説明

有機エレクトロニクスパネルの製造方法

【課題】有機エレクトロニクスパネルの有機機能層を塗布法で製造する際、有機機能層の不要領域を払拭方式で除去する時、ゴミの発生防止、払拭残りに伴うショートやダークスポットの発生防止、素子寿命が長寿命化し、性能品質が安定している有機エレクトロニクスパネルの製造方法の提供。
【解決手段】基材の上に、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に有機物層を含む少なくとも1層の有機機能層及び封止層とを有する有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、少なくとも、第1電極形成工程と、前記有機機能層を形成する有機機能層形成工程と、前記有機機能層のパターニング工程と、引き続き、前記パターニングした前記有機機能層を有する前記基材の全面をクリーニングするクリーニング工程とを有する有機エレクトロニクスパネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロニクスパネルの製造方法に関し、更に詳しくは、有機エレクトロルミネッセンスパネル、有機TFTパネル、有機太陽電池パネル、有機光電変換パネル、有機電子写真用感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンスパネル(以下、有機ELパネルとも言う)、有機TFTパネル、有機太陽電池パネル(以下、有機PVパネルとも言う)、有機光電変換パネル、有機電子写真用感光体をはじめとした、様々な有機エレクトロニクスパネルの開発が検討されている。有機エレクトロニクスパネルは、有機物を用いて電気的な動作を行う素子であり、省エネルギー、低価格、柔軟性といった特長を発揮出来ると期待され、従来のシリコーンを主体とした無機半導体に替わる技術として注目されている。これらの有機エレクトロニクスパネルは、有機物の非常に薄い膜を電極を介して電流を流すことで、発光したり、発電したり、帯電したり、電流や電圧を制御したりする素子である。
【0003】
有機EL素子は、有機化合物の薄膜からなる発光層を電極で挟持した構成で、電極間に電流を供給すると発光する素子である。従って、薄膜の有機EL素子を光源として利用すると、小型化、軽量化が容易である上、蛍光灯に比べ発光の応答速度が速く、点灯直後の光量も比較的安定した照明装置となる。
【0004】
有機PV素子や有機光電変換素子は、有機化合物の薄膜からなる発電層を電極で挟持した構成で、光を照射すると発電する素子である。従って、薄膜の有機光電変換素子を太陽電池として利用すると、小型化、軽量化が容易である上、既存の無機半導体系の太陽電池に比べ、低照度環境や高温環境下でも比較的安定した出力を得られる太陽電池となる。
【0005】
更に、これら有機エレクトロニクスパネルは、有機溶媒を含む塗布液を基材上に塗布することにより、基材上に機能性層を形成させることが出来、真空プロセスを不要と出来る可能性があり、高い生産性による低コスト化が期待出来る。これら塗布法で製造する有機エレクトロニクスパネルは、電極取り出し部を作る必要から、パターン塗布が必要となるが、一般的に有機エレクトロニクスパネルで用いられる材料の溶液は0.5mPa・sから3mPa・sと粘度が低く、低粘度の塗布液を押出塗布装置の塗布ダイスから吐出させて基材上に塗布する場合は、単純なストライプ塗布であっても困難である。
【0006】
これまでに、有機エレクトロニクスパネルを塗布法で製造する際、ストライプ塗布に代わる電極取り出し部を作る方法が検討されてきた。
【0007】
例えば、基材上に、陽極、少なくとも有機発光材料からなる発光層を含む有機機能層、及び陰極を積層してなる積層体を有する発光部と、この積層体を有しない非発光部とを有する有機EL表示装置を製造する時、有機機能層を陽極を含め全面に塗布した後、非発光部に形成された有機機能層をその形成後に溶剤により拭き取り除去することで電極取り出し部を作る方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
基材上に形成された被膜を選択的に溶媒で湿したワイピングヘッドで接触させ拭き取り、パターニングしたエレクトロルミネッセント層を設ける方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
電極上に一面に積層された発光層を所定の開孔部を有するマスクを介してドライエッチングしてパターン化する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
しかしながら特許文献1、特許文献2に記載の方法は次の欠点を有していることが判った。
1)有機機能層を拭き取る際、発生したダストが有機機能層上に付着することでショートやダークスポットの原因となる。積層する有機機能層の厚みは十数nmから百数十nmであり、有機材料が導電性の場合、陰極までショートさせる原因となる。又、ダークスポットと呼ばれるなんら機能しない領域が発生する。
2)外部電極接続用電極に拭き残し部分が生じ、外部電極との接触不良が発生する。又、微量残存する溶媒中に溶解した成分によるショートや上部に形成する電極の密着性が低下する。
3)基材上に付着したダストはその後に続く封止工程において封止剤との接着性を低下させ、防湿性が悪くなり、素子寿命が短くなる。
【0011】
又、特許文献3に記載の方法は次の欠点を有していることが判った。
1)有機機能層を除去する際、一度に不要とする有機機能層を除去するため、発生したダストが有機機能層上に付着することでショートやダークスポットの原因となる。積層する有機機能層の厚みは十数nmから百数十nmであり、有機材料が導電性の場合、陰極までショートさせる原因となる。又、ダークスポットと呼ばれるなんら機能しない領域が発生する。
2)基材上に付着したダストはその後に続く封止工程において封止剤との接着性を低下させ、防湿性が悪くなり、素子寿命が短くなる。
3)精緻なマスクを作製するのに、煩雑な作業と管理が必要となる。
4)ロールツーロール方式では、基材の搬送方向に対しては連続的に有機機能層を除去することは出来るが、基材の搬送方向に対して直角方向の除去は同時に出来ない。
【0012】
この様な状況から、有機エレクトロニクスパネルの有機機能層を塗布法で製造する際、不要の有機機能層を払拭方式で除去する時、ゴミの発生防止、払拭残りに伴うショートやダークスポットの発生防止、素子寿命の長寿命化した有機エレクトロニクスパネルの製造方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−152512号公報
【特許文献2】特表2007−515756号公報
【特許文献3】特開2004−127726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は、有機エレクトロニクスパネルの有機機能層を塗布法で製造する際、有機機能層の不要領域を払拭方式で除去する時、ゴミの発生防止、払拭残りに伴うショートやダークスポットの発生防止、素子寿命が長寿命化し、性能品質が安定している有機エレクトロニクスパネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0016】
1.基材の上に、第1電極と、第1電極用外部接続用電極と、第2電極と、第2電極用外部接続用電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に有機物層を含む少なくとも1層の有機機能層及び封止層とを有する有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、
少なくとも、前記第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第1電極を含む前記基材の全面に少なくとも1層の有機機能層を形成する有機機能層形成工程と、
前記有機機能層の不要領域を除去しパターニングするパターニング工程と、
引き続き、前記パターニングした前記有機機能層を有する前記基材の全面をクリーニングするクリーニング工程とを有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0017】
2.前記有機機能層の不要領域を除去する溶媒が、Hansenの溶解度パラメータ、f、f、f、のプロットが、主な有機機能層を塗布した溶媒のプロットに対して、少なくとも45ポイント以内の近さであり、且つ、20ポイント以上離れていることを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0018】
3.前記パターニング工程で前記有機機能層のパターニングを払拭方式で行うことを特徴とする前記1又は2に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0019】
4.前記クリーニング工程でクリーニングをドライエッチング方式で行うことを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0020】
5.前記1から4の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、次の各工程を順次有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0021】
A)少なくとも前記第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む前記第1電極と、リード部とを前記基材の上にパターン化して形成する第1電極形成工程
B)該第1電極と該リード部とを有する該基材の全面に、少なくとも1層の有機機能層を形成する有機機能層形成工程
C)前記有機機能層の不要領域をパターニングするパターニング工程
D)前記パターニングした前記有機機能層を有する前記基材の全面をクリーニングするクリーニング工程
E)前記第1電極の上の前記有機機能層の上から前記リード部に亘り、前記第2電極及び第2電極用外部接続用電極を形成する第2電極形成工程
F)前記第1電極用外部接続用電極と、第2電極用外部接続用電極とを除き封止部材で前記第2電極の上及び周囲を封止部材で封止する封止工程
6.前記1から4の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、次の各工程を順次有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0022】
A)少なくとも前記第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む前記第1電極と、リード部とを前記基材の上にパターン化して形成する第1電極形成工程
B)該第1電極と該リード部とを有する該基材の全面に、少なくとも1層の有機機能層を形成する有機機能層形成工程
C)前記有機機能層の不要領域をパターニングするパターニング工程
D)前記パターニングした前記有機機能層を有する前記基材の全面をクリーニングするクリーニング工程
E)前記第1電極の上の前記有機機能層の上に、前記第2電極を形成する第2電極形成工程
F)前記第2電極と前記リード部に亘り、導電層を形成し第2電極用外部接続用電極を形成する導電層形成工程
G)前記第1電極用外部接続用電極と、第2電極用外部接続用電極とを除き封止部材で前記第2電極の上及び周囲を封止部材で封止する封止工程
7.前記1から4の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、次の各工程を順次有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0023】
A)少なくとも前記第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む前記第1電極を、前記基材上にパターン化して形成する第1電極形成工程
B)該第1電極を有する該基材の全面に、少なくとも1層の有機機能層を形成する有機機能層形成工程
C)該有機機能層の不要領域をパターニングするパターニング工程
D)該パターニングした該有機機能層を有する該基材の全面をクリーニングするクリーニング工程
E)該第1電極の上の該有機機能層の上に第2電極を形成し、同時に該第2電極と一体かした第2電極用外部接続用電極を有機機能層が除去された該基材の上に形成する第2電極形成工程
F)前記第1電極用外部接続用電極と、第2電極用外部接続用電極とを除き封止部材で前記第2電極の上及び周囲を封止部材で封止する封止工程
8.前記の有機エレクトロニクスパネルが有機エレクトロルミネッセンスパネルであることを特徴とする前記1から7の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【0024】
9.前記の有機エレクトロニクスパネルが有機光電変換素子であることを特徴とする前記1から7の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0025】
有機エレクトロニクスパネルの有機機能層を塗布法で製造する際、有機機能層の不要領域を払拭方式で除去する時、ゴミの発生防止、払拭残りに伴うショートやダークスポットの発生防止、素子寿命が長寿命化し、性能品質が安定している有機エレクトロニクスパネルの製造方法を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】有機エレクトロニクスパネルの一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示される有機エレクトロニクスパネル(a)を作製するは基材供給工程からクリーニング工程までの工程フロー図である。
【図3】図1に示される有機エレクトロニクスパネル(a)を作製するは第2電極形成工程から回収工程までの工程フロー図である。
【図4】図1に示される有機エレクトロニクスパネル(c)を作製する基材供給工程からクリーニング工程までの工程フロー図である。
【図5】図1に示される有機エレクトロニクスパネル(c)を作製する第2電極形成工程から回収工程までの工程フロー図である。
【図6】図1に示される有機エレクトロニクスパネル(b)を作製する基材供給工程からクリーニング工程までの工程フロー図である。
【図7】図1に示される有機エレクトロニクスパネル(b)を作製する第2電極形成工程から回収工程までの工程フロー図である。
【図8】パターニング工程の概略図である。
【図9】大気圧プラズマ処理装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図1から図6を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
図1は本発明の有機エレクトロニクスパネルの製造方法により製造された有機エレクトロニクスパネルの一例を示す概略断面図である。
【0029】
(a)に付き説明する。
【0030】
図中、1は図1の(a)に示す製造フロー図に従って製造された有機エレクトロニクスパネルを示す。101は基材を示す。102は第1電極(陽極)を示し、102aは第1電極102の第1電極用外部接続用電極を示す。104aは第2電極用外部接続用電極を示す。第2電極用外部接続用電極104aは第1電極102を形成する際に基材101上に第1電極102と分離された位置に形成されたリード部と第2電極(陰極)104とが接合されることで形成される。103は第1電極用外部接続用電極102aの上を除いて第1電極102の上及び周囲に形成された有機物層を含む有機機能層を示す。104は有機機能層103の上及びリード部102bの一部を被覆する様に形成された第2電極(陰極)を示す。105は第1電極用外部接続用電極102a及び第2電極用外部接続用電極104aの一部を除き第2電極(陰極)104の上と周囲に設けられた接着剤層を示す。106は接着剤層105を介して貼着された封止部材を示す。
【0031】
(b)に付き説明する。
【0032】
図中、1′は図1の(b)に示す製造フロー図に従って製造された有機エレクトロニクスパネルを示す。101′は基材を示す。102′は第1電極(陽極)を示し、102′aは第1電極102′の第1電極用外部接続用電極を示す。104′aは第2電極用外部接続用電極を示す。第2電極用外部接続用電極104′aは第1電極102′を形成する際に基材101′上に第1電極102′と分離された位置に形成されたリード部と第2電極(陰極)104′とを導電層105′で接合されることで形成される。103′は第1電極用外部接続用電極102′aの上を除いて第1電極(陽極)102′の上及び周囲に形成された有機物層を含む有機機能層を示す。104′は有機機能層103′の上に第1電極102′の大きさに合わせ形成された第2電極(陰極)を示す。105′は導電層を示し、第2電極104′とリード部102′bとを接合するように形成されている。
【0033】
106′は第1電極用外部接続用電極102′a及び第2電極用外部接続用電極104′aの一部を除き第2電極(陰極)104′の上及び導電層105′の上と周囲に設けられた接着剤層を示す。107′は接着剤層106′を介して貼着された封止部材を示す。
【0034】
(c)に付き説明する。
【0035】
図中、1″は図1の(a)に示す製造フロー図に従って製造された有機エレクトロニクスパネルを示す。101″は基材を示す。102″は第1電極(陽極)を示し、102″aは第1電極102″の第1電極用外部接続用電極を示す。103″は第1電極用外部接続用電極102″aの上を除いて第1電極102″の上、及び周囲に形成された有機物層を含む有機機能層を示す。104″は第1電極102″の大きさに合わせ、有機機能層の上と基材101″の上に形成された第2電極(陰極)を示す。104″aは第2電極(陰極)104″と一体で形成された第2電極(陰極)の第2電極用外部接続用電極を示す。105″は第1電極用外部接続用電極102″a及び第2電極用外部接続用電極104″aの一部を除き第2電極(陰極)104″の上と周囲に設けられた接着剤層を示す。106″は接着剤層105″を介して貼着された封止部材を示す。
【0036】
図1の(a)、(b)、(c)に示される有機エレクトロニクスパネルは、有機EL素子としては第1電極用外部接続用電極と第2電極用外部接続用電極とから直流が供給されることにより、基材から光が発せられる。又、有機PV素子では、基材から光が照射されることで直流の起電力が発生し、第1電極用外部接続用電極と第2電極用外部接続用電極とから電力が取り出される。
【0037】
本発明は、図1の(a)、(b)、(c)に示される有機エレクトロニクスパネルを作製する際、有機機能層の不要領域を払拭方式で除去する時、ゴミの発生を防止し、払拭残りに伴うショートやダークスポットの発生を防止し、素子寿命を長寿命化し、性能品質が安定している有機エレクトロニクスパネルの製造方法に関するものである。
【0038】
有機機能層とは、有機ELパネルの場合、例えば正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層を指す。又、有機PVパネルの場合、例えば正孔輸送・電子ブロック層/光電変換層/電子輸送・正孔ブロック層を指す。有機ELパネル及び有機PVパネルの構成に関しては後述する。
【0039】
次に図1に示す有機エレクトロニクスパネル(a)、(b)、(c)の作製を図2から図7に示す製造フロー図で具体的に説明する。
【0040】
図2は図1に示される有機エレクトロニクスパネル(a)を作製する基材供給工程からクリーニング工程までの工程フロー図である。
【0041】
図3は図1に示される有機エレクトロニクスパネル(a)を作製する第2電極形成工程から回収工程までの工程フロー図である。
【0042】
尚、図2及び図3で右側は、A−A′に沿った拡大概略断面図である。図1に示される有機エレクトロニクスパネル(a)は、図2及び図3に示させる工程フロー図に示される基材供給工程、第1電極形成工程、有機機能層形成工程、パターニング工程、クリーニング工程、第2電極形成工程、封止工程、回収工程に従って作製される。以下、図2及び図3で図1に示される有機エレクトロニクスパネル(a)の作製に付き説明する。
【0043】
基材供給工程では、帯状又は枚葉状の基材が必要に合わせて供給される。帯状の基材の場合はロール状の帯状の基材から繰り出される状態で連続的に供給される。本図は帯状シート状基材が供給された場合を示している。
【0044】
第1電極形成工程では、基材供給工程から供給された基材101の上に第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極102と、リード部102bがパターニングされた状態で形成される。
【0045】
有機機能層形成工程では、第1電極形成工程から供給される第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極102と、リード部102bとが形成された基材101の全面に有機機能層103が形成される。
【0046】
パターニング工程では、有機機能層形成工程から供給される全面に有機機能層103を形成した基材101の有機機能層103の不要領域(非機能発現領域)(例えば、有機ELパネルでは非発光部分、有機PVパネルでは起電力の非発生部分)が払拭方式により払拭除去される。本図では、第1電極102の第1電極用外部接続用電極102aの形成部分及びリード部102bが出現する様に基材103の上を含め払拭除去される。
【0047】
クリーニング工程では、パターニング工程から供給されるパターニングされた有機機能層を有する基材に対して、パターニング工程での払拭残り、払拭で発生した有機機能層の付着箇所のクリーニングがドライエッチング方式で行われる。ドライエッチング方式としては特に限定はないが、例えば大気圧プラズマ処理が挙げられる。
【0048】
第2電極形成工程では、クリーニング工程から供給されるクリーニング済みの基材の上に形成されている第1電極102上の有機機能層103の上に第1電極102の大きさに合わせリード部102bと接合する様に第2電極104が形成され、リード部102bと第2電極104とが接合することで第2電極用外部接続用電極104が形成される。
【0049】
封止工程では、第2電極形成工程から供給される第2電極104及び第2電極用外部接続用電極104aとが形成された基材101の上に形成されている、第1電極用外部接続用電極102aと、第2電極用外部接続用電極104aとの一部を除き第2電極104の上と周囲に設けられた接着剤を介して封止部材106を貼着し封止された有機エレクトロニクスパネル1(図1の(a)の構成)が作製される。
【0050】
回収工程では、封止工程から供給される有機エレクトロニクスパネルが回収される。回収の方式は使用する基材により変えられる。使用した基材が帯状の場合は、例えばロール状に巻き取られ回収した後、別の工程で必要とするユニットに断裁される。又は、必要とする大きさに断裁された後に回収する。使用した基材が枚葉状の場合は、例えば、1枚毎に積み重ねて回収した後、別の工程で必要とする大きさに断裁される。又は、必要とする大きさに断裁された後に回収する。
【0051】
尚、本図は第1電極形成工程で基材の搬送方向に1列の第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極と、リード部とがパターン化して形成されている場合を示しているが、基材の横手方向に第1電極と、リード部との間に複数の第1電極を形成しても構わない。
【0052】
図4は図1に示される有機エレクトロニクスパネル(c)を作製する基材供給工程からクリーニング工程までの工程フロー図である。
【0053】
図5は図1に示される有機エレクトロニクスパネル(c)を作製する第2電極形成工程から回収工程までの工程フロー図である。
【0054】
尚、図4及び図5で右側は、B−B′に沿った拡大概略断面図である。図1に示される有機エレクトロニクスパネル(a)は、図4及び図5に示させる工程フロー図に示される基材供給工程、第1電極形成工程、有機機能層形成工程、パターニング工程、クリーニング工程、第2電極形成工程、封止工程、回収工程に従って作製される。以下、図4及び図5で図1に示される有機エレクトロニクスパネル(c)の作製に付き説明する。
【0055】
基材供給工程は、図2に示す基材供給工程と同じであるため説明は省略する。
【0056】
第1電極形成工程では、基材供給工程から供給された基材101″の上に、第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極102″がパターニングされた状態で形成される。
【0057】
有機機能層形成工程では、第1電極形成工程から供給される第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極102″が形成された基材101″の全面に有機機能層103″が形成される。
【0058】
パターニング工程では、有機機能層形成工程から供給される全面に有機機能層103″を形成した基材101″の全面に形成された有機機能層103″の不要領域(例えば、有機ELパネルでは非発光部分、有機PVパネルでは起電力の非発生部分)が払拭除去される。本図では、第1電極102″の第1電極用外部接続用電極102a″形成部分が出現する様に基材103″の上を含め払拭除去される。
【0059】
クリーニング工程では、パターニング工程から供給されるパターニングされた有機機能層を有する基材103″に対して、パターニング工程での払拭残り、払拭で発生し有機機能層及び払拭した箇所付着したクリーニングの除去がドライエッチング方式で行われる。
【0060】
第2電極形成工程では、クリーニング工程から供給されるクリーニング済みの基材103″の上に形成されている第1電極102″上の有機機能層103″の上に第1電極102″の大きさに合わせ第2電極104″と、第2電極104″と一体化した第2電極用外部接続用電極104″aが基材の上に形成される。
【0061】
封止工程では、第2電極形成工程から供給される第2電極104″及び第2電極用外部接続用電極104″aとが形成された基材の上に形成されている、第1電極用外部接続用電極102″aと、第2電極用外部接続用電極104″aとの一部を除き第2電極104″の上と周囲に設けられた接着剤を介して封止部材106″を貼着し封止された有機エレクトロニクスパネル1″(図1の(c)の構成)が作製される。
【0062】
回収工程は図2に示す回収工程と同じであるため説明は省略する。
【0063】
尚、本図は第1電極形成工程で基材の搬送方向に1列の第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極とパターン化して形成されている場合を示しているが、基材の横手方向に複数の第1電極を形成しても構わない。
【0064】
図6は図1に示される有機エレクトロニクスパネル(b)を作製する基材供給工程からクリーニング工程までの工程フロー図である。
【0065】
図7は図1に示される有機エレクトロニクスパネル(b)を作製する第2電極形成工程から回収工程までの工程フロー図である。
【0066】
尚、図6及び図7で右側は、C−C′に沿った拡大概略断面図である。図1に示される有機エレクトロニクスパネル(b)は、図6及び図7に示させる工程フロー図に示される基材供給工程、第1電極形成工程、有機機能層形成工程、パターニング工程、クリーニング工程、第2電極形成工程、封止工程、回収工程に従って作製される。以下、図6及び図7で図1に示される有機エレクトロニクスパネル(b)の作製に付き説明する。
【0067】
基材供給工程は、図2に示す基材供給工程と同じであるため説明は省略する。
【0068】
第1電極形成工程では、基材供給工程から供給された基材101′の上に第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極102′と、リード部102′bがパターニングされた状態で形成される。
【0069】
有機機能層形成工程では、第1電極形成工程から供給される第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極102′と、リード部102′bとが形成された基材101′の全面に有機機能層103′が形成される。
【0070】
パターニング工程では、有機機能層形成工程から供給される全面に有機機能層103′を形成した基材101′の有機機能層103′の不要領域(例えば、有機ELパネルでは非発光部分、有機PVパネルでは起電力の非発生部分)が払拭除去される。本図では、第1電極102′の第1電極用外部接続用電極102′a形成部分及びリード部102′bが出現する様に払拭除去される。
【0071】
クリーニング工程では、パターニング工程から供給されるパターニングされた有機機能層103′を有する基材101′に対してパターニング工程での払拭残り、及び払拭で発生し有機機能層及び払拭した箇所に付着したゴミの除去がドライエッチング方式で行われる。
【0072】
第2電極形成工程では、クリーニング工程から供給されるクリーニング済みの基材101′の上に形成されている第1電極102′上の有機機能層103′の上に第1電極102′の大きさに合わせ第2電極104′が形成される。
【0073】
導電層形成工程では、第2電極形成工程から供給される第2電極104′が形成された基材101′の第2電極104′の一部とリード部102′bの一部とを接続する様に導電層105′が形成される。リード部102′bと導電層105′とが接合することで第2電極用外部接続用電極104′aが形成される。
【0074】
封止工程では、第2電極形成工程から供給される第2電極104′及び第2電極用外部接続用電極104′aとが形成された基材101′の上に形成されている、第1電極用外部接続用電極102′aと、第2電極用外部接続用電極104′aとの一部を除き第2電極104′の上と周囲に設けられた接着剤を介して封止部材107′を貼着し封止された有機エレクトロニクスパネル1′(図1の(b)の構成)が作製される。
【0075】
回収工程は、図2に示す回収工程と同じであるため説明は省略する。
【0076】
尚、本図は第1電極形成工程で基材の搬送方向に1列の第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極と、リード部とがパターン化して形成されている場合を示しているが、基材の横手方向に第1電極と、リード部との間に複数の第1電極を形成しても構わない。
【0077】
図2から図4は有機機能層が1層の場合を示しているが有機機能層が多層の場合、パターニング工程及びクリーニング工程で処理の方法は次の方法が挙げられ必要に応じて適宜選択することが可能である。
1)各層毎にパターニング工程及びクリーニング工程で処理を行った後、有機機能層形成工程で有機機能層を積層することを繰り返し行う。
2)有機機能層を必要とする多層に形成した後、パターニング工程及びクリーニング工程で処理する。
【0078】
尚、各層毎にパターニング工程のみでの処理を行い、有機機能層を積層し最後に、クリーニング工程で処理する方法は各層毎に行うパターニング工程で発生し有機機能層に付着したゴミの除去が出来なくなるため好ましくない。有機機能層の表面に付着したゴミが第1電極(陽極)と第2電極(陰極)とを短絡させる原因となったり、ダークスポットとなったりする可能性がある。
【0079】
第2電極(陰極)表面や基材の表面に付着したゴミは、有機機能層や第1電極(陽極)とを短絡させる原因とはならないが、第2電極(陰極)と導電層間や、リード部と導電層間の接触を劣化させたり、その後に続く封止工程において封止剤との接着性を低下させ有機エレクトロニクスパネルの防湿性が劣化し、有機エレクトロニクスパネルの寿命を短くする。
【0080】
次に、パターニング工程で使用する払拭装置に付き説明する。払拭装置としては基材上に形成された有機機能層の不要な箇所を精密且つ迅速に除去しパターニングが出来れば特に限定はない。例えば、有機機能層を溶媒により溶解或いは膨潤し、吸い取り除去する方法や、拭い取る方法、又、溶剤により「湿らせた」軟質ヘッド又テープ状部材等を有機機能層に接触させ連続的に、基材上の全面に製膜された有機機能層から、その一部を除去する方法が挙げられる。以下に溶剤により「湿らせた」テープ状部材を使用した払拭装置による有機機能層の不要な箇所の除去方法に付き説明する。
【0081】
尚、図2から図4に示す第1電極形成工程では基材の搬送方向に1列の第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極と、リード部とがパターン化して形成されている場合を示しているが、第1電極と、リード部との間に複数の第1電極を形成しても構わない。
【0082】
図8はパターニング工程の概略図である。図8(a)はパターニング工程の概略斜視図である。図8(b)は図8(a)のD−D′に沿った拡大概略断面図である。
【0083】
図中、2はパターニング工程を示す。パターニング工程2は基材3を保持するローラー4と、第1払拭装置5と、第2払拭装置6とを使用している。ローラー4は回転可能に両側を保持部材(不図示)により保持されている。払拭装置の数は基材3上に形成されている第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極7の数、リード部の有無により、払拭する位置が異なるため払拭する位置の数に合わせ適宜調整することが可能である。本図は基材3の搬送方向(図中の矢印方向)に一列に第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極7とリード部7aとが配置された場合を示している。
【0084】
8は基材3の全面に形成された有機機能層を示す。第1電極の第1電極用外部接続用電極701形成部分とリード部7aとの上に形成されている有機機能層8(図面上の斜線で示される部分)の不要領域を除去するために、第1払拭装置5と、第2払拭装置6との2台が配置されている。第1払拭装置5と第2払拭装置6とは同じ構造となっているため、第1払拭装置5の構造に付き説明する。
【0085】
第1払拭装置5は、払拭部材503の送り出しロール501と巻き取りロール502と、押圧ロール504と、溶剤タンク505とを有している。本図では払拭部材503として帯状部材を使用している場合を示している。503aは送り出しロール501に装填されたロール状の払拭部材を示し、502aは巻き取りロール502にロール状に巻き取られた払拭部材を示す。尚、払拭部材503の搬送方向は基材の搬送方向と逆方向であっても構わない。
【0086】
溶剤タンク505の溶剤は溶剤供給管505aを介して払拭部材503に常に含浸させる様になっている。
【0087】
押圧ロール504は、シリンダ504aに上下移動(図中の矢印方向)が可能に接続されており、所望の圧力で払拭部材503を基材3の上の有機機能層8に対して押圧することが可能となっている。押圧ロール504により払拭部材503を有機機能層8上に押圧接触する位置は、ローラー504と基材3とが接触する位置が、安定した圧力で押圧接触が出来ることから好ましい。尚、第1払拭装置5と第2払拭装置6とには基材3の払拭する位置に押圧ロール504の位置を合わせるための位置調整手段を有している。
【0088】
本図に示される払拭装置は、連続的に搬送される基材の上に形成された有機機能層の不要な箇所(本図では、第1払拭装置5は第1電極7の第1電極用外部接続用電極701形成部分の上と周辺部に形成された有機機能層8、第2払拭装置6はリード部7aの上、及びリード部7aと第1電極7の第1電極用外部接続用電極701形成部分の周辺部に形成された有機機能層8)に溶剤が含浸された払拭部材を送り出しながら押圧接触させることで、連続的に有機機能層の不要な箇所を払拭除去することで連続的に第1電極7の第1電極用外部接続用電極701の形成部分及びリード部7aの表面を露出させることを可能にしている。
【0089】
尚、本図は連続的に搬送される基材の上に形成された有機機能層の不要な箇所を連続して除去するため払拭する箇所に合わせ2台の払拭装置を配設した場合を示したが、機材が枚葉シートの場合は、基材を固定し払拭装置を移動させる方式にしても構わない。
【0090】
払拭部材503として帯状の払拭部材の場合は、搬送に耐える物性、溶媒が含浸し、耐溶剤性、溶解した有機機能層を吸収出来る材質であれば特に限定はなく、例えば多孔質、耐溶剤性、又繊維質の、織布、不織布等が挙げられる。
【0091】
払拭部材503の幅は、払拭する有機機能層の幅に対して、基材に対する溶剤の濡れ性、有機溶媒の有機機能層への浸透性等を考慮し、100%から80%の範囲が好ましく、95%から80%の範囲が特に好ましい。
【0092】
払拭部材503の厚さは、溶媒の含浸量、溶解した有機機能層の吸収量等を考慮し、0.1mmから10mmが好ましい。
【0093】
払拭部材503へ供給する溶媒の量は、有機溶媒の有機機能層への浸透性を考慮し、0.01mlから1mlが好ましい。
【0094】
払拭部材503の有機機能層への押圧力は、有機機能層の払拭性、第1電極、リード部への損傷抑制等を考慮し、9.81×10Paから4.91×10Paの範囲が好ましい。
【0095】
払拭部材503の送り出し速度は基材3との相対速度として、有機機能層の溶解吸収、払拭部材に含浸している溶媒の横方向への広がりによる有機機能層の溶解、有機機能層の拭き取り部分の乱れに伴うパターニングの精度等を考慮し、1cm/秒から50cm/秒の範囲が好ましい。
【0096】
本図に示す払拭装置は払拭部材として帯状払拭部材を使用した場合を示しているが、帯状払拭部材の代わりに溶剤吸収性且つ弾性がある多孔性の(例えばスポンジ状)材料からなるブレードを用いてこれを基材に押圧して拭き取る方法でもよい。
【0097】
ブレードに使用する材料としては、例えばスポンジ、エラストマー、熱可塑性樹脂、繊維マット、多孔質材料、ポリウレタンゴム、合成ゴム、天然ゴム、シリコーン等の材料又はこれらの組み合わせからなる耐溶剤性の材料で構成されてもよい。
【0098】
ブレードの形状は効率よく拭き取りが出来れば特に限定されないが、例えば台形の断面形状を好ましく用いることが出来る。この形状は、先端のとがった断面形状、正方形の断面形状、先端の丸い断面形状などの幾何学的断面形状を有していてもよく、掻き取る或いは拭き取る有機層の性質、掻き取り速度等に合わせて設計してよい。更に、所定の厚みを持ち先端は弾性を持つため、拭き取り時には、撓み、ブレードとして、基材を擦り、有機機能層を拭き取ることが出来る。
【0099】
払拭部材503に含浸させる溶媒としては有機機能層を除去する際に、拭き取りを容易にする組成であれば如何なる溶媒でもよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、メタノールや、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール,2−メトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリン等のパラフィン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、ピリジン、キノリン、アニリン等のアミン系溶媒、アセトニトリル、バレロニトリル等のニトリル系溶媒、チオフェン、二硫化炭素などの硫黄系溶媒が挙げられる。これら拭き取り溶媒は、溶媒単独で用いてもよいし、複数の溶媒を混合して用いてもよい。又、複数の溶媒を順次変えて使用してもよい。
【0100】
更に好ましい拭き取り溶媒としては、Hansenの溶解度パラメータとして、有機機能層を構成している有機材料の溶解性を考慮し、∂、∂、∂、から算出される百分率、f(Dispersion force)、f(Polar force)、f(Hydrogen force)、のプロットが、主な有機機能層を塗布した溶媒のプロットに対して、少なくとも45ポイント以内の近さであり、且つ、20ポイント以上離れていることがより好ましい。より好ましくは、40ポイント以内の近さであり、25ポイント以上離れていることが更に好ましい。
【0101】
、∂、∂、から算出される百分率、f、f、fは以下の式1)から式3)に従って求められる。
【0102】
式1) f=∂/(∂+∂+∂
式2) f=∂/(∂+∂+∂
式3) f=∂/(∂+∂+∂
又、拭き取り溶媒の溶解度パラメータと、有機機能層を塗布する溶媒とのポイント差Rfは以下の式4)により求めることが出来る。
【0103】
式4) (Rf)=(fd2−fd1+(fp2−fp1+(fh2−fh1
ここで主な有機機能層とは、有機EL素子で言う発光層や、有機PV素子で言う光電変換層に相当し、膜厚が大概にして厚いために、拭き取り時に最も拭き残し等の残留物が懸念される層である。
【0104】
これらHansenの溶解度パラメータ(以下、SP値とも呼ぶ)は、例えば、Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook(Charles M. Hansen著)、The Book and Paper Group ANNUAL,Volume Three 1984,Solubility Parameters:Theory and Application(John Burke著)、その他公知の文献を参考に各種溶媒のSP値を得ることが出来る。
【0105】
本発明では、パターニング工程での払拭残り及び払拭で発生し、有機機能層及び払拭した箇所に付着したゴミを除去するクリーニング工程にドライエッチング法が用いられている。ドライエッチング法としては、例えばアルゴンスパッタ、電子線照射、プラズマ処理等が挙げられる。プラズマ処理としてはフレームプラズマ処理、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、プラズマ処理を対象とするが、以下、クリーニング工程で使用するドライエッチング法の一例として大気圧下で連続処理が可能な大気圧プラズマ処理をプラズマ処理の代表として説明する。
【0106】
本発明の有機エレクトロニクスパネルの製造方法に係わる大気圧プラズマ処理は、大気圧、又はそれに近い気圧下において行われることが好ましいが、大気圧で可能な常圧プラズマ処理とすることが、続いて塗布を行う場合、塗布を速やかに行うことが出来る等、生産性の観点から好ましい。具体的な圧力としては70kPaから130kPaが好ましく、全く減圧・加圧を行わない、大気圧であることが最も好ましい。
【0107】
プラズマを発生させるためには、キャリアガスとして不活性ガスの雰囲気下で放電させる必要があるが、ここで不活性ガスとは、周期表の第18属元素、所謂希ガスと呼ばれる、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等や、更には窒素ガス雰囲気下で行うことが好ましく、処理性といった観点ではアルゴン又はヘリウムが特に好ましく用いられる。ただし、製造コスト的な観点からは、放電条件を最適化することで窒素ガスを用いることが最も好ましい。
【0108】
本発明での好ましい態様として、不活性ガスと共に0.01%から30%(体積割合)の反応性ガスを含有させることが好ましく、更に好ましくは0.1%から20%、最も好ましくは1%から15%の反応性ガスを含有させることがより好ましい。
【0109】
本発明で用いる反応性ガスは複数用いることが可能であるが、少なくとも1種類は、放電空間でプラズマ状態となり、対象物の表面を処理出来る成分を含有するものが好ましい。
【0110】
反応性ガスの好ましい例としては、酸素、二酸化炭素、窒素(窒素雰囲気の場合を除く)、水素等のガスを含ませてもよい。又、表面を積極的に改質するため、メタン、アンモニア、各種有機金属化合物、フッ素化合物などを反応性ガスとして用いることも本発明において好ましい態様である。本発明においては、有機物の除去と同時に基材や電極表面の劣化を防ぐといった観点から、特に水素ガスを不活性ガスに適量混合して用いることが最も好ましい。
【0111】
大気圧下でプラズマ処理する場合は、開始電圧が上昇するのでこれを抑えるのに、放電極面に誘電体を挟むこと、雰囲気ガスがヘリウム、アルゴン又は窒素であること、電源として交流や高周波を使用することが好ましい。
【0112】
周波数として、1kHzから1GHzが好ましい。印加する電力は、対象とする試料の組成、表面特性等によっても異なり、条件を最適化する必要があるが、表面の平滑性、放電による飛散物質汚染等を考慮し、0.01W/cmから10W/cmの範囲の電力を用いて0.1秒化から数十秒の範囲で放電処理を行うことが好ましい。クリーニング工程に用いる大気圧プラズマ処理装置の一例を図9で説明する。
【0113】
図9は大気圧プラズマ処理装置の一例を示す概略図である。本図はフレキシブルなフィルム基材の搬送工程に適用出来る、所謂ロールツーロールによるプラズマ処理の装置例である。
【0114】
図中、9は大気圧プラズマ処理装置を示す。大気圧プラズマ処理装置9は、少なくとも、プラズマ放電処理装置9a、二つの電源を有する電界印加手段9b、ガス供給手段9c、電極温度調節手段9dとを有している装置である。
【0115】
大気圧プラズマ処理装置9はプラズマ放電処理装置9aのロール回転電極(第1電極)9a1と複数の角筒型電極(第2電極)9a2との対向電極間(放電空間)9a3に、ガス供給手段9cから供給された有機金属化合物のガス及び/又は酸素ガスと、例えば窒素のような放電ガスとの混合物Gが供給され、ここで活性化されて、基材F上に導入され基材Fをプラズマ放電処理するものである。
【0116】
ロール回転電極(第1電極)9a1と角筒型電極(第2電極)9a2との間の放電空間(対向電極間)9a3に、ロール回転電極(第1電極)9a1には第1電源9b1から周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界を、又角筒型電極(第2電極)9a2には第2電源9b2から周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界を掛ける様になっている。
【0117】
ロール回転電極(第1電極)9a1と第1電源9b1との間には、第1フィルター9b3が設置されており、第1フィルター9b3は第1電源9b1からロール回転電極(第1電極)9a1への電流を通過し易くし、第2電源9b2からの電流をアースして、第2電源9b2から第1電源9b1への電流を通過し難くする様に設計されている。又、角筒型電極(第2電極)9a2と第2電源9b2との間には、第2フィルター9b4が設置されており、第2フィルター9b4は、第2電源9b2から角筒型電極(第2電極)9a2への電流を通過し易くし、第1電源9b1からの電流をアースして、第1電源9b1から第2電源9b2への電流を通過し難くする様に設計されている。
【0118】
尚、ロール回転電極(第1電極)9a1を第2電極、又角筒型固定電極9a2群を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、又、第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加することが好ましい。又、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
【0119】
又、電流はI1<I2となることが好ましい。第1の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cmから20mA/cm、更に好ましくは1.0mA/cmから20mA/cmである。又、第2の高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cmから100mA/cm、更に好ましくは20mA/cmから100mA/cmである。
【0120】
ガス供給手段9cにおいて、ガス発生装置9c1で発生させた反応性ガスGは、流量を制御して給気口9c2より大気圧プラズマ処理容器9a4内に導入する。
【0121】
基材Fを、元巻き(不図示)から巻きほぐして搬送されてくるか、又は前工程から搬送されてきて、ガイドロール9eを経てニップロール9fで基材Fに同伴されてくる空気等を遮断し、ロール回転電極(第1電極)9a1に接触したまま巻き回しながら角筒型電極(第2電極)9a2との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)9a1と角筒型電極(第2電極)9a2との両方から電界を掛け、対向電極間(放電空間)9a3で放電プラズマを発生させる。
【0122】
基材Fはロール回転電極(第1電極)9a1に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより処理される。基材Fは、ニップロール9g、ガイドロール9hを経て、次工程に移送する。放電処理済みの処理排気G′は排気口9a5より排出する。
【0123】
プラズマ処理中、ロール回転電極(第1電極)9a1及び角筒型電極(第2電極)9a2を加熱又は冷却するために、電極温度調節手段9dで温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管9d1を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。
【0124】
尚、9a6及び9a7は大気圧プラズマ処理容器9a4と外界とを仕切る仕切板である。
【0125】
各角筒型電極9a2は、円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。更に、金属質母材の表面に誘電体を被覆して、角筒型電極とすることが大気圧下で放電させるためには好ましい。
【0126】
対向するロール回転電極(第1電極)9a1及び角筒型電極(第2電極)9a2との電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことを言い、双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離のことを言う。
【0127】
電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、何れの場合も均一な放電を行う観点から0.1mmから20mmが好ましく、特に好ましくは0.5mmから2mmである。
【0128】
大気圧プラズマ処理容器9a4は、パイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウム又はステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。以下に、本発明に係る大気圧プラズマ処理装置に適用可能な高周波電源を例示する。
【0129】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
メーカー 周波数 製品名
神鋼電機 3kHz SPG3−4500
神鋼電機 5kHz SPG5−4500
春日電機 15kHz AGI−023
神鋼電機 50kHz SPG50−4500
ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
パール工業 200kHz CF−2000−200k
パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。
【0130】
又、第2電源(高周波電源)としては、
メーカー 周波数 製品名
パール工業 800kHz CF−2000−800k
パール工業 2MHz CF−2000−2M
パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
パール工業 27MHz CF−2000−27M
パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
【0131】
尚、上記電源の内、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0132】
本発明においては、この様な電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことが出来る電極を大気圧プラズマ処理装置に採用することが好ましい。
【0133】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、角筒型電極(第2電極)(第2の高周波電界)に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、対象となる試料表面を処理する。
【0134】
第2電極に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm、より好ましくは20W/cmである。下限値は、好ましくは1.2W/cmである。尚、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0135】
又、ロール回転電極(第1電極)(第1の高周波電界)にも、1W/cm以上の電力(出力密度)を供給することにより、第2の高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させることが出来る。更に好ましくは5W/cm以上である。又、ロール回転電極(第1電極)に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cmである。
【0136】
これにより、更なる均一高密度プラズマを生成出来、更なる処理速度の向上と処理性の向上が両立出来る。
【0137】
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも角筒型電極(第2電極)側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより好ましい。
【0138】
本発明の有機エレクトロニクスパネルの製造方法に係るプラズマ放電処理は、反応性の観点から出来る限り高温で処理することが好ましく、電極温度調節手段9dを用いて少なくともロール回転電極(第1電極)の温度を調整しながら処理することが好ましい。
【0139】
ロール回転電極(第1電極)の温度は、50℃以上にすることが好ましく、70℃以上が更に好ましく、90℃以上が最も好ましい。
【0140】
プラズマの照射時間は基材Fの搬送速度で制御することが出来、照射時間に合わせて適宜調整される。好ましい照射時間は1秒から30分であり、更に好ましくは5秒から10分であり、最も好ましくは10秒から2分である。長時間照射するほど本発明の効果を発揮し易いが、生産性や有機機能層、基材へのダメージを考慮するとより短時間で処理することが好ましい。
【0141】
本発明に適用出来る大気圧プラズマ放電処理装置としては、上記説明した以外に、例えば、特開2004−68143号公報、同2003−49272号公報、国際公開第02/48428号パンフレット等に記載されている大気圧プラズマ放電処理装置を挙げることが出来る。
【0142】
基材の上に、第1電極と、第1電極用外部接続用電極と、第2電極と、第2電極用部接続用電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に有機物層を含む少なくとも1層の有機機能層を有する有機エレクトロニクスパネルを有機機能層の不要部分を、払拭方式で除去しパターニングした後、パターニングした有機機能層を有する基材の全面を、ドライエッチング方式によりクリーニングし、第2電極及び第2電極用部接続用電極を形成する有機エレクトロニクスパネルの製造方法により次の効果が得られた。
1.有機機能層の不要部分を払拭方式で除去する際、発生する払拭残りによるショートやダークスポットの発生がなくなり安定した性能の有機エレクトロニクスパネルの製造が可能となった。
2.有機機能層の不要部分を払拭方式で除去する際、発生するゴミの有機機能層へ付着したゴミによるショートやダークスポットの発生がなくなり安定した性能の有機エレクトロニクスパネルの製造が可能となった。
3.有機機能層の不要部分を払拭方式で除去する際、発生したゴミの基材への付着がなくなり、封止部材と基材との密着性が高くなり封止した有機エレクトロニクスパネルの防湿性が向上し、寿命が伸びた有機エレクトロニクスパネルの製造が可能となった。
【0143】
次に本発明の有機エレクトロニクスパネルの製造方法に係わる有機エレクトロニクスパネルの内、有機ELパネル及び有機PVパネルの構成に付き説明する。
【0144】
(有機ELパネルの構成)
有機ELパネルは、電極間に、単数又は複数の有機機能層を積層した構成であり、一般的には、第1電極(陽極)上に、有機物層として、正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層を積層し、その上から第2電極(陰極)が積層された構成をとる。第1電極(陽極)と第2電極(陰極)との間の他の代表的な層構成としては次の構成が挙げられる。
【0145】
(1)第1電極(陽極)/発光層/第2電極(陰極)
(2)第1電極(陽極)/発光層/電子輸送層/第2電極(陰極)
(3)第1電極(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/第2電極(陰極)
(4)第1電極(陽極)/陽極バッファ層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層//電子輸送層/陰極バッファ層(電子注入層)/第2電極(陰極)
(5)第1電極(陽極)/陽極バッファ層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファ層(電子注入層)/第2電極(陰極)
有機ELパネルを構成する主たる有機材料層について以下述べる。
【0146】
(発光層)
発光層中に含有される有機発光材料としては、カルバゾール、カルボリン、ジアザカルバゾール等の芳香族複素環化合物、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等及びこれらの単独オリゴ体或いは複合オリゴ体等が挙げられるが、本発明においてはこれに限られるものではなく、広く公知の材料を用いることが出来る。
【0147】
又、発光層中(成膜材料)には、好ましくは0.1質量%から20質量%程度のドーパントが発光材料中に含まれてもよい。ドーパントとしては、ペリレン誘導体、ピレン誘導体等公知の蛍光色素等、又、リン光発光タイプの発光層の場合、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジン)(ピコリナート)イリジウム、等に代表されるオルトメタル化イリジウム錯体等の錯体化合物が同様に0.1質量%から20質量%程度含有される。
【0148】
リン光発光方式は、発光層内部に発光領域を持つためか、比較的発光ムラが起こりづらく本発明において好ましい態様である。発光層の膜厚は、1nmから数百nmの範囲が好ましい。
【0149】
(有機PVパネルの構成)
本発明の有機PVパネルは、第1電極と第2電極との間に、両者に挟まれた光電変換層として、p型半導体材料とn型半導体材料を含む層を有し、光照射によって励起子がp/n界面に移動しキャリアに電荷分離することで起電力を発生するパネルである。
【0150】
上記光電変換層は、p型半導体材料とn型半導体材料のp/n界面を増やすため、両半導体材料を混合した所謂、バルクヘテロジャンクション構造を形成させることが好ましい(以後、バルクヘテロジャンクション層、又はBHJ層、i層とも言う)。
【0151】
一般的な有機PVパネルの構造は、第1電極(陽極)上に、有機物層として、正孔輸送・電子ブロック層/光電変換層/電子輸送・正孔ブロック層を積層し、その上から第2電極(陰極)が積層された構成だが、本発明においてはこれに限定されず、光電変換層がp型半導体材料とn型半導体材料からなる層で、上述したバルクヘテロジャンクション層が挟み込まれたような構成、所謂p−i−n構成を適用してもよい。これによって、発生したキャリアとして正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることが出来る。
【0152】
(p型半導体材料)
光電変換層(バルクヘテロジャンクション層)に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
【0153】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、ペンタセンやその誘導体、ポルフィリンやフタロシアニン、銅フタロシアニンやこれらの誘導体などが挙げられる。
【0154】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、ポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、ポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0155】
(n型半導体材料)
光電変換層(バルクヘテロジャンクション層)に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることが出来る。
【0156】
有機ELパネル及び有機PVパネルの構成に使用する共通材料に付き説明する。
【0157】
(正孔注入・輸送層、電子ブロック層)
正孔注入・輸送層、電子ブロック層に用いられる材料としては、フタロシアニン誘導体、ヘテロ環アゾール類、芳香族三級アミン類、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)などに代表される導電性高分子等の高分子材料が、又、発光層に用いられる、例えば、4,4′−ジカルバゾリルビフェニル、1,3−ジカルバゾリルベンゼン等のカルバゾール系発光材料、(ジ)アザカルバゾール類、1,3,5−トリピレニルベンゼンなどのピレン系発光材料に代表される低分子発光材料、ポリフェニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリビニルカルバゾール類などに代表される高分子発光材料などが挙げられる。
【0158】
本発明においては、目的に応じて、正孔注入層と正孔輸送層を積層形成してもよく、正孔の輸送性と電極との接合において最適な材料を選択すればよい。
【0159】
又、本発明においては、逆のキャリアである電子をブロックする機能を有し、電荷の選択性を向上させる様な材料を選択してもよい。
【0160】
正孔注入・輸送層、電子ブロック層の各層の好ましい膜厚範囲としては、0.1nmから100nmが好ましく、5nmから70nmがより好ましく、10nmから50nmが最も好ましい。
【0161】
(電子注入・輸送層、正孔ブロック層)
電子注入・輸送層材料としては、種々のn型材料を用いることが出来る。本発明の有機エレクトロニクスパネルに好ましく用いることが出来る材料の例としては、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物若しくは以下に挙げられる含窒素五員環誘導体がある。即ち、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール若しくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
【0162】
更に上述の化合物以外にも、フラーレン類、カーボンナノチューブ類、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物などを用いることも本発明において好ましい。
【0163】
本発明においては、目的に応じて、電子注入層と電子輸送層を積層形成してもよく、電子の輸送性と電極との接合において最適な材料を選択すればよい。
【0164】
又、本発明においては、逆のキャリアである電子をブロックする機能を有し、電荷の選択性を向上させる様な材料を選択してもよい。
【0165】
電子注入・輸送層、正孔ブロック層の各層の好ましい膜厚範囲としては、0.1nmから100nmが好ましく、5nmから80nmがより好ましく、10nmから60nmが最も好ましい。
【0166】
電子注入層(バッファ層)においては、リチウム、カリウム、ナトリウム、セシウム等のイオンを含むハロゲン化物、例えば、フッ化リチウムや、フッ化カリウム等を積層させ、電極との接合を向上させる構成が本発明において特に好ましい。
【0167】
これら無機材料からなる電子注入材料を用いる場合は、主にシャドウマスクを通した蒸着法によりパターニング製膜することが好ましいが、溶液として製膜出来る場合は、生産性の点で塗布製膜することがより好ましい。
【0168】
蒸着法の場合は、前述した拭き取りパターニングを行った後に蒸着製膜する製法が本発明において特に好ましい。
【0169】
(有機機能層の形成方法)
各有機機能層の形成方法としては、蒸着等により形成出来るが、製膜速度の点から塗布及び印刷等が好ましい。使用する塗布方法に制限はないが、例えば、ダイコート法、スピン塗布、転写塗布、エクストリュージョン塗布、ブレードコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。又、印刷は、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等が使用出来る。塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の移動度向上のために加熱乾燥アニールを行うことが好ましい。
【0170】
(有機機能層形成用塗布液に使用する溶媒)
各有機材料には溶解特性(溶解パラメータやイオン化ポテンシャル、極性)がそれぞれにあり、溶解出来る溶媒には限定がある。又その際には溶解度もそれぞれ違うため、一概に濃度も決めることが出来ないが、本発明において用いられる溶媒の種類は、成膜しようとする有機材料に応じて、前記の条件に適ったものを、公知の溶媒から選択すればよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、メタノールや、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール,2−メトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリン等のパラフィン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、ピリジン、キノリン、アニリン等のアミン系溶媒、アセトニトリル、バレロニトリル等のニトリル系溶媒、チオフェン、二硫化炭素などの硫黄系溶媒が挙げられる。尚、使用可能な溶媒は、これらに限るものではなく、これらを二種以上混合して溶媒として用いてもよい。
【0171】
これらの内、好ましい例としては、有機エレクトロニクスパネルに用いられる材料の良溶媒としては、例えば芳香族系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒などであり、好ましくは、芳香族系溶媒、エーテル系溶媒である。又、貧溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、パラフィン系溶媒などが挙げられ、中でもアルコール系溶媒、パラフィン系溶媒である。
【0172】
尚、これらの有機物層を塗布等によって積層する場合、下層にあたる層を溶解しないよう、材料や、溶媒を選択することが必要である。
【0173】
又、その為、これら有機物層の材料を積極的に架橋させるなどして不溶化させる構成も好ましく用いることが出来る。例えばビニル基のような重合性基或いは架橋基を持ち、加熱或いは光照射等によって、前記の構造単位をそれぞれ有する重合体・若しくは架橋構造を形成するものを用いることが出来る。これにより重層による膜の溶解、界面の乱れ等を抑えることが出来る。
【0174】
(第1電極)
第1電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することが出来るが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380nmから800nmの光を透過する電極である。材料としては、4eVより大きな(深い)仕事関数を持つものが適しており、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等を用いることが出来る。
【0175】
(第2電極)
第2電極は陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することが出来るが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陰極として用いる場合、好ましくは仕事関数が4eV以下(浅い)の金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。この様な電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、有機機能層との電気的な接合、及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく(深く)安定な金属である第二の金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム単独等が好適である。
【0176】
第2電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することが出来る。又、膜厚は通常10nmから5μm、好ましくは50nmから200nmの範囲で選ばれる。
【0177】
第2電極として反射率の高い金属材料を用いれば、例えば有機EL素子において、発光した光の一部を反射して外部に取り出すことが出来、又、有機PV素子においては、光電変換層を通過した光を反射し、再度、光電変換層に戻すことで光路長を稼ぐ効果が得られ、何れにおいても外部量子効率の向上が期待出来る。
【0178】
更に、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、又は炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノ粒子やナノワイヤーの高分散性なペーストであれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法や印刷法により形成出来好ましい。
【0179】
又、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1nmから20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性の電極とすることも出来る。
【0180】
(基材)
基材としては、発光した光、若しくは起電力を発生させるための光を透過させることが可能な、即ちこれら光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。本発明で用いることが出来る基材の例としては、ガラス基板や樹脂基材等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
【0181】
透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することが出来る。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることが出来るが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することが出来る。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0182】
本発明に用いられる透明基材には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることが出来る。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用出来る。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることが出来る。又、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることが出来る。
【0183】
又、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基材にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を製膜する側、又は反対側にハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0184】
(封止)
作製した有機光電変換素子が大気中の酸素、水分等で劣化しないように、有機EL素子や有機PV素子では、公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、薄膜のアルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機エレクトロニクスパネルの上を接着剤やUV硬化・熱硬化樹脂等で封止接着し貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)又は有機膜(パリレン等)を真空下や大気下でスパッタ法やCVD法などで堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることが出来る。
【0185】
更に本発明においては、素子寿命向上の観点から、基材を含む有機エレクトロニクスパネル全体を2枚のバリア付き基材でラミネート封止した構成でもよく、好ましくは、水分ゲッター等を同封した構成であっても構わない。
【実施例】
【0186】
以下、実施例を挙げて本発明の具体的な効果を示すが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0187】
実施例1
図2、図3に示す有機エレクトロニクスパネルを作製する工程フロー図に従って図1(a)に示される構成の有機エレクトロニクスパネルとして有機EL素子を作製する時、及び図6、図7に示す有機エレクトロニクスパネルを作製する工程フロー図に従って、図1(b)に示される構成の有機エレクトロニクスパネルとして有機EL素子を作製する時、表1に示す様に有機機能層の不要領域を除去するパターニング工程及びクリーニング工程の条件を変えて有機ELパネルを作製し、試料No.101から110とした。
【0188】
尚、パターニング工程は図5に示す払拭装置を使用し、クリーニング工程は図6に示す大気圧プラズマ処理装置を使用した。有機ELパネルの層構成は、基材/第1電極(陽極)/有機機能層(正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層)/電子注入層/第2電極(陰極)/封止層とした。
【0189】
主な有機機能層である発光層とし、発光層形成用塗布液には溶媒としてトルエンを使用した。発光層形成用塗布液に使用した溶媒(トルエン)のHansenの溶解度パラメータ∂、∂、∂、から算出される百分率(f、f、f)は、f80、f7、f13、であった。尚、上記に示される百分率(f、f、f)は、下記式1)から式3)に従って求めた値を示す。
【0190】
式1) f=∂/(∂+∂+∂
式2) f=∂/(∂+∂+∂
式3) f=∂/(∂+∂+∂
【0191】
【表1】

【0192】
パターニング工程で払拭装置に使用した溶媒のHansenの溶解度パラメータ∂d1、∂p1、∂h1、から算出される百分率(fd1、fp1、fh1)のプロットと、発光層形成用塗布液に使用した溶媒(トルエン)のHansenの溶解度パラメータ∂d2、∂p2、∂h2、から算出される百分率(fd2、fp2、fh2)のプロットとのポイント差Rfを以下の式4)に従って求め表2に示す。
【0193】
式4) (Rf)=(fd2−fd1+(fp2−fp1+(fh2−fh1
【0194】
【表2】

【0195】
*、f*、f*は、The Book and Paper Group ANNUAL,Volume Three 1984,Solubility Parameters:Theory and Application(John Burke著)からの引用した値を示す。
【0196】
〈試料No.101の作製〉
(基材の準備)
厚さ100μm、幅180mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人・デュポン社製)を基材として準備し、5×10−2Paまで減圧させた真空環境条件でスパッタリング法により、厚さ60nmのバリア層(主にSiOからなる層)を形成させた。
【0197】
(第1電極(陽極)の形成)
準備したPETフィルムの上に真空環境条件で厚さ120nmのITO(インジウムチンオキシド)をスパッタリング法により、マスクパターン成膜を行い、右端にリード部を有する10mm×100mmの大きさの第1電極を3mm間隔で12列形成した。
【0198】
(正孔注入層形成用塗布液の調製)
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)を40質量%に対し、純水30質量%、イソプロパノール30質量%で希釈し正孔注入層形成用塗布液を調製した。
【0199】
(正孔注入層の形成)
引き続き、第1電極までを形成したPETフィルムの第1電極を含め全面に、調製した正孔注入層形成用塗布液をスリットコーターを使用して塗布し、続けて150℃で15分間乾燥・加熱処理し膜厚が30nmの正孔注入層を形成した。尚、塗布速度は、5m/分とした。膜厚は、ジョバンイボン社製分光エリプソメータを使用し測定した値を示す。
【0200】
(正孔輸送層形成用塗布液の調製)
正孔輸送材料1を0.5質量%含むトルエン溶液を正孔輸送層形成用塗布液として調製した。
【0201】
【化1】

【0202】
(正孔輸送層の形成)
引き続き、正孔注入層までを形成したPETフィルムを窒素チャンバー中(25℃、露点温度−20℃以下のN2ガス環境、大気圧下で、且つ清浄度クラス5以下(JIS B 9920))に搬送し、調製した正孔輸送層形成用塗布液を上記と同様なスリットコーターを用いて正孔輸送層の上全面に塗布した。溶媒乾燥後、後述の有機機能層のパターン化に記載の方法を用いて、第1電極からなるリード部の領域を拭き取り除去した。更に、窒素雰囲気下で180秒間、100Wの高圧水銀ランプでUV照射し、光重合・架橋を行い、膜厚約20nmの正孔輸送層を形成した。尚、塗布速度は、5m/分とした。膜厚は、正孔注入層の膜厚の測定と同じ方法で測定した値を示す。
【0203】
(発光層形成用塗布液の調製)
PVKを1質量%、ドーパント4を0.1質量%含むトルエン溶液を調製し発光層形成用塗布液とした。
【0204】
【化2】

【0205】
(発光層の形成)
引き続き、調製した発光層形成用塗布液を正孔輸送層までを形成したPETフィルム上の正孔輸送層の上全面にスリットコーターを使用し塗布し、120℃で乾燥して、膜厚50nmの発光層を形成した。尚、塗布速度は、5m/分とした。膜厚は、正孔注入層の膜厚の測定と同じ方法で測定した値を示す。
【0206】
(電子輸送層形成用塗布液の調製)
電子輸送材料1を0.5質量%含有するn−ブタノール溶液を調製し電子輸送層形成用塗布液とした。
【0207】
【化3】

【0208】
(電子輸送層の形成)
引き続き、調製した電子輸送層形成用塗布液を、発光層までを形成したPETフィルム上の発光層の上全面に、スリットコーターを使用し塗布し、60℃で乾燥し、膜厚15nmの電子輸送層を形成した。尚、塗布速度は、5m/分とした。膜厚は、正孔注入層の膜厚の測定と同じ方法で測定した値を示す。
【0209】
(有機機能層のパターン化)
(払拭装置の準備)
図5に示す払拭装置をPETフィルム上にパターン形成された12列の第1電極の位置に合わせ、基材の幅方向には基材の搬送方向と直交する様に13台を配置した。
【0210】
(有機機能層の不要領域の除去)
引き続き、各有機機能層(正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層)までを積層したPETフィルムを、パターニング工程で準備した13台の払拭装置を使用し有機機能層の不要領域(第1電極用外部接続用電極を形成する領域及びリード部の上部)を以下に示す条件で連続的に払拭除去した。
【0211】
払拭装置の払拭条件
払拭部材の幅:払拭する有機機能層の幅に対して95%幅
払拭部材の厚さ:8mm
払拭部材の材質:不織布テープ
使用溶媒:o−キシレン
使用溶媒の供給量:20ml/秒
押圧ロールによる有機機能層への払拭部材の押圧力:1.96×10Pa
払拭部材の送り出し速度(基材との相対速度):5cm/秒
(電子注入層の形成)
引き続き、有機機能層をパターニング工程で不要領域を除去しパターニングしたPETフィルムを、クリーニング工程で処理することなしに真空蒸着チャンバーに搬送し、蒸着原料としてフッ化リチウム(LiF)を使用し、5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、パターニングされた発光領域に重なる形で蒸着製膜し、厚さ0.6nmの電子注入層を形成した。
【0212】
(第2電極の形成)
引き続き、電子注入層までを形成したPETフィルムを、5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、第1電極の外部接続用電極部を除き電子注入層(第1電極の上部(発光領域))及びリード部に至る領域まで、アルミニウムを使用し蒸着法にてマスクパターン製膜し、厚さ100nmのアルミニウムからなる第2電極(陰極)を形成し図1(a)に示される構成の有機EL素子を作製した。
【0213】
〔封止部材の貼合〕
(接着剤層の形成)
引き続き、作製した有機EL素子において、12列直列で接続した最左端の第1電極用外部接続用電極(有機機能層をパターニング除去した領域)、最右端の第2電極用外部接続用電極を除き、その内部の領域に紫外線硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を複数のノズルから滴下して塗設した。封止フィルム(凸版印刷 GXフィルム:厚み100μm)を、接着剤塗設面にロールラミネータ法により貼合し、大気圧環境化にて押圧0.1MPaでロール圧着した後、100Wの高圧水銀ランプを、照射強度5mW/cmから20mW/cm、距離5mmから15mmで1分間照射し固着させることで封止し、横方向に12列の発光領域を有する帯状の有機ELパネルを作製し試料No.101とした。
【0214】
〈試料No.102の作製〉
(基材の準備)
試料No.101と同じPETフィルムを準備した。
【0215】
(第1電極(陽極)の形成)
準備したPETフィルムの上に試料No.101と同じ条件、同じ方法で右端にリード部を有する10mm×100mmの大きさの第1電極を3mm間隔で12列形成した。
【0216】
(正孔輸送層から発光層の形成)
引き続き、第1電極までを形成したPETフィルムの第1電極を含め全面に、試料No.101と同じ条件、同じ方法で順次、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層までの有機機能層を積層した。
【0217】
(有機機能層のパターン化)
引き続き、試料No.101と同じ条件、同じ方法で有機機能層の不要領域を払拭除去した。
【0218】
(電子注入層の形成)
引き続き、試料No.101と同じ条件、同じ方法で電子注入層を形成した。
【0219】
(第2電極の形成)
引き続き、電子注入層までを形成したPETフィルムを、5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、第1電極用外部接続用電極部を除き第1電極の上部(発光領域)に、アルミニウムを使用し蒸着法にてマスクパターン製膜し、厚さ100nmのアルミニウムからなる第2電極(陰極)を形成した。
【0220】
(導電層の形成)
引き続き、第2電極までを形成したPETフィルムを5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、第2電極の端部とリード部とを接続させる領域にアルミニウムを使用し蒸着法にてマスクパターン製膜し、厚さ100nmのアルミニウムからなる導電層を形成し図1(b)に示される構成の有機EL素子を作製した。
【0221】
〔封止部材の貼合〕
引き続き、試料No.101と同じ条件、同じ方法で封止部材を貼合し、有機ELパネルを作製し試料No.102とした。
【0222】
〈試料No.103の作製〉
(基材の準備)
試料No.101と同じPETフィルムを準備した。
【0223】
(第1電極(陽極)の形成)
準備したPETフィルムの上に試料No.101と同じ条件、同じ方法で右端にリード部を有する10mm×100mmの大きさの第1電極を3mm間隔で12列形成した。
【0224】
(正孔輸送層から発光層の形成)
引き続き、第1電極までを形成したPETの第1電極を含め全面に、試料No.101と同じ条件、同じ方法で順次、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層までの有機機能層を積層した。
【0225】
(有機機能層のパターン化)
引き続き、試料No.101と同じ条件、同じ方法で有機機能層の不要領域を払拭除去した。
【0226】
(パターン化した有機機能層までを形成したPETフィルムのクリーニング)
引き続き、パターン化した有機機能層までを形成したPETフィルムの全面を、図6に示す大気圧プラズマ処理装置で、以下に示す条件によりクリーニングを行った。
【0227】
大気圧プラズマ処理条件
キャリアガス:窒素(大気圧下)
反応性ガス:水素(窒素に対して4体積%)
第1電源電力:ハイデン研究所PHF−6k(100kHz)
第2電源電力:パール工業CF−5000−13M(13.56MHz)
印加出力:1.0W/cm
電極部温度調節:80℃
処理時間:20秒
(電子注入層の形成)
引き続き、電子輸送層までを形成したPETフィルムの電子輸送層の上に試料No.101と同じ条件、同じ方法で電子注入層を形成した。
【0228】
(第2電極の形成)
引き続き、電子注入層までを形成したPETフィルムを、5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、第1電極の外部接続用電極部を除き第1電極の上部(発光領域)及びリード部に至る領域までに、アルミニウムを使用し蒸着法にてマスクパターン製膜し、厚さ100nmのアルミニウムからなる第2電極(陰極)を形成し図1(a)に示される構成の有機EL素子を作製した。
【0229】
〔封止部材の貼合〕
引き続き、試料No.101と同じ条件、同じ方法で封止部材を貼合し、有機ELパネルを作製し試料No.103とした。
【0230】
〈試料No.104の作製〉
(基材の準備)
試料No.101と同じPETフィルムを準備した。
【0231】
(第1電極(陽極)の形成)
準備したPETフィルムの上に試料No.101と同じ条件、同じ方法で右端にリード部を有する10mm×100mmの大きさの第1電極を3mm間隔で12列形成した。
【0232】
(正孔輸送層から発光層の形成)
引き続き、第1電極までを形成したPETの第1電極を含め全面に、試料No.101と同じ条件、同じ方法で順次、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層までの有機機能層を積層した。
【0233】
(有機機能層のパターン化)
引き続き、試料No.101と同じ条件、同じ方法で有機機能層の不要領域を払拭除去した。
【0234】
(有機機能層までを形成したPETフィルムのクリーニング)
引き続き、試料No.103と同じ条件、同じ方法で有機機能層までを形成したPETフィルムの全面をクリーニングした。
【0235】
(電子注入層の形成)
引き続き、試料No.101と同じ条件、同じ方法で電子注入層を形成した。
【0236】
(第2電極の形成)
引き続き、電子注入層までを形成したPETフィルムを、5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、試料No.102と同じ条件、同じ方法で第2電極(陰極)を形成した。
【0237】
(導電層の形成)
引き続き、第2電極までを形成したPETフィルムを5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、試料No.102と同じ条件、同じ方法で導電層を形成し図1(b)に示される構成の有機EL素子を作製した。
【0238】
〔封止部材の貼合〕
引き続き、試料No.101と同じ条件、同じ方法で封止部材を貼合し、有機ELパネルを作製し試料No.104とした。
【0239】
〈試料No.105の作製〉
試料No.103の作製において有機機能層までを形成したPETフィルムの全面のクリーニングに使用した大気圧プラズマ処理を、100Pa以下の減圧下で、RFマグネトロンスパッタ装置(アネルバ株式会社製チャンバーを改造した装置)を用い、基板クリーニング(エッチング)モードに変え、下記の条件でクリーニング処理した以外は、試料No.103と同じ条件、同じ方法で有機ELパネルを作製し試料No.105とした。
【0240】
RFマグネトロンスパッタ装置
RFスパッタクリーニング(エッチング)モードの処理条件
イオン源:アルゴン(99.998%)
加速電圧:5kV
イオン電流:10μA/cm
〈試料No.106の作製〉
試料No.103の作製において、有機機能層の不要領域の除去に使用する溶媒をo−キシレンからクロロホルムに変えた他は、全て試料No.103と同じ条件、同じ方法で有機ELパネルを作製し試料No.106とした。
【0241】
〈試料No.107の作製〉
試料No.103の作製において、有機機能層の不要領域の除去に使用する溶媒をo−キシレンから酢酸ブチルに変えた他は、全て試料No.103と同じ条件、同じ方法で有機ELパネルを作製し試料No.107とした。
【0242】
〈試料No.108の作製〉
試料No.103の作製において、有機機能層の不要領域の除去に使用する溶媒をo−キシレンから酢酸エチルに変えた他は、全て試料No.103と同じ条件、同じ方法で有機ELパネルを作製し試料No.108した。
【0243】
〈試料No.109の作製〉
試料No.103の作製において、有機機能層の不要領域の除去に使用する溶媒をo−キシレンからアセトンに変えた他は、全て試料No.103と同じ条件、同じ方法で有機ELパネルを作製し試料No.109とした。
【0244】
〈試料No.110の作製〉
試料No.103の作製において、有機機能層の不要領域の除去に使用する溶媒をo−キシレンからn−ブタノールに変えた他は、全て試料No.103と同じ条件、同じ方法で有機ELパネルを作製し試料No.110とした。
【0245】
評価
作製した横に12列の発光領域を有する帯状の有機ELパネルの試料No.101から110について、ダークスポット(スポット状の非発光部)発生数と、発光輝度半減期、保存性について、以下に示す試験方法により試験し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表3に示す。
【0246】
(ダークスポット発生数の測定方法)
各試料から横一列に断裁し、定電圧電源を用いて、有機ELパネルに直流5Vを印加し、ダークスポットの有無についてマイクロスコープを用い目視にてカウントした。12列が接続したパネルの全ての領域において観察した。
【0247】
(ダークスポット発生数の評価ランク)
◎:ダークスポットの発生が全くない
○:ダークスポット1個以上、5個未満
△:ダークスポット5個以上、10個未満
×:ダークスポット10個以上
(発光輝度半減期の測定方法)
各試料から横一列に断裁し、株式会社エーディーシー製、直流電圧・電流源R6243を用いて、素子に25A/mの直流定電流を流し、コニカミノルタセンシング株式会社製分光放射輝度計CS1000を用いて2度視野角正面輝度を発光輝度として測定し、試料No.101の発光輝度半減期を100とした時の相対値にて評価した。
【0248】
保存性の試験方法
各試料から横一列に断裁した有機ELパネルを、環境温度が65℃、相対湿度が85%RHの条件に500時間暴露した後、定電圧電源を用いて、有機ELパネルに直流5Vを印加し、ダークスポットの有無を1m離れた場所からの目視、及びマイクロスコープを用い目視にてカウントし保存性試験とした。
【0249】
(保存性の評価ランク)
◎:目視評価では目立ったダークスポットが見られない。且つ、マイクロスコープで観察しても、ダークスポットが10個未満。
【0250】
○:目視評価では目立ったダークスポットが見られない。且つ、マイクロスコープで観察すると、ダークスポットが10個以上、20個未満。
【0251】
△:目視評価でダークスポットが見えるが、1mmサイズ以下なので許容される大きさ。
【0252】
×:目視評価で明らかに大きなダークスポットが見え、1mmサイズ以上なので許容されない大きさ。
【0253】
××:目視評価で明らかに大きなダークスポットが多発
【0254】
【表3】

【0255】
基材の上に、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/第2電極(陰極)/封止層とを有する有機ELパネルを作製する時、有機機能層(正孔注入層/正孔輸送層/発光層)の不要領域を払拭方式で除去した後、引き続きドライエッチング方式でクリーニングし、その後電子注入層/第2電極(陰極)/封止層を形成し作製した有機ELパネル試料No.103から110はダークスポット(スポット状の非発光部)発生数と、発光輝度半減期、保存性で何れも優れた性能を得ることが確認された。又、有機機能層(正孔注入層/正孔輸送層/発光層)の不要領域を払拭方式で除去する時、使用する溶媒を特定のHansenの溶解度パラメータの溶媒SP値領域について選択することでもダークスポット(スポット状の非発光部)発生数と、発光輝度半減期、保存性で何れも優れた性能を得ることが確認された。
【0256】
有機機能層(正孔注入層/正孔輸送層/発光層)の不要領域を払拭方式で除去した後、クリーニングを行わずに、電子注入層/第2電極(陰極)/封止層を形成し作製した有機ELパネル試料No.101、102はダークスポット(スポット状の非発光部)発生数と、発光輝度半減期、保存性で本発明の試料No.103から110に比べ、ダークスポット(スポット状の非発光部)発生数と、発光輝度半減期、保存性が何れも劣る結果となった。本発明の有効性が確認された。
【0257】
実施例2
図2に示す有機エレクトロニクスパネルを作製する工程フロー図に従って図1(a)に示される構成の有機エレクトロニクスパネルとして有機PVパネルを作製する時、有機機能層の不要領域を除去するパターニング工程の後のクリーニング工程の有無で有機PVパネルを作製し、試料No.201、202とした。
【0258】
尚、パターニング工程は図5に示す払拭装置を使用し、クリーニング工程は図6に示す大気圧プラズマ処理装置を使用した。有機PVパネルの層構成は、基材/第1電極(陽極)/有機機能層(正孔注入層/正孔輸送層/光電変換層/電子注入層)/第2電極(陰極)/封止層とした。
【0259】
〈試料No.201の作製〉
(基材の準備)
実施例1で作製した試料No.101と同じPETフィルムを基材として準備した。
【0260】
(第1電極(陽極)の形成)
準備したPETフィルムの上に実施例1で作製した試料No.101と同じ条件、同じ方法で第1電極を12列形成した。
【0261】
(正孔注入層の形成)
引き続き、第1電極までを形成したPETフィルムの第1電極を含め全面に、実施例1で作製した試料No.101と同じ条件、同じ方法で正孔注入層を形成した。
【0262】
(正孔輸送層の形成)
引き続き、正孔注入層までを形成したPETフィルムの正孔注入層の上全面に実施例1で作製した試料No.101と同じ条件、同じ方法で正孔輸送層を形成した。
【0263】
(光電変換層形成用塗布液の調製)
クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合し光電変換層形成用塗布液を調製した。
【0264】
尚、クロロベンゼンのHansenの溶解度パラメータ∂、∂、∂、から算出される百分率(f、f、f)はf65、f17、f8である。百分率(f、f、f)は実施例1に記載の文献と同じ文献からの引用した値を示す。
【0265】
【化4】

【0266】
(光電変換層の形成)
引き続き、正孔輸送層までを形成したPETフィルムを、窒素雰囲気下で150℃で10分間加熱処理した後、調製した光電変換層形成用塗布液を正孔輸送層上にスリットコーターを用いてフィルターでろ過しながら塗布を行い、室温で放置して乾燥させ続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、膜厚が100nmの光電変換層を形成した。
【0267】
(有機機能層のパターン化)
(払拭装置の準備)
図5に示す払拭装置をPETフィルム上にパターン形成された12列の第1電極の位置に合わせ、基材の幅方向には剤の搬送方向と直交する様に13台を配置した。
【0268】
(有機機能層の不要領域の除去)
引き続き、各有機機能層(正孔注入層/正孔輸送層/光電変換層)までを積層したPETフィルムを、パターニング工程で準備した13台の払拭装置を使用し有機機能層の不要領域(第1電極の外部電極接続電極を形成する領域及びリード部)を、拭き取り溶媒をアセトンとした以外は、実施例1の試料No.101を作製する時の有機機能層の不要領域の除去方法と同条件、同方法により連続的に払拭除去した。
【0269】
アセトン*のHansenの溶解度パラメータ∂、∂、∂、から算出される百分率(f47、f32、f21)と、光電変換層形成用塗布液に使用した溶媒(クロロベンゼン)のHansenの溶解度パラメータ∂、∂、∂、から算出される百分率(f75、f17、f8)とのプロットに対するポイント差RfはRf=34となる。
【0270】
アセトン*のHansenの溶解度パラメータ∂、∂、∂、から算出される百分率は実施例1と同じ文献から引用した値を示す。又、ポイントは実施例1と同じ方法で求めた値を示す。
【0271】
(電子注入層の形成)
引き続き、有機機能層をパターニング工程で不要領域を除去しパターニングしたPETフィルムを、クリーニング工程で処理することなしに真空蒸着チャンバーに搬送し、蒸着原料としてフッ化リチウム(LiF)を使用し、5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、パターニングされた発電領域に重なる形で蒸着製膜し、厚さ0.6nmの電子注入層を形成した。
【0272】
(第2電極の形成)
引き続き、電子注入層までを形成したPETフィルムを、5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、第1電極の外部接続用電極部を除き電子注入層(第1電極の上部(発電領域))及びリード部に至る領域まで、アルミニウムを使用し蒸着法にてマスクパターン製膜し、厚さ100nmのアルミニウムからなる第2電極(陰極)を形成し図1(a)に示される構成の有機PV素子を作製した。
【0273】
〔封止部材の貼合〕
(接着剤層の形成)
引き続き、作製した有機PV素子において、実施例1で作製した試料No.101と同じ条件、同じ方法で接着剤層を形成した後、実施例1で作製した試料No.101と同じ条件、同じ方法で封止フィルムで封止し、横方向に12列の光電変換領域を有する帯状の有機PVパネルを作製し試料No.201とした。
【0274】
〈試料No.202の作製〉
(基材の準備)
試料No.201と同じPETフィルムを準備した。
【0275】
(第1電極(陽極)の形成)
準備したPETフィルムの上に試料No.201と同じ条件、同じ方法で右端にリード部を有する10mm×100mmの大きさの第1電極を3mm間隔で12列形成した。
【0276】
(正孔輸送層から光電変換層の形成)
引き続き、第1電極までを形成したPETフィルムの第1電極を含め全面に、試料No.201と同じ条件、同じ方法で順次、正孔注入層、正孔輸送層、光電変換層までの有機機能層を積層した。
【0277】
(有機機能層のパターン化)
引き続き、試料No.201と同じ条件、同じ方法で有機機能層の不要領域を払拭除去した。
【0278】
(パターン化した有機機能層までを形成したPETフィルムのクリーニング)
引き続き、パターン化した有機機能層までを形成したPETフィルムの全面を、図6に示す大気圧プラズマ処理装置で、以下に示す条件によりクリーニングを行った。
【0279】
(大気圧プラズマ処理条件)
キャリアガス:窒素(大気圧下)
反応性ガス:水素(窒素に対して4体積%)
第1電源電力:ハイデン研究所PHF−6k(100kHz)
第2電源電力:パール工業CF−5000−13M(13.56MHz)
印加出力:1.0W/cm
電極部温度調節:80℃
処理時間:20秒
(電子注入層の形成)
引き続き、光電変換層までを形成したPETフィルムの光電変換層の上に試料No.201と同じ条件、同じ方法で電子注入層を形成した。
【0280】
(第2電極の形成)
引き続き、電子注入層までを形成したPETフィルムを、5×10−4Paまで減圧させた真空条件にて、試料No.201と同じ条件、同じ方法で第2電極(陰極)を形成し図1(a)に示される構成の有機PV素子を作製した。
【0281】
〔封止部材の貼合〕
引き続き、試料No.201と同じ条件、同じ方法で封止部材を貼合し、有機PVパネルを作製し試料No.202とした。
【0282】
(評価)
作製した横に12列の光電変換領域を有する帯状の有機PVパネルの試料No.201、202について、欠陥率、光耐久性、保存性とを以下に示す試験方法により試験し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。
【0283】
欠陥率の測定方法
各試料から横一列に断裁し、LBIC(レーザービーム起電流)測定法により、12列が接続したパネルの、発電に寄与している有効領域において有機PV素子面内で発電量が低下している領域を計測し、下記の式に従って欠陥率を求めた。
【0284】
欠陥率(%)=〔発電領域の発電量の平均値に対し、発電量が20%以上低下している領域の面積〕/〔パネルの発電領域の面積〕×100
欠陥率の評価ランク
◎:欠陥率が3%未満
○:欠陥率が3%以上、5%未満
△:欠陥率が5%以上、8%未満
×:欠陥率が8%以上
光耐久性の評価
各試料から横一列に断裁し、有機PV太陽電池パネルを、100mW/cmのメタルハロゲンランプの光(擬似太陽光)に1000時間暴露し、暴露前の短絡電流密度と暴露後の短絡電流密度とを測定し、下記の式に従って保持率(%)を算出し光耐久性の評価とした。尚、短絡電流密度はソースメーター(ケースレー2400)を用いたI−V特性評価から求めた。
【0285】
保持率(%)=暴露後の短絡電流密度/暴露前の短絡電流密度×100
保存性の試験方法
環境温度が65℃、相対湿度が85%RHの条件に500時間暴露し、暴露前後の短絡電流密度を上記方法と同様にして測定し、下記式に従って保持率(%)を求めた。結果を表4に示す。
【0286】
保持率(%)=暴露後の短絡電流密度/暴露前の短絡電流密度×100
【0287】
【表4】

【0288】
基材の上に、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/光電変換層/電子注入層/第2電極(陰極)/封止層とを有する有機PVパネルを作製する時、有機機能層(正孔注入層/正孔輸送層/光電変換層)の不要領域を払拭方式で除去する時、使用する溶媒を特定のHansenの溶解度パラメータの溶媒SP値領域について選択し除去した後、引き続きドライエッチング方式でクリーニングし、その後電子注入層/第2電極(陰極)/封止層を形成し作製した有機PVパネル試料No.202は、欠陥率、光耐久性、保存性で何れも優れた性能を得ることが確認された。
【0289】
有機機能層(正孔注入層/正孔輸送層/光電変換層)の不要領域を払拭方式で除去する時、使用する溶媒を特定のHansenの溶解度パラメータの溶媒SP値領域について選択し除去した後、クリーニングを行わずに、電子注入層/第2電極(陰極)/封止層を形成し作製した有機PVパネル試料No.201は欠陥率、光耐久性、保存性で本発明の試料No.202に比べ、欠陥率、光耐久性、保存性が何れも劣る結果となった。本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0290】
1、1′、1″ 有機エレクトロニクスパネル
101、101′、101″、3、F 基材
102、102′、102″、7 第1電極(陽極)
102a、102′a、102″a、701 第1電極用外部接続用電極
102b、102′b、7a リード部
103、103′、103″、8 有機機能層
104、104′、104″ 第2電極(陰極)
104a、104′a、104″a 第2電極用外部接続用電極
105′ 導電層
105、106′、105″ 接着剤層
106、106″、107′ 封止部材
2 パターニング工程
4 ローラー
5 第1払拭装置
503 払拭部材
504 押圧ロール
505 溶剤タンク
6 第2払拭装置
9 大気圧プラズマ処理装置
9a プラズマ放電処理装置
9a1 ロール電極(第1電極)
9a2 角筒型電極(第2電極)
9a3 対向電極間(放電空間)
9b 電界印加手段
9c ガス供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に、第1電極と、第1電極用外部接続用電極と、第2電極と、第2電極用外部接続用電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に有機物層を含む少なくとも1層の有機機能層及び封止層とを有する有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、
少なくとも、前記第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第1電極を含む前記基材の全面に少なくとも1層の有機機能層を形成する有機機能層形成工程と、
前記有機機能層の不要領域を除去しパターニングするパターニング工程と、
引き続き、前記パターニングした前記有機機能層を有する前記基材の全面をクリーニングするクリーニング工程とを有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【請求項2】
前記有機機能層の不要領域を除去する溶媒が、Hansenの溶解度パラメータ、f、f、f、のプロットが、主な有機機能層を塗布した溶媒のプロットに対して、少なくとも45ポイント以内の近さであり、且つ、20ポイント以上離れていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【請求項3】
前記パターニング工程で前記有機機能層のパターニングを払拭方式で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【請求項4】
前記クリーニング工程でクリーニングをドライエッチング方式で行うことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、次の各工程を順次有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
A)少なくとも前記第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む前記第1電極と、リード部とを前記基材の上にパターン化して形成する第1電極形成工程
B)該第1電極と該リード部とを有する該基材の全面に、少なくとも1層の有機機能層を形成する有機機能層形成工程
C)前記有機機能層の不要領域をパターニングするパターニング工程
D)前記パターニングした前記有機機能層を有する前記基材の全面をクリーニングするクリーニング工程
E)前記第1電極の上の前記有機機能層の上から前記リード部に亘り、前記第2電極及び第2電極用外部接続用電極を形成する第2電極形成工程
F)前記第1電極用外部接続用電極と、第2電極用外部接続用電極とを除き封止部材で前記第2電極の上及び周囲を封止部材で封止する封止工程
【請求項6】
請求項1から4の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、次の各工程を順次有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
A)少なくとも前記第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む前記第1電極と、リード部とを前記基材の上にパターン化して形成する第1電極形成工程
B)該第1電極と該リード部とを有する該基材の全面に、少なくとも1層の有機機能層を形成する有機機能層形成工程
C)前記有機機能層の不要領域をパターニングするパターニング工程
D)前記パターニングした前記有機機能層を有する前記基材の全面をクリーニングするクリーニング工程
E)前記第1電極の上の前記有機機能層の上に、前記第2電極を形成する第2電極形成工程
F)前記第2電極と前記リード部に亘り、導電層を形成し第2電極用外部接続用電極を形成する導電層形成工程
G)前記第1電極用外部接続用電極と、第2電極用外部接続用電極とを除き封止部材で前記第2電極の上及び周囲を封止部材で封止する封止工程
【請求項7】
請求項1から4の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法において、次の各工程を順次有することを特徴とする有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
A)少なくとも前記第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む前記第1電極を、前記基材上にパターン化して形成する第1電極形成工程
B)該第1電極を有する該基材の全面に、少なくとも1層の有機機能層を形成する有機機能層形成工程
C)該有機機能層の不要領域をパターニングするパターニング工程
D)該パターニングした該有機機能層を有する該基材の全面をクリーニングするクリーニング工程
E)該第1電極の上の該有機機能層の上に第2電極を形成し、同時に該第2電極と一体かした第2電極用外部接続用電極を有機機能層が除去された該基材の上に形成する第2電極形成工程
F)前記第1電極用外部接続用電極と、第2電極用外部接続用電極とを除き封止部材で前記第2電極の上及び周囲を封止部材で封止する封止工程
【請求項8】
前記の有機エレクトロニクスパネルが有機エレクトロルミネッセンスパネルであることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。
【請求項9】
前記の有機エレクトロニクスパネルが有機光電変換素子であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の有機エレクトロニクスパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−40336(P2011−40336A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189002(P2009−189002)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】