説明

方向入力装置

【課題】 入力部をスライドさせたスライド方向(すなわち入力方向)に対応して容量素子が備える電極の間の距離を変化させることにより、この容量素子の静電容量を変化させる方向入力装置を提供する。
【解決手段】 容量素子の容量変化によって入力方向を検知するための方向入力装置であって、入力可能な入力方向に対応して水平にスライドする入力部と、可動電極及び固定電極を備え、前記入力部に入力された入力方向を検知するための容量素子と、前記入力部のスライドに伴い下方に移動し、この移動に伴って前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極を下方に移動させて対向する前記固定電極に近付ける一以上の可動部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機(所謂PHSを含む)、携帯情報端末(PDA:personal digital assistance等)、携帯オーディオ、家電製品用リモートコントローラ、ゲーム遊戯装置、キーボードなどの電子機器に用いることが出来る方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
方向入力装置には、容量素子の静電容量の変化を用いて、入力部のスライド方向を検知するためのスライド型方向入力装置がある。
【0003】
この種のスライド型方向入力装置を用いたものとして、例えば特許文献1には、平行に対向配設されており、一方が他方に対して平行移動可能な基板(1)(2)と、前記基板(1)の対向面に設けられた電極部(C)と、前記基板(2)の対向面中央部を中心として90°角度間隔で設けられた電極部(Cx+)(Cx−)(Cy+)(Cy−)と、前記基板(1)(2)のうちどちらか一方の中央部に設けられた入力部(J)とを有することを特徴とする静電容量式センサー(特許文献1の請求項1参照)が開示されている。
【特許文献1】特開平6−314163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の静電容量式センサーは、容量素子を構成する電極の面積の変化による容量素子の静電容量の変化によって、入力部の入力方向を検知している。容量素子の静電容量[C]は、C=ε*S/d(式1)という式で求めることが出来る。ここで、εは誘電率、Sは電極の面積、dは電極間の距離である。式1のように静電容量[C]は、電極の面積[S]に比例し、電極間の距離[d]に反比例する。電極間の距離が近い場合、面積を変化させるよりも電極間の距離を変化させる方が静電容量の変化量は大きくなる。このため、小型化、薄型化が求められる方向入力装置においては、容量素子を構成する電極間の距離を変化させる構成を採用する方が静電容量の変化量を大きくしやすい。
【0005】
本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、入力部をスライドさせたスライド方向(すなわち入力方向)に対応して容量素子が備える電極の間の距離を変化させることにより、この容量素子の静電容量を変化させる方向入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る方向入力装置は、容量素子の容量変化によって入力方向を検知するための方向入力装置であって、入力可能な入力方向に対応して水平にスライドする入力部と、可動電極及び固定電極を備え、前記入力部に入力された入力方向を検知するための容量素子と、前記入力部のスライドに伴い下方に移動し、この移動に伴って前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極を下方に移動させて対向する前記固定電極に近付ける一以上の可動部とを備える。
【0007】
この可動部により、入力部のスライドを可動電極の下方への移動に変化させることができる。そして、可動電極をこれに対向する固定電極に近付けることが出来るので、この可動電極及び固定電極を備える容量素子の静電容量を変化させることが出来る。すなわち、この方向入力装置は、入力部をスライドさせたスライド方向(すなわち入力方向)に対応して容量素子が備える電極の間の距離を変化させることにより、この容量素子の静電容量を変化させることが出来る。
【0008】
また、本発明に係る方向入力装置は、前記入力部は、入力方向に対応してスライドしながら傾倒可能に設け、前記可動部は、前記入力部がスライドしながら傾倒するのに伴い下方に移動し、この移動に伴って前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極を下方に移動させて対向する前記固定電極に近付けるように設けたことを特徴とする。
【0009】
この可動部により、入力部のスライド及び傾倒を可動電極の下方への移動に変化させることが出来る。そして、可動電極を固定電極に近付けることが出来るので、この可動電極及び固定電極を備える容量素子の静電容量を変化させることが出来る。すなわち、この方向入力装置は、入力部をスライドかつ傾倒させた方向(すなわち入力方向)に対応して容量素子が備える電極の間の距離を変化させることにより、この容量素子の静電容量を変化させることが出来る。さらに、入力部を傾倒可能かつスライド可能に設けるので、入力部を、スライドさせながら傾倒させることが出来、この方向入力装置は、この方向入力装置の操作者に新たな操作感を与えることが出来る。
【0010】
また、本発明に係る方向入力装置は、前記可動部は、前記入力部のスライドする進路に沿って徐々に高くなる傾斜を前記入力部のスライドする進路に有し、かつ水平にスライドする前記入力部により前記傾斜が押圧されて下方に移動するように設け、前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極は、前記可動部の下面に設けたことを特徴とする。
【0011】
入力部が水平にスライドすると、入力部は傾斜の上を移動するが、入力部は水平に移動するので、入力部はこの傾斜を押圧することになる。そして可動部は、入力部により傾斜が押圧されると下方に移動するので、この可動部の下面に設けた可動電極を固定電極に近付けることが出来る。これにより、入力部のスライドを可動電極の下方への移動に変化させ、可動電極を固定電極に近付けることが出来るので、この可動電極及び固定電極を備える容量素子の静電容量を変化させることが出来る。すなわち、この方向入力装置は、入力部をスライドさせたスライド方向(すなわち入力方向)に対応して容量素子が備える電極の間の距離を変化させることにより、この容量素子の静電容量を変化させることが出来る。
【0012】
また、本発明に係る方向入力装置は、前記一以上の可動部は、前記入力部のスライドする進路に沿って徐々に高くなる傾斜を前記入力部のスライドする進路に有し、かつ水平にスライドする前記入力部により前記傾斜が押圧されて下方に移動する一以上の第一可動部と、前記入力部を囲むように前記第一可動部の下方に設け、かつ前記第一可動部に押圧されて少なくとも一部が下方に移動する一以上の第二可動部とを備え、前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極は、前記第二可動部の下面に設けたことを特徴とする。
【0013】
入力部が水平にスライドすると、入力部は傾斜の上を移動するが、入力部は水平に移動するので、入力部はこの傾斜を押圧することになる。そして可動部は、入力部により傾斜が押圧されると下方に移動するので、この可動部の下面に設けた可動電極を固定電極に近付けることが出来る。これにより、入力部のスライドを可動電極の下方への移動に変化させ、可動電極を固定電極に近付けることが出来るので、この可動電極及び固定電極を備える容量素子の静電容量を変化させることが出来る。すなわち、この方向入力装置は、入力部をスライドさせたスライド方向(すなわち入力方向)に対応して容量素子が備える電極の間の距離を変化させることによりこの容量素子の静電容量を変化させることが出来る。さらに、可動部が第一可動部及び第二可動部を備え、第二可動部を前記入力部を囲むように前記第一可動部の下方に設けるので、第二可動部を予め設計すれば、第一可動部及び入力部は入力可能な入力方向の数等の設計の都合により、適宜変更できる。
【0014】
また、本発明に係る方向入力装置は、前記入力部は、入力方向に対応してスライドしながら傾倒可能に設け、前記可動部は、スライドしながら傾倒する前記入力部に押圧されて下方に移動するように設けたことを特徴とする。
【0015】
この方向入力装置は、入力部をスライドかつ傾倒させた方向(すなわち入力方向)に対応して容量素子を構成する電極間の距離を変化させることにより、この容量素子の静電容量を変化させることが出来る。さらに、入力部をスライドしながら傾倒可能に設けるので、入力部を、スライドさせながら傾倒させることが出来、この方向入力装置は、この方向入力装置の操作者に新たな操作感を与えることが出来る。
【0016】
また、本発明に係る方向入力装置は、前記可動部は、シート状に形成し、下方に突出するように屈曲して形成し、前記入力部のスライドに伴って下方に向かって撓むことによって下方に移動するように設け、前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極は、前記可動部の下面に設けたことを特徴とする。
【0017】
この可動部により、入力部のスライドを可動電極の下方への移動に確実に変化させることが出来る。さらに、可動部を、シート状に形成し、下方に突出するように屈曲して形成したので、静電容量を検知するための可動電極の移動に必要な距離を確保すると共に初期状態において可動電極を固定電極に近付けておくことが出来る。
【0018】
また、本発明に係る方向入力装置は、前記入力部は、少なくともキートップを備え、キートップを縦方向に押圧するとこのキートップが下方に移動するように形成し、前記キートップの下方への移動に伴って下方に移動し、クリック感を発生させるクリック感発生部を押圧する押し子をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
これにより、この入力部のキートップを例えば決定キーとしても用いることが出来る。そして、キートップの押圧操作により、クリック感が得られる。
【0020】
また、本発明に係る多方向入力装置は、前記入力部の中央下面に頂部が当接する膨出部をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
入力部は、傾倒可能に形成されているので、入力部の中央下面が膨出部の頂部と当接することにより、入力部の傾倒がスムーズとなる。また、入力部は、中央に少なくともキートップを備え、キートップを縦方向に押圧するとこのキートップが下方に移動するように形成し、この方向入力装置が、キートップの下方への移動に伴って下方に移動し、クリック感を発生させるクリック感発生部を押圧する押し子をさらに備える場合、キートップの下面に膨出部の頂部が当接することになるので、入力部の傾倒によるキートップの移動によって、押し子の下方への移動を少なくするか、無くすことが出来るので、クリック感発生部に余計な力が加わることを防止できる。これにより、入力部の傾倒の際にクリック感の発生を防止できる。
【0022】
また、本発明に係る多方向入力装置は、前記入力部は、少なくともキートップを備え、キートップを縦方向に押圧するとこのキートップが下方に移動するように形成し、前記キートップの下方への移動に伴って下方に移動し、クリック感を発生させるクリック感発生部を押圧する押し子をさらに備えることを特徴とする。
【0023】
これにより、この入力部のキートップを例えば決定キーとしても用いることが出来る。そして、キートップの押圧操作により、クリック感が得られる。
【0024】
本発明において、「下方に移動する」とは、部材の少なくとも一部が下方に移動すればよく、平行に下方に移動する場合、ある一点を中心として回転するように下方に移動する場合、斜め下方に移動する場合、撓むことにより少なくとも一部が下方に移動する場合等も含む表現である。
【0025】
本発明において、「前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極は、前記可動部の下面に設けた」とは、可動電極を可動部の下面の少なくとも一部に設けていればよい。本発明において、「前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極は、前記第二可動部の下面に設けた」とは、可動電極を第二可動部の下面の少なくとも一部に設けていればよい。
【0026】
本発明において、「前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極」は、複数であってもよい。すなわち、可動部の下方への移動に伴って下方に移動する「可動電極」は、複数でも良い。さらに、本発明において、「前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極を下方に移動させて対向する前記固定電極に近付ける」とは、可動電極の一部分を下方に移動させてこの一部分を固定電極に近づけることをも含む表現である。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る方向入力装置によれば、入力部をスライドさせたスライド方向(すなわち入力方向)に対応して容量素子を構成する電極間の距離を変化させることにより、この容量素子の静電容量を変化させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面において同様のものや対応するもの、総称できるものについては同じ符号を付して説明する。また、図面において同様のものや対応するもの、総称できるものが複数ある場合、その一部についてのみ符号を付した場合がある。
【0029】
以下の実施形態では、携帯電話機に利用する方向入力装置について説明する。
【0030】
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態の一例に係る方向入力装置1の斜視図である。図2は、第一の実施形態の一例に係る方向入力装置1の平面図である。図3は、第一の実施形態の一例に係る方向入力装置1の概略分解斜視図である。図4は、第三部材7の裏面斜視図である。図5(a)は、図2におけるA−A断面図である。図5(b)は、図2におけるB−B断面図である。
【0031】
なお、図2では、板材3を省略している。また、図3において、板材3及び基板8は主要部分のみ描かれている。また、図5において、板材3及び基板8は主要部分のみ描かれている。また、図5において、固定電極82a乃至固定電極82d、板材3、及び基材80の断面は、ハッチングを省略している。
【0032】
また、図2では、内部の構成の一部を点線で描いている。なお、図2の点線51aは、押圧部材51の側面51aに対応する(図5(a)及び(b)参照)。
【0033】
キートップ2、板材3、カバー部材4、第一部材5、第二部材6、第三部材7、基板8を備える。
【0034】
基板8の上に第三部材7を配置する。第三部材7の上に第二部材6を配置する。第二部材6の上に第一部材5を配置する。カバー部材4は、第一部材5乃至第三部材7を覆うように配置される。さらに板材3がカバー部材4の上に配置される。
【0035】
キートップ2は、板材3及びカバー部材4を間に入れて第一部材5に取り付けられる。板材3は、携帯電話機の筐体の一部を構成するものであり、携帯電話機に組み込んだ場合、図5(a)、(b)のように板材3とカバー部材4の間には、隙間が設けられる。また、板材3とキートップ2との間には、キートップ2の下方への移動及び傾倒に必要なストロークが確保される。
【0036】
第一部材5乃至第三部材7の上にカバー部材4を被せて基板8に第一部材5乃至第三部材7を固定するか、第一部材5乃至第三部材7の備えるピンホール97乃至99にピンを通して基板に第一部材5乃至第三部材7を固定する等、適宜の方法により第一部材5乃至第三部材7を基板8に配置する。
【0037】
キートップ2は、操作者が操作して所望の方向を携帯電話機に入力するためのものである。キートップ2は、操作部21と、この操作部21を支持すると共にこの操作部の動作を方向入力装置1の内部機構に伝達する支持部22とにより構成される。また、キートップ2は、支持部22の側面の所定位置に凹部23を備える。キートップ2の形状は、適宜採用し得る。
【0038】
キートップ2は、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂を含む各種合成樹脂等により形成する。また、キートップ2は、各種ガラス、金属等の他の適した材料により形成してもよい。
【0039】
板材3は、携帯電話機の筐体の一部を構成する。板材3は、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂を含む各種合成樹脂等により形成する。板材3の形状等は適宜決定できる。また、板材3は、SUS等の金属板等の他の適した材料により形成してもよい。また、板材3は、キートップ2の動作を阻害しない大きさの貫通孔31を有する。なお、板材3は、貫通孔32、33、34、35を備えるが(図1参照)、これら貫通孔には、機能キー等のキートップが配置される。
【0040】
カバー部材4は、第一部材5、第二部材6、第三部材7を中に収納する。カバー部材4は、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂を含む各種合成樹脂等により形成する。また、カバー部材4は、SUS等の金属板等の他の適した材料により形成してもよい。カバー部材4の形状等は適宜決定できる。
【0041】
カバー部材4の上面には、キートップ2の支持部22を通し、キートップ2の入力方向についての動きを上下左右方向の四方向に制限する略十字形状を有する貫通孔41が設けられる。すなわち、この方向入力装置1は、入力可能な入力方向が四方向となる。
【0042】
なお、貫通孔41は、キートップ2の入力方向についての動きを上下左右方向とこれらの中間方向(例えば右上方向等)の八方向に制限する形状でも良い。同様に、貫通孔41は、十六方向、三十二方向等、入力可能な入力方向がどの程度必要かによりキートップ2の入力方向についての動きを制限する形状を決定しても良い。また、入力可能な入力方向が、360度全方向である場合には、キートップ2の動きを上下左右方向の四方向に制限しない形状(例えば円の形状)にする。
【0043】
方向入力装置1に対する入力可能な入力方向は、複数(全方向を含む)であれば良くその用途により適宜決定することが出来、この入力方向に対応して貫通孔41の形状を決定する。また、貫通孔41は、必要に応じてキートップ2の移動距離を制限する形状とする。
【0044】
なお、板材3の貫通孔31をカバー部材4の貫通孔41と同様の貫通孔としても良い。この場合、カバー部材4の貫通孔41は、貫通孔31と同様の貫通孔としても良い。さらに、板材3とカバー部材4とのうち少なくとも一方は、方向入力装置1の動作等が実現できるのであれば、他の部材に変更可能である。また、板材3とカバー部材4とのうち少なくとも一方は、方向入力装置1の動作等が実現できるのであれば、設けなくても良い。
【0045】
第一部材5は、枠体部57、屈曲部52、押圧部材51を備える。押圧部材51は、キートップ2を取り付けると共に、傾倒や水平方向へのスライドにより後述の第一可動部61を押圧する。
【0046】
押圧部材51の中心には、キートップ2を垂直方向に移動可能に取り付ける取付部53を設ける。この取付部53は、貫通孔54及び凸部55を備える。
【0047】
貫通孔54に前記キートップの支持部22の一部が、嵌め込まれる。貫通孔54の形状は、前記キートップの支持部22の形状に略合わせたものになる。貫通孔54の形状と、前記キートップの支持部22の断面形状とを略合わせることにより、キートップ2のスライド及び又は傾倒動作と共に押圧部材51もスライド及び又は傾倒する。
【0048】
凸部55は、上記の凹部23の下部に入り込む。これにより、押圧部材51とキートップ2は、係合し、キートップ2は、押圧部材51とは別に下方に移動可能となる。これにより、キートップ2を縦方向に押圧すると入力部のキートップが下方に移動する。
【0049】
押圧部材51は、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂を含む各種合成樹脂等により形成する。また、押圧部材51は、各種ガラス、金属等の他の適した材料により形成してもよい。押圧部材51は、後述の傾斜部61を押圧するために必要な硬度を持つ材料により形成される。
【0050】
押圧部材51の外側には、シート状の部材が略蛇腹状に屈曲する屈曲部52が形成される。この屈曲部52は、押圧部材51の傾倒及び又はスライドにより適宜伸縮し、押圧部材51の傾倒及び又はスライドをスムーズするものである。屈曲部52は、押圧部材51と熱融着や接着等により一体的に形成される。
【0051】
押圧部材51は円盤形状を有するが、形状は適宜変更可能である。また、屈曲部52は、本実施例では円環形状に形成されるが、押圧部材51の外周に沿って形成するので、押圧部材51の形状により適宜形状を決定する。
【0052】
屈曲部52の外側には枠体部57が設けられる。屈曲部52と枠体部57は一体的に形成される。
【0053】
屈曲部52は、弾性材料等の変形可能な材料により構成する。屈曲部52と枠体部57は、シリコーンゴム等のゴム材又は熱可塑性エラストマー、各種合成樹脂等を用いて一体的に形成する。なお、本実施形態では、枠体部57の一部又は大部分において、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂などの各種合成樹脂により形成されるか、金属等により形成される所謂補強板56と熱融着や接着等により一体的に形成されている。この補強板56により第一部材5に剛性が付加できる。
【0054】
なお、本実施形態において、入力部は、キートップ2と押圧部材51とにより構成する。入力部は、例えば、キートップと、このキートップのスライド及び傾倒に伴ってキートップと共にスライド及び傾倒する一以上の部材(ここでは、押圧部材51が該当する。)とにより構成される。入力部は、例えば、キートップのみで構成してもよい。
【0055】
第二部材6は、枠体65と、この枠体65にそれぞれ凹部66a乃至66dを介して繋がった第一可動部61a乃至61dと、この第一可動部61a乃至61d(総称して第一可動部61という。)に繋がる薄肉部63a乃至63d(総称して薄肉部63という。)とを有し、さらに、薄肉部63a乃至63dに繋がる中心には膨出部64を備える。また、第一可動部61a乃至61dは、枠体65に凹部66a乃至66dを介して繋がる傾斜部67a乃至67dと、この傾斜部67a乃至67d(総称して傾斜部67という。)にそれぞれ繋がり薄肉部63a乃至63dに繋がる水平部68a乃至68d(水平部68という。)を有する。
【0056】
第二部材6は、例えばポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂などの各種合成樹脂により形成されるか、金属等により一体的に形成される。
【0057】
傾斜部67は、凹部66(ヒンジのような役割をする。)を介して枠体65と繋がる。傾斜部67は上面に傾斜を有する。この傾斜は、入力部のスライドする進路に沿って徐々に高くなる。また、この傾斜は、前記入力部のスライドする進路に備える。すなわち、第一可動部61は、入力部のスライドする進路に沿って徐々に高くなる傾斜を入力部のスライドする進路に有する。この傾斜部67は、押圧部材51のスライド及び傾倒、すなわち入力部のスライド及び傾倒により押圧されて下方に移動する。また、傾斜部67の下面は、平坦で、第三部材7の所定位置と当接する。傾斜部67は水平部68に繋がる。
【0058】
水平部68は、上面が水平になる。水平部68の上面には、押圧部材51が配置される。水平部68の上面と、押圧部材51の下面の前記水平部に対応する部分とは当接している。水平部68は、所定の位置から内側に向けて徐々に厚さが薄くなり、薄肉部63に繋がる。薄肉部63と水平部68とは、所定の角度を持って繋がる。例えば、薄肉部63と水平部62とは、略「へ」の字状に繋がっている。
【0059】
薄肉部63は、厚さが略同じとなる。薄肉部63は、中心に向かって下がるように形成されて膨出部64に繋がる。
【0060】
凹部66と、薄肉部63とにより、傾斜部61及び水平部62すなわち第一可動部61を下方へ移動させる変形がスムーズになる。
【0061】
膨出部64は、中央部、例えばキートップ2に対応する位置に設ける。膨出部は、上に膨らむように略球面形状を有する。膨出部64の頂部は、入力部の中央下面、すなわちキートップ2の下面に当接する。膨出部64は、キートップ2及び押圧部51の傾倒を阻害しないためのものである。膨出部64の形状は、キートップ2及び押圧部51の傾倒を阻害しない形状、すなわち、略球面形状、方錐形状等の適した形状であれば良い。
【0062】
なお、図3において、第一可動部61a乃至61d、薄肉部63a乃至63dのそれぞれの間は、部材が存在せず貫通孔69a乃至69d(総称して貫通孔69という。)になっている。また、本実施形態において、方向入力装置1は、入力可能な入力方向が上下左右方向の四方向なので、第一可動部61は、上下左右方向の四方向にそれぞれ四つ設けられている。このように、第一可動部61を複数設ける場合は、第一可動部61それぞれの間を貫通孔69とすることにより、第一可動部61が下方に移動することによる他の第一可動部61への干渉を防ぐことが出来る。
【0063】
なお、この第一可動部61の数は、適宜変更できる。また、第一可動部61は、入力可能な入力方向が全方向である場合等、適宜入力部を囲んで円環形状に設けても良い。この場合、第一可動部61は一つになる。また、第一可動部61は、第二可動部73を押圧するために、硬質の材料で形成することが望ましい。
【0064】
第三部材7は、弾性材料等の変形可能な材料により構成される。第三部材7は、シリコーンゴム等のゴム材又は熱可塑性エラストマー、各種合成樹脂等を用いて形成する。本実施形態では、導電ラバー等の弾性導電性材料によりシート状に一体的に形成される。この場合には、固定電極に対応する位置(第二可動部)が可動電極になる。また、この場合、固定電極に対応する位置の第三部材7の下面表層部を可動電極と表現する。
【0065】
なお、本発明において、可動電極を所定部材の下面に設ける、例えば可動部又は第二可動部の下面に設けるといった場合には、この可動部及び第二可動部の少なくとも下面側を弾性導電性材料で形成する場合も含むものとする。
【0066】
第三部材7が、導電性を有さない場合には、可動電極は、例えば蒸着、スパッタリング等の適宜な金属薄膜の成膜方法を用いて形成する。また、可動電極は、例えばあらかじめ形成した金属薄膜等を接着剤や粘着材等を用いて貼り付けて形成してもよい。なお、可動電極は、固定電極82a乃至82dと接触する際に変形できるように柔軟性を有することが望ましい。
【0067】
第三部材7は、押し子71、第一薄肉部72、第二可動部73、第二薄肉部74、及び枠体部75を備える。枠大部75には凹部76が設けられる。また、枠体部75の一部又は大部分において、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂などの各種合成樹脂により形成されるか、金属等により形成される所謂補強板77と熱融着や接着等により一体的に形成されている。この補強板77により第三部材7に剛性が付加できる。
【0068】
押し子71は、キートップ2、膨出部64、及びメタルドーム81に対応する位置に形成する。押し子71は、メタルドーム81を押圧しクリック感が得られれば、形状には問わない。また押し子71の上面の形状は、膨出部64の下面の形状に合わせた形状となる。そして、押し子71の上面は膨出部64の下面に当接する。これにより、キートップ2の下方への移動による押圧力を押し子71にスムーズに伝達でき、押し子71がスムーズに下方に移動できる。
【0069】
第一薄肉部72は押し子71の下方への移動や、第二可動部73の下方への移動がスムーズになるように設けられる。また、第一薄肉部72は、押し子71の下方への移動や、第二可動部73の下方への移動がスムーズになるように、かつ、押し子71と第二可動部73の無理無く繋げるために断面方向で折れ曲がるように形成される。
【0070】
第二可動部73は、固定電極82に対応して押し子71の周囲に(すなわち、入力部を囲むようにして)円環状に一つ設ける。第二可動部73は、第一可動部61の下方に位置し(ここでは、第一可動部61の下面が第二可動部73の上面と当接し)、第一可動部61の下方への移動により、押圧されて第一可動部61に対応する部分(第二可動部73の少なくとも一部)が下方に移動する。第二可動部73は、入力部を囲むように複数設けても良い。また、第二可動部73は、円環状でなくてもよく、その他の閉じた形状でもよい。
【0071】
なお、本実施形態では、可動部は、それぞれ、第一可動部61a乃至61dそれぞれと、第二可動部73のうちのこの第一可動部61a乃至61dそれぞれの下の対応する領域により構成される。本実施形態では、可動部は四つ設けるが、入力部に対する入力可能な入力方向の数に対応して可動部の数は適宜決定できる。なお、一以上(ここでは四つ)の可動部61は、全体として、一以上(ここでは四つ)の第一可動部と一以上(ここでは一つ)の第二可動部とにより構成される。
【0072】
可動部が第一可動部及び第二可動部を備え、入力部を囲むようにして第二可動部73を第一可動部61の下方に設けることにより、特に、入力部を囲むようにして円環状(又はその他の閉じた形状)に一つ第二可動部73を設けることにより、第二可動部を予め設計すれば、第一可動部及び入力部は入力可能な入力方向の数等の設計の都合により、適宜変更できる。
【0073】
第二可動部73の下面は、外側から内側に向かって固定電極に近付くような傾斜を有する。可動電極(第二可動部73の下面(裏面)側の表層部)は、断面略逆ハの字状に形成される。すなわち、可動電極は固定電極82と傾斜を有して対向する。また、第二可動部73の下面については、内側から外側に向かって固定電極82に近付くような傾斜を有してもよい。この場合、可動電極(第二可動部73の下面(裏面)側の表層部)は、断面略ハの字状に形成される。すなわち、可動電極は固定電極と傾斜を有して対向する。第二可動部73の下面については、固定電極及び可動電極間の変化による容量素子の変化を検知出来るなら、固定電極と平行となるように形成してもよい。
【0074】
上記のように可動電極が固定電極82に対して傾斜を有して対向することにより、可動電極と固定電極82が平行に対向するよりも、可動電極を固定電極82に近づけることが出来る。そして、可動電極の移動距離を確保しつつ、可動電極を固定電極82に近づけることが出来、静電容量の変化量について十分な変化量が得られる。
【0075】
第二可動部73は、円環状の形状に設ける。このため、可動電極も円環形状を有する。この場合、可動電極は一つとなるが、実際には、複数の固定電極に対応する領域がそれぞれ容量素子を構成する可動電極となるので、可動電極は複数と捉えることが出来る。本発明において、可動電極又は固定電極のどちら一方が一つであっても他方が複数であれば、一の可動電極又は固定電極を他方の数と同じ数、すなわち複数と表現する。本実施形態では、固定電極が四つなので、可動電極も四つとなる。なお、可動電極は、一つに限らず、四つ、八つ等適宜複数設けても良い。第二可動部73や可動電極の形状は、円環状に限らず、適宜変更可能である。
【0076】
第二薄肉部74は第二可動部73の周囲に円環状に設ける。また、その外側には、枠体部75が設けられる。また、枠体部75には凹部76が円環状に設けられる。凹部76はヒンジのような役割を有し、第二薄肉部74とともに第二可動部73の下方への移動をスムーズにするためのものである。
【0077】
基板8は、種々の基板により構成されるが、本実施形態では、携帯電話機の基板により構成される。基板8は、基材80にメタルドーム81及び固定電極82を設けて構成される。
【0078】
固定電極82は、上下左右四方向に分割している(固定電極82a乃至82d)。すなわち、固定電極82は四つ設けられている。また、固定電極82は、絶縁膜により被覆され、可動電極が接触しても導通しないように構成される。この絶縁膜は、可動電極側を被覆するように、第二可動部73に設けても良い。固定電極82は、可動電極が複数であれば、本実施形態の可動電極と同様に一つであっても良い。また、固定電極82は、四つの他、八つ等適宜その数(例えば固定電極の分割数)を適宜変更できる。
【0079】
上記の固定電極及び可動電極により、入力方向を検知するための複数の容量素子が構成される。
【0080】
メタルドーム81は、押し子71に押圧されると弾性変形し、クリック感を発生させるクリック感発生部である。メタルドーム81は、基板8上かつメタルドーム81の下に設けられた接点を前記の弾性変形により短絡させる。メタルドーム81は、金属製の皿86と、この皿を接点の上で固定するために基材80に貼付された薄膜フィルムシート85により構成する。また、メタルドーム81は、クリック感を発生させることが出来る他のクリック感発生部に変更可能である。
【0081】
図6は、方向入力装置1の第一動作を説明する動作説明図であり、(a)は、初期状態で、(a)の状態から右方向を入力していくと(a)から(b)、(b)から(c)の状態に変化する。なお、図6では、断面を示すハッチングを省略した。
【0082】
入力部がキートップ2を右方向に操作すると、すなわち、入力部に右方向を入力していくと、キートップ2及び押圧部51(入力部)は、第一部材5の表面上を滑るように右方向にスライドしていく(図6(b)乃至(c)参照)。スライドの際には、屈曲部52のスライド方向に対応する部分は、図のように畳まれて縮み、この部分と反対側は、開かれて伸びる(図6(b)乃至(c)参照)。このように、屈曲部52の伸縮により、入力部はスムーズにスライドできる。
【0083】
図6(b)のように、押圧部材51の右端部の下面は、傾斜部67a(第一可動部61a)を登るように水平(本発明において、略水平を含む。)に右方向にスライドする。このため、押圧部材51は、カバー部材4の上面の裏面に当接する。押圧部材51は、カバー部材4の上面の裏面と当接後、このカバー部材4がガイドとなり、さらに右方向に水平にスライドする。このスライドにより傾斜部67aの傾斜は、押圧部材51(入力部)に押圧される。
【0084】
なお、キートップ2の操作の仕方によっては、押圧部材51はカバー部材の上面の裏面に当接することなく押圧部材51はそのまま水平にスライドする。図6(c)は、図6(b)からさらにキートップ2をスライドさせた状態だが、操作により力のかけ方を変えたので、押圧部材51は右側がさがるようにスライドしている。
【0085】
入力部は、第二部材6の上に配置し、屈曲部52等のスライド可能に支持する支持部材に支持されることにより、スライド可能となる。また、例えば、入力部は、カバー部材4等の方向入力装置1のケースの上面の裏面に当接することにより、この裏面がガイドとなる。このガイドにより、入力部は、水平方向にスライド可能となる。
【0086】
押圧部材51の上面、すなわち、入力部は、カバー部材4の上面の裏面に当初から当接させてもよい。これにより、入力部の水平方向のスライドがスムーズになる。
【0087】
水平にスライドする入力部の進路に徐々に高くなっていく傾斜があると、水平にスライドする入力部により傾斜は押圧される。
【0088】
第一可動部61aの有する傾斜が押圧部材51に押圧されると、第一可動部61aは、下方に移動する。すなわち凹部66aが開くように変形し、この部分を支点として第一可動部61aが回転するように下方に移動する。凹部66aにより、傾斜部が下方へ移動をスムーズに出来る。また、水平部68aと薄肉部63aとの繋ぎ目、薄肉部63aと膨出部64との繋ぎ目が変形する。この変形により、第一可動部61の下方への移動をスムーズに出来る。
【0089】
第一可動部61aが下方に移動すると、この第一可動部61aの下方に位置する第二可動部73(の第一可動部61aに対応する部分)が押圧されて下方に移動する。この際に凹部76が開くように変形することにより、第二可動部73(の第一可動部61aに対応する部分)の移動をスムーズにする。
【0090】
第二可動部73が下方に移動すると、この第二可動部73の下面(裏面)に設けた可動電極が固定電極82aに近付く。そして、可動電極は、固定電極82aに接触していく。これにより、この移動する可動電極及び固定電極の距離を変化させることが出来るので、この可動電極及び固定電極を備える容量素子の静電容量を変化させることが出来る。なお、固定電極82aの表面には、上記の絶縁膜が設けられるので、固定電極82aと可動電極が接触しても、固定電極82aと可動電極を備える容量素子は機能する。
【0091】
第二可動部73の下面かつ下方に移動する領域に複数の可動電極を設け、第二可動部73は、入力方向に対応する可動電極を複数移動させてもよい。
【0092】
入力部への入力が終わると、各部材の復元力により、方向入力装置1は初期状態に戻ることになる。
【0093】
図6のように、可動部(ここでは、第一可動部61及び第二可動部73のうちの第一可動部61に対応する領域)は、入力部のスライドに伴い下方に移動し、この移動に伴って前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極を下方に移動させて対向する前記固定電極に近付ける。これにより、入力部をスライドさせたスライド方向(すなわち入力方向)に対応して容量素子を構成する電極間の距離を変化させることにより、この容量素子の静電容量を変化させることが出来る。
【0094】
さらに、可動部は、それぞれ、入力部のスライドする進路に沿って徐々に高くなる傾斜を入力部のスライドする進路に有し、かつ水平にスライドする入力部により傾斜が押圧されて下方に移動するように一以上(ここでは四つ)設けられる。さらに詳しくは、一以上(ここでは四つ)の可動部は、入力部のスライドする進路に沿って徐々に高くなる傾斜を入力部のスライドする進路に有し、かつ水平にスライドする入力部により前記傾斜が押圧されて下方に移動する一以上(ここでは四つ)の第一可動部61と、入力部を囲むように第一可動部の下方に設け、かつ第一可動部に押圧されて少なくとも一部が下方に移動する一以上の(ここでは一つ)の第二可動部73とを備える。そして、可動電極は、第二可動部(すなわち可動部)の下面に設ける。入力部が水平にスライドすると、入力部は傾斜の上をこの傾斜に沿って移動するが、入力部は水平に移動するので、入力部はこの傾斜を押圧することになる。そして可動部は、入力部により傾斜が押圧されると下方に移動するので、この可動部の下面に設けた可動電極を固定電極に近付けることが出来る。
【0095】
図7は方向入力装置1の第二動作を説明する動作説明図であり、(a)は、初期状態で、(a)の状態から右方向を入力していくと(a)から(b)、(b)から(c)の状態に変化する。なお、図7では、断面を表すハッチングを省略した。
【0096】
この操作では、キートップ2を右方向に傾倒させるように操作する。この場合、キートップ2は、スライドしながら傾倒する。
【0097】
キートップ2を右方向に操作すると、すなわち、入力部に右方向を入力していくと、キートップ2及び押圧部51(入力部)は、第一部材5(第一可動部)の表面上を滑るように右方向にスライドするとともに右方向に傾倒していく。(図7(b)乃至(c)参照)。スライド及び傾倒の際には、屈曲部52のスライド方向に対応する部分は、図のように横方向には畳まれるとともに縦方向には開く。そして、反対側は、開かれて伸びる(図7(b)乃至(c)参照)。このように、屈曲部52の伸縮により、入力部はスムーズにスライドしながら傾倒できる。
【0098】
入力部(キートップ2及び押圧部材51)の傾倒支点は、入力部の操作開始時には、入力部の下面中央(入力部(キートップ2)と膨出部が当接する位置)となる。キートップ2を傾倒させていくと、キートップ2の傾倒直後、図6(b)のように、押圧部材51の上面左端部はカバー部材3の上面の裏面と当接し、この当接した部分が傾倒支点となり、この押圧部材51は傾倒する。これにより、入力部が傾倒するに際して、傾倒方向に対応し、傾斜を押圧する押圧部材51の下面の端部がより大きく下方に移動できる。カバー部材4の上面を高くして、傾倒支点を入力部の下面(裏面)と膨出部64の頂部とが当接する部分としてもよい。
【0099】
押圧部材51の上面、すなわち、入力部を、カバー部材4の上面の裏面に当初から当接させる場合、押圧部材51の上面左端部とカバー部材3の上面の裏面との当接部分が入力当初から入力部の傾倒支点となる。
【0100】
入力部を第二部材6の上に配置し、屈曲部52等のスライド可能に支持する支持部材に支持し、方向入力装置1に入力部の傾倒支点を設け、可動部が押圧されて(特にこの可動部の有する傾斜が押圧されて)下方に移動することにより、入力部は、入力方向に対応してスライドしながら傾倒可能となる。これにより、入力部を、スライドさせながら傾倒させることが出来、この方向入力装置は、操作者に新たな操作感を与えることが出来る。
【0101】
また、入力部の中央下面(キートップ2の下面)が膨出部64の頂部と当接することにより、入力部の傾倒がスムーズとなる。さらに、キートップ2の下面に膨出部64の頂部が当接するので、入力部の傾倒によるキートップ2の移動によって、押し子71の下方への移動を少なくするか、無くすことが出来るので、クリック感発生部(メタルドーム81)に余計な力が加わることを防止できる。これにより、入力部の傾倒の際にクリック感の発生を防止できる。
【0102】
入力部がスライドしながら傾倒していくにつれ、入力部は第一可動部61aを押圧する。特に第一可動部61aの傾斜は前記入力部の近傍に設けられているので、前記入力部のスライドにより、入力部は、傾斜を押圧する。この傾斜を押圧すると、入力部の傾倒による押圧をより大きくすることが出来る。また、入力部がスライドしながら傾倒することにより、より傾斜を押圧出来るので、第一可動部の下方への移動をより大きく出来る。これにより、可動電極の下方への移動距離を大きく出来るので、静電容量の変化を大きく出来る。
【0103】
なお、入力部がスライドしながら傾倒する場合には、傾斜は特に必要でないが、傾斜を可動部が有することにより、この可動部の移動距離を大きく出来る。
【0104】
第一可動部61aの有する傾斜が押圧部材51に押圧されると、第一可動部61aは、下方に移動する。すなわち凹部66aが開くように変形し、この部分を支点として第一可動部61aが回転するように下方に移動する。凹部66aにより、傾斜部が下方へ移動をスムーズに出来る。また、水平部68aと薄肉部63aとの繋ぎ目、薄肉部63aと膨出部64との繋ぎ目が変形する。この変形により、第一可動部61の下方への移動をスムーズに出来る。
【0105】
第一可動部61aが下方に移動すると、この第一可動部61aの下方に位置する第二可動部73が押圧されて下方に移動する。この際に凹部76が開くように変形することにより、第二可動部の移動をスムーズにする。
【0106】
第二可動部73(の第一可動部61aに対応する部分)が下方に移動すると、この第二可動部73(の第一可動部61aに対応する部分)の裏面に設けた可動電極が固定電極82aに近付く。そして、可動電極は、固定電極82aに接触していく。これにより、この移動する可動電極及び固定電極の距離を変化させることが出来るので、この可動電極及び固定電極を備える容量素子の静電容量を変化させることが出来る。なお、固定電極82aの表面には、上記の絶縁膜が設けられるので、固定電極82aと可動電極が接触しても、固定電極82aと可動電極を備える容量素子は機能する。
【0107】
第二可動部73の下面かつ下方に移動する領域に複数の可動電極が設け、第二可動部73は、入力方向に対応する可動電極を複数移動させてもよい。
【0108】
入力部への入力が終わると、各部材の復元力により、方向入力装置1は初期状態に戻ることになる。
【0109】
図7のように、可動部(ここでは、第一可動部62及び第二可動部73のうちの第一可動部62に対応する領域)は、入力部のスライドしながらの傾倒に伴い下方に移動し、この移動に伴って入力部に入力された入力方向に対応する可動電極を下方に移動させて対向する固定電極に近付ける。これにより、入力部をスライドしながらの傾倒させた入力方向に対応して容量素子を構成する電極間の距離を変化させることにより、この容量素子の静電容量を変化させることが出来る。
【0110】
さらに、可動部は、それぞれ、入力部のスライドする進路に沿って徐々に高くなる傾斜を入力部のスライドする進路に有し、かつスライドしながら傾倒する入力部により傾斜が押圧されて下方に移動するように一以上(ここでは四つ)設けられる。さらに詳しくは、一以上(ここでは四つ)の可動部は、入力部のスライドする進路に沿って徐々に高くなる傾斜を入力部のスライドする進路に有し、かつスライドしながら傾倒する入力部により前記傾斜が押圧されて下方に移動する一以上(ここでは四つ)の第一可動部61と、入力部を囲むように第一可動部の下方に設け、かつ第一可動部に押圧されて少なくとも一部が下方に移動する一以上の(ここでは一つ)の第二可動部とを備える。そして、可動電極は、第二可動部(すなわち可動部)の下面に設ける。入力部がスライドしながら傾倒すると、入力部はこの傾斜を押圧することになる。そして可動部は、入力部により傾斜が押圧されると下方に移動するので、この可動部の下面に設けた可動電極を固定電極に近付けることが出来る。
【0111】
図8は、方向入力装置1の第三動作を説明する動作説明図であり、(a)は、初期状態で、(a)の状態からキートップを縦方向に押圧すると(a)から(b)の状態に変化する。なお、図8では、断面を表すハッチングを省略した。
【0112】
キートップ2は、押圧部材51とは別に縦方向に移動することが出来るので、キートップ2を押圧操作すると、キートップ2は下方に移動する。
【0113】
キートップ2の下方への移動により、膨出部64が下方に移動する。この際に、薄肉部63が移動して膨出部64の下方への移動をスムーズにする。
【0114】
膨出部64の下方への移動により押し子71が下方へ移動する。この押し子71により、メタルドーム81は押圧されて弾性変形し、クリック感を発生させる。メタルドーム81は弾性変形すると、基材80上かつメタルドーム81直下の接点を短絡させる。これは、例えばメニューの決定等に用いられる。
【0115】
入力部への入力が終わると、各部材の復元力により、方向入力装置1は初期状態に戻ることになる。
【0116】
(第二の実施形態)
図9は、第二実施形態に係る方向入力装置100の一例の概略分解斜視図である。図10は、第二の実施形態に係る方向入力装置100の一例の断面図である。
【0117】
キートップ102、板材103、第一取付部材104、カバー部材105、第二取付部材106、キートップ取付部材107、変形部材108、基板109を備える。
【0118】
基板109の上に変形部材108を配置する。変形部材108には、キートップ取付部材107が取り付けられる。また、キートップ取付部材107には、第二取付部材106を取り付ける。第二取付部材106の上には、カバー部材105を配置する。第二取付部材106には、カバー部材105を挟んで、第一取付部材104が取り付けられる。さらに、キートップ2は、板材103、第一取付部材104、カバー部材105、第二取付部材106を間に入れてキートップ取付部材107に取り付けられる。
【0119】
板材103は、携帯電話機の筐体の一部を構成するものであり、携帯電話機に組み込んだ場合、図10のように板材103とキートップ102との間には、キートップ102の下方への移動に必要なストロークを確保するための隙間が設けられる。
【0120】
第二取付部材106、キートップ取付部材107、変形部材108の上からカバー部材4を被せて基板8に変形部材108を固定するか、変形部材108の備えるピンホール199にピンを通して基板8に変形部材108を固定する等、適宜の方法により変形部材108を基板に配置する。
【0121】
キートップ102は、操作者が操作して所望の方向を携帯電話機に入力するためのものである。キートップ102は、操作部121と、この操作部121を支持すると共にこの操作部の動作を方向入力装置100の内部機構に伝達する支持部122とにより構成される。キートップ102の形状は、適宜採用し得るが例えば図10に示すように断面略T字状とする。
【0122】
キートップ102は、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂を含む各種合成樹脂等により形成する。また、キートップ102は、各種ガラス、金属等の他の適した材料により形成してもよい。
【0123】
板材103は、携帯電話機の筐体の一部を構成する。板材103は、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂を含む各種合成樹脂等により形成する。板材103の形状等は適宜決定できる。また、板材103は、SUS等の金属板等の他の適した材料により形成してもよい。また、板材103は、キートップ2の動作が阻害されない大きさの貫通孔131を有する。
【0124】
カバー部材105は、第二取付部材106、キートップ取付部材107、変形部材108を中に収納する。カバー部材105の上面には、キートップ102の支持部122を通し、キートップ102の入力方向についての動きの限界を決める円形の貫通孔151が設けられる。この方向入力装置100では、入力可能な入力方向が全方向となる。
【0125】
カバー部材105は、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂を含む各種合成樹脂等により形成する。また、カバー部材105は、SUS等の金属板等の他の適した材料により形成してもよい。カバー部材105の形状等は適宜決定できる。
【0126】
なお、貫通孔151は、キートップ2の入力方向についての動きを、上下左右方向の四方向や、上下左右方向とこれらの中間方向(例えば右上方向等)の八方向に制限する形状でも良い。同様に、貫通孔151は、十六方向、三十二方向等、入力可能な入力方向がどの程度必要かによりキートップ102の入力方向についての動きを制限する形状を決定しても良い。
【0127】
方向入力装置100に対する入力可能な入力方向は、その用途により適宜決定することが出来、この入力方向に対応して貫通孔151の形状を決定する。また、貫通孔151は、必要に応じてキートップ102の移動距離を制限する形状とする。
【0128】
なお、板材103の貫通孔131をカバー部材105の貫通孔151と同様の貫通孔としても良い。この場合、カバー部材105の貫通孔151は、貫通孔131と同様の貫通孔としても良い。さらに、板材103とカバー部材105とのうち少なくとも一方は、方向入力装置100の動作等が実現できるのであれば、他の部材に変更可能である。また、板材103とカバー部材105とのうち少なくとも一方は、方向入力装置100の動作等が実現できるのであれば、設けなくても良い。
【0129】
第一取付部材104と第二取付部材106とは、カバー部材105を挟んでこのカバー部材105に取り付けられる。第一取付部材104と第二取付部材106とは、組み立てられることにより、水平方向に伸びる平行又は略平行な2つの板材からなるガイドが形成される。ここでは、断面片側が略コの字形状を有し、この略コの字形状の中にカバー部材105が入り込むことで、カバー部材に取り付けられる。このように、第一取付部材104と第二取付部材106とを、略コの字形状(ガイド)の中にカバー部材105が入り込むように設けることで、キートップ102を含む入力部は、水平にスライド可能に設けられる。
【0130】
なお、第一取付部材104及び第二取付部材106により構成される略コの字形状の部分の上部又は下部の内面と、カバー部材105との間に隙間が存在するが、これは、変形部材108の下面がメタルドーム191と当接することにより、第一取付部材104及び第二取付部材106が支持されているからである。前記の隙間は設けなくても良く、略コの字形状の部分の上部又は下部の内面と、カバー部材105とは当接しても良い。
【0131】
第一取付部材104の形状は、Cリング形状としているが、キートップ102をスライド可能にすることが出来れば適宜他の形状に変更できる。
【0132】
第二取付部材105の形状は、円盤161に凸部162を設けて形成される。第二取付部材105の形状は、キートップ102をスライド可能にすることが出来れば適宜他の形状に変更できる。第二取付部材105の凸部162の部分には貫通孔163を設ける。この貫通孔163には、キートップ取付部材107が縦方向に移動可能に嵌合される。凸部162は貫通孔151の中を通り、カバー部材105を間に挟んで第一取付部材104が取り付けられる。
【0133】
第一取付部材104及び第二取付部材105は、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂を含む各種合成樹脂等により形成する。また、第一取付部材104は、SUS等の金属板等の他の適した材料により形成してもよい。
【0134】
キートップ取付部材107は、円盤171に凸部172を設けて形成される。凸部172は、貫通孔163に縦方向に移動可能に嵌合する。キートップ取付部材107の凸部172の部分には貫通孔173を設ける。この貫通孔173にはキートップ102の支持部122の一部が嵌合して固定される。これにより、キートップ102は、キートップ取付部材107に取り付けられる。なお、キートップ取付部材107には、凹部174が設けられる。この凹部174には、キートップ102が回転等しないように、キートップ102の図示しない突起が嵌る。キートップ取付部材107は、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂を含む各種合成樹脂等により形成する。
【0135】
変形部材108は、枠体181、可動部182、底面部183により構成される。可動部182は、シート状に形成する。また、可動部182は、枠体181と底面部183(入力部)とを繋ぐように略水平方向に向かって設けられ、かつ下方に突出するように屈曲させて設けられる。このように下方に突出させて屈曲させることにより、この可動部の裏面に設ける可動電極を固定電極に近づけることできる。
【0136】
また、本実施形態において、入力可能な入力方向は全方向であるため、可動部182はキートップ102すなわち入力部を囲んで、円環状に設けられている。この場合、可動部182は一つとなる。この可動部182は、入力可能な入力方向の数等により、複数設けても良い。例えば、上下左右の四方向の場合には、枠体181と底面部183(入力部)とを繋ぐように、上下左右方向の四方向に変形部をそれぞれ別体に設けても良い。
【0137】
変形部材108は、弾性材料等の変形可能な材料により構成される。変形部材108は、シリコーンゴム等のゴム材又は熱可塑性エラストマー、各種合成樹脂等を用いて形成する。本実施例では、変形部材108は、導電ラバー等の弾性導電性材料により一体的に形成される。この場合には、固定電極に対応する位置が可動電極になる。また、この場合、固定電極に対応する位置の可動部182の裏面側表層部を可動電極と表現する。また、可動電極を所定部材の下面に設ける、例えば可動部182の下面に設けるといった場合には、この可動部182の少なくとも下面側を弾性導電性材料で形成する場合も含むものとする。
【0138】
変形部材108が、導電性を有さない場合には、可動電極は、例えば蒸着、スパッタリング等の適宜な金属薄膜の成膜方法を用いて、可動部182の下面に形成する。また、可動電極は、例えばあらかじめ形成した金属薄膜等を接着剤や粘着材等を用いて可動部182の下面に貼り付けて形成してもよい。なお、可動電極は、固定電極182と接触する際に変形できるように柔軟性を有することが望ましい。
【0139】
また、枠体181の一部又は大部分において、ポリカーボネイト樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬質樹脂などの各種合成樹脂により形成されるか、金属等により形成される所謂補強板187と熱融着や接着等により一体的に形成されている。この補強板187により変形部材108に剛性が付加できる。
【0140】
本実施形態において、可動部182が弾性導電性材料により円環状に設けられているため、可動電極182も円環状に設けられている。また可動部182を上記のように複数設ける場合は、可動部の固定電極192に対応する領域が可動電極となり、この場合可動電極は複数となる。また、可動部自身が導電性を有さない場合には、適宜可動部に円環状の一の可動電極や、固定電極192に対応する所定の場所に複数の可動電極を設ける。
【0141】
なお、可動電極を円環状に設ける場合、可動電極は一つとなるが、実際には、複数の固定電極192に対応する領域がそれぞれ容量素子を構成する可動電極となるので、可動電極は複数と捉えることが出来る。本発明において、可動電極又は固定電極192のどちら一方が一つであっても他方が複数であれば、一方の可動電極又は固定電極192を、他方の数と同じ数、すなわち複数と表現する。本実施形態では、固定電極が四つなので、可動電極192も四つとなる。なお、可動電極は、一つに限らず、四つ、八つ等適宜複数設けても良い。
【0142】
変形部材108とキートップ取付部材107とは、熱融着や接着等により一体的に形成される。これにより、キートップ取付部材107は変形部材108に取り付けられる。変形部材108の裏面には、キートップ102と対応する位置に押し子184が設けられる。押し子184は、メタルドーム191と当接する。押し子184の形状は、メタルドーム191を弾性変形させクリック感を発生させることが出来れば問わない。
【0143】
基板109は、種々の基板により構成されるが、本実施形態では、携帯電話機の基板により構成される。基板109は、基材190、メタルドーム191、及び固定電極192を有する。
【0144】
固定電極192は、上下左右四方向に分割している(固定電極192a乃至192d)。すなわち、固定電極192は四つ設けられている。また、固定電極192は、絶縁膜により被覆され、可動電極が接触しても導通しないように構成される。この絶縁膜は、可動電極側を被覆するように、可動部181に設けても良い。固定電極192は、可動電極が複数であれば、本実施形態の可動電極と同様に一つであっても良い。また、固定電極192は、四つの他、八つ等適宜その数(例えば固定電極の分割数)を適宜変更できる。
【0145】
メタルドーム191は、押し子181に押圧されると弾性変形し、クリック感を発生させるクリック感発生部である。メタルドーム191は、基板上かつメタルドーム191の下に設けられた接点を前記の弾性変形により短絡させる。メタルドーム191は、金属製の皿196と、この皿を接点の上で固定するために基材190に貼付された薄膜フィルムシート195により構成する。また、メタルドーム191は、クリック感を発生させることが出来る他のクリック感発生部に変更可能である。
【0146】
なお、本実施形態では、入力部は、キートップ102とキートップ取付部材107と底面部183とにより構成する。入力部は、例えば、キートップと、このキートップのスライドに伴ってキートップと共にスライドする一以上の部材(ここでは、キートップ取付部材107及び底面部183が該当する。)とにより構成される。入力部は、例えば、キートップのみで構成してもよい。
【0147】
図11は方向入力装置100の第一動作を説明する動作説明図であり、(a)は、初期状態で、(a)の状態から上方向(図では左方向)を入力していくと(a)から(b)、(b)から(c)の状態に変化する。なお、固定電極192b、固定電極192c、皿196、薄膜フィルムシート195、基材190の断面を表すハッチングは省略した。
【0148】
キートップ102を上方向に操作すると、すなわち、入力部に上方向を入力していくと、キートップ102を含む入力部は、第一取付部材104及び第二取付部材105が形成する略コの字形上の部分がガイドとなり、左方向にスライドしていく(図11(b)乃至(c)参照)。スライドの際には、可動部181の入力方向に対応する領域(ここでは、左の領域)が撓んで下方に移動していく。また、スライドの際には、可動部181が撓むことにより可動部181の少なくとも一部が下方に移動していく。そして、可動部181の入力方向と反対側の領域は、引っ張られて(その少なくとも一部が)上方に移動する。これにより、入力方向に対応する可動電極を固定電極192dに近づけることが出来る。また、反対側については、可動電極を固定電極192bから遠ざけることが出来る。このように、中央からみて入力方向に対応して対称に(ここでは、円環状に)可動部183を設けることにより、入力方向に対応する可動電極を固定電極192dに近づけ、この可動電極と反対側の可動電極を固定電極192bから遠ざけることが出来、静電容量の変化を大きく捉えることが出来、方向検知が容易となる。
【0149】
なお、可動電極は固定電極192に接触して最も近付くが、接触しても固定電極192の表面には、絶縁膜が設けられているので、可動電極及び固定電極192を備える容量素子は、容量素子として機能する。
【0150】
なお、可動部183を、下方に突出させて屈曲させて形成することにより、可動部183は撓む方向が必ず下になるので、入力部のスライドに伴って可動部183は確実に下方に移動することになる。
【0151】
図12は方向入力装置100の第二動作を説明する動作説明図であり、(a)は、初期状態で、(a)の状態からキートップを縦方向に押圧すると(a)から(b)の状態に変化する。
【0152】
キートップ102は、縦方向に移動することが出来るので、キートップ102を押圧操作すると、キートップ102は下方に移動する。
【0153】
キートップ2の下方への移動により、押し子184が下方へ移動する。この押し子184により、メタルドーム191は弾性変形し、クリック感を発生させる。メタルドーム191は弾性変形すると、基板上かつメタルドーム191直下の接点を短絡させる。これは、例えばメニューの決定等に用いられる。
【0154】
(変形例)
第一の実施形態及び第二の実施形態における部材の形状等は、適宜変更可能である。
【0155】
例えば、第二部材6や、変形部材108は、機能キー等が配置されたキーシートを構成するシート状部材であるキーベースとして形成してもよい。
【0156】
また可動電極が固定電極に(絶縁層を介して)接触する場合、固定電極の内側又は外側に、可動電極が接触することにより短絡可能な2本の線状電極を設けても良い。この線状電極が可動電極に短絡された場合、これを方向検知開始の励起信号等に用いることが出来る。2本線状電極は、例えば、同心円状にリング状に設けられる。また、この線状電極は、可動電極側に設けても良く、この場合、固定電極の線状電極と接触する部分は、線状電極を短絡可能とするように絶縁層を設けない。
【0157】
(その他)
本発明の一実施形態に係る方向入力装置200を用いた方向検知の方法について説明する。多方向入力装置200の構成は、上記の方向入力装置1や、方向入力装置100と同様でよい。
【0158】
図13は、方向入力装置200を携帯電話に組み込んだ場合の概略構成図である。なお、図13において、固定電極260a、260b、260c、260dに付されたハッチングは、固定電極260a、260b、260c、260dを明瞭にするためのもので断面を表すものではない。また、ここでは、容量素子を四つ用いた場合について説明するが、容量素子の数は適宜変更可能である。容量素子の数が変更されても方向検知の原理は以下の説明に準じる。
【0159】
可動電極250は、上記の方向入力装置1や方向入力装置100の可動部の下面に設けられた円環状の可動電極に対応する。固定電極260a、260b、260c、260dは、上記の方向入力装置1や方向入力装置100の固定電極82a、82b、82c、82dや固定電極192a、192b、192c、192dに対応する。
【0160】
可動電極260と、固定電極260a、260b、260c、260dそれぞれとは、上下左右方向に四つの容量素子を構成する。入力部の任意方向への操作に伴って可動電極20は移動する。この移動により、この四つの容量素子のうちの少なくとも一つの容量素子の静電容量が変化する。特に、可動電極260のうちの固定電極に対応し、かつ入力方向に対応する部分(例えば右方向への入力ならば、固定電極260aに対応する可動電極)が固定電極に近付くので、入力方向に対応した少なくとも一つの容量素子(固定電極260aを有する容量素子)の静電容量が変化(増加)する。これにより。可動電極250の移動に伴う静電容量の変化から入力部の入力方向(上記では、右方向)が検知できる。なお、特に上記の第二の実施形態の場合や、入力可能な入力方向が八方向や全方向の場合の第一の実施形態の場合等、四つの容量素子の静電容量の変化を適宜組み合わせて用いても良い。
【0161】
C/V変換IC201、A/D202、CPU240等は制御部を構成する。制御部を構成するA/D202、CPU240等の部材は、信号処理回路等の論理回路や他の適した部材に適宜変更可能である。
【0162】
また、制御部は、前記の静電容量の変化から入力部の入力に用いた力の強さ及び又は力の速さもさらに測定する処理を行うことができる。
【0163】
上記四つの容量素子の内の少なくとも一つの静電容量の変化による静電容量の変化量は、C/V変換IC201が電圧値の変化量(ΔV)に変換する。電圧値の変化量はA/D202によりデジタル信号に変換され、CPU203は変換されたデジタル信号から上記四つの容量素子の内の少なくとも一つの静電容量の変化量を認識する。この認識した四つの静電容量の変化量から入力方向を検知する。このように静電容量の変化量(例えば各容量素子の静電容量の変化のバランスでもよい)を方向検知に用いることにより、理論的には360度全ての任意方向の検知が可能である。そしてCPU203は、この任意方向に対応するように携帯電話の表示装置290の画面上のポインタを移動させる等、方向検知した任意方向に応じて処理を行う。
【0164】
静電容量の変化による方向検知の処理方法は適宜変更可能である。
【0165】
さらに静電容量の変化量で、入力部の入力に用いた力の強さ及び又は力の速さもさらに測定できる。力の強さは静電容量の変化量から分かる。また、力の速さは前記変化量を入力操作に要した時間で割ればよい。制御部はこの力の強さ及び又は力の速さに応じた処理が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】第一の実施形態の一例に係る方向入力装置1の斜視図である。
【図2】第一の実施形態の一例に係る方向入力装置1の平面図である。
【図3】第一の実施形態の一例に係る方向入力装置1の概略分解斜視図である。
【図4】第三部材7の裏面斜視図である。
【図5】(a)は、図2におけるA−A断面図である。(b)は、図2におけるB−B断面図である。
【図6】方向入力装置1の第一動作を説明する動作説明図であり、(a)は、初期状態で、(a)の状態から右方向を入力していくと(a)から(b)、(b)から(c)の状態に変化する。
【図7】方向入力装置1の第二動作を説明する動作説明図であり、(a)は、初期状態で、(a)の状態から右方向を入力していくと(a)から(b)、(b)から(c)の状態に変化する。
【図8】方向入力装置1の第三動作を説明する動作説明図であり、(a)は、初期状態で、(a)の状態からキートップを縦方向に押圧すると(a)から(b)の状態に変化する。
【図9】第二実施形態に係る方向入力装置100の一例の概略分解斜視図である。
【図10】第二の実施形態に係る方向入力装置100の一例の断面図である。
【図11】方向入力装置100の第一動作を説明する動作説明図であり、(a)は、初期状態で、(a)の状態から上方向(図では左方向)を入力していくと(a)から(b)、(b)から(c)の状態に変化する。
【図12】方向入力装置100の第二動作を説明する動作説明図であり、(a)は、初期状態で、(a)の状態からキートップを縦方向に押圧すると(a)から(b)の状態に変化する。
【図13】方向入力装置200を携帯電話に組み込んだ場合の概略構成図である。
【符号の説明】
【0167】
1、100、200 方向入力装置
2、102 キートップ
51 押圧部
61 第一可動部
73 第二可動部
182 可動部
64 膨出部
71、184 押し子
81、191 メタルドーム
82、192 固定電極





【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量素子の容量変化によって入力方向を検知するための方向入力装置であって、
入力可能な入力方向に対応して水平にスライドする入力部と、
可動電極及び固定電極を備え、前記入力部に入力された入力方向を検知するための容量素子と、
前記入力部のスライドに伴い下方に移動し、この移動に伴って前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極を下方に移動させて対向する前記固定電極に近付ける一以上の可動部とを備えることを特徴とする方向入力装置。
【請求項2】
請求項1記載の方向入力装置において、
前記入力部は、入力方向に対応してスライドしながら傾倒可能に設け、
前記可動部は、前記入力部がスライドしながら傾倒するのに伴い下方に移動し、この移動に伴って前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極を下方に移動させて対向する前記固定電極に近付けるように設けたことを特徴とするもの。
【請求項3】
請求項1記載の方向入力装置において、
前記可動部は、前記入力部のスライドする進路に沿って徐々に高くなる傾斜を前記入力部のスライドする進路に有し、かつ水平にスライドする前記入力部により前記傾斜が押圧されて下方に移動するように設け、
前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極は、前記可動部の下面に設けたことを特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1記載の方向入力装置において、
前記一以上の可動部は、
前記入力部のスライドする進路に沿って徐々に高くなる傾斜を前記入力部のスライドする進路に有し、かつ水平にスライドする前記入力部により前記傾斜が押圧されて下方に移動する一以上の第一可動部と、
前記入力部を囲むように前記第一可動部の下方に設け、かつ前記第一可動部に押圧されて少なくとも一部が下方に移動する一以上の第二可動部とを備え、
前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極は、前記第二可動部の下面に設けたことを特徴とするもの。
【請求項5】
請求項3又は4記載の方向入力装置において、
前記入力部は、入力方向に対応してスライドしながら傾倒可能に設け、
前記可動部は、スライドしながら傾倒する前記入力部に押圧されて下方に移動するように設けたことを特徴とするもの。
【請求項6】
請求項1記載の方向入力装置において、
前記可動部は、シート状に形成し、下方に突出するように屈曲して形成し、前記入力部のスライドに伴って下方に向かって撓むことによって下方に移動するように設け、
前記入力部に入力された入力方向に対応する前記可動電極は、前記可動部の下面に設けたことを特徴とするもの。
【請求項7】
請求項2又は5記載の方向入力装置において、
前記入力部は、少なくともキートップを備え、キートップを縦方向に押圧するとこのキートップが下方に移動するように形成し、
前記キートップの下方への移動に伴って下方に移動し、クリック感を発生させるクリック感発生部を押圧する押し子をさらに備えることを特徴とするもの。
【請求項8】
請求項2、5、又は7記載の方向入力装置において、
前記入力部の中央下面に頂部が当接する膨出部をさらに備えることを特徴とするもの。
【請求項9】
請求項1、3、4、又は6記載の方向入力装置において、
前記入力部は、少なくともキートップを備え、キートップを縦方向に押圧するとこのキートップが下方に移動するように形成し、
前記キートップの下方への移動に伴って下方に移動し、クリック感を発生させるクリック感発生部を押圧する押し子をさらに備えることを特徴とするもの。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−146417(P2008−146417A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333894(P2006−333894)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(390001487)サンアロー株式会社 (58)
【Fターム(参考)】