説明

映像信号切替装置

【課題】符号化方式や符号化情報の異なる複数の映像信号を、円滑に、かつバッファの破綻を防止しながら切り替えて結合できる映像信号切替装置を提供する。
【解決手段】映像信号選択部21は、送出スケジュールに基づいて切替器22を制御する。切替器22は、映像信号選択部21により選択されたエンコーダから出力される映像信号が切替制御部23へ入力されるように接点を切り替える。切替制御部23は、送出スケジュールに登録されている各映像信号のイベントIDxと当該映像信号に関する符号化方式および符号化情報とが対応付けられた映像切替信号Qxを生成する。映像切替部24は、各エンコーダから出力される映像信号S1,S2…を映像切替信号Qxに基づいて切り替えて結合し、一つの映像信号Soutとして出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号化方式や符号化情報の異なる複数の映像信号を切り替えて結合する映像信号切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コマーシャル(CM)を含む映像信号のように、複数の映像信号を切り替えて結合する場合、送信元ではCMの映像信号と番組本編の映像信号とが別々のエンコーダから出力され、各エンコーダから出力される映像信号が、映像信号切替装置において所定の送出スケジュールで切り替えられて結合され、一つの映像信号として出力される。特許文献1には、同一の符号化方式で符号化された複数のデジタル映像信号を映像切替器で結合して出力する技術が開示されている。
【特許文献1】ITU-T勧告J.181: Digital program insertion cueing message for cable television systems
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術の映像切替方式では、映像切替器に入力される各映像信号の符号化方式および符号化情報が同一であることが前提となっている。しかしながら、現在のように標準テレビジョン(SDTV)放送と高解像度テレビジョン(HDTV)放送とが混在する状況下では、例えばSDTV仕様のCM映像とHDTV仕様の番組本編とに異なった符号化方式や符号化情報が適用される場合がある。
【0004】
しかしながら、結合しようとする2つの映像信号の符号化方式や符号化情報が異なっていると、結合部分において受信側のバッファがデータの過不足により破綻し、再生映像に乱れが生じるなどの障害が生じ得る。
【0005】
また、切替前の映像がMPEG-2であって、切替直前のフレームがBフレームであると、映像切替によって後ろ側の参照フレームが失われてしまうので、再生映像に乱れが生じてしまう。
【0006】
このような技術課題に対して、現在では映像切り替えを行う際に、切り替えタイミングのフレーム位置や符号化条件などについて、切り替えを行っても問題が発生しないような制約条件を予め課すことで、容易に切り替えができるようにしている。
【0007】
例えば、MPEG-2のピクチャ構造を、15フレーム周期でIBBPBBPBBPBBPBB と固定にしておき、切り替え時刻をIフレームの再生時刻の直前とし、かつIフレームの直前のBフレームは後方予測をしないという制約を課すことで、切り替えを行ってもフレームの参照先やバッファ遷移等に影響が出ないようにしている。
【0008】
なお、このような技術課題は、符号化方式が現在のデジタル放送において主流のMPEG-2から、圧縮符号化性能がより高いH.264へシフトする場合にも同様に起こり得る。
【0009】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、符号化方式や符号化情報が異なる映像信号同士を容易かつ高品位で結合できる映像信号切替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明は、符号化方式や符号化情報が異なる複数の映像信号を、その送出時刻を定めた送出スケジュールで切り替えて結合し、出力する映像信号切替装置において、各映像信号を送出時刻に先立って選択する選択手段と、選択された映像信号に基づいて、その符号化方式および符号化情報を判別する映像信号判別手段と、映像信号ごとに、その送出時刻と前記判別結果とが対応付けられた映像切替信号を、当該映像信号の送出時刻に先立って生成する映像切替信号生成手段と、前記映像切替信号に基づいて各映像信号を切り替えて結合し、出力する映像切替手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記した各構成を備えたことにより、本発明によれば、映像切替手段は、映像信号の切替時刻よりも前に、切替前の映像信号のみならず切替後の映像信号についても、その符号化方式や符号化情報を知ることができる。したがって、映像切替手段が、切替前後の各映像信号の符号化方式や符号化情報に基づいて切替部分の各映像を復号し、かつ受信側デコーダでバッファ破綻が発生しないように再符号化するようにすれば、各映像信号に何等の制約を課することなく、符号化方式や符号化情報の異なる映像信号同士を容易かつ高品位で結合できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係る映像信号切替装置2の適用例を示した図であり、映像信号切替装置2には、符号化方式および符号化情報の少なくとも一方が異なる複数のエンコーダE1,E2…Enから、それぞれ符号化された映像信号S1,S2…Snが選択的に入力される。映像信号切替装置2にはさらに、映像信号S1,S2…Snごとに、その送出時刻を定めた送出スケジュールが入力され、各映像信号S1,S2…Snを当該送出スケジュールに基づいて切り替えて結合し、一つの映像信号Soutとして出力する。この映像信号Soutは、放送局のアンテナ1から放送されて視聴者宅のアンテナ3で受信され、再生される。
【0013】
図2は、前記送出スケジュール[同図(a)]と各映像信号S1,S2…Snの送出タイミング[同図(b)]との関係を示した図であり、送出スケジュールでは、映像信号とその送出時刻(送出開始時刻)との関係がイベントIDxで管理されている。図示した例では、映像信号Soutが時刻t1でS1からS2に切り替わり、時刻t2でS2からS4に切り替わり、時刻t3でS4から再びS1へ切り替わっている。
【0014】
図3は、前記映像信号切替装置2の主要部の構成を示したブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0015】
映像信号選択部21は、別途に入力される送出スケジュールに基づいて切替器22を制御する。前記切替器22は、映像信号選択部21により選択されたエンコーダから出力される映像信号が切替制御部23へ入力されるように接点を切り替える。前記映像信号選択部21は、後に詳述するように、各映像信号が前記送出スケジュールに登録されている当該映像信号の送出時刻よりも早いタイミングで切替制御部23へ入力されるように切替器22を制御する。
【0016】
切替制御部23は、映像信号の符号化方式および符号化情報を判別する映像信号判別部231、および映像信号の判別結果に基づいて映像切替信号Qxを生成する映像切替信号生成部232を含む。前記映像信号判別部231は、入力された映像信号の符号化方式を判別する符号化方式判別部231aと、符号化方式の判別結果に基づいて映像信号から符号化情報を抽出する符号化情報抽出部231bとを含む。
【0017】
前記符号化方式判別部231aは、映像信号のヘッダ情報を参照して符号化方式の判別を行う。前記符号化情報抽出部231bは、符号化方式の判別結果のシンタックスに基づいて、映像信号のエレメンタリストリーム(ES)から符号化に関するパラメータを抽出する。
【0018】
前記映像切替信号生成部232は、送出スケジュールに登録されている各映像信号のイベントIDxと当該映像信号に関する符号化方式および符号化情報とが対応付けられた映像切替信号Qxを生成する。映像切替部24は、前記映像切替信号生成部232から出力される映像切替信号Qxに基づいて、前記各エンコーダから出力される映像信号S1,S2…を切り替えて結合し、一つの映像信号Soutとして出力する。
【0019】
次いで、図4、5のフローチャートを参照して本実施形態の動作を説明する。図4は、前記映像信号選択部21の動作を示したフローチャートであり、ステップS1において、送出スケジュールの入力が検知されると、ステップS2では、送出スケジュールに基づいて判別対象の映像信号が一つ選択される。ここでは、送出時刻の早い映像信号から順に判別対象として選択される。
【0020】
ステップS3では、判別対象の映像信号を出力するエンコーダを選択するための切替信号が切替器22へ出力される。この結果、判別対象の映像信号が切替器22を経由して切替制御部23へ入力される。
【0021】
その後、今回の判別対象の映像信号に関して、切替制御部23において判別が完了するか、あるいは所定の時間経過が検知されるとステップS4へ進み、今回の送出スケジュールに登録されている映像信号の中に未判別の映像信号があるか否かが判定される。未判別の映像信号があればステップS2へ戻り、上記した各手順が未判別の映像信号に関して繰り返される。
【0022】
上記した各処理は、判別対象の映像信号が、その送出時刻よりも所定時間以上早いタイミングで切替制御部23へ提供されるように実行される。
【0023】
次いで、図5のフローチャートを参照して前記切替制御部23の動作を説明する。ステップS11において送出スケジュールの入力が検知されると、ステップS12では、判別対象の映像信号が映像信号判別部231に入力されたか否かが判定される。映像信号が入力されると、ステップS13では、符号化方式判別部231aにおいて映像信号の符号化方式が判別される。具体的には、MPEG-2 TSストリーム中のProgram Map Table(PMT)が抽出され、PMTに含まれるstream_type識別子によって判別が行われる。ステップS14では、符号化情報抽出部231bにおいて符号化情報が抽出される。具体的には、ビットレートおよび受信側バッファサイズが抽出される。
【0024】
ステップS15では、前記映像切替信号生成部232において、送出スケジュールに登録されているイベントIDごとに映像切替信号Qxが生成される。本実施形態では、前記送出スケジュールにおいてイベントIDで管理されている各映像信号とその送出時刻との対応関係に、当該映像信号に関して前記ステップS13,S14で得られたPMT、ビットレートおよびバッファサイズがさらに対応づけられて映像切替信号Qxとされる。ステップS16では、前記映像切替信号Qxが映像切替信号生成部232から映像切替部24へ出力される。
【0025】
ステップS17では、今回の送出スケジュールに登録されている全てのイベントIDに関して映像切替信号Qxの生成および出力が完了したか否かが判定される。未完了であればステップS12へ戻り、残りのイベントIDに関して上記した各処理が繰り返される。
【0026】
上記した各処理も、各映像切替信号Qxが各映像信号Sxの切替時刻よりも所定時間以上早いタイミングで生成されるように実行される。
【0027】
図6は、判別対象となる映像信号Sxが各エンコーダから映像信号判別部231へ入力されるタイミングと、映像切替信号Qxが映像切替信号生成部232から映像切替部24へ入力されるタイミングと、映像信号Soutにおける各映像の切替タイミングとの相対的な関係を示した図であり、各映像信号Sxの判別および各映像切替信号Qxの生成が、当該映像信号Sxの切替時刻よりも前に完了している。
【0028】
図3へ戻り、前記映像切替部24は、各映像信号Sxの切替時刻に先だって映像切替信号Qxを受信し、当該映像切替信号Qxに登録されている、切替後の映像信号に関するPMT、ビットレートおよびバッファサイズと、切替前の映像信号に関するPMT、ビットレートおよびバッファサイズとに基づいて、復号された結合部分の映像信号を再符号化する際の符号化方式や符号化情報を決定する。そして、切替時刻近傍で各映像信号を復号し、前記予め決定した符号化方式および符号化情報で、当該復号された結合部分の各映像信号を再符号化する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る映像信号切替装置の適用例を示した図である。
【図2】送出スケジュールと各映像の送出タイミングSxとの関係を示した図である。
【図3】映像信号切替装置の主要部の構成を示したブロック図である。
【図4】映像信号選択部の動作を示したフローチャートである。
【図5】切替制御部の動作を示したフローチャートである。
【図6】映像信号Sxの判別タイミング、映像切替信号Qxの出力タイミング、および映像信号Soutにおける各映像の切替タイミングの関係を示した図である。
【符号の説明】
【0030】
2…映像信号切替装置,21…映像信号選択部,22…切替器,23…切替制御部,24…映像切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化方式および符号化情報の少なくとも一方が異なる複数の映像信号を、その送出時刻を定めた送出スケジュールで切り替えて結合し、出力する映像信号切替装置において、
前記送出スケジュールに基づいて、各映像信号をそれぞれの送出時刻に先立って選択する選択手段と、
前記選択された映像信号に基づいて、その符号化方式および符号化情報を判別する映像信号判別手段と、
映像信号ごとに、その送出時刻と前記判別結果とが対応付けられた映像切替信号を、当該映像信号の送出時刻に先立って生成する映像切替信号生成手段と、
前記映像切替信号に基づいて各映像信号を切り替えて結合し、出力する映像切替手段とを含むことを特徴とする映像信号切替装置。
【請求項2】
前記映像信号判別手段が
映像信号の符号化方式を判別する符号化方式判別手段と、
前記符号化方式の判別結果に基づいて、当該映像信号から符号化情報を抽出する符号化情報抽出手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の映像信号切替装置。
【請求項3】
前記符号化方式判別手段が、映像信号のヘッダ情報に含まれる符号化方式の識別子に基づいて符号化方式を判別することを特徴とする請求項2に記載の映像信号切替装置。
【請求項4】
前記符号化情報抽出手段が、符号化情報として映像信号のビットレートを抽出することを特徴とする請求項2に記載の映像信号切替装置。
【請求項5】
前記符号化情報抽出手段が、符号化情報として映像信号に対する受信側のバッファサイズに関する情報を抽出することを特徴とする請求項2に記載の映像信号切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−301335(P2008−301335A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146822(P2007−146822)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、19年度、独立行政法人情報通信研究機構「ユビキタス時代のケーブルテレビの高度化に関する研究開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599108264)株式会社KDDI研究所 (233)
【Fターム(参考)】