説明

既設管のライニング工法及びライニング材用カラー

【課題】液状硬化性樹脂を含浸させた柔軟な樹脂吸収材からなる管状でつば付きのライニング材により既設管の一端の管口から既設管の内周面をライニングする工法で、既設管の管口の周縁部における隙間の開口をつばで完全に封止できる工法を提供する。
【解決手段】 ライニング材3の一端部を放射状に切り広げて複数の切片3aを形成し、ライニング材3を枝管2内に挿入する前に、液状硬化性樹脂を含浸させた柔軟な樹脂吸収材からなるつば4,4′と複数の切片3aとを重ねて枝管2の管口の周囲の面に圧接させた後、つば4,4′と切片3aの液状硬化性樹脂を硬化させることで、つば4,4′を枝管2の管口の周囲の面に接着して固定すると共に、切片3aに接着してライニング材3の一端部に一体的に結合する。こうすれば、つば4,4′が管口の周囲の面に全面的に密着し、上記隙間の開口を完全に封止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管などの既設管を更生するために既設管の内周面をライニング材によりライニング(内張り)する既設管のライニング工法、及びライニング材の一端部を保護するためにその一端部に固定されるライニング材用カラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の既設管のライニング工法として、下記の特許文献1には、液状硬化性樹脂を含浸させた管状(袋状)の柔軟な樹脂吸収材からなるライニング材を液状硬化性樹脂が未硬化な形態で既設管内に挿入し、空気や水などの圧力によりライニング材を既設管の内周面に圧接させ、既設管の内周面と同形状の管状になるようにして、硬化性樹脂を加熱し硬化させてライニング材を硬化させることにより、既設管の内周面をライニングする工法が記載されている。
【0003】
このようなライニング工法において、例えば、本管に交差する径が比較的小さな枝管に対して本管と交差する部分に開口している枝管の管口からライニングを施す場合、一端部につばを設けたライニング材を用い、そのつばを枝管の管口の周囲の本管内周面(以下、つば固定面という)に接着して固定していた。これは、ライニング材の一端部を管口に位置決めして固定するためと、枝管の管口の周縁部において枝管の内周とライニング材の外周との隙間の開口を封止して外部の地下水や雨水などの侵入を防止するためである。
【0004】
つばは、液状硬化性樹脂を含浸させた樹脂吸収材からなるが、従来のライニング工法では、ライニング材の本体部分と異なり、予め工場で含浸させた液状硬化性樹脂を硬化させて硬化物として作製し、ライニング材の一端部に一体的に結合した状態で工事現場に持ち込み、使用していた。
【0005】
つばをつば固定面に対して全面的に密着させて上記の封止を完全に行なうために、つばをつば固定面に対応した湾曲した形状にすると共に、ライニング材の一端部とつばのなす角度(ライニング材の一端部の軸方向とつばの面方向がなす角度)を本管と枝管の交差角度(枝管の管口部の軸方向とつば固定面とがなす角度)に合わせる必要がある。このため、ライニング工事の事前の調査により、本管と枝管の交差角度とつば固定面の形状(曲率など)を予め測定しておき、工場でのライニング材のつばの作製時に、つばの形状を測定した形状に合わせて硬化物として作製し、つばをライニング材の一端部に対して測定した交差角度をなすように結合していた。
【0006】
また、枝管をライニングした後に本管を枝管との交差部分を含めてライニングする場合、本管のライニング材で交差部分の枝管の管口が塞がれてしまうので、本管のライニング材において枝管の管口に対向する部分に穿孔機などで穴を形成することになるが、枝管のライニング材の端部とつばを穿孔機の刃から保護するため、ステンレスなどの金属からなるつば部を有する短い筒状のカラーを用い、予めカラーの本体の筒部を枝管ライニング材の一端部に嵌合させ、カラーのつば部をライニング材のつばの下面に密着させて接着によりカラーを固定している。このカラーの作製でも、カラーの筒部とつば部のなす角度(カラーの筒部の軸方向とカラーのつばの面方向のなす角度)を、上述した事前調査で測定した本管と枝管の交差角度に合わせて作製している。
【特許文献1】特公昭55−43890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したライニング工事の事前調査で、本管と枝管の交差角度とつば固定面の形状の測定を正確に行なえるとは限らない。特に、本管の径が小さくて人が本管に入って直接測定することができず、TVカメラ車などで間接的に測定する場合、正確な測定は困難である。
【0008】
これに対して従来では、ライニング材のつばが測定結果の形状に合わせた形状の硬化物として作製され、測定結果の交差角度と同じ角度でライニング材の一端部に結合された状態でライニング工事現場に提供されるので、測定の誤差が大きかった場合は、ライニング材のつばをつば固定面に対して全面的に密着させて固定することができなくなる。この場合、枝管の管口の周縁部において枝管内周とライニング材外周との隙間の開口をつばにより完全に封止することができなくなり、外部の地下水や雨水などの侵入を防止することができなくなる。
【0009】
また、前述したカラーをライニング材の一端部に固定する場合、カラーの本体の筒部とつば部のなす角度が測定結果の交差角度に固定されており、このカラーをライニング材の一端部とつばに固定してライニングを行なうと、ライニング材の一端部とつばのなす角度が更に測定結果の交差角度に固定されるので、この点からも、測定の誤差が大きい場合は、ライニング材のつばをつば固定面に対して全面的に密着させることができなくなる。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、上述した液状硬化性樹脂を含浸させた柔軟な樹脂吸収材からなる管状で一端部につばが結合されるライニング材を用いて、既設管の一端の管口から既設管の内周面をライニングする既設管のライニング工法であって、既設管の管口の周縁部における既設管内周とライニング材外周の隙間の開口を上記つばにより完全に封止することができる既設管のライニング工法、及びこの工法に用いて好適なライニング材用カラーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明(請求項1)は、
液状硬化性樹脂を含浸させた柔軟な樹脂吸収材からなる管状のライニング材を既設管の一端の管口から既設管内に挿入し、既設管の内周面に圧接させて液状硬化性樹脂を硬化させることにより既設管の内周面をライニングする既設管のライニング工法において、
ライニング材の一端部を放射状に切り広げて複数の切片を形成し、ライニング材を既設管内に挿入する前に、液状硬化性樹脂を含浸させた柔軟な樹脂吸収材からなるつばと前記複数の切片とを重ねて前記管口の周囲の面に圧接させた後、つばと切片の液状硬化性樹脂を硬化させることにより、つばを管口の周囲の面に接着して固定するとともに、前記切片に接着してライニング材の一端部に一体的に結合することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明(請求項5)は、
前記ライニング材の一端部に嵌合される短い筒部と、該筒部の一端部に形成され前記つばに重ねて固定されるつば部からなり、筒部のつば部側端部以外の部分がコイル状に形成され、該コイル状部分は弾性変形によってつば部に対する角度が可変であるライニング材用カラーを用い、
前記つばとライニング材の複数の切片とを重ねるときに、前記カラーの筒部のコイル状部分をライニング材の前記一端部に挿入させてカラーのつば部に前記つばと切片を重ねた後、コイル状部分をライニング材の前記一端部と共に前記管口内に挿入して、前記つばと切片とつば部を重ねたものを前記管口の周囲の面に圧接させ、その後、前記液状硬化性樹脂の硬化によりカラーのつば部がつばと切片に接着されるようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明(請求項1)によれば、つばを既設管の管口の周囲の面に対応する形状にすることができると共に、つばとライニング材の一端部のなす角度を既設管の管口部の軸方向と既設管の管口の周囲の面がなす交差角度に合わせることができるので、つばを既設管の管口の周囲の面に対して全面的に密着させて固定することができる。これにより、既設管の管口の周縁部における既設管内周とライニング材外周の隙間の開口をつばにより完全に封止することができ、外部の地下水や雨水などの侵入を確実に防止することができる。
【0014】
また、本発明(請求項5)によれば、カラーのコイル状部分をライニング材の一端部と共に既設管の管口内に挿入して、つばとライニング材の切片とカラーのつば部を重ねたものを既設管の管口の周囲の面に圧接させるときに、カラーのコイル状部分とつば部のなす角度が上記交差角度と合っていなければ、コイル状部分が管口部の内周面に押圧され弾性変形してコイル状部分のつば部に対する角度が変化し交差角度に合わされる。従って、ライニング材の一端部とつばのなす角度を上記交差角度に合わせることができ、つばを既設管の管口の周囲の面に対して全面的に密着させて固定し、上記の封止を完全に行なうことができる。そして、カラーによりライニング材の端部とつばを保護することができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付した図を参照して本発明の実施の形態を説明する。ここでは、図2及び図3に示すように、下水管などの既設管の本管1に対して略45度の交差角度で交差する枝管2の交差部分に開口する枝管2の管口から枝管2の内周面をライニングする場合の実施例を示す。本管1と枝管2は共に円管とする。なお、実施例のライニング工事の事前調査で、本管1と枝管2の交差角度、厳密には、枝管2の管口部の軸方向と、本管1の内周面において後述するつば4,4′が固定される枝管2の管口の周囲の面(以下でもつば固定面という)とがなす角度が測定され、また、つば固定面の形状(曲率など)及び管口の形状などが測定されるものとする。
【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例のライニング工事のために用いられるライニング材3と、その一端部に結合される2枚のつば4,4′の外観を示している。ライニング材3とつば4,4′は別体に形成され、後述のようにライニング工事現場で結合される。
【0017】
ライニング材3は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニールエステル樹脂、エポキシ樹脂などの液状硬化性樹脂が含浸された柔軟なシート状の樹脂吸収材(ポリエステル繊維などからなる不織布で構成)からなり、外径が枝管2の内径に対応した管状(袋状)に形成されており、図1では管状に示してあるが、ライニング工事現場には含浸した液状硬化性樹脂が未硬化で全体が柔軟な状態で帯状に畳んだ形態で提供される。詳しく図示していないが、ライニング材3の表面にはポリエチレンなどのプラスチックフィルムが貼り付けられている。
【0018】
このライニング材3を工事現場に持ち込む前に、工場において、後述のようにつば4,4′が結合されるライニング材3の一端部を図示のように放射状に切り広げて複数の切片3aを形成しておく。なお、この切片3aを形成する前に、ライニング材3の一端部をその軸方向に対して事前調査で測定された本管1と枝管2の交差角度に対応する角度傾斜した切断面で切断しておき、その上で一端部にライニング材3の長さ方向に沿った複数の切り込みを入れて放射状に広げて切片3aを形成する。また、ライニング材3の切片3aを形成した一端部の開口の縁の形状は、図1では単純な楕円形に示してあるが、実際には事前調査で測定される枝管2の管口の縁の形状に合致する湾曲した楕円形をなすように形成される。なお、ライニング材3の一端部の切断と切片3aの形成は、工事現場で行なうことも不可能ではないが、適切に行なうことは困難である。
【0019】
つば4,4′は、ライニング材3と同様に、液状硬化性樹脂が含浸された柔軟なシート状の樹脂吸収材からなり、中央に径がライニング材3の管形状にされたときの外径に対応する穴4a,4a′が形成された円形ないし楕円形に形成される。つば4,4′は図1では平坦に示してあるが、後述のように本管2の内周のつば固定面に固定された状態では、つば固定面の湾曲に従って矢印で示すように湾曲した形状とされる。このつば4,4′も含浸した液状硬化性樹脂が未硬化で全体が柔軟な状態で工事現場に提供される。
【0020】
次に、ライニング材3とつば4,4′を用いたライニング工事を説明する。
【0021】
ライニング材3は、これに空気圧ないし水圧を作用させるための圧力バッグ7(図2参照)に収納された状態で工事現場に提供されるが、図1に示すように、そのライニング材3の切片3aを形成した一端部をつば4′の穴4a′に通して、放射状に広げた複数の切片3aのそれぞれをつば4,4′の間に挟み込むようにして、つば4,4′と切片3aを上下に重ね、これを図2に示すように、管内作業ロボット5にとり付けられた管口アタッチメント6上にセットし、圧力バッグ7をアタッチメント6に接続する。
【0022】
管内作業ロボット5は、本管1内の作業状況などの画像を撮影する不図示のTVカメラを搭載しており、また、管口アタッチメント6を昇降する不図示の昇降機構も搭載している。管口アタッチメント6は、中央にライニング材3を通す不図示の穴を有した円形ないし楕円形のプレート状のもので、事前に測定されたつば固定面、すなわち本管1との交差部分に開口している枝管2の管口の周囲の本管2の内周面に対応した形状に形成されており、つば固定面に対応した曲率で湾曲して形成されている。
【0023】
TVカメラで撮影される本管1内の画像により枝管2の管口の位置を確認しながら遠隔操作によって不図示のウインチで管内作業ロボット5を移動させ、アタッチメント6上のつば4,4′の穴4a,4a′が枝管2の管口の真下になる位置まで移動させる。
【0024】
次に、上記昇降機構を駆動させて管口アタッチメント6を矢印で示すように上昇させ、ライニング材3の切片3aを挟んで重ねられたつば4,4′を枝管2の管口の周囲のつば固定面に圧接させる。
【0025】
次に、圧力バッグ7内に空気圧または水圧をかけてライニング材3に作用させる。この圧力によりライニング材3は切片3a側の端部から順次表裏を反転されて枝管2の管口から枝管2内に挿入される。そして、ライニング材3の全長にわたる反転挿入が終了したら、さらにライニング材3内に空気圧を加圧してライニング材3を枝管2の内周面に圧接させ、その内周面の形状に対応した管形状とした状態で、ライニング材3内に温水を注入するなどしてライニング材3に含浸された液状硬化性樹脂を加熱し、硬化させてライニング材3を上記管形状に硬化させる。
【0026】
このときの熱により、つば4,4′とライニング材3の切片3aに含浸された液状硬化性樹脂も加熱され、硬化する。このとき硬化する液状硬化性樹脂により、つば4がつば固定面に接着されて固定される。また、つば4,4′が切片3aを挟んで互いに接着されて一体化されると共に、切片3aに接着されることにより、ライニング材3の切片3a側の端部に一体的に結合される。なお、管口アタッチメント6に不図示のヒーターを付設しておき、これによりつば4,4′と切片3aの液状硬化性樹脂を加熱して硬化させるようにしてもよい。このように液状硬化性樹脂の加熱、硬化を行なった後、ライニング材3の切片3a側と反対側の端部の仕上げなどを行なって、枝管2のライニング工事を終了する。この状態の断面図を図3として示してある。
【0027】
このような本実施例のライニング工法によれば、液状硬化性樹脂が未硬化な状態で、柔軟なつば4,4′が柔軟な切片3aを挟んでつば固定面に圧接され密着すると共に、柔軟なライニング材3が枝管2の内周面に圧接され密着している状態、すなわちつば4,4′とライニング材3の切片3a側端部のなす角度が本管1と枝管2の交差角度に合致させられている状態から、液状硬化性樹脂の加熱、硬化により、つば4,4′とライニング材3がそのまま硬化するので、硬化後のつば4,4′とライニング材3の端部がなす角度もそのままで本管1と枝管2の交差角度に正確に合致する。また、つば4,4′は、液状硬化性樹脂が未硬化で自身が柔軟な状態で、つば固定面に圧接されてつば固定面に対応する形状、すなわちつば固定面に全面的に密着し得る形状にされた状態から、液状硬化性樹脂の加熱、硬化により、そのままの形状で硬化するので、つば固定面に対応する形状の硬化物となる。
【0028】
したがって、事前調査による本管1と枝管2の交差角度とつば固定面の形状(曲率など)の測定結果に多少の誤差があっても、つば4,4′をつば固定面に全面的に密着させて固定することができ、それによって枝管2の管口の周縁部における枝管2の内周とライニング材3の外周の隙間の開口をつば4,4′により完全に封止することができ、外部の地下水や雨水などの侵入を確実に防止することができる。
【0029】
なお、ライニング材3を枝管2に反転挿入する前に、つば固定面に圧接させたつば4,4′と切片3aに含浸された液状硬化性樹脂を加熱して硬化させてもよい。ただし、つば4,4′とライニング材3の端部のなす角度を本管1と枝管2の交差角度に正確に合致させるためには、上述したようにライニング材3の反転挿入後で枝管3の内周面への圧接後にライニング材3の液状硬化性樹脂と同時に加熱して硬化させたほうが好ましい。
【実施例2】
【0030】
上述したライニング工事において、枝管2のライニング後に本管1のライニングを枝管2との交差部分を含めて行なうことになっている場合、枝管2のライニング時にライニング材3のつば4,4′側の端部に先述したライニング材用のカラーを固定する。
【0031】
その場合、本発明に係るカラーとして、図4(a),(b)に側面と上面を示すカラー8を用いる。カラー8は、全体がステンレスなどの金属から形成され、後述のようにライニング材3のつば4,4′側の端部に嵌合される短い筒部81と、この筒部81の一端部(後端部)の外周に形成され後述のようにつば4′の下面に重ねて固定されるつば部82からなる。筒部81は、事前調査で測定された枝管2の管口の形状に対応した形状で、本実施例では楕円形状の筒として形成されており、その外径(長軸と短軸の長さ)は、ライニング材3が枝管2の内周面に圧接されて管形状とされたときの枝管2の管口におけるライニング材3の開口の楕円形の内径(長軸と短軸の長さ)と同じか、それより僅かに小さなものとする。つば部82は、本実施例では楕円形状で、事前調査で測定されたつば固定面の形状に対応した形状で、測定されたつば固定面の曲率と同じ曲率で湾曲して形成されている。
【0032】
そして、筒部81においてつば部82側の端部以外の符号81aで示す部分、すなわちつば部82より先端側の大部分がコイル状に形成され、このコイル状部分81aは例えば一点鎖線で示すように弾性変形させることによってつば部82に対する角度(コイル状部分81aの軸方向とつば部82の面方向がなす角度)が可変となっている。なお、その角度は、コイル状部分81aに外力が加わっていない初期状態では、図示のように垂直の90度になっている。ただし、この初期状態の角度は90度に限るものではない。
【0033】
前述したライニング工事の最初に、図1のようにつば4,4′とライニング材3の切片3aを重ねて図2のように管口アタッチメント6上にセットするときにカラー8を一番下に重ねて一緒にセットする。そのとき、まずつば4′の穴4a′にカラー8の筒部81の先端側(コイル状部分81a側)を通させてつば4′をつば部82上に重ね、ライニング材3の切片3a側端部を畳んだ状態で筒部81の後端側から先端側に通し、広げて筒部81のつば部82上の高さに相当する分だけ表裏を反転させて折り返すことにより、筒部81のコイル状部分81a側をライニング材3の切片3a側端部に少し挿入させ、切片3aのそれぞれをつば部82上のつば4′上に重ねる。そして、つば4の穴4aに、ライニング材3の端部の折り返し部分が被せられた筒部81の先端部側を通させてつば4をつば4′とその上の切片3a上に重ねる。
【0034】
その後、先述のように枝管2の管口の真下の位置で管口アタッチメント6を上昇させ、上記ライニング材3の折り返された一端部の部分と共に筒部81のコイル状部分81aを枝管2の管口内に挿入し、管口アタッチメント6上のつば4,4′、切片3a、カラー8のつば部82を重ねたものを管口周囲のつば固定面に圧接させる。このとき、管口内に挿入されるコイル状部分81aは、傾斜している枝管2の内周面によって図3及び図4中で右方向に押圧されて一点鎖線で示すように右方向に弾性変形し、つば部82の面方向に対するコイル状部分81aの軸方向の角度が本管1と枝管2の交差角度に合わせられるので、コイル状部分81aをライニング材3の端部と共に枝管3の管口内にスムーズに挿入させることができる。
【0035】
このような挿入、圧接後に、前述のように空気圧ないし水圧でライニング材3を枝管2内に反転挿入し、枝管2の内周面に圧接させ、温水などでライニング材3とつば4,4′の液状硬化性樹脂を硬化させることによりライニングを行なう。このとき硬化する液状硬化性樹脂により、カラー8のつば部82がつば4′の下面に接着され、筒部81のコイル状部分81aがライニング材3の端部に接着されることにより、カラー8が固定される。
【0036】
このような本実施例によれば、カラー8のコイル状部分81aのつば部82に対する角度が可変であって、本管1と枝管2の交差角度に合わせることができるので、これをライニング材3のつば4,4′側の端部に取り付けても、ライニング材3の端部とつば4,4′のなす角度がカラーにより固定されず、本管1と枝管2の交差角度に合わせることができ、つば4,4′をつば固定面に全面的に密着させて固定することができる。従って、枝管2の管口の周縁部における枝管2の内周とライニング材3の外周の隙間の開口をつば4,4′により完全に封止することができ、外部の地下水や雨水などの侵入を確実に防止することができる。そして、枝管2のライニング後の本管1のライニング工事において、本管1のライニング材で枝管2の管口に対向する部分に穴を形成するときに、カラー8により、枝管2のライニング材の端部とつばを穿孔機の刃から保護することができる。
【実施例3】
【0037】
実施例1において、先述のように、つば4,4′とライニング材3の切片3aを重ねてつば固定面に圧接させ、液状硬化性樹脂を硬化させた状態では、隣り合う切片3aどうしの間に隙間があるので、ライニング材3の切片3a側の端部の開口とつば4,4′の穴4a,4a′との位置ずれにより、つば4,4′とライニング材3を一体的に硬化させたものにおいて、前記隙間により小さな穴が形成されてしまう可能性がある。その可能性は少ないが、万全を期す場合は、図5に示す短管状部材9を用いる。
【0038】
短管状部材9は、ライニング材3と同様の液状硬化性樹脂を含浸させた柔軟な樹脂吸収材からなり、径がライニング材3と同じで、本管1と枝管2との事前に測定された交差角度に対応する角度傾斜した短い管状に形成され、また同様に一端側が放射状に切り広げられて複数の切片9aが形成されている。短管状部材9の切片9aを形成した側の開口は、ライニング材3の切片3aを形成した端部の開口と同形状とし、詳しく図示していないが、つば固定面に対応して湾曲した楕円形状に形成される。また、短管状部材9の切片9aはライニング材3の切片3aと同数だが、放射状の配置の位相がずれており、切片3aと互い違いになって、隣り合う切片3aどうしの間の隙間のそれぞれを埋めるように切片3aに重ねることができるようになっている。
【0039】
このような短管状部材9を用い、先述のようにライニング工事の最初につば4,4′とライニング材3の切片3aを重ねて管口アタッチメント6上にセットするときに、図5に示すように、短管状部材9をつば4とライニング材3の切片3a側の端部との間に挿入し、短管状部材9の切片9aのそれぞれをライニング材3の隣り合う切片3aどうしの間の隙間のそれぞれを埋めるように切片3aのそれぞれに重ねる。そして、つば4の穴4aに短管状部材9の管部を通してつば4を切片9aのそれぞれの上に重ね、つば4′を切片3aのそれぞれの下に重ねる。
【0040】
その後、前述のように、これらを重ねたものを枝管2の管口の周囲のつば固定面に圧接させた後、ライニング材3を枝管2内に反転挿入して枝管2の内周面に圧接させ、ライニング材3、つば4,4′及び短管状部材9のそれぞれに含浸させた液状硬化性樹脂を硬化させてライニングを行う。このとき硬化する液状硬化性樹脂により切片3aと9aが互いに接着されると共につば4,4′に接着され、一体的に結合される。
【0041】
このような本実施例によれば、ライニング材3の隣り合う切片3aどうしの間の隙間のそれぞれが短管状部材9の切片9aのそれぞれにより埋められるので、ライニング材3の切片3a側の端部の開口とつば4,4′の穴4a,4a′との位置ずれが多少あっても、ライニング材3、つば4,4′及び短管状部材9を一体的に硬化させたものにおいて、前記隙間による穴が形成されることはない。従って、つば4,4′による枝管2の管口の周縁部における封止を万全に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例1において枝管のライニングに用いるライニング材の端部とつばの形状と重ね方を示す斜視図である。
【図2】実施例1において枝管の管口からのライニング材の反転挿入を開始した状態を示す本管と枝管内の側面図である。
【図3】実施例1において枝管のライニングが終了した状態を示す断面図である。
【図4】実施例2に用いられるライニング材用のカラーの構造を示す側面図(a)と上面図(b)である。
【図5】実施例3において枝管のライニングに用いるライニング材の端部、つば、及び短管状部材の形状と重ね方を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 本管
2 枝管
3 ライニング材
3a 切片
4,4′ つば
5 管内作業ロボット
6 管口アタッチメント
7 圧力バッグ
8 ライニング材用のカラー
81 筒部
81a コイル状部分
82 つば部
9 短管状部材
9a 切片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状硬化性樹脂を含浸させた柔軟な樹脂吸収材からなる管状のライニング材を既設管の一端の管口から既設管内に挿入し、既設管の内周面に圧接させて液状硬化性樹脂を硬化させることにより既設管の内周面をライニングする既設管のライニング工法において、
ライニング材の一端部を放射状に切り広げて複数の切片を形成し、ライニング材を既設管内に挿入する前に、液状硬化性樹脂を含浸させた柔軟な樹脂吸収材からなるつばと前記複数の切片とを重ねて前記管口の周囲の面に圧接させた後、つばと切片の液状硬化性樹脂を硬化させることにより、つばを管口の周囲の面に接着して固定するとともに、前記切片に接着してライニング材の一端部に一体的に結合することを特徴とする既設管のライニング工法。
【請求項2】
前記つばと切片の液状硬化性樹脂の硬化は、前記ライニング材を既設管内に挿入し既設管の内周面に圧接させた後でライニング材の液状硬化性樹脂の硬化とほぼ同時に行なうことを特徴とする請求項1に記載の既設管のライニング工法。
【請求項3】
前記つばを2枚として前記切片を挟み込むように重ねて前記管口の周囲の面に圧接させた後、前記液状硬化性樹脂の硬化により2枚を接着して一体化させることを特徴とする請求項1または2に記載の既設管のライニング工法。
【請求項4】
液状硬化性樹脂を含浸させた柔軟な樹脂吸収材からなり、径が前記ライニング材と略同じ短い管状で一端側を放射状に切り広げて複数の切片を形成した短管状部材を用い、
前記ライニング材を既設管内に挿入する前に、前記短管状部材の複数の切片をライニング材の隣り合う切片どうしの間の隙間のそれぞれを埋めるようにライニング材の複数の切片に重ねたものを前記つばと重ねて前記管口の周囲の面に圧接させた後、短管状部材の切片とライニング材の切片とつばの液状硬化性樹脂を硬化させることにより、それぞれの切片とつばを接着することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の既設管のライニング工法。
【請求項5】
前記ライニング材の一端部に嵌合される短い筒部と、該筒部の一端部に形成され前記つばに重ねて固定されるつば部からなり、筒部のつば部側端部以外の部分がコイル状に形成され、該コイル状部分は弾性変形によってつば部に対する角度が可変であるライニング材用カラーを用い、
前記つばとライニング材の複数の切片とを重ねるときに、前記カラーの筒部のコイル状部分をライニング材の前記一端部に挿入させてカラーのつば部に前記つばと切片を重ねた後、コイル状部分をライニング材の前記一端部と共に前記管口内に挿入して、前記つばと切片とつば部を重ねたものを前記管口の周囲の面に圧接させ、その後、前記液状硬化性樹脂の硬化によりカラーのつば部がつばと切片に接着されるようにすることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の既設管のライニング工法。
【請求項6】
前記ライニング材の一端部に嵌合される短い筒部と、該筒部の一端部に形成され前記つばに重ねて固定されるつば部からなり、筒部のつば部側端部以外の部分がコイル状に形成され、該コイル状部分は弾性変形によってつば部に対する角度が可変であることを特徴とするライニング材用カラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−21374(P2006−21374A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200224(P2004−200224)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【Fターム(参考)】