昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品
【課題】 複数の長尺体を束ねる場合であっても、隙間なく強力に束ねることができる昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品を提供する。
【解決手段】 昆虫忌避剤又は殺虫剤が含有された樹脂を帯状に成型し、長尺体に巻きつけることにより昆虫が対象物に進入するのを防止する昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品であって、帯状に形成された複数の帯状片が結合されてなる帯状体と、該帯状片の長手方向の一方の端部に設けられた係止爪と、該帯状片に複数形成され、該係止爪を係止可能な孔と、を備えた昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品により解決する。
【解決手段】 昆虫忌避剤又は殺虫剤が含有された樹脂を帯状に成型し、長尺体に巻きつけることにより昆虫が対象物に進入するのを防止する昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品であって、帯状に形成された複数の帯状片が結合されてなる帯状体と、該帯状片の長手方向の一方の端部に設けられた係止爪と、該帯状片に複数形成され、該係止爪を係止可能な孔と、を備えた昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品により解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品に関し、昆虫から保護すべき対象体に対して適用される樹脂製品に関する。なお、本発明において、「昆虫」とは、アリやゴキブリ等のほか、クモ、ムカデ等の節足動物並びにこれらに類する害虫等が該当する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機のような外部設置型の機器にアリやゴキブリ等の昆虫が侵入し問題となっている。これらの昆虫は、コード等を伝い、機器の間の隙間を通路として機器内へ侵入することが多い。
【0003】
餌もないはずの外部設置型の機器に昆虫が集まってくる理由は明らかになっていない点も多い。しかしながら、信号機の制御装置等の内部は雨風の影響を受けず、冬でも一定の温度が保持されている。更に、外敵から身を守ることもできる。そのため、昆虫にとって快適で安全な環境であると考えられる。
【0004】
樹木やケーブル等を伝って果実や機器内に進入する昆虫を防止するために、種々の防御策が講じられている。例えば、2枚のテープ状シート基材に防虫防除薬剤を所定間隔で挟持固定し、テープシートの片面に粘着性をもたせて樹木等の植物に装着可能としたもの(特許文献1)や、弾性変形可能な弾性シートと金属製の保護部材とを積層してなる帯状シートを構成し、ケーブル等に螺旋状に巻きつけるもの(特許文献2)などがある。
【特許文献1】特開平3−10632平号公報
【特許文献2】特開2003−199478公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、シート基材の一方の面に両面テープ等の粘着剤を用いたり、バンド等の固定具でシート基材を別途固定したりするなど、別の部材を必要としていた。かかる場合、粘着剤の粘着力が低下すると、樹木とシート基材との間に隙間が生じ、昆虫等の侵入を許容してしまったり、更に粘着力の低下が進行すると、樹木から脱落して防虫忌避部品として本来の機能を達成できなくなるという問題があった。バンド等の固定具を用いて巻きつける場合は、テープ状のシート基材を巻きつけた後、シート基材が落ちないように固定具で固定するため、装着する場所によっては取り付け作業を行う者の負担が大きくなるという問題があった。また、バンド等の固定具は、樹木等に巻きつけた後、余ったバンドの部分が外側にはみ出し、邪魔になることがあった。
【0006】
一方、弾性変形可能な弾性シートをケーブル等に螺旋状に巻きつけることにより装着するものは上記の問題はやや改善されるが、複数のケーブルを束ねる場合、弾性シート自体さほど強い緊締力を有するものではない。そのため、他のケーブルとの間に隙間を生じ、その隙間を通って昆虫が進入してくる可能性があった。
【0007】
従って、本発明は、複数の長尺体を束ねる場合であっても、隙間なく強力に束ねることができる昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、昆虫忌避剤又は殺虫剤が含有された樹脂を帯状に成型し、長尺体に巻きつけることにより昆虫が対象物に進入するのを防止する昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品であって、帯状に形成された複数の帯状片が結合されてなる帯状体と、該帯状片の長手方向の一方の端部に設けられた係止爪と、該帯状片に複数形成され、該係止爪を係止可能な孔と、を備えた昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品を提供するものである。
【0009】
このような構成により、長尺体に対し、隙間なく相当の緊締力を持って装着することができる。また、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品自体が係止爪と孔からなる固定部を備えているため、別部材で本体を固定するなどの煩雑な作業を要することなく、容易に長尺体に装着することができる。
【0010】
上記発明の好ましい形態は以下の通りである。前記帯状部は、各帯状片が部分的に分離可能に形成されてなることが好ましい。これにより、一つの昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品で複数の長尺体に装着することが可能となり、しかも、隙間を生じることなく装着することが可能となる。
【0011】
前記帯状体は、各帯状片との間にスリットを形成してなることが好ましい。これにより、各帯状片を連結する連結部を切断するだけで各帯状片を部分的に分離することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、帯状に形成された複数の帯状片が、部分的に分離可能に構成されてなるため、ケーブル等の長尺体を複数本束ねる場合であっても一本ずつ巻きつけることが可能となる。その結果、昆虫忌避剤又は殺虫剤を効果的に及ぼすことができ、ケーブル等の長尺体を伝って進入しようとする昆虫を効果的に防除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ更に詳細に説明する。図1〜図10は、本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1をそれぞれ示したものである。図1は昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の表面を示した斜視図であり、図2は昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の裏面を示した斜視図である。
【0014】
図3は、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の上面図であり、図4は、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の底面図であり、図5は、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の側面図であり、図6は、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の正面図である。
【0015】
また、図7は、図3のA−A断面図であり、図8は、図3のB−B断面図であり、図9は、図4のCで囲んだ部分の部分拡大図であり、図10は、図5のDで囲んだ部分の部分拡大図である。
【0016】
図1〜図5に示すように、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1は、帯状に形成された2つの帯状片10及び12が結合部28,30及び32を介して幅方向に結合されて帯状体14を構成している。この帯状片10及び12には、それぞれ略長方形の孔16が等間隔で複数個形成されている。孔16の数に特に制限はないが、孔16の数を多くするほど、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を長尺体に装着する際に、より細かく長尺体の直径に対応することが可能となり好ましい。
【0017】
なお、本実施形態において、「長尺体」とは、例えば、電線、配管、厨房機器の脚部、搬送ワゴンの脚部、キャスターの上部等をいう。
【0018】
図5に示すように、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1は、側面から見ると、撓み変形可能な程度の厚みで形成されている。昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の厚みは、長尺体に装着した際に破断しない程度の引張り強さを考慮して適宜設定される。
【0019】
図6、図7及び図10に示すように、帯状片10及び12の一方の端部には孔16に挿入可能な係止爪18が突設されている。図10に示すように、係止爪18には返し部18aが形成されている。この返し部18aは、図8に示す孔16に係止爪18を挿入した後、容易に係止爪18が孔16から外れないようにするためのものである。
【0020】
また、図4、図9及び図10に示すように、係止爪18の近傍には、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着した状態から取り外しを容易にするための凸部が形成されている。
【0021】
さらに、図2、図8及び図10に示すように、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の裏面には、等間隔に突起が複数個形成され、その突起の間の空間に溝22が形成されている。この溝22によって、帯状体14の湾曲を容易にするためのものである。
【0022】
図1〜図4に示すように、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1には、2つの帯状片10及び12との間に、2つのスリット24及び26が形成されている。このスリット24及び26は、本実施形態においては、係止爪18及び凸部20が形成されている側とは反対側の端部側に形成されている。
【0023】
本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1は、このままの状態で使用することもできるが、結合部のうち、帯状片10及び12の端部に近い位置に形成された結合部28及び30は、ニッパ等で切断することができる。
【0024】
図8に、結合部28の断面を示した図3のB−B断面図を示す。図8に示すように、各帯状片10及び12を連結する結合部28は、切断が可能となるように短い長さで形成されている。
【0025】
次に、昆虫忌避剤又は殺虫剤について説明する。昆虫忌避剤又は殺虫剤としては、昆虫の除去活性を有する薬剤であり、昆虫忌避活性を有する化合物、殺傷昆虫活性を有する化合物、昆虫の摂食阻害活性、昆虫の成長コントロール活性を有する化合物等を挙げることができる。
【0026】
具体的には、ピレスロイド系化合物、カーバメート系化合物、有機リン系化合物及びこれらの異性体、誘導体、類縁体その他昆虫の成長をコントロールする活性を有する化合物等を挙げることができる。
【0027】
また、かかる昆虫忌避剤又は殺虫剤が含有される部品を構成する樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂の少なくとも1種の樹脂が選択される。図5に示すように、本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1は、薄く、略扁平形状に形成されているため、これらの樹脂を用いることにより、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1に、長尺体を束ねる程度の強度を備えた可撓性を付与することができる。
【0028】
さらに、この樹脂に対して昆虫忌避剤又は殺虫剤を溶解保持し、徐放性を付与する化合物を含めることがより好ましい。昆虫忌避剤又は殺虫剤を溶解保持し、徐放性を付与する化合物としては、例えば、スルホンアミド誘導体、スルホン酸エステル誘導体、カルボン酸アミド誘導体、カルボン酸エステル誘導体より選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
【0029】
このように、徐放性を付与する化合物を樹脂に含有させることにより、樹脂製品から上記昆虫忌避剤又は殺虫剤を長期間にわたり放出することが可能となる。なお、本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の昆虫の忌避又は殺虫効果は約10年間持続させることが可能である。
【0030】
以上の昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の成形は、射出成形等の公知の成形方法により成形することができる。
【0031】
次に、本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の使用方法について説明する。図11及び図12は、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の使用方法を説明するための図である。図11及び図12においては、2本のコード100及び102に本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着する例を示している。
【0032】
2本のコード100及び102を束ねる場合は、図1に示す結合部28を切断し、帯状片10及び12の一部を予め分離しておく。そして、図11に示すように、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の裏面を用いて、先ず、帯状片10の端部からコード100に巻きつけていき、次に、帯状片12の端部からコード102に巻きつけていく。結合部30までコード100及び102を別々に巻きつけた後は、コード100及び102に帯状片10及び12を一緒に巻いていく。
【0033】
帯状片10及び12でコード100及び102を巻いた後、帯状体14の端部に形成された係止爪18を、最も近接する孔(例えば、図12における16a)に挿入する。これにより、係止爪18が孔16により係止され、簡易な手法ながら、相当の緊締力をもってコード100及び102に昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着することができる。
【0034】
更に、帯状片10及び12の端部からコード100及び102に巻きつけた後、係止爪18を孔16に係止するため、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着した後は、従来の固定バンドのように、余ったバンドが外側に突出する部分がない。即ち、従来の固定バンドが有する欠点を解消することができる。
【0035】
なお、図12の状態からコード100及び102から昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を取り外すときは、凸部20をつまみ、孔16aから係止爪18を引き抜くことにより係止状態が解除され、コード100及び102から昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を取り外すことができる。
【0036】
なお、帯状片10及び12を分離する手段として、本実施形態においてはスリット22及び24を形成し、結合部28又は30を切断することにより行った例を示したが、これに限定されず、例えば、帯状片10及び12の間にミシン線等、簡便に切断することが可能な切り取り線を形成し、これを切断することにより帯状片10及び12の一部を分離することも可能である。
【0037】
また、本実施形態においては、幅方向に2つの帯状片10及び12を結合した例を示したが、束ねる必要がある長尺体の数に応じて適宜増やすことも可能である。
【0038】
また、別に昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品を準備し、その帯状体に形成されている孔に昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の係止爪18を挿入し、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品同士を長さ方向に連結することができる。これにより、長尺体の径が単体の昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の長さよりも長くなった場合でも対応することが可能となる。なお、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1自身の長さを適宜設定することができるのはいうまでもない。
【0039】
なお、これまでは昆虫忌避剤又は殺虫剤を含有した樹脂製品について説明したが、昆虫忌避材を含有していなくても、本発明に係る樹脂製品の形状の特性を利用して、複数の長尺体を束ねるための樹脂製品として利用することもできる。即ち、樹脂を帯状に成型し、長尺体に巻きつけることが可能な樹脂製品であって、帯状に形成された複数の帯状片が部分的に分離可能に結合されてなる帯状体と、該帯状片の長手方向の一方の端部に設けられた係止爪と、該帯状片に複数形成され、該係止爪を係止可能な孔と、を備えた樹脂製品により、複数の長尺体を相当の緊締力をもって束ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の表面を示した斜視図である。
【図2】昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の裏面を示した斜視図である。
【図3】昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の上面図である。
【図4】昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の底面図である。
【図5】昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の側面図である。
【図6】昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の正面図である。
【図7】図3のA−A断面図である。
【図8】図3のB−B断面図である。
【図9】図4のCで囲んだ部分の部分拡大図である。
【図10】図5のDで囲んだ部分の部分拡大図である。
【図11】2本のコード100及び102に本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着する例を示す図である。
【図12】2本のコード100及び102に本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着する例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品
10及び12 帯状片
14 帯状体
16 孔
18 係止爪
20 凸部
22 溝
24及び26 スリット
28,30及び32 結合部
【技術分野】
【0001】
本発明は昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品に関し、昆虫から保護すべき対象体に対して適用される樹脂製品に関する。なお、本発明において、「昆虫」とは、アリやゴキブリ等のほか、クモ、ムカデ等の節足動物並びにこれらに類する害虫等が該当する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機のような外部設置型の機器にアリやゴキブリ等の昆虫が侵入し問題となっている。これらの昆虫は、コード等を伝い、機器の間の隙間を通路として機器内へ侵入することが多い。
【0003】
餌もないはずの外部設置型の機器に昆虫が集まってくる理由は明らかになっていない点も多い。しかしながら、信号機の制御装置等の内部は雨風の影響を受けず、冬でも一定の温度が保持されている。更に、外敵から身を守ることもできる。そのため、昆虫にとって快適で安全な環境であると考えられる。
【0004】
樹木やケーブル等を伝って果実や機器内に進入する昆虫を防止するために、種々の防御策が講じられている。例えば、2枚のテープ状シート基材に防虫防除薬剤を所定間隔で挟持固定し、テープシートの片面に粘着性をもたせて樹木等の植物に装着可能としたもの(特許文献1)や、弾性変形可能な弾性シートと金属製の保護部材とを積層してなる帯状シートを構成し、ケーブル等に螺旋状に巻きつけるもの(特許文献2)などがある。
【特許文献1】特開平3−10632平号公報
【特許文献2】特開2003−199478公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、シート基材の一方の面に両面テープ等の粘着剤を用いたり、バンド等の固定具でシート基材を別途固定したりするなど、別の部材を必要としていた。かかる場合、粘着剤の粘着力が低下すると、樹木とシート基材との間に隙間が生じ、昆虫等の侵入を許容してしまったり、更に粘着力の低下が進行すると、樹木から脱落して防虫忌避部品として本来の機能を達成できなくなるという問題があった。バンド等の固定具を用いて巻きつける場合は、テープ状のシート基材を巻きつけた後、シート基材が落ちないように固定具で固定するため、装着する場所によっては取り付け作業を行う者の負担が大きくなるという問題があった。また、バンド等の固定具は、樹木等に巻きつけた後、余ったバンドの部分が外側にはみ出し、邪魔になることがあった。
【0006】
一方、弾性変形可能な弾性シートをケーブル等に螺旋状に巻きつけることにより装着するものは上記の問題はやや改善されるが、複数のケーブルを束ねる場合、弾性シート自体さほど強い緊締力を有するものではない。そのため、他のケーブルとの間に隙間を生じ、その隙間を通って昆虫が進入してくる可能性があった。
【0007】
従って、本発明は、複数の長尺体を束ねる場合であっても、隙間なく強力に束ねることができる昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、昆虫忌避剤又は殺虫剤が含有された樹脂を帯状に成型し、長尺体に巻きつけることにより昆虫が対象物に進入するのを防止する昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品であって、帯状に形成された複数の帯状片が結合されてなる帯状体と、該帯状片の長手方向の一方の端部に設けられた係止爪と、該帯状片に複数形成され、該係止爪を係止可能な孔と、を備えた昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品を提供するものである。
【0009】
このような構成により、長尺体に対し、隙間なく相当の緊締力を持って装着することができる。また、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品自体が係止爪と孔からなる固定部を備えているため、別部材で本体を固定するなどの煩雑な作業を要することなく、容易に長尺体に装着することができる。
【0010】
上記発明の好ましい形態は以下の通りである。前記帯状部は、各帯状片が部分的に分離可能に形成されてなることが好ましい。これにより、一つの昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品で複数の長尺体に装着することが可能となり、しかも、隙間を生じることなく装着することが可能となる。
【0011】
前記帯状体は、各帯状片との間にスリットを形成してなることが好ましい。これにより、各帯状片を連結する連結部を切断するだけで各帯状片を部分的に分離することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、帯状に形成された複数の帯状片が、部分的に分離可能に構成されてなるため、ケーブル等の長尺体を複数本束ねる場合であっても一本ずつ巻きつけることが可能となる。その結果、昆虫忌避剤又は殺虫剤を効果的に及ぼすことができ、ケーブル等の長尺体を伝って進入しようとする昆虫を効果的に防除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ更に詳細に説明する。図1〜図10は、本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1をそれぞれ示したものである。図1は昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の表面を示した斜視図であり、図2は昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の裏面を示した斜視図である。
【0014】
図3は、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の上面図であり、図4は、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の底面図であり、図5は、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の側面図であり、図6は、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の正面図である。
【0015】
また、図7は、図3のA−A断面図であり、図8は、図3のB−B断面図であり、図9は、図4のCで囲んだ部分の部分拡大図であり、図10は、図5のDで囲んだ部分の部分拡大図である。
【0016】
図1〜図5に示すように、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1は、帯状に形成された2つの帯状片10及び12が結合部28,30及び32を介して幅方向に結合されて帯状体14を構成している。この帯状片10及び12には、それぞれ略長方形の孔16が等間隔で複数個形成されている。孔16の数に特に制限はないが、孔16の数を多くするほど、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を長尺体に装着する際に、より細かく長尺体の直径に対応することが可能となり好ましい。
【0017】
なお、本実施形態において、「長尺体」とは、例えば、電線、配管、厨房機器の脚部、搬送ワゴンの脚部、キャスターの上部等をいう。
【0018】
図5に示すように、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1は、側面から見ると、撓み変形可能な程度の厚みで形成されている。昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の厚みは、長尺体に装着した際に破断しない程度の引張り強さを考慮して適宜設定される。
【0019】
図6、図7及び図10に示すように、帯状片10及び12の一方の端部には孔16に挿入可能な係止爪18が突設されている。図10に示すように、係止爪18には返し部18aが形成されている。この返し部18aは、図8に示す孔16に係止爪18を挿入した後、容易に係止爪18が孔16から外れないようにするためのものである。
【0020】
また、図4、図9及び図10に示すように、係止爪18の近傍には、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着した状態から取り外しを容易にするための凸部が形成されている。
【0021】
さらに、図2、図8及び図10に示すように、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の裏面には、等間隔に突起が複数個形成され、その突起の間の空間に溝22が形成されている。この溝22によって、帯状体14の湾曲を容易にするためのものである。
【0022】
図1〜図4に示すように、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1には、2つの帯状片10及び12との間に、2つのスリット24及び26が形成されている。このスリット24及び26は、本実施形態においては、係止爪18及び凸部20が形成されている側とは反対側の端部側に形成されている。
【0023】
本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1は、このままの状態で使用することもできるが、結合部のうち、帯状片10及び12の端部に近い位置に形成された結合部28及び30は、ニッパ等で切断することができる。
【0024】
図8に、結合部28の断面を示した図3のB−B断面図を示す。図8に示すように、各帯状片10及び12を連結する結合部28は、切断が可能となるように短い長さで形成されている。
【0025】
次に、昆虫忌避剤又は殺虫剤について説明する。昆虫忌避剤又は殺虫剤としては、昆虫の除去活性を有する薬剤であり、昆虫忌避活性を有する化合物、殺傷昆虫活性を有する化合物、昆虫の摂食阻害活性、昆虫の成長コントロール活性を有する化合物等を挙げることができる。
【0026】
具体的には、ピレスロイド系化合物、カーバメート系化合物、有機リン系化合物及びこれらの異性体、誘導体、類縁体その他昆虫の成長をコントロールする活性を有する化合物等を挙げることができる。
【0027】
また、かかる昆虫忌避剤又は殺虫剤が含有される部品を構成する樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂の少なくとも1種の樹脂が選択される。図5に示すように、本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1は、薄く、略扁平形状に形成されているため、これらの樹脂を用いることにより、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1に、長尺体を束ねる程度の強度を備えた可撓性を付与することができる。
【0028】
さらに、この樹脂に対して昆虫忌避剤又は殺虫剤を溶解保持し、徐放性を付与する化合物を含めることがより好ましい。昆虫忌避剤又は殺虫剤を溶解保持し、徐放性を付与する化合物としては、例えば、スルホンアミド誘導体、スルホン酸エステル誘導体、カルボン酸アミド誘導体、カルボン酸エステル誘導体より選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
【0029】
このように、徐放性を付与する化合物を樹脂に含有させることにより、樹脂製品から上記昆虫忌避剤又は殺虫剤を長期間にわたり放出することが可能となる。なお、本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の昆虫の忌避又は殺虫効果は約10年間持続させることが可能である。
【0030】
以上の昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の成形は、射出成形等の公知の成形方法により成形することができる。
【0031】
次に、本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の使用方法について説明する。図11及び図12は、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の使用方法を説明するための図である。図11及び図12においては、2本のコード100及び102に本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着する例を示している。
【0032】
2本のコード100及び102を束ねる場合は、図1に示す結合部28を切断し、帯状片10及び12の一部を予め分離しておく。そして、図11に示すように、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の裏面を用いて、先ず、帯状片10の端部からコード100に巻きつけていき、次に、帯状片12の端部からコード102に巻きつけていく。結合部30までコード100及び102を別々に巻きつけた後は、コード100及び102に帯状片10及び12を一緒に巻いていく。
【0033】
帯状片10及び12でコード100及び102を巻いた後、帯状体14の端部に形成された係止爪18を、最も近接する孔(例えば、図12における16a)に挿入する。これにより、係止爪18が孔16により係止され、簡易な手法ながら、相当の緊締力をもってコード100及び102に昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着することができる。
【0034】
更に、帯状片10及び12の端部からコード100及び102に巻きつけた後、係止爪18を孔16に係止するため、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着した後は、従来の固定バンドのように、余ったバンドが外側に突出する部分がない。即ち、従来の固定バンドが有する欠点を解消することができる。
【0035】
なお、図12の状態からコード100及び102から昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を取り外すときは、凸部20をつまみ、孔16aから係止爪18を引き抜くことにより係止状態が解除され、コード100及び102から昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を取り外すことができる。
【0036】
なお、帯状片10及び12を分離する手段として、本実施形態においてはスリット22及び24を形成し、結合部28又は30を切断することにより行った例を示したが、これに限定されず、例えば、帯状片10及び12の間にミシン線等、簡便に切断することが可能な切り取り線を形成し、これを切断することにより帯状片10及び12の一部を分離することも可能である。
【0037】
また、本実施形態においては、幅方向に2つの帯状片10及び12を結合した例を示したが、束ねる必要がある長尺体の数に応じて適宜増やすことも可能である。
【0038】
また、別に昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品を準備し、その帯状体に形成されている孔に昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の係止爪18を挿入し、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品同士を長さ方向に連結することができる。これにより、長尺体の径が単体の昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の長さよりも長くなった場合でも対応することが可能となる。なお、昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1自身の長さを適宜設定することができるのはいうまでもない。
【0039】
なお、これまでは昆虫忌避剤又は殺虫剤を含有した樹脂製品について説明したが、昆虫忌避材を含有していなくても、本発明に係る樹脂製品の形状の特性を利用して、複数の長尺体を束ねるための樹脂製品として利用することもできる。即ち、樹脂を帯状に成型し、長尺体に巻きつけることが可能な樹脂製品であって、帯状に形成された複数の帯状片が部分的に分離可能に結合されてなる帯状体と、該帯状片の長手方向の一方の端部に設けられた係止爪と、該帯状片に複数形成され、該係止爪を係止可能な孔と、を備えた樹脂製品により、複数の長尺体を相当の緊締力をもって束ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の表面を示した斜視図である。
【図2】昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の裏面を示した斜視図である。
【図3】昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の上面図である。
【図4】昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の底面図である。
【図5】昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の側面図である。
【図6】昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1の正面図である。
【図7】図3のA−A断面図である。
【図8】図3のB−B断面図である。
【図9】図4のCで囲んだ部分の部分拡大図である。
【図10】図5のDで囲んだ部分の部分拡大図である。
【図11】2本のコード100及び102に本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着する例を示す図である。
【図12】2本のコード100及び102に本実施形態に係る昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品1を装着する例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品
10及び12 帯状片
14 帯状体
16 孔
18 係止爪
20 凸部
22 溝
24及び26 スリット
28,30及び32 結合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫忌避剤又は殺虫剤が含有された樹脂を帯状に成型し、長尺体に巻きつけることにより昆虫が対象物に進入するのを防止する昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品であって、
帯状に形成された複数の帯状片が結合されてなる帯状体と、
該帯状片の長手方向の一方の端部に設けられた係止爪と、
該帯状片に複数形成され、該係止爪を係止可能な孔と、
を備えた昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品。
【請求項2】
前記帯状部は、各帯状片が部分的に分離可能に形成されてなる請求項1記載の昆虫忌避用忌避又は殺虫用樹脂製品。
【請求項3】
前記帯状体は、各帯状片との間にスリットを形成してなる請求項1又は2記載の昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品。
【請求項4】
樹脂を帯状に成型し、長尺体に巻きつけることが可能な樹脂製品であって、
帯状に形成された複数の帯状片が部分的に分離可能に結合されてなる帯状体と、
該帯状片の長手方向の一方の端部に設けられた係止爪と、
該帯状片に複数形成され、該係止爪を係止可能な孔と、
を備えた樹脂製品。
【請求項1】
昆虫忌避剤又は殺虫剤が含有された樹脂を帯状に成型し、長尺体に巻きつけることにより昆虫が対象物に進入するのを防止する昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品であって、
帯状に形成された複数の帯状片が結合されてなる帯状体と、
該帯状片の長手方向の一方の端部に設けられた係止爪と、
該帯状片に複数形成され、該係止爪を係止可能な孔と、
を備えた昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品。
【請求項2】
前記帯状部は、各帯状片が部分的に分離可能に形成されてなる請求項1記載の昆虫忌避用忌避又は殺虫用樹脂製品。
【請求項3】
前記帯状体は、各帯状片との間にスリットを形成してなる請求項1又は2記載の昆虫忌避又は殺虫用樹脂製品。
【請求項4】
樹脂を帯状に成型し、長尺体に巻きつけることが可能な樹脂製品であって、
帯状に形成された複数の帯状片が部分的に分離可能に結合されてなる帯状体と、
該帯状片の長手方向の一方の端部に設けられた係止爪と、
該帯状片に複数形成され、該係止爪を係止可能な孔と、
を備えた樹脂製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−238853(P2006−238853A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62943(P2005−62943)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000226507)株式会社ニックス (96)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000226507)株式会社ニックス (96)
【Fターム(参考)】
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