説明

旋回作業機のデリバリホースのクランプ装置

【課題】 デリバリホースを確実に位置決めしながら旋回台への振動の伝播を十分に低減できるようにする。
【解決手段】 旋回台2上にエンジン3、油圧ポンプ4、作動油タンク5及びコントロールバルブ6を搭載し、エンジン3で油圧ポンプ4を駆動して、作動油タンク5から吸引した作動油をデリバリホース7を介してコントロールバルブ6へ供給していて、前記デリバリホース7を弾性材製のクランプ部材8に挿通保持して旋回台2に対して取り付ける。前記クランプ部材8を取り付けている支持体9を、旋回台2に形成された取り付け部10に防振材11を介して取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー等の旋回作業機のデリバリホースのクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バックホー等の旋回作業機は、旋回台上にエンジン、油圧ポンプ、作動油タンク及びコントロールバルブを搭載しており、エンジンで油圧ポンプを駆動して、作動油タンクから吸引した作動油をデリバリホースを介してコントロールバルブへ供給し、コントロールバルブから掘削装置のアクチュエータへ圧油を供給している。
前記デリバリホースは、特許文献1に開示されているように、旋回台に固定の構造物に支持体を固定し、この支持体に弾性材製のクランプ部材を設け、このクランプ部材に挿通保持している。
【0003】
デリバリホースは油圧ポンプの脈動を受けて微振動を繰り返し発生しており、金属部分に接触すると摩減するので、振動を吸収しながら取り付けておくため、前記のように弾性材製のクランプ部材で挟持している。
【特許文献1】特開2005−280477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来技術のクランプ部材のみでは、デリバリホースの微振動を十分に吸収することが困難であり、油圧ポンプの脈動がデリバリホースからクランプ部材に伝播され、クランプ部材から更に旋回台の構造物に伝播され、脈動音が騒音として大気に放出されている。
前記従来技術のクランプ部材は、弾性の高いゴムを使用すると、デリバリホースを挟持して位置決めするのが困難になり、逆に位置決めを確実にできる硬度のゴムを使用すると、微振動を十分に吸収するのが困難になる、という問題を有している。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした旋回作業機のデリバリホースのクランプ装置を提供することを目的とする。
本発明は、クランプ部材の支持体を旋回台に防振材を介して取り付けることにより、デリバリホースを確実に位置決めしながら旋回台への振動の伝播を十分に低減できるようにした旋回作業機のデリバリホースのクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、旋回台2上にエンジン3、油圧ポンプ4、作動油タンク5及びコントロールバルブ6を搭載し、エンジン3で油圧ポンプ4を駆動して、作動油タンク5から吸引した作動油をデリバリホース7を介してコントロールバルブ6へ供給していて、前記デリバリホース7を弾性材製のクランプ部材8に挿通保持して旋回台2に対して取り付けている旋回作業機のデリバリホースのクランプ装置であって、
前記クランプ部材8を取り付けている支持体9を、旋回台2上に設けられた取り付け部10に防振材11を介して取り付けていることを特徴とする。
【0007】
第2に、前記防振材11はそれを貫通する取り付け具12に対して全方向に支持体9を弾性支持していることを特徴とする。
第3に、前記支持体9はそれを貫通する取り付け具12の貫通位置からデリバリホース7の長手方向に離れた位置でクランプ部材8と当接し、かつ押さえ板13と相まってクランプ部材8を挟持しており、前記クランプ部材8には複数本のデリバリホース7を挿通する挿通孔8aと、この挿通孔8aに連通しかつ挿通孔8aに押さえ板13側からデリバリホース7を嵌入するスリット8bとを形成していることを特徴とする。
【0008】
前記構成のクランプ装置は次のような作用を有する。
デリバリホース7は弾性材製のクランプ部材8に挿通保持され、確実な位置決め状態で支持体9に取り付けられており、油圧ポンプ4の脈動を受けて繰り返し発生する微振動をクランプ部材8で吸収し低減させる。支持体9に伝播される振動があると、その振動は旋回台2の取り付け部10との間に設けられた防振材11によって吸収され、旋回台2側へ伝播される振動は更に低減される。
前記支持体9はそれ自体と防振材11とを貫通する取り付け具12によって取り付け部10に取り付けられるが、前記防振材11が取り付け具12に対して支持体9を全方向に弾性支持するので、支持体9のあらゆる方向の振動が取り付け具12を介して旋回台2へ伝播されるのを遮断できる。
【0009】
クランプ部材8は挿通孔8aに連通するスリット8bを形成していて、複数本のデリバリホース7を押さえ板13側から挿通孔8aに嵌入することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クランプ部材及び防振材によって、デリバリホースを確実に位置決めしながら旋回台への振動の伝播を十分に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図6〜8において、符号20は旋回作業機としてのバックホーを示しており、バックホー20はクローラ式走行装置21に旋回軸22を介して旋回台2を旋回自在に支持しており、この旋回台2上にエンジン3、油圧ポンプ4、作動油タンク5及びコントロールバルブ6等の上部構造物を搭載し、運転席23の前方の旋回台2前部に掘削装置24を配置している。
前記旋回台2は、基台25上に平面視ハの字状の縦フレーム26、エンジン3及びその他の構造物を取り付けるブラケットを有する旋回フレーム27が固着され、ハの字状縦フレーム26の前端に掘削装置24をスイング軸廻りに揺動自在に支持するスイング軸受部材28を固着し、中央に旋回軸22を構成するスイベルジョイントを配置している。
【0012】
エンジン3は旋回台2の後部に搭載され、左右一側(図7左側)に3連式の油圧ポンプ4が連結されていて、駆動可能になっている。エンジン3の側方には外気吸引により冷却されるラジエータ29及びオイルクーラ30等が配置され、それらの配置空間はボンネット35で覆われ、旋回台2の後端にはカウンタウエイト36が設けられている。
前記エンジン3の上方から前方に運転席23が配置され、この運転席23の左右一側(図7右側)に作動油タンク5及びコントロールバルブ6が配置され、タンクカバー37によって覆われている。
【0013】
作動油タンク5は基台25に固定された取付台38上にボルト固定されており、図2に示すように、その前面にブラケット39を介してコントロールバルブ6を着脱自在に装着している。
コントロールバルブ6は手動式、電磁式又はパイロット圧式の多数のバルブ単位体を上下方向に併設して縦長にし、それらに油路を貫通形成したものであり、スプールは左右方向に向けられている。
3連式の油圧ポンプ4は、作動油タンク5から吸引した作動油を複数本(3本)のデリバリホース7を介してコントロールバルブ6へ供給し、コントロールバルブ6から掘削装置24のアクチュエータ、クローラ式走行装置21の油圧モータ及びアクチュエータ等へ圧油を供給するとともに、運転席23の近傍に設けられる操縦装置40のパイロットバルブへパイロット圧油を提供する。
【0014】
図1〜5において、3本のデリバリホース7a、7b、7c及びオイルクーラ30とコントロールバルブ6とを結ぶクーラホース43は、基台25の上方で、作動油タンク5の取付台38の外側方で、タンクカバー37の内側に前後方向に挿通されており、前後一対のクランプ装置1(1F、1R)によって基台25に対して固定されている。
前記3本のデリバリホース7a、7b、7cは油圧ポンプ4の第1ポンプ、第2ポンプ及びパイロット用の第3ポンプに接続され、前後クランプ装置1F、1Rによって固定されている。クーラホース33は油圧ポンプ4の脈動はないので、後クランプ装置1Rだけで固定されている。
【0015】
前記作動油タンク5を上面に取り付ける取付台38は、帯板を介して基台25の上面から離れて固定されており、前記帯板は両端を屈曲して水平に形成しかつ基台25から外側上方に突出しており、デリバリホース7を位置固定するためのクランプ装置1の取り付け部10となっている。前記作動油タンク5の外側端部の下方に空間を形成して、デリバリホース7を挿通するための空間にしている。
クランプ装置1は、取り付け部(帯板)10に防振材11及び取り付け具12を介して固定される支持体9と、この支持体9に押さえ板13及び装着具(ボルト)44を介して固定されるクランプ部材8とを有している。前記取り付け具12はボルトであり、支持体9及び防振材11を貫通している。
【0016】
支持体9は平板で前後一側に上下一対の防振材嵌合孔9aが形成され、防振材11はリング形状で、筒部11aの外周に2条の環状突条部11bとその間の周溝11cとを有し、この周溝11cが支持体9の防振材嵌合孔9aと嵌合している。
前記防振材11は、円筒体(カラー)15にゴム等の弾性材を固着して形成され、円筒体15に取り付け具12が貫通可能になっている。防振材11の弾性材は筒部11aが円筒体15の外周に固着され、一方の環状突条部11bが取り付け部10と当接し、他方の環状突条部11bが座金16と当接しており、取り付け具12を取り付け部10に締結することにより、防振材11は取り付け部10と座金16とで圧縮状態に挟持される。
【0017】
支持体9は防振材11に前記筒部11a及び環状突条部11bが存在するので、取り付け部10及び取り付け具12に対して全方向(ボルトの径方向及び軸方向)に弾性支持され、支持体9のあらゆる方向の振動は遮断され、取り付け部10側に伝播されるこのはない。
前記支持体9は、取り付け具12が貫通している防振材嵌合孔9aから前後方向(デリバリホース7に沿った方向)離れた位置に装着具44のネジ孔(又は挿通孔)9bが形成されており、クランプ部材8が当接されている。クランプ部材8の表面側(外側面)に押さえ板13が配置されており、このクランプ部材8と押さえ板13とを貫通するボルト等の装着具44が前記ネジ孔9bに螺合又はナットを介して支持体9に固定されており、支持体9と押さえ板13とが相まってクランプ部材8を挟持している。
【0018】
前記支持体9は帯板で形成してその両端に防振材11を設け、両防振材11の間にクランプ部材8及び装着具44を配置して直線配列にすることも考えられるが、前記のように、防振材11とクランプ部材8とを前後方向にずらした配列にする方が、クランプ装置1の上下方向の寸法が短くなるとともに、支持体9を板材で形成してその弾性変形を利用して、振動吸収に役立たせることができるので好ましい。
前記クランプ部材8はゴム等の弾性材で矩形体に形成されており、前クランプ部材8Fには3本のデリバリホース7を挿通する挿通孔8aが形成され、後クランプ部材8Rには3本のデリバリホース7を挿通する挿通孔8aとクーラホース43を挿通する挿通孔8cが形成されている。
【0019】
各クランプ部材8には各挿通孔8a,8cから表面側に至るスリット8bが形成されており、このクランプ部材8を変形してスリット8bを広げることによりデリバリホース7に嵌合することができる。
前記クランプ部材8は、装着具44で支持体9と押さえ板13とを締め付けることにより、挿通孔8a,8cに挿通したデリバリホース7を弾性的に挟持し、デリバリホース7の振動を吸収しながらその相対位置を固定することになり、クランプ部材8の取り付け位置が支持体9の取り付け位置である取り付け具12からデリバリホース7の長手方向に離れていることにより、支持体9の肉厚方向の弾性変形があり、デリバリホース7の振動を減少し、支持体9が防振材11を介して取り付け部10に固定されることにより、支持体9の上下方向、前後方向及び内外方向の振動は防振材11によって遮断され、旋回台2に伝播されなくなる。
【0020】
図4中の符号46はデリバリホース7に巻いた有色テープであり、その端部を押さえ板13に合わせることにより、油圧ポンプ4とコントロールバルブ6との間でデリバリホース7を適正位置に位置決めできる。
図2、6中の符号47はタンクカバー37の下部取り付けブラケットであり、基台25から外側上方へ突出しており、この下部取り付けブラケット47はデリバリホース7より外側方に位置し、取り付け部10にデリバリホース7を取り付ける際に外側方へふらつくのを規制する役目をする。
【0021】
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、図1〜8に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、前後クランプ装置1F、1Rは前後一方のみでもよく、クランプ部材8はスリット8bを形成する代わりに挿通孔8a,8cを通る面を割面とする2つ割形状にしてもよい。
【0022】
また、取り付け部10は、旋回台2上の旋回フレーム27、作動油タンク5その他の構造物からブラケットを突出して形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態を示しており、図2のX−X線断面図である。
【図2】全体側面図である。
【図3】図2のY−Y線断面図である。
【図4】後クランプ装置の側面図である。
【図5】図2のZ−Z線断面図である。
【図6】バックホーの後上部構造を示す斜視図である。
【図7】バックホーの上部構造を示す平面図である。
【図8】バックホーの全体側面説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 クランプ装置
2 旋回台
3 エンジン
4 油圧ポンプ
5 作動油タンク
6 コントロールバルブ
7 デリバリホース
8 クランプ部材
9 支持体
10 取り付け部
11 防振材
12 取り付け具
13 押さえ板
15 円筒体
20 バックホー(旋回作業機)
25 基台
44 装着具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回台(2)上にエンジン(3)、油圧ポンプ(4)、作動油タンク(5)及びコントロールバルブ(6)を搭載し、エンジン(3)で油圧ポンプ(4)を駆動して、作動油タンク(5)から吸引した作動油をデリバリホース(7)を介してコントロールバルブ(6)へ供給していて、前記デリバリホース(7)を弾性材製のクランプ部材(8)に挿通保持して旋回台(2)に対して取り付けている旋回作業機のデリバリホースのクランプ装置であって、
前記クランプ部材(8)を取り付けている支持体(9)を、旋回台(2)上に設けられた取り付け部(10)に防振材(11)を介して取り付けていることを特徴とする旋回作業機のデリバリホースのクランプ装置。
【請求項2】
前記防振材(11)はそれを貫通する取り付け具(12)に対して全方向に支持体(9)を弾性支持していることを特徴とする請求項1に記載の旋回作業機のデリバリホースのクランプ装置。
【請求項3】
前記支持体(9)はそれを貫通する取り付け具(12)の貫通位置からデリバリホース(7)の長手方向に離れた位置でクランプ部材(8)と当接し、かつ押さえ板(13)と相まってクランプ部材(8)を挟持しており、前記クランプ部材(8)には複数本のデリバリホース(7)を挿通する挿通孔(8a)と、この挿通孔(8a)に連通しかつ挿通孔(8a)に押さえ板(13)側からデリバリホース(7)を嵌入するスリット(8b)とを形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の旋回作業機のデリバリホースのクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−231693(P2008−231693A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69463(P2007−69463)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】