説明

昇降台車

【課題】組立精度や変形によるネジ軸の傾きによらず、昇降台の円滑な昇降移動を可能とする昇降台車を提供することを目的とする。
【解決手段】床面に沿って移動する台車10と、台車10上に設置され、上記床面に対してZ方向に昇降台21を昇降自在にさせる昇降装置20とを備える昇降台車1であって、昇降装置20は、台車10上に立設された枠柱部材31と、枠柱部材31内に設けられZ方向に延びる軸回りに正逆回転自在なボールねじと、ボールねじを正逆回転駆動させる昇降駆動部36と、ボールねじに螺合され、ボールねじの回転駆動により枠柱部材31に沿って移動すると共に、昇降台21と連結されるナットブロックとを備える4本の柱部30を有し、ナットブロックと昇降台21とを所定の軸回りに相対的に回転可能に連結する連結部70を備えるという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降台車に関し、特にクリーンルーム等の自動倉庫に用いられる昇降台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫に用いられる昇降台車には、24時間365日連続稼動せしめる能力が求められる。一般に、このような自動倉庫に用いられる昇降台車として、昇降台をワイヤーで吊り下げ、ワイヤーガイドシーブを介してワイヤーを巻き取ることで、昇降台を昇降させる昇降台車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、ワイヤーは、その寿命が昇降台車本体よりも短く、例えば、数十万回の曲げ程度でその寿命が存在し、また、ワイヤーを構成する素線の切れが必ず発生する。したがって、ワイヤーを用いた昇降台車では、ワイヤーの定期的検査や、ワイヤーの交換のため、昇降台車を長時間停止させるメンテナンスが必要となり、自動倉庫内で長期間連続稼動することが難しかった。さらに、ワイヤーとワイヤーガイドシーブとが摺動することによる発塵が荷物に降りかかる虞があるため、精密部品を扱うクリーンルーム内では、発塵する摺動部をカバーリングする等の発塵対策が必要となるといった問題がある。
【0003】
従来、上記した問題点を有するワイヤーを用いずに、昇降台を昇降させる昇降台車として、特許文献2及び特許文献3に記載の自動倉庫用の昇降台車が知られている。当該昇降台車は、ネジ軸を回転駆動させることで昇降台を昇降させる構成となっている。ネジ軸は、ワイヤーと比べ、その寿命が長く、また、昇降台車本体の寿命に合わせて設計できるため、交換等のメンテナンスをする必要性が少ない。さらに、ネジ軸は、ワイヤーと比べて発塵が少なく、また、振動、騒音を抑制することができる特徴があるため、クリーンルーム内での運用に適している。
【特許文献1】特開2001−302186号公報
【特許文献2】特開2002−114496号公報
【特許文献3】特開2004−43105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昇降台の昇降にネジ軸を用いた場合、ワイヤーを用いる場合と比べ、昇降台の昇降ストロークを確保することが難しいといった問題がある。すなわち、ネジ軸を用いた場合、ワイヤーを用いて昇降台を引っ張り上げる構成ではないため、昇降台を所定の高さに位置させるには、構成上、ネジ軸本体の長さを当該所定の高さに対応する長さまで大きくしなければならない。
しかしながら、ネジ軸の長さを大きくするにつれて、ネジ軸の床面垂直方向の組立精度(傾き)を所定の許容範囲内に収めることが難しくなり、ネジ軸に沿った昇降台の円滑な昇降移動に影響を与える虞がある。また、ネジ軸の長さを大きくするにつれてネジ軸の撓みが生じ易くなり、例えば、昇降台に重量物が載置された場合に、昇降台を支えるネジ軸が荷重を受け変形して傾き、昇降台の円滑な昇降移動を阻害するといった虞がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、組立精度や変形によるネジ軸の傾きによらず、昇降台の円滑な昇降移動を可能とする昇降台車を提供することを目的とする。また、別の目的は、クリーンルーム内での運用に適する昇降台車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、床面に沿って移動する台車と、上記台車上に設置され、上記床面に対して垂直方向に昇降台を昇降自在にさせる昇降装置とを備える昇降台車であって、上記昇降装置は、上記台車上に立設された枠柱部材と、上記枠柱部材内に設けられ上記垂直方向に延びる軸回りに正逆回転自在なネジ軸と、上記ネジ軸を正逆回転駆動させる駆動部と、上記ネジ軸に螺合され、上記ネジ軸の回転駆動により上記枠柱部材に沿って移動すると共に、上記昇降台と連結される可動部とを備える複数の柱部を有し、上記可動部と上記昇降台とを所定の軸回りに相対的に回転可能に連結する連結部を備えるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、可動部と昇降台とが相対的に回転可能となるため、ネジ軸が傾いても、連結部が当該傾きに応じて作動して、その傾きが吸収される。
【0007】
また、本発明では、上記連結部は、球面軸受を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、可動部と昇降台とが所望の方向に相対回転可能となるため、ネジ軸の傾く方向によらないで、連結部が当該傾きを吸収することができる。
【0008】
また、本発明では、上記柱部及び上記連結部は、上記昇降台の所定方向両側に設けられており、上記所定方向一方の連結部は、上記可動部と回転可能に連結され且つ、上記昇降台に回転可能に設けられた連結部材を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、連結部材を設けることによって、回転可能な構造を追加し、より大きな傾きを吸収する。また、連結部材を一方側だけに設けることにより、過自由度による昇降台の揺動を抑制し、昇降台を安定化させることができる。
【0009】
また、本発明では、上記駆動部は、上記昇降台上に荷物を載置する面よりも下方に設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、駆動部の発塵が昇降台上に載置される荷物に付着することを抑制することができる。
【0010】
また、本発明では、上記枠柱部材には、上記可動部の移動経路に沿って開口部が形成されており、上記可動部の位置と対応する領域以外の領域の上記開口部を覆い塞ぐシールド部材が設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、枠柱部材内部に設けられたネジ軸等からの発塵を外部に流出することを防止することができる。
【0011】
また、本発明では、上記枠柱部材内部の空気を、集塵フィルターを介して上記枠柱部材外部に流出させる空調部を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、集塵フィルターを介して枠柱部材内の空気を流出させることにより、集塵フィルターで塵埃を取り除きつつ空気を排出することができる。
【0012】
また、本発明では、上記昇降台には、移載対象部との間で荷物を移載する移載装置が設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、移載対象部との間で荷物を移載可能とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記の課題を解決するために、本発明は、床面に沿って移動する台車と、上記台車上に設置され、上記床面に対して垂直方向に昇降台を昇降自在にさせる昇降装置とを備える昇降台車であって、上記昇降装置は、上記台車上に立設された枠柱部材と、上記枠柱部材内に設けられ上記垂直方向に延びる軸回りに正逆回転自在なネジ軸と、上記ネジ軸を正逆回転駆動させる駆動部と、上記ネジ軸に螺合され、上記ネジ軸の回転駆動により上記枠柱部材に沿って移動すると共に、上記昇降台と連結される可動部とを備える複数の柱部を有し、上記可動部と上記昇降台とを所定の軸回りに相対的に回転可能に連結する連結部を備えるという構成を採用することによって、可動部と昇降台とが相対的に回転可能となるため、ネジ軸が傾いても、連結部が当該傾きに応じて作動して、その傾きが吸収される。
したがって、本発明は、ネジ軸の組立精度や変形による傾きを、可動部と昇降台との連結部にて吸収できるため、昇降台の円滑な昇降移動を可能とすることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態における昇降台車1の正面図である。
図2は、本発明の実施形態における昇降台車1の右側面図である。
図3は、本発明の実施形態における昇降台車1の平面図である。
昇降台車1は、自動倉庫、特にクリーンルームに用いられるものであり、自動倉庫床面に敷設された一対のレール2上に設けられる。このような構成の昇降台車1は、図1及び図2に示すように、一対のレール2に沿って移動自在な台車10と、台車10上に設置される昇降装置20と、昇降台車1の全体の駆動を統括的に制御する制御ユニット5とを有する構成となっている。本実施形態の昇降台車1は、大型の搬送物(荷物)H(2トン程度)を搬送する大型のものであり、全長が5mにも及ぶ構成となっている。
なお、以下の説明において、昇降台車1の長さ方向をX方向、幅方向をY方向、高さ方向をZ方向として説明することがある。
【0015】
台車10は、図3に示すように、平面視で長方形状を有する基台11有し、基台11のY方向両側の四隅に、レール2上においてY方向に延びる軸線回りに回転可能とされる車輪12が各々設けられる。車輪12はそれぞれ、台車10に設けられた走行モータ13と接続され、走行モータ13の駆動により同期して回転する構成となっている。したがって、台車10は、走行モータ13の駆動によりレール2に沿って移動自在となっている。
【0016】
昇降装置20は、図1に示すように、搬送物Hを載せる昇降台21を床面に対して垂直方向(Z方向)に昇降自在にさせるものであり、昇降台21を昇降させる4本の柱部30を有する。柱部30は、図3に示すように、X方向(所定方向)において、昇降台21の両側に2本ずつ対称的に設けられ、昇降台21の四隅とそれぞれ連結部70(後述)を介して連結される。
また、各柱部30の近傍には、X方向において並設され、Z方向に延びる補助柱部50が設けられている。補助柱部50は、柱部30のZ方向に対する組立精度を許容範囲内に収める(柱部30のZ方向に対する傾きを抑制する)ため、柱部30の側面と複数箇所接続される構成となっている。さらに、柱部30は、図2に示すように、梁部材51によってY方向において互いに接続される(図3において不図示)。
なお、昇降台21の中央部には、フォーク装置(移載装置)40が設けられており、フォーク装置40は、−Y方向に伸展することで不図示の収納棚等の移載対象部との間で搬送物Hを受け渡し自在な構成となっている。
【0017】
続いて図4及び図5を参照して、柱部30の構成について説明する。
図4は、図1に示す柱部30の線視A−A断面図である。
図5は、図1に示す柱部30の線視B−B断面図である。
柱部30は、図4及び図5に示すように、台車10上に立設された枠柱部材31と、枠柱部材31内に設けられZ方向に延びる軸回りに正逆回転自在なボールねじ(ネジ軸)35と、ボールねじ35を正逆回転駆動させる昇降駆動部(駆動部)36と、ボールねじ35に螺合され、ボールねじ35の回転駆動により枠柱部材31に沿って移動すると共に、昇降台21と連結されるナットブロック(可動部)37と、枠柱部材31内に設けられるクリーンベルト(シールド部材)60と、枠柱部材31の側面に設けられたフィルターユニット(空調部)61とを有する構成となっている。
【0018】
枠柱部材31は、Z方向に延びる柱部材であり、図4に示すように平面視で略矩形の枠状に形成されている。枠柱部材31のX方向における両内側面にはそれぞれ、内部に向かって所定量突出すると共に、Z方向に直線状に延在するガイド部32が設けられている。
また、枠柱部材31には、−Y方向側面の中央部にZ方向に亘って開口部33が形成されている。対して、枠柱部材31の+Y方向の側面には円形の通気口34が、Z方向において一定間隔で離間して複数形成されている(図5参照)。
【0019】
ボールねじ35は、枠柱部材31内部中央に配置され、Z方向に立設される。ボールねじ35の周面には、ボール等の転動体の転動溝が螺旋状に形成されている。ボールねじ35の基端には、昇降機構36aが接続されており、ボールねじ35は、昇降機構36aによりZ方向に延びる軸回りに正逆回転自在となっている。
昇降駆動部36は、昇降機構36aと、昇降機構36aに駆動力を供給する昇降モータ36b(図3参照)とを有する構成となっている。昇降駆動部36は、基台11上に設置されることで、図1に示すように昇降台21上に搬送物Hを載置する面より下方(本実施形態では、フォーク装置40の載置面より下方)に位置する。したがって、昇降駆動部36が駆動し発塵しても、当該発塵が、昇降台21より下方で発生することになり昇降台21上に載置される搬送物Hに付着することを抑制することができる構成となっている。
【0020】
ナットブロック37は、図4に示すように、枠柱部材31内部に配置され、不図示の複数の転動体を有し、当該転動体を介してボールねじ35と螺合される。また、ナットブロック37のX方向における両側面には、ガイド部32をY方向において挟持するフリーローラ38が複数設けられる。フリーローラ38は、X方向に延びる軸回りに回転可能に設けられる。
また、ナットブロック37の−Y方向における側面には、開口部33を介して枠柱部材31外部に突出する凸部39が設けられる。凸部39の基部には、Z方向に貫通する平面視矩形状を有する貫通口39aと、貫通口39aにクリーンベルト60を導くフリーローラ39bが設けられる。このような構成のナットブロック37は、ボールねじ35の回転駆動及びガイド部32の作用により、枠柱部材31内部をZ方向に移動自在となっており、凸部39は当該移動に伴って、開口部33に沿って移動することとなる。
【0021】
クリーンベルト60は、ナットブロック37の位置と対応する領域(凸部39が突出する領域)以外の領域の開口部33を覆い塞ぐ、枠柱部材31の全長に亘って設けられた帯状のベルトである。クリーンベルト60は、図5に示すように、凸部39が突出する領域にて凸部39の貫通口39a内にフリーローラ39bを介して導かれる構成となっている。これにより、クリーンベルト60は、枠柱部材31内部に設けられたボールねじ35等からの発塵や潤滑油の飛沫等を、開口部33を介して枠柱部材31外部に流出することを抑制し、クリーンルーム内を汚染することを防止できる構成となっている。
【0022】
フィルターユニット61は、枠柱部材31の通気口34が形成された部位にそれぞれ設けられており、集塵フィルター63と、ファン62とを有する。フィルターユニット61は、枠柱部材31内部の空気を、ファン62の駆動により集塵フィルター63を介して、枠柱部材31外部に流出させる構成となっている。これにより、フィルターユニット61は、枠柱部材31内部を負圧状態とし、ナットブロック37の移動を円滑にさせると共に、開口部33とクリーンベルト60との隙間から通気口34に繋がる空気の流路を積極的に形成することで、空気に混入したボールねじ35等からの発塵や潤滑油の飛沫等を集塵フィルター63で取り除きつつ通気することで、クリーンルーム内を汚染することを防止できる構成となっている。
【0023】
次に、図6及び図7を参照して、ナットブロック37と昇降台21とを連結する連結部70について説明する。本実施形態における連結部70は、−X方向側と、+X方向側とで構成が異なっている。
図6は、−X方向側の連結部70aの構成を示す、図1における線視C−C部分拡大断面図である。
図7は、+X方向側の連結部70bの構成を示す、図1における線視B−B部分拡大断面図である。
【0024】
まず、−X方向側の連結部70aの構成について図6を参照して説明する。
連結部70aは、ナットブロック37と昇降台21との間に配置され、ナットブロック37と昇降台21とを相対的に回転可能に連結するものである。このような、連結部70aは、凸部39の先端部と昇降台21に固定されたフレーム21aとの間に設けられる球面軸受71から構成される。
【0025】
球面軸受71は、凸状球形外面72sを有する内輪72及び凹状球形内面73sを有する外輪73から構成され、凸状球形外面72sと凹状球形内面73sとが摺動可能に嵌合することで、内輪72に対して外輪73が任意の方向に回転自在に保持されている。そして、球面軸受71の内輪72は、凸部39に固着され、対して球面軸受71の外輪73は、フレーム21aに固着される。
これにより、球面軸受71は、フレーム21aを介して昇降台21を、凸部39ひいてはナットブロック37に対して、X、Y、Z方向に延びる軸回りに回転可能に支持する構成となっている。
【0026】
次に、+X方向側の連結部70bの構成について図7を参照して説明する。
連結部70bは、ナットブロック37と昇降台21との間に配置され、ナットブロック37と昇降台21とを相対的に回転可能に連結するものである。連結部70bは、球面軸受71と、連結フレーム(連結部材)75とを有する。
+X方向側の球面軸受71は、−X方向側に設けられた球面軸受71と同様の構成を有し、凸部39の先端部と、連結フレーム75の一端部との間に設けられる。そして、球面軸受71の内輪72は、凸部39に固着され、対して球面軸受71の外輪73は、連結フレーム75に固着される。これにより、球面軸受71は、連結フレーム75を、凸部39ひいてはナットブロック37に対して、X、Y、Z方向に延びる軸回りに回転可能に支持する構成となっている。
連結フレーム75は、一端部が凸部39と球面軸受71を介して連結され、他端部がフレーム21bと軸部76を介して連結される。軸部76は、他端部にてフレーム21bひいては昇降台21をY方向に延びる軸回りに回転可能にするものであり、外輪が連結フレーム75に、内輪が、フレーム21bのシャフト部21b1に固着される構成となっている。
【0027】
続いて、上記構成の昇降台車1の動作及び連結部70の作用について図8を参照して説明する。
図8は、本発明の実施形態における連結部70の作用を説明する図である。
先ず、昇降台車1の動作について説明する。
搬送物Hを昇降台21上に載置した昇降台車1は、図1に示す制御ユニット5の制御の下、走行モータ13を駆動させX方向に自在に移動すると共に、所定位置で停止し、搬送物Hを所定高さに位置させるため、昇降装置20を駆動することとなる。
【0028】
制御ユニット5は、昇降駆動部36を駆動させ、各柱部30に設けられたボールねじ35を同期して回転駆動させる(図3及び図5参照)。ボールねじ35が回転駆動することにより、ナットブロック37が、ガイド部32に沿ってZ方向に移動する。ナットブロック37が移動することにより、ナットブロック37の凸部39と連結部70を介して連結された昇降台21がそれに伴って移動することとなる。
この際、ボールねじ35ひいては柱部30全体が、図8に示すように、搬送物Hの重量に応じて、Z方向に対して傾く。本実施形態では、−X方向側の柱部30が、+X方向側に傾き、+X方向側の柱部30が−X方向側に傾くこととなる。
【0029】
上記のように、搬送物Hの重量の影響、また、大型のボールねじ35を設置することによる組立精度の影響により、ボールねじ35ひいては柱部30全体が、Z方向に対し傾くと、その傾きに応じて連結部70は、ナットブロック37と昇降台21とを相対的に任意方向回りに回転させることで、当該傾きを機械的に吸収することとなる。
【0030】
例えば、図8に示すように、−X方向側の柱部30が+X方向側に傾いた場合には、連結部70aに設けられた球面軸受71の作用により、ナットブロック37と昇降台21とを相対的にY方向回りに微小回転させることで、当該傾きを機械的に吸収する。
また、図8に示すように、+X方向側の柱部30が−X方向側に傾いた場合には、連結部70bに設けられた球面軸受71の作用により、ナットブロック37と連結フレーム75とを相対的にY方向回りに微小回転させる。さらに、連結部70bは、連結フレーム75に設けられた軸部76の作用により、連結フレーム75と昇降台21とを相対的にY方向回りに微小回転させることで、当該傾きを機械的に吸収すると共に、X方向に機構的な逃げを形成する。
なお、連結部70の構成を、連結部70aと連結部70bとに異ならせることによって、上記機構的な逃げを形成することによる昇降台21のX方向の過度の揺動を低減させる作用がある。すなわち、+X方向側及び−X方向側の連結部70が、連結部70bの構成であった場合、連結フレーム75の作用により機構的に自由度が増えることで、昇降台21がX方向に揺動しやすくなるが、連結部70の構成を、連結部70aと連結部70bとに異ならせることにより、傾きを吸収するとともに過度の昇降台21の揺動を抑制し、搬送物Hを安定して昇降させることができる。
【0031】
このように、ボールねじ35ひいては柱部30全体が傾き、ナットブロック37と昇降台21との相対位置が変動した場合であっても、昇降台21に4隅に連結される4つの連結部70が作用して、ナットブロック37と昇降台21とを相対的に回転させる。つまり、連結部70が当該傾きを機械的に吸収することで、昇降台21のZ方向の円滑な昇降移動が維持されることとなる。
【0032】
したがって、上述の本実施形態によれば、床面に沿って移動する台車10と、台車10上に設置され、上記床面に対してZ方向に昇降台21を昇降自在にさせる昇降装置20とを備える昇降台車1であって、昇降装置20は、台車10上に立設された枠柱部材31と、枠柱部材31内に設けられZ方向に延びる軸回りに正逆回転自在なボールねじ35と、ボールねじ35を正逆回転駆動させる昇降駆動部36と、ボールねじ35に螺合され、ボールねじ35の回転駆動により枠柱部材31に沿って移動すると共に、昇降台21と連結されるナットブロック37とを備える4本の柱部30を有し、ナットブロック37と昇降台21とを所定の軸回りに相対的に回転可能に連結する連結部70を備えるという構成を採用することによって、ナットブロック37と昇降台21とが相対的に回転可能となるため、ボールねじ35ひいては柱部30全体が傾いても、連結部70が当該傾きに応じて作動して、その傾きが吸収される。
したがって、本実施形態では、ボールねじ35の組立精度や変形による傾きを、ナットブロック37と昇降台21とを連結する連結部70にて機械的に吸収できるため、昇降台21の円滑な昇降移動を可能とすることができる効果がある。
【0033】
また、本実施形態では、連結部70は、球面軸受71を有するという構成を採用することによって、ナットブロック37と昇降台21とが任意の方向に相対回転可能となるため、ボールねじ35の傾く方向によらないで、連結部70が当該傾きを吸収することができる。
【0034】
また、本実施形態では、柱部30及び連結部70は、昇降台21のX方向両側に設けられており、+X方向側の連結部70bは、ナットブロック37の凸部39と回転可能に連結され且つ、昇降台21に回転可能に設けられた連結フレーム75を有するという構成を採用することによって、傾きを吸収すると共に、機構的な逃げを形成することができる。また、連結フレーム75を+X方向側だけに設けることにより、過自由度による昇降台21の揺動を抑制し、昇降台21を安定化させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、昇降駆動部36は、昇降台21上に搬送物Hを載置する面よりも下方に設けられているという構成を採用することによって、昇降駆動部36の発塵が昇降台21上に載置される搬送物Hに付着することを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態では、枠柱部材31には、ナットブロック37の移動経路に沿って開口部33が形成されており、ナットブロック37の凸部39の位置と対応する領域以外の領域の開口部33を覆い塞ぐクリーンベルト60が設けられているという構成を採用することによって、枠柱部材31内部に設けられたボールねじ35等からの発塵を開口部33を介して外部に流出することを防止することができる。
【0037】
また、本実施形態では、枠柱部材31内部の空気を、集塵フィルター63を介して枠柱部材31外部に流出させるフィルターユニット61を有するという構成を採用することによって、集塵フィルター63を介して枠柱部材31内の空気を流出させることにより、集塵フィルター63で塵埃を取り除きつつ空気を通気することができる。
【0038】
また、本実施形態では、上記昇降台21には、移載対象部との間で搬送物Hを移載するフォーク装置40が設けられているという構成を採用することによって、移載対象部との間で搬送物Hを移載可能とすることができる。
【0039】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0040】
例えば、本実施形態では、連結部70は、球面軸受71を有すると説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、例えば、所定方向に回転可能な軸受を複数組み合わせたもので代用しても良い。また、例えば、弾性部材等の可変する部材を連結部70に組み込み、ボールねじ35の傾きを弾性的に吸収する構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態における昇降台車を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態における昇降台車を示す右側面図である。
【図3】本発明の実施の形態における昇降台車を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態における図1に示す柱部の線視A−A断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における図1に示す柱部の線視B−B断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における−X方向側の連結部の構成を示す、図1における線視C−C部分拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態における+X方向側の連結部の構成を示す、図1における線視B−B部分拡大断面図である。
【図8】本発明の実施の形態における連結部の作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0042】
1…昇降台車、10…台車、20…昇降装置、21…昇降台、30…柱部、31…枠柱部材、33…開口部、35…ボールねじ(ネジ軸)、36…昇降駆動部(駆動部)、37…ナットブロック(可動部)、40…フォーク装置(移載装置)、60…クリーンベルト(シールド部材)、61…フィルターユニット(空調部)、63…集塵フィルター、70…連結部、71…球面軸受、75…連結フレーム(連結部材)、H…搬送物(荷物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に沿って移動する台車と、前記台車上に設置され、前記床面に対して垂直方向に昇降台を昇降自在にさせる昇降装置とを備える昇降台車であって、
前記昇降装置は、
前記台車上に立設された枠柱部材と、前記枠柱部材内に設けられ前記垂直方向に延びる軸回りに正逆回転自在なネジ軸と、前記ネジ軸を正逆回転駆動させる駆動部と、前記ネジ軸に螺合され、前記ネジ軸の回転駆動により前記枠柱部材に沿って移動すると共に、前記昇降台と連結される可動部とを備える複数の柱部を有し、
前記可動部と前記昇降台とを所定の軸回りに相対的に回転可能に連結する連結部を備えることを特徴とする昇降台車。
【請求項2】
前記連結部は、球面軸受を有することを特徴とする請求項1に記載の昇降台車。
【請求項3】
前記柱部及び前記連結部は、前記昇降台の所定方向両側に設けられており、
前記所定方向一方の連結部は、前記可動部と回転可能に連結され且つ、前記昇降台に回転可能に設けられた連結部材を有することを特徴とする請求項1または2に記載の昇降台車。
【請求項4】
前記駆動部は、前記昇降台上に荷物を載置する面よりも下方に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の昇降台。
【請求項5】
前記枠柱部材には、前記可動部の移動経路に沿って開口部が形成されており、
前記可動部の位置と対応する領域以外の領域の前記開口部を覆い塞ぐシールド部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の昇降台車。
【請求項6】
前記枠柱部材内部の空気を、集塵フィルターを介して前記枠柱部材外部に流出させる空調部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の昇降台車。
【請求項7】
前記昇降台には、移載対象部との間で荷物を移載する移載装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の昇降台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−256023(P2009−256023A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105511(P2008−105511)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】