説明

旋回燃焼式重油・廃油ストーブ

【課題】 完全燃焼を図るべく、燃焼室内の旋回空気の流れを変化させることにより燃焼室内に燃焼ガスを充分な時間滞留させるとともに、助燃構造を備えることによって燃焼室内を充分に加熱し、効果的に燃焼させられる旋回燃焼式重油・廃油ストーブを提供する。
【解決手段】 燃焼室21を有するストーブ本体2と、燃焼室21に連結されて燃料を供給する燃料供給装置4と、燃焼室21内に空気を供給する空気供給機5と、燃焼室21内において空気供給機5に連結され供給される空気を燃焼室21内に噴射するための噴射孔62を備えた中空状の空気噴射管6と、空気噴射管6の外周面に突出して設けられ、噴射孔62から噴射されて燃焼室21内を旋回する空気の流れを変え、かつ燃焼を助ける旋回空気変流助燃板7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室内で空気を旋回させながら重油・廃油などの燃料を燃焼させる旋回燃焼式重油・廃油ストーブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼室内で空気を旋回させることにより燃焼ガスと空気との混合を活発にして燃焼させて不完全燃焼によるダイオキシンなどの環境汚染物質の発生を低減させるストーブが提案されている。
【0003】
例えば、特開2000−257834号公報では、円筒形縦型の燃焼室と、前記燃焼室の中心に配置された横断面四角形状の空気噴射管と、この空気噴射管の側壁面の上下方向に開口された空気を噴射する複数個の噴射孔と、前記空気噴射管の下部に連結されて空気を旋回させる方向に曲げられて取り付けられた一次燃焼空気管とから構成された回転燃焼廃油焼却ストーブが提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の発明によれば、噴射孔から噴射された空気は燃焼室の内壁に衝突して進行方向を変え、燃焼室内に旋回流を発生させて燃焼ガスと空気との混合を活発にし、燃焼ガスを完全燃焼させて排気ガスを無煙化することができると記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−257834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、燃焼室内に空気の旋回流が発生するが、そのまま乱れることなく燃焼室内から短時間で排気されるため、燃焼ガスと空気との混合が不十分であり、加熱も不十分となって不完全燃焼の状態で排気されてしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献1の発明には、特に燃焼を補助する助燃構造などが備えられていないため、効果的な燃焼が得られないという欠点もある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、完全燃焼を図るべく、燃焼室内の旋回空気の流れを変化させることにより燃焼室内に燃焼ガスを充分な時間滞留させるとともに、助燃構造を備えることによって燃焼室内を充分に加熱し、効果的に燃焼させられる旋回燃焼式重油・廃油ストーブを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る旋回燃焼式重油・廃油ストーブの特徴は、燃焼室を有するストーブ本体と、前記燃焼室に連結されて燃料を供給する燃料供給装置と、前記燃焼室内に空気を供給する空気供給機と、前記燃焼室内において前記空気供給機に連結されており、この空気供給機から供給される空気を前記燃焼室内に噴射するための噴射孔を備えた中空状の空気噴射管と、前記空気噴射管の外周面に突出して設けられ、前記噴射孔から噴射されて前記燃焼室内を旋回する空気の流れを変え、かつ燃焼を助ける旋回空気変流助燃板とを有する点にある。
【0009】
また、本発明において、前記空気噴射管を横断面略多角形状に形成するとともに、前記旋回空気変流助燃板を前記空気噴射管の横断面略多角形状を構成する各側面の側縁部から延出させて構成することが好ましい。
【0010】
さらに、本発明において、前記空気噴射管を横断面略三角形状に形成するとともに、前記噴射孔を前記空気噴射管の各側縁部に沿って上下方向に複数個形成し、かつ、前記旋回空気変流助燃板を前記噴射孔が形成された側面に沿って前記側縁部から延出させて形成することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明において、直線状の空気噴射ノズルを前記空気噴射管の下部に連結し、その噴射口を前記空気噴射管の側縁部下方に配置して前記燃焼室の内壁へ向けて空気を噴射することが好ましい。
【0012】
さらに、本発明において、前記燃料供給装置は、供給される燃料を一時的に貯留するとともに、この一時貯留した燃料を2方向に選択的に流出させる二股状の分岐管を備えた燃料一時貯留体を有し、前記分岐管の一方には、前焼室に溜まった燃料の高さが所定の高さを超えた場合に燃料一時貯留体から流れる燃料の流出方向を切り替える過剰供給燃料流出管が連結されており、前記燃料供給管の途中には、前記燃料を前記燃焼室内における供給出口よりも低い位置を経由させて火炎の逆流を防止する火炎逆流防止油溜まり部が形成されており、前記過剰供給燃料流出管には、前記燃料を前記分岐管の分岐位置より高い位置を経由させて前記燃焼室に溜まる燃料の高さを調整する供給燃料高さ調整部が形成されていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明において、前記ストーブ本体の外壁またはその近傍の温度計測を行う温度センサと、前記過剰供給燃料流出管から流出された燃料を検知する液面センサと、前記温度センサまたは前記液面センサの少なくともいずれかが異常信号を取得すると警告を発する警告手段とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃焼室内における旋回空気の流れを変化させて燃焼ガスを燃焼室内に充分な時間滞留させるとともに、輻射熱などを利用する助燃構造により燃焼室内を充分に加熱することによって完全燃焼を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る旋回燃焼式重油・廃油ストーブの実施形態について図面を用いて説明する。図1および図2は本実施形態における旋回燃焼式重油・廃油ストーブ1の正面図および平面図であり、図3および図4は本実施形態における旋回燃焼式重油・廃油ストーブ1の空気噴射管5の正面図および平面図である。また、図5および図6は本実施形態における旋回燃焼式重油・廃油ストーブ1の、燃焼室21内の燃焼中における気流についての説明図である。
【0016】
本実施形態に係る旋回燃焼式重油・廃油ストーブ1は、主に、燃焼室21を有するストーブ本体2と、燃料を貯留する燃料タンク3と、この燃料タンク3から燃焼室21内に燃料を供給する燃料供給装置4と、燃焼室21内に空気を供給する空気供給機5と、ストーブ本体2内に配置されて供給される空気を燃焼室21内に噴射する空気噴射管6と、この空気噴射管6の外周面に突出して設けられた旋回空気変流助燃板7と、異常発生を検知する各種のセンサからなる検知手段8と、当該検知手段8の異常検知を受信して警告を発する警告手段9と、ストーブ本体2や燃料タンク3などを載置して移動可能にする台車10とから構成されている。
【0017】
以下、各構成について詳細に説明する。
【0018】
本実施形態に係るストーブ本体2は、略円筒状縦型の耐火性・耐熱性鋼材などにより形成された燃焼室21を備えており、その内周壁面に沿って燃焼ガスの燃焼を助けるための助燃板22が取り付けられている。この助燃板22は、通気可能な多数の通気孔を全面に形成した略円筒形状の金属材料により構成されており、燃焼ガスに直接的に接触するとともに、輻射熱によっても加熱して燃焼を助けるようになっている。また、燃焼室21の上部には開閉蓋23が開閉自在に取り付けられているとともに、この開閉蓋23あるいは燃焼室21の側面上部に排気ガスを排出するための煙突24が連結されている。さらに、燃焼室21の内周壁面の上部には空気噴射管6を吊り下げるようにして支持する吊下支持部25が設けられている。
【0019】
本発明に係るストーブ本体2の材料は、耐火性や耐熱性を有していれば特に限定されないが、例えば、炭素鋼や合金鋼などが挙げられ、合金鋼としてはステンレス鋼などが挙げられる。また、本発明に係るストーブ本体2の大きさや容量も特に限定されない。
【0020】
本実施形態における燃料タンク3は、ストーブ本体2の燃焼室21に隣接して設けられており、貯留している燃料を燃料供給装置4へ供給するための一次供給管31と、その一次供給管31の開閉を行う給油バルブ32とが設けられている。なお、燃焼室21と燃料タンク3との間には断熱性を有する遮熱板11が設けられており、燃焼室21内の燃焼熱によって燃料タンク3が加熱され引火するなどのリスクを防止している。
【0021】
ここで、本実施形態における旋回燃焼式重油・廃油ストーブ1は燃料タンク3を備えているが、本発明に係る旋回燃焼式重油・廃油ストーブ1は燃料タンク3を備えなくてもよく、例えば、循環給油システムより燃料供給装置4へ直接給油してもよい。
【0022】
本実施形態に係る燃料供給装置4は、分岐管45を備えた燃料一時貯留体41と、分岐管45から燃焼室21へと燃料を供給する燃料供給管42と、燃焼室21に燃料が過剰に送られた場合に分岐管45からの流出方向を切り替える過剰供給燃料流出管43とを有している。
【0023】
燃料一時貯留体41は、燃料を一時的に貯留するホッパー44を有しており、このホッパー44の下部に二股状の分岐管45が取り付けられている。ホッパー44は燃料タンク3から供給される燃料を一時的に貯留することによって燃料供給管42内や過剰供給燃料流出管43内に入り込んだ気体を抜けやすくするものである。また、分岐管45は燃料供給管42の供給出口46よりも高い位置で二股状に分岐されており、燃料を燃料供給管42または過剰供給燃料流出管43の2方向に選択的に流出させるためのものである。
【0024】
燃料供給管42は燃焼室21に連結されており、燃料一時貯留体41と燃焼室21とを連通している。また、燃料供給管42の途中には、燃焼室21からの火炎の逆流を防止する火炎逆流防止油溜まり部47が設けられている。この火炎逆流防止油溜まり部47は、燃料供給管42を供給出口46よりも低い位置を経由させてなり、管内に燃料を常に溜まるようにすることで燃焼室21内の火炎が逆流しないようになっている。
【0025】
過剰供給燃料流出管43は、管路の途中に供給燃料高さ調整部48を備えているとともに、過剰供給された燃料を燃料受皿12に流出するように構成されている。供給燃料高さ調整部48は、過剰供給燃料流出管43を分岐管45の分岐位置よりも高い位置を経由させてなり、燃焼室21内の燃料の高さが所定以下のときは分岐管45からの燃料の流れを堰き止めて燃料供給管42への燃料供給を確保する。一方、燃焼室21内に燃料が溜まって液面高さが分岐位置より高くなってしまうと、供給される燃料と燃焼室21内に溜まっている燃料との圧力差により、供給燃料高さ調整部48で堰き止めている燃料を流動させて、供給された過剰燃料分を燃料受皿12に流出させるようになっている。
【0026】
本実施形態における空気供給機5は、ブレード型ブロワーによって構成されており、空気噴射管6に連結されて外部の空気を燃焼室21に供給するようになっている。なお、本発明に係る空気供給機はブレード型を含めたブロワー式に限られず、例えばターボ式や圧縮式などであってもよい。
【0027】
本実施形態における空気噴射管6は、横断面三角形状に形成された長尺中空状の筒体から構成されている。また、空気噴射管6はその上部に吊下支持板61が取り付けられており、燃焼室21の吊下支持部25に支持されることによって燃焼室21の中心軸に沿って垂下されている。そして、空気噴射管6内には空気供給機5から空気が供給される。
【0028】
また、空気噴射管6には、その側面に空気を噴射しうる多数の噴射孔62が形成されているとともに、その下部にも噴射ノズル63が取り付けられており、燃焼室21内に空気の旋回流を発生させるようになっている。噴射孔62は、空気噴射管6の横断面三角形状を構成する各側面の側縁部64に沿って上下方向に多数開口されている。空気供給機5から空気噴射管6内に供給された空気は、噴射孔62を介して燃焼室21内の内壁に衝突させるように噴射され、燃焼室21内に旋回流を発生させる。なお、本発明に係る噴射孔62を形成する位置は、旋回流の方向を合わせるために各側面において左右いずれかの側縁部64の近傍に統一することが好ましく、本実施形態においては、北半球において使用する場合のコリオリ力を考慮して反時計回りに旋回させうる位置に形成している。
【0029】
なお、本実施形態における空気噴射管6は、燃焼室21内に発生する前記旋回流を鑑み、横断面形状を三角形状としているが、本発明に係る空気噴射管6は燃焼室21内に旋回流を発生することができる横断面形状であればよく、例えば、四角形状や五角形状、楕円形状のものなどが挙げられる。
【0030】
また、噴射ノズル63は、先端に噴射口を有する直線状の先細りパイプから構成されており、空気噴射管6の側縁部64に沿ってその下部に固定されており、燃焼室21の底部から内壁へ向けて空気を噴射することにより空気噴射管6の下方空間に旋回流を発生させるようになっている。
【0031】
旋回空気変流助燃板7は、空気噴射管6の外周面に突出して設けられており、噴射孔62から噴射されて燃焼室21内を旋回する空気の流れを変えて燃焼ガスと空気をよりよく混合するとともに、燃焼ガスを燃焼室21内に充分な時間滞留させる機能を果たしている。また、旋回空気変流助燃板7は燃焼ガスを輻射熱などにより加熱して燃焼を補助する機能も備えている。本実施形態に係る旋回空気変流助燃板7は、空気噴射管6の横断面略三角形状を構成する各側面を側縁部64から延出させることによって一枚の板によって一体的に構成されている。その側縁部64において旋回空気変流助燃板7を延出させる方向はいずれであってもよいが、本発明者らが行った試験の結果、図3および図4に示すように、噴射孔62が形成された側面に沿って当該側縁部64から延出させるのが好ましい。
【0032】
なお、本実施形態における空気噴射管6と旋回空気変流助燃板7とは一体的に形成しているが、本発明に係る空気噴射管6と旋回空気変流助燃板7はこれに限定されるものではなく、旋回空気変流助燃板7を空気噴射管6とは別途作製し、所定位置に溶接やボルト止めなどにより固定してもよい。また、本発明に係る旋回空気変流助燃板7は、平板に限られるものではなく、波状や湾曲状、網目状の板を用いて形成してもよい。
【0033】
また、本発明に係る旋回燃焼式重油・廃油ストーブ1は、安全を確保するための検知手段8として、ストーブ本体2の外壁や遮断板11などに設けられて温度を計測する温度センサ81と、過剰供給燃料流出管43から流出して燃料受皿12に溜まった燃料の液面を検知する液面センサ82とを備えることが好ましいが、たとえば、燃料タンク3などに設けられて一酸化炭素の濃度を計測する一酸化炭素濃度センサや燃焼室21外から燃焼室21内の火炎を検知する火炎検知センサなどを備えてもよい。
【0034】
本発明に係る警告手段9は、その警告の手法などは特に限定されないが、例えば、警告灯91や図示しない警告ブザーなどから構成され、温度センサ81や、液面センサ82から受信する異常信号を契機として警告灯91を発光させたり、警告音を鳴らすことによって警告を発するようなものが挙げられる。
【0035】
また、本発明に係る旋回燃焼式重油・廃油ストーブ1は台車10を備えていてもよく、例えば本実施形態における台車10のように、適当な大きさの車輪13と手押し部14を備えて旋回燃焼式重油・廃油ストーブ1を自由に移動することができるものが挙げられる。
【0036】
つぎに、前述した本実施形態に係る各構成の作用について説明する。まず、燃料供給装置4により燃料タンク3内の重油または廃油をストーブ本体2の燃焼室21に供給する。具体的には、燃料タンク3に設けられた給油バルブ32を開けることによりホッパー44に燃料を供給する。ホッパー44に供給された燃料は分岐管45により燃料供給管42と過剰供給燃料流出管43とに分岐される。ただし、過剰供給燃料流出管43に設けられた供給燃料高さ調整部48が分岐管45の分岐位置より高い位置を経由しているため、通常時においては、燃料は燃料供給管42に流出して燃焼室21内に供給される。なお、燃料として用いられる重油や廃油は気化しにくいため、運転開始時は着火剤として気化しやすい灯油などの着火燃料50cc程度をホッパー44に投入してから供給してもよい。
【0037】
なお、燃料の供給量が燃料の消費量より上回ったり、何らかの要因で消火されてしまい燃料が燃焼室21内に過剰に供給されてしまうことがある。仮に過剰に燃料の供給を続けると、ホッパー44から燃料が溢れて燃料に引火する可能性があり大変危険である。また、空気噴射管6の中空部に燃料が浸透してしまい空気の噴射を妨げてしまうこともあり、故障の原因になる。
【0038】
しかし、本実施形態においては、燃焼室21内の燃料の高さが供給燃料高さ調整部48の高さ以上に達した場合、燃料が供給燃料高さ調整部48を越えて燃料受皿12に流出し、分岐管45における燃料の流出方向が燃料供給管42から過剰供給燃料流出管43へと自動的に切り替わるため、燃焼室21内の燃料が供給燃料高さ調整部48の高さ以上になることはない。これによって過剰燃料の供給による危険を未然に防ぐことができる。なお、液面センサ82により燃料受皿12内の燃料を感知すると異常信号が警告手段9へ送信されて警告を発するため、燃料の過剰供給状態に素早く対応することができる。
【0039】
また、仮に燃料供給管42内に空気が入ると、火炎が燃料供給管42内を逆流してしまうおそれがある。しかし、本実施形態に係る燃料供給管42には供給出口46よりも低い位置を経由する火炎逆流防止油溜まり部47が設けられており、当該燃料供給管42内を燃料で満たすことで空気が入り込まないようになっているため、火炎が燃料供給管42を逆流することはない。
【0040】
つぎに、燃焼室21内の燃料に点火し、燃焼室21内に旋回流を発生させて燃料を燃焼させる。燃焼室21内の燃料への点火は、図示しない発熱部を備えた着火手段を使用して行う。そして、着火燃料が燃焼して重油や廃油が加熱されると気化し、燃焼ガスとなって燃焼を開始する。
【0041】
一方、旋回流は、空気供給機5から空気噴射管6に空気を送風することにより発生する。その送風された空気は噴射孔62および噴射ノズル63から燃焼室21内に噴射される。
【0042】
噴射された空気は、図5に示すように、燃焼室21内の内壁に衝突する。このとき噴射孔62および噴射ノズル63は燃焼室21の中心位置から偏心した位置において空気を噴射するため、内壁に衝突した空気は衝突位置において広角方向に進行方向を変えて旋回流を発生させる。本実施形態においては、北半球におけるコリオリ力を考慮に入れて噴射孔62および噴射ノズル63の位置が決定されているので、旋回流は反時計回りに形成される。この旋回流は燃焼ガスと活発に混合されることにより激しい火炎となって燃焼室21内を旋回する。
【0043】
なお、本実施形態に係る空気噴射管6は横断面三角形状に形成されており、横断面積を同一とする円筒状の空気噴射管6や横断面略四角形状の空気噴射管6と比較すると噴射孔62を遠い偏心位置に設けることができるため、より強い旋回流を発生させることができる。
【0044】
また、旋回空気変流助燃板7は旋回流の流れ方向を変え、かつ加速させることにより、燃焼ガスの滞留時間を長くし、燃焼を促進させる。さらに、輻射熱などにより燃焼ガスを加熱して燃焼を助ける働きをする。具体的には、図6に示されるように、旋回空気変流助燃板7が空気の旋回する流路を狭くするため、旋回流は流路が狭いところで加速される。旋回流のスピードが増すと、燃焼ガスの上昇スピードが減速されるため、燃焼ガスが燃焼室21内に長い時間滞留し、燃焼時間を延ばすことができる。また、旋回流は旋回空気変流助燃板7の先端で剥離を起こし、流れを乱すことにより空気と燃焼ガスとの混合を促進する。
【0045】
また、旋回空気変流助燃板7は火炎が衝突するため、この火炎によって加熱され高温になる。この高温になった旋回空気変流助燃板7に燃焼ガスが直接触れたり、輻射熱を受けることにより燃焼が促進される。
【0046】
なお、空気噴射管6と旋回空気変流助燃板7とは3枚の板を断面三角形状になるように組み合わせて溶接することにより一体的に形成されているため製作が容易であり、品質の確保もし易い。
【0047】
運転中は、温度センサ81などにより、常に旋回燃焼式重油・廃油ストーブ1の安全を監視している。もし、各センサのいずれかにおいて異常が確認されると、ただちに警報手段9に通知され、警告灯91や警告ブザーにより異常を知らせることができる。
【0048】
燃焼後の燃焼ガスは排気ガスとして燃焼室21の上方に設けられた煙突24から外部に排出される。
【0049】
消火を行う際は、燃料タンク3の給油バルブ32を閉じて燃焼室21内への燃料の供給を止める。これにより、燃焼室21内に残っていた燃料が燃え尽きることにより消火される。そして、火炎検知センサが燃焼室21内の火炎を検知して消火されたか否かを判別することができる。なお、火炎センサにより火炎が検知されなくなったら空気供給機5を停止させて空気の供給を止め、運転を終了する。
【0050】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
1.旋回流の流れを適切に変化させることができ、燃料ガスと空気とを効果的に混合し、燃焼ガスの燃焼室21内での滞留時間を長くすることができる。
2.助燃構造を利用して燃焼ガスを効果的に加熱して燃焼を促進させることができる。
3.燃焼室21への燃料の過剰供給を防止することができる。
4.燃料供給管への火炎の逆流を防止することができる。
5.各種センサ8によって常に異常を検知し、警告手段9によって適切な動作を確保することができる。
【0051】
なお、本実施形態の旋回燃焼式重油・廃油ストーブ1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0052】
例えば、本実施形態では、空気噴射管6を横断面略三角形状に形成しているが、これに限る必要はなく、当該空気噴射管6の横断面形状を略楕円状に形成することも可能である。図7は空気噴射管6を横断面略楕円状とした場合の平面図である。この場合、噴射孔62は中心点を基点とする点対称位置に設けられ、旋回空気変流助燃板7は噴射孔62とは楕円の長軸または短軸の軸対称となる位置に設ければよい。このように噴射孔62が中心位置とは偏心しているため、燃焼室21内には旋回流が発生する。
【0053】
また、空気噴射管6を断面略円状にすることができる。この場合、噴射孔62を断面略円状の空気噴射管6の側面のどの位置に設けても空気の噴射方向を空気噴射管6の中心位置から偏心させることができない。したがって、このような場合は旋回空気変流助燃板7によって空気を偏心させることになる。具体的には、図8のように、旋回空気変流助燃板7を噴射孔62における法線と交叉させて、噴射孔62から噴射する空気を衝突させる位置に設ければよい。噴射した空気は旋回空気変流助燃板7に衝突して、流れ方向が変化され、かつその変化した流れが燃焼室21の内壁に衝突することにより旋回流を発生させることができる。また、図8に示すように空気噴射管6の中空部内には、横断面略十字形状の仕切体65が設けられている。この仕切体65により噴射孔62から噴射する空気の噴射角度を調整することが可能となる。
【0054】
また、本発明に係る燃焼室21は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0055】
例えば、噴射孔62から噴射した空気が衝突する燃焼室21の内側面に旋回方向に流れ方向を変化させる傾斜板や傾斜部26を設ければよい。このとき、噴射された空気は、図9に示すように、傾斜部26などに衝突して流れ方向が変化されて旋回流が発生する。したがって、噴射孔62の噴射方向と中心位置とを偏心させなくても旋回流を発生させることができる。
【0056】
また、本発明に係る旋回空気変流助燃板7は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、図10に示すように、複数枚の旋回空気変流助燃板7を空気噴射管6の軸方向に間隔を隔てて配設させてもよい。この場合、各旋回空気変流助燃板7を隔てる間隔に空気が通過して、乱れを促進させ、燃焼ガスと空気の混合の促進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る旋回燃焼式重油・廃油ストーブの実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明に係る旋回燃焼式重油・廃油ストーブの実施形態を示す平面図である。
【図3】本実施形態の空気噴射管および旋回空気変流助燃板を示す正面図である。
【図4】本実施形態の空気噴射管および旋回空気変流助燃板を示す平面図である。
【図5】本実施形態の旋回流の発生状況を示す模式図である。
【図6】本実施形態の旋回流の旋回状況を示す流線図である。
【図7】本実施形態の空気噴射管を横断面略楕円状とした場合の平面図である。
【図8】本実施形態の空気噴射管を横断面略円状とした場合の平面図である。
【図9】本実施形態の燃焼室の内側面に傾斜部を設けた場合の平面図である。
【図10】本実施形態の旋回空気変流助燃板を空気噴射管の軸方向に間隔を隔てて配設させた場合の平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 旋回燃焼式重油・廃油ストーブ
2 ストーブ本体
3 燃料タンク
4 燃料供給装置
5 空気供給機
6 空気噴射管
7 旋回空気変流助燃板
8 検知手段
9 警告手段
10 台車
11 遮熱板
12 燃料受皿
13 車輪
14 手押し部
21 燃焼室
22 助燃板
23 開閉蓋
24 煙突
25 吊下支持部
26 傾斜部
31 一次供給管
32 給油バルブ
41 燃料一時貯留体
42 燃料供給管
43 過剰供給燃料流出管
44 ホッパー
45 分岐管
46 供給出口
47 火炎逆流防止油泊まり部
48 供給燃料高さ調整部
61 吊下支持板
62 噴射孔
63 噴射ノズル
64 側縁部
65 仕切体
81 温度センサ
82 液面センサ
91 警告灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を有するストーブ本体と、
前記燃焼室に連結されて燃料を供給する燃料供給装置と、
前記燃焼室内に空気を供給する空気供給機と、
前記燃焼室内において前記空気供給機に連結されており、この空気供給機から供給される空気を前記燃焼室内に噴射するための噴射孔を備えた中空状の空気噴射管と、
前記空気噴射管の外周面に突出して設けられ、前記噴射孔から噴射されて前記燃焼室内を旋回する空気の流れを変え、かつ燃焼を助ける旋回空気変流助燃板とを
有することを特徴とする旋回燃焼式重油・廃油ストーブ。
【請求項2】
請求項1において、前記空気噴射管を横断面略多角形状に形成するとともに、前記旋回空気変流助燃板を前記空気噴射管の横断面略多角形状を構成する各側面の側縁部から延出させて構成したことを特徴とする旋回燃焼式重油・廃油ストーブ。
【請求項3】
請求項2において、前記空気噴射管を横断面略三角形状に形成するとともに、前記噴射孔を前記空気噴射管の各側縁部に沿って上下方向に複数個形成し、かつ、前記旋回空気変流助燃板を前記噴射孔が形成された側面に沿って前記側縁部から延出させて形成したことを特徴とする旋回燃焼式重油・廃油ストーブ。
【請求項4】
請求項2または3において、直線状の空気噴射ノズルを前記空気噴射管の下部に連結し、その噴射口を前記空気噴射管の側縁部下方に配置して前記燃焼室の内壁へ向けて空気を噴射することを特徴とする旋回燃焼式重油・廃油ストーブ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかにおいて、前記燃料供給装置は、
供給される燃料を一時的に貯留するとともに、この一時貯留した燃料を2方向に選択的に流出させる二股状の分岐管を備えた燃料一時貯留体を有し、前記分岐管の一方には、前記燃焼室に燃料を供給する燃料供給管が連結されており、前記分岐管の他方には、前記燃焼室に溜まった燃料の高さが所定の高さを超えた場合に燃料一時貯留体から流れる燃料の流出方向を切り替える過剰供給燃料流出管が連結されており、
前記燃料供給管の途中には、前記燃料を前記燃焼室内における供給出口よりも低い位置を経由させて火炎の逆流を防止する火炎逆流防止油溜まり部が形成されており、
前記過剰供給燃料流出管には、前記燃料を前記分岐管の分岐位置より高い位置を経由させて前記燃焼室に溜まる燃料の高さを調整する供給燃料高さ調整部が形成されていることを特徴とする旋回燃焼式重油・廃油ストーブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかにおいて、前記ストーブ本体の外壁またはその近傍の温度計測を行う温度センサと、前記過剰供給燃料流出管から流出された燃料を検知する液面センサと、前記温度センサまたは前記液面センサの少なくともいずれかが異常信号を取得すると警告を発する警告手段とを有することを特徴とする旋回燃焼式重油・廃油ストーブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−144938(P2009−144938A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320103(P2007−320103)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(391046229)株式会社ヒルコ (3)
【出願人】(507406312)株式会社ヒルココリア (1)
【Fターム(参考)】