説明

新規2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩及びその製造方法と用途

【課題】新規2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩とその製造方法、及びこの化合物を活性成分とする薬物組成物、並びに心脳虚血性疾患の予防と治療、抗血栓、心脳循環障害の改善のための薬物を調製することにおける該化合物の応用に関する。
【解決手段】2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩は、下記式で表される。式中において、nは1或いは2であり、Mは一価金属イオン、二価金属イオン或いは有機塩基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、より詳しくは、行方向に延びる複数の走査電極と列方向に延びる複数の信号電極との各交差部分に画素が形成されるパッシブマトリクス型の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
急性虚血性脳卒中、冠動脈硬化性心疾患及び心筋梗塞は、いずれも各種因子で血栓形成を誘発することによる虚血性損傷の疾患であり、このような疾患は、患者に多大な苦痛を与え、甚だしきに至っては生命に危険を及ぼす。現在、このような薬物に関する研究は、最前線の薬物研究開発として注目されている。
【0003】
3−アルキルフタライド類化合物の多数は、生理活性がある。そのなか、DL−3−n−ブチルフタライドは、特許文献1にその抗脳虚血の活性が開示された。また商品名「恩必普」、剤形ソフトカプセルである一種の新薬として中国で販売されている。3−n−ブチリデンフタライドは、抗血小板凝集の作用を有すると報告(非特許文献1参照)されたが、その抗脳虚血と抗血栓形成の活性を開示する報告が見られなく、また、DL−3−n−ブチルフタライドと同じように水に不溶な粘稠液体なので、製薬工業において、適当な製剤形式になりにくい。
【0004】
出願番号01109795.7の特許文献2には、初めてDL−3−n−ブチルフタライドを前駆物とする2−(α−ヒドロキシペンチル)安息香酸塩の調製とその用途が開示された。一価金属イオン、二価金属イオン及び有機塩基の塩に関し、具体的に、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アニリン、ベンジルアミン、モルホリン、ジエチルアミンの塩が開示された。その明細書には、カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、ベンジルアミン塩の調製が開示されたが、亜鉛塩、アニリン塩、モルホリン塩、ジエチルアミン塩の具体的な調製方法が開示されていない。また、その明細書には、カリウム塩の局部脳虚血ラットの脳梗塞面積とラットの血小板凝集への影響、及びラットの心臓(in vitro)の虚血−再灌流による不整脈への抑制作用も開示され、カリウム塩は上記の実験で有益な作用を発揮したことが証明された。しかしながら、その他の塩類化合物について、薬効実験によりその効果を証明することは行われていない。
【0005】
本発明の発明者は、新規心脳血管類薬物を開発するために、大量の2−アルキル安息香酸塩を研究する過程において、3−n−ブチリデンフタライドが抗脳虚血と抗血栓形成の活性を有することを見出しただけではなく、同時に、従来技術の2−(α−ヒドロキシペンチル)安息香酸塩及びその前駆化合物である3−n−ブチリデンフタライドと比べて、予想外にもっと優れた心脳血管活性と共に、より良好な物理と化学性能がある新規2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩をも見出した。
【0006】
【特許文献1】中国特許第ZL 93117148.2号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第1382682A号明細書
【非特許文献1】Biochimica et, Biophysica Acta, 924(1987), 375-382
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、顕著な抗脳虚血作用、血栓形成の抑制作用によって、心脳循環を改善し、心脳虚血性疾患を予防と治療できる新規化合物であり、良好な外観及び物理形態を有し、光、熱、湿に対する安定性が優れた新規2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩を提供することにある。
【0008】
また、本発明のもう一つの目的は、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩の調製方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の更なる一つの目的は、臨床で効果的に心脳虚血性疾患を予防と治療でき、また、心脳循環障害を改善でき、抗血栓作用を有する薬物組成物を提供することにある。
【0010】
更に、本発明のもう一つの目的は、心脳虚血性疾患の予防と治療、及び心脳循環障害の改善、抗血栓のための薬物を調製することにおける上記化合物や組成物の応用を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者は、本発明の目的を達成するために、中国特許出願公開公報CN1382682Aに開示された塩をはじめ、多くの2−アルキル安息香酸塩を調製、研究した。理化性質、薬効、毒性を研究した結果、下記式で表される構造を有する化合物を見出した。この化合物は各方面の性能が優れるし、従来技術においても、それに関する報告がまだ見られない。

【0012】
式中において、nは1或いは2であり、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムのような一価金属イオン、或いはマグネシウム、カルシウム、亜鉛のような二価金属イオン、或いはベンジルアミン、t−ブチルアミン、メチルベンジルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンのような有機塩基である。一価金属イオンの場合は、ナトリウム、カリウムが好ましい。二価金属イオンの場合は、カルシウムが好ましい。有機塩基の場合は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンが好ましい。
【0013】
本発明の化合物は、以下のような方法で調製できる。
【0014】
Mが有機塩基である化合物の調製方法には、3−n−ブチリデンフタライド(従来の公知技術の方法により調製され、例えば、蘭州大学学報、自科版、1990、26(1). 118−119、(±)−ブチルフタライドの合成、李紹白、張廾明)をアルカリ性条件で加水分解し、更に酸性化して、得られた2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸を低極性溶媒に溶解した後、有機アルカリの溶液と反応させ、数時間撹拌し、塩として析出させ、吸引濾過、乾燥して、本発明の化合物である白色固体状の有機アルカリの塩を得る。上記に用いられる低極性溶媒は、ベンゼン類(例えば、トルエン)、エチルエーテル、ジクロロメタン又は酢酸エチルを含むが、エチルエーテルが好ましい。
【0015】
Mが一価金属イオンである化合物の調製方法には、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸を極性溶媒に溶解した後、金属イオンのアルカリと反応させて塩になり、そして、撹拌しながら低極性溶媒を加え、数時間撹拌し、析出、吸引濾過、乾燥して、本発明の化合物である白色固体状の一価金属イオンの塩を得る。上記に用いられる極性溶媒は、C1−C4低級アルコール類を含むが、メタノールが好ましい。上記に用いられる低極性溶媒は、ベンゼン類(例えば、トルエン)、エチルエーテル、ジクロロメタン又は酢酸エチルを含むが、エチルエーテルが好ましい。
【0016】
Mが二価金属イオンである化合物の調製方法には、調製された2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩の溶液と二価金属イオン塩の溶液とを混合し、塩交換反応をさせて、二価金属イオンの2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩を得る。適当な溶媒は、水、アルコール類のような通常の極性溶媒を含むが、水、メタノール、エタノールのようなC1−C4低級アルコール類が好ましい。
【0017】
本発明者は、本発明の化合物、特に、好ましい化合物が以下のような優れた性能を有することを見出した。
【0018】
1、良好な物理形態を有し、製薬工業において適当な製剤形態に加工されやすい。
2、簡単な後処理だけでも、薬用純度に達する。
3、安定性実験に示すように、本発明の化合物は、開示された2−(α−ヒドロキシペンチル)安息香酸塩に比べて、より安定的である。
4、動物の急性毒性試験に示すように、開示された2−(α−ヒドロキシペンチル)安息香酸塩に比べて、本発明の化合物の毒性はより小さい。
5、動物薬効モデルの試験に示すように、本発明の化合物は、開示された2−(α−ヒドロキシペンチル)安息香酸塩と3−n−ブチリデンフタライドに比べて、同じ用量で脳動脈閉鎖による脳組織損傷への抑制作用がより優れ、具体的に、大脳中動脈血栓モデルラットの神経症状を明らかに改善し、梗塞面積を明らかに減少し、またラットの動−静脈バイパスの血栓形成を顕著に抑制できる。つまり、本発明の化合物は効果的に血栓形成を抑制でき、心脳虚血性疾患に対する予防と治療作用がより良い。
6、大脳中動脈血栓モデルラットの神経症状及び脳梗塞範囲への影響を調べる試験に示すように、本発明の化合物は、開示された2−(α−ヒドロキシペンチル)安息香酸塩や3−n−ブチリデンフタライドに比べて、有意な効果の用量がより小さくなり、即ち、より低い用量で有意な効果が現れる。
【0019】
本発明の薬物組成物は、活性成分としての治療有効量の本発明の化合物、及び一種以上の薬学的に許容できる担体を含有する。
【0020】
上記の薬学的に許容できる担体とは、薬学分野で通常な薬物担体(補助剤とも言う)を指す。その中、固体製剤に常用される補助剤は、澱粉、蔗糖などの充填剤;セルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチンとポリビニルピロリドンのような結合剤;エタノール、水のような湿潤剤;澱粉やカルボキシメチル澱粉ナトリウム(CMS−Na)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LS−HPC)、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(CCMC−Na)などの澱粉の誘導体、及び発泡薬用崩壊剤のような崩壊剤;第四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;ヘキサデカノールのような界面活性剤;カオリン、ベントナイトのような吸着担体;タルク粉末、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、ポリエチレングリコールのような潤滑剤を含む。また、組成物には、他の助剤として、例えば、香味剤、甘味剤なども添加できる。液体製剤の補助剤は、注射用水、水酸化ナトリウムのようなpH調整剤及びに、他の補助剤として、例えば、等張調整剤などを含む。当業者は、薬学分野における液体製剤の通常な調製方法によって、最終製品が通常な静脈注射剤或いは静脈注射用凍結乾燥剤の要求に満たすように、常用の補助剤の種類や用量を適当に選ぶことができる。
【0021】
本発明の化合物と薬物組成物は、心脳虚血性疾患の予防と治療、抗血栓、心脳循環障害の改善などのための薬物の調製に用いられることができる。
【0022】
本発明の薬物組成物の各種剤形としては、当業者が薬学分野の常規の生産方法によって、調製できる。例えば、活性成分を一種以上の担体と混合させ、そして、錠剤、カプセル、粒剤のような所望の剤形に調製する。本発明の化合物における水溶性塩としては、当業者が薬学分野における静脈注射剤の通常の生産方法によって、静脈注射剤、静脈注射用凍乾剤などに作製できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、顕著な抗脳虚血作用、血栓形成の抑制作用によって、心脳循環を改善し、心脳虚血性疾患を予防と治療できる新規化合物であり、良好な外観及び物理形態を有し、光、熱、湿に対する安定性が優れた新規2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩を提供できる。
【0024】
また、本発明によれば、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩の調製方法を提供できる。
【0025】
また、本発明によれば、臨床で効果的に心脳虚血性疾患を予防と治療でき、心脳循環障害を改善でき、抗血栓作用を有する薬物組成物を提供できる。
【0026】
更に、本発明によれば、心脳虚血性疾患の予防と治療、及び心脳循環障害の改善、抗血栓のための薬物を調製することにおける上記化合物や組成物の応用を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下の実施例は、当業者が本発明を十分に理解するように提供されるが、如何なる方法においても、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0028】
実施例1: 2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸の調製

【0029】
3−n−ブチリデンフタライド100g(0.53mol)、メタノール300ml、NaOH40gと水50mlを、反応瓶の中に加え、還流8時間後、減圧でメタノールを除去して、再び水200mlを補加し、冷却した。撹拌しながら濃度4Nの塩酸を滴下し、pH=2〜3になるように調整した。エチルエーテルで抽出し、得られた抽出液を水洗い、乾燥、濾過、減圧してエチルエーテルを除去し、浅黄色のコロイド固体100gを得た。収率が91%である。
【0030】
実施例2: 2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸ナトリウムの調製

【0031】
NaOH3.4g(0.085mol)、メタノール50ml、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸21g(0.1mol)を反応瓶の中に加え、室温で2時間撹拌し、エチルエーテル1000mlをバッチで加え、大量の白色固体を析出し、2時間撹拌した後、吸引濾過し、固体をエチルエーテルで洗浄し、吸引濾過し、得られた濾過ケーキを真空乾燥して、白色粉末状の結晶2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸ナトリウム16gを得た。収率が82.6%(NaOHで計算)で、融点が219.0〜220.0℃である。
【0032】
(2)メタノールを等体積のエタノールに変更する以外は、(1)と同様に操作して、白色粉末状固体15gを得た。収率が77.4%で、融点が219.0〜220.5℃である。
【0033】
(3)エチルエーテルを等体積のトルエン、ジクロロメタン、酢酸エチルに変更する以外は、(1)と同様に操作する。その収率がいずれも低下した。


【0034】
実施例3: 2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸カリウムの調製

【0035】
KOH4.5g(0.08mol)、メタノール50ml、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸21g(0.10mol)を反応瓶の中に加え、室温で2時間撹拌した。減圧で溶媒を留去し、無水エチルエーテル1.0Lを加え、撹拌して大量の白色固体を析出した。2時間撹拌した後、吸引濾過し、エチルエーテルで洗浄、吸引濾過、真空乾燥して、白色固体16gを得た。収率が81.8%(KOHで計算)で、融点が113.5〜115.0℃である。
【0036】

【0037】
実施例4: 2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸カルシウム塩の調製

【0038】
2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸ナトリウム塩44g(0.193mol)と水95mlをフラスコの中に加え、室温で全部溶解まで撹拌した。CaCl210.7g(0.096mol)を水25mlに溶解し、撹拌されているナトリウム塩の水溶液にバッチで加え、すぐに白色固体を析出し、室温で2時間撹拌して吸引濾過した。得られた濾過ケーキを水60ml、エチルエーテルで順次に洗浄し、乾燥して、白色固体37gを得た。収率が85.5%で、融点が108.0〜110.5℃である。
【0039】




【0040】
実施例5: 2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸N,N’−ジベンジルエチレン
ジアミン塩の調製

【0041】
N,N’−ジベンジルエチレンジアミン21.4g(0.089mol)とエチルエーテル1000mlを反応瓶の中に加え、室温で全部溶解まで撹拌した後、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸のエチルエーテル溶液1000 ml(36.6 g、0.178mol)をバッチで加え、徐徐に混濁になり、その後、大量の白色固体を析出した。室温で2時間撹拌した後、吸引濾過し、エチルエーテルで洗浄し、吸引濾過、乾燥して、白色固体39gを得た。収率が66.9%で、融点が94.5〜96.5℃である。
【0042】




【0043】
実施例6: 2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸−t−ブチルアミン塩の調製

【0044】
t−ブチルアミン17.8g(0.243mol)をエチルエーテル1000mlに溶解し、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸のエチルエーテル溶液1000 ml(50 g、0.243mol)を加え、室温で15分撹拌した後、大量の固体を析出し、継続に2時間撹拌した。吸引濾過し、得られた濾過ケーキをエチルエーテルで2回洗浄し、乾燥して、白色固体50gを得た。収率が73.5%で、融点が122.5〜124.0℃である。
【0045】


【0046】
実施例7: 2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸ベンジルアミン塩の調製

【0047】
2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸25 g(0.121 mol)をエチルエーテル700mlに溶解し、ベンジルアミン12.8g(0.120mol)を加え、室温で10分撹拌した後、白色固体を析出し、継続に2時間撹拌した。吸引濾過し、得られた濾過ケーキをエチルエーテルで洗浄し、吸引濾過、乾燥して白色固体35gを得た。収率が93%で、融点が72.5〜74.0℃である。
【0048】

【0049】
実施例8: 2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸(S)−α−メチルベンジル
アミン塩の調製

【0050】
反応瓶の中に2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸25 g(0.121 mol)をエチルエーテル700mlに溶解し、(S)−α−メチルベンジルアミン14.6g(0.120mol)を加え、室温で10分撹拌した後、白色固体を析出し、継続に2時間撹拌した後、吸引濾過し、得られた濾過ケーキをエチルエーテルで洗浄し、吸引濾過、乾燥して白色固体30gを得た。収率が76.4%で、融点が82.0〜84.0℃である。
【0051】

【0052】
実施例9: 2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸亜鉛塩の調製

【0053】
フラスコの中に2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸ナトリウム塩44 g(0.193 mol)と水95mlを加え、全部溶解まで撹拌した。ZnCl213.2g(0.096mol)を水125mlに溶解し、室温まで冷却した。撹拌されているナトリウム塩水溶液にバッチで加え、すぐに白色粘稠固体を析出し、室温で2時間撹拌して吸引濾過したら、吸引濾過が困難となり、得られた濾過ケーキが白色粘稠固体で、真空乾燥して白色コロイド固体になった。
【0054】
実施例10: 2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸マグネシウム塩の調製

【0055】
フラスコの中に2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸ナトリウム塩44 g(0.193 mol)と水95mlを加え、室温で全部溶解まで撹拌した。MgSO411.5g(0.096mol)を水125mlに溶解し、室温まで冷却した。撹拌されているナトリウム塩水溶液にバッチで加え、白色粘稠固体を析出し、2時間撹拌して吸引濾過し、得られた濾過ケーキが白色粘稠固体で、真空乾燥して白色フォーム状固体になった。
【0056】
実施例11: 2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸リチウムの調製

【0057】
LiOH 2.0g(0.085 mol)、メタノール50ml、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸21g(0.1mol)を反応瓶の中に加え、室温で1時間撹拌し、エチルエーテル1000mlをバッチで加え、大量の白色粘稠物を析出した。2時間撹拌した後、吸引濾過し、粘稠物をエチルエーテルで洗浄し、吸引濾過し、得られた濾過ケーキを真空乾燥器で乾燥し、白色フォーム状固体を得た。
【0058】
まとめ:リチウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩はいずれもフォーム状或いはコロイド固体になり、明らかな融点がないため、製薬工業の要求に満たさない。それに対して、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、ベンジルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、t−ブチルアミン塩はいずれも、良好な外観、物理形態と固定の融点がある。
【0059】
実施例12: 水溶液安定性
各化合物を水に溶解し、0.2mg/mlの溶液を作製し、一定時間後、分解産物の量を測定し、その結果を表1に示す。
【0060】

【0061】
分解産物の測定は、HPLC方法を採用し、中国薬局方2000版二部付録VD試験によって、C18カラム、移動相アセトニトリル:0.02Mリン酸二水素ナトリウム=40:60、検出波長230nm、流速1ml/minの条件で、実施された。
【0062】
結果から分かるように、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸ナトリウム塩、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸カリウム塩は、水の中に24時間に置いた後、分解産物が検出されないので、それらの水溶液安定性が2−(α−ヒドロキシペンチル)安息香酸カリウム塩より明らかに良い。
【0063】
実施例13: 湿度安定性
2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩及び2−(α−ヒドロキシペンチル)安息香酸のカリウム塩、カルシウム塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩に対して、中国薬局方2000版二部付録XIX C「薬物安定性指導原則」項目下の「高湿度試験方法」に記載される方法によって、試験を10日行った。純度の測定は、HPLC方法を採用し、中国薬局方2000版二部付録VD試験によって、C18カラム、移動相アセトニトリル:0.02Mリン酸二水素ナトリウム=40:60、検出波長230nm、流速1ml/minの条件で、実施された。
【0064】
実験結果から分かるように、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩は、湿度条件で少し吸湿したが、吸湿した後、分解が多くなる2−(α−ヒドロキシペンチル)安息香酸カリウム塩と比べて、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩は吸湿後、ほとんど分解しない。二種の酸のN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩はいずれも、吸湿が比較的に少なく、且つ安定的である。
【0065】
実施例14: 光安定性
中国薬局方2000版二部付録XIX C「薬物安定性指導原則」項目下の「 光安定性試験方法」に記載される方法によって、温度が60℃で、時間が10日で、試験を行った。純度の測定は、HPLC方法を採用し、中国薬局方2000版二部付録VD試験によって、C18カラム、移動相アセトニトリル:0.02Mリン酸二水素ナトリウム=40:60、検出波長230nm、流速1ml/minの条件で、実施された。結果から分かるように、2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩は、いずれも分解産物が検出されないので、光安定性が明らかによい。
【0066】
実施例15: 熱安定性
中国薬局方2000版二部付録XIX C「薬物安定性指導原則」項目下の「熱安定性試験方法」に記載される方法によって、温度が60℃で、時間が十日で、試験を行った。純度の測定は、HPLC方法を採用し、中国薬局方2000版二部付録VD試験によって、C18カラム、移動相アセトニトリル:0.02Mリン酸二水素ナトリウム=40:60、検出波長230nm、流速1ml/minの条件で、実施された。結果からわかるように、本発明の2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩は、いずれも分解産物が検出されないので、熱安定性が明らかに良い。
【0067】
実施例16: 錠剤

【0068】
調製方法について、活性成分、澱粉、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムを配合比で均一に混合し、水で潤湿させ、造粒、乾燥、整粒し、マグネシウムステアレートを加え、均一に混合した後、混合物を圧縮し、本錠剤を得た。
【0069】
実施例17: カプセル剤

【0070】
調製方法について、活性成分と補助剤を配合比で均一に混合し、湿法により造粒し、乾燥、整粒し、マグネシウムステアレートを加え、均一に混合した後、混合物を定量に胃溶性硬カプセルに仕込み、本カプセル剤を得た。
【0071】
実施例18: 粒剤

【0072】
調製方法について、活性成分と補助剤を配合比で均一に混合した後、湿法により造粒し、乾燥、整粒、分級し、用量によって包装し、本粒剤を得た。
【0073】
実施例19:静脈注射剤

【0074】
調製方法について、水溶性2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩を適量の注射用水に溶解させ、適量の水酸化ナトリウムを加え、pHを9.0に(7.5〜9.5の範囲であればよい)調整し、必要に応じて、適量の塩化ナトリウムを添加し、無菌条件で瓶に仕込み、滅菌して、本静脈注射液を得た。
【0075】
実施例20: 静脈注射用凍結乾燥剤

【0076】
調製方法について、水溶性2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩を適量の注射用水に溶解させ、適量の水酸化ナトリウムを加え、pHを9.0に(7.5〜9.5の範囲であればよい)調整し、必要に応じて、適量のマンニトールを添加し、濾過、瓶に仕込み、凍結乾燥して、本静脈注射凍結乾燥剤を得た。使用する時、0.9%生理食塩水或いは5%グルコース注射液で希釈した後、静脈内注射や注入を行った。
【0077】
実施例21: 急性毒性試験
一、動物
メスオスが各半数で、体重が18―20gであるICRマウスは北京維通利華実験動物技術有限公司から提供される。合格証番号はSCXK(京)2002-0003である。
【0078】
二、試験薬物
北京天衡薬物研究院から提供される、3-n-ブチリデンフタライド、2-(α-ペンタノニル)安息香酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、DL-3-n-ブチルフタライド、2-(α-ヒドロキシペンチル)安息香酸のカリウム塩、カルシウム塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩を食用サラダ油で異なる濃度に調製する。
【0079】
三、試験方法
ICRマウスを取り、体重と性別によりランダムに群に分ける。各群は10匹ずつで、メスオスが各半数であり、予備試験の結果に基づいて、各群に対して、1:0.8の間隔で用量を設計する。経口胃管により投与し、投与容量が0.2ml /10g体重である。実験前に禁水しないが、12時間禁食する。投与後、普段通り飼育する。7日連続観察し、動物の毒性反応と死亡状況を記録する。死亡群について、死体解剖し、その病理変化を肉眼で観察する。Bliss法によりLD50値及び95%信頼限界を計算する。
【0080】
四、試験結果


【0081】
上記の結果から分かるように、3-n-ブチリデンフタライドの急性毒性はDL-3-n-ブチルフタライドより弱く、2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸のカリウム塩、カルシウム塩及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩の急性毒性はそれぞれ相応する2-(α-ヒドロキシペンチル)安息香酸のカリウム塩、カルシウム塩及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩より弱い。
【0082】
実施例22
大脳中動脈血栓モデル(Middle Cerebral Artery Thrombosis、MCAT)ラットの神経症状及び脳梗塞範囲への影響
一、動物
メスオスを兼用し、体重が190〜210gであるSDラットは北京維通利華実験動物技術有限公司から提供される。合格証番号はSCXK 11-00-0008である。
【0083】
二、薬物と試薬
試験薬物:北京天衡薬物研究院から提供される3-n-ブチリデンフタライド、2-(α-ペンタノニル)安息香酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、DL-3-n-ブチルフタライド、2-(α-ヒドロキシペンチル)安息香酸のカリウム塩、カルシウム塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩は実験前に食用サラダ油で懸濁し、異なる濃度に調製される。
試薬:FeCl36H2O(A.R.)、北京化工工場製、1mol/L塩酸で調製される。
トリフェニルテトラゾリウム(TTC)、 北京化工工場製。
【0084】
三、器械
XTT実体顕微鏡、北京電光科学儀器工場製。サーモスタット発振器SHZ-22型、江蘇大倉医療器械工場製。電子分析天秤、AEG-220型、日本島津製。
【0085】
四、試験方法と結果
(一)MCATラットの神経症状への影響
1、群分けと投与:実験動物をランダムに以下の各群に分ける。即ち、偽手術群;MCATモデル群;3-n-ブチリデンフタライド、2-(α-ペンタノニル)安息香酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、DL-3-n-ブチルフタライド及び2-(α-ヒドロキシペンチル)安息香酸のカリウム塩、カルシウム塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩の各50mg/kg、100mg/kg及び 200mg/kg投与群に分ける。モデルを作る前に予防投与を行い、毎日胃管で1回、3日連続投与し、4日目モデルを作る。モデルができた直後、胃管で一日の用量を投与する。モデルができてから12時間後に再び胃管で一日の用量を投与する。対照群に対して等量な溶媒を投与する。
【0086】
2、モデルを作る手術の実施:ラットの腹腔に12%抱水クロラール溶液(350mg/kg)を注射し、麻酔を行う。Tamuraらの方法(Tamura A、Graham DI、McCulluoch J et a1.Focal Cerebral ischemia in the rat.1.Description of technique and early neuropathological consequences following middle cerebral artery occlusion.J Cereb Blood F1ow Metab、1981、1:53)を参照した上に改進して得られる方法に基いて、ラットを右側臥位に固定し、外眼角と外の耳道の成す線の真中に長さ約1.5cm、アーク型の切り口を作って、側頭筋を挟み切れて、側頭骨を暴露し、歯科ドリルで頬骨と側頭骨鱗部との接合部からの口側へ向かっている1mm所に直径2.5mmの骨窓を作り、残りかすをきちんと整理して、大脳中動脈(嗅索と大脳下静脈の間にある)を暴露する。50%塩化第二鉄溶液10μlを吸い込んだ小さい定量濾紙をこの暴露された大脳中動脈の上につけて、約30分を経て、血管の色が黒くなると、濾紙を取って、生理食塩水で局部組織を洗い流し、各層を縫い合わせて、ケージに戻して飼育する。
【0087】
3、行動検査:Bedersonらの方法(Bederson JB、Pitts LH、Tsuji M et a1.Rat middle cerebral artery occlusion:evaluation of the mode and development of a neurologic examination.Stroke、1986、17:472)を参照した上に改進して得られる方法に基いて、手術後の異なる時点(6時間、24時間)に動物に対して行動評価を行う。(1)ラットの尾を持って地面から30cmを離れて、前足の屈曲状況を観察する。両前足が対称的に地面へ伸ばす場合は、0点を採る;手術側の対側の前足が肩屈曲、肘屈曲、肩内旋、或いは腕及び肘の屈曲と内旋とも現れる場合は、l点を採る。(2)動物を平滑な地面の上に置いて、両肩をそれぞれ対側に向かって移動させて、その抵抗を検査する。両側の抵抗が相同で、且つ強い場合は、0点を採る。手術側の対側へ移動させると、抵抗が下がる場合は、1点を採る。(3)動物の両前足を金属網の上に置いて、両前足の筋肉張力を観察する。両側の筋肉張力が相同で、且つ強い場合は、0点を採る。手術側の対側の前足の筋肉張力が下がる場合は、1点を採る。(4)ラットの尾を持って地面から30cmを離れて、ラットが手術側の対側に向かって持続廻る場合は、1点を採る。以上の基準に基づいて、採点を行う。満点は4点で、採点が高いほど、ラットの行動障害がひどくなる。
【0088】
4、結果の分析:各群における行動検査の採点を比較し、t検定を行う。その結果は表3、4、5に示す。


【0089】

【0090】

【0091】
結果から分かるように、偽手術群は行動異常が見られない。モデル群のラットは手術後の6時間、24時間に何れも半身不随のような症状が現れ、主な表現は以下の通りである。即ち、手術側の対側の前足が内収め、肩が内廻り、前足の筋肉張力が下がり、肩の抵抗が低下する。モデル群と比べると、各試験化合物は50―200mg/kg用量の範囲内では、ラットの手術後24時間の神経症状に対して、改善程度が異なるものの、何れも改善できる。その中、化合物2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、DL-3-n-ブチルフタライドと2-(α-ヒドロキシペンチル)安息香酸N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩の50mg/kgの群において、ラットの手術後24時間の神経症状は全て著しく改善された(P<0.01またはP<0.05)。全ての試験化合物は100mg/kgと200mg/kgの用量で、ラットの手術後24時間の神経症状を著しく改善した(P<0.05、P<0.01或P<0.001)。50mg/kgの用量では、ラットの手術後24時間の神経症状に対する2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸カルシウム塩の改善作用が2-(α-ヒドロキシペンチル)安息香酸カルシウム塩より顕著に良く(P<0.05)、200mg/kgの用量では、ラットの手術後24時間の神経症状に対する2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸カリウム塩の改善作用は2-(α-ヒドロキシペンチル)安息香酸カリウム塩より顕著に良い(P<0.05)。
【0092】
結果より以下のことが示唆される。2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸塩系化合物は虚血性脳損傷による肢体の張力変化に対して、明らかな改善作用を有する。開示された2 -(α-ヒドロキシペンチル)安息香酸塩と比べると、本発明の化合物はより小さい用量でも顕著な効果がある。即ち、小さい用量(50mg/kg)でも、本発明の化合物は顕著な効果が現れる。また、24時間の抑制作用のパーセント数値から見ると、同じ用量では、MCATラットの神経症状に対する2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸のカリウム塩、カルシウム塩及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩の改善作用はそれぞれ、相応する2-(α-ヒドロキシペンチル)安息香酸のカリウム塩、カルシウム塩及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩より強い。
【0093】
(二)MCATラットの脳梗塞の範囲への影響
ラットの最後回の行動評価の後、頭を切って脳を取る。嗅球、小脳、及び低位脳幹を取り除いて、残り部分は4℃以下で冠状に5枚切る。速やかに脳スライスをTTC染色液(5m1染色液ごとには4%TTC1.5m1及び1M K2HP040.1m1を含有する)に置き、37℃で遮光で30分孵化する。再び取り出して、10%ホルムアルデヒド液に置いて遮光保存する。染色された後、非虚血区域はバラ色を示しているが、梗塞区域は白色を示している。白い組織を丁寧に切り出してその重量を計る。脳総重量に対する梗塞組織重量のパーセントは脳梗塞の範囲とされる。各組の結果を比較し、t検定を行う。結果は表6、7、8に示す。
【0094】

【0095】

【0096】

【0097】
結果から分かるように、手術後、24時間を経って、偽手術群には梗塞部位が観察されなかったが、モデル群や投与群のラットには、その程度が異なるものの、いずれも、梗塞部位が観察された。その中、2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸のナトリウム、カリウム、カルシウム及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩50mg/kg投与群のラットは脳梗塞の程度がモデル群より明らかに弱い(P<0.05)。各化合物を100mg/kg投与する群のラットは脳梗塞の程度がモデル群より明らかに弱く、モデル群と比べると有意な差がある(P<0.01或P<0.05)。各化合物を200mg/kg投与する群のラットは脳梗塞の程度がモデル組より何れも明らかに弱く、モデル組と比べると、有意な差がある(P<0.05、P<0.01或P<0.001)。
【0098】
結果より以下のことが示唆される。2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸塩系化合物は、虚血性脳損傷による脳組織の梗塞に対して、明らかな改善作用を有する。開示された2 -(α-ヒドロキシペンチル)安息香酸塩と比べると、本発明の化合物にはより小さい用量でも顕著な効果がある。即ち、小さい用量(50mg/kg)でも、本発明の化合物には顕著な効果が現れる。また、抑制作用のパーセントから見ると、同じ用量では、MCATラットの脳組織梗塞に対する2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸のカリウム塩、カルシウム塩及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩の改善作用はそれぞれ、相応する2-(α-ヒドロキシペンチル)安息香酸のカリウム塩、カルシウム塩及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩より強い。
【0099】
実施例23:ラットの動―静脈バイパスの血栓形成への影響
一、動物メスオスを兼用し、体重が240〜280gであるSDラットは北京維通利華実験動物技術有限公司から提供される。合格証番号はSCXK 11-00-0008である。
【0100】
二、薬物と試薬
試験薬物:北京天衡薬物研究院から提供される3-n-ブチリデンフタライド、2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩は、試験前に食用サラダ油で懸濁し、異なる濃度に調製される。
天保寧:ZHEJIANG CONBA製薬株式会社製、許可番号が020108-4で、試験用用量が24mg/kgである。
【0101】
三、器械
AEG-220型電子分析天秤、日本島津株式会社製。Df-206型の送風乾燥装置、北京西城医療器械工場製。
【0102】
四、試験方法と結果
試験方法は、「漢方薬薬理研究方法学」(主編陳奇、人民衛生出版社、1993.9、第1版)の510頁を参考する。
【0103】
1、群分けと投与
ラットをランダムに群分け、即ち、血栓のモデル群、3-n-ブチリデンフタライド の200mg/kg、100mg/kg、50mg/kg投与群、2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸ナトリウム塩 の200mg/kg、100mg/kg、50mg/kg投与群、2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸カリウム塩の 200mg/kg、100mg/kg、50mg/kg投与群、2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸カルシウム塩の 200mg/kg、100mg/kg、50mg/kg投与群、2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩の200mg/kg、100mg/kg、50mg/kg投与群、天保寧の24mg/kg投与群に分ける。各投与群は何れも0.2ml/100g体重、胃管で、毎日一回、3日連続投与し、血栓モデル群は等量の溶媒を投与する。最後回の投与後、早速手術を行う。
【0104】
2、モデルの作り方
ラットの腹腔に10%抱水クロラールを0.35ml/100g注射し、麻酔を行う。仰向けに固定して、手術を行う。右総頚動脈と左外頚静脈を分離し、10cmのポリエチレン製管に重量を予め測った8cmの0号手術線を入れて、生理食塩水溶液で満たす。その両端は生理食塩水溶液で満たされる約3cmの挿管と繋がる。その挿管の一端を左外頚静脈に挿入した後、別の一端を右総頚動脈に挿入する。血液は右総頚動脈からポリエチレン管に流れて、また左外頚静脈に戻すように、環流になる。10分間後、血流を中止し、速やかに血栓を取り出して重量を計る。この計った重量から絹糸の重量、紙の重量を減らして、血栓湿重になる。それをオーブンの中に60℃で24時間乾燥し、血栓を取り出して重量を計る。この計った重量から絹糸の重量、紙の重量を減らして、血栓乾重を得た。各組の間でt-検査により比較する。以下の式により抑制率を計算する。
【0105】

【0106】
3、試験結果
結果は表9、10に示す。
【0107】


【0108】


【0109】
結果から分かるように、各化合物には50―100mg/kg の用量範囲内で何れも血栓形成への抑制作用があり、程度が異なるものの、動静脈還流による血栓の湿重、乾重を下げることができる。その中、3-n-ブチリデンフタライド100mg/kgは血栓の湿重、乾重への最大抑制率がそれぞれ34.93%と39.74%になる。2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸ナトリウム塩100mg/kg組は血栓の湿重、乾重への最大抑制率がそれぞれ45.39%と48.16%になる。2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸カリウム塩 200mg/kg組は血栓の湿重、乾重への最大抑制率がそれぞれ39.43%と44.83%になる。2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸カルシウム塩 200mg/kg組は血栓の湿重、乾重への最大抑制率がそれぞれ37.04%と40.74%になる。2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩100mg/kg組は血栓の湿重、乾重への最大抑制率がそれぞれ39.08%と41.72%になる。
【0110】
結果より以下のことが示唆される。大脳中動脈血栓モデルのラットの神経症状及び脳梗塞範囲における、3-n-ブチリデンフタライド及び上記の2-(α-n-ペンタノニル)安息香酸塩の明らかな改善作用は、その血栓形成への抑制作用と関係がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩。

(式中において、nは1或いは2であり、Mは一価金属イオン、二価金属イオン、或いは有機塩基を表す。)
【請求項2】
Mがリチウム、ナトリウム又はカリウムの一価金属イオン、或いはマグネシウム、カルシウム又は亜鉛の二価金属イオン、或いはベンジルアミン、t−ブチルアミン、メチルベンジルアミン又はN,N’−ジベンジルエチレンジアミンの有機塩基であることを特徴とする、請求項1に記載の2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩。
【請求項3】
Mがナトリウム、カリウム、カルシウムまたはN,N’−ジベンジルエチレンジアミンであることを特徴とする、請求項1に記載の2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩。
【請求項4】
3−n−ブチリデンフタライドをアルカリ性条件で加水分解し、更に酸性化して、得られた2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸を、ベンゼン類、エーテル類、ジクロロメタン又は酢酸エチルを含む低極性溶媒に溶解した後、有機塩基の溶液と反応させて、塩として析出させて、濾過、洗浄、乾燥して、Mが有機塩基である請求項1に記載の2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩を製造する方法。
【請求項5】
3−n−ブチリデンフタライドをアルカリ性条件で加水分解し、更に酸性化して、得られた2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸を、C1~C4低級アルコール類を含む高極性溶媒に溶解された金属イオンのアルカリと反応させて、得られたものに撹拌しながら、ベンゼン類、エーテル類、ジクロロメタン又は酢酸エチルを含む低極性溶媒を加え、数時間撹拌し、析出、濾過、溶媒で洗浄、乾燥して、Mが一価金属イオンである請求項1に記載の2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩を製造する方法。
【請求項6】
前記低極性溶媒はエチルエーテルであり、前記高極性溶媒はメタノールであることを特徴とする、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
調製された2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩の溶液を、二価金属イオン塩の溶液と混合し、塩交換反応を行って、Mが二価金属イオンである請求項1に記載の2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩を製造する方法。
【請求項8】
心脳虚血性疾患の予防または治療、心脳循環障害の改善、および抗血栓のための薬物を調製することにおける請求項1に記載の2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩の使用。
【請求項9】
治療に有効な量の請求項1に記載の2−(α−n−ペンタノニル)安息香酸塩と、1つ以上の薬学的に許容できる担体とを含有することを特徴とする、心脳虚血性疾患の予防と治療、心脳循環障害の改善、および抗血栓のための薬物組成物。
【請求項10】
錠剤、カプセル剤、粒剤、静脈注射剤、或いは静脈注射用凍結乾燥剤に作製されることを特徴とする、請求項9に記載の薬物組成物。

【公表番号】特表2007−528878(P2007−528878A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502170(P2007−502170)
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/CN2004/000602
【国際公開番号】WO2005/087701
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506307599)北京天衡▲薬▼物研究院 (2)
【Fターム(参考)】