説明

有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体及びその製造方法

【課題】 副作用が弱く、優れた有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体を提供する。また、このベータグルカンペプチド誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】 副作用が弱く、優れた有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体とは、酸化還元電位がマイナス1mV〜マイナス500mVであり、有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体である。この誘導体はベータグルカンの水酸基に、イソロイシン、システイン、システインからなるトリペプチドがエステル結合している。さらに、乳酸がエステル結合している。その製造方法は、米糠及び大豆粉末に、紅麹菌、納豆菌、パン酵母及び乳酸菌を添加し、混合発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程を特徴とし、主たる工程としては発酵工程及び還元工程である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、酸化還元電位がマイナス1mV〜マイナス500mVである有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川や湖沼、海洋の汚染は、年々、著しくなり、大規模な環境の破壊につながっている。日本の環境庁、欧州環境庁や米国環境省(EPA)では地球規模の環境を改善すべく、河川、湖沼や海洋に流入する汚染水の改良を試みている。
【0003】
また、化石燃料の大量消費による大気汚染も深刻であり、二酸化炭素の排出増加は、地球規模で観察され、地球温暖化に関連性があると報告されている。同時に、大気中には、ディーゼル粒子や煤煙のような微小な粒子が多数存在し、これらが太陽光を吸収して熱を大気中に浮流することにより、大気が温暖化し、地球温暖化と関係していると推察されている。
【0004】
生活環境においては、シックハウス症候群やシックビルディング症候群といった室内のホルムアルデヒドやホルマリンなどの化学物質、微小なディーゼル粒子やイエダニなどの生物系有害物質によって過敏症や呼吸困難を引き起こす患者が急増している。
【0005】
これらの有害物質に対する対策としては、煤塵防止用のマスク、吸気フィルターの設置や吸塵機の利用が進められているものの、完全なる解決には至っていない。
【0006】
有害物質の改善に関する発明としては、水・土壌等の酸化還元材の発明があり、籾殻及び米糠等の種子皮殻類を主材とし、好気性菌により固体発酵させたものであることを特徴とする水・土壌等の酸化還元材が報告されているものの、主たる有用成分や物質の同定には至っていない(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
また、水質浄化剤としては、エンテロコッカス・フェカリスに分類される微生物の生菌体、死菌体又はその産生物を含有する水質浄化剤の発明が認められるものの、使用している微生物が有害であり、実質的な利用には制限がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
さらに、水質・土質改良剤、その製造方法及びその投与方法の発明があり、納豆を水洗して納豆菌、納豆表面の粘調質部及び納豆表面の易分解質を洗浄水中に移行させて得られる溶液を主体とした水質 ・土質改良剤が説明されているものの、効果が弱く、その産業上への利用は制限されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
液状乳酸菌代謝産物による下水処理場の水質改善と悪臭の防除に関する発明があり、ここでは下水処理場の流入槽に混入する液状の物であって、下水に含まれる有機物に関与する細菌叢を改善し水質改善と悪臭の防除資材が説明されているものの、産業への利用が制限されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0010】
一方、特定の構造を呈するベータグルカンペプチド誘導体は、トリペプチドとベータグルカンと乳酸との結合が構造的な特徴であり、かつ、発酵と還元処理を製造上の特徴とする製造方法について今回、発明したので、以下に説明する。
【特許文献1】特開2006−312145
【特許文献2】特開2005−270735
【特許文献3】特開2005−230593
【特許文献4】特開平11−47779
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記したように、有害物質の排泄には、様々方法と製品が開発されているものの、その効果は明瞭ではなく、かつ、産業への利用については明瞭ではないという問題がある。
【0012】
この発明は上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、副作用が弱く、優れた有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体を提供することである。
【0013】
また、米糠及び大豆粉末に、紅麹菌、納豆菌、パン酵母及び乳酸菌を添加し、混合発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程を特徴とする請求項1に記載の有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体の効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、酸化還元電位がマイナス1mV〜マイナス500mVである下記の式(1)で示される有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体に関するものである。
【0015】
【化1】

【0016】
請求項2に記載の発明は、米糠及び大豆粉末に、紅麹菌、納豆菌、パン酵母及び乳酸菌を添加し、混合発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程を特徴とする請求項1に記載の有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
【0018】
請求項1に記載のベータグルカンペプチド誘導体によれば、副作用が弱く、優れた有害物質消去作用が発揮される。
【0019】
請求項2に記載の製造方法によれば、効率良くベータグルカンペプチド誘導体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
【0021】
まず、酸化還元電位がマイナス1mV〜マイナス500mVである下記の式(1)で示される有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体について説明する。
【0022】
【化2】

【0023】
ここでいうベータグルカンペプチド誘導体とは、3つのベータ1−3結合してなるグルコースにイソロイシル−システイニル−システインからなるトリペプチドがグルコースの4位の水酸基とエステル結合しており、さらに、1つの乳酸がエステル結合した基本構造を示す。
【0024】
乳酸は、乳酸のカルボキシル基とグルカンの1位の水酸基とエステル結合している。
【0025】
また、前記の式(1)で示されるベータグルカンペプチド誘導体は、トリペプチド内の2つのシステインに起因するSH基を有する。構成するこれらのアミノ酸は、いずれも、L型である。
【0026】
このベータグルカンペプチド誘導体は、ベータグルカンとしては結合数が3であり、短鎖ではあるものの、ベータグルカンとしての性質を有し、免疫作用を調整する作用を保有し、シックハウス症候群や化学物質や大気汚染による喘息患者などのアレルギーや気道狭窄に対しても効果的である。
【0027】
このベータグルカンペプチド誘導体のベータグルカン部分は、環状構造を呈し、ディーゼル粒子やアスベストのような微小な粒子を包みこむ。有害粒子を吸着して無毒化することができる特徴を有する。
【0028】
このベータグルカンペプチド誘導体のトリペプチド部分は、2つの還元型SH基は強い還元作用を呈し、1mg/100ml程度の水溶液とした場合、その溶液の酸化還元電位はマイナス1mVからマイナス500mVを呈する。
【0029】
ホルマリンのような反応性アルデヒド、クロロホルムなどのハロゲン物質、酸化物質、シアン化合物やディーゼル粒子に対し、還元作用を利用して、有害物質が消失する。
【0030】
また、ニ酸化炭素、一酸化炭素、酸化窒素、二酸化硫黄、硫化水素、アンモニアなどの揮発性ガスに対しても、前記の還元作用を介して消失させる。
【0031】
さらに、ヒ素、鉛、水銀、カドミウムなどの有害金属に対しては、2つのSH基がキレート作用を発現し、有害金属を捕捉して、かつ、グルカンの環状構造が折りたたむように、有害金属を包む込み、消失させる。
【0032】
加えて、乳酸部分は有害物質と生体に対する有用な成分とを識別する働きを有し、生体にとって必要な微量元素やミネラルに対しては、乳酸により認識されず、本物質とは反応せず、有用な微量成分やビタミンの働きは損なわれることはなく、安全である。
【0033】
また、このベータグルカンペプチド誘導体は、過剰に摂取した場合、消化管、肺、血中や臓器内エステラーゼにより分解されてトリペプチドとベータグルカンと乳酸に分解される。トリペプチドはアミノ酸になり、さらに、二酸化イオウと炭酸ガスに分解されて腎臓から排泄されることから、安全性が高く、より好ましい。
【0034】
全身の様々な炎症に対して、このベータグルカンペプチド誘導体は、抗炎症作用を呈することから、有害物質による炎症も抑制されることから好ましい。
【0035】
また、このベータグルカンペプチド誘導体は、皮膚細胞の角質細胞に対して皮膚からの剥離を促進することにより、肌の再生力を高め、さらに、抗炎症作用を介して有害物質によるアトピーや接触性アレルギーを改善することから好ましい。
【0036】
さらに、このベータグルカンペプチド誘導体は、酸化還元電位がマイナス1mV〜マイナス500mVであることから、強い還元作用があり、ビタミンCの働きを補助して酸化生成物であるメラニンを分解し、シミの原因物質を消去し、コラーゲン産生を促進する。
【0037】
このマイナス1mV〜マイナス500mVの酸化還元電位は、アルカリ還元やイオン還元装置により作り出される。一方、酸化還元電位がプラスである場合、酸化により組織が障害されるおそれがあり、一方、酸化還元電位がマイナスであることは、酸化を抑制し組織を防御する点から好ましい。
【0038】
このベータグルカンペプチド誘導体は酸化還元電位がマイナスであることから、皮膚の酸化や紫外線などの酸化ストレスを減少させる。
【0039】
このベータグルカンペプチド誘導体は、植物細胞、動物細胞、酵母や微生物による発酵で得られ、生合成させて、得ることができる。
【0040】
このベータグルカンペプチド誘導体は、液体または粉末して得られ、水質改善剤、空気清浄剤、医薬品素材、食品素材、化粧品素材、日用品、土壌改善剤として利用できる。
【0041】
水質改善剤としては、水中の重金属の除去を目的とした河川や海洋の環境改善剤に利用される。また、ふろ場洗浄剤や排水溝洗剤として排水溝や配管に付着した腐敗性微生物、酸化物質、重金属、有害物質、アンモニア臭除去の目的として利用される。
【0042】
家庭用の洗濯用洗剤、食器洗い洗剤やバス用洗剤として利用することにより、アンモニアや有害物質を除去する目的で利用される。有害物質の除去の目的でシンクタンク、流し台、ふろ場、車や住宅の洗浄剤として活用できる。
【0043】
また、トイレ用洗剤として有害物質を除去する目的で、また、アンモニアや分便臭の除去のための消臭効果を利用した消臭剤としても活用できる。
【0044】
空気清浄剤としては、ベータグルカンペプチド誘導体によるホルマリン、アンモニア、微小粒子やハロゲン化合物の除去を目的とした清浄剤、芳香剤や噴霧剤として利用される。
【0045】
医薬品素材として利用する場合、目的とするベータグルカンペプチド誘導体を分離精製することは、目的とするベータグルカンペプチド誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
【0046】
医薬品として、注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
【0047】
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
【0048】
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を含有させることができる。
【0049】
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
【0050】
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
【0051】
食品製剤は、有害物質の除去を目的として原料加工や食品製造の原材料として、さらに、食品工場の衛生管理の目的で、噴霧剤として利用され、また、保健機能食品として、栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
【0052】
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、飼料中の有害物質除去、糞便臭の吸収作用や抗菌作用を目的として、洗剤や飼料として利用される。
【0053】
化粧品として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、油溶性クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。化粧品の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
【0054】
得られた化粧品は、過敏症の原因となる有害物質を除去することから、アトピー患者の角質改善と皮膚再生を促進する。また、還元作用を呈することから、美白作用を呈することから、美白用化粧品や医薬部外品としても利用される。
【0055】
土壌改善剤としては、田や畑の重金属の除去の目的で農場に利用される。また、化学工場では周辺の土壌汚染や作業環境を改善する目的として利用される。
【0056】
次に、米糠及び大豆粉末に、紅麹菌、納豆菌、パン酵母及び乳酸菌を添加し、混合発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程を特徴とする請求項1に記載の有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体の製造方法について説明する。
【0057】
ここでいう有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体とは、前記のベータグルカンペプチド誘導体である。
【0058】
原料として用いる米糠は、米の最外皮の粉末のことであり、通常は食用には適さないものの、糠漬けの培地として、また、肥料としても、食経験が豊富である。米糠には、微生物の生育に必要な糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルが含有されている。
【0059】
ここで用いる米糠は、いずれの産地でも利用できるものの、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。このうち、有機栽培された米や無農薬で栽培された米から得られる米糠が有害な農薬や金属を含有しないことから、好ましい。
【0060】
原料となる大豆粉末は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。このうち、有機栽培や無農薬で栽培された大豆が有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
【0061】
大豆と米糠は使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕されることにより、発酵が効率的に進行しやすいことから好ましい。
【0062】
さらに、大豆と米糠は粉砕後、オートクレーブなどにより滅菌されることは雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
【0063】
用いる紅麹菌としては、有用な食用菌であり、沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。このうち、紅麹本舗の製造である中国原産で学名Monascaceaeである紅麹菌が高い反応性を呈することから好ましい。この紅麹菌により、米糠の成分と大豆成分の両成分を同時に発酵させる条件が整えられる。
【0064】
用いる納豆菌とは、納豆や食品の加工用に用いられる枯草菌(学名Bacillus subtilis)の一種である。このうち、納豆素本舗製の納豆菌は発酵に適していることから、好ましい。この納豆菌のプロテアーゼの働きにより大豆と米ぬか中のたんぱく質が分解されてトリペプチドになる。
【0065】
用いるパン酵母とは、小麦粉からパン生地を作り出す際に用いられるイースト菌と同一であり、学名はSaccharomyces cerevisiaeである。オリエンタル酵母製のパン酵母は発酵工程が安定し、かつ、品質が高いことから好ましい。このパン酵母が発酵することより、細胞壁を形成し、この一部から必要となるベータグルカンが生成される。
【0066】
用いる乳酸菌は、食用菌であり、学名Lactobacillus属の糖質から乳酸を生成する有用菌であり、糠漬けやヨーグルトの製造にも利用されている。この乳酸菌の期限は、植物成分の発酵に優れた菌種が良く、学名Lactobacillus caseiが好ましい。たとえば、ビオフェルミン製薬の乳酸菌は品質が安定していることから好ましい。
【0067】
この乳酸菌による発酵によって乳酸が産生されてベータグルカンとエステル結合を生成し、かつ、酸性状態を維持することにより、トリペプチド部分のSH基が安定化する。
【0068】
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は、米糠1重量に対し、大豆粉末は0.5〜3重量、紅麹菌は0.001〜0.02重量、納豆菌は0.001〜0.03重量、パン酵母は0.002〜0.05重量及び乳酸菌は0.003〜0.03重量が好ましい。
【0069】
紅麹菌、納豆菌、パン酵母及び乳酸菌は発酵される前に、それぞれを前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
【0070】
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
【0071】
また、この発酵は、30〜53℃に加温され、発酵は、2日間から14日間行われる。発酵の工程管理は、目的とするベータグルカンペプチド誘導体をHPLCやTLCにより定量すること、ならびに、菌体の増殖性を確認することにより、実施する。
【0072】
発酵後に、抽出を効率良く実施するために、滅菌した水道水で希釈される。
【0073】
この発酵の工程によって、ベータグルカンがトリペプチドと乳酸にエステル結合するものの、その結合は不安定でエステラーゼにより分解されやすいため、以下の示すアルカリ還元を実施することが必要である。
【0074】
前記の発酵により生成された発酵物は30〜60℃の含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。
【0075】
得られた発酵物を超音波処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
【0076】
この発酵物はアルカリ還元される。アルカリ還元は、アルカリ還元装置やアルカリ還元整水器により実施されることが好ましい。たとえば、ゼマイティス製のアルカリ還元水・強酸化水連続生成器「プロテックATX−501」、エヌアイシー製のアルカリ還元水製造装置「テクノスーパー502」、マルタカ製「ミネリア・CE−212」、クレッセント製「アキュラブルー」、株式会社日本鉱泉研究所製「ミネラル還元整水器「元気の水」」などの装置を用いることが好ましい。
【0077】
アルカリ還元を実施する際の溶媒としては、アルカリ還元を効率的に実施させることから、20%から80%のエタノールを含有する含水エタノール溶液が好ましい。
【0078】
この還元の工程により、溶解した場合に、酸化還元電位がマイナス1mV〜マイナス500mVに還元され、目的とするベータグルカンペプチド誘導体の結合が安定化される。
【0079】
前記の還元反応物から、目的とするベータグルカンペプチド誘導体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0080】
分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするベータグルカンペプチド誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0081】
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
【0082】
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
【0083】
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
【0084】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
【0085】
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0086】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜30倍量が好ましく、3〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜35℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
【0087】
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
【0088】
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
【0089】
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0090】
ベータグルカンペプチド誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするベータグルカンペプチド誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
【0091】
このようにして得られたベータグルカンペプチド誘導体は、液体または粉末として得られる。
【0092】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。
【実施例1】
【0093】
岐阜県で無農薬、有機条件で栽培されたコシヒカリの稲穂より得られた米糠を用いた。これを水洗後、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕し、米糠粉砕物1kgを得た。
【0094】
北海道産の大豆をミキサー(クイジナート)に供し、大豆の粉砕物1kgを得た。これらをオートクレーブに供し、121℃20分間、滅菌した。これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に、それぞれの1kgずつを入れてさらに、滅菌された水道水10kgを添加し、攪拌した。
【0095】
これとは別に、粉末紅麹菌(紅麹本舗製)10gを小型発酵タンクに供し、滅菌した大豆粉末と前培養させた培養液を用意した。
【0096】
また、粉末納豆菌(納豆素本舗製)10gを小型発酵タンクに供し、滅菌した大豆粉末と前培養させた培養液を用意した。
【0097】
さらに、オリエンタル酵母製のパン酵母10gを小型発酵タンクに供し、滅菌した小麦粉により前培養させた培養液を用意した。
【0098】
ビオフェルミン製薬より得た乳酸菌Lactobacillus casei菌10gを小型発酵タンクに供し、滅菌した大豆粉末と前培養させた培養液を用意した。
【0099】
前記の前培養した紅麹菌、納豆菌、パン酵母及び乳酸菌の溶液を前記の米糠と大豆を入れた発酵タンクに添加し、攪拌後、40〜45℃の温度範囲で加温し、発酵させた。
【0100】
発酵過程では、通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行い、目的とするベータグルカンペプチド誘導体の生成を測定した。
【0101】
その方法は、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)に発酵液を供して分析し、目的とする物質の生成を確認した。
【0102】
その結果、発酵10日後に、目的とするベータグルカンペプチド誘導体が十分量生成されたため、発酵を終了させた。発酵を停止後、発酵液に30℃のエタノール5kgを添加した。
【0103】
この発酵液を珪藻土を敷いたろ過器に供し、ろ過した。得られたろ過液をセルラキッス(株式会社ゼノン製)に供した。
【0104】
得られたろ液をアルカリ還元装置(ゼマイティス製のアルカリ還元水・強酸化水連続生成器「プロテックATX−501」)に供してアルカリ還元化させた。
【0105】
こうしてアルカリ還元することにより、ベータグルカンペプチド誘導体は水溶液または水に懸濁した場合、酸化還元電位がマイナス1mV〜マイナス500mVを呈した。
【0106】
こうして得られたアルカリ還元物を日本エフディ製の凍結乾燥機に供し、目的とするベータグルカンペプチド誘導体を粉末として230g得た。これを検体1として以下の試験に供した。
【0107】
以下に、ベータグルカンペプチド誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
【0108】
上記のように得られた検体1を抽出媒体に溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析し、さらに、核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製、AC−250)で解析した。構造解析の結果、検体1から目的とするトリペプチドを結合したベータグルカンペプチド誘導体を同定した。
【0109】
以下に、酸化還元電位試験について述べる。
(試験例2)
【0110】
前記の検体1の0.1gを水道水(東京都)の100mlに溶解した。これを酸化還元電位計(佐藤商事製、OPRプロ)にて酸化還元電位を測定した。
【0111】
その結果、溶解後1分後の検体1の酸化還元電位はマイナス136mVであり、溶解後12時間まで、マイナス電位を維持した。一方、水道水の酸化還元電位はプラス324mVであった。
【0112】
以下に、重金属吸着とシアン吸着試験について述べる。
(試験例3)
重金属として、塩化水銀(和光純薬製)、ヒ素(東京化成)、塩化鉛(和光純薬製)、塩化カドミウム(東京化成)、有機毒としてシアン化カリウム(和光純薬製)、農薬としてアセフェート(住化タケダ園芸株式会社製)及びピリミホスメチル(住化タケダ園芸株式会社製)を用いた。
【0113】
これらをジメチルスルホキシドに溶解し、それぞれ100ppm含有液を調製した。
【0114】
これに検体1で得られたベータグルカンペプチド誘導体を0.01mg添加して、1時間放置した。この溶液を限外膜ろ過に供し、ベータグルカンペプチド誘導体成分(ろ過されない)とろ液に分離した。ろ液について塩化水銀、ヒ素、鉛及びカドミウム含量を原子吸光測定装置(島津製作所、AA−6800)により測定した。
【0115】
また、ろ液のシアン含有量を同仁化学製のポナールキットCN・Tにより、農薬をHPLC法により測定した。
【0116】
その結果、ろ液の塩化水銀、ヒ素、鉛及びカドミウム含量は、それぞれ、1ppm、2ppm、1ppm及び1ppmであった。また、ろ液のシアン含有量は、1ppmであった。さらに、アセフェート及びピリミホスメチルの濃度は、それぞれ、0ppm及び1ppmであった。
【0117】
この結果、検体1のベータグルカンペプチド誘導体は、塩化水銀、ヒ素、鉛、カドミウム、シアンおよび農薬を吸着し、消去することが判明した。
【0118】
以下に、ホルムアルデヒド、クロロホルムとアンモニア吸着試験について述べる。
(試験例4)
ホルムアルデヒド(和光純薬製)、クロロホルム(和光純薬製)とアンモニア(和光純薬製)のそれぞれ1gを水100mlに溶解し、ホルムアルデヒド溶液、クロロホルム溶液とアンモニア溶液を調製し、密閉容器に入れた。
【0119】
それぞれの溶液に検体1で得られたベータグルカンペプチド誘導体を0.01mgずつ添加して、1時間放置した。
【0120】
密閉した容器の空気中のホルムアルデヒド、クロロホルムとアンモニア濃度を吸引式ガス測定器により測定した。
【0121】
その結果、検体1を添加しない場合には、密閉容器内の空気中のホルムアルデヒド、クロロホルムとアンモニア濃度は、それぞれ、236ppm、156ppm及び243ppmであった。
【0122】
これに対し、検体1を添加した1時間後の場合、密閉容器内の空気中のホルムアルデヒド、クロロホルムとアンモニア濃度は、それぞれ、1ppm、0ppm及び2ppmであった。
【0123】
この結果、検体1は、ホルムアルデヒド、クロロホルムとアンモニアを消去し、空気中への放出を抑制することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明で得られるベータグルカンペプチド誘導体は重金属汚染やシアンによる水質汚染や土壌汚染に対して、優れた吸着及び消去作用を呈し、汚染に対する改善作用が認められることから水質汚染や土壌汚染に関する環境保護に寄与する。
【0125】
本発明で得られるベータグルカンペプチド誘導体によれば、ホルムアルデヒド、クロロホルム、アンモニアによる室内汚染、シックハウス症候群、喘息患者やアトピー患者に対して優れた治療効果と予防作用が認められ、生活環境の質の向上に寄与する。
【0126】
原料として用いる米糠は廃棄物として焼却されていることから、廃棄物の有効利用と米資源が活用でき、農業とその二次加工産業を発展させる。
【0127】
本製造方法は、高度な発酵技術を利用するものであり、新しい発酵技術の向上と発酵産業の進展に貢献するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元電位がマイナス1mV〜マイナス500mVである下記の式(1)で示される有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体。
【化1】

【請求項2】
米糠及び大豆粉末に、紅麹菌、納豆菌、パン酵母及び乳酸菌を添加し、混合発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程を特徴とする請求項1に記載の有害物質消去作用を呈するベータグルカンペプチド誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2009−143880(P2009−143880A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325798(P2007−325798)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(507114244)株式会社 TIENS JAPAN (1)
【出願人】(504447198)
【Fターム(参考)】