説明

映像データ転送処理装置および監視カメラシステム

【課題】時間管理を映像信号のフレームレート単位で行うので、同一の映像信号について複数サイズの処理を行うことができない。また、出力する映像データのサイズが固定であるため、端末装置によっては表示することができない。さらに、複数のカメラの映像信号を切り替えて入力することから、同一形式のカメラとする必要がある。
【解決手段】入力映像信号を映像データに変換する映像データ処理部8と、映像データを圧縮して転送データに変換するマルチコーデック部9と、転送要求に応じて映像データ処理部8およびマルチコーデック部9を時分割に駆動制御する時分割管理部13と、転送要求を中継し入力する転送データを端末装置に向けて送信する通信部12と、端末装置からの転送要求を時分割管理部13に受け渡し、転送要求に応じた転送データを記憶装置20またはマルチコーデック部9において選択して通信部12に送出する転送データ選択部11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像データ転送処理装置およびこの映像データ転送処理装置を備えた監視カメラシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術における監視カメラシステムは、複数台の監視カメラの撮影で得られた映像信号をスイッチャなどで切り替えて記録部に供給して記録するとともに、通信ネットワークを介して接続されている端末装置からの映像転送要求に応じた映像データを記録部から読み出して送信し、端末装置おいて監視画像をモニタリングできるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−167602号公報(第6−9頁、第1−3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来の技術においては、時間管理を映像信号のフレームレート単位で行うことから、同一の映像信号について複数サイズの処理を行うことができない。また、出力する映像データのサイズが固定であるため、端末装置によっては表示することができないという課題がある。さらに、複数のカメラの映像信号を切り替えて入力することから、同一形式のカメラとする必要がある。また、複数のカメラは常時駆動されており、出力映像が選択されていないカメラでの無駄な電力消費がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みて創作したものであり、同一の映像信号について複数サイズの処理が行えるようにし、また、複数台のカメラについて同一のデータ形式のカメラを用いなくてもよいようにし、さらには省電力化を図ることができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による映像データ転送処理装置は、
入力されてくる映像信号を映像データに変換する映像データ処理部と、
前記映像データ処理部によって変換された前記映像データを圧縮して転送データに変換するマルチコーデック部と、
受け取った転送要求に応じて前記映像データ処理部および前記マルチコーデック部を前記映像信号のフレーム周期と同じまたはより短い周期で時分割に駆動制御する時分割管理部と、
通信ネットワーク経由で端末装置との間で送受信を行い、前記端末装置からの転送要求を中継するとともに、入力する転送データを前記端末装置に向けて送信する通信部と、
前記通信部を介して受信する前記端末装置からの転送要求を前記時分割管理部に受け渡すとともに、前記マルチコーデック部の変換による前記転送データのうち、前記転送要求に応じた転送データを選択して前記通信部に送出する転送データ選択部とを備えたものである。
【0006】
この構成において、端末装置が所望する転送データについての情報を含めた転送要求を通信ネットワークに送信すると、通信部がその転送要求を受信し、転送データ選択部に渡す。転送データ選択部は、受け取った転送要求を時分割管理部に渡す。複数の端末装置からの転送要求を同時的に受け取ったときは、それぞれの転送要求を時分割管理部に渡す。時分割管理部は、受け取った転送要求に応じて映像データ処理部とマルチコーデック部を時分割制御する。映像データ処理部は、時分割管理部による時分割制御のもと、入力されてくる映像信号を映像データに変換する。また、マルチコーデック部は、時分割管理部による時分割制御のもと、映像データ処理部の変換による映像データを圧縮して転送データに変換する。生成された転送データは、直接的または間接的に転送データ選択部によって選択され、通信部および通信ネットワークを介して要求元の端末装置へと送信される。間接的というのは、記憶装置を介する場合である。上記の処理は、時分割管理部による映像データ処理部およびマルチコーデック部に対する時分割制御のもとで遂行されるから、複数の端末装置からの同時的な転送要求に対しても対応することが可能である。以上のようにして、複数の端末装置それぞれの転送要求に応じて映像データを配信することが可能となる。
【0007】
上記構成の映像データ転送処理装置において、前記映像データ処理部は、映像サイズを可変する機能を有し、前記映像信号を、この映像信号と同じサイズおよび異なるサイズの少なくとも1つの組み合わせからなる複数の前記映像データに変換するように構成され、前記マルチコーデック部は、前記転送要求に応じた映像サイズの映像データを圧縮するように構成されているという態様がある。
【0008】
この構成においては、映像データ処理部は、時分割管理部による時分割制御のもと、転送要求に応じて映像サイズを可変する制御を行う。その結果として、複数の端末装置それぞれの転送要求に応じた映像サイズの態様での映像データを配信することが可能となる。
【0009】
また、上記構成の映像データ転送処理装置において、前記映像データ処理部は、前記映像信号と異なるアスペクト比で前記映像データに変換するように構成されているという態様がある。
【0010】
これによれば、端末装置の表示装置のアスペクト比が不統一であっても、端末装置側に拡大縮小の機能を必要とせず、端末装置の転送要求に応じた態様で転送データを配信することができる。
【0011】
また、上記構成の映像データ転送処理装置において、前記映像データの最大サイズをS、そのときの最大フレームレートをT、n個の前記映像データの映像サイズをs0,s1,…,sn-1、それぞれのフレームレートをt0,t1,…,tn-1として、前記時分割管理部は、前記マルチコーデック部を、
S・T≧s0 ・t0 +s1 ・t1 +…+sn-1 ・tn-1
の条件に従って時分割に管理するように構成されているという態様がある。前記マルチコーデック部の最大処理能力はS・Tで表される。
【0012】
これによれば、時分割処理の管理が正確かつ容易となり、マルチコーデック部の単位時間当たりの処理能力に応じた複数映像、複数サイズの処理が可能となる。
【0013】
また、上記構成の映像データ転送処理装置において、さらに、入力されてくる複数の異なる形式の映像信号に対して、画素値を並び替えることにより前記映像データ処理部で処理可能な所定の形式に変換し、その形式調整後の映像信号を前記映像データ処理部に出力する映像信号処理部を備えているという態様がある。
【0014】
これによれば、当該の映像データ転送処理装置に接続する複数のカメラについて、その撮像形式は統一しなくてもよくなる。例えば、1つはCCDセンサー、1つはCMOSセンサーといった使い方が可能となり、汎用性を拡張することが可能となる。
【0015】
また、上記構成の映像データ転送処理装置において、さらに、複数の前記映像信号の入力のうち、1つの前記映像信号を選択し前記映像信号処理部に出力する映像信号切替部を備えているという態様がある。
【0016】
これによれば、複数のカメラを接続していても、それぞれの入力映像信号を映像信号切替部を介して共通の映像信号処理部に選択的に供給できるので、映像信号処理部の構成を簡素化することが可能となる。なお、映像信号切替部をLSIの外部に配置しておけば、LSIの入力ピン数を減らすことが可能である。
【0017】
また、上記構成の映像データ転送処理装置において、前記映像データ処理部は、前記映像データの拡大または縮小の少なくとも一方の変換を行うように構成されているという態様がある。
【0018】
これによれば、同一映像について複数サイズの映像データを生成することが可能となり、端末装置の転送要求サイズに応じた映像データを転送することが可能となる。
【0019】
また、上記構成の映像データ転送処理装置において、さらに、外部から入力されてくる映像データを取り込んで前記映像データ処理部で処理可能な所定の形式に変換する映像データ入力部を備えているという態様がある。
【0020】
これによれば、カメラの出力がすでに映像信号から映像データに変換されたものである場合でも、対応が可能となる。
【0021】
また、上記構成の映像データ転送処理装置において、さらに、映像データを記録する記憶装置と、前記記憶装置へのアクセスを行うメモリコントローラとを備え、
前記映像信号処理部は、形式調整後の前記映像信号を前記メモリコントローラを介して前記記憶装置に格納するように構成され、
前記映像データ処理部は、前記メモリコントローラを介して前記記憶装置から前記映像信号を読み出し、この映像信号を変換して生成した前記映像データを前記メモリコントローラを介して前記記憶装置に格納するように構成され、
前記マルチコーデック部は、前記メモリコントローラを介して前記記憶装置から前記映像データを読み出し、この映像データを変換して生成した前記転送データを前記メモリコントローラを介して前記記憶装置に格納するように構成され、
前記転送データ選択部は、前記メモリコントローラを介して前記記憶装置から前記転送データを読み出し、前記通信部に出力するように構成されているという態様がある。前記記憶装置としては、例えば、SDRAMやDDR-SDRAMなどがある。
【0022】
これによれば、記憶装置に各データを格納するようにし、記憶装置から各データを読み出して利用することにより、複数フレームのデータを貯めておいてから、映像信号ごとに処理するといったことが可能となる。転送データ選択部は、マルチコーデック部から直接に転送データを取り込む場合もある。
【0023】
また、上記構成の映像データ転送処理装置において、前記マルチコーデック部は、複数の映像データの圧縮処理ごとに、各チャンネルごとに差分データと映像データの領域を確保して、各々の前フレームとの差分データを前記メモリコントローラを介して前記記憶装置に格納し、該当するチャンネルの次フレーム圧縮処理時に、該当するチャンネルの差分データ、該当するチャンネルの前フレームの映像データ、および該当するチャンネルの次フレームの映像データを前記メモリコントローラを介して前記記憶装置から読み出すように構成されているという態様がある。
【0024】
これによれば、MPEG、MPEG2、MPEG4やH.264といった前の情報(Pピクチャ)を使用して圧縮する方式に対応することが可能となる。
【0025】
また、上記構成の映像データ転送処理装置において、前記マルチコーデック部は、複数の映像データの圧縮処理ごとに、次フレームの映像データを、元の次フレームの領域以外の領域に格納するように構成されているという態様がある。
【0026】
これによれば、記憶装置の映像データ領域において各映像信号ごとの前フレームの映像データを残しておく必要がなく、マルチコーデック部が管理するメモリ空間で処理することが可能となり、記憶装置におけるアドレス管理が容易になる。
【0027】
本発明による監視カメラシステムは、
上記のいずれかの映像データ転送処理装置と、
前記映像データ転送処理装置に接続される少なくとも1つのカメラと、
前記映像データを表示のために出力する表示部と、
前記映像データ転送処理装置に接続され、前記表示部によって出力された前記映像データを表示する表示装置と、
前記転送データ選択部に対する操作により、前記表示装置に表示されている映像データの中から転送データを選択して出力させる操作部とを備えたものである。
【0028】
これによれば、表示装置に表示された複数の映像を確認し、操作部で選択して、選択された映像の転送データのみを通信ネットワークに送信可能となる。
【0029】
上記の構成の監視カメラシステムにおいて、前記映像データ転送処理装置における前記映像データ処理部は、前記操作部により選択された前記映像データのサイズが前記転送要求のサイズと異なる場合に、前記転送要求のサイズにリサイズするように構成され、前記映像データ転送処理装置における前記マルチコーデック部は、リサイズされた映像データを圧縮するように構成されているという態様がある。
【0030】
これによれば、確実に、転送要求のサイズで転送データを転送することが可能となる。
【0031】
また、上記構成の監視カメラシステムにおいて、前記映像データ転送処理装置における前記時分割管理部は、転送要求のあった前記映像信号を出力しているカメラだけを駆動させ、転送要求のない前記映像信号を出力しているカメラについては駆動停止するように構成されているという態様がある。
【0032】
これによれば、転送要求のあったカメラだけを駆動させ、転送要求のないカメラは駆動停止するので、省電力化を図ることが可能となる。
【0033】
また、上記構成の監視カメラシステムにおいて、前記映像データ転送処理装置における前記転送データ選択部は、前記通信部に対して前記通信ネットワークに対する転送要求を出力し、この転送要求に応じて送信され受信した転送データを入力するように構成され、前記映像データ転送処理装置における前記マルチコーデック部は、受信した前記転送データを伸張して映像データを生成するように構成され、前記映像データ転送処理装置における前記映像データ処理部は、前記伸張された映像データをリサイズするように構成され、前記表示部は、リサイズされた前記映像データを表示装置に出力するように構成されているという態様がある。
【0034】
これによれば、映像データ転送処理装置を2つ接続することで、転送データの送信だけでなく受信も可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、複数の端末装置それぞれの転送要求に応じて映像データを配信することが可能となる。また、複数の端末装置それぞれの転送要求に応じた映像サイズの態様での映像データの配信が可能となる。
【0036】
また、複数のカメラについて、その撮像形式は統一しなくてもよくなる。例えば、1つはCCDセンサー、1つはCMOSセンサーといった使い方が可能となり、汎用性を拡張することが可能となる。すなわち、入力されるデータ形式を複数形式とすることで、映像信号の映像サイズや特性について、様々なものに対応することができる。
【0037】
また、複数カメラの接続状態で、転送要求のあったカメラだけを駆動させ、転送要求のないカメラは駆動停止するので、省電力化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明にかかわる映像データ転送処理装置および監視カメラシステムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0039】
図1は本実施の形態における映像データ転送処理装置を含む監視カメラシステムの構成を示すブロック図である。図1において、1a,2aは映像信号入力端子、3aは映像データ入力端子、4は映像信号入力端子1a,2aからの複数の映像信号の入力のうち1つを選択して出力する映像信号切替部、5は映像信号切替部4から入力されてくる複数の異なる形式の映像信号に対して、画素値を並び替えることにより映像データ処理部8で処理可能な所定の形式に変換し、その形式調整後の映像信号を映像データ処理部8に出力する映像信号処理部、6は映像データ入力端子3aから入力されてくる映像データを取り込んで映像データ処理部8で処理可能な所定の形式に変換する映像データ入力部、7は記憶装置20へのアクセスを行うメモリコントローラ、8は入力されてくる映像信号を映像データに変換する映像データ処理部、9は映像データ処理部8によって変換され記憶装置20に格納された映像データを圧縮して転送データに変換するマルチコーデック部、10は映像データを表示のために出力する表示部、11は通信部12を介して受信する端末装置200からの転送要求を時分割管理部13に受け渡すとともに、マルチコーデック部9の変換による転送データのうち、転送要求に応じた転送データを選択して通信部12に送出する転送データ選択部、12は通信ネットワーク50経由で端末装置200との間で送受信を行い、端末装置200からの転送要求を中継するとともに、入力する転送データを端末装置200に向けて送信する通信部、13は受け取った転送要求に応じて、映像信号切替部4、映像信号処理部5、映像データ入力部6、映像データ処理部8、マルチコーデック部9、表示部10および転送データ選択部11を映像信号のフレーム周期と同じまたはより短い周期で時分割に駆動制御する時分割管理部、14はカメラ駆動設定入出力端子であり、これらの構成要素から映像データ転送処理装置100が構築されている。
【0040】
また、映像データ転送処理装置100の外部の構成要素として、1,2,3はカメラ、20は映像データ等を記録する記憶装置、30は表示部10によって出力された映像データを表示する表示装置、40は転送データ選択部11に対する操作により、表示装置30に表示されている映像データの中から転送データを選択して出力させる操作部、50はインターネットなどの既存の通信ネットワーク、200は端末装置である。端末装置200としては、映像データ転送処理装置100と同じものが用いられることがある。
【0041】
映像データ転送処理装置100における時分割管理部13は、カメラ駆動設定入出力端子14を介して第1ないし第3の3つのカメラ1,2,3の制御入力端子に接続されている。また、時分割管理部13は、映像信号切替部4、映像信号処理部5、映像データ入力部6、映像データ処理部8、マルチコーデック部9、表示部10および転送データ選択部11をタイミング制御するように構成されている。
【0042】
第1および第2のカメラ1,2は、それぞれの映像信号出力端子が映像データ転送処理装置100の映像信号入力端子1a,2aを介して映像信号切替部4に接続されている。また、第3のカメラ3は、映像データ入力端子3aを介して映像データ入力部6に接続されている。映像信号切替部4は時分割管理部13によって制御され、第1のカメラ1によるCH1の映像信号と第2のカメラ2によるCH2の映像信号とが切り替えられて映像信号処理部5に出力されるように構成されている。時分割管理部13は、複数チャンネルの映像信号を例えばフレーム単位で切り替えるように動作する。したがって、映像信号切替部4の出力は、例えばフレーム単位でCH1,CH2,CH1,CH2…の順番で切り替えられ、複数チャンネルの映像信号が時分割で混合される。
【0043】
第3のカメラ3によるCH3の映像データは映像データ入力部6において映像データ処理部8で取り扱い可能な形式に変換され、メモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納される。
【0044】
映像信号処理部5は、映像信号切替部4からの映像信号を入力し、その映像信号を、映像データ処理部8で処理可能な形式に変換し、変換後の映像信号を映像データ処理部8に出力する。例えば、第1のカメラ1が通常のCCDであり、第2のカメラ2が画素混合CCDであるとし、互いに信号形式が異なっているとする。通常のCCDの場合、映像信号はRGRG…ラインとGBGB…ラインとが交互に出力される。画素混合CCDの場合、RBRGGG…といった映像信号が出力される。そこで、このような場合に、映像信号処理部5は、画素混合CCDの映像信号の画素値を並び替えることにより通常のCCDと同じ形式で映像データ処理部8で処理可能な所定の形式に変換し、その形式調整後の映像信号を映像データ処理部8に出力する。
【0045】
映像データ処理部8は、映像信号処理部5から入力した形式調整後の映像信号を輝度信号(Y)、色差信号(Cb,Cr)といった映像データに変換し、変換後の映像データをメモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納する。
【0046】
映像データ処理部8は、映像データの拡大、縮小といったリサイズの機能も有している。さらに、映像データ処理部8は、映像データの映像サイズやアスペクト比を変える機能も有している。SDTV表示用に720画素×480画素といった映像データを生成することも可能である。
【0047】
マルチコーデック部9は、時分割管理部13の制御によりメモリコントローラ7を介して記憶装置20から該当する映像データを順次に読み出し、圧縮符号化し、圧縮符号化した映像データにチャンネル識別信号とタイムコード信号を付加した上でメモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納するように構成されている。マルチコーデック部9は、場合によっては、圧縮符号化した映像データを直接に転送データ選択部11に送出することもある。マルチコーデック部9は、例えばJPEG、MPEG2、MPEG4やH.264といった圧縮方式を用いて映像データを圧縮符号化する。チャンネル識別信号およびタイムコード信号の付加は、時分割管理部13からの指示に基づいて行う。
【0048】
表示部10は、メモリコントローラ7を介して記憶装置20から映像データを読み出し、表示装置30に出力する。表示装置30は、監視者の所望するチャンネルの映像、または、各チャンネルをマルチ表示した映像などが表示されるようになっている。表示装置30としては、CRT、LCDや有機ELディスプレイなどがある。
【0049】
転送データ選択部11は、端末装置200からの通信ネットワーク50、通信部12を介しての転送要求に応じて対応する転送データを選択し、通信部12および通信ネットワーク50を介して要求元の端末装置200へ送出する。すなわち、マルチコーデック部9から出力される転送データの中から転送要求に応じた転送データを選択し、あるいは、記憶装置20に格納されている転送データの中から転送要求に応じた転送データを選択する。そして、選択した転送データを通信部12および通信ネットワーク50を介して端末装置200に送出する。
【0050】
通信部12は、通信ネットワーク50を介して端末装置200との間で相互通信を行うように構成されている。端末装置200は、その転送要求に、URL(Uniform Resource Locator)と、チャンネルを指定するチャンネル指定データと、マルチコーデック部9から出力されるリアルタイムの転送データであるか、記憶装置20に記録されている過去の転送データのどの時間帯であるかを示す時間指定データとを含む。転送要求を受け取った通信部12は、その転送要求を転送データ選択部11に通知する。これを受けた転送データ選択部11は、転送要求に応じた転送データを選択して、要求元の端末装置200に配信する。
【0051】
次に、上記のように構成された本実施の形態の監視カメラシステムの動作を説明する。
【0052】
転送データ選択部11は、通信部12を監視し、通信ネットワーク50を介して端末装置200からどのようなデータ転送要求があるかに応じて、時分割管理部13に制御情報を通知する。すなわち、3つのカメラ1,2,3のうちいずれのカメラの映像信号の転送を要求するかの情報、どのような映像サイズでのデータ転送の要求なのかの情報を通知する。
【0053】
仮に、第1のカメラ1によるCH1の映像データ、第2のカメラ2によるCH2の映像データおよび第3のカメラ3によるCH3の映像データが要求されたとき、時分割管理部13は、CH1,CH2,CH3,CH1,CH2,CH3…の繰り返しのタイミングで、3つのカメラ1,2,3、映像信号切替部4、映像信号処理部5、映像データ入力部6、映像データ処理部8、マルチコーデック部9、転送データ選択部11を制御する。
【0054】
図2は、端末装置200から通信ネットワーク50を介して3つのカメラ1,2,3の映像データの転送要求があったときに、消費エネルギーモードを外した場合の動作を示す。図2の(a)は映像信号切替部4への入力映像信号を示し、図2の(b)は映像信号切替部4から出力される映像信号を示す。図中、CHn(n=1,2,3)はチャンネル番号を表し、フレームFm(m=1,2,3…)はフレーム番号を表わしている。
【0055】
時分割管理部13は、3つのカメラ1,2,3に対して、図2(a)に示すように、3つのカメラ1,2,3のすべてを常時的に駆動状態にする制御を行う。また、時分割管理部13は、映像信号切替部4に対して、図2(b)に示すようなタイミング制御を行う。すなわち、映像信号切替部4は、以下の第1の期間ないし第3の期間の動作をサイクリックに繰り返す。
【0056】
第1のフレーム期間では、映像信号切替部4は、第1のカメラ1からのCH1のフレームF1の映像信号を映像信号処理部5に出力する。
【0057】
第2のフレーム期間では、映像信号切替部4は、第2のカメラ2からのCH2のフレームF2の映像信号を映像信号処理部5に出力する。
【0058】
第3のフレーム期間では、映像信号切替部4は、CH1のフレームF3の映像信号を映像信号処理部5に出力する。
【0059】
また、時分割管理部13は、映像信号処理部5に対して、図2(c)に示すようなタイミング制御を行う。すなわち、映像信号処理部5は、以下の第1の期間ないし第3の期間の動作をサイクリックに繰り返す。
【0060】
第1のフレーム期間では、映像信号処理部5は、映像信号切替部4から入力したCH1のフレームF1の映像信号を映像データ処理部8で取り扱い可能な形式に変換し、形式調整後の映像信号を映像データ処理部8に出力する。
【0061】
第2のフレーム期間では、映像信号処理部5は、映像信号切替部4から入力したCH2のフレームF2の映像信号を映像データ処理部8で取り扱い可能な形式に変換し、形式調整後の映像信号を映像データ処理部8に出力する。
【0062】
第3のフレーム期間では、映像信号処理部5は、その動作を停止する。動作を停止するのは、映像信号切替部4から処理すべき映像信号が入力されてこないからである。
【0063】
また、時分割管理部13は、映像データ処理部8に対して、図2(d)に示すようなタイミング制御を行う。すなわち、映像データ処理部8は、以下の第1の期間ないし第3の期間の動作をサイクリックに繰り返す。
【0064】
第1のフレーム期間では、映像データ処理部8は、映像信号処理部5から入力したCH1のフレームF1の形式調整後の映像信号を映像データに変換し、変換後の映像データをメモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納する。
【0065】
第2のフレーム期間では、映像データ処理部8は、映像信号処理部5から入力したCH2のフレームF2の形式調整後の映像信号を映像データに変換し、変換後の映像データをメモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納する。
【0066】
第3のフレーム期間では、映像データ処理部8は、その動作を停止する。動作を停止するのは、処理すべき映像信号がないからである。
【0067】
また、時分割管理部13は、マルチコーデック部9に対して、図2(e)に示すようなタイミング制御を行う。すなわち、マルチコーデック部9は、以下の第1の期間ないし第3の期間の動作をサイクリックに繰り返す。
【0068】
第1のフレーム期間では、マルチコーデック部9は、メモリコントローラ7を介して記憶装置20からCH1のフレームF1の映像データを読み出し、圧縮符号化する。そして、圧縮符号化した映像データにCH1を示すチャンネル識別信号とタイムコード信号を付加した上で記憶装置20に格納する。
【0069】
第2のフレーム期間では、マルチコーデック部9は、メモリコントローラ7を介して記憶装置20からCH2のフレームF2の映像データを読み出し、圧縮符号化する。そして、圧縮符号化した映像データにCH2を示すチャンネル識別信号とタイムコード信号を付加した上で記憶装置20に格納する。
【0070】
第3のフレーム期間では、マルチコーデック部9は、メモリコントローラ7を介して記憶装置20から第3のカメラ3のCH3のフレームF3の映像データを読み出し、圧縮符号化する。そして、圧縮符号化した映像データにCH3を示すチャンネル識別信号とタイムコード信号を付加した上で記憶装置20に格納する。
【0071】
図3は、端末装置200から通信ネットワーク50を介して3つのカメラ1,2,3の映像データの転送要求があったときに、消費エネルギーモードを設定した場合の動作を示す。
【0072】
このモードの場合、時分割管理部13は、カメラ駆動設定入出力端子14を介して3つのカメラ1,2,3に対して時分割に駆動制御を行う。
【0073】
時分割管理部13は、3つのカメラ1,2,3に対して、図3(a)に示すようなタイミング制御を行う。すなわち、以下の第1の期間ないし第3の期間の動作をサイクリックに繰り返す。
【0074】
第1のフレーム期間では、第1のカメラ1を駆動するとともに、第2および第3のカメラ2,3は駆動停止する。第2および第3のカメラ2,3での電力消費は抑制される。
【0075】
第2のフレーム期間では、第2のカメラ2を駆動するとともに、第3および第1のカメラ3,1は駆動停止する。第3および第1のカメラ3,1での電力消費は抑制される。
【0076】
第3のフレーム期間では、第3のカメラ3を駆動するとともに、第1および第2のカメラ1,2は駆動停止する。第1および第2のカメラ1,2での電力消費は抑制される。
【0077】
また、時分割管理部13は、映像信号切替部4に対して、図3(b)に示すようなタイミング制御を行う。すなわち、映像信号切替部4は、以下の第1の期間ないし第3の期間の動作をサイクリックに繰り返す。
【0078】
第1のフレーム期間では、映像信号切替部4は、第1のカメラ1からのCH1のフレームF1の映像信号を映像信号処理部5に出力する。
【0079】
第2のフレーム期間では、映像信号切替部4は、第2のカメラ2からのCH2のフレームF2の映像信号を映像信号処理部5に出力する。
【0080】
第3のフレーム期間では、映像信号切替部4は、その動作を停止する。動作を停止するのは、このフレーム期間では、第3のカメラ3からのCH3の映像データが処理対象となるからであり、第1および第2のカメラ1,2は駆動停止されていて、CH1,CH2の映像信号は入力されてこないからである。第3の期間で映像信号切替部4の動作を停止するので、電力消費を抑制する。
【0081】
また、時分割管理部13は、映像信号処理部5に対して、図3(c)に示すようなタイミング制御を行う。すなわち、映像信号処理部5は、以下の第1の期間ないし第3の期間の動作をサイクリックに繰り返す。
【0082】
第1のフレーム期間では、映像信号処理部5は、映像信号切替部4から入力したCH1のフレームF1の映像信号を映像データ処理部8で取り扱い可能な形式に変換し、形式調整後の映像信号を映像データ処理部8に出力する。
【0083】
第2のフレーム期間では、映像信号処理部5は、映像信号切替部4から入力したCH2のフレームF2の映像信号を映像データ処理部8で取り扱い可能な形式に変換し、形式調整後の映像信号を映像データ処理部8に出力する。
【0084】
第3のフレーム期間では、映像信号処理部5は、その動作を停止する。動作を停止するのは、映像信号切替部4から処理すべき映像信号が入力されてこないからである。第3の期間で映像信号処理部5の動作を停止するので、電力消費を抑制する。
【0085】
また、時分割管理部13は、映像データ処理部8に対して、図3(d)に示すようなタイミング制御を行う。すなわち、映像データ処理部8は、以下の第1の期間ないし第3の期間の動作をサイクリックに繰り返す。
【0086】
第1のフレーム期間では、映像データ処理部8は、映像信号処理部5から入力したCH1のフレームF1の形式調整後の映像信号を映像データに変換し、変換後の映像データをメモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納する。
【0087】
第2のフレーム期間では、映像データ処理部8は、映像信号処理部5から入力したCH2のフレームF2の形式調整後の映像信号を映像データに変換し、変換後の映像データをメモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納する。
【0088】
第3のフレーム期間では、映像データ処理部8は、その動作を停止する。動作を停止するのは、処理すべき映像信号がないからである。第3の期間で映像データ処理部8の動作を停止するので、電力消費を抑制する。
【0089】
また、時分割管理部13は、マルチコーデック部9に対して、図3(e)に示すようなタイミング制御を行う。すなわち、マルチコーデック部9は、以下の第1の期間ないし第3の期間の動作をサイクリックに繰り返す。
【0090】
第1のフレーム期間では、マルチコーデック部9は、メモリコントローラ7を介して記憶装置20からCH1のフレームF1の映像データを読み出し、圧縮符号化する。そして、圧縮符号化した映像データにCH1を示すチャンネル識別信号とタイムコード信号を付加した上で記憶装置20に格納する。
【0091】
第2のフレーム期間では、マルチコーデック部9は、メモリコントローラ7を介して記憶装置20からCH2のフレームF2の映像データを読み出し、圧縮符号化する。そして、圧縮符号化した映像データにCH2を示すチャンネル識別信号とタイムコード信号を付加した上で記憶装置20に格納する。
【0092】
第3のフレーム期間では、マルチコーデック部9は、メモリコントローラ7を介して記憶装置20からCH3のフレームF3の映像データを読み出し、圧縮符号化する。そして、圧縮符号化した映像データにCH3を示すチャンネル識別信号とタイムコード信号を付加した上で記憶装置20に格納する。
【0093】
図3(e)を見ると、図2(e)と同様に、転送要求のあった転送データの処理を行っていることが分かる。
【0094】
なお、上記において、CH3の映像データに対して端末装置200からリサイズの要求があるときには、映像データ処理部8を駆動してリサイズ処理を行わせてもよい。また、CH1〜CH3のいずれかの映像データに対してアスペクト比を変えた映像データの要求があるときには、映像データ処理部8を駆動してアスペクト比調整の処理を行わせてもよい。例えば、SDTV表示用に720画素×480画素といった映像データが要求される場合がある。これらの場合、映像データ処理部8の駆動停止による省電力の効果はなくなる。
【0095】
転送データ選択部11を介して通信部12から送出された転送データは、通信ネットワーク50を経由して要求元の端末装置200に送信される。端末装置200では、送信されてきた圧縮転送データを適宜に伸張してモニタ部でモニタリングしたり、必要に応じて圧縮映像データの記録を行う。
【0096】
なお、時間指定された期間の転送データがない場合は、OSD(On ScreenDisplay)で“データがありません”と画面に表示するための転送データを配信する。あるいは、黒画面でも青画面でもよい。これらは、転送データがない場合の対策としてらかじめ用意しておけばよい。
【0097】
図4は、時分割管理部13がマルチコーデック部9を制御する概念図である。ここでは、マルチコーデック部9の最大処理能力を、映像サイズVGA(640画素×480ライン)のときに1秒間に30フレームの処理能力(30fps)であるとしている。
【0098】
図4(a)は、映像サイズVGAの映像データを処理する場合のマルチコーデック部9の状態を示す。図3のようにフレーム単位でCH1,CH3,CH3をサイクリックに切り替えるとき、CH1,CH2,CH3はそれぞれ10fpsのフレームレートとなる。すなわち、
VGA×30fps=VGA(CH1)×10fps+VGA(CH2)×10fps+VGA(CH3)×10fps
となる。これは、マルチコーデック部9の時分割制御における条件式、
S・T≧s0・t0+s1・t1+…+sn-1・tn-1
を満足している。ここで、Sは映像データの最大サイズ、Tは最大フレームレート、S・Tはマルチコーデック部9の最大処理能力、s0,s1,…,sn-1はn個の映像データそれぞれのサイズ、t0,t1,…,tn-1はそれぞれのフレームレートである。
【0099】
図4(b)は、映像サイズQVGA(320画素×240ライン)の映像データを処理する場合のマルチコーデック部9の状態を示す。QVGAは、VGAの1/4の映像サイズである。したがって、同じ時間(1/30秒)であれば、4フレームの処理が可能となる。同様に、この場合の処理状態についても、
VGA×30fps=QVGA×30fps+QVGA×30fps+QVGA×30fps+QVGA×30fps
となる。これも、マルチコーデック部9の時分割制御における条件式を満足している。
【0100】
図4(c)は、QVGA、QCIF(176画素×144ライン)およびJPEGサムネイルサイズ(160画素×120ライン)の異なる映像サイズで処理する場合のマルチコーデック部9の状態を示す。マルチコーデック部9の時分割制御における条件式を満足するならば、同サイズのものでなくてもよい。
【0101】
図5は、3つのカメラ1,2,3のいずれについても、端末装置200から図4(b)の映像サイズQVGAでデータ転送要求された場合の映像データ転送処理装置100の処理状態を示す。
【0102】
1/30秒を単位期間とする第1の期間の前半では、第1および第3のカメラ1,3を駆動するが、第2のカメラ2は駆動停止して電力消費が抑制される。これに対応して、映像信号切替部4は第1のカメラ1のCH1のフレームF1の映像信号を選択して出力し、映像信号処理部5はCH1のフレームF1の映像信号を映像データ処理部8で取り扱い可能な形式に変換し、形式調整後の映像信号を映像データ処理部8に出力する。そして、映像データ処理部8はCH1のフレームF1の形式調整後の映像信号を映像データに変換し、変換後の映像データをメモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納する。そして、1単位期間の後、マルチコーデック部9はメモリコントローラ7を介して記憶装置20からCH1のフレームF1の映像データを読み出し、圧縮符号化し、圧縮符号化した映像データにCH1を示すチャンネル識別信号とタイムコード信号を付加した上で記憶装置20に格納する。このときのCH1のフレームF1の映像データはQVGAとなっている。
【0103】
また、1/30秒を単位期間とする第1の期間の後半では、第2および第3のカメラ2,3を駆動するが、第1のカメラ1は駆動停止して電力消費が抑制される。これに対応して、映像信号切替部4は第2のカメラ2のCH2のフレームF1の映像信号を選択して出力し、映像信号処理部5はCH2のフレームF1の映像信号を映像データ処理部8で取り扱い可能な形式に変換し、形式調整後の映像信号を映像データ処理部8に出力する。そして、映像データ処理部8はCH2のフレームF1の形式調整後の映像信号を映像データに変換し、変換後の映像データを記憶装置20に格納する。そして、1単位期間の後、マルチコーデック部9は記憶装置20からCH2のフレームF1の映像データを読み出し、圧縮符号化し、圧縮符号化した映像データにCH2を示すチャンネル識別信号とタイムコード信号を付加した上で記憶装置20に格納する。このときのCH2のフレームF1の映像データもQVGAとなっている。
【0104】
一方、第3のカメラ3は、駆動停止はなく、連続駆動されている。1/30秒を単位期間とする第1の期間における第3のカメラ3のCH3のフレームF1の映像データは映像データ入力部6に入力され、映像データ入力部6は入力した映像データを映像データ処理部8で取り扱い可能な形式に変換し、メモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納する。CH3の映像データに対しては、映像信号処理部5および映像データ処理部8は機能させないでよい。そして、1単位期間の後、マルチコーデック部9は記憶装置20からCH3のフレームF1の映像データを読み出し、圧縮符号化し、圧縮符号化した映像データにCH3を示すチャンネル識別信号とタイムコード信号を付加した上で記憶装置20に格納する。このときのCH3のフレームF1の映像データもQVGAとなっている。
【0105】
以上のように、マルチコーデック部9は各チャンネルの映像データを順次に読み出し、圧縮処理を行う。このように圧縮処理で得られたデータが転送要求された転送データであり、メモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納される。マルチコーデック部9は、QVGAの映像データを、1/30秒で4フレームの処理が可能である。したがって、CH1,CH2,CH3の圧縮処理の後、1/30秒を単位期間とする各期間に時間的余裕が生まれる。時分割管理部13は、この時間帯にマルチコーデック部9を停止させるように制御し、これにより省電力化を図っている。
【0106】
図6は、3つの端末装置200から1つのカメラについて互いに異なる複数の形式の映像データの転送要求があった場合の映像データ転送処理装置100の処理状態を示す。ここでは、第1のカメラ1について、QVGA(320画素×240ライン)、QCIF(176画素×144ライン)、およびJPEGサムネイルサイズ(160画素×120ライン)の映像データの転送要求があったとする。
【0107】
第1のカメラ1は常時駆動状態にあるが、第2および第3のカメラ2,3は常時停止状態にある。映像信号切替部4は、常時、第1のカメラ1のCH1の映像信号を選択出力し、映像信号処理部5はCH1の映像信号を映像データ処理部8で取り扱い可能な形式に変換し、映像データ処理部8に出力する。そして、映像データ処理部8は、入力したCH1の映像信号を、順次にQVGAの映像データ、QCIFの映像データ、JPEGサムネイルサイズの映像データへと変換し、変換後の映像データを順次に記憶装置20に格納する。そして、1単位期間の後、マルチコーデック部9は記憶装置20からCH1のフレームF1のQVGA、QCIF、JPEGサムネイルサイズの各映像データを順次に読み出し、圧縮符号化し、圧縮符号化した各映像データにCH1を示すチャンネル識別信号とタイムコード信号を付加した上で記憶装置20に格納する。
【0108】
上記において、映像データ処理部8およびマルチコーデック部9は、QVGA、QCIF、JPEGサムネイルサイズの映像データの順次処理の後、各フレームに時間的余裕が生まれる。時分割管理部13は、この時間帯に映像データ処理部8およびマルチコーデック部9を停止させるように制御し、これにより省電力化を図っている。
【0109】
なお、上記では、映像データ処理部8は順次に各サイズの処理を行っているが、同時に複数サイズの映像データ変換処理を行ってもよい。
【0110】
図7は、前述の図5の状態において、さらに、外部からQVGAの転送データを受信した場合の処理状態を示す。
【0111】
端末装置200から送出されたQVGAの転送データが通信ネットワーク50を介して当該の映像データ転送処理装置100の通信部12において受信された場合を考える。転送データは、転送データ選択部11からメモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納される。
【0112】
次いで、マルチコーデック部9は、記憶装置20からQVGAの転送データを読み出して伸張し、伸張後の映像データをメモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納する。そして、表示部10は、伸張後の映像データを記憶装置20から読み出して、表示装置30へ出力する。
【0113】
図8は、このときの表示装置30に表示されている映像のイメージを示す。図8において、31は表示装置30の表示エリアを示している。CH1〜CH3の映像データの表示に加え、受信した転送データについての映像データも表示されている。
【0114】
ユーザーが操作部40を操作すると、選択枠32が表示される。選択枠32が表示された状態で操作部40において選択操作を行うと、選択枠32で選択された映像データが拡大表示される。また、選択枠32が表示された状態で強制転送操作を行うと、端末装置200の転送要求に対し、選択枠32で選択された映像データの転送データを転送処理する。
【0115】
図9は、そのときの映像データ転送処理装置100の処理状態を示す。
【0116】
図7の状態から図9の状態への変化で示されるように、ユーザーは操作部40の操作により拡大表示選択を行い、表示装置30において映像を確認する。確認した結果、この映像を配信するために強制転送操作を行う。強制転送操作を行った次のフレームからは、各端末装置に配信されている転送データが受信した転送データとなる。このとき、各端末装置の転送要求サイズが異なる場合は、映像データ処理部8においてリサイズ処理を行って、各端末装置の必要としている映像サイズに変換してから、データ転送を行う。
【0117】
図10(a)はマルチコーデック部9の状態を示し、図10(b)はマルチコーデック部9の状態に対応したメモリ上のデータ格納イメージを示している。
【0118】
マルチコーデック部9は、複数の映像データの圧縮処理ごとに、各々の前フレームとの差分データをメモリコントローラ7を介して記憶装置20に格納し、次フレームの圧縮処理時に、該当するチャンネルの差分データ、該当するチャンネルの前フレームの映像データ、および該当するチャンネルの次フレームの映像データを記憶装置20から読み出す。
【0119】
実アドレスに対応したリニアなアドレス空間である論理アドレス上に、マルチエンコード処理時に必要なデータをそれぞれマッピングして格納している。CH1のフレームF1の映像データをエンコードする際には、メモリ上にはフレームF1の映像データが格納されている。次に、CH1のフレームF2の映像データをエンコードする際には、フレームF1とフレームF2の差分データが生成されるため、メモリに格納している。MPEGのような差分データを使用して圧縮を行う場合には、フレームF2以降のフレームに対しても、それまでの差分データを使用して圧縮を行う。メモリ上には、それぞれCH1差分の領域、CH1フレーム1の領域、CH1フレーム2の領域、CH1符号の領域を確保して、それぞれが重ならないようにアドレスマップを構成する。
【0120】
次々にエンコードを行うので、フレーム1の領域とフレーム2の領域には、前フレームの映像データデータと現フレームの映像データがそれぞれ格納されることになる。差分データの領域は、CH1のフレームF2を処理しているときのように、現フレームの処理を行うことによって、前フレームで生成された差分データは上書きされる。
【0121】
このようにして、CH2,CH3も同様にアドレスマップを構成し、マルチコーデック部9はそれぞれの領域内で、データの更新を行っている。
【0122】
ここで、フレームデータを2バンク構成にしているが、マルチコーデック部9が現フレームの映像データを出力するような構成にしている場合には、映像データ処理部8から出力される映像データをフレーム1の領域に格納し、次のフレーム処理時に前フレームとなるマルチコーデック部9が出力する現フレームの映像データをフレーム2の領域に格納することで、各処理部のメモリアクセスを切り分けて行うことができる。
【0123】
以上のように、本実施の形態によれば、従来技術に見られた課題は解決されている。
【0124】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、以下のように実施してもよい。
【0125】
(1)本実施の形態において、複数のカメラの台数として3つの場合を例示しているが、これにかかわらず、より多くのカメラを接続してもよい。その方が、より多地点の映像を監視できる。
【0126】
(2)本実施の形態において、転送データは暗号化していないが、通信部において公知のRSA(Rivest Shamir Adleman)方式などの暗号化方式を用いて転送データを暗号化し、暗号化データを転送するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の技術は、ビルや構内の多地点の撮影画像をモニタ上に表示して監視などを行う監視カメラシステムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の実施の形態における監視カメラシステムの構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態における監視カメラシステムにおいて消費エネルギーモードを外した場合の動作を示す各ブロック処理状態図
【図3】本発明の実施の形態における監視カメラシステムにおいて消費エネルギーモードの場合の動作を示す各ブロック処理状態図
【図4】本発明の実施の形態における監視カメラシステムで時分割管理部がマルチコーデック部を制御する概念図
【図5】本発明の実施の形態において、図4(b)の映像サイズのものを、各カメラで取り込んだ場合の各ブロック処理状態図
【図6】本発明の実施の形態において、映像データ処理部が1つの映像信号に対して複数の映像データを出力した場合の各ブロック処理状態図
【図7】本発明の実施の形態において、図5の状態でQVGAの転送データを受信した場合の各ブロック処理状態図
【図8】本発明の実施の形態において、図7の状態で表示装置に表示されている映像のイメージを示す図
【図9】本発明の実施の形態において、強制転送操作を行った場合の各ブロック処理状態図
【図10】本発明の実施の形態において、マルチコーデックを行った場合のメモリイメージを示す図
【符号の説明】
【0129】
1,2,3 カメラ
1a,2a 映像信号入力端子
3a 映像データ入力端子
4 映像信号切替部
5 映像信号処理部
6 映像データ入力部
7 メモリコントローラ
8 映像データ処理部
9 マルチコーデック部
10 表示部
11 転送データ選択部
12 通信部
13 時分割管理部
14 カメラ駆動設定入出力端子
20 記憶装置
30 表示装置
40 操作部
50 通信ネットワーク
100 映像データ転送処理装置
200 端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されてくる映像信号を映像データに変換する映像データ処理部と、
前記映像データ処理部によって変換された前記映像データを圧縮して転送データに変換するマルチコーデック部と、
受け取った転送要求に応じて前記映像データ処理部および前記マルチコーデック部を前記映像信号のフレーム周期と同じまたはより短い周期で時分割に駆動制御する時分割管理部と、
通信ネットワーク経由で端末装置との間で送受信を行い、前記端末装置からの転送要求を中継するとともに、入力する転送データを前記端末装置に向けて送信する通信部と、
前記通信部を介して受信する前記端末装置からの転送要求を前記時分割管理部に受け渡すとともに、前記マルチコーデック部の変換による前記転送データのうち、前記転送要求に応じた転送データを選択して前記通信部に送出する転送データ選択部とを備えた映像データ転送処理装置。
【請求項2】
前記映像データ処理部は、映像サイズを可変する機能を有し、前記映像信号を、この映像信号と同じサイズおよび異なるサイズの少なくとも1つの組み合わせからなる複数の前記映像データに変換するように構成され、
前記マルチコーデック部は、前記転送要求に応じた映像サイズの映像データを圧縮するように構成されている請求項1に記載の映像データ転送処理装置。
【請求項3】
前記映像データ処理部は、前記映像信号と異なるアスペクト比で前記映像データに変換するように構成されている請求項1または請求項2に記載の映像データ転送処理装置。
【請求項4】
前記映像データの最大サイズをS、そのときの最大フレームレートをT、n個の前記映像データの映像サイズをs0,s1,…,sn-1、それぞれのフレームレートをt0,t1,…,tn-1として、前記時分割管理部は、前記マルチコーデック部を、
S・T≧s0 ・t0 +s1 ・t1 +…+sn-1 ・tn-1
の条件に従って時分割に管理するように構成されている請求項1から請求項3までのいずれかに記載の映像データ転送処理装置。
【請求項5】
さらに、入力されてくる複数の異なる形式の映像信号に対して、画素値を並び替えることにより前記映像データ処理部で処理可能な所定の形式に変換し、その形式調整後の映像信号を前記映像データ処理部に出力する映像信号処理部を備えている請求項1から請求項4までのいずれかに記載の映像データ転送処理装置。
【請求項6】
さらに、複数の前記映像信号の入力のうち、1つの前記映像信号を選択し前記映像信号処理部に出力する映像信号切替部を備えている請求項5に記載の映像データ転送処理装置。
【請求項7】
前記映像データ処理部は、前記映像データの拡大または縮小の少なくとも一方の変換を行うように構成されている請求項1から請求項6までのいずれかに記載の映像データ転送処理装置。
【請求項8】
さらに、外部から入力されてくる映像データを取り込んで前記映像データ処理部で処理可能な所定の形式に変換する映像データ入力部を備えている請求項1から請求項7までのいずれかに記載の映像データ転送処理装置。
【請求項9】
さらに、映像データを記録する記憶装置と、前記記憶装置へのアクセスを行うメモリコントローラとを備え、
前記映像信号処理部は、形式調整後の前記映像信号を前記メモリコントローラを介して前記記憶装置に格納するように構成され、
前記映像データ処理部は、前記メモリコントローラを介して前記記憶装置から前記映像信号を読み出し、この映像信号を変換して生成した前記映像データを前記メモリコントローラを介して前記記憶装置に格納するように構成され、
前記マルチコーデック部は、前記メモリコントローラを介して前記記憶装置から前記映像データを読み出し、この映像データを変換して生成した前記転送データを前記メモリコントローラを介して前記記憶装置に格納するように構成され、
前記転送データ選択部は、前記メモリコントローラを介して前記記憶装置から前記転送データを読み出し、前記通信部に出力するように構成されている請求項5から請求項8までのいずれかに記載の映像データ転送処理装置。
【請求項10】
前記マルチコーデック部は、複数の映像データの圧縮処理ごとに、各チャンネルごとに差分データと映像データの領域を確保して、各々の前フレームとの差分データを前記メモリコントローラを介して前記記憶装置に格納し、該当するチャンネルの次フレーム圧縮処理時に、該当するチャンネルの差分データ、該当するチャンネルの前フレームの映像データ、および該当するチャンネルの次フレームの映像データを前記メモリコントローラを介して前記記憶装置から読み出すように構成されている請求項9に記載の映像データ転送処理装置。
【請求項11】
前記マルチコーデック部は、複数の映像データの圧縮処理ごとに、次フレームの映像データを、元の次フレームの領域以外の領域に格納するように構成されている請求項10に記載の映像データ転送処理装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれかに記載の映像データ転送処理装置と、
前記映像データ転送処理装置に接続される少なくとも1つのカメラと、
前記映像データを表示のために出力する表示部と、
前記映像データ転送処理装置に接続され、前記表示部によって出力された前記映像データを表示する表示装置と、
前記転送データ選択部に対する操作により、前記表示装置に表示されている映像データの中から転送データを選択して出力させる操作部とを備えた監視カメラシステム。
【請求項13】
前記映像データ転送処理装置における前記映像データ処理部は、前記操作部により選択された前記映像データのサイズが前記転送要求のサイズと異なる場合に、前記転送要求のサイズにリサイズするように構成され、
前記映像データ転送処理装置における前記マルチコーデック部は、リサイズされた映像データを圧縮するように構成されている請求項12に記載の監視カメラシステム。
【請求項14】
前記映像データ転送処理装置における前記時分割管理部は、転送要求のあった前記映像信号を出力しているカメラだけを駆動させ、転送要求のない前記映像信号を出力しているカメラについては駆動停止するように構成されている請求項12または請求項13に記載の監視カメラシステム。
【請求項15】
前記映像データ転送処理装置における前記転送データ選択部は、前記通信部に対して前記通信ネットワークに対する転送要求を出力し、この転送要求に応じて送信され受信した転送データを入力するように構成され、
前記映像データ転送処理装置における前記マルチコーデック部は、受信した前記転送データを伸張して映像データを生成するように構成され、
前記映像データ転送処理装置における前記映像データ処理部は、前記伸張された映像データをリサイズするように構成され、
前記表示部は、リサイズされた前記映像データを表示装置に出力するように構成されている請求項12から請求項14までのいずれかに記載の監視カメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−201995(P2007−201995A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20330(P2006−20330)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】