説明

更生管路検査方法及び更生管路検査工程を含む管路更生工法

【課題】老朽管更生時に視覚的調査で発見が困難な未硬化部やピンホールを効果的に検出出来る検査方法と、この検査方法を含む管路更生工法により未硬化部やピンホールのない更生管路を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂を含浸させた管状樹脂吸収材からなるライニング材を管路内に挿入し、前記ライニング材の内部を加熱及び加圧して硬化させる管路の欠陥部検査方法であって、前記管路と前記ライニング材の線膨張係数の差を利用して前記既設管路と前記ライニング材の間に隙間を形成する段階と、前記隙間に水を充填する段階と、前記ライニング材の未硬化部またはピンホールからの水漏れがあるか否かを検査する段階と、を含み、前記ライニング材の線膨張係数は、既設管路の線膨張係数より大きく、ライニング材施工後の冷却時の前記ライニング材と前記既設管路との収縮差により既設管路と前記ライニング材の間に隙間が形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、更生管路検査方法及び更生管路検査工程を含む管路更生工法に係り、より詳しくは、上水道管、下水道管、工業用水路、農業用水路、等の管路更生時の更生管路の検査方法及び更生管路検査工程を含む管路更生工法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽管路の更生法としては、特開平4−336229に記載されている方法がある。これは、熱硬化性樹脂を含浸させた管状ライニング材を空気圧によって老朽管内で膨張させて老朽管内周面に押圧し、この状態を保ったまま、管状ライニング材の内側に温水を噴射して、管状ライニング材に含浸された熱硬化性樹脂を硬化させる方法である。
【0003】
この方法は、画期的な管路更生法として広く利用されているが、管路更生後のライニング材に未硬化部の残存することがあり、また、施工中の取扱いに起因するピンホールの発生があった。
このような局部的な未硬化部やピンホールは、ライニング後に管内で目視またはTVカメラで発見することが極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−336229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、老朽管更生時に視覚的調査で発見が困難な未硬化部やピンホールを効果的に検出出来る検査方法と、この検査方法を含む管路更生工法により未硬化部やピンホールのない更生管路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、硬化性樹脂を含浸させた管状樹脂吸収材からなるライニング材を管路内に挿入し、前記ライニング材の内部を加熱及び加圧して硬化させる管路の欠陥部検査方法であって、
前記管路と前記ライニング材の線膨張係数の差を利用して前記既設管路と前記ライニング材の間に隙間を形成する段階と、前記隙間に水を充填する段階と、前記ライニング材の未硬化部またはピンホールからの水漏れがあるか否かを検査する段階と、を含むことを特徴とする。
【0007】
前記ライニング材の線膨張係数は、既設管路の線膨張係数より大きく、ライニング材施工後の冷却時の前記ライニング材と前記既設管路との収縮差により既設管路と前記ライニング材の間に隙間が形成されることを特徴とする。
【0008】
前記隙間に充填する前記水は、着色されており、また、加圧水であることを特徴とする。
【0009】
前記ライニング材には、内周がねじ切りされた複数の孔が設けられ、前記孔には水及び充填剤注入用のパイプ及び前記隙間内圧力測定用の圧力測定用パイプが取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、硬化性樹脂を含浸させた管状樹脂吸収材からなるライニング材を管路内に挿入し、前記ライニング材の内部を加熱及び加圧して硬化させる管路の欠陥部検査方法が含まれる管路更生工法であって、
前記管路と前記ライニング材の線膨張係数の差を利用して前記既設管路と前記ライニング材の間に隙間を形成する段階と、前記隙間に水を充填する段階と、前記ライニング材の未硬化部またはピンホール発生部からの水漏れがあるか否かを検査する段階と、前記検査段階で検出された前記ライニング材の未硬化部またはピンホール発生部を充填剤で補修する段階と、既設管路と前記ライニング材の間の隙間に充填剤を注入する段階と、前記充填口に充填剤を注入する段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の更生管路検査方法によれば、既設管路とライニング材の間に隙間を形成し、その隙間に着色した加圧水を注入することにより、ライニング材の未硬化部またはピンホール発生部が簡単にしかも確実に検出できる。
また、本発明の更生管路検査工程を含む管路更生工法によれば、未硬化部やピンホールのない更生管路が提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるライニング材施工状況を示す図である。
【図2】本発明による更生管路の検査状況を示す長手方向断面図である。
【図3】本発明による更生管路の検査状況を示す円周方向断面図である。
【図4】本発明による更生管路のライニング材の孔設置状況を示す図である。
【図5】本発明による更生管路の充填剤の充填状況を示す図である。
【図6】本発明による更生管路のライニング材の孔修復状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、図面を参照して詳しく説明する。
図1は本発明によるライニング材施工状況を示す図、図2は本発明による更生管路の検査状況を示す長手方向断面図、図3は本発明による更生管路の検査状況を示す円周方向断面図、図4は本発明による更生管路のライニング材の孔設置状況を示す図、図5は本発明による更生管路の充填剤の充填状況を示す図、図6は本発明による更生管路のライニング材の孔修復状況を示す図である。
【0014】
図1に示す通り、既設老朽管1の内部には熱硬化性樹脂を含浸させ、かつその内面が気密性の高いフィルムで被覆された可撓性の管状ライニング材2が反転挿入又は引き込まれる。この管状ライニング材2は、不織布を管状に縫製した可撓性の樹脂吸収材に老朽管1に引き込む前に予め熱硬化性樹脂を含浸させたものであるが、老朽管1に反転挿入又は引き込んだ後に硬化性樹脂を含浸させてもよい。
【0015】
老朽管1に引き込まれた管状ライニング材2の先端はシールされており、管状ライニング材2の内部には注水用のシャワーホース3,排水ホース4、加圧用の空気注入管10が挿入されている。シャワーホース3は、温水槽5,ポンプ7,ボイラー6を経由して管状ライニング材2を加熱するための温水が供給される。
管状ライニング材2には、圧力計9も挿入されており、管状ライニング材2内部の圧力を監視しながらコンプレッサー8から空気注入管10を経て管状ライニング材2内に圧縮空気を送り込むようになっている。
【0016】
エアコンプレッサー8を駆動して管状ライニング材2の内部に所定圧の圧縮空気が供給されると管状ライニング材2は空気圧によって膨張し図1に示すように老朽管1の内周面に押圧される。
この状態で温水槽5に繋がるポンプ7を駆動するとボイラー6によって所定の温度に加熱された温水がシャワーホース3の噴出口から管状ライニング材2の内周面に向かって噴出する。
管状ライニング材2は、内側から温水の噴射を受けて管状ライニング材2に含浸された熱硬化性樹脂が硬化し、老朽管1の内周は硬化した樹脂ライニング材によってライニングされ補修される。
噴射によって管状ライニング材2を加温した温水は管状ライニング材2の底部に溜まり、図1に示す排水ホース4から温水槽5に戻される。
ライニング材の厚さは、3.0〜50.0mmまで0.5mmピッチで製作することが出来、管径対内張の比であるSDR(D/t)=25〜100の範囲で行われている。
【0017】
本発明は、老朽管1と管状ライニング材2の間に隙間を設け、この隙間に水を充填してライニング材2の未硬化部またはピンホールからの水漏れがあるか否かを検査する更生管路検査方法であるため、老朽管1と管状ライニング材2の線膨張係数の選定が重要である。即ち、管状ライニング材2の線膨張係数が老朽管1の線膨張係数より大きいことが必要であるため、老朽管1の材質により管状ライニング材2の材質を選定する必要がある。
【0018】
例えば、管路1がコンクリート製であれば、コンクリートの線膨張係数は1.0×10−5/℃であるため、管状ライニング材2を、樹脂吸収材をポリエステルファイバー、熱硬化性樹脂をポリエステルとすれば硬化後の線膨張係数が9.0×10−5/℃となり条件に適合する。
また、樹脂吸収材にグラスファイバーを複合し、熱硬化性樹脂をポリエステルとした場合も硬化後の線膨張係数が3.0×10−5/℃となり条件に適合する。
【0019】
ライニング材は、ポリエステルファイバーまたはポリエステルファイバーにグラスファイバーを複合した不織布を樹脂吸収材とし、樹脂吸収材の外表面をポリエチレンフィルムで気密が確保出来るように覆って管状に加工する。管状に加工された樹脂吸収材に液状のポリエステル樹脂、ビニールエステル樹脂、または、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させる。
ライニング材は、反転あるいは引き込みによって管路1に挿入される。
前述の通り、管状ライニング材2は、内側から温水の噴射を受けて管状ライニング材2に含浸された熱硬化性樹脂が硬化する。
この際使用される熱媒体は温水、温水シャワー、スチーム、熱風等である。
【0020】
管状ライニング材2硬化後の管路1と管状ライニング材2の間の隙間は、狭すぎると水や充填剤の注入が困難であり、大きすぎると充填剤の充填量が増加するため効率的でない。そこで、隙間の大きさが、管路1の直径の0.1〜0.6%になるように管状ライニング材2の材質及び加熱温度を調節する。加熱時には、熱硬化性樹脂の急反応による反応熱発生を防ぐため硬化スケジュールを定め調節する。
管路1と管状ライニング材2は、加熱による施工が終了すると常温まで温度が低下して熱収縮が発生し、管路1と管状ライニング材2の熱収縮の差により管路1と管状ライニング材2の間に隙間が発生する。熱収縮は、管路1の円周方向以外に長さ方向にも発生する。
【0021】
本発明による更生管路検査方法では、管路1の中に人が入って管状ライニング材2に孔を明ける必要があるため、管路1のサイズは殆どの場合人が入れるサイズである。
管状ライニング材2の硬化が終了した後、図2,3に示す通り、管底部には水及び充填剤注入孔16を、管頂部にはエア抜きパイプ11及び圧力測定用パイプ12の挿入孔14,15を長さ方向に約10mピッチで設ける。
【0022】
水及び充填剤注入孔16及び圧力測定用パイプ12の挿入孔14,15は、電気ドリルやエアドリルなどに着装したホルソーで穿孔し、先端がテーパ状のタップでねじを切った後に先端がテーパ状でない(先端がフラット)タップでねじを切る。これにより図4に示す通り、管状ライニング材2の外周面までねじ切りができる。
ねじ切りが終了後、バルブ付きパイプの先端にオスネジを設けた水及び充填剤注入パイプ13、エア抜きパイプ11及び圧力測定用パイプ12を設置する。
【0023】
水及び充填剤注入孔16及びエア抜きパイプ11、圧力測定用パイプ12の挿入孔14,15にパイプを装着した後、図5に示す通り、水及び充填剤注入孔16から着色した水を管路1と管状ライニング材2の間の隙間に注入する。水の着色には、植物の汁、泥、鉄さび、炭、動物の汁など無害の着色剤を使用する。
水の注入に当たっては供給水の圧力を調節するとともに、管状ライニング材2が座屈しないよう圧力計17で隙間内の圧力を監視する。
水の注入とともに、エア抜きパイプ11からエアを排出する。
【0024】
ライニング材の未硬化部やピンホールが発見された場合には、該当する部分の補修を行う。補修が終了した後、管路1と管状ライニング材2の間の隙間に水及び充填剤注入パイプ13を通じて充填剤18を注入する。
充填剤は、主に無収縮セメントミルク、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が使用される。
充填剤は、ポンプにより直接注入してもよいが、注入量が少量の場合は充填剤タンクに充填剤を入れ、タンク内をコンプレッサーからの加圧空気により加圧して充填してもよい。充填剤は、充填効率を上げるために温度コントロールする。
【0025】
充填中の管路内の温度は、管の温度より低い方がよい。これは、充填中のライニング材をできるだけ冷却しておくことにより管路1と管状ライニング材2の間の隙間が大きく保たれ、充填が終了するとライニング材が少し膨張することにより管との結合力を向上させることができるからである。
充填が終了した後、エア抜きパイプ11、圧力測定用パイプ12の挿入孔14,15、及び水及び充填剤注入孔16などの各種孔を修復する。
先ず、孔に取り付けたパイプを除去し、図6に示す通り、ライニング材の外周面部の充填剤を凹状に切り取る。ライニング材の内面は表面をテーパ状に切り取る。その後エポキシ樹脂にグラスファイバーを混合して作る樹脂パテで孔を詰める。樹脂パテを詰める前に、詰める場所にエポキシ系プライマーを塗布し、プライマーの硬化が完了した後に樹脂パテを孔に詰める。
【0026】
本発明によれば、既設管路とライニング材の間に隙間を形成し、その隙間に着色した加圧水を注入することにより、ライニング材の未硬化部またはピンホール発生部が簡単にしかも確実に検出できる。
検出後は未硬化部またはピンホール発生部を補修し、検出に使用したエア抜きパイプ11、圧力測定用パイプ12の挿入孔14,15、及び水及び充填剤注入孔16などの各種孔を修復することにより管状ライニング材2を欠陥のない状態に復元出来る。
【符号の説明】
【0027】
1 管路、老朽管
2 管状ライニング材
3 シャワーホース
4 排水ホース
5 温水槽
6 ボイラー
7 ポンプ
8 エアコンプレッサー
9、17 圧力計
10 空気注入管
11 エア抜きパイプ
12 圧力測定用パイプ
13 水及び充填剤注入パイプ
14,15 挿入孔
16 水及び充填剤注入孔
18 充填剤

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂を含浸させた管状樹脂吸収材からなるライニング材を管路内に挿入し、前記ライニング材の内部を加熱及び加圧して硬化させる管路の欠陥部検査方法であって、
前記管路と前記ライニング材の線膨張係数の差を利用して前記既設管路と前記ライニング材の間に隙間を形成する段階と、
前記隙間に水を充填する段階と、
前記ライニング材の未硬化部またはピンホールからの水漏れがあるか否かを検査する段階と、
を含むことを特徴とする更生管路検査方法。
【請求項2】
前記ライニング材の線膨張係数は、既設管路の線膨張係数より大きく、ライニング材施工後の冷却時の前記ライニング材と前記既設管路との収縮差により既設管路と前記ライニング材の間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1に記載の更生管路検査方法。
【請求項3】
前記隙間に充填する前記水は、着色されていることを特徴とする請求項1に記載の更生管路検査方法。
【請求項4】
前記隙間に充填する前記水は、加圧水であることを特徴とする請求項1に記載の更生管路検査方法。
【請求項5】
前記ライニング材には、内周がねじ切りされた複数の孔が設けられ、前記孔には水及び充填剤注入用のパイプ及び前記隙間内圧力測定用の圧力測定用パイプが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の更生管路検査方法。
【請求項6】
硬化性樹脂を含浸させた管状樹脂吸収材からなるライニング材を管路内に挿入し、前記ライニング材の内部を加熱及び加圧して硬化させる管路の欠陥部検査方法が含まれる管路更生工法であって、
前記管路と前記ライニング材の線膨張係数の差を利用して前記既設管路と前記ライニング材の間に隙間を形成する段階と、
前記隙間に水を充填する段階と、
前記ライニング材の未硬化部またはピンホール発生部からの水漏れがあるか否かを検査する段階と、
前記検査段階で検出された前記ライニング材の未硬化部またはピンホール発生部を充填剤で補修する段階と、
既設管路と前記ライニング材の間の隙間に充填剤を注入する段階と、
前記充填口に充填剤を注入する段階と、
を含むことを特徴とする更生管路検査工程を含む管路更生工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−66471(P2012−66471A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212819(P2010−212819)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(591240951)有限会社横島 (19)
【出願人】(391047190)岡三リビック株式会社 (20)
【Fターム(参考)】