説明

方向調整台

【課題】指向性アンテナなどの指向性がある機器を取り付けて、取り付けた機器の上下方向の角度調整を行う台において、構造が簡便な方向調整台を提供する。
【解決手段】上下方向の角度調整の際に可動の基準となる基準体と、上記基準体に設けられて上下方向の角度調整の際に回転の軸となる上下回転軸と、上記上下回転軸を支点として設けて上下方向の角度調整の際に回転変位する回転体と、上下方向にストロークするアクチュエータとを含み、上記アクチュエータの伸縮によって前記上下回転軸を支点に前記回転体が上下方向に回転する方向調整台を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ、カメラ、マイクなどの指向性がある機器を取り付けて方向調整する台であり、特に、取り付ける機器の上下方向の角度調整が簡便な機構を有する方向調整台に関する。
【背景技術】
【0002】
無線アンテナや衛星アンテナなどの指向性アンテナやカメラなどを取り付けて水平方向および上下方向に角度調整可能な台は多く提供されており、それぞれ様々な回転機構が用いられている。水平方向の回転機構については、比較的容易に設計することができるが、上下方向に角度を変えるための機構については、モータおよび減速器の配置や、動力の伝達方法などの決定において、取り付け対象の可動角度範囲や重さなどにより制約される条件が多く、水平方向の回転機構の設計に比べて最適な機構を提案することが容易ではない。例えば、上下方向の可動において軸となる上下回転軸にモータまたは減速器をカップリングにより接続する場合、モータまたは減速器が大型のものであれば、上下回転軸周辺の構造が大きくなり、重心が高くなる欠点があり、モータを小さくすれば動力が足らず、減速機により減速比を増やせばモータの回転速度が低くなりすぎる欠点がある。また、モータを上下回転軸から離れて設置し、ロッドやベルトによりモータの動力を上下回転軸まで伝達する機構を設けると、部品点数の増加による製作工数の増加や、ベルトやロッドのカバーの設置が必要となり、複雑または嵩の増える構造となる欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
無線アンテナや衛星アンテナなどの指向性アンテナやカメラなどを取り付けて水平方向および上下方向に角度調整可能な台を提供するには、移動させることを前提に固定して設置するものであれば大きさや重さが問題となることは少ないが、移動または可搬する用途であれば、軽量かつ簡単な機構にて構成されることが望まれていた。このため、上下方向の回転を可能とする機構であり、角度調整が確実に行え、構造的に簡単な機構を有する方向調整台の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、対象物を取り付けて該対象物の上下方向の角度調整を行う方向調整台において、上下方向の角度調整の際に可動の基準となる基準体と、上記基準体に設けられて上下方向の角度調整の際に回転の軸となる上下回転軸と、上記上下回転軸を支点として設けて上下方向の角度調整の際に回転変位する回転体と、上下方向にストロークするアクチュエータと、を含み、上記アクチュエータの片端が前記基準体に、他端が前記回転体にリンクされ、前記アクチュエータの伸縮によって前記上下回転軸を支点に前記回転体が上下方向に回転することで前記回転体に取り付けられる前記対象物を方向調整することを特徴とする方向調整台を提供する。
上記第1の観点による方向調整台では、例えば、図1に示す構成とすることができる。図1において基準体101の上部に上下回転軸102が設けられ、上下回転軸102を支点として回転体103がリンク104aおよび104bにより、上下に伸縮するアクチュエータ104の上端および下端に接続される。回転体103に方向調整したい対象物を取り付け、アクチュエータ104を伸縮することで、方向調整したい対象物が回転体103とともに上下回転軸102を支点にして上下動作する。アクチュエータ104は、エアシリンダ、油圧シリンダ、電動シリンダ等を用いることができ、例えば、内部でネジが旋回することによりシリンダが伸縮する電動シリンダを用いると、ネジ部による減速の関係から、電源が切れてもシリンダの伸縮位置をほぼ維持できるので制御が容易という利点がある。例えば、THK株式会社製のロッドアクチュエータ”CRES”を用いると、直流電源の極性切り替えで伸縮が可能であり、電源のオンオフにて伸縮の停止開始が制御できるため、構成を簡単にできる。また、本発明では、上下方向の回転角度幅がアクチュエータ104の伸縮幅に制限されるため、たとえば、ヘリコプターの動きを追尾するなどの真横から真上までの範囲で上下方向の回転幅が要求される場合は不向きであるが、水平方向を基準に上下の角度を調整する指向性アンテナや、仰角が決まっている衛星アンテナにおいての方向調整には十分な調整角度幅をもつ。また、本発明の方向調整台は、上下方向の回転のみならず、水平方向の回転機構や左右方向の横触れ機構などと適宜組み合わせて実現することでより使いやすいものとすることができる。
【0005】
第2の観点では、本発明は、第1の観点による方向調整台において、方向調整の対象物が三脚に取り付けて使用する機器であることを特徴とする方向調整台を提供する。
上記第2の観点による方向調整台では、例えば、図2に示す構成とすることができる。図2において、本発明の方向調整台100は、無線機器とディッシュ部分とが固定されるFPU(Field Pickup Unit)200を前記回転体に取り付け、前記基準体を三脚300に固定した図である。図2において水平方向の回転は三脚300における手動調整機構を用いるほか、水平回転ユニットを下部に設置する方向調整台100を用いることができる。また、FPU200ではなく、平面フラットアンテナやビデオカメラなどを取り付けても良い。
【0006】
第3の観点では、本発明は、第1の観点による方向調整台において、方向調整の対象物がポールに取り付けて使用する機器であることを特徴とする方向調整台を提供する。
上記第3の観点による方向調整台では、例えば、図3に示す構成とすることができる。図3において左の図はポール500に取り付け金具を介して太陽電池パネル400を取り付けた図であり、右図は、ポール500と太陽電池パネル400とを本発明の方向調整台100にて取り付けた図である。すなわち、本発明は、現状のポールを変更することなく取り付けることができる利点がある。また、右図においてポールの下部に水平回転機構105を追加すると、水平方向の方向調整も可能となる。また、太陽電池パネル400のかわりに指向性アンテナを取り付けることもできる。また、右図における水平回転機構105およびポール500を含めて本発明の方向調整雲台100とすることもできる。
【0007】
第4の観点では、本発明は、第1の観点による方向調整台において、可搬型衛星通信アンテナの脚部とアンテナ部との間に設置し、上記アンテナ部の方向調整に用いることを特徴とする方向調整台を提供する。
上記第4の観点による方向調整台では、例えば、図4に示す構成とすることができる。図4において左図は、可搬型衛星通信アンテナ600を組み立てた図を示しており、アンテナ600は、可搬を考慮して、左図で示すアンテナ部600aと脚部600bとが分離できる構造となっている。可搬型衛星通信アンテナは、例えば、日本無線株式会社の可搬型衛星通信システムのラインナップを参照することができる。左図に示すように、アンテナ部600aと脚部600bとを分離した後、アンテナ部600aと脚部600bを接続していたアタッチメントを共用できるアタッチメントを上下に設けた本発明の方向調整台100を接続することにより、本来手動で行っていた方向調整を自動化することが可能となる。ここで、方向調整台100は、水平方向の回転機構を備えるものを用いることもできるし、半自動にて方向調整を行うのであれば、上下方向のみ角度調整できる方向調整台を用いて水平方向を手動にて設定することもできる。
【0008】
第5の観点では、本発明は、第1〜4のいずれかの観点による方向調整雲台において、水平方向に回転可能な水平回転部を含むことを特徴とする方向調整台を提供する。
上記第5の観点による方向調整台では、例えば、図3や図5に示す構成とすることができる。図3は、水平回転機構105の上部にポール500を介して基準体を固定するものである。ここで、ポール500は円柱形状に限らず、支柱やブロック形状であっても良い。また、ポール500を介せず、図5のように水平回転機構105上面に基準体101を固定することもできる。ここで、図5は、アクチュエータ104の下端を水平回転機構105の高さ以下の位置に設けたものであり、方向調整台の高さを低くできる利点がある。また、方向調整台を三脚などの台の上に設置して使用する場合は、アクチュエータ104の下端を更に下げて、方向調整台の高さを限界まで低くすることも可能である。
【0009】
第6の観点では、本発明は、第1〜5のいずれかの観点による方向調整台において、方向調整の対象物が指向性アンテナであり、地図位置情報および/または該指向性アンテナの受信強度を用いて方向調整を自動にて行うことを特徴とする方向調整台を提供する。
上記第6の観点による方向調整台では、例えば、上下回転軸の回転位置を検出するエンコーダやポテンショメータなどを設け、マイクロコンピュータなどの演算装置に回転位置情報を入力するものとする。そして、演算装置が回転位置に応じてアクチュエータの制御基板に制御命令を出力する構成とし、演算装置に動作を行わせるためのプログラムを入力しておくことで自動での方向調整が可能となる。この際、演算装置は、GPSや方位センサにより得た位置情報や方位情報に基づき、地図データと比較して、現在方位及び目標方位を決定し、アクチュエータを動かす制御信号を決定することができる。また、取り付ける指向性アンテナが受信する受信強度の強弱を演算装置に取り込み、例えば、受信強度が高い方向にアンテナを向けるなどの動作をさせるためのアクチュエータを動かす制御信号を決定することができる。ゆえに、操作性、可搬性に優れた方向調整台を実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方向調整台により、可搬型衛星通信アンテナや、三脚に載せて使用するFPUなどに、軽量コンパクトで操作容易な回転機構を付属させることが可能となる。また、別の形態では、ポールに取り付けるアンテナやパネルなどの向きを、ポールの変更なくスマートに上下方向の回転を可能とする機構を付与することができる。また、指向性アンテナを取り付ける場合に、水平方向の回転機構を備えることで、完全に自動の方向調整を実現することが可能である。すなわち、本発明の方向調整台により、角度調整が確実に行え、構造的に簡単な機構を有する方向調整台を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の第1の観点による方向調整台の概略を示した図である。
【図2】図2は本発明の第2の観点による方向調整台の概略を示した図である。
【図3】図3は本発明の第3の観点による方向調整台の概略を示した図である。
【図4】図4は本発明の第4の観点による方向調整台の概略を示した図である。
【図5】図5は本発明の第5の観点による方向調整台の概略を示した図である。
【図6】図6は本発明の実施例1にて実施した方向調整台の外観写真ある。
【図7】図7は本発明の実施例2にて実施した方向調整台の外観写真ある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明を実施するための形態として、本発明の第3の観点による方向調整台を実施した例を実施例1に示す。
発明を実施するための形態として、本発明の第5の観点による方向調整台を実施した例を実施例2に示す。
【実施例1】
【0013】
図6に、実施例1として第3の観点による方向調整台を実施した方向調整台の外観写真を示す。図中の符号は図1〜3と共通である。また、図中700は指向性を持つ平面フラットアンテナである。
【実施例2】
【0014】
図7に、実施例2として第5の観点による方向調整台を実施した方向調整台の外観写真を示す。図中の符号は図1〜5と共通である。
【符号の説明】
【0015】
100 本発明のアンテナ方調台
101 基準体
102 上下回転軸
103 回転体
104 アクチュエータ
104a アクチュエータ上端リンク部
104b アクチュエータ下端リンク部
105 水平回転機構
200 FPU
300 三脚
400 太陽電池パネル
500 ポール
600 可搬型衛星通信アンテナ
600a アンテナ部
600b 脚部
700 平面フラットアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を取り付けて該対象物の上下方向の角度調整を行う方向調整台において、
上下方向の角度調整の際に可動の基準となる基準体と、
上記基準体に設けられて上下方向の角度調整の際に回転の軸となる上下回転軸と、
上記上下回転軸を支点として設けて上下方向の角度調整の際に回転変位する回転体と、
上下方向にストロークするアクチュエータと、を含み、
上記アクチュエータの片端が前記基準体に、他端が前記回転体にリンクされ、
前記アクチュエータの伸縮によって前記上下回転軸を支点に前記回転体が上下方向に回転することで前記回転体に取り付けられる前記対象物を方向調整することを特徴とする方向調整台。
【請求項2】
請求項1に記載の方向調整台において、方向調整の対象物が三脚に取り付けて使用する機器であることを特徴とする方向調整台。
【請求項3】
請求項1に記載の方向調整台において、方向調整の対象物がポールに取り付けて使用する機器であることを特徴とする方向調整台。
【請求項4】
請求項1に記載の方向調整台において、可搬型衛星通信アンテナの脚部とアンテナ部との間に設置し、上記アンテナ部の方向調整に用いることを特徴とする方向調整台。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方向調整雲台において、水平方向に回転可能な水平回転部を含むことを特徴とする方向調整台。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方向調整台において、方向調整の対象物が指向性アンテナであり、地図位置情報および/または該指向性アンテナの受信強度を用いて方向調整を自動にて行うことを特徴とする方向調整台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−278808(P2010−278808A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129838(P2009−129838)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(501087892)株式会社松浦機械製作所 (9)
【Fターム(参考)】