説明

易開封性蓋材

【課題】蓋のタブ部分に熱処理に起因してカールが発生せず、しかも優れた易開封性を有するようにする。
【解決手段】、本発明の易開封性蓋材は、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(1)の下面に厚さ15μmのポリアミドフィルム(2)がドライラミネート接着剤により接合せられてなる基材層(3)の下面に、厚さ10μmの混合組成フィルム(4)とその上面に被覆せられた厚さ40μmのポリプロピレンフィルム(5)からなる合計厚さ50μmの共押出しフィルムが前記接着剤により接合せられてヒートシール材層(6)が形成せられたものであり、前記混合組成フィルム(4)が、ポリプロピレン90%とポリエチレン10%を混合してなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリン、ゼリー、スープ等の食品用ポリプロピレン樹脂製容器の開口部にヒートシールされる蓋用の易開封性蓋材、特に製品製造時内容物にレトルト、ボイル等の熱処理が加えられる食品容器の蓋に適した易開封性蓋材に関する。
【0002】
なお、この明細書および特許請求の範囲を通じて%は、重量%である。
【背景技術】
【0003】
従来、ポリエチレン樹脂製容器の蓋に使用される易開封性蓋材のヒートシール材層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂からなるフィルムが基材層に接合せられたもの或いはエチレン酢酸ビニル共重合体等を主成分とするホットメルトが基材層にコーティングせられたものが一般的である。
【0004】
そして、ヒートシール強度が安定しかつ易開封性を備えた蓋材として、下記特許文献1に開示の提案がある。この提案は、ヒートシール材層に低密度ポリエチレンとエチレン−αオレフィン共重合体とを混合したものを使用するという内容である。
【特許文献1】特開2001−19023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている蓋材は、ヒートシール強度を満足させる一方で易開封性をも達成することを目的とするものであるが、レトルト処理やボイル処理等の熱処理を施した場合の問題点についてはなんらの考慮もなされていない。すなわち、上記食品容器に蓋をヒートシールした後に、レトルト処理やボイル処理等の熱処理を施した場合、蓋のタブ部分がヒートシール材層側にカールし、開封時にトラブルが発生するという問題がある。これは特に、高温レトルト処理を施した場合に著しい。
【0006】
このカールの発生は、レトルト処理等における熱処理温度がヒートシール材層成分の融点よりも高い場合、ヒートシール材層の一部が溶融状態となって膨張し、その後冷却されることにより収縮が発生し、その収縮力により蓋のタブ部分がヒートシール材層側にカールすることによると推測される。カール発生の原因には、蓋材の構成、蓋材を製造する際の加工条件、ヒートシール材層の材質等が挙げられるが、なかでもカール発生の最大原因は、本発明者の研究の結果、ヒートシール材層の材質であることが判明した。
【0007】
上記に鑑み、本発明の目的は、蓋のタブ部分に熱処理に起因してカールが発生せず、しかも優れた易開封性を有する蓋材を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明による易開封性蓋材は、ポリプロピレン製容器またはフランジ上面がポリプロピレンフィルムで被覆せられた容器の蓋として使用せられるものであり、基材層とその下に形成せられたヒートシール材層とを備えた蓋材において、ヒートシール材層がポリプロピレン65〜99%とポリエチレン1〜35%を混合してなる混合組成フィルムであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項1の発明において、ヒートシール材層をポリプロピレン65〜99%とポリエチレン1〜35%を混合したものに限定したのは、ポリプロピレンが65%未満でポリエチレンが35%を超えると、ヒートシール材層の耐熱性が低下して熱処理を施した場合に、蓋のタブ部分にカールが発生するからであり、ポリプロピレンが99%を超え、ポリエチレンが1%未満であると、容器と蓋とのヒートシール強度が強くなり過ぎて易開封性が悪くなるからである。上記ポリプロピレンとしては、ランダムポリプロピンおよびブロックポリプロピレンよりも融点の高いホモポリプロピレンを使用することが好ましい。また、ポリエチレンとしては、融点の高い高密度ポリエチレンおよび線状低密度ポリエチレンが融点の低い低密度ポリエチレンよりも耐熱性上好ましい。上記ヒートシール材層に、必要に応じ、ワックス等の粘度調整剤、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン等の粘着付与剤、酸化ケイ素、酸化チタン、炭酸カルシウム等のブロッキング防止剤、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤が1〜20%添加される。上記ヒートシール材層の厚さは、20〜70μmである。基材層は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン等の合成樹脂フィルムの単層または強度を向上させるためにこのフィルムを複層となしてもよい。さらに、必要に応じてアルミニウム箔、アルミニウム蒸着合成樹脂フィルム、紙等を積層した多層構成となしてもよい。基材層の厚さは、一般的に9〜30μmである。
【0010】
なお、ポリプロピレン製容器には、ポリプロピレン樹脂に他の樹脂をブレンドしたポリプロピレンを主体とした容器をも含むものとする。また、フランジ上面がポリプロピレンフィルムで被覆せられた容器の材料としては、アルミニウム等の金属やポリカーボネート等の合成樹脂を挙げることができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載の易開封性蓋材において、ヒートシ材層がポリプロピレン80〜96%とポリエチレン4〜20%を混合してなる混合組成フィルムであることを特徴とするものである。請求項1記載の易開封性蓋材における混合組成フィルムの混合割合範囲のなかでも、特にこの範囲が好ましい。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の易開封性蓋材においてヒートシ材層が、前記混合組成フィルムの上面にポリプロピレンフィルムが被覆せられた共押出しフィルムであるものである。
【0013】
上記のように共押出しフィルムにするのは、蓋の開封を容器のフランジ部とヒートシール材層との界面剥離によるものではなく、蓋のヒートシール材層とその上面のポリプロピレンフィルムとの間の層間剥離によるようにこれを促進させる狙いとともに、フィルムの強度を向上させるためである。この共押出しフィルムにおいて、上面のポリプロピレンフィルムが占める比率は、80〜90%である。
【発明の効果】
【0014】
本発明による易開封性蓋材は、ポリプロピレン製容器またはフランジ上面がポリプロピレンフィルムで被覆せられた容器の蓋として使用せられるものであり、基材層とその下に形成せられたヒートシール材層とを備えた蓋材において、ヒートシ材層がポリプロピレン65〜99%とポリエチレン1〜35%を混合してなる混合組成フィルムであり、熱処理温度以上の融点をもつポリプロピレン成分が主体であるから、熱によるフィルムの収縮が抑えられ、処理温度の高いレトルト処理を実施した場合でもヒートシール材層は影響を受けず、蓋のタブ部分がカールしない。一方ポリプロピレン成分単体に近いフィルムを使用すると易開封性が損なわれるが、ポリエチレンの適切な前記割合の混合により易開封性は損なわれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明をどのように実施するかを具体的に説明するために、以下に実施例を比較例とともに示す。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の易開封性蓋材の構造を示すもので、蓋材は、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(1)の下面に厚さ15μmのポリアミドフィルム(2)がドライラミネート接着剤により接合せられてなる基材層(3)の下面に、厚さ10μmのポリプロピレンとポリエチレンを混合してなる混合組成フィルム(4)と厚さ40μmのポリプロピレンフィルム(5)からなる合計厚さ50μmの共押出しフィルムが前記接着剤により接合せられてヒートシール材層(6)が形成せられたものである。
【0017】
ヒートシール材層(6)を構成する混合組成フィルム(4)のポリプロピレンとポリエチレンの混合割合を表1のとおり種々かえた蓋を用意し、用意した蓋を温度170゜C、圧力2Kg/cmでポリプロピレン製容器のフランジ全面にヒートシールした後、密封容器を125゜Cで30分レトルト処理し、蓋のタブ部分のカール状態および蓋の易開封性を下記評価基準に照らして評価したところ、表1のとおりであった。なお、容器に対する蓋の密封性は、実施例および比較例ともに満足すべきものであった。
【0018】
〔評価基準〕
イ.レトルト処理後のタブ部分のカール状態
合格・・・・カール全くなし:◎ ややカール発生:○
不合格・・・・カール発生:△ 丸くなってタブがなくなる:×
ロ.易開封性
合格・・・10〜20Nレベル:◎ 21〜25Nレベル:○
不合格・・・26〜30Nレベル:△ 開封不可:×
【表1】

【0019】
表1上から明らかなように、本発明によるものは、レトルト処理後のタブ部分のカール発生が実用上支障のない範囲に防止され、しかも易開封性にも優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0021】
(3)基材層
(6)ヒートシール材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン製容器またはフランジ上面がポリプロピレンフィルムで被覆せられた容器の蓋として使用せられるものであり、基材層とその下に形成せられたヒートシール材層とを備えた蓋材において、ヒートシール材層が、ポリプロピレン65〜99%とポリエチレン1〜35%を混合してなる混合組成フィルムであることを特徴とする易開封性蓋材。
【請求項2】
ヒートシール材層が、ポリプロピレン80〜96%とポリエチレン4〜20%を混合してなる混合組成フィルムであることを特徴とする請求項1記載の易開封性蓋材。
【請求項3】
ヒートシ材層が、前記混合組成フィルムの上面にポリプロピレンフィルムが被覆せられた共押出しフィルムである請求項1または2記載の易開封性蓋材。


【図1】
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【公開番号】特開2007−153386(P2007−153386A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350389(P2005−350389)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(501428187)昭和電工パッケージング株式会社 (110)
【Fターム(参考)】