説明

方形パッチアンテナ

【課題】小型化を図りながら良好な比帯域を得ることができる方形パッチアンテナを提供する。
【解決手段】方形に形成された導体板11の下側に給電用接栓として同軸コネクタ12を設けると共に、上側に所定の間隔で方形のパッチアンテナ素子13を設ける。すなわち、導体板11の上側に比誘電率が約「1」の空気層を介して一辺の長さが約λ/4のパッチアンテナ素子13を設ける。パッチアンテナ素子13には、中央部に方形の窓部14を設ける。この窓部14部分に第1の給電点15を設け、λ/4インピーダンス整合器16を介してパッチアンテナ素子13の内側辺に接続し、第1の給電点15のインピーダンスを例えば50Ωの値に設定する。そして、第1の給電点15に上記同軸コネクタ12の中心導体12aを接続して給電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VHF帯、UHF帯等の周波数帯で使用される方形パッチアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFID(Radio Frequency IDentification)リーダライタで使用されるRFID用アンテナとしてパッチアンテナが使用されている。従来のパッチアンテナは、厚さが10mm程度の誘電体基板の一方の面に導体板(グランド板)を設けると共に他方の面にパッチアンテナ素子を配置し、このパッチアンテナ素子の給電点に上記導体板に設けた同軸コネクタから給電線路を介して給電するように構成している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記パッチアンテナにおいて、限られたスペースや高さが制限されたスペース等に設置するために小型化が要求される場合がある。パッチアンテナの小型化を図る場合、誘電体基板として高誘電率のものを使用することで実現することができる。
【0004】
しかしながら、高誘電率の基板は、誘電体損失が大きく、共振の鋭さを表すQ値(Quality factor)が高くなるために周波数帯域が狭くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−271131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにパッチアンテナの小型化を図る場合、誘電体基板として高誘電率のものを使用することで実現することができるが、周波数帯域が狭くなるという問題がある。例えば誘電体基板として誘電率が「4.5〜5.2」のガラスエポキシ樹脂を使用してパッチアンテナを構成した場合、小型化することは可能であるが、VSWR≦2の比帯域が0.5%未満と狭くなると共に利得も低下してしまう。また、誘電体基板として低誘電率、例えば誘電率が「2.5」程度のテフロン(登録商標)ガラスクロスを使用してパッチアンテナを構成した場合は、VSWR≦2の比帯域を1%程度に広くすることができるが、アンテナが大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
上記のように従来のパッチアンテナでは、小型化を図りながら良好な比帯域を得ることは困難である。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、小型化を図りながら良好な比帯域を得ることができる方形パッチアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る方形パッチアンテナは、略方形状に形成された導体板と、前記導体板の一方の面に所定の間隔で対向して設けられる方形のパッチアンテナ素子と、前記パッチアンテナ素子の中央部に設けられる方形の窓部と、前記窓部内に設けられる第1の給電点と、前記給電点とパッチアンテナ素子の内側辺との間に設けられ、該給電点のインピーダンスを低インピーダンスに整合するλ/4インピーダンス整合器と、前記第1の給電点の直下の位置の前記導体板の第2の給電点とからなることを特徴とする。
【0010】
第2の発明に係る方形パッチアンテナは、略方形状に形成された導体板と、前記導体板の一方の面に所定の間隔で対向して設けられる絶縁基板と、前記絶縁基板上に形成される方形のパッチアンテナ素子と、前記パッチアンテナ素子の中央部に設けられる方形の窓部と、前記窓部内において前記絶縁基板上に設けられる第1の給電点と、前記給電点とパッチアンテナ素子の内側辺との間に設けられ、該給電点のインピーダンスを低インピーダンスに整合するλ/4インピーダンス整合器と、前記第1の給電点の直下の位置の前記導体板の第2の給電点とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導体板とパッチアンテナ素子とを比誘電率が約「1」の空気層を介して対向配置すると共に、パッチアンテナ素子の中央部に窓部を形成することにより、小型化を図りながら良好な比帯域を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る方形パッチアンテナの基本構成を示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A線矢視断面図である。
【図3】同実施例1における方形パッチアンテナの具体的な構成例を示す平面図である。
【図4】図3におけるB−B線矢視断面図である。
【図5】同実施例1に係る方形パッチアンテナのVSWR特性を示す図である。
【図6】同実施例1に係る方形パッチアンテナの電界面指向性を示す図である。
【図7】同実施例1に係る方形パッチアンテナの磁界面指向性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1に係る方形パッチアンテナの基本構成を示す平面図、図2は図1におけるA−A線矢視断面図である。
【0015】
図1及び図2において、11は方形に形成された導体板(グランド板)で、一辺の長さL1は約λ/3、厚さは0.6〜1.6mm程度に設定される。上記λはアンテナの中心周波数における波長を示している。上記導体板11の下側には給電用接栓として同軸コネクタ12が設けられ、導体板11の上側には所定の間隔dで方形のパッチアンテナ素子13が設けられる。すなわち、導体板11の上側に比誘電率が約「1」の空気層を介してパッチアンテナ素子13が設けられる。上記導体板11とパッチアンテナ素子13との間隔dは、使用周波数や特性等によって異なるが約10mm前後に設定される。また、パッチアンテナ素子13は、一辺の長さL2が約λ/4に設定される。上記同軸コネクタ12は、詳細を後述するパッチアンテナ素子13の給電点15に対応して設けられる。
【0016】
上記パッチアンテナ素子13には、パッチアンテナ素子の中央部を方形に除いた窓部14が設けられる。窓部14の一辺の長さL3は、求める特性に応じて任意に設定することが可能であるが、好ましくは約λ/8に設定される。上記窓部14部分に第1の給電点(不平衡線路によるプラス側給電点)である給電点15が設けられる。この給電点15は、λ/4インピーダンス整合器16を介してパッチアンテナ素子13の内側辺に接続される。λ/4インピーダンス整合器16は、線幅tが約2〜3mm、長さが約λ/4のマイクロストリップラインによって構成される。λ/4インピーダンス整合器16とパッチアンテナ素子13との接続点のインピーダンスは約500Ωであり、通常の方形パッチアンテナより高いので、給電点15のインピーダンス例えば50Ωに整合するようにλ/4インピーダンス整合器16を設けている。上記λ/4インピーダンス整合器16は、長さが約λ/4であれば任意の形状に形成することができるが、線幅tによって変換するインピーダンスの値を調整する。
【0017】
そして、上記給電点15には、当該給電点の直下の導体板11の下側に設けた同軸コネクタ12の中心導体12aが接続される。同軸コネクタ12の当該外導体が第2の給電点(不平衡線路によるマイナス側給電点)となり導体板11に接続される。
【0018】
上記のように導体板11とパッチアンテナ素子13とを比誘電率が約「1」の空気層を介して対向配置すると共に、パッチアンテナ素子13の中央部に窓部14を形成することにより、広い周波数帯域を保ちながら小型化を図ることができる。
【0019】
次に上記方形パッチアンテナの具体的な構成例について図3及び図4を参照して説明する。
【0020】
図3は上記方形パッチアンテナの具体的な構成例を示す平面図、図4は図3におけるB−B線矢視断面図である。図3及び図4に示した方形パッチアンテナでは、導体板11の上側に所定の間隔で方形状の絶縁基板21を設け、この絶縁基板21上にパッチアンテナ素子13、窓部14、給電点15、λ/4インピーダンス整合器16を設けている。
【0021】
上記絶縁基板21としては、例えば厚さが約0.6mm、一辺の長さL4がλ/4+10mmのガラスエポキシ樹脂等の誘電体基板を使用し、パッチアンテナ素子13より外側に位置する周辺部分において、ボルト22及びナット23を使用して導体板11に装着している。この場合、各ボルト22には、導体板11と絶縁基板21との間に円筒状のスペーサ24を介在し、導体板11と絶縁基板21との間を所定の間隔に保っている。
【0022】
上記パッチアンテナ素子13は、絶縁基板21上に例えば銅箔等により形成し、その中央部分に図1及び図2に示したように窓部14を設ける。そして、この窓部14部分に給電点15を設け、λ/4インピーダンス整合器16を介してパッチアンテナ素子13の内側辺に接続している。
【0023】
その他の構成は、図1及び図2に示したものと同じであるので詳細な説明は省略する。
【0024】
図5は図3及び図4に示すように構成した方形パッチアンテナのVSWR特性を示す図、図6は電界面指向性を示す図、図7は磁界面指向性を示す図である。
【0025】
上記図5〜図7は、
方形パッチアンテナの送受信周波数を304.3MHz
導体板11の一辺の長さL1をλ/3
パッチアンテナ素子13の一辺の長さL2をλ/4
窓部14の一辺の長さL2をλ/8
絶縁基板21として厚さが0.6mmのガラスエポキシ樹脂を使用し、一辺の長さをλ/4+10mm
導体板11とパッチアンテナ素子13との間隔を10.6mm
に設定したときの特性を示している。
【0026】
上記実施例1に係る方形パッチアンテナは、図5に示すようにVSWRが2以下において約1%の比帯域が得られ、且つ従来の方形パッチアンテナに比較して面積で約43%の大きさに小型化することができる。なお、図3及び図4に示した例では、絶縁基板21上にパッチアンテナ素子13を形成しているが、絶縁基板21は厚さの薄いものを使用し、絶縁基板21と導体板11との間に空気層を設けているので、絶縁基板21を用いた影響は無く、小型化を図りながら良好な比帯域を得ることができる。
【0027】
また、電界面指向性及び磁界面指向性においても、図6及び図7に示したように良好な指向性とすることができる。
【0028】
なお、上記図3及び図4に示した例では、絶縁基板21上にパッチアンテナ素子13を形成した場合について示したが、パッチアンテナ素子13として充分な厚さを有する導体板を用いて構成し、パッチアンテナ素子13を絶縁体からなる棒状あるいは筒状の支持部材により導体板11上に支持するようにしてもよい。このように構成した場合には、絶縁基板21を省略でき、導体板11とパッチアンテナ素子13との間に空気層のみを介在させることができる。
【0029】
また、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0030】
11…導体板、12…同軸コネクタ、12a…同軸コネクタの中心導体、13…パッチアンテナ素子、14…窓部、15…給電点、16…インピーダンス整合器、21…絶縁基板、22…ボルト、23…ナット、24…スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略方形状に形成された導体板と、前記導体板の一方の面に所定の間隔で対向して設けられる方形のパッチアンテナ素子と、前記パッチアンテナ素子の中央部に設けられる方形の窓部と、前記窓部内に設けられる第1の給電点と、前記給電点とパッチアンテナ素子の内側辺との間に設けられ、該給電点のインピーダンスを低インピーダンスに整合するλ/4インピーダンス整合器と、前記第1の給電点の直下の位置の前記導体板の第2の給電点とからなることを特徴とする方形パッチアンテナ。
【請求項2】
略方形状に形成された導体板と、前記導体板の一方の面に所定の間隔で対向して設けられる絶縁基板と、前記絶縁基板上に形成される方形のパッチアンテナ素子と、前記パッチアンテナ素子の中央部に設けられる方形の窓部と、前記窓部内において前記絶縁基板上に設けられる第1の給電点と、前記給電点とパッチアンテナ素子の内側辺との間に設けられ、該給電点のインピーダンスを低インピーダンスに整合するλ/4インピーダンス整合器と、前記第1の給電点の直下の位置の前記導体板の第2の給電点とからなることを特徴とする方形パッチアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−9936(P2011−9936A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149973(P2009−149973)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】