説明

新規高密度アレイおよび検体分析方法

本発明は、サンプル中の検体を同定するための方法であって:
(a)検体を多数の二部性捕獲プローブとインキュベートする工程、この捕獲プローブは固体基板上の所定の領域に固定され、各捕獲プローブは一端では該基板に固定され、他端では第二断片と相補的に連結されている第一断片から本質的に構成され、ここで第二断片は検体同定能を有する伸長断片を含む;
(b)サンプル検体と伸長断片との間の複合体形成をモニターする工程;
(c)複合体形成条件を順次変換させ;捕獲された検体分子を基板から解離させる工程;
(d)解離した検体を検出し、同定する工程
を含む方法に関する。本発明はまた該方法の相違した使用ならびに該方法を実行するためのマイクロアレイおよびキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分子生物学分野に関連し、特にマイクロアレイ技術に関する。マイクロアレイ技術はサンプル中の目的分子を検出し、分子の複合混合物の組成を決定し、2つまたはそれ以上の分子サンプルの組成を比較するために使用する。本発明は標的分子のアレイに対する検体分析のマイクロアレイ機能を最適化するための方法に関する。本発明は、既知および未知の多形および変異についての高処理量の遺伝型同定に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
過去10年間、アレイに基づく分析および同定技術の開発は高い関心を受けてきた。固体基板上に固定された何百〜何千もの分子またはプローブが検体分子とハイブリッド形成し、特に、速度論(kinetic)、配列、濃度および機能の情報を得るこの高処理量の方法は多数の適用事例に経済面から貢献をしてきた。
【0003】
DNAマイクロアレイは、高密度に配置されたオリゴヌクレオチドまたは相補的DNA(cDNA)からなり、分子の複合混合物を並行かつ定量的方法で調査するために使用できる。学術機関、バイオテクノロジー企業および製薬企業での診断検査およびゲノム研究でマイクロアレイをますます使用することによって、その応用は促進されている。近年では主な推進要因はゲノム分析となっている。
【0004】
アレイ技術の一適用は変異および多形の遺伝子型同定であり、これはリシーケンス(re-sequencing)としても知られている。多種の真核生物および原核生物種由来の遺伝子配列と一塩基(ヌクレオチド)多形(SNP)、多形、ハプロタイプ等による遺伝子バリエーションが利用可能であることによって、配列バリエーション分析を実行し、これらの分析を、例えば大規模薬物集団スクリーニングと結び付けることが増加している。これは遺伝的疾患の研究、診断、および処置を目的とするものである。理想的には、例えば疾患連鎖を分析するためにはすべての配列バリエーションが必要であろう。このため高密度アレイが必要となる。
【0005】
典型的には2次元マイクロアレイをガラス基板上に作成する。該マイクロアレイはガラス基板の一表面上に所定の領域またはスポット中に目的分子を配置して作成する。この場合、単一スポットは1つまたは複数の分子種を含有できる。
【0006】
アレイ上の分子数は利用可能な有効表面領域の量によって制限される。3次元アレイの開発が分子アレイ用の有効表面領域を実質的に増加している。この型のアレイは最近では例えばUS20020051995A1(特許文献1)またはUS6,383,742(特許文献2)に開示されており、これらの文献は複数の2次元アレイを積み重ねて組み立てられた3-Dマイクロアレイを記載している。他の3Dマイクロアレイはビーズまたは粒子を配列して製造されている。これはWO02/38812(特許文献3)に記載されている通りである。
【0007】
現行技術の最も重大な制限要因は、高い製造コストおよび特化した高価な器具使用の必要性を含んでいる。
【特許文献1】US20020051995A1
【特許文献2】US 6,383,742
【特許文献3】WO 02/38812
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、効率的、高速、かつ対費用効果の高い検体分析のために、遥かに改善された3Dマイクロアレイに基づく方法を提供することが本発明の目的である。
【0009】
前記方法を実行するためのマイクロアレイを提供することが本発明の更なる目的である。
【0010】
本発明はまた当該方法を実行するためのキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はサンプル中の検体のマイクロアレイ分析に関する。本明細書に記載の方法は高い有効表面含量を含む3Dマイクロアレイを使用する。既知の2D基板と比較して、本明細書中で使用する基板は少なくとも500倍拡大した有効表面領域を有する。当該拡大した領域を効率的に使用するために、基板の所定の領域群に異なった捕獲プローブの組み合わせ群を配置(spot)する。表面領域の増加に基づいて、プローブ当たりの配置用材料の量は平面アレイと比較して同一であり、これは結合条件が等しいことを示している。所定の領域内での異なった各捕獲プローブの特有の組成が結合した検体を順次検出できる。
【0012】
本発明は、サンプル中の検体を同定するための方法であって:
(a)該検体を多数の二部性捕獲プローブとインキュベートする工程、該捕獲プローブは固体基板上の所定の領域に固定され、各捕獲プローブは、一端では該基板に固定され、他端では第二断片と相補的に連結されている第一断片から本質的に構成され、ここに第二断片は検体同定可能な伸長断片を含む;
(b)サンプル検体と伸長断片との間の複合体形成をモニターする工程;
(c)複合体形成条件を順次変化させ;捕獲された検体分子を基板から解離させる工程;
(d)解離した検体を検出し、同定する工程
を含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の利点は多孔性基板の利用可能な有効表面を非常に効率的に使用することであり、各プローブは例えば遺伝子変異体である100種までの異なったプローブを単一スポット内で組み合わせ、1cm2当たり300,000までのスポットを分析することが可能である。
【0014】
本発明の別の特徴および利点は以下の詳細な説明中に記載され、そして部分的にはその記載から明らかになるであろうし、あるいは本発明の実施により習得してもよい。本発明の目的および他の利点は本明細書および添付の特許請求の範囲の中で特に指摘した過程によって認識でき、達成できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明はサンプル中の検体を分析するための方法および対応する高性能アレイに関する。本明細書中に記載した発明はアレイに基づくアッセイを用いて、溶液中の多数の化合物または分子の濃度の正確な検出および測定するために当分野の未解決の要求に対処するものである。
【0016】
本明細書および特許請求の範囲では、単数形の"a"、"an"および"the"は、前後関係が明らかに別途指定しない限り、複数引用を含む。他に指定しない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語、科学用語は当業者が一般に理解するのと同一の意味を有する。
【0017】
用語「検体(analyte、分析物)」および「検体分子」は本発明全体を通じて交換可能に使用する。用語「サンプル中の検体」はサンプル中の分子、すなわち分析対象の分子を表す。
【0018】
本明細書中で使用する検体とは、マイクロアレイ分析の実行目的のために、多孔性基板上に固定された標的分子と結び付き、あるいは結合するかもしれない任意の分子を表す。本明細書中で使用する用語「検体」とは、例えばタンパク質のエピトープのような、分離した分子および分子の部分、両者を表す。本発明で使用してもよい検体の例には、抗体、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、精製抗体、合成抗体、特定抗原決定基(例えばウイルス、細胞または他の物質)と反応性である抗血清、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、酵素結合部位、細胞膜受容体、脂質、プロテオリピド、薬物、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、糖、多糖類、細胞、細胞膜および細胞小器官、デオキシリボ核酸(DNA)を含む核酸、リボ核酸(RNA)およびペプチド核酸(PNA)またはそれらの任意の組み合わせ;補因子、レクチン、代謝産物、酵素基質、金属イオンおよび金属キレートが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書による方法を用いて、実質的に任意のサンプルを分析してもよい。しかしながら、通常は、サンプルは生体サンプルまたは生化学的サンプルである。本明細書中で使用する用語「生体サンプル」とは、生物由来または生物の成分(例えば細胞)由来のサンプルを表す。サンプルは任意の生体組織または体液性であってもよい。サンプルは「臨床サンプル」であることがよくあり、これは患者由来のサンプルである。このようなサンプルには、痰、脳脊髄液、血液、胎児血清(例えばSFC)と血漿を含む血清のような血液画分、血液細胞(例えば白血球)、組織または細針生検サンプル、尿、腹水および胸水またはそれら由来の細胞が含まれるが、これらに限定されない。生体サンプルはまた組織学的目的で採取される凍結切片のような組織切片を含んでもよい。
【0020】
生化学的サンプルとして細胞株培養、精製機能性タンパク質溶液、ポリペプチド溶液、オリゴヌクレオチド溶液を含む核酸溶液などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
サンプルは直接分析してもよく、使用前に何らかの調製に付した後に本発明のアッセイで使用してもよい。当該調製の非限定的な例には、サンプルを水または適切なバッファー中に懸濁/希釈すること、または細胞片を、例えば遠心分離によって除去すること、または分析前にサンプルの特定画分を選択することが含まれる。例えば核酸サンプルは、典型的にはアッセイ前に単離し、いくつかの態様では、これを逆転写および/または増幅(例えばポリメラーゼ連鎖反応、PCR)のような手順に付し、すべてのサンプル核酸の濃度(例えばランダムプライマーを用いて)または特定型の核酸の濃度(例えばポリヌクレオチド-チミジレート(polynucleotide-thymidylate)を用いてメッセンジャーRNAを増幅するか、あるいは遺伝子特異的プライマーの濃度を増加させて特定遺伝子配列を増幅して)を増加させる。またWO99/43850に記載の増幅方法を本発明で使用してもよい。
【0022】
用語「プローブ」および「捕獲プローブ」は本発明を通じて交換可能に用いられ、この用語は、1つまたは複数の検体分子と特異的に結合することによってこれらを捕獲することができる固定性の分子を表す。「固定性の分子」とは、当分野で慣用的な任意の手段によって基板上に固定可能な分子を意味する。
【0023】
本発明は所定の領域内での固有組成の各二部性捕獲プローブに基づく。
【0024】
したがって、本発明の一態様では、使用される基板上の所定の各領域が多数の各種捕獲プローブを含む方法を提供する。所定の単一領域内の異なった捕獲プローブの数は2〜100またはそれ以上の範囲内であってもよい。
【0025】
用語「スポット」および「所定の領域」は本発明を通じて交換可能に用いられ、この用語は基板上で個別に、空間的に位置指定されている位置に関し、アレイを形成している。
【0026】
既定の基板のサイズに関して、基板上のスポット数の上限はアレイ中でスポットを作成し、検出できる能力によって決定される。アレイ上の好ましいスポット数は一般に、アレイの具体的用途に依存する。例えば、ハイブリッド形成による配列決定は概して大きいアレイを必要とし、一方、変異の検出は小さいアレイしか必要としないかもしれない。通常、アレイは2〜106スポットおよびそれ以上、または約100〜約105スポット、または約400〜約104スポット、または約500〜約2000の範囲のスポットを含有する。
【0027】
所定の単一領域内で使用されるプローブセットは、特徴的相互作用領域を含む特異的ハイブリッド形成分子からなる。各二部性プローブに関して、少なくとも3以上の特異的相互作用領域が区別されていてよい。本明細書中で使用する用語「特異的相互作用領域」とは、別の分子を認識しかつ選択的に結合する、固有のまたは人工的に創出した特性を有する分子または分子の部分を表す。このような認識および特異的結合の非限定的な例には、相補的オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または核酸のハイブリッド形成、または他の分子と結合するように化学合成された合成分子が含まれる。
【0028】
本発明の二部性プローブは第一断片および第二断片から構成される。第一の特異的相互作用領域は第一断片内に存在し、該第一断片はその5'末端で基板に固定されている。該5'末端はリンカー分子であってよい。
【0029】
したがって本発明の一態様では、二部性プローブの当該第一断片がリンカー分子によって基板に固定されている方法を提供する。
【0030】
適したリンカーは、例として以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
ポリプロリンまたはポリアラニンのようなポリペプチド、1−アミノヘキサン酸のような飽和または不飽和二官能性炭化水素、ポリエチレングリコールのようなポリマー等、1,4-ジメトキシトリチル-ポリエチレングリコールホスホルアミダイト、これはヒドロキシル基とホスホジエステル結合を形成するのに有用であり、これらは例えばZhang
et al., 1991, Nucl. 20 Acids Res. 19:3929-3933およびDurand
et al., 1990, Nucl. Acids Res. 18:6353-6359に記載されている。他の有用なリンカーは市販されている。
【0031】
本明細書中で使用する表現「基板上に固定」とは、1つまたは複数の標的分子を多孔性基板表面に付着または接着させることを表し、これには該基板の内側表面への付着または接着が含まれる。
【0032】
分子または化合物は、共有結合によって(例えばシステイン残基の単一反応性チオール基を利用して)あるいは非共有結合ではあるが、特異的な結合によって(例えば固定化抗体、ビオチン/ストレプトアビジン系等によって)、当分野で既知の任意の方法によって固定してもよい。標的分子を多孔性基板に結合させるために利用可能な多種の方法の別の例には以下のものが含まれるが、これらには限定されない:
ビオチン-リガンド、これはストレプトアビジンと非共有結合によって複合体形成している;S-H-リガンド、これはヨードアセトアミドまたはマレイミドのようなアルキル化試薬を介して共有結合している;アミン-リガンド、これは活性化カルボン酸基を介して共有結合している(例えばEDACカップリング等);フェニルボロン酸(PBA)-リガンド、これはサリチルヒドロキサム酸(SHA)と複合体形成している;およびアクリル連結物(acryliclinkages)、これは遊離のアクリル酸モノマーと重合し、ポリアクリルアミド形成するあるいはSHまたはシラン表面と反応する。より詳細には、タンパク質の固定は、以下のものを含む群から選択される結合剤によって行ってもよい:臭化シアン、スクシンイミド、アルデヒド、トシルクロライド、アビジン-ビオチン、N-[y-マレイミドブチリルオキシルスクシンイミドエステル(GMBS)のような、ヘテロ二官能性架橋剤を含む光架橋剤、エポキシドおよびマレイミド。抗体は、抗体表面上の遊離のアミノ基を支持体内に存在する反応性側鎖と化学的に架橋することによって多孔性基板に結合させてもよい。例えば抗体はグルタルアルデヒド、カルボ-ジ-イミドまたは架橋剤としてGIVMSのようなヘテロ二官能性物質を用いて遊離のアミノ、カルボキシルまたは硫黄基を含有する基板と化学的に架橋してもよい。
【0033】
本発明の一態様では、捕獲プローブを共有結合によって固体基板に固定する。
【0034】
共有結合による基板への連結は当分野で周知である。有機化合物を金属酸化物に共有結合させることは当分野で公知であり、例えばChu.C.W.,
et al (J. Adhesion Sci. Technol.,7, pp. 417-433;
1993)およびFadda, M.B. et al.(Biotechnology and Applied
Biochemistry, 16, pp. 221-227, 1992)に記載される方法を用いる。
【0035】
所定の単一領域内の捕獲プローブ間に区別を導入するため、第一断片の5'末端またはリンカー分子は分解可能領域を含ませてよい。該5'末端またはリンカー末端中に多数の分解可能領域は、基板を対応する適切な解離処理に付したのちに、固定されている分子を基板から順次解離させることが可能である。当該処理は、例として、ジスルフィド架橋分解、酸加水分解および光活性化基(light-activatable groups)に対して作用する光照射処理のような化学的処理を含んでよいが、これらに限定されない。
【0036】
したがって本発明の一態様では、リンカー分子は安定性または不安定性リンカー分子の群から選択される。
【0037】
さらに別の態様では、前記リンカー分子は不安定性リンカーである。
【0038】
さらに別の態様では、前記リンカー分子は物理的に不安定なリンカーおよび化学的に不安定なリンカーを含む群から選択される。
【0039】
さらに別の態様では、前記不安定性リンカーは光不安定性、酸不安定性、塩基不安定性、酵素不安定性、および酸化不安定性リンカーを含む群から選択される。
【0040】
第二の特異的相互作用領域は、二部性プローブの第二断片に第一および第二両断片の相補的核酸配列によって第一断片とハイブリッド形成させることを可能にする。したがって別法では、所定の領域内の個々の捕獲プローブ間の区別は、該個々のプローブの第一および第二断片の相補的ハイブリッド形成領域内配列を変異させることによって導入してもよい。このような配列の変異は相違した融解温度を生じさせる。したがって、これらの領域を第一および第二断片の温度標識配列と称する。
【0041】
簡単のために、本明細書中で使用する温度標識配列とは二部性プローブの第一および第二断片内に存在する一本鎖配列を表すが、これはまた第一と第二断片との間の二本鎖の相補的重複領域をも表す。
【0042】
したがって本発明の一態様では、前記第一断片は温度標識配列によって第二断片と相補的に連結されている。
【0043】
本発明の関連では、典型的に、前記温度標識配列は10〜40またはそれ以上までのヌクレオチドを含む。導入した配列変異が相違した融解温度を生じ、ゆえにこの基板を温度変化に付すると、相違した温度標識配列内での相違した第一断片/第二断片ハイブリッド形成に影響が生じる。
【0044】
所定の領域内の個々の捕獲プローブ間の区別はまた、温度標識配列内に制限酵素認識領域を付与することによって導入してもよい。
【0045】
第一断片を本質的に構成するリンカー分子および/または温度標識配列によって規定されるプローブの特徴が、所定の領域内の異なった捕獲プローブに、リンカー分子および/または温度標識配列よって規定される解離条件に応じて、結合している検体を特異的に解離することを可能にしている。
【0046】
したがって本発明の一態様では、所定の領域内に固定されている異なった捕獲プローブの各々が検体解離条件に関しては異なっている方法を提供する。
【0047】
さらに別の態様では、前記検体解離条件は温度標識またはリンカー分子またはそれらの組み合わせによって規定される。
【0048】
したがって、本発明の別の態様では、捕獲されている検体分子を基板から順次解離させることは変化条件によって、温度変化、塩基処理、酸化処理、酵素処理および光分解、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0049】
サンプル中の検体を分析するために、二部性プローブの第二断片は特異的結合によって検体を同定可能である伸長断片を含む。二部性プローブのこの第三の相互作用領域は核酸であってよい。
【0050】
したがって本発明の一態様では、前記伸長断片が核酸配列である方法を提供する。
【0051】
伸長核酸断片は十分な長さを有し、上記の様に基板を標的解離条件に付しても当該核酸/検体相互作用は解離出来ないような、結合検体を有して十分に高いTmを有する。すなわち標的解離条件は(例えば温度変化に応じた)第二断片/検体複合体を放出するか、あるいは(例えばリンカー分子の分解に応じた)第一断片/第二断片/検体複合体を放出する。特に適した核酸伸長断片は30〜80ヌクレオチド長であり得る。
【0052】
このように本発明の一態様で提供する長い伸長断片は高いTm値を有する伸長断片/検体核酸ハイブリッドを提供する。
【0053】
さらに別の態様では、本発明に基づく方法によって得られる伸長断片/検体核酸複合体の高いTmは温度標識配列によって規定されるTmより実質的に高い。
【0054】
したがって本発明の一態様では、上記変化条件としての温度変化は、その後のより高いTm値で検出を行うことによって施される。該Tm値群は捕獲プローブ群の温度標識配列群によって規定されるTm値群に対応し、そしてこれにより該温度変化は伸長断片/検体相互作用には影響しない。
【0055】
本発明のさらに別の態様では、該核酸配列はオリゴヌクレオチドである。
【0056】
「オリゴヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド配列」とは、約6〜約150またはそれ以上の塩基長の核酸を意味する。オリゴヌクレオチドは必ずしもではないが、一般にインビトロで合成する。6〜150塩基であり、かつより大きい配列のサブ配列である核酸セグメントもまたオリゴヌクレオチド配列と称してよい。用語「オリゴヌクレオチド」は1つまたは複数のデオキシリボヌクレオチドから構成される分子、プライマーのような、プローブおよび核酸断片を表す。
【0057】
本発明のさらに別の態様では、核酸伸長断片はステム-ループ配列を含む。
【0058】
さらに別の態様では、前記ステム-ループ配列は分子ビーコンである。分子ビーコンは蛍光ドナー、検体結合配列または同定配列および消光剤から本質的に構成される。
【0059】
用語「蛍光ドナー」とは蛍光発生性化合物のラジカルを表し、該化合物はエネルギーを吸収し、該エネルギーを別の蛍光発生性分子または化合物の部分に伝達できる。適したドナー蛍光発生性分子には、クマリンおよび関連色素、フルオレセイン、ロドール(rhodol)およびローダミンのようなキサンテン、レソルフィン(resorufin)、シアニン色素、ビマン(bimane)、アクリジン、イソインドール、ダンシル色素、ルミノールおよびイソルミノール誘導体のようなアミノフタル酸ヒドラジド、アミノフタルイミド、アミノナフタルイミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノヒドロキノンおよびユーロピウム錯体およびテルビウム錯体および関連化合物が含まれるが、これらには限定されない。
【0060】
用語「消光剤(quencher)」とは、発色団分子、または蛍光ドナーと結合すると、該ドナー由来の発光を減少させることができる化合物の部分を表す。消光は蛍光共鳴エネルギー移動、光誘導性電子伝達、項間交差(intersystemcrossing)の常磁性増強、Dexter交換共役(Dexter exchange
coupling)および暗色複合体の形成のような励起共役(excitationcoupling)を含むいくつかの機構のいずれかによって生じ得る。消光剤は蛍光共鳴エネルギー移動を介して作用してもよい。多数の消光剤は伝達されたエネルギーを蛍光として再発光できる。その例には、クマリンおよび関連するフルオロフォア(fluorophore)、フルオレセイン、ロドールおよびローダミンのようなキサンテン、レソルフィン、シアニン、ジフルオロボーラジアザインダシン(difluoroboradiazaindacene)およびフタロシアニンが含まれる。他の化学物質クラスの消光剤は一般に、伝達されたエネルギーを再発光しない。その例には、インディゴ、ベンゾキノン、アントラキノン、アゾ化合物、ニトロ化合物、インドアニリン(indoaniline)、ジフェニルメタンおよびトリフェニルメタンが含まれる。
【0061】
用語「色素」とは、紫外線を含むがこれに限定されない特定周波数の光を吸収する分子または化合物の部分を表す。用語「色素」および「発色団」は同義である。
【0062】
用語「フルオロフォア」とは蛍光を発する発色団を表す。
【0063】
ステム-ループまたは分子ビーコン配列を使用すれば、複数のフルオロフォアを使用し、スポットごとに複数の分析を行うことが可能である。これにより低温で既定のスポット内で結合したすべてのプローブおよび検体について例えば4つの異なるフルオロフォアチャネルの最初の走査をすることができる。次いで温度変化を導入、例えば温度を高くして、そして再度、すべての蛍光チャネルを当該高い温度で走査してもよい。
【0064】
適したフルオロフォアの非限定的な例には、フルオレセンイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド(Texas Red)、フィコエリトリン、アロフィコシアニン(allophycocyanin)、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、2',7'-ジメトキシ-4',5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、6-カルボキシX-ローダミン(ROX)、6-カルボキシ-2',4',7',4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)、N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、シアニン色素(例えばCy5、Cy3)、BODIPY色素(例えばBODIPY630/650、Alexa542等)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、等(例えばMolecularProbes, Eugene, Oregon, USAを参照のこと)が含まれるが、これは例示であり、これらに限定されない。
【0065】
したがって本発明の一態様では、異なったシグナルを単一の解離条件で検出できる方法を提供する。
【0066】
さらに別の態様では、相違したシグナルを所定の単一領域内で、単一解離条件において検出してもよい方法を提供する。
【0067】
本発明の別の態様では、検体分子が標識を含み、該標識が同定可能なシグナルを発生できる方法を提供する。
【0068】
蛍光標識は特に適している。その理由は蛍光標識が低いバックグラウンドを有する非常に強いシグナルを提供するからである。また蛍光標識は短時間の走査手順により高分解能かつ高感度で光学的に検出可能である。蛍光標識に光を照射すれば、該蛍光標識は多数の発光を生成可能である利点を提供する。ゆえに、単一の標識が多数の測定可能な現象を提供できる。
【0069】
したがって特定の態様では、前記標識はフルオロフォアである。
【0070】
同様に、検出可能なシグナルは化学発光標識および生物発光標識によって提供してもよい。化学発光源には、化学反応によって電子的に励起され、検出可能なシグナルとして有用な光を放射できるか、あるいは蛍光アクセプターにエネルギーを供与する化合物が含まれる。別法では、ルシフェリンをルシフェラーゼまたはルシゲニンと組み合わせて使用し、生物発光を提供できる。
【0071】
温度変化は連続的または段階的であってよい。本発明の方法において段階的に温度を増加させる場合の適した例では、各順次増加段階でTmを15℃以下しか増加させない。本発明の方法において段階的に温度を増加させる場合のさらに適した例では、Tmを10℃以下ずつしか増加させない。本発明の方法において段階的に温度を増加させる場合の特に適した例では、Tmを5℃以下ずつしか増加させない。
【0072】
用語「固体基板」とは、当分野で慣用的な任意の固体基板を表し、この固体基板はアレイを支持し、その基板上で、分子が相互作用し、その反応が基板表面を分解せずに、あるいは基板表面と反応せずに検出可能であるものである。該基板の表面はマイクロスフェア(microsphere)またはナノビーズ(nanobiead)のようなビーズまたは粒子、または平面ガラス、弾力性、半硬質または硬質の膜、プラスチック、金属、または鉱物(例えば石英または雲母)の表面であってもよく、これに分子を接着させてよい。固体基板は平面であってもよくあるいは単純または複雑な形状を有してよい。標的分子またはブローブを接着させる表面は固体基板の外側表面または内側表面であり得る。特に、天然に、あるいは加工により基板が多孔性である場合には、分子は内側表面に結合させることが多い。
【0073】
用語、固体基板「に接着」または「に結合」とは、第一結合分子が固体基板に直接または間接的に固定されていることを示す。
【0074】
一般に、本発明の基板は任意の多孔性材料から構成されていてもよく、この材料は標的分子の固定を許容し、ならびに使用する反応条件下では融解せず、あるいは別の様式で実質的に分解することがないものである。分子が接着する表面は、多孔性基板の外側表面または内側表面であってもよい。特に、本発明では、多孔性基板の内側表面を異なった分子または捕獲プローブセットによって最大限に占有して構わない。
【0075】
用語「活性表面(active surface)」とは、該表面上に固定された標的分子を有してもよい基板表面を表す。該活性表面は外側表面または内側表面であってもよい。
【0076】
本発明で使用する多孔性基板は、例えば金属、セラミック金属酸化物または有機ポリマー製であってもよい。強度および硬さを考慮して、金属またはセラミック金属酸化物を用いてもよい。とりわけ、耐熱性および耐化学物質性を考慮して、金属酸化物を用いてもよい。さらに、金属酸化物は高いチャネル密度および高い多孔率の両者を有する基板を提供する。該基板は、サンプル利用用の単位表面当たり相違した第一結合物質を含む高密度アレイの作成を可能にする。さらに、金属酸化物は可視光に関して非常に透過性である。金属酸化物は比較的安価な基板であり、いかなる典型的な微細加工技術の使用も必要としない。その上、電気化学的に製造された金属酸化物膜のように、支持体表面上の液体分布に対して改善された制御を提供する。指向性貫通チャネルを有する金属酸化物膜は金属シートを電気化学的にエッチングすることによって製造することができる。
【0077】
したがって本発明の一態様では、前記固体基板が金属酸化物基板である、本明細書中に記載の方法を提供する。
【0078】
金属酸化物の種類は特に限定しないが、好ましいものを使用可能である。金属としては、例えばステンレス鋼(シンタードメタル)の多孔性基板を使用できる。耐熱性を必要としない適用では、強度が許せば、有機ポリマーの多孔性基板もまた使用可能である。
【0079】
考慮される金属酸化物は、とりわけ、ジルコニウム、シリカ、ムライト、コーディエライト(cordierite)、チタン、ゼオライトまたはゼオライト類似物、タンタルおよびアルミニウムの酸化物ならびに2つまたはそれ以上の金属酸化物の合金およびドープ金属酸化物および金属酸化物含有合金がある。
【0080】
一態様では、前記固体基板がアルミニウム-酸化物基板である、本明細書中に記載の方法を提供する。
【0081】
金属酸化物膜は、特に湿性であれば、透明であり、これにより多種の光学的技術を用いてアッセイすることが可能である。このような膜は十分に制御された直径および有用な化学的表面特性を有する指向性貫通チャネルを有する。AnoporeTM多孔性基板を開示するWO 99/02266はこの点において典型例であり、これは本発明に明確に包含される。
【0082】
基板が多孔性であれば、液体、例えばサンプル溶液をその構造内の加圧運動を促進する。2次元基板とは対照的に、本明細書中に記載の方法で使用する3次元基板またはマイクロアレイのフロースルー性はハイブリッド形成時間を大きく減少させ、シグナルおよびシグナル対ノイズ比を増大させる。さらに、サンプル溶液を基板の孔を通して動的に上下にポンプするために、当該アレイに陽圧または陰圧を適用してもよい。
【0083】
さらに別の態様では、前記固体基板がフロースルー基板である、本明細書中に記載の方法を提供する。
【0084】
本明細書に記載の方法への特に適した適用は遺伝子型同定を含む。これに加えて、本発明の特定の態様では、二部性プローブの第二断片の核酸伸長断片は核酸変異部位を含む。
【0085】
さらに別の態様では、前記核酸変異部位はフレームシフト変異を含む欠失および挿入;および単一のヌクレオチド変異を含む塩基対置換を含む群から選択される。
【0086】
特定態様では、前記核酸変異部位は単一ヌクレオチド多型である。
【0087】
本発明のさらに別の目的は、本明細書中に記載の方法を実行するためのマイクロアレイを提供することであって、これは固体基板を含み、該固体基板はその上に1セットの異なった二部性捕獲プローブを固定し、当該異なった捕獲プローブのセットは異なった捕獲プローブのサブセットに細分される。ここでは異なった捕獲プローブの各サブセットは該固体基板上の所定の領域内に固定されている。さらに所定の単一領域内の異なった各捕獲プローブは異なった第一断片を含む。該第一断片は一端では基板に固定され、他端では第二断片と相補的に連結され、ここでは該第二断片は検体同定能を有する伸長断片を含む。
【0088】
一態様では、捕獲プローブが共有結合によって固体基板に固定されているようなマイクロアレイを提供する。
【0089】
さらに別の態様では、固体基板がアルミニウム酸化物基板である、本明細書中に記載のマイクロアレイを提供する。
【0090】
さらに別の態様では、前記固体基板がフロースルー基板である、本明細書中に記載のマイクロアレイを提供する。
【0091】
さらに別の態様では、核酸分析キットを製造するための本明細書中に記載のマイクロアレイの使用を提供する。
【0092】
本発明のさらに別の目的は、本明細書中に記載の方法を実行するためのキットを提供することであって、それは以下を含む。
(a)本発明によって提供されるマイクロアレイ;
(b)1セットの二部性捕獲プローブ、第一の断片で特徴付けられる該捕獲プローブはリンカー分子および温度標識配列から本質的に構成され、該温度標識配列は第二断片とハイブリッド形成し、該第二断片は検体同定能を有する伸長断片を含む
【0093】
一態様では、前記伸長断片がフレームシフト変異を含む欠失および挿入;単一ヌクレオチド変異を含む塩基対置換を含む群から選択される核酸変異部位を含むキットを提供する。
【0094】
本発明のさらに別の目的は核酸サンプル中のヌクレオチド変異を検出するために本明細書に記載の方法の使用を提供することであり、該変異はフレームシフト変異を含む欠失および挿入;および単一ヌクレオチド変異または多型を含む塩基対置換を含む群から選択される。
【0095】
一態様では、本発明は多数のTm依存性核酸ハイブリッド形成現象を動的にモニターするための、本明細書中に記載の方法の使用を提供する。
【0096】
以下の図面および実施例は本発明を説明するためのものであり、いかなる意味においても本発明を限定するものとはみなし得ないものである。
【0097】
実施例
【実施例1】
【0098】
実施例1:サンプル中の核酸配列変異の検出
捕獲プローブセットのアレイを使用して、多数の1000-10000 SNP配列または他の既知の配列を検出する。該検出には金属酸化物基板上の限られた数の特徴を用いる。捕獲プローブセット配列を構築し、GenBank(登録商標)データベース配列と照らし合わせる。二部性プローブの第一断片は各々、5'末端の連結部分(図1の「A」)チオールまたはアミンまたはカルボキシルまたは光反応性連結部分からなる。各第一断片は10〜30ヌクレオチド長の温度標識配列(図1の「B」)を含み、制限酵素用結合領域(図1の「RE」)を有する。1セットの第一断片を共有結合によって当技術分野に公知のように基板と連結する。多数の異なった第一断片をともに組み合わせて(1+2+3+4、図1を参照のこと)、異なった第一断片のセットを形成し、これを共有結合によって基板上の所定の領域またはスポットに結合させる。1セット内のこれら第一断片の各々は異なる解離領域(例えばリンカー分子Aの化学的連結、温度標識Bの配列長)を有する。アレイを製造後に、相補的第二鎖分子(図1の「C」)の混合物を、30℃にて5xSSPE中、濃度0.1〜10nM、第一断片セットとハイブリッド形成させる。相補的第二鎖配列は第一鎖の温度標識配列に対して相補的な5'末端配列およびサンプル核酸配列と相補的である30〜80ヌクレオチド長の3'末端伸長断片から本質的に構成される。該伸長断片は5'末端で折りたたまれたDNA配列を含んでもよく、該配列の5'末端の端は伸長断片の3'末端の端とハイブリッド形成している(図1の捕獲プローブ5)。これによって蛍光色素の使用が可能になり、該色素は天然の折りたたみ状態で存在する時には消光するが、検体配列とハイブリッド形成すると強い蛍光染色を提供する。
【0099】
これらの工程の後、アレイをサンプルとハイブリッド形成させる準備が整う。
【0100】
本実施例では、サンプルは多重PCRサンプルであり、このサンプル中では、標識されたヌクレオチドを取り込むことによって核酸は蛍光性プライム付きされているかあるいは蛍光標識されている。このサンプルを、スピンカラム(Chroma Spin+ TE30カラムおよびMicrocon(登録商標)YM-30カラム)を用いて精製する。サンプル20μl(0.1〜100
nM)を、多孔性基板上、5xSSPE中、40℃で15分間ハイブリッド形成させる。該ハイブリッド形成は、サンプルを継続的にポンプし、所定の領域中の基板の孔を通して毎分2回上昇および下降させながら行う。CCD画像を撮影し、スポットの強度について分析する。1捕獲プローブセット上の多数のサンプル配列に関するシグナルを図2に示す。サンプルを継続的にポンプしながら、温度を50℃に上昇させる。この温度が初めて配列を融解させ、図1に示される捕獲プローブ「4」の温度標識を解離する。CCD画像を撮影し、スポットの強度について分析する。40℃および50℃で取得されるシグナル間の差異はサンプル配列のうちの1つに特異的なシグナルである。温度をさらに60℃および70℃に上昇させ、画像を撮影する。このシグナルの変化を図2に示す。
【0101】
温度に関して実行した手順と同様の工程手順を制限酵素を順次添加して行う。さらに、温度に関して実行した手順と同様の工程手順を化合物の添加によって実行する。該化合物は第一断片の連結を選択的に除去する。さらに、別層の検体配列は感光性の基を用いて除去する。次いで基板を紫外線源で照射し、第一断片と基板との間の結合を切断する。
【0102】
温度変化、化学処理工程、制限酵素の使用および光分解を組み合わせて、アレイ上の既定のスポット中で100種までの相違したサンプル配列を分析することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】1セットの5つの二部性捕獲プローブ1、2、3、4および5を示す。これは本発明のマイクロアレイ上の所定の領域中に存在する。各二部性プローブはリンカー分子(A)によって基板に固定されている第一断片から本質的に構成される。該第一断片はその3'末端で温度標識配列(B)によって第二断片と相補的に連結されている。該第二断片はサンプル中の検体(D)の同定能を有する伸長断片(C)を含む。該伸長断片はステム-ループまたは分子ビーコン配列(E)を含んでもよく、この(E)は、蛍光ドナー(Fl)、検体結合配列または同定配列および消光剤(Q)から本質的に構成される。温度標識配列(B)は制限酵素(RE)用の認識部位を有してもよい。
【0104】
【図2】捕獲された検体/プローブ複合体のアレイに順次温度変化を適用した時に得られるハイブリッド形成シグナルを示す。該取得シグナルは諸温度標的解離条件下でプローブによって捕獲されている検体が生成する個別のシグナルの合計である。例えば低い温度(例えば40℃)では、全体のシグナルは図1に記載の捕獲プローブ1、2、3、4と結合している検体から生成するシグナルの合計である。温度を順次高くするにつれて、標識された伸長断片/検体複合体が基板から順次解離したことに応じて当該シグナルが変化する。
【符号の説明】
【0105】
A リンカー分子
B 温度標識配列
C 伸長断片
D 検体
E ステム-ループまたは分子ビーコン配列
Fl 蛍光ドナー
Q 消光剤
RE 制限酵素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の検体を同定するための方法であって:
(a)検体を多数の二部性捕獲プローブとインキュベートする工程、捕獲プローブは固体基板上の所定の領域に固定され、各捕獲プローブは一端ではその基板に固定され、他端では第二断片と相補的に連結されている第一断片から本質的に構成され、ここで第二断片は検体同定能を有する伸長断片を含む;
(b)サンプル検体と伸長断片との間の複合体形成をモニターする工程;
(c)複合体形成条件を順次変化させ;捕獲された検体分子を基板から解離させる工程;(d)解離した検体を検出し、同定する工程
を含む方法。
【請求項2】
第一断片が温度標識配列によって第二断片と相補的に連結されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一断片がリンカー分子によって基板に固定されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
所定の各領域が多数の異なった捕獲プローブを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
所定の領域に固定されている各捕獲プローブの検体解離条件が異なっている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
検体解離条件が温度標識またはリンカー分子またはそれらの組み合わせによって規定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
リンカー分子が安定性および不安定性リンカー分子の群から選択される、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
リンカー分子が不安定性リンカーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
不安定性リンカーが物理的に不安定なリンカーおよび化学的に不安定なリンカーを含む群から選択される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
不安定性リンカーが感光性、酸不安定性、塩基不安定性、酵素不安定性および酸化不安定性のリンカーを含む群から選択される、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1の工程(c)で規定される順次解離を、温度変化、塩基処理、酸処理、酸化処理、酵素処理および光分解ならびにそれらの任意の順次組み合わせを含む群から選択される変化条件によって行う、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
順次増加したTm値で検出手段によって温度変化を施し、Tm値群は捕獲プローブ群の温度標識配列群によって規定されるTm値群に相当し、これにより温度変化は伸長断片/検体相互作用には影響しない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
各順次増加段階でTmを15℃以下しか変化させない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各順次増加段階でTmを10℃以下しか変化させない、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
各順次増加段階でTmを5℃以下しか変化させない、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項1の工程(b)で規定される伸長断片が核酸配列である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
核酸配列がオリゴヌクレオチドである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
核酸がステム-ループ配列を含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
ステム-ループ配列が分子ビーコンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
伸長断片/検体核酸が高いTmを有する、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
高いTmが、請求項2で規定される温度標識配列によって規定されるTmより実質的に高い、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
検体が同定可能なシグナル生成能を有する標識を含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
標識がフルオロフォアである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1の工程(b)で規定される伸長断片が核酸変異部位を含む、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
核酸変異部位がフレームシフト変異を含む欠失および挿入;および単一ヌクレオチド変異を含む塩基対置換を含む群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
核酸変異部位が単一塩基多型である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
捕獲プローブが共有結合によって固体基板に固定されている、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
単一解離条件で相違したシグナルを検出することができる、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
単一解離条件で所定の単一領域内において、相違したシグナルを検出することができる、請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
固体基板が金属-酸化物基板である、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
固体基板がアルミニウム-酸化物基板である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
固体基板がフロースルー基板である、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
核酸サンプル中のヌクレオチド変異を検出するため、フレームシフト変異を含む欠失および挿入;および単一ヌクレオチド変異または多型を含む塩基対置換を含む群から選択されるその変異を検出するための、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項34】
多数のTm依存性核酸ハイブリッド形成現象を動的にモニターするための、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項35】
請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法を実行するためのマイクロアレイであって、固体基板を含み、固体基板はその上に1セットの異なった二部性捕獲プローブを固定し、異なった捕獲プローブのセットは異なった捕獲プローブのサブセットに細分され、ここで異なった捕獲プローブの各サブセットは固体基板上の所定の領域内に固定されており、所定の単一領域内の異なった各捕獲プローブは、この第一断片は一端では基板に固定され、他端では第二断片と相補的に固定されている異なった第一断片を含み、ここで第二断片は検体同定能を有する伸長断片を含む、マイクロアレイ。
【請求項36】
捕獲プローブが共有結合によって固体基板に固定されている、請求項35に記載のマイクロアレイ。
【請求項37】
固体基板がアルミニウム酸化物基板である、請求項35または36に記載のマイクロアレイ。
【請求項38】
固体基板がフロースルー基板である、請求項35〜37のいずれか1項に記載のマイクロアレイ。
【請求項39】
核酸分析キットを製造するための、請求項35〜38のいずれか1項に記載のマイクロアレイの使用。
【請求項40】
請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法を実行するためのキットであって:
(e)請求項35〜39のいずれか1項に記載のマイクロアレイ;
(f)1セットの二部性捕獲プローブ、捕獲プローブはリンカー分子および温度標識配列から本質的に構成される第一断片を特徴とし、温度標識配列は第二断片とハイブリッド形成し、第二断片は検体同定能を有する伸長断片を含む、
を含むキット。
【請求項41】
伸長断片がフレームシフト変異を含む欠失および挿入;および単一ヌクレオチド変異を含む塩基対置換を含む群から選択される核酸変異部位を含む、請求項40に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−501817(P2006−501817A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−510469(P2004−510469)
【出願日】平成15年6月2日(2003.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/005749
【国際公開番号】WO2003/102233
【国際公開日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(305023241)パムジーン ビー.ブイ. (1)
【Fターム(参考)】