説明

映像音響システムおよび映像音響送信装置

【課題】不要な赤外線発光素子への電力供給を停止することで省電力化を図り、赤外線発光素子の寿命を延ばす。
【解決手段】映像または音声に関する信号を各エリアに送信する複数の赤外線発光素子5と、赤外線発光素子5からの信号を受信する端末3と、各エリア内での端末3の存在を検出する端末検出部2と、端末検出部2による検出結果に基づいて、端末3が存在していないエリアに信号を送信している赤外線発光素子5への電力供給を停止する電力供給切替部6,8とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の赤外線発光素子を用いて、映像または音声に関する信号を送信する映像音響システムおよび映像音響送信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の映像音響システムにおいて、例えば車載用の赤外線ヘッドフォンシステムでは、音声信号を送信する赤外線LED(赤外線発光素子)を有するRSE(リアシートエンターテイメント)と、この信号を受信する赤外線ヘッドフォンとを備えている。なお、赤外線LEDは指向性を有しているため、車両の後部座席などのように広範囲に信号を送信する場合には、複数の赤外線LEDを用いて送信を行っている。また従来では、どのエリアで赤外線ヘッドフォンが使用されているのかを知ることができないため、後部座席に人が座っていない場合や、赤外線ヘッドフォンを使用せずに車内のスピーカから音声を聴いている場合であっても、常に全ての赤外線LEDに電力が供給され、信号を送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−352523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の赤外線ヘッドフォンシステムでは、赤外線ヘッドフォンが未使用の場合であっても、常に全ての赤外線LEDに電力が供給されているため、不要な電力が消費されるという課題があった。なお、赤外線LEDで消費される電力は、システム全体で消費される電力の約10%程度を占めており、赤外線LEDでの不要電力の削減が要求されている。また、常に電力が供給されているため、赤外線LEDの寿命が短くなるという課題があった。
【0005】
これに対して、ヘッドフォンが搭乗者に装着されていない場合に、ヘッドフォンの電力モードを省電力モードに変更するものがある(例えば特許文献1参照)。しかしながら、この特許文献1に開示されるシステムは、1つのブルートゥースアンテナ(登録商標)を用いて、1つのヘッドフォンに対して無線送受信を行う双方向通信システムである。そのため、指向性を有する複数の赤外線LEDを用いた赤外線ヘッドフォンシステムとは構成が異なり、赤外線ヘッドフォンはデータを受信するのみであり、双方向通信はできない。したがって、電力モードの変更などはできないという課題があった。
【0006】
また、音声伝送用の高出力赤外線LEDでは、赤外線ヘッドフォンが未使用の場合であっても信号送信中に赤外線LEDが赤く点灯してしまうため、目障りになるという課題もあった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、複数の赤外線発光素子を用いて信号を送信する映像音響システムにおいて、不要な赤外線発光素子への電力供給を停止することで省電力化を図り、赤外線発光素子の寿命を延ばすことができる映像音響システムおよび映像音響送信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る映像音響システムは、映像または音声に関する信号を各エリアに送信する複数の赤外線発光素子と、赤外線発光素子からの信号を受信する端末と、各エリア内での端末の存在を検出する端末検出部と、端末検出部による検出結果に基づいて、端末が存在していないエリアに信号を送信している赤外線発光素子への電力供給を停止する電力供給切替部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、上記のように構成したので、複数の赤外線発光素子を用いて信号を送信する映像音響システムにおいて、不要な赤外線発光素子への電力供給を停止することで省電力化を図ることができ、赤外線発光素子の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る赤外線ヘッドフォンシステムの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る赤外線ヘッドフォンシステムの配置例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る赤外線ヘッドフォンシステムの電力供給切替動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
なお以下では、複数の赤外線発光素子を用いて信号を送信する映像音響システムとして、車載用の赤外線ヘッドフォンシステムを用いた場合について示す。
この赤外線ヘッドフォンシステムは、図1に示すように、RSE1、ヘッドフォン検出手段(端末検出部)2および赤外線ヘッドフォン(端末)3から構成されている。
【0012】
RSE1は、車両の後部座席に設けられた赤外線ヘッドフォン3に対して音声信号を送信するものである。このRSE1は、IRトランスミッタ4、赤外線LED5、スイッチ6、電源7およびMCU(メインコントロールユニット)8から構成されている。
【0013】
IRトランスミッタ4は、外部から受信した音声信号(L/R)をFM変調するものである。
赤外線LED5は、IRトランスミッタ4によりFM変調された音声信号を所定のエリア(対応する赤外線ヘッドフォン3が搭乗者に装着(使用)されている際に位置するエリア)に送信するものである。なお、赤外線LED5は指向性を有しているため、例えば図2に示すように、車両の後部座席に複数の赤外線ヘッドフォン3が設置されている場合には、複数の赤外線LED5を用いて各エリアに信号を送信している。
【0014】
スイッチ6は、MCU8による制御に従い、赤外線LED5と電源7との間の電力供給線の接続・切断を行うものである。
電源7は、スイッチ6の接続により、赤外線LED5に電力を供給するものである。
MCU8は、ヘッドフォン検出手段2による赤外線ヘッドフォン3の有無検出結果に基づいて、各スイッチ6の接続・切断を指示するものである。このMCU8は、ヘッドフォン検出手段2によりエリア内に赤外線ヘッドフォン3が存在していない(赤外線ヘッドフォン3が装着されていない)ことが検出された場合には、このエリアに信号を送信している赤外線LED5への電力供給を停止するため、この赤外線LED5に対応するスイッチ6に切断指示を行う。一方、MCU8は、ヘッドフォン検出手段2によりエリア内に赤外線ヘッドフォン3が存在している(赤外線ヘッドフォン3が装着されている)ことが検出された場合には、このエリアに信号を送信している赤外線LED5への電力供給を行うため、この赤外線LED5に対応するスイッチ6に接続指示を行う。
なお、スイッチ6およびMCU8は、本願発明の電力供給切替部に対応する。
【0015】
ヘッドフォン検出手段2は、各赤外線LED5が信号を送信している各エリア内に赤外線ヘッドフォン3が存在しているかを検出することで、赤外線ヘッドフォン3が搭乗者に装着(使用)されているかを検出するものである。このヘッドフォン検出手段2による検出方法については後述する。
赤外線ヘッドフォン3は、赤外線LED5からのFM変調された音声信号を受信・復調し、音声を再生するものである。この赤外線ヘッドフォン3は、車両の各後部座席にそれぞれ設けられている。
【0016】
次に、ヘッドフォン検出手段2による赤外線ヘッドフォン3の有無検出方法について説明する。なお以下では、図2に示すように、各後部座席に赤外線ヘッドフォン3が設けられ、各ヘッドレスト9近傍のエリアに赤外線ヘッドフォン3が存在しているかを検出する場合を例に説明を行う。
赤外線ヘッドフォン3の有無検出方法として、まず、画像認識を用いる方法がある。この場合、まず、車内およびRSE1に設置されたカメラ(不図示)を用いて、各ヘッドレスト9近傍のエリアを撮影する。そして、撮影された画像をヘッドフォン検出手段2で解析することで、赤外線ヘッドフォン3の有無(赤外線ヘッドフォン3が搭乗者に装着されているか)を検出する。
車内およびRSE1に設置されたカメラで、各後部座席に座った乗員の頭部、すなわちヘッドレスト9付近の画像を撮影し、撮影した画像を解析して、該円形をした乗員の頭部と、顔面内にある二つの黒点から瞳を識別し、瞳とほぼ同一高さにある、左右の外耳位置を推定し、推定した外耳位置近傍に、外耳を覆う覆い形状物があるか否かを判定し、赤外線ヘッドフォン3の有無を検出する。
また、画像を解析するヘッドフォン検出手段2の構成は、画像処理LSIとプログラムで構成する。
【0017】
また、赤外線ヘッドフォン3の内部にIDタグを埋め込み、各ヘッドレスト9の内部にヘッドフォン検出装置2(IDタグ検出装置)を埋め込み、赤外線ヘッドフォン3の有無を検出する方法もある。
搭乗者が赤外線ヘッドフォン3を装着した状態でヘッドレスト9に頭部を近づけた時、
赤外線ヘッドフォン3の内部のIDタグがヘッドレスト9内部のヘッドフォン検出手段2により検出され、搭乗者のヘッドフォン装着有無を検出する。ヘッドフォン検出手段2はRSE1のMCU8にヘッドフォン装着有無の判定結果を送信し、その判定結果によりMCU8は該当するエリアの赤外線LED5の電源ON/OFF制御を行う。
この場合、IDタグは万引き防止タグのような、単純なコイルとコンデンサだけで構成された“1ビットタグ”あるいは、特定のID番号が記録されたICチップで構成され、RFID方式などを用い、アンテナ、チューナー、リーダーIC、マイコンで構成された、ヘッドフォン検出手段2によって検出される。
このように、ヘッドフォン検出装置2がIDタグを検出できた場合には、赤外線ヘッドフォン3がヘッドレスト9近傍のエリアに存在していると判断できるため、赤外線ヘッドフォン3の有無を検出することができる。
【0018】
また、ムーブアイセンサ(登録商標;以下省略)や着座センサを用いて搭乗者の有無を検出することで、赤外線ヘッドフォン3の有無を検出する方法もある。この場合、ムーブアイセンサや着座センサにより搭乗者の存在が検出された際には、この搭乗者が赤外線ヘッドフォン3を装着しているか否かに関わらず、赤外線ヘッドフォン3を装着しているものと推定する。
【0019】
次に、上記のように構成された赤外線ヘッドフォンシステムの電力供給切替動作について説明する。
赤外線ヘッドフォンシステムの電力供給切替動作では、図3に示すように、まず、ヘッドフォン検出手段2は、各赤外線LED5が信号を送信している各エリア内に赤外線ヘッドフォン3が存在しているかを検出する(ステップST1)。すなわち、ヘッドフォン検出手段2は、上述した画像認識による検出方法、IDタグ検出による検出方法や搭乗者検出による検出方法などを用いて、各エリア内に赤外線ヘッドフォン3が存在しているかを検出する。
【0020】
このステップST1において、ヘッドフォン検出手段2が、あるエリア内に赤外線ヘッドフォン3が存在していることを検出した場合には、MCU8は、このエリアに信号を送信している赤外線LED5対応するスイッチ6に接続指示を行う(ステップST2)。
次いで、このスイッチ6は、MCU8による接続指示に従い、赤外線LED5と電源7との間の電力供給線を接続し、赤外線LED5に電力を供給させる(ステップST3)。これにより、赤外線LED5は音声信号の送信を行う。
【0021】
一方、ステップST1において、ヘッドフォン検出手段2は、あるエリア内に赤外線ヘッドフォン3が存在していないことが検出された場合には、MCU8は、このエリアに信号を送信している赤外線LED5に対応するスイッチ6に切断指示を行う(ステップST4)。
次いで、このスイッチ6は、MCU8による切断指示に従い、赤外線LED5と電源7との間の電力供給線を切断し、赤外線LED5への電力供給を停止させる(ステップST5)。これにより、赤外線LED5は、音声信号の送信を停止する。
【0022】
このように動作することで、例えば図2に示すように、左端の搭乗者は赤外線ヘッドフォン3を装着しているため、このエリアに信号を送信している赤外線LED5には電力を供給し、中央および右端の搭乗者は赤外線ヘッドフォン3を装着していないため、このエリアに信号を送信している赤外線LED5には電力を供給しないようにすることができ、省電力化を図ることができる。
【0023】
以上のように、この実施の形態1によれば、複数の赤外線LED5を用いて各エリアに信号を送信する赤外線ヘッドフォンシステムにおいて、エリア内に赤外線ヘッドフォン3が存在している(赤外線ヘッドフォン3が装着されている)場合には、このエリアに信号を送信している赤外線LED5に対して電力を供給し、エリア内に赤外線ヘッドフォン3が存在していない(赤外線ヘッドフォン3が装着されていない)場合には、このエリアに信号を送信している赤外線LED5に対する電力供給を停止するように構成したので、不要な赤外線LED5への電力供給を停止することで省電力化を図ることができ、赤外線LED5の寿命を延ばすことができる。
【0024】
なお、実施の形態1では、映像音響システムとして車載用の赤外線ヘッドフォンシステムを用いた場合について示したが、これに限るものではなく、例えばフレームシーケンシャル方式で左用映像および右用映像を交互に表示するRSEのモニタと、この映像の表示サイクルに対応した同期信号を赤外線発光素子を介して受信して、この同期信号に基づき、左右レンズの液晶シャッタを交互に開閉するアクティブシャッターメガネとを用いた3D映像システムに適用してもよい。この場合にも、赤外線発光素子が信号を送信している各エリア内にアクティブシャッターメガネが存在しているか(アクティブシャッターメガネが装着されているか)を検出して、不要エリアに信号を送信している赤外線発光素子への電力供給を停止する。これにより、アクティブシャッターメガネを使用しているエリアに信号を送信している赤外線発光素子にのみ電力を供給することができ、消費電力削減に繋がる。また、赤外線発光素子を介して映像信号を受信し、映像を再生する偏光メガネを用いた3D映像システムに適用してもよい。また、赤外線発光素子により送信された音声信号を受信し、音声を再生するスピーカを備えた家庭用の映像音響システムに対しても同様に適用可能である。
また、実施の形態1では、RSE1を用いた場合について示したが、これに限るものではなく、その他の車載用情報機器を用いるようにしてもよい。
【0025】
また、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 RSE、2 ヘッドフォン検出手段(端末検出部)、3 赤外線ヘッドフォン(端末)、4 IRトランスミッタ、5 赤外線LED(赤外線発光素子)、6 スイッチ(電力供給切替部)、7 電源、8 MCU(電力供給切替部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像または音声に関する信号を各エリアに送信する複数の赤外線発光素子と、
前記赤外線発光素子からの信号を受信する端末と、
各エリア内での前記端末の存在を検出する端末検出部と、
前記端末検出部による検出結果に基づいて、前記端末が存在していないエリアに信号を送信している前記赤外線発光素子への電力供給を停止する電力供給切替部と
を備えた映像音響システム。
【請求項2】
赤外線発光素子は音声信号を送信し、
端末は、前記赤外線発光素子からの音声信号を受信し、音声を再生するヘッドフォンまたはスピーカである
ことを特徴とする請求項1記載の映像音響システム。
【請求項3】
左用映像および右用映像を交互に表示するモニタをさらに備え、
赤外線発光素子は、前記モニタに表示される映像の表示サイクルに対応した同期信号を送信し、
端末は、前記赤外線発光素子からの同期信号を受信し、当該同期信号に従い、左右レンズの液晶シャッタを交互に開閉するメガネである
ことを特徴とする請求項1記載の映像音響システム。
【請求項4】
赤外線発光素子は映像信号を送信し、
端末は、前記赤外線発光素子からの映像信号を受信し、映像を再生するメガネである
ことを特徴とする請求項1記載の映像音響システム。
【請求項5】
映像または音声に関する信号を各エリアに送信する赤外線発光素子と、
前記赤外線発光素子からの信号を受信する端末がエリア内に存在していないことが外部から通知された場合に、当該エリアに信号を送信している前記赤外線発光素子への電力供給を停止する電力供給切替部と
を備えた映像音響送信装置。
【請求項6】
車載用情報機器に適用される
ことを特徴とする請求項5記載の映像音響送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−186694(P2012−186694A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48973(P2011−48973)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】