説明

映像データ送信装置及び受信装置

【課題】非圧縮映像信号を、公衆光通信網を用いて効率的に長距離伝送する。
【解決手段】送信装置1のフレーム変換部11〜18は、Dual Link HD−SDI信号を入力し、HANCデータ並びに画素データのパリティビット及びスタッフビットを廃棄し、SDIクロックによるHD−SDI信号のデータ列をSONETクロックによるデータ列に変換し、OC−192フレームに収容して広域網3へ送信する。受信装置2のフレーム再変換部21〜28は、広域網3から受信したOC−192フレームについて、SONETクロックによるデータ列を、SDIクロックによるHD−SDI信号のデータ列に変換し、送信装置1において廃棄したデータを復元し、元のDual Link HD−SDI信号を生成して出力する。これにより、非圧縮SHV信号を、広域網3のような既存の公衆光通信網を用いて長距離伝送することができ、低廉化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像データを送信する装置及び受信する装置に関し、特に、既存の広域網を利用して、大容量の超高精細な映像データを圧縮することなく実時間で長距離伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な高精細映像(HDTV)の分野では、映像を構成する各画素の輝度/色差信号(YPbPr)を10ビット以下で量子化する手法が用いられている。特に、SMPTE(米国映画テレビ技術者協会)により10ビットを1ワードとする292M規格等が定められたことにより、HD−SDI(High Definition−Serial Digital Interface)の規格が広く用いられるようになった。また、さらなる高精細化の需要と、コンピュータグラフィクス技術、撮像・表示デバイス等の進展により、12ビットで量子化する手法、空間サンプル数の間引きを行わない色信号(RGB 4:4:4方式)を用いる手法等を組み込んだ大容量な映像システムが用いられるようになった。
【0003】
従来の10ビット/ワードを基本とするHD−SDIの規格に準じて、このような4:4:4サンプルによる映像または12ビットで量子化した映像を伝送するために、HD−SDI信号を2系統束ねて並列伝送するSMPTE 372M規格(Dual Link HD−SDI)が定められている。
【0004】
SMPTE 372M規格に準じて映像データを伝送する場合、映像データ送信装置は、Aチャンネル及びBチャンネルの2チャンネルに、画素データ、HANCデータ(水平補助領域データ)及びVANCデータ(垂直補助領域データ)からなる補助データ、並びに同期バイトのデータをマッピングし、Dual Link HD-SDI信号を映像データ受信装置へ送信する。ここで、各画素の画素データは、3色の画素情報を表す各12ビットに、4ビット(2ビットのパリティビット及び2ビットのスタフィングビット)が付加され、合計40ビットにより構成される。これにより、HD−SDI信号の10ビット×4ワード(Aチャンネルの2ワード及びBチャンネルの2ワード)に有効画素データを収容することができる。
【0005】
また、将来のテレビジョンシステムとして、ハイビジョンの16倍の画素数(7680×4320画素)を有する超高精細映像システム(スーパーハイビジョン、SHV)の研究開発が進められている(非特許文献1を参照)。SHVの映像パラメータについては現在も検討が続けられているが、その一候補として、12ビット量子化及び空間サンプル数の間引きを行わない4:4:4方式が検討されている。フレーム周波数60Hzの順次走査方式では、SHVの映像は、有効画素データのみで約72Gbpsもの大容量映像信号となる。Dual Link HD−SDI信号と同様に、10ビット/ワードのHD−SDI信号に12ビットのSHVの有効画素データを収容する場合には、64系統のHD−SDI信号(32系統のDual Link HD−SDI信号)を用いて、SHVの映像データを伝送することができる。
【0006】
SHVの映像データを伝送するシステムとして、非圧縮SHV信号の長距離伝送を実現するシステムが提案されている(非特許文献2を参照)。このシステムは、16系統のHD−SDIの並列信号で構成されるDG(Dual−Green)方式非圧縮SHV信号を、16波長の光信号に変換して、波長多重により1芯の光ファイバで伝送するものである。
【0007】
SHVの映像以外の高精細映像としてデジタルシネマがある。デジタルシネマの映像は、SHVの映像の場合と同様に、非圧縮信号のインタフェースとしてHD−SDIの並列信号が用いられている。このような非圧縮デジタルシネマの信号を10Gbpsの直列信号に変換して伝送する手法が提案されている(特許文献1を参照)。
【0008】
一方、通信の分野では、高速大容量のデータを伝送可能な広域網として、米国規格協会(ANSI)において標準化されたSONET(Synchronous Optical Network)のフォーマットにより伝送を行う通信網が知られている(非特許文献3を参照)。また、国際電気通信連合(ITU)においては、同期デジタル・ハイアラーキ(SDH:Synchronous Digital Hierarchy)として同様のフォーマットが勧告されている(非特許文献4を参照)。ここで、広域網とは、電気通信事業者が提供している広域通信網(WAN:Wide Area Network)をいう。
【0009】
SONETは、伝送速度によって階層的に規格が決められており、約10Gbpsの伝送速度を実現する光インタフェースをOC−192(Optical Carrier−Level 192)という。SONET OC−192による広域網は既に普及しており、この広域網に適用する部品及び機器も広く使用されている。そこで、このような広域網を利用して映像データを伝送することにより、安価な長距離伝送を実現することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−74546号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「走査線4000本級4板式超高精細動画カメラ」、映像情報メディア学会誌、Vol.58 No.3 pp.383-391、2004
【非特許文献2】「非圧縮スーパーハイビジョン信号の16波高密度波長多重方式による長距離伝送」、映像情報メディア学会誌、Vol.60 No.9 pp.1490-1495、2006
【非特許文献3】ANSI T1.105、米国規格協会(ANSI)
【非特許文献4】ITU−T G.707、国際電気通信連合(ITU)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
非特許文献2におけるSHVの映像信号を伝送するシステムは、前述したとおり、16系統のHD−SDIの並列信号で構成されるDG方式非圧縮SHV信号を、16波長の光信号に変換して、波長多重により1芯の光ファイバで伝送するものである。しかしながら、このシステムを拡張して、64系統のHD−SDI信号を伝送することを想定すると、HD−SDI信号の系統数だけレーザ光源及び受光器が必要になり、安価な長距離伝送を実現することができないという問題がある。
【0013】
HD−SDI信号がDual Link HD−SDI信号の場合、その画素データ領域には、画素情報以外の冗長ビット(パリティビット及びスタッフビット)が含まれており、補助データ領域には、無効なHANCデータが存在する。そして、それらの無効データがそのまま伝送されることになるから、伝送効率が悪いという問題がある。さらに、SDIのフレーム形式の変換及びクロック周波数の変換を行わないから、SONET OC−192による広域網のような公衆光通信網への伝送は不可能であり、光ファイバ専用線のみの伝送に限られるという問題がある。
【0014】
特許文献1におけるデジタルシネマの映像信号を伝送するシステムは、前述したとおり、非圧縮デジタルシネマの信号を10Gbpsの直列信号に変換して伝送するものである。ここで、この手法を複数台の装置で並列に使用することにより、SHVの映像信号を伝送するシステムとしても適用することが可能になり、レーザ光源及び受光器を削減することができる。しかしながら、SDI信号のクロック周波数を基準に処理を行っているため、前述のシステムと同様に、SONET OC−192による広域網のような公衆光通信網への伝送は不可能であり、光ファイバ専用線のみの伝送に限られるという問題がある。
【0015】
そこで、本発明はこのような技術的背景のもとでなされたものであり、その目的は、非圧縮映像信号を、公衆光通信網を用いて効率的に長距離伝送可能な映像データ送信装置及び受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本発明による映像データ送信装置は、非圧縮映像信号のデータを、所定のフレームに収容し広域網へ送信する送信装置であって、非圧縮映像信号を複数のHD−SDI信号として入力し、前記HD−SDI信号における所定のHANCデータ(水平補助領域データ)を廃棄し、前記HD−SDI信号における画素データを構成するパリティビット及びスタッフビットを廃棄するSDIデフレーマと、前記SDIデフレーマによりHANCデータ、パリティビット及びスタッフビットが廃棄されたHD−SDI信号のデータを、前記HD−SDI信号のクロックに従って記憶器に格納し、前記フレームのクロックに従って前記記憶器から読み出すクロック変換部と、前記フレームのクロックに基づいて、フレームのペイロードにデータを収容するタイミングにて出力指示を前記クロック変換部に出力し、当該出力指示を前記フレームのクロックとして前記クロック変換部の記憶器から読み出されたデータを入力し、前記入力したデータをフレームのペイロードに収容するフレーマと、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明による映像データ送信装置は、前記SDIデフレーマが、非圧縮映像信号を4系統のDual Link HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4として入力し、HD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータに有効データが含まれる場合、前記有効データをHD−SDI信号A1のHANCデータの領域に移動してHD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータを廃棄し、HD−SDI信号B1〜B4における画素データを構成するパリティビット及びスタッフビットを廃棄する、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明による映像データ受信装置は、複数のHD−SDI信号により構成された非圧縮映像信号のデータを、広域網から所定のフレームとして受信する受信装置であって、映像データ送信装置によって、前記HD−SDI信号における所定のHANCデータが廃棄され、前記HD−SDI信号における画素データを構成する画素情報、パリティビット及びスタッフビットのうちのパリティビット及びスタッフビットが廃棄され、前記HANCデータ、パリティビット及びスタッフビットが廃棄されたHD−SDI信号のデータを、前記廃棄されたHANCデータの位置を示す識別情報と共にペイロードに収容されフレームとして前記広域網へ送信された場合に、前記受信したフレームのペイロードからデータを抽出するデフレーマと、前記デフレーマにより抽出されたフレームのデータを、前記フレームのクロックに従って記憶器に格納し、前記HD−SDI信号のクロックに従って前記記憶器から読み出すクロック変換部と、前記クロック変換部の記憶器に格納されたデータの量に基づいて、前記HD−SDI信号のクロックのタイミングを決定し、前記HD−SDI信号のクロックを生成するクロック制御部と、前記クロック制御部により生成されたHD−SDI信号のクロックに基づいて、HD−SDI信号の領域にデータを収容するタイミングにて出力指示を前記クロック変換部に出力し、前記出力指示及び前記HD−SDI信号のクロックに従って前記クロック変換部の記憶器から読み出されたデータを入力し、前記映像データ送信装置により廃棄されたHANCデータの識別情報に基づいてHANCデータを復元し、前記画素データを構成する画素情報からパリティビット及びスタッフビットを復元し、元のHD−SDI信号を生成するフレーマと、を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明による映像データ受信装置は、前記映像データ送信装置により、フレームのクロックとHD−SDI信号のクロックとの間の時間差を含むタイムスタンプ信号がフレームに収容され、前記クロック制御部が、映像データ送信装置により送信された前記タイムスタンプ信号と前記フレームのクロックとに基づいて、前記HD−SDI信号のクロックのタイミングを決定し、前記HD−SDI信号のクロックを生成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、非圧縮映像信号を、広域網のような公衆光通信網を用いて長距離伝送することができる。また、広域網はすでに普及しているから、そこで使用されている機器及び部品をそのまま用いることができ、光ファイバ専用線へ伝送する場合に比べて、低廉化を実現することができる。したがって、広域網をそのまま利用することができ、効率的な長距離伝送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による送信装置及び受信装置を含む伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図2】送信装置におけるフレーム変換部の構成を示すブロック図である。
【図3】送信装置のフレーム変換部におけるSDIデフレーマの処理を説明するフローチャートである。
【図4】OC−192フレームの構成を示す図である。
【図5】受信装置におけるフレーム再変換部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による送信装置及び受信装置を含む伝送システムの構成を示すブロック図である。この伝送システムは、映像データを送信する送信装置1と、映像データを受信する受信装置2とを備えて構成され、送信装置1及び受信装置2は広域網3により接続される。以下の説明では、広域網3は、SONET OC−192の規格により定められた8系統のフレーム(以下、OC−192フレームという。)が伝送される公衆光通信網であるものとする。
【0023】
送信装置1は、非圧縮SHV信号を、32系統のDual Link HD−SDI信号として入力する。32系統のDual Link HD−SDI信号は、4系統の信号(8信号)毎にグループ化され、信号群G1〜G8として入力される。信号群G1は、4系統のDual Link HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4からなる。信号群G2〜G8についても同様である。また、各信号群G1〜G8において、Dual Link HD−SDI信号A1,B1により1系統が構成される。Dual Link HD−SDI信号A2,B2等についても同様である。
【0024】
送信装置1は、信号群G1〜G8毎に、4系統のDual Link HD−SDI信号を1系統のOC−192フレームに変換すると共に、処理基準となるHD−SDI信号のクロック周波数をOC−192フレームのクロック周波数に変換する。この際に、Dual Link HD−SDI信号に含まれる所定のデータを廃棄する。そして、送信装置1は、8系統のOC−192フレームを広域網3へ送信する。廃棄される所定のデータの詳細については後述する。
【0025】
送信装置1は、フレーム変換部11〜18を備えている。フレーム変換部11〜18は、信号群G1〜G8のDual Link HD−SDI信号をそれぞれ入力し、所定のデータを廃棄してOC−192フレームに収容すると共にクロック周波数を変換し、電気信号を光信号に変換し広域網3へ送信する。
【0026】
受信装置2は、送信装置1により広域網3を介して送信された8系統のOC−192フレームを受信し、系統毎に、OC−192フレームをDual Link HD−SDI信号に変換すると共に、処理基準となるOC−192フレームのクロック周波数をHD−SDI信号のクロック周波数に変換する。この際に、送信装置1において廃棄された所定のデータを復元する。そして、受信装置2は、信号群G1〜G8毎のDual Link HD−SDI信号、すなわち、信号群G1〜G8で合計32系統のDual Link HD−SDI信号を出力する。
【0027】
受信装置2は、フレーム再変換部21〜28を備えている。フレーム再変換部21〜28は、OC−192フレームをそれぞれ入力し、光信号を電気信号に変換してデータを抽出し、信号群G1〜G8のDual Link HD−SDI信号に変換して所定のデータを復元し、出力する。
【0028】
広域網3は、8系統のOC−192回線により構成されている。尚、広域網3は、8芯光ファイバ専用線及び8系統のOC−192回線の従属接続によって構成されていてもよい。本発明では、広域網3の公衆光通信網を、8系統のOC−192回線に限定するものではない。
【0029】
このように、送信装置1及び受信装置2を含む伝送システムによれば、非圧縮SHV信号を伝送する際に、送信装置1は、非圧縮SHV信号をDual Link HD−SDI信号として入力し、所定のデータを廃棄してOC−192フレームに変換すると共に、HD−SDI信号のクロック周波数をOC−192フレームのクロック周波数に変換し、OC−192フレームを広域網3へ送信するようにした。そして、受信装置2は、広域網3からOC−192フレームを受信し、OC−192フレームをDual Link HD−SDI信号に変換すると共に、OC−192フレームのクロック周波数をHD−SDI信号のクロック周波数に変換し、所定のデータを復元するようにした。これにより、受信装置2は、送信装置1が入力した非圧縮SHV信号を再現することができる。つまり、この伝送システムにより、非圧縮SHV信号を、光ファイバ専用線ではなく広域網3を用いて長距離伝送することができる。また、OC−192回線による広域網3はすでに普及しており、そこで使用されている機器及び部品をそのまま用いることができるから、光ファイバ専用線へ伝送する場合に比べて、低廉化を実現することができる。したがって、既存の広域網3をそのまま利用することができ、効率的な長距離伝送を実現することが可能となる。
【0030】
(送信装置/フレーム変換部)
次に、図1に示した送信装置1におけるフレーム変換部11について詳細に説明する。フレーム変換部12〜18の構成及び処理はフレーム変換部11と同様であるから、説明を省略する。図2は、フレーム変換部11の構成を示すブロック図である。このフレーム変換部11は、SDI入力部111、SDIデフレーマ112、クロック変換部113、SONETフレーマ114、スクランブラ115、パリティ発生部116、シリアライザ117及びE/O変換部118を備えている。
【0031】
SDI入力部111は、4系統のDual Link HD−SDI信号(以下、HD−SDI信号という。)A1〜A4,B1〜B4からなる信号群G1を入力し、周波数特性を補償するための処理及びインピーダンス変換処理を行い、各HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4に含まれるライン番号を参照して信号間の位相同期を確立する。ここで、後段の信号処理のために、クロックの低周波数化が必要な場合には、直列信号を例えば10ビットまたは20ビットの並列信号に変換する。SDI入力部111は、位相同期が確立したHD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4をSDIデフレーマ112に出力する。
【0032】
SDIデフレーマ112は、SDI入力部111から位相同期が確立したHD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4を入力し、データの抽出を行って所定のデータを廃棄する。そして、SDIデフレーマ112は、処理後の信号をクロック変換部113に出力する。
【0033】
図3は、SDIデフレーマ112の処理を説明するフローチャートである。ここで、HD−SDI信号には、同期バイト、画素データ及び補助データ(HANCデータ及びVANCデータ)がマッピングされている。まず、SDIデフレーマ112は、入力したHD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4から抽出したデータがHANCデータであるか否かを判定する(ステップS301)。抽出したデータがHANCデータであるか否かは、同期バイト、画素データ及び補助データがマッピングされたHD−SDI信号において、同期バイトの位置を基準にして、抽出したデータの位置を検出することにより判定される。抽出したデータがHANCデータであると判定した場合(ステップS301:Y)、そのHANCデータがHD−SDI信号A1を除くHD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータであって、かつ、音声データ等の有効データであるか否かを判定する(ステップS302)。HANCデータが有効データであるか否かは、有効データが収容されている領域を含め、HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4毎に予め設定されている。
【0034】
SDIデフレーマ112は、ステップS302において、そのHANCデータがHD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータであって、かつ、有効データであると判定した場合(ステップS302:Y)、その有効データを、HD−SDI信号A1のHANCのうちの有効データが収容されていない領域へ移動するための信号処理を行い(ステップS303)、ステップS304へ移行する。尚、HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4のHANCにおける全ての有効データの容量に、後述する有効データの移動元及び移動先の位置情報の容量を加えた容量は、HD−SDI信号A1のHANCのデータ容量以下であるものとする。また、SDIデフレーマ112は、HANCに収容されている有効データの位置を予め認識しているものとする。この場合、SDIデフレーマ112は、有効データをHD−SDI信号A1のHANCへ移動する処理に伴い、有効データの移動元及び移動先の位置情報も、HD−SDI信号A1のHANCに収容する。一方、そのHANCデータがHD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータでない、または有効データでないと判定した場合(ステップS302:N)、ステップS304へ移行する。SDIデフレーマ112は、HD−SDI信号A1を除くHD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータを廃棄し(ステップS304)、ステップS307へ移行する。これにより、HD−SDI信号A1はそのまま伝送されることになる。
【0035】
一方、SDIデフレーマ112は、ステップS301において、入力したHD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4から抽出したデータがHANCデータでないと判定した場合(ステップS301:N)、入力したHD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4から抽出したデータがVANCデータであるか否かを判定する(ステップS305)。抽出したデータがVANCデータであるか否かは、同期バイト、画素データ及び補助データがマッピングされたHD−SDI信号において、ライン番号及び同期バイトの位置を基準にして、抽出したデータの位置を検出することにより判定される。抽出したデータがVANCデータでないと判定した場合(ステップS305:N)、HD−SDI信号B1〜B4の画素データのうち画素情報そのものでないパリティビット(2ビット)及びスタッフビット(2ビット)を廃棄する(ステップS306)。そして、ステップS307へ移行する。尚、HD−SDI信号A1〜A4にはパリティビット及びスタッフビットが含まれていないから、廃棄処理を行わない。一方、SDIデフレーマ112は、抽出したデータがVANCデータであると判定した場合(ステップS305:Y)、ステップS307へ移行する。これにより、HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4の全てのVANCデータはそのまま伝送されることになる。
【0036】
SDIデフレーマ112は、HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4の全データの処理が完了したか否かを判定し(ステップS307)、完了していないと判定した場合(ステップS307:N)、ステップS301へ移行し、完了していると判定した場合(ステップS307:Y)、ステップS301〜ステップS307の処理後のHD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4を出力する(ステップS308)。
【0037】
このように、SDIデフレーマ112は、HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4のうち、HD−SDI信号A1以外のHD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCにおける有効データをHD−SDI信号A1のHANCに移動し、HD−SDI信号A1以外のHD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータを廃棄し、HD−SDI信号B1〜B4の画素データにおけるパリティビット及びスタッフビットを廃棄する。これにより、後述するSONETフレーマ114において、OC−192フレームに収容されるデータ列は、非圧縮SHV信号の周波数が60Hzの場合、9.561672Gbpsの速度となり、非圧縮SHV信号の周波数が59.94Hzの場合、9.552110Gbpsの速度となる。すなわち、HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4の約12Gbps(1.5Gbps×8グループ)の速度は、SDIデフレーマ112によるデータ廃棄処理によって、約9.5Gbpsの速度となり、OC−192フレームの許容速度範囲内に収めることができる。
【0038】
図2に戻って、クロック変換部113は、SDIデフレーマ112から所定のデータが廃棄された信号を入力すると共に、SONETフレーマ114から出力指示を入力し、SDIクロックによるHD−SDI信号(入力した信号)のデータ列を、SONETクロックによるデータ列に変換し、SONETフレーマ114に出力する。具体的には、クロック変換部113は、FIFO(First in First Out)型緩衝記憶器を備えており、入力したHD−SDI信号のデータを、SDIクロックに従ってFIFO型緩衝記憶器に格納する。そして、クロック変換部113は、出力指示を入力したタイミングに従って、FIFO型緩衝記憶器からデータを読み出し、SONETクロックによるデータ列として出力する。この出力指示は、SONETフレーマ114において、SONETクロックを用いて生成された信号である。詳細については後述する。
【0039】
尚、後述する受信装置2のフレーム再変換部21におけるSDIクロック制御部218が、SRTS(Synchronous Residual Time Stamp)法を用いてSDIクロックを生成する場合には、クロック変換部113は、SONETフレーマ114からのタイムスタンプ信号要求指示を入力し、そのタイミングにて、SDIクロックに基づいた時刻情報であるタイムスタンプ信号を生成し、SONETフレーマ114に出力する。この場合、SONETフレーマ114は、SONETクロックに基づいて、後述するOC−192フレームのSOHにおける所定のタイミングにてタイムスタンプ信号要求指示を出力し、その要求指示に対するタイムスタンプ信号を入力し、SOHにおける所定の領域に収容する。したがって、OC−192フレームのSOHに収容されたタイムスタンプ信号は、SONETクロックとSDIクロックとの間の時間差が反映された信号となる。SRTS法については、「ITU−T I.363.1勧告 2.5.2.2章 Source clock frequency recovery method」の文献を参照されたい。
【0040】
SONETフレーマ114は、後述するヘッダ及びペイロードを構成する1080列×9行のブロックからなるOC−192フレームにおいて、OC−192フレームの各ブロックにデータを収容するためのタイミングクロックをSONETクロックに基づいて生成し、ペイロードにデータを収容するためのタイミングクロックを出力指示としてクロック変換部113に出力する。また、SONETフレーマ114は、クロック変換部113からSONETクロックによるデータ列を、出力指示に応じて入力すると共に、パリティ発生部116からSONETパリティ信号を入力し、入力したデータ列及びSONETパリティ信号をOC−192フレームに収容し、OC−192フレームを生成してその並列信号をスクランブラ115に出力する。
【0041】
図4は、OC−192フレームの構成を示す図である。このOC−192フレームは、セクションオーバーヘッド(Section OverHead:SOH)、パスオーバーヘッド(Path OverHead:POH)及びペイロードにより構成され、1クロック(1SONETクロック)を処理単位とするブロック(1ブロック=128ビット)のデータが1080列×9行並んでいる。1080列×9行のブロックのうち、最初の36列×9行がSOHであり、次の4列×9行がPOHであり、次の1040列×9行がペイロードである。すなわち、ヘッダ(オーバヘッド部分)は、先頭の第1列から第40列までのSOH及びPOHにより構成されている。ペイロードは、第41列から1080列までの領域により構成され、具体的には、第41列から第1076列までの1036列分の定常有効データ領域と、第1077,1078列の2列分の非定常有効データ領域と、第1079,1080列の2列分の補助データ領域とにより構成されている。
【0042】
ここで、SONETフレーマ114がクロック変換部113に出力する出力指示について説明する。SONETフレーマ114は、図4に示したOC−192フレームを構成する複数のブロックに対応したブロック単位のタイミングクロックをSONETクロックに基づいて生成し、ペイロードにおける1040×9回のタイミングクロックを出力指示としてクロック変換部113に出力する。この出力指示は、第1行目から第9行目までの各ブロックに対応する順番で、かつ、各行においては、定常有効データ領域のブロック、非定常有効データ領域のブロック及び補助データ領域のブロックに対応する順番で出力される。
【0043】
クロック変換部113は、出力指示を入力すると、出力指示をカウントする等して、OC−192フレームのペイロードのうちのどの領域についての出力指示であるかを判定する。そして、クロック変換部113は、OC−192フレームの定常有効データ領域についての出力指示に対し、そのタイミングに従って、FIFO型緩衝記憶器から1ブロックに相当するデータ(図4の例では、1ブロック=128ビット長のデータ)を読み出し、SONETクロックによるデータ列としてSONETフレーマ114に出力する。また、クロック変換部113は、OC−192フレームの非定常有効データ領域についての出力指示に対し、そのタイミングに従って、FIFO型緩衝記憶器に格納されたデータの量(データ量)と予め設定された閾値とを比較し、データ量が閾値以上の場合に、FIFO型緩衝記憶器から1ブロックに相当するデータを読み出し、SONETクロックによるデータ列としてSONETフレーマ114に出力する。一方、データ量が閾値よりも小さい場合は、データの読み出しは行わず、データ列の出力も行わない。また、クロック変換部113は、OC−192フレームの補助データ領域についての出力指示に対し、FIFO型緩衝記憶器からのデータの読み出しを行わず、データ列の出力も行わない。
【0044】
このように、SONETフレーマ114は、OC−192フレームのペイロード(定常有効データ領域、非定常有効データ領域及び補助データ領域)におけるブロック毎に、SONETクロックに基づいた出力指示をクロック変換部113に出力する。そして、SONETフレーマ114は、定常有効データ領域のブロックについての出力指示に対するデータ列を入力すると、入力したデータ列をそのブロックに収容する。これにより、SONETフレーマ114は、定常有効データ領域の出力指示に対応したデータ列を、確実に入力することができる。また、SONETフレーマ114は、非定常有効データ領域のブロックについての出力指示に対し、データ列を入力した場合には、入力したデータ列をそのブロックに収容し、収容したブロックの情報を含む識別情報を補助データ領域に収容する。一方、データ列を入力しない場合には、収容処理を行わない。つまり、非定常有効データ領域が有効であるか無効であるかを識別するために、補助データ領域の一部または全部が識別領域として割り当てられる。この場合、受信装置2は、補助データ領域の一部または全部に割り当てられた識別情報に基づいて、非定常有効データ領域のブロックが有効であるか無効であるかを識別する。
【0045】
また、SONETフレーマ114は、OC−192フレーム内のSOHを収容対象とする場合、SONETクロックに基づいたSOHにおける所定のブロックのタイミングにおいて、パリティ発生部116から入力したSONETパリティ信号、及びフレーム同期信号A1,A2をSOHにおける所定のブロックに収容する。また、SONETフレーマ114は、POHのタイミングにおいてはPOHのデータを生成して収容し、補助データ領域のタイミングにおいては補助データを生成して収容する。このように、SONETフレーマ114は、SONETクロックに基づいて、OC−192のブロック毎のタイミングで、前述した処理を行う。
【0046】
尚、後述する受信装置2のフレーム再変換部21におけるSDIクロック制御部218が、SRTS法を用いてSDIクロックを生成する場合には、SONETフレーマ114は、SOHにおける所定のブロックのタイミングにおいてタイムスタンプ信号要求信号をクロック変換部113に出力し、クロック変換部113からタイムスタンプ信号を入力し、入力したタイムスタンプ信号をSOHにおける所定のブロックに収容する。
【0047】
ところで、1個のOC−192フレームに収容されるデータのワード数は、HD−SDI信号及びOC−192フレームの周波数変動の設計値により変動する値である。以下、説明を簡単にするために、HD−SDI信号及びOC−192フレームの周波数変動の設計値を共に±100ppmとする。HD−SDI信号のクロック周波数は、非圧縮SHV信号のフレーム周波数が60Hz、周波数漂動が+100ppmの場合、最高速度の1.195328GB(バイト)/s(9.562628Gbps)となり、非圧縮SHV信号のフレーム周波数が59.94Hz、周波数漂動が−100ppmの場合、最低速度の1.193894GB/s(9.551155Gbps)となる。一方、毎秒のOC−192フレーム数は、周波数漂動が±100ppmの場合、7999.2Hzから8000.8Hzまで変動するため、128ビット/ワードとすると、1個のOC−192フレームに収容されるデータのうち非圧縮SHV信号のデータを保持するワード数は、9326.4から9339.4まで変動することになる。収容されるデータが最も少ないワード数9326.4の場合、小数点以下を切り上げると9327=9324(1036列×9行)+3であるから、収容されるデータは、定常有効データ領域(9324ワード=1036列×9行)及び3ワード分の非定常有効データ領域が必要になる。また、収容されるデータが最も多いワード数9339.4の場合、小数点以下を切り上げると9340=9324(1036列×9行)+16であるから、収容されるデータは、定常有効データ領域(9324ワード=1036列×9行)及び16ワード分の非定常有効データ領域が必要になる。
【0048】
したがって、HD−SDI信号及びOC−192フレームの周波数変動の設計値を共に±100ppmとした場合、データをOC−192フレームのペイロードに収容する際に、周波数変動に関わらず確実にデータが収容される1036列×9行の定常有効データ領域に加えて、周波数変動分を吸収するための2列×9行の非定常有効データ領域が必要になる。つまり、OC−192フレームでは、データを収容するための領域として、1036列×9行の定常有効データ領域及び2列×9行の非定常有効データ領域を確保することにより、データの溢れを回避することができる。尚、HD−SDI信号及びOC−192フレームの周波数変動の設計値±100ppmは余裕を持った値であり、この設計値を考慮してOC−192フレームを構成することにより、非定常有効データ領域において周波数変動分を確実に吸収することができる。
【0049】
このような理由により、図4に示したように、ペイロードのうちの1036列×9行を定常有効データ領域とし、2列×9行を非定常有効データ領域とし、残りの2列×9行を補助データ領域とする。
【0050】
これにより、SONETフレーマ114からの出力指示に基づいてクロック変換を行うクロック変換部113において、FIFO型緩衝記憶器に格納されるデータが溢れたり、FIFO型緩衝記憶器が空になったりすることなく、SDIクロックによるHD−SDI信号のデータ列をSONETクロックによるデータ列に変換することができ、クロック変換を実現することができる。
【0051】
尚、非定常有効データ領域内の無効部分及び補助データ領域内の未使用部分は拡張スロットとし、別の用途に使用するようにしてもよい。使用する必要がない場合は、全て固定値1または0をスタッフしておけばよい。
【0052】
また、図4に示したOC−192フレームにおける定常有効データ領域及び非定常有効データ領域のワード数は、HD−SDI信号及びOC−192フレームの周波数変動の設計値を共に±100ppmとした場合の値であるが、本発明では、周波数変動の設計値が±100ppmに限定されるものではなく、ワード数もこの値に限定されるものでもない。他の周波数変動の設計値を用いる場合も、同様の手法により定常有効データ領域及び非定常有効データ領域のワード数を求めることができる。また、図4に示したOC−192フレームでは、単位ワードを128ビットとしたが、本発明では、単位ワードが128ビットに限定されるものではない。
【0053】
図2に戻って、スクランブラ115は、SONETフレーマ114により生成されたOC−192フレームの並列信号を入力し、ANSI T1.105のSONET規格に準拠したスクランブル処理を行い、パリティ発生部116及びシリアライザ117に出力する。
【0054】
パリティ発生部116は、スクランブラ115によりスクランブル処理されたOC−192フレームの並列信号を入力し、ANSI T1.105のSONET規格に準拠したビットインターリーブパリティ処理を行い、SONETパリティ信号を生成してSONETフレーマ114に出力する。SONETフレーマ114にフィードバックされたSONETパリティ信号は、OC−192フレームのSOHに収容される。
【0055】
シリアライザ117は、スクランブラ115によりスクランブル処理されたOC−192フレームの並列信号を入力し、並列信号のデータ列を直列信号に変換し、E/O変換部118に出力する。尚、SONETフレーマ114及びスクランブラ115が、OC−192フレームの並列信号を用いて処理していない場合は、シリアライザ117は不要である。
【0056】
E/O変換部118は、シリアライザ117により変換されたOC−192フレームの直列信号を入力し、電気信号を光信号に変換し、1系統のOC−192フレームに準拠した光信号として送信する。
【0057】
以上のように、送信装置1のフレーム変換部11は、非圧縮SHV信号である信号群G1を構成する4系統のDual Link HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4を入力し、所定のデータを廃棄し、SDIクロックによるHD−SDI信号のデータ列をSONETクロックによるデータ列に変換し、OC−192フレームに収容し、電気信号を光信号に変換して広域網3へ送信するようにした。フレーム変換部12〜18も、信号群G2〜G8を対象にして、データ廃棄、クロック変換及びOC−192フレーム収容を行い、OC−192フレームの光信号を広域網3へ送信するようにした。
【0058】
これにより、送信装置1により、非圧縮SHV信号が、8系統のOC−192回線で構成される広域網3へ送信される。つまり、非圧縮SHV信号を、広域網3のような公衆光通信網を用いて長距離伝送することができる。また、OC−192回線による広域網3はすでに普及しており、そこで使用されている機器及び部品をそのまま用いることができるから、光ファイバ専用線へ伝送する場合に比べて、低廉化を実現することができる。したがって、既存の広域網3をそのまま利用することができ、効率的な長距離伝送を実現することが可能となる。
【0059】
尚、図2において、シリアライザ117は、スクランブラ115の後段に備えているが、スクランブラ115の前段に備えるようにしてもよい。すなわち、シリアライザ117によってOC−192フレームの並列信号が直列信号に変換された後、スクランブラ115が、シリアライザ117からOC−192フレームの直列信号を入力し、スクランブル処理を行うようにしてもよい。
【0060】
(受信装置/フレーム再変換部)
次に、図1に示した受信装置2におけるフレーム再変換部21について詳細に説明する。フレーム再変換部22〜28の構成及び処理はフレーム再変換部21と同様であるから、説明を省略する。図5は、フレーム再変換部21の構成を示すブロック図である。このフレーム再変換部21は、O/E変換部211、デシリアライザ212、同期検出部213、デスクランブラ214、SONETデフレーマ215、パリティ判定部216、クロック変換部217、SDIクロック制御部218、SDIフレーマ219及びSDI出力部220を備えている。以下、SDIクロック制御部218において、SDIクロックを制御するために、アダプティブクロック法を用いるものとして説明する。アダプティブクロック法については、「ITU−T I.363.1勧告 2.5.2.2章 Source clock frequency recovery method」の文献を参照されたい。
【0061】
受信装置2が、広域網3から8系統のOC−192フレームの光信号を受信すると、O/E変換部211は、送信装置1のフレーム変換部11により送信された1系統のOC−192フレームの光信号を入力し、光信号を電気信号に変換してデシリアライザ212に出力する。
【0062】
デシリアライザ212は、O/E変換部211により変換されたOC−192フレームの電気信号を入力し、この電気信号に基づいてPLL(Phase Locked Loop)回路(図示せず)によりSONETクロックを再生すると共に、直列信号を並列信号に変換し、同期検出部213に出力する。また、デシリアライザ212は、再生したSONETクロックから分周クロックを生成する。この分周クロックは、同期検出部213、デスクランブラ214、SONETデフレーマ215、パリティ判定部216、クロック変換部217及びSDIクロック制御部218にて用いられる。
【0063】
同期検出部213は、デシリアライザ212により変換されたOC−192フレームの並列信号を入力し、OC−192フレームのSOHから、ANSI T1.105のSONET規格に準拠したフレーム同期信号A1,A2を検出する。そして、同期検出部213は、同期したOC−192フレームの並列信号をデスクランブラ214に出力する。
【0064】
デスクランブラ214は、同期検出部213から同期したOC−192フレームの並列信号を入力し、ANSI T1.105のSONET規格に準拠したデスクランブル処理を行い、SONETデフレーマ215に出力する。
【0065】
SONETデフレーマ215は、デスクランブラ214によりデスクランブル処理されたOC−192フレームの並列信号を入力し、図2に示したSONETフレーマ114の逆の処理を行い、図4に示したOC−192フレームの定常有効データ領域及び非定常有効データ領域に収容された有効データ列を抽出する。また、SONETデフレーマ215は、OC−192フレームのSOHに収容されたSONETパリティ信号を抽出する。そして、SONETデフレーマ215は、有効データ列をSONETクロックのデータ列としてクロック変換部217に出力し、SONETパリティ信号をパリティ判定部216に出力する。
【0066】
尚、後述するSDIクロック制御部218がSRTS法を用いてSDIクロックを生成する場合には、SONETデフレーマ215は、OC−192フレームのSOHからタイムスタンプ信号を抽出する。そして、SONETデフレーマ215は、タイプスタンプ信号をSDIクロック制御部218に出力する。
【0067】
パリティ判定部216は、SONETデフレーマ215からSONETパリティ信号を入力し、SONETパリティ信号に基づいて誤りを検出する。
【0068】
クロック変換部217は、SONETデフレーマ215からSONETクロックによるデータ列を入力すると共に、SDIクロック制御部218からSDIクロック、及びSDIフレーマ219から出力指示を入力し、SONETクロックによるデータ列をSDIクロックによるHD−SDI信号のデータ列に変換し、SDIフレーマ219に出力する。具体的には、クロック変換部217は、FIFO型緩衝記憶器を備えており、入力したSONETクロックによるデータ列を、デシリアライザ212においてSONETクロックから生成された分周クロックに従ってFIFO型緩衝記憶器に格納する。そして、クロック変換部217は、出力指示を入力している状態で、SDIクロックを入力したタイミングに従ってFIFO型緩衝記憶器からデータを読み出し、SDIクロックによるHD−SDI信号のデータ列として出力する。
【0069】
これにより、FIFO型緩衝記憶器に格納されるデータが溢れたり、FIFO型緩衝記憶器が空になったりすることなく、SONETクロックによるデータ列をSDIクロックによるHD−SDI信号のデータ列に変換することができ、クロック変換を実現することができる。
【0070】
また、クロック変換部217は、FIFO型緩衝記憶器に格納されたデータの量(データ量)を求め、FIFO残量としてSDIクロック制御部218に出力する。尚、後述するSDIクロック制御部218がSRTS法を用いてSDIクロックを生成する場合には、クロック変換部217は、FIFO残量をSDIクロック制御部218に出力しない。
【0071】
SDIクロック制御部218は、クロック変換部217からFIFO残量を入力し、可変周波数発振器等(図示せず)を制御することによりSDIクロックを生成し、クロック変換部217に出力する。具体的には、SDIクロック制御部218は、FIFO残量の値と予め設定された閾値とを比較し、FIFO残量値が閾値以下の場合、FIFO型緩衝記憶器からデータを読み出すタイミングを遅くするため、SDIクロックの出力タイミングの間隔を広げる。一方、FIFO残量値が閾値よりも大きい場合、FIFO型緩衝記憶器からデータを読み出すタイミングを速くするため、SDIクロックの出力タイミングの間隔を狭める。
【0072】
尚、SDIクロック制御部218は、SRTS法を用いてSDIクロックを生成する場合には、SONETデフレーマ215からタイムスタンプ信号を入力し、デシリアライザ212においてSONETクロックから生成された分周クロックと、入力したタイムスタンプ信号とに基づいて、SDIクロックを生成し、クロック変換部217に出力する。タイムスタンプ信号は、送信装置1において、SONETクロックのタイミングに従いSDIクロックに基づいて生成された信号であるから、SONETクロックとSDIクロックとの間の時間差が反映されている。したがって、SONETの分周クロック、及び、タイムスタンプ信号であるSONETクロックとSDIクロックとの間の時間差が反映された信号とを用いることにより、SDIクロックを生成することができる。
【0073】
SDIフレーマ219は、クロック変換部217からSDIクロックによるHD−SDI信号のデータ列を入力し、図3に示したSDIデフレーマ112の逆の処理を行い、すなわち、SDIデフレーマ112において廃棄したデータを復元し、移動したデータを元に戻し、4系統のHD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4を生成してSDI出力部220に出力する。
【0074】
具体的には、SDIフレーマ219は、HD−SDI信号のデータ列からHD−SDI信号の同期バイトを検出し、検出した同期バイトの位置を基準にして、HD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータ領域を確保する。また、SDIフレーマ219は、検出したHD−SDI信号A1の同期バイトの位置を基準にしてHD−SDI信号A1のHANCデータを抽出し、そのHANCデータから、送信装置1においてHD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータにおける有効データがHD−SDI信号A1へ移動した場合の移動元及び移動先の位置情報を抽出し、HD−SDI信号A1のHANCに収容された有効データを元のHD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCに戻す。これにより、送信装置1において廃棄されたHD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータを復元することができる。また、SDIフレーマ219は、検出したHD−SDI信号B1〜B4の同期バイトの位置を基準にして画素データ(画素情報)を抽出し、その画素データに基づいてパリティビット(2ビット)を復元し、元のスタッフビット(2ビット)を復元する。
【0075】
また、SDIフレーマ219は、HD−SDI信号のフレームにデータを収容するために(HD−SDI信号の同期バイト、画素データ、HANCデータ及びVANCデータの各領域にデータをマッピングするために)、すなわち、4系統のHD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4を復元するために、クロック変換部217のFIFO型緩衝記憶器からデータを読み出すためのタイミングクロックを、SDIクロック制御部218により生成されたSDIクロックに基づいて生成し、出力指示としてクロック変換部217に出力する。具体的には、SDIフレーマ219は、HD−SDI信号A1について、同期バイト、画素データ、HANCデータ及びVANCデータを収容するタイミングの出力指示をクロック変換部217に出力し、それぞれの出力指示に対応したデータを入力し、HD−SDI信号A1の各領域に収容する。HD−SDI信号A1については、同期バイト、画素データ、HANCデータ及びVANCデータをクロック変換部217のFIFO型緩衝記憶器から入力することができる。また、SDIフレーマ219は、HD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4の同期バイト、画素データ及びVANCデータについて、それぞれのデータを収容するタイミングの出力指示をクロック変換部217に出力し、それぞれの出力指示に対応したデータを入力し、HD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4の同期バイト、画素データ及びVANCデータのフレームに収容する。尚、HD−SDI信号B1〜B4については、パリティビット及びスタッフビットを復元して収容する。また、SDIフレーマ219は、HD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータを収容するタイミングにおいては、出力指示をクロック変換部217に出力しない。このタイミングでは、前述したとおり、HANCデータ領域を確保してHD−SDI信号A1のHANCから有効データを移動するための処理を行う。
【0076】
このように、SDIフレーマ219により、出力指示をクロック変換部217に出力し、出力指示に対応するデータをクロック変換部217から入力し、送信装置1のSDIデフレーマ112において廃棄したデータを復元し、移動したデータを元に戻すことにより、SDI信号の各領域にデータを収容することができる。このようにして、4系統のHD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4を復元することができる。
【0077】
SDI出力部220は、SDIフレーマ219から4系統のHD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4を入力し、周波数特性を補償するための処理及びインピーダンス変換処理を行い、4系統のHD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4を出力する。また、SDI出力部220は、デシリアライザ212からSDIフレーマ219までが10ビットまたは20ビット等の並列信号を用いている場合、入力した並列信号を直列信号に変換する。
【0078】
以上のように、受信装置2のフレーム再変換部21は、広域網3から受信したOC−192フレームの光信号を電気信号に変換し、SONETクロックによるデータ列を、SDIクロックによるHD−SDI信号のデータ列に変換し、送信装置1において廃棄したデータを復元し、移動したデータを元に戻し、非圧縮SHV信号である信号群G1を構成する4系統のDual Link HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4を生成して出力するようにした。フレーム再変換部22〜28も、信号群G2〜G8を対象にして、クロック変換及びデータ復元等を行い、信号群G2〜G8を構成するそれぞれ4系統のDual Link HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4を生成して出力するようにした。
【0079】
これにより、受信装置2は、元の非圧縮SHV信号を生成することができる。つまり、伝送システムにより、非圧縮SHV信号を、広域網3のような公衆光通信網を用いて長距離伝送することができる。また、OC−192回線による広域網3はすでに普及しており、そこで使用されている機器及び部品をそのまま用いることができるから、光ファイバ専用線へ伝送する場合に比べて、低廉化を実現することができる。したがって、既存の広域網3をそのまま利用することができ、効率的な長距離伝送を実現することが可能となる。
【0080】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施形態では、送信装置1が、非圧縮SHV信号をDual Link HD−SDI信号として入力し、OC−192フレームに変換して広域網3へ送信し、受信装置2が、OC−192フレームを受信してDual Link HD−SDI信号に変換し、元の非圧縮SHV信号を得るようにした。本発明は、送受信対象の信号を非圧縮SHV信号に限定するものではなく、デジタルシネマ等の非圧縮映像信号にも適用がある。すなわち、送信装置1及び受信装置2が扱う映像データは、SHV信号だけでなくデジタルシネマのような超高精細な映像データであればよい。
【符号の説明】
【0081】
1 送信装置
2 受信装置
3 広域網
11〜18 フレーム変換部
21〜28 フレーム再変換部
111 SDI入力部
112 SDIデフレーマ
113 クロック変換部
114 SONETフレーマ
115 スクランブラ
116 パリティ発生部
117 シリアライザ
118 E/O変換部
211 O/E変換部
212 デシリアライザ
213 同期検出部
214 デスクランブラ
215 SONETデフレーマ
216 パリティ判定部
217 クロック変換部
218 SDIクロック制御部
219 SDIフレーマ
220 SDI出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非圧縮映像信号のデータを、所定のフレームに収容し広域網へ送信する送信装置であって、
非圧縮映像信号を複数のHD−SDI信号として入力し、前記HD−SDI信号における所定のHANCデータ(水平補助領域データ)を廃棄し、前記HD−SDI信号における画素データを構成するパリティビット及びスタッフビットを廃棄するSDIデフレーマと、
前記SDIデフレーマによりHANCデータ、パリティビット及びスタッフビットが廃棄されたHD−SDI信号のデータを、前記HD−SDI信号のクロックに従って記憶器に格納し、前記フレームのクロックに従って前記記憶器から読み出すクロック変換部と、
前記フレームのクロックに基づいて、フレームのペイロードにデータを収容するタイミングにて出力指示を前記クロック変換部に出力し、当該出力指示を前記フレームのクロックとして前記クロック変換部の記憶器から読み出されたデータを入力し、前記入力したデータをフレームのペイロードに収容するフレーマと、を備えたことを特徴とする映像データ送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像データ送信装置において、
前記SDIデフレーマは、非圧縮映像信号を4系統のDual Link HD−SDI信号A1〜A4,B1〜B4として入力し、HD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータに有効データが含まれる場合、前記有効データをHD−SDI信号A1のHANCデータの領域に移動してHD−SDI信号A2〜A4,B1〜B4のHANCデータを廃棄し、HD−SDI信号B1〜B4における画素データを構成するパリティビット及びスタッフビットを廃棄する、ことを特徴とする映像データ送信装置。
【請求項3】
複数のHD−SDI信号により構成された非圧縮映像信号のデータを、広域網から所定のフレームとして受信する受信装置であって、
映像データ送信装置によって、前記HD−SDI信号における所定のHANCデータが廃棄され、前記HD−SDI信号における画素データを構成する画素情報、パリティビット及びスタッフビットのうちのパリティビット及びスタッフビットが廃棄され、前記HANCデータ、パリティビット及びスタッフビットが廃棄されたHD−SDI信号のデータを、前記廃棄されたHANCデータの位置を示す識別情報と共にペイロードに収容されフレームとして前記広域網へ送信された場合に、
前記受信したフレームのペイロードからデータを抽出するデフレーマと、
前記デフレーマにより抽出されたフレームのデータを、前記フレームのクロックに従って記憶器に格納し、前記HD−SDI信号のクロックに従って前記記憶器から読み出すクロック変換部と、
前記クロック変換部の記憶器に格納されたデータの量に基づいて、前記HD−SDI信号のクロックのタイミングを決定し、前記HD−SDI信号のクロックを生成するクロック制御部と、
前記クロック制御部により生成されたHD−SDI信号のクロックに基づいて、HD−SDI信号の領域にデータを収容するタイミングにて出力指示を前記クロック変換部に出力し、前記出力指示及び前記HD−SDI信号のクロックに従って前記クロック変換部の記憶器から読み出されたデータを入力し、前記映像データ送信装置により廃棄されたHANCデータの識別情報に基づいてHANCデータを復元し、前記画素データを構成する画素情報からパリティビット及びスタッフビットを復元し、元のHD−SDI信号を生成するフレーマと、を備えたことを特徴とする映像データ受信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の映像データ受信装置において、
前記映像データ送信装置により、フレームのクロックとHD−SDI信号のクロックとの間の時間差を含むタイムスタンプ信号がフレームに収容され、
前記クロック制御部は、映像データ送信装置により送信された前記タイムスタンプ信号と前記フレームのクロックとに基づいて、前記HD−SDI信号のクロックのタイミングを決定し、前記HD−SDI信号のクロックを生成する、ことを特徴とする映像データ受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−9812(P2011−9812A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148264(P2009−148264)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代高効率ネットワークデバイス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】