説明

既設管内面の塗装方法および塗装方法

【課題】比較的簡単な構成によって既設管の全体にわたってその内面に塗膜を安定して形成することのできる既設管の塗装方法および塗装装置を提供する
【解決手段】既設管内面の塗装装置1は、対象となる既設管P内に気流を生成し、生成された気流によって塗料Cを搬送して既設管Pの内面に塗膜を形成する。既設管内面の塗装装置1は、既設管Pよりも小径に形成され、既設管Pの一端に取り付けられる接続管3と、既設管Pの他端に接続され、空気を吸引して既設管P内および接続管3内に気流を生成する吸引装置7と、接続管3のいずれか部分に接続され、所定量の塗料Cを蓄える共に蓄えた塗料Cを接続管3内に供給可能な塗料タンク9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数階建ての建造物における排水管などの既設管の内面を塗装する既設管内面の塗装方法および塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既設管の内面を塗装する方法として、例えば特許文献1に記載の塗装方法が知られている。特許文献1に記載の塗装方法は、既設管の内部に圧送用流体を流入させ、流入させた圧送用流体によって液状塗料を搬送させて管内壁面に塗膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−95375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の方法では、既設管の全体にわたって塗膜を安定して形成することが難しいという課題がある。すなわち、既設管の内部に流入させる圧送用流体の流速が不足すると、塗料を既設管の末端にまで安定して搬送することができず、特に既設管の末端付近に形成される塗膜がばらつくおそれがある。一方、既設管の内部に流入させる圧送用流体の流速が高めれば塗料を既設管の末端にまで搬送することはできるものの、この場合には特に既設管の始端付近における塗料の搬送が不安定となり易く、既設管の始端付近に形成される塗膜がばらつくおそれがある。このため、既設管の全体にわたってほぼ均一となるような塗膜を形成することは困難であった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、比較的簡単な構成によって既設管の全体にわたってその内面に塗膜を安定して形成することのできる既設管の塗装方法および塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、対象となる既設管内に気流を生成し、生成された気流によって塗料を搬送して前記既設管の内面に塗膜を形成する既設管内面の塗装方法は、前記既設管の一端に、該既設管よりも小径の接続管を取り付けるステップと、前記既設管の他端側から空気を吸引して前記既設管内および前記接続管内に気流を生成するステップと、前記接続管内に塗料を供給するステップと、を含む。
【0007】
本発明の他の側面によると、対象となる既設管内に気流を生成し、生成された気流によって塗料を搬送して前記既設管の内面に塗膜を形成する既設管内面の塗装装置は、前記既設管よりも小径に形成され、前記既設管の一端に取り付けられる接続管と、前記既設管の他端に接続され、空気を吸引して前記既設管内および前記接続管内に気流を生成する吸引装置と、前記接続管のいずれか部分に接続され、所定量の塗料を蓄える共に蓄えた塗料を前記接続管内に供給可能な塗料タンクと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記既設管の塗装方法および塗装装置によれば、対象となる既設管が屈曲部を有する場合や比較的長い場合であっても、既設管の全体にわたってその内面に安定して塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による既設管内面の塗装装置の概略構成を示す図である。
【図2】既設管の一端に取り付けられる接続管の一例を示す図である。
【図3】実施形態による既設管内面の塗装方法が適用される複数階建ての建造物の排水管構造の一例を模式的に示す図である。
【図4】実施形態による既設管内面の塗装方法を説明する図である。
【図5】実施形態による既設管内面の塗装方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態による既設管内面の塗装装置の概略構成を示している。本実施形態による既設管内面の塗装装置は、塗装対象となる既設管内に気流を生成し、生成された気流によって塗料を搬送して既設管の内面に所定厚さの塗膜を形成する。既設管内面の塗装装置1は、塗装対象となる既設管Pの一端に取り付けられた接続管3と、既設管Pの他端に塗料回収装置5を介して接続された吸引装置7と、所定量の塗料Cを蓄えた塗料タンク9と、を備える。ここで、塗装対象となる既設管Pは、特に制限されないが、例えば、マンション(集合住宅)、事務所ビル、産業用施設などの複数階建ての建造物の排水管が該当する。
【0011】
接続管3は、既設管Pに比べて内径(流路断面積)が小さい接続管本体部31と、接続管本体部31と既設管Pの一端とを接続する接続部33と、を含む。
接続管本体部31の接続部33側と反対側は二つに分岐しており、その一方が空気を接続管本体部31の内部に導入するための空気導入路31aを構成し、他方が塗料Cを接続管3の内部に導入するための塗料導入路31bを構成している。但し、このような構成に限るものではなく、接続管本体部31がその内部に空気を導入する空気導入部および塗料Cを導入する塗料導入部を有していればよい。例えば、接続管本体部31自体が塗料導入路を構成し、この接続管本体部31に空気導入孔を形成してもよい。ここで、接続管本体部31は、少なくともその一部、好ましくは、接続部33に近接する部分(例えば、図1中の屈曲部34)が可撓性を有する材質で形成されているのが好ましい。このようにすると、既設管Pの一端の外方のスペース等に制限がある場合であっても、既設管Pの一端に接続管3を容易に取り付けることができる。
【0012】
接続部33は、図2に示すように、接続管本体部31側から既設管Pに向かって内径が徐々に大きくなる拡径部33aを有しており、この拡径部33aによって接続管3から既設管Pへと空気等が滑らかに流れるようになっている。ここで、図では省略しているが、接続管3の内面の少なくとも一部、好ましくは、接続部33の拡径部33aの内面には、一つ以上のらせん状の溝またはフィンが形成されており、接続管3を通過する気流に旋回流を発生させるようになっている。
【0013】
塗料回収装置5は、気流によって搬送される塗料、換言すれば、既設管P内面に塗布されなかった余剰塗料を分離して回収する装置である。空気のみを下流側に流すことのできる装置であればよく、その構成等は問わない。
吸引装置7は、例えば吸引ポンプであり、所定の吸引圧で空気を吸引して接続管3内および既設管P内に気流を生成する。吸引装置7は、既設管Pの径や長さに応じて吸引圧を調整することが可能である。なお、本実施形態では、塗料回収装置5と吸引装置7とを別々に設けているが、これに限るものではなく、例えば、塗料回収装置5および吸引装置7としての機能を有する吸引車を用いて既設管内面の塗装装置を構成してもよい。
【0014】
塗料タンク9には、塗料Cとして樹脂塗料、例えば、エポキシ樹脂塗料やウレタン樹脂塗料が蓄えられている。但し、これらに限るものではなく、吸引装置7の吸引動作により生成された気流によって既設管P内を搬送することができる(液体)塗料であればよい。塗料タンク9は、開閉可能な塗料供給口(図示省略)が形成された供給部9aを有しており、この供給部9aに接続管3(接続管本体部31)の塗料導入路31bが接続される。但し、このような接続形態は一例であり、接続管3と塗料タンク9とは、少なくとも吸引装置7の吸引動作時に、塗料タンク9内の塗料Cを接続管3内に供給できるように接続されていればよい。例えば、吸引装置7を動作させた後に、作業者によって塗料導入路31bを塗料タンク9内に配置させ、吸引装置7の吸引動作によって塗料タンク9内の塗料Cを接続管本体部31内に取り込むようにしてもよいし、塗料供給路を介して塗料導入路31と塗料タンク9とが接続される構成としてもよい。前者の場合には、吸引装置7の吸引動作によって塗料導入路31の端部が塗料タンク9の底面等に吸い付かないように、塗料導入路31の端部を塗料タンク9の底面等に面接触しないように形成する(例えば、塗料導入路31の端部を斜めにカットする)のが好ましく、後者の場合には、塗料供給路に塗料タンク9から接続管3へと供給される塗料の量を調整できる流量調整バルブを設けるのが好ましい。
【0015】
次に、以上のような構成を有する既設管内面の塗装装置1の作用を説明する。
吸引装置7の吸引動作によって空気導入路31aから接続管3内に空気が導入され、接続管3内および既設管P内には、図1において矢印で示すように、空気導入路31aの端部から吸引装置7へと向かう気流が生成される。この状態、すなわち、接続管3内および既設管P内に気流が生成された後に、塗料タンク9の塗料供給口が開かれると、塗料タンク9内の塗料Cが接続管3内へと供給される(導入される)。接続管3内に供給された塗料は、吸引装置7の吸引動作によって生成された気流により接続管3内を搬送され、その後、既設管Pに導入されて既設管P内を搬送される。気流によって搬送された塗料は、既設管P内のいずれかの場所においてその内面に付着し、また、付着後に気流によって内面を伝わって下流側へと移動する。これにより、既設管Pの内面に塗膜が形成される。そして、塗料の供給開始から既設管Pに応じて設定された所定時間が経過すると、塗料タンク9の塗料供給口を閉じて塗料Cの供給を終了し、次いで吸引装置7を停止して吸引動作を終了して既設管P内面の塗装が完了する。ここで、供給された塗料のうち、既設管Pの内面に付着しなかった(塗布されなかった)余剰塗料は、塗料回収装置5によって回収される。回収された余剰塗料は、図示しない回収タンクに収容され、または、図示しない還流路を介して塗料タンク9へと戻される。
【0016】
塗料を既設管P内で気流搬送して既設管P内面の塗装を行う場合、既設管P内における気流の速度が低いと、既設管P内に供給された塗料を気流中に一様に分散させることができず、既設管Pの内面全体にわたって安定した塗膜を形成することができない。また、長い距離を有する既設管Pの末端にまで塗料を搬送することができないおそれもある。
一方、塗料を既設管Pの末端にまで搬送できるように既設管P内における気流の速度を高めると、塗料供給直後の既設管Pの内面(すなわち、既設管Pの始端近傍の内面)に十分な塗膜を形成することが困難になる。
【0017】
本実施形態では、既設管Pの一端に接続管3が取り付けられており、塗料Cは、接続管3を介して既設管P内へと供給される。ここで、接続管3(接続管本体部31)の内径(流路断面積)は、既設管Pの内径(流路断面積)よりも小さくなっており、既設管P内の気流の速度よりも接続管3内の気流の速度が高くなる。このため、吸引装置7の動作条件が一定であっても、接続管3内において塗料Cを気流中に十分に分散させてから既設管P内へと導入することができる。また、塗料Cが分散された気流は、既設管P内に導入された直後に速度が低下するので、既設管Pの始端付近の内面に塗料Cが付着することなく通過してしまうことが抑制される。これにより、屈曲部を有する既設管Pや全長が長い既設管Pであっても、既設管Pの全体にわたってその内面に安定して塗膜を形成できる。
【0018】
また、本実施形態において、接続管3は、接続管本体部31側から既設管Pに向かって内径(流路断面積)が徐々に大きくなる拡径部33aを有しており、塗料Cが分散された気流は、接続管3から既設管Pへと広がりながら滑らかに移動し、接続管3の内面に付着した塗料が拡径部33aの内面を伝わって既設管P内へと移動することを容易にする。これにより、接続管3を取り付けたことに伴う塗料Cの消費量の増加を抑制しつつ、既設管Pの始端付近の内面にも塗料Cを確実に付着させることができる。
【0019】
さらに、接続管3の内面の少なくとも一部、好ましくは、接続部33の拡径部33aの内面には、一つ以上のらせん状の溝またはフィンが形成されているので、既設管Pの少なくとも始端部分には既設管Pの内面に沿った旋回流が生成される。これにより、既設管Pの始端付近の内面により効果的に塗膜を形成することができる。
【0020】
次に、本発明の実施形態による既設管内面の塗装方法について説明する。本実施形態による塗装方法も、上述した塗装装置と同様、塗装対象となる既設管内に気流を生成し、生成された気流によって塗料を搬送して既設管の内面に所定厚さの塗膜を形成する。ここでは、複数階建ての建造物の排水管、特に、器具排水管、排水横枝管および排水立て主管を塗装対象とする場合について説明する。なお、上述した塗装装置と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0021】
図3は、本実施形態による既設管内面の塗装方法が適用される複数階建ての建造物の排水管構造の一例を模式的に示した図である。
図3において、複数階建て(ここでは5階建て)の建造物の排水管は、各階にそれぞれ配管された各階専用の排水横枝管11a〜11eと、各排水横枝管11a〜11eが接続すると共に鉛直方向に延びる排水立て主管13と、排水立て主管13の下端が接続すると共にほぼ水平方向に延びる排水横主管15と、を含む。最上階(5階)用の排水横枝管11aには、5階の各居住部などに設置された衛生器具等の排水口17a〜17cから延びる器具排水管19a〜19cが接続され、4階用の排水横枝管11bには、4階の各住居部などに設置された衛生器具等の排水口17d〜17fからのびる器具排水管19d〜19fが接続される(3階〜1階用の排水横枝管11c〜11eについても同様である)。
【0022】
排水横枝管11a〜11eは、各階の居住部などからの排水をまとめて排水立て主管13へと流し、排水立て主管13は、各排水横枝管11からの排水を集めて下方へと流す。そして、排水立て主管13からの排水、すなわち、建造物の排水は、排水横主管15を介して図示しない下水管等の排水設備へと導かれる。ここで、通常は、器具排水管19、排水横枝管11、排水立て主管13、排水横主管14の順に内径(流路断面積)が大きくなっている。
【0023】
図4、図5は、器具排水管19a〜19o、排水横枝管11a〜11eおよび排水立て主管13の内面の塗装方法を説明するための図である。
図4に示すように、まず、排水立て主管13の下流端近傍に塗料回収装置5を介して吸引装置7を接続する。ここで、排水立て主管13の下流端近傍とは、排水立て主管13の下流端である排水横主管15との接続部およびその近傍を意味し、排水立て主管13の最下階(1階)専用の排水横枝管11eとの接続部から排水横主管15との接続部までの位置を含む。排水立て主管13に更生用の開口部等が形成されている場合には、この開口部等を利用して塗料回収装置5および吸引装置7を接続するようにしてもよい。また、上述したように、塗料回収装置5および吸引装置7に代えて、これらの機能を有する吸引車を用いてもよい。
そして、排水立て主管13の下流端近傍に吸引装置7を接続した後、以下の手順にしたがって器具排水管19a〜19o、排水横枝管11a〜11eおよび排水立て主管13の内面の塗装を行う。
【0024】
(1)手順1
図4に示すように、吸引装置7の接続位置(排水立て主管13の下流端)から最も離れた位置、すなわち、最上階(5階)において排水立て主管13から最も離れた位置にある排水口17aまたは器具排水管19aの端部に接続管3を取り付け、残りの排水口17b〜17oおよび排水立て主管13の上端部を例えばゴム製の栓部材21によって閉鎖する。また、接続管3の塗料導入路31bを塗料タンク9の塗料供給口9aに接続する。ここで、接続管3の接続管本体部31は、器具排水管19よりも小径に、すなわち、流路断面積が小さく形成されている。
この状態において吸引装置7を動作させて接続管3、器具排水管19a、排水横枝管11aおよび排水立て主管13の内部に気流を生成し、その後、塗料タンク9の塗料供給口を開くことによって接続管3内に塗料Cを供給する。塗料Cの供給開始前に、排水口17aから排水立て主管13の下流端までの長さ等に応じて吸引装置7の吸引圧を調整してもよいことはもちろんである。そして、塗料Cの供給開始から第1所定時間が経過すると、塗料供給口を閉じて、その後、吸引装置7の動作を停止させる。なお、第1所定時間は、少なくとも器具排水管19aおよび排水横枝管11aの一部(器具排水管19aとの接続位置から器具排水管19bとの接続位置まで)の塗装を行うことができる時間としてあらかじめ設定されたものである。
【0025】
(2)手順2
次に、図示省略するが、吸引装置7の接続位置から2番目に離れた位置、すなわち、最上階(5階)において排水立て主管13から2番目に離れた位置にある排水口17bまたは器具排水管19bの端部に接続管3を取り付け、残りの排水口17a,17c〜17oおよび排水立て主管13の上流端を栓部材21によって閉鎖する。この状態において、上記手順1と同様、吸引装置7を動作させて接続管3、器具排水管19b、排水横枝管11aおよび排水立て主管13の内部に気流を生成し、その後、塗料タンク9の塗料供給口を開くことによって接続管3内に塗料Cを供給する。そして、塗料Cの供給開始から第2所定時間が経過したら、塗料供給口を閉じ、その後、吸引装置7の動作を停止させる。ここで、少なくとも第2所定時間は器具排水管19bおよび排水横枝管11aの一部(器具排水管19bとの接続位置から器具排水管19cとの接続位置まで)の塗装を行うことができる時間としてあらかじめ設定されたものである。
【0026】
(3)手順3〜手順15
以下、吸引装置7の接続位置から離れている順に手順1,2と同様の処理を行う。そして、手順15においては、吸引装置7の接続位置から最も近い位置、すなわち、最下階(1階)において排水立て主管13に最も近い位置にある排水口17oまたは器具排水管19oに接続管3を取り付け、残りの排水口17a〜17nおよび排水立て主管13の上流端を栓部材31によって閉鎖し、この状態において吸引装置7を動作させて接続管3、器具排水管19b、排水横枝管11aおよび排水立て主管13の内部に気流を生成し、その後、塗料タンク9の塗料供給口を開くことによって接続管3内に塗料Cを供給する。そして、塗料Cの供給開始から第3所定時間が経過したら、塗料供給口を閉じ、その後、吸引装置7の動作を停止させる。これにより、器具排水管19a〜19oの内面および排水横枝管11a〜11eの内面の塗装が完了する。なお、塗料Cの供給時間は、各手順で異なる時間としてもよいが、同一階においては同じ時間とすることができる。
【0027】
(4)手順16
上記手順1〜15によって排水立て主管13の内面の塗装もある程度行われるが、それだけでは、塗装むらが発生してしまう場合が多い。そこで、本手順によって改めて排水立て主管13の内面の塗装を行う。すなわち、図5に示すように、排水立て主管13の上流端に接続管3を取り付け、全ての排水口17a〜17oを栓部材21によって閉鎖する。なお、ここでは接続管3を手順1〜15と共通使用しているが、排水立て主管13専用の接続管を別に用意してもよい。そして、この状態において吸引装置7を動作させて接続管3および排水立て主管13の内部に気流を生成し、その後、塗料タンク9の塗料供給口を開くことによって接続管3内に塗料Cを供給する。そして、塗料Cの供給開始から第4所定時間が経過したら、塗料供給口を閉じ、その後、吸引装置7の動作を停止させる。
【0028】
接続管3、器具排水管19a〜19o、排水横枝管11a〜11eおよび排水立て主管13の中で接続管3の内径(流路断面積)が最も小さい。このため、接続管3内の気流の速度が最も高くなり、塗料Cは、この接続管3内に供給される。これにより、塗料Cの気流中への分散を効果的に行うことができ、各器具排水管19a〜19o(手順1〜15)および排水立て主管13(手順16)には塗料Cが十分に分散された気流が導入される。また、接続管3に対して器具排水管19a〜19oおよび排水立て主管13の内径が大きいため、各器具排水管19a〜19oよび排水立て主管13内に導入された直後に気流の速度が低下する。これにより、各器具排水管19a〜19oおよび排水立て主管13の始端付近の内面から安定して塗膜を形成することができると共に、接続管3から離れた排水横枝管11a〜11eの内面や排水立て主管13の下流端側の内面についても安定して塗膜を形成できる。
【0029】
また、接続管3は、接続管本体部31側から内径(流路断面積)が徐々に大きくなる拡径部33aを有しており、塗料Cが分散された気流は、接続管3から各器具排水管19a〜19oまたは排水立て主管13へと広がりながら滑らかに移動し、また、接続管本体部31の内面に付着した塗料が拡径部33aの内面を伝わって各器具排水管19a〜19oまたは排水立て主管13内に移動することを容易にする。さらに、接続管3の内面の少なくとも一部、好ましくは、接続部33の拡径部33aの内面には、一つ以上のらせん状の溝またはフィンが形成されているので、各器具排水管19a〜19oおよび排水立て主管13の少なくとも始端部分にはその内面に沿った旋回流が生成される。これにより、気流中に塗料を十分に分散させて塗料をより遠くまで搬送することを可能としつつ、各器具排水管19a〜19oおよび排水立て主管13の始端付近の内面にも効果的に塗料を付着させて塗膜を形成することができ、この結果、各器具排水管19a〜19o、各排水横枝管11a〜11eおよび排水立て主管13の全体にわたってその内面にほぼ均一な塗膜を形成することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、器具排水管19a〜19oの内面および排水横枝管11a〜11eの内面の塗装を行ってから(手順1〜15)、排水立て主管13の内面の塗装を行うようにしているが(手順16)、必要に応じて排水立て主管13の内面の塗装(手順16)を先に行うようにしてもよい。また、手順1〜15によって排水立て主管13の内面の塗装を十分に行える場合には、手順16を省略してもよい。
【符号の説明】
【0031】
P…既設管、1…既設管内面の塗装装置、3…接続管、5…塗料回収装置、7…吸引装置、9…塗料タンク、11a〜11e…排水横枝管、13…排水立て主管、15…排水横主管、17a〜17o…排水口、19a〜19o…器具排水管、21…栓部材、31…接続管本体部、31a…空気導入路、31b…塗料導入路、33…接続部、33a…拡径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる既設管内に気流を生成し、生成された気流によって塗料を搬送して該既設管の内面に塗膜を形成する既設管内面の塗装方法であって、
前記既設管の一端に、該既設管よりも小径の接続管を取り付けるステップと、
前記既設管の他端側から空気を吸引して前記既設管内および前記接続管内に気流を生成するステップと、
前記接続管内に塗料を供給するステップと、
を含む既設管内面の塗装方法。
【請求項2】
前記接続管は、
前記既設管よりも小径の接続管本体部と、
前記接続管本体部と前記既設管とを接続し、前記接続管本体部側から前記既設管に向かって内径が徐々に大きくなる拡径部を有する接続部と、
を備える請求項1に記載の既設管内面の塗装方法。
【請求項3】
前記接続管本体部は、前記塗料をその内部に導入する塗料導入部および空気をその内部に導入する空気導入部を有する請求項2に記載の既設管内面の塗装方法。
【請求項4】
前記既設管本体部の少なくとも一部が可撓性を有する請求項2または請求項3に記載の既設管内面の塗装方法。
【請求項5】
前記接続管の内面の少なくとも一部に、該接続管内を通過する気流に旋回流を発生させる旋回流生成部が設けられている請求項1〜4のいずれか1つに記載の既設管内面の塗装方法。
【請求項6】
前記接続管内に塗料を供給するステップは、前記既設管の他端側からの空気吸引によって前記塗料を前記接続管内に取り込むことを含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の既設管内面の塗装方法。
【請求項7】
対象となる既設管内に気流を生成し、生成された気流によって塗料を搬送して該既設管内面に塗膜を形成する既設管内面の塗装装置であって、
前記既設管よりも小径に形成され、前記既設管の一端に取り付けられる接続管と、
前記既設管の他端に接続され、空気を吸引して前記既設管内および前記接続管内に気流を生成する吸引装置と、
前記接続管のいずれかの部分に接続され、所定量の塗料を蓄えると共に蓄えた塗料を前記接続管内に供給可能な塗料タンクと、
を備える既設管内面の塗装装置。
【請求項8】
前記接続管は、
前記既設管よりも小径の接続管本体部と、
前記接続管本体部と前記既設管とを接続し、前記接続管本体部側から前記既設管に向かって内径が徐々に大きくなる拡径部を有する接続部と、
を備える請求項7に記載の既設管内面の塗装装置。
【請求項9】
前記接続管本体部は、前記塗料をその内部に導入する塗料導入部および空気をその内部に導入する空気導入部を有し、
前記塗料タンクは、前記塗料導入部に接続されている請求項8に記載の既設管内面の塗装装置。
【請求項10】
前記接続管本体の少なくとも一部が可撓性を有する請求項8または請求項9に記載の既設管内面の塗装装置。
【請求項11】
前記接続管の内面の少なくとも一部に、該接続管内を通過する気流に旋回流を発生させる旋回流生成部が設けられている請求項7〜10のいずれか1つに記載の既設管内面の塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−121001(P2011−121001A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280628(P2009−280628)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(506206694)いずみテクノス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】