説明

暖房便座

【課題】便座の保温のための非使用時の待機電力を削減し、極めて省エネルギーな便座暖房を実現するとともに、着座面を均一に加熱することのできる快適な暖房便座を実現し、かつ着座面の温度が上がり過ぎることのない安全な暖房便座を提供する。
【解決手段】着座部26を有する便座22と、便座の裏面に設けた発熱体36と、発熱体に接続し、便座の異常温度上昇を検知して発熱体への通電を遮断するサーモスタット29を備え、発熱体への通電が開始されると、サーモスタットの感熱部の温度が着座部の温度よりも高くなることにより、発熱体で着座部を均一に、かつ速やかに暖房するとともに便座温度の異常を速やかに検知して、温度が上がりすぎることの無い安全な暖房便座を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機能を有する便座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の暖房便座では、図10に示すように内部に空洞部1を持つ樹脂製の便座2の着座部3の裏面にコード状のヒーター4をアルミテープ5などで接着固定したものが一般に用いられている。しかし、この暖房便座は、樹脂製の便座2の着座部3を所定の温度まで加熱するのに長時間を要するため、ヒーター4には常時通電しており、無駄な電力の消費が多かった。
【0003】
このような無駄な電力消費を削減するために、タイマーによって暖房時間を設定するか、一定時間以上使用されない場合はヒーター4への通電を停止する暖房便座もある。しかし、このような便座は、設定した暖房時間帯で使用されていない間合いでも電力が消費されていたのに加え、暖房時間外に使用した場合は便座が暖房されていないという問題があった。
【0004】
また、コード状のヒーター4は細いため便座2の着座部3の裏面全体に設置することは困難なため、ヒーター4の直上と、ヒーター4の無い部分では温度差が生じていた。
【0005】
これを解決するために、図11に示す瞬間暖房式の暖房便座が提案されている。これはステンレス製の着座面6の裏面に絶縁部材7を介して面状発熱体8、断熱材9、反射体10を加熱押圧して便座本体11に固着形成したものである。面状発熱体8は、ステンレスをパターニングして繰り返し蛇行するように這わせて均一な加熱を実現し、また、断熱材9、反射体10を設けることにより熱の散逸を防止し、着座面6に効果的に伝熱させ着座面6が早く温度上昇するので、図10に示す従来の暖房便座に比べ、格段に電力消費量を低減することができるというものであった(例えば特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、着座面6を短時間で暖房することができる一方、着座面6の温度を制御する温度制御手段(図示せず)に何らかの不具合が生じた場合には温度過昇防止装置が温度の異常を検知するまで時間的な遅れが生じるため、着座面6の温度が上がり過ぎる場合があった。また、便座本体11、反射体10、断熱材9、面状発熱体8、絶縁部材7、着座面6を隙間無く重ねて固着した構成としているため、反射体10では輻射熱は反射できるものの、熱伝導により面状発熱体8からの熱が便座本体11に散逸するため、着座面6を加熱する効率が低下するという課題があった。
【特許文献1】特開2003−125981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の課題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、使用者が便座の着座面に着座するまでの短時間に着座面を均一に加熱するとともに、着座面の温度が上がり過ぎることがない安全な暖房便座を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の暖房便座は、着座部を有する便座と、前記便座の裏面に設けた発熱体と、前記発熱体に接続し、前記便座の異常温度上昇を検知して前記発熱体への通電を遮断する温度過昇防止装置と、前記発熱体の通電を制御して前記着座部の温度を制御する制御部を備え、前記発熱体への通電が開始されると、前記温度過昇
防止装置の感熱部の温度が前記着座部の温度よりも高くなるものである。
【0009】
また、本発明の暖房便座は、着座部を有する便座と、前記便座の裏面に設けた発熱体と、前記発熱体に接続し、前記便座の異常温度上昇を検知して前記発熱体への通電を遮断する温度過昇防止装置と、前記発熱体の通電を制御して前記着座部の温度を制御する制御部を備え、前記発熱体への通電が開始されると、前記温度過昇防止装置の感熱部の温度特性が前記着座部よりも速く上昇するものである。
【0010】
これによって、着座面を均一、かつ効率よく加熱できる。また、便座加熱時、温度過昇防止装置により、着座面の温度の上がり過ぎを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の暖房便座は、着座部を均一、かつ効率よく加熱でき、また着座部の温度の上がり過ぎを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明は、着座部を有する便座と、前記便座の裏面に設けた発熱体と、前記発熱体に接続し、前記便座の異常温度上昇を検知して前記発熱体への通電を遮断する温度過昇防止装置と、前記発熱体の通電を制御して前記着座部の温度を制御する制御部を備え、前記発熱体への通電が開始されると、前記温度過昇防止装置の感熱部の温度が前記着座部の温度よりも高くなる暖房便座である。
【0013】
これにより、発熱体によって着座部が均一に加熱されるので快適な使用感が得られる。また、発熱体から発生した熱は、着座部の加熱に使われるので、着座部を効率よく加熱し、短時間に着座面を加熱することができ、無駄な電力消費を削減することができる。
【0014】
また、発熱体への通電が開始されると、温度過昇防止装置の感熱部の温度が着座部の温度よりも高くなるので、例えば着座部の温度を制御する制御部に何らかの不具合が生じた場合でも、温度過昇防止装置の応答を早くして着座部の温度の上がりすぎを防止することができる。
【0015】
第2の発明は、着座部を有する便座と、前記便座の裏面に設けた発熱体と、前記発熱体に接続し、前記便座の異常温度上昇を検知して前記発熱体への通電を遮断する温度過昇防止装置と、前記発熱体の通電を制御して前記着座部の温度を制御する制御部を備え、前記発熱体への通電が開始されると、前記温度過昇防止装置の感熱部の温度特性が前記着座部よりも速く上昇する暖房便座である。
【0016】
これにより、発熱体によって着座部が均一に加熱されるので快適な使用感が得られる。また、発熱体から発生した熱は、着座部の加熱に使われるので、着座部を効率よく加熱し短時間に着座面を加熱することができ、無駄な電力消費を削減することができる。
【0017】
また、発熱体への通電が開始されると、温度過昇防止装置の感熱部の温度特性が着座部よりも速く上昇するので、例えば着座部の温度を制御する制御部に何らかの不具合が生じた場合でも、温度過昇防止装置の応答を早くして着座部の温度の上がりすぎを防止することができる。
【0018】
第3の発明は、特に第1の発明または第2の発明において、温度過昇防止装置の感熱部が接触する部分は着座部への熱移動が、前記感熱部が接触しない部分よりも少なくすることにより、温度過昇防止装置の感熱部が接触している部分からの着座部への熱移動は、前記感熱部が接触しない部分よりも少ないため速く温度上昇するので、制御部に何らかの不
具合が生じた場合でも、温度過昇防止装置の応答を早くして着座部の温度の上がり過ぎを防止することができる。
【0019】
第4の発明は、特に第1の発明または第2の発明において、温度過昇防止装置の感熱部が接触する部分には、発熱体と着座部との間に断熱部を設けたことにより、この断熱部の作用で温度過昇防止装置の感熱部が接触している部分からの着座部への熱移動が抑制され、前記感熱部が接触しない部分よりも少なくなり速く温度上昇するので、制御部に何らかの不具合が生じた場合でも、温度過昇防止装置の応答を早くして着座部の温度の上がり過ぎを防止することができる。
【0020】
第5の発明は、特に第1の発明または第2の発明において、温度過昇防止装置の感熱部が接触する部分は、前記感熱部が接触しない部分よりも発熱体の電力密度が高くなるように構成したことにより、温度過昇防止装置の感熱部が接触する部分には発熱体の電力密度が高く作用し、前記感熱部が接触しない部分よりも速く温度上昇できるので、制御部に何らかの不具合が生じた場合でも、温度過昇防止装置の応答を早くして着座部の温度の上がり過ぎを防止することができる。
【0021】
第6の発明は、特に第1〜第5のいずれか1つの発明において、温度過昇防止装置の感熱部の温度が、前記温度過昇防止装置のオフ動作温度に達し、遅れて実際に前記温度過昇防止装置のオフ動作が行われる際には、着座部の表面温度が安全限界温度に達していないことにより、着座部の表面温度よりも感熱部の温度が速く上昇して着座部の表面温度が安全限界温度に達する前に温度過昇防止装置が便座の異常温度を検出し発熱体への通電を遮断できる。
【0022】
第7の発明は、特に第1〜第6のいずれか1つの発明において、着座部の温度を検知する着座部温度検知手段と、室温を検知する室温検知手段を備え、制御部は、前記着座部温度検知手段と前記室温検知手段の信号に基づいて前記温度過昇防止装置のオフ動作温度よりも低い便座制御温度で前記着座部の温度を制御することにより、着座部の温度は制御部により常に安全に加温することが可能になる。
【0023】
第8の発明は、特に第1〜第7のいずれか1つの発明において、制御部は、着座部温度検知手段と室温検知手段の信号に基づいて予め設定・記憶している通電制限時間の最適値を選択し、タイマー部の経過時間が前記通電制限時間に達すると通電量を低減または零にしてから、前記室温検知手段の信号を基に着座部が適温になるよう通電量を制御することにより、便座は制御部により室温と着座部の温度に基づき最適な通電制限時間が選ばれて加温され、その後は通電量を低減または零にして温度上昇を減じ着座部温度検知手段の応答が遅くなっても安全に加温することが可能になる。
【0024】
第9の発明は、第8の発明において、室温15℃において発熱体への入力が1.0W/cmにより6秒で便座の制御温度まで上昇できるので、着座部の表面温度を6秒という短時間で加温することが可能になる。
【0025】
本発明の目的は、第1の発明から第9の発明を実施の形態の要部とすることにより達成できるので、各請求項に対応する実施の形態の詳細を、以下に図面を参照しながら説明し、本発明を実施するための最良の形態の説明とする。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、本実施の形態の説明において、同一構成並びに作用効果を奏するところには同一符号を付して重複した説明を行わないものとする。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における暖房便座の概略断面図で、図2は同暖房便座を搭
載したトイレの斜視図で、図3は同暖房便座の発熱体ユニットの概略構成図で、図4は同暖房便座の温度過昇防止装置部分の要部断面図である。図1および図2において、便器20に本体21が取り付けられており、この本体21に暖房機能を有する本発明の便座22および便蓋23が回動自在に設けられている。また、本体21の袖部にはトイレ空間の人体の有無を検知する赤外線センサ24が内装されている。
【0027】
便座22は、合成樹脂製の便座ベ−ス25とステンレス、アルミニウム等で形成された金属性の着座部26からなり、2つの部材をそれぞれの内周縁および外周縁で接合することによって形成し、その内部には水等の浸入を阻止できる密閉された空洞部27を有する構造となっている。
【0028】
上記空洞部27には、便座22の着座部26の裏面に設けた発熱体ユニット28が備えられている。この発熱体ユニット28に接触もしくは近接して発熱体ユニット28と直列に接続された温度過昇防止装置であるサーモスタット29および温度ヒューズ30が設けられており、万一の不安全事態に対して便座22の温度過昇を防止するよう作用する。着座部26の内面にはサーミスタ31が設けられ、着座部26の温度を検知する。
【0029】
本体21には、室温検知手段として室温サーミスタ32が設けられ、サーミスタ31、室温サーミスタ32からの信号はそれぞれマイクロコンピュータ等からなる制御部33に伝達され、これらの信号に基づいて採暖面である着座部26の温度が所定の温度になるよう、発熱体ユニット28への通電が制御部33により制御されるようになっている。
【0030】
赤外線センサ24は、使用者がトイレに入室した場合それを検知し、着座部26の加熱を開始するとともに便蓋23の開閉を行う。また、便座22の底面にはマイクロスイッチ34で構成された着座検知手段35を有しており、便座22への加重でスイッチがオンすることにより使用者の着座を検知するようになっている。例えば、温水洗浄機能を有した暖房便座では、人の着座を検知した時にのみ、洗浄機能が動作する。
【0031】
発熱体ユニット28は、図3に示すように0.1mmの板厚のステンレスを蛇行状にパターニングして形成した発熱体36の両端に電極37を形成し、これにリード線38を溶着した構成としており、さらに、発熱体36の上下両面にフィルム状の絶縁体である上部絶縁体39と下部絶縁体40を接着している。絶縁体としては、可撓性に優れたPPやPETなどの熱可塑性樹脂が使用できる。また、耐熱性が要求される場合は、ポリイミドが好適である。
【0032】
また、温度過昇防止装置であるサーモスタット29は、図4に示すように発熱体ユニット28の一部と着座部26との間に間隙41を介して形成した断熱部42を設け、この断熱部42に対応した部分の発熱体ユニット28に、感熱部43を接触させて設け、異常温度上昇を検知して発熱体ユニット28の通電回路を遮断するものである。
【0033】
そして、サーモスタット29は一般に用いられているバイメタル式が利用可能である。バイメタル式サーモスタットは、使用者が便座の着座面に着座するまでの短時間で着座部26を暖めるために大電流を必要とする場合にも対応ができるとともに、金属の熱膨張率の差を利用した物理的動作で温度過昇防止装置を作動するため安定した動作を得ることができる。
【0034】
上記構成において、使用者がトイレに入室した場合、赤外線センサ24がそれを検知し、その信号が制御部33に送られ、制御部33は発熱体36に通電を開始する。制御部33には、便座22の発熱体36に通電することにより昇温を開始した時点からの経過時間をカウントするタイマー部44が設けられている。
【0035】
制御部33は、通電開始時のサーミスタ31および室温サーミスタ32の信号をもとに、両者の温度差やそれぞれの温度から演算を行い、あらかじめ設定・記憶されている通電制限時間の最適値を選択し、タイマー部44でカウントしている経過時間が通電制限時間に到達すると通電量を低減または零にし、その後サーミスタ31の信号をもとに便座22の着座部26が適温になるよう通電量を制御する。
【0036】
そして、制御部33はサーミスタ31が実際に使用者が触れる着座部26の温度を検知しているので、精度良く適温まで昇温・維持するので快適であり、さらにサーミスタ31および室温サーミスタ32の信号をもとに負荷量に合わせて電力の投入量を制御するので、より精度良く安全に適温まで加熱することができる。また、付勢時間制御を優先的に行うことで通電制限時間後は通電量を低減し昇温速度を減ずるので、温度検知手段の応答速度が遅くても安全に便座を加温することができる。
【0037】
次に、使用者が排便のために着座すると、着座検知手段35の信号により発熱体36への通電量を零または便座温度が過昇しないところまで低減する。これにより、サーミスタ31などが故障しても使用中に便座温度が過昇することなく、火傷等が生じる心配なく安全である。加えて、便座22への着座直前だけ便座加温を行うので、非常に省エネになるものである。
【0038】
なお、ここでは着座検知手段35をマイクロスイッチ34で構成したもので説明したが、回動自在に設けた便座22のヒンジ部等に設けても良く、その場所や構成は種々のものが考えられる。
【0039】
便座22は、熱伝導が良好な金属製の着座部26を有しており、使用者が便座22に着座するまでの極短時間に加温することができるので、ヒーターを常時通電しておくことなく非常に省エネになるとともに、発熱体36は面形状であるため、均一な加熱が可能である。また、便座22内部は空洞部27としているため、空気による断熱効果によって発熱体から発生した熱はほとんど金属の着座部26の加熱に使われるので、着座部26を効率よく加熱し、使用者が便座に着座するまでの短時間に着座部を加熱することができ、無駄な電力消費を削減することができる。
【0040】
以上の説明において、サーミスタ31、室温サーミスタ32、および着座検知手段35によって、便座温度は過昇することは無いと述べたが、本実施の形態では使用者が便座22に着座するまでの極短時間で加温するために、大電力を投入することから、さらに安全に対する配慮を行っている。例えば万一、制御部33に異常が発生した場合でもサーモスタット29で温度の異常を検知して発熱体ユニット28への通電回路自体を遮断し、便座温度の過昇を回避することができる。
【0041】
温度ヒューズ30は、さらにサーモスタット29に不具合が生じた時の安全策として設けられている。図5はサーミスタ31、室温サーミスタ32、着座検知手段35をショートした状態で発熱体ユニット28に通電した場合の温度上昇を示したものである。図5において、曲線(A)は着座部26の表面温度特性であり、室温15℃では発熱体ユニット28への入力約1.0W/cmの場合、約6秒で通常の便座制御温度(T1)までの昇
温が可能である。一方、断熱部42に設けられたサーモスタット29の感熱部43の温度特性は曲線(B)に示すように、断熱部42では着座部26への熱の移動が少ないため着座部26より速くt1時間で便座制御温度(T1)まで上昇する。
【0042】
感熱部43の温度は、さらにサーモスタット29のオフ動作温度(T2)に達するが、
実際にはサーモスタット29に内蔵されているバイメタル45(後述)の温度がオフ動作
温度(T2)に達するまでに遅れが生じることから、実際にオフ動作が行われるのはt2
時間後である。このように遅れが生じても、着座部26よりも感熱部43の温度が速く昇温するので、着座部26の表面温度が安全限界温度(T3)に達する前に便座温度の異常
を検出することができ、火傷等を起こすこと無く、安全に発熱体ユニットの通電回路を遮断することができる。
【0043】
また、断熱部42は、図6に示すように間隙41に断熱体46を挿入する構成としても良い。断熱体46としては必ずしも断熱性の高いセラミック系の材料でなくても良く、硬質の発泡樹脂やPP、PETなど一般的な熱可塑性樹脂材料が使用可能である。このように間隙41に断熱体46を挿入して断熱部42を構成することで、断熱部42の形状を安定させられ、サーモスタット29を断熱部42に安定して固定できるとともに、断熱部42と着座部26の形状を規定するので着座部26の温度と断熱部42(すなわち、感熱部43)との温度差のばらつきを小さくすることができ、温度の異常検知を安定して行うことができる。
【0044】
以上のように本実施の形態では、面状の発熱体により着座部を均一に加熱できるので快適な使用感が得られるとともに、発熱体から発生した熱はほとんど金属の着座部の加熱に使われるので、着座部を効率よく加熱し、使用者が便座の着座部に着座するまでの短時間に着座部を加熱することができ、無駄な電力消費を削減することができる。また、着座部との間に間隙を形成するように断熱部を設けて発熱体ユニットから発生する熱の着座部への熱伝導を抑制するので断熱部に対応する部分を他部よりも早く温度上昇させられるため温度過昇防止装置の応答を早くすることができる。
【0045】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における暖房便座の概略断面図である。本実施の形態は、温度過昇防止装置を、着座部を加熱する発熱体ユニットとは別個に便座内に設けた第2の発熱体ユニットに設けた点で実施の形態1の発明と異なり、それ以外の構成並びに作用効果は同じであり、前記異なる点を中心に説明する。
【0046】
図7に示す構成は、便座22内の一部に断熱材47を介して第2の発熱体ユニット48を設け、前記第2の発熱体ユニット48に温度過昇防止装置であるサーモスタット29を設けた構成としている。第2の発熱体ユニット48は面状に形成した第2の発熱体49の上下両面にフィルム状の第1絶縁体50および第2絶縁体51を接着して形成し、発熱体ユニット28と直列に接続して通電回路を構成している。
【0047】
第2の発熱体ユニット48を設ける位置は、任意であるが、図7では便座ベース25の一部に設けている。そして、第2の発熱体ユニット48は、電力密度を発熱体ユニット28の電力密度より高く設定している。サーモスタット29は、感熱部43を第2の発熱体ユニット48に接触させているが、サーモスタット29を下向きに設定することにより、感熱部43とバイメタル45の間隔が最小となるように構成している。
【0048】
すなわち、バイメタル式サーモスタット29は通常、図8に示すように、円盤状で湾曲したバイメタル45がキャップ52内に収納され、温度上昇によってバイメタルを構成する金属の熱膨張率の差によりバイメタル45が反転し、その時ピン53を押し下げることによって接点(図示せず)を開にして前記通電回路を遮断する構成となっている。バイメタル45とキャップ52間には間隔dが形成されており、急激な温度変化を感知する場合は、この間隔dが大きいとバイメタル45とキャップ52の表面(すなわち感熱部43)との間に温度差が生じ、サーモスタット29の動作に遅れが生じる場合がある。図7の実施の形態では、サーモスタット29を下向きに設定することにより、キャップ52とバイメタル45の間隔dを最小もしくは両者を接触させることにより、サーモスタット29の
動作遅れを低減するので、温度異常時に速やかに、かつ安全に第2の発熱体ユニット29の通電回路を遮断することができる。
【0049】
図9は、図5に示した特性と同様の評価を図7に示す暖房便座の構成で実施した結果である。室温15℃で発熱体ユニット28への入力の電力密度を約1.0W/cm、第2の発熱体ユニット48への入力の電力密度を1.2W/cmとし、着座部26と感熱部43の温度を測定した。曲線(C)は着座部26の表面温度特性、曲線(D)は感熱部43の温度特性を示す。このように第2の発熱体ユニット48への入力の電力密度を、発熱体ユニット28への入力の電力密度より高くすることにより、感熱部43の温度特性は図5の曲線(A)の場合より早く時間t3で通常の便座制御温度(T1)に達する。
【0050】
またサーモスタット29は、下向きに設定して第2の発熱体ユニット48に設け、感熱部43とバイメタル45の間隔が最小となるように構成しているので、サーモスタット29の動作遅れを低減することができ、図5の曲線(A)よりも速い時間t4でかつ、低い
温度で発熱体ユニット28の通電回路を遮断することができる。このとき着座部26の温度は、図9に示すように図5の曲線(A)よりも低い温度で回路が遮断されており、従って図7に示す暖房便座の構成では、より早く、かつ低い温度で安全に回路を遮断することができる。
【0051】
なお、上記各実施の形態では発熱体36および第2の発熱体49を0.1mmの板厚のステンレスをパターニングして形成したものについて説明したが、これに限ったものではなく、例えばパンチングメタル等を利用したものでも良く、また発熱体36および第2の発熱体49を別の工法で製作しても良い。また、上記各実施の形態では着座部26の全体を金属で形成したが、少なくとも使用者の尻が着座する部分だけ金属であっても良いものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように本発明にかかる暖房便座は、着座部を均一に加熱し快適な使用感が得られるとともに、使用時に即座に着座部を加熱することができ、無駄な電力消費を削減することができ、かつ着座部の温度の上がり過ぎを防止でき、使用者が着座する機器の暖房技術として適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1における暖房便座の概略断面図
【図2】同実施の形態1における暖房便座を搭載したトイレの斜視図
【図3】同実施の形態1における暖房便座の発熱体ユニットの概略構成図
【図4】同実施の形態1における暖房便座の温度過昇防止装置の要部断面図
【図5】同実施の形態1における暖房便座の温度特性図
【図6】同実施の形態1における暖房便座の別の要部断面図
【図7】本発明の実施の形態2における暖房便座の概略断面図
【図8】同実施の形態2における暖房便座の温度過昇防止装置の要部断面図
【図9】同実施の形態2における暖房便座の温度特性図
【図10】従来の暖房便座の概略断面図
【図11】従来の別の暖房便座の概略断面図
【符号の説明】
【0054】
22 便座
26 着座部
29 サーモスタット(温度過昇防止装置)
33 制御部
36 発熱体
41 間隙
42 断熱部
43 感熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部を有する便座と、前記便座の裏面に設けた発熱体と、前記発熱体に接続し、前記便座の異常温度上昇を検知して前記発熱体への通電を遮断する温度過昇防止装置と、前記発熱体の通電を制御して前記着座部の温度を制御する制御部を備え、前記発熱体への通電が開始されると、前記温度過昇防止装置の感熱部の温度が前記着座部の温度よりも高くなることを特徴とする暖房便座。
【請求項2】
着座部を有する便座と、前記便座の裏面に設けた発熱体と、前記発熱体に接続し、前記便座の異常温度上昇を検知して前記発熱体への通電を遮断する温度過昇防止装置と、前記発熱体の通電を制御して前記着座部の温度を制御する制御部を備え、前記発熱体への通電が開始されると、前記温度過昇防止装置の感熱部の温度特性が前記着座部よりも速く上昇することを特徴とする暖房便座。
【請求項3】
温度過昇防止装置の感熱部が接触する部分は着座部への熱移動が、前記感熱部が接触しない部分よりも少ない請求項1または2に記載の暖房便座。
【請求項4】
温度過昇防止装置の感熱部が接触する部分には、発熱体と着座部との間に断熱部を設けた請求項1または2に記載の暖房便座。
【請求項5】
温度過昇防止装置の感熱部が接触する部分は、前記感熱部が接触しない部分よりも発熱体の電力密度が高くなるように構成した請求項1または2に記載の暖房便座。
【請求項6】
温度過昇防止装置の感熱部の温度が、前記温度過昇防止装置のオフ動作温度に達し、遅れて実際に前記温度過昇防止装置のオフ動作が行われる際には、着座部の表面温度が安全限界温度に達していない請求項1〜5のいずれか1項に記載の暖房便座。
【請求項7】
着座部の温度を検知する着座部温度検知手段と、室温を検知する室温検知手段を備え、制御部は、前記着座部温度検知手段と前記室温検知手段の信号に基づいて前記温度過昇防止装置のオフ動作温度よりも低い便座制御温度で前記着座部の温度を制御する請求項1〜6のいずれか1項に記載の暖房便座。
【請求項8】
制御部は、着座部温度検知手段と室温検知手段の信号に基づいて予め設定・記憶している通電制限時間の最適値を選択し、タイマー部の経過時間が前記通電制限時間に達すると通電量を低減または零にしてから、前記室温検知手段の信号を基に着座部が適温になるよう通電量を制御する請求項1〜7のいずれか1項に記載の暖房便座。
【請求項9】
室温15℃において発熱体への入力が1.0W/cmにより6秒で便座の制御温度になる請求項8に記載の暖房便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−252941(P2007−252941A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133729(P2007−133729)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【分割の表示】特願2004−3849(P2004−3849)の分割
【原出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】