有核赤血球成分を含む参照対照
有核赤血球成分を含む参照対照の作製方法は、核を含む血液細胞を提供し;前記血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を、自然の値から血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更し;そして、処理された血液細胞を懸濁媒中に懸濁して上記参照対照を形成すること、を含む。該方法はまた、有核赤血球成分を、白血球、赤血球、血小板及び網状赤血球成分と併せることも含む。調整成分、細胞膜を透過するための溶解成分及び細胞核を保存するための固定成分を含む、核の性質を変更するための細胞処理組成物がさらに開示される。有核赤血球を血液分析装置上で測定するための参照対照の使用方法もまた、開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)による、2004年4月7日に出願され、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている、仮特許出願番号第60/560,236号に基く利益を請求する。
【0002】
本発明は、有核赤血球成分を含む参照対照(reference control)組成物並びに血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球を測定するための参照対照組成物の製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
質のコントロールは、臨床血液学において長い間必要かつ日常的な手順であった。多様なタイプの血液細胞の計数における精度は、一部、適切な対照物及び該対照物の使用方法に依存する。現在利用可能な粒子計数のための多数のタイプの機器において、対照物の使用による質のコントロールは必要である。なぜなら、機器の故障の可能性は常に存在するからである。自動粒子計数装置のための質のコントロールプログラムを維持するための従来方法は、新鮮なヒト血液を全血標準として提供することから成る。しかしながら、この新鮮な血液は1日しか使用することができず、したがって、より長期の製品寿命を有する様々な対照物製品が開発された。
【0004】
対照物中で一般的に使用される粒子は、分析を受けることを意図される粒子又は細胞のタイプをシミュレートするか又は近似する。その結果、これらの粒子はしばしばアナログ粒子と呼ばれてきた。アナログ粒子は、機器において分析される粒子又は細胞の特徴に類似した一定の特徴を有するように選択されるか又は設計されなければならない。例示的な特徴及びパラメータはサイズ、体積、表面特性、顆粒特性、光散乱特性及び蛍光特性における類似性を含む。
【0005】
現在、多様な商業的参照対照製品が入手可能であり、これらはヒト血液細胞のアナログとして、多様な処理された又は固定されたヒト又は動物血液細胞を使用する。米国特許第5,512,485号(Youngら)は、処理され及び固定された動物赤血球から作られた数種類の白血球アナログを含む血液学の対照を教示する。これらの固定された赤血球は、血液サンプル中の特異的な白血球亜集団をシミュレートするために、それらの自然の細胞に近いサイズで固定される。商業的に入手可能な血液学の対照はまた、赤血球、血小板、網状赤血球、及び有核赤血球成分も含むことができる。
【0006】
有核赤血球(NRBC)、又は赤芽球は、未成熟の赤血球である。それらは通常、末梢血ではなく骨髄中で発生する。しかしながら、貧血及び白血病などの一定の病気では、有核赤血球は末梢血中でも発生する。したがって、末梢血中のNRBCを測定することは臨床的に重要である。近年、血液学の機器において血液サンプル中の有核赤血球を測定するためのいくつかの検出方法が報告された。米国特許第5,559,037号(Kimら)は、有核赤血球及び白血球のフローサイトメトリーによる分析方法を開示する。該方法は、NRBCを白血球サンプルから識別するために、蛍光、低角度光散乱及び軸方向光損失(axial light loss)の測定を使用する。米国特許第5,879,900号(Kimら)はさらに、血液サンプル中のNRBC、損傷された白血球(WBC)、WBC及び白血球分画(white blood cell differential)をフローサイトメトリーによって識別する方法を開示する。
【0007】
米国特許第5,874,310号及び同第5,917,584号(Liら)は、血液サンプルの2つの角度の光散乱シグナルを測定することによる、有核赤血球の識別方法を開示する。米国特許第5,874,310号及び同第5,917,584号はさらに、光散乱及びDCインピーダンスシグナルを測定することによる有核赤血球の識別方法を開示する。米国特許第6,410,330号及び同第6,673,618号(Liら)は、DCインピーダンス測定を使用することによるNRBCの測定方法を開示する。米国特許第6,472,215号(Huoら)は、3次元DC、RF及び光散乱測定と組み合わせたインピーダンス測定による、有核赤血球の識別方法を開示する。
【0008】
上記で引用した有核赤血球の検出方法の開発とともに、有核赤血球成分を含む血液学の対照又はNRBCアナログが報告された。
【0009】
米国特許第6,187,590号及び同第5,858、790号(Kimら)は、溶解されそして固定された鳥類又は魚類赤血球又は溶解されそして固定されたヒトリンパ球から作られた有核赤血球(NRBC)アナログを含む血液学の対照を開示する。米国特許第6,187,590号及び同第5,858、790号はさらに、鳥類又は魚類の赤血球細胞を溶解試薬で1〜5分溶解し、続いて10分以下、60〜70℃で細胞からの核を固定液で固定することによってNRBCアナログを調製する方法を開示する。
【0010】
米国特許第6,406,915号、同第6,403,377号、同第6,399,388号、同第6,221,668号及び同第6,200、500号(Ryanら)は、鳥類の血液細胞由来のNRBCアナログを含む血液学の対照を開示する。該方法は、七面鳥又はニワトリ赤血球などの鳥類の赤血球を緩衝溶液中で洗浄し、洗浄された細胞を室温で1日、リン酸グルタルアルデヒド溶液で固定することを含む。米国特許第6,448,085号(Wangら)は、商業的供給源から得た固定されたニワトリ赤血球である有核赤血球(NRBC)アナログを含む血液学の対照を開示する。
【0011】
米国特許第6,653,137号及び同第6,723,563号(Ryan)は、核を含む血液細胞を安定化するか、又は血液細胞を溶解しそして細胞質を除去することによって、血液学の対照のための有核赤血球成分を作製する方法を開示する。米国特許第6,723,563号は、特別に、有核赤血球成分の作製方法を教示し、これは、核及び細胞質を封入する膜を含む血液細胞を溶解剤と少なくとも4時間接触させ、膜内から細胞質を除去し、しかし核周辺の膜の一般的構造は保存するステップを含む。該方法はさらに、細胞質を除去後に血液細胞を固定することを含む。
【0012】
異なる細胞源から得られ、そして異なる方法で処理された有核赤血球アナログが異なる特性を有することは認識されている。ヒト有核赤血球のシミュレーションのためには、例えば、溶解されそして固定された鳥類の血液細胞から作製されたNRBCアナログは、蛍光に基く測定方法には好適であるが、インピーダンス又は光散乱測定法などのサイズで分類する方法には小さすぎる。さらに、固定されない安定化されたワニ細胞の核も、血液分析装置での血液サンプル分析のために使用される一定の強力な溶解条件下で分析される場合には小さすぎるかもしれない。したがって、ヒト有核赤血球をシミュレートするための所定の検出ドメインに好適な標的サイズを得るために、血液細胞の細胞核の自然のサイズを変更することの可能な、NRBCアナログの調製方法があることが望ましい。
【0013】
細胞の性質の操作に関しては、米国特許第6,146,901号(Carverら)は、生物学的粒子の光学的及び電気的性質を操作して、各性質のための選択された標的値を達成するための方法を開示する。該方法は、それぞれ自然の値の光学的及び電気的性質を有する動物赤血球細胞などの基本の生物学的粒子を提供し;該粒子を、低張緩衝溶液及びポリヒドロキシアルコールを含むプレインキュベーション媒体と接触させて、粒子の光学的及び電気的性質を操作し;インキュベーション時間の間、粒子をプレインキュベーション媒体中に残し;続いて、粒子を一次固定溶液と一定時間接触させる、を含む。インキュベーション時間と、一次固定溶液と接触させる時間は、粒子の光学的および電気的性質それぞれの自然の値を操作して光学的及び電気的性質の標的値を達成するために選択される。Carverらの方法は、赤血球を溶解させずに赤血球から多量のヘモグロビンを漏出させることによって、細胞の性質を操作するために使用される。Carverらは血液細胞の核の性質を操作又は変更することは教示していない。
【発明の開示】
【0014】
発明の要約
1つの側面において、本発明は有核赤血球成分を含む参照対照に関する。参照対照は、核を含む血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を自然の値から血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更することによって得られる有核赤血球成分;及び前記有核赤血球の分析のために、前記血液分析装置に前記有核赤血球成分を送達するための好適な懸濁媒を含む。核の性質は、核のサイズ、又は光学的性質を含む。光学的性質は、光散乱特性又は上記核を蛍光色素で染色した上での蛍光特性であることができる。
【0015】
参照対照はさらに、白血球成分、赤血球成分、血小板成分、及び網状赤血球成分を含むことができる。
【0016】
さらなる側面においては、本発明は有核赤血球成分を含む参照対照を作製する方法に関する。該方法は、以下のステップ:核を含む血液細胞を提供し;前記血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を、自然の値から血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更し、そして該標的値を維持し;そして、処理された血液細胞を懸濁媒中に懸濁して上記参照対照を形成すること、を含む。
【0017】
他の側面においては、本発明は核の性質を変更するための細胞処理組成物に関する。細胞処理組成物は、調整成分;細胞膜を透過し、そして上記細胞処理組成物が上記細胞核と接触していることを可能とするための溶解成分;上記細胞核を保存するための固定成分を含み、ここで上記調整成分、上記溶解成分、及び上記固定成分は、核の性質を自然の値から標的値に変更するためのそれぞれの所定の濃度で存在する。調整成分は、緩衝剤及び重量モル浸透圧調節剤を含む。固定成分はアルデヒド、オキサゾリジン、アルコール、環状尿素、又はそれらの組み合わせなどの固定剤である。溶解成分は、4級アンモニウム界面活性剤を含む。細胞処理組成物はさらに、1つ以上の非イオン性界面活性剤を含むことができる。
【0018】
さらなる側面においては、本発明は、有核赤血球成分を含む参照対照の使用方法に関する。該方法は、核を含む血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を自然の値から血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更して得られた有核赤血球成分を含む参照対照を提供し;上記血液細胞を分析しそして他の細胞タイプから有核赤血球を識別するために適合された血液分析装置を提供し;上記有核赤血球成分の検出のために上記血液分析装置に対照を通し;そして上記参照対照中の有核赤血球を報告することを含む。他の細胞タイプからの有核赤血球の識別は、インピーダンス、又は光学的測定又はそれらの組み合わせを使用して得られる。光学的測定は、蛍光、光散乱、軸方向光損失の測定又はそれらの組み合わせであることができる。
【0019】
発明の詳細な説明
1つの側面において、本発明は、有核赤血球(NRBC)成分を含む参照対照並びに有核赤血球(NRBC)成分及び血液学の対照組成物の調製方法を提供する。
【0020】
上記方法は、以下のステップ:核を含む血液細胞を提供し;上記血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を、自然の値から血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更し、そして核の該標的値を維持し;そして処理された血液細胞を懸濁媒中に懸濁して参照対照を形成する、を含む。本発明の目的のためには、有核赤血球並びに他の細胞タイプ成分も、NRBCアナログなどのアナログと称される。本明細書において使用される「核の性質」という用語は、核のサイズ又は光学的性質を含むがこれらに限定されない。光学的性質は、光散乱特性、軸方向光損失特性、又は上記核を蛍光色素で染色した上での蛍光的性質であることができる。
【0021】
ヒト有核赤血球をシミュレートするために好適な血液細胞の好ましい例は、多様な有核動物赤血球及び小哺乳動物白血球を含む。より特別には、ワニ、サメ及びサケの赤血球などの爬虫類、鳥類及び魚類の赤血球、並びに全血由来の又は細胞株によってインビトロで増殖した哺乳動物リンパ球が使用可能である。1つの好ましい実施態様においては、ワニ赤血球が、有核赤血球成分を作製するために使用された。
【0022】
1つの実施態様においては、動物有核赤血球を用いてNRBCアナログを作製する方法は以下のステップを含む:
1.有核赤血球を有する選択された動物種の大量の全血を、抗凝固剤を入れた容器に集める。全血を遠心分離し、そして(白血球、血小板及び血漿を含む)上層を除去する。
2.濃厚有核赤血球を緩衝等張洗浄液で3回洗浄する。
3.濃厚有核赤血球を懸濁媒で洗浄し、そして洗浄された濃厚細胞を懸濁媒に再懸濁する。好ましくは、細胞計測数は、約0.4×106〜約0.6×106細胞/μlの範囲である。
4.所定の体積の再懸濁された細胞を等体積の処理溶液に加え;上下を反転させることによってよく混合して、細胞処理懸濁液を形成し;そして該細胞処理懸濁液を処理時間の間、インキュベートして、核の性質を自然の値から標的値に変更し、そして標的値を維持することによって、再懸濁された有核赤血球を処理する。
6.処理された細胞を、遠心分離によって細胞処理懸濁液から分離する。
7.処理された細胞を血液分析装置上での分析に好適な懸濁媒に再懸濁する。
【0023】
1つの好適な緩衝等張洗浄溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。本分野において知られた多様な他の細胞洗浄溶液も使用可能である。
【0024】
懸濁媒の好適な例は、リン酸緩衝生理食塩水および血漿物質水溶液を含む。本明細書で定義される血漿物質水溶液は、血清物質の水溶液、血清物質と血漿タンパク質の組み合わせ及びこれらの混合物を含む。さらに本明細書において定義される、血漿タンパク質は、血漿に含まれる1つ以上のタンパク質を含む。好ましくは、かかる血漿タンパク質は、アルブミン、リポタンパク質、グロブリン、フィブリノーゲン、及びそれらの混合物を含む。これらの媒体は、細胞の安定性を与えることが当業者に知られた他の成分を含んでもよい。実施例1は、懸濁媒の3つの配合例を提供する。好ましくは、NRBCアナログの長期保存のためには、懸濁媒は比較的高濃度のタンパク質を含む。好適な媒体の他の例は、参考文献としてその全体が本明細書中に援用されている、米国特許第4,213,876号、同第4,299,726号、同第4,358,394号、同第3,873,467号、同第4,704,364号、同第5,320,964号、同第5,512,485号、及び同第6,569,682号により完全に記載される。
【0025】
細胞処理組成物とも呼ばれる、本発明の目的のために核の性質を変更するための処理溶液は、調整成分、細胞膜を透過し、処理溶液が細胞核と接触することを可能とするための溶解成分、及び処理された核を保存するための固定成分を含む。
【0026】
1つの実施態様において、調整成分は、緩衝剤及び重量モル浸透圧濃度調節剤を含む。緩衝剤と重量モル浸透圧濃度調節剤は2つの別々の化学物質であって、それぞれが異なる機能を提供する。しかしながら、緩衝剤及び重量モル浸透圧調節剤はまた、両方の機能を提供するための同じ化学物質であることもできる。例えば、リン酸緩衝剤が処理溶液中で使用された場合、該リン酸塩対が緩衝化及び重量モル浸透圧濃度調節機能の両方を提供することができる。
【0027】
1つの好ましい実施態様において、溶解成分は以下の分子構造:
【化1】
{式中、
R1は、12〜16個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;
R2、R3、及びR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;そして
X-は塩素又は臭素アニオンである。}
で表される、4級アンモニウム界面活性剤を含む。
【0028】
さらに、処理溶液はまた、6〜12個の炭素原子を有するアルキル基を有するエトキシル化アルキルフェノール及び約10〜約50個のエチレンオキシド基も含むことができる。さらに、処理溶液は以下の分子構造:
【化2】
{式中、
R1は、10〜22個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、又はアルキニル基であり、
R2は、−O−であり;そして
nは、20〜35である。}
により表されるエトキシル化アルキルアルコールを含むことができる。
【0029】
処理溶液の固定成分は、アルデヒド、オキサゾリジン、アルコール、環状尿素などを含むがこれらに限定されない固定剤である。好適な例は、限定されることなく、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアゾリジニル尿素、イミダゾリジニル尿素、ジメチロール尿素、ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール;4級アダマンチン;ヒドロキシメチル−1−アザ−3,7−ジオキサビシクロ(3.3.0)オクタン及び5−ヒドロキシメチル−1−アザ−3,7−ジオキサビシクロ(3.3.0)オクタン及び5−ヒドロキシポリメチレンオキシ−メチル−1−アザ−3,7−ジオキサビシクロ(3.3.0)オクタン、ヒドロキシメチルグリシネートナトリウム、並びにそれらの混合物を含む。好ましい実施態様において、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドなどのアルデヒド固定剤が使用される。
【0030】
そのすべてが参考文献として本明細書中に援用されている米国特許第5,196,182号、同第5,262,327号、同第5,460,797号、同第5,811,099号、同第5,849,517号、同第6,221,668号、同第5,529,933号、及び同第6,187,590号に開示されたような他の固定剤も使用されることができる。
【0031】
実施例1は、ワニ赤血球を使用した有核赤血球成分(NRBCアナログ)の調製例を例示する。示されるように、本発明の方法及び処理溶液を使用して、処理された細胞核のサイズ、光学的性質並びに蛍光的性質がそれらの自然の値又は性質から変更される。本明細書において、蛍光的性質とは、有核血液細胞又は処理された細胞核を核染色剤で染色した上でフローサイトメーターで測定した蛍光シグナルをさす。一方、光学的性質は、核のサイズ及び粒度によって影響されることができる。より特別には、実施例1に示す特異的な処理溶液組成物を使用して得られたNRBCアナログは、図2A〜2Eに示すとおり、多様な測定条件下において未処理の有核赤血球と比べた場合、よりサイズが小さく、より光散乱性であり、そして蛍光がより少ない。
【0032】
実施例2は、ワニ赤血球を使用したNRBCアナログの他の調整例を例示し、ここで、NRBCアナログを調製する方法のステップは実施例1と同じであるが、調整成分に関して処理溶液が異なる。実施例1においては、調整成分はリン酸水素2ナトリウム/リン酸2水素ナトリウム緩衝系(Na2HPO4/NaH2PO4)であり、処理溶液は390mOsmの重量モル浸透圧濃度を有する。実施例2においては、調整成分はクエン酸アンモニウム及びテトラミゾールを含み、処理溶液は560mOsmの重量モル浸透圧濃度を有する。図4A〜4Eに示すように、実施例2の処理溶液を用いて得られたNRBCアナログは、実施例1において使用された処理溶液を用いて得られたアナログに比べて、実質的により小さなサイズ及びより強い蛍光シグナルを有する。
【0033】
正確な反応メカニズムは完全にわかっていないが、有核赤血球と接触した場合、処理溶液の3つの機能成分が同時に細胞及び細胞核に対して作用することがわかる。溶解成分は処理溶液の細胞膜中への透過を可能とし、そして処理溶液と細胞核との接触を可能とする。溶解成分はさらに、核膜を透過することができる。同時に、固定成分は競争的モードで固定によって細胞核を保存する。一方、調整成分は、あるpH及び重量モル浸透圧濃度を反応条件に提供し、これは細胞及び細胞核の溶解成分及び固定成分への応答に影響する。かかる処理条件は一緒になって核の性質を変更し、これは血液分析装置上での血液サンプルのNRBCのシミュレーションに利用可能である。
【0034】
さらなる実施態様においては、参照対照組成物はさらに、特異的な検出条件下で白血球(WBC)をシミュレートする白血球成分を含む。白血球成分の存在下では、NRBC成分及び白血球成分の間の比率は、100個のWBCあたりのNRBC数を報告するのに使用可能であり、これは、臨床検査室において血液サンプル中の有核赤血球を報告するのに使用されるのと同じ単位である。好ましくは、白血球成分又はアナログは、顆粒球又はリンパ球などの主要な白血球亜集団に類似する性質を有する。
【0035】
さらに、差異分析のために白血球亜集団をシミュレートするために、白血球成分は1つ以上の白血球亜集団成分又はアナログ、例えば2つ、3つ、4つ、又は5つの白血球アナログを含むことができる。白血球アナログの好適な例は、本分野で知られているとおり、安定化されかつ固定された哺乳動物白血球、そして処理され及び/または固定されたヒト及び動物赤血球を含む。1つの実施態様において、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている米国特許第5,320,964号及び同第5,512,485号中で教示されるように、インピーダンス及び光散乱測定の組み合わせを用いる差異分析のために、白血球アナログは処理されたガチョウ及びワニの赤血球から作製されることができる。他の実施態様においては、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている米国特許第4,704,364号中で教示されるように、インピーダンス測定を用いる差異分析のために、白血球アナログは処理された鳥類及びヒト赤血球から作製されることができる。さらなる実施態様においては、白血球アナログは、固定された哺乳動物白血球から作製されることができる。哺乳動物白血球は、白血球アナログの調製の間で、全血中の赤血球を溶解する前に固定される。
【0036】
場合により、哺乳動物白血球及び動物赤血球は、白血球アナログの調製過程の間に、リポタンパク質と接触させることによってさらに処理されることができる。リポタンパク質との接触は、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている米国特許第5,320,964号、同第5,512,485号、同第6,406,915号、同第6,403,377号、同第6,399,388号、同第6,221,668号、及び同第6,200,500号中で教示されるように、白血球又は赤血球の固定の前に起こることができ、また、固定後及び懸濁媒中での保存の間にも起こることができる。
【0037】
他の実施態様においては、本発明は、上記の有核赤血球成分、白血球成分、並びに追加として赤血球成分及び血小板成分を懸濁媒中に含む参照対照組成物を提供する。
【0038】
赤血球成分は、安定化されたヒト又は動物赤血球、好ましくは安定化されたヒト赤血球であることができる。赤血球成分の作製方法は、その全体が本明細書中に参考文献として援用されている米国特許第4,299,726号及び同第4,358,394号中に詳しく記載された。血小板成分は、安定化されたヒト又は動物血小板、或いは他の細胞タイプから作製された血小板アナログであることができる。1つの好適な例は、その全体が本明細書中に参考文献として援用されている米国特許第4,264,470号、同第4,389,490号、及び同第4,405,719号中に開示された、血小板アナログとしての処理されたヤギ赤血球である。
【0039】
血液サンプル中の赤血球又は参照対照組成物中の安定化されたヒト赤血球は、有核赤血球及び白血球の測定のための血液サンプルの調製のために通常使用される溶解条件下で溶解され、そして、分析器が適切に作動する場合は測定において検出されてはならない。溶解条件下での血液サンプルの血小板は、サイズが小さくなり、そして有核赤血球の測定のための検出閾値より低いか又は有核赤血球から分離されるのいずれかである。したがって、参照対照組成物中の赤血球成分及び血小板成分は、さらに、対照組成物の溶解試薬への応答並びに機器における反応条件を反映する。したがって、赤血球及び血小板成分を含む参照対照組成物は、機器の操作条件に関するさらなる情報も提供することができる。
【0040】
さらに、赤血球及び血小板成分を含む参照対照組成物はまた、赤血球及び血小板測定にも使用されることができ、これは自動血液分析装置での白血球及び有核赤血球の測定とともに一般的に実施される。
【0041】
場合により、参照対照組成物はさらに、網状赤血球の分析のための網状赤血球成分を含むことができる。
【0042】
実施例3は、実施例1に記載の方法によって作製された有核赤血球成分、白血球成分、赤血球成分及び血小板成分を含む参照対照組成物の調製を例解する。
【0043】
実施例4はさらに、有核赤血球、複数の白血球亜集団成分、赤血球成分、及び血小板成分を含む参照対照組成物の調製を例解する。
【0044】
調製された有核赤血球成分を含む参照対照組成物は、多様な測定方法を用いる有核赤血球測定のために利用されることができる。
【0045】
1つの実施態様においては、本発明は、DCインピーダンス測定を使用する有核赤血球の測定のために有核赤血球成分を含む参照対照を用いる方法を提供する。血液サンプル中の有核赤血球の測定のために使用される測定方法及び機器は、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている米国特許第6,410,330号中に開示された。
【0046】
図2A及び4Aに示されるとおり、処理溶液1及び2を使用して実施例1に記載の方法によって作製されたNRBCアナログは、実施例1に詳細に記載されるとおり、溶解試薬で処理され、そして血液分析装置上でのDCインピーダンス測定によって測定された場合、ヒト全血サンプルの有核赤血球のサイズをシミュレートした。
【0047】
他の実施態様においては、本発明は、光学的測定を使用する有核赤血球の測定のための、有核赤血球成分を含む参照対照の使用方法を提供する。光学的測定は、光散乱測定、軸方向光損失の測定、及び蛍光測定を含む。
【0048】
光学的測定を用いるNRBCの分析は、集束流フローセル中で実施される。血液細胞などの粒子がフローセルの開口を通過する場合、それは入射光をすべての方向に散乱する。光散乱シグナルは、光検出器によって、入射光に対する0°〜180°の間の様々な角度で検出可能である。入射光から10°未満で検出された光散乱シグナルは、一般に、低角度光散乱と呼ばれる。入射光から約10°〜約70°で検出された光散乱シグナルは、一般に、中角度光散乱と呼ばれ、入射光から約90°で検出された光散乱シグナルは、直角光散乱と呼ばれる。フローサイトメーター上で、入射光から20°未満で検出された光散乱シグナルは、一般に前方光散乱と呼ばれる。光散乱シグナルの特徴は、細胞のサイズ、細胞の内容物、及び細胞の表面の性質によって影響される。
【0049】
(ALL、前方消光としても知られる)軸方向光損失は一般に、入射光の光線を通過する粒子による光エネルギーの減少であり、そして光検出器で検出される。入射光の光線が粒子に当たると、光は散乱されるか又は吸収され、その両者が入射光からエネルギーを取り除きそして入射光線は減弱される。この減弱は消光と呼ばれる。入射光の光線軸に沿ってみた場合、これは軸方向の光の損失と呼ばれる。一般に、ALLシグナルは、入射光から約0°〜約1°の角度で検出される。ALLシグナルは、細胞のサイズによって強く影響される。
【0050】
さらに、核染色剤によって染色された有核血液細胞は蛍光測定によって測定されることができる。使用される染色剤によって、いくつかの異なる波長の蛍光シグナルが、有核血液細胞の識別のために利用可能である。有核赤血球は、他の細胞タイプに比べて顕著又は微細に異なる光散乱、軸方向光損失及び蛍光的性質を有することが発見され、他の細胞タイプからのこの異常な血液細胞集団の識別に利用されてきた。
【0051】
本発明の方法によって作製されたNRBCアナログが測定される方法及び機器の1つの好適な例は、その全体が参考文献として本明細書中に援用される米国特許第5,874,310号及び同第5,917,584号中に記載された参照対照として利用可能である。より特別には、2つの角度の光散乱シグナルが、他の細胞タイプから有核赤血球を識別するために使用される。光散乱の1つは、10°未満の低角度光散乱シグナルである。第二の光散乱角度は、低角度、中角度、又は直角光散乱シグナルである。さらに、DCインピーダンス測定と組み合わせた光散乱測定もまた、有核赤血球を測定するために使用可能である。
【0052】
本発明の方法によって作製されたNRBCアナログが参照対照として利用可能な測定方法及び機器のさらなる好適な例が、その全体が参考文献として本明細書中に援用される同時係属の特許出願番号第11/048,086号に詳細に記載された。この方法においては、軸方向光損失及び好ましくは約3°〜7°の低角度光散乱測定、又は軸方向光損失及びDCインピーダンス測定、或いはそれらの組み合わせが他の細胞タイプからの有核赤血球の識別のために使用される。
【0053】
さらに、図2E及び4Eにしめされるとおり、処理溶液1及び2を用いて実施例1に記載の方法によって作製されたNRBCアナログは、試薬系で処理され、そしてフローサイトメーター上で525nm及び675nmの蛍光測定によって測定された場合、ヒト全血サンプルの有核赤血球の蛍光的性質をシミュレートするのに使用可能である。Coulter FC 500フローサイトメーター上での血液サンプル中のNRBCの分析方法は、実施例1に記載され、そして図3C及び3Dに例解される。
【0054】
さらに他の実施態様においては、本発明は、DCインピーダンス及びVCS測定法の組み合わせを用いる有核赤血球の測定のために、有核赤血球成分を含む参照対照を用いる方法を提供する。該測定のために使用される測定方法及び機器は、その全体が参考文献として本明細書中に援用される米国特許第6,472,215号中に記載される。VCS測定という用語は、その全体が参考文献として本明細書中に援用される米国特許第5,125,737号中に記載される、DCインピーダンス、高周波インピーダンス及び中角度光散乱シグナルの複数パラメータ測定と呼ばれる。
【0055】
図2B、2C、4B及び4Cに示されるとおり、処理溶液1及び2を用いて実施例1に記載された方法によって作製されたNRBCアナログは、試薬系によって処理され、そして血液学の機器上でDCインピーダンス及びVCS測定の組み合わせによって測定された場合、ヒト全血サンプルの有核赤血球をシミュレートするのに使用可能である。Coulter LH750血液分析装置上でのNRBCの分析方法は、実施例1に詳細に記載される。
【0056】
以下の実施例は、本発明を例解するものであり、いかなる方法によっても請求項によって定義される本発明の範囲を制限するものと解してはならない。本開示にしたがって、様々な他の成分及び割合が採用されることができる。
【実施例】
【0057】
実施例1
ワニ赤血球を用いたNRBCアナログの調製
以下の試薬組成物を、NRBCアナログの調製のために調製した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
NRBCアナログの調製方法のステップ
1.多量のワニ全血を、抗凝固剤を含む容器中に集める。該ワニ全血を遠心分離し、そして(白血球、血小板及び血漿を含む)上層を除去する。
2.濃厚ワニ赤血球をリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄する。
3.濃厚ワニ赤血球を懸濁媒1で洗浄し、洗浄された濃厚細胞を懸濁媒1に再懸濁する。好ましくは、細胞カウントは約0.4×106〜約0.6×106細胞/μlの範囲にある。
4.所定体積の再懸濁細胞を等体積の処理溶液1に加えることによって、再懸濁されたワニ赤血球を処理し、そして上下を反転させてよく混合して、細胞処理懸濁液を形成する。
5.細胞処理懸濁液を4℃で一夜インキュベートする。
6.冷蔵庫から細胞処理懸濁液を取り出し、1000rpmで15分間遠心分離し、上清を除去する。
7.血液分析装置上での分析のために、処理された細胞を懸濁媒3に再懸濁する。
【0064】
上記の処理方法によって得られたNRBCアナログを(Beckman Coulter, Inc., Californiaにより製造された)Coulter(登録商標)LH750血液分析装置で分析した。CoulterLH750血液分析装置は、3つの非集束流開口を用いるRBC浴及び赤血球の測定のための第一DCインピーダンス検出器;3つの非集束流開口を用いるWBC浴、白血球のカウントのための第二DCインピーダンス検出器、及び白血球の3分類分析及び有核赤血球;並びに白血球の5分類分析及び有核赤血球の分析ための集束流フローセルを有するVCS検出システムを有する。VCS検出システムは、DCインピーダンス、高周波インピーダンス及びフローセルを通過する細胞の中角度光散乱シグナルを測定する。本明細書において、白血球の3分類分析及び5分類分析は、白血球を3つ及び5つの亜集団とする差異分析をさす。
【0065】
血液サンプル又は参照対照をCoulter LH750血液分析装置によって吸引した。サンプルの第1のアリコートを等張の血液希釈剤、(Beckman Coulter, Inc. の製品である)Coulter LH700シリーズ希釈剤、で希釈して、第1のサンプル混合物を形成する。第1のサンプル混合物を真空源によって、3つの開口の組を通じて取り出した。各血液細胞を、それが開口を通過するときにDCインピーダンス検出器で測定し、赤血球細胞パラメータを得た。血液サンプルの第2のアリコートをLH700シリーズ希釈剤で希釈し、そして一定体積の第1溶解試薬、(Beckman Coulter, Inc. の製品である)Lyse S(登録商標)III diffと混合して、第2サンプル混合物を形成した。第2サンプル混合物を真空源によって、3つの開口の組を通じて取り出し、そして第2DC検出器によって測定し、白血球カウント、白血球の3分類分析及び有核赤血球の分析を行った。サンプルの第3のアリコートを一定体積の第2溶解試薬、Erythrolyse(商標)IIと混合して赤血球を溶解し、そして続いて(どちらもBeckman Coulter, Inc. の製品である)一定体積の安定化試薬、Stabilyse(商標)と混合して、第3のサンプル混合物を形成した。白血球の5分類分析及び有核赤血球の分析のための集束流フローセルに第3のサンプル混合物を送達した。約18℃〜約28℃の範囲の温度で測定を実施した。第2及び第3のサンプル混合物の測定から得られたデータをまとめて分析し、有核赤血球についての報告を提供した。
【0066】
図1Aは、(処理溶液1による処理をせずに、ステップ1〜3のみによって加工された)洗浄されたワニ赤血球から得られた赤血球分布のヒストグラム(RBC浴中の第1のサンプル混合物)を示す。示すように、洗浄されたワニ赤血球は非常に大きく、細胞サイズは300fl超であった。図1Bは、部分的に示した、洗浄されたワニ赤血球の白血球分布のヒストグラム(WBC浴中の第2のサンプル混合物)を示す。示すように、溶解条件下では、WBC浴中で測定された有核赤血球は、実質的にその核のサイズであり、ピークが約55flの非常に広い分布を有する。ヒストグラムの一番左の領域には、溶解反応の結果として多量の細胞細片があったことは注目される。図1Cは、洗浄されたワニ赤血球のDC対RLS(回転光散乱(rotated light scatter))相関グラフを示す。第3のサンプル混合物の溶解条件下で測定された有核赤血球は、DC軸の下方及びRLS軸の中心周囲にある。ここで、RLSは、VCS検出システムのDC軸の下部及び中角度光散乱の関数である。
【0067】
図2Aは、処理溶液1を用いて上記の方法で処理されたワニ赤血球細胞から作製されたNRBCアナログの赤血球分布ヒストグラムを示す。示すように、NRBCアナログは溶解条件下で、ワニ赤血球の核サイズに近いサイズを有し、これは図1Bに示す。図2Bは、部分的に示された、WBC浴中の溶解条件下のNRBCアナログの白血球分布のヒストグラムを示す。示すように、NRBCアナログは洗浄されたワニ赤血球に比べて、サイズが小さく(約45fl)、そしてより狭くかつ詳細に明らかにされた細胞分布を有する。図2Cは、血液サンプルの第3のアリコートのために使用した溶解条件下でのNRBCアナログのDC対RLS相関グラフを示す。
【0068】
図3Aは、上記と同じ方法を使用してCoulter LH750血液分析装置上で分析した、27 NRBC/100 WBCを含む臨床血液サンプルの白血球分布のヒストグラムを示す。図3Bは臨床サンプルのDC対RLS相関グラフを示す。図3A中のヒストグラムの表示スケールは、図1B及び2B中のものとは異なることは注目され、ここで、図3Aは、白血球分布全体を示し、図1B及び2BはNRBC集団が位置する一番左の領域のみを示す。図2B及び2Cに示すNRBCアナログは、同じサンプル分析条件下のヒト有核赤血球と類似のサイズであった。
【0069】
上記の処理方法から得られたNRBCアナログをまた、(Beckman Coulter, Inc.,Californiaにより製造された)CoulterFC500フローサイトメーター上で分析した。白血球を標識するために、25μlの血液サンプル又は参照対照を10μlのFITC標識抗−CD45抗体と混合し、そして室温で30分インキュベートした。インキュベートしたサンプルを250μlの低張酸性溶解試薬(核酸染色剤を含む溶液A)と混合し、30分おいて赤血球を溶解し、そして500μlの高張アルカリ性試薬(溶液B)と混合し、そして室温で5分間おき、重量モル浸透圧濃度を元に戻し、そしてpHを中和し、サンプル混合物を形成した。サンプル混合物をCoulter FC 500フローサイトメーターで吸引し、そして前方及び側方光散乱検出器及び525nm(FL1)及び675nm(FL4)で蛍光検出器によって測定した。溶液Aは、脱イオン水中、2.10g/lのクエン酸1水和物、0.56g/lのリン酸水素2ナトリウム及び100mg/lのヨウ化プロピジウムを含み、そして3.0のpHと16mOsm/kgH2Oの重量モル浸透圧濃度を有する。溶液Bは、脱イオン水中、0.95g/lのリン酸2水素ナトリウム無水物、6.24g/lのリン酸水素2ナトリウム及び10.2g/lの塩化ナトリウムを含み、そして7.5のpHと420mOsm/kgH2Oの重量モル浸透圧濃度を有する。この分析法は、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている、Tsuji et al, Cytometry 37:291-301, 1999により詳細に記載された。
【0070】
図1Dは、(上記のように洗浄された)洗浄されたワニ赤血球の、FS(前方光散乱)対SS(側方散乱)相関グラフを示し、図1Eは、FL4(log)対FL1(log)相関グラフを示す。示すように、洗浄されたワニ赤血球は、FS対SS相関グラフの左下の隅に現れ、実質的にその核のサイズであった。FL4(log)対FL1(log)相関グラフにおいては、有核赤血球は左上の四分域に現れた。これらの細胞は、強力なFL4シグナルを有し、これはまた、PIブライトとも呼ばれる。それらは、その弱いFL1シグナルによって表されるCD45-であった。
【0071】
図2D及び2Eは、処理溶液1を用いて上記のように処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログのFS対SS相関グラフ及びFL4対FL1相関グラフをそれぞれ示す。示すように、NRBCアナログは増加した光散乱シグナル、特に側方散乱シグナルを有する。一方、NRBCアナログは、FL4シグナルが減少した。NRBCアナログが洗浄されたワニ赤血球に比較して弱いFL4シグナルを有するにもかかわらず、そのシグナルが血液サンプルをシミュレートするのに十分であったことは注目される。さらに、NRBCアナログの異なる分布特性は、参照対照のフィンガープリントとして使用することができ、これは参照対照を血液サンプルから識別する機器にとって有益である。
【0072】
図3C及び3Dは、正常な全血サンプル及び13.7 NRBC/100 WBCを含む臨床サンプルそれぞれのFL4対FL1相関グラフを示す。図3Dに示すように、NRBC集団は相関グラフの左上の四分域に位置した。図3Cに示すように、正常血液サンプルはこの領域内に位置する細胞集団を含まなかった。したがって、上記の方法を用いて作製されたNRBCアナログは、蛍光測定を用いてヒトNRBCをシミュレートするために使用可能である。
【0073】
NRBCアナログはまた、ステップ3における懸濁媒2の使用以外は、上記の方法のステップによって作製された。Coulter LH750血液分析装置及びCoulter FC 500フローサイトメーター上での分析は、懸濁媒2を用いて作製されたNRBCアナログが懸濁媒1を用いて作製されたものと類似したことを示した。
【0074】
実施例2
ワニ赤血球を用いる、有核赤血球成分の調製
実施例1で使用した、多量の同じワニ全血を、以下に示す処理溶液2を使用する以外は実施例1に記載されたと同じ方法のステップで処理した。
【0075】
【表6】
【0076】
処理溶液1と処理溶液2とでは、溶解成分及び固定成分が同じであるが、調整成分が異なり、これが該2つの処理溶液の間で異なるpH及び重量モル浸透圧濃度を生じることは注目される。
【0077】
処理溶液2を用いて作製したNRBCアナログをCoulter LH750血液分析装置及びCoulter FC 500フローサイトメーター上で、上記と同じサンプル分析法を用いて分析した。
【0078】
図4Aは、処理溶液2を用いて作製したNRBCアナログの赤血球分布のヒストグラムを示す。示すように、このNRBCアナログは、実施例1で得たNRBCアナログよりも実質的に小さいサイズを有した。図4Bは、WBC浴中の溶解条件下でのこのNRBCアナログの部分的に示した白血球分布のヒストグラムを示し、これはまた、実施例1で得られたNRBCアナログのものよりも少なかった。しかしながら、両方のNRBCアナログはヒト有核赤血球にサイズが類似していた。図4Cはさらに、NRBCアナログのDC対RLS相関グラフを示す。
【0079】
図4D及び4Eは、実施例2のNRBCアナログのFS対SS及びFL4対FL1相関グラフをそれぞれ示す。図4Dに示すように、実施例2のNRBCアナログは増加した前方光散乱シグナルを有したが、側方光散乱シグナルは減少した。図4Eに示すように、NRBCアナログは、ヒト有核赤血球に非常に類似した蛍光シグナルを有した。
【0080】
実施例3
有核赤血球成分、白血球成分、並びに赤血球及び血小板成分を含む参照対照組成物
方法:
1.所定の体積の実施例1に記載の懸濁媒1を提供する。
2.懸濁媒中に、所定量の安定化されたヒト赤血球を加える。安定化されたヒト赤血球を米国特許第4,299,726号及び同第4,358,394号に記載の方法によって調製した。
3.安定化されたヒト赤血球を含む懸濁媒中に所定量の血小板アナログを加える。血小板アナログは、米国特許第4,264,470号、同第4,389,490号及び同第4,405,719号中に記載の方法によって固定化されたヤギ赤血球から作製する。
4.白血球成分としての所定量の固定化されたガチョウ赤血球を、安定化されたヒト赤血球細胞及び血小板アナログを含む懸濁媒中に加える。
5.実施例1又は2で調製した所定量のNRBCアナログを、安定化されたヒト赤血球、血小板アナログ、及び白血球成分を含む懸濁媒中に加える。
6.ステップ5で形成した参照対照組成物を混合する。赤血球、白血球及び血小板成分の細胞濃度を調製して、ヒト全血サンプルの対応する細胞濃度をシミュレートする。NRBCアナログの細胞濃度を調製して、あるレベルの有核赤血球、好ましくは100WBCあたり1〜50の範囲のNRBC、を含む臨床サンプルをシミュレートする。
【0081】
実施例4
有核赤血球成分、複数の白血球亜集団成分並びに赤血球及び血小板成分を含む参照対照組成物
この参照対照組成物の作成方法は、ステップ4において所定量の複数の白血球亜集団アナログを、安定化されたヒト赤血球及び血小板アナログを含む懸濁媒中に加える以外は、実施例3において上記した方法と本質的に同じ方法である。
【0082】
複数の白血球亜集団アナログを、米国特許第4,704,364号、同第5,320,964号及び同第5,512,485号に記載の方法によって調製した。米国特許第4,704,364号に記載の方法によって調製した複数の白血球亜集団を用いて、有核赤血球測定及び白血球を3つの亜集団に識別するために対照組成物が使用可能である。米国特許第5,320,964号及び同第5,512,485号に記載の方法によって調製した複数の白血球亜集団アナログを用いて、参照対照組成物を有核赤血球測定及び白血球を5つの亜集団に識別するために使用可能である。
【0083】
本発明が、詳細に記載され、そして添付の図面によって写真的に示される一方、これらは本発明の範囲を限定するものとしてでなく、むしろ、その好ましい実施態様の例示であると解すべきである。しかしながら、上記の明細書中に記載され、そして添付された請求項に定義された本発明及びそれらの法的等価物の精神及び範囲内において多様な修飾及び変更が行われ得ることは明らかとなるであろう。本明細書中に引用されたすべての特許及び他の文献は特に参考文献として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1A】図1Aは、洗浄されたワニ赤血球の赤血球分布のヒストグラムを示す。
【図1B】図1Bは、洗浄されたワニ赤血球の部分的に示された白血球分布のヒストグラムを示す。
【図1C】図1Cは、洗浄されたワニ赤血球のDC対RLS相関グラフを示す。
【図1D】図1Dは、洗浄されたワニ赤血球のFS(前方光散乱)対SS(側方散乱)相関グラフを示す。
【図1E】図1Eは、洗浄されたワニ赤血球のFL4対FL1相関グラフを示す。FL4及びFL1が本明細書中に例解されるすべての蛍光相関グラフにおいてlogスケールであることは注記される。
【図2A】図2Aは、処理溶液1を用いて実施例1に記載の方法によって加工されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログの赤血球分布のヒストグラムを示す。
【図2B】図2Bは、処理溶液1を用いて実施例1に記載の方法によって処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログの白血球分布のヒストグラムを示す。
【図2C】図2Cは、処理溶液1を用いて実施例1に記載の方法によって処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログのDC対RLS相関グラフを示す。
【図2D】図2Dは、処理溶液1を用いて実施例1に記載の方法によって処理されたワニ赤血球から作製されたFS対SS相関グラフを示す。
【図2E】図2Eは、処理溶液1を用いて実施例1に記載の方法によって処理されたワニ赤血球細胞から作製されたNRBCアナログのFL4対FL1相関グラフを示す。
【図3A】図3Aは、27 NRBC/100 WBCを含む臨床サンプルの白血球分布のヒストグラムを示す。
【図3B】図3Bは、図3Aの臨床サンプルのDC対RLS相関グラフを示す。
【図3C】図3Cは、正常全血サンプルのFL4対FL1相関グラフを示す。
【図3D】図3Dは、13.7 NRBC/100 WBCを含む臨床サンプルのFL4対FL1相関グラフを示す。
【図4A】図4Aは、処理溶液2を用いて実施例2に記載のとおりに処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログの赤血球分布のヒストグラムを示す。
【図4B】図4Bは、処理溶液2を用いて実施例2に記載のとおりに処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログの部分的に示された白血球分布のヒストグラムを示す。
【図4C】図4Cは、処理溶液2を用いて実施例2に記載のとおりに処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログのDC対RLS相関グラフを示す。
【図4D】図4Dは、処理溶液2を用いて実施例2に記載のとおりに処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログのFS対SS相関グラフを示す。
【図4E】図4Eは、処理溶液2を用いて実施例2に記載のとおりに処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログのFL4対FL1相関グラフを示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)による、2004年4月7日に出願され、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている、仮特許出願番号第60/560,236号に基く利益を請求する。
【0002】
本発明は、有核赤血球成分を含む参照対照(reference control)組成物並びに血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球を測定するための参照対照組成物の製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
質のコントロールは、臨床血液学において長い間必要かつ日常的な手順であった。多様なタイプの血液細胞の計数における精度は、一部、適切な対照物及び該対照物の使用方法に依存する。現在利用可能な粒子計数のための多数のタイプの機器において、対照物の使用による質のコントロールは必要である。なぜなら、機器の故障の可能性は常に存在するからである。自動粒子計数装置のための質のコントロールプログラムを維持するための従来方法は、新鮮なヒト血液を全血標準として提供することから成る。しかしながら、この新鮮な血液は1日しか使用することができず、したがって、より長期の製品寿命を有する様々な対照物製品が開発された。
【0004】
対照物中で一般的に使用される粒子は、分析を受けることを意図される粒子又は細胞のタイプをシミュレートするか又は近似する。その結果、これらの粒子はしばしばアナログ粒子と呼ばれてきた。アナログ粒子は、機器において分析される粒子又は細胞の特徴に類似した一定の特徴を有するように選択されるか又は設計されなければならない。例示的な特徴及びパラメータはサイズ、体積、表面特性、顆粒特性、光散乱特性及び蛍光特性における類似性を含む。
【0005】
現在、多様な商業的参照対照製品が入手可能であり、これらはヒト血液細胞のアナログとして、多様な処理された又は固定されたヒト又は動物血液細胞を使用する。米国特許第5,512,485号(Youngら)は、処理され及び固定された動物赤血球から作られた数種類の白血球アナログを含む血液学の対照を教示する。これらの固定された赤血球は、血液サンプル中の特異的な白血球亜集団をシミュレートするために、それらの自然の細胞に近いサイズで固定される。商業的に入手可能な血液学の対照はまた、赤血球、血小板、網状赤血球、及び有核赤血球成分も含むことができる。
【0006】
有核赤血球(NRBC)、又は赤芽球は、未成熟の赤血球である。それらは通常、末梢血ではなく骨髄中で発生する。しかしながら、貧血及び白血病などの一定の病気では、有核赤血球は末梢血中でも発生する。したがって、末梢血中のNRBCを測定することは臨床的に重要である。近年、血液学の機器において血液サンプル中の有核赤血球を測定するためのいくつかの検出方法が報告された。米国特許第5,559,037号(Kimら)は、有核赤血球及び白血球のフローサイトメトリーによる分析方法を開示する。該方法は、NRBCを白血球サンプルから識別するために、蛍光、低角度光散乱及び軸方向光損失(axial light loss)の測定を使用する。米国特許第5,879,900号(Kimら)はさらに、血液サンプル中のNRBC、損傷された白血球(WBC)、WBC及び白血球分画(white blood cell differential)をフローサイトメトリーによって識別する方法を開示する。
【0007】
米国特許第5,874,310号及び同第5,917,584号(Liら)は、血液サンプルの2つの角度の光散乱シグナルを測定することによる、有核赤血球の識別方法を開示する。米国特許第5,874,310号及び同第5,917,584号はさらに、光散乱及びDCインピーダンスシグナルを測定することによる有核赤血球の識別方法を開示する。米国特許第6,410,330号及び同第6,673,618号(Liら)は、DCインピーダンス測定を使用することによるNRBCの測定方法を開示する。米国特許第6,472,215号(Huoら)は、3次元DC、RF及び光散乱測定と組み合わせたインピーダンス測定による、有核赤血球の識別方法を開示する。
【0008】
上記で引用した有核赤血球の検出方法の開発とともに、有核赤血球成分を含む血液学の対照又はNRBCアナログが報告された。
【0009】
米国特許第6,187,590号及び同第5,858、790号(Kimら)は、溶解されそして固定された鳥類又は魚類赤血球又は溶解されそして固定されたヒトリンパ球から作られた有核赤血球(NRBC)アナログを含む血液学の対照を開示する。米国特許第6,187,590号及び同第5,858、790号はさらに、鳥類又は魚類の赤血球細胞を溶解試薬で1〜5分溶解し、続いて10分以下、60〜70℃で細胞からの核を固定液で固定することによってNRBCアナログを調製する方法を開示する。
【0010】
米国特許第6,406,915号、同第6,403,377号、同第6,399,388号、同第6,221,668号及び同第6,200、500号(Ryanら)は、鳥類の血液細胞由来のNRBCアナログを含む血液学の対照を開示する。該方法は、七面鳥又はニワトリ赤血球などの鳥類の赤血球を緩衝溶液中で洗浄し、洗浄された細胞を室温で1日、リン酸グルタルアルデヒド溶液で固定することを含む。米国特許第6,448,085号(Wangら)は、商業的供給源から得た固定されたニワトリ赤血球である有核赤血球(NRBC)アナログを含む血液学の対照を開示する。
【0011】
米国特許第6,653,137号及び同第6,723,563号(Ryan)は、核を含む血液細胞を安定化するか、又は血液細胞を溶解しそして細胞質を除去することによって、血液学の対照のための有核赤血球成分を作製する方法を開示する。米国特許第6,723,563号は、特別に、有核赤血球成分の作製方法を教示し、これは、核及び細胞質を封入する膜を含む血液細胞を溶解剤と少なくとも4時間接触させ、膜内から細胞質を除去し、しかし核周辺の膜の一般的構造は保存するステップを含む。該方法はさらに、細胞質を除去後に血液細胞を固定することを含む。
【0012】
異なる細胞源から得られ、そして異なる方法で処理された有核赤血球アナログが異なる特性を有することは認識されている。ヒト有核赤血球のシミュレーションのためには、例えば、溶解されそして固定された鳥類の血液細胞から作製されたNRBCアナログは、蛍光に基く測定方法には好適であるが、インピーダンス又は光散乱測定法などのサイズで分類する方法には小さすぎる。さらに、固定されない安定化されたワニ細胞の核も、血液分析装置での血液サンプル分析のために使用される一定の強力な溶解条件下で分析される場合には小さすぎるかもしれない。したがって、ヒト有核赤血球をシミュレートするための所定の検出ドメインに好適な標的サイズを得るために、血液細胞の細胞核の自然のサイズを変更することの可能な、NRBCアナログの調製方法があることが望ましい。
【0013】
細胞の性質の操作に関しては、米国特許第6,146,901号(Carverら)は、生物学的粒子の光学的及び電気的性質を操作して、各性質のための選択された標的値を達成するための方法を開示する。該方法は、それぞれ自然の値の光学的及び電気的性質を有する動物赤血球細胞などの基本の生物学的粒子を提供し;該粒子を、低張緩衝溶液及びポリヒドロキシアルコールを含むプレインキュベーション媒体と接触させて、粒子の光学的及び電気的性質を操作し;インキュベーション時間の間、粒子をプレインキュベーション媒体中に残し;続いて、粒子を一次固定溶液と一定時間接触させる、を含む。インキュベーション時間と、一次固定溶液と接触させる時間は、粒子の光学的および電気的性質それぞれの自然の値を操作して光学的及び電気的性質の標的値を達成するために選択される。Carverらの方法は、赤血球を溶解させずに赤血球から多量のヘモグロビンを漏出させることによって、細胞の性質を操作するために使用される。Carverらは血液細胞の核の性質を操作又は変更することは教示していない。
【発明の開示】
【0014】
発明の要約
1つの側面において、本発明は有核赤血球成分を含む参照対照に関する。参照対照は、核を含む血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を自然の値から血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更することによって得られる有核赤血球成分;及び前記有核赤血球の分析のために、前記血液分析装置に前記有核赤血球成分を送達するための好適な懸濁媒を含む。核の性質は、核のサイズ、又は光学的性質を含む。光学的性質は、光散乱特性又は上記核を蛍光色素で染色した上での蛍光特性であることができる。
【0015】
参照対照はさらに、白血球成分、赤血球成分、血小板成分、及び網状赤血球成分を含むことができる。
【0016】
さらなる側面においては、本発明は有核赤血球成分を含む参照対照を作製する方法に関する。該方法は、以下のステップ:核を含む血液細胞を提供し;前記血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を、自然の値から血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更し、そして該標的値を維持し;そして、処理された血液細胞を懸濁媒中に懸濁して上記参照対照を形成すること、を含む。
【0017】
他の側面においては、本発明は核の性質を変更するための細胞処理組成物に関する。細胞処理組成物は、調整成分;細胞膜を透過し、そして上記細胞処理組成物が上記細胞核と接触していることを可能とするための溶解成分;上記細胞核を保存するための固定成分を含み、ここで上記調整成分、上記溶解成分、及び上記固定成分は、核の性質を自然の値から標的値に変更するためのそれぞれの所定の濃度で存在する。調整成分は、緩衝剤及び重量モル浸透圧調節剤を含む。固定成分はアルデヒド、オキサゾリジン、アルコール、環状尿素、又はそれらの組み合わせなどの固定剤である。溶解成分は、4級アンモニウム界面活性剤を含む。細胞処理組成物はさらに、1つ以上の非イオン性界面活性剤を含むことができる。
【0018】
さらなる側面においては、本発明は、有核赤血球成分を含む参照対照の使用方法に関する。該方法は、核を含む血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を自然の値から血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更して得られた有核赤血球成分を含む参照対照を提供し;上記血液細胞を分析しそして他の細胞タイプから有核赤血球を識別するために適合された血液分析装置を提供し;上記有核赤血球成分の検出のために上記血液分析装置に対照を通し;そして上記参照対照中の有核赤血球を報告することを含む。他の細胞タイプからの有核赤血球の識別は、インピーダンス、又は光学的測定又はそれらの組み合わせを使用して得られる。光学的測定は、蛍光、光散乱、軸方向光損失の測定又はそれらの組み合わせであることができる。
【0019】
発明の詳細な説明
1つの側面において、本発明は、有核赤血球(NRBC)成分を含む参照対照並びに有核赤血球(NRBC)成分及び血液学の対照組成物の調製方法を提供する。
【0020】
上記方法は、以下のステップ:核を含む血液細胞を提供し;上記血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を、自然の値から血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更し、そして核の該標的値を維持し;そして処理された血液細胞を懸濁媒中に懸濁して参照対照を形成する、を含む。本発明の目的のためには、有核赤血球並びに他の細胞タイプ成分も、NRBCアナログなどのアナログと称される。本明細書において使用される「核の性質」という用語は、核のサイズ又は光学的性質を含むがこれらに限定されない。光学的性質は、光散乱特性、軸方向光損失特性、又は上記核を蛍光色素で染色した上での蛍光的性質であることができる。
【0021】
ヒト有核赤血球をシミュレートするために好適な血液細胞の好ましい例は、多様な有核動物赤血球及び小哺乳動物白血球を含む。より特別には、ワニ、サメ及びサケの赤血球などの爬虫類、鳥類及び魚類の赤血球、並びに全血由来の又は細胞株によってインビトロで増殖した哺乳動物リンパ球が使用可能である。1つの好ましい実施態様においては、ワニ赤血球が、有核赤血球成分を作製するために使用された。
【0022】
1つの実施態様においては、動物有核赤血球を用いてNRBCアナログを作製する方法は以下のステップを含む:
1.有核赤血球を有する選択された動物種の大量の全血を、抗凝固剤を入れた容器に集める。全血を遠心分離し、そして(白血球、血小板及び血漿を含む)上層を除去する。
2.濃厚有核赤血球を緩衝等張洗浄液で3回洗浄する。
3.濃厚有核赤血球を懸濁媒で洗浄し、そして洗浄された濃厚細胞を懸濁媒に再懸濁する。好ましくは、細胞計測数は、約0.4×106〜約0.6×106細胞/μlの範囲である。
4.所定の体積の再懸濁された細胞を等体積の処理溶液に加え;上下を反転させることによってよく混合して、細胞処理懸濁液を形成し;そして該細胞処理懸濁液を処理時間の間、インキュベートして、核の性質を自然の値から標的値に変更し、そして標的値を維持することによって、再懸濁された有核赤血球を処理する。
6.処理された細胞を、遠心分離によって細胞処理懸濁液から分離する。
7.処理された細胞を血液分析装置上での分析に好適な懸濁媒に再懸濁する。
【0023】
1つの好適な緩衝等張洗浄溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。本分野において知られた多様な他の細胞洗浄溶液も使用可能である。
【0024】
懸濁媒の好適な例は、リン酸緩衝生理食塩水および血漿物質水溶液を含む。本明細書で定義される血漿物質水溶液は、血清物質の水溶液、血清物質と血漿タンパク質の組み合わせ及びこれらの混合物を含む。さらに本明細書において定義される、血漿タンパク質は、血漿に含まれる1つ以上のタンパク質を含む。好ましくは、かかる血漿タンパク質は、アルブミン、リポタンパク質、グロブリン、フィブリノーゲン、及びそれらの混合物を含む。これらの媒体は、細胞の安定性を与えることが当業者に知られた他の成分を含んでもよい。実施例1は、懸濁媒の3つの配合例を提供する。好ましくは、NRBCアナログの長期保存のためには、懸濁媒は比較的高濃度のタンパク質を含む。好適な媒体の他の例は、参考文献としてその全体が本明細書中に援用されている、米国特許第4,213,876号、同第4,299,726号、同第4,358,394号、同第3,873,467号、同第4,704,364号、同第5,320,964号、同第5,512,485号、及び同第6,569,682号により完全に記載される。
【0025】
細胞処理組成物とも呼ばれる、本発明の目的のために核の性質を変更するための処理溶液は、調整成分、細胞膜を透過し、処理溶液が細胞核と接触することを可能とするための溶解成分、及び処理された核を保存するための固定成分を含む。
【0026】
1つの実施態様において、調整成分は、緩衝剤及び重量モル浸透圧濃度調節剤を含む。緩衝剤と重量モル浸透圧濃度調節剤は2つの別々の化学物質であって、それぞれが異なる機能を提供する。しかしながら、緩衝剤及び重量モル浸透圧調節剤はまた、両方の機能を提供するための同じ化学物質であることもできる。例えば、リン酸緩衝剤が処理溶液中で使用された場合、該リン酸塩対が緩衝化及び重量モル浸透圧濃度調節機能の両方を提供することができる。
【0027】
1つの好ましい実施態様において、溶解成分は以下の分子構造:
【化1】
{式中、
R1は、12〜16個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル又はアルキニル基であり;
R2、R3、及びR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;そして
X-は塩素又は臭素アニオンである。}
で表される、4級アンモニウム界面活性剤を含む。
【0028】
さらに、処理溶液はまた、6〜12個の炭素原子を有するアルキル基を有するエトキシル化アルキルフェノール及び約10〜約50個のエチレンオキシド基も含むことができる。さらに、処理溶液は以下の分子構造:
【化2】
{式中、
R1は、10〜22個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、又はアルキニル基であり、
R2は、−O−であり;そして
nは、20〜35である。}
により表されるエトキシル化アルキルアルコールを含むことができる。
【0029】
処理溶液の固定成分は、アルデヒド、オキサゾリジン、アルコール、環状尿素などを含むがこれらに限定されない固定剤である。好適な例は、限定されることなく、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアゾリジニル尿素、イミダゾリジニル尿素、ジメチロール尿素、ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール;4級アダマンチン;ヒドロキシメチル−1−アザ−3,7−ジオキサビシクロ(3.3.0)オクタン及び5−ヒドロキシメチル−1−アザ−3,7−ジオキサビシクロ(3.3.0)オクタン及び5−ヒドロキシポリメチレンオキシ−メチル−1−アザ−3,7−ジオキサビシクロ(3.3.0)オクタン、ヒドロキシメチルグリシネートナトリウム、並びにそれらの混合物を含む。好ましい実施態様において、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドなどのアルデヒド固定剤が使用される。
【0030】
そのすべてが参考文献として本明細書中に援用されている米国特許第5,196,182号、同第5,262,327号、同第5,460,797号、同第5,811,099号、同第5,849,517号、同第6,221,668号、同第5,529,933号、及び同第6,187,590号に開示されたような他の固定剤も使用されることができる。
【0031】
実施例1は、ワニ赤血球を使用した有核赤血球成分(NRBCアナログ)の調製例を例示する。示されるように、本発明の方法及び処理溶液を使用して、処理された細胞核のサイズ、光学的性質並びに蛍光的性質がそれらの自然の値又は性質から変更される。本明細書において、蛍光的性質とは、有核血液細胞又は処理された細胞核を核染色剤で染色した上でフローサイトメーターで測定した蛍光シグナルをさす。一方、光学的性質は、核のサイズ及び粒度によって影響されることができる。より特別には、実施例1に示す特異的な処理溶液組成物を使用して得られたNRBCアナログは、図2A〜2Eに示すとおり、多様な測定条件下において未処理の有核赤血球と比べた場合、よりサイズが小さく、より光散乱性であり、そして蛍光がより少ない。
【0032】
実施例2は、ワニ赤血球を使用したNRBCアナログの他の調整例を例示し、ここで、NRBCアナログを調製する方法のステップは実施例1と同じであるが、調整成分に関して処理溶液が異なる。実施例1においては、調整成分はリン酸水素2ナトリウム/リン酸2水素ナトリウム緩衝系(Na2HPO4/NaH2PO4)であり、処理溶液は390mOsmの重量モル浸透圧濃度を有する。実施例2においては、調整成分はクエン酸アンモニウム及びテトラミゾールを含み、処理溶液は560mOsmの重量モル浸透圧濃度を有する。図4A〜4Eに示すように、実施例2の処理溶液を用いて得られたNRBCアナログは、実施例1において使用された処理溶液を用いて得られたアナログに比べて、実質的により小さなサイズ及びより強い蛍光シグナルを有する。
【0033】
正確な反応メカニズムは完全にわかっていないが、有核赤血球と接触した場合、処理溶液の3つの機能成分が同時に細胞及び細胞核に対して作用することがわかる。溶解成分は処理溶液の細胞膜中への透過を可能とし、そして処理溶液と細胞核との接触を可能とする。溶解成分はさらに、核膜を透過することができる。同時に、固定成分は競争的モードで固定によって細胞核を保存する。一方、調整成分は、あるpH及び重量モル浸透圧濃度を反応条件に提供し、これは細胞及び細胞核の溶解成分及び固定成分への応答に影響する。かかる処理条件は一緒になって核の性質を変更し、これは血液分析装置上での血液サンプルのNRBCのシミュレーションに利用可能である。
【0034】
さらなる実施態様においては、参照対照組成物はさらに、特異的な検出条件下で白血球(WBC)をシミュレートする白血球成分を含む。白血球成分の存在下では、NRBC成分及び白血球成分の間の比率は、100個のWBCあたりのNRBC数を報告するのに使用可能であり、これは、臨床検査室において血液サンプル中の有核赤血球を報告するのに使用されるのと同じ単位である。好ましくは、白血球成分又はアナログは、顆粒球又はリンパ球などの主要な白血球亜集団に類似する性質を有する。
【0035】
さらに、差異分析のために白血球亜集団をシミュレートするために、白血球成分は1つ以上の白血球亜集団成分又はアナログ、例えば2つ、3つ、4つ、又は5つの白血球アナログを含むことができる。白血球アナログの好適な例は、本分野で知られているとおり、安定化されかつ固定された哺乳動物白血球、そして処理され及び/または固定されたヒト及び動物赤血球を含む。1つの実施態様において、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている米国特許第5,320,964号及び同第5,512,485号中で教示されるように、インピーダンス及び光散乱測定の組み合わせを用いる差異分析のために、白血球アナログは処理されたガチョウ及びワニの赤血球から作製されることができる。他の実施態様においては、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている米国特許第4,704,364号中で教示されるように、インピーダンス測定を用いる差異分析のために、白血球アナログは処理された鳥類及びヒト赤血球から作製されることができる。さらなる実施態様においては、白血球アナログは、固定された哺乳動物白血球から作製されることができる。哺乳動物白血球は、白血球アナログの調製の間で、全血中の赤血球を溶解する前に固定される。
【0036】
場合により、哺乳動物白血球及び動物赤血球は、白血球アナログの調製過程の間に、リポタンパク質と接触させることによってさらに処理されることができる。リポタンパク質との接触は、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている米国特許第5,320,964号、同第5,512,485号、同第6,406,915号、同第6,403,377号、同第6,399,388号、同第6,221,668号、及び同第6,200,500号中で教示されるように、白血球又は赤血球の固定の前に起こることができ、また、固定後及び懸濁媒中での保存の間にも起こることができる。
【0037】
他の実施態様においては、本発明は、上記の有核赤血球成分、白血球成分、並びに追加として赤血球成分及び血小板成分を懸濁媒中に含む参照対照組成物を提供する。
【0038】
赤血球成分は、安定化されたヒト又は動物赤血球、好ましくは安定化されたヒト赤血球であることができる。赤血球成分の作製方法は、その全体が本明細書中に参考文献として援用されている米国特許第4,299,726号及び同第4,358,394号中に詳しく記載された。血小板成分は、安定化されたヒト又は動物血小板、或いは他の細胞タイプから作製された血小板アナログであることができる。1つの好適な例は、その全体が本明細書中に参考文献として援用されている米国特許第4,264,470号、同第4,389,490号、及び同第4,405,719号中に開示された、血小板アナログとしての処理されたヤギ赤血球である。
【0039】
血液サンプル中の赤血球又は参照対照組成物中の安定化されたヒト赤血球は、有核赤血球及び白血球の測定のための血液サンプルの調製のために通常使用される溶解条件下で溶解され、そして、分析器が適切に作動する場合は測定において検出されてはならない。溶解条件下での血液サンプルの血小板は、サイズが小さくなり、そして有核赤血球の測定のための検出閾値より低いか又は有核赤血球から分離されるのいずれかである。したがって、参照対照組成物中の赤血球成分及び血小板成分は、さらに、対照組成物の溶解試薬への応答並びに機器における反応条件を反映する。したがって、赤血球及び血小板成分を含む参照対照組成物は、機器の操作条件に関するさらなる情報も提供することができる。
【0040】
さらに、赤血球及び血小板成分を含む参照対照組成物はまた、赤血球及び血小板測定にも使用されることができ、これは自動血液分析装置での白血球及び有核赤血球の測定とともに一般的に実施される。
【0041】
場合により、参照対照組成物はさらに、網状赤血球の分析のための網状赤血球成分を含むことができる。
【0042】
実施例3は、実施例1に記載の方法によって作製された有核赤血球成分、白血球成分、赤血球成分及び血小板成分を含む参照対照組成物の調製を例解する。
【0043】
実施例4はさらに、有核赤血球、複数の白血球亜集団成分、赤血球成分、及び血小板成分を含む参照対照組成物の調製を例解する。
【0044】
調製された有核赤血球成分を含む参照対照組成物は、多様な測定方法を用いる有核赤血球測定のために利用されることができる。
【0045】
1つの実施態様においては、本発明は、DCインピーダンス測定を使用する有核赤血球の測定のために有核赤血球成分を含む参照対照を用いる方法を提供する。血液サンプル中の有核赤血球の測定のために使用される測定方法及び機器は、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている米国特許第6,410,330号中に開示された。
【0046】
図2A及び4Aに示されるとおり、処理溶液1及び2を使用して実施例1に記載の方法によって作製されたNRBCアナログは、実施例1に詳細に記載されるとおり、溶解試薬で処理され、そして血液分析装置上でのDCインピーダンス測定によって測定された場合、ヒト全血サンプルの有核赤血球のサイズをシミュレートした。
【0047】
他の実施態様においては、本発明は、光学的測定を使用する有核赤血球の測定のための、有核赤血球成分を含む参照対照の使用方法を提供する。光学的測定は、光散乱測定、軸方向光損失の測定、及び蛍光測定を含む。
【0048】
光学的測定を用いるNRBCの分析は、集束流フローセル中で実施される。血液細胞などの粒子がフローセルの開口を通過する場合、それは入射光をすべての方向に散乱する。光散乱シグナルは、光検出器によって、入射光に対する0°〜180°の間の様々な角度で検出可能である。入射光から10°未満で検出された光散乱シグナルは、一般に、低角度光散乱と呼ばれる。入射光から約10°〜約70°で検出された光散乱シグナルは、一般に、中角度光散乱と呼ばれ、入射光から約90°で検出された光散乱シグナルは、直角光散乱と呼ばれる。フローサイトメーター上で、入射光から20°未満で検出された光散乱シグナルは、一般に前方光散乱と呼ばれる。光散乱シグナルの特徴は、細胞のサイズ、細胞の内容物、及び細胞の表面の性質によって影響される。
【0049】
(ALL、前方消光としても知られる)軸方向光損失は一般に、入射光の光線を通過する粒子による光エネルギーの減少であり、そして光検出器で検出される。入射光の光線が粒子に当たると、光は散乱されるか又は吸収され、その両者が入射光からエネルギーを取り除きそして入射光線は減弱される。この減弱は消光と呼ばれる。入射光の光線軸に沿ってみた場合、これは軸方向の光の損失と呼ばれる。一般に、ALLシグナルは、入射光から約0°〜約1°の角度で検出される。ALLシグナルは、細胞のサイズによって強く影響される。
【0050】
さらに、核染色剤によって染色された有核血液細胞は蛍光測定によって測定されることができる。使用される染色剤によって、いくつかの異なる波長の蛍光シグナルが、有核血液細胞の識別のために利用可能である。有核赤血球は、他の細胞タイプに比べて顕著又は微細に異なる光散乱、軸方向光損失及び蛍光的性質を有することが発見され、他の細胞タイプからのこの異常な血液細胞集団の識別に利用されてきた。
【0051】
本発明の方法によって作製されたNRBCアナログが測定される方法及び機器の1つの好適な例は、その全体が参考文献として本明細書中に援用される米国特許第5,874,310号及び同第5,917,584号中に記載された参照対照として利用可能である。より特別には、2つの角度の光散乱シグナルが、他の細胞タイプから有核赤血球を識別するために使用される。光散乱の1つは、10°未満の低角度光散乱シグナルである。第二の光散乱角度は、低角度、中角度、又は直角光散乱シグナルである。さらに、DCインピーダンス測定と組み合わせた光散乱測定もまた、有核赤血球を測定するために使用可能である。
【0052】
本発明の方法によって作製されたNRBCアナログが参照対照として利用可能な測定方法及び機器のさらなる好適な例が、その全体が参考文献として本明細書中に援用される同時係属の特許出願番号第11/048,086号に詳細に記載された。この方法においては、軸方向光損失及び好ましくは約3°〜7°の低角度光散乱測定、又は軸方向光損失及びDCインピーダンス測定、或いはそれらの組み合わせが他の細胞タイプからの有核赤血球の識別のために使用される。
【0053】
さらに、図2E及び4Eにしめされるとおり、処理溶液1及び2を用いて実施例1に記載の方法によって作製されたNRBCアナログは、試薬系で処理され、そしてフローサイトメーター上で525nm及び675nmの蛍光測定によって測定された場合、ヒト全血サンプルの有核赤血球の蛍光的性質をシミュレートするのに使用可能である。Coulter FC 500フローサイトメーター上での血液サンプル中のNRBCの分析方法は、実施例1に記載され、そして図3C及び3Dに例解される。
【0054】
さらに他の実施態様においては、本発明は、DCインピーダンス及びVCS測定法の組み合わせを用いる有核赤血球の測定のために、有核赤血球成分を含む参照対照を用いる方法を提供する。該測定のために使用される測定方法及び機器は、その全体が参考文献として本明細書中に援用される米国特許第6,472,215号中に記載される。VCS測定という用語は、その全体が参考文献として本明細書中に援用される米国特許第5,125,737号中に記載される、DCインピーダンス、高周波インピーダンス及び中角度光散乱シグナルの複数パラメータ測定と呼ばれる。
【0055】
図2B、2C、4B及び4Cに示されるとおり、処理溶液1及び2を用いて実施例1に記載された方法によって作製されたNRBCアナログは、試薬系によって処理され、そして血液学の機器上でDCインピーダンス及びVCS測定の組み合わせによって測定された場合、ヒト全血サンプルの有核赤血球をシミュレートするのに使用可能である。Coulter LH750血液分析装置上でのNRBCの分析方法は、実施例1に詳細に記載される。
【0056】
以下の実施例は、本発明を例解するものであり、いかなる方法によっても請求項によって定義される本発明の範囲を制限するものと解してはならない。本開示にしたがって、様々な他の成分及び割合が採用されることができる。
【実施例】
【0057】
実施例1
ワニ赤血球を用いたNRBCアナログの調製
以下の試薬組成物を、NRBCアナログの調製のために調製した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
NRBCアナログの調製方法のステップ
1.多量のワニ全血を、抗凝固剤を含む容器中に集める。該ワニ全血を遠心分離し、そして(白血球、血小板及び血漿を含む)上層を除去する。
2.濃厚ワニ赤血球をリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄する。
3.濃厚ワニ赤血球を懸濁媒1で洗浄し、洗浄された濃厚細胞を懸濁媒1に再懸濁する。好ましくは、細胞カウントは約0.4×106〜約0.6×106細胞/μlの範囲にある。
4.所定体積の再懸濁細胞を等体積の処理溶液1に加えることによって、再懸濁されたワニ赤血球を処理し、そして上下を反転させてよく混合して、細胞処理懸濁液を形成する。
5.細胞処理懸濁液を4℃で一夜インキュベートする。
6.冷蔵庫から細胞処理懸濁液を取り出し、1000rpmで15分間遠心分離し、上清を除去する。
7.血液分析装置上での分析のために、処理された細胞を懸濁媒3に再懸濁する。
【0064】
上記の処理方法によって得られたNRBCアナログを(Beckman Coulter, Inc., Californiaにより製造された)Coulter(登録商標)LH750血液分析装置で分析した。CoulterLH750血液分析装置は、3つの非集束流開口を用いるRBC浴及び赤血球の測定のための第一DCインピーダンス検出器;3つの非集束流開口を用いるWBC浴、白血球のカウントのための第二DCインピーダンス検出器、及び白血球の3分類分析及び有核赤血球;並びに白血球の5分類分析及び有核赤血球の分析ための集束流フローセルを有するVCS検出システムを有する。VCS検出システムは、DCインピーダンス、高周波インピーダンス及びフローセルを通過する細胞の中角度光散乱シグナルを測定する。本明細書において、白血球の3分類分析及び5分類分析は、白血球を3つ及び5つの亜集団とする差異分析をさす。
【0065】
血液サンプル又は参照対照をCoulter LH750血液分析装置によって吸引した。サンプルの第1のアリコートを等張の血液希釈剤、(Beckman Coulter, Inc. の製品である)Coulter LH700シリーズ希釈剤、で希釈して、第1のサンプル混合物を形成する。第1のサンプル混合物を真空源によって、3つの開口の組を通じて取り出した。各血液細胞を、それが開口を通過するときにDCインピーダンス検出器で測定し、赤血球細胞パラメータを得た。血液サンプルの第2のアリコートをLH700シリーズ希釈剤で希釈し、そして一定体積の第1溶解試薬、(Beckman Coulter, Inc. の製品である)Lyse S(登録商標)III diffと混合して、第2サンプル混合物を形成した。第2サンプル混合物を真空源によって、3つの開口の組を通じて取り出し、そして第2DC検出器によって測定し、白血球カウント、白血球の3分類分析及び有核赤血球の分析を行った。サンプルの第3のアリコートを一定体積の第2溶解試薬、Erythrolyse(商標)IIと混合して赤血球を溶解し、そして続いて(どちらもBeckman Coulter, Inc. の製品である)一定体積の安定化試薬、Stabilyse(商標)と混合して、第3のサンプル混合物を形成した。白血球の5分類分析及び有核赤血球の分析のための集束流フローセルに第3のサンプル混合物を送達した。約18℃〜約28℃の範囲の温度で測定を実施した。第2及び第3のサンプル混合物の測定から得られたデータをまとめて分析し、有核赤血球についての報告を提供した。
【0066】
図1Aは、(処理溶液1による処理をせずに、ステップ1〜3のみによって加工された)洗浄されたワニ赤血球から得られた赤血球分布のヒストグラム(RBC浴中の第1のサンプル混合物)を示す。示すように、洗浄されたワニ赤血球は非常に大きく、細胞サイズは300fl超であった。図1Bは、部分的に示した、洗浄されたワニ赤血球の白血球分布のヒストグラム(WBC浴中の第2のサンプル混合物)を示す。示すように、溶解条件下では、WBC浴中で測定された有核赤血球は、実質的にその核のサイズであり、ピークが約55flの非常に広い分布を有する。ヒストグラムの一番左の領域には、溶解反応の結果として多量の細胞細片があったことは注目される。図1Cは、洗浄されたワニ赤血球のDC対RLS(回転光散乱(rotated light scatter))相関グラフを示す。第3のサンプル混合物の溶解条件下で測定された有核赤血球は、DC軸の下方及びRLS軸の中心周囲にある。ここで、RLSは、VCS検出システムのDC軸の下部及び中角度光散乱の関数である。
【0067】
図2Aは、処理溶液1を用いて上記の方法で処理されたワニ赤血球細胞から作製されたNRBCアナログの赤血球分布ヒストグラムを示す。示すように、NRBCアナログは溶解条件下で、ワニ赤血球の核サイズに近いサイズを有し、これは図1Bに示す。図2Bは、部分的に示された、WBC浴中の溶解条件下のNRBCアナログの白血球分布のヒストグラムを示す。示すように、NRBCアナログは洗浄されたワニ赤血球に比べて、サイズが小さく(約45fl)、そしてより狭くかつ詳細に明らかにされた細胞分布を有する。図2Cは、血液サンプルの第3のアリコートのために使用した溶解条件下でのNRBCアナログのDC対RLS相関グラフを示す。
【0068】
図3Aは、上記と同じ方法を使用してCoulter LH750血液分析装置上で分析した、27 NRBC/100 WBCを含む臨床血液サンプルの白血球分布のヒストグラムを示す。図3Bは臨床サンプルのDC対RLS相関グラフを示す。図3A中のヒストグラムの表示スケールは、図1B及び2B中のものとは異なることは注目され、ここで、図3Aは、白血球分布全体を示し、図1B及び2BはNRBC集団が位置する一番左の領域のみを示す。図2B及び2Cに示すNRBCアナログは、同じサンプル分析条件下のヒト有核赤血球と類似のサイズであった。
【0069】
上記の処理方法から得られたNRBCアナログをまた、(Beckman Coulter, Inc.,Californiaにより製造された)CoulterFC500フローサイトメーター上で分析した。白血球を標識するために、25μlの血液サンプル又は参照対照を10μlのFITC標識抗−CD45抗体と混合し、そして室温で30分インキュベートした。インキュベートしたサンプルを250μlの低張酸性溶解試薬(核酸染色剤を含む溶液A)と混合し、30分おいて赤血球を溶解し、そして500μlの高張アルカリ性試薬(溶液B)と混合し、そして室温で5分間おき、重量モル浸透圧濃度を元に戻し、そしてpHを中和し、サンプル混合物を形成した。サンプル混合物をCoulter FC 500フローサイトメーターで吸引し、そして前方及び側方光散乱検出器及び525nm(FL1)及び675nm(FL4)で蛍光検出器によって測定した。溶液Aは、脱イオン水中、2.10g/lのクエン酸1水和物、0.56g/lのリン酸水素2ナトリウム及び100mg/lのヨウ化プロピジウムを含み、そして3.0のpHと16mOsm/kgH2Oの重量モル浸透圧濃度を有する。溶液Bは、脱イオン水中、0.95g/lのリン酸2水素ナトリウム無水物、6.24g/lのリン酸水素2ナトリウム及び10.2g/lの塩化ナトリウムを含み、そして7.5のpHと420mOsm/kgH2Oの重量モル浸透圧濃度を有する。この分析法は、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている、Tsuji et al, Cytometry 37:291-301, 1999により詳細に記載された。
【0070】
図1Dは、(上記のように洗浄された)洗浄されたワニ赤血球の、FS(前方光散乱)対SS(側方散乱)相関グラフを示し、図1Eは、FL4(log)対FL1(log)相関グラフを示す。示すように、洗浄されたワニ赤血球は、FS対SS相関グラフの左下の隅に現れ、実質的にその核のサイズであった。FL4(log)対FL1(log)相関グラフにおいては、有核赤血球は左上の四分域に現れた。これらの細胞は、強力なFL4シグナルを有し、これはまた、PIブライトとも呼ばれる。それらは、その弱いFL1シグナルによって表されるCD45-であった。
【0071】
図2D及び2Eは、処理溶液1を用いて上記のように処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログのFS対SS相関グラフ及びFL4対FL1相関グラフをそれぞれ示す。示すように、NRBCアナログは増加した光散乱シグナル、特に側方散乱シグナルを有する。一方、NRBCアナログは、FL4シグナルが減少した。NRBCアナログが洗浄されたワニ赤血球に比較して弱いFL4シグナルを有するにもかかわらず、そのシグナルが血液サンプルをシミュレートするのに十分であったことは注目される。さらに、NRBCアナログの異なる分布特性は、参照対照のフィンガープリントとして使用することができ、これは参照対照を血液サンプルから識別する機器にとって有益である。
【0072】
図3C及び3Dは、正常な全血サンプル及び13.7 NRBC/100 WBCを含む臨床サンプルそれぞれのFL4対FL1相関グラフを示す。図3Dに示すように、NRBC集団は相関グラフの左上の四分域に位置した。図3Cに示すように、正常血液サンプルはこの領域内に位置する細胞集団を含まなかった。したがって、上記の方法を用いて作製されたNRBCアナログは、蛍光測定を用いてヒトNRBCをシミュレートするために使用可能である。
【0073】
NRBCアナログはまた、ステップ3における懸濁媒2の使用以外は、上記の方法のステップによって作製された。Coulter LH750血液分析装置及びCoulter FC 500フローサイトメーター上での分析は、懸濁媒2を用いて作製されたNRBCアナログが懸濁媒1を用いて作製されたものと類似したことを示した。
【0074】
実施例2
ワニ赤血球を用いる、有核赤血球成分の調製
実施例1で使用した、多量の同じワニ全血を、以下に示す処理溶液2を使用する以外は実施例1に記載されたと同じ方法のステップで処理した。
【0075】
【表6】
【0076】
処理溶液1と処理溶液2とでは、溶解成分及び固定成分が同じであるが、調整成分が異なり、これが該2つの処理溶液の間で異なるpH及び重量モル浸透圧濃度を生じることは注目される。
【0077】
処理溶液2を用いて作製したNRBCアナログをCoulter LH750血液分析装置及びCoulter FC 500フローサイトメーター上で、上記と同じサンプル分析法を用いて分析した。
【0078】
図4Aは、処理溶液2を用いて作製したNRBCアナログの赤血球分布のヒストグラムを示す。示すように、このNRBCアナログは、実施例1で得たNRBCアナログよりも実質的に小さいサイズを有した。図4Bは、WBC浴中の溶解条件下でのこのNRBCアナログの部分的に示した白血球分布のヒストグラムを示し、これはまた、実施例1で得られたNRBCアナログのものよりも少なかった。しかしながら、両方のNRBCアナログはヒト有核赤血球にサイズが類似していた。図4Cはさらに、NRBCアナログのDC対RLS相関グラフを示す。
【0079】
図4D及び4Eは、実施例2のNRBCアナログのFS対SS及びFL4対FL1相関グラフをそれぞれ示す。図4Dに示すように、実施例2のNRBCアナログは増加した前方光散乱シグナルを有したが、側方光散乱シグナルは減少した。図4Eに示すように、NRBCアナログは、ヒト有核赤血球に非常に類似した蛍光シグナルを有した。
【0080】
実施例3
有核赤血球成分、白血球成分、並びに赤血球及び血小板成分を含む参照対照組成物
方法:
1.所定の体積の実施例1に記載の懸濁媒1を提供する。
2.懸濁媒中に、所定量の安定化されたヒト赤血球を加える。安定化されたヒト赤血球を米国特許第4,299,726号及び同第4,358,394号に記載の方法によって調製した。
3.安定化されたヒト赤血球を含む懸濁媒中に所定量の血小板アナログを加える。血小板アナログは、米国特許第4,264,470号、同第4,389,490号及び同第4,405,719号中に記載の方法によって固定化されたヤギ赤血球から作製する。
4.白血球成分としての所定量の固定化されたガチョウ赤血球を、安定化されたヒト赤血球細胞及び血小板アナログを含む懸濁媒中に加える。
5.実施例1又は2で調製した所定量のNRBCアナログを、安定化されたヒト赤血球、血小板アナログ、及び白血球成分を含む懸濁媒中に加える。
6.ステップ5で形成した参照対照組成物を混合する。赤血球、白血球及び血小板成分の細胞濃度を調製して、ヒト全血サンプルの対応する細胞濃度をシミュレートする。NRBCアナログの細胞濃度を調製して、あるレベルの有核赤血球、好ましくは100WBCあたり1〜50の範囲のNRBC、を含む臨床サンプルをシミュレートする。
【0081】
実施例4
有核赤血球成分、複数の白血球亜集団成分並びに赤血球及び血小板成分を含む参照対照組成物
この参照対照組成物の作成方法は、ステップ4において所定量の複数の白血球亜集団アナログを、安定化されたヒト赤血球及び血小板アナログを含む懸濁媒中に加える以外は、実施例3において上記した方法と本質的に同じ方法である。
【0082】
複数の白血球亜集団アナログを、米国特許第4,704,364号、同第5,320,964号及び同第5,512,485号に記載の方法によって調製した。米国特許第4,704,364号に記載の方法によって調製した複数の白血球亜集団を用いて、有核赤血球測定及び白血球を3つの亜集団に識別するために対照組成物が使用可能である。米国特許第5,320,964号及び同第5,512,485号に記載の方法によって調製した複数の白血球亜集団アナログを用いて、参照対照組成物を有核赤血球測定及び白血球を5つの亜集団に識別するために使用可能である。
【0083】
本発明が、詳細に記載され、そして添付の図面によって写真的に示される一方、これらは本発明の範囲を限定するものとしてでなく、むしろ、その好ましい実施態様の例示であると解すべきである。しかしながら、上記の明細書中に記載され、そして添付された請求項に定義された本発明及びそれらの法的等価物の精神及び範囲内において多様な修飾及び変更が行われ得ることは明らかとなるであろう。本明細書中に引用されたすべての特許及び他の文献は特に参考文献として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1A】図1Aは、洗浄されたワニ赤血球の赤血球分布のヒストグラムを示す。
【図1B】図1Bは、洗浄されたワニ赤血球の部分的に示された白血球分布のヒストグラムを示す。
【図1C】図1Cは、洗浄されたワニ赤血球のDC対RLS相関グラフを示す。
【図1D】図1Dは、洗浄されたワニ赤血球のFS(前方光散乱)対SS(側方散乱)相関グラフを示す。
【図1E】図1Eは、洗浄されたワニ赤血球のFL4対FL1相関グラフを示す。FL4及びFL1が本明細書中に例解されるすべての蛍光相関グラフにおいてlogスケールであることは注記される。
【図2A】図2Aは、処理溶液1を用いて実施例1に記載の方法によって加工されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログの赤血球分布のヒストグラムを示す。
【図2B】図2Bは、処理溶液1を用いて実施例1に記載の方法によって処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログの白血球分布のヒストグラムを示す。
【図2C】図2Cは、処理溶液1を用いて実施例1に記載の方法によって処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログのDC対RLS相関グラフを示す。
【図2D】図2Dは、処理溶液1を用いて実施例1に記載の方法によって処理されたワニ赤血球から作製されたFS対SS相関グラフを示す。
【図2E】図2Eは、処理溶液1を用いて実施例1に記載の方法によって処理されたワニ赤血球細胞から作製されたNRBCアナログのFL4対FL1相関グラフを示す。
【図3A】図3Aは、27 NRBC/100 WBCを含む臨床サンプルの白血球分布のヒストグラムを示す。
【図3B】図3Bは、図3Aの臨床サンプルのDC対RLS相関グラフを示す。
【図3C】図3Cは、正常全血サンプルのFL4対FL1相関グラフを示す。
【図3D】図3Dは、13.7 NRBC/100 WBCを含む臨床サンプルのFL4対FL1相関グラフを示す。
【図4A】図4Aは、処理溶液2を用いて実施例2に記載のとおりに処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログの赤血球分布のヒストグラムを示す。
【図4B】図4Bは、処理溶液2を用いて実施例2に記載のとおりに処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログの部分的に示された白血球分布のヒストグラムを示す。
【図4C】図4Cは、処理溶液2を用いて実施例2に記載のとおりに処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログのDC対RLS相関グラフを示す。
【図4D】図4Dは、処理溶液2を用いて実施例2に記載のとおりに処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログのFS対SS相関グラフを示す。
【図4E】図4Eは、処理溶液2を用いて実施例2に記載のとおりに処理されたワニ赤血球から作製されたNRBCアナログのFL4対FL1相関グラフを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有核赤血球成分を含む参照対照であって、以下の:
(a)核を含む血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を自然の値から血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更することによって得られる有核赤血球成分;及び
(b)前記有核赤血球の分析のために前記血液分析装置に前記有核赤血球成分を送達するための好適な懸濁媒、
を含む、前記参照対照。
【請求項2】
前記核の性質が前記核のサイズである、請求項1に記載の参照対照。
【請求項3】
前記核の性質が前記核の光学的性質である、請求項1に記載の参照対照。
【請求項4】
前記光学的性質が、光散乱特性、軸方向光損失特性、又は蛍光色素で染色した上での前記核の蛍光特性である、請求項1に記載の参照対照。
【請求項5】
さらに白血球成分を含む、請求項1に記載の参照対照。
【請求項6】
前記白血球細胞が、複数の白血球亜集団をシミュレートするための複数の亜集団成分を含む、請求項5に記載の参照対照。
【請求項7】
赤血球成分、血小板成分及び網状赤血球成分から成る群から選ばれる、1つ以上の成分をさらに含む、請求項5に記載の参照対照。
【請求項8】
有核赤血球成分を含む参照対照の作製方法であって、以下のステップ:
a)核を含む血液細胞を提供し;
b)前記血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を、自然の値から血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更し、そして該標的値を維持し;及び
c)ステップb)から得られた処理された血液細胞を懸濁媒中に懸濁して前記参照対照を形成すること、
を含む、前記方法。
【請求項9】
前記処理溶液が調整成分、溶解成分及び固定成分を含み;そして前記処理溶液が前記血液細胞の細胞膜を透過し、前記核と接触し、そして前記核の性質を前記自然の値から前記標的値に変更し、そして前記標的値を固定によって維持する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記血液細胞の前記処理が、前記血液細胞を前記処理溶液と混合して、細胞処理懸濁液を形成し、そして前記細胞処理懸濁液を、約15分〜約24時間、前記細胞処理懸濁液をインキュベートすることである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
核の性質を変更するための細胞処理組成物であって、以下の:
(a)調整成分;
(b)細胞膜を透過し、そして前記細胞処理組成物が前記細胞核と接触していることを可能とする、溶解成分;及び
(c)前記細胞核を保存するための固定成分、
を含み、ここで、前記調整成分、前記溶解成分、及び前記固定成分が、核の性質を自然の値から標的値に変更するためのそれぞれの所定の濃度で存在する、前記組成物。
【請求項12】
前記調整成分が、緩衝剤、及び重量モル浸透圧調節剤を含む、請求項11に記載の細胞処理組成物。
【請求項13】
前記溶解成分が、以下の分子構造:
【化1】
{式中、
R1は、12〜16個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、又はアルキニル基であり;
R2、R3およびR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;そして、
X-は、塩素又は臭素アニオンである。}
により表される4級アンモニウム界面活性剤を含む、請求項11に記載の細胞処理組成物。
【請求項14】
さらに、6〜12個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルフェノール、及び約10〜約50個のエチレンオキシド基を含む、請求項13に記載の細胞処理組成物。
【請求項15】
さらに、以下の分子構造
【化2】
{式中、
R1は、10〜22個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、又はアルキニル基であり、
R2は、−O−であり;そして
nは、20〜35である。}
により表されるエトキシル化アルキルアルコールを含む、請求項14に記載の細胞処理組成物。
【請求項16】
前記固定成分が、アルデヒド、オキサゾリジン、アルコール、環状尿素、及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる固定剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
有核赤血球成分を含む参照対照の使用方法であって、以下のステップ:
a)核を含む血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を自然の値から血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更することによって得られた有核赤血球成分を含む参照対照を提供し;
b)前記血液細胞サンプルを分析しそして他の細胞タイプから有核赤血球を識別するために適合された血液分析装置を提供し;
c)前記有核赤血球成分の検出のために前記血液分析装置に上記対照を通し;そして
d)前記参照対照中の有核赤血球を報告する
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記有核赤血球の識別が、インピーダンス測定を用いて得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記有核赤血球の識別が、光学的測定を用いて得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記光学的測定が、蛍光、光散乱及び軸方向光損失の測定からなる群から選ばれる、1つ以上の測定である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記有核赤血球の識別が、インピーダンス及び光学的測定の組み合わせを用いて得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項1】
有核赤血球成分を含む参照対照であって、以下の:
(a)核を含む血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を自然の値から血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更することによって得られる有核赤血球成分;及び
(b)前記有核赤血球の分析のために前記血液分析装置に前記有核赤血球成分を送達するための好適な懸濁媒、
を含む、前記参照対照。
【請求項2】
前記核の性質が前記核のサイズである、請求項1に記載の参照対照。
【請求項3】
前記核の性質が前記核の光学的性質である、請求項1に記載の参照対照。
【請求項4】
前記光学的性質が、光散乱特性、軸方向光損失特性、又は蛍光色素で染色した上での前記核の蛍光特性である、請求項1に記載の参照対照。
【請求項5】
さらに白血球成分を含む、請求項1に記載の参照対照。
【請求項6】
前記白血球細胞が、複数の白血球亜集団をシミュレートするための複数の亜集団成分を含む、請求項5に記載の参照対照。
【請求項7】
赤血球成分、血小板成分及び網状赤血球成分から成る群から選ばれる、1つ以上の成分をさらに含む、請求項5に記載の参照対照。
【請求項8】
有核赤血球成分を含む参照対照の作製方法であって、以下のステップ:
a)核を含む血液細胞を提供し;
b)前記血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を、自然の値から血液分析装置上で血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更し、そして該標的値を維持し;及び
c)ステップb)から得られた処理された血液細胞を懸濁媒中に懸濁して前記参照対照を形成すること、
を含む、前記方法。
【請求項9】
前記処理溶液が調整成分、溶解成分及び固定成分を含み;そして前記処理溶液が前記血液細胞の細胞膜を透過し、前記核と接触し、そして前記核の性質を前記自然の値から前記標的値に変更し、そして前記標的値を固定によって維持する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記血液細胞の前記処理が、前記血液細胞を前記処理溶液と混合して、細胞処理懸濁液を形成し、そして前記細胞処理懸濁液を、約15分〜約24時間、前記細胞処理懸濁液をインキュベートすることである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
核の性質を変更するための細胞処理組成物であって、以下の:
(a)調整成分;
(b)細胞膜を透過し、そして前記細胞処理組成物が前記細胞核と接触していることを可能とする、溶解成分;及び
(c)前記細胞核を保存するための固定成分、
を含み、ここで、前記調整成分、前記溶解成分、及び前記固定成分が、核の性質を自然の値から標的値に変更するためのそれぞれの所定の濃度で存在する、前記組成物。
【請求項12】
前記調整成分が、緩衝剤、及び重量モル浸透圧調節剤を含む、請求項11に記載の細胞処理組成物。
【請求項13】
前記溶解成分が、以下の分子構造:
【化1】
{式中、
R1は、12〜16個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、又はアルキニル基であり;
R2、R3およびR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;そして、
X-は、塩素又は臭素アニオンである。}
により表される4級アンモニウム界面活性剤を含む、請求項11に記載の細胞処理組成物。
【請求項14】
さらに、6〜12個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルフェノール、及び約10〜約50個のエチレンオキシド基を含む、請求項13に記載の細胞処理組成物。
【請求項15】
さらに、以下の分子構造
【化2】
{式中、
R1は、10〜22個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、又はアルキニル基であり、
R2は、−O−であり;そして
nは、20〜35である。}
により表されるエトキシル化アルキルアルコールを含む、請求項14に記載の細胞処理組成物。
【請求項16】
前記固定成分が、アルデヒド、オキサゾリジン、アルコール、環状尿素、及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる固定剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
有核赤血球成分を含む参照対照の使用方法であって、以下のステップ:
a)核を含む血液細胞を処理溶液で処理して、核の性質を自然の値から血液サンプルの有核赤血球をシミュレートするために好適な標的値に変更することによって得られた有核赤血球成分を含む参照対照を提供し;
b)前記血液細胞サンプルを分析しそして他の細胞タイプから有核赤血球を識別するために適合された血液分析装置を提供し;
c)前記有核赤血球成分の検出のために前記血液分析装置に上記対照を通し;そして
d)前記参照対照中の有核赤血球を報告する
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記有核赤血球の識別が、インピーダンス測定を用いて得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記有核赤血球の識別が、光学的測定を用いて得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記光学的測定が、蛍光、光散乱及び軸方向光損失の測定からなる群から選ばれる、1つ以上の測定である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記有核赤血球の識別が、インピーダンス及び光学的測定の組み合わせを用いて得られる、請求項17に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【公表番号】特表2007−532875(P2007−532875A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507373(P2007−507373)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/010789
【国際公開番号】WO2005/100979
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(505275295)ベックマン コールター,インコーポレイティド (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/010789
【国際公開番号】WO2005/100979
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(505275295)ベックマン コールター,インコーポレイティド (25)
【Fターム(参考)】
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