説明

星形ポリマー潤滑組成物

本発明は、(a)(i)重量平均分子量100,000〜500,000、および(ii)せん断安定度指数10〜60を有するポリマー0.1〜15重量%と、(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、(c)分散剤と、(d)潤滑粘性油とを含有する潤滑組成物を提供する。本発明は、放射状形または星形構造を有するポリマーを含む潤滑組成物を使用する、機械装置の潤滑方法をさらに提供する。一実施形態では、本発明は、自動変速機、トラクションドライブ変速機、マニュアル変速機、二段クラッチ変速機または連続可変変速機である機械装置に本発明の潤滑組成物を供給することを含む、機械装置の潤滑方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術)
本発明は、星形ポリマーなどのポリマー、リン含有化合物および分散剤を含有する潤滑組成物に関する。本発明は、潤滑組成物を使用する、機械装置の潤滑方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
潤滑組成物中に星形ポリマーを使用することは、知られている。潤滑組成物において知られる星形ポリマーは、以下の従来技術に要約されている。
【0003】
特許文献1は、RAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)またはATRP(原子移動ラジカル重合)重合法から調製されるブロックコポリマーを含有する潤滑組成物を開示している。このポリマーは、摩擦特性を有する。このブロックコポリマーは、ジブロック、トリブロック、マルチブロック、櫛状および/または星形の構造を有し得る。しかし、星形コポリマーを調製するのに適する方法について示されている指針はない。グリース、モーター油、ギヤボックス油、タービン油、油圧油、ポンプ油、伝熱油、絶縁油、切削油およびシリンダー油に適するポリマーも開示されている。
【0004】
特許文献2は、(i)多価(メタ)アクリルモノマー、そのオリゴマーもしくはポリマーまたは多価ジビニル非アクリルモノマー、そのオリゴマーもしくはポリマーを含むコア部分、および(ii)重合アルキル(メタ)アクリレートエステルの少なくとも2つのアームから誘導される星形ポリマーを開示している。これらのポリマーは、RAFT、ATRPまたは窒素酸化物媒介技法によって調製できる。
【0005】
特許文献3は、アクリルモノマーまたはメタクリルモノマーから調製される星形分枝ポリマーを開示している。これらのポリマーは、ポリオールのアクリレートエステルまたはメタクリレートエステルから誘導されるコアまたは核を有する。更に、これらのポリマーは、潤滑油組成物用にこれらのポリマーを有用にする分子量および他の物理特性も有する。開示されている星形分枝ポリマーは、アニオン重合技法によって調製される。
【0006】
特許文献4の星形ポリマーは、C16〜C30のアルキル(メタ)アクリレートを5〜10重量パーセント、ブチルメタクリレートを5〜15重量パーセント必要とする。C16〜C30のアルキル(メタ)アクリレートモノマーが5重量パーセント以上で存在する粘度指数向上剤により低温粘度性能が低下したが、その理由は、そのポリマーがろう質を有するからである。
【0007】
特許文献5は、ギヤ油、重合性共役ジオレフィンモノマー単位を水素化前に含み、3,000〜15,000の範囲内の数平均分子量を有する少なくとも4つのアームを含む水素化星形ポリマーを含む粘度指数向上剤から本質的になる、改良されたせん断安定度指数を有するギヤ油組成物を開示している。
【0008】
上記の従来技術の参考文献には、自動変速機などの機械装置に適する潤滑性能を維持しながら、許容可能な粘度指数(VI)、オイルブレンド増粘能力、改良された燃費、良好なせん断安定度、良好な低温粘度性能、および低い粘度調整剤処理レベルを同時に達成する、完全配合された潤滑組成物を開示しているものはない。
【0009】
従来技術の観点から、機械装置に適する潤滑性能を維持しながら、許容可能な粘度指数(VI)、オイルブレンド増粘能力、せん断安定度、良好な低温粘度性能、および低い粘度調整剤処理レベルを与え得るポリマーを含有する潤滑組成物を有することは有利であろう。
【特許文献1】国際公開第04/087850号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第05/038146号明細書
【特許文献3】国際公開第96/23012号パンフレット
【特許文献4】欧州特許第979834号明細書
【特許文献5】米国特許第5070131号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、機械装置に適する潤滑性能を維持しながら、許容可能な粘度指数(VI)、オイルブレンド増粘能力、せん断安定度、良好な低温粘度性能、および低い粘度調整剤処理レベルを与え得る潤滑組成物を提供する。
【0011】
従来技術の参考文献、特にWO96/23012およびUS5070131は、ポリマーを調製するためにアニオン重合技法を採用している。アニオン重合技法は、実質的に水、酸、酸素が含まれず、乾式であり、清浄であり、非汚染容器を有するべき系を必要とする複雑なプロセスを伴うと考えられる。特定の一実施形態では、酸素が含まれず、乾式であり、清浄である非汚染容器を必要とする複雑なプロセスを使用して調製されるポリマーを必要としない潤滑組成物を有することが有利であろう。一実施形態では、潤滑組成物は、アニオン重合技法による調製を必要としないポリマーを含有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
一実施形態では、本発明は、
(a)(i)100,000〜500,000の重量平均分子量、および(ii)10〜60のせん断安定度指数を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を提供する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、
(a)(i)100,000〜500,000の重量平均分子量、および(ii)10〜60のせん断安定度指数を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)摩擦調整剤と、
(e)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を提供する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、
(a)(i)100,000〜500,000の重量平均分子量、および(ii)10〜60のせん断安定度指数を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステル0.01重量%〜20重量%と、
(c)分散剤0.01重量%〜20重量%と、
(d)潤滑粘性油10重量%〜99.88重量%と
を含む潤滑組成物を提供する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、
(a)放射状形または星形構造を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を提供する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、
(a)放射状形または星形構造を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)摩擦調整剤と、
(e)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を提供する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、
(a)100,000〜500,000の重量平均分子量を有し、放射状形または星形構造を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を提供する。
【0018】
一実施形態では、本発明は、
(a)100,000〜500,000の重量平均分子量を有し、放射状形または星形構造を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)摩擦調整剤と、
(e)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を提供する。
【0019】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの内燃エンジン、油圧系統、ギヤ、ギヤボックスまたは変速機を含む機械装置に、
(a)(i)100,000〜500,000の重量平均分子量、および(ii)10〜60のせん断安定度指数を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を供給することを含む、機械装置の潤滑方法を提供する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの内燃エンジン、油圧系統、ギヤ、ギヤボックスまたはマニュアル変速機を含む機械装置に、
(a)放射状形または星形構造を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を供給することを含む、機械装置の潤滑方法を提供する。
【0021】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの内燃エンジン、油圧系統、ギヤ、ギヤボックスまたはマニュアル変速機を含む機械装置に、
(a)100,000〜500,000の重量平均分子量を有し、放射状形または星形構造を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を供給することを含む、機械装置の潤滑方法を提供する。
【0022】
一実施形態では、本発明は、自動変速機、トラクションドライブ変速機、マニュアル変速機、二段クラッチ変速機または連続可変変速機である機械装置に、
(a)20重量%以上のモノビニルモノマーから誘導され、100,000〜500,000の重量平均分子量を有し、10〜60のせん断安定度指数を有するポリマーと、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を供給することを含む、機械装置の潤滑方法を提供する。
【0023】
一実施形態では、本発明は、自動変速機、トラクションドライブ変速機、マニュアル変速機、二段クラッチ変速機または連続可変変速機である機械装置に、
(a)放射状形または星形構造を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を供給することを含む、機械装置の潤滑方法を提供する。
【0024】
一実施形態では、本発明は、自動変速機、トラクションドライブ変速機、マニュアル変速機、二段クラッチ変速機または連続可変変速機である機械装置に、
(a)100,000〜500,000の重量平均分子量を有し、放射状形または星形構造を有するポリマー0.1〜15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を供給することを含む、機械装置の潤滑方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明は、上記に開示した潤滑組成物および機械装置の潤滑方法を提供する。
【0026】
ポリマー
本明細書で使用される場合、「ポリマーは、からなるモノマーを有する(または含有する)」などの用語は、ポリマーが、言及される特定のモノマーから誘導される単位を含むことを意味する。
【0027】
異なる実施形態では、ポリマーは、約20重量%以上、または50重量%超、または約55重量%以上、または約70重量%以上、または約90重量%以上、または約95重量%以上、または約100重量%の非ジエンモノマー(即ち、非ジエンモノマー単位または1つもしくは複数の非ジエンモノマーの重合から誘導される単位)を含有し得る。ジエンモノマーの例には、1,3−ブタジエンまたはイソプレンが挙げられる。非ジエンモノマーまたはモノビニルモノマーの例には、スチレン、メタクリレート、またはアクリレートが挙げられる。
【0028】
一実施形態では、ポリマーは、20重量%以上のモノビニルモノマーから誘導され、100,000〜500,000の重量平均分子量を有し、放射状形または星形構造を有し得る。
【0029】
ポリマーが放射状形または星形ポリマーである場合、上記のようなモノビニルモノマーの量は、ポリマーアームの組成物のみを指し、即ち、示される重量%の値は、ポリマーコア中に見つかる任意の二官能性(または高次の)モノマーを除く。
【0030】
以下に記載するように、粘度調整剤の分子量は、ポリスチレン標準試料を使用するGPC分析などの公知の方法を使用して決定されてきた。ポリマーの分子量を決定する方法は、周知である。それらの方法は、例えば(i)P.J. Flory、「Principles of Polymer Chemistry」、Cornell University Press 91953)、第VII章、266〜315頁、または(ii)「Macromolecules, an Introduction to Polymer Science」、F. A. BoveyおよびF. H. Winslow編、Academic Press(1979年)、296〜312頁に記載されている。本明細書で使用される場合、本発明のポリマーの重量平均分子量および数重量平均分子量は、希釈剤、不純物、非カップリングポリマー鎖および他の添加剤と関連するピークを除き、通常、高分子量を主とするピークである、本発明のポリマーに相当するピーク下の面積を積分することによって得られる。通常、本発明のポリマーは、放射状形または星形構造を有する。
【0031】
ポリマーの重量平均分子量は、125,000〜400,000、または175,000〜375,000または225,000〜325,000の範囲内にあり得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、せん断安定度は、20時間KRL試験(Volkswagen Tapered Bearing Roller Test)によって決定できる。この試験手順は、CEC−L−45−A−99およびDIN 51350−6−KRL/Cの双方に提示されている。せん断安定度指数(SSI)は、式SSI=100×(せん断前の流体粘度−せん断後の流体粘度)/(せん断前の流体粘度−VM無しの流体粘度)から算出される。ポリマーのSSIは、10〜60、または15〜50、または20〜45の範囲内にあり得る。
【0033】
ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。一実施形態では、ポリマーはコポリマーである。このポリマーは、分枝、櫛状、放射状形または星形の構造を有し得る。一実施形態では、ポリマーは、放射状形もしくは星形ポリマー、またはそれらの混合物であり得る。このポリマーは、ランダム、テーパード(tapered)、ジブロック、トリブロックまたはマルチブロックの構造を有するポリマーであり得る。通常、このポリマーは、ランダム構造またはテーパード構造を有する。
【0034】
このポリマーは、分枝、櫛状、放射状形または星形の構造を有する場合、ポリマーアームを有する。そのような物質の場合、そのポリマーアームは、ブロック構造、もしくはヘテロ構造、またはテーパードブロック構造を有し得る。テーパードブロック構造は、ポリマーアーム長にわたって可変組成を有する。例えば、テーパードブロックアームは、一方の端部にある相対的に純粋な第1のモノマーと他方の端部にある相対的に純粋な第2のモノマーとからなり得る。そのアームの中央は、ほぼ、その2つのモノマーの傾斜組成である。
【0035】
ブロックアームから誘導されるポリマーは、通常、同アーム内のブロック構造中の2つ以上のモノマーから誘導されるポリマーアームを1つまたは複数含有する。ブロックアームのより詳細な説明は、Henry HsiehおよびRoderic Quirkによる「Anionic Polymerization, Principles and Practical Applications」の第13章(333〜368頁)(Marcel Dekker, Inc、New York、1996年)(以下ではHsiehらと称する)に示されている。
【0036】
ヘテロアーム、または「ミクトアーム」のポリマーアーム構造は、通常、上記引用したHsiehらに定義されているように、分子量、組成物またはその双方のいずれかが互いに異なり得る各アームを含有する。例えば、所与のポリマーのアームの部分は、1つのポリマー種および第2のポリマー種の部分を有してもよい。より複雑なヘテロアームポリマーは、3つ以上のポリマーアームの部分とカップリング剤とを組み合わせることによって形成できる。
【0037】
ポリマーが放射状形または星形構造を有する場合、そのポリマーアームはコア部分に化学結合され得る。このコア部分は、多価(メタ)アクリルモノマー、そのオリゴマー、ポリマー、もしくはコポリマー、または多価ジビニル非アクリルモノマー、そのオリゴマーポリマー、もしくはコポリマーであり得る。一実施形態では、多価ジビニル非アクリルモノマーは、ジビニルベンゼンである。一実施形態では、多価(メタ)アクリルモノマーは、ポリオールのアクリレートエステルもしくはメタクリレートエステルまたはポリアミンのアミドなどのポリアミンのメタクリルアミド、例えばメタクリルアミドもしくはアクリルアミドである。異なる実施形態では、多価(メタ)アクリルモノマーは、(i)アクリル酸もしくはメタクリル酸とポリオールとの縮合反応生成物または(ii)アクリル酸もしくはメタクリル酸とポリアミンとの縮合反応生成物である。
【0038】
アクリル酸またはメタクリル酸と縮合し得るポリオールは、一実施形態では2〜20個の炭素原子を含有し、別の実施形態では3〜15個の炭素原子を含有し、別の実施形態では4〜12個の炭素原子を含有し;存在するヒドロキシル基の数は、一実施形態では2〜10であり、別の実施形態では2〜4であり、別の実施形態では2である。ポリオールの例には、エチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、1,6ヘキサンジオールなどのアルカンジオールまたはトリメチロールプロパン、Perstorp Polyolにより販売されているBoltorn(登録商標)材料などのオリゴマー化トリメチロールプロパンなどのトリオールが挙げられる。ポリアミンの例には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびそれらの混合物などのポリアルキレンポリアミンが挙げられる。
【0039】
多価不飽和(メタ)アクリルモノマーの例には、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、マンニトールヘキサアクリレート、4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、分子量200〜4,000のポリエチレングリコールのビス−アクリレートおよびメタクリレート、ポリカプロラクトンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサメチレンジオールジアクリレートもしくはヘキサメチレンジオールジメタクリレートまたはアルキレンビス−(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0040】
多価カップリング剤の量は、アームとして予め調製されたポリマーを、モノマー、オリゴマー、またはポリマー形態でカップリング剤を含むコア上にカップリングさせることにより星形ポリマーを与えるのに適する量であり得る。上記のように、適切な量は、いくつかの変数が関与し得るとしても、当業者によって最低限の実験で容易に決定できる。例えば、過剰量のカップリング剤を採用する場合、またはポリマーアームの形成からの過剰の未反応モノマーがこの系中に残存している場合、星形形成ではなく架橋が生じ得る。通常、ポリマーアームとカップリング剤とのモル比は、50:1〜1.5:1(もしくは1:1)、または30:1〜2:1、または10:1〜3:1、または7:1〜4:1、または4:1〜1:1であり得る。他の実施形態では、ポリマーアームとカップリング剤とのモル比は、50:1〜0.5:1、または30:1〜1:1、または7:1〜2:1であり得る。所望の比は、アーム長を考慮するように調整することもでき、より長いアームは、より短いアームよりカップリング剤を多く許容しまたは多く必要とすることがある。通常、調製される材料は、潤滑粘性油に溶ける。
【0041】
一実施形態では、ポリマーのポリマーアームは、放射状形もしくは星形ポリマーの形成前または非カップリング単位上で測定される場合、2以下、または1.7以下、または1.5以下、例えば1〜1.4の多分散度を有する。一実施形態では、放射状形または星形構造を有するポリマーを含むポリマー組成物全体は、二様式または高次様式の分布を有する多分散度を有する。この組成物全体中の二様式または高次様式の分布は、一つには、そのポリマーが調製される際に形成される、可変量の非カップリングポリマー鎖および/または非カップリング放射状形もしくは星形ポリマーあるいはスターツースター(star−to−star)カップリングの存在が原因であると考えられる。
【0042】
したがって、放射状形または星形構造を有するポリマーを含有する組成物全体は、存在する非カップリングポリマーアーム(ポリマー鎖または線状ポリマーとも称する)も有し得る。ポリマー鎖が放射状形または星形ポリマーに変換される比率(%)は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも40%、または少なくとも55%、例えば少なくとも70%、少なくとも75%または少なくとも80%であり得る。一実施形態では、ポリマー鎖の放射状形または星形ポリマーへの変換率は、90%、95%または100%であり得る。一実施形態では、ポリマー鎖の部分は、星形ポリマーを形成せず、線状ポリマーとして残存する。一実施形態では、このポリマーは、(i)放射状形または星形構造を有するポリマー、および(ii)線状ポリマー鎖(非カップリングポリマーアームとも称する)の混合物である。異なる実施形態では、ポリマー組成物中の放射状形または星形構造の量は、ポリマーの量の10重量%〜85重量%、または25重量%〜70重量%であり得る。異なる実施形態では、線状ポリマー鎖は、ポリマーの量の15重量%〜90重量%、または30重量%〜75重量%で存在し得る。
【0043】
分枝、櫛状、放射状形または星形の構造を有するポリマーは、2以上のアーム、または5以上のアーム、または7以上のアーム、または10以上のアーム、例えば12〜100、または14〜50、または16〜40のアームを有し得る。分枝、櫛状、放射状形または星形の構造を有するポリマーは、120以下のアーム、または80以下のアーム、または60以下のアームを有し得る。
【0044】
ポリマーは、制御ラジカル重合技法から得ることができる/得ることが可能である。制御ラジカル重合技法の例には、RAFT、ATRPまたは窒素酸化物媒介法が挙げられる。ポリマーは、アニオン重合法からも得ることができる/得ることが可能である。一実施形態では、ポリマーは、RAFT、ATRPまたはアニオン重合法から得ることができる/得ることが可能である。一実施形態では、ポリマーは、RAFTまたはATRP重合法から得ることができる/得ることが可能である。一実施形態では、ポリマーは、RAFT重合法から得ることができる/得ることが可能である。
【0045】
ATRP、RAFTまたは窒素酸化物媒介技法を使用する、ポリマーの調製方法は、米国特許出願US05/038146の実施例の項の実施例1〜47に開示されている。
【0046】
重合メカニズムおよび関連する化学のより詳細な説明は、John Wiley and Sons Incにより出版されているHandbook of Radical Polymerization、Krzysztof MatyjaszewskiおよびThomas P. Davis編、2002年(以下で「Matyjaszewskiら」と称する)の、窒素酸化物媒介重合(第10章、463〜522頁)、ATRP(第11章、523〜628頁)およびRAFT(第12章、629〜690頁)に論じられている。
【0047】
このポリマーのATRP重合メカニズムの議論は、Matyjaszewskiらの524頁の反応スキーム11.1、566頁の反応スキーム11.4、571頁の反応スキーム11,7、572頁の反応スキーム11.8および575頁の反応スキーム11.9に示されている。
【0048】
ATRP重合では、ラジカルメカニズムにより移動され得る基には、ハロゲン(ハロゲン含有化合物からの)または種々のリガンドが挙げられる。移動され得る基のより詳細な総説は、US6391996、または米国特許出願US05/038146のパラグラフ61〜65に記載されている。
【0049】
ATRP重合に使用し得るハロゲン含有化合物の例には、p−クロロメチルスチレン、α−ジクロロキシレン、α,α−ジクロロキシレン、α,α−ジブロモキシレン、ヘキサキス(α−ブロモメチル)ベンゼン、塩化ベンジル、臭化ベンジル、1−ブロモ−1−フェニルエタンおよび1−クロロ−1−フェニルエタンなどのハロゲン化ベンジル;プロピル2−ブロモプロピオネート、メチル2−クロロプロピオネート、エチル2−クロロプロピオネート、メチル2−ブロモプロピオネート、およびエチル2−ブロモイソブチレートなどの、α位でハロゲン化されているカルボン酸誘導体;塩化p−トルエンスルホニルなどのハロゲン化トシル;テトラクロロメタン、トリブロモメタン、塩化1−ビニルエチル、および臭化1−ビニルエチルなどのハロゲン化アルキル;ならびにジメチルリン酸などのリン酸エステルのハロゲン誘導体が挙げられる。
【0050】
ハロゲン化合物が採用される場合の一実施形態では、銅などの遷移金属も存在する。この遷移金属は、塩形態であり得る。この遷移金属は金属−リガンド結合を形成することができ、リガンドと金属との比率はリガンドの配座数および金属の配位数に依存する。リガンドは、窒素含有またはリン含有リガンドであり得る。
【0051】
適切なリガンドの例には、トリフェニルホスフィン、2,2−ビピリジン、4,4−ジ−(5−ヘプチル)−2,2−ビピリジンなどのアルキル−2,2−ビピリジン、トリス(2−アミノエチル)アミン(TREN)、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、4,4−ジ−(5−ノニル)−2,2−ビピリジン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミンおよび/またはテトラメチルエチレンジアミンが挙げられる。更に適切なリガンドは、例えば国際特許出願WO97/47661に記載されている。リガンドは、単独で、または混合物として使用してもよい。一実施形態では、窒素含有リガンドは銅の存在下で採用される。一実施形態では、リガンドはリンを含有し、トリフェニルホスフィン(PPh)は汎用されるリガンドである。トリフェニルホスフィンリガンドに適切な遷移金属には、Rh、Ru、Fe、Re、NiまたはPdが挙げられる。
【0052】
RAFT重合では、連鎖移動剤が重要である。適切な連鎖移動剤のより詳細な総説は、米国特許出願US05/038146のパラグラフ66〜71に見られる。適切なRAFT連鎖移動剤の例には、ベンジル1−(2−ピロリジノン)カルボジチオエート、ベンジル(1,2−ベンゼンジカルボキシミド)カルボジチオエート、2−シアノプロプ−2−イル1−ピロールカルボジチオエート、2−シアノブト−2−イル1−ピロールカルボジチオエート、ベンジル1−イミダゾールカルボジチオエート、N,N−ジメチル−S−(2−シアノプロプ−2−イル)ジチオカルバメート、N,N−ジエチル−S−ベンジルジチオカルバメート、シアノメチル1−(2−ピロリドン)カルボジトエート、クミルジチオベンゾエート、2−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニル−2−メチル−プロピオン酸ブチルエステル、O−フェニル−S−ベンジルキサンテート、N,N−ジエチルS−(2−エトキシ−カルボニルプロプ−2−イル)ジチオカルバメート、ジチオ安息香酸、4−クロロジチオ安息香酸、O−エチル−S−(1−フェニルエチル)キサンテート、O−エチル−S−(2−(エトキシカルボニル)プロプ−2−イル)キサンテート、O−エチル−S−(2−シアノプロプ−2−イル)キサンテート、O−エチル−S−(2−シアノプロプ−2−イル)キサンテート、O−エチル−S−シアノメチルキサンテート、O−ペンタフルオロフェニル−S−ベンジルキサンテート、3−ベンジルチオ−5,5−ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1−チオンまたはベンジル3,3−ジ(ベンジルチオ)プロプ−2−エンジチオエート、S,S’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカルボネート、S,S’−ビス−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカルボネートまたはS−アルキル−S’−(α,α’−二置換−α”−酢酸)−トリチオカルボネート、ベンジルジチオベンゾエート、1−フェニルエチルジチオベンゾエート、2−フェニルプロプ−2−イルジチオベンゾエート、1−アセトキシエチルジチオベンゾエート、ヘキサキス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス−(2−(チオベンゾイルチオ)−プロプ−2−イル)ベンゼン、1−(4−メトキシフェニル)エチルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、エトキシカルボニルメチルジチオアセテート、2−(エトキシカルボニル)プロプ−2−イルジチオベンゾエート、2,4,4−トリメチルペント−2−イルジチオベンゾエート、2−(4−クロロフェニル)プロプ−2−イルジチオベンゾエート、3−ビニルベンジルジチオベンゾエート、4−ビニルベンジルジチオベンゾエート、S−ベンジルジエトキシホスフィニルジチオホルメート、tert−ブチルトリチオペルベンゾエート、2−フェニルプロプ−2−イル4−クロロジチオベンゾエート、2−フェニルプロプ−2−イル1−ジチオナフタレート、4−シアノペンタン酸ジチオベンゾエート、ジベンジルテトラチオテレフタレート、ジベンジルトリチオカルボネート、カルボキシメチルジチオベンゾエートもしくはジチオベンゾエート末端基を有するポリ(エチレンオキシド)またはそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
一実施形態では、適切なRAFT連鎖移動剤には、2−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニル−2−メチル−プロピオン酸ブチルエステル、クミルジチオベンゾエートまたはそれらの混合物が挙げられる。
【0054】
ポリマーのRAFT重合メカニズムの議論は、Matyjaszewskiらの12.4.4項の664〜665頁に示されている。
【0055】
ポリマーがアニオン重合技法から調製される場合、開始剤には、例えば、アルキルリチウム化合物(例:メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム)、シクロアルキルリチウム化合物(例:シクロヘキシルリチウムならびにアリールリチウム化合物(例:フェニルリチウム、1−メチルスチリルリチウム、p−トリルリチウム、ナフチルリチウムおよび1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウムなどのヒドロカルビルリチウム開始剤が挙げられる。また、有用な開始剤には、ナフタレンナトリウム、1,4−ジソジオ−1,1,4,4−テトラフェニルブタン、ジフェニルメチルカリウムまたはジフェニルメチルナトリウムが挙げられる。
【0056】
この重合法は、水分および酸素の不在下でも、少なくとも1つの不活性溶媒の存在下でも行うことができる。一実施形態では、アニオン重合は、アニオン触媒系に不利である任意の不純物の不在下で行われる。不活性溶媒には、炭化水素、芳香族溶媒またはエーテルが挙げられる。適切な溶媒には、イソブタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジグリム、テトラグリム、オルトテルフェニル、ビフェニル、デカリンまたはテトラリンが挙げられる。
【0057】
アニオン重合法は、0℃〜−78℃の温度で行うことができる。
【0058】
アニオン法から誘導されるポリマーの調製方法のより詳細な説明は、国際特許出願WO96/23012、3頁11行目〜5頁8行目に論じられている。WO96/23012の7頁25行目〜10頁15行目には、アニオン重合技法によるポリマーの調製方法も記載されている。アニオン重合法の詳細な説明は、Textbook of Polymer Science、Fred W. Billmeyer Jr.編、第3版、1984年、第4章、88〜90頁に示されている。
【0059】
ポリマーは、(a)(i)ビニル芳香族モノマー、および(ii)カルボン酸モノマー(通常、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸もしくはイタコン酸)またはそれらの誘導体を含むモノマーから誘導されるポリマー、(b)ポリ(メタ)アクリレート、(c)官能化ポリオレフィン、(d)エチレン酢酸ビニルコポリマー、(e)フマレートコポリマー、(f)(i)α−オレフィンおよび(ii)カルボン酸モノマー(通常、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸もしくはイタコン酸)またはそれらの誘導体から誘導されるコポリマー、あるいは(g)それらの混合物を少なくとも1つ含み得る。一実施形態では、ペンダント基を有するポリマーは、ポリメタクリレートまたはその混合物を含む。
【0060】
ポリマーは、ポリメタクリレートである場合、
(a)そのメタクリレートのアルキル基が10〜30個、または10〜20個、または12〜18個、または12〜15個の炭素原子を有するアルキルメタクリレート50重量%〜100重量%(または65重量%〜95重量%)と、
(b)そのメタクリレートのアルキル基が1〜9個、または1〜4個の炭素原子(例えばメチル、ブチル、または2−エチルヘキシル)を有するアルキルメタクリレート0重量%〜40重量%(または5重量%〜30重量%)と、
(c)窒素含有モノマー0重量%〜10重量%(または0重量%〜5重量%)と
を含むモノマー組成物から誘導され得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語(メタ)アクリレートは、アクリレート単位またはメタクリレート単位を意味する。アルキル(メタ)アクリレートには、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−ブチルオクチル、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2−tert−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)−アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)−アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル−(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートおよび/またはエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレートなどの、飽和アルコールから誘導される化合物;オレイル(メタ)アクリレートなどの、不飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート;ならびに3−ビニル−2−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートまたはボルニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0062】
長鎖アルコール誘導基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、例えば、(メタ)アクリル酸(直接エステル化による)またはメチルメタクリレート(エステル交換による)と長鎖脂肪アルコールとの反応によって得ることができ、その反応では、様々な鎖長のアルコール基を有する(メタ)アクリレートなどのエステルの混合物が通常得られる。これらの脂肪アルコールには、MonsantoのOxo Alcohol(登録商標)7911、Oxo Alcohol(登録商標)7900およびOxo Alcohol(登録商標)1100;ICIのAlphanol(登録商標)79;Condea(現在Sasol)のNafol(登録商標)1620、Alfol(登録商標)610およびAlfol(登録商標)810;Ethyl CorporationのEpal(登録商標)610およびEpal(登録商標)810;Shell AGのLinevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911およびDobanol(登録商標)25L;Condea Augusta,MilanのLial(登録商標)125;Henkel KGaA(現在Cognis)のDehydad(登録商標)およびLorol(登録商標)ならびにUgine KuhlmannのLinopol(登録商標)7〜11およびAcropol(登録商標)91が挙げられる。
【0063】
一実施形態では、星形ポリマーは、窒素含有モノマーを使用してそのコアまたはポリマーアーム中で更に官能化される。窒素含有モノマーには、ビニル置換窒素複素環モノマー、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドモノマー、第3級−(メタ)アクリルアミドモノマーまたはそれらの混合物を挙げることができる。
【0064】
一実施形態では、コアまたはポリマーアームは、式
【0065】
【化1】

(式中、
Qは水素またはメチルであり、一実施形態では、Qはメチルであり、
Zは、N−H基またはO(酸素)であり、
各Riiは、独立に、水素または1〜8個、もしくは1〜4個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、
各Rは、独立に、水素または1〜2個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、一実施形態では、各Rは水素であり、
gは1〜6の整数であり、一実施形態では、gは1〜3である)
により表すことができる(メタ)アクリルアミドまたは窒素含有(メタ)アクリレートモノマーも更に含む。
【0066】
適切な窒素含有モノマーの例には、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボンアミド、ビニルピリジン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−n−プロピオンアミド、N−ビニルヒドロキシアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルカプロラクタム、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、ジメチルアミノブチルアクリルアミド、ジメチルアミン−プロピルメタクリレート(DMAPMA)、ジメチルアミン−プロピル−アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチル−アクリルアミドまたはそれらの混合物が挙げられる。
【0067】
ポリマーは、0.5〜12重量%、または1〜10重量%、または2〜8重量%を含めた範囲で潤滑組成物中に存在し得る。
【0068】
リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステル
リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、摩擦調整剤、摩耗防止剤、極圧添加剤またはそれらの混合物であり得る。一実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、混合物の形態である。
【0069】
リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、金属を含有してもよいし(他の成分と混合される前に)含有しなくてもよい。
【0070】
リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、リン酸、亜リン酸、チオリン酸、チオ亜リン酸、またはそれらの混合物から誘導され得る。
【0071】
リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルには、(i)非イオン性リン化合物、(ii)リン化合物のアミン塩、(iii)リン化合物のアンモニウム塩、(iv)金属ジアルキルジチオホスフェートもしくは金属ジアルキルホスフェートなどのリン化合物の一価金属塩、または(v)(i)、(ii)、(iii)もしくは(iv)の混合物が挙げられる。
【0072】
一実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、金属ジアルキルジチオホスフェートまたは金属ジアルキルホスフェートを含む。このジアルキルジチオホスフェートおよび/またはジアルキルホスフェートのアルキル基は、2〜20個の炭素原子を含有する直鎖または分枝であり得るが、但し、全炭素数は、金属ジアルキルジチオホスフェートを油溶性にするのに十分であるとする。金属ジアルキルジチオホスフェートおよび/またはジアルキルホスフェートの金属は、通常、一価または二価の金属を含む。適切な金属の例には、ナトリウム、カリウム、銅、カルシウム、マグネシウム、バリウムまたは亜鉛が挙げられる。一実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートである。一実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、亜鉛ジアルキルホスフェートである。適切な亜鉛ジアルキルホスフェート(ZDDP、ZDPまたはZDTPとよく称される)の例には、亜鉛ジ−(2−メチルプロピル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(アミル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(1,3−ジメチルブチル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(ヘプチル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(オクチル)ジチオホスフェート ジ−(2−エチルヘキシル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(ノニル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(デシル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(ドデシル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(ドデシルフェニル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(ヘプチルフェニル)ジチオホスフェート、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0073】
一実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、金属ジアルキルジチオホスフェート以外である。
【0074】
一実施形態では、リン含有酸はリン酸である。
【0075】
一実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、リン含有酸またはリン含有エステルのアンモニウム塩またはアミン塩を含む。
【0076】
リン酸またはエステルのアミン塩には、リン酸エステルおよびそのアミン塩;ジアルキルジチオリン酸エステルおよびそのアミン塩;ホスファイトのアミン塩;ならびにリン含有カルボン酸エステル、エーテル、およびアミドのアミン塩;ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0077】
リン酸またはエステルのアミン塩は、単独または組合せで使用してもよい。一実施形態では、リン化合物のアミン塩は、リン化合物のアミン塩、またはそれらの混合物から誘導される。
【0078】
一実施形態では、リン酸またはエステルのアミン塩は、部分アミン塩−部分金属塩化合物またはそれらの混合物を含める。一実施形態では、リン酸またはエステルのアミン塩は、その分子中に硫黄原子も更に含む。
【0079】
アミン塩としての使用に適し得るアミンには、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、およびそれらの混合物が挙げられる。アミンには、少なくとも1つのヒドロカルビル基、またはある種の実施形態では2つもしくは3つのヒドロカルビル基を有するアミンが挙げられる。ヒドロカルビル基は、2〜30個の炭素原子、または他の実施形態では8〜26個、もしくは10〜20個、もしくは13〜19個の炭素原子を含有し得る。
【0080】
第1級アミンには、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、およびドデシル−アミン、ならびにn−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミンおよびオレイルアミンのような脂肪アミンが挙げられる。他の有用な脂肪アミンには、Armeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen SおよびArmeen SDなどの「Armeen(登録商標)」のアミン(Akzo Chemicals、Chicago、Illinoisより入手できる製品)などの市販の脂肪アミンが挙げられ、この場合、文字の記号表示は、ココ、オレイル、獣脂、またはステアリルの各基などの脂肪基に関する。
【0081】
適切な第2級アミンの例には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミンおよびエチルアミルアミンが挙げられる。第2級アミンは、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンなどの環式アミンであってもよい。
【0082】
アミンは、第3級−脂肪族第1級アミンでもあってもよい。この場合の脂肪族基は、2〜30個、または6〜26個、または8〜24個の炭素原子を含有するアルキル基であり得る。第3級アルキルアミンには、tert−ブチルアミン、tert−ヘキシルアミン、1−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、tert−オクチルアミン、tert−デシルアミン、tert−ドデシルアミン、tert−テトラデシルアミン、tert−ヘキサデシルアミン、tert−オクタデシルアミン、tert−テトラコサニルアミン、およびtert−オクタコサニルアミンなどのモノアミンが挙げられる。
【0083】
一実施形態では、リン酸またはエステルのアミン塩は、C11〜C14の第3級アルキル第1級基を有するアミンまたはそれらの混合物を含める。一実施形態では、リン化合物のアミン塩は、C14〜C18の第3級アルキル第1級アミンを有するアミンまたはそれらの混合物を含める。一実施形態では、リン化合物のアミン塩は、C18〜C22の第3級アルキル第1級アミンを有するアミンまたはそれらの混合物を含める。
【0084】
アミンの混合物も、本発明に使用してもよい。一実施形態では、アミンの有用な混合物は、「Primene(登録商標)81R」および「Primene(登録商標)JMT」である。Primene(登録商標)81RおよびPrimene(登録商標)JMT(Rohm & Haasにより製造、販売共にされている)は、それぞれC11〜C14の第3級アルキル第1級アミンおよびC18〜C22の第3級アルキル第1級アミンの混合物である。
【0085】
一実施形態では、リン酸またはエステルのアミン塩は、C14〜C18のアルキル化リン酸とC11〜C14の第3級アルキル第1級アミンの混合物であるPrimene 81RTM(Rohm & Haasにより製造、販売されている)との反応生成物である。
【0086】
リン酸またはエステルのアミン塩の例には、イソプロピルジチオリン酸、メチル−アミル(1,3−ジメチルブチルもしくはその混合物)ジチオリン酸、2−エチルヘキシルジチオリン酸、ヘプチルジチオリン酸、オクチルジチオリン酸またはノニルジチオリン酸とエチレンジアミン、モルホリン、またはPrimene 81RTMとの反応生成物(複数も)、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0087】
一実施形態では、ジチオリン酸はエポキシドまたはグリコールと反応され得る。この反応生成物は、リン酸、無水物、または低級エステル(ここで「低級」は、エステルのアルコール誘導部分中の1〜8個、または1〜6個、または1〜4個、または1〜2個の炭素原子を表す)と更に反応する。エポキシドには、脂肪族エポキシドまたはスチレンオキシドが挙げられる。有用なエポキシドの例には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシド、スチレンオキシドなどが挙げられる。一実施形態では、エポキシドはプロピレンオキシドである。グリコールは、1〜12個、または2〜6個、または2〜3個の炭素原子を有する脂肪族グリコールであり得る。ジチオリン酸、グリコール、エポキシド、無機リン試薬およびそれらと反応させる方法は、米国特許第3197405号および第3544465号に記載されている。次いで、この生じた酸は、アミンで塩にしてもよい。適切なジチオリン酸の例は、514グラムのヒドロキシプロピルO,O−ジ(1,3−ジメチルブチル)ホスホロジチオエート(ジ(1,3−ジメチルブチル)−ホスホロジチオ酸と1.3モルのプロピレンオキシドとを25℃で反応させることにより調製される)にリン五酸化物(約64グラム)を58℃で45分間かけて添加することによって調製される。この混合物は、75℃で2.5時間加熱され、珪藻土と混合され、70℃で濾過される。この濾過物は、11.8重量%のリン、15.2重量%の硫黄を含有し、酸価87を有する(ブロモフェノールブルー)。
【0088】
一実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、非イオン性リン化合物を含む。通常、非イオン性リン化合物は、+3または+5の酸化数を有し得る。異なる実施形態は、ホスファイトエステル、ホスフェートエステル、またはそれらの混合物を含む。
【0089】
一実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、ヒドロカルビルホスファイトである非イオン性リン化合物を含む。本発明のヒドロカルビルホスファイトには、式
【0090】
【化2】

(式中、各R’’’は、独立に水素またはヒドロカルビル基であり得るが、但し、R’’’基の少なくとも1つはヒドロカルビルである)
により表されるものが挙げられる。
【0091】
R’’’の各ヒドロカルビル基は、少なくとも2個または4個の炭素原子を含有し得る。通常、双方のR’’’基上に存在する炭素原子の全合計は、45未満、35未満または25未満であり得る。双方のR’’’基上に存在する炭素原子の数についての適切な範囲の例には、2〜40、3〜24または4〜20が挙げられる。適切なヒドロカルビル基の例には、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルドデシル、ブタデシル、ヘキサデシル、またはオクタデシルの各基が挙げられる。通常、ヒドロカルビルホスファイトは、油に溶けるかまたは少なくとも分散できる。一実施形態では、ヒドロカルビルホスファイトは、ジ−ブチル水素ホスファイトまたはC16〜18アルキル水素ホスファイトであり得る。非イオン性リン化合物のより詳細な説明には、US6103673のカラム9、48行目〜カラム11、8行目が挙げられる。
【0092】
異なる実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、リン酸、ジ−n−ブチルホスファイト、ジオレイルホスファイト、トリフェニルチオホスフェートまたはトリフェニルホスファイトの少なくとも1つであり得る。
【0093】
リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、潤滑組成物の0.01重量%〜20重量%、または0.05重量%〜10重量%、または0.1重量%〜5重量%で潤滑組成物中に存在し得る。
【0094】
リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルは、0.01重量%〜0.3重量%、または0.02重量%〜0.15%のリンを潤滑組成物に与え得る。
【0095】
分散剤
潤滑組成物は、分散剤を含む。この分散剤は、スクシンイミド分散剤(例えばN−置換長鎖アルケニルスクシンイミド)、Mannich分散剤、エステル含有分散剤、脂肪ヒドロカルビルモノカルボン酸アシル化剤とアミンまたはアンモニアとの縮合生成物、アルキルアミノフェノール分散剤、ヒドロカルビル−アミン分散剤、ポリエーテル分散剤またはポリエーテルアミン分散剤であり得る。
【0096】
異なる実施形態では、分散剤は、スクシンイミド、コハク酸エステル、またはMannich分散剤であり得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、N−置換長鎖アルケニルスクシンイミドは、平均で少なくとも8個、または30個、または35個から、350個、または200個、または100個までの炭素原子を含有する。一実施形態では、長鎖アルケニル基は、少なくとも500の
【0098】
【化3】

(数平均分子量)を特徴とするポリアルケンから誘導される。通常、ポリアルケンは、500、または700、または800、または更に900から、5,000、または2500、または2,000、または更に1500もしくは1200までの
【0099】
【化4】

を特徴とする。一実施形態では、長鎖アルケニル基は、ポリオレフィンから誘導される。ポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、および1−デセンなどの2〜10個の炭素原子を有するモノオレフィンを含むモノマーから誘導され得る。特に有用なモノオレフィン源は、35〜75重量パーセントのブテン含量および30〜60重量パーセントのイソブテン含量を有するC精製ストリーム(refinery stream)である。有用なポリオレフィンは、400〜5,000、別の例では400〜2500、更なる例では400〜または500〜1500の数平均分子量を有するポリイソブチレンを含める。ポリイソブチレンは、5〜69%、第2の例では50〜69%、第3の例では50〜95%のビニリデン二重結合含量を有し得る。
【0100】
一実施形態では、スクシンイミド分散剤は、そのポリイソブチレン置換基が400〜5,000の数平均分子量を有するポリイソブチレン置換スクシンイミドを含む。
【0101】
スクシンイミド分散剤およびそれらの調製方法は、米国特許第4234435号および第3172892号により完全に記載されている。
【0102】
適切なエステル含有分散剤は、通常、高分子量エステルである。これらの材料は、米国特許第3381022号により詳細に記載されている。
【0103】
Mannich分散剤は、ヒドロカルビル置換フェノール、アルデヒド、およびアミンまたはアンモニアの反応生成物である。ヒドロカルビル置換フェノールのヒドロカルビル置換基は、10〜400個の炭素原子、別の例では30〜180個の炭素原子、更なる例では10〜または40〜110個の炭素原子を有し得る。このヒドロカルビル置換基は、オレフィンまたはポリオレフィンから誘導され得る。有用なオレフィンには、市販の1−デセンなどのα−オレフィンが挙げられる。
【0104】
ヒドロカルビル−アミン分散剤は、ヒドロカルビル置換アミンである。ヒドロカルビル置換アミンは、米国特許第5407453号に記載されているように、塩素化ポリイソブチレンなどの塩素化オレフィンまたはポリオレフィンとエチレンジアミンなどのアミンとの混合物を、炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下で加熱することによって形成できる。
【0105】
ポリエーテル分散剤には、ポリエーテルアミン、ポリエーテルアミド、ポリエーテルカルバメート、およびポリエーテルアルコールが挙げられる。ポリエーテルアミンおよびそれらの調製方法は、米国特許第6458172号、カラム4および5にかなり詳細に記載されている。
【0106】
一実施形態では、本発明は、亜鉛とのポリイソブチレンスクシンイミド錯体を形成するために、ポリイソブチレン、アミンおよび酸化亜鉛から誘導される分散剤のうちの少なくとも1つを含む。この亜鉛とのポリイソブチレンスクシンイミド錯体は、単独または組合せで使用してもよい。
【0107】
この分散剤は、種々の作用物質の任意のものとの反応による従来の方法によっても後処理できる。これらの作用物質には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、リン化合物および/または金属化合物がある。一実施形態では、分散剤は、ホウ酸化分散剤である。通常、ホウ酸化分散剤は、そのポリイソブチレンが400〜5,000の数平均分子量を有するポリイソブチレンスクシンイミドを含むスクシンイミド分散剤を含む。
【0108】
一実施形態では、この分散剤は、リン酸化分散剤、またはホウ酸化リン酸化分散剤である。
【0109】
一実施形態では、この分散剤は、(i)上記分散剤材料(例えばN置換長鎖アルケニルスクシンイミド)、(ii)2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールもしくはヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、またはそれらのオリゴマー、(iii)ホウ酸化剤、ならびに(iv)1,3二酸および1,4二酸からなる群から選択される、任意の芳香族化合物のジカルボン酸、あるいは(v)任意のリン酸化合物を、潤滑粘性油に溶ける(i)、(ii)、(iii)および任意の(iv)または(v)の生成物を与えるように十分加熱することによって調製できる。加熱により調製される分散剤は、米国特許出願US04/027094および60/654164により詳細に記載されている。
【0110】
この分散剤は、潤滑組成物の0.01重量%〜20重量%、または0.05重量%〜10重量%、または0.1重量%〜5重量%で潤滑組成物中に存在し得る。
【0111】
潤滑粘性油
潤滑組成物は、潤滑粘性油を含む。このような油には、天然油および合成油、水添分解法、水素添加、および水素化精製から誘導される油、未精製油、精製油および再精製油、ならびにこれらの混合油が挙げられる。
【0112】
未精製油は、通常、更に精製処理せずに(またはほとんど精製処理せずに)天然源または合成源から直接得られる油である。
【0113】
精製油は、1つまたは複数の精製ステップで更に処理されることにより1つまたは複数の特性が改良されたことを除き、未精製油に類似している。精製技法は、当技術分野で知られており、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸出などが挙げられる。
【0114】
再精製油は、再生油または再処理油としても知られており、精製油を得るのに使用されるのと類似の方法によって得られるが、使用済み添加剤および油分解生成物の除去を対象とする技法によって更に処理される場合が多い。
【0115】
本発明の潤滑剤を作製するのに有用な天然油には、動物油、植物油(例:ヒマシ油、ラード油)、パラフィン種、ナフテン種もしくはパラフィン−ナフテン混合種の液化石油および溶媒処理もしくは酸処理された鉱物性潤滑油などの鉱物性潤滑油ならびに石炭もしくはシェールから誘導される油またはそれらの混合物が挙げられる。
【0116】
合成潤滑油は有用であり、これには、重合および内部重合(interpolymerised)オレフィン(例:ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびそれらの混合物;アルキルベンゼン(例:ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例:ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドならびにそれらの誘導体、類似体および同族体またはそれらの混合物などの炭化水素油が挙げられる。
【0117】
他の合成潤滑油には、ポリオールのエステル(Prolube(登録商標)3970などの)、ジエステル、リン含有酸の液状エステル(例:トリクレシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、または重合テトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャートロプシュ反応によって作製でき、通常、水素異性化フィッシャートロプシュ炭化水素またはワックスであり得る。一実施形態では、油は、他のGTL(gas−to−liquid)油と同様に、フィッシャートロプシュGTL合成法によって作製できる。
【0118】
潤滑粘性油は、米国石油協会(API)基油互換性指針(Base Oil Interchangeability Guidelines)に分類されるようにも定義できる。5つの基油群は、以下の通りである:I群(硫黄含量>0.03重量%、および/または<90重量%飽和度、粘度指数80〜120)、II群(硫黄含量≦0.03重量%、および≧90重量%飽和度、粘度指数80〜120)、III群(硫黄含量≦0.03重量%、および≧90重量%飽和度、粘度指数≧120)、IV群(全てのポリαオレフィン(PAO))、ならびにV群(I群、II群、III群、またはIV群に含まれない他の全て)。潤滑粘性油は、APIのI群、II群、III群、IV群、V群の油またはそれらの混合油を含む。潤滑粘性油は、APIのI群、II群、III群、IV群の油またはそれらの混合油であることが多い。あるいは、潤滑粘性油は、APIのII群、III群もしくはIV群の油またはそれらの混合油であることが多い。
【0119】
存在する潤滑粘性油の量は、通常、100重量%から、ポリマー、リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステル、極圧添加剤および他性能の添加剤の量の合計を引いた後に残る残分である。
【0120】
潤滑組成物は、濃縮物および/または完全配合された潤滑剤の形態としてあり得る。ポリマー、リン含有リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステル、および成分(b)以外の極圧添加剤が、濃縮物の形態(追加の油と組み合わせることにより全体としてまたは部分的に最終潤滑剤を形成できる)である場合、成分(a)、(b)および(c)(即ち、ポリマー、リン含有リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステル、および成分(b)以外の極圧添加剤)と潤滑粘性油および/または希釈油との比率は、重量で1:99〜99:1、または重量で80:20〜10:90の範囲を含める。
【0121】
他性能の添加剤
本発明の組成物は、少なくとも1つの他性能の添加剤も任意選択で含む。他性能の添加剤には、金属不活性剤、洗浄剤、粘度指数向上剤(即ち、本発明の星形ポリマー以外の粘度調整剤)、抗酸化剤、腐食防止剤、抑泡剤、乳化破壊剤、流動点降下剤、シール膨潤剤およびそれらの混合物が挙げられる。
【0122】
オイルフリーベースで存在する他性能の添加剤化合物の全合計量は、組成物の0重量%〜25重量%、または0.01重量%〜20重量%、または0.1重量%〜15重量%、または0.5重量%〜10重量%、または1〜5重量%の範囲を含めることができる。1つまたは複数の他性能の添加剤が存在してもよいが、他性能の添加剤は、互いに対して異なる量で存在するのが普通である。
【0123】
一実施形態では、潤滑組成物は、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステル以外の摩擦調整剤をさらに含む。摩擦調整剤は、潤滑組成物の0重量%〜5重量%、または0.1重量%〜5重量%、または0.1重量%〜4重量%、または0.25重量%〜3.5重量%、または0.5重量%〜2.5重量%、または1重量%〜2.5重量%を含める範囲内で存在し得る。
【0124】
抗酸化剤には、モリブデンジチオカルバメートなどのモリブデン化合物、硫化オレフィン、プロピレンオキシドと反応したtert−ノニルメルカプタン(モル比1:1)などのスルフィド、ヒンダードフェノール、フェニルアルファナフチルアミンまたはアルキル化ジフェニルアミン(通常、ジ−ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ−オクチルジフェニルアミン)などのアミン化合物が挙げられ、洗浄剤には、中性洗浄剤または過塩基性洗浄剤、即ち、フェネート、硫化フェネート、スルホネート、カルボン酸、リン酸、モノ−および/またはジ−チオリン酸、サリゲニン、アルキルサリチレート、サリキサレート(salixarate)の1種または複数種を有する、ニュートン粘性または非ニュートン粘性の、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属の塩基性塩が挙げられる。アルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウムまたはバリウムであり得る。異なる実施形態では、洗浄剤は、スルホン酸マグネシウムまたはスルホン酸カルシウムであり得る。
【0125】
ベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、ジ−3級ブチルポリスルフィド、ジ−tert−ブチルスルフィド、ディールスアルダー硫化付加物またはアルキルスルフェニルN’N−ジアルキルジチオカルバメートなどの有機スルフィドおよび有機ポリスルフィドを含めたスカッフィング防止剤、ならびに塩素化ワックス、亜鉛ジオクチルジチオカルバメートなどの金属チオカルバメートおよびヘプチルフェノール二酸バリウムを含めた極圧(EP)添加剤も、本発明の組成物に使用できる。一実施形態では、摩耗防止剤は、硫黄含有および/またはリン含有摩耗防止剤を含む。
【0126】
リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステル以外の摩擦調整剤には、脂肪アミン、ホウ酸化グリセロールエステル、脂肪酸アミド、脂肪エポキシド、ホウ酸化脂肪エポキシド、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪イミダゾリン、アルキルサリチレートの金属塩、カルボン酸もしくはポリアルキレン−ポリアミンの縮合生成物、またはヒドロキシアルキル化合物のアミドを挙げることができる。
【0127】
一実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステル以外の摩擦調整剤は、ヒドロキシアルキル化合物とアシル化剤またはアミンとの縮合によって形成できる。ヒドロキシアルキル化合物のより詳細な説明は、米国特許出願60/725360(2005年10月11日出願、発明者Bartley、Lahiri、BakerおよびTipton)のパラグラフ8、19〜21に記載されている。米国特許出願60/725360に開示されている摩擦調整剤は、式RN−C(O)R(式中、RおよびRは、各々独立に、少なくとも6個の炭素原子のヒドロカルビル基であり、Rは、1〜6個の炭素原子のヒドロキシアルキル基または前記ヒドロキシアルキル基とアシル化剤とがそのヒドロキシル基を介して縮合することにより形成される基である)により表されるアミドであり得る。調製実施例は、実施例1および2(パラグラフ68および69)に開示されている。一実施形態では、ヒドロキシルアルキル化合物のアミドは、グリコール酸、即ちヒドロキシ酢酸、HO−CH−COOHとアミンとを反応させることによって調製される。
【0128】
一実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステル以外の摩擦調整剤は、式RNR(式中、RおよびRは、各々独立に、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基であり、Rは、水素、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル含有アルキル基、またはアミン含有アルキル基である)により表される第2級または第3級アミンであり得る。摩擦調整剤のより詳細な説明は、米国特許出願05/037897のパラグラフ8および19〜22に記載されている。
【0129】
一実施形態では、リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステル以外の摩擦調整剤は、カルボン酸またはその反応性同等物質とアミノアルコールとの反応から誘導でき、その各々が少なくとも6個の炭素原子を含有する少なくとも2つのヒドロカルビル基を含有する。このような摩擦調整剤の例には、イソステアリン酸または無水コハク酸アルキルとトリス−ヒドロキシメチルアミノメタンとの反応生成物が挙げられる。このような摩擦調整剤のより詳細な説明は、米国特許出願US03/22000(または国際公開WO04/007652)のパラグラフ8および9〜14に開示されている。
【0130】
本発明のポリマー(a)以外の粘度調整剤には、スチレン−ブタジエンの水素化コポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化イソプレンポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、ポリオレフィン、および無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステルが挙げられる。従来のポリ(メタ)アクリレートポリマーは、そのポリマーアーム用に定められるものと実質的に同じモノマーから誘導できる。しかし、従来のポリ(メタ)アクリレートは、通常、ハロゲン、−O−N=基および−S−C(=S)−基から選択される官能基を含まない。一実施形態では、本発明のポリマーは従来の粘度調整剤と混合される。
【0131】
オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸またはドデセニル無水コハク酸およびオレイン酸などの脂肪酸とポリアミンとの縮合生成物を含めた腐食防止剤;ベンゾトリアゾールの誘導体(通常、トリルトリアゾール)、1,2,4−トリアゾール、ベンズイミダゾール、2−アルキルジチオベンズイミダゾールまたは2−アルキルジチオベンゾチアゾールを含めた金属不活性剤;エチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートおよび任意の酢酸ビニルのコポリマーを含めた抑泡剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーを含めた乳化破壊剤;無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドを含めた流動点降下剤;ならびにExxon Necton−37TM(FN 1380)およびExxon Mineral Seal Oil(FN 3200)を含めたシール膨潤剤;ならびに官能化ポリオレフィン、例えば、無水マレイン酸とアミンとの反応生成物で官能化されているエチレン−プロピレンコポリマー、アミンで官能化されているポリメタクリレート、またはアミンと反応したスチレン−無水マレイン酸コポリマーを含めた分散粘度調整剤(DVMとよく称される)などの他性能の添加剤も、本発明の組成物中に使用してもよい。
【0132】
(産業上の適用)
本発明の方法は、種々の機械装置の潤滑に有用である。この機械装置は、少なくとも1つの内燃エンジン(クランクケース潤滑用)、油圧系統、ギヤ、ギヤボックス、マニュアル変速機、トラクションドライブ変速機、自動変速機またはマニュアル変速機を含む。
【0133】
自動変速機には、無段変速機(CVT)、無限変速機(IVT)、Torridol変速機、連続滑り式トルクコンバータクラッチ(continuously slipping torque converted clutches)(CSTCC)、有段自動変速機または二段クラッチ変速機(DVT)が挙げられる。
【0134】
自動変速機などの機械装置に適する潤滑組成物は、15mPa.s〜150,000mPa.s、または15mPa.s〜50,000mPa.s、または15mPa.s〜20,000mPa.s、もしくは〜15,000mPa.sを含めた範囲を有する−40℃でのBrookfield粘度(低粘度(LV)性能を有するレオメーターを使用してASTM D2983により決定される)を有し得る。
【0135】
異なる実施形態では、機械装置に適する潤滑組成物は、2〜10mm/s、または3〜9mm/sまたは4.5〜7.5mm/sなどの範囲内の100℃での動粘度(D445により決定される)を有し得る。
【0136】
以下の実施例は、本発明の例示を提示する。これらの実施例は、包括的なものではなく、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0137】
(調製実施例1)(Prep1)
28.3L/hrで流れる窒素注入口、中速機械撹拌機、熱電対および水冷式凝縮器を備えた容器に、C12〜15アルキルメタクリレート78.2g、メチルメタクリレート20g、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド1.8g、TrigonoxTM−21(開始剤)1.08g、ビス−ドデシルトリチオカーボネート(連鎖移動剤)4gおよび油46.8gを装填する。この容器の内容物を、窒素ブランケット下で20分間撹拌することにより十分な混合を確実にする。窒素フローを14.2L/hrに下げ、この混合物が、3時間、90℃に加熱されるように設定する。エチレングリコールジメタクリレート5.95gをその容器に添加し、その混合物を90℃で更に3時間撹拌する。次いで、生じたポリマーを周囲温度に冷却する。このポリマーは、重量平均分子量189500g/molおよび数平均分子量148800g/molを有する特徴がある。このポリマーは、少なくとも4つのポリマーアーム(C12〜15アルキルメタクリレート78.2重量%、メチルメタクリレート20重量%およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミド1.8重量%を含有する)を有すると考えられる。
【0138】
(比較例1)(CE1)
比較例1(CE1)は、以下の手順により調製される線状ポリマーである。容器には、28.3L/hrで流れる窒素注入口、中速機械撹拌機、添加用漏斗、熱電対および水冷式凝縮器が備えてある。次いで、添加用漏斗に、C12〜15アルキルメタクリレート1995g、メチルメタクリレート500g、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド45g、TrigonoxTM21開始剤17.5gおよびn−ドデシルメルカプタン17.5gを装填し、内容物を容器に添加する。この容器の内容物を、振盪および混合することにより十分な混合を確実にする。次いで、その容器の内容物の約3分の1を、オーバーヘッド機械撹拌機、水冷式凝縮器、熱電対、添加用漏斗および窒素注入口を備えた別の容器中に移す。次いで、この反応混合物を110℃に加熱する。反応温度が発熱ピークに達した後、残っているモノマー混合物(第1の容器からの)の2/3の3分の2を、添加用漏斗を介して約90分間かけて添加してから、この容器を、反応終了まで約110℃に冷却する。この容器に、油約16.4g中の約1.8gのTrigonoxTM21を装填する。この容器の内容物を、約1時間撹拌してから周囲温度に冷却する。生じたポリマーは、重量平均分子量38,000g/molおよび数平均分子量20100g/molを有する特徴がある。
【0139】
自動変速機潤滑組成物1(LC1)および比較潤滑組成物1(COMPAR1)を、以下の表に示されるように調製する。潤滑組成物の残分は、基油である。次いで、この自動変速機潤滑組成物を、動粘度およびBrookfield粘度を(それぞれ、ASTM法D445を100℃で(100℃動粘度、KV100)、D2983を−40℃で(−40℃Brookfield粘度、BV−40)採用することにより)決定することによって評価する。粘度指数(VI)も、ASTM法D2270を採用することによって決定する。得られた結果も、表に示す。
【0140】
【表1】

摩擦調整剤、抗酸化剤、腐食防止剤、抑泡剤、乳化破壊剤、流動点降下剤およびシール膨潤剤を含めた他性能の添加剤のうちの少なくとも1つを含む。適切な他性能の添加剤は、上記の、発明を実施するための最良の形態で開示されている。
【0141】
得られたデータから、本発明の潤滑組成物と比較例との双方は100℃でほぼ等しい動粘度を有するが、本発明の潤滑組成物は有意に低いBrookfield粘度および高い粘度指数を有することが示唆される。結果として、本発明の潤滑組成物は、自動変速機液に適切な潤滑性能を維持しながら、許容可能な粘度指数(VI)、オイルブレンド増粘能力、せん断安定度、良好な低温粘度性能、および低い粘度調整剤処理レベルを与えることができる。
【0142】
(調製実施例2)(Prep2)
調製実施例2(Prep2)を、反応物の量が変わることを除き、Prep1と同じ方法によって作製する。Prep2での反応物は、80gのC12〜15メタクリレート、20gのメチルメタクリレート、0gのジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、0.55gのTrigonoxTM−21(開始剤)、4.1gのビス−ドデシルトリチオカーボネート(連鎖移動剤)、48.2gの油、および6.05gのエチレングリコールジメタクリレートである。
【0143】
自動変速機潤滑組成物2(LC2)は、Prep2のポリマー7.5重量%と分散剤、リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルおよび種々の他性能の添加剤とをブレンドすることによって調製する。自動変速機液は、7.12のKV100、8400のBV−40および239のVIを有する特徴がある。
【0144】
(調製実施例3)(Prep3)
調製実施例3(Prep3)を、反応物の量が変わることを除き、Prep1と同じ方法によって調製する。Prep3での反応物は、4.8gのC16〜18メタクリレート、201.6gのC12〜15メタクリレート、24gの2−エチルヘキシルメタクリレート(メチルメタクリレートの代わりに使用する)、9.6gのジメチルアミノエチルメタクリルアミド(ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドの代わり)、13.5gのTrigonoxTM−21、13.5gのビス−ドデシルトリチオカーボネート、750gの油および14.3gのエチレングリコールジメタクリレートである。
【0145】
(比較例2)(CE2)
比較例2(CE2)は、反応物の量が変わることを除き、CE1と同じ方法により調製される線状ポリマーである。この反応物は、2522gのC12〜15アルキルメタクリレート、300gの2−エチルヘキシルメタクリレート(メチルメタクリレートの代わり)、120gのジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、13.5gのTrigonoxTM21開始剤および13.5gのn−ドデシルメルカプタンで存在する。
【0146】
自動変速機液(LC2(発明)およびCOMPAR2(比較例))を、ほぼ等しいVIを有する潤滑組成物を作製するのに十分な量のポリマーを添加することによって調製する。調製した自動変速機液は、リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステル0.1重量%、分散剤5.3重量%および他性能の添加剤2.4重量%(ポリアクリレート流動点降下剤0.2重量%を含めた)を含有する。潤滑組成物特性決定データを以下に示す。
【0147】
【表2】

得られたデータから、本発明の潤滑組成物は、自動変速機液に適切な潤滑性能を維持しながら、より低い処理率を有するポリマーを達成し得ることが示唆される。
【0148】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、当業者に周知である通常の意味で使用される。具体的には、この用語は、分子の残位に直接結合している炭素原子を有し、炭化水素の特性を主として有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には、
(i)炭化水素置換基、即ち、脂肪族(例:アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例:シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基と、芳香族置換、脂肪族置換、および脂環式置換芳香族置換基、ならびに環が分子の別の部分を通って完成する環式置換基(例:2個の置換基が一緒になって環を形成する);
(ii)置換炭化水素置換基、即ち、本発明に関しては、置換基の炭化水素の主な性質を変えない非炭化水素基(例:ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソならびにスルホキシ)を含有する置換基;
(iii)ヘテロ置換基、即ち、炭化水素の主な特性を有する一方、本発明に関しては、それ以外は炭素原子からなる環または鎖中に炭素以外の原子を含有する置換基
が挙げられる。ヘテロ原子には、硫黄、酸素、窒素が挙げられ、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が包含される。全般的に、ヒドロカルビル基中には、各10個の炭素原子に対して、2個以下、好ましくは1個以下の非炭化水素置換基が存在し、通常、ヒドロカルビル基中には、非炭化水素置換基は存在しないであろう。
【0149】
上記の物質の中には、最終配合物中で相互作用し得るものもあり、したがって最終配合物の成分は、初期に添加されるものと異なる可能性があることが知られている。それにより形成される生成物は、本発明の潤滑剤組成物をその意図する使用に採用する際に形成される生成物も含め、簡単には説明できない場合がある。それでもやはり、このような修正および反応生成物の全ては本発明の範囲内に含まれ、本発明は、上記の成分を混合することにより調製される潤滑剤組成物を包含する。
【0150】
上記の参照される各文献は、参照により本明細書に組み込まれる。実施例の場合を除いて、または特に明示されない限り、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子数などを特定する説明の中の全ての数量は、「約」という語により修正されるものとして理解されるべきである。特に示されない限り、本明細書で言及される各化学物質または組成物は、異性体、副産物、誘導体、および商用グレード中に存在すると普通理解される他のそのような物質を含有し得る商用グレードの物質であると解釈されるべきである。しかし、各化学成分の量は、特に示されない限り、通例、商用物質中に存在し得る、任意の溶媒または希釈油を除いて提示される。本明細書に記載した量、範囲、および比率の上下限を、独立に組み合わせてもよいことは理解されるべきである。同様に、本発明の各要素についての範囲および量は、任意の他の要素についての範囲または量と共に使用してもよい。
【0151】
好ましい実施形態に関して本発明を説明してきたが、その様々な修正は、本明細書を読めば当業者には明らかとなることは理解されよう。したがって、本明細書に開示される発明は、添付の特許請求の範囲内に入るような修正を包含する意図があることは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)約100,000〜約500,000の重量平均分子量、および(ii)約10〜約60のせん断安定度指数を有するポリマー約0.1〜約15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物。
【請求項2】
前記ポリマーが、約20重量%以上、または50重量%超、または約55重量%以上、または約70重量%以上、または約95重量%以上のモノビニルモノマーを含有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
前記せん断安定度指数が、約15〜約50、または約20〜約45である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、約125,000〜約400,000、または約225,000〜約325,000の範囲内の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記ポリマーがコポリマーである、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記ポリマーが、分枝、櫛状、放射状形または星形の構造を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが放射状形または星形構造を有する、請求項6に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
線状ポリマー鎖の成分をさらに含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
前記ポリマーが、ランダム、テーパード、ジブロック、トリブロック、またはマルチブロックの構造を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
前記ポリマーが、20重量%以上のモノビニルモノマーから誘導され、約100,000〜約500,000の重量平均分子量を有し、放射状形または星形構造を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
前記ポリマーが、RAFT、ATRP、窒素酸化物媒介、またはアニオン重合法から得られる、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
前記ポリマーが、RAFT、ATRP、またはアニオン重合法から得られる、請求項11に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
前記ポリマーが、RAFTまたはATRP重合法から得られる、請求項12に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
前記ポリマーが、RAFT重合法から得られる、請求項13に記載の潤滑組成物。
【請求項15】
前記ポリマーが、(a)(i)ビニル芳香族モノマー、および(ii)カルボン酸モノマー(通常、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸もしくはイタコン酸)またはそれらの誘導体を含むモノマーから誘導されるポリマー、(b)ポリ(メタ)アクリレート、(c)官能化ポリオレフィン、(d)エチレン酢酸ビニルコポリマー、(e)フマレートコポリマー、(f)(i)α−オレフィンおよび(ii)カルボン酸モノマー(通常、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸もしくはイタコン酸)またはそれらの誘導体から誘導されるコポリマー、あるいは(g)それらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項16】
前記ポリマーが、ポリメタクリレート、またはその混合物である、請求項15に記載の潤滑組成物。
【請求項17】
前記ポリメタクリレートが、
(a)そのメタクリレートのアルキル基が約10〜約20個、または約12〜約15個の炭素原子を有するアルキルメタクリレート約50重量%〜約100重量%と、
(b)そのメタクリレートのアルキル基が約1〜約9個の炭素原子を有するアルキルメタクリレート約0重量%〜約40重量%と、
(c)窒素含有モノマー約0重量%〜約10重量%と
を含むモノマー組成物から誘導される、請求項16に記載の潤滑組成物。
【請求項18】
前記ポリマーが、前記潤滑組成物の約0.5〜約12重量%、または約1〜約10重量%で存在する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項19】
前記リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルが、摩耗防止剤または極圧添加剤である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項20】
前記リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルが金属を含有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項21】
前記リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルが金属を含まない、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項22】
前記リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルがリン酸である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項23】
前記リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルが、0.01重量%〜0.3重量%、または0.02重量%〜0.15%のリンを潤滑組成物に与える、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項24】
前記リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルが、(i)非イオン性リン化合物、(ii)リン化合物のアミン塩、(iii)リン化合物のアンモニウム塩、(iv)リン化合物の一価金属塩、または(v)(i)、(ii)、(iii)もしくは(iv)の混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項25】
前記リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルが、金属ジアルキルジチオホスフェートまたは金属ジアルキルホスフェートを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項26】
前記リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルが、ジ−n−ブチルホスファイト、ジオレイルホスファイト、トリフェニルチオホスフェート、トリフェニルホスファイトまたはリン酸を含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項27】
前記リン含有酸、リン含有塩またはリン含有エステルが、潤滑組成物の約0.01重量%〜約20重量%、または約0.1重量%〜約5重量%で存在する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項28】
前記分散剤が、スクシンイミド、コハク酸エステル、またはMannich分散剤を含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項29】
前記スクシンイミドがポリイソブチレン置換スクシンイミドを含み、そのポリイソブチレン置換基が約400〜約5,000の数平均分子量を有する、請求項28に記載の潤滑組成物。
【請求項30】
前記分散剤が、ホウ酸化分散剤、リン酸化分散剤、またはホウ酸化リン酸化分散剤である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項31】
前記分散剤が、(i)スクシンイミド、コハク酸エステル、もしくはMannich分散剤、(ii)2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールもしくはヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、またはそれらのオリゴマー、(iii)ホウ酸化剤、ならびに(iv)1,3二酸および1,4二酸からなる群から選択される、任意の芳香族化合物のジカルボン酸、あるいは(v)任意のリン酸化合物を、潤滑粘性油に溶ける(i)、(ii)、(iii)および任意の(iv)または(v)の生成物を与えるように十分加熱することによって調製される、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項32】
前記分散剤が、前記潤滑組成物の約0.01重量%〜約20重量%、または約0.1重量%〜約5重量%で存在する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項33】
前記リン含有酸、リン含有塩もしくはリン含有エステル、またはそれらの混合物以外の摩擦調整剤をさらに含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項34】
前記摩擦調整剤が、脂肪アミン、ホウ酸化グリセロールエステル、脂肪酸アミド、脂肪エポキシド、ホウ酸化脂肪エポキシド、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪イミダゾリン、アルキルサリチレートの金属塩、カルボン酸の縮合生成物、またはポリアルキレン−ポリアミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項33に記載の潤滑組成物。
【請求項35】
前記摩擦調整剤が、式RN−C(O)R(式中、RおよびRは、各々独立に、少なくとも6個の炭素原子のヒドロカルビル基であり、Rは、1〜6個の炭素原子のヒドロキシアルキル基または該ヒドロキシアルキル基とアシル化剤とがそのヒドロキシル基を介して縮合することにより形成される基である)により表されるアミドである、請求項33に記載の潤滑組成物。
【請求項36】
前記摩擦調整剤が、式RNR(RおよびRは、各々独立に、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基であり、Rは、水素、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル含有アルキル基、またはアミン含有アルキル基である)により表される第2級または第3級アミンである、請求項33に記載の潤滑組成物。
【請求項37】
前記摩擦調整剤が、カルボン酸またはその反応性同等物質とアミノアルコールとの反応から誘導され、該摩擦調整剤は、その各々が少なくとも6個の炭素原子を含有する少なくとも2つのヒドロカルビル基を含有する、請求項33に記載の潤滑組成物。
【請求項38】
前記摩擦調整剤が、前記潤滑組成物の0.1重量%〜5重量%、または1重量%〜2.5重量%で存在する、請求項33に記載の潤滑組成物。
【請求項39】
(a)(i)約100,000〜約500,000の重量平均分子量、および(ii)約10〜約60のせん断安定度指数を有するポリマー約0.1〜約15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステル約0.01重量%〜約20重量%と、
(c)分散剤約0.01重量%〜約20重量%と、
(d)潤滑粘性油約10重量%〜約99.88重量%と
を含む潤滑組成物。
【請求項40】
自動変速機、トラクションドライブ変速機、マニュアル変速機、二段クラッチ変速機または連続可変変速機である機械装置に、
(a)約100,000〜約500,000の重量平均分子量を有し、放射状形または星形構造を有するポリマー約0.1〜約15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物を供給することを含む、機械装置の潤滑方法。
【請求項40】
(a)放射状形または星形構造を有するポリマー約0.1〜約15重量%と、
(b)リン含有酸、リン含有塩、またはリン含有エステルと、
(c)分散剤と、
(d)潤滑粘性油と
を含む潤滑組成物。

【公表番号】特表2009−534518(P2009−534518A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507888(P2009−507888)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/066482
【国際公開番号】WO2007/127615
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】