説明

映像表示装置およびヘッドマウントディスプレイ

【課題】入射光を一方向に拡散する手段を用いる構成であっても、明るく、かつ、高画質の映像を観察者に観察させる。
【解決手段】光源2からの光を拡散手段3にて拡散して表示素子4に導き、表示素子4からの映像光をレンズ5を介して光学瞳Eに導く構成において、拡散手段3が第1の拡散手段3aのほかに第2の拡散手段3bを有する。第1の拡散手段3aは一方向拡散板で構成され、第2の拡散手段3bは一方向拡散板または通常の拡散板で構成される。光源2からの光が第2の拡散手段3bにて拡散されることにより、所定の方向からの入射光では第1の拡散手段3aから射出されない光が補完されるので、第1の拡散手段3aに起因する影の発生が抑えられ、観察映像にムラが生じるのが軽減される。また、第1の拡散手段3aを表示素子4に近づけて配置することが可能となり、光の利用効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子にて表示された映像を虚像として観察者に提供する映像表示装置と、その映像表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する)とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LCDなどの表示素子にて表示された映像を虚像として観察者に観察させる映像表示装置として、例えば特許文献1および2に開示されたものがある。特許文献1および2の映像表示装置はいずれも、LEDから出射される光を拡散板にて拡散させてLCDに入射させ、LCDからの映像光をプリズムやレンズなどの光学素子を介して光学瞳に導く構成となっている。光学瞳の位置に観察者の瞳を合わせると、観察者はLCDに表示された映像の虚像を観察することが可能となる。
【0003】
ところで、観察者に映像(虚像)を観察させやすくするためには、光学瞳を広げながら、映像を明るくすることが必要である。このとき、拡散板にて入射光を全方位に拡散させると、光学瞳を全方位に広げることはできても、映像が暗くなる。そのため、拡散板としては、入射光を全方位に拡散するものではなく、一方向に拡散させるもの(一方向拡散板)を用いることが非常に有効である。つまり、一方向拡散板を用いることにより、入射光を一方向に拡散させて光学瞳を一方向に大きく形成し、観察者に映像を観察させやすくすることができるとともに、上記拡散方向とは垂直方向に光源からの光を集光して明るい映像を観察者に観察させることができる。また、透明材料の凹凸による拡散においては、適切な拡散度に制御でき、光の吸収が少ないので、光の利用効率を高くできることが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−326821号公報
【特許文献2】特開2000−249976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図16(a)は、一方向拡散板101の一構成例を示す断面図である。この一方向拡散板101の光射出面101aは、凹凸形状で構成されている。このような構成では、一方向拡散板101に光入射面101bから光が入射したときに、光射出面101aにおいて、全反射によって光が射出されない部分が存在する。このため、一方向拡散板101から射出される光の中に、上記光が射出されない部分に対応する影Pが現れる。
【0006】
したがって、一方向拡散板101を上述した従来の映像表示装置に適用すると、図16(b)に示すように、一方向拡散板101の影Pが観察映像(虚像)Qに重畳され、輝度ムラや色ムラとなって観察映像Qの品位が低下する。なお、この問題を回避するために、例えば一方向拡散板101を表示素子から遠い位置に配置するだけでは、光利用効率が低下し、観察映像Qが暗くなる。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、入射光を一方向に拡散する手段を用いる構成であっても、明るく、かつ、高画質の映像を観察者に観察させることができる映像表示装置と、その映像表示装置を用いたヘッドマウントディスプレイとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の映像表示装置は、光を出射する光源と、光源から出射された光を拡散する拡散手段と、拡散手段にて拡散された光を変調して映像を表示する表示素子と、表示素子からの映像光を光学瞳に導くことにより、表示映像の虚像を観察者に観察させる観察光学系とを備えた映像表示装置であって、上記拡散手段は、表面の凹凸によって入射光を一方向に拡散する第1の拡散手段と、入射光を拡散する第2の拡散手段とを有しており、光学瞳は、第1の拡散手段での入射光の拡散方向よりも上記拡散方向と垂直方向に小さいことを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、光源から出射された光は、拡散手段にて拡散された後、表示素子にて変調され、そこから映像光として出射される。この映像光は、観察光学系を介して光学瞳に導かれる。これにより、観察者は、光学瞳の位置にて、表示素子にて表示された映像の虚像を観察することが可能となる。
【0010】
ここで、上記の拡散手段は、第1の拡散手段と第2の拡散手段とを有している。第1の拡散手段は、入射光を一方向に拡散するものであるが、第2の拡散手段は、入射光を一方向に拡散するものであってもよいし、全方位に拡散するものであってもよい。入射光が第1の拡散手段にて一方向に拡散されることにより、光学瞳は一方向、すなわち、第1の拡散手段での拡散方向に相対的に大きく形成される一方、他の方向、すなわち、上記拡散方向とは垂直方向に相対的に小さく形成される。
【0011】
このように光学瞳が一方向に大きく形成されることにより、観察者は光学瞳の位置にて映像を観察しやすくなる。一方、光学瞳が他の方向に小さく形成されることにより、光源から出射される光の利用効率を高くすることができ、小型、軽量の装置でも明るい映像(虚像)を観察者に観察させることができる。
【0012】
また、拡散手段に入射する光は、第1の拡散手段にて拡散されるのみならず、第2の拡散手段でも拡散されるので、所定の方向からの入射光では第1の拡散手段から射出されない光が第2の拡散手段によって補完される。これにより、第1の拡散手段に起因する影の発生が抑えられ、観察映像にムラ(輝度ムラ、色ムラ)が生じるのが軽減される。第1の拡散手段を表示素子に近づければ近づけるほど観察映像にムラが生じやすく、また、第1の拡散手段の拡散度を小さくすればするほど表面の凹凸のピッチが大きくなるので、第1の拡散手段に起因する影が大きくなり、観察映像にムラが生じやすい。しかし、上記構成によれば、第2の拡散手段によって観察映像のムラが軽減されるので、第1の拡散手段を表示素子に近づけて配置したり、第1の拡散手段の拡散度を小さくすることが可能となる。これにより、光源からの光の利用効率をさらに上げて明るく、かつ、高画質の映像を観察者に観察させることができる。
【0013】
本発明の映像表示装置において、上記第2の拡散手段は、表面の凹凸によって入射光を一方向に拡散するものであり、上記第2の拡散手段での入射光の拡散方向は、上記第1の拡散手段での入射光の拡散方向と略一致していてもよい。
【0014】
第1および第2の拡散手段の2つの拡散手段で入射光を略同一方向に拡散することにより、第2の拡散手段として例えば拡散方向が全方位のものを用いる場合に比べて、光学瞳を他の方向に確実に小さく形成することができ、光利用効率をより高くして明るい映像を観察者に観察させることができる。
【0015】
本発明の映像表示装置において、上記第2の拡散手段は、光源と第1の拡散手段との間の光路中に配置されており、上記第1の拡散手段の拡散方向において、上記第2の拡散手段の拡散度は上記第1の拡散手段の拡散度よりも小さくてもよい。
【0016】
この構成の場合、第1および第2の拡散手段のうち、第1の拡散手段の拡散方向において拡散度のより大きい拡散手段(第1の拡散手段)が、他の拡散手段(第2の拡散手段)よりも表示素子に相対的に近い位置となるので、光利用効率を高くして明るい映像を観察者に観察させることができる。
【0017】
本発明の映像表示装置において、上記光源は、赤、緑、青の3色の光をそれぞれ発光する発光ダイオード(以下、LEDとも称する)を有しており、各発光ダイオードは、第1の拡散手段の拡散方向に並んで配置されていてもよい。
【0018】
各色の発光ダイオードを第1の拡散手段の拡散方向に並べて配置することにより、各色が上記拡散方向に混ざるので、色ムラの少ないカラー映像を観察者に観察させることができる。
【0019】
本発明の映像表示装置において、上記光源は、赤、緑、青の3色の光をそれぞれ発光する発光ダイオードを2組有しており、表示素子の表示領域の中心と光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とすると、各組の発光ダイオードは、各色ごとに観察光学系の光軸に対して対称に配置されていてもよい。
【0020】
このようにすると、各LEDからの出射光の各色ごとの光強度(各組間で足し合わせたもの)の重心が一致する(例えば上記光軸上に位置する)。これにより、光学瞳の中心またはその近傍で色ムラの無い映像を、収差の少ない高画質な映像として観察者に観察させることができる。
【0021】
本発明の映像表示装置において、上記第1の拡散手段の観察光学系による虚像と表示素子の表示映像の虚像との視度の差は、10ディオプタ以下であることが望ましい。10ディオプタは、人間の目のピントの最大調整範囲を示すが、第1の拡散手段の観察光学系による虚像と表示素子の表示映像の虚像との視度の差が10ディオプタ以下のときは、第1の拡散手段が表示素子に近い位置に配置され、表示映像の虚像のみならず第1の拡散手段の観察光学系による虚像(影を含む)が人間の目で観察可能な範囲に位置することになる。
【0022】
しかし、本発明によれば、第1の拡散手段に起因する影の発生を第2の拡散手段によって軽減することができるので、両虚像の視度の差が10ディオプタ以下となるように第1の拡散手段を(表示素子に近い位置に)配置しても、表示映像の虚像にムラが発生するのを抑えることができ、第2の拡散手段を設ける本発明の構成が非常に有効となる。
【0023】
本発明の映像表示装置は、第1の拡散手段の拡散方向に垂直な方向に光源からの光を集光して表示素子に導く集光手段をさらに備え、光源と光学瞳とは、第1の拡散手段の拡散方向に垂直な方向について共役となる位置に配置されている構成であってもよい。
【0024】
この構成では、集光手段により、光源からの光は第1の拡散手段の拡散方向に垂直な方向に集光されて表示素子に導かれる。このとき、第1の拡散手段の拡散方向に垂直な方向において、光源と光学瞳とは共役となる位置に配置されているので、上記拡散方向に垂直な方向に光学瞳をより小さくすることができ、上記方向において光源からの光利用効率をより高めて明るい映像を観察者に観察させることができる。
【0025】
本発明の映像表示装置において、上記集光手段は、第1の拡散手段の拡散方向に平行な方向には、光学的パワーが無いか負であることが望ましい。集光手段により、光源からの光は第1の拡散手段の拡散方向に平行な方向には集光されないので、上記方向には光源の輝度ムラ(強度ムラ)が増幅されることがなく、高画質の映像を観察者に観察させることができる。
【0026】
本発明の映像表示装置において、上記表示素子は、反射型の液晶表示素子(以下、LCDとも称する)であってもよい。反射型のLCDは、開口率が高く、各画素のエッジでの拡散が小さい。したがって、表示素子として反射型LCDを用いることにより、例えば透過型のLCDを用いる場合に比べて明るく、かつ、高画質の映像を観察者に観察させることができる。
【0027】
本発明の映像表示装置において、上記集光手段は、第1の拡散手段の拡散方向に垂直な方向に正の光学的パワーを持つミラーで構成され、かつ、上記反射型の液晶表示素子から観察光学系に向かう光の光路に対して光源とは反対側に配置されて光源からの光を反射させて反射型の液晶表示素子に導き、上記第1および第2の拡散手段は、上記反射型の液晶表示素子から観察光学系に向かう光の光路と上記集光手段との間に配置されていてもよい。
【0028】
この構成では、光源からの光は、集光手段(ミラー)で反射されて集光し、反射型のLCDに入射する。反射型のLCDに入射した光はそこで変調されて映像光として観察光学系に入射する。このとき、集光手段は、反射型のLCDから観察光学系に向かう光の光路に対して光源とは反対側に配置されており、第1および第2の拡散手段は上記光路と集光手段との間に配置されているので、光源から出射されて集光手段にて反射された光は、第1および第2の拡散手段にて所定の方向に拡散された後、反射型のLCDに入射することになる。
【0029】
このように、光源から反射型のLCDに向かう光の光路を集光手段で折り曲げる構成において、反射型のLCDから観察光学系に向かう光の光路と集光手段との間に第1および第2の拡散手段を配置したとき、第1および第2の拡散手段は、反射型のLCDに対して傾斜して配置されることになり、その一端が反射型のLCDに非常に近づくことになる。第1の拡散手段を表示素子に近づければ近づけるほど観察映像にムラが生じやすくなるが、第2の拡散手段を設ける本発明によれば、観察映像のムラを軽減することができるので、本発明は、光源から反射型のLCDに向かう光の光路を集光手段で折り曲げたコンパクトな構成においても非常に有効なものとなる。
【0030】
本発明の映像表示装置において、上記観察光学系は、体積位相型の反射型ホログラム光学素子を含み、上記ホログラム光学素子は、表示素子からの映像光を回折反射させて光学瞳に導く構成であってもよい。
【0031】
体積位相型で反射型のホログラム光学素子は、回折効率が高く、しかも、回折効率ピークの半値波長幅が狭い。したがって、このようなホログラム光学素子を用い、表示素子からの映像光をホログラム光学素子にて回折反射させて光学瞳に導く構成とすることにより、明るく、色純度の高い映像を観察者に提供することができる。また、外光の透過率も高くなるので、明るい外界像を観察者に提供することができる。つまり、明るく、かつ、視認性の高い映像を明るい外界像に重ねて観察者に提供することができる。
【0032】
本発明の映像表示装置において、上記ホログラム光学素子は、軸非対称な正の光学的パワーを有していてもよい。軸非対称でかつ正の光学的パワーをホログラム光学素子に持たせることにより、装置を構成する各光学部材の配置の自由度を高めることができ、装置を小型化することが容易となる。
【0033】
本発明の映像表示装置において、表示素子の表示領域の中心と光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とすると、上記第1の拡散手段の拡散方向は、上記ホログラム光学素子の光軸入射面に垂直な方向と略平行であってもよい。なお、ホログラム光学素子の光軸入射面とは、ホログラム光学素子における入射光の光軸と反射光の光軸とを含む平面を指す。
【0034】
ホログラム光学素子が軸非対称である場合、ホログラム光学素子の光軸入射面に平行な方向では、ホログラム光学素子の波長特性(波長選択性)が大きく、入射光の入射角がずれると回折波長がずれやすい。したがって、第1の拡散手段の拡散方向を光軸入射面に垂直な方向と略平行な方向とし、ホログラム光学素子の波長選択性が小さい方向に光を拡散させることにより、色ムラの発生を抑えたまま、上記方向に光学瞳を大きくして観察しやすい映像を観察者に提供することができる。また、光学瞳は、光軸入射面に垂直な方向よりも光軸入射面に平行な方向で相対的に小さくなるので、上記平行な方向では光源からの光を無駄なく集光することができ、明るい映像を観察者に提供することができる。
【0035】
本発明の映像表示装置において、上記光源は、発光ダイオードで構成されており、上記ホログラム光学素子の回折効率がピークとなる波長と、上記光源から出射される光の強度がピークとなる波長とが略等しい構成であってもよい。この場合、光源(LED)から出射される光のうちで光強度がピークとなる波長付近の光が、ホログラム光学素子にて効率よく回折されるので、外界像に重畳しても明るく、見やすい映像を観察者に提供することができる。
【0036】
本発明の映像表示装置において、上記観察光学系は、表示素子からの映像光を内部で全反射させて観察者の瞳に導く一方、外光を透過させて観察者の瞳に導く第1の透明基板を有していてもよい。第1の透明基板は、表示素子からの映像光をその内部で全反射により進行させるので、外光の透過率は高くなる。したがって、表示素子の映像を観察者に観察させながら、明るい外界像を観察者に観察させることができる。
【0037】
本発明の映像表示装置において、上記観察光学系は、第1の透明基板での外光の屈折をキャンセルするための第2の透明基板を有していてもよい。この場合、観察者が観察光学系を介して観察する外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0038】
本発明のヘッドマウントディスプレイは、上述した本発明の映像表示装置と、上記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持手段とを有していることを特徴としている。この構成では、映像表示装置が支持手段にて支持されるので、観察者は映像表示装置から提供される映像をハンズフリーで観察することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、第1の拡散手段により、光学瞳は相対的に一方向に大きく形成されるので、観察者は光学瞳の位置にて映像を観察しやすくなり、また他の方向には光学瞳が相対的に小さく形成されるので、光源から出射される光の利用効率を高くして、小型、軽量の装置でも明るい映像(虚像)を観察者に観察させることができる。また、第1の拡散手段に起因して発生する像のムラが第2の拡散手段によって軽減されるので、第1の拡散手段を表示素子に近づけて配置したり、第1の拡散手段の拡散度を小さくすることが可能となり、光源からの光の利用効率をさらに上げて明るく、かつ、高画質の映像を観察者に観察させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0041】
図1(a)(b)は、本発明の映像表示装置1の概念的な構成を、光路を展開して模式的に示す説明図であり、図1(a)は水平方向の光路を展開して、図1(b)は垂直方向の光路を展開してそれぞれ示している。この映像表示装置1は、光源2と、拡散手段3と、表示素子4と、レンズ5とを有して構成されている。
【0042】
光源2は、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の光を出射する3色一体型のLEDで構成されている。RGBの各LEDは、観察者の目から見て水平方向に並んでいる。
【0043】
拡散手段3は、光源2から出射された光を拡散するものであり、複数の拡散手段すなわち第1の拡散手段3aと第2の拡散手段3bとで構成されている。第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bは、方向によって拡散度が異なる一方向拡散板でそれぞれ構成されている。より具体的には、第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bは、入射光を、観察者の目から見て水平方向には40度拡散し、垂直方向には0.5度拡散する。第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bの光射出側の面は、このような拡散を実現できるように凹凸が形成された、光吸収の少ない凹凸面となっている。つまり、第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bは、垂直方向には入射光をほとんど拡散しないので垂直方向には起伏がなく(図1(b)参照)、水平方向に(一方向に)起伏がランダムに形成された凹凸を有している。
【0044】
また、第1の拡散手段3aは、第1の拡散手段3aのレンズ5による虚像と、表示素子4の表示映像の虚像との視度の差が3ディオプタとなるように、表示素子4の近傍に配置されている。また、第2の拡散手段3bは、第2の拡散手段3bのレンズ5による虚像と、表示素子4の表示映像の虚像との視度の差が5ディオプタとなるように、光源2と第1の拡散手段3aとの間の光路中に配置されている。
【0045】
ここで、上記のディオプタについて簡単に説明しておく。ディオプタとは、レンズの焦点距離をメートルで表した値の逆数(1/m)で表され、視度、すなわちレンズの度数(屈折力)を示す単位として一般的に用いられているものである。したがって、本実施形態では、観察者の眼から例えば1m前方に表示素子4の表示映像の虚像が位置しているとすると(映像の虚像が−1d(ディオプタ)の位置にあれば)、第1の拡散手段3aのレンズ5による虚像の位置は、−4d(眼から25cm前方の位置)から+2d(眼から前方に距離が無限大の位置(0dで眼から前方に距離が無限大の位置となる))の間に位置していることになる。
【0046】
表示素子4は、拡散手段3にて拡散された光を変調して映像を表示する光変調素子であり、本実施形態では、RGBのカラーフィルタを備えた透過型のカラーLCDで構成されている。
【0047】
レンズ5は、例えば正の光学的パワーを有しており、表示素子4からの映像光を光学瞳Eに導くことにより、表示映像の虚像を観察者に観察させる観察光学系を構成している。つまり、レンズ5は、表示素子4の表示映像を虚像として観察者が観察できるように光学瞳Eを形成する。
【0048】
上記の構成において、点光源に近い光源2から出射された光は、拡散手段3にて拡散された後、表示素子4にて変調され、そこから映像光として出射される。この映像光は、レンズ5を介して光学瞳Eに導かれる。これにより、観察者は、光学瞳Eの位置にて、表示素子4に表示された映像の虚像を観察することが可能となる。
【0049】
このとき、光源2から出射された光は、拡散手段3の第2の拡散手段3bで水平方向に拡散され、その後、第1の拡散手段3aに入射する。このような第2の拡散手段3bでの拡散により、所定の方向からの入射光では第1の拡散手段3aから射出されない光を補完することができ、そのような光を第1の拡散手段3aから射出させることができる。したがって、第1の拡散手段3aからは均質な光が射出されて表示素子4に入射するので、観察される映像(虚像)上で第1の拡散手段3aの影が観察されなくなる。つまり、観察者は、輝度ムラや色ムラの無い高画質な映像を虚像として観察することができる。
【0050】
また、第1の拡散手段3aの光射出面は凹凸面であるので、第1の拡散手段3aを表示素子4に近づければ近づけるほど観察映像にムラが生じやすくなるが、本実施形態では、上述のように第2の拡散手段3bによって観察映像のムラを軽減できるので、第1の拡散手段3aを表示素子4に近づけて配置することが可能となる。これにより、光源2からの光の利用効率をさらに上げて明るく、かつ、高画質の映像を観察者に観察させることができる。
【0051】
また、入射光が第1の拡散手段3aにて一方向に拡散されることにより、光学瞳Eは一方向(拡散方向である水平方向)に相対的に大きく形成される一方、他の方向(拡散方向とは垂直な方向)に相対的に小さく形成される。このように、光学瞳Eが一方向に大きく形成されることにより、観察者は光学瞳Eの位置にて映像を観察しやすくなる。一方、光学瞳Eが他の方向に小さく形成されることにより、光源2から出射される光の利用効率を高くすることができ、小型、軽量の装置でも明るい映像を観察者に観察させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bを両方とも、入射光を一方向に拡散させる一方向拡散板で構成し、その拡散方向を揃えている。つまり、第2の拡散手段3bでの入射光の拡散方向は、第1の拡散手段3aでの入射光の拡散方向と一致している。なお、上記両者の拡散方向は水平方向から多少ずれていてもよい。この場合、例えば、第2の拡散手段3bとして入射光の拡散方向が全方位のものを用いる場合に比べて、光学瞳Eを他の方向(垂直方向)に確実に小さく形成することができ、光利用効率をより高くして明るい映像を観察者に観察させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、第1の拡散手段3aのレンズ5による虚像と、表示素子4の表示映像の虚像との視度の差は3ディオプタであり、人間の目のピントの最大調整範囲である10ディオプタ以下となっている。このように両虚像の視度の差が10ディオプタ以下であれば、第1の拡散手段3aが表示素子4に近い位置に配置され、表示映像の虚像のみならず第1の拡散手段3aのレンズ5による虚像が人間の目で観察可能な範囲に位置していることになる。しかし、本実施形態では、第1の拡散手段3aに起因する影の発生を第2の拡散手段3bによって軽減することができるので、上記のように両虚像の視度の差が10ディオプタ以下となるように第1の拡散手段3aを表示素子4に近い位置に配置しても、表示映像の虚像にムラが発生するのを抑えることができ、第2の拡散手段3bを設ける本発明の構成が非常に有効となる。
【0054】
なお、本実施形態では、第2の拡散手段3bも光射出側の面が凹凸面となっており、しかも、第2の拡散手段3bのレンズ5による虚像と、表示素子4の表示映像の虚像との視度の差が5ディオプタであり、10ディオプタ以下となっているため、第2の拡散手段3bに起因する影が表示映像の虚像に重畳されるとも考えられる。しかし、本実施形態では、第1の拡散手段3aでの入射光の拡散により、第2の拡散手段3bから射出されない方向の光を第1の拡散手段3aで補完して表示素子4に入射させることができる。したがって、第2の拡散手段3bに起因する影の発生は、第1の拡散手段3aによって軽減される。それゆえ、一方向拡散板からなる第2の拡散手段3bを設けることに起因して表示映像の虚像の画質が低下することはない。
【0055】
ところで、本実施形態では、第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bの水平方向の拡散度をともに40度で揃えているが、これら両者の拡散度をともに40度未満で揃えるようにしてもよく、例えば30度で揃えてもよい。また、第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bの水平方向の拡散度を互いに異ならせるようにしてもよい。例えば、第1の拡散手段3aの水平方向の拡散度を40度とし、第2の拡散手段3bの水平方向の拡散度を30度としてもよい。このように、第1の拡散手段3aの拡散方向(水平方向)において、第2の拡散手段3bの拡散度を第1の拡散手段3aの拡散度よりも小さく設定し、拡散度のより大きな拡散手段(第1の拡散手段3a)を表示素子4に近い配置とすることにより、光利用効率を高くして明るい映像を観察者に観察させることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bとして、他の方向(垂直方向)に入射光を0.5度拡散させる拡散板(垂直方向には入射光をほとんど拡散させない一方向拡散板)を用いているが、例えば垂直方向に3度程度拡散する拡散板を用いても、明るく、かつ、高画質な映像を観察者に観察させることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、拡散手段3を第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bの2つの拡散手段で構成した例について説明したが、3つ以上の拡散手段で構成してもよい。また、第2の拡散手段3bの拡散方向は、全方向であってもよい。つまり、第2の拡散手段3bとして、上述した一方向拡散板の代わりに、入射光を全方位に拡散する通常の拡散板を用いても、第1の拡散手段3aを表示素子4に近づけて配置して、明るく、かつ、高画質の映像を観察者に観察させることができる。
【0058】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0059】
図2(a)(b)は、本実施形態の映像表示装置1の構成を、光路を展開して模式的に示す説明図であり、図2(a)は水平方向の光路を展開して、図2(b)は垂直方向の光路を展開してそれぞれ示している。本実施形態の映像表示装置1は、拡散手段3の拡散度および配置位置を若干変更するとともに集光レンズ6を追加した以外は、実施の形態1と同様の構成となっている。
【0060】
本実施形態においても、拡散手段3は、第1の拡散手段3aと第2の拡散手段3bとで構成されており、これらはともに、方向によって拡散度が異なる一方向拡散板でそれぞれ構成されている。ただし、本実施形態では、第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bは、入射光を、観察者の目から見て水平方向には20度拡散し、垂直方向には0.5度拡散する。第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bの光射出側の面は、このような拡散を実現できるように凹凸が形成された、光吸収の少ない凹凸面となっている。つまり、第1の拡散手段3aおよび第2の拡散手段3bは、垂直方向には入射光をほとんど拡散しないので垂直方向には起伏がなく(図2(b)参照)、水平方向に(一方向に)起伏がランダムに形成された凹凸を有している。
【0061】
また、第1の拡散手段3aは、第1の拡散手段3aのレンズ5による虚像と、表示素子4の表示映像の虚像との視度の差が20ディオプタとなる位置に配置されており、第2の拡散手段3bは、光源2と第1の拡散手段3aとの間の光路中に配置されている。
【0062】
集光レンズ6は、拡散手段3を介して入射する光源2からの光を集光し、表示素子4を照明する照明レンズであり、第1の拡散手段3aと表示素子4との間の光路中に配置されている。
【0063】
上記の構成において、光源2から出射された光は、拡散手段3にて拡散され、集光レンズ6にて集光された後、表示素子4にて変調され、そこから映像光として出射される。この映像光は、レンズ5を介して光学瞳Eに導かれる。これにより、観察者は、光学瞳Eの位置にて、表示素子4に表示された映像の虚像を観察することが可能となる。
【0064】
また、集光レンズ6を設けることにより、拡散手段3の拡散度を小さくし、かつ、第1の拡散手段3aのレンズ5による虚像と表示素子4の表示映像の虚像との視度の差を上記のように20ディオプタと実施の形態1の3ディオプタよりも広げても、集光レンズ6によって効率よく表示素子4を照明して明るい映像を観察者に観察させることができる。
【0065】
このように上記両虚像の視度の差を広げることにより、第1の拡散手段3aに起因して発生する影は、本来なら観察者に認識されにくくなる。しかし、本実施形態では、第1の拡散手段3aの水平方向の拡散度が20度と小さく、凹凸のピッチが大きいので、第1の拡散手段3aに起因して発生する影は大きくなり、これが表示映像の画質を低下させる要因となる。
【0066】
しかし、本実施形態においても、実施の形態1と同様に、光源2からの光は、第2の拡散手段3bで水平方向に拡散されて第1の拡散手段3aに入射するため、所定の方向からの入射光では射出されない光を補完して第1の拡散手段3aから均質な光を表示素子4に向けて射出することができる。したがって、観察される映像(虚像)上で第1の拡散手段3aの影が観察されなくなり、観察者は、輝度ムラや色ムラの無い高画質な映像を虚像として観察することができる。つまり、第2の拡散手段3bを設ける構成は、本実施形態のように、第1の拡散手段3aの拡散度を小さくし、第1の拡散手段3aに起因する影が出やすくなる場合にも有効となる。
【0067】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0068】
(1.HMDの構成)
図3(a)は、本実施形態に係るHMDの概略の構成を示す平面図であり、図3(b)は、HMDの側面図であり、図3(c)は、HMDの正面図である。HMDは、映像表示装置11と、それを支持する支持手段12とを有しており、全体として、一般の眼鏡から一方(例えば左目用)のレンズを取り除いたような外観となっている。
【0069】
映像表示装置11は、観察者に外界像をシースルーで観察させるとともに、映像を表示して観察者にそれを虚像として提供するものであり、実施の形態1または2の映像表示装置1に対応するものである。図3(c)で示す映像表示装置11において、眼鏡の右目用レンズに相当する部分は、後述する接眼プリズム32と偏向プリズム33との貼り合わせによって構成されている。なお、映像表示装置11の詳細な構成については後述する。
【0070】
支持手段12は、映像表示装置11を観察者の眼前(例えば右目の前)で支持するものであり、ブリッジ13と、フレーム14と、テンプル15と、鼻当て16と、ケーブル17と、外光透過率制御手段18とを有している。なお、フレーム14、テンプル15および鼻当て16は、左右一対設けられているが、これらを左右で区別する場合は、右フレーム14R、左フレーム14L、右テンプル15R、左テンプル15L、右鼻当て16R、左鼻当て16Lのように表現するものとする。
【0071】
映像表示装置11の一端は、ブリッジ13に支持されている。このブリッジ13は、映像表示装置11のほかにも、左フレーム14L、鼻当て16および外光透過率制御手段18を支持している。左フレーム14Lは、左テンプル15Lを回動可能に支持している。一方、映像表示装置11の他端は、右フレーム14Rに支持されている。右フレーム14Rにおいて映像表示装置11の支持側とは反対側端部は、右テンプル15Rを回動可能に支持している。ケーブル17は、外部信号(例えば映像信号、制御信号)や電力を映像表示装置11に供給するための配線であり、右フレーム14Rおよび右テンプル15Rに沿って設けられている。外光透過率制御手段18は、外光(外界像の光)の透過率を制御するためにブリッジ13に設けられており、映像表示装置11よりも前方(観察者とは反対側)に位置している。
【0072】
観察者がHMDを使用するときは、右テンプル15Rおよび左テンプル15Lを観察者の右側頭部および左側頭部に接触させるとともに、鼻当て16を観察者の鼻に当て、一般の眼鏡をかけるようにHMDを観察者の頭部に装着する。この状態で映像表示装置11にて映像を表示すると、観察者は、映像表示装置11の映像を虚像として観察することができるとともに、この映像表示装置11を介して外界像をシースルーで観察することができる。
【0073】
このとき、外光透過率制御手段18において、外光透過率を例えば50%以下に低く設定しておけば、観察者は映像表示装置11の映像を観察しやすくなり、逆に、外光透過率を例えば50%以上に高く設定しておけば、観察者は、外界像を観察しやすくなる。したがって、外光透過率制御手段18における外光透過率は、映像表示装置11の映像および外界像の観察のしやすさを考慮して適宜設定されればよい。
【0074】
なお、HMDは、映像表示装置11を1個だけ備えたものには限られない。例えば、図4(a)は、HMDの他の構成を示す平面図であり、図4(b)は、上記HMDの側面図であり、図4(c)は、上記HMDの正面図である。このように、HMDは、観察者の両目の前に配置される2個の映像表示装置11・11を備えた構成であってもよい。この場合、左目の前に配置される映像表示装置11は、ブリッジ13と左フレーム14Lとによってその間で支持される。また、両方の映像表示装置11・11の間もケーブル17で接続され、外部信号等がケーブル17を介して両方の映像表示装置11・11に供給される。
【0075】
(2.映像表示装置の詳細について)
次に、映像表示装置11の詳細な構成について説明する。
図5は、映像表示装置11の概略の構成を示す断面図であり、図6は、映像表示装置11における光路を光学的に一方向に展開して示す説明図である。映像表示装置11は、光源21と、集光レンズ22と、拡散手段23と、表示素子24と、接眼光学系31とを有している。図5に示すように、光源21、集光レンズ22、拡散手段23および表示素子24は、筐体20内に収容されており、接眼光学系31の一部(後述する接眼プリズム32の一部)は、筐体20内に位置している。
【0076】
ここで、以下での説明の便宜上、方向を以下のように定義しておく。まず、表示素子24の表示領域の中心と、接眼光学系31によって形成される光学瞳Eの中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とする。そして、光源21から光学瞳Eまでの光路を展開したときの光軸方向をZ方向とする。また、接眼光学系31の後述するホログラム光学素子34への光軸の入射面に垂直な方向をX方向とし、ZX平面に垂直な方向をY方向とする。なお、ホログラム光学素子34への光軸の入射面とは、ホログラム光学素子34における入射光の光軸と反射光の光軸とを含む平面、すなわち、YZ平面を指す。以下、上記入射面を単に入射面または光軸入射面と称する。
【0077】
光源21は、RGBの3原色に対応する波長の光を出射する3つの発光チップを発光部21R・21G・21B(図6参照)として有するRGB一体型のLED(例えば日亜化学製)で構成されている。LEDは、安価、小型であり、また、後述するように発光波長幅が狭いので色純度が高い。したがって、光源21をRGBのLEDで構成することにより、安価で小型の映像表示装置11を実現できるとともに、観察者に提供する映像の色純度を高くすることができる。
【0078】
また、発光部21R・21G・21Bは、それぞれ約0.3mm角のサイズであり、ピッチ0.5mmでX方向に並んでいる。このように、発光部21R・21G・21Bは、拡散手段23の後述する第1の拡散手段23aの拡散方向であるX方向に並んで配置されていることにより、RGBの各色が第1の拡散手段23によって上記拡散方向に混ざるので、光学瞳E上での各色の強度ムラが小さくなり、色ムラを低減することができる。
【0079】
なお、発光部21R・21G・21Bは、X方向に完全に一列に並んでいなくてもよい。例えば、発光部21R・21G・21Bの一部が0.5mmだけY方向にずれていてもよい。また、このとき、より多くの発光部が直線的に並ぶ方向がX方向となるように光源21を配置してもよい。
【0080】
集光レンズ22は、拡散手段23の後述する第1の拡散手段23aの拡散方向に垂直な方向(Y方向)に光源21からの光を集光して表示素子24に導く集光手段であり、例えばシリンダレンズで構成されている。第1の拡散手段23aの拡散方向に平行な方向(X方向)についての集光レンズ22の光学的パワーは、ゼロか負である。これにより、光源21からの光はX方向には集光されないので、X方向に光源21の輝度ムラ(強度ムラ)が増幅されることがなく、高画質の映像を観察者に観察させることができる。
【0081】
また、集光レンズ22は、光源21からの光を集光した後、拡散手段23によって拡散される光が効率よく光学瞳Eを形成するように配置されている。また、集光レンズ22および後述するホログラム光学素子34は、光源21と光学瞳Eとが第1の拡散手段23aの拡散方向に垂直な方向(Y方向)について共役となるように配置されている。本実施形態では、光学瞳Eは、X方向の大きさが6mmであり、Y方向の大きさが2mmとなっている。なお、光学瞳EのY方向については、光源21の発光面積(例えば0.3mm角)が、拡散手段23での0.5度の拡散と、表示素子24での2度程度の拡散により、共役関係の像倍率で形成される瞳よりも少し大きく形成されている。
【0082】
このように、光学瞳Eは、一方向(X方向)には人間の瞳(3mm程度)よりも大きい6mmの大きさなので、観察者は映像を観察しやすい。一方、光学瞳Eは、他の方向(Y方向)には人間の瞳よりも小さい2mmの大きさなので、光源21からの光は上記方向においては光学瞳Eに無駄なく集光する。これにより、観察者は、明るい映像を観察することができる。本実施形態では、人間の瞳よりも光学瞳を小さくすることで、より明るい映像を提供しているが、光学瞳が一方向に小さければ、人間の瞳より大きくても、明るい映像を提供することができる。
【0083】
また、第1の拡散手段23aの拡散方向に垂直なY方向において、光源21と光学瞳Eとは共役となる位置に配置されているので、Y方向に光学瞳Eをより小さくすることができ、Y方向において光源21からの光利用効率をより高めて明るい映像を観察者に観察させることができる。なお、X方向では、第1の拡散手段23aにより入射光が大きく拡散されるため、光源21と光学瞳Eとの共役関係は成立しなくなるが、共役配置により高効率で光源21からの光を利用することができ、明るい映像表示が可能である。
【0084】
拡散手段23は、光源21から出射された光を拡散するものであり、複数の拡散手段すなわち第1の拡散手段23aと第2の拡散手段23bとで構成されている。第1の拡散手段23aは、第1の拡散手段23aの接眼光学系31による虚像と、表示素子24の表示映像の虚像との視度の差が5ディオプタとなるように、表示素子24の近傍に配置されている。また、第2の拡散手段23bについても、第2の拡散手段23bの接眼光学系31による虚像と、表示素子24の表示映像の虚像との視度の差が5ディオプタとなるように、光源21と第1の拡散手段23aとの間の光路中に配置されている。つまり、第1の拡散手段23aと第2の拡散手段23bとは、ほとんど同じ位置に配置されている。
【0085】
第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bは、方向によって拡散度が異なる一方向拡散板でそれぞれ構成されている。より具体的には、第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bは、入射光をX方向には40度拡散し、Y方向には0.5度拡散する。なお、拡散手段23は複数の拡散板で構成されているので、1枚の拡散板あたり、X方向の拡散度は40度以下であってもよい。第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bの光射出側の面は、このような拡散を実現できるように凹凸が形成された凹凸面となっている。
【0086】
表示素子24は、光源21からの出射光を画像データに応じて変調して映像を表示するものであり、RGBのカラーフィルタを備え、光が透過する領域となる各画素をマトリクス状に有する透過型のLCDで構成されている。表示素子24は、矩形の表示領域の長辺方向がX方向となり、短辺方向がY方向となるように配置されている。
【0087】
接眼光学系31は、表示素子24からの映像光、すなわち、表示素子24にて表示された映像に対応する光を観察者の瞳に導く観察光学系であり、接眼プリズム32(第1の透明基板)と、偏向プリズム33(第2の透明基板)と、ホログラム光学素子34とを有して構成されている。
【0088】
接眼プリズム32は、表示素子24からの映像光を内部で全反射させてホログラム光学素子34を介して観察者の瞳に導く一方、外光を透過させて観察者の瞳に導くものであり、偏向プリズム33とともに、例えばアクリル系樹脂で構成されている。この接眼プリズム32は、平行平板の下端部を下端に近くなるほど薄くして楔状にし、その上端部を上端に近くなるほど厚くした形状で構成されている。また、接眼プリズム32は、その下端部に配置されるホログラム光学素子34を挟むように、偏向プリズム33と接着剤で接合されている。
【0089】
偏向プリズム33は、平面視で略U字型の平行平板で構成されており(図3(c)参照)、接眼プリズム32の下端部および両側面部(左右の各端面)と貼り合わされたときに、接眼プリズム32と一体となって略平行平板となるものである。この偏向プリズム33を接眼プリズム32に接合することにより、観察者が接眼光学系31を介して観察する外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0090】
つまり、例えば、接眼プリズム32に偏向プリズム33を接合させない場合、外光は接眼プリズム32の楔状の下端部を透過するときに屈折するので、接眼プリズム32を介して観察される外界像に歪みが生じる。しかし、接眼プリズム32に偏向プリズム33を接合させて一体的な略平行平板を形成することで、外光が接眼プリズム32の楔状の下端部を透過するときの屈折を偏向プリズム33でキャンセルすることができる。その結果、シースルーで観察される外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0091】
なお、接眼プリズム32および偏向プリズム33の各面(光入射面、光出射面)は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。接眼プリズム32および偏向プリズム33の各面を曲面とすれば、接眼光学系31に矯正眼鏡レンズとしての機能を持たせることもできる。
【0092】
ホログラム光学素子34は、表示素子24から出射される映像光(3原色に対応した波長の光)を回折反射させて光学瞳に導くことにより、表示素子24にて表示される映像を拡大して観察者の瞳に虚像として導く体積位相型の反射型ホログラムであり、軸非対称な正の光学パワーを有している。つまり、ホログラム光学素子34は、正のパワーを持つ非球面凹面ミラーと同様の機能を持っている。これにより、装置を構成する各光学部材の配置の自由度を高めて装置を容易に小型化することができるとともに、良好に収差補正された映像を観察者に提供することができる。
【0093】
(3.映像表示装置の動作について)
次に、上記構成の映像表示装置11の動作について説明する。光源21から出射された光は、集光レンズ22にて集光された後、拡散手段23の第2の拡散手段23bおよび第1の拡散手段23aにて順に拡散され、RGBの混色が十分になされた均一な照明光として表示素子24に入射する。表示素子24に入射した光は、画像データに基づいて各画素ごとに変調され、映像光として出射される。つまり、表示素子24には、カラー映像が表示される。
【0094】
表示素子24からの映像光は、接眼光学系31の接眼プリズム32の内部にその上端面(面32a)から入射し、対向する2つの面32b・32cで複数回全反射されて、ホログラム光学素子34に入射する。ホログラム光学素子34に入射した光は、そこで反射されて光学瞳Eに達する。光学瞳Eの位置では、観察者は、表示素子24に表示された映像の拡大虚像を観察することができる。
【0095】
一方、接眼プリズム32および偏向プリズム33は、外光をほとんど全て透過させるので、観察者は外界像を観察することができる。したがって、表示素子24に表示された映像の虚像は、外界像の一部に重なって観察されることになる。
【0096】
以上のように、映像表示装置11では、表示素子24から出射される映像光を、接眼プリズム32内での全反射によってホログラム光学素子34に導く構成としているので、通常の眼鏡レンズと同様に、接眼プリズム32および偏向プリズム33の厚さを3mm程度にすることができ、映像表示装置11を小型化、軽量化することができる。また、表示素子24からの映像光を内部で全反射させる接眼プリズム32を用いることにより、高い外光の透過率を確保して、明るい外界像を観察者に提供することができる。
【0097】
また、ホログラム光学素子34は、表示素子24からの映像光と外光とを同時に観察者の瞳に導くコンバイナとして機能しており、観察者は、ホログラム光学素子34を介して、表示素子24から提供される映像と外界像とを同時に観察することができる。
【0098】
また、本実施形態では、拡散手段23の第1の拡散手段23aの接眼光学系31による虚像と、表示素子24の表示映像の虚像との視度の差が5ディオプタであり、表示映像の虚像のみならず第1の拡散手段23aの接眼光学系31による虚像が人間の目で観察可能な範囲(10ディオプタ以下)に位置している。しかし、実施の形態1または2と同様に、第1の拡散手段23aに起因する影の発生を第2の拡散手段23bによって軽減することができるので、第1の拡散手段23aを表示素子24に近い位置に配置しても、表示映像の虚像にムラが発生するのを抑えることができる。その結果、明るく、かつ、高画質の映像(虚像)を観察者に観察させることができる。
【0099】
特に、本実施形態のように、外界像をシースルーで観察可能な映像表示装置11では、そのような外界像に重畳される表示映像(虚像)を明るくして観察者に観察させやすくする必要があるので、第2の拡散手段23bを設ける構成は、特にシースルー型の映像表示装置11およびHMDに非常に有効となる。
【0100】
(4.光源とホログラム光学素子の特性について)
次に、光源21およびホログラム光学素子34の特性について説明する。
図7は、光源21の分光強度特性、すなわち、出射光の波長と光強度との関係を示す説明図である。光源21は、例えば、光強度のピーク波長および光強度半値の波長幅で462±12nm、525±17nm、635±11nmとなる3つの波長帯域の光を発する。なお、図7の縦軸の光強度は、B光の最大光強度を100としたときの相対値で示している。
【0101】
なお、光強度のピーク波長とは、光強度がピークとなるときの波長のことであり、光強度半値の波長幅とは、光強度が光強度ピークの半値となるときの波長幅のことである。光源21のRGBの光強度は、ホログラム光学素子34の回折効率や、表示素子24の光透過率を考慮して調整され、これによって白色表示を行うことが可能となる。
【0102】
一方、図8は、ホログラム光学素子34における回折効率の波長依存性を示す説明図である。同図に示すように、ホログラム光学素子34は、例えば、回折効率のピーク波長および回折効率半値の波長幅で465±5nm(B光)、521±5nm(G光)、634±5nm(R光)の3つの波長域の光を回折(反射)させるように作製されている。ここで、回折効率のピーク波長とは、回折効率がピークとなるときの波長のことであり、回折効率半値の波長幅とは、回折効率が回折効率ピークの半値となるときの波長幅のことである。なお、図8の回折効率は、B光の最大回折効率を100としたときの相対値で示している。
【0103】
上記のように、ホログラム光学素子34は特定入射角の特定波長の光のみを回折するように作製されているので、外光の透過にはほとんど影響しない。したがって、観察者は、接眼プリズム32、ホログラム光学素子34および偏向プリズム33を介して外界像を通常通り見ることができる。
【0104】
また、体積位相型で反射型のホログラム光学素子34は、図8で示したように回折効率が高く、しかも、回折効率ピークの半値波長幅が狭い。したがって、このようなホログラム光学素子34を用い、表示素子24からの映像光をホログラム光学素子34にて回折反射させて光学瞳Eに導く構成とすることにより、明るく、色純度の高い映像を観察者に提供することができる。
【0105】
さらに、上述の数値から、ホログラム光学素子34の回折効率のピーク波長と、光源21から出射される光強度のピーク波長とは略等しいと言える。このような設定では、光源21から出射される光のうちで光強度がピークとなる波長付近の光が、ホログラム光学素子34にて効率よく回折されるので、外界像に重畳しても明るく、見やすい映像を観察者に提供することができる。
【0106】
(5.色ムラの低減効果について)
ところで、本実施形態では、光学瞳Eは、上述したように、強度半値でX方向に6mm、Y方向に2mmの大きさとなるように設定されている。つまり、光学瞳Eは、Y方向、すなわち、ホログラム光学素子34への光軸の入射面(YZ平面)に平行な方向よりも、X方向、すなわち、上記入射面に垂直な方向に大きい。このように光学瞳Eの大きさを設定することにより、ホログラム光学素子34の波長特性(波長選択性)の影響をあまり受けずに、観察者は色ムラの少ない高画質の映像を観察することができる。その理由は以下の通りである。
【0107】
まず、ホログラム光学素子34における入射角と波長選択性との関係について説明する。0度より大きい入射角を持つ光を回折させる干渉縞を持つホログラム光学素子34では、入射面に平行な方向よりも入射面に垂直な方向において、波長選択性が小さい(入射角のずれによる回折波長のずれが小さい)。言い換えると、入射面に平行な方向よりも入射面に垂直な方向のほうが、干渉縞への入射角のずれに対する角度選択性が低い。これは、ホログラム光学素子34の干渉縞に光が入射角を有して入射する場合、入射面(YZ平面)内での入射角の角度ずれは、そのまま入射角の角度ずれとなるため、回折波長に対する影響が大きいが、入射面に垂直な方向の角度ずれは、入射角のずれとしては小さく、回折波長に対する影響は小さいからである。
【0108】
したがって、ホログラム光学素子34の干渉縞に所定の入射角からずれた角度の光が入射すると、同じ角度ずれでも、入射面に平行な方向での角度ずれのほうが、入射面に垂直な方向の角度ずれよりも、大きく回折波長がずれる(すなわち、入射面に平行な方向は、波長選択性が大きい)。
【0109】
ここで、図9は、本実施形態において、光学瞳Eにおける瞳位置と主たる回折波長(例えばR光)との関係を示す説明図である。同図中、破線A1は、光学瞳EのX方向における回折波長の変化を示しており、実線A2は、光学瞳EのY方向の瞳における回折波長の変化を示している。このように、回折波長の変化は、入射面に平行なY方向のほうが、入射面に垂直なX方向よりも大きい。
【0110】
したがって、回折波長の変化が大きいY方向に光学瞳Eを小さく形成することにより、回折波長の変化の範囲が狭くなるので、光学瞳E上での色ムラを低減することができる。また、入射面に垂直な方向に光学瞳Eを大きく形成しても、色純度の高い映像を観察者に提供することができる。なお、光軸入射面外の光は入射面が光軸入射面と若干平行ではないが、前述の通り、入射面に垂直な方向の角度ずれは回折波長に対する影響が小さいので、光軸入射面を基準にしても色ムラが大きくなることはない。
【0111】
また、本実施形態では、第1の拡散手段23aの拡散方向は、ホログラム光学素子34の光軸入射面に垂直なX方向である。このように第1の拡散手段23aの拡散方向を光軸入射面に垂直なX方向またはこれと略平行な方向とし、ホログラム光学素子34の波長選択性が小さい方向に光を拡散させることにより、色ムラの発生を抑えたまま、上記方向に光学瞳Eを大きくして観察しやすい映像を観察者に提供することができる。また、光学瞳Eは、光軸入射面に垂直なX方向よりも光軸入射面に平行なY方向で相対的に小さくなるので、Y方向では光源21からの光を無駄なく集光することができ、明るい映像を観察者に提供することができる。
【0112】
また、上述したように、光源21の3つの発光部21R・21G・21Bは、第1の拡散手段23aによる拡散の大きい方向であるX方向に並んでいるが、このことは取りも直さず、3つの発光部21R・21G・21Bが光軸の入射面に対して垂直な方向に並んで配置されていることを意味する。入射面に対して垂直な方向は、ホログラム光学素子34における波長選択性が小さい方向であるので、3つの発光部21R・21G・21BをX方向に配置することで、光学瞳Eを拡大できる方向に色を混ぜることができ、RGBの3色を発光する光源21を用いた場合でも、色ムラの少ない高画質の映像を観察者に提供することができる。
【0113】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態3と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0114】
図10は、本実施形態の映像表示装置11における光路を光学的に一方向に展開して示す説明図である。本実施形態では、光源21が2つの光源群21P・21Qで構成されている点以外は、実施の形態3と同様の構成である。
【0115】
ここで、図11は、本実施形態における光源21を表示素子24側から見たときの平面図を示している。光源21の光源群21Pは、RGBの各色光を出射する3つの発光部21R1・21G1・21B1を有するRGB一体型のLEDで構成されている。また、光源群21Qも同様に、RGBの各色光を出射する3つの発光部21R2・21G2・21B2を有するRGB一体型のLEDで構成されている。つまり、光源21は、RGBの光を出射する3つの発光部(LED)を2組有している。
【0116】
各光源群21P・21Qの各発光部は、ホログラム光学素子34への光軸の入射面(YZ平面)に対して垂直な方向に並んで配置されているが、さらに、上記入射面に対して各色ごとに面対称となるように配置されている。より詳細には、発光部21R1・21R2が上記入射面に近い位置で面対称となるように配置され、そのX方向外側に発光部21G1・21G2が上記入射面に対して面対称となるように配置され、さらにそのX方向外側に発光部21B1・21B2が上記入射面に対して面対称となるように配置されている。つまり、各光源群21P・21Qでは、上記入射面側からX方向外側に向かうにつれて出射光の波長が短くなるような順序で、各発光部が配置されている。
【0117】
このように、各発光部を各色ごとに上記入射面に対して面対称(接眼光学系31の光軸に対して対称)に配置することにより、同じ色についての2つの発光部(例えば21R1と21R2)からの出射光の光強度を足し合わせたトータルの光強度の重心を、RGBの各色ともに対称面内(上記入射面内、光軸上)に位置させることができる。つまり、RGBの各色ともにその強度分布を、対称面を中心にしてX方向に対称にすることができる。これにより、光学瞳Eの中心において色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。
【0118】
なお、各発光部の面対称の中心となる面は、上記入射面に平行な面であってもよい。つまり、各発光部の面対称の中心となる面は、上記入射面からX方向に多少ずれた面であっても構わない。この場合は、光学瞳Eの中心付近において色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。
【0119】
ところで、光源21が光源群2個で構成され、各発光部が各色ごとに面対称に配置される場合には、上記入射面に垂直な方向における各発光部の配列順序は、隣接する各組間で逆になる。一方、光源21を構成する光源群の個数が4個以上の偶数個であっても、つまり、光源21がRGBの各発光部を4組以上の偶数組設けて構成される場合でも、上記入射面に対して垂直な方向における各発光部の配列順序を隣接する各組間で逆にすれば、各発光部からの出射光の光強度を足し合わせたトータルの光強度の重心を、RGBの各色ともに上記入射面に平行な同一面(上記入射面を含む)内に位置させることができ、光学瞳Eの中心またはその近傍において色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。
【0120】
したがって、以上のことをまとめると、結局、光源21は、RGBの3つの発光部を2組以上の偶数組有しており、上記入射面に対して垂直な方向における各発光部の配列順序が隣接する各組間で逆であれば、光学瞳Eの中心またはその近傍において色ムラの少ない映像を観察者に提供することができると言える。
【0121】
また、光源21を構成する光源群の個数が4個以上の偶数個であっても、各発光部が上記入射面に対して面対称に配置され、かつ、上記入射面に対して垂直方向の両側で上記入射面から同じ距離に位置する発光部が同じ色の光を発光するように配置されていれば、各発光部からの出射光の各色について、光強度の重心が上記入射面上で一致する。したがって、光源21を構成する光源群の個数が偶数個であれば、各発光部を上記のように配置することで、光学瞳の中心で色ムラの少ない映像を観察者に提供することができると言える。
【0122】
また、ホログラム光学素子34は、上述したように、回折効率ピークおよびその半値波長幅で465±5nm、521±5nm、634±5nmの各波長の映像光を回折するように作製されている。このように各色で回折効率の半値波長幅が同じなので、波長の長い光ほど角度選択性が大きい(波長の変化に対する入射角のずれ方が小さい)。したがって、各光源群21P・21Qにおいて、光軸入射面側からX方向外側に向かうにつれて出射光の波長が短くなるような順序で各発光部が配置されていることにより、光学瞳E内での各色の強度差を小さくすることができ、光学瞳E内で色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。以下、この点について詳細に説明する。
【0123】
回折効率ピークの波長をλ、ホログラム光学素子34の媒質(干渉縞)の屈折率をn、媒質の厚さをh、入射角をθとすると、これらの間には、
λ=2nhcosθ
の関係が成り立つ。ここで、波長の短いB光および波長の長いR光において、それぞれの波長が例えば同じ5nmだけずれた場合、波長の変化の割合は、B光については465/470であり、R光については634/639である。つまり、波長の変化の割合は、波長の短いB光に比べて波長の長いR光のほうが小さい。したがって、波長の短いB光に比べて波長の長いR光のほうが、波長の変化に対する入射角θのずれ方は小さい(角度選択性が大きい)。よって、光源21からの出射光のRGBの波長幅が同じ場合には、ホログラム光学素子34によって回折されてできる光学瞳の大きさは、波長が長い光ほど小さい。なお、光学瞳Eは、各色の光学瞳の範囲を全て含むものとする。
【0124】
一方、光源21のLED(各発光部)からの出射光の強度は、一般的に中心付近ほど強く、周囲ほど弱い。また、各発光部は、Y方向においては、光学瞳と略共役となるように配置されているが、X方向では、拡散手段23により拡散されるので、光学瞳とは共役ではない。しかし、光学瞳において最も強度の強い位置は、拡散手段23がないとした場合の各発光部と共役な位置にほぼ同じである。
【0125】
したがって、光学瞳が小さい長波長(R光)の瞳中心を光学瞳Eの中心側に位置させ、光学瞳が大きい短波長(B光)の瞳中心を光学瞳Eの中心よりも外側に位置させることで、光学瞳E内での瞳位置による強度差を各色について小さくすることができる。この点について、もう少し詳細に説明する。
【0126】
図12は、光学瞳EにおけるX方向の瞳位置と光強度との関係を示す説明図である。なお、光強度は、同じ色については相対値で示されている。また、同図中の21R1・21R2・21G1・21G2・21B1・21B2で示される曲線は、それぞれ発光部21R1・21R2・21G1・21G2・21B1・21B2から出射される光に対応している。
【0127】
上述したように、ホログラム光学素子34の角度選択性により、波長が長い光ほど光学瞳は小さいので、同図に示すように、波長が長い光ほど瞳位置による強度差が大きくなっている(光学瞳Eの中心と端部とにおける強度差が大きくなっている)。逆に、波長が短い光ほど光学瞳Eは大きいので、波長が短い光ほど瞳位置による強度差が小さくなっている。
【0128】
また、波長が長い光を発光する発光部ほど光軸入射面側に配置されているので、光強度の高い位置は、波長が長い光ほど光学瞳Eの中心に近くなっている。逆に、波長が短い光を発光する発光部ほど光軸入射面から離れた位置に配置されているので、光強度の高い位置は、光学瞳Eの周辺となっている。
【0129】
つまり、波長が長い光ほど瞳位置による強度差が大きいが、光軸入射面側からX方向外側に向かうにつれて出射光の波長が短くなるような順序で各発光部を配置し、波長が長い光ほど光強度の高い位置を光学瞳Eの中心に近づけることで、波長が長い光について、瞳位置による強度差、すなわち、光学瞳Eの中心と端部とにおける強度差を小さくすることができる。これにより、光学瞳Eの全体(瞳中心および瞳周辺)で色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。
【0130】
また、光源群21P・21Qの各発光部は、拡散手段23での拡散が大きい波長順(波長が短いほど拡散する)にX方向に配置されているので、光学瞳E上での各色の強度差がさらに小さくなり、色ムラをさらに低減することができる。つまり、色純度の高い映像を観察者に提供することができる。
【0131】
ところで、以上では、RGBの各発光部を2組設け、各組を個々のパッケージにした光源群21P・21Qで光源21を構成した例について説明したが、各組は1つのパッケージになっていてもよい。図13は、光源21の他の構成例を示すものであって、光源21を表示素子24側から見たときの平面図を示している。
【0132】
このように光源21は、RGBの光を出射する発光部21R1・21R2・21G1・21G2・21B1・21B2を1パッケージ化したもので構成されてもよい。この構成においても、上述した各発光部の配置方法を適用することにより、光学瞳E上での各色の強度差を小さくして、色ムラを低減することができる。また、発光点の距離が近いほどRGBの色が混ざりやすく、より明るい映像を提供することができるので、この点では、各発光部の距離を容易に小さくできる図13の構成のほうが望ましい。
【0133】
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態3または4と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0134】
図14は、本実施形態の映像表示装置11の概略の構成を示す断面図である。また、図15(a)(b)は、本実施形態の映像表示装置11の構成を、光路を展開して模式的に示す説明図であり、図15(a)は水平方向の光路を展開して、図15(b)は垂直方向の光路を展開してそれぞれ示している。本実施形態の映像表示装置11は、光源21と、拡散手段23と、表示素子24’と、凹面ミラー25と、第1の偏光板26と、第2の偏光板27と、第3の偏光板28と、接眼光学系31とを備えている。以下、実施の形態3または4と異なる点について説明する。
【0135】
光源21は、表示素子24’に向けてRGBの光を出射する点では実施の形態3または4と同じであるが、本実施形態では、後述するように表示素子24’が時分割で駆動されるため、光源21はRGBの光を時分割で順に出射する。
【0136】
表示素子24’は、光源21からの出射光を画像データに応じて各画素ごとに変調することによって映像を表示する光変調素子であるが、本実施形態では反射型の強誘電液晶表示素子で構成されている。この反射型の強誘電液晶表示素子は、強誘電液晶を2枚の基板で挟持してなり、一方の基板側に反射膜(反射電極、画素電極)が形成されたものである。表示素子24’は、カラーフィルタを有してはおらず、表示素子24’の各画素は、光源21から時分割で順に供給される3原色の光のそれぞれに対応して時分割でON/OFF駆動される。これにより、観察者にカラー映像を提供することができる。
【0137】
反射型の表示素子24’においては、シリコン等の半導体を基板として用いることができるため、小型で集積度の高い表示素子を作製することができる。しかも、各画素をON/OFFするためのスイッチング素子(例えばTFT)や配線を含む周辺回路を、表示側とは反対側の基板に配置することができるので、開口率を容易に向上させることができ、また、各画素のエッジでの拡散を小さく抑えることもできる。したがって、表示素子24’を反射型LCDで構成することにより、明るく、かつ、高画質の映像を表示して観察者に観察させることができる。
【0138】
また、強誘電液晶表示素子は、駆動速度が速いことがメリットであるので、それゆえ、表示素子24’を強誘電液晶表示素子で構成することにより、上記の時分割駆動方式を採用することができる。また、時分割駆動方式では、光源21にて各発光部21R・21G・21Bを順次点灯させるため、例えば単色を表示する場合は、残りの2色の発光部は消灯されている。これにより、色純度の高い、コントラストの高い映像を表示することができる。
【0139】
また、反射型強誘電液晶表示素子は、TN(Twisted Nematic)液晶表示素子よりも広い視野角特性を有している点で優れており、凹面ミラー25から表示素子24’に入射する光の入射角が大きくても、コントラストが高く、色再現性が高く(色再現領域が広く)、表示品位の高い映像を提供することができる。また、照明光学系を構成する各光学素子の配置自由度が高くなり、コンパクトで高性能の照明光学系を構成することができる。
【0140】
なお、表示素子24’は、位相補償板とTN液晶表示素子とを組み合わせて視野角特性を向上させたもので構成されてもよい。また、表示素子24’は、時分割駆動が可能な反射型の表示素子であればよく、例えばDMD(Digital Micromirror Device;米国テキサスインスツルメント社製)で構成することも可能である。
【0141】
凹面ミラー25は、第1の拡散手段23aの拡散方向に垂直なY方向に光源21からの光を集光して表示素子24’に導く集光手段であり、Y方向に正の光学的パワーを持つシリンドリカルミラーで構成されている。この凹面ミラー25は、表示素子24’から接眼光学系31に向かう光の光路に対して光源21とは反対側に配置されて光源21からの光を反射させて表示素子24’に導く。したがって、凹面ミラー25は、光源21から表示素子24’に至る光路を折り曲げる光路折り曲げ部材として機能している。なお、凹面ミラー25は、球面ミラーや非球面ミラー、軸非対称な凹面ミラーで構成されてもよい。
【0142】
本実施形態では、光源21と光学瞳Eとは、Y方向で共役な位置関係となっているが、前述の通り、表示素子24’は開口率が高く、拡散が小さいので、Y方向では光源21と光学瞳Eとはほぼ共役である。しかし、X方向では、凹面ミラー25の光学的なパワーが無いので、共役でない。
【0143】
第1の偏光板26は、光源21から出射された光のうち、所定の偏光方向の光(例えばP偏光)を透過させて凹面ミラー25に導くとともに、凹面ミラー25にて光路を折り曲げられた光であって上記所定の偏光方向と同じ偏光方向の光(例えばP偏光)を透過させて表示素子24’に導く偏光子である。この第1の偏光板26は、表示素子24’から接眼光学系31に向かう光の光路に対して凹面ミラー25側に配置されている。
【0144】
第2の偏光板27は、入射光のうちで第1の偏光板26を透過する光とは偏光方向が直交する光(例えばS偏光)を透過させて接眼プリズム32に導く検光子であり、接眼プリズム32と空隙を介して設けられている。なお、第2の偏光板27は、接眼プリズム32の光入射面(面32a)に貼り付けられていてもよい。
【0145】
第3の偏光板28は、光源21から出射される光のうちで、第1の偏光板26を透過する光と同じ偏光方向の光(例えばP偏光)を透過させて凹面ミラー25に導くものである。この第3の偏光板28は、表示素子24’から接眼光学系31に向かう光の光路に対して光源21側に配置されている。
【0146】
拡散手段23を構成する第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bは、実施の形態3または4と同様に、入射光をX方向に40度、Y方向に0.5度拡散する一方向拡散板でそれぞれ構成されており、表示素子24’から接眼光学系31に向かう光の光路と凹面ミラー25との間に、第1の拡散手段23aが表示素子24’側となるように配置されている。つまり、第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bは、光源21からのRGBの光をX方向に均一輝度にするように、凹面ミラー25と表示素子24’との間に配置されており、表示素子24’に対して傾斜して設けられている。
【0147】
このように第1の拡散手段23aが表示素子24’に対して傾斜して配置される場合、第1の拡散手段23aは、その一端で表示素子24’に非常に近づき、他端で表示素子24’から遠ざかることになる。このため、表示素子24’の表示映像の虚像と第1の拡散手段23aの接眼光学系31による虚像との視度の差はある程度の範囲を持ち、本実施形態では5ディオプタから15ディオプタの範囲となっている。つまり、第1の拡散手段23aの接眼光学系31による虚像(影を含む)には、人間の目で観察可能な範囲(10ディオプタ以下)に属するものも含まれていることになる。
【0148】
また、第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bは、本実施形態では、図15(a)に示すように、それぞれの拡散面が対向せずに反対側を向くように配置されている。つまり、第1の拡散手段23aの拡散面は光源21側(表示素子24’側)に位置しており、第2の拡散手段23bの拡散面は凹面ミラー25側に位置している。第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bはそれぞれ、例えば厚さ0.1mmの薄いフィルムの一面に凹凸を設けた凹凸面により、光を拡散する。
【0149】
上記構成の映像表示装置11においては、光源21からの光のうち、第3の偏光板28を透過した光(P偏光)は、第1の偏光板26を透過し、第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bをこの順で透過した後、凹面ミラー25で反射される。そして、凹面ミラー25で反射された光は、第2の拡散手段23bおよび第1の拡散手段23aで順に拡散された後、表示素子24’に入射する。表示素子24’に入射した光はそこで変調されて映像光(S偏光)となり、第2の偏光板27を透過して接眼プリズム32aの面32a(本実施形態では凸の曲面)に入射し、面32b・32cで複数回全反射された後、ホログラム光学素子34を介して光学瞳Eに導かれる。
【0150】
このとき、第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bは、個々における入射光の拡散により、所定の方向からの入射光では射出しない光を互いに補完するので、最終的には、第1の拡散手段23aから均質な光が表示素子24’に向けて射出される。つまり、少なくとも、第1の拡散手段23aに起因する影の発生は第2の拡散手段23bにより軽減される。
【0151】
本実施形態のように、第1の拡散手段23aを表示素子24’に対して傾斜して配置する構成では、第1の拡散手段23aの一端が表示素子24’に非常に近づくことになり、第1の拡散手段23aに起因する影が表示映像の虚像に重畳されやすくなる。しかし、第2の拡散手段23bを設けることにより、表示映像の虚像上に第1の拡散手段23aの影が重畳されなくなり、観察者は輝度ムラや色ムラの無い高画質な映像を虚像として観察することが可能となる。つまり、第2の拡散手段23bを設ける構成は、本実施形態のように、光源21から表示素子24’に向かう光の光路を凹面ミラー25で折り曲げたコンパクトな構成においても非常に有効なものとなる。
【0152】
また、拡散手段23においては、第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bの拡散面を互いに遠ざけて配置することにより、第2の拡散手段23bで拡散された光がある程度光束を有して第1の拡散手段23aに入射するので、より均質に表示素子24’を照明することができる。
【0153】
なお、第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bにおける非拡散面(第1の拡散手段23aおよび第2の拡散手段23bで互いに対向する面)は、互いに接着されていてもよい。この場合は、界面での不要な反射を低減することができるので、さらに均質な明るい光で表示素子24’を照明することができる。
【0154】
なお、拡散手段23を2枚の拡散板で構成するのではなく、1つのフィルムの両面に凹凸を設けた1枚の拡散板で構成してもよい。なお、この場合は、一方の凹凸面(拡散面)が第1の拡散手段を構成し、他方の凹凸面(拡散面)が第2の拡散手段を構成する。このように拡散手段23を1枚の拡散板で構成すれば、その拡散板(フィルム)の厚みを制御することによって、画質と明るさとを両方制御することが可能となる。
【0155】
また、本実施形態では、光源21の近傍に第3の偏光板28を配置している。このように第3の偏光板28を配置することにより、光源21から出射された光のうち、第2の偏光板27を透過できる偏光方向の光(S偏光)を、第3の偏光板28で予めカットすることができる。つまり、第3の偏光板28を配置することで、S偏光が光源21から直接接眼光学系31に到達したり、第1の偏光板26の表面で反射して接眼光学系31に到達するようなことがない。これにより、そのような光によるゴースト(フレア)の発生を防止することができ、映像品位の低下を確実に回避することができる。
【0156】
特に、本実施形態のように、第3の偏光板28を光源21の近傍に配置する、すなわち、第3の偏光板28を表示素子24’から接眼光学系31に向かう光の光路に対して光源21側に配置することで、光源21から出射されるS偏光を効率よくカットすることができ、ゴースト光による映像品位の低下を確実に回避することができる。
【0157】
なお、以上の各実施形態では、HMDに好適な映像表示装置について種々説明したが、各実施形態の映像表示装置は、例えばヘッドアップディスプレイなどの他の装置にも適用することが可能である。
【0158】
なお、以上で説明した各実施の形態の構成を適宜組み合わせて映像表示装置ひいてはHMDを実現することも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の映像表示装置は、例えばヘッドアップディスプレイやヘッドマウントディスプレイに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】(a)は、本発明の実施の一形態に係る映像表示装置の概念的な構成を、水平方向の光路を展開して示す説明図であり、(b)は、上記映像表示装置の構成を、垂直方向の光路を展開して示す説明図である。
【図2】(a)は、本発明の他の実施の形態に係る映像表示装置の構成を、水平方向の光路を展開して示す説明図であり、(b)は、上記映像表示装置の構成を、垂直方向の光路を展開して示す説明図である。
【図3】(a)は、本発明のさらに他の実施の形態に係るHMDの概略の構成を示す平面図であり、(b)は、上記HMDの側面図であり、(c)は、上記HMDの正面図である。
【図4】(a)は、他のHMDの概略の構成を示す平面図であり、(b)は、上記HMDの側面図であり、(c)は、上記HMDの正面図である。
【図5】HMDに適用される映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。
【図6】上記映像表示装置における光路を光学的に一方向に展開して示す説明図である。
【図7】上記映像表示装置の光源の分光強度特性を示す説明図である。
【図8】上記映像表示装置のホログラム光学素子における回折効率の波長依存性を示す説明図である。
【図9】光学瞳における瞳位置と主たる回折波長との関係を示す説明図である。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置における光路を光学的に一方向に展開して示す説明図である。
【図11】上記映像表示装置の光源を表示素子側から見たときの平面図である。
【図12】光学瞳におけるX方向の瞳位置と光強度との関係を示す説明図である。
【図13】上記光源の他の構成例を示すものであって、上記光源を表示素子側から見たときの平面図である。
【図14】本発明のさらに他の実施の形態に係る上記映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。
【図15】(a)は、上記映像表示装置の構成を、水平方向の光路を展開して示す説明図であり、(b)は、上記映像表示装置の構成を、垂直方向の光路を展開して示す説明図である。
【図16】(a)は、従来の映像表示装置に適用可能な一方向拡散板の一構成例を示す断面図であり、(b)は、一方向拡散板の影が観察映像(虚像)に重畳された状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0161】
1 映像表示装置
2 光源
3 拡散手段
3a 第1の拡散手段
3b 第2の拡散手段
4 表示素子
5 レンズ(観察光学系)
11 映像表示装置
12 支持手段
21 光源
21R、21R1、21R2 発光部(LED)
21G、21G1、21G2 発光部(LED)
21B、21B1、21B2 発光部(LED)
22 集光レンズ(集光手段)
23 拡散手段
23a 第1の拡散手段
23b 第2の拡散手段
24 表示素子
24’ 表示素子
25 凹面ミラー(集光手段)
31 接眼光学系(観察光学系)
32 接眼プリズム(第1の透明基板)
33 偏向プリズム(第2の透明基板)
34 ホログラム光学素子
E 光学瞳

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
光源から出射された光を拡散する拡散手段と、
拡散手段にて拡散された光を変調して映像を表示する表示素子と、
表示素子からの映像光を光学瞳に導くことにより、表示映像の虚像を観察者に観察させる観察光学系とを備えた映像表示装置であって、
上記拡散手段は、表面の凹凸によって入射光を一方向に拡散する第1の拡散手段と、入射光を拡散する第2の拡散手段とを有しており、
光学瞳は、第1の拡散手段での入射光の拡散方向よりも上記拡散方向と垂直方向に小さいことを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
上記第2の拡散手段は、表面の凹凸によって入射光を一方向に拡散するものであり、
上記第2の拡散手段での入射光の拡散方向は、上記第1の拡散手段での入射光の拡散方向と略一致することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
上記第2の拡散手段は、光源と第1の拡散手段との間の光路中に配置されており、
上記第1の拡散手段の拡散方向において、上記第2の拡散手段の拡散度は上記第1の拡散手段の拡散度よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
上記光源は、赤、緑、青の3色の光をそれぞれ発光する発光ダイオードを有しており、
各発光ダイオードは、第1の拡散手段の拡散方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項5】
上記光源は、赤、緑、青の3色の光をそれぞれ発光する発光ダイオードを2組有しており、
表示素子の表示領域の中心と光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とすると、
各組の発光ダイオードは、各色ごとに観察光学系の光軸に対して対称に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の映像表示装置。
【請求項6】
上記第1の拡散手段の観察光学系による虚像と表示素子の表示映像の虚像との視度の差は、10ディオプタ以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項7】
第1の拡散手段の拡散方向に垂直な方向に光源からの光を集光して表示素子に導く集光手段をさらに備え、
光源と光学瞳とは、第1の拡散手段の拡散方向に垂直な方向について共役となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項8】
上記集光手段は、第1の拡散手段の拡散方向に平行な方向には、光学的パワーが無いか負であることを特徴とする請求項7に記載の映像表示装置。
【請求項9】
上記表示素子は、反射型の液晶表示素子であることを特徴とする請求項7または8に記載の映像表示装置。
【請求項10】
上記集光手段は、第1の拡散手段の拡散方向に垂直な方向に正の光学的パワーを持つミラーで構成され、かつ、上記反射型の液晶表示素子から観察光学系に向かう光の光路に対して光源とは反対側に配置されて光源からの光を反射させて反射型の液晶表示素子に導き、
上記第1および第2の拡散手段は、上記反射型の液晶表示素子から観察光学系に向かう光の光路と上記集光手段との間に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の映像表示装置。
【請求項11】
上記観察光学系は、体積位相型の反射型ホログラム光学素子を含み、
上記ホログラム光学素子は、表示素子からの映像光を回折反射させて光学瞳に導くことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項12】
上記ホログラム光学素子は、軸非対称な正の光学的パワーを有していることを特徴とする請求項11に記載の映像表示装置。
【請求項13】
表示素子の表示領域の中心と光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とすると、
上記第1の拡散手段の拡散方向は、上記ホログラム光学素子の光軸入射面に垂直な方向と略平行であることを特徴とする請求項12に記載の映像表示装置。
【請求項14】
上記光源は、発光ダイオードで構成されており、
上記ホログラム光学素子の回折効率がピークとなる波長と、上記光源から出射される光の強度がピークとなる波長とが略等しいことを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項15】
上記観察光学系は、表示素子からの映像光を内部で全反射させて観察者の瞳に導く一方、外光を透過させて観察者の瞳に導く第1の透明基板を有していることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項16】
上記観察光学系は、第1の透明基板での外光の屈折をキャンセルするための第2の透明基板を有していることを特徴とする請求項15に記載の映像表示装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の映像表示装置と、
上記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持手段とを有していることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−216852(P2008−216852A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56868(P2007−56868)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】