説明

最適値取得装置、最適値取得プログラム、最適値取得方法、キャリブレーション装置、キャリブレーションプログラムおよびキャリブレーション方法

【課題】 ノイズに影響を与える複数種類のパラメータを確実かつ効率的に最適な値に設定することが困難であった。
【解決手段】 印刷装置を駆動する際に最適なパラメータの値を取得するにあたり、少なくとも2種類以上のパラメータを設定して駆動する印刷装置に対して1種類のパラメータを逐次変更しながら設定してパッチを印刷させ、当該パッチについてその記録材の分布を示す分布情報を取得し、同取得した分布情報に基づいてノイズを抑えるために上記逐次変更した種類のパラメータとして設定すべきパラメータ値を取得する処理において、ノイズの発生程度に相対的に大きく影響を与える種類のパラメータについては相対的に小さく影響を与える種類のパラメータより先に処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズを抑えるパラメータを取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の印刷装置においては、最もノイズが少ない状態で印刷を実行できるように、製品出荷前の工程やエンドユーザの操作によってキャリブレーションを実施する。キャリブレーションを実施するためにはノイズの発生状況を検出し、どのような設定で駆動すれば最もノイズを抑えられるのか把握する必要がある。このようなノイズの検出手法としては、例えば、主走査方向(用紙送りと直角の方向)に何らかの周期性を伴って生じるバンディングノイズを検出する技術が知られている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−219158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の技術においては、ノイズに影響を与える複数種類のパラメータを確実かつ効率的に最適な値に設定することが困難であった。
すなわち、上述の技術においては、あるパラメータ値におけるバンディングノイズを評価することができるものの、ノイズに影響を与えるパラメータが複数種類存在する場合に各パラメータを確実かつ効率的に最適な値に設定することはできない。より具体的には、複数種類のパラメータについて闇雲にパラメータ値を変更しても、ある種類のパラメータの変更により他の種類のパラメータについて設定済みのパラメータ値が最適とは言えなくなるなど、ノイズを最も抑えるパラメータ値の組み合わせを取得することは困難であった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、複数種類のパラメータを確実かつ効率的に最適な値に設定する最適値取得装置、最適値取得プログラム、最適値取得方法、キャリブレーション装置、キャリブレーションプログラムおよびキャリブレーション方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明においては、ある種類のパラメータについてそのパラメータ値を変更できるように構成し、各パラメータ値によってパッチを印刷する。この結果、複数のパラメータ値によって印刷されたパッチが得られる。得られたパッチにおいては、各パラメータ値を反映した分布で記録材が記録されているので、この分布を示す分布情報を参照すれば、各パッチにおけるノイズの発生程度を評価することができる。従って、この評価によれば、最もノイズを抑えるために設定すべきパラメータ値を取得することができる。
【0005】
本発明における印刷装置は、少なくとも2種類以上のパラメータを設定して駆動可能であり、上記パッチの印刷を複数種類のパラメータのそれぞれについて実施すれば、各種類のパラメータにおいてその設定値(パラメータ値)を逐次変更して印刷したパッチが得られる。従って、上記印刷手段とパラメータ値取得手段とによる処理を繰り返すことにより、各種類のパラメータにおいて最もノイズを抑えられるパラメータ値を取得することができる。
【0006】
但し、本発明においては、上記印刷手段とパラメータ値取得手段とによる処理にてある種類のパラメータについて設定すべきパラメータ値を取得し、このパラメータ値に設定した状態で、さらに他の種類のパラメータについて設定すべきパラメータを取得するにあたり、先に設定すべき種類のパラメータを特定している。これにより、複数種類のパラメータを確実かつ効率的に最適な値に設定することができる。
【0007】
すなわち、パラメータ値の変更によって通常はノイズの発生程度が変化するが、パラメータの種類毎にノイズの発生程度に対する影響度合いを比較すると、パラメータ値の変更がノイズの発生程度に与える影響度合いが異なる。従って、パラメータの種類毎にノイズの発生程度に相対的に大きく影響を与えるパラメータであるのか相対的に小さな影響であるのかを定義することができる。パラメータが2種類であれば相対的に大きい場合と小さい場合とになるが、パラメータが2種類以上であれば影響を与える度合いに順序が与えられることになる。
【0008】
いずれにしても、パラメータの種類毎にノイズの発生程度に与える影響度合いを定義することができ、ノイズの発生程度に相対的に大きく影響を与える種類のパラメータについては相対的に小さく影響を与える種類のパラメータより先に上記印刷手段とパラメータ値取得手段とによる処理を行う。ノイズの発生程度に相対的に大きく影響を与える種類のパラメータ(種類Aとよぶ)についてノイズを抑えるパラメータ値を取得し、この値に固定すれば、種類Aのパラメータに起因して発生し得るノイズは最も小さな発生程度となるようにすることができる。
【0009】
従って、それ以後、相対的に小さな影響を与える種類のパラメータ(種類Bとよぶ)についてノイズを抑えるパラメータ値を変更したとしても、種類Aのパラメータに起因して発生し得る程度の大きなノイズ変動は生じない。しかも、種類Bのパラメータに起因して発生し得るノイズを最も小さな発生程度となるようにすることができる。この結果、種類Aと種類Bのパラメータ値を組み合わせた状況でノイズの発生程度がほぼ極小になるように設定することができる。
【0010】
尚、ノイズには、主走査方向に略平行に生じるバンディングノイズ(副走査方向に周期的に発生するノイズ)やパッチに付着したごみに起因するノイズ(ごみが付着したまま読み取りを行うことによって形成されるノイズ)や読み取り時のノイズ、パッチ印刷時にランダムに記録されたノイズ等を含む。上記分布情報は記録材の分布を示すものであり、パッチに含まれるノイズや分布情報を取得する際のノイズによって分布情報が影響を受ける。従って、分布情報を取得すれば、パッチ毎のノイズを評価することができ、ノイズを抑えるために設定すべきパラメータを取得することが可能である。
【0011】
分布情報を取得する際には、印刷済のパッチに記録された記録材の分布を反映したデータを取得することができればよい。従って、光学読取装置によってパッチを走査する構成等を採用可能である。記録材の分布を示す分布情報を取得する際に記録材の分布のみを的確に示すデータを取得するのは困難であり、また、キャリブレーション前には、意図したとおりに記録材を的確に記録してパッチを生成するのは容易ではない。従って、分布情報には上述のノイズが含まれる。
【0012】
印刷手段においては、パラメータ値を設定可能であるとともにそのパラメータ値にて印刷装置を駆動してパッチを印刷させることができればよい。従って、印刷装置を制御するプリンタドライバ等の印刷制御モジュール等によって印刷手段を構成可能である。パラメータとしては、ノイズの発生程度に影響を与え、かつ可変の値であれば良く、印刷装置を駆動する際の設定値であっても良いし、印刷装置を制御するコンピュータ等にて使用する設定値であっても良く種々の構成を採用可能である。むろん、パラメータ値は何らかの数値であることは必須ではなく、印刷装置を駆動する際に可変の状況が存在し、その状況を特定することができればよい。
【0013】
また、パラメータは、印刷装置を駆動する際に設定するパラメータであってその値の変更によってノイズの発生程度が変動し得るパラメータであればよい。例えば、印刷装置にて記録する記録材の副走査方向の位置に影響を与える設定値をパラメータとして採用することができる。このパラメータを変更すれば、記録材が記録される副走査方向の位置が変動し得るので、副走査方向に垂直は主走査方向に延びる線(バンディングノイズ)の発生状況が変動する。従って、このパラメータを逐次変更してパッチを印刷することで、バンディングノイズを抑えるパラメータを取得することが可能になる。
【0014】
より具体的には、印刷装置において印刷媒体を送る際の送り量を本発明におけるパラメータとすることが可能である。すなわち、紙送り量を変動させると、主走査方向に平行なラスタ同士の距離が変動し得るので、主走査方向に平行なバンディングノイズの発生程度が変動し得るところ、この送り量をパラメータにすれば、ラスタ同士の距離に起因して生じるバンディングノイズを抑えることができる。
【0015】
また、複数のノズルからインクを吐出する印刷装置において、複数のノズルの中で使用するノズルを設定できるように構成した場合、使用するノズルの設定を示す情報は上記パラメータになり得る。すなわち、複数のノズルからのインク飛翔特性(インクが飛翔する方向や速度等)は総てのノズルで略同一となるように製造されるが、中には他のノズルと異なる飛翔特性となっているノズルも存在する。この場合、このノズルによって記録されるインクは理想的な位置とずれるため、主走査方向に平行なバンディングノイズ等のノイズ発生原因になり得る。そこで、使用するノズルをパラメータによって可変にすれば、インク飛翔特性に起因して生じるノイズを抑えることができる。
【0016】
尚、上述の2つのパラメータを比較した場合、一般的には、印刷装置において記録媒体を送る際の送り量を特定するためのパラメータの方が、印刷装置の印刷ヘッドに形成された複数のノズルの中の使用ノズルを特定するためのパラメータよりノイズの発生程度に大きく寄与する。すなわち、前者の変更に起因するノイズの方が後者の変更に起因するノイズより目立ちやすい。
【0017】
むろん、他の種類のパラメータを採用することも可能である。例えば、印刷装置において記録媒体を送る際の送り速度を特定するためのパラメータを採用可能である。すなわち、印刷装置においては、通常、ピンチローラ等を利用して記録媒体を所定の経路で搬送するが、当該ピンチローラの摩擦係数が印刷装置の機体毎に異なる場合など、同じ駆動力で記録媒体を送ったとしても送り量は異なり得る。すなわち、直接的に送り量を特定するパラメータではなく、送り速度を特定するパラメータであってもその設定の変更によって送り量が変動し得る。
【0018】
そこで、ピンチローラに伝達するトルクやモータの回転速度を調整するなどして記録媒体の送り速度を調整可能に構成する場合がある。この場合、記録媒体の送り速度をパラメータによって特定することとし、このパラメータを本発明におけるパラメータとする。このように、パラメータによって送り速度を調整できるように構成すれば、このパラメータを本発明のパラメータとすることができ、ノイズを抑えるために設定すべきパラメータ値を取得することができる。尚、一般的には、ピンチローラの摩擦係数が相対的に小さいと送り速度が速くなる傾向にあり、ピンチローラの摩擦係数が相対的に大きいと送り速度が遅くなる傾向にある。
【0019】
また、印刷装置において単位ドット当たりに記録する記録材の量を特定するためのパラメータを本発明のパラメータとして採用可能である。例えば、インクジェットプリンタにおいてインク滴を吐出する際にインクに対して作用させる力を調整可能に構成したり、レーザープリンタにおいてドット当たりのトナー量を変動させるようにレーザーの照射タイミングを調整可能に構成することがある。単位ドット当たりに記録する記録材の量を少なくすれば記録媒体の地色が意図せずに露出することによるノイズが発生しやすいし、記録材の量を多くすれば記録材同士が意図せずに重なり合うことによるノイズが発生しやすい。そこで、パラメータによって記録材の量を調整できるように構成すれば、このパラメータを本発明のパラメータとすることができ、ノイズを抑えるために設定すべきパラメータ値を取得することができる。
【0020】
さらに、印刷装置において記録媒体をプラテンに吸引する際の吸引力を特定するためのパラメータを本発明のパラメータとして採用可能である。すなわち、記録媒体が大きな用紙である場合に用紙の姿勢を安定させるため、プラテンに印刷用紙の吸引部を形成する場合がある。例えば、プラテンに穴を形成し、ファン等によって負圧を作用させることによってプラテンに対して印刷用紙を引きつける。この場合、吸引力が強くなるとプラテンと印刷用紙との摩擦力が増大する。この結果、印刷用紙の送り速度や送り量が変動し得る。そこで、パラメータによって負圧を調整できるように構成すれば、このパラメータを本発明のパラメータとすることができ、ノイズを抑えるために設定すべきパラメータ値を取得することができる。
【0021】
尚、以上の上記送り速度を特定するためのパラメータと上記記録材の量を特定するためのパラメータと上記吸引力を特定するためのパラメータとにおいて、一般的には、送り速度のパラメータ、記録材のパラメータ、吸引力のパラメータの順でノイズに与える影響が小さくなる。また、これらのパラメータと比較すると、一般的には、上記送り量を直接的に特定するパラメータや使用ノズルを特定するパラメータの方がノイズに与える影響は大きい。
【0022】
以上のパラメータは印刷装置において何らかの状態を変更するパラメータであったが、プリンタドライバ等の印刷制御モジュールにおける処理として選択肢がある場合に選択結果を特定するためのパラメータを本発明のパラメータとして採用しても良い。例えば、印刷対象の画像を示す画像データの表色系を変換する際に参照するプロファイルを特定するためのパラメータを本発明のパラメータとすることが可能である。
【0023】
すなわち、印刷装置においては通常、印刷装置で使用する記録材の色を色成分とした表色系で印刷対象の画像を表現するため、印刷対象の画像を示す画像データの表色系を変換する。このとき、プロファイルを複数用意し、印刷条件等に応じて選択可能に構成することができる。そこで、選択可能なプロファイルのいずれかをパラメータによって特定する構成とすれば、このパラメータを本発明のパラメータとすることができ、ノイズを抑えるために設定すべきパラメータ値を取得することができる。
【0024】
さらに、印刷装置においては、単位ドット当たりの記録材を可変に構成する場合がある。例えば、1ドットに対する記録材の記録重量を大中小および記録なしの4段階に変更できるように構成する場合がある。この場合、通常は、単位ドットについて色毎にその階調を指定した階調値を大中小のドット毎にその階調を指定した階調値に変換する。このとき、前者の階調値と後者の階調値との対応関係を規定したプロファイルを参照して変換を行う。
【0025】
このプロファイルにおいては、印刷媒体毎に異なる対応関係としたり、粒状性や記録媒体に対する記録材の最大記録量を考慮して対応関係を変更するなど、選択肢としては各種の対応関係を採用し得る。そこで、選択可能な複数のプロファイルを用意し、そのいずれかをパラメータによって特定する構成とすれば、このパラメータを本発明のパラメータとすることができ、ノイズを抑えるために設定すべきパラメータ値を取得することができる。
【0026】
さらに、印刷対象の画像を示す画像データは多階調(通常、256階調)であり、印刷装置の単位ドットで表現可能な階調は少階調(通常、2階調や4階調)である。そこで、一般的には階調数を低減する階調数変換処理を行っており、この階調数変換処理には、誤差拡散やディザ等、種々のアルゴリズムが存在する。また、各種アルゴリズムにおいて選択し得る閾値としては各種の値を採用可能である。そこで、アルゴリズムの種類や選択し得る閾値をパラメータによって特定する構成とすれば、このパラメータを本発明のパラメータとすることができ、ノイズを抑えるために設定すべきパラメータ値を取得することができる。
【0027】
むろん、この他にも、選択肢が存在し得る処理についてその選択肢をパラメータによって特定する構成とすれば、このパラメータを本発明のパラメータとすることができる。例えば、ある色相の記録材について濃淡のインクを併用する場合に、プロファイルを参照してある色の階調値を濃淡インクの階調値に変換するように構成可能である。この際にプロファイルを複数個用意し、選択可能にするのであれば、この選択肢を特定するパラメータを本発明のパラメータとすることができる。以上のように、印刷制御モジュールにおける処理としてパラメータの種類に選択肢がある場合に、各種のパラメータがノイズに与える影響を予め測定すれば、影響が大きい順に処理対象とすることができる。
【0028】
本発明においては、パッチにおける記録材の分布状況を把握することによってノイズを検出するので、このパッチはノイズを検出し易いパッチであることが好ましい。例えば、主走査方向に平行に発生し、副走査方向にはある周期で発生するバンディングノイズを検出するのであれば、このノイズを検出するために必要充分な大きさとなるように主走査方向および副走査方向の画素数を決定すればよい。また、各種の条件下でバンディングノイズを評価するために複数の条件によって印刷される複数のパッチを主走査方向に並べるのが好ましい。例えば、パラメータ値は固定しつつも複数の色毎にパッチを印刷することとし、これらのパッチを主走査方向に並べる構成を採用可能である。
【0029】
さらに、主走査方向に並べるパッチとして好適な構成として、印刷装置における主走査の中心位置を挟んで略対称の位置にパッチを配置する構成を採用しても良い。すなわち、主走査は通常印刷媒体の送り方向に対して直角の方向であり、主走査の範囲では送り量が一定であることが理想的であるところ、送り量が主走査の範囲内で一定でないことに起因してノイズが発生し得る。そこで、主走査の中心位置を挟んで対称の位置にパッチを印刷し、両者のノイズの発生状況を比較すれば、容易に送り量が適切であるか否かを検出することができる。むろん、主走査方向の両端で異なる程度のノイズを発生させる原因としては、記録媒体の送り量以外にも種々の原因が想定される。
【0030】
尚、本発明では、ノイズを確実に顕在化するため、一つのパッチでは一色かつ一様となるように構成するのが好ましい。また、主走査の位置によってノイズの発生程度が異なるか否かを確実に比較するため、比較するパッチの色は同じ色(すなわち、同じ画像データに基づいて印刷されるパッチ)であることが好ましい。また、パッチは、主走査の中心位置を挟んで略対称の位置に配置されればよいが、主走査の両端で最もノイズの発生程度の差が生じると考えれば、できるだけ端部に近い位置にパッチを印刷することが好ましい。むろん、ノイズの発生程度はパッチの色によって変動し得るので、色による差を顕在化するためには色数を1色に限定するのではなく、複数の色にて上記パッチを印刷するのが好ましい。1色のパッチを主走査方向の両端に配置し、さらに他の色のパッチを加える構成を採用しても良い。
【0031】
さらに、パッチには人間の目にノイズが認識されやすい色が含まれるように構成するのが好ましい。人間の目によって認識される色は各人によって異なるが、一般的には、有彩色より無彩色の方が色の差(色差)を認識しやすい。そこで、パッチに無彩色を含めておき、当該無彩色によってノイズを検出するように構成すれば、人間の目による知覚に対応したノイズの検出を実施することが可能である。むろん、無彩色以外にもノイズが認識されやすい色であれば、パッチに含めるのが好ましい。
【0032】
また、ノイズが目立つか否かを判断する基準として人間以外を採用しても良い。すなわち、印刷装置の機種や印刷装置に搭載する記録材の種類に依存して特定の色でノイズが目立つこともある。このような場合は、各印刷装置の機種や各記録材の種類毎に異なる色のパッチを印刷する。この結果、印刷装置の機種や記録材の種類にかかわらず確実にノイズを検出することが可能になる。この色を決定するに際しては、各印刷装置の機種や各記録材の種類毎に複数の色を印刷し、その中で相対的に高頻度でノイズが発生する色を選択すればよい。
【0033】
さらに、パッチを印刷する際に、印刷装置で使用可能な総ての色の記録材を使用するのが好ましい。例えば、1色のパッチを印刷するために総ての色を使用しても良いし、2色以上のパッチのいずれかに総ての色の記録材が含まれるように構成しても良い。すなわち、ノイズ発生には特定の色が大きく影響することがあり得るので、このようなノイズが発生し得る状況で総ての色を使用してパッチを印刷すれば、いずれかのパッチにおいてノイズを検出することができる。従って、ノイズの発生を見過ごすことがない。また、印刷装置を実際に運用する際には総ての色の記録材が使用され得るので、単色あるいは一部の色のみでノイズの発生程度を評価するのでは、不十分である。そこで、総ての色の記録材を使用してパッチを印刷することで、実際の運用に際して発生し得るノイズを評価することが可能になる。
【0034】
ノイズ発生に特定の色が大きく影響する例としては、インクジェットプリンタにおいて特定の色を吐出するための特定のノズルから飛翔するインク滴の飛翔方向が、他のノズルからのインク滴の飛翔方向と異なる場合やノズルの製造誤差によってある色のインクを吐出するノズルのいずれかが他のノズルと異なるピッチとなる場合等が挙げられる。むろん、インクジェットプリンタに限らずレーザープリンタ等においても、複数の色を組み合わせて多色を表現する構成である限り、特定の色がノイズの発生に大きく寄与し得る。
【0035】
さらに、所定の明度の色とそれより低明度の色との2色を含むパッチを印刷する構成を採用可能である。すなわち、高明度の色では意図せずに低明度となる部位がノイズとなり、低明度の色では意図せずに高明度となる部位がノイズとなる。そこで、高明度のパッチと低明度のパッチを上述のパッチとして採用すれば、いずれのノイズであっても検出することが可能になる。ここで、高明度の色で意図せずに低明度となる部位が生じる例としては、記録材が意図せずに重なって記録されてしまう場合が挙げられる。逆に、低明度の色で意図せずに高明度となる部位が生じる例としては、記録材が意図せずに離れて記録され、記録媒体の地色(通常は白)が露出してしまう場合が挙げられる。
【0036】
ここでは、異なる2種類の明度でパッチを印刷すればよいが、異なる明度の色についてより明確にノイズを顕在化させるため、両者の明度はある程度離れていることが好ましい。例えば、明度の値域が0〜100である時に、明度55のパッチと明度35のパッチとを印刷するように構成する例を採用可能である。
【0037】
パラメータ値取得手段では、分布情報に基づいて各パッチにおけるノイズの発生程度を評価し、最もノイズを抑えるために設定すべきパラメータ値を取得することができればよい。このためには、種々の構成を採用可能であり、上記記録材が分布する特性を示す分布特性値を算出し、この分布特性値に基づいてパッチ毎にノイズの発生程度を示す値を算出する構成を採用可能である。分布特性値は、ノイズの発生程度を評価する指標値であれば良く、例えば、ノイズが多く発生しているほど大きくなる指標値を採用可能である。より具体的には、分布情報を空間周波数に対するスペクトルに変換した値を利用する構成を採用可能である。空間周波数への変換で得られたスペクトル値は、周期的なノイズが含まれる場合にピークを形成するので、当該周期的なノイズの発生程度を評価することができる。むろん、スペクトルを積分しても良い。
【0038】
ノイズの発生程度を評価可能な値を算出すれば、周期的なノイズの発生程度を示す値が最も小さいパラメータ値を選択することで、ノイズを抑えるパラメータ値を取得することができる。また、バンディングノイズは副走査方向に何らかの周期で発生するので、当該バンディングノイズを評価するのであれば、各パッチの主走査方向の変化は平均化するなどして1次元(副走査方向)の分布情報を利用してノイズを評価可能である。
【0039】
尚、パラメータ値取得手段においては、確実にノイズを検出するための付加的な処理を導入することも可能である。例えば、記録媒体上に印刷されたパッチをより小さな領域に分割し、領域毎にノイズの発生程度を取得しても良い。このように、分割領域毎に処理を進めるとパッチ全体として均した状態ではなく、分割領域毎にノイズを評価することが可能になる。従って、分布情報を分割領域毎に比較し、特異な分布となる領域を抽出/除去することにより、特定の分割領域内にのみ含まれるノイズを予め除去することも可能である。また、分布情報においてノイズの影響を受けた部分を予め強調する前処理を導入しても良い。この処理によれば、ノイズをより顕在化することができ、ノイズの発生程度をより確実に評価することが可能である。
【0040】
一つのパラメータ値において複数のパッチを印刷する場合、ノイズの発生程度を示す値をパラメータ値毎に合算することによって、最もノイズを抑えるパラメータ値を把握することができる。すなわち、一つのパラメータ値においてパッチ色など条件を変えて複数のパッチを印刷した場合、これらのパッチ毎でノイズの発生程度が異なり得る。そこで、上述のように合算を行えば、当該合算した合計値を比較することにより、いずれのパラメータ値であれば、複数のパッチに基づくノイズの発生を全体として(パッチを印刷した複数の条件下で)抑えられるのか容易に判定することができる。
【0041】
尚、上記パラメータ値取得手段によってノイズの発生程度を示す値を算出する前に、上述のように付加的な前処理(パッチの分割やノイズの強調処理)を実施している場合に、ノイズの発生程度を示す値として相対値を算出し、当該相対値の合計値を比較する構成を採用しても良い。すなわち、上記前処理を行う場合に、異なるパッチについては異なる前処理を実施する場合がある。例えば、ノイズを強調するにしてもパッチの色や印刷条件によって強調程度を変える場合がある。このような場合、強調程度が異なるパッチ同士でノイズの発生程度を示す値を直接的に比較せず、同じ前処理を行ったパッチ同士で相対値を算出すれば、規格化を実施することができる。この規格化後の値であれば、パラメータ毎に合算して比較することができる。同じ前処理としては、強調する程度(係数)や強調程度を決定する際の条件が同じである場合などが該当する。
【0042】
さらに、上述のようにノイズの発生程度を評価することができれば、最良のパラメータを選択できないほどの調整不足が生じているか否かを判定することができる。例えば、ノイズの発生程度を示す値が予め決められた基準を満たすか否か判別すればよい。基準を満たさない場合には、各種の対応を行うことができるが、印刷装置が不良であるとして印刷装置における調整をやり直したり、印刷済のパッチを参照してできるだけノイズが小さくなるパラメータ値を選択するなどの対応が可能である。
【0043】
本発明のように、ノイズの発生程度に与える影響が異なる複数種類のパラメータがある場合には、ノイズの発生程度に応じて異なる対応とすることができる。例えば、上記基準を満たすか否かによってノイズを抑えられるパッチが印刷済のパッチに含まれるか否かを判定することができるが、ノイズの発生程度に相対的に大きく影響を与える種類のパラメータが当該基準を満たさない場合には、印刷装置が不良であるとするのが好ましい。
【0044】
すなわち、この種のパラメータの変更によってノイズの発生程度を大きく調整することができるが、このパラメータ変更でも基準を満たさない場合には印刷装置が不良であると考えて再調整を行った方が好ましい。例えば、印刷装置における印刷機構(キャリッジの高さ等)が充分に調整されていない場合には、パラメータ値の変更のみによってノイズの発生程度を充分小さくできない場合が多い。そこで、当該印刷機構を再調整する。尚、印刷機構の再調整は手作業である場合が多いので、最適値取得装置としては、再調整を促すために所定の表示装置に印刷装置が不良である旨の表示を行う。
【0045】
ノイズの発生程度に相対的に小さな影響を与える種類のパラメータが上記基準を満たさない場合であっても、相対的に大きな影響を与える種類のパラメータについてはノイズを抑えるパラメータ値を設定済みであり、ノイズの発生程度は大きくない。そこで、印刷済のパッチに基づいてできるだけノイズが抑えられるパラメータ値を選択する構成が好ましい。このため、所定の入力装置によって上記パッチを印刷する際に設定したパラメータ値のいずれかを指定して入力できるように構成し、この指定を受け付けることによってノイズを抑えるパラメータ値を取得する。むろん、パラメータを選択するために、各パッチにおけるノイズの発生程度を示す値を所定の出力装置で出力するなど工夫をしても良い。
【0046】
尚、予め決められた基準としては、ノイズの発生程度が許容範囲にあるか否かを判断するための基準であれば良く、例えばノイズの発生程度を数値で表現する場合には、許容範囲を示す閾値を予め決定すればよい。主走査の左右でノイズの発生程度に大きな差が生じているか否かを判断するための基準を設け、これによって不良機体であるか否かを判断することも可能であり、種々の構成を採用可能である。むろん、パラメータの種類毎に異なる基準、例えば異なる閾値を定義することが可能である。
【0047】
また、光学読取装置によってパッチにおける記録材の分布情報を取得する際に好適な構成例として、光源安定化のために分布情報の取得に先立って光源を発光させる構成を採用可能である。この時、単に光源を発光させてもよいし、光学読取装置が通常備えるプレビュースキャン(本スキャンより低解像度での簡易スキャン)を行っても良い。むろん、プレビュースキャンや光源の発光は複数回実施しても良い。さらに、分布情報を取得する際に光学読取装置の読み取りバラツキの影響をできるだけ低減するため、複数回の読み取りを行って平均化したり、複数回の読み取りを行って最後あるいは最後の複数回の読み取り結果に基づいて分布情報を取得する構成等を採用可能である。また、複数回の読み取りを行い、それぞれについてノイズを評価するための値を算出して平均化しても良い。
【0048】
尚、以上のように、ノイズの発生程度に相対的に大きく影響を与える種類のパラメータについては相対的に小さく影響を与える種類のパラメータより先に処理を行う構成はキャリブレーション時に利用することが可能である。すなわち、取得した最適値で印刷装置を駆動するように設定を行う。この設定によれば、ノイズの発生が最も抑えられたパラメータで印刷装置を駆動できるようになる。むろん、2種類あるいはそれ以上の種類のパラメータが存在する場合に、ある2種類のパラメータに着目し、一方を第1パラメータ、他方を第2パラメータとし、第1パラメータを変更してパッチを印刷し、その中で最もノイズを抑えるパラメータを設定し、その後に第2パラメータを変更してパッチを印刷し、その中で最もノイズを抑えるパラメータを設定する構成を利用して本発明を実現することができる。すなわち、第1パラメータの変更が第2パラメータの変更よりノイズの発生程度に大きな影響を与えるようにパラメータを定義する。
【0049】
ところで、このような装置は、単独の装置として存在する場合もあるし、ある機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。発明の思想の具現化例として装置のソフトウェアとなる場合の例として、請求項14,請求項15にかかる発明を採用しても良い。
【0050】
むろん、その記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。また、一次複製品、二次複製品などの複製段階についても同等である。また、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態のものとしてあってもよい。
【0051】
また、このような装置においては、その制御手順に従って処理を進めていく上で、その根底にはその手順に発明が存在するということは当然であり、方法としても適用可能である。このため、請求項16,請求項17にかかる発明においても、基本的には同様の作用となる。むろん、上記プログラムおよび方法において上記請求項2〜請求項11,請求項13に対応した構成を採用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)本発明の概略構成:
(2)キャリブレーションシステムの構成:
(2−1)コンピュータの構成:
(2−2)調整用パターンの構成:
(2−3)キャリブレーションモジュールの構成:
(2−4)プリンタの構成:
(3)キャリブレーション処理:
(3−1)調整用パターンの印刷処理:
(3−2)スキャン処理:
(3−3)最良値抽出処理:
(4)バンディングノイズ値の算出例:
(5)他の実施形態:
【0053】
(1)本発明の概略構成:
図1は本発明の概略を説明するための説明図である。同図において、プリンタ40はA2サイズなど大きなサイズの印刷用紙を利用して印刷を実行可能なインクジェットプリンタであり、複数のノズルからインク滴を吐出して印刷用紙に画像を記録する。本実施形態においては、プリンタ40における印刷用紙の送り量と使用ノズルとを調整し、主走査方向に意図せずに生じる線状のノイズ(バンディングノイズ)の発生を抑える。
【0054】
このため、調整に際して当該プリンタ40とプリンタ40を制御するコンピュータ10とスキャナ30とによって調整システムを形成している。すなわち、プリンタ40によって複数のパッチを含む調整用パターンを印刷用紙に印刷し、スキャナ30によって当該調整用パターンをスキャンし、スキャン結果に基づいてバンディングノイズを評価することにより、バンディングノイズを抑えることが可能な調整値を取得する。
【0055】
ここで、バンディングノイズに影響を与える要因である印刷用紙の送り量と使用ノズルの選定とについて最適な状態に調整するため、それぞれの調整を目的とした調整用パターンを利用する。すなわち、まず先に送り量を調整するためにプリンタ40において送り量を変更して同じ調整用パターンを複数回印刷する。これらの調整用パターンをスキャナ30で取り込むとともに異なる送り量同士でバンディングノイズの状態を比較すれば、バンディングノイズを最も抑えられる送り量を取得することができる。そこで、この最適な送り量で印刷用紙を送るようにプリンタ40に送り量を設定すれば、バンディングノイズを最も抑えられる送り量でプリンタ40を駆動することができる。
【0056】
さらに、この送り量が設定された状態で、さらに最適な使用ノズルを把握するために、印刷時に使用するノズルを変更して同じ調整用パターンを複数回印刷する。この印刷結果についても同様の解析処理を行えば、バンディングノイズを最も抑えられる使用ノズルの組を取得することができる。そこで、得られた使用ノズルの組を利用して印刷を実行するようにプリンタ40に設定すれば、バンディングノイズを最も抑えられるノズルの組を利用してプリンタ40を駆動することができる。尚、本発明は、プリンタ40の製造者がその出荷前に行っても良いし、プリンタ40の使用者が行っても良い。
【0057】
本実施形態においては、バンディングノイズに影響を与える送り量と使用ノズルの組み合わせとを変更可能に構成しており、バンディングノイズの発生程度に大きな影響を与える送り量の調整を先に行っている。すなわち、バンディングノイズの発生程度に相対的に小さな影響を与える要因を先に調整してしまうと、後に他の要因について調整を行ったときにバンディングノイズの発生程度が大きく変動し得る。
【0058】
この結果、上記相対的に小さな影響を与える要因の調整が実質的に無意味となり、この要因については再度の調整が必要となり得る。しかし、本発明においては、バンディングノイズの発生程度に相対的に大きな影響を与える要因を先に調整しているので、この調整の後に他の要因について調整を行うとしても、先に調整済みの要因を変更するほどの影響は生じない。従って、相対的に大きな影響を与える要因を先に調整することにより、確実かつ効率的に複数の要因を最適な状態に設定することができる。
【0059】
(2)キャリブレーションシステムの構成:
(2−1)コンピュータの構成:
次に、上述の発明を実現するための構成を詳細に説明する。図2は、コンピュータ10のハードウェアおよびソフトウェアによる機能を示すブロック図である。コンピュータ10は、CPU11,RAM12,ROM13等のプログラム実行環境を備えており、ROM13やHDD(ハードディスクドライブ)14に記録された各種プログラムをRAM12に読み出して実行することができる。本実施形態においては、そのプログラムとして図示しないOSやPRTDRV(プリンタドライバ)20、スキャナDRV(ドライバ)30a等を含み、同OSの実行下において各種プログラムを起動することができる。
【0060】
また、コンピュータ10はUSBI/F15を介してスキャナ30,プリンタ40と接続され、図示しないI/Fを介してディスプレイ17,キーボード16a,マウス16b,スキャナ30と接続される。すなわち、ディスプレイ17に対して所定の画像を出力可能であり、キーボード16aおよびマウス16bを介して各種入力操作を受け付けることができる。以上のように、コンピュータ10は汎用的なコンピュータが一般的に備えるハードウェアを利用し、後述するソフトウェアを実行することによって本発明を実現可能である。
【0061】
PRTDRV20は、印刷対象の画像や文字等をプリンタ40に印刷させるためのデータを生成するプログラムであり、本実施形態においては、当該PRTDRV20にキャリブレーションのためのモジュールが含まれている。すなわち、PRTDRV20は画像処理部21とキャリブレーションモジュール22とを備えている。画像処理部21は、印刷対象の画像を示す画像データを取得し、所定の画像処理を施して印刷データを生成する。
【0062】
すなわち、画像データの解像度変換処理や色変換処理、ハーフトーン処理等を実施し、プリンタ40にて印刷を実行させるための印刷データを生成する。生成された印刷データは、上記USBI/F15を介してプリンタ40に受け渡される。プリンタ40は、当該印刷データに基づき、後述するようにして印刷を実行する。画像処理部21は、このとき印刷条件に従って上述の画像処理を実施する。例えば、指示された解像度で印刷を実行するために解像度変換処理を実施し、指示された印刷用紙に対応した色変換テーブルを参照して色変換を実施する。
【0063】
本実施形態においては、キャリブレーションに際して測定する調整用パターンを印刷するために、調整用パターンの画像を示す調整用パターンデータ14aと調整に際して設定する印刷条件を示す印刷条件データ14bとがHDD14に予め記録されている。すなわち、画像処理部21は印刷条件データ14bを参照し、当該条件下で調整用パターンデータ14aに示される画像データに画像処理を施す。この結果をプリンタ40に出力することによってプリンタ40は調整用パターンを印刷する。
【0064】
印刷条件データ14bにおいては、調整を実施すべき印刷条件を示していれば良く、キャリブレーションの結果を適用する際に設定し得る種々の印刷条件を印刷条件データ14bとして採用可能である。例えば、印刷時に使用する印刷用紙毎にキャリブレーション結果を適用する場合には、複数の印刷用紙の種類を示すデータが印刷条件データ14bに含まれるし、解像度毎にキャリブレーション結果を適用する場合には、複数の印刷解像度を示すデータが印刷条件データ14bに含まれる。
【0065】
(2−2)調整用パターンの構成:
図3は、本実施形態において採用した調整用パターンを示す図である。このパターンは印刷用紙の長手方向(主走査方向)に沿って長い複数の矩形パターンP1〜P5を含んでおり、各矩形パターンP1〜P5では、キャリブレーション対象の設定値(パラメータ値)が異なっている(図3では#1〜#5としてパラメータが異なることを示している)。また、各矩形パターンP1〜P5の左右端部はグレー(Gr)のパッチで形成され、所定の明度のグレーを一様に印刷するための画像データによって印刷される。
【0066】
グレーのパッチのそれぞれに対してはバイオレット(V)のパッチが並べて配置される。このパッチは所定の明度のバイオレットを一様に印刷するための画像データによって印刷される。尚、本実施形態においては、グレーのパッチとバイオレットのパッチとで明度が異なり、前者の方が高明度、後者の方が低明度である。矩形パターンP1〜P5のそれぞれは2個のグレーパッチと2個のバイオレットパッチを含み、図3に示すように4個のパッチが主走査方向に並ぶことになる。また、同色のパッチが副走査方向に並べられる。すなわち、副走査方向に並ぶ列A,列Dのパッチはグレーパッチであり、列B,列Cのパッチはグレーパッチである。
【0067】
また、グレーは人間の目にとって色の変化が最もわかりやすく、この意味でバンディングノイズの発生状況を解析する色として好ましい色である。バイオレットはプリンタ40によってバンディングノイズが発生しやすい色であり、この意味でバンディングノイズの発生状況を解析する色として好ましい色である。むろん、調整用パターンとして採用するパッチの色は、バンディングノイズを検出する上で好ましい色であればよく他にも種々の色を採用可能である。
【0068】
さらに、本実施形態においては、後述するように複数の色のインクをプリンタ40に搭載可能であり、グレーのパッチとバイオレットのパッチによって上記複数の色の総てが少なくとも一回使用される。すなわち、いずれの色のインクもグレーパッチとバイオレットパッチとのいずれかまたは双方に含まれる。尚、本実施形態においてバイオレットのパッチの間にはバンディングノイズの解析に利用されるパッチが印刷されることはないが、他のパッチを印刷してバンディングノイズの検出に使用しても良い。また、印刷ヘッドからインクを吐出し続けることによってインクの飛翔状態を安定化させることができるので、バンディングノイズの解析に使用しない場合であっても主走査方向の全体に渡って何らかのパッチを印刷するのが好ましい。
【0069】
各矩形パターンP1〜P5においては、設定されたパラメータ値が異なるので、パターン毎にバンディングノイズの発生状況が異なり得る。また、色によってバンディングノイズが目立つ度合いが異なるので、パッチ毎にバンディングノイズの発生程度が異なり得ると言える。そこで、パッチ毎にノイズの発生程度を評価すれば、#1〜#5のいずれのパラメータ値が望ましいかを判定することができる。図3に示す数値はバンディングノイズを評価するための値であるが、詳細は後述する。
【0070】
尚、本実施形態における調整用パターンは、パラメータの種類毎に印刷される。すなわち、送り量を特定するパラメータ値を変更し、他のパラメータ値は固定した状態で送り量を調整するための調整用パターンを印刷し、使用ノズルを特定するパラメータ値を変更し、他のパラメータ値は固定した状態で使用ノズルを調整するための調整用パターンを印刷する。
【0071】
(2−3)キャリブレーションモジュールの構成:
キャリブレーションモジュール22は、図2に示すようにパラメータ設定部22aとパラメータ値取得部22bとを備えている。これらによってパラメータの設定を行い、また、バンディングノイズの発生状況を解析し、解析結果からノイズを抑える最良のパラメータ値を取得する。
【0072】
パラメータ設定部22aは、USBI/F15を介して所定の制御信号を出力することにより、プリンタ40に対して各種のパラメータについてその値を変更し、設定するモジュールである。すなわち、本実施形態においては、パラメータ値を変更しながら同じ調整用パターンデータ14aに基づく画像を印刷させ、得られた印刷物のバンディングノイズの状態によって最良のパラメータ値を設定する。そこで、パラメータの種類を示すデータと変更後の値を示すデータとをパラメータデータ14cとしてHDD14に記録しておく。
【0073】
本実施形態においては、キャリブレーション対象が送り量と使用ノズルであり、送り量については変更後の値として複数の送り量を示すデータが記録される。使用ノズルを示すデータは、複数のノズルの組を指定するデータである。図4は本実施形態における使用ノズルについてのパラメータデータを説明する説明図である。同図はプリンタ40が搭載する印刷ヘッド47aのノズル面に形成されるノズルの配列を模式的に示す図である。同図に示す印刷ヘッド47aは印刷時の主走査によって同図に示す主走査方向に往復動され、印刷用紙は紙送りによって同図に示す副走査方向に相対的に移動する。印刷ヘッド47aのノズル面には、副走査方向に同じ色のインクを吐出するためのノズルNzが複数個(例えば180個)並んでおり、このノズル列は7色のインク色に対応して7列形成されている。
【0074】
本実施形態におけるパラメータデータは、各列で使用するノズルの数を固定するとともに副走査方向で異なる位置のノズルを使用するように指定したデータである。例えば、同図に示す例のように、ノズルを140個組で使用するとともに副走査方向にノズル数10個ずつずらした組を使用ノズルとし、パラメータ#1〜#5のようなノズルを指定する。いずれにしても、パラメータ設定部22aではキャリブレーション対象を特定するとともにそのパラメータ値を設定する。これにより、同じ画像データを異なるパラメータで印刷させるように設定する。
【0075】
尚、本実施形態においては、パラメータ設定部22aによってパラメータをある値に設定し、画像処理部21によって調整用パターンを印刷する処理を実施し、さらにパラメータ設定部22aがパラメータ値を変更して画像処理部21による処理を繰り返すことによって上記図3に示す矩形パターンP1〜P5を印刷する。また、調整用パターンの印刷に際しては、送り量に関するパラメータのみを変更した場合と使用ノズルに関するパラメータのみを変更した場合との2通り実施する。
【0076】
スキャナDRV30aは、上記スキャナ30における取り込みを制御するドライバであり、上記キーボード16a等によって設定される解像度等の読取条件に従って、原稿台に載置された読取対象を読み取り、その画像データ14dを取得する。本実施形態において、この画像データ14dは、画像を複数の画像で表現するとともに各画像の色をRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色成分毎の階調値で表現したデータである。
【0077】
本実施形態においては、キャリブレーションモジュール22によってプリンタ40のキャリブレーションが実施されるときにスキャナDRV30aが起動され、調整用パターンを印刷した印刷条件に対応した読取条件を設定してスキャンを行う。例えば、各印刷条件で印刷した調整用パターンデータをスキャンするために好ましい読取解像度に設定する。すなわち、バンディングノイズを検出する精度を上げるためには高解像度の読取を実施するのが好ましいが、過度に高解像にすると過度にデータ量が増加し、処理速度が遅くなる。
【0078】
また、印刷解像度に近い読取解像度(例えば、±10dpiの範囲内)であれば、モアレが生じるおそれがある。そこで、精度と処理速度とを勘案して好ましい読取解像度を設定したり、モアレの発生を防止する読取解像度とすると好ましい。尚、読取をCCDで行う場合には、複数個のCCDによる読取結果から一つの画素を生成することが多いが、整数個あるいは(整数/2)個程度のCCDから一つの画素を生成するのが好ましい。例えば、2画素分の画像データを5個のCCDから生成するように読取解像度を設定する構成等を採用すればよい。
【0079】
尚、以上の例では、上記画像データ14dを解析するにあたり、キャリブレーション対象を的確に把握するための構成を採用している。すなわち、図3に示す調整用パターンでは、その調整用パターンを印刷した時の変更対象(この例では送り量あるいは使用ノズル)を示す情報を調整用パターンの左上に記述するようになっている。より具体的には、文字”I”の位置および数によってこれらの情報を示しており、スキャナDRV30aは上記画像データ14dでこれらの文字に該当する部分を参照し、キャリブレーション対象を取得する。このキャリブレーション対象を示す情報は、キャリブレーションモジュール22に受け渡され、最良のパラメータ値を設定する際に参照される。また、本実施形態においては、スキャナ30による読み取りバラツキを排除するため、後述のように複数回のスキャンを実施する。
【0080】
パラメータ値取得部22bは、上述のようにして読み取られた画像データ14dに基づいて上記パッチを色毎に切り出すとともに、各パッチにおけるバンディングノイズの発生程度を評価するバンディングノイズ値を算出する。バンディングノイズ値が得られれば、パラメータ値毎に各パッチのバンディングノイズ値を合算したり、主走査方向の左右に存在するパッチのバンディングノイズ値を比較するなどして、いずれのパラメータ値が最良であるのかを判定することができる。
【0081】
すなわち、本実施形態におけるキャリブレーション対象は、送り量と使用ノズルであり、プリンタ40の駆動時に一回の主走査内でキャリブレーション対象のパラメータを変化させることはできない。従って、本実施形態においては、主走査の左右で異なるパラメータを設定することはできず、主走査の左右におけるバンディングノイズ値からみて、全体としてバンディングノイズが抑えられているパラメータを設定すべきである。また、色毎に異なるパラメータを設定することもできず、各色のパッチで全体としてバンディングノイズが抑えられているパラメータを設定すべきである。
【0082】
例えば、上記図3に示す矩形パターンP1〜P5において、主走査の左右で異なる矩形パターン内のパッチが最良のバンディングノイズ値であるとしても、主走査の左でパラメータ#1、主走査の右でパラメータ#2などのように設定してプリンタ40を駆動することはできない。そこで、パラメータ値取得部22bでは、主走査の左右および色毎のバンディングノイズを比較して最もバンディングノイズが抑えられているパラメータを選択する。
【0083】
最良のパラメータ値を取得すると、パラメータ値取得部22bはその値を上記パラメータ設定部22aに受け渡す。そして、パラメータ設定部22aはUSBI/F15を介してプリンタ40に最良パラメータ値を設定する。この結果、プリンタ40においては、最良のパラメータ値を利用して印刷を実行することができ、バンディングノイズの発生を抑えた状態で印刷を実行することができる。むろん、本実施形態においては、送り量と使用ノズルとのそれぞれについて以上の処理が行われる。
【0084】
尚、この処理においては、各パッチにおけるノイズの発生程度を評価して最良のパラメータ値を取得することができれば良く、種々の処理を採用可能である。むろん、それぞれのキャリブレーション対象の調整に際して一回目にはパラメータの変動幅を大きくして粗調整し、粗調整後に変動幅を小さくして調整を行うようにしてもよい。この処理の一例は後述する。
【0085】
(2−4)プリンタの構成:
図5は、プリンタ40のハードウェアおよびソフトウェアによる機能を示すブロック図である。プリンタ40は、CPU41,RAM42,ROM43,EEPROM44等のプログラム実行環境を備えており、所定のプログラムに従い、I/F45a〜45dを介して各部を制御する。USBI/F45aは、上記コンピュータ10が出力する印刷データや送り量、使用ノズルの設定を行うための制御データを取得するI/Fである。
【0086】
I/F45b〜45dには、それぞれキャリッジ機構46と印刷ヘッドユニット47と紙送り機構48とが接続されている。印刷ヘッドユニット47は、上記印刷ヘッド47aやインクカートリッジに充填されたインクをインク室に供給する機構等によって構成され、印刷ヘッド47a内のインク室にはノズル毎にインクを吐出するためのピエゾ素子が備えられている。各ピエゾ素子は、I/F45cを介して制御され、この制御の結果画素毎にインクが記録され、または非記録とされる。むろん、この構成は一例であり、他にも種々の構成、例えば、バブルによってインクの吐出/非吐出を制御する構成やインク滴の吐出量を数段階に制御する構成等を採用することができる。
【0087】
キャリッジ機構46は、上記印刷ヘッドユニット47を搭載するとともに主走査方向(紙送り方向と略直角)に駆動可能な部位を備え、CPU41の制御によって上記インクの吐出/非吐出に同期させながら印刷ヘッドユニット47を主走査させる。紙送り機構48は、図示しない蓄積部に蓄積された印刷用紙を一枚ずつ搬送する機構を備えており、この機構によって、インクを記録する部位に印刷用紙を搬送する。そして、上記インクの吐出/非吐出に同期させながら副走査を行う。
【0088】
このような構成のプリンタ40において、本実施形態では上記CPU41等の制御によって印刷実行部41aとパラメータ設定部41bとによる処理を実行可能である。印刷実行部41aは、上記USBI/F15を介して印刷データを取得し、同印刷データに基づいて各部を駆動することによって印刷を実行する。すなわち、印刷データにおいては、画素毎にインクの記録/非記録を示しているので、このデータ通りにインクが記録されるように上記印刷ヘッドユニット47とキャリッジ機構46と紙送り機構48とを制御する。尚、このとき、EEPROM44に記録された送り量設定値と使用ノズル設定値を参照し、設定された通りの送り量で印刷用紙を送るように紙送り機構48を制御し、設定された通りの使用ノズルを使用してインク滴を吐出するように印刷ヘッドユニット47およびキャリッジ機構46を制御する。
【0089】
パラメータ設定部41bは、当該EEPROM44に対して送り量設定値と使用ノズル設定値とを記録するモジュールであり、上記USBI/F15を介してコンピュータ10が送信するパラメータ設定値を取得し、EEPROM44に記録する。従って、上述のように調整用パターンデータを印刷する場合には、上記矩形パターンP1〜P5を印刷するたびにEEPROM44にパラメータ設定値を書き込み、各矩形パターンP1〜P5が異なるパラメータで印刷されるように制御する。また、最良パラメータが抽出された後は、当該最良パラメータをEEPROM44に書き込み、以後プリンタ40がこのパラメータを使用して印刷するように制御する。
【0090】
(3)キャリブレーション処理:
図6〜図9は、本実施形態におけるキャリブレーション処理の手順を示すフローチャートである。当該キャリブレーション処理の概略フローは、図6に示すとおりであり、まず、ステップS100にて紙送り量を変更して調整用パターンを印刷する。
【0091】
(3−1)調整用パターンの印刷処理:
図7は、当該調整用パターンの印刷処理を示す詳細フローチャートである。ステップS200ではパラメータの番号に相当するカウンタnを”1”に初期化し、ステップS210ではパラメータ設定部22aがパラメータデータ14cを参照し、プリンタ40に対して設定を行う。すなわち、パラメータデータ14cを参照してパラメータ番号nの設定値を取得し、プリンタ40に対して制御データを送信してEEPROM44に当該設定値を記憶させる。図7に示すフローチャートは、送り量を変更する場合と使用ノズルを変更する場合とで共通のフローであり、むろん送り量を変更する場合には当該ステップS210において送り量のパラメータnをプリンタに設定し、使用ノズルを変更する場合には当該ステップS210にて使用ノズルのパラメータnをプリンタに設定する。
【0092】
ステップS220では画像処理部21が調整用パターンデータ14aを取得し、ステップS230で印刷条件データ14bにて指示された印刷条件の一つで印刷を行うための印刷データを生成する。生成された印刷データはステップS240にてプリンタ40に対して出力される。この結果、キャリブレーション対象のパラメータが、あるパラメータnに設定された状態で調整用パターン(上記矩形パターンの一つ)が印刷される。
【0093】
ステップS250においては、カウンタnが予め決められたパラメータ数α(図3に示す例ではα=5)を超えたか否かを判別し、同ステップS250にてカウンタnがパラメータ数αを超えたと判別されなければステップS260にてカウンタnをインクリメントし、ステップS210以降の処理を繰り返す。ステップS250にてカウンタnがパラメータ数αを超えたと判別された場合は、予め決められた範囲でパラメータを変動しながら調整用パターンの印刷を完了したことになるので、図6の処理に復帰する。
【0094】
(3−2)スキャン処理:
図6の処理に復帰すると、ステップS110にて印刷済の調整用パターンをスキャンし、その画像データをHDD14に記録する。図8は、当該調整用パターンのスキャン処理を示す詳細フローチャートである。ステップS300では、上記図7に示すフローで印刷された調整用パターンをスキャナ30の原稿台に載置する。ステップS310では、原稿に対して投光する光源を安定させるため、スキャナDRV30aがスキャナ30を制御して予め決められた所定回数のダミースキャンを行う。むろん、ここでは光源からの光量を安定させられることができればよいので、スキャナDRV30aの機能として標準的なプレビューを実施しても良いし、光源を点灯した状態で所定時間経過させたり、断続的に光源を点灯させるなど種々の構成を採用可能である。
【0095】
ステップS320ではスキャナDRV30aが上記調整用パターンを印刷した際の印刷条件に適合した読取解像度を設定し、ステップS330ではこの読取解像度によってスキャンを2回実施する。ステップS340では2回分のスキャン結果に基づく画像データをHDD14に記録して図6に示す処理に復帰する。このスキャンにおいては、スキャンの測定バラツキにおける変動をできるだけ低減するために2回スキャンを行ってそれぞれによって算出されるバンディングノイズ値の平均を算出している。むろん、ここでは測定バラツキを抑えることができれば良く、スキャン回数は2回に限られない。ステップS310におけるダミースキャンによってスキャン結果が充分に安定するのであればスキャンが1回でも構わないが、いわゆるコンシューマ向けのスキャナでスキャンを行う場合など、2回以上スキャンした方が好ましい。
【0096】
図6の処理に復帰したら、上記ステップS340でHDD14に記録した画像データ14dに基づいて、ステップS120にてバンディングノイズ値を取得する。尚、図3においては、各パッチに対して数値を付記しているが、この数値がバンディングノイズ値の例である。バンディングノイズ値を取得するための処理の例は後述する。バンディングノイズ値が取得されると、上記RAM12に保存され、ステップS130にて最良値抽出処理が実施される。
【0097】
(3−3)最良値抽出処理:
図9は、最良パラメータを選択する処理を示す詳細フローチャートである。パラメータ値取得部22bは、ステップS400にてバンディングノイズ値をパラメータ毎に合算する。すなわち、ステップS400にてあるパラメータについてバンディングノイズ値を合算し、ステップS405にて全パラメータについて処理を行ったと判別されるまでステップS400を繰り返す。例えば、図3に示す例では、パラメータ#1について算出されたバンディングノイズ値は列A〜列Dに対してそれぞれ”25,22,26,30”であり、これらを加え合わせて値”103”を算出する。パラメータ#2〜#5も同様に算出した値が”83,72,92,104”である。
【0098】
ステップS410では、以上のようにして算出したパラメータ毎の合計値の中で最小の値を抽出する。本実施形態においては、バンディングの発生頻度や発生強度が大きくなるほど値が大きくなるようにバンディングノイズ値を想定している。従って、上記合計値が最小の値を抽出することにより、各パッチを印刷するにあたり、できるだけバンディングが生じない状態を抽出しているといえる。すなわち、複数のパッチのそれぞれにおいてはバンディングノイズの発生状況が異なり、列毎に各パッチを比較したときに、バンディングノイズ値が最小のものが最小のバンディングノイズであると言える。
【0099】
しかし、プリンタ40に対してあるパラメータを設定して印刷を実施する必要があるため、最小のバンディングノイズ値となるパッチが異なるパラメータに存在する場合(例えば、列Aではパラメータ#3,列Bではパラメータ#2が最小)であってもいずれか一つのパラメータを選択しなくてはならない。そこで、本実施形態においては、バンディングノイズ値をパラメータ毎に合算し、この合計値を比較することによって最良のパラメータを選択している。この結果、最良の(全体として最もバンディングノイズの発生頻度が低い)パラメータを抽出することができる。
【0100】
さらに、本実施形態においては、より確実に最良の設定を行うため、不良機体であるか否かを判定する。すなわち、上述のようにして最良のパラメータを選択したとしても、まれに、キャリブレーションを完了するには不十分な不良機体が存在し得る。例えば、総てのパラメータについてのバンディングノイズ値が許容値を超えている場合には、最小の合計値によって最良のパラメータを選択しても、キャリブレーションが完了したとは言えない。また、上記合計値が最小でも主走査の両端においてバンディングノイズ値に大きな差が生じている場合には、主走査方向と副走査方向とが直角になるべきところ、傾いていると考えられる。従って、この場合にもキャリブレーションが完了したとすべきではない。
【0101】
そこで、本実施形態においては、ステップS415にて最良のパラメータにおけるバンディングノイズ値が所定の閾値以下であるか否かを判別する。すなわち、予めGrパッチについて閾値T1,Vパッチについて閾値2を設定してHDD14に記録しておき、最良のパラメータにおける2つのGrパッチのバンディングノイズ値と閾値1を比較し、2つのVパッチのバンディングノイズ値と閾値2を比較する。尚、閾値1,閾値2のそれぞれは、許容されるバンディングノイズの限界値に相当するバンディングノイズ値である。
【0102】
ステップS415にて最良のパラメータにおけるバンディングノイズ値が閾値以下であると判別されたときには、ステップS420にて両端のパッチのバンディングノイズ値の差を算出する。このとき、同色、すなわち、Grパッチ同士、Vパッチ同士の差分を算出する。ステップS425では、当該差分が所定の閾値3以下であるか否か判別する。ここで、閾値3は両端のパッチにおけるバンディングノイズ値の差分として許容できる値であり、予め決定される。
【0103】
ステップS425にて、上記差分が所定の閾値3以下であると判別されたときには、上記ステップS410で抽出された最良パラメータによってバンディングノイズを抑えることができ、プリンタ40に対する設定値として適切であることも確認されたことになる。そこで、パラメータ設定部22aは、ステップS430において当該パラメータをプリンタ40に設定する。ステップS430の処理を終えると、図6におけるステップS130に相当する処理が終了し、この処理の結果、プリンタ40においては、最もバンディングノイズが抑えられる紙送り量に設定されたことになる。
【0104】
本実施形態においては、当該紙送り量の調整を実施した後、さらに使用ノズルについての調整も実施するようになっており、図6のステップS140〜S170にて使用ノズルを調整するための処理を実施する。この処理は上記図7〜図9に示す処理と同様であり、処理対象が使用ノズルである点が異なる。すなわち、パラメータ値を図4に示すように変更して調整用パターンを印刷し、バンディングノイズ値を解析し、最良のパラメータになるように設定を行う。この処理の結果、最もバンディングノイズが抑えられるノズルの組を使用して印刷を実行するように設定される。むろん、送り量の変更の方がバンディングノイズに大きく影響を与えるため、上述の閾値1〜閾値3等の値は紙送り量の調整と使用ノズルの調整とで異なる値であり、前者の方が大きな値である。
【0105】
尚、ステップS415にて最良のパラメータにおけるバンディングノイズ値が所定の閾値以下であると判別されないとき、およびステップS425にて上記差分が所定の閾値3以下であると判別されないときには、その対応を促すための処理を行う。本実施形態においては、バンディングノイズに対する影響が大きい送り量が処理対象パラメータとなっているときには再調査を促し、バンディングノイズに対する影響が小さい使用ノズルが処理対象パラメータとなっているときには印刷済の調整用パターンから最も良いパターンを選択する作業を促すようにしてある。
【0106】
すなわち、図9に示すフローは上記ステップS130および上記ステップS170に適用されるため、ステップS435において、処理対象となっているパラメータの種類を判別する。同ステップS435において、パラメータの種類が送り量を特定するためのパラメータであると判別されたときには、ステップS440にて上記ディスプレイ17を制御し、プリンタ40の機体が不良であることを表示する。この表示がなされた場合には、キャリッジの高さ調整等の手動調整を実施する。このため、キャリブレーションモジュール22による処理は終了する。
【0107】
上記ステップS435において、パラメータの種類が使用ノズルを特定するためのパラメータであると判別されたときには、ステップS445にて上記ディスプレイ17を制御し、バンディングノイズ値が閾値を超えている旨の表示を行う。さらに、当該表示および印刷済の調整用パターンを参照して利用者が最も好ましいパラメータ値を選択入力するようになっており、ステップS450では上記キーボード16aやマウス16b等を介して入力されるパラメータ値を受け付ける。そして、ステップS455では、パラメータ設定部22aが当該パラメータをプリンタ40に設定する。
【0108】
すなわち、使用ノズルを特定するためのパラメータについて最良のパラメータ値を設定する前には、送り量を特定するためのパラメータについて最良のパラメータ値に設定されており、この結果、大きなバンディングノイズが発生しないように調整されている。従って、本実施形態においては、使用ノズルを特定するためのパラメータを変更することによって閾値を超えるバンディングノイズ値になっているとしても、ノイズを抑えるパラメータ値は得られると想定し、選択によってパラメータ値を決定することにしている。
【0109】
むろん、この処理は一例であり、他にも種々の処理を採用可能である。例えば、再度の調整を行うために使用ノズルを特定するためのパラメータをさらに変更して調整用パターンの印刷を実行し、同様の処理を行っても良い。また、上記ステップS445における表示に際して、参考のために各パラメータについて算出されたバンディングノイズ値をディスプレイ17に表示しても良い。
【0110】
(4)バンディングノイズ値の算出例:
図10は、バンディングノイズ値を算出する処理の一例を説明するための図である。典型的なバンディングノイズは、印刷結果において主走査方向に平行に、意図せずに生じる線状の部位であり、周りの画像と比較して異なる色(明るい部分や暗い部分)が主走査方向に連続することによって発生する。そこで、印刷結果の分布情報から明度情報を抽出すれば、バンディングノイズを解析することができる。また、バンディングノイズは、副走査方向には何らかの周期性を伴って発生するので、副走査方向の明度変化をフーリエ変換すれば、バンディングノイズが生じている画像においては、所定の空間周波数においてパワースペクトル値が大きくなると考えられる。
【0111】
そこで、パッチの分布情報から副走査方向の明度変化を抽出し、1次元FFTを利用すれば、副走査方向に周期的に発生するバンディングノイズの発生程度を評価することができる。図10の上部には横軸を位置(単位0.1mm)、縦軸を明度L*としてあるパッチの明度変化を示している。すなわち、副走査方向の位置毎の明度値をプロットしている。このような1次元の明度変化を取得することができれば、このデータをFFT等によってフーリエ変換することにより、図10の下部に示すようなパワースペクトルを取得することができる。
【0112】
このパワースペクトルにおいては、何らかの周期性を示す明度変化が多ければスペクトル値がピーク状になるので、バンディングノイズが発生していれば、パワースペクトルのピーク数やピークにおけるスペクトル値が大きくなる。従って、パワースペクトル値を積分すれば、ノイズの発生程度を評価することができる。そこで、図10の下部に示すようなFFT結果を空間周波数方向に積分すれば、パッチのバンディングノイズを評価するバンディングノイズ値を取得することができ、各パッチについて同様の処理を行えば、パッチ毎のバンディングノイズ値を取得することができる。
【0113】
尚、バンディングノイズ値を取得するためには、種々の処理が可能であり、上述の処理であってもさらに高精度にノイズを評価するために種々の工夫を加えることができる。例えば、パッチを副走査方向に長い複数の領域に分割し、この分割領域毎に1次元の明度分布情報を取得してバンディングノイズ値を取得してもよい。分割領域毎に分布情報あるいはバンディングノイズ値を取得すれば、これらを分割領域毎に比較することにより、他の領域と異なる特異な領域を抽出することができる。この領域には他の領域には含まれないノイズ等が含まれると考えられるので、予めこの領域の情報を除去し、残りの領域のみでバンディングノイズを評価すれば、高精度にバンディングノイズの発生程度を評価することができる。
【0114】
また、パッチを複数の領域に分割して解析を行うと、副走査方向に生じるノイズの周期を確実に顕在化することができ、高精度の解析が可能である。すなわち、パッチの分布情報を光学読取装置等で読み取る際に印刷用紙が傾斜していると、読み取り時の副走査方向とパッチを印刷する際の副走査方向とが異なる。従って、読み取り結果の副走査方向においては、パッチ上のバンディングノイズの幅より広い幅に渡ってバンディングノイズが存在する。この状況でパッチの全体について読み取り時の主走査方向に明度を平均化してしまうと、印刷時の副走査方向に周期的に発生しているノイズに起因する明度変化が分かりづらくなってしまう。
【0115】
しかし、分割領域毎に平均化して処理を行うのであれば、各分割領域の主走査方向の長さがパッチ全体より短いので、傾斜に起因してバンディングノイズが副走査方向に渡って存在する範囲が短くなる。この結果、バンディングノイズの周期を確実に検出することができる。フーリエ変換による解析に際しては、ノイズの周期性を確実に検出しなければ高精度の解析ができないが、以上のように分割すれば確実にその周期性を反映したフーリエ変換結果を得ることができ、正確に解析することができる。
【0116】
また、上記分布情報に対して、よりノイズを顕在化するための補正を行ってもよい。例えば、高明度のパッチ(図3ではGr)では、低明度の線がバンディングノイズになり易いという洞察のもと、明度L*が所定の基準より小さい場合に当該明度と基準との差分をより強調する補正を行う。同様に低明度のパッチ(図3ではV)では、高明度の線がバンディングノイズになり易いという洞察のもと、明度L*が所定の基準より大きい場合に当該明度と基準との差分をより強調する補正を行う。
【0117】
所定の基準としては、各パッチの代表的な明度値であれば良く、例えば、明度Lの変化傾向値を採用可能である。すなわち、明度Lの変化はバンディングノイズを反映しているが、バンディングノイズは明度Lが周りの画像と比較して変化しているか否かによって検出されるので、明度変化の基準を把握するためにその変化傾向を示す値を採用する。本実施形態におけるパッチは一様な色で印刷を行うための印刷データで印刷されるので、基準の明度はほぼ一定であるはずであるが、実際には変化傾向(低周波のうねり)が見られる。
【0118】
そこで、位置に対する明度の変化にローパスフィルタを適用することによって変化傾向値を算出すると好ましい。例えば、ある点の変化傾向値は、その点を中心に副走査方向に前後2mmの範囲(に相当する画素)で明度値を取得し、平均化するなどして算出可能である。また別の例として、ある点の変化傾向値は、その点を中心に副走査方向に前後2mmの範囲(に相当する画素)で明度値を取得し、メディアンフィルタ等によって中央値を求め、それを6次近似するなどしても算出可能である。むろん、変化傾向は、明度の全体的な変化の傾向を示す値であれば良く、平均を算出する範囲は2mmに限定されないし、他にも種々の手法によって算出可能である。
【0119】
さらに、バンディングノイズ値を算出するに際して、パワースペクトルのバックグラウンドを予め除去しても良い。すなわち、バンディングノイズは上述のように周期的に発生するので、図10の下部に示すようなパワースペクトルにおいては、各ピークがバンディングノイズによって生じたスペクトルであると考えられる。そこで、全空間周波数に渡って存在するバックグラウンドを算出し、スペクトル値から除去すれば、より正確にバンディングノイズを評価することができる。尚、バックグラウンドは種々の手法によって算出可能であるが、例えば、パワースペクトル値に対してメディアンフィルタを適用し、得られた結果を6次関数でフィッティングすることによってバックグラウンドを算出可能である。
【0120】
さらに、人間の目の視覚特性を考慮してバンディングノイズ値を算出しても良い。すなわち、人間の視覚にとって認識しやすい空間周波数と認識できない空間周波数とが存在するので、人間が知覚するバンディングノイズをより確実に解析するために視覚特性によるフィルタ処理を行う。視覚特性によるフィルタとしては人間の視覚特性を反映した各種フィルタを採用可能であり、例えば、視覚伝達関数(VTF:Visual Transfer Function)を利用しても良いし、単に一定の空間周波数のみ(例えば0.2mm〜4mm)を残す構成であっても良い。
【0121】
さらに、上述のようにパッチの色毎に異なる強調を行った場合、バンディングノイズの合算を評価するに際して予めバンディングノイズ値を規格化しても良い。例えば、図3に示すパターンにおいて、列毎に同色のパッチについてのバンディングノイズ値を取得し、その最小値で除する処理を行えば、規格化がなされたことになる。同図の列Aで説明すれば、最小のバンディングノイズ値はパラメータ#3の値15であり、パラメータ#1〜#5のバンディングノイズ値”25,21,15,22,28”を”15”で除すことで規格化を行う。
【0122】
(5)他の実施形態:
以上の実施形態は、本発明を実現するための例であり、むろん他の構成や処理手順を採用することも可能である。例えば、インクジェットプリンタではなく、レーザープリンタに本発明を適用しても良い。この場合、バンディングノイズの発生要因としては、上記紙送り量の他、レーザーの出力等、種々の要因に着目することができる。また、ノズルの配列も上記図4に示す配列に限らず、1色のインクについて2列のノズルを形成しても良いし、インクの色数も7色に限られない。
【0123】
さらに、使用ノズルを変更する場合に、図4に示すように使用ノズル数を固定する構成が必須というわけではない。この場合、使用ノズル数を変更して得られる複数のノズルの組をパラメータデータ14cで特定するようにしておき、パラメータ設定部22aにおける設定でこれらを適宜変更して調整用パターンを印刷する。使用ノズルの数や使用するノズルの位置をどのように変更したとしても、上述の調整用パターンにおけるバンディングノイズ値の算出によって、確実にバンディングノイズを抑えるパラメータを取得することができる。
【0124】
さらに、調整用パターンも上述のようなパターンに限定されるわけではない。例えば、複数のインク色のそれぞれから吐出されるインク滴のみで構成するパッチを主走査方向に並べても良い。この結果、色毎に個別にバンディングノイズが発生し得るか否かを検出することができる。むろん、このパターンに対してさらに主走査方向の端部で対称の位置に例えばグレーのパッチを加えても良く、種々の構成を採用可能である。また、ノイズに影響を与え易い要因を先に調整するという意味では、各パラメータによって複数のパッチを印刷することは必須ではない。
【0125】
さらに、パラメータの種類も上述のような送り量を特定するためのパラメータと使用ノズルを特定するためのパラメータとに限られない。例えば、プリンタにおいて印刷用紙を搬送する際の送り速度を特定するパラメータを採用可能である。この場合、上記図5に示すEEPROM44に対して送り速度の設定値を記憶可能に構成し、CPU41のパラメータ設定部41bは当該送り速度の設定値を参照して紙送り機構48における送り速度を設定する。
【0126】
また、印刷ヘッドユニット47においてノズルからインクを吐出させる際にピエゾ素子に印加する電圧を特定するパラメータを採用しても良い。すなわち、この電圧を調整することにより、吐出インク1滴当たりのインク重量を調整することができる。そこで、上記図5に示すEEPROM44に対して印加電圧の設定値を記憶可能に構成し、CPU41のパラメータ設定部41bは当該印加電圧の設定値を参照して印刷ヘッドユニット47におけるピエゾ素子の駆動電圧を設定する。
【0127】
さらに、プリンタ40のプラテンに図示しない印刷用紙の吸引機構を形成し、吸引機構から印刷用紙に作用させる負圧(吸引力)をパラメータによって可変にする構成を採用しても良い。この場合、上記図5に示すEEPROM44に対して吸引力の設定値を記憶可能に構成し、CPU41のパラメータ設定部41bは当該吸引力の設定値を参照して図示しない吸引機構における吸引力を設定する。
【0128】
さらに、PRTDRV20 における処理に際して選択肢を設け、パラメータによってその選択肢を特定することで、各選択肢の中から最もノイズを抑える選択肢を選択するように構成しても良い。むろん、この場合もノイズに大きく影響を与える選択肢を先に調整することによって確実かつ効率的にキャリブレーションを実施することができる。
【0129】
選択肢を設けることが可能な処理の例としては、色変換処理が挙げられる。すなわち、色変換処理に際しては、プロファイルを参照するが、このプロファイルは印刷条件や作成時の思想等によって多種多様なプロファイルを作成可能である。そこで、複数のプロファイルを作成しHDD14に記録しておく。そして、パラメータによってこれらのプロファイルを特定して画像処理部21が色変換処理を実施する際に当該特定されたプロファイルを参照する。
【0130】
また、1ドットで複数の重量のインク滴(例えば、大中小)を吐出可能に構成したプリンタ40においては、上記色変換後にさらに別のプロファイル(大中小振分プロファイルと呼ぶ)を参照して大中小各ドットの階調値を決定する。この大中小振分プロファイルも印刷条件や作成時の思想等によって多種多様なプロファイルを作成可能である。そこで、複数の大中小振分プロファイルを作成しHDD14に記録しておく。そして、パラメータによってこれらの大中小振分プロファイルを特定して画像処理部21が大中小の振分を実施する際に当該特定された大中小振分プロファイルを参照する。
【0131】
さらに、通常のプリンタにおいては、ハーフトーン処理を実施するが、このハーフトーン処理には各種のアルゴリズムが存在するので、アルゴリズムを選択できるように構成することも可能である。この場合、複数のハーフトーンアルゴリズムを実行できるようにそのプログラムをHDD14に記録しておく。そして、パラメータによってこれらのハーフトーンアルゴリズムを特定し、画像処理部21がハーフトーンアルゴリズムを実行する際に当該特定されたハーフトーンアルゴリズムのプログラムを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の概略を説明するための説明図である。
【図2】コンピュータの構成を示すブロック図である。
【図3】調整用パターンを示す図である。
【図4】使用ノズルについてのパラメータデータを説明する説明図である。
【図5】プリンタの構成を示すブロック図である。
【図6】キャリブレーション処理の手順を示す概略フローチャートである。
【図7】調整用パターンの印刷処理を示すフローチャートである。
【図8】スキャン処理を示すフローチャートである。
【図9】最良パラメータの選択処理を示すフローチャートである。
【図10】バンディングノイズ値を算出する処理の説明図である。
【符号の説明】
【0133】
10…コンピュータ、14a…調整用パターンデータ、14b…印刷条件データ、14c…パラメータデータ、14d…画像データ、21…画像処理部、22…キャリブレーションモジュール、22a…パラメータ設定部、22b…パラメータ値取得部、30…スキャナ、40…プリンタ、41a…印刷実行部、41b…パラメータ設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類以上のパラメータを設定して駆動する印刷装置に対して1種類のパラメータを逐次変更しながら設定してパッチを印刷させる印刷手段と、
当該パッチについてその記録材の分布を示す分布情報を取得し、同取得した分布情報に基づいてノイズを抑えるために上記逐次変更した種類のパラメータとして設定すべきパラメータ値を取得するパラメータ値取得手段とを具備し、
上記印刷手段とパラメータ値取得手段とによる処理を少なくとも2回以上実施して設定すべきパラメータ値を取得するにあたり、ノイズの発生程度に相対的に大きく影響を与える種類のパラメータについては相対的に小さく影響を与える種類のパラメータより先に処理を行うことを特徴とする最適値取得装置。
【請求項2】
上記パラメータ値は、印刷装置にて記録する記録材の副走査方向の位置に影響を与える設定値であることを特徴とする上記請求項1に記載の最適値取得装置。
【請求項3】
上記2種類以上のパラメータは、印刷装置において記録媒体を送る際の送り量を特定するためのパラメータと印刷装置の印刷ヘッドに形成された複数のノズルの中の使用ノズルを特定するためのパラメータとを含むことを特徴とする上記請求項1または請求項2のいずれかに記載の最適値取得装置。
【請求項4】
上記2種類以上のパラメータは、印刷装置において記録媒体を送る際の送り速度を特定するためのパラメータと印刷装置において単位ドット当たりに記録する記録材の量を特定するためのパラメータと印刷装置において記録媒体をプラテンに吸引する際の吸引力を特定するためのパラメータとのいずれかまたは組み合わせを含むことを特徴とする上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の最適値取得装置。
【請求項5】
上記2種類以上のパラメータは、印刷対象の画像を示す画像データの表色系を変換する際に参照するプロファイルを特定するためのパラメータと印刷装置において単位ドット当たりの記録材の量が可変である場合に当該記録材の量を決定する際に参照するプロファイルを特定するためのパラメータと印刷対象の画像を示す画像データにおいて単位画素当たりの階調数を変更するためのアルゴリズムを特定するためのパラメータとのいずれかまたは組み合わせを含むことを特徴とする上記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の最適値取得装置。
【請求項6】
上記パッチは、人間の目に上記ノイズが認識されやすい色を含むことを特徴とする上記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の最適値取得装置。
【請求項7】
上記パッチは、当該パッチを印刷する印刷装置において上記ノイズが高頻度で発生する色を含むことを特徴とする上記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の最適値取得装置。
【請求項8】
上記パッチには、印刷装置で使用可能な総ての色の記録材が含まれることを特徴とする上記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の最適値取得装置。
【請求項9】
上記パラメータ値取得手段は、上記記録材が分布する特性を示す分布特性値に基づいてパッチ毎にノイズの発生程度を示す値を取得し、当該ノイズの発生程度を示す値をパラメータ値毎に合算した値に基づいて上記ノイズを抑えるためのパラメータ値を取得することを特徴とする上記請求項1〜請求項8のいずれかに記載の最適値取得装置。
【請求項10】
上記パラメータ値取得手段は、上記ノイズの発生程度を示す値が予め決められた基準を満たすか否かを判別し、上記ノイズの発生程度に相対的に大きく影響を与える種類のパラメータが当該基準を満たさない場合には所定の表示装置に印刷装置が不良である旨の表示を行い、ノイズの発生程度に相対的に小さな影響を与える種類のパラメータが当該基準を満たさない場合には上記パッチを印刷する際に設定したパラメータ値のいずれかを指定した入力を所定の入力装置を介して受け付けることを特徴とする上記請求項1〜請求項9のいずれかに記載の最適値取得装置。
【請求項11】
上記分布情報は光学読取装置によって取得され、当該分布情報の取得に先だって光源安定化のためにプレビュースキャンあるいは光源を発光させる処理を実施することを特徴とする上記請求項1〜請求項10のいずれかに記載の最適値取得装置。
【請求項12】
上記請求項1〜請求項11のいずれかに記載の最適値取得装置が取得したパラメータ値で上記印刷装置を駆動するように設定するパラメータ設定手段を具備することを特徴とするキャリブレーション装置。
【請求項13】
印刷装置における可変の第1パラメータを逐次複数のパラメータ値に設定し、パラメータ値毎にパッチを印刷させる第1印刷手段と、
当該パッチについてその記録材の分布を示す分布情報を取得し、同取得した分布情報に基づいてノイズを抑えるために上記第1パラメータとして設定すべきパラメータ値を取得する第1パラメータ値取得手段と、
印刷装置における可変のパラメータにつき、上記第1パラメータを上記取得したパラメータ値に設定し、当該第1パラメータと異なる第2パラメータを逐次複数のパラメータ値に設定し、パラメータ値毎にパッチを印刷させる第2印刷手段と、
当該パッチについてその記録材の分布を示す分布情報を取得し、同取得した分布情報に基づいてノイズを抑えるために上記第2パラメータとして設定すべきパラメータ値を取得する第2パラメータ値取得手段とを具備することを特徴とする最適値取得装置。
【請求項14】
印刷装置を駆動する際に最適なパラメータの値を取得する最適値取得プログラムであって、
少なくとも2種類以上のパラメータを設定して駆動する印刷装置に対して1種類のパラメータを逐次変更しながら設定してパッチを印刷させる印刷機能と、
当該パッチについてその記録材の分布を示す分布情報を取得し、同取得した分布情報に基づいてノイズを抑えるために上記逐次変更した種類のパラメータとして設定すべきパラメータ値を取得するパラメータ値取得機能とをコンピュータに実現させるにあたり、
上記印刷機能とパラメータ値取得機能とによる処理を少なくとも2回以上実施して設定すべきパラメータ値を取得するにあたり、ノイズの発生程度に相対的に大きく影響を与える種類のパラメータについては相対的に小さく影響を与える種類のパラメータより先に処理を行うことを特徴とする最適値取得プログラム。
【請求項15】
上記請求項14に記載の最適値取得プログラムによって取得したパラメータ値で上記印刷装置を駆動するように設定するパラメータ設定機能をコンピュータに実現させることを特徴とするキャリブレーションプログラム。
【請求項16】
印刷装置を駆動する際に最適なパラメータの値を取得する最適値取得方法であって、
少なくとも2種類以上のパラメータを設定して駆動する印刷装置に対して1種類のパラメータを逐次変更しながら設定してパッチを印刷させる印刷工程と、
当該パッチについてその記録材の分布を示す分布情報を取得し、同取得した分布情報に基づいてノイズを抑えるために上記逐次変更した種類のパラメータとして設定すべきパラメータ値を取得するパラメータ値取得工程とを具備し、
上記印刷工程とパラメータ値取得工程とによる処理を少なくとも2回以上実施して設定すべきパラメータ値を取得するにあたり、ノイズの発生程度に相対的に大きく影響を与える種類のパラメータについては相対的に小さく影響を与える種類のパラメータより先に処理を行うことを特徴とする最適値取得方法。
【請求項17】
上記請求項16に記載の最適値取得方法で取得したパラメータ値で上記印刷装置を駆動するように設定するパラメータ設定工程を具備することを特徴とするキャリブレーション方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−35745(P2006−35745A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221652(P2004−221652)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】