説明

昇降及び回転機能付き搬送台車並びにそれを用いた自動車組立ライン

【課題】作業性が高くライン構築の自由度が高い昇降及び回転機能付き搬送台車、並びに、コストを削減することができるとともに工期を短縮することができ、また、稼働率を向上することができるとともに仕掛り台数を削減することができる、前記搬送台車を用いた自動車組立ラインを提供する。
【解決手段】平面視略矩形状の基台2の対角部分に立設された一対のガイドポスト3,4、ガイドポスト3,4に支持されて昇降する一対の昇降支持体5,6、昇降支持体5,6間に横架された横架部材7、横架部材7の長手方向中央下側に取り付けられ、固定部8Aに対し回転部8Bが垂直軸8Cまわりに回転可能なターンテーブル8、及び、ターンテーブル8の回転部8Bに上端部が連結され、下端部に設けた受部9B,9Bに車体Aを載置して吊り下げるハンガー9を備えた搬送台車1を自動車組立ラインの各工程において共通に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を昇降及び垂直軸まわりに回転させることができる昇降及び回転機能付き搬送台車、並びに、この昇降及び回転機能付き搬送台車を用いた自動車組立ラインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
艤装工場の自動車組立ラインにおける、車体へシャーシ及びエンジン等を組み付けるシャーシ工程内の車体の搬送並びに各工程間の車体の搬送は、オーバーヘッドコンベアにより吊り下げた状態で行うのが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
また、前記自動車組立ラインにおける、車体へ内装品等を組み付けるトリム工程や外装品等を組み付けるファイナル工程内の車体の搬送は、台車コンベアに載置した状態で行うのが一般的であり、部品組付け作業に適した高さに車体を昇降させることができる昇降機能付き搬送台車が使用される(例えば、特許文献2参照。)。
ここで、昇降機能付き搬送台車に対し、その基台の下部に操舵可能に取り付けられるとともに走行路面上を転動可能な車輪を操舵するステアリング機構を設け、車体の向きを任意に変化させることができる回転機能も付加した、昇降及び回転機能付き搬送台車も使用されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】実開昭57−123315号公報(第1−2図)
【特許文献2】特開昭62−168769号公報(第1−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような建屋より吊り下げるオーバーヘッドコンベアは、作業者の頭上(例えば、工場の天井近く等)に走行レールを架設する必要があり、据付け作業には重機を用いた高所作業を行う必要があるため、安全性について特に細心の注意を払う必要があるとともに、補助梁、吊下げ、安全ネット、点検歩廊及び梯子等の現地据付け工数が多大である。その上、オーバーヘッドコンベアや付随設備を建屋に吊り下げるため、吊下げ荷重に見合った強度を建屋に備えさせる必要があり、建屋の高強度化に伴いその建築コストが増大する。
【0005】
また、特許文献2のような昇降機能付き搬送台車は、特許文献1のオーバーヘッドコンベアのような据付けコストや建築コストの増大等の問題はないが、基台に立設された左右一対のガイドポストが車体近くに存在するため、車体の下廻りへ部品を組み付ける作業を行う際等に邪魔になる。
さらに、特許文献2のような回転機能付き搬送台車は、台車の下側に取り付けた車輪をエアーシリンダにより駆動するステアリング機構により操舵して台車ごと回転させる構成であるため、前後の台車が所定間隔以上離間していないと車体(台車)を回転させることができない(例えば、前後の台車が隣接した状態では車体を回転させることができない。)し、基台上で作業している作業者が作業しやすいように、あるいは作業者の動作の無駄を無くすために、作業者に対して車体を相対的に回転させることもできない。
その上、搬送経路を移動する搬送台車に、各車輪を操舵するステアリング機構用のアクチュエータであるエアーシリンダが設けられているため、これらのエアーシリンダに搬送台車の外部からエアーを供給する必要がある。
【0006】
さらにまた、従来の自動車組立ラインでは、車体の下廻りへの部品組付け作業を行うシャーシ工程内における車体の搬送等はオーバーヘッドコンベアにより行い、車体へ内装品等を組み付けるトリム工程や外装品等を組み付けるファイナル工程内の車体の搬送は、台車コンベアに載置した状態で行われており、このようにオーバーヘッドコンベア及び台車コンベアが混在しているため、前記のとおりオーバーヘッドコンベアの存在により据付けコスト及び建築コストが増大し、前記のとおり昇降機能付き搬送台車の存在によりガイドポストが車体の下廻りへの部品組付け作業等の際に邪魔になる。
その上、前記のとおり回転機能を付加した搬送台車を用いる場合であっても、車体の回転に制限があるため、必ずしも作業性を向上することができないとともに、このような搬送台車を用いて構築できる自動車組立ラインの自由度が低下する。
その上さらに、搬送設備が共通化されておらず、オーバーヘッドコンベア及び台車コンベアが混在していることから、必要な移載装置の台数が多くなるため、その分のコストが増大するとともに、稼働率が低下し仕掛り台数が増大する。
【0007】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、作業性が高くライン構築の自由度が高い昇降及び回転機能付き搬送台車、並びに、コストを削減することができるとともに工期を短縮することができ、また、稼働率を向上することができるとともに仕掛り台数を削減することができる、昇降及び回転機能付き搬送台車を用いた自動車組立ラインを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る昇降及び機能付き搬送台車は、前記課題解決のために、平面視略矩形状の基台の前右端部及び後左端部又は前左端部及び後右端部に立設された一対のガイドポストと、これらガイドポストに支持されて昇降する一対の昇降支持体と、これら昇降支持体間に横架された横架部材と、この横架部材の長手方向中央下側に取り付けられ、固定部に対し回転部が垂直軸まわりに回転可能なターンテーブルと、このターンテーブルの前記回転部に上端部が連結され、下端部に設けた受部に車体を載置して吊り下げるハンガーとを備えてなるものである。
【0009】
ここで、前記昇降支持体をボールねじのナットに連結固定し、このナットに係合するボールねじ軸を、基台に設けた伝達機構を介して、搬送経路の所定位置に設けられた外部駆動装置により回転させることにより前記昇降支持体を昇降させて、前記横架部材、ターンテーブル及びハンガーを昇降させるとともに、前記ターンテーブルを、手動による操作、又は、前記回転部に連結固定されたカムリンクを搬送経路の所定位置に設けられた外部ガイドレールにより操作することにより回転させると好ましい。
【0010】
また、本発明に係る昇降及び回転機能付き搬送台車を用いた自動車組立ラインは、前記課題解決のために、前記昇降及び回転機能付き搬送台車を各工程において共通に使用する自動車組立ラインであって、前記基台の下側に潜り込んで前記搬送台車を牽引する無人搬送車及び前記基台の側面にフリクションローラを圧接して推進力を付与するフリクションローラ式駆動装置の少なくともどちらかにより各工程内で前記搬送台車を搬送し、前記無人搬送車により前記搬送台車の工程間搬送を行うものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る昇降機能付き搬送台車によれば、平面視略矩形状の基台の前右端部及び後左端部又は前左端部及び後右端部に立設された一対のガイドポストと、これらガイドポストに支持されて昇降する一対の昇降支持体と、これら昇降支持体間に横架された横架部材と、この横架部材の長手方向中央下側に取り付けられ、固定部に対し回転部が垂直軸まわりに回転可能なターンテーブルと、このターンテーブルの前記回転部に上端部が連結され、下端部に設けた受部に車体を載置して吊り下げるハンガーとを備えてなるので、建屋より吊り下げるオーバーヘッドコンベアと比較して据付けコスト及び建築コストを削減することができる。
【0012】
その上、一対のガイドポストが平面視略矩形状の基台の前右端部及び後左端部又は前左端部及び後右端部(平面視略矩形状の基台の対角部分)に配設されているため、これらガイドポストが車体の下廻りへの部品組付け作業等の際に邪魔にならない。
その上さらに、ターンテーブルにより車体を基台に対して回転させることができるため、他の搬送台車との位置関係に拘わらず、例えば前又は後の搬送台車と隣接した状態であっても、車体を回転させることができる。
したがって、基台上で作業している作業者が作業しやすいように、あるいは作業者の動作の無駄を無くすために、搬送経路(作業工程)の任意の位置でその作業内容に応じて車体を回転させることができるため、作業性を向上することができる。
また、移載装置との車体の受け渡しの際に移載装置の伸縮方向に合わせて車体を回転させて容易に受け渡し作業を行うことができるとともに、部品を搬送するサブコンベアラインに合わせて車体を回転させることもできるため、ライン構築の自由度を高くすることができる。
【0013】
また、前記昇降支持体をボールねじのナットに連結固定し、このナットに係合するボールねじ軸を、基台に設けた伝達機構を介して、搬送経路の所定位置に設けられた外部駆動装置により回転させることにより前記昇降支持体を昇降させて、前記横架部材、ターンテーブル及びハンガーを昇降させるとともに、前記ターンテーブルを、手動による操作、又は、前記回転部に連結固定されたカムリンクを搬送経路の所定位置に設けられた外部ガイドレールにより操作することにより回転させると、前記効果に加え、搬送台車にモータ又はエアーシリンダ等のアクチュエータがなく、移動する搬送台車へ動力を供給する必要がないため、搬送台車及びそれを用いた自動車組立ラインを簡素化することができる。
【0014】
本発明に係る昇降及び回転機能付き搬送台車を用いた自動車組立ラインによれば、前記昇降及び回転機能付き搬送台車を各工程において共通に使用する自動車組立ラインであって、前記基台の下側に潜り込んで前記搬送台車を牽引する無人搬送車及び前記基台の側面にフリクションローラを圧接して推進力を付与するフリクションローラ式駆動装置の少なくともどちらかにより各工程内で前記搬送台車を搬送し、前記無人搬送車により前記搬送台車の工程間搬送を行うので、前記昇降及び回転機能付き搬送台車を複数備えた自動車組立ラインであるため、前記昇降及び回転機能付き搬送台車が奏する効果を包含する。
したがって、共通使用される搬送台車のみであり、建屋より吊り下げるオーバーヘッドコンベアがないことから、据付けコスト及び建築コストを削減することができる。
【0015】
その上、共通使用される搬送台車の一対のガイドポストが平面視略矩形状の基台の前右端部及び後左端部又は前左端部及び後右端部(平面視略矩形状の基台の対角部分)に配設されているため、これらガイドポストが車体の下廻りへの部品組付け作業等の際に邪魔にならない。
その上さらに、ターンテーブルにより車体を搬送台車の基台に対して回転させることができるため、他の搬送台車との位置関係に拘わらず、例えば前又は後の搬送台車と隣接した状態であっても、車体を回転させることができる。
したがって、基台上で作業している作業者が作業しやすいように、あるいは作業者の動作の無駄を無くすために、搬送経路(作業工程)の任意の位置でその作業内容に応じて車体を回転させることができるため、作業性を向上することができる。
また、移載装置との車体の受け渡しの際に移載装置の伸縮方向に合わせて車体を回転させて容易に受け渡し作業を行うことができるとともに、部品を搬送するサブコンベアラインに合わせて車体を回転させることもできるため、ライン構築の自由度を高くすることができる。
【0016】
その上、搬送台車にモータ又はエアーシリンダ等のアクチュエータがなく、移動する搬送台車へ動力を供給する必要がないため、自動車組立ラインを簡素化することができる。
その上さらに、自動車組立ラインにおいて搬送台車を共通化していることから、コストを削減することができるとともに工期を短縮することができる。
その上、搬送台車を共通化し、基台の下側に潜り込んで搬送台車を牽引する無人搬送車及び基台の側面にフリクションローラを圧接して推進力を付与するフリクションローラ式駆動装置の少なくともどちらかにより各工程内で前記搬送台車を搬送し、無人搬送車により前記搬送台車の工程間搬送を行うので、各ラインを一筆で繋げるライン構成にすることにより移載装置の必要台数を少なくすることができ、よって、移載装置を削減することができるため、稼働率を向上することができるとともに仕掛り台数を削減することができる。
その上さらに、潜り込み式無人搬送車のみによる搬送台車の搬送、又は、潜り込み式無人搬送車及びフリクションローラ式駆動装置の併用による搬送台車の搬送により、搬送台車の下側にチェーン等を敷設する必要がなく簡素かつ効率的な、また低床化により作業者が乗り降りしやすく作業性のよい自動車組立ラインを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本明細書においては、搬送台車1の搬送方向(図中矢印F参照。)側を前とし、左右は前方に向かっていうものとする。また、ハンガー9は垂直軸8Cまわりに回転可能であるが、図1〜図4、図5(a)及び図6(a)に示すように、ハンガー9が前後方向から見て略逆向きU字状となっている、車体Aが前を向いた状態を基準として、ハンガー9の左右をいうものとする。さらに、搬送台車1(基台2)を左方から見た図を正面図とする。
【0018】
図1〜図6は本発明の実施の形態に係る昇降及び回転機能付き搬送台車1の構成を示す概略図であり、図1はハンガー9を最も下降させた状態を示す左上方から見た斜視図、図2はハンガー9を最も上昇させた状態を示す前方から見た図、図3(a)は平面図、図3(b)はハンガー9を最も上昇させた状態を示す正面図、図4(a)は車体Aを支持したハンガー9を最も下降させた状態を示す前方から見た図、図4(b)は同じく正面図、図5は同じく左上方から見た斜視図、図6は車体Aを支持したハンガー9を最も上昇させた状態を示す左上方から見た斜視図であり、図5(b)及び図6(b)は車体Aを垂直軸8Cまわりに90度回転させた状態を示している。
【0019】
なお、図5及び図6において、車体Aの前後左右にドアB,Cを取り付けて、これらドアB,Cを閉じた状態を示しているが、本発明の昇降及び回転機能付き搬送台車1を例えばトリム工程に使用する場合には、ドアB,Cを全開にした状態で内装品等の組み付け作業を行う。
また、塗装工程後にドアB,Cを取り外してファイナル工程でドアB,Cを取り付けるようにし、トリム工程やシャーシ工程においてはドアレスとしたドアレスラインに本発明の昇降及び回転機能付き搬送台車1を使用してもよい。
【0020】
図1〜図4に示すように、昇降及び回転機能付き搬送台車1は、基台2の下面に取り付けられた前後左右の走行車輪2A,…により軌道又は床面上を走行可能なものであり、図5及び図6に示すような基台2の下に潜り込んで自走する無人搬送車(Automated Guided Vehicle)Dによる牽引、又は、基台2の側面2B,2Cへの図示しないフリクションローラ式駆動装置のフリクションローラの圧接による推進力付与等により搬送される。
【0021】
また、昇降及び回転機能付き搬送台車1は、平面視略矩形状の基台2の対角部分、すなわち基台2の前右端部及び後左端部(前左端部及び後右端部であってもよい。)に立設された一対のガイドポスト3,4、ガイドポスト3,4に支持されて昇降する一対の昇降支持体5,6、昇降支持体5,6間に横架された横架部材7、横架部材7の長手方向中央下側に支持杆7A,7Aにより取り付けられ、固定部8Aに対し回転部8Bが図示しない例えばクロスローラベアリング等の軸受により支持されて垂直軸8Cまわりに回転可能なターンテーブル8、ターンテーブル8の回転部8Bに連結板9A,9Aにより上端部が連結され、下端部に設けた受部9B,9Bに車体A(図4〜図6参照。)を載置して車体Aを抱え込むように吊り下げるハンガー9を備えている。
【0022】
搬送台車1において、一対のガイドポスト3,4が平面視略矩形状の基台2の対角部分に配設されているため、図6に示すように、車体Aを上昇させてその下廻りへ部品を組み付ける作業を行う際に、ガイドポスト3,4が邪魔にならないし、図5及び図6に示すように車体Aを回転させる際にもガイドポスト3,4が邪魔にならない。
【0023】
次に、昇降支持体5,6をガイドポスト3,4に沿って昇降させる昇降装置の構成例について説明する。
図2に示すように、昇降支持体5,6に取り付けられた、水平軸まわりに回転可能なローラ11A,11Bが、ガイドポスト3,4のガイドレールを形成するフレーム3A,4Aによりガイドされるため、昇降支持体5,6はガイドポスト3,4により昇降可能に支持される。
また、ガイドポスト3,4内には、上下のベアリング19A,19Bにより上下端部が支持された、垂直軸まわりに回転可能なボールねじ軸10A,10Aが内蔵されており、該ボールねじ軸10A,10Aに係合するナット10B,10Bが昇降支持体5,6の下端部に固定されているため、ボールねじ軸10A,10Aが回転すると、昇降支持体5,6が昇降する。
【0024】
ガイドポスト3,4の直下、すなわち基台2の前右端部及び後左端部の下側には、ボールねじ軸10A,10Aを駆動するための下向きの被駆動軸12,14が設けられ、該被駆動軸12,14はギヤボックス15,17内のベベルギヤ及びカップリング18,18を介してボールねじ軸10A,10Aの下端と連結される。
また、基台2の前左端部の下側にも、ボールねじ軸10A,10Aを駆動するための下向きの被駆動軸13及びギヤボックス16が設けられている。
ここで、ギヤボックス15,16間は、図2に示すように、基台2の前右端部のギヤボックス15内のベベルギヤからカップリング20A、右伝動軸21A、左右方向中央のカップリング22A、左伝動軸23A及びカップリング24Aを介して前左端部のギヤボックス16内のベベルギヤに動力が伝達され、ギヤボックス16,17間は、図3(b)に示すように、基台2の前左端部のギヤボックス16内のベベルギヤからカップリング20B、前伝動軸21B、前後方向中央のカップリング22B、後伝動軸23B及びカップリング24Bを介して後左端部のギヤボックス17内のベベルギヤに動力が伝達される。
【0025】
したがって、基台2の前右端部、前左端部及び後左端部の下側の被駆動軸12,13,14のいずれかを駆動すると、左右のガイドポスト3,4内のボールねじ軸10A,10Aが連動して同期回転するように構成されている。
よって、自動車組立ラインの各工程において、作業に応じて車体Aの高さを変化させる必要がある箇所に、被駆動軸12,13,14のいずれかの下側に図示しない駆動装置を設置しておき、被駆動軸12,13,14のいずれかを回転させると、ボールねじ軸10A,10Aが同期回転するため、昇降支持体5,6が昇降する。
以上のとおり、昇降支持体5,6をボールねじのナット10B,10Bに連結固定し、該ナット10B,10Bに係合するボールねじ軸10A,10Aを、基台2に設けた伝達機構を介して、搬送経路の所定位置に設けられた外部駆動装置により回転させることにより、昇降支持体5,6、横架部材7、ターンテーブル8及びハンガー9並びに車体Aを所望の高さにすることができるため、部品組付け作業に適した高さに車体Aを昇降させることができる。
【0026】
次に、ターンテーブル8の回転操作について説明する。
図5及び図6に示すように、ハンガー9の受部9B,9Bに車体Aを載置した状態で、ターンテーブル8の回転部8B、ハンガー9及び車体Aの荷重は、軸受を介してターンテーブル8の固定部8A、支持杆7A,7A、横架部材7、昇降支持体5,6及びガイドポスト3,4並びに基台2により支持されており、車体Aはこの状態で静止している。
ターンテーブル8は、前記のとおり固定部8Aに対して回転部8Bが垂直軸8Cまわりに回転するものであり、作業者が例えばハンガー9の左右の垂下部の一方を押すことにより、該ハンガー9及び車体A並びに回転部8Bを垂直軸8Cまわりに容易に回転させることができる。
また、ターンテーブル8は、このような手動による操作ではなく、回転部8Bに連結固定された図示しないカムリンクを搬送経路の所定位置に設けられた図示しない外部ガイドレールにより操作することによっても容易に回転させることができる。
【0027】
したがって、図5及び図6に示すように、搬送経路の適宜箇所で車体Aを回転させて、図示しない移載装置の伸縮方向に合わせて、例えば図5(b)及び図6(b)のように搬送方向と直交する方向へ容易に向けることができるため、この状態から車体Aを図示しない移載装置へ容易に引き渡すことができるし、逆に、車体Aを移載装置からハンガー9の受部9B,9B上に容易に受け取ることができる。
また、ターンテーブル8により車体Aを基台2に対して回転させることができるため、他の搬送台車1との位置関係に拘わらず、例えば前又は後の搬送台車1と隣接した状態であっても、車体Aを回転させることができる。
よって、基台2上で作業している作業者が作業しやすいように、あるいは作業者の動作の無駄を無くすために、搬送経路(作業工程)の任意の位置でその作業内容に応じて車体Aを回転させることができるため、作業性を向上することができる。
また、移載装置との車体Aの受け渡しの際に移載装置の伸縮方向に合わせて車体Aを回転させて容易に受け渡し作業を行うことができるとともに、部品を搬送するサブコンベアラインに合わせて車体Aを回転させることもできるため、ライン構築の自由度を高くすることができる。
【0028】
さらに、前記のとおり車体Aの昇降を外部駆動装置により行うとともに、車体Aの回転を、手動による操作又はターンテーブル8の回転部8Bに連結固定されたカムリンクを搬送経路の所定位置に設けられた外部ガイドレールにより操作することにより行うため、搬送台車1にモータ又はエアーシリンダ等のアクチュエータがなく、移動する搬送台車1へ動力を供給する必要がないため、搬送台車1及びそれを用いた自動車組立ラインを簡素化することができる。
【0029】
さらにまた、複数の搬送台車1,…を各工程において共通に使用して自動車組立ラインを構築し、基台2の下側に潜り込んで搬送台車1を牽引する無人搬送車D(図5及び図6参照。)及び基台2の側面2B,2Cにフリクションローラを圧接して推進力を付与するフリクションローラ式駆動装置の少なくともどちらかにより各工程内で搬送台車1を搬送し、潜り込み式無人搬送車Dにより搬送台車1の工程間搬送を行うようにすれば、共通使用される搬送台車1,…により自動車組立ラインが構築されており、建屋より吊り下げるオーバーヘッドコンベアがないことから、据付けコスト及び建築コストを削減することができる。
その上、自動車組立ラインにおいて搬送台車1,…を共通化していることから、コストを削減することができるとともに工期を短縮することができる。
【0030】
その上さらに、搬送台車1,…を共通化し、潜り込み式無人搬送車D及びフリクションローラ式駆動装置の少なくともどちらかにより各工程内で搬送台車1を搬送し、潜り込み式無人搬送車Dにより搬送台車1の工程間搬送を行うので、各ラインを一筆で繋げるライン構成にすることにより移載装置の必要台数を少なくすることができ、よって、移載装置を削減することができるため、稼働率を向上することができるとともに仕掛り台数を削減することができる。
その上、潜り込み式無人搬送車Dのみによる搬送台車1の搬送、又は、潜り込み式無人搬送車D及びフリクションローラ式駆動装置の併用による搬送台車1の搬送により、搬送台車1の下側にチェーン等を敷設する必要がなく簡素かつ効率的な、また低床化により作業者が乗り降りしやすく作業性のよい自動車組立ラインを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る昇降及び回転機能付き搬送台車を左上方から見た斜視図であり、ハンガーを最も下降させた状態を示している。
【図2】同じく前方から見た図であり、ハンガーを最も上昇させた状態を示している。
【図3】同じく、(a)は平面図、(b)は正面図であり、ハンガーを最も上昇させた状態を示している。
【図4】同じく、(a)は前方から見た図、(b)は正面図であり、車体を支持してハンガーを最も下降させた状態を示している。
【図5】同じく左上方から見た斜視図であり、(a)は車体を支持してハンガーを最も下降させた状態を、(b)は同状態で車体を垂直軸まわりに90度回転させた状態を示している。
【図6】同じく左上方から見た斜視図であり、(a)は車体を支持してハンガーを最も上昇させた状態を、(b)は同状態で車体を垂直軸まわりに90度回転させた状態を示している。
【符号の説明】
【0032】
1 昇降及び回転機能付き搬送台車
2 基台
2A 走行車輪
2B,2C 側面
3,4 ガイドポスト
3A,4A フレーム(ガイドレール)
5,6 昇降支持体
7 横架部材
7A 支持杆
8 ターンテーブル
8A 固定部
8B 回転部
8C 垂直軸
9 ハンガー
9A 連結板
9B 受部
10A ボールねじ軸
10B ナット
11A,11B ローラ
12,13,14 被駆動軸
15,16,17 ギヤボックス
18 カップリング
19A,19B ベアリング
20A,20B カップリング
21A,21B 伝動軸
22A,22B カップリング
23A,23B 伝動軸
24A,24B カップリング
A 車体
B,C ドア
D 無人搬送車


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視略矩形状の基台の前右端部及び後左端部又は前左端部及び後右端部に立設された一対のガイドポストと、
これらガイドポストに支持されて昇降する一対の昇降支持体と、
これら昇降支持体間に横架された横架部材と、
この横架部材の長手方向中央下側に取り付けられ、固定部に対し回転部が垂直軸まわりに回転可能なターンテーブルと、
このターンテーブルの前記回転部に上端部が連結され、下端部に設けた受部に車体を載置して吊り下げるハンガーと、
を備えてなることを特徴とする昇降及び回転機能付き搬送台車。
【請求項2】
前記昇降支持体をボールねじのナットに連結固定し、このナットに係合するボールねじ軸を、基台に設けた伝達機構を介して、搬送経路の所定位置に設けられた外部駆動装置により回転させることにより前記昇降支持体を昇降させて、前記横架部材、ターンテーブル及びハンガーを昇降させるとともに、
前記ターンテーブルを、手動による操作、又は、前記回転部に連結固定されたカムリンクを搬送経路の所定位置に設けられた外部ガイドレールにより操作することにより回転させる請求項1記載の昇降及び回転機能付き搬送台車。
【請求項3】
請求項1又は2記載の昇降及び回転機能付き搬送台車を各工程において共通に使用する自動車組立ラインであって、
前記基台の下側に潜り込んで前記搬送台車を牽引する無人搬送車及び前記基台の側面にフリクションローラを圧接して推進力を付与するフリクションローラ式駆動装置の少なくともどちらかにより各工程内で前記搬送台車を搬送し、前記無人搬送車により前記搬送台車の工程間搬送を行う、昇降及び回転機能付き搬送台車を用いた自動車組立ライン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−12089(P2009−12089A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174348(P2007−174348)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】