説明

易開封性フィルム、蓋材及び容器

【課題】 低温ヒートシール性、低臭性及び非膜残り性がいずれも良好な易開封性フィルム、これを用いた蓋材及び容器を提供する。
【解決手段】 エチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなるエチレン系共重合体(A)と、ポリエステル樹脂(B)とを含むシール層を有することを特徴とする易開封性フィルム。このような易開封性フィルムは、低温ヒートシール性、低臭性及び非膜残り性がいずれも良好なものとなる。この易開封性フィルムによれば、低温ヒートシール性、低臭性及び非膜残り性がいずれも良好な蓋材及び容器を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は易開封性フィルム、これを用いた蓋材及び容器に関するものである。詳しくは、低温ヒートシール性、低臭性、及び剥離面の外観に優れる易開封性フィルム、これを用いた蓋材及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品などの容器包装の分野では、易開封性の蓋材を備えた容器が広く利用されている。容器本体と蓋材とから構成される容器のうち、最近では食品容器において、容器本体に、食品の香味を吸着しにくいポリエステル系樹脂を使用しようとする動きが活発になってきている。ポリエステル系樹脂の代表的な例としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらのうち、特にPETは、実質的に非晶性の状態では、いわゆるA−PET容器に広く使用されつつあり、部分結晶化した耐熱性の高い状態では、いわゆるC−PET容器に広く使用されつつある。
【0003】
一方、医療容器においては、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン等のエンジニアリングプラスチックが容器に用いられてきている。一例として、いわゆるハーフキットと呼ばれるキット製品に使用されるハーフキット用容器がある。
このハーフキット用容器は、一般的には、溶解液が収納された溶解液容器と、内部に樹脂製の針を収容したカプセルとが接続され、一体化されたものである。カプセルは、カプセル本体と、剥離可能な蓋材から構成されている。このカプセルを備えたハーフキット用容器を使用して、溶解液と他の抗生物質等の薬剤とを混合する場合には、まず、カプセルの蓋材を剥離する。ついで、抗生物質等の薬剤が収納され、ゴム栓で封止されたガラスバイアル瓶などの薬剤容器に、カプセル内の樹脂製の針を突き刺す。その結果、溶解液容器と薬剤容器とが連通し、溶解液と薬剤とが混合する。混合された薬液は、溶解液容器から注射針を通って排出される。このようなハーフキット用容器のうちカプセル本体には、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン等のエンジニアリングプラスチックが用いられている。また、カプセル本体と樹脂製の針が一体成形品からなるカプセルが接続されたハーフキット用容器もある。
【0004】
これらの容器における蓋材は、一般に、シーラントフィルムと、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ポリアミドフィルム、2軸延伸ポリエステルフィルム、紙あるいはアルミニウム箔等とを貼り合わせた形態となっている。シーラントフィルムは、ポリエステルやエンジニアリングプラスチックからなる容器本体に熱融着可能な易開封性フィルムであって、シーラントフィルムには多くの機能が求められている。
例えば、容器本体を変形しないような温度、圧力等でシールできるという低温シール性の他、易開封性を安定に満足できるようなシール強度(通常5〜20N/15mm幅である必要がある)を付与できることや、その安定性が求められる。また、容器本体の剥離面にシーラントフィルムが不均一に残存したり、糸引きしたりするという、いわゆる膜残りがなく、良好な外観を示す事(非膜残り性)が求められる。また、γ線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線や加熱により滅菌した場合にフィルムに不快な臭いが少ないという低臭性や、ヒートシール強度の低下がない、または少ない事などが求められる。
【0005】
易開封性フィルムとしてはこれまで種々の技術が公開され、一部実用に供されてきている。
例えば、特許文献1では、飽和ポリエステル樹脂と、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の特定のエチレン系共重合体とからなる組成物で構成される易開封性フィルムが開示されている。
また、特許文献2では、特定のポリエステル系樹脂とポリエチレン、ポリプロピレン及びそれらのグラフト変性物からなる樹脂組成物が、剥離表面に平滑性を付与できるフィルムの材料として公開されている。
特許文献3では、極性基含有エチレン系共重合体、ポリオレフィン樹脂、及び酸変性ポリオレフィンの混合物からなる層と、それに隣接した極性基含有エチレン系共重合体とエチレン・プロピレン共重合体との混合物からなる層の2層からなるシーラントフィルムも開示されている。
特許文献4では、極性基含有エチレン系共重合体とポリプロピレンあるいはエチレン・プロピレン共重合体からなる層を有する凝集破壊型シーラントフィルムの技術が開示されている。
また、特許文献5では、ポリエステル系樹脂からなるシール層と、それに隣接した極性基含有エチレン系共重合体からなる層の2層からなるフィルムが開示されている。
【特許文献1】特開昭59−59444号公報
【特許文献2】特開昭60−180833号公報
【特許文献3】特許第2883025号公報
【特許文献4】特許第2724938号公報
【特許文献5】特開2002−160329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の発明では、(メタ)アクリル酸エチル、酢酸ビニル等に刺激性のある臭い、あるいは不快臭があり、これらのモノマーを使った特定のエチレン系共重合体は、低臭性という意味で充分でなかった。また、エチレン共重合体とポリエステルとの混合後の分散状態が良好でないため、しばしば容器本体の剥離面上に、フィルム片状あるいは糸引き状などに膜残りが発生しやすいという問題があった。
特許文献2に記載の発明では、低温ヒートシール性が充分でなかった。さらに、特種なポリエステル系樹脂を用いているため、特にグラフト変性物を用いた場合には高価であり、経済的でないという問題があった。
特許文献3に記載の発明では、ヒートシール強度を安定に発現する上で不充分であった。
特許文献4に記載の発明では非膜残り性において不充分であると同時に、必要なヒートシール強度の発現とその安定性という意味で不充分であった。
特許文献5に記載のフィルムではシール層と容器本体との融着強度が高いために、容器本体からフィルムを剥がす際に、しばしばフィルムの第1層と第2層の間の層間剥離が発生し、フィルム片状に不均一に膜残り等が発生しやすいという欠点があった。
【0007】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、低温ヒートシール性、低臭性、及び非膜残り性がいずれも良好な易開封性フィルム、これを用いた蓋材及び容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、低温ヒートシール性、低臭性に優れ、フィルム片状、糸引き状などの不均一な膜残りが無く剥離後の外観にすぐれた易開封性フィルムについて鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなるフィルムを用いる事により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(6)に示される易開封性フィルム、これを用いた蓋材及び容器に関する。
(1)エチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなるエチレン系共重合体(A)と、ポリエステル樹脂(B)とを含むシール層を有することを特徴とする易開封性フィルム。
(2)前記ポリエステル樹脂(B)の融点は、100〜135℃であることを特徴とする(1)に記載の易開封性フィルム。
(3)前記シール層は、前記エチレン系共重合体(A)40〜90質量部及び前記ポリエステル樹脂(B)60〜10質量部〔前記エチレン系共重合体(A)と前記ポリエステル樹脂(B)との合計を100質量部とする。〕を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の易開封性フィルム。
(4)エチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなるエチレン系共重合体(A)と、ポリオレフィン樹脂(C)とを含むサポート層を前記シール層に隣接して有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の易開封性フィルム。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の易開封性フィルムを用いたことを特徴とする蓋材。
(6)(5)に記載の蓋材を備えることを特徴とする容器。
(7)ポリエステルからなる容器本体と(5)に記載の蓋材とを備えることを特徴とする容器。
(8)ポリカーボネートからなる容器本体と(5)に記載の蓋材とを備えることを特徴とする容器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低温ヒートシール性、低臭性及び非膜残り性がいずれも良好な易開封性フィルム、これを用いた蓋材及び容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下の記載において量比を表す「部」及び「%」は、特にことわらない限り質量基準とする。
本発明の易開封性フィルムは、エチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなるエチレン系共重合体(A)(以下、単に「(A)成分」ということもある。)と、ポリエステル樹脂(B)(以下、単に「(B)成分」ということもある。)とを含むシール層を有する。
なお、ここで(メタ)アクリル酸メチルとは、アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルを併せて記載したものである。
本発明の易開封性フィルムは、前記シール層のみからなる単層フィルムの形態であってもよいし、前記シール層と他の層とが積層された多層フィルムの形態であってもよい。
【0011】
本発明におけるシール層に用いられる(A)成分は、エチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなる。(A)成分としては、具体的にはエチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体が挙げられる。これらの共重合体を単独でまた2種を併用して用いることができるが、エチレン−アクリル酸メチル共重合体を単独で用いる事が、ヒートシール強度の安定化のみならず、易開封性フィルムの低臭性という観点から好ましい。
本発明に用いられる(A)成分におけるエチレン成分の含有量は、70質量%〜90質量%が好ましく、80質量%〜85質量%がより好ましい。70質量%未満だと耐熱性が不足したり、易開封性フィルムがブロッキングしやすくなったりする場合がある。エチレン成分の含有量が90質量%を超えると、混合するポリエステル樹脂(B)との分散が悪くなり、ヒートシール強度が安定的に発現しない場合や、非膜残り性が不十分となる場合がある。
【0012】
(A)成分のメルトフローレート(以下「MFR」という。)は特に限定はないが0.1g/10分〜100g/10分が一般的であり、1g/10分〜30g/10分がより望ましい。
なお、本発明においては、特に断らない限り、MFRは、JIS K 7210に準拠して温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した値である。
(A)成分に用いることができる市販品としては、日本ポリオレフィン株式会社製のレクスパール(登録商標)、住友化学工業株式会社製のアクリフト(登録商標)などが挙げられる。
【0013】
本発明におけるシール層に用いられるポリエステル樹脂(B)とは、熱可塑性のポリエステル樹脂であり、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合体である。
多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられるがこの限りではない。
また、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキシルジメタノール等が挙げられる。
上記の多塩基酸と多価アルコールとは任意の組み合わせで用いる事ができる。すなわち、任意の多塩基酸と任意の多価アルコールとを組み合わせてよいし、2種以上の多塩基酸あるいは2種以上の多価アルコールを用いてもよい。
【0014】
ポリエステル樹脂(B)の融点は、低温ヒートシール性と耐熱性をいずれも良好とするために、100〜135℃である事が好ましい。なお、融点はJIS K 7121に準拠し示差走査熱量測定(DSC)で測定した値である。
(B)成分のMFRは特に限定はないが0.1g/10分〜100g/10分が一般的であり、1g/10分〜30g/10分がより望ましい。(B)成分に用いることができる市販品としては、東洋紡績(株)のバイロン(登録商標)などが挙げられる。
【0015】
前記シール層は、少なくとも前記エチレン系共重合体(A)と前記ポリエステル樹脂(B)とを混合した組成物から得ることができる。
シール層におけるエチレン系共重合体(A)とポリエステル樹脂(B)の混合割合は40〜90/60〜10が好ましく、60〜80/40〜20がより好ましい。(A)成分の混合割合が90を越えると所望のヒートシール強度に到達できない場合があり、好ましくない。(A)成分の混合割合が40未満では、ヒートシール強度のばらつきが大きくなることがある。
(A)成分のMFRと、(B)成分のMFRとの比は特に限定されないが、(A)成分のMFR/(B)成分のMFRが0.3〜3であることが、混合樹脂の分散を良くし、結果としてヒートシール強度の安定化を図る意味で望ましい。
【0016】
本発明の易開封性フィルムは、エチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなるエチレン系共重合体(A)と、ポリオレフィン樹脂(C)(以下、単に「(C)成分」ということもある。)とを含むサポート層を前記シール層に隣接して有することが好ましい。
前記サポート層を設けることにより、低温ヒートシール性、低臭性及び非膜残り性に加えて、ヒートシールの施された場合にヒートシール強度を良好に保持することが可能な温度範囲が広くなる。すなわち、ヒートシールの耐熱性が向上するので、このような易開封性フィルムを用いると、ボイル、レトルト等の殺滅菌処理においても内容物を密閉して保持可能な容器を構成することができる。
このとき、殺滅菌処理における温度条件下でサポート層が前記シール層を良好に支持するために、サポート層はシール層に隣接していることが必要である。
また、前記サポート層は、シール層との層間接着強度が高いので、膜残りの問題も生じない。
【0017】
本発明におけるサポート層に用いられるエチレン系共重合体(A)は、シール層に用いられるエチレン系共重合体(A)と同じくエチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなる。サポート層において、(A)成分におけるエチレン成分の含有量、(A)成分のMFR、(A)成分に用いることができる市販品等の好適な範囲あるいは例示は、前記シール層における(A)成分と同様であるが、シール層及びサポート層のそれぞれにおけるエチレン系共重合体(A)は、必ずしも互いに同一の樹脂、すなわちメタクリル酸メチルまたはアクリル酸メチルの別、エチレン成分の含有量、MFR等が同一の共重合体である必要はない。但し、シール層及びサポート層において同一の樹脂を用いると、シール層とサポート層との層間接着強度がさらに高くなり、膜残りがさらに発生しにくくなるので好ましい。
【0018】
本発明のサポート層で用いられるポリオレフィン樹脂(C)としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモ、ランダム、ブロックと呼ばれるポリプロピレン等が挙げられる。
これらのうち、エチレン系共重合体(A)との相溶性が高く耐熱性が高いことから、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンが好ましい。
ポリオレフィン樹脂(C)は、過酸化物開始剤を用いて高圧法で、あるいはチーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒等を用いて低・中圧法で製造する事ができる。製造プロセスとしては、バルク、スラリー、気相、溶液法等各種用いる事ができ特に限定はない。
ポリオレフィン樹脂(C)のMFRに特に限定はないが、一般的には0.1〜100g/10分のものが用いられ、0.1〜50g/10分が好ましい。
【0019】
本発明においてサポート層を設ける場合、その(A)成分と(C)成分の混合割合は特に限定はないが、(A)成分の配合割合が、(A)成分と(C)成分との合計100質量%に対して40〜90質量%である事が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。40質量%未満だとシール層とサポート層との層間接着強度が低下し、層間剥離を生じやすくなる場合があり、膜残りが発生しやすくなる。90質量%を超えると耐熱性が低下する場合がある。
【0020】
本発明の易開封性フィルムにおいてサポート層を設けた場合、該サポート層のシール層とは反対側に、ポリオレフィン樹脂(C)からなるサポート外層をサポート層に隣接して設けることがさらに好ましい態様である。
このようなサポート外層を設けることにより、本発明の易開封性フィルムを、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等からなる基材と貼り合わせることが容易になる。また、耐熱性がさらに向上する。
基材としては、具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等からなる1軸あるいは2軸延伸フィルム、それらにアルミニウム、シリカ、アルミナ等を蒸着してなるフィルム、紙、アルミニウム箔等が挙げられる。基材は1種または2種以上を積層して用いてもよい。これらの基材には着色、印刷等の加工を施すことができるので、意匠性、バリア性、遮光性、耐ピンホール性、耐カール性等に優れた易開封性フィルムを提供することができる。
易開封性フィルムと基材との積層方法は、予め本発明の易開封性フィルムを成形しておいて、ドライラミネーション法で基材と積層する方法、あるいは、ポリエチレン等を介してサンドイッチラミネーションで基材と積層する方法、あるいは本発明の易開封性フィルムを構成する樹脂を多層の押出ラミネート成形機で基材上に直接積層する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の易開封性フィルムの厚みは特に限定されるものではないが、10〜100μmの範囲のものが低温ヒートシール性、ヒートシール強度等を良好に満足させるために好適である。さらに好ましい厚みは、20〜90μm、より好ましい厚みは25〜80μmである。
また、上記のサポート層をさらに有する易開封性フィルムの場合、そのシール層とサポート層の厚み比は、(シール層の厚み):(サポート層の厚み)=10〜40:90〜60(ただし、シール層の厚みとサポート層の厚みとの合計を100とする)の範囲が好適であり、(シール層の厚み):(サポート層の厚み)=20〜40:80〜60の範囲がより好ましい。ここで、サポート層に加えてサポート外層を設けた場合の厚み比は、(シール層の厚み):(サポート層の厚み):(サポート外層の厚み)=10〜40:10〜30:30〜80が好ましく、(シール層の厚み):(サポート層の厚み):(サポート外層の厚み)=20〜40:10〜30:30〜70がさらに好ましい。
【0022】
本発明におけるシール層などの各層には、本発明の目的に反しない範囲、すなわち低温ヒートシール性、低臭性、非膜残り性、を損なわない範囲で、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の樹脂を配合することはなんら問題ない。
この様な樹脂としては具体的には低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等のエチレン−不飽和モノカルボン酸共重合体及びその金属塩、エチレン−プロピレン共重合エラストマー、エチレン−1−ブテン共重合エラストマー、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー及びその水素付加物等の各種エラストマー、あるいは粘着付与樹脂として、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類等、いわゆるホットメルト接着剤分野で使用されている公知の粘着性樹脂が挙げられる。
【0023】
本発明におけるシール層、サポート層などの各層には、目的に応じて滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、着色剤、紫外線吸収剤、有機・無機充填剤等の任意の添加剤を配合することができる。
【0024】
本発明において各層を構成する組成物の調製は、前記(A)、(B)、(C)成分、添加剤、樹脂を同時にあるいは逐次的に混合する事により行われる。具体的には、各成分をタンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合後、成形機に投入する方法、タンブラー、ヘンシェルミキサーで混合後、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダ等を用いて溶融混合する方法が挙げられる。
本発明の易開封性フィルムを製造する方法としては特に限定はない。Tダイ成形機やインフレーション成形機を用いて押出法で製造する方法が一般的である。
また、サポート層を有する易開封性フィルムを製造する方法としては、多層のTダイ成形機や多層のインフレーション成形機を用いて共押出法で得る方法、あるいは、シール層またはサポート層のいずれか一方を予めフィルムに成形しておいて、該フィルム上に他方を押出ラミネート法で溶融積層する方法等が挙げられる。
【0025】
以上説明したように、本発明の易開封性フィルムにおいては、シール層においてエチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなるエチレン系共重合体(A)と、ポリエステル樹脂(B)とが用いられているので、不快な臭気を発生せず、かつ低温ヒートシール性が良好であり、容器に適用した場合の非膜残り性に優れる。
ここで、融点が100〜135℃であるポリエステル樹脂(B)を用いると、低温ヒートシール性と耐熱性の両立を容易に達成することができる。
また、前記シール層におけるエチレン系共重合体(A)とポリエステル樹脂(B)の混合割合を40〜90/60〜10とすると、ヒートシール強度を保持するとともに、ヒートシール強度のばらつきを防止することができる。
前記シール層に隣接し、エチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなるエチレン系共重合体(A)と、ポリオレフィン樹脂(C)とを含むサポート層をさらに有すると、低温ヒートシール性、非膜残り性に加えて、ボイル、レトルト等の殺滅菌処理に好適な耐熱性を有するものとなる。
【0026】
本発明の蓋材は、本発明の易開封性フィルムを用いて構成されたものであって、主にカップ状、トレー状などの容器本体に設置されて易開封性の容器を構成するものである。
本発明の易開封性フィルムを蓋材に適用する際、易開封性フィルムは、前記シール層からなる単層フィルム、あるいは前記シール層および前記サポート層からなる二層フィルムの形態であってもよいし、さらに上記のサポート外層を介して基材を設けた形態であってもよいが、一般的には、意匠性、バリア性、遮光性、耐ピンホール性、耐カール性等が容易に付与されうる、基材を設けた形態が用いられる。
【0027】
本発明の蓋材は、本発明の易開封性フィルムを有するので、容器本体に対する低温ヒートシール性と、剥離外観と、低臭性とをいずれも満たす。さらに易開封性フィルムが、前記二層フィルムからなる場合には、本発明の蓋材は耐熱性にも優れる。
【0028】
本発明の容器は、本発明の蓋材を備えることを特徴とする。
このような容器は、例えば、本発明の蓋材と、該蓋材と密着可能な形状のフランジ等の接着部及び食品等の内容物を収容する収容部を有するカップ状、トレー状などの容器本体とから構成することができる。なお、このような容器において、蓋材に用いられている易開封性フィルムがサポート層を有する場合には、シール層側を容器本体の接着部に密着させて構成する。
内容物を収容部に充填または収容した後、容器本体の接着部に接触するように蓋材を設置し、前記蓋材と容器本体とを熱板、高周波、超音波などを用いてヒートシールすることにより、本発明の容器を組み立てることができる。
【0029】
適用可能な容器本体の樹脂としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルまたはポリカーボネートを用いることが、透明性、低温ヒートシール性、ヒートシール強度に特に優れるので好ましい。ポリエステルは、テレフタル酸とグリコールに由来する単位からなるものであり、結晶性の低いA−PET、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する単位が共重合されたPETG、結晶性の高いC−PETが挙げられる。さらには稲畑産業(株)より入手可能なB−PETシート及び容器を使用することもできる。さらに、ポリエステルからなる容器本体に本発明の易開封性フィルムを有する蓋材を設けた場合には、蓋材を剥離した後の容器本体の剥離面にフィルム片状、糸引き状の膜残りがなく、剥離面は蓋材をヒートシールする前と同様の優れた外観を有する。一方、ポリカーボネートからなる容器本体に本発明の易開封性フィルムを有する蓋材を設けた場合には、蓋材を剥離した後の容器本体または蓋材のいずれかの剥離面に、シール樹脂が均一に残存した剥離痕が形成される。このような均一な剥離痕は、外観に優れるとともに、蓋材の剥離前には容器本体と蓋材とが確実にシールされていたことの証明となる。このように剥離痕からシール状態を確認できることは、医療分野において非常に重要である。よって、本発明の易開封性フィルム、蓋材、容器は、剥離面に剥離痕や膜残りが認められないことが求められる食品などの分野だけでなく、均一な剥離痕が残ることが求められる医療分野においても好適に使用される。
また、容器本体には、ポリエチレンをはじめ、上述の容器本体に用いられる樹脂などからなる内面層と、紙、アルミニウム箔及びバリア樹脂層などからなる積層体を用いることもできる。
【0030】
このような容器は、蓋材と、容器本体の接着部とが低温でヒートシールされており、内容物を容易に密閉して保存できるとともに、容易に開封され、開封後の接着部の外観、すなわち剥離外観が優れる。また、低臭性である。
さらに、蓋材に用いられた易開封性フィルムにおいて、上述のサポート層が設けられている場合には、このような容器を、引き続いてボイル、レトルト等の殺滅菌処理に供することができる。
ここで、ポリエステル系樹脂からなる容器本体を用いると、食品の香味を吸着しにくく、かつ低温ヒートシール性、剥離外観、蓋材の低臭性を満たした容器を提供することができる。
本発明の容器は、例えば、豆腐、トコロテン、ヨーグルト、ゼリー、コーヒー飲料、乳酸飲料、インスタント麺、和菓子、加工肉等の食品、あるいは薬品、医療器具、トナー等の内容物に好適に用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<樹脂>
[エチレン系共重合体(A)]
E1:MFR 6g/10分、アクリル酸メチル含有量20質量%のエチレン−アクリル酸メチル共重合体(日本ポリオレフィン株式会社製、「レクスパールRB 4200」)
E2:MFR 7g/10分、メタクリル酸メチル含有量18質量%のエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(住友化学工業株式会社製、「アクリフト WH303」)
[ポリエステル樹脂(B)]
ES1:MFR 13g/10分、融点 126℃のポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、「バイロンGM−913」)
ES2:MFR 10g/10分、融点 112℃のポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、「バイロンGM−990」)
[ポリオレフィン樹脂(C)]
PO1:MFR 3.5g/10分、密度 0.905g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン株式会社製、「ハーモレックスLL NC524A」)
PO2:MFR 3.5g/10分、密度 0.921g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン株式会社製、「ハーモレックスLL NC574R」)
PO3:MFR 3.5g/10分、密度 0.955g/cmの高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン株式会社製、「ジェイレクスHD」)
[その他樹脂]RE1:MFR 6g/10分、アクリル酸エチル18質量%のエチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ユニカー株式会社製、「NUC−6170」)
RE2:MFR 5g/10分、アクリル酸エチル19質量%のエチレン−アクリル酸エ
チル共重合体(三井・デユポンポリケミカル株式会社製、「エバフレックス−EEA A
702」)
RE3:MFR 2g/10分、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル15質量%
、日本ポリオレフィン株式会社製、「ジェイレクスEVA VE430A」)
RE4:MFR 3g/10分、密度 0.940g/cmのアイオノマー(三井・デ
ュポンポリケミカル株式会社製「ハイミラン」、Znイオンタイプ)
【0032】
<単層の易開封性フィルムの作製>
シール層のみからなる易開封性フィルム(以下、「単層の易開封性フィルム」という。
)を作製した。
各種樹脂を表1に示した組成でヘンシェルミキサーにて混合後、単層のTダイ成形機に投入し、温度210℃で成形して、表1に示した厚みの単層の易開封性フィルムを得た。
得られた単層の易開封性フィルムの片面にコロナ処理を施し、基材として厚み12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをドライラミネートして積層体と成し、蓋材のサンプルとした。
【0033】
【表1】

【0034】
<単層の易開封性フィルムの評価>
上記で得られた蓋材を20mm幅に切断した。この蓋材を、被着体として20mm幅に切断したA−PETシート(厚さ300μm、帝人株式会社製、「テイジンテトロンシート」)、あるいはポリカーボネートシート(厚さ2mm、旭硝子(株)製、レキサンシートカーボグラス)を用い、易開封性フィルムが接する様に重ね合わせた。
圧力0.2MPa、シール時間3秒、温度130℃、150℃及び170℃で、熱板により蓋材の基材側からの片面加熱でヒートシールを行った。
[単層の易開封性フィルムのヒートシール強度]
ヒートシールされたサンプルの両端を切断し、幅15mm幅のヒートシール強度測定用サンプルを得た。サンプルを温度23℃、相対湿度50%で24時間静置し、状態調節を行った。状態調節後のヒートシール強度を、剥離速度 300mm/分、180°剥離で測定し、15mm幅あたりのヒートシール強度で示した。
[単層の易開封性フィルムの剥離面外観]
ヒートシール強度の測定に使用したサンプルのA−PETシートあるいはポリカーボネートシートにおける剥離面を目視観察し、それぞれ次の2段階で評価した。
○・・・A−PETシート面が平滑で易開封性フィルムが残存していない。
×・・・A−PETシート面に易開封性フィルムが残存している部分がある。
□・・・ポリカーボネートシート面または蓋材面に均一な白化状態の剥離痕がある。
△・・・ポリカーボネートシート面に易開封製フィルムが片状、あるいは糸引き状に残存している部分がある。
[単層の易開封性フィルムの臭い]
得られた単層の易開封性フィルム10gをガラス瓶に入れ、ガラス瓶に蓋をした後、6
0℃のオーブンに1時間入れて加熱した。加熱後に取り出して蓋をしたまま室温で1日放
置した。ガラス瓶の蓋を開けて臭いを嗅ぎ、次の4段階で評価した。
◎・・・ほとんどにおわない。
○・・・臭いがあるが不快臭でない。
△・・・やや不快な臭いがするが問題ないレベルである。
×・・・強い不快な臭いがする。
評価結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
<多層の易開封性フィルムの作製>
シール層及びサポート層からなる易開封性フィルム、シール層、サポート層、サポート外層からなる易開封性フィルム(以下、これらをまとめて「多層の易開封性フィルム」という。)を作製した。
各種樹脂を表3に示した組成でヘンシェルミキサーにて混合後、3層のTダイ成形機に投入し、温度210℃で成形して、表3に示した構成の易開封性フィルムを得た。多層の易開封性フィルムのシール層と反対側、すなわちサポート層またはサポート外層の表面にコロナ処理を施し、上記単層の易開封性フィルムと同様の方法で蓋材のサンプルとした。
【0037】
【表3】

【0038】
<多層の易開封性フィルムの評価>
得られた蓋材を単層の易開封性フィルムと同様の方法でヒートシールして評価に供した。
[多層の易開封性フィルムのヒートシール強度]
ヒートシールされたサンプルの両端を切断し、幅15mm幅のヒートシール強度測定用サンプルを得た。このサンプルを85℃の湯に30分浸漬した。浸漬後のサンプルを用いて、単層の易開封性フィルムのヒートシール強度と同様にして、状態調節を行った後ヒートシール強度を測定した。
[耐熱性]
ヒートシールされたサンプルを85℃の湯に30分浸漬したときの蓋材の変形の程度を目視観察し、次の2段階で評価した。
○・・・変形していない。
×・・・変形した。
剥離面外観及び臭いについて、単層の易開封性フィルムと同様に評価した。
評価結果を表4に示す。
【0039】
【表4】

【0040】
以上表2から明らかなように、実施例1〜6で得られた易開封性フィルムは、130℃においても充分なヒートシール強度を達成し、すなわち低温ヒートシール性を有し、低臭性であった。また、シートがA−PETシートである実施例1〜4では、剥離面が平滑で易開封性フィルムが残存しておらず、剥離面外観が良好であった。一方、シートがポリカーボネートである実施例5および6では、剥離面に均一な白化状態の剥離痕があり、剥離面外観が良好であるとともに、蓋材の剥離前にはポリカーボネートシートと蓋材とが確実にシールされていたことが確認できた。
しかし、エチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチルからなるエチレン系共重合体(A)を含有しない比較例1、比較例5〜8では、剥離面外観の不良、あるいはヒートシール強度の不足が確認された。(メタ)アクリル酸メチル成分と異なる共重合成分を含む樹脂RE1、RE2、又はRE3を含有する比較例2〜4では、不快臭が発生した。
さらに、表4から明らかな様に、エチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなるエチレン系共重合体(A)と、ポリオレフィン樹脂(C)とを含むサポート層をさらに設けた実施例7〜9では、130℃においてもヒートシール可能な低温ヒートシール性に優れるだけで無く、130〜170℃の広い温度幅で安定した一定のヒートシール強度を示した。すなわち、ヒートシール可能な温度幅が広く、温水等に耐えるような耐熱性を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の易開封性フィルム、それを用いた蓋材は、例えば、豆腐、トコロテン、ヨーグルト、ゼリー、コーヒー飲料、乳酸飲料、インスタント麺、和菓子、加工肉等の食品、あるいは薬品、医療器具、インクカートリッジ等を内容物とした容器に好適である。特に易開封性フィルムにおいて基材を設けた場合は、透明な基材を用いて内容物の視認を容易としたり、基材に印刷、着色、蒸着等を施して、意匠性、バリア性、遮光性、耐ピンホール性、耐カール性等を付与することができるので、多種の用途に好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなるエチレン系共重合体(A)と、ポリエステル樹脂(B)とを含むシール層を有することを特徴とする易開封性フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂(B)の融点は、100〜135℃であることを特徴とする請求項1に記載の易開封性フィルム。
【請求項3】
前記シール層は、前記エチレン系共重合体(A)40〜90質量部及び前記ポリエステル樹脂(B)60〜10質量部〔前記エチレン系共重合体(A)と前記ポリエステル樹脂(B)との合計を100質量部とする。〕を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の易開封性フィルム。
【請求項4】
エチレン成分及び(メタ)アクリル酸メチル成分からなるエチレン系共重合体(A)と、ポリオレフィン樹脂(C)とを含むサポート層を前記シール層に隣接して有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の易開封性フィルム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の易開封性フィルムを用いたことを特徴とする蓋材。
【請求項6】
請求項5に記載の蓋材を備えることを特徴とする容器。
【請求項7】
ポリエステルからなる容器本体と請求項5に記載の蓋材とを備えることを特徴とする容器。
【請求項8】
ポリカーボネートからなる容器本体と請求項5に記載の蓋材とを備えることを特徴とする容器。


【公開番号】特開2006−117247(P2006−117247A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301633(P2004−301633)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(595159530)昭和電工プラスチックプロダクツ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】