説明

旋光測定装置および旋光度測定方法ならびにマルチパス対向偏光変換光学系

【課題】 呼気や呼気溶液に含まれる超微量の旋光物質を検出し血中グルコース濃度との関連を明らかにする無侵襲旋光測定装置を提供すること。
【解決手段】 上記の目的を達成するために本発明に係わる無侵襲旋光測定装置は呼気をグルコース酸化酵素に注入しグルコン酸を生成しそれを両方向に透過する直交する円偏光の位相差を測定することによって呼気に含まれる超微量な旋光物質を検出する。グルコース酸化酵素に注入した呼気検体を位相変調方式光ファイバジャイロのループの中に置き対向する複数の対向偏光変換コリメータ光学系をその空間伝送部が並列に配置され光ファイバを縦続に接続することによってマルチパス化し検出感度を大幅に改善したことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は旋光測定装置および旋光度測定方法ならびにマルチパス対向偏光変換光学系に関し、例えば、呼気や呼気を含む溶液に含まれる旋光物質の濃度を高精度に測定できる旋光測定装置、旋光度測定システムに使用することができる対向偏光変換光学系およびそれを用いた旋光度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の旋光度測定方法は、被測定試料に直線偏光を入射し試料を透過した光のパワーを検光子(アナライザ)で測定し旋光角度を測定するものであるが、この方法では光源のパワーの変動の影響によりたとえば健常者の血糖値である100mg/デシリッタ(dL)に対応する旋光角度である0.005度を数%の精度で測定することはできない。
【0003】
従来のもう一つの旋光測定方法は、特許文献1に示されるような空間型リング干渉系の中に試料を置いてそれに左右両周りの直交偏光を伝搬させ、リング光路の外でその位相差を検出する方式である。この方法は光の位相を変調していないので安定に旋光度あるいは複屈折率を測定することはできない。
【0004】
従来の更にもう一つの旋光測定法は、非特許文献1に記載されている鉛ガラスのベルデ定数を利用し入射偏光状態を変調し検光子を通過する光の変化をロックインアンプで検出するものである。この方法でセル長が10mmで6.6x10-4度という微小な旋光角の測定が可能になっている。
【0005】
しかし、この方法では装置が大掛かりであるということ、鉛ガラスの温度特性の影響を受けやすいことなどの課題がある。またこの方法では呼気凝縮液に含まれる微小なグルコース濃度測定に必要な0.0001度以下の精度で旋光角度を計測することはできない。
【0006】
上記以外の従来の旋光測定法として、本発明の発明者が提案した特許文献2に記載の方法がある。この方法はリング干渉計あるいは光ファイバジャイロスコープのセンシングループのなかにファラデー回転素子を用いた1対の非相反光学系を設け、その中に被測定試料を入れて複屈折率を測定するものである。4分の1波長板を追加すると旋光計となることが記載されている。本方式は、上に述べた従来の複屈折率測定法と比較すると小型で低価格で構成でき高精度で測定できるという特徴がある。この方法では0.0001度の精度で旋光角度を計測することができる。
【0007】
一方、非特許文献2には呼気凝縮液に含まれるグルコース濃度は健常者で血液に含まれる濃度である0.1g/dLのおよそ7%であることが示されている。すなわち、オレンジレーザ光を用いた旋光測定においては検体長が1cmの場合の旋光度はおよそ0.00035度である。
【0008】
これを十分な精度で測定するためにはもう1ケタ下の0.000035度程度の測定感度が必要である。従って、従来の最も高感度な測定方法である特許文献2に記載の測定装置をもってしても呼気の凝縮液に含まれるグルコース濃度を十分な精度で測定することはできない。
【0009】
グルコースに特異的に反応しグルコン酸を生成するいわゆるグルコース酸化酵素は化学的にグルコース濃度を測定する手段としてよく知られている。しかしこのような従来の化学的方法による成分分析はバッチ処理でありリアルタイムではない。すなわち呼気に含まれている微量なグルコース濃度をリアルタイムに測定する方法は知られていない。
【0010】
採血することなく血糖値を推定するもう一つの試みとしての光学的な方法として、生体に光を照射しその散乱光の強度のスペクトルを測定する方法がある。この方法では皮膚表面の状態に測定結果が依存し安定して測定できないので現在まで実用化されていない。
【0011】
以上のように、これまで光方式で呼気や呼気凝縮液に含まれる微小な旋光物質の旋光度を測定する旋光度測定装置は存在しないのみならず、開発しようとの発想すらされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−318169号公報
【特許文献2】特開2005−274380号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】横田正幸他、「鉛ガラスファイバ偏光変調器を用いた旋光計」、第33回光波センシング技術研究会、LST33−15,PP.111−116,2004年6月
【非特許文献2】Baker EH他、 J Appl Physiol,2007 May;102(5),1969−75,Epub 2007 Feb 15
【非特許文献3】梶岡、於保、「光ファイバジャイロの開発」、第3回光波センシング技術研究会、LST3−9,PP.55−62,1989年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、旋光度測定装置の測定感度を大幅に改善するとともに、呼気および呼気凝縮液のグルコース濃度をはじめ、生体のグルコース濃度を非侵襲で高精度に測定できる新規な旋光度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
係る課題を解決するために、本発明では、従来の技術思想とは異なり、たとえば、検体の光路を検体の寸法を大きくせずに大幅に長くすること、呼気を凝集すること、呼気をグルコース酸化酵素に注入し化学的な方法とハイブリッド化した方法を採用することなどを適宜採用して呼気および呼気凝縮液のグルコース濃度をはじめ、生体のグルコース濃度を非侵襲で高精度に測定できる新規な旋光度測定装置を提供した。以下、本発明の課題を解決するための手段を詳細に説明する。
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明の一例としての第1の発明(以下、発明1という)は、光リング干渉計のリング光路内に呼気を含んだ検体を検体配置部に配置し、前記検体に互いに直交する円偏光を二つの相異なる方向から入射させ、前記検体に起因して生じる前記互いに直交する円偏光の位相差を測定することによって前記呼気に含まれるグルコースに関する情報を得ることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0017】
発明1を展開してなされた本発明の他の一例としての第2の発明(以下、発明2という)は、発明1に記載の旋光度測定装置において、前記検体内における信号光の光路が前記検体における信号光の最初の入射点とその信号光が当該検体から最後に出射する出射点の間を幾何学的に直線で結んだ距離よりも長いことを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0018】
発明1または2を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第3の発明(以下、発明3という)は、発明1または2に記載の旋光度測定装置において、前記検体が呼気を溶かすことができる溶液に呼気を注入した検体であることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0019】
発明1または2を展開してなされた本発明の他の一例としての第4の発明(以下、発明4という)は、発明1または2に記載の旋光度測定装置において、前記検体が呼気凝縮液であることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0020】
発明1〜4を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第5の発明(以下、発明5という)は、発明1〜4のいずれかに記載の旋光度測定装置において、前記旋光度測定装置は呼気を含む前記検体を前記検体配置部に配置した場合と前記検体の代わりに呼気を含まずかつ呼気以外は前記献体と同質である比較検体を前記検体配置部に配置した場合との前記互いに直交する円偏光の位相差の変化を測定することによって前記呼気に含まれるグルコースに関する情報を得ることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0021】
発明1〜5を展開してなされた本発明の他の一例としての第6の発明(以下、発明6という)は、発明1〜5のいずれかに記載の旋光度測定装置において、前記溶液がグルコース酸化酵素を含む溶液であることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0022】
発明1〜6を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第7の発明(以下、発明7という)は、発明1〜6のいずれかに記載の旋光度測定装置において、前記旋光度測定装置は前記検体に特定の糖質を分解する薬品を加えた場合と前記薬品を加えない場合との前記互いに直交する円偏光の位相差の変化を測定することによって前記検体に含まれるグルコース濃度を推定することができることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0023】
発明1〜7を展開してなされた本発明の他の一例としての第8の発明(以下、発明8という)は、発明1〜7のいずれかに記載の旋光度測定装置において、前記検体がそれを入れることができる検体セルに入れて検体配置部に配置されていることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0024】
発明8を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第9の発明(以下、発明9という)は、発明8に記載の旋光度測定装置において、前記検体セルが呼気注入口とガス排出口を有しており、前記呼気注入口は前記検体セルの下方に設けられていることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0025】
発明8または9を展開してなされた本発明の他の一例としての第10の発明(以下、発明10という)は、発明8または9に記載の旋光度測定装置において、前記検体セルが、前記検体セルに注入する呼気を収納することができ呼気注入口に開閉部を介して接続されている呼気収納室と検体セルから出るガスを収納することができ呼気排出口に開閉部を介して接続されている排出ガス収容室の少なくとも一方を有していることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0026】
発明10を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第11の発明(以下、発明11という)は、発明10に記載の旋光度測定装置において、前記検体セルの呼気収納室および/または排出ガス収容室は容積が可変であることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0027】
発明10または11を展開してなされた本発明の他の一例としての第12の発明(以下、発明12という)は、発明10または11に記載の旋光度測定装置において、前記検体セルの前記呼気収納室と排出ガス収容室の少なくとも一方は着脱可能であることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0028】
発明8〜12を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第13の発明(以下、発明13という)は、発明8〜12のいずれかに記載の旋光度測定装置において、前記検体セルの呼気収納室と排出ガス収容室の少なくとも一方はそこに収納されている気体等の圧力測定手段と容積測定手段と残量測定手段のうちの少なくとも1つを有していることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0029】
発明1〜13を展開してなされた本発明の他の一例としての第14の発明(以下、発明14という)は、発明1〜13のいずれかに記載の旋光度測定装置において、前記検体がリング干渉計のリング光路の途中に挿入された対向偏光変換光学系の対向レンズ間に配置されていることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0030】
発明14を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第15の発明(以下、発明15という)は、発明14に記載の旋光度測定装置において、前記対向偏光変換光学系は、光ファイバの端面の近傍の光路上で光ファイバ端面と前記検体の間に少なくともレンズと偏光子と、一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、当該偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する素子である偏光面回転素子としてのファラデー回転素子と4分の1波長版とが配置されている光ファイバ光学系が光路上で検体配置部を挟んで対向している対向光ファイバ光学系であることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0031】
発明14または15を展開してなされた本発明の他の一例としての第16の発明(以下、発明16という)は、発明14または15に記載の旋光度測定装置において、前記対向偏光変換光学系が対向偏光変換コリメータ光学系であることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0032】
発明16を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第17の発明(以下、発明17という)は、発明16に記載の旋光度測定装置において、前記対向偏光変換コリメータは、偏波面保存光ファイバの出射端にレンズ、偏光子、ファラデー回転素子、4分の1波長板を配置した偏光変換コリメータを検体あるいは検体配置部あるいは空間部を挟んで信号光の光路において対向させて配置した光学系(以下、対向偏光変換コリメータセットという)を少なくとも1つ用いており、前記対向偏光変換コリメータセットでは両端の前記偏波面保存光ファイバから出射される信号光が固有偏光モードが同一の直線偏光であり、前記検体あるいは検体配置部あるいは空間部を伝搬するように両方のコリメータから出射される偏光がそれぞれ互いに直交する円偏光であるような対向偏光変換コリメータであることを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0033】
発明17を展開してなされた本発明の他の一例としての第18の発明(以下、発明18という)は、発明17に記載の旋光度測定装置において、前記旋光度測定装置が複数個の前記対向偏光変換コリメータセットを空間的には並列に、かつ、光路においては直列に配置し、各対向偏光変換コリメータセットの各検体配置部に一つの検体を置くことを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0034】
発明1〜18を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第19の発明(以下、発明19という)は、発明1〜18のいずれかに記載の旋光度測定装置において、前記旋光度測定装置は、光源から発せられたレーザ光を第1の光カプラ、偏光子を介して第2の光カプラに導き、前記第2のカプラにより分岐した光を、主として偏波面保存光ファイバから成るリング光路の途中に前記対向偏光変換コリメータ光学系の両端を接続して構成したリング光路に当該リング光路を両方向に伝搬する光として分岐し、前記リング光路の第2のカプラの近傍に光位相変調器を設け、前記リング光路を両方向に伝搬する前記光を前記第2のカプラ、前記偏光子、前記第1のカプラを介して受光器および信号処理回路に導き、前記リング光路を両方向に伝搬する光の位相差を前記位相変調信号に同期した信号として抽出し、検体の旋光度を測定して検体の糖濃度を測定することを特徴とする旋光度測定装置の発明である。
【0035】
課題を解決するためになされた本発明の他の一例としての第20の発明(以下、発明20という)は、検体に互いに直交する円偏光を二つの相異なる方向から入射させ、前記検体に起因して生じる前記互いに直交する円偏光の位相差を測定することによって前記検体の旋光度を測定することができる旋光度測定システムに使用することができる対向偏光変換光学系において、光ファイバの端面の近傍の光路上における光ファイバの端面と前記検体の間に、少なくとも、レンズと偏光子と一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、当該偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する素子である偏光面回転素子としてのファラデー回転素子と4分の1波長版とが配置されている光学系を信号光の航路において前記検体あるいは検体配置部あるいは空間部を挟んで対向させて配置した一組の光学系を対向偏光変換光学系セットと定義して、前記対向偏光変換光学系は、複数セットの前記対向偏光変換光学系セットを空間的には並列に、かつ、光路においては直列に配置し、各対向偏光変換コリメータセットの検体配置部に一体の検体を配置しことを特徴とするアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系の発明である。
【0036】
発明20を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第21の発明(以下、発明21という)は、発明20に記載のアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系において、前記対向偏光変換光学系がコリメータ光学系であることを特徴とするアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系の発明である。
【0037】
発明20または21を展開してなされた本発明の他の一例としての第22の発明(以下、発明22という)は、発明20または21に記載のアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系において、前記対向偏光変換光学系を構成する各対向偏光変換コリメータセットの光ファイバの出射信号光と入射信号光が固有偏光モードが同一の直線偏光であり、前記検体を伝搬するように両方の偏光変換光学系から出射される偏光がそれぞれ互いに直交する円偏光であることを特徴とするアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系の発明である。
【0038】
課題を解決するためになされた本発明の更に他の一例としての第23の発明(以下、発明23という)は、検体に互いに直交する円偏光を二つの相異なる方向から入射させることができる対向偏光変換光学系を用いて前記検体に起因して生じる前記互いに直交する円偏光の位相差を測定することによって前記検体の旋光度を測定することができる旋光度測定方法において、光ファイバの端面の近傍の光路上における光ファイバの端面と前記検体の間に、少なくとも、レンズと偏光子と一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、当該偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する素子である偏光面回転素子としてのファラデー回転素子と4分の1波長版とが配置されている光学系を信号光の航路において前記検体あるいは検体配置部あるいは空間部を挟んで対向させて配置した一組の光学系を対向偏光変換光学系セットと定義して、前記対向偏光変換光学系は、複数セットの前記対向偏光変換光学系セットを空間的には並列に、かつ、光路においては直列に配置し、各対向偏光変換コリメータセットの検体配置部に一体の検体を配置したアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系であることを特徴とする旋光度測定方法の発明である。
【0039】
発明23を展開してなされた本発明の他の一例としての第24の発明(以下、発明24という)は、発明23に記載の旋光度測定方法において、前記対向偏光変換光学系がコリメータ光学系であることを特徴とする旋光度測定方法の発明である。
【0040】
発明23または24を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第25の発明は、発明23または24に記載の旋光度測定方法において、前記対向偏光変換光学系を構成する各対向偏光変換コリメータセットの光ファイバの出射信号光と入射信号光が固有偏光モードが同一の直線偏光であり、前記検体を伝搬するように両方の偏光変換光学系から出射される偏光がそれぞれ互いに直交する円偏光であることを特徴とする旋光度測定方法の発明である。
【発明の効果】
【0041】
本発明は、検体の光路を検体の寸法を大きくせずに大幅に長くすること、呼気を凝集すること、呼気をグルコース酸化酵素に注入し化学的な方法とハイブリッド化した方法を採用することなどを適宜採用してグルコース濃度の測定精度を大幅に高め、呼気に含まれるグルコースの濃度の測定を可能にし、生体のグルコース濃度の非侵襲での測定を可能にしたので、生体から採血することなしに血糖値を推定できるという極めて大きな効果を奏するものである。
【0042】
さらに具体的には、例えば本発明は、第1に、被験者の針による採血に伴う煩わしさや苦痛がないこと、第2に、採血針の廃棄処理が不要で衛生的であること、第3に簡単に血糖値を測定でき、血糖値モニターが1日何回でもできるので糖尿病患者や健常者の健康管理などに使えることなど、従来では全く期待できなかったような極めて大きな効果を奏するものである。そして、本発明の旋光度測定装置が一般家庭で使用されれば、現在世界的に増加している糖尿病患者数を減らすことができ、その治療に必要な費用を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る一実施の形態例において呼気を注入したグルコース酸化酵素に直交円偏光を両方向に伝搬させる概念図である。
【図2】本発明に係る一実施の形態例としての旋光度測定システムに用いる対向偏光変換コリメータ光学系の構成図である。
【0044】
【図3】本発明に係る一実施の形態例としての旋光度測定装置の構成図である。
【図4】本発明に係る一実施の形態例としてのマルチパス偏光変換コリメータ光学系の構成図である。
【0045】
【図5】本発明に係る一実施の形態例としての旋光度測定装置の構成図である。
【図6】本発明に係る一実施の形態例としての旋光度測定装置の検体セルの構成図である。
【符号の説明】
【0046】
1,50:検体セル
2:グルコース溶液
3−1,3−3:右円偏光入射光
3−2,3−4:左円偏光入射光
3−5:右円偏光出射光
3−6:左円偏光出射光
4:入力呼気を説明する矢印
5:出力ガスを説明する矢印
6−1,6−2,16−1,16−2:偏波面保存光ファイバ
7−1,7−2:光ファイバフェルール
8−1,8−2:偏光板
9−1,9−2:ファラデー回転素子
【0047】
10−1,10−2:4分の1波長板
11−1,11−2:レンズ
12:対向偏光変換コリメータ光学系
13:SLD光源
14−1,14−2:カプラ
15:光ファイバ偏光子
17:光位相変調器
18−1:時計方向直線偏光
18−2:反時計方向直線偏光
19:受光器
【0048】
20:信号処理回路
21:位相変調信号
22−1,22−2,22−3:スプライス
23:マルチパス対向偏光変換コリメータ光学系
24,36:管
25:呼気収納室
26:呼気収納部
27:可動壁
28:ネジ
29,37:圧力測定部
30,31,32,35:開閉弁
33:排出ガス収容室
34:排出ガス収容部
38:ガスセンサ−
39〜42:側壁
43〜48:信号光
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面を参照して本発明に係る一実施の形態の例について説明する。なお、説明に用いる各図は本発明の例を理解できる程度に各構成成分の寸法、形状、配置関係などを概略的に示してある。そして説明の都合上、部分的に拡大率を変えて図示する場合もあり、本実施の形態例の説明に用いる図は、必ずしも実施例などの実物や記述と相似形でない場合もある。また、各図において、同様な構成成分については同一の番号を付けて示し、重複する説明を省略することもある。
【0050】
また、以下の説明では、本実施の形態例の旋光度測定装置、旋光度測定方法、旋光度測定システムに使用することができる対向偏光変換光学系に関しては説明の重複部分が多い。したがって、説明の重複を避けるため、誤解を生じないようにしつつ、特に言及せずに、対向偏光変換光学系の説明で旋光度測定装置や旋光度測定方法の部分的説明を兼ねたり、その逆のこともある。
【0051】
以下に図1〜図5を用いて本発明に係る一実施の形態例を説明する。図1は本発明に係る一実施の形態例においてグルコース酸化酵素を入れた検体に呼気を注入し、そこに直交円偏光を両方向に伝搬させることを説明するための検体配置部の概念図である。
【0052】
図1で、検体配置部に配置された検体セル1にグルコースオキシダーゼ2を入れた検体に矢印4の方向に呼気を注入し、図の左から右方向へ右円偏光3−1を、図の右から左方向へ左円偏光3−2をそれぞれ伝搬させる。検体セル1内において発生する過酸化水素および未反応の呼気は出力ガスとして矢印5の方向へ排出される。なお、この伝搬させる左右両円偏光は前記と逆方向に、すなわち、符号3−1の円偏光を左円偏光に符号3−2の円偏光を右円偏光にしてもよい。
【0053】
図1の検体セル1を、一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、当該偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する非相反光学素子である偏光面回転素子を有する光ファイバ光学系としての偏光変換光学系を光路において検体配置部を挟んで対向させた対向偏光変換光学系の検体配置部に配置し、以下に詳細に説明する本発明によって、従来は測定器の開発など発想すらされなかった呼気中のグルコースに関する情報を得ることができる旋光度測定装置の実現が可能になった。
【0054】
なお、前記検体セルの呼気注入口とガス排出口は種々の位置に設けることができるが、最も簡便な例として呼気注入口を前記検体セルの下方にガス排出口を前記検体セルの上方に設けて測定系の低価格化を図ることができる。
【0055】
図2は本発明に係る一実施の形態例としての旋光度測定システムに用いることができる対向偏光変換光学系の構成図である。以下、前記対向偏光変換光学系として特に好ましい例として、対向偏光変換コリメータ光学系を用いた例を説明する。
【0056】
検体セル1は対向偏光変換コリメータ光学系12のレンズ11−1とレンズ11−2の間の検体配置部になる空間部に挿入される。以下その構成を詳細に説明する。偏波面保存光ファイバ6−1の固有偏光軸を伝搬する直線偏光はフェルール7−1から出射され、偏光板8−1、45度ファラデー回転素子9−1、4分の1波長板10−1、レンズ11−1を介して空間に右(あるいは左)円偏光として出射する。
【0057】
同様に偏波面保存光ファイバ6−2の固有偏光軸を伝搬する直線偏光はフェルール7−2から出射され、偏光板8−2、45度ファラデー回転素子9−2、4分の1波長板10−2、レンズ11−2を介して空間に左(あるいは右)円偏光として出射する。これにより検体セル1内のグルコース溶液2を両方向に伝搬する光を互いに直交する円偏光にすることができる。
【0058】
図3は本発明に係る一実施の形態例としての呼気注入グルコース酸化酵素をリング干渉計のリング光路に挿入し呼気の旋光度を測定する旋光度測定装置の構成図である。
【0059】
すなわち波長780nmを中心波長とするSLD(Super Luminescent Diord)光源13から発せられたレーザ光を第1の光カプラ14−1、偏光子15を介して第2の光カプラ14−2に導き、第2のカプラ14−2により偏波面保存光ファイバ16−1,16−2にそれぞれ直線偏光18−1、18−2を分岐する。これらの分岐光は第2のカプラの近傍に置かれた位相変調器17を介して図2に示した対向偏光変換コリメータ光学系12の両端と接続することによりリング光路を構成する。
【0060】
検体1内のグルコース溶液2を伝搬しリング光路を両方向に伝搬した光は前記第2のカプラ14−2、該偏光子15、前記第1のカプラ14−1を介して受光器19で電気信号に変換される。
【0061】
信号処理回路20からは位相変調器17に20KHzの変調信号21が印加されている。リング光路を両方向に伝搬する光の位相差を前記位相変調信号に同期した信号として抽出し検体の旋光度を測定できる。
【0062】
図3の構成の測定回路はいわゆる位相変調方式光ファイバジャイロを基本としているが、本実施の形態例では位相変調方式光ファイバジャイロのリング光路の途中に対向偏光変換コリメータ光学系を設置したものである。位相変調方式光ファイバジャイロは慣性空間におけるリング光路の回角速度を高精度に測定できるが偏光角の回転すなわち旋光度は測定できない。
【0063】
本実施の形態例の旋光度測定装置ではリング干渉計のリング光路の中にアレイ型旋光度測定用光学系を設けることによって光ファイバジャイロの高感度特性を維持しつつ旋光度を測定できるようにした。なお図3においてはリング光路の偏波面保存光ファイバの半分の長さをそれぞれ逆方向に巻いて回転角速度を検出しないように工夫した。
【0064】
本実施の形態例のリング干渉計の光路に使用している偏波面保存光ファイバにはコアが楕円の光ファイバを用いたが、いわゆるコアに異方性の応力を印加した構造の光ファイバも使用することができる。ここで用いた光ファイバ干渉計は、検体を検体配置部に配置した対向偏光変換コリメータ光学系をリング光路に挿入したことを除いて、非特許文献3に記載されている光ファイバジャイロに用いられているものと同じ方法を用いた。
【0065】
リング光路の光ファイバ長は100m、位相変調器17ではシリンダー型PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)素子を用いた信号処理回路20から約20kHzの正弦波変調信号21で光ファイバを伝搬する信号光を位相変調している。非特許文献3に記載の光ファイバジャイロは、変調器を正弦波で変調し、受光部でその基本波、2倍波、4倍波成分を検出し、基本波と2倍波の振幅比の逆正接(tan−1)で位相差を、2倍波、4倍波成分の比で変調度を一定に制御する方式である。
【0066】
図4は、図2の対向偏光変換コリメータ光学系(以下、対向偏光変換コリメータセットという)4個を空間的には並列に、光学的には直列に接続した本発明に係る一実施の形態例としてのマルチパス偏光変換コリメータ光学系の構成図である。
【0067】
各対向偏光変換コリメータセットの両端はスプライス22−1,22−2、22−3によって接続されている。図4において符号3−3は右円偏光入射光,3−5は右円偏光出射光、3−4は左円偏光入射光、3−6は左円偏光出射光である。
【0068】
符号3−3に付した矢印方向から入射した右円偏光入射光3−3は4つの対向偏光変換コリメータセットと前記3つの接続部により検体セル1を配置してある空間部をすべて右円偏光として伝搬し、符号3−5に付した矢印方向に右円偏光3−5として出射する。
【0069】
同様に、左円偏光として逆の端子から符号3−4に付した矢印方向に入射した入射光3−4は4つの対向偏光変換コリメータセットと前記3つの接続部を経て前記空間部をすべて左円偏光として伝搬し、符号3−6に付した矢印方向に左円偏光3−5として出射する。
【0070】
もし検体セル1内の検体に旋光性があれば、検体を伝搬する互いに直交する左右両円偏光の間に位相差が発生する。公知のように、前記発生する位相差は直線偏光が検体を通過するときに受ける旋光角度の2倍である。発生する位相差は検体の比旋光度、波長、温度、検体長に比例する。発生する位相差が小さい場合には検体長を長くすればよいがセンサー部が大きくなってしまうし対向距離が長くなると光軸調整も複雑になる。
【0071】
図4のマルチパス偏光変換コリメータ光学系では各コリメータの対向距離を長くすることなしに感度を4倍に上げることができる。
【0072】
図5は本発明の検体セル1に入っている呼気注入グルコース酸化酵素を挿入した本発明のマルチパス対向偏光変換コリメータ光学系をリング干渉計のリング光路に挿入し、本発明のマルチパス対向偏光変換コリメータ光学系により呼気の旋光度を測定する本発明に係る一実施の形態例としての旋光度測定装置の構成図である。
【0073】
図5のマルチパス対向偏光変換コリメータ光学系では対向偏光変換コリメータセットを3個用いた3パスの例が示されているが実際には4パスで実験した。対向距離は1パス当たり10cmとした。このような4パス光学系によって呼気凝縮液のグルコース濃度が十分な精度で計測できることを以下に示す。なお、試作した対向偏光変換コリメータセットの幅は4mmであり4個並べると16mmであった。セルの深さは2mmとした。検体は呼気凝縮液でその容積は3ccとした。
【0074】
前記のように、非特許文献2には呼気凝縮液に含まれるグルコース濃度が健常者の血液に含まれる濃度である0.1g/dLのおよそ7%であることが示されている。
【0075】
すなわちオレンジレーザ光を用いた旋光測定においては検体長が1cmの場合の旋光度はおよそ0.00035度である。これを十分な精度で測定するためにはもう1ケタ下の0.000035度程度の測定感度が必要である。従って従来最も高感度な測定方法である特許文献2に記載の測定装置をもってしても呼気の凝縮液に含まれるグルコース濃度を十分な精度で測定することは困難である。
【0076】
そこで、本発明に係る一実施の形態例では、図1に示すように呼気4をグルコース酸化酵素2に注入し、グルコン酸を生成させ、その旋光度を測定する光・化学的な方法を発明した。
【0077】
本実施の形態例での実験では呼気を注入する時間に比例して旋光度が大きくなった。あらかじめグルコースオキシダーゼ2の重量または濃度を記録しておき、旋光度の時間的変化を測定する。その都度従来の採血方式の血糖値測定装置によって被検者の血糖値を測定し旋光度の時間に対する増加率との相関を調べたところ有意な相関が得られた。
【0078】
本実施の形態例の実験における光源出力と損失レベルはおおよそ以下の通りであった。
光源出力:〜1mW
光干渉計損失:〜10dB(カップラ6dB,偏光子3dB,その他1dB)
対向偏光変換コリメータセット4個分の損失:16dB
全体で損失は26dBとなり受光レベルは25μWであった。
【0079】
図1では本実施の形態例の旋光度測定に用いる検体セルの基本構成の例を説明したが、これを展開した本発明の検体セルについてさらに説明する。
【0080】
図6は本実施の形態例の旋光度測定に用いる検体セルの別の実施の形態例を説明するための図である。符号50は図1の基本的な検体セル1に呼気収納室25と排出ガス収容室33を設けた検体セル、符号39〜42は基本的な検体セル1の側壁、符号26は呼気収納室25の呼気収容部、符号34は排出ガス収容室33の排出ガス収容部である。
【0081】
図6で、呼気注入管24を通り矢印4の方向に吹き込まれた呼気は、開閉弁30を経て呼気収納室25の呼気収容部26に収納される。呼気収容部26の容積と気圧は、可動隔壁27を動かすネジ28を操作して変えることができ、呼気収容部26の圧力測定部29の測定値と可動壁27の位置を示す目盛り(図示せず)によって所定の値に調整することができる。
【0082】
符号31は呼気収納室25と検体セル1の間の開閉弁で、必要に応じて可動壁27の操作によって呼気収容部26に収納されている呼気を検体セル1に注入することができる。
【0083】
検体セル1の発生ガス(呼気の場合も含む)を排出する必要がある場合、検体セル1と排出ガス収容室33の間の開閉弁32を経て排出ガス収容室33にガスを収納することができる。
【0084】
排出ガス収容部34の圧力は圧力測定部37の測定値で知ることができ、ガスの種類はガスセンサ−38で知ることができる。排出ガス収容部34のガスは、開閉弁35を経て管36から矢印5の方向へ排出される。ガスの排出手段は既知の種々の方法を用いることができる。排出ガス収容部34にたとえば風船のような体積可変部品(図示せず)を設けて、体積可変部品の体積を変化させてガスの排出を行うことができる。
【0085】
符号43〜48は検体セル1に入射する信号光とその進行方向(矢印)を示す。信号光43と44,45と46,47と48は、図示していない対向偏光変換光学系から出射される互いに直交する円偏光で、対向偏光変換光学系の対向する一方の偏光変換光学系から発せられた信号光は右回り円偏光43として検体セル1に入射し検体セル1を通過して、光学的接続機構を経て信号光46として検体セル1に再入射し検体セル1を通過して、光学的接続機構を経て信号光47として検体セル1に再入射し検体セル1を通過して、前記対向偏光変換光学系の対向する他方の偏光変換光学系に入射する。
【0086】
同様に、対向偏光変換光学系の対向する前記他方の偏光変換光学系から発せられた信号光は左回り円偏光48として検体セル1に入射し検体セル1を通過して、光学的接続機構を経て信号光45として検体セル1に再入射し検体セル1を通過して、光学的接続機構を経て信号光44として検体セル1に再入射し検体セル1を通過して、前記対向偏光変換光学系の対向する前記一方の偏光変換光学系に入射する。
【0087】
そして、信号光43と44、45と46、47と48はそれぞれ互いに直交する円偏光であり、前記一方の偏光変換光学系の光ファイバの入出射端における信号光43となる出射光と信号光44としての入射光は同一固有偏光モードの直線偏光で、前記他方の偏光変換光学系の光ファイバの入出射端における信号光48となる出射光と信号光47としての入射光は同一固有偏光モードの直線偏光である。
【0088】
図6では、検体セル50の基本検体セル1への信号光の入出射方向が図示の上下の面からの場合について説明したが、入出射方向はこれに限定されず、あらゆる方向から入出射させることができる。
【0089】
呼気収容室25と排出ガス収容室33の少なくとも一方を風船のように圧力で体積が変化するもので構成することにより、検体セル1への呼気の注入を容易にし、形状の自由度を高め、安価で小型で操作し易い測定システムを構成することができる。
【0090】
呼気収容室25と排出ガス収容室33の少なくとも一方を検体セルから着脱可能に設けることができる。このようにすることによって測定系の小型化、低価格化などを図ることができる。
【0091】
このような本実施の形態例の旋光度測定方法および旋光度測定装置は医療やバイオ分野における超微量の旋光度測定装置として用いて大きな効果を発揮することができるものである。
【0092】
以上、本発明の旋光度測定装置、対向偏光変換コリメータ光学系、マルチパス対向偏光変換コリメータ光学系、旋光度測定方法を図を参照しながら説明したが、本発明に係る一実施の形態例の前記各構成は、それぞれ単独で用いても本発明の効果を発揮することができ、種々組み合わせても本発明の効果を発揮することができるものであるのみならず、本発明はこれに狭く限定されるものでなく、本発明の技術思想に基づいて多くのバリエーションを可能とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本実施の形態例の旋光度測定装置、対向偏光変換コリメータ光学系、マルチパス対向偏光変換コリメータ光学系、旋光度測定方法は呼気や呼気凝縮液や超微量な旋光性を有する検体の旋光度を高精度に測定できるので医療分野、健康機器分野、農業分野などにおいて広く利用できるものである。特に、医療分野、健康機器分野などにおいては、無侵襲で血糖値を測定できれば、第1に、被験者が採血の痛みから解放されること、第2に、採血しないので衛生的であることに加えて採血器具等を介する病気の感染が防げること、第3に注射針や酵素などの廃棄物がでないこと等の多大な効果を奏するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光リング干渉計のリング光路内に呼気を含んだ検体を検体配置部に配置し、
前記検体に互いに直交する円偏光を二つの相異なる方向から入射させ、
前記検体に起因して生じる前記互いに直交する円偏光の位相差を測定することによって前記呼気に含まれるグルコースに関する情報を得ることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の旋光度測定装置において、
前記検体内における信号光の光路が前記検体における信号光の最初の入射点とその信号光が当該検体から最後に出射する出射点の間を幾何学的に直線で結んだ距離よりも長いことを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の旋光度測定装置において、
前記検体が呼気を溶かすことができる溶液に呼気を注入した検体であることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の旋光度測定装置において、
前記検体が呼気凝縮液であることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の旋光度測定装置において、
前記旋光度測定装置は呼気を含む前記検体を前記検体配置部に配置した場合と前記検体の代わりに呼気を含まずかつ呼気以外は前記献体と同質である比較検体を前記検体配置部に配置した場合との前記互いに直交する円偏光の位相差の変化を測定することによって前記呼気に含まれるグルコースに関する情報を得ることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の旋光度測定装置において、
前記溶液がグルコース酸化酵素を含む溶液であることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の旋光度測定装置において、
前記旋光度測定装置は前記検体に特定の糖質を分解する薬品を加えた場合と前記薬品を加えない場合との前記互いに直交する円偏光の位相差の変化を測定することによって前記検体に含まれるグルコース濃度を推定することができることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の旋光度測定装置において、
前記検体がそれを入れることができる検体セルに入れて検体配置部に配置されていることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の旋光度測定装置において、
前記検体セルが呼気注入口とガス排出口を有しており、前記呼気注入口は前記検体セルの下方に設けられていることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の旋光度測定装置において、
前記検体セルが、前記検体セルに注入する呼気を収納することができ呼気注入口に開閉部を介して接続されている呼気収納室と検体セルから出るガスを収納することができ呼気排出口に開閉部を介して接続されている排出ガス収容室の少なくとも一方を有していることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項11】
請求項10に記載の旋光度測定装置において、
前記検体セルの呼気収納室および/または排出ガス収容室は容積が可変であることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の旋光度測定装置において、
前記検体セルの前記呼気収納室と排出ガス収容室の少なくとも一方は着脱可能であることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか1項に記載の旋光度測定装置において、
前記検体セルの呼気収納室と排出ガス収容室の少なくとも一方はそこに収納されている気体等の圧力測定手段と容積測定手段と残量測定手段のうちの少なくとも1つを有していることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の旋光度測定装置において、
前記検体がリング干渉計のリング光路の途中に挿入された対向偏光変換光学系の対向レンズ間に配置されていることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項15】
請求項14に記載の旋光度測定装置において、
前記対向偏光変換光学系は、光ファイバの端面の近傍の光路上で光ファイバ端面と前記検体の間に少なくともレンズと偏光子と、一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、当該偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する素子である偏光面回転素子としてのファラデー回転素子と4分の1波長版とが配置されている光ファイバ光学系が光路上で検体配置部を挟んで対向している対向光ファイバ光学系であることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の旋光度測定装置において、
前記対向偏光変換光学系が対向偏光変換コリメータ光学系であることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項17】
請求項16に記載の旋光度測定装置において、
前記対向偏光変換コリメータは、偏波面保存光ファイバの出射端にレンズ、偏光子、ファラデー回転素子、4分の1波長板を配置した偏光変換コリメータを検体あるいは検体配置部あるいは空間部を挟んで信号光の光路において対向させて配置した光学系(以下、対向偏光変換コリメータセットという)を少なくとも1つ用いており、前記対向偏光変換コリメータセットでは両端の前記偏波面保存光ファイバから出射される信号光が固有偏光モードが同一の直線偏光であり、前記検体あるいは検体配置部あるいは空間部を伝搬するように両方のコリメータから出射される偏光がそれぞれ互いに直交する円偏光であるような対向偏光変換コリメータであることを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項18】
請求項17に記載の旋光度測定装置において、
前記旋光度測定装置が複数個の前記対向偏光変換コリメータセットを空間的には並列に、かつ、光路においては直列に配置し、各対向偏光変換コリメータセットの各検体配置部に一つの検体を置くことを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の旋光度測定装置において、
前記旋光度測定装置は、光源から発せられたレーザ光を第1の光カプラ、偏光子を介して第2の光カプラに導き、前記第2のカプラにより分岐した光を、主として偏波面保存光ファイバから成るリング光路の途中に前記対向偏光変換コリメータ光学系の両端を接続して構成したリング光路に当該リング光路を両方向に伝搬する光として分岐し、前記リング光路の第2のカプラの近傍に光位相変調器を設け、前記リング光路を両方向に伝搬する前記光を前記第2のカプラ、前記偏光子、前記第1のカプラを介して受光器および信号処理回路に導き、前記リング光路を両方向に伝搬する光の位相差を前記位相変調信号に同期した信号として抽出し、検体の旋光度を測定して検体の糖濃度を測定することを特徴とする旋光度測定装置。
【請求項20】
検体に互いに直交する円偏光を二つの相異なる方向から入射させ、前記検体に起因して生じる前記互いに直交する円偏光の位相差を測定することによって前記検体の旋光度を測定することができる旋光度測定システムに使用することができる対向偏光変換光学系において、
光ファイバの端面の近傍の光路上における光ファイバの端面と前記検体の間に、少なくとも、レンズと偏光子と一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、
当該偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する素子である偏光面回転素子としてのファラデー回転素子と4分の1波長版とが配置されている光学系を信号光の航路において前記検体あるいは検体配置部あるいは空間部を挟んで対向させて配置した一組の光学系を対向偏光変換光学系セットと定義して、
前記対向偏光変換光学系は、複数セットの前記対向偏光変換光学系セットを空間的には並列に、かつ、光路においては直列に配置し、各対向偏光変換コリメータセットの検体配置部に一体の検体を配置しことを特徴とするアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系。
【請求項21】
請求項20に記載のアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系において、
前記対向偏光変換光学系がコリメータ光学系であることを特徴とするアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系。
【請求項22】
請求項20または21に記載のアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系において、
前記対向偏光変換光学系を構成する各対向偏光変換コリメータセットの光ファイバの出射信号光と入射信号光が固有偏光モードが同一の直線偏光であり、前記検体を伝搬するように両方の偏光変換光学系から出射される偏光がそれぞれ互いに直交する円偏光であることを特徴とするアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系。
【請求項23】
検体に互いに直交する円偏光を二つの相異なる方向から入射させることができる対向偏光変換光学系を用いて前記検体に起因して生じる前記互いに直交する円偏光の位相差を測定することによって前記検体の旋光度を測定することができる旋光度測定方法において、
光ファイバの端面の近傍の光路上における光ファイバの端面と前記検体の間に、少なくとも、レンズと偏光子と一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、
当該偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する素子である偏光面回転素子としてのファラデー回転素子と4分の1波長版とが配置されている光学系を信号光の航路において前記検体あるいは検体配置部あるいは空間部を挟んで対向させて配置した一組の光学系を対向偏光変換光学系セットと定義して、
前記対向偏光変換光学系は、複数セットの前記対向偏光変換光学系セットを空間的には並列に、かつ、光路においては直列に配置し、各対向偏光変換コリメータセットの検体配置部に一体の検体を配置したアレイ型マルチパス対向偏光変換光学系であることを特徴とする旋光度測定方法。
【請求項24】
請求項23に記載の旋光度測定方法において、
前記対向偏光変換光学系がコリメータ光学系であることを特徴とする旋光度測定方法。
【請求項25】
請求項23または24に記載の旋光度測定方法において、
前記対向偏光変換光学系を構成する各対向偏光変換コリメータセットの光ファイバの出射信号光と入射信号光が固有偏光モードが同一の直線偏光であり、前記検体を伝搬するように両方の偏光変換光学系から出射される偏光がそれぞれ互いに直交する円偏光であることを特徴とする旋光度測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−112909(P2012−112909A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264357(P2010−264357)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(303000774)株式会社グローバルファイバオプティックス (8)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】