説明

曝気攪拌システムの運転方法

【課題】槽底部に配設する散気板と上下噴出式攪拌機とを組み合わせて用い、汚水中に散気した気泡の滞留時間を長くして酸素溶解効率を向上させるようにした曝気攪拌システムの運転方法を提供すること。
【解決手段】槽底部に配設する散気板Bからの散気量に合わせて上下噴出式攪拌機Aの攪拌力を、散気板Bから散気した気泡の滞留時間が長くなるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曝気攪拌システムの運転方法に関し、特に、水処理施設の曝気槽内に配設する攪拌機にて槽内底部まで充分な流速を発生させて槽内底部に固形物を沈殿させることなく攪拌するとともに、槽底部に配設する散気板より供給される散気用の気泡の滞留時間を長く保持させることにより汚水の曝気と攪拌を効率的に行うようにした曝気攪拌システムの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理場等に設置された下水処理槽(曝気槽)内の液体(汚水)を、好気処理を行う場合、曝気槽Cの槽底部に散気板Bを配設し、これにブロアー等にて空気を供給して散気板Bから微細気泡を噴出又は吐出させ、汚水中に酸素を供給(導入)するようにするとともに、上下噴出式攪拌機Aにて曝気槽内全体の汚水を強制的に攪拌することで、槽底部に汚泥など固形物の沈殿やスカムの浮遊を防止し、かつ汚水中に導入する酸素にて汚水を好気処理することができる。
【0003】
この汚水を攪拌する手段として各種の方法、例えば、水中に配設する筒状のケーシング内でインペラを回転させて槽内の汚水をその吸込口よりケーシング内に吸い込み、吐出口より再び槽内に吐出し、この汚水の吐出力(噴出力)を利用して槽内全体を攪拌する方法、水槽の中位層から汚水を吸い込み、これを上層と下層から吐出(噴き出し)するようにした上下噴出式攪拌機にて槽内に対流惹起を起こさせる方法等が提案されている。
しかしながら、いずれの攪拌方法であっても槽内全体を攪拌するとともに槽底部に汚泥など固形物の沈殿を防止するためには、固形物の沈殿を抑制するだけの水流速、これは特に限定されるものではないが、例えば、槽底部の流速0.1m/sec以上を槽底部に発生させることが必要である。
【0004】
さらに、槽底部に配設した散気板Bから供給される微細気泡はその浮力により汚水中を浮上するが、この場合、上下噴出式攪拌機Aによる下部方向への水流と該散気板からの気泡の浮力とが同一方向に作用するものとなり、これにより気泡が早く浮上するものとなって汚水中の滞留時間が短くなるという問題があった。
また、上下噴出式攪拌機Aにより水槽の中位層から汚水を吸い込み、この上向流を上層に、下向流を下層に吐出(噴き出し)して槽内に対流惹起を起こさせる場合でも、図3に示すように、散気板Bからの気泡の浮力が該攪拌機による上下攪拌流に作用するようになり、攪拌機による上下攪拌流量のバランスが崩れ、散気板からの気泡が早めに浮上して汚水中の滞留時間が短くなり、酸素移動効率が悪いという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、曝気攪拌システムの有する問題点に鑑み、槽底部に配設する散気板と上下噴出式攪拌機とを組み合わせて用い、汚水中に散気した気泡の滞留時間を長くして酸素溶解効率を向上させるようにした曝気攪拌システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の曝気攪拌システムの運転方法は、槽底部に配設する散気板からの散気量に合わせて上下噴出式攪拌機の攪拌力を、散気板から散気した気泡の滞留時間が長くなるように制御するようにしたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、散気板の散気量に合わせて上下噴出式攪拌機による上下流量の制御を、それぞれ独立して行うようにすることができる。
【0008】
また、上下噴出式攪拌機のインペラ軸回転数を、上下別々に制御するようにすることができる。
【0009】
また、上下噴出式攪拌機のインペラの上流側に気泡ノズルを備えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の曝気攪拌システムの運転方法によれば、槽底部に配設する散気板からの散気量に合わせて上下噴出式攪拌機の攪拌力を、散気板から散気した気泡の滞留時間が長くなるように制御するようにすることにより、上下噴出式攪拌機による上下攪拌流量のバランスが崩れることなく下部流量を制御できるので、上部の攪拌流量により気泡の浮上が押さえ込まれるようになって気泡滞留時間が飛躍的に延び、酸素移動効率を向上させることができる。
【0011】
また、散気板の散気量に合わせて上下噴出式攪拌機による上下流量の制御を、それぞれ独立して行うようにすることにより、散気板の散気量及び気泡粒径に適した上部の攪拌流量を設定できるので、気泡量、気泡状態などに関係なく常に気泡の浮上を押さえ込み、気泡滞留時間を長くして酸素移動効率を向上させることができる。
【0012】
また、上下噴出式攪拌機のインペラ軸回転数を、上下別々に制御するようにすることにより、上下噴出式攪拌機による上下流量の制御が簡易に行うことができる。
【0013】
また、上下噴出式攪拌機のインペラの上流側に気泡ノズルを備えるようにすることにより、気泡ノズルからの気泡と汚水とを同時に吸い込むことができるので酸素移動効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の曝気攪拌システムの運転方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図2に、本発明の曝気攪拌システムの運転方法の一実施例を示す。
本発明の曝気攪拌システムは、下水処理場等に設置された曝気槽C内の所定位置に垂設する上下噴出式攪拌機Aと、曝気槽Cの槽底部から所定の間隔をあけた位置に配設した散気板Bとより構成し、上下噴出式攪拌機Aは、曝気槽C内に自立させるか或いは架台にて支持するようにする。
【0016】
上下噴出式攪拌機Aは、特に限定されるものではないが、例えば、図2に示すように、下端部に上部インペラ2を取り付けたパイプ形の上部インペラ駆動軸1内に、下端部に下部インペラ4を取り付けた下部インペラ駆動軸3を挿通するようにした2本の駆動軸を同心的に配設し、これら2本の上下両インペラ駆動軸1、3をモータMにて駆動されるようにするとともに、この上部インペラ2と下部インペラ4との間には予め定めた距離をあけて、それぞれその外周を覆うようにして上部パイプ5、下部パイプ6を外嵌するようにして構成する。
また、散気板Bは、平面状で、曝気槽C内に略均一に散気を行うことができるもので、本実施例においては、曝気槽Cの平面形状と相似形で、中心部(上下噴出式攪拌機Aの下方)に、上下噴出式攪拌機Aによって吐出された下降流を槽内下層部に到達させるための開口部を形成するようにしている。
【0017】
この上部パイプ5と下部パイプ6との間には外周部に吸込口51、61を形成したケーシング7を配設し、このケーシング7にて上部パイプ5と下部パイプ6とを上下に接続し、上部パイプ5の上端に吐出口52を、下部パイプ6の下端に吐出口62をそれぞれ形成する。これにより、上部パイプ5内にて回転する上部インペラ2と下部パイプ6内にて回転する下部インペラ4にてそれぞれケーシング7の吸込口51、61より個別的に槽内汚水を吸い込み、上下部両パイプの上端と下端とより、すなわち、上向流を槽内上層部へ、下降流を槽内下層部にそれぞれ吐出するようにする。
【0018】
なお、ケーシング7内には平板状の仕切板71を配設し、ケーシング7の外周部に形成する吸込口51、61を上下に分けられるようにする。これにより、仕切板71より上部の吸込口51より吸い込んだ汚水は上部パイプ5内を上昇してその吐出口52から、また仕切板71より下部の吸込口61より吸い込んだ汚水は下部パイプ6内を降下してその吐出口62からそれぞれ吐出するようにする。
また、ケーシング7内には下部インペラ駆動軸3を支持する軸受31と吸込口51、61より吸い込まれた汚水をそれぞれ上部パイプ5内と下部パイプ6内へ円滑に導かれるようにする整流マウンド8を配設する。
上部パイプ5の上部は、吐出口52を形成するもステーなどを介してフレーム11に接続する。このフレーム11にはモータM、変速装置T等を備え、前記インペラ駆動軸を駆動するようにするとともに、該フレーム11の下部に渦消を兼ねた消波板9を、水面下でほぼ水平になるようにして配設する。
なお、この消波板9の下面には、必要に応じて逆円錐形の整流マウンド10を取り付け、これにより上部パイプ5内を上昇してきた汚水を吐出口52より整流マウンド10に沿って、放射方向にほぼ均一になって噴出されるようにする。
【0019】
また、水槽の単位容積当たりの投入動力を抑えながら、槽底部に汚泥などの固形物が沈殿することがないようにするため、下部パイプ6の吐出口62より噴出される水流速を、汚泥などの固形物の沈殿を防止する流速、特に限定されるものではないが、例えば、槽底部の流速0.1m/secを確保することができるように、上部インペラ2及び下部インペラ4の回転による上端の吐出口52から吐出する流量と下端の吐出口62から吐出する流量比を最適なものとなるよう定めるものとする。
なお、上下噴出式攪拌機Aによる上部インペラ2と下部インペラ4の回転数を制御することで上下噴出式攪拌機Aの攪拌力の制御、上下流量の制御等を行うようにするが、これは特に限定されるものではなく、上下両インペラ軸回転数を上下別々に制御するようにすることもできる。また、上部インペラ2と下部インペラ4のピッチを変えたり、上部インペラ2と下部インペラ4のブレードの捻り方向を相反するように形成することにより上下流量の制御をすることができる。
【0020】
次に、本発明の曝気攪拌システムの運転方法の作用について説明する。
曝気槽Cの槽底部の所定位置に配設する散気板Bとより散気すると微細気泡が汚水中に噴出され、曝気槽内を浮上するとともに、上下噴出式攪拌機Aの駆動にて回転する上部インペラ2と下部インペラ4にて曝気槽C内の汚水を吸込口51、61より個別的に上部パイプ5及び下部パイプ6内に吸い込み、攪拌されつつ上部パイプ5内を上向流となって槽内上層部へ、また下部パイプ6内を下降流となって槽内下層部へそれぞれ吐出される。
【0021】
この場合、槽底部に配設する散気板Bからの散気量に合わせて上下噴出式攪拌機Aの攪拌力を、散気板Bから散気した気泡の滞留時間が長くなるように制御するようにすることから、上下噴出式攪拌機Aによる上下攪拌流量のバランスが崩れることなく下部流量(下降流)を制御できるので、図1に示すように、浮上してくる気泡の上部から攪拌流により押さえ込まれるようになって気泡の浮上が阻止されるようになり気泡滞留時間が飛躍的に延びるようになる。これにより酸素移動効率が向上するものとなる。
【0022】
また、散気板Bの散気量に合わせて上下噴出式攪拌機Aによる上下流量の制御を、インペラ軸回転数を上下別々に制御する等によってそれぞれ独立して行うことにより、散気板Bの散気量及び気泡粒径に適した上部の攪拌流量を設定して気泡量、気泡状態などに関係なく常に気泡の浮上を押さえ込むことができる。
【0023】
また、上下噴出式攪拌機のインペラの上流側に気泡ノズルを備えることにより、気泡ノズルからの気泡と汚水とをケーシング内に同時に吸い込むことができるので、さらに酸素移動効率を向上させることができる。
【0024】
以上、本発明の曝気攪拌システムの運転方法について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の曝気攪拌システムの運転方法は、散気板と上下噴出式攪拌機とを組み合わせ、かつ散気板の散気量に合わせて上下噴出式攪拌機の攪拌力を制御することで、汚水中に散気した気泡の滞留時間を長くして酸素溶解効率を向上するという特性を有していることから、下水処理の用途に好適に用いることができるほか、例えば、化学機械、食品混合の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の曝気攪拌システムの運転方法の一実施例を示す汚水の攪拌説明図である。
【図2】本発明の曝気攪拌システムに用いる上下噴出式攪拌機の縦断面図である。
【図3】曝気攪拌システムにおける従来の運転方法による汚水の攪拌説明図である。
【符号の説明】
【0027】
A 上下噴出式攪拌機
B 散気板
C 曝気槽
M モータ
1 上部インペラ駆動軸
2 上部インペラ
3 下部インペラ駆動軸
4 下部インペラ
5 上部パイプ
51 吸込口
52 吐出口
6 下部パイプ
61 吸込口
62 吐出口
7 ケーシング
71 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽底部に配設する散気板からの散気量に合わせて上下噴出式攪拌機の攪拌力を、散気板から散気した気泡の滞留時間が長くなるように制御するようにしたことを特徴とする曝気攪拌システムの運転方法。
【請求項2】
散気板の散気量に合わせて上下噴出式攪拌機による上下流量の制御を、それぞれ独立して行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の曝気攪拌システムの運転方法。
【請求項3】
上下噴出式攪拌機のインペラ軸回転数を、上下別々に制御するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の曝気攪拌システムの運転方法。
【請求項4】
上下噴出式攪拌機のインペラの上流側に気泡ノズルを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の曝気攪拌システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−296169(P2008−296169A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147026(P2007−147026)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】