説明

有機エレクトロルミネッセンス素子および表示装置

【課題】既存の液晶ディスプレイ用カラーフィルタをそのまま用いることが可能な高光取り出し効率の有機エレクトロルミネッセンス素子および表示装置を提供すること。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも、発光領域を有する1層以上の有機発光層と、有機発光層に正孔を注入する陽極と、電子を注入する陰極とを備える。基板には基板側から第1下地層、第2下地層、カラーフィルタ層、第3下地層がこの順で設けられ、有機発光層が放出する光のうち、カラーフィルタによって取り出される光の波長における第1下地層、第2下地層、第3下地層の屈折率をそれぞれn1、n2、n3とすると、n1<n2かつ、n2<n3であり、かつ第2下地層および第3下地層には、カラーフィルタによって取り出される光の波長において各々の下地層の屈折率と異なる屈折率を有する微粒子が分散されている。表示素子は、かかる有機エレクトロルミネッセンス素子を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は陰極と陽極に挟持された有機発光層に電子と正孔を注入することにより有機発光層から光を取り出す有機エレクトロルミネッセンス素子のうち、有機発光層から放たれた光の色目をカラーフィルタを用いて変化させる機能を有するドットマトリクス方式の有機エレクトロルミネッセンス素子およびかかる有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は陽極と陰極との間に有機発光層が挟持された構造をもつ発光素子で、電圧の印加により陽極から正孔、陰極から電子が注入され、この正孔と電子の対が有機発光層表面あるいは内部で再結合することによって発生したエネルギーを光として取り出す素子である。発光層に有機物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は古くから研究されていたが発光効率の問題で実用化が進展しなかった。これに対し、1987年にC.W.Tangにより有機層を発光層と正孔輸送層の2層に分けた積層構造の有機エレクトロルミネッセンス素子が提案され、低電圧で高効率の発光が確認され(非特許文献1等参照)、それ以降、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する研究が盛んに行われている。かかる積層構造をとることにより、発光層に注入された電子や正孔が対向電極に流れてしまうことを防ぐことができ、発光層内での再結合の効率が向上する。また、電子や正孔を発光層に注入する効率を高めることができる。そのため、現在では有機エレクトロルミネッセンス素子は積層構造をとるものが一般的で、その構造は発光層と正孔注入層の2層構造、電子注入層と発光層、正孔注入層の3層構造、電子注入層と発光層、正孔輸送層、正孔注入層の4層構造等といった構造の素子が提案されている。
【0003】
しかし、有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光層での再結合の際に、蛍光を放つために必要な一重項の生成確率は統計的に25%であることが知られている。そのため、理論的には注入した電子と正孔のうちの1/4しか光として取り出すことができないことになる。これに対し、励起三重項からの燐光を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子が提案され(非特許文献2等参照)、近年では室温で燐光を示す材料の研究が盛んに行われている。
【0004】
それでも、有機層に用いられる材料の屈折率は比較的高く、有機発光層内部で三次元的に等方に光が放たれるため基板面に対して臨界角以上の角度で発生した光は全反射を起こし、臨界角以下の光も界面で一部は反射をするために外部には取り出すことができない。このため発光層の屈折率を1.6とすると発生した光の約20%程度しか外部に取り出すことができず、発光層の屈折率が高いとさらにこの数値は低下してしまう。
【0005】
この光取り出し効率を向上させる手法として様々な提案がなされている。その中で比較的容易な手法で光取り出し効率を向上させる手法として基板部分で光の進行方向を変える手法がいくつか提案されている。例えば、特許文献1、特許文献2には基板の外部に散乱性の層を設けたものが提案されている。また特許文献3では基板自体に散乱性を持たせてある。更に特許文献4では基板表面にレンズ構造を持たせてある。しかしながら、これらの構造は基板まで到達した光に対して有効な手段であり、発光層から基板に入射する光の取り出し効率には影響しない。さらに有機エレクトロルミネッセンス素子を面光源として用いる場合には有効であるが、カラーフィルタを必要とするよう等ットマトリクスの素子では視差を考慮すると有効な手段とはいえない。
【0006】
また特許文献5は基板と光取り出し面との間に屈折率が発光層と同等以上でかつ、散乱性を有する層を設けたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提案しているが、この場合、基板までの光取り出し効率は向上するが、基板と外界での臨界角の問題が存在するために、基板まで到達しつつも、外界への臨界角以上の光については光取り出し効率を向上させることができない。この場合に基板内部あるいは外部表面で散乱や回折等の構造をとれば光取り出し効率は向上可能であるが、この場合も前述のようにドットマトリクスディスプレイのように基板上に発光色の異なる画素をもつ素子では有効な手段ではなくなる。
【0007】
一方、ドットマトリクスの有機エレクトロルミネッセンス素子でフルカラーの表示装置を作る場合、1画素をさらに複数のサブピクセルに分割し、サブピクセルごとに異なる発光色を持たせ、サブピクセルごとに光の強度を変化させ、光の加法混色によって画素の色調を作り出している。この場合、サブピクセルごとに異なる色の発光を行わせるためにはサブピクセルごとに素子の構造を変える必要がある。一般的に広く行われている方法は、発光する有機発光層の材料の種類をサブピクセルごとに変え、サブピクセルの形状に応じて、異なる有機発光層を基板上にパターニングする方法である。有機発光層が低分子材料で、真空蒸着法によって有機発光層の薄膜を形成する場合、サブピクセルの形状に応じた孔を開けたメタルマスクを基板上において蒸着することによって発光層のパターニングを得ている。また、有機発光層が高分子材料で、材料を溶媒に溶解させ、塗布法で有機発光層の薄膜を形成している場合はサブピクセルの形に応じたバンクを予め形成した上でインクジェットによってパターンを形成したり、スクリーン印刷やグラビア印刷等でパターンを形成する方法が行われている。
【0008】
しかしながら、メタルマスクを用いた真空蒸着法の場合、基板が大型化した場合、マスク自体の自重や有機発光層の蒸着源からの輻射熱でメタルマスクに歪みを生じてしまい、パターンがずれてしまう問題が発生する。また、高分子材料でインクジェット法を用いた場合でも、基板が大型化すると描画時間が長くなり、生産効率が悪化してしまうという問題が発生する。一方、スクリーン印刷やグラビア印刷法の場合でも、版の精度の点から、基板が大型化したり、画素の高精細化している場合はパターンのズレが問題になる。また、有機発光層の材料自体に反応性を持たせたり、有機発光層を形成した上にフォトレジストの層を形成してフォトリソグラフィの方法でパターニングする方法も提案されているが、露光や現像、エッチングの工程で有機発光層にダメージが発生し、素子の性能が大きく低下してしまう問題がある。
【0009】
これに対して、基板の面内全てで有機発光層をベタ面で形成し、基板上のカラーフィルタによってサブピクセルの色を作りだす方法であれば、基板の大型化や高精細化等によるパターンずれの問題ははるかに少なくなる。この方法の場合、光源となる有機発光層の光をカラーフィルタでカットしてしまうために光の利用効率が低下してしまう問題が考えられる。しかしながら、有機発光層をサブピクセル毎にパターニングして作製したドットマトリクスの素子の場合、画素が非点灯時には背面の電極に外光が反射して金属光沢が見えてしまうため、黒色の表現のために、素子外部に円偏光板を配置している。このため、素子で発生し、外部に取り出された光の半分は円偏光板でカットされてしまう。一方、基板がカラーフィルタを有している場合、外光が素子の背面電極で反射し、外部に戻ってくる前にカラーフィルタ層を2回通過している。このため、外光はカラーフィルタでほとんど吸収されてしまい、非点灯時の画素の色は実質的に黒色に見えるために円偏光板を必要としない。このため、カラーフィルタでの吸収と円偏光板での吸収を考慮すると、両素子構造で光の利用効率はそれほど差がないものと考えることができる。
【0010】
このような問題に鑑みて本発明者は特許文献6において、カラーフィルタの樹脂を高屈折率化し、散乱機能を付加することでカラーフィルタを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の光取り出し効率を向上させることが可能であることを示した。しかしながら、この方法は素子からの光取り出し効率を向上には有効であるが、一方で、これまで液晶ディスプレイ用途等で開発されてきたカラーフィルタに用いている樹脂を使用することができなくなる。そのため、液晶ディスプレイ用途で開発したカラーフィルタ用レジストとは別に新たな樹脂をベースにカラーフィルタを開発する必要が生じる。
【非特許文献1】C.W.Tang、S.A.VanSlyke、Applied Physics Letters、51巻、913頁、1987年
【非特許文献2】M.A.Baldo et al.,Nature、395巻、151項、1998年
【特許文献1】特開2003−109747号公報
【特許文献2】特開2002−75657号公報
【特許文献3】特開2001−356207号公報
【特許文献4】特開平8−83688号公報
【特許文献5】特開2004−296429号公報
【特許文献6】特願2006−90980
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は既存の液晶ディスプレイ用カラーフィルタをそのまま用いることが可能な高光取り出し効率の、ドットマトリクス方式の有機エレクトロルミネッセンス素子およびかかる有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記(1)〜(16)に示される有機エレクトロルミネッセンス素子および下記(17)に示される表示装置を提供する。
【0013】
(1)
基板上に少なくとも、発光領域を有する1層以上の有機発光層と、前記有機発光層に正孔を注入する陽極と、電子を注入する陰極とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記基板には基板側から第1下地層、第2下地層、カラーフィルタ層、第3下地層をこの順で備え、前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第1下地層、第2下地層、第3下地層の屈折率をそれぞれn1、n2、n3とすると、n1<n2かつ、n2<n3であり、かつ、第2下地層および第3下地層には、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長において、各々の下地層の屈折率と異なる屈折率を有する微粒子が分散されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0014】
(2)
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第1下地層の屈折率が基板の屈折率よりも小さく、かつ1.4以下であることを特徴とする上記(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0015】
(3)
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第1下地層の屈折率が、1.3以下であることを特徴とする上記(2)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0016】
(4)
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第3下地層の屈折率が、1.7以上であることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0017】
(5)
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第3下地層の屈折率が1.8以上であることを特徴とする上記(4)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0018】
(6)
前記第3下地層上に平滑化層をさらに備え、前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記平滑化層の屈折率が1.7以上であることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0019】
(7)
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記平滑化層の屈折率が1.8以上であることを特徴とする上記(6)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0020】
(8)
前記平滑化層上にガスバリア層をさらに備え、前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記ガスバリア層の屈折率が1.7以上であることを特徴とする上記(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0021】
(9)
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記ガスバリア層の屈折率が1.8以上であることを特徴とする上記(8)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0022】
(10)
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第2下地層の屈折率とカラーフィルタ層の屈折率の差が0.1以下であることを特徴とする上記(1)ないし(9)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0023】
(11)
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第2下地層の屈折率とカラーフィルタ層の屈折率の差が0.05以下であることを特徴とする上記(10)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0024】
(12)
前記微粒子が、金属、金属化合物、ケイ素化合物、樹脂またはそれらの混合物からなることを特徴とする上記(1)ないし(11)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0025】
(13)
前記金属化合物が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、セリウムの酸化物あるいは窒化物であることを特徴とする上記(12)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0026】
(14)
前記第1下地層が、ポーラスシリカを含むことを特徴とする上記(1)ないし(13)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0027】
(15)
前記第1下地層が、フッ素を有する樹脂を含むことを特徴とする上記(1)ないし(13)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0028】
(16)
前記第1下地層が、フッ化物塩を含むことを特徴とする上記(1)ないし(13)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0029】
(17)
上記(1)ないし(16)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた表示装置。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、発光領域を有する1層以上の有機発光層と、前記有機発光層に正孔を注入する陽極と、電子を注入する陰極とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記基板には基板側から第1下地層、第2下地層、カラーフィルタ層、第3下地層の順に形成し、第2下地層および第3下地層には散乱性を持たせ、各層の屈折率を上記の通り最適化することで光取り出し効率に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子、およびそれを用いた表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の幾つかの形態を説明する。全図にわたって同一または同様の構成要素は、同一参照符号で示す。
【0032】
図1は、本発明の第1の態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100を示す概略断面図である。有機エレクトロルミネッセンス素子100は、基板101上に、基板側から第1下地層102、第2下地層103、カラーフィルタ層104、第3下地層105をこの順で備え、さらにその上に2つの電極106、108に挟持された有機発光層107が配置されている。有機発光層107が放出する光のうち、カラーフィルタ層104が透過させる光の波長における第1下地層102、第2下地層103、カラーフィルタ層104、第3下地層105の屈折率をそれぞれn1、n2、nc、n3とすると、n1<n2かつ、n2<n3であり、かつ、第2下地層103および第3下地層105には、カラーフィルタ104によって取り出される光の波長において各々の下地層の屈折率と異なる屈折率を有する微粒子が分散されている。なお、有機発光層106が放出する光のうち、カラーフィルタ層104が透過させる光の波長は、ピーク波長として、ピーク波長として、通常、420nm〜750nmの範囲内にある。
【0033】
有機発光層107で発生した光は基板側の電極106(通常は透明電極)を通過するが、この場合通常は透明である電極106の屈折率は有機発光層の屈折率よりも高いために臨界角は存在しない。さらに光が電極106を通過し、第3下地層105に入射する場合では、電極106と第3下地層105との界面に到達した光はスネルの法則に従って屈折を起こし、臨界角以上の角度で界面に到達した光は全反射を起こすため、第3下地層105に進入できない。また通常、電極106は光透過性が必要なため、電極にはITO(インジウム・スズ酸化物)膜、あるいはIZO(インジウム・亜鉛酸化物)膜等が用いられ、その屈折率は1.8〜2.0程度である。そのため、臨界角を大きくして全反射する光を小さくするためには第3下地層105の屈折率n3は大きいほうがよく、好ましくは1.7以上、更に好ましくは1.8以上である。なお、第3下地層105の屈折率n3は、通常、2.5以下である。
【0034】
更に、第3下地層105からカラーフィルタ層104に光が入射するが、第3下地層105は、カラーフィルタ層104によって取り出される光の波長において、第3下地層105の屈折率n3と異なる屈折率を有する微粒子が分散されているため、入射した光が第3下地層105に進入すると層内に含有する微粒子によって散乱を起こす。一方、カラーフィルタに用いる樹脂は液晶用の場合、アクリル系樹脂を用いることが多いため、カラーフィルタ層の屈折率ncは1.45〜1.6程度である。そのため第3下地層105からカラーフィルタ層104に光が入射する際には臨界角が存在することになるが、第3下地層105で光が散乱を起こすために、臨界角以上の角度で第3下地層105からカラーフィルタ層104に入射し、第3下地層105とカラーフィルタ層104との界面で全反射を起こして第3下地層105に戻った光は第3下地層105内部で散乱を起こして光の進行方向を変え、別の角度で再度カラーフィルタ層104に入射する。このため、臨界角以上の角度で入射した光も散乱を起こす度に角度が変わるため、図3に矢印で示すようにカラーフィルタ層104に進入することが可能になる。
【0035】
更に、カラーフィルタ層104を通過した光が第2下地層103に入射する場合、界面で反射が発生するが、カラーフィルタ層104の屈折率ncと第2下地層103の屈折率n2の差を好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.05以下に設定することによって、界面での反射を防止することが可能になる。
【0036】
第2下地層103を通過した光は、更に、第1下地層102へ入射するが、第2下地層103はカラーフィルタ層104によって取り出される光の波長において、第2下地層103の屈折率n2と異なる屈折率を有する微粒子が分散されているため、光は第2下地層103に進入すると層内に含有する微粒子によって散乱を起こす。一方第1下地層102の屈折率n1を好ましくは1.4以下、さらに好ましくは1.3以下に設定すると、第2下地層103から第1下地層102に光が入射する際には臨界角が存在することになるが、第2下地層103で光が散乱を起こすために、臨界角以上の角度で第2下地層103から第1下地層102に入射し、第2下地層103と第1下地層102との界面で全反射を起こして第2下地層103に戻った光は第2下地層103内部で散乱を起こして光の進行方向を変え、別の角度で再度第1下地層102に入射する。このため、臨界角以上の角度で入射した光も散乱を起こす度に角度が変わるため、図4に矢印で示すように第1下地層102に進入することが可能になる。
【0037】
更に第1下地層102を通過した光が基板を経て、最後に屈折率1.0の空気層(外界)に出射する際の臨界角θcはsinθc=1/n(nは基板の屈折率)と表されるが、第1下地層102から基板に入射する際に、その入射角をθ’とすると基板に進入した光の角度θはスネルの法則sinθ=sinθ’・(n1/n)に従って屈折を起こすために、第1下地層102から見た空気層に対する臨界角θ’cはsinθ’c=1/n1と表され、基板の屈折率nに関係なく、n1で臨界角が決まり、第1下地層102の屈折率n1を、好ましくは1.4以下とすることで外界への臨界角を約46°以上と大きくすることが可能になり、また、さらに好ましくは1.3以下とすることで外界への臨界角を約50°以上と大きくすることが可能になる。
【0038】
図4は、本発明の第2の態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子400を示す概略断面図である。図4に示す有機エレクトロルミネッセンス素子400は、第3下地層105と電極106との間に平滑化層401を設けた以外は、図1に示す有機エレクトロルミネッセンス素子100と同様の構造を有する。
【0039】
本発明において、カラーフィルタ層104は顔料微粒子を含有しており、また、第2下地層103および第3下地層105には下地層の屈折率と異なる屈折率を持つ微粒子を含有している。そのため、第3下地層105の表面には凹凸がある。この上に2つの電極106と108に挟持された有機発光層107を形成する場合、その下の層の凹凸によって有機発光層107にムラが生じ、局所的に2つの電極106と108がショートする箇所が発生してしまう可能性がある。また、カラーフィルタ層104はサブピクセルの形状に応じてパターニングされており、その膜厚も1〜数μm程度あるために、パターンの端部でかなりの段差が生じており、この段差の上に形成した電極が断線してしまう可能性もある。そこで平滑化層401を第3下地層105と電極106との間に形成することによって下地層の凹凸やカラーフィルタ層104パターン端部の段差をなくすことが可能となる。しかし、平滑化層401と有機発光層107の屈折率差は前記下地層と有機発光層との屈折率差同様に臨界角の問題と反射の問題を生じさせる。そこで、平滑化層306の屈折率を好ましくは1.7以上に設定すれば前述の理由と同じ理由で光取り出し効率を高めることができ、更に有機発光層の屈折率が高い場合は、平滑化層401の屈折率をさらに好ましくは1.8以上に設定すれば前述の理由と同じ理由で光取り出し効率を高めることができる。
【0040】
図5は、本発明の第3の態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子500を示す概略断面図である。有機エレクトロルミネッセンス素子500は、平滑化層401の上にガスバリア層501をさらに設けた以外は図4に示す有機エレクトロルミネッセンス素子400と同様の構造を有する。
【0041】
カラーフィルタ層104のバインダー樹脂としては通常アクリル系の樹脂が広く使われているが、これらの樹脂はアルカリ現像を行えるように親水性の官能基を有している場合が多い。そのため、カラーフィルタ層104形成の工程で樹脂内部に水の分子を吸着し、この吸着水が有機発光層や電極に作用してダークスポット等の素子劣化の要因になることがある。このため、カラーフィルタ層104あるいは平滑化層401と電極106との間にガスバリア層501を形成することが好ましい。しかし、ガスバリア層501と有機発光層107の屈折率差は前記下地層と有機発光層との屈折率差同様に臨界角の問題と反射の問題を生じさせる。そこで、ガスバリア層407の屈折率を好ましくは1.7以上に設定すれば前述の理由と同じ理由で光取り出し効率を高めることができ、更に、有機発光層107の屈折率が高い場合は、ガスバリア層501の屈折率をさらに好ましくは1.8以上にすれば前述の理由と同じ理由で光取り出し効率を高めることができる。
【0042】
本発明の表示装置は、本発明の光取り出し効率が向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を用いており、表示装置の消費電力を低減することができ、また、有機エレクトロルミネッセンス素子に流す電流を低減することができるため、素子の長寿命化を可能にする。
【0043】
本発明の有機エレクトロルミネッセンスに用いられる基板は可視光において透光性があるものを用いる。透光性としては基板の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上あることが更に好ましい。また、屈折率は下地層の屈折率よりも高い屈折率を持っていれば特に制限はないが、屈折率が1.8を超えるような高屈折率の基板の場合、基板表面での外光の反射率が高くなり、外光の映りこみが顕著になるため好ましくない。また、第1下地層の屈折率は基板の屈折率よりも小さいため第1下地層の空気層に対する臨界角θ’cは基板の空気層に対する臨界角θcよりも大きくなる。このため、第1下地層が無いときに比べて、基板と外界の界面で全反射した光が下地層まで戻って下地層とカラーフィルタ層との界面で散乱し、臨界角以下に角度を変えて再度基板に進入して外界まで光が到達する光が減少する。このため、図6のような厚い基板101を介した多重反射と散乱による画素のボケの発生を抑制することが可能である。なお、図6は、本発明において第1下地層102が無い場合、基板101と空気界面で全反射を起こした光が再び第2下地層103に戻って散乱し、進行方向を変えて光源から離れた位置で外部に取り出されてしまう場合を示した図である。
【0044】
このような用途に好適に用いられる基板としては、BK7、BaK1、F2等の光学ガラス、石英ガラス、液晶ディスプレイに用いられる無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス等のガラス基板、PMMA等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等といった樹脂基板を挙げることができる。また、基板の厚さは、通常0.1mm〜10mmであるが、機械的強度や、基板の重量を考慮すると、好ましくは0.3〜5mm、さらに好ましくは0.5〜2mmである。
【0045】
第1下地層には、屈折率が好ましくは1.4以下、更に好ましくは1.3以下の材料を用いる。第1下地層の屈折率は低いほうが好ましいが、低すぎると層の機械的強度が低下してしまうので好ましくない。第1下地層の屈折率は、通常、1.0以上である。
【0046】
第1下地層は、ポーラスシリカ、フッ素を有する樹脂(フッ素樹脂)またはフッ化物塩で形成することができるが、特にポーラスシリカが好ましく用いられる。
【0047】
第1下地層にポーラスシリカを用いる場合は、1992年に米国Mobile社が発表したMCM−41のようなメソポーラスシリカの調製方法等の方法を用いることができる。(C.T.Kresge et al.,Nature、359巻、710頁、1992年等)この方法では鋳型として自己組織能をもつ界面活性剤や液晶とシリカ源となるケイ酸塩の溶液を調製し、pHを調整することでミセルやラメラといった組織構造を作り出し、この組織の隙間にケイ酸塩が網目状に分散している溶液を基板に塗布する。塗布の手段はスピンコート、ディップコート、スリットコート、ダイコート、ロールコート、スプレーコート等の既知の手法を用いることができる。これらの塗布法により基板上に前記のシリカ前駆体溶液を塗布したのち、基板を乾燥させてから常圧あるいは減圧下で200℃〜550℃の温度で焼成し、鋳型になっているミセルあるいはラメラを形成する有機物を除去することでポーラスシリカの薄膜が得られる。
【0048】
また、第1下地層に用いるフッ素樹脂としては、パーフルオロアルキル基を有する重合性モノマー、例えば(メタ)アクリル酸含フッ素アルキルエステル、含フッ素アルキルスチレン、パーフルオロ基を側鎖にもつ(メタ)アクリル酸、パーフルオロ基を側鎖に持つフマル酸/マレイン酸、あるいはパーフルオロ基とグリシジル基をもつ含フッ素エポキシモノマー、あるいはこれらのモノマーを重合したポリマー等が挙げられるが、これに限定されるものではない、またこれらのモノマーやポリマーに必要に応じて塗布性を向上させるための添加物を加えたり、重合開始剤を加えてもよく、前述のモノマーは必要に応じて複数を混合して使用してもよい。これらのモノマー、ポリマーを適切な溶剤に溶解させて組成物を調製した後にこの組成物を基板上に塗布する。塗布の手段はスピンコート、ディップコート、スリットコート、ダイコート、ロールコート、スプレーコート等の既知の手法を用いることができる。塗布膜は乾燥を行った後に必要に応じて熱や光、電子線等の手段で重合を行うこともできる。また、下地層の透光性は可視光全域にわたって透過率90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、97%以上であることが更に好ましい。なお、本発明における(メタ)アクリルとはメタクリル、アクリルのいずれをも意味する。
【0049】
また、第1下地層にフッ化物塩を用いる場合は、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化アルミニウムナトリウム(クリオライト)等を用いることができる。これらの塩を基板上に薄膜化する手段としては抵抗加熱あるいは電子線加熱による蒸着やスパッタリングを用いることができる。
【0050】
カラーフィルタ層は光源の光から所望の波長の光だけを透過し、不要な光をカットする層である。また、フルカラー有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、あるいはマルチカラー有機エレクトロルミネッセンスディスプレイにおいてはディスプレイの画素の形状に応じて層をパターニングする必要がある。現在、ディスプレイ用のカラーフィルタとして液晶ディスプレイ用カラーフィルタが広く用いられている。従来、これらの液晶用カラーフィルタの製造方法として挙げられる方法には顔料分散法、染色法、電着法、印刷法、インクジェット法等が挙げられる。本発明におけるカラーフィルタ層も、これらの手法を用いて作製することができるが、特に顔料分散法、印刷法、インクジェット法を用いることが好ましい。
【0051】
顔料分散法は、着色顔料とバインダー樹脂と架橋剤と光重合開始剤とを含有してなる感光性着色組成物を基板上に塗布し、フォトリソグラフィによってパターニングする方法である。前記感光性着色組成物を基板上にスピンコート、ディップコート、スリットコート、ダイコート、ロールコート、スプレーコート等の手段で塗布することができる。このうち、従来は主にスピンコート法によって基板上に感光性着色組成物を塗布する方法が主流であったが、最近では、基板の大型化や省液のためにスリットコートでおおまかに基板上に感光性着色組成物を塗布したのち、基板をスピンさせて所望の膜厚を得る方法(スリットスピン法)やスリットコートのみで基板に塗布を行う方法が主流になっている。感光性着色組成物を塗布した基板に、所望のパターンに応じたフォトマスクを基板にあて、露光を行う。感光性着色組成物は通常露光部が硬化するネガ型で、露光光は超高圧水銀灯を光源とする、主にi線(波長365nm)からなる紫外光を通常用いる。現像は有機溶媒による現像やアルカリ現像を行うことができるが、環境負荷の小さいアルカリ現像が主流である。現像を行ったパターンはベークにより未反応の重合開始剤や樹脂中の溶媒を分解、蒸発させて除去し、パターンの完全硬化を行う。この手法を必要な回数繰り返して行ってカラーフィルタとする。白色光源をRGBの3色に分解するカラーフィルタは3種の感光性着色組成物を用いて3回この操作を行うことでカラーフィルタを調製する。
【0052】
印刷法は着色顔料とバインダー樹脂と溶剤を混合してなるインクを基板上に印刷する方法である。印刷の方法としてはグラビア印刷、スクリーン印刷、凸版印刷、平版印刷、反転印刷等既知の手法を用いることができる。インクジェット法はインクジェットノズルの吐出部に印刷法は着色顔料とバインダー樹脂と溶剤を混合してなるインクを供給し、ピエゾ素子の振動や熱エネルギーによってインクの粒をノズルより吐出し、パターン形状に応じて基板上に着滴させることでカラーフィルタを形成する方法である。インクジェット法の場合、特開昭59−75205記載ようにノズルから吐出されたインクの着滴位置の精度に限界があるため、予め基板上の画素の縁になる部分に、フォトリソグラフィ等を用いて、バンクと呼ばれる、撥液性のある材料で形成されたパターンを準備しておき、ノズルから吐出されたインクが着滴する目標の画素から外れた場合に、画素から外れて着滴した部分のバンクでインクがはじいて画素部分にインクを移動させることでパターン形状を正確に形成させている。
【0053】
また、液晶ディスプレイの場合、配線部分からバックライトの光が漏れて画像のコントラストが低下することを防止するために、画素間の隙間の部分にブラックマトリクスと呼ばれる遮光膜を形成させている場合が多いが、前記バンクに遮光性を持たせてブラックマトリクスの機能を兼ねていることもある。
【0054】
カラーフィルタ層を形成するために用いる着色組成物としては、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの材料をそのまま用いることができる。カラーフィルタ層のベース樹脂に広く用いられている樹脂としてはアクリル樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等であるが、透明性や製造コストの面からアクリル樹脂を用いる手法が主流である。
【0055】
カラーフィルタ層を形成する着色組成物に用いる色材はこの用途に適するものであれば特に制限はないが、色材としては、耐候性、耐熱性の点から顔料が好ましく用いられる。顔料の例として、C.I.Pigment Yellow12、13、14、17、20、24、55、83、86、93、109、110、117、125、137、139、147、148、153、154、166、168、C.I.Pigment Orange36、43、51、55、59、61、C.I.Pigment Red9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、C.I.Pigment Violet19、23、29、30、37、40、50、C.I.Pigment Blue15、15:1、15:4、15:6、22、60、64、C.I.Pigment Brown23、25、26、C.I.Pigment Black7等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、所望の色調に応じてこれらの顔料を複数混合して使用してもよい。
【0056】
また、これらの顔料微粒子をカラーフィルタ形成用着色組成物に分散する手段としてロールミル、サンドミル、アトライター、ボールミル、ニーダー、ペイントシェイカー、超音波分散機等の各種分散手段を用いることができる。また、顔料微粒子の分散を良好にし、再凝集を防止するために各種分散助剤を添加することもできる。
【0057】
本発明において、カラーフィルタ層を形成する手段が顔料分散法の場合、カラーフィルタ形成用の着色組成物に光硬化性を持たせるために添加するモノマーは、この用途に適するものであれば特に制限は無いが、例を挙げると、(メタ)アクリル酸や、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メタ)アクリレート等の多官能アクリルモノマー、(メタ)アクリル酸グリシジルのようなエポキシをもつモノマー等があるがこれらに限定されるものではない。また、これらのモノマーは必要に応じて適宜、複数を混合して使用してもよい。
【0058】
また、本発明において、カラーフィルタ層を形成する手段が顔料分散法の場合、カラーフィルタ形成用の着色組成物に光硬化性を持たせるために添加する光重合開始剤は、この用途に適するものであれば特に制限は無く、カラーフィルタ形成用の着色組成物に添加される光重合開始剤として、各種文献に報告されているものを用いることができる。これらの光重合開始剤の例を挙げると、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、2−クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、ジエチルチオキサントン(カヤキュアDETX:日本化薬製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(イルガキュア369:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、ビイミダゾール化合物等あるが、これらに限定されるものではない。また、これらの光重合開始剤は必要に応じて適宜、複数を混合して使用してもよい。
【0059】
また、本発明においてカラーフィルタ層を形成する手段が顔料分散法以外の場合であっても、形成したカラーフィルタ層の膜に安定性、機械的強度を付与する目的で前記光硬化性モノマー、光重合開始剤を加えてパターン形成後に光照射によって膜を硬化させてもよい。また、熱硬化性モノマーを加えて熱硬化によって膜を硬化させてもよい。
【0060】
さらに本発明のカラーフィルタ層を形成するための着色組成物には各種塗布工程に適した粘度や着色組成物の安定性、塗布時の塗膜の平滑性を得るために各種溶剤を用いることができる。溶剤の例としては、メタノール、エタノール、トルエン、シクロヘキサン、イソホロン、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸イソアミル、乳酸エチル、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、プロピレングリコールジアセテート、エトキシプロピオン酸エチル、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの各種溶剤は必要に応じて適宜、複数を混合して使用してもよい。また、塗布時の塗膜の平滑性を得る目的で各種添加剤を添加してもよい。
【0061】
また、本発明においてカラーフィルタ層を形成する手段が顔料分散法以外の場合であっても、形成したカラーフィルタ層の膜に安定性、機械的強度を付与する目的で前記光硬化性モノマー、光重合開始剤を加えてパターン形成後に光照射によって膜を硬化させてもよい。また、熱硬化性モノマーを加えて熱硬化によって膜を硬化させてもよい。
【0062】
本発明において、請求項10および請求項11記載のように第1下地層とカラーフィルタ層の間に形成される第2下地層の屈折率n2はカラーフィルタ層によって取り出される光の波長におけるカラーフィルタ層の屈折率ncとの差が0.1以下、更に好ましくは0.05以下である。そのため第1下地層に用いる材料はカラーフィルタ層に用いる材料に応じて変わってくるが、第1下地層に用いる材料をカラーフィルタのベース樹脂にすることでn2とncの差を小さくすることができる。また、第1下地層形成用の組成物に光硬化性や熱硬化性を加える目的で、光硬化性モノマーあるいは熱硬化性モノマーを添加してもよい。
【0063】
さらに本発明の第2下地層を形成するための組成物には各種塗布工程に適した粘度や組成物の安定性、塗布時の塗膜の平滑性を得るために各種溶剤を用いることができる。溶剤の例としては、メタノール、エタノール、トルエン、シクロヘキサン、イソホロン、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸イソアミル、乳酸エチル、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、プロピレングリコールジアセテート、エトキシプロピオン酸エチル、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの各種溶剤は必要に応じて適宜、複数を混合して使用してもよい。また、塗布時の塗膜の平滑性を得る目的で各種添加剤を添加してもよい。また、第2下地層形成用の組成物を基板上にコートする手段としてはスピンコート、ディップコート、スリットコート、ダイコート、ロールコート、スプレーコート等の各種塗布手段を挙げることができる。
【0064】
また、本発明では、第2下地層に散乱性を持たせるために、第2下地層形成用の組成物にはカラーフィルタ層によって取り出される光の波長において、前記波長における前記カラーフィルタ層の屈折率と異なる屈折率を有する微粒子が分散されている。分散する微粒子は第2下地層の材料と屈折率が異なり、散乱性を有するものであれば特に制限はないが、金属、金属化合物、ケイ素化合物、樹脂またはそれらの混合物を好適に用いることができる。ここで、金属化合物として、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、セリウムの酸化物あるいは窒化物を用いることができる。また、添加する微粒子の大きさはあまり小さすぎると散乱性を失い好ましくないため、粒径は50nm以上、好ましくは70nm以上のものを用いる。さらに添加する微粒子の粒径は大きすぎても第2下地層の膜表面の表面荒れを起こす原因になり好ましくないため、粒径は5μm以下、好ましくは1μm以下のものを用いる。また、1次粒子の粒径が50nm未満であっても、粒子がある程度凝集して凝集2次粒子の粒径が50nm以上であれば用いることができる。また、散乱微粒子を第2下地層形成のための組成物に分散させる手段としては前述の顔料微粒子を着色組成物に分散させる手段と同じものを用いることができる。また、分散を助けたり、分散後の微粒子の再凝集を防止するために分散助剤を用いてもよい。特に第2下地層が樹脂等の有機材料で分散微粒子が無機の微粒子の場合、有機材料と無機微粒子の表面との相性をよくするために、シランカップリング剤を添加してもよい。
【0065】
カラーフィルタ層の上に形成される第3下地層は、カラーフィルタ層によって取り出される光の波長における屈折率n3が好ましくは1.7以上、更に好ましくは1.8以上である。屈折率が1.7以上で薄膜形成に適した高屈折率の材料としてはジルコニウム、チタン、セリウム原子を含有させた透明樹脂や、ゾルゲル法によって形成した無機薄膜等を挙げることができる。ジルコニウム、チタン、セリウム原子を含有させた透明樹脂を用いる場合は、これらの金属のアルコキシド、アシレート等の化合物を透光層形成用の組成物に混合させる方法がある。これらの化合物は樹脂がもつカルボキシル基やヒドロキシル基等と縮合反応を行い、樹脂骨格中にこれらの金属を組み込むことができる。もちいる化合物としてはチタンの場合、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラエトキシチタン等のチタンアルコキシド、チタンステアレート等のチタンアシレート、チタンキレート類、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムトリブトキシステアレート等のジルコニウムアシレート、ジルコニウムキレート類等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0066】
また、ゾルゲル法によって形成した無機ポリマーの薄膜は簡単な塗布法によって、有機材料よりも高い屈折率を得ることができ、好ましい。ゾルゲル法によって無機薄膜の第3下地層を形成する場合、第3下地層を形成する無機材料の原料となるチタンアルコキシドやジルコニウムアルコキシド等の金属アルコキシドとアルコール類、水等を溶媒として塗布液を調製し、これを基板上に任意の手段で塗布したのち、適切な温度で焼成することによって薄膜を得ることができる。焼成温度は100℃〜400℃であればよいが、下地のカラーフィルタ層へのダメージを考慮すると焼成温度は100℃〜250℃が好ましい。
【0067】
また、第3下地層には、カラーフィルタ層によって取り出される光の波長において第3下地層の屈折率と異なる屈折率を有する微粒子が分散されている。分散する微粒子は第3下地層の材料と屈折率が異なり、散乱性を有するものであれば特に制限はないが、金属、金属化合物、ケイ素化合物、樹脂またはそれらの混合物を好適に用いることができる。ここで、金属化合物として、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、セリウムの酸化物あるいは窒化物を用いることができる。また、添加する微粒子の大きさはあまり小さすぎると散乱性を失い好ましくないため、粒径は50nm以上、好ましくは70nm以上のものを用いる。さらに添加する微粒子の粒径は大きすぎても第3下地層の膜表面の表面荒れを起こす原因になり好ましくないため、粒径は5μm以下、好ましくは1μm以下のものを用いる。また、1次粒子の粒径が50nm以下であっても、粒子がある程度凝集して凝集2次粒子の粒径が50nmを超えるものであれば用いることができる。また、散乱微粒子を第3下地層形成のための組成物に分散させる手段として、ロールミル、サンドミル、アトライター、ボールミル、ニーダー、ペイントシェイカー、超音波分散機等の各種分散手段を用いることができる。また、微粒子の分散を良好にし、再凝集を防止するために各種分散助剤を添加することもできる。特に無機の第3下地層材料に樹脂の微粒子を分散する場合に有機/無機材料の親和性を向上させるためにシランカップリング剤を添加してもよい。
【0068】
本発明において設ける平滑化層は、前述の第3下地層の屈折率が高い方が好ましいことと同じ理由により光取り出し効率を高めるために屈折率を高めてある。この用途に適した高屈折率の材料としては第3下地層と同じようにジルコニウム、チタン、セリウム原子を含有させた透明樹脂や、ゾルゲル法によって形成した無機薄膜等を挙げることができる。特にゾルゲル法によって形成した無機の薄膜は有機材料よりも高い屈折率を得ることができ、好ましい。ゾルゲル法によって無機薄膜の平滑化層を形成する場合、平滑化層を形成する無機材料の原料となるチタンアルコキシドやジルコニウムアルコキシド等の金属アルコキシドとアルコール類、水等を溶媒として塗布液を調製し、これを基板上に任意の手段で塗布したのち、適切な温度で焼成することによって平滑化層を得ることができる。焼成温度は100℃〜400℃であればよいが、下地のカラーフィルタ層へのダメージを考慮すると焼成温度は100℃〜250℃が好ましい。また、単に第3下地層形成用の組成物から散乱粒子だけを抜いたものを平滑化層形成用の組成物として用いてもよい。
【0069】
さらに本発明の第3下地層および平滑化層を塗布する時に、塗膜の平滑性を得る目的で各種添加剤を添加してもよい。また、第3下地層形成用の組成物または平滑化層形成用の組成物を基板上にコートする手段としてはスピンコート、ディップコート、スリットコート、ダイコート、ロールコート、スプレーコート等の各種塗布手段を挙げることができる。
【0070】
本発明において、ガスバリア層の材料は、前述の第3下地層の屈折率が高いものが好ましいことと同じ理由で屈折率が高いものが好ましく、カラーフィルタ層によって取り出される光の波長における屈折率が好ましくは1.7以上、更に好ましくは1.8以上のものを用いる。
【0071】
一般的に有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられるバリア層は窒化ケイ素、酸窒化ケイ素酸化アルミニウム等の薄膜であり、これらの薄膜の屈折率は有機物の屈折率に比べて十分高いために問題はない。ただし、ガスバリア層によく用いられるシリカは屈折率が1.5程度と低いために本発明においては好ましくない。また、膜厚は0.1〜10μmの範囲が好ましく、膜応力や透明性を考慮すると0.1〜1μmがより好ましい。本発明におけるバリア層の形成方法は、この用途に利用可能なものであれば特に制限はないが、DCスパッタ、RFスパッタ、マグネトロンスパッタ、ECRスパッタ、対向ターゲットスパッタ、イオンビームスパッタ等の各種スパッタリング、イオンプレーティング、CVD等を挙げることができる。
【0072】
また、本発明においてカラーフィルタ層は光源の色を分割し、その色を組み合わせることでフルカラーもしくはマルチカラーのディスプレイの色を発色させるものであるため、サブピクセルの色数は3色以上であることが好ましい。一般に、フルカラーディスプレイのカラーフィルタのサブピクセルは光源の白色をRGB3色に分割している場合が多いが、近年は色再現域の拡大を狙って4色以上のサブピクセルをもつディスプレイも考案されており、本発明もそのようなサブピクセル形式をとることが可能である。
【0073】
また、有機発光層で発生した光を取り出す側の電極は透明導電膜が用いられる。透明導電膜としてはインジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛等の金属酸化物が通常用いられるが、特に透明性や導電性の面からインジウム・スズ酸化物が好ましい。透明電極層の膜厚は透明性と導電性の確保の点から80〜400nm好ましくは100〜200nmである。透明導電膜の形成方法はスパッタリング法やイオンプレーティング法等公知の手法を用いることができる。また、ドットマトリクスディスプレイの場合、透明導電膜は画素や、配線の形状に応じてパターニングする必要がある。本発明においては透明電極のパターニングの方法は公知の手法を用いることができる。代表的な方法としてはフォトリソグラフィによるパターニングが挙げられる。この場合、透明導電膜を形成した基板にフォトレジストをスピンコート等の方法で塗布し電極パターンに応じたフォトマスクを用いてパターン露光を行う。さらに現像を行ってレジストをパターニングした基板をサンドブラストやドライエッチング、王水等の酸を用いたウェットエッチング等の方法で透明電極をパターニングする。また、有機発光層を形成する前にパターニングした透明導電膜上に酸素プラズマ処理やUVオゾン処理を行うことも好ましい。この場合、透明導電膜表面の有機物汚染が除去され、また透明電極がインジウム・スズ酸化物の場合、酸素プラズマ処理やUVオゾン処理によってインジウム・スズ酸化物の仕事関数が高くなるため、有機発光層への正孔の注入が容易になり、素子の性能が向上することが知られている。
【0074】
透明電極層の上に形成される有機発光層はカラーフィルタ層によって複数の色に分解されてフルカラーあるいはマルチカラーのディスプレイのサブピクセルの色を形成するものであるから、その発光色は実質的に白色であることが好ましい。ただし、外部に取り出される光を加法混色して得られる白色は、光源の光をカラーフィルタに通過させた後の白色であるために、発光層からの発光色が厳密に白色でなくても、カラーフィルタの色目を最適化することで、ある程度は補正可能である。白色の発光を得るためには、白色の発光を行う材料で発光層を形成する方法が最も単純であるが、一般にそのような物質は少ない。そこで異なる発光色をもつ複数の材料を用いることで白色の発光を行わせる方法が一般的である。この場合、白色を発光させる方法として、発光層のホストに青色発光を行うドーパントと黄色〜赤色の発光を行うドーパントを同時にドープし、ドーパント濃度を調整することで白色を得る方法、発光層を2分割して各々の発光層に青色発光のドーパントと黄色〜赤色の発光を行うドーパントをドープする方法、発光層に青色発光のドーパントをドープし、正孔輸送層に黄色〜赤色の発光を行うドーパントをドープする方法等があるが、2色発光によって作り出される白色であるために、カラーフィルタを組み合わせた場合では、一般的に演色性が悪い、あるいは色再現域が狭いという問題がある。また、ホストに異なる発光色を示す3種類以上のドーパントをドープして3色以上の光を混色することで白色発光の素子を作り出す方法もあるが、ドープ濃度のバランスのとり方が難しく、層構造が複雑になってしまうという問題がある。
【0075】
一方、特開2003−272860記載のように電荷発生層で仕切られた各発光ユニットが積層されており、それぞれの発光ユニットを個別に発光させる方法を用い、各発光ユニットがそれぞれ別の色、例えば、青色発光、緑色発光、赤色発光を行い、その混色によって白色を作り出す方法を用いれば、上記のような問題は発生せず、演色性、色再現性域に優れた白色を発光させることが可能になる。また、特開2003−272860の方法でフルカラーマトリクスディスプレイを作製する場合、マスク蒸着を用いて発光層を塗り分ける方式でサブピクセルを作る手法では、マスク蒸着の工程が発光ユニットの段数倍に増えてしまう問題があるが、本発明のカラーフィルタと組み合わせてマトリクスディスプレイを作ることで工程数を増やさずに高効率のディスプレイを作製することが可能になる。
【実施例】
【0076】
以下に本発明の実施の形態で示した有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法に基づいて素子の作製を行った。ただし、本発明はこの実施例の条件に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において、「部」および「%」は重量基準である。
【0077】
実施例
〔第1下地層、第2下地層の形成〕
厚さ0.7mmのガラス基板をよく洗浄した後、低屈折率の第1下地層形成用塗布液としてアルバック製のISM−2(ヘキサメチルジシロキサンやヘキサメチルジシラザン等を含有するポーラスシリカ形成用塗布液)をスピンコートで塗布し、基板を乾燥させた後、5Paまで減圧したオーブンを用いて400℃でベークし、第1下地層を形成した。ベークした基板上の第1下地層の膜厚は350nmであった。次に、透明なアクリル樹脂と、硬化剤としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(多官能アクリルモノマー)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した溶液に平均粒径150nmのチタニア微粒子を分散させ、超音波ホモジナイザーで分散させて第2下地層形成用塗布液を調製した。この塗布液を前記基板上にスピンコートで塗布し、乾燥後ベークした。第2下地層の膜中に含まれるチタニア粒子は30%であった。また、第2下地層の平均膜厚は500nmであった。
【0078】
〔カラーフィルタ層の形成〕
(樹脂溶液の調製)
1リットル容の4つ口フラスコに、シクロヘキサノン350部、スチレン26部、2−ヒドロキシエチルアクリレート23部、メタクリル酸35部、メタクリル酸メチル21部、メタクリル酸ブチル70部を仕込み、90℃に加熱しあらかじめシクロヘキサノン290部、スチレン26部、2−ヒドロキシエチルアクリレート23部、メタクリル酸35部、メタクリル酸メチル21部、メタクリル睡ブチル70部とアゾビスイソブチロニトリル1.75部を混合溶解したものを3時間で滴下し、90℃にて3時間さらに反応させた。さらに、アゾビスイソブチロニトリル0.75部をシクロヘキサノン10部に溶解させたものを添加し、さらに1時間反応を続け、樹脂溶液を合成した。この樹脂溶液の一部をサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が30%となるようにシクロヘキサノンを添加した。
【0079】
(青色カラーフィルタ用組成物の調製)
色材としてリオノールブルーE(東洋インキ製)を2.7部と分散剤0.3部を混合し、ペイントシェイカーにて24時間分散して青色分散体を得た。次いで青色分散体54部とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを4部、シクロヘキサノン19部を容器中で充分に混合し分散液を調製した。さらにこの分散液60部に光重合開始剤としてエチルミヒラーケトン0.5部、エチルアントラキノン0.5部を加え、更にシクロヘキサノンを加えて全体の不揮発分が25%になるように調整し、最後に1ミクロンのフィルタで濾過し、青色カラーフィルタ用組成物を調製した。
【0080】
(緑色カラーフィルタ用組成物の調製)
色材としてPigment Green36を4部、Pigment Yellow154を1.7部、さらに分散剤を0.29部、上記樹脂溶液55部、シクロヘキサノン溶液7.8部を混合し、ペイントシェイカーで24時間分散して緑色分散体を調製した。ついで、この緑色分散体54部とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを4部、シクロヘキサノン19部を容器中で充分に混合し分散液を調製した。さらにこの分散液60部に光重合開始剤としてエチルミヒラーケトン0.5部、エチルアントラキノン0.5部を加え、更にシクロヘキサノンを加えて全体の不揮発分が25%になるように添加し、最後に1ミクロンのフィルタで濾過し、緑色カラーフィルタ用組成物を調製した。
【0081】
(赤色カラーフィルタ用組成物の調製)
色材としてPigment Red168を4部、Pigment Orange36を1.7部、さらに分散剤を0.29部、上記樹脂溶液を55部、シクロヘキサノン7.8部を混合し、ペイントシェイカーで24時間分散して赤色分散体を調製した。ついで、この緑色分散体54部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを4部、シクロヘキサノン19部を容器中で充分に混合し分散液を調製した。さらにこの分散液60部に光重合開始剤としてエチルミヒラーケトン0.5部、エチルアントラキノン0.5部を加え、更にシクロヘキサノンを加えて全体の不揮発分が25%になるように調整し、最後に1ミクロンのフィルタで濾過し、赤色カラーフィルタ用組成物を調製した。
【0082】
(カラーフィルタのパターニング)
上記で調製した青色のカラーフィルタ用組成物を第2下地層まで形成した基板にスピンコートで塗布した。塗膜が乾燥した後に画素の形状に応じたネガパターンのフォトマスクをあててマスクアライナーで露光を行った。露光後に基板を1%炭酸ナトリウム液で現像し、220℃のホットプレートでベークを行い青色カラーフィルタのパターンを得た。同様にして緑色カラーフィルタ、赤色カラーフィルタもパターニングを行った。得られたカラーフィルタ層の膜厚は700nmであった。
【0083】
〔オーバーコート層の形成〕
カラーフィルタ層形成の時に調製した樹脂溶液を55部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを4部、シクロヘキサノン19部を容器中で充分に混合し塗布液を調製した。さらにこの塗布液60部に光重合開始剤としてエチルミヒラーケトン0.5部、エチルアントラキノン0.5部を加え、更にシクロヘキサノンを加えて全体の不揮発分が25%になるように調整し、最後に1ミクロンのフィルタで濾過し、オーバーコート用塗布液を調製した。ついで、この塗布液をカラーフィルタ層の上にスピンコートし、塗膜が乾燥した後に各色のカラーフィルタのマトリクスをカバーする形状に応じたネガパターンのフォトマスクをあててマスクアライナーで露光を行った。露光後に基板を1%炭酸ナトリウム液で現像し、220℃のホットプレートでベークを行いオーバーコート層のパターンを得た。オーバーコート層の膜厚は300nmであった。
【0084】
〔第3下地層の形成〕
チタンテトライソプロポキシドの1%イソプロパノール溶液に2N塩酸の3%エタノール溶液を滴下してゾル液を調製し、これに平均粒径110nmのシリカ微粒子を混合させた後、スターラーでよく攪拌し、分散させた。この溶液をスピンコートで前記基板上に塗布し、200℃のホットプレートで加熱してアモルファスチタニアにシリカ微粒子が分散された高屈折率散乱層である第3下地層を形成した、第3下地層の膜厚は170nmであった。さらに上記ゾル液から粒子を抜いたものを調製し、同様にスピンコートとベークを行い、高屈折率の平滑化層を得た。平滑化層の膜厚は100nmであった。次いで、この基板にガスバリア層としてシリコンモノオキサイド(SiO)の薄膜を150nm蒸着した。
【0085】
〔電極および有機発光層の形成〕
上記基板にRFスパッタによって150nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)膜を形成し、画素形状にエッチングすることで陽極を得た。さらに洗剤洗浄および超音波洗浄を行ったのち、オゾン雰囲気下で低圧紫外線ランプの紫外線を照射して電極面を清浄化した。ついで、この基板を真空蒸着機に入れ、次の順で各有機層を蒸着した。
【0086】
正孔注入層:下記式1で示される銅フタロシアニンを蒸着速度0.2nm/秒で15nmの厚さに形成した。
【化1】

【0087】
発光層1:下記式2で示されるα−NPDを蒸着速度0.2nm/秒で20nmの厚さに形成した。その際、下記式3で示されるルブレンを1重量%ドープした。
【化2】

【0088】
【化3】

【0089】
発光層2:下記式4で示されるジナフチルアントラセンを蒸着速度0.2nm/秒で30nmの厚さに形成した。その際、下記式5で示されるペリレンを1重量%ドープした。
【化4】

【0090】
【化5】

【0091】
電子注入層:下記式6で示されるAlq3を蒸着速度0.2nm/秒で30nmの厚さに形成した。
【化6】

【0092】
ついで、電子注入層上に、フッ化リチウムを0.5nm(蒸着速度0.01nm/秒)の厚さに形成し、最後にアルミニウムを陰極のパターンに応じて150nm(蒸着速度5nm/秒)蒸着し、グローブボックス内で封止して素子を得た。
【0093】
比較例
実施例と比較を行うために比較例の素子を作製した。この素子では上記実施例の構成のうち、第1下地層、第2下地層、第3下地層を省略した。残りのカラーフィルタ層および、オーバーコート層、ガスバリア層、電極、有機発光層の構成は上記実施例と同じ材料、プロセスで作製した。
【0094】
実施例および比較例の素子に通電し、得られたスペクトルからカラーフィルタの光取り出し効率を計算したものを表1に示す。
【表1】

【0095】
表1は本発明の実施例に基づいて白色+カラーフィルタタイプの素子を作製した場合と比較例の素子を作製した場合の各発光色の色度および明度を示している。本発明の実施例の素子の方は比較例と比べて白色発光時の明度と色再現域の両方が同時に向上している。本来、明度と色再現域をカラーフィルタの膜厚の制御だけで同時に向上させることは不可能であるが、光取り出し構造をカラーフィルタに組み込むことで両方の性能を同時に向上させることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す概略断面図。
【図2】図1に示す有機エレクトロルミネッセンス素子において、第3下地層105からカラーフィルタ層104に臨界角以上の角度で入射し、反射した光が第3下地層105に戻って、105内部で散乱を起こして光の進行方向を変え、再度104に入射する様子を図示したものである。
【図3】図1に示す有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2下地層103から第1下地層102に臨界角以上の角度で入射し、反射した光が第2下地層103に戻って、103内部で散乱を起こして光の進行方向を変え、再度102に入射する様子を図示したものである。
【図4】第2の態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す概略断面図。
【図5】第3の態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す概略断面図。
【図6】図1に示す有機エレクトロルミネッセンス素子において、第1下地層102が無い場合、基板101と空気界面で全反射を起こした光が再び第2下地層103に戻って散乱し、進行方向を変えて光源から離れた位置で外部に取り出されてしまう場合を示した図である。
【符号の説明】
【0097】
100、400、500…有機エレクトロルミネッセンス素子
101…基板
102…第1下地層
103…第2下地層
104…カラーフィルタ層
105…第3下地層
106、108…電極
107…有機発光層
401…平滑化層
501…ガスバリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも、発光領域を有する1層以上の有機発光層と、前記有機発光層に正孔を注入する陽極と、電子を注入する陰極とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記基板には基板側から第1下地層、第2下地層、カラーフィルタ層、第3下地層をこの順で備え、前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第1下地層、第2下地層、第3下地層の屈折率をそれぞれn1、n2、n3とすると、n1<n2かつ、n2<n3であり、かつ、第2下地層および第3下地層には、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長において、各々の下地層の屈折率と異なる屈折率を有する微粒子が分散されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第1下地層の屈折率が基板の屈折率よりも小さく、かつ1.4以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第1下地層の屈折率が、1.3以下であることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第3下地層の屈折率が、1.7以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第3下地層の屈折率が1.8以上であることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記第3下地層上に平滑化層をさらに備え、前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記平滑化層の屈折率が1.7以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記平滑化層の屈折率が1.8以上であることを特徴とする請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記平滑化層上にガスバリア層をさらに備え、前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記ガスバリア層の屈折率が1.7以上であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記ガスバリア層の屈折率が1.8以上であることを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第2下地層の屈折率とカラーフィルタ層の屈折率の差が0.1以下であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記有機発光層が放出する光のうち、前記カラーフィルタによって取り出される光の波長における前記第2下地層の屈折率とカラーフィルタ層の屈折率の差が0.05以下であることを特徴とする請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記微粒子が、金属、金属化合物、ケイ素化合物、樹脂またはそれらの混合物からなることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記金属化合物が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、セリウムの酸化物あるいは窒化物であることを特徴とする請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記第1下地層が、ポーラスシリカを含むことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記第1下地層が、フッ素を有する樹脂を含むことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
前記第1下地層が、フッ化物塩を含むことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−16348(P2008−16348A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186993(P2006−186993)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(504265754)財団法人山形県産業技術振興機構 (60)
【Fターム(参考)】