1】
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【公表番号】特表2008−529546(P2008−529546A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555648(P2007−555648)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000072
【国際公開番号】WO2006/087405
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507276058)ウニベルシダード デ アルメリア (1)
【出願人】(507276069)
【Fターム(参考)】