説明

日焼け止め化粧料

【課題】UV−A領域に高い紫外線防御効果を維持しつつ、べたつき感、きしみ感を軽減することにより、優れた使用感が持続し、耐水性にも優れる日焼け止め化粧料を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体、(B)ポリメチルシルセスキオキサン及び(C)20℃で固形状又はペースト状を呈し、UV−A領域に最大吸収波長を有する紫外線吸収剤を含有する日焼け止め化粧料。
【化1】


(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6アルキル基を示し、aは0〜50の整数、bは0〜50の整数、mは5〜1000の整数、nは2〜100の整数、x1、x2は1〜6の整数を示す。但し、a=b=0ではない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め化粧料に関し、更に詳しくは、高い紫外線防御効果を維持しつつ、べたつき感、きしみ感が軽減された優れた使用感が持続し、耐水性にも優れる日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日焼け止め化粧料に期待される紫外線防御効果としては、主にサンバーンを起こすと考えられているUV−B領域(290〜320nm)の紫外線に対するものであった。ところが近年UV−A領域(320〜400nm)の紫外線は皮膚を黒化させるのとともに皮膚の深部にまで到達し、皮膚の老化を促進し、皮膚ガンの原因になりうると考えられている。このように、日焼け止め化粧料にはUV−B領域だけでなくUV−A領域にも高い紫外線防御効果が求められている。
【0003】
日焼け止め化粧料には、ベンゾフェノン系化合物、パラアミノ安息香酸化合物、ケイ皮酸系化合物等の紫外線吸収剤や、酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、微粒子酸化亜鉛等の紫外線散乱剤が配合されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
さらに、UV−A領域の紫外線吸収剤として4−tert−ブチル−4−メトキシジベンゾイルメタンやジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルが知られており、メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルと組み合わせて紫外線吸収効果の持続性を向上させた皮膚外用剤が開発されている。しかしながら、UV−A領域の紫外線吸収剤の多くは常温で固形またはペースト状であり、これらを含んだ日焼け止め化粧料はきしみ感、べたつき感を生じる場合があり、使用感の向上が望まれていた。
【0005】
このような紫外線吸収剤のべたつきを軽減するために様々な試みがなされており、例えば特定のシリコーン誘導体と組み合わせてべたつきを改善することが提案されている(特許文献4参照)。また、一般に日焼け止め化粧料には、汗などにより落ちないよう耐水性が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−025028号公報
【特許文献2】特開平9−227350号公報
【特許文献3】特開2000−273011号公報
【特許文献4】特開2007−131612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、UV−A領域に高い紫外線防御効果を維持しつつ、べたつき感、きしみ感を軽減することにより、優れた使用感が持続し、耐水性にも優れる日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、UV−A領域の紫外線吸収剤に、特定一般式で表される直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体とポリメチルシルセスキオキサンを組み合わせて日焼け止め化粧料とすることにより、紫外線吸収剤によるべたつき感やきしみ感が顕著に軽減され、優れた使用感が持続し、耐水性にも優れる日焼け止め化粧料が得られることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は、(A)下記一般式(1)で表される直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体、(
B)ポリメチルシルセスキオキサン及び(C)20℃で固形状又はペースト状を呈し、UV−A領域に最大吸収波長を有する紫外線吸収剤を含有する日焼け止め化粧料にある。
【0009】
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6アルキル基を示し、aは0〜50の整数、bは0〜50の整数、mは5〜1000の整数、nは2〜100の整数、x1、x2は1〜6の整数を示す。但し、a=b=0ではない。)
【発明の効果】
【0010】
本願発明に係る日焼け止め化粧料は、高い紫外線防御効果を有すると同時に、UV−A紫外線吸収剤によるべたつき感、きしみ感が軽減された優れた使用感が持続し、さらに耐水性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳説する。本発明に用いる(A)直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体は、上記一般式(1)で表されるものである。一般式(1)におけるaやb、mやn、x1、x2を変えることにより、本発明の(A)成分は、様々な親水性、親油性のものとなり得るが、本発明では、HLB値が1〜3の直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体が、きしみ感の低減において特に優れるため、好ましく用いられる。尚、本発明における直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体のHLB値は、Soap & Chemical Specialities、No. 6、50〜51(1955)及び化学工業日報、5631号に記載されたポリエーテル変性ポリシロキサンのHLB値測定方法により測定されるものである。
【0012】
本発明の直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体の性状は、常温で流動性のある液状から軟質ゴム状を示し、25℃において0.0005〜50m/sの動粘度を示すものである。具体的には、ポリオキシエチレン・ブチレン・ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブチレン・ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリシリコーン−13などが挙げられ、その市販品の例としては、東レ・ダウコーニング社製のABN SILWETシリーズ(FZ−2203、FZ−2207、FZ−2222、FZ−2231、FZ−2232、FZ−2234、FZ−2233、FZ−2235、FZ−2236、FZ−2237、FZ−2238、FZ−2239、FZ−2250等)が挙げられる。この中でも特に25℃において0.1〜5m/sの動粘度を示す直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体がきしみ感のなさの面で優れており、代表的な市販品の例として東レ・ダウコーニング社製のFZ−2250が挙げられる。
【0013】
本発明の日焼け止め化粧料における(A)直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体の配合量は、日焼け止め化粧料の総量を基準として0.01〜5.0質量%(以下、単に%と略す。)が好ましく、特に好ましくは0.1〜2.0%である。直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体の配合量がこれらの範囲内であれば、きしみ感やべたつき感がより効果的に抑制された化粧料が
得られる。
【0014】
本発明において(A)直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体は、シリコーン骨格を有することから肌に滑り性を与えべたつきのなさに影響し、ポリエーテル基に由来する保湿性からきしみ感の軽減に影響すると考えられる。しかしながら同様にシリコーン骨格、ポリエーテル基を有するペンダント型ポリエーテル変性ポリシロキサン共重合体では本発明の効果を発揮できない。
【0015】
本発明に用いられる(B)ポリメチルシルセスキオキサンは、メチルトリメトキシシロキサンをアルカリ水溶液中で乳化重合させた球状粉体であり、具体的には、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のトスパールシリーズ(トスパール145A等)が挙げられる。
【0016】
本発明の日焼け止め化粧料におけるポリメチルシルセスキオキサンの配合量は、日焼け止め化粧料の総量を基準として0.1〜8.0%が好ましく、特に好ましくは0.2〜4.0%である。ポリメチルシルセスキオキサンの配合量がこれらの範囲内であれば、優れた使用感の持続性が向上し、きしみ感の抑制効果に特に優れる。
【0017】
本発明において(B)ポリメチルシルセスキオキサンは、シリコーン骨格を有する球状粉体であることから肌に滑り性を与え、べたつきのなさに影響されると考えられる。しかしながら、同様にシリコーン骨格を有する球状粉体である(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーでは本発明の効果を発揮できない。
【0018】
本発明に用いられる(C)20℃で固形状又はペースト状を呈し、UV−A領域に最大吸収波長を有する紫外線吸収剤としては、具体的には4−tert−ブチル−4−メトキシジベンゾイルメタン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、メチレンビズベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどが挙げられ、これらは市販されている。これらの中でもジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルがきしみ感のなさで最も優れる。尚、本発明でいう固体状又はペースト状とは、米国材料試験協会(ASTM)の標準試験法D43590−90による定義に従う。
【0019】
本発明の日焼け止め化粧料における20℃で固形状又はペースト状を呈し、UV−A領域に最大吸収波長を有する紫外線吸収剤の配合量は、日焼け止め化粧料の総量を基準として0.1〜5.0%が好ましく、特に好ましくは0.3〜3.0%である。UV−A紫外線吸収剤の配合量がこれらの範囲内であれば、より優れた紫外線防御効果が発揮され、使用感についても特に優れたものとなる。
【0020】
本発明の日焼け止め化粧料には、上記の必須成分に加えて必要に応じて上記以外の紫外線吸収剤、上記以外の油性成分、乳化剤(界面活性剤)、紫外線散乱剤、保湿剤、粉体、香料、防腐剤、植物エキス、フッ素化合物、樹脂、粘剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等を配合することができる。
【0021】
本発明の日焼け止め化粧料とは、紫外線防御機能を付与した化粧料であり、例えばサンスクリーン剤、ファンデーション、化粧下地等が挙げられる。
【実施例】
【0022】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0023】
<官能特性評価試験>
官能特性評価試験は、評価試料を顔面に塗布した時の感触(べたつき感、きしみ感)について、10名の専門判定員が以下の評価基準に従って評価点をつけ、その平均点に従って、4.0以上を◎、3.0以上4.0未満を○、2.0以上3.0未満を△、2.0未満を×とした。また、塗布後5時間経過後、同様に感触(べたつき感、きしみ感)を評価した。
【0024】
(評価基準)
5:非常に好ましい。
4:好ましい。
3:どちらともいえない。
2:好ましくない。
1:非常に好ましくない。
【0025】
<紫外線防御効果>
評価試料を2mg/cmの割合で、石英硝子上に張り付けた樹脂テープ上に塗布し、SPFアナライザー(Labsphere社、UV−1000S)を用いて紫外線防御能を測定した。下記比較例1の日焼け止め化粧料を比較対照とし、以下の基準に従って紫外線防御能を評価した。
【0026】
(評価基準)
○:比較例1よりUV−A領域の紫外線防御能が優れる。
△:比較例1とUV−A領域の紫外線防御能が同等。
×:比較例1よりUV−A領域の紫外線防御能が劣る。
【0027】
<耐水性試験>
10名の被験者に評価試料を顔面に塗布してもらい、温度30℃、湿度70%に調節された部屋で1時間安静に過ごしてもらった。専門判定員が被験者の肌状態を観察し、評価試料の汗による落ちを以下の基準に従って評価した。
【0028】
(評価基準)
○:落ちはほとんど観察されない。
△:若干の落ちが観察される。
×:落ちが観察される。
【0029】
実施例1〜3、比較例1〜6(サンスクリーン)
表1に示した処方の日焼け止め化粧料(サンスクリーン)を常法により作製し、それらを評価試料として、前記各試験を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0030】
(表1)

【0031】
結果に示されるように、本発明の実施例は、紫外線防御効果に優れ、べたつき感、きしみ感がなく、またそれが持続し、耐水性にも優れていた。一方、いずれかの必須成分を欠いた比較例は、紫外線防御効果、使用感、耐水性のいずれかの点で劣ることがわかる。
【0032】
実施例4(化粧下地)
原 料 名 配合量(質量%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. 直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン 2.0
・メチルポリシロキサン共重合体(注1)
2. ポリメチルシルセスキオキサン(注7) 4.0
3. ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1.0
4. ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジン 0.2
プロピオン酸2−エチルヘキシル
5. パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 7.5
6. オクトクリレン 1.3
7. ジメチルポリシロキサン(注8) 2.0
8. メチルフェニルポリシロキサン(注9) 2.0
9. シリコーン処理酸化亜鉛(*) 10.0
10. ミリスチン酸オクチルドデシル 2.0
11. シクロメチコン(注10) 20.0
12. イソステアリン酸ソルビタン 1.0
13. (ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー(注11) 1.0
14. ビタミンE 0.02
15. グリセリン 2.0
16. 1,3−ブチレングリコール 1.0
17. エタノール 8.0
18. 精製水 残 部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
注7:トスパール2000B(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
注8:L−45(10cs)(東レ・ダウコーニング社製)
注9:SH−556(東レ・ダウコーニング社製)
注10:VS−7158(東レ・ダウコーニング社製)
注11:KSG−15(信越化学工業社製)
*:酸化亜鉛に対し5%のメチルハイドロジェンポリシロキサンにて表面処理
【0033】
上記組成の日焼け止め化粧料(化粧下地)を作製して評価したところ、紫外線防御効果、使用感、耐水性の全ての点において優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、高い紫外線防御効果を維持しつつ、べたつき感、きしみ感が軽減された優れた使用感が持続する、耐水性にも優れた日焼け止め化粧料を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される直鎖共重合型ポリエーテル・アルキレン・メチルポリシロキサン共重合体、(B)ポリメチルシルセスキオキサン及び(C)20℃で固形状又はペースト状を呈し、UV−A領域に最大吸収波長を有する紫外線吸収剤を含有する日焼け止め化粧料。
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6アルキル基を示し、aは0〜50の整数、bは0〜50の整数、mは5〜1000の整数、nは2〜100の整数、x1、x2は1〜6の整数を示す。但し、a=b=0ではない。)

【公開番号】特開2010−120914(P2010−120914A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298808(P2008−298808)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】