説明

有害物質含有液の処理方法及び装置

【課題】 各種有機系汚染物、悪臭成分、細菌類などの有害物質を含有する液の無害化処理、特にオゾンによる無害化効率を向上させた有害物質含有液の無害化処理。
【解決手段】 有害物質含有液にオゾンを添加、混合し、前記含有液を、オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着するペンタシル型ボロシリケート、メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)及び部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種の吸着剤を充填した充填塔に流過させ、液中の有害物質をオゾンの作用により無害化する有害物質含有液の処理方法、並びに上記吸着剤充填塔と、上記吸着剤充填塔に有害物質を含有する液を供給する供給管と、上記供給管に接続され、液中にオゾンを添加するオゾン発生器と、前記吸着剤充填塔から処理済みの処理液を排出する排出管とを備えた有害物質含有液の処理装置であり、汚染成分を上記吸着剤に吸着させた後に、オゾン含有ガス又はオゾン含有水で処理しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種有機系汚染物、悪臭成分、細菌類などの有害物質を含有する液の無害化処理方法及び装置、特にオゾンによる無害化効率を向上させた有害物質含有液の無害化処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種有機系汚染物、悪臭成分、細菌類などの有害物質を含有する汚染液の無害化処理方法の一つとして、オゾンによる酸化処理方法がある。オゾンは自己分解が進行することから、処理液中に残存して人体に影響を及ぼす危険性は少なく、クリーンな処理剤として今後さらに利用分野が拡大していくものと予想される。
オゾンによる処理は、有害物質含有液中にオゾン発生器(オゾナイザー)からのオゾン含有液を注入することによって行うが、通常は液中の有害物質の濃度は非常に希薄なため、有害物質の酸化分解、殺菌等に寄与する前に分解するオゾンの割合も多く、無害化効率が低いという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような従来技術における問題点を解決し、安全性の高い酸化剤であるオゾンを使用して各種有機系汚染物、悪臭成分、細菌類などの有害物質を含有する液を効率よく処理することができる有害物質含有液処理方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前記課題を解決する手段として次の(ア)〜(カ)の構成を採るものである。
(ア) (A)有害物質含有液にオゾンを添加、混合し、
(B)前記含有液を、オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着する(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種の吸着剤を充填した充填塔に流過させ、
(C)液中の有害物質をオゾンの作用により無害化する、
ことを特徴とする有害物質含有液の処理方法。
(イ) (D)前記(C)で無害化されて得られた処理液をオゾン分解剤と接触させて残留するオゾンを分解することを特徴とする上記記載の有害物質含有液の処理方法。
(ウ) オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着する(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種の吸着剤層を設けた吸着剤充填塔と、上記吸着剤充填塔に有害物質を含有する液を供給する供給管と、上記供給管に接続され、液中にオゾンを添加するオゾン発生器と、前記吸着剤充填塔から処理済みの処理液を排出する排出管とを備えてなることを特徴とする有害物質含有液の処理装置。
(エ) 前記吸着剤充填塔の後流側に、リークするオゾンを分解するオゾン分解剤層が設けられてなることを特徴とする上記記載の有害物質含有液の処理装置。
(オ) 汚染成分を吸着し、かつオゾンを吸着する吸着剤を充填した吸着塔に、上記汚染成分含有水を導入して上記汚染成分を上記吸着剤に吸着させ、清浄化水を吸着塔から流出させ、上記汚染成分含有水の導入を停止した後に、上記汚染成分を吸着した吸着塔にオゾン含有ガス又はオゾン含有水を導入して上記吸着剤表面で上記汚染成分を酸化分解する汚染成分含有水の処理方法であって、上記吸着剤は(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種である汚染成分含有水の処理方法。
(カ) 吸着剤床を収容した吸着塔が並列に2以上存在し、1つの吸着塔に上記汚染成分含有水を導入して上記汚染成分を上記吸着剤に吸着させ、清浄化水を吸着塔から流出させる吸着工程に在る間に、吸着工程を終了した別の吸着塔にオゾン含有ガス又はオゾン含有水を導入して上記吸着剤表面で上記特定の汚染成分を酸化分解する酸化分解工程を施し、次いでオゾン含有ガス又はオゾン含有水の導入を、吸着工程を終了した吸着塔から、酸化分解工程を終了した吸着塔に切り換え、上記の工程を繰り返す、汚染成分含有水の処理方法であって、上記吸着剤は(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種である汚染成分含有水の処理方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明の方法によれば、有害物質含有液のオゾンによる処理において、オゾンを効率よく吸着し、かつ有害物質を吸着する吸着剤を使用することによりオゾンの有効利用率が向上し、処理速度が速く高効率な上下水処理、養殖水槽淡水、海水浄化が可能となる。また、オゾンの利用率(有害物質の酸化等に寄与する率)が向上すること及び使用する吸着剤のオゾン吸着力が高いことなどから、排出される処理済み液ヘのリークオゾンの量も少なく、さらに、必要により活性炭などのオゾン分解剤層を設けることによってオゾンのリークを完全に防止することができる。また、本発明の装置によれば、有害物質を含有する液のオゾンによる処理を効率よく低い運転コストで行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明においては、(A)有害物質含有液にオゾンを添加、混合し、(B)前記含有液を、オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着する特定の吸着剤を充填した充填塔に流過させ、(C)液中の有害物質をオゾンの作用により無害化する。
上記有害物質含有液として、環境庁指定の有害物質であるCOD(chemical oxygen demand)を高値に示す成分、VOC(Volatile Organic Compound:イソプロピルアルコール、酢酸エチル、BTX類、ハロゲン化有機物)やダイオキシンなどの各種有機系汚染物、メルカプタン、硫化水素などの悪臭成分、細菌類などの有害物質を含有する汚染液が挙げられる。
オゾンを供給するためのオゾン発生器(オゾナイザー)としては、公知の無声放電方式、紫外線ランプ方式、水電解方式などいずれの方式のものでも適用できる。オゾンを添加する方法として、上流に配置したエジェクターにオゾンを吸引して処理液に混合する方法と、液相に挿入したオゾン散気管でマイクロバブルを発生させて気−液接触により注入する方法が一般的である。オゾンの添加量は処理液中の有害成分の種類、濃度等によって適宜設定すればよいが、通常の汚水液処理においては有害成分1モルに対し1〜20モル、好ましくは3〜10モル程度である。
【0007】
本発明で使用する吸着剤は、オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着するものでなければならない。このような本発明の吸着剤は、(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種である。
理論によって本発明を限定するものではないが、上記本発明のオゾン吸着剤は、従来オゾン吸着剤として使用されるアルミノシリケートと比べて、強いルイス酸点を固体表面に持たないため、オゾン分解が少なくかつオゾン吸着能が高いと考えられる。これは、吸着剤のアンモニアTPD(昇温脱離曲線:Temperature Programmed Desorption)試験において、強酸点に対応すると考えられるアンモニアβピーク(高温ピーク)がアルミノシリケートよりも強いピークを示すことを根拠としている。
従って、本発明のオゾン吸着剤は、オゾンとVOC(液相ではCODの高い成分でもある)を同時吸着してオゾン、VOCを濃縮し、吸着剤の結晶構造内でオゾンが分解されることなく吸着されてVOCが効率良く酸化分解される効果を奏する。
このように、本発明の吸着剤は、オゾンの吸着能力が高く、しかも吸着したオゾンの分解率が低く、かつ有害物質を吸着する特性を有する為液相での安定した処理が可能である。
【0008】
ペンタシル型ボロシリケート
本発明において用いるオゾン吸着剤の内のペンタシル型ボロシリケートは、いわゆるメタロシリケートとして知られているものである。メタロシリケートは、ゼオライト中のアルミニウムの一部又は全部を特定の元素で置換された構造を有するものを意味し、非晶質を含んでいるものも使用可能である。アルミニウムと置換する元素としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除くほとんど全ての金属元素が使用可能であるが、本発明では、ガリウム、ホウ素を挙げることができる。置換する元素は、一種でも二種以上でもよい。
本発明のペンタシル型ボロシリケートのSiO2/B23比は、好ましくは20〜1000、更に好ましくは20〜200である。20未満であると触媒活性点としてのオゾン分解を発現し、一方、1000を超えると従来の高シリカゼオライトに対する優位性はない。
【0009】
水熱合成法により得られるペンタシル型ボロシリケート(S−1);
ペンタシル型ボロシリケートは、通常行なわれるペンタシル型ゼオライトの製造方法と類似の水熱合成法で合成することができる。すなわち、シリカ、シリカゾル、ケイ酸ソーダ等のシリカ源、ホウ酸、アミン等の有機塩基その他のテンプレート、水、そして必要に応じて苛性ソーダ、苛性カリ等のアルカリ源を含む原料混合物を、水熱処理するとボロシリケートに含まれるホウ酸と等モルのプロトン(H+)又はプロトンと交換可能なカチオン(Na、K、Mg、Ca等)を含むペンタシル型ボロシリケートを得ることができる。この水熱処理の条件は、温度は約50℃から300℃位まで、反応時間は約1時間から数ヶ月が適用可能で、一般には高温条件程、短時間で水熱処理反応が進み、約80%の結晶化が終了する。従って、実用的には、温度は約100〜250℃、反応時間は数時間から1週間程度までが好ましい。
上記製造方法により好ましい範囲内のSiO2/B23比を有するペンタシル型ボロシリケートを得ることが出来る。SiO2/B23比はシリカ源濃度に対するホウ酸濃度を変更することにより適宜変更できる。
水熱合成法で合成したペンタシル型ボロシリケートのX線回折ピークを図1に示す。図1よりMFI型結晶であることが確認できる。又、SiO2/B23比は、元素分析(湿式分析)により決定でき、図1に示される実施例吸着材料の場合は200である。又、ホウ素と等モルの水素も含まれた。
水熱合成法により得られるペンタシル型ボロシリケートの特徴は、ボロシリケートの優れた均一分散性であり、SiO2/B23比が低いものの製造も安定して行なうことが出来る。
【0010】
含浸法により得られるペンタシル型ボロシリケート(S−2);
ペンタシル型ボロシリケートは、いわゆる含浸法によって調製することもできる。すなわち、ホウ酸、ホウ酸中のホウ素と等モルのプロトン(H+)を含む硝酸、硫酸、塩酸等を水に溶解し、これにシリカライト(人工ゼオライト;100%シリカ)を加えて攪拌してスラリーを得、このスラリーをエバポレーター等を使用して水分を吸引除去して粉末を得る。この粉末を、所望に応じて加熱して乾燥させた後に、必要であれば約400〜700℃で、0.5〜3時間焼成する等して、ホウ素と等モルのプロトン(H+)を含むペンタシルボロシリケートを最終的に調製する。上記製造方法によっても好ましい範囲内のSiO2/B23比を有するペンタシル型ボロシリケートを得ることが出来る。
具体的には、SiO2/Al23比1000以上のペンタシル型ゼオライトにホウ酸を加えて、ろ過、乾燥した後400〜700℃程度の高温に保持することで、結晶表面のホウ酸が結晶内に固体−固体拡散してペンタシル型ボロシリケート構造を採ることが出来る。又、SiO2/Al23比が1000以下の原料を、硝酸溶液等に浸積して90℃で3時間程度保持しても、結晶中のアルミニウムが離脱してSiO2/Al23比1000以上のペンタシル型ゼオライトを得ることが出来るので、これを出発原料としてSiO2/B23比20〜1000のボロシリケートをアルミノシリケート構造の立体障害を受けることなく調製することが出来る。
含浸法で合成したペンタシル型ボロシリケートのX線回折ピークを図2に示す。図2よりMFI型結晶であることが確認できる。図2に示される実施例吸着材料のSiO2/B23比は200である。又、ホウ素と等モルの水素も含まれた。含浸法でもSiO2/B23比はシリカ源濃度に対するホウ酸濃度を変更することにより適宜変更できる。
【0011】
メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)
本発明のメソポーラス型シリコアルミノホスフェートのSiO2/P25モル比は好ましくは20〜1000、更に好ましくは50〜300である。20未満であるとメソ孔内にアルミノフォスフェートが高濃度に存在して細孔容積が減少し、VOC、オゾンとも吸着量、吸着速度が減少してオゾン吸着反応が低下する。一方、1000を超えると従来の高シリカゼオライトに対する優位性はない。
低温合成法により得られるシリコアルミノフォスフェート(S−3);
本発明のシリコアルミノホスフェートは、下記の通りにして調製することができる。低pHでモノケイ酸とのミセル形成能に優れた3級アンモニウム塩であるアンモニウムブロミドのような溶媒を溶解した水に、リン酸及びテンプレート剤を加え、これを激しく撹拌しながら、水に溶解したケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムを加え、さらに水に溶解したアルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウムを少しずつ加えて懸濁液とし、この懸濁液を撹拌する。上記添加、溶解、攪拌作業は、通常室温で行われる。液中に生成した沈殿物をろ過して多孔体粉末を分離した後に、水で洗浄し、電気炉に入れて、加熱して表面水分を除去した後に、昇温して溶媒を熱分解除去してシリコアルミノホスフェートを得ることができる。得られるシリコアルミノホスフェートはメソポーラス材料であり、均一で規則的な配列のメソ孔(直径2〜50nm)を有する多孔質材料(多孔体)であり、構造的には「MCM−41」(2〜50nmの均一メソスコピックサイズの細孔を有するシリカ)と良く似た2次元柱状構造を有している。
本発明のメソポーラス型シリコアルミノホスフェートのメソ孔の直径は、好ましくは12〜100nmである。
上記製造方法により好ましい範囲内のSiO2/P25比を有するシリコアルミノホスフェートを得ることが出来る。SiO2/P25比はシリカ源濃度に対するリン酸濃度、アルミニウム塩濃度を変更することにより適宜変更できるが、原則的にリン酸/アルミニウム塩モル比1である。
上記低温合成法で合成したメソポーラス型シリコアルミノホスフェートのX線回折ピークを図3に示す。図3よりメソ多孔体の柱状構造とSAPO構造が確認できる。又、SiO2/P25比は、元素分析(湿式分析)により決定でき、図3に示される実施例吸着材料の場合は200である。
【0012】
SAPO構造を有するペンタシル型ゼオライト
SAPO構造とは、アルミノリン酸ゼオライトの略称であり4価のSiの周りに3価のアルミニウムと5価のリンが酸素を介して結合した結晶構造である。
本発明のSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの全体を平均したSiO2/P25モル比は好ましくは20〜1000、更に好ましくは50〜300である。20未満であると結晶化が困難であり、一方、1000を超えると従来の高シリカゼオライトに対する優位性はない。
【0013】
水熱合成法による部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライト(S−4);
本発明の部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトは、下記の通りにして調製することができる。リン酸及びアルミニウムの硝酸塩、硫酸塩、塩化物等をテンプレート剤水溶液に溶解し、これをシリケート、例えばテトラエチルオルトシリケートに加え、加熱しながら攪拌し、シリケートを加水分解する。得られた粉末を、ろ過して加水分解を完全に終了させる。この粉末を水蒸気飽和させて、9〜15wt%の水分を含む乾燥ゲルを得た後に、これをねじ栓密封ボトルに詰めて、電気炉に入れて加熱して水熱合成する。合成終了後、密封ボトルから取り出した粉末を再度電気炉に入れ、昇温してテンプレートを除去し、部分的にSAPO構造を含有するペンタシル型ゼオライトを得ることができる。水熱合成法は、通常含浸法よりも高い収率と品質の結晶を得ることが出来る。ゼオライト中のSAPO構造の割合の調整はシリカ源濃度に対するリン酸濃度、アルミニウム塩濃度を変更することにより適宜変更できるが、原則的にリン酸/アルミニウム塩モル比1である。
上記製造方法により好ましい範囲内のSiO2/P25比を有するSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトを得ることが出来る。
上記で合成したSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトのX線回折ピークを図4に示す。図4より、含まれるSAPO構造が0.2(volmol%)であるペンタシル型ゼオライト結晶であることが確認できる。又、SiO2/P25比は、元素分析(湿式分析)により決定でき、図4に示される実施例吸着材料の場合は200である。SiO2/P25比はシリカ源濃度に対するリン酸濃度、アルミニウム塩濃度を変更することにより適宜変更できるが、原則的にリン酸/アルミニウム塩モル比1である。
【0014】
含浸法による部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライト(S−5);
本発明の部分的にSAPO構造を含有するペンタシル型ゼオライトは、また、上記水熱合成法に代えて、いわゆる含浸法によって調製することもできる。すなわち、リン酸及びアルミニウムの硝酸塩、硫酸塩、塩化物等を水に溶解し、これにシリカライトを加えて攪拌してスラリーを得た。このスラリーをエバポレーター等で水分を吸引除去して粉末を得る。この粉末を加熱して乾燥した後に、昇温して加熱してリン酸を脱水および硫酸塩を分解して、部分的にSAPO構造を含有するペンタシル型ゼオライトを得ることができる。ゼオライト中のSAPO構造の割合の調整はシリカ源濃度に対するリン酸濃度、アルミニウム塩濃度を変更することにより適宜変更できるが、原則的にリン酸/アルミニウム塩モル比1である。
上記製造方法により好ましい範囲内のSiO2/P25比を有するSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトを得ることが出来る。含浸法においてはSiO2/P25比はシリカ源濃度に対するリン酸濃度、アルミニウム塩濃度を変更することにより適宜変更できるが、原則的にリン酸/アルミニウム塩モル比1である。
具体的には、SiO2/Al23比1000以上のペンタシル型ゼオライトにリン酸、アルミニウム塩を加えて、ろ過、乾燥した後400〜700℃程度の高温に保持することで、結晶表面のリン、アルミニウムが結晶内に固体−固体拡散して部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトを調製することが出来る。又、SiO2/Al23比が1000以下の原料を、硝酸溶液等に浸積して90℃で3時間程度保持しても、結晶中のアルミニウムが離脱してSiO2/Al23比1000以上の部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトも得ることが出来るのでこれを出発原料としてSiO2/B23比20〜1000のボロシリケートをアルミノシリケート構造の立体障害を受けることなく調製することが出来る。
含浸法は水熱合成法に比べ調製は容易であるが、得られたゼオライト中のSAPO構造分布の均一性に欠けること、低SiO2/Al23比条件での調製における再現性が悪くなる等の問題がある。いずれの製造方法で調製したものも本発明のオゾン吸着反応に使用できる。
上記で合成したSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトのX線回折ピークを図5に示す。図5より含まれるSAPO構造が0.2(mol%)であるペンタシル型ゼオライト結晶であることが確認できる。又、図5に示される実施例吸着材料のSiO2/P25比は200である。
【0015】
本発明は、発明者等がオゾンの液相での吸着試験を行う中で特定の吸着剤が、オゾンを効率よく吸着し、しかも共吸着した有機系汚染物や細菌、悪臭成分等の有害物質をオゾンにより高効率で無害化する。ことを見出した結果に基づくものである。上記無害化には酸化反応による有機系汚染物や悪臭成分の酸化分解、細菌類の殺菌などを含むものである。
このように本発明の吸着剤存在下で汚染物質とオゾンとを共存させると、液中の有害物質の無害化、例えば、有機系汚染物のオゾン酸化が効率よく進行するのは、理論により本発明を制限するものではないが、下記のように考えられる。
液中のオゾン酸化分解反応が液中のオゾン濃度〔O3〕と有機系汚染物濃度〔ORG〕の積〔O3〕・〔ORG〕に比例して進行する。一方、本発明の吸着剤相にはオゾン及び有害物質が選択的に吸着されるため、単なる液相に比べて吸着剤表面のオゾン濃度〔O3〕及び有機系汚染物濃度〔ORG〕はそれぞれ10〜100倍程度に達する(日本吸着学会2000年年会「シリカ系吸着剤における水中溶存オゾンの吸脱着特性」鈴木基之ら)。従って、吸着剤表面での〔O3〕・〔ORG〕は液相中での100〜10000倍に達すると予想される。
【0016】
本発明の吸着剤は、それぞれ使用目的に応じて単独又は混合物の形で、粒状、ペレット状、ラシヒリング状、ハニカム状など任意の形状に成形して使用できる。
本発明に使用される吸着剤量は、使用目的に応じて異なるが、通常汚染物質1〜1000ppm(w/w)、オゾン量1〜10,000ppm(w/w)の条件で吸着剤1m3当たりSV値1〜250(リットル/h)程度である。
本発明の吸着剤の性能は、使用目的に応じて異なるが、80%以上の非常に高い除去率を示す。
【0017】
また、液相ではオゾンは有害物質以外の第三物質との衝突により無害化に寄与することなく分解してしまう頻度が多くなり、オゾンの無害化効率に限界がある。しかし、本発明の吸着剤表面でのオゾンによる有害物質の無害化においては、吸着剤にオゾン及び有害物質が選択的に吸着されることから、第三物質との衝突によるオゾン分解の確率は大幅に低減され、オゾンは有害物質の無害化のために効率的に消費される。
【0018】
液相での有害物質の無害化処理効率の悪い従来法ではリークオゾン濃度も高く、このため活性炭のオゾンによる消耗もかなり大きく、使用済み吸着剤の交換頻度の多さから経済性、保守性については改善のニーズが強かった。一方、本発明において、通常の液処理の場合は未反応オゾンは吸着剤に吸着されたまま滞留するため後流へのリークの恐れはほとんどなく、リークオゾン濃度が従来の1/10以下である。
しかし、本発明でも特殊な細菌の殺菌など多量のオゾンを添加する場合や、何らかの理由によりリークした場合の対策としては、オゾンによる無害化処理を行う吸着剤充填塔の処理液出口部分にリークするオゾンを分解する分解剤層を設けることによって未反応のオゾンを分解することができる。上記オゾン分解剤としては、リークオゾンと接触して自らはCO2へと酸化される消耗型吸着剤である活性炭やアルミナ系化合物などが挙げられる。なお、分解剤層は吸着剤充填塔の出口部分の内側に設けてもよく、また、充填塔の外側に別途設けてもよい。本発明では、リークオゾン濃度が低いためオゾン分解剤の交換頻度も従来の10倍程度と大幅な延長が達成できる。
【0019】
なお、必要により有害物質含有液ヘのオゾン注入点の前流側及び/又はオゾン吸着反応器の後流側にダストを除去するろ過材層を設けることができる。ろ適材層の設置の有無、設置位置等は装置の状況有害物質含有液の性状等により適宜定めればよい。
【0020】
次に図面を参照して本発明の処理装置を説明する。図6に工場排水からの排液処理に本発明を適用した有害物質含有液の処理フローの1例を示す。図6において主プラント1からの有害物質含有液は排液輸送ポンプ3により排液導出配管2を経て混合器4に送られ、オゾン発生器5からオゾンを注入されて吸着剤充填塔6に導入される。吸着剤充填塔6には本発明の特定の吸着剤が充填されており、導入液中の有害物質及びオゾンが吸着剤に共吸着し、高濃度の状態で反応して有害物質が分解される。通常は処理液排出配管7から排出される処理済の液ヘのオゾンのリークはないが、必要により吸着剤充填塔6内の処理液出口側あるいは吸着剤充填塔6の後流に活性炭などのオゾン分解剤層を設けてもよい。なお、図6には吸着剤充填塔6内の吸着剤層6aの処理液出口側に仕切6cを介してオゾン分解剤層6bを設けた例を示した。
【0021】
本発明の処理方法を、複数の吸着塔を用いて実施する場合の実施の形態を図7を用いて説明する。なお、図7は、装置の概略構成図であり、配管11、前記送給ポンプなどにより被処理水送給手段を構成し、配管14、前記オゾン水送給装置などによりオゾン送給手段を構成し、三方バルブ12、13などにより切換手段を構成している。
排水1の送給ポンプを連結された配管11は、その先端側が二股に分岐している。この配管11の先端側の一方は、第一の切換弁である三方バルブ12の口12aに連結されている。配管11の先端側の他方は、第二の切換弁である三方バルブ13の口13bに連結されている。
前記三方バルブ12の口12bには、配管14の二股に分岐した先端側の一方が連結されている。前記三方バルブ13の口13aには、上記配管14の先端側の他方が連結されている。この配管14の基端側には、オゾンガス又はオゾンを溶解したオゾン水2を送給するオゾンガス又はオゾン水送給装置(図示せず)が連結されている。
【0022】
前記三方バルブ12の口12cには、排水1中の有害物質やオゾン水2中のオゾンを吸着保持する吸着剤を充填された第一の吸着管15の一端側が連結されている。前記三方バルブ13の口13cには、上記吸着管15と同様な構造をなす第二の吸着管16の一端側が連結されている。第一の吸着管15の他端側には、配管17の二股に分岐した基端側の一方が連結されている。第二の吸着管16の他端側には、上記配管17の基端側の他方が連結されている。
【0023】
図7の有害物質処理装置を用いて排水1中の有害物質を処理する場合を次に説明する。
まず、三方バルブ12の口12a、12cを連通させるように当該バルブ12を操作すると共に、三方バルブ13の口13a、13cを連通させるように当該バルブ13を操作した後、配管11に排水1を流通させると、当該排水1は、配管11の先端側の一方から三方バルブ12を介して吸着管15内に流入し、有害物質が当該吸着管15内の前記吸着剤に吸着保持され、当該有害物質が除去された被処理水である無害化水3が配管17を介して外部に排出される。
【0024】
このように有害物質を吸着管15内の吸着剤に吸着保持して必要十分に蓄積されたら、三方バルブ13の口13b、13cを連通させるように当該バルブ13を操作すると同時に、三方バルブ12の口12b、12cを連通させるように当該バルブ12を操作することにより、配管11内の排水1の流れを前記一方から他方に切り換え、排水1中の有害物質の吸着除去を吸着管15から吸着管16に切り換えた後、前記オゾン水送給装置から配管14にオゾン水2を送給すると、当該オゾン水2は、配管14の先端側の一方から三方バルブ12を介して吸着管15内に流入し、オゾンが当該吸着管15内の前記吸着剤に吸着されて、当該吸着剤に蓄積している有害物質を酸化して無害化処理しながら当該吸着剤を再生処理し、オゾンを取り除かれて無害となった無害化水4が、上記吸着管16で有害物質を除去された無害化水3と共に配管17を介して外部に排出される。
【0025】
以上の操作を繰り返すことにより、排水1中の有害物質の吸着蓄積と当該有害物質の酸化処理とを吸着管15、16で交互に連続して行うことができる。
つまり、吸着剤に有害物質を吸着蓄積することにより有害物質の単位体積当たりの量を多くし、オゾンを当該吸着剤に吸着させることによりオゾンの有害物質との接触効率を高めると共に、有害物質の吸着蓄積と酸化処理との工程を交互に連続して行うことにより処理効率が高められる。
従って、酸化反応性や自己分解性の高いオゾンを排水1中の有害物質の酸化処理に有効に利用することができると共に、その処理を連続的に行うことができるので、有害物質をオゾンで効率よく処理することができる。
有害物質の吸着工程の終了は、例えば吸着塔出口の有害物質の濃度を検出していて、有害物質のブレークスルーが見られた時に、吸着塔への排水の導入を停止することによって行うことができる。
【0026】
オゾンガス又はオゾン水は、排水の流入口から並流に導入しても又は排水の流出口から向流に導入してもよいが、排水の流入口から並流に導入するのが好ましい。また、オゾンによる有害物質の酸化処理工程の終了は、例えばオゾンの流入口と反対の吸着塔出口のオゾンの濃度を検出していて、オゾンのブレークスルーが見られた時に、吸着塔へのオゾンの導入を停止することによって行うことができる。
また、有害物質を吸着蓄積して処理するので、排水1中の有害物質の濃度が低い場合であっても、有害物質をオゾンで効率よく処理することができる。
なお、上記では、第一の吸着管15及び第二の吸着管16を用いたが、処理能力や処理条件等によっては、第一、第二の吸着塔をそれぞれ複数設けることも可能である。
【0027】
本発明の処理方法の別の実施形態を図8〜10を用いて説明する。なお、図8は、その要部の概略構成図、図9は、図8のIII−III線断面図、図10は、図8のIV−IV線断面図である。ただし、上記実施の形態と同様な部分については、前述した第一番目の実施の形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、その説明を省略する。
図8〜10では、配管21、前記送給ポンプなどにより被処理水送給手段を構成し、配管22、前記オゾン水送給装置などによりオゾン送給手段を構成し、第一、第二の支持板23、24、前記駆動手段などにより切換手段を構成し、吸着管25などにより第一および第二の吸着手段を構成している。
【0028】
図8、9に示すように、円筒型をなす吸着管25は、その内部が仕切板25cにより第一の吸着室25aおよび第二の吸着室25bに仕切られている。吸着管25の上記吸着室25a、25b内には、前述した実施の形態の場合と同様な吸着剤26が充填されている。吸着管25は、その両端が円盤型の第一、第二の支持板23、24により密封されると共に回転可能に支持されており、駆動手段(図示せず)により所定の速度で回転することができるようになっている。
図8、9では、第一の支持板23には、排水1の送給ポンプを連結された配管21の先端が上記吸着管25の第一、第二の吸着室25a、25bと連通できるように貫通して連結されている。この支持板23には、オゾンガス又はをオゾンを溶解したオゾン水2を送給する図示しないオゾンガス又はオゾン水送給装置を基端に連結された配管22の先端が上記吸着管25の第一、第二の吸着室25a、25bと連通できるように貫通して連結されており、当該配管22は、その先端が上記配管21の先端に対して当該支持板23の中心を挟んで点対称となる位置で連結されている。
一方、第二の支持板24には、配管27の二股に分岐した基端側の一方と他方とが上記吸着管25の第一、第二の吸着室25a、25bと連通できるように貫通して連結されており、当該配管27は、上記基端側の一方と他方とが前記配管21、22の先端と同軸をなすようにそれぞれ対応して連結されている。
【0029】
このような有害物質処理装置を用いて排水1中の有害物質を処理する場合を次に説明する。
吸着管25を所定の速度で回転駆動させると共に、配管21内に排水1を流通させると、排水1は、当該配管21の先端と対面する吸着管25のどちらか一方の吸着室25a、25b(説明の便宜上吸着室25aとする。)内に支持板23を介して流入し、有害物質が当該吸着室25a内の吸着剤26に吸着保持されて蓄積し、当該有害物質を除去された無害化水3が支持板24を介して配管27から外部に排出される。
【0030】
このように処理していき、前記吸着室25a内の吸着剤26が上記有害物質を必要十分に蓄積すると、吸着管25が上述したように所定の速度で回転しているので、当該吸着管25が吸着室25bと配管21とを連通させると共に吸着室25aと配管22とを連通させるように切り替わり、吸着室25b内の吸着剤26が配管21からの排水1中の有害物質を新たに吸着保持して蓄積し、上述と同様に、有害物質を除去された無害化水3が支持板24を介して配管27から外部に排出される。
【0031】
これと同時に、前記オゾン水送給装置からオゾン水2を配管22内に送給すると、オゾン水2は、支持板23を介して吸着管25の吸着室25a内に流入し、オゾンが当該吸着室25a内の吸着剤26に吸着されて、当該吸着剤26に蓄積している有害物質を酸化して無害化処理しながら当該吸着剤26を再生処理し、オゾンを取り除かれて無害となった無害化水4が、前記吸着室25a内の上記吸着剤26で有害物質を除去された無害化水3と共に配管27を介して外部に排出される。
以上の操作を繰り返すことにより、排水1中の有害物質の吸着・蓄積と当該有害物質の酸化処理とを吸着管25の吸着室25a、25bで交互に連続して行うことができる。
従って、前述した実施の形態の場合と同様に、酸化反応性や自己分解性の高いオゾンを排水1中の有害物質の酸化処理に有効に利用することができると共に、その処理を連続的に行うことができるので、排水1中の有害物質の濃度に左右されることなく、有害物質をオゾンで効率よく処理することができる。
なお、本実施の形態では、2つの吸着室25a、25bを有する吸着管25を用いたが、処理能力や処理条件等によっては、3つ以上の吸着室を有する吸着管を用いることも可能である。
【0032】
また、前述した実施の形態において、高濃度のオゾンガス(20〜80wt%)を用いたオゾン水の製造が可能なオゾン水送給装置を用いれば、オゾンによる酸化分解が困難であった有害物質でも容易に分解処理することができる。例えば、排水中にPCBやダイオキシン等が含まれている場合、従来は、高温高圧条件で超臨界水により分解処理しなければならないため、処理装置が複雑な構成で高コストになってしまうものの、上述したようにすれば、簡単な装置構成で排水中のPCBやダイオキシン等を低コストで分解処理することができる。
【0033】
また、稚魚の養殖などを行うにあたって、海や河川からの水を養殖プールに汲み入れる場合に本発明による有害物質除去装置を適用すると、稚魚を高育成率で養殖することができる。
すなわち、従来は、海水にオゾンを加えて有害物質を酸化処理した後に活性炭吸着塔を流通させて残留オゾンを除去してから養殖プールに給水していたため、残留オゾンを十分に取り除くのに多大な量の活性炭を使用しなければならないばかりか、海水5中に含まれる臭化水素とオゾンとの反応で生じたHBrOを除去することができなかった。一方、本発明では、例えば図11に示すように、被処理水である海水5をポンプ31等で汲み取り、海水5中のゴミ等の浮遊物を砂濾過器32等で除去した後、前述した吸着管15、16に流通させて当該海水5中の有害物質を除去し、当該有害物質をオゾン水2で酸化分解して無害化して、無害化水3、4を養殖プール36に給水できる。その結果、無害化水3、4中にオゾンを残留させることがない(0.001ppm未満)ばかりか、HBrOの生成自体を抑えることができる。
【0034】
尚、図11に示すように、オゾン濃度を検出するオゾン検出手段であるオゾンセンサ33および無害化水3、4の流通を制止する流量調整手段である制止弁34を配管17に設け、オゾンセンサ33からの信号に基づいて、無害化水3、4中のオゾン濃度が所定値を超えた場合には無害化水3、4の流通を制止するように制御弁34を閉じる制御手段である制御装置35(図示せず)を設ければ、吸着管15、16が何らかの原因で故障した場合であっても養殖プール36内へのオゾンの流入を防止することができ、稚魚の死亡を防止することができる。
【実施例】
【0035】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
製造例1(水熱合成法ペンタシル型ボロシリケート(S−1))
ホウ酸3gを22.5wt%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液440gに溶解し、これをテトラエチルオルトシリケート1.00kgに加え、70℃で約4時間攪拌し、テトラエチルオルトシリケートを加水分解した。得られた粉末を80℃の乾燥器に入れて約3時間保持し、加水分解を完全に終了させた。この粉末を室温で水蒸気飽和させて、9〜15wt%の水分を含む乾燥ゲルを得た後、これをポリプロピレンあるいはテフロン製のねじ栓密封ボトルに詰めて、電気炉に入れ140℃で72時間保持して水熱合成した。
合成終了後、密封ボトルから取り出した粉末を再度電気炉に入れ、空気雰囲気中昇温速度100℃/時間で昇温して500℃で20時間保持してテンプレートを除去し、ホウ素含有シリカライト(UOP社製ボロシリケート;SiO2/B23=200、BET比表面積528m2/g)約280gを調製した(収率80%)。
得られた結晶のX線回折ピークを図1に示す。図1よりMFI型結晶であることが確認できた。又、重量法(ニトロン−5%酢酸水溶液と48%フッ化水素酸との反応により生じた沈殿の重量から決定)により元素分析(湿式分析)して測定したSiO2/B23比は、200であった。得られた吸着材料を実験室的に試作したシリカモノリス基材に嵩比重が0.4になるように担持して直径10cm、高さ10cmのモノリス形に成形した。下記吸着材料の成形法も同様である。
ホウ酸を40gとした以外は上記と同様にして、SiO2/B23比が20の吸着材料を収率65%で得た。
ホウ酸を0.6gとした以外は上記と同様にして、SiO2/B23比が1000の吸着材料を収率80%で得た。
【0036】
製造例2(含浸法ペンタシル型ボロシリケート(S−2))
10.3gのホウ酸(H3BO3)を精製水1.3リットルに溶解し、これに1.0kgのシリカライトを加えて室温で2時間攪拌してスラリーを得た。このスラリーを60℃の水浴上、エバポレーターで水分を吸引除去して粉末を得た。この粉末を空気雰囲気中110℃で7時間乾燥した後、昇温速度100℃/時間で昇温して270℃で3.5時間加熱してホウ酸を脱水させて、ホウ素含有シリカライト(SiO2/B23=200、BET比表面積355m2/g)約1kgを調製した(収率100%)。
得られた結晶のX線回折ピークを図2に示す。図2よりMFI型結晶であることが確認できた。SiO2/B23比は、200であった。
ホウ酸を103gとした以外は上記と同様にして、SiO2/B23比が20の吸着材料を収率100%で得た。
ホウ酸を2gとした以外は上記と同様にして、SiO2/B23比が1000の吸着材料を収率100%で得た。
【0037】
製造例3(低温合成法シリコアルミノフォスフェート(S−3))
セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTMAB;C1635(CH33NBr)(FW364.45 東京化成社製)6.0 kgを溶解した水32リットルに、85%リン酸(H3PO4)(FW 98.00 関東化学社製(85wt%))0.1kgを滴下し、さらにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)水溶液((CH34NOH、水中25wt%)30〜33リットルを加えてpH7.7に調整した。
これを激しく撹拌しながら、水15.4リットルに溶解したケイ酸ナトリウム(Na2O・2SiO2・2.52H2O)(FW 227.56 キシダ化学)3.00kgを加え、さらに水31.6リットルに溶解した硫酸アルミニウム(Al2(SO43・17H2O)(半井化学薬品社製)0.25kgを少しずつ加え、この懸濁液を室温で3時間撹拌した。
この沈殿生成物をろ過して多孔体粉末を分離した後、水で洗浄後、電気炉に入れて、まず110℃で約8時間保持して表面水分を除去したのち、昇温速度100℃/時間で昇温して600℃6時間保持してセチルトリメチルアンモニウムブロミドを熱分解除去してメソポーラスシリコアルミノホスフェートを約1kg調製した。得られたゲル組成は、SiO2:P25:Al23:CTMAB:H2O=0.8:0.012:0.012:0.5:80であり、粉末状シリコアルミノフォスフェートの収率は80%であった。
以上の手順により調製した粉末状SiO2/Al23比は200、SiO2/P25比は200であり、日本ベル社製BET法表面積計測機により測定した比表面積は767〜1100m2/g、細孔直径は3.5nmであった。
得られた結晶のX線回折ピークを図3に示す。図3よりMFI型結晶であることが確認できた。SiO2/P25比は、200であった。
硫酸アルミニウム及びリン酸を、それぞれ1kg及び2.5kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が20の吸着材料を収率80%で得た。
硫酸アルミニウム及びリン酸を、それぞれ0.05kg及び0.02kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が1000の吸着材料を収率80%で得た。
【0038】
製造例4(水熱合成法SAPO構造を有するペンタシル型ゼオライト(S−4))
85%リン酸(H3PO4)0.1kgおよび硫酸アルミニウム(Al2(SO43・17H2O) 0.25kgを22.5wt%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液440gに溶解し、これをテトラエチルオルトシリケート1.00kgに加え、70℃で約4時間攪拌し、テトラエチルオルトシリケートを加水分解した。得られた粉末を80℃の乾燥器に入れて約3時間保持し、加水分解を完全に終了させた。この粉末を室温で水蒸気飽和させて、9〜15wt%の水分を含む乾燥ゲルを得た後、これをポリプロピレンあるいはテフロン製のねじ栓密封ボトルに詰めて、電気炉に入れ140℃で72時間保持して水熱合成した。
合成終了後、密封ボトルから取り出した粉末を再度電気炉に入れ、空気雰囲気中昇温速度100℃/時間で昇温して500℃で20時間保持してテンプレートを除去し、部分的にSAPO構造を含有するシリカライト約280gを調製した。
得られたペンタシル型ゼオライト中のSAPO構造の割合は、0.5mol%であった。得られた結晶のX線回折ピークを図4に示す。図4よりペンタシル及びSAPO構造が結晶化されていることが確認できる。SiO2/P25比は、200であった。
アルミニウム塩及びリン酸を、それぞれ1kg及び2.5kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が20の吸着材料を収率80%で得た。
アルミニウム塩及びリン酸を、それぞれ0.02kg及び0.05kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が1000の吸着材料を収率80%で得た。
【0039】
製造例5(含浸法SAPO構造を有するペンタシル型ゼオライト(S−5))
85%リン酸(H3PO4) 0.1kgおよび硫酸アルミニウム(Al2(SO43・17H2O) 0.25kgを精製水1.3リットルに溶解し、これに1.0kgのシリカライトを加えて室温で2時間攪拌してスラリーを得た。このスラリーを60℃の水浴上、エバポレーターで水分を吸引除去して粉末を得た。この粉末を空気雰囲気中110℃で7時間乾燥した後、昇温速度100℃/時間で昇温して550℃で3.5時間加熱してリン酸を脱水および硫酸塩を分解して、部分的にSAPO構造を含有するシリカライト約1kgを調製した。
得られたペンタシル型ゼオライト中のSAPO構造の割合は、0.5mol%であった。得られた結晶のX線回折ピークを図5に示す。図5よりペンタシル及びSAPO構造が結晶化されていることが確認できた。SiO2/P25比は、200であった。
アルミニウム塩及びリン酸を、それぞれ1kg及び2.5kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が20の吸着材料を収率80%で得た。
アルミニウム塩及びリン酸を、それぞれ0.02kg及び0.05kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が1000の吸着材料を収率80%で得た。
【0040】
使用サンプル;
本発明の吸着剤サンプルは上記で製造したS−1〜S−5中の末尾にSiO2比を付して区別している。又、比較例としてシリカライト(UOP社製シリカライトSiO2/Al23比200)を使用し、R−1として表した。R−1の形状は、直径10cm、高さ10cmのモノリスであった。
有害物質としてアンモニア、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)をそれぞれ10ppm含有する3種類の排液(下水処理の模擬液)を使用した。
【0041】
実施例1;
図6のフローの試験装置(オゾン分解剤層は設けず)を用いてオゾンによる有害物質含有液の処理試験を行った。使用した吸着剤を表1に、試験条件等を表2に示す。
アンモニア10ppmを含有する排液を表2の条件で処理し、図6の処理液排出配管7の部分でサンプリングした液中のアンモニア濃度(出口アンモニア濃度)及びオゾン濃度(出口O3濃度)を測定した。
使用した吸着剤は、(S−1−20、−200、−1000)水熱合成ボロシリケート、(S−2−20、−200、−1000)含浸法ボロシリケート、(S−3−20、−200、−1000)メソポーラスシリコアルミノホスフェート、(S−4−20、−200、−1000)水熱合成部分SAPOペンタシル、(S−5−20、−200、−1000)含浸法部分SAPOペンタシル、の5種類であり、オゾン/アンモニアモル比1.4に設定した。
試験結果として、出口アンモニア濃度、出口O3濃度、NO3転換率(w/w%)及び従来法との比較結果を下記表3に示す。サンプルR−1と比べて優れた結果の場合「○」とした。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

処理液のアンモニア濃度10ppm、オゾン濃度14.11764706ppmで行った。
【0045】
表3より、アンモニアのオゾン分解では、(S−1)〜(S−5)のいずれもSiO2/B23比又はSiO2/P25比20〜200では従来のシリカライト(高シリカゼオライト)のアンモニア分解率を上回っており、更にこの時に従来のR−1による液相オゾン反応のように多量の硝酸(出口硝酸濃度は0.8ppm)が生成する反応は認められない。このことから本発明の吸着剤上でのアンモニア−オゾン反応では窒素又はNO,NO2等が生成して生成物の大半は気相に移行していることが予想される。従って、本発明は高度排水処理設備用の高性能の脱窒法であることが示される。
【0046】
実施例2;
実施例1と同一条件で、IPAを10ppm含有する排液を表2の条件で処理し、図6の処理液排出配管7の部分でサンプリングした液中のIPA濃度(出口IPA濃度)及びオゾン濃度(出口O3濃度)を測定した。
使用した吸着剤は、(S−1−20、−200、−1000)水熱合成ボロシリケート、(S−2−20、−200、−1000)含浸法ボロシリケート、(S−3−20、−200、−1000)メソポーラスシリコアルミノホスフェート、(S−4−20、−200、−1000)水熱合成部分SAPOペンタシル、(S−5−20、−200、−1000)含浸法部分SAPOペンタシル、の5種類であり、オゾン/IPAモル比1.4に設定した。
試験結果として、出口IPA濃度及び、出口O3濃度及び従来法との比較結果を下記表4に示す。
【0047】
【表4】

処理液はイソプロピルアルコール(IPA)濃度10ppm、オゾン濃度7.868852459ppmで行った。
【0048】
表4より、IPAのオゾン分解では、(S−1)〜(S−5)のいずれもSiO2/B23比又はSiO2/P25比20〜200では従来のシリカライトのIPA分解率を上回っていた。
【0049】
実施例3;
実施例1と同一条件で、MEKを10ppm含有する排液を表2の条件で処理し、図6の処理液排出配管7の部分でサンプリングした液中のMEK濃度(出口MEK濃度)及びオゾン濃度(出口O3濃度)を測定することによって行った。
使用した吸着剤は、(S−1−20、−200、−1000)水熱合成ボロシリケート、(S−2−20、−200、−1000)含浸法ボロシリケート、(S−3−20、−200、−1000)メソポーラスシリコアルミノホスフェート、(S−4−20、−200、−1000)水熱合成部分SAPOペンタシル、(S−5−20、−200、−1000)含浸法部分SAPOペンタシル、の5種類であり、オゾン/MEKモル比1.4に設定した。
試験結果として、出口MEK濃度及び、出口O3濃度及び従来法との比較結果を下記表5に示す。
【0050】
【表5】

処理液はMEK濃度10ppm、オゾン濃度7.741935484ppmで行った。
【0051】
表5より、MEKのオゾン分解では、(S−1)〜(S−5)のいずれもSiO2/B23比又はSiO2/P25比20〜200では従来のシリカライトのMEK分解率を上回っていた。
【0052】
実施例4;
本発明の必用オゾン注入量を確認するため、製造例1で調製したS−1(SiO2/B23比200)のモノリスを充填した吸着塔に、アンモニア、IPA、MEK 10ppm溶液に対し、SV60、オゾン/処理成分モル比0.5〜3に変更したときの除去率を測定した。結果を図12に示す。オゾン/処理成分モル比1.5でアンモニア、IPA、MEKとも除去率は80%を超える高性能が確認された。
【0053】
又、本発明の必用吸着剤必用量を確認するため、製造例1で調製したS−1(SiO2/B23比200)のモノリスを充填した吸着塔にオゾン/処理成分モル比1、アンモニア、IPA、MEK 10ppm溶液に対し、SVを30〜200に変更したときの除去率を測定した。結果を図13に示す。SV30でアンモニア、IPA、MEKとも除去率は80%を越える高性能が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】水熱合成法で合成したペンタシル型ボロシリケートのX線回折ピークである。
【図2】含浸法で合成したペンタシル型ボロシリケートのX線回折ピークである。
【図3】低温合成法で合成したメソポーラス型シリコアルミノホスフェートのX線回折ピークである。
【図4】水熱合成法で合成した部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトのX線回折ピークである。
【図5】含浸法で合成した部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトのX線回折ピークである。
【図6】本発明の処理フローの1例を示す概略図である
【図7】本発明の処理フローの他の例を示す概略図である。
【図8】本発明の処理フローの他の例の要部概略図である。
【図9】図8のIII−III線断面図である。
【図10】図8のIV−IV線断面図である。
【図11】本発明の処理フローの他の例を示す概略図である。
【図12】実施例4におけるO3/アンモニア、O3/IPA、O3/MEKモル比と出口アンモニア、IPA、MEK除去率の関係を示すグラフである。
【図13】実施例4におけるSV値と出口アンモニア、IPA、MEK除去率の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
11,14,17,21,22 配管
12,13 三方バルブ
23,24 支持板
25 吸着管
101 主プラント
102 排液導出配管
103 排水輸送ポンプ
104 混合器
105 オゾン発生器
15,16,106 吸着剤充填塔
106a 吸着剤層
106b オゾン分解剤層
106c 仕切
107 処理液排出配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有害物質含有液にオゾンを添加、混合し、
(B)前記含有液を、オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着する(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種の吸着剤を充填した充填塔に流過させ、
(C)液中の有害物質をオゾンの作用により無害化する、
ことを特徴とする有害物質含有液の処理方法。
【請求項2】
(D)前記(C)で無害化されて得られた処理液をオゾン分解剤と接触させて残留するオゾンを分解することを特徴とする請求項1記載の有害物質含有液の処理方法。
【請求項3】
オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着する(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種の吸着剤層を設けた吸着剤充填塔と、上記吸着剤充填塔に有害物質を含有する液を供給する供給管と、上記供給管に接続され、液中にオゾンを添加するオゾン発生器と、前記吸着剤充填塔から処理済みの処理液を排出する排出管とを備えてなることを特徴とする有害物質含有液の処理装置。
【請求項4】
前記吸着剤充填塔の後流側に、リークするオゾンを分解するオゾン分解剤層が設けられてなることを特徴とする請求項3記載の有害物質含有液の処理装置。
【請求項5】
汚染成分を吸着し、かつオゾンを吸着する吸着剤を充填した吸着塔に、上記汚染成分含有水を導入して上記汚染成分を上記吸着剤に吸着させ、清浄化水を吸着塔から流出させ、上記汚染成分含有水の導入を停止した後に、上記汚染成分を吸着した吸着塔にオゾン含有ガス又はオゾン含有水を導入して上記吸着剤表面で上記汚染成分を酸化分解する汚染成分含有水の処理方法であって、上記吸着剤は(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種である汚染成分含有水の処理方法。
【請求項6】
吸着剤床を収容した吸着塔が並列に2以上存在し、1つの吸着塔に上記汚染成分含有水を導入して上記汚染成分を上記吸着剤に吸着させ、清浄化水を吸着塔から流出させる吸着工程に在る間に、吸着工程を終了した別の吸着塔にオゾン含有ガス又はオゾン含有水を導入して上記吸着剤表面で上記特定の汚染成分を酸化分解する酸化分解工程を施し、次いでオゾン含有ガス又はオゾン含有水の導入を、吸着工程を終了した吸着塔から、酸化分解工程を終了した吸着塔に切り換え、上記の工程を繰り返す、汚染成分含有水の処理方法であって、上記吸着剤は(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種である汚染成分含有水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−7534(P2007−7534A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190318(P2005−190318)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000173647)財団法人産業創造研究所 (17)
【Fターム(参考)】